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特許7572071QPT遺伝子が操作された植物細胞、及びその利用方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】QPT遺伝子が操作された植物細胞、及びその利用方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20241016BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20241016BHJP
   A01H 5/00 20180101ALI20241016BHJP
   A01H 6/82 20180101ALI20241016BHJP
   C12N 15/29 20060101ALN20241016BHJP
【FI】
C12N15/09 110
C12N5/10
A01H5/00 A ZNA
A01H6/82
C12N15/29
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022562348
(86)(22)【出願日】2022-05-31
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-09
(86)【国際出願番号】 KR2022007757
(87)【国際公開番号】W WO2022270788
(87)【国際公開日】2022-12-29
【審査請求日】2022-12-06
(31)【優先権主張番号】10-2021-0080363
(32)【優先日】2021-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】519217032
【氏名又は名称】ケーティー アンド ジー コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】セオ、ヒョ セオク
(72)【発明者】
【氏名】リー、ヨウン ギ
(72)【発明者】
【氏名】リー、ジェオン ヘオン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン、ドン スン
(72)【発明者】
【氏名】キム、クワン チュル
(72)【発明者】
【氏名】ナ、ウーン ヒュン
【審査官】田中 晴絵
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/072288(WO,A1)
【文献】国際公開第2002/100199(WO,A2)
【文献】国際公開第2018/222667(WO,A1)
【文献】Phytochemistry,2013年,94 ,10-27
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C12N 5/10
A01H 5/00
A01H 6/82
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号13の塩基配列をガイド配列として含む第1ポリヌクレオチドを、ガイドRNAとして含み、かつ、Casタンパク質または前記Casタンパク質をコーディングする遺伝子を含む、CRISPR/Casシステムであって、
N.tomentosiformisに由来するQPT(Quinolinic acid Phosphoribosyl Transferase )遺伝子に変異を導入するための、CRISPR/Casシステム。
【請求項2】
母細胞に比べ、前記QPT遺伝子またはQPTタンパク質の発現または活性が低減されるように、請求項1に記載のCRISPR/Casシステムによって遺伝的に操作された植物細胞であって、前記植物細胞は、栽培タバコ(Nicotiana tabacum)の細胞である、植物細胞。
【請求項3】
前記CRISPR/Casシステムは、
Cas1、Cas1B、Cas2、Cas3、Cas4、Cas5、Cas6、Cas7、Cas8、Cas9、Cas10、Csy1、Csy2、Csy3、Cse1、Cse2、Csc1、Csc2、Csa5、Csn2、Csm2、Csm3、Csm4、Csm5、Csm6、Cmr1、Cmr3、Cmr4、Cmr5、Cmr6、Csb1、Csb2、Csb3、Csx17、Csx14、Csx10、Csx16、CsaX、Csx3、Csx1、Csx15、Csf1、Csf2、Csf3、Csf4及びCpf1からなる群のうちから選択されたCasタンパク質または前記Casタンパク質をコーディングする遺伝子を含み、
前記Casタンパク質または前記Casタンパク質をコーディングする遺伝子は、NLS(Nuclear Localization Signal:核位置化配列)を含むものである、請求項2に記載の植物細胞。
【請求項4】
請求項2または3に記載の植物細胞を含む植物。
【請求項5】
請求項1に記載のCRISPR/Casシステムを含む、ノルニコチン、アナタビン及びアナバシンからなる群のうちから選択される少なくとも1以上である、アルカロイド生合成抑制用組成物。
【請求項6】
請求項1に記載のCRISPR/Casシステムを含む、ニコチン生合成抑制用組成物。
【請求項7】
請求項1に記載のCRISPR/Casシステムを含む、QPT遺伝子操作用組成物。
【請求項8】
請求項1に記載のCRISPR/Casシステムを含むベクターを植物細胞に導入させる段階を含み、前記植物細胞は、栽培タバコ(Nicotiana tabacum)の細胞である、ニコチン生合成が抑制された植物細胞の製造方法。
【請求項9】
請求項1に記載のCRISPR/Casシステムを含むベクターを植物細胞に導入させる段階を含み、前記植物細胞は、栽培タバコ(Nicotiana tabacum)の細胞である、植物細胞のQPT遺伝子操作方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、QPT遺伝子が操作された植物細胞、及びその利用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
QPT(Quinolinic acid Phosphoribosyl Transferase)遺伝子は、タバコ植物のニコチン生合成に必須な役割を行うと知られており、QPT1遺伝子は、植物の生育に必須な遺伝子であると究明され、QPT2遺伝子は、ニコチン生合成時期に、選択的に発現量が高くなると明らかにされた((Ryan et al., 2012)。
【0003】
なお、従来技術においては、タバコ植物のニコチン生合成に係わる遺伝子の機能をGMO技術(RNAiなど)を介して抑制させることにより、ニコチン含量を少なくした。しかしながら、以前技術の限界により、遺伝子の機能を100%抑制することができず、ニコチン含量を少なくするのに限界があった。
【0004】
それにより、CRISPR/Casシステムを利用して、タバコ植物のニコチン生合成に係わる遺伝子であるQPT2遺伝子に突然変異を誘発させることにより、「外部遺伝子が導入されていないnon-GMO」でありながら、「ニコチンの含量が顕著に少ないタバコ」植物体を開発するに至った。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一態様は、QPT(Quinolinic acid Phosphoribosyl Transferase)遺伝子またはQPTタンパク質の発現または活性が低減されるように、遺伝的に操作された植物細胞を提供する。
【0006】
一態様は、前記植物細胞を含む植物を提供する。
【0007】
一態様は、配列番号9から19の塩基配列を含むポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドからなる群のうちから選択される1以上の第1ポリヌクレオチド、または前記1以上の第1ポリヌクレオチドが転写された第2ポリヌクレオチドを含むCRISPR/Casシステムを提供する。
【0008】
他の態様は、アルカロイド生合成抑制用組成物、ニコチン生合成抑制用組成物及びQPT遺伝子操作用組成物を提供する。
【0009】
また他の態様は、ニコチン生合成が抑制された植物細胞の製造方法及び植物細胞のQPT遺伝子操作方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一態様は、QPT(Quinolinic acid Phosphoribosyl Transferase)遺伝子またはQPTタンパク質の発現または活性が低減されるように、遺伝的に操作された植物細胞を提供する。
【0011】
「母細胞」は、一態様によるQPT遺伝子またはQPTタンパク質の発現または活性が低減されるように人為的な操作を行っていない細胞であり、植物から分離されたばかりの細胞、及びそれを培養した細胞を意味する。
【0012】
前記QPT遺伝子は、ニコチン生合成関連遺伝子でもあり、また前記QPT遺伝子は、ニコチナ・シルウェストリス(Nicotiana sylvestris)に由来するQPT遺伝子、ニコチナ・トメントシフォルミス(Nicotiana tomentosiformis)に由来するQPT遺伝子、及び/または栽培タバコ(Nicotiana tabacum)のQPT遺伝子でもある。例えば、前記QPT遺伝子は、QPT1s、QPT1t、QPT2s及びQPT2tからなる群のうちから選択される少なくとも1以上の遺伝子でもある。前記QPT1s遺伝子は、N.sylvestrisに由来するQPT1遺伝子でもあり、QPT2s遺伝子は、N.sylvestrisに由来するQPT2遺伝子でもあり、QPT1t遺伝子は、N.tomentosiformisに由来するQPT1遺伝子でもあり、QPT2t遺伝子は、N.tomentosiformisに由来するQPT2遺伝子でもある。前記QPT2sは、本明細書内において、NtQPT2s、NtQPT2sylまたはQPT2_sylと混用しても使用され、前記QPT2tは、本明細書内において、NtQPT2t、NtQPT2tomまたはQPT2_tomと混用しても使用される。
【0013】
前記QPT遺伝子は、それぞれNCBI GenBankに現在登録されている配列IDとして、それぞれAJ748263、AJ748262、NW_009541109.1、NW_015842103.1、NW_008919084.1、NW_015852968.1、NW_009350226、NW_015824186.1、NW_008919267.1、NW_015852968.1、NW_015842103.1、NW_015824186.1、NW_015852968.1、NW_015852968.1に該当しうる。また、該QPT遺伝子は、それぞれNCBI GenBankに現在登録されている遺伝子IDとして、107825849、104240014、107829123、107829122、104217269、107820078、104121046、104121140に該当しうる。当業者であるならば、前記配列IDまたは遺伝子ID登録番号を利用し、配列を容易に確認することができるであろう。UCSC Genome BrowserまたはGenBankに登録されている前記配列ID番号に該当する具体的な配列は、経時的に若干変更されうる。本発明の範囲は、前述の変更された配列にも及ぶということは、当業者に自明であろう。さらに具体的には、前記QPT遺伝子は、ニコチン生合成誘導信号である傷あるいはジャスモン酸メチル処理に反応して発現されるQPT2遺伝子であり、それは、QPT2s遺伝子及びQPT2t遺伝子からなる群のうちから選択される1以上の遺伝子を含むものでもある。
【0014】
また、本明細書において用語「遺伝的操作(genetic engineering)」または「遺伝的に操作された(genetically engineered)」は、細胞に対し、1以上の遺伝的変形(genetic modification)を導入する行為、またはそれによって作られた細胞を示す。
【0015】
前記遺伝的操作は、物理的な方法により、QPT遺伝子の塩基配列内変形によって誘導されるものでもある。前記物理的な方法は、例えば、X線照射、ガンマ線照射などでもある。
【0016】
前記遺伝的操作は、化学的な方法により、QPT遺伝子の塩基配列内変形または遺伝子発現の変化によって誘導されるものでもある。前記化学的な方法は、例えば、エチルメタンスルホネート(ethyl methanesulfonate)処理、ジメチルスルフェート(dimethyl sulfate)処理などでもある。
【0017】
前記遺伝的操作は、遺伝子編集システムにより、QPT遺伝子の塩基配列内変形によって誘導されるものでもある。前記遺伝子編集システムは、例えば、メガヌクレアーゼ(meganuclease)システム、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(Zinc finger nuclease)システム、ターレン(TALEN:transcription activator-like effector nuclease)システム、CRISPR/Casシステムなどでもある。例えば、前記遺伝的操作は、RNA干渉(RNAi:RNA interference)システムにより、QPT遺伝子から転写されたmRNAに結合し、遺伝子発現の変化によって誘導されるものでもある。
【0018】
従って、前記植物細胞になされる遺伝的操作は、RNA干渉(RNAi)システム、メガヌクレアーゼシステム、ジンクフィンガーヌクレアーゼシステム、ターレン(TALEN)システム、CRISPR/Casシステム、X線照射、ガンマ線照射、エチルメタンスルホネート処理、ジメチルスルフェート処理からなる群のうちから選択される少なくとも一つによっても誘導される。
【0019】
用語:QPT遺伝子またはQPT遺伝子によってコーディングされるタンパク質の「発現または活性の低減」またはQPT遺伝子の「不活性化」、QPTタンパク質の「発現または活性の低減」、あるいはQPT遺伝子の「不活性化」された遺伝的に操作された植物細胞は、前記QPT遺伝子またはQPT遺伝子によってコーディングされるタンパク質が、比較可能な同一種の植物細胞、またはその母細胞で測定されたQPT遺伝子またはQPT遺伝子によってコーディングされるタンパク質の発現レベルまたは活性レベルより低い程度に発現または活性が示されるか、あるいは発現または活性がないことを意味する。すなわち、該植物細胞において、QPT遺伝子またはQPT遺伝子によってコーディングされるタンパク質の発現または活性が、本来操作されていない植物細胞の発現または活性より、約20%以上、約30%以上、約40%以上、約50%以上、約55%以上、約60%以上、約70%以上、約75%以上、約80%以上、約85%以上、約90%以上、約95%以上または約100%低減されたものでもある。QPT遺伝子またはQPT遺伝子によってコーディングされるタンパク質の発現または活性が低減された遺伝的に操作された植物細胞は、当業界に公知された任意の方法を使用しても確認される。用語「不活性化(inactivation)」は、全く発現がなされていない遺伝子、または発現がなされていても、その活性がないタンパク質が生成されるものを意味しうる。用語「低減(depression)」は、QPT遺伝子が操作されていない植物細胞に比べ、低レベルに発現されるか、あるいはQPT遺伝子によってコーディングされるタンパク質の発現がなされてもその活性が低いものを意味しうる。
【0020】
前記遺伝的操作は、QPT遺伝子の核酸配列内変形によって誘導され、前記核酸配列内変形は、前記CRISPR/Casシステムにより、人為的にも起こるのである。
【0021】
前記CRISPR/Casシステムに含まれる前記第2ポリヌクレオチドは、crRNA(CRISPR RNA)及びトランス活性化crRNA(tracrRNA:trans-activating crRNA)を含むsgRNA(single guide RNA)でもあり、前記第1ポリヌクレオチドは、第2ポリヌクレオチドをコーディングする遺伝子でもある。
【0022】
一般的に、周知の遺伝子校正手段である「CRISPR(Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats)システム」は、集合的に、Cas遺伝子をコーディングする配列、tracr(トランス活性化CRISPR)配列(例えば、tracrRNAまたは活性部分tracrRNA)、tracr-メート配列(内因性CRISPRシステムの脈絡において、「直接反復部」及びtracrRNA-加工部分直接反復部を含む)、ガイド配列(内因性CRISPRシステムの脈絡において、「スペーサ」とも称する)、ガイドRNAまたはCRISPR遺伝子座からのその他配列、並びに転写物を含むCRISPR関連(Cas:CRISPR-associated)遺伝子の発現に伴われるか、あるいはその活性を誘導する転写物、及び他の要素を称する。一部具現例において、CRISPRシステムの1以上の要素は、I型CRISPRシステム、II型CRISPRシステムまたはIII型CRISPRシステムに由来する。一部具現例において、CRISPRシステムの1以上の要素は、内因性CRISPRシステムを含む特定有機体、例えば、化膿性レンサ球菌(Streptococcus pyogenes)に由来する。一般的に、CRISPRシステムは、標的配列の部位において、CRISPR複合体の形成を増進させる要素(内因性CRISPRシステムの脈絡において、プロトスペーサとも称する)を特徴とする。CRISPR複合体の形成の脈絡において、「標的配列」または「標的遺伝子」は、ガイド配列が相補性を有するように設計された配列を称し、ここで、該標的配列と該ガイド配列との混成化は、CRISPR複合体の形成を増進させる。本質的に、完全な相補性が必要ではないが、混成化を引き起こし、CRISPR複合体の形成を増進させる十分な相補性が存在する。該標的配列は、任意のポリヌクレオチド、例えば、DNAポリヌクレオチドまたはRNAポリヌクレオチドを含むものでもある。一部具現例において、該標的配列は、細胞核内または細胞質内に位置する。一部具現例において、該標的配列は、真核細胞の細胞器官、例えば、ミトコンドリア内または葉緑体内に存在しうる。
【0023】
前記CRISPR/Casシステムは、Casタンパク質及びまたはそのバリアントを含むものでもある。前記Casタンパク質は、CRISPR RNA(crRNA)及びトランス活性化crRNA(tracrRNA)と呼ばれる2つのRNAと複合体を形成するとき、活性エンドヌクレアーゼまたはニッカーゼ(nickase)を形成する。前記Casタンパク質の非制限的な例は、Cas1、Cas1B、Cas2、Cas3、Cas4、Cas5、Cas6、Cas7、Cas8、Cas9(Csn1及びCsx12とも知られる)、Cas10、Csy1、Csy2、Csy3、Cse1、Cse2、Csc1、Csc2、Csa5、Csn2、Csm2、Csm3、Csm4、Csm5、Csm6、Cmr1、Cmr3、Cmr4、Cmr5、Cmr6、Csb1、Csb2、Csb3、Csx17、Csx14、Csx10、Csx16、CsaX、Csx3、Csx1、Csx15、Csf1、Csf2、Csf3、Csf4、Cpf1、あるいはその相同体、またはその変形されたバージョンを含む。それら酵素が知られており、例えば、化膿性レンサ球菌Cas9タンパク質のアミノ酸配列は、受託番号Q99ZW2下において、スイスプロット(SwissProt)データベースから得ることができる。一部具現例において、非変形CRISPR酵素、例えば、Cas9は、DNA切断活性を有する。
【0024】
また、前記CRISPR/Casシステムは、Cas1、Cas1B、Cas2、Cas3、Cas4、Cas5、Cas6、Cas7、Cas8、Cas9、Cas10、Csy1、Csy2、Csy3、Cse1、Cse2、Csc1、Csc2、Csa5、Csn2、Csm2、Csm3、Csm4、Csm5、Csm6、Cmr1、Cmr3、Cmr4、Cmr5、Cmr6、Csb1、Csb2、Csb3、Csx17、Csx14、Csx10、Csx16、CsaX、Csx3、Csx1、Csx15、Csf1、Csf2、Csf3、Csf4及びCpf1からなる群のうちから選択されたCasタンパク質、または前記タンパク質をコーディングする遺伝子、及びNLS(Nuclear Localization Signal)タンパク質、またはNLSタンパク質をコーディングする遺伝子を含むものでもある。
【0025】
具体的には、前記CRISPR/Casシステムは、前記第1ポリヌクレオチド、Cas9(CRISPR associated protein 9)タンパク質、またはCas9タンパク質をコーディングする遺伝子、及びNLS(Nuclear Localization Signal)タンパク質、またはNLSタンパク質をコーディングする遺伝子を含むものでもある。
【0026】
一部具現例において、前記CRISPR酵素が、Cas9タンパク質であるCRISPR/Cas9システムを活用することができる。前記Cas9タンパク質は、化膿性レンサ球菌(Streptococcus pyogenes)由来Cas9タンパク質、カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)由来Cas9タンパク質、ストレブトコッカス・サーモフィス(Streptococcus thermophiles)由来Cas9タンパク質、黄色ブドウ球菌(Streptocuccus aureus)由来Cas9タンパク質及び髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)由来Cas9タンパク質からなる群のうちから選択される少なくとも1つのCas9タンパク質でもあり、具体的には、化膿性レンサ球菌(Streptococcus pyogenes)由来Cas9タンパク質でもある。一部具現例において、Cas9タンパク質は、真核細胞における発現のために、コドン最適化され、前記化膿性レンサ球菌(Streptococcus pyogenes)由来Cas9タンパク質を使用する場合、QPT遺伝子またはQPTタンパク質の発現または活性が最大に低減されうる。
【0027】
一部具現例において、Cas9タンパク質は、真核細胞内の核内に位置するために、Cas9タンパク質の5'-または3'-、あるいは両末端部分に、NLS(Nuclear Localization Sequence or Signal)を含むものでもあり、前記NLSは、1またはそれ以上でもある。
【0028】
本明細書において、用語「核位置化配列または核位置化信号(NLS:Nuclear Localization Sequence or Signal)」は、特定物質(例えば、タンパク質)を細胞核内に運搬する役割を行うアミノ酸配列を意味し、大体のところ、核孔(nuclear pore)を介し、細胞核内に運搬する作用を行う。前記核位置化配列は、真核生物において、CRISPR複合体活性に必要ではないが、そのような配列を含み、システムの活性を増進させ、特に、核内の核酸分子を標的化すると見られる。
【0029】
また、RNA遺伝子ハサミ(RNA-guided CRISPR)関連ヌクレアーゼCas9は、標的遺伝子のノックアウト(knockout)、転写活性化及びsingle guide RNA(sgRNA)(すなわち、crRNA-tracrRNA融合転写体)を利用した抑制に係わる画期的な技術を提供し、該技術は、数多くの遺伝子位置をターゲッティングすると知られている。
【0030】
Cas9(または、Cpf1)タンパク質は、CRISPR/Casシステムにおいて必須なタンパク質要素を意味し、前述のCas9(または、Cpf1)遺伝子及びCas9(または、Cpf1)タンパク質の情報は、国立生命工学情報センター(NCBI:National Center for Biotechnology Information)のGenBankから求めることができるが、それに制限されるものではない。Cas(または、Cpf1)タンパク質を暗号化するCRISPR関連遺伝子は、約40個以上の互いに異なるCas(または、Cpf1)タンパク質ファミリーが存在すると知られており、cas遺伝子と反復構造(repeat structure)との特定組み合わせにより、8個のCRISPR下位類型(Ecoli、Ypest、Nmeni、Dvulg、Tneap、Hmari、Apern及びMtube)を定義することができる。従って、前記各CRISPR下位類型が反復単位をなし、ポリリボヌクレオチド・タンパク質複合体を形成することができる。
【0031】
前記遺伝子ノックアウトは、遺伝子の全部または一部(例えば、1以上のヌクレオチド)の欠失、置換、及び/または1以上のヌクレオチドの挿入による遺伝子の活性調節、例えば、不活性化を意味するものでもある。前記遺伝子不活性化は、遺伝子の発現抑制または発現低減(downregulation)、あるいは本来の機能を喪失したタンパク質をコーディングするように変形されたことを意味する。また、該遺伝子調節は、ターゲット遺伝子の1以上のエクソンを取り囲んでいる両側イントロン部位を同時にターゲッティングすることによるエクソン部位の欠失によって得られるタンパク質の構造変形、ドミナントネガティブ形態のタンパク質発現、可溶性形態で分泌される競争的阻害剤発現などの結果による遺伝子の機能変化を意味するものでもある。具体的には、前記第2ポリヌクレオチドは、前記QPT遺伝子のエクソン1から8によってなる部位において、少なくとも1つの部位に結合されるものでもあり、さらに具体的には、前記QPT2遺伝子のエクソン1から8の部位に結合されるものでもあり、さらに具体的には、前記QPT2遺伝子エクソン2及び3の部位に結合されるものでもある。
【0032】
前述のQPT遺伝子またはQPTタンパク質の発現または活性が低減されるように、人為的になされる遺伝子操作は、Cas9タンパク質またはCpf1タンパク質によっても誘導される。一態様の植物細胞において、母細胞に比べ、QPT遺伝子またはQPTタンパク質の発現または活性が低減されるように、遺伝的に操作することができ、それは、CRISPR/Casシステムによっても行われ、前記CRISPR/Casシステムは、一態様は、配列番号9から19の塩基配列を含むポリヌクレオチドからなる群のうちから選択される1以上の第1ポリヌクレオチド、または前記1以上の第1ポリヌクレオチドが転写された第2ポリヌクレオチドを含むCRISPR/Casシステムを含むものでもある。
【0033】
それにより、一態様による植物細胞は、前記CRISPR/Casシステムを前記植物細胞に伝達し、ニコチン生合成に参与するQPT遺伝子を不活性化させて変形されたQPTタンパク質が発現され、ニコチン生合成を抑制することができる。
【0034】
前述QPT遺伝子または前記QPTタンパク質の発現または活性が低減されるのは、前記QPTをコーディングする遺伝子の一部または全部が、変異、置換、削除されるか、あるいは前記遺伝子に1以上の塩基が挿入されることによるものでもあり、QPT遺伝子校正手段であるCRISPR/Casシステムによるものでもある。
【0035】
前記ノックアウトされたQPT遺伝子が、QPT2s及びQPT2tであり、前記2つの遺伝子がいずれもノックアウトされる場合、ニコチン生合成が最大に抑制されうる。
【0036】
前記植物は、栽培タバコ(Nicotiana tabacum)でもあり、具体的には、黄色種、バーレー(burley)種、在来種、黒タバコ種またはオリエント種でもあり、さらに具体的には、バーレー種または黄色腫でもある。
【0037】
前記Casタンパク質がDNAによって暗号化され、個体または細胞に伝達される場合、前記DNAは、一般的に(しかしながら、必須ではない)、ターゲット細胞において作動可能な調節要素(例えば、プローモーター)を含むものでもある。前記Casタンパク質発現のためのプローモーターは、例えば、CMV,EF-la,EFS,MSCV,PGKまたはCAGプローモーターでもある。gRNA発現のためのプローモーターは、例えば、HI,EF-la,tRNAまたはU6プローモーターでもある。また、前記Casタンパク質において、Cas9をコーディングする遺伝子の配列は、NLS(Nuclear Localization Signal)(例:SV40 NLS)を含むものでもある。一例において、前記プローモーターは、組織特異性または細胞特異性を有するものでもある。
【0038】
前記QPT遺伝子またはQPTタンパク質の発現または活性が低減されるように、人為的に行われる遺伝子操作は、QPT遺伝子を構成する核酸配列内PAM(Protospacer-Adjacent Motif)配列内、またはその5'末端または3'末端に隣接して位置する連続する1bpから50bpの塩基配列部位内の遺伝子の全部または連続する塩基配列部位の1以上のヌクレオチドの欠失、野生型遺伝子と異なるヌクレオチドへの置換、それぞれ独立して、A、T、C及びGのうちから選択された1から23個のヌクレオチドの挿入、または前記変形の組み合わせによるものでもある。
【0039】
一具現例において、前記第2ポリヌクレオチドは、前記植物細胞内の少なくとも1つの対立遺伝子のQPT遺伝子に結合されるものでもあり、具体的には、全ての対立遺伝子のQPT遺伝子に結合されるものでもある。全ての対立遺伝子のQPT遺伝子に第2ポリヌクレオチドが結合し、QPT遺伝子をノックアウトさせる場合、同一世代だけではなく、後世代の植物細胞においても、ニコチン生合成が最大に抑制されうる。
【0040】
一具現例において、前記植物細胞において、QPT遺伝子をノックアウトさせるために使用したターゲットシーケンスは、例えば、QPT遺伝子のエクソン1から8によってなる部位において、少なくとも1つの部位でもあり、さらに具体的には、QPT2遺伝子のエクソン1から8の部位でもある。
【0041】
前記QPT遺伝子またはQPTタンパク質の発現または活性が低減されるように、人為的に行われる遺伝子操作は、QPT遺伝子からコーディングされるタンパク質が、本来の機能を有するタンパク質形態に発現されないようにするものでもある。前記遺伝子の操作は、以下のうち、1以上によって誘導されたものでもある:
1)QPT遺伝子の全部または一部の欠失、例えば、QPT遺伝子の1bp以上のヌクレオチド、例えば、1から30個、1から27個、1から25個、1から23個、1から20個、1から15個、1から10個、1から5個、1から3個、または1個のヌクレオチドの欠失、
2)QPT遺伝子の1bp以上のヌクレオチド、例えば、1から30個、1から27個、1から25個、1から23個、1から20個、1から15個、1から10個、1から5個、1から3個、または1個のヌクレオチドの本来(野生型)と異なるヌクレオチドへの置換、
3)1以上のヌクレオチド、例えば、1から30個、1から27個、1から25個、1から23個、1から20個、1から15個、1から10個、1から5個、1から3個、または1個のヌクレオチド(それぞれ独立して、A、T、C及びGのうちから選択される)のターゲット遺伝子の任意位置への挿入、並びに
4)前記1)から3)のうちから選択された2種以上の組み合わせ。
【0042】
前記QPT遺伝子の変形される一部(「ターゲット部位」)は、前記遺伝子における、1bp以上、3bp以上、5bp以上、7bp以上、10bp以上、12bp以上、15bp以上、17bp以上、20bp以上、例えば、1bpから30bp、3bpから30bp、5bpから30bp、7bpから30bp、10bpから30bp、12bpから30bp、15bpから30bp、17bpから30bp、20bpから30bp、1bpから27bp、3bpから27bp、5bpから27bp、7bpから27bp、10bpから27bp、12bpから27bp、15bpから27bp、17bpから27bp、20bpから27bp、1bpから25bp、3bpから25bp、5bpから25bp、7bpから25bp、10bpから25bp、12bpから25bp、15bpから25bp、17bpから25bp、20bpから25bp、1bpから23bp、3bpから23bp、5bpから23bp、7bpから23bp、10bpから23bp、12bpから23bp、15bpから23bp、17bpから23bp、20bpから23bp、1bpから20bp、3bpから20bp、5bpから20bp、7bpから20bp、10bpから20bp、12bpから20bp、15bpから20bp、17bpから20bp、21bpから25bp、18bpから22bp、または21bpから23bpの連続する塩基配列部位でもある。
【0043】
一例において、前記遺伝子ノックアウトは、まれな切断エンドヌクレアーゼを含む遺伝体校正システムによってターゲットされた遺伝子内の特定部位の一本鎖または二本鎖の切断(cleavage)を触媒化させてターゲットされた遺伝子であるQPT遺伝子発現を低減させるものでもある。前記まれな切断エンドヌクレアーゼによって触媒される核酸鎖損傷(breaks)は、相同(homologous)組み換え(recombination)または非相同末端連結(NHEJ:Non-Homologous End Joining)のようなメカニズムを介しても修繕される。その場合、NHEJメカニズムが起これば、切断位置(cleavage site)において、DNA配列に変化が誘発され、それにより、遺伝子が不活性化されうる。NHEJを介する修繕は、短い遺伝子断片の置換、挿入または欠失を引き起こし、当該遺伝子ノックアウトの誘導にも使用される。前記変形は、1以上のヌクレオチド、例えば、1から30bp、1から27bp、1から25bp、1から23bp、1から20bp、1から15bp、1から10bp、1から5bp、1から3bp、または1bpのヌクレオチドの置換、欠失及び/または挿入でもある。
【0044】
前記まれな切断エンドヌクレアーゼは、メガヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、CRISPR/Cas9(Cas9タンパク質)、CRISPR-Cpf1(Cpf1タンパク質)及びTALE-ヌクレアーゼからなる群のうちから選択された1以上でもある。一具体例において、前記まれな切断エンドヌクレアーゼは、Cas9タンパク質またはCpf1タンパク質でもある。
【0045】
用語である「キメラRNA」、「キメラガイドRNA」、「ガイドRNA」、「単一のガイドRNA(sgRNA(single guide RNA))」及び「合成ガイドRNA」は、相互交換可能に使用され、ガイド配列、tracr配列及び/またはtracrメート配列を含むポリヌクレオチド配列を称する。用語「ガイド配列」は、標的部位を指定するガイドRNA内の約20bp配列を称し、用語「ガイド」または「スペーサ」と相互交換可能に使用されうる。また、用語「tracrメート配列」は、用語「直接反復部」と相互交換可能に使用されうる。前記ガイドRNAは、2つのRNA、すなわち、CRISPR RNA(crRNA)及びトランス活性化crRNA(trRNA)からなっているものでもあり、またはcrRNA及びtracrRNAの部分を含み、前記標的DNAと混成化される一本鎖RNA(sgRNA(single-chain RNA))でもある。
【0046】
一般的に、該ガイド配列は、標的配列と混成化され、標的配列へのCRISPR複合体の配列特異的結合を誘導するに十分な、標的ポリヌクレオチド配列との相補性を有する任意のポリヌクレオチド配列である。また、QPT遺伝子またはQPTタンパク質の発現または活性を低減させるための遺伝子操作に利用することができる塩基配列であるならば、制限なしにガイドRNAとして利用することができ、例えば、前記塩基配列は、QPT遺伝子と混成化することができる配列でもある。また、前記ガイドRNAの機能を変形/増進させるために、ガイドRNA塩基配列の一部分を変形することができる。また、一部具現例において、ガイド配列と、その相応する標的配列との相補性の程度は、適切な整列アルゴリズムを使用して最適に整列される場合、約50%、60%、75%、80%、85%、90%、95%、97.5%、99%以上である。最適の整列は、配列を整列するのに適切な任意のアルゴリズムの使用によっても決定され、その非制限的な例は、スミス・ウォーターマン(Smith-Waterman)アルゴリズム、ニードルマン・ブンシュ(Needleman-Wunsch)アルゴリズム、バローズ・ホイーラー変換(Burrows-Wheeler Transform)に基づくアルゴリズム(例えば、バローズ・ホイーラーアライナ(Burrows-Wheeler aligner))、Clustal W、Clustal X、BLAT、Novoalign)(Novocraft Technologies)、ELAND(Illumina(San Diego, CA, USA))、SOAP(soap.genomics.org.cnにおいて利用可能)及びMaq(maq.sourceforge.netにおいて利用可能)を含む。一部具現例において、該ガイド配列は、例えば、約5個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個、26個、27個、28個、29個、30個、35個、40個、45個、50個、75個以上のヌクレオチド長である。一部具現例において、該ガイド配列は、約75個、50個、45個、40個、35個、30個、25個、20個、15個、12個以下のヌクレオチド長である。標的配列へのCRISPR複合体の配列特異的結合を誘導するガイド配列の能力は、任意の適切な検定によっても評価される。例えば、試験されるガイド配列を含むCRISPR複合体を形成するのに十分なCRISPRシステムの成分は、例えば、CRISPR配列の成分をエンコーディングするベクターへのトランスフェクション後、例えば、本願に記述されているようなサーベイヤー検定による標的配列内の優先的な切断の評価によるところのように、相応する標的配列を有する宿主細胞にも提供される。類似して、標的ポリヌクレオチド配列の切断は、標的配列、試験されるガイド配列、及び試験ガイド配列と異なる対照群ガイド配列を含むCRISPR複合体の成分を提供し、該標的配列において、試験と対照群とのガイド配列反応間の結合または切断の比率を比較することにより、試験管においても評価される。他の検定が可能であり、当業者に容易に使用されうるであろう。
【0047】
該ガイド配列は、任意の標的配列を標的化するようにも選択される。一部具現例において、該標的配列は、細胞のゲノム内の配列である。例示的な標的配列は、標的ゲノムにおいて、独特のものを含む。一態様のガイド配列は、配列番号9から19の塩基配列によってなるポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドからなる群のうちから選択される少なくとも一つでもあり、具体的には、配列番号13によってなるポリヌクレオチドを含むsg5、及び/または配列番号15によってなるポリヌクレオチドを含むsg7に該当するものでもある。前記CRISPR/Cas9システムは、少なくとも1以上の配列番号9から19の塩基配列を含むポリヌクレオチドを含むものでもあり、具体的には、1個、2個または3個以上の配列番号9から19の塩基配列を含むポリヌクレオチドを含むものでもある。
【0048】
一具現例において、前記遺伝子操作は、前記第1ポリヌクレオチド、前記Cas9タンパク質をコーディングする遺伝子、及び前記NLSをコーディングする遺伝子を含むベクターを形質転換させてもなされる。
【0049】
前記形質転換において、当業界に周知された形質転換方法として、栽培タバコの遺伝子の形質転換が可能な方法であるならば、特別に制限されるものではないが、具体的な例を挙げれば、アグロバクテリウム媒介形質転換法、ポリエチレングリコール(PEG:polyethylene glycol)媒介プロトプラスト形質転換法、遺伝子ガン法、電極(electrode)形質転換法、真空浸潤(vacuum infiltration)形質転換法及び炭化ケイ素繊維媒介形質転換法からなる群のうちから選択された一つによって遂行されるものでもあり、稲の特性と、形質転換率とを考慮するとき、アグロバクテリウム媒介形質転換法を使用することができる。
【0050】
用語「ベクター(vector)」は、宿主細胞において、目的遺伝子を発現させるための手段を意味する。例えば、プラスミドベクター、コスミドベクター及びバクテリオファージベクター、アデノウイルスベクター、レトロウイルスベクター及びアデノ関連ウイルスベクターのようなウイルスベクターを含む。前記組み換えベクターとしても使用されるベクターは、当業界で折々使用されるプラスミド(例えば、V2k_GE、pSC101、pGV1106、pACYC177、ColE1、pKT230、pME290、pBR322、pUC8/9、pUC6、pBD9、pHC79、pIJ61、pLAFR1、pHV14、pGEXシリーズ、pETシリーズ及びpUC19など)、ファージまたはウイルス(例えば、SV40など)を操作しても作製される。
【0051】
前記ベクターにおいて、前記1ポリヌクレオチド、前述のCasタンパク質またはその変異体をコーディングする遺伝子、及び前記NLSをコーディングする遺伝子は、プローモーターに作動可能にも連結される。用語「作動可能に連結(operatively linked)」は、ヌクレオチド発現調節配列(例えば、プローモーター配列)と異なるヌクレオチド配列間の機能的な結合を意味する。前記調節配列は、「作動可能に連結」されることにより、他のヌクレオチド配列の転写及び/または解読を調節することができる。
【0052】
前記ベクターは、典型的には、クローニングのためのベクター、または発現のためのベクターとしても構築される。前記発現用ベクターは、当業界において、植物、動物または微生物において、外来のタンパク質を発現するところに使用される通常のものを使用することができる。前記ベクターは、当業界に公知された多様な方法を介しても構築される。
【0053】
前記ベクターは、原核細胞または真核細胞を宿主にしても構築される。例えば、使用されるベクターが発現ベクターであり、原核細胞を宿主にする場合には、転写を進めることができる強力なプローモーター(例えば、CMVプローモーター、trpプローモーター、lacプローモーター、tacプローモーター、T7プローモーターなど)、解読開始のためのリボソーム結合サイト、及び転写/解読終結配列を含むものが一般的である。真核細胞を宿主にする場合には、ベクターに含まれる真核細胞で作動する複製原点は、f1複製原点、SV40複製原点、pMB1複製原点、アデノ複製原点、AAV複製原点及びBBV複製原点などを含むが、それらに限定されるのではない。また、哺乳動物細胞のゲノムに由来するプローモーター(例えば、メタロチオニンプローモーター)、または哺乳動物ウイルスに由来するプローモーター(例えば、アデノウイルス後期プローモーター、バックシニアウイルス7.5Kプローモーター、SV40プローモーター、サイトメガロウイルスプローモーター及びHSVのtkプローモーター)が利用され、転写終結配列として、ポリアデニル化配列を一般的に有する。
【0054】
他の態様は、前記植物細胞を含む植物を提供する。
【0055】
前記植物は、同一世代だけではなく、後世代においても、ニコチンまたはノルニコチン、アナバシン、及びアナタビンを含むアルカロイドの生合成が抑制された植物でもあり、それにより、続けて、ニコチンまたはノルニコチン、アナバシン、及びアナタビンを含むアルカロイドの生産が低減化された植物を得ることができる。
【0056】
一具体例において、前記植物は、QPT2s及びQPT2tが同時に突然変異を誘導された植物でもある。
【0057】
一態様は、配列番号9から19の塩基配列を含むポリヌクレオチドからなる群のうちから選択される1以上の第1ポリヌクレオチド、または前記1以上の第1ポリヌクレオチドが転写された第2ポリヌクレオチドを含むCRISPR/Casシステムを提供する。
【0058】
前記CRISPR/Cas9システムは、Cas(CRISPR associated protein )タンパク質、またはCasタンパク質をコーディングする遺伝子と、NLS(Nuclear Localization Signal)タンパク質、またはNLSタンパク質をコーディングする遺伝子と、を含むものでもある。
【0059】
前記CRISPR/Cas9システムに含まれるCasタンパク質は、例えば、Cas1、Cas1B、Cas2、Cas3、Cas4、Cas5、Cas6、Cas7、Cas8、Cas9(Csn1及びCsx12との知られる)、Cas10、Csy1、Csy2、Csy3、Cse1、Cse2、Csc1、Csc2、Csa5、Csn2、Csm2、Csm3、Csm4、Csm5、Csm6、Cmr1、Cmr3、Cmr4、Cmr5、Cmr6、Csb1、Csb2、Csb3、Csx17、Csx14、Csx10、Csx16、CsaX、Csx3、Csx1、Csx15、Csf1、Csf2、Csf3、Csf4、Cpf1、またはその相同体またはその変異体を含むものでもある。
【0060】
また、前記CRISPR/Casシステムは、植物細胞のQPT遺伝子またはQPTタンパク質の発現または活性が低減されるように、遺伝的に操作することにより、前記QPT遺伝子は、ニコチナ・シルウェストリス(Nicotiana sylvestris)に由来するQPT遺伝子(NtQPTs)、及びニコチナ・トメントシフォルミス(Nicotiana tomentosiformis)に由来するQPT遺伝子(NtQPTt)、またはNtQPTsとNtQPTtとの組み合わせでもある。具体的には、前記NtQPTsは、QPT2sでもあり、前記NtQPTtは、QPT2tでもある。
【0061】
他の態様は、前記CRISPR/Casシステムを含むノルニコチン、アナタビン及びアナバシンからなる群のうちから選択される少なくとも1つのアルカロイド生合成抑制用及びニコチン生合成抑制用の組成物を提供する。
【0062】
前記組成物は、配列番号9から19の塩基配列を含むポリヌクレオチドからなる群のうちから選択される少なくとも1以上のポリヌクレオチドをガイドRNAとして含むCRISPR/Casシステムを含んでおり、QPT2s遺伝子及びQPT2t遺伝子に同型接合突然変異を誘導することができ、ニコチンの生合成が効率的に抑制され、ニコチン以外に、ノルニコチン、アナバシン、アナタビンを含むアルカロイドも、約68%以上低減させることができる。従って、前記組成物は、発ガン物質であるTSNAs(NNK、NNN、NAB、NAT)まで抑制することができる。
【0063】
さらに他の態様は、前記CRISPR/Casシステムを含むQPT遺伝子操作用組成物を提供する。
【0064】
前記操作は、QPT2s遺伝子及びQPT2t遺伝子のいずれにおいても、同型接合突然変異の誘導でもある。
【0065】
前記CRISPR/Cas9システムに含まれるCasタンパク質は、例えば、Cas1、Cas1B、Cas2、Cas3、Cas4、Cas5、Cas6、Cas7、Cas8、Cas9(Csn1及びCsx12としても知られる)、Cas10、Csy1、Csy2、Csy3、Cse1、Cse2、Csc1、Csc2、Csa5、Csn2、Csm2、Csm3、Csm4、Csm5、Csm6、Cmr1、Cmr3、Cmr4、Cmr5、Cmr6、Csb1、Csb2、Csb3、Csx17、Csx14、Csx10、Csx16、CsaX、Csx3、Csx1、Csx15、Csf1、Csf2、Csf3、Csf4、Cpf1、その相同体またはその変異体を含むものでもある。
【0066】
さらに他の態様は、前記CRISPR/Casシステムを含むノルニコチン、アナタビン及びアナバシンからなる群のうちから選択される少なくとも1つのアルカロイド生合成抑制、ニコチン生合成抑制及び/またはQPT遺伝子操作の用途を提供する。
【0067】
さらに他の態様は、配列番号9から19の塩基配列を含むポリヌクレオチドからなる群のうちから選択される1以上の第1ポリヌクレオチド、または前記1以上の第1ポリヌクレオチドが転写された第2ポリヌクレオチドを含むCRISPR/Casシステムを含むベクターを植物細胞に導入させる段階を含むニコチン生合成が抑制された植物細胞の製造方法を提供する。
【0068】
さらに他の態様は、配列番号9から19の塩基配列を含むポリヌクレオチドからなる群のうちから選択される1以上の第1ポリヌクレオチド、または前記1以上の第1ポリヌクレオチドが転写された第2ポリヌクレオチドを含むCRISPR/Casシステムを含むベクターを植物細胞に導入させる段階を含む植物細胞のQPT遺伝子操作方法を提供する。
【0069】
前記方法を介して製造されたニコチン生合成が抑制された植物細胞は、栽培タバコである。
【0070】
また、前述の方法を介するQPT遺伝子操作方法を活用すれば、栽培タバコ植物細胞のNtQPTs遺伝子及び/またはNtQPTt遺伝子を効果的に抑制し、QPTタンパク質の発現または活性が低減され、ニコチンまたはノルニコチン、アナタビン、及びアナバシンからなる群のうちから選択される少なくとも1つのアルカロイド生合成を抑制することができる。
【0071】
重複する内容は、本明細書の複雑性を考慮して省略し、本明細書において、取り立てて定義されていない用語は、本発明が属する技術分野において一般的に使用される意味を有する。
【発明の効果】
【0072】
一態様により、植物細胞内QPT遺伝子を遺伝的に操作すれば、ニコチンの生合成が効率的に抑制され、ニコチンが約97%以上低減され、ニコチン以外に、アルカロイド(ノルニコチン、アナバシン、アナタビン)も、およそ68%以上低減されるために、発ガン物質であるTSNAs(NNK、NNN、NAB及びNAT)も低減された植物細胞を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
図1】タバコ植物体で起こるニコチン生合成経路を示した図である。
図2】NCBI gene bankに公開されたQPT遺伝子を比較した結果を示した図である。
図3】遺伝子キャリア作製に使用した植物発現遺伝子キャリア(V2k_GE)を示した図である。
図4】植物発現最終遺伝子キャリア及び発現ブロックを示した図であり、具体的には、(A)は、遺伝子キャリア植物用発現ベクターであるV2k_GE_Q2を示したものであり、(B)は、遺伝子ハサミ発現ブロックである最終遺伝子キャリアに含まれた遺伝子ハサミ及び遺伝子ハサミガイドのスキームを示した図である。
図5】段階別植物組織培養写真を示した図であり、具体的には、(A)は、葉組織を切り、アグロバクテリウムと共に培養して形質転換させる段階であり、(B)は、カルス分化及びシュート分化を誘導する段階、(C)は、ルート分化を誘導する段階、(D)は、分化が完了した小植物体状態を示す。
図6】野生型(A)と、個体番号9番突然変異型(B)とのQPT2_syl遺伝子塩基配列分析プロファイルを示した図である(単一塩基が挿入(insertion)された部分は、赤色四角形で表示される)。
図7】F1世代突然変異植物体の導入遺伝子存在いかん確認のためのリアルタイムPCR結果を示した図である。
図8】バーレー種対照群(WT)と、突然変異型(MT)とのQPTs遺伝子突然変異様相を示した図であり、具体的には、DNA塩基配列(上)をアミノ酸配列(下)で変換して正常ではなく早く終止コドン(別表)が作われるところを確認した図である。
図9】バーレー種対照群(WT)と突然変異型(MT)とのQPTt遺伝子突然変異様相を示した図であり、具体的には、DNA塩基配列(上)をアミノ酸配列(下)に変換し、正常ではなくいち早く終止コドン(別表)が作われるところを確認した図である。
【発明を実施するための形態】
【0074】
以下、本発明について、実施例を介し、さらに詳細に説明する。しかしながら、それら実施例は、本発明について例示的に説明するためのものであり、本発明の範囲は、それら実施例に限定されるものではない。
【実施例
【0075】
1.CRISPR/Cas9システムを利用した低ニコチンタバコ生産
(1)ニコチン生合成遺伝子選定及び遺伝子キャリア作製
タバコ内には、QPT1遺伝子及びQPT2遺伝子が存在し、ニコチン生合成誘導信号である傷あるいはジャスモン酸メチル(ジャスモン酸メチル)処理に反応して発現される遺伝子は、QPT2と知られている。
【0076】
それにより、低ニコチン植物細胞を製造するために、ニコチン生合成関連遺伝子QPT(Quinolinic acid Phosphoribosyl Transferase)を含む2種の遺伝子であるQPT1及びQPT2を選定した。
【0077】
(2)ニコチン生合成関連遺伝子(NtQPT1及びNtQPT2)塩基配列の確認
研究対象植物体であるバーレー(burley)種タバコ(KB108)内のNtQPT遺伝子塩基配列を確認するために、NCBI(National Center for Biotechnology Information)データベースに公開された塩基配列情報を基に、各遺伝子に特異的なプライマーを作製し、遺伝子増幅反応(PCR:polymerase chain reaction)を行い、塩基配列分析サービスを依頼した。各遺伝子に特異的なプライマーの配列及びPCR条件は、下記表1に示した。
【0078】
【表1】
【0079】
KB108品種のエクソン1~エクソン8を含むgDNA領域を増幅し、塩基配列を分析した結果、公開された塩基配列とほとんど一致することを確認することができた。具体的には、ニコチナ・シルウェストリス(Nicotiana sylvestris)に由来すると確認されるQPT2遺伝子(以下、QPT2s)遺伝子と、ニコチナ・トメントシフォルミス(Nicotiana tomentosiformis)に由来すると確認されるQPT2遺伝子(以下、QPT2t)との塩基配列情報を確認することができた。具体的には、NCBI(National Center for Biotechnology Information)GenBankデータベースに公開されたタバコ(N.Tabacum)のNtQPT1(AJ748262)、NtQPT2(AJ748263)遺伝子の塩基配列情報を下記表2に示した。
【0080】
【表2】
【0081】
それにより、前記NtQPT1遺伝子及び前記NtQPT2遺伝子の塩基配列を利用し、NCBI参照配列(reference sequence)と相同遺伝子があるか否かということを比較し、その結果を介して確認した相同性が高い塩基配列リストを下記表3に示した。
【0082】
【表3】
【0083】
前記表3において確認したように、参照配列と類似度が高い8個配列を確認し、それを選別した。表2の公開されたQPT遺伝子配列と、表3の選別された8種のQPT遺伝子配列とのCDS部位塩基配列の相同性類似度を比較し、その結果を表4及び図2に示した。
【0084】
【表4】
【0085】
前述の表4及び図2において確認したように、NCBI GenBankに登録されているNtQPT1(AJ748262)とNtQPT2(AJ748263)は、ニコチナ・シルウェストリス(N.Sylvestri)sのQPT1、QPT2遺伝子とそれぞれ99%以上の相同性を示すので、N.sylvestrisに由来することを確認し、ニコチナ・トメントシフォルミス(N.Tomentosiformis)に由来するQPT1とQPT2との塩基配列は、GenBankから抜けているということが分かった。また、Nicotiana tabacum(TN90)には、親世代のN.sylvestris、N.Tomentosiformisにそれぞれ由来するQPT1s(遺伝子ID:107825849)、QPT1t(遺伝子ID:107829123)、QPT2s(遺伝子ID:104240014)、QPT2t(遺伝子ID:107829122)遺伝子が存在することを確認した。
【0086】
(3)遺伝子ハサミブロックデザイン及びキャリア組み換え
QPT目標遺伝子だけ特異的に切断することができる遺伝子固有部位11ヵ所選定し、1つの遺伝子キャリア内の3つの部位を切断することができる遺伝子キャリアを作製した。具体的には、NtQPT遺伝子のエクソン1からエクソン8の領域に切断位置を選定した。また、NtQPT2s遺伝子とNtQPT2t遺伝子とのいずれをも切断することができる共通部位を選定し、それを下記表5に示した。
【0087】
【表5】
【0088】
また、作製した植物発現遺伝子キャリア(V2k_GE、配列番号20)を図3に示し、前記遺伝子キャリア内に遺伝子ハサミキャリアをクローニングし、最終遺伝子キャリア(V2k_GE_Q2、配列番号21)を作製し、それを図4の(A)に、前記最終遺伝子キャリアに含まれた遺伝子ハサミ、及び遺伝子ハサミガイドスキームを図4の(B)に示した。pBI121は、E.coliとアグロバクテリウムとで複製可能なバイナリーベクターであり、植物形質転換に汎用されている。従って、具体的には、図4の(A)及び(B)で確認されているように、pBI121をHindIIIとEcoRIとに切断し、CRISPR/Cas9システムに必要なGE_blockをクローニングすることができるように準備した。GE_blockは、順番通り、CaMV 35S promoter with dual enhancer(P_35Sd)、TEV leader sequence(TEVls)、Cas9ブロックをクローニングするためのMCS(Multi Cloning Site)、CaMV35S terminator(T_35S)、リンカーシーケンス、及びsgRNAブロックをクローニングするためのMCSによって構成されており、両端にはHindIIIとEcoRIとの認識塩基配列が追加されている。GE_blockの各ブロックは、DNA合成で準備され、順次にクローニングして完成された。HindIIIとEcoRIとに切断されたpBI121とGE_blockとをライゲーションし、V2k_GEを作製した。
【0089】
Cas9_blockは、Cas9 coding sequence(CDS)、C-terminus nuclear localization sequence(NLS)によって構成され、両末端には、BamHIとSacIとの認識塩基配列が追加されたブロック(Cas9_block);並びにsgRNAが発現されうるブロック(sgRNA_QPT)としての、U6 promoter(P_U6)及びsgRNA、poly Tによって構成されたブロック、U6 promoter(P_U6)及びsgRNA、そしてpoly Tで構成されたブロック;によってなっている。QPT遺伝子に特異的に結合することができる11種類のsgRNAブロックをoverlap extension PCR技法を介し、1つの連続したDNAに連結し、sgRNA_QPTを完成させた。sgRNA_QPTの両端には、SalI、SpeIの認識塩基配列が存在する。
【0090】
BamHIとSacIとに切断されたV2k_GEとCas9_blockとを、ライゲーション反応を介して繋げ付けた後、SalIとSpeIとに切断し、sgRNA_QPTを挿入し、V2k_GE_Q2を作製した。
【0091】
(4)遺伝子伝達微生物(アグロバクテリウム)内組み換えキャリアの導入
凍結溶解法(freeze-thaw method)実験法により、植物用キャリアを、アグロバクテリウムLBA4404 strainに形質転換させた。
【0092】
具体的には、アグロバクテリウムを、YEP液体培地(酵母エキス(yeast extract)10g、bacto peptone 10g、NacCl 5g)に接種した後、16時間、28℃、250rpm条件で振盪培養した。培養液を、3,000gの速度及び4℃条件でもって、20分間遠心分離して細胞を分離させ、20mM CaClに浮遊させ、コンピテントセルを作った。コンピテントセル100μLに、プラスミドDNA(植物用キャリア)5μLを添加した後、液体窒素において、5分間、37℃温度で5分間培養した。YEP液体培地1mLを添加し、28℃、250rpm条件でもって、2時間振盪培養した。100μL培養液を、カナマイシン100mg/Lが含まれたYEP固体培地にスプレッディングした後、28℃温度で3日間培養した。単一コロニーをそれぞれ継代培養した後、プラスミドDNAが形質転換されたか否かということをPCRを介して確認した。
【0093】
(5)植物組織培養
1)植物形質転換
アグロバクテリウムをYEP液体培地(70mg/Lカナマイシン、70mg/Lストレプトマイシンを含む)、28℃条件で24時間培養した。
【0094】
発芽後1ヵ月経った植物体の葉を、70%エタノールとラックスとで滅菌した後、3mmX3mmサイズ切片に切り、MS液体培地が5ml込められているペトリディッシュに切片を載せた後、アグロバクテリウム培養液1mLを等しく振り撒き、25℃、暗条件で48時間培養させることにより、タバコ葉切片を準備した。
【0095】
2)植物組織培養
葉切片を200μg/mlセフォタキシムが含まれた滅菌蒸溜水で4回洗浄した後、シューティング培地(MS培地、2mg/L BA、0.1mg/L NAA、200mg/Lセフォタキシム、100mg/Lカナマイシンを含む)に浸し置き、25℃、16時間/8時間の光周期条件で培養し、2週ごとに新たな培地に継代培養し、洗浄培地及び選択培地に浸し置いた。
【0096】
また、葉切片に分化されたシュートを切断し、ルーティング培地(200mg/Lセフォタキシムが含まれたMS培地)に浸し置き、25℃、16時間/8時間の光周期条件で培養することにより、ルーティング培地に浸し置いた。
【0097】
前述のようなアグロバクテリウム媒介形質転換(mediated transformation)方法により、タバコ葉組織を形質転換させた後(図5の(A))、カルス分化(図5の(B))、葉分化(図5の(C))、根分化(図5の(D))が順に良好になされたことを確認し、組織培養を介し、葉、茎、根を備えた組織培養小植物体個体57個体を確保した。
【0098】
(6)F世代からF世代の突然変異型選別
1)目標遺伝子内突然変異発生いかん、及びその様相の確認
健康な葉組織100mgをサンプリングし、均一に粉砕した後、シリカカラムを利用する商用化キット(例:Nucleo spin 96 plant II、Macherey Nagel、ドイツ)を利用してゲノム(genomic)DNAを抽出して精製した。葉組織からgDNAを抽出/精製した後、PCRを介し、目標遺伝子部位を増幅し、塩基配列分析を行った。
【0099】
具体的には、組織培養体のQPT2s遺伝子、QPT2t遺伝子をそれぞれ増幅し、塩基配列を分析し、ガイド配列であるsg1からsg11を介する突然変異発生いかん、及びその様相を確認し、それを表6に示した。
【0100】
【表6】
【0101】
前記表6において 確認されるように、sg5 sgRNA結合部位の塩基配列において、突然変異が頻繁に誘発されるということを確認した。それ以外に、sg7及びsg11の順序で、突然変異が誘発されることを確認した。その後、QPT2遺伝子に突然変異が誘導された組織培養体8種を選別完了し、前記組織培養体8個体のQPT(QPT2s及びQPT2t)遺伝子内突然変異様相を下記表7に示し、野生型(図6の(A))と、表7の個体番号9番突然変異型(図6の(B))とのQPT2s遺伝子塩基配列分析プロファイルを図6の(A)及び(B)に示した。
【0102】
【表7】
【0103】
2)植物体順化(acclimatization)
突然変異が確認された組織培養体8個体を上土が込められた植木鉢に移植し、温室で栽培した。
【0104】
3)F世代種子確保、及び導入遺伝子除去の確認
CRISPR/Cas9発現のために導入された遺伝子ブロックを除去するために、自家受精を介し、F世代種子を確保した。前記組織培養体のうち、個体番号9番植物の種子を播種して育てた192区トレイに播種し、30日間育てた後、葉を採取し、均一に粉砕した後、シリカカラムを利用する商用化キット(例:Nucleo spin 96 plant II、Macherey Nagel、ドイツ)を利用し、ゲノムDNAを抽出して精製した。CaMV(cauliflower mosaic virus)35Sプローモーター存在いかんを、TaqManプローブ方式のリアルタイムPCR技法を利用し、外部導入遺伝子が除去された植物体を選別した。
【0105】
前記組織培養体のうち、個体番号9番植物の種子を播種して育てた192個のF世代植物体のp35Sプローモーター存在いかんを、リアルタイムPCRで確認し、それを図7に示した。図7において確認されるように、48個の植物体において、p35Sプローモーターがないことを確認した。
【0106】
4)最終選別されたF世代植物体のQPT同型接合突然変異型の選別
前記実施例(6)-3)を介して突然変異が示されたp35S-植物体のうち、目標遺伝子であるQPT2s遺伝子及びQPT2t遺伝子に、それぞれ同型接合突然変異(homozygous mutation)が誘発された植物体MT_QPT2st_F1を最終選別した。その後、最終選別された植物体のQPT2s遺伝子及びQPT2t遺伝子に係わる突然変異様相を分析し、それを表8に示した。
【0107】
前記分析方法により、QPT2遺伝子の突然変異様相を確認するために使用したプライマーは、前記表1に示されている。具体的には、QPT2s遺伝子を増幅するために、表1のF_Q2sプライマー、R_Q2sプライマーを使用し、QPT2t遺伝子を増幅するために、表1のF_Q2tプライマー、R_Q2tプライマーを使用した。また、塩基配列分析のために、共通してR1q_Q2プライマーを利用し、その場合、使用されたR1q_Q2の塩基配列は、GGCCACATATTAGGTAATTACA(配列番号32)であった。
【0108】
併せて、バーレー種対照群(WT)と突然変異型MT_QPT2st_F1とのQPT2s遺伝子突然変異様相を図8に示し、バーレー種対照群(WT)と突然変異型MT_QPT2st_F1とのQPT2t遺伝子突然変異様相を図9に示した。
【0109】
【表8】
【0110】
図8及び図9において確認されるように、MT_QPT2st_F1のQPT2s遺伝子とQPT2t遺伝子とのDNA配列を、野生型バーレー種タバコの塩基配列と整列させ、さらにそれをアミノ酸配列に変換し、QPT2s及びQPT2tのアミノ酸配列と比較した結果、突然変異型(MT_QPT2st_F1)は、正常ではない形で終止コドンがいち早く生成されることを確認した。
【0111】
(7)最終突然変異型遺伝型の分析
前述の実施例を介して選別されたF1植物体(MT_QPT2st_F1)を、野生型KB108品種と交配させ、F交雑品種を得た。その後、それを自家交配させて得られたF植物体のうち、QPT2s遺伝子にだけ突然変異が誘導された植物、QPT2t遺伝子にだけ突然変異が誘導された植物、QPT2s遺伝子とQPT2t遺伝子とのいずれにも突然変異が誘導された植物をそれぞれ選別し、F世代からF世代の最終選別された突然変異型の突然変異様相を下記表9に整理した。
【0112】
【表9】
【0113】
2.最終選別されたF世代のQPT突然変異型ニコチン含量分析
QPT2遺伝子において、どの遺伝子を非活性化させる場合、タバコのニコチン及びアルカロイドの含量まで具体的に低減させることができるかということを確認するための実験を行った。特に、前記実施例で製造されたF植物体は、それぞれQPT2s遺伝子だけに突然変異が誘導された植物体、QPT2t遺伝子だけに突然変異が誘導された植物体、及びQPT2s遺伝子とQPT2t遺伝子とのいずれにも突然変異の誘導された植物体がいずれも存在するので、最終選別されたMT_QPT2s、MT_QPT2t及びMT_QPT2stのニコチン及びアルカロイドの含量を確認した。
【0114】
温室環境において60日間栽培した植物体の花軸を切った後、2週後、F世代植物体の全ての葉を収穫した。収穫された葉を、65℃ドライオーブンで48時間乾燥させた後、ガラスビードが入れられた容器に入れ、ジャイロシェーカーを利用して粉砕した。その後、GC/MS分析を介するニコチン含量及びアルカロイドの含量分析を行い、その結果を表10に示した。
【0115】
【表10】
【0116】
前記表10において確認されるように、KB108(野生型(WT))と、前記3種突然変異型とのニコチン含量を定量分析した結果、野生型(WT)のニコチン含量は、乾燥葉重量基準平均24.55mg/gであり、QPT2sだけの突然変異型試料は、ニコチン含量低減が示されず、QPT2tだけの突然変異型試料は、野生型より若干減った平均20.12mg/gと示されることを確認した。一方、QPT2s及びQPT2tに突然変異が示されたMT_QPT2stにおいては、ニコチンが平均0.6mg/gと、確実にニコチン含量が低減されることを確認した。
【0117】
また、ニコチン以外のアルカロイドにおいても、野生型対比で、QPT2s及びQPT2tに突然変異が示されたMT_QPT2stにおいては、アナバシン、アナタビンは、検出限界値未満に示され、ノルニコチンも、確実に含量が低減されたことを具体的に確認した。
図1
図2
図3
図4
図5(A)】
図5(B)】
図5(C)】
図5(D)】
図6(A)】
図6(B)】
図7
図8
図9
【配列表】
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