(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】乾燥・塗装台および塗装物の生産方法
(51)【国際特許分類】
F26B 9/00 20060101AFI20241016BHJP
B05D 1/36 20060101ALI20241016BHJP
B05D 3/00 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
F26B9/00
B05D1/36 Z
B05D3/00 C
(21)【出願番号】P 2021170748
(22)【出願日】2021-10-19
【審査請求日】2021-10-19
【審判番号】
【審判請求日】2024-02-26
【早期審理対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521458498
【氏名又は名称】株式会社シモンズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】神門 和夫
【合議体】
【審判長】鈴木 充
【審判官】村山 美保
【審判官】水野 治彦
(56)【参考文献】
【文献】特開平8-206576号(JP,A)
【文献】特開昭60-129163(JP,A)
【文献】特開2004-330099(JP,A)
【文献】特開平07-157075(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F26B 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被塗装物載置部と支持部を備え、
被塗装物載置部が取付けられた支持部は、一対あり、
被塗装物載置部は、被塗装物載置部の平坦な上面に複数の突起を有しており、
複数の突起は、被塗装物を突起の上に載置して支えるもので、長手方向に一列に配置されており
突起の先端
同士が同じ高さで、先端に被塗装物を載置するものであり、
突起は先端が尖っており、
一対ある支持部の一方の支持部にある突起と他方の支持部にある突起は、被塗装物
と対応付けられておらず、被塗装物をどの突起にも載置できるものであり、
支持部は、被塗装物載置部が取付けられて
おり、被塗装物載置部を取り外せないものであり、
一の被塗装物載置部が取付けられた支持部と他の被塗装物載置部が取付けられた支持部の間隔を調整でき、一対の被塗装物載置部が取付けられた支持部の間に、被塗装物を載置できるものであり、
被塗装物載置部は、上下方向に適宜な間隔をおいて複数段並設されていないことを特徴とする乾燥・塗装台。
【請求項2】
請求項1記載の乾燥・塗装台を用意する第1の工程、
一対の被塗装物載置部が取付けられた支持部の間隔をそれぞれ調整し、一対の被塗装物載置部が取付けられた支持部にある被塗装物載置部に設けられた突起の上に、被塗装物の第1の面を表にして被塗装物を載置する第2の工程、
被塗装物の第1の面を塗装する第3の工程、
塗料が乾く前に被塗装物を回転させ、被塗装物の第2の面を表にして、第1の面を突起の上に載置する第4の工程、
被塗装物の第2の面を塗料で塗装する第5の工程、
を少なくとも含む塗装物の生産方法。
【請求項3】
被塗装物載置部に被塗装物を載置した状態で塗装した塗料を乾燥させる第6の工程を有する請求項2に記載の塗装物の生産方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木材などを塗装し乾燥させる塗装台および塗装物の生産方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ウッドデッキの床材などの木質板材は、風雨で劣化し、場合によっては腐食してしまうことが有り、防腐作用のある塗料を塗布することが必須となっている。そして、耐久性を高めるため表面だけでなく裏面にも防腐作用のある塗料を塗布する必要がある。一般的に塗装は完成品に対してなされることが多い。しかし。ウッドデッキの床などの木質板材は、上述したように、腐食から守るため組み立てられる前にその周囲に満遍なく防腐作用のある塗料を塗布する必要があり、板材などの被塗装物を載置する作業台が使われている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、塗装に特化した作業台ではなく、必ずしも使い勝手がよいとは言えなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記のような課題を解決するため、本発明は、次の構成要件を具備するものである。
被塗装物載置部と支持部を備え、被塗装物載置部が取付けられた支持部は、一対あり、被塗装物載置部は、被塗装物載置部の平坦な上面に複数の突起を有しており、複数の突起は、被塗装物を突起の上に載置して支えるもので、長手方向に一列に配置されており突起の先端同士が同じ高さで、先端に被塗装物を載置するものであり、突起は先端が尖っており、一対ある支持部の一方の支持部にある突起と他方の支持部にある突起は、被塗装物と対応付けられておらず、被塗装物をどの突起にも載置できるものであり、支持部は、被塗装物載置部が取付けられているものであり、被塗装物載置部を取り外せないものであり、
一の被塗装物載置部が取付けられた支持部と他の被塗装物載置部が取付けられた支持部の間隔を調整でき、一対の被塗装物載置部が取付けられた支持部の間に、被塗装物を載置できるものであり、被塗装物載置部は、上下方向に適宜な間隔をおいて複数段並設されていないことを特徴とする乾燥・塗装台。
【発明の効果】
【0006】
塗装作業の効率が向上し、使い勝手が良くなった。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施例1の乾燥・塗装台の説明図である・(A)乾燥・塗装台の斜視図である。(B)
図1(A)の枠a内の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を使って説明するが、以下の図面は説明を目的に作成されたもので、分かりやすくするため、説明に不要な部材を意図的に図示していない場合がある。また、説明のため部材を意図的に大きくまたは小さく図示している場合があり、正確な縮尺を示す図面ではない。
以下の説明で、異なる図における同一符号は同一機能の部位を示しており、各図における重複説明は適宜省略する。
【実施例1】
【0009】
本発明でいう、塗料とは、ペンキやニスに限らず、防腐剤やコーキング材など塗布するものであれば何でも含む。
【0010】
[乾燥・塗装台の全体構造]
図1は乾燥・塗装台1の斜視図である。乾燥・塗装台1は、被塗装物載置部11とそれを支持する支持部13とで構成されている。被塗装物載置部11は、その上面に複数の突起12が取り付けられている。被塗装物載置部11は、支持部13で支えられている。
【0011】
[支持部]
支持部13は、被塗装物載置部11を支えるものであり、実施例1では、折畳不能に被塗装物載置部11に取り付けられている。支持部13は、折り畳み可能に構成してもよく、折り畳むことでコンパクトにできるという利点がある。支持部13は、必ず必要なものではない。被塗装物載置部11は、自立できるような幅に作り、建築現場の足場など適宜なものを支持部13として代用することもできる。
【0012】
[乾燥・塗装台の使用方法]
図2は、乾燥・塗装台1の使用例の説明図である。作業者は、一対の乾燥・塗装台1を用意し、両乾燥・塗装台1の突起12の上に被塗装物2(板材)を載置する。被塗装物2は、木材、プラスチック、金属など材料の種類は問わない。また、被塗装物2の形状は、板に限らず角柱などの建築材料、ボックス状のカバー部材などの立体的なもの、複雑な形状をした機器の部品など形状を問わない。
【0013】
突起12の上に載置された被塗装物2(板材)は、塗料で第1の面(おもて面)21が塗装される。次いで、塗装された塗料が乾燥する前に、矢印で示すように反転され、第2の面(裏面)22が塗装される。第1の面(おもて面)21の塗料は、乾いていないが、突起12で支えられているため、塗装面に与える影響は最低限に抑えることができる。突起12の先端は、塗装面に与える影響を小さくするため、釘のように尖っていることが望ましい。第1の面(おもて面)21と第2の面(裏面)22の塗装を終えた被塗装物2(板材)は、必要に応じて、塗装が乾くまで放置される。
【0014】
乾燥後、第1の面(おもて面)21には、突起12が当接していた箇所が、塗膜が薄くなった部分として小さな跡が残る。跡が残るのが気になる作業者は、必要に応じて小さな跡の部分だけ上塗りを行うことができる。
【0015】
以上の使用例を塗装物の製造方法としてまとめると、次のようになる。
(第1の工程) 本発明の乾燥・塗装台1を用意する工程。
(第2の工程) 被塗装物載置部11に設けられた突起12の上に、被塗装物2の第1の面(おもて面)21を上に向けて被塗装物2を載置する工程。
(第3の工程) 被塗装物2の第1の面(おもて面)21を塗装する工程。
(第4の工程) 塗料が乾く前に被塗装物2を回転させ、被塗装物2の第2の面(裏面)22を表にして、第1の面(おもて面)21を突起12の上に載置する第4の工程。
(第5の工程) 被塗装物2の第2の面(裏面)22を塗料で塗装する第5の工程。
を少なくとも含む塗装物の生産方法。
必要に応じ、
(第6工程) 被塗装物載置部11に被塗装物2を載置した状態で塗料を乾燥させる工程。
を追加してもよい。
【0016】
被塗装物2が角柱の場合、作業者は、第1の面(おもて面)21と第2の面(裏面)22に、両側面を加えた4つの面に対して、同様に塗装を行う。このように、作業者は、被塗装物2の塗装を効率的に行うことができる。
実施例1の乾燥・塗装台1は、一対で構成されているため、長尺な板材(被塗装物2)であっても、両乾燥・塗装台1の間隔を調整することで対応できるので、さらに使い勝手が良くなっている。
【実施例2】
【0017】
実施例1は、建築材料である被塗装物2(板材)を用いたものであったが、被塗装物が小さいもの、例えば、部品などを塗装する場合などでも被塗装物載置部11の形状や、突起12の配置を工夫することで対応できる。
図3は部品塗装用の乾燥・塗装台1の斜視図である。
様々な形状の部品に対応できるよう、突起12は、被塗装物載置部11の上面に複数列取り付けられている。実施例2の突起12は、四角錘形状であり、先端が鋭く尖っている。これにより、被塗装物2に接する部分を最小限にとどめている。被塗装物2が傷つきやすいものの場合、突起12の先端は丸められていてもよい。
【0018】
(突起の形状)
突起12は、被塗装物2の重量を支える役目を果たす。被塗装物2が重量の大きなものであれば、多数の突起12で支えるようにすることが好ましい。また、被塗装物2の表面が傷つきやすい材料でできている場合は、突起12の先端は丸められていた方が好ましい。
【0019】
上述したように、突起12の先端は、被塗装物2の重量や傷つきやすさなどにより最適なものが変わり得る。そこで、作業者は、突起12の先端に取り付けるキャップ材3を使うことができる。
図4はキャップ材の説明図であり、被塗装物2に傷が付きそうな場合は、先端が丸く成形され柔らかい素材(例えば合成樹脂)のキャップ材3を突起12の先端に嵌めることで最適な条件で被塗装物2を被塗装物載置部11に載せることができる。キャップ材3は、突起12より先端が尖っているようにもできる。またキャップ材の材質もゴムのように柔らかいものから、硬いものまでさまざまなバリエーションを揃えることができる。
このように、キャップ材3は、様々なバリエーションを持たせれば、どのような被塗装物2にも対応できるようになる。
【0020】
(塗料)
前述したように、塗料は被塗装物2に塗装されるものであればペンキやニスに限らず、薬剤でもよい。また、本発明の乾燥・塗装台1は、複数の板材(被塗装物2)を並べて裏打ち材で固定したパネル状の部材など、板材(被塗装物2)と板材(被塗装物2)の間に隙間があるような部材を被塗装物2にも適用できる。
例えば、板材(被塗装物2)と板材(被塗装物2)の隙間をコーキング材で埋めるような作業にも実施例1または実施例2の乾燥・塗装台1を使うことができる。本発明でいう塗料は、コーキング材も含まれる。
【0021】
(試験)
市販の防水性シリコーン系コーキング材を溶媒で2倍に希釈し、これを塗料として使用した。ウッドデッキの木質系床材を被塗装物2として、乾燥・塗装台1を用いて両面に塗料を塗布したところ、効率よく被塗装物2の両面を塗装することができた。
また、塗装した被塗装物2は、耐水性が極めて高いことが確認された。
【0022】
また、前述の実施例および変形可能な態様は、その目的および構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用して組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0023】
1 乾燥・塗装台
11 被塗装物載置部
12 突起
13 支持部
2 被塗装物
21 第1の面(おもて面)
22 第2の面(裏面)
3 キャップ材