(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】画像化および内部放射線療法のためのPSMAリガンド
(51)【国際特許分類】
A61K 51/04 20060101AFI20241016BHJP
A61K 31/33 20060101ALI20241016BHJP
A61K 47/55 20170101ALI20241016BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20241016BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
A61K51/04 200
A61K51/04 100
A61K31/33
A61K47/55
A61P35/00
A61P43/00 105
(21)【出願番号】P 2023113523
(22)【出願日】2023-07-11
(62)【分割の表示】P 2020526146の分割
【原出願日】2018-12-11
【審査請求日】2023-08-08
(32)【優先日】2017-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】504150162
【氏名又は名称】テクニシェ ユニバーシタット ミュンヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(72)【発明者】
【氏名】ウェスター,ハンス-ユルゲン
(72)【発明者】
【氏名】シュミット,アレクサンデル
(72)【発明者】
【氏名】パーツィンガー,マラ
【審査官】北村 悠美子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/165473(WO,A1)
【文献】特表2017-518971(JP,A)
【文献】Stephanie Robu et al.,THE JOURNAL OF NUCLEAR MEDICINE,2017年,Vol.58, No.2,pp.235-242
【文献】Kristell L.S. Chatalic et al.,Theranostics,2016年,Vol.6, Issue 6,pp.849-861
【文献】Cindy J. Choy et al.,Theranostics,2017年,Vol.7, Issue 7,pp.1928-1939
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 51/00-51/12
A61K 49/00-49/22
A61K 47/00-47/69
C07D 257/00-257/12
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(If)の化合物またはその薬学的に許容される塩を含む薬学的組成物
【化1】
(式中:
X
3は、アミド結合であり;
R
Mは、キレート化された非放射性または放射性の陽イオンを任意選択で含有するキレート基を含む標識基であり;
R
4は、
【化2】
の構造を有する基であり、ここでR
5Bは-NH2であり、sは1であり;
R
9Aは、-COOHで置換されたC2~C10アルカンジイルであり;
R
10Aは、
【化3】
の構造を有するEDS基を有するC2~C10アルカンジイルであり;
R
11Aは、-COOHで置換されたC2~C10アルカンジイルである)。
【請求項2】
R
M-X
3が式(M-2)
【化4】
の基である、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項3】
化合物が放射性の陽イオンを含む、請求項1または2に記載の薬学的組成物。
【請求項4】
化合物が
177Luまたはその陽イオンを含む、請求項1または2に記載の薬学的組成物。
【請求項5】
化合物が
225Acまたはその陽イオンを含む、請求項1または2に記載の薬学的組成物。
【請求項6】
化合物が
161Tbまたはその陽イオンを含む、請求項1または2に記載の薬学的組成物。
【請求項7】
化合物が
212Pbまたはその陽イオンを含む、請求項1または2に記載の薬学的組成物。
【請求項8】
【化5】
の構造を有する化合物またはその薬学的に許容される塩を含む薬学的組成物であって、化合物が
225Acまたはその陽イオンでキレート化されている、前記薬学的組成物。
【請求項9】
【化6】
の構造を有する化合物またはその薬学的に許容される塩を含む薬学的組成物であって、化合物が
161Tbまたはその陽イオンでキレート化されている、前記薬学的組成物。
【請求項10】
【化7】
の構造を有する化合物またはその薬学的に許容される塩を含む薬学的組成物であって、化合物が
212Pbまたはその陽イオンでキレート化されている、前記薬学的組成物。
【請求項11】
1つ以上の薬学的に許容される担体、賦形剤および/または希釈剤をさらに含む、請求項1または2に記載の薬学的組成物。
【請求項12】
がんの診断および/または処置のための医薬の製造のための、請求項1または2に記載の薬学的組成物の使用。
【請求項13】
がんが前立腺がんである、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
血管新生/血管形成の診断および/または処置のための医薬の製造のための、請求項1または2に記載の薬学的組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、前立腺特異的膜抗原(PSMA)が関与する疾患の画像化および内部放射線療法に関する。PSMAに結合またはこれを阻害し、さらに放射標識に適している少なくとも1つの部分を有する化合物が提供される。このような化合物の医学的使用も提供される。
【0002】
本明細書において、特許出願および製造者の説明書を含む、いくつかの文書が引用される。これらの文書の開示は、本発明の特許性に関連するとみなされないが、ここでその全体を参照により組み込む。より具体的には、すべての関連する文書は、各個別の文書が具体的にかつ個別に参照により組み込まれることを示すように、同程度に参照により組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
前立腺がん(PCa)は、この数十年にわたり依然として、高い割合で生存率が不良である、男性における最も一般的な悪性疾患である。前立腺特異的膜抗原(PSMA)またはグルタミン酸カルボキシペプチダーゼII(GCP II)は、前立腺がんにおけるその過剰発現に起因して(Silver,D.A.ら、Prostate-specific membrane antigen expression in normal and malignant human tissues.Clinical Cancer Research、1997.3(1):81~85ページ)、PCaの内部放射線療法および画像化のための高感度な放射標識剤の開発にとっての優れた標的としてのその適格性を示した(Afshar-Oromieh,A.ら、The diagnostic value of PET/CT imaging with the 68Ga-labelled PSMA ligand HBED-CC in the diagnosis of recurrent prostate cancer. European journal of nuclear medicine and molecular imaging、2015.42(2):197~209ページ;Benesova,M.ら、Preclinical Evaluation of a Tailor-Made DOTA-Conjugated PSMA Inhibitor with Optimized Linker Moiety for Imaging and Endoradiotherapy of Prostate Cancer. Journal of Nuclear Medicine、2015.56(6):914~920ページ;Robu,S.ら、Preclinical evaluation and first patient application of 99mTc-PSMA-I&S for SPECT imaging and radioguided surgery in prostate cancer. Journal of Nuclear Medicine、2016:jnumed. 116.178939ページ;Weineisen,M.ら、 Development and first in human evaluation of PSMA I&T-A ligand for diagnostic imaging and endoradiotherapy of prostate cancer. Journal of Nuclear Medicine、2014.55(補遺1):1083~1083ページ;Rowe,S.ら、PET imaging of prostate-specific membrane antigen in prostate cancer: current state of the art and future challenges. Prostate cancer and prostatic diseases、2016;Maurer,T.ら、Current us
e of PSMA-PET in prostate cancer management. Nature Reviews Urology、2016)。前立腺特異的膜抗原は、その触媒中心が2つの亜鉛(II)イオンを架橋ヒドロキシド(hydroxido)リガンドとともに含む、細胞外ヒドロラーゼである。前立腺特異的膜抗原は、転移性およびホルモン不応性の前立腺癌において非常に上方制御されているが、その生理学的な発現は、腎臓、唾液腺、小腸、脳においても、および、程度は低いが健康な前立腺組織においても報告されている。腸において、PSMAは、プテロイルポリ-γ-グルタミン酸をプテロイルグルタミン酸(葉酸)へと変換することにより、葉酸の吸収を促進する。脳において、PSMAは、N-アセチル-Lアスパルチル-L-グルタミン酸(NAAG)をN-アセチル-L-アスパラギン酸およびグルタミン酸に加水分解する。正常および病的な前立腺におけるPSMAの酵素機能は、明らかにされていない。
【0004】
PSMA標的化分子は、通常、P1’グルタミン酸部分(Machulkin,A.E.ら、Small-molecule PSMA ligands. Current state, SAR and perspectives. Journal of drug targeting、2016:1~15ページ)と連結した(尿素(Zhou,J.ら、NAAG peptidase inhibitors and their potential for diagnosis and therapy. Nature Reviews Drug Discovery、2005.4(12):1015~1026ページ)、ホスフィネートまたはホスホルアミデートのような)亜鉛結合基を包含する結合ユニットを含み、結合ユニットは、PSMAへの高い親和性および特異性を保証し、典型的にエフェクター官能基とさらに連結されている。エフェクター部分は、より可動性であり、ある程度構造修飾に対して耐性である。PSMAの入り口のトンネルは、リガンド結合のために重要である2つの異なる顕著な構造特性を内包する。1つ目は、入り口のトンネルの壁の正に荷電した領域であり、PSMAのP1部位において負に帯電した官能基を選好することについての構造的な説明となるアルギニンパッチである。結合すると、アルギニン側鎖の協奏的な位置変化は、いくつかの尿素ベースの阻害剤のヨード-ベンジル基を受容することが示された、第2の重要な構造であるS1疎水性アクセサリーポケットの開口をもたらすことができ、これはこのように、そのPSMAに対する高い親和性に寄与する(Barinka,C.ら、Interactions between Human Glutamate Carboxypeptidase II and Urea-Based Inhibitors: Structural Characterization†.Journal of medicinal chemistry、2008.51(24):7737~7743ページ)。
【0005】
Zhangらは、二座結合様式を利用することのできるPSMAの遠隔結合部位を発見した(Zhang,A.X.ら、A remote arene-binding site on prostate specific membrane antigen
revealed by antibody-recruiting small molecules.Journal of the American Chemical Society、2010.132(36):12711~12716ページ)。いわゆるアレーン結合部位は、Arg463、Arg511およびTrp541の側鎖により形成される単純な構造モチーフであり、PSMA入口蓋部の一部である。遠位の阻害剤部分によるアレーン結合部位への結合は、アビディティー作用に起因する、PSMAに対する阻害剤親和性の実質的な増大をもたらすことができる。PSMA I&T(
図1を参照)は、この方法でPSMAと相互作用することを意図して開発されたものではあるが、それにもかかわらず利用可能な結合様式の結晶構造解析は存在しない。Zhangらによると、必要な特性は、PSMAの入口蓋部の開構造を促進し、それによりアレーン結合部位の近接性を可能にする、リンカーユニット(PSMA I&Tの事例においてはスベリン酸)である。リンカーの構造組成は、腫瘍標的化および生物学的活性に対する、ならび
に造影および薬物動態の画像化に対する有意な影響を有することが、さらに示された(Liu,T.ら、Spacer length effects on in vitro
imaging and surface accessibility of fluorescent inhibitors of prostate specific membrane antigen.Bioorganic & medicinal chemistry letters、2011.21(23):7013~7016ページ)。これらは、高画質および有効な標的化された内部放射線療法の両方に重要である性質である。
【0006】
2つのカテゴリーのPSMA標的化阻害剤が、臨床現場において現在使用される。一方は、PSMA I&Tまたは関連する化合物のような放射性核種の錯体化のためのキレートユニットを伴うトレーサーである(Kiess,A.P.ら、Prostate-specific membrane antigen as a target for cancer imaging and therapy. The quarterly journal of nuclear medicine and molecular imaging: official publication of the
Italian Association of Nuclear Medicine
(AIMN)[および]the International Association of Radiopharmacology(IAR)、[および]Section
of the Society of...の公式刊行物、2015.59(3):241ページ)。他方は、標的化ユニットおよびエフェクター分子を含む小分子である。使用する放射性核種/ハロゲンにより、放射標識PSMA阻害剤は、画像化または内部放射線療法に使用することができる。画像化のためのキレート剤を有する小分子阻害剤の中で、選択的PSMA画像化のために最も高頻度に使用される薬剤は、PSMA HBED-CC(Eder,M.ら、68Ga-complex lipophilicity and the targeting property of a urea-based PSMA inhibitor for PET imaging.Bioconjugate chemistry、2012.23(4):688~697ページ)、PSMA-617(Benesova,M.ら、Preclinical Evaluation of a Tailor-Made DOTA-Conjugated PSMA Inhibitor with Optimized Linker Moiety
for Imaging and Endoradiotherapy of Prostate Cancer.Journal of Nuclear Medicine、2015.56(6):914~920ページ)およびPSMA I&T(Weineisen,M.ら、Development and first in human evaluation of PSMA I&T-A ligand for diagnostic imaging and endoradiotherapy of prostate cancer.Journal of Nuclear Medicine、2014.55(補遺1):1083~1083ページ)である。PSMA HBED-CCまたはPSMA-11は、最初のPSMA阻害剤の1つであり、キレート剤HBED-CCでは治療適用が不可能であるため、画像化のために現在使用される。しかし、より高い画像解像度およびサイクロトロンにおける大規模な産生の可能性をもたらす、より長い半減期、低い陽電子エネルギー等のPET画像化のための18Fの独自の物理的特徴および利点のために、いくつかのグループは、PCa画像化のための18F標識尿素ベースの阻害剤の開発に注目した。18F標識尿素ベースのPSMA阻害剤[18F]DCFPylは、原発および転移性PCaの検出において見込みのある結果(Rowe,S.P.ら、PSMA-Based [18F] DCFPyL PET/CT Is Superior to Conventional Imaging for Lesion Detection in Patients with Metastatic
Prostate Cancer.Molecular Imaging and B
iology、2016:1~9ページ)、および、比較試験において、[68Ga]PSMA-HBED-CCに対する優越性を示した(Dietlein,M.ら、Comparison of [18F] DCFPyL and [68Ga] Ga-PSMA-HBED-CC for PSMA-PET imaging in patients with relapsed prostate cancer.Molecular Imaging and Biology、2015.17(4):575~584ページ)。
【0007】
PSMA DKFZ 617(Benesova,M.ら、Preclinical Evaluation of a Tailor-Made DOTA-Conjugated PSMA Inhibitor with Optimized Linker
Moiety for Imaging and Endoradiotherapy
of Prostate Cancer.Journal of Nuclear Medicine、2015.56(6):914~920ページ、Becker,A.ら、Nephro-and hepatotoxicity after radioligand therapy of metastatic castrate-resistant prostate cancer with 177Lu-PSMA-617.Journal of Nuclear Medicine、2016.57(補遺2):1430~1430ページ;Rahbar,K.ら、Response and tolerability of a single dose of 177Lu-PSMA-617 in patients with metastatic castration-resistant prostate cancer: a multicenter retrospective analysis.Journal of Nuclear Medicine、2016:jnumed.116.173757ページ)およびPSMA I&T(Weineisen,M.ら、Development and first in human evaluation of PSMA
I&T-A ligand for diagnostic imaging and
endoradiotherapy of prostate cancer.Journal of Nuclear Medicine、2014.55(補遺1):1083~1083ページ、Eiber,M.ら、Systemic radioligand therapy with 177Lu-PSMA I&T in patients with metastatic castration-resistant prostate cancer.Journal of Nuclear Medicine、2016.57(補遺2):61~61ページ;Schottelius,M.ら、[111 In] PSMA-I&T: expanding the spectrum of PSMA-I&T applications towards SPECT and radioguided surgery.EJNMMI research、2015.5(1):1ページ)は、臨床現場において前立腺がん患者の対症療法に適用される。放射性金属キレート化の可能性のある範囲が、とりわけ111In、177Lu、90Yおよび213Biを包含するため、キレートユニットDOTAおよび関連するDOTAGAは、画像化だけでなく、治療適用も可能にする。[111In]PSMA
I&Tは、放射線誘導手術で、悪性組織の切除の際に外科医を援助するために既に臨床的に実施された(Schottelius,M.ら、[111 In] PSMA-I&T:expanding the spectrum of PSMA-I&T applications towards SPECT and radioguided surgery.EJNMMI research、2015.5(1):1ページ)。同様に、近年開発され臨床的に試験されたPSMA阻害剤PSMA I&S(画像化および手術(imaging and surgery))は、非常に有望な結果を示した(Robu,S.ら、Preclinical evaluation and first patient application of 99mTc-PSMA-I&S
for SPECT imaging and radioguided surgery in prostate cancer.Journal of Nuclear Medicine、2016:jnumed.116.178939ページ)。
【0008】
[177Lu]PSMA I&Tを用いる内部放射線治療手法は、7.4GBqで最大4サイクルを受けた患者において、有効性、忍容性および高い安全性の可能性を示した。器官放射線について得られた線量測定値は、特に腎臓および唾液腺が、腫瘍病変に次いで最も高い線量を受けることを明らかにした。同様の放射線値が、PSMA DKFZ 617および[18F]DCFPyLについて示された(Rowe,S.P.ら、PSMA-Based [18F] DCFPyL PET/CT Is Superior to Conventional Imaging for Lesion Detection in Patients with Metastatic Prostate
Cancer.Molecular Imaging and Biology、2016:1~9ページ;Delker,A.ら、Dosimetry for 177Lu-DKFZ-PSMA-617:a new radiopharmaceutical
for the treatment of metastatic prostate cancer.European journal of nuclear medicine and molecular imaging、2016.43(1):42~51ページ;Kabasakal,L.ら、Pre-therapeutic dosimetry of normal organs and tissues of 177Lu-PSMA-617 prostate-specific membrane antigen (PSMA) inhibitor in patients with castration-resistant prostate cancer.European journal of nuclear medicine and molecular imaging、2015.42(13):1976~1983ページ;Yadav,M.P.ら、177Lu-DKFZ-PSMA-617 therapy in metastatic castration resistant prostate cancer: safety,efficacy, and quality of life assessment.European Journal of Nuclear Medicine and Molecular Imaging、2016:1~11ページ)。これらの上昇した数字は、PSMAの生理学的な発現(Silver,D.A.ら、Prostate-specific membrane antigen expression in normal and malignant human tissues.Clinical Cancer Research、1997.3(1):81~85ページ)および放射標識化合物の腎臓排出により説明可能である。投与後に時折発生する腎および血液学的毒性は通常可逆的であるが、特にPCa患者等の長期全生存率を有する患者における慢性的毒性についての当然の懸念である。したがって、所望されない放射線を減少させ、同時に腫瘍取込を増大させるための、好適な概念が必要とされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記の観点において、本発明の根底にある技術的課題は、PSMA標的化放射標識診断および治療の放射線誘導性の副作用を緩和させる手段および方法の供給においてみられる。さらなる技術的課題が、このような診断および治療の腫瘍取込を増大させるための手段および方法の供給においてみられる。より一般的には、技術的課題が、改善されたPSMA結合剤の供給においてみられる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
技術的課題は、添付の特許請求の範囲で概括される主題により解決され、以下でさらな
る詳細が説明される。
特に、本発明は、第1の態様において、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を提供する
【0011】
【0012】
(式中、
mは、2~6の整数、好ましくは2~4、より好ましくは2であり;
nは、2~6の整数、好ましくは2~4、より好ましくは2または4であり;
R1Lは、CH2、NHまたはO、好ましくはNHであり;
R2Lは、CまたはP(OH)、好ましくはCであり;
R3Lは、CH2、NHまたはO、好ましくはNHであり;
X1は、アミド結合、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合、チオエステル結合、尿素架橋、およびアミン結合から選択され、好ましくはアミド結合であり;
L1は、オリゴアミド、オリゴエーテル、オリゴチオエーテル、オリゴエステル、オリゴチオエステル、オリゴ尿素、オリゴ(エーテル-アミド)、オリゴ(チオエーテル-アミド)、オリゴ(エステル-アミド)、オリゴ(チオエステル-アミド)、オリゴ(尿素-アミド)、オリゴ(エーテル-チオエーテル)、オリゴ(エーテル-エステル)、オリゴ(エーテル-チオエステル)、オリゴ(エーテル-尿素)、オリゴ(チオエーテル-エステル)、オリゴ(チオエーテル-チオエステル)、オリゴ(チオエーテル-尿素)、オリゴ(エステル-チオエステル)、オリゴ(エステル-尿素)およびオリゴ(チオエステル-尿素)から選択される構造を有する、好ましくはオリゴアミドおよびオリゴ(エステル-アミド)から選択される構造を有する二価の連結基であり、
連結基はEDS基を有することができ;
X2は、アミド結合、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合、チオエステル結合、尿素架橋およびアミン結合から選択され、好ましくはアミド結合であり;
R2は、任意選択で置換されたアリール基または任意選択で置換されたアラルキル基であり、アリール基またはアラルキル基は、その芳香族環上で、ハロゲン、好ましくはIおよび-OHから選択される1つまたは複数の置換基で置換されていてもよく;
R3は、任意選択で置換されたアリール基または任意選択で置換されたアラルキル基であり、アリール基またはアラルキル基は、その芳香族環上で、ハロゲン、好ましくはIおよび-OHから選択される1つまたは複数の置換基で置換されていてもよく;
rは、0または1、好ましくは1であり;
pは、0または1であり;
qは、0または1であり;
好ましくはp+q=1であり;
R4は、アリール基およびEDS基から選択され;
X3は、アミド結合、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合、チオエステル結合、尿素架橋、アミン結合、および式
【0013】
【0014】
の基から選択され、式中、カルボニル基の印のついた結合は、X3をRMへと付着させ、他の印のついた結合は、X3を式(I)の化合物の残部へと付着させ;
好ましくはアミド結合であり;
RMは、キレート化された非放射性または放射性の陽イオンを任意選択で含有するキレート基を含む標識基であり;
ならびに、式中、EDS基は、式(I)の化合物中に少なくとも1回含有され、(E-1A)、(E-1B)、(E-2A)および(E-2B):
【0015】
【0016】
から選択される構造を有し、
式中、
【0017】
【0018】
は、EDS基を式(I)の化合物の残部へと付着させる結合に印をつけたものであり;
sは、1、2または3、好ましくは1または2、より好ましくは1であり;
tは、1、2または3、好ましくは1または2、より好ましくは2であり;
R5Aは、独立して、s>1では各出現について、好ましくは-NO2および-COOHから選択され、より好ましくは-COOHである電子吸引性置換基であり、R5Aと
フェニル環との間の結合は、s個のR5A基がフェニル環上の任意の位置でs個の水素原子を置換することを表し;
R5Bは、独立して、s>1では各出現について、式(E-1B)において示されるフェニル環に直接付着する原子において孤立電子対を有する置換基であり、置換基は、好ましくは-OHおよび-NH2から選択され、より好ましくは-NH2であり、R5Bとフェニル環との間の結合は、s個のR5B基がフェニル環上の任意の位置でs個の水素原子を置換することを表し;
R6Aは、独立して、t>1では各出現について、好ましくは-NO2および-COOHから選択され、より好ましくは-COOHである電子吸引性置換基であり、R6Aとフェニル環との間の結合は、t個のR6A基がフェニル環上の任意の位置でt個の水素原子を置換することを表し;ならびに
R6Bは、独立して、t>1では各出現について、式(E-1B)において示されるフェニル環に直接付着する原子において孤立電子対を有する置換基であり、置換基は、好ましくは-OHおよび-NH2から選択され、より好ましくは-OHであり、R6Bとフェニル環との間の結合は、t個のR6B基がフェニル環上の任意の位置でt個の水素原子を置換することを表す)。
【0019】
芳香族環が、電子吸引性置換基および孤立電子対を有する置換基から選択される高い電子密度を伴う1つまたは複数の置換基を有する、上記に示すようなEDS置換基の導入は、いくつかの予期しない利点をもたらす。これらの利点は、増大された親和性、改善された内部移行、上昇した腫瘍細胞保持、低下した非特異的結合、減少された腎臓蓄積および増大された腫瘍取込を含む。
【0020】
特に、前立腺以外の器官における非特異的取込の減少は、所望されない放射線の低減をもたらし、放射線誘導性の副作用を減少させる。
これらの利点を例示するために、より詳細が以降で論じられる、本明細書でPSMA-71およびPSMA-66と示される特に好ましい化合物の性質に言及する。
【0021】
特に、[177Lu]PSMA I&Tと比較したとき、ナノモル親和性(5.3±2.0nM対7.9±2.4nM)、大幅に改善された内部移行(206.8±1.7%対75.5±1.6%)は、[177Lu]PSMA-71の優越性を示す。生体内分布データは、[177Lu]PSMA-71が、[177Lu]PSMA I&Tと比較して著しくより高い腫瘍(それぞれ、14.29±0.89対4.06±1.12%ID/g)取込を呈し、一方、腎臓蓄積は同様であった(それぞれ、32.36±2.49対34.66±17.20%ID/g)ことを明らかにした。
【0022】
同様に、低下したナノモル親和性(3.8±0.3nM対7.9±2.4nM)、大幅に改善された内部移行(297.8±2.0%対75.5±1.6%)、低下したインビボの非特異的結合を一緒に伴う上昇したインビトロの腫瘍細胞保持(90.1±3.5%対62.8±0.4%、60分のインキュベーション)、腎臓蓄積の減少(117.5±6.9% ID/g対128.9±10.7% ID/g)および腫瘍取込の2倍を超える増大(10.0±0.4%対4.7±1.0% ID/g)は、[177Lu]PSMA I&Tとの直接比較において[177Lu]PSMA-66の優越性を示す。
【0023】
上記で指摘したように、式(I)の化合物を含む本発明の化合物の塩(およびこれらの好ましい実施形態を含む)も、本発明の文脈における使用に好適である。これらの塩は、例えば、無機もしくは有機酸を伴うアミノ基のような、または当技術分野で周知であるような生理的に許容可能な陽イオンを伴うカルボン酸基の塩のような、プロトン化しやすい孤立電子対を有する原子のプロトン化により形成され得る、これらの化合物の一般的に薬学的に許容される塩形態であるとして理解される。例示的な塩基付加塩は、例えば、ナト
リウムまたはカリウム塩のようなアルカリ金属塩;カルシウムまたはマグネシウム塩のようなアルカリ土類金属塩;アンモニウム塩;トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、プロカイン塩、メグルミン塩、ジエタノールアミン塩またはエチレンジアミン塩のような脂肪族アミン塩;N,N-ジベンジルエチレンジアミン塩、ベネタミン(benetamine)塩のようなアラルキルアミン塩;ピリジン塩、ピコリン塩、キノリン塩またはイソキノリン塩のような複素環芳香族アミン塩;テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、ベンジルトリメチルアンモニウム塩、ベンジルトリエチルアンモニウム塩、ベンジルトリブチルアンモニウム塩、メチルトリオクチルアンモニウム塩またはテトラブチルアンモニウム塩のような第四級アンモニウム塩;およびアルギニン塩またはリシン塩のような塩基性アミノ酸塩を含む。例示的な酸付加塩は、例えば、塩酸塩、水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩(例えば、リン酸塩、リン酸水素塩、またはリン酸二水素塩のような)、炭酸塩、炭酸水素塩または過塩素酸塩のような鉱酸塩;酢酸塩、プロピオン酸塩、酪酸塩、ペンタン酸塩、ヘキサン酸塩、ヘプタン酸塩、オクタン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ウンデカン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、シュウ酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、リンゴ酸塩、クエン酸塩、ニコチン酸塩、安息香酸塩、サリチル酸塩またはアスコルビン酸塩のような有機酸塩;メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩(トシル酸塩)、2-ナフタレンスルホン酸塩、3-フェニルスルホン酸塩、またはカンファースルホン酸塩のようなスルホン酸塩;およびアスパラギン酸塩またはグルタミン酸塩のような酸性アミノ酸塩を含む。
【0024】
薬学的に許容される塩のさらなる例は、限定されないが、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重炭酸塩、硫酸水素塩、重酒石酸塩、ホウ酸塩、臭化物塩、酪酸塩、エデト酸カルシウム塩、ショウノウ酸塩、カンファースルホン酸塩、カンシル酸塩、炭酸塩、塩化物塩、クエン酸塩、クラブラン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、二塩酸塩、ドデシル硫酸塩、エデト酸塩、エジシル酸塩、エストル酸塩(estolate)、エシル酸塩(esylate)、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルセプト酸塩、グルコヘプトン酸塩、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリセロリン酸塩、グリコリルアルサニレート(glycolylarsanilate)、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、ヘキシルレゾルシネート(hexylresorcinate)、ヒドラバミン、水素酸塩、塩酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシ-エタンスルホネート、ヒドロキシナフトエート、ヨウ化物塩、イソチオン酸塩、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、マンデル酸塩、メシル酸塩、メタンスルホン酸塩、メチル硫酸塩、ムチン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ナプシル酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、N-メチルグルカミンアンモニウム塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩(エンボネート)、パルミチン酸塩、パントテン酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩/二リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、ポリガラクツロン酸塩、プロピオン酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、硫酸塩、塩基性酢酸塩、コハク酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、テオクル酸塩、トシル酸塩、トリエチオジド(triethiodide)、ウンデカン酸塩、吉草酸塩等を含む(例えば、S.M.Bergeら、「Pharmaceutical Salts」、J.Pharm.Sci.、66、1~19ページ(1977)を参照)。
【0025】
本明細書を通して、「化合物」という用語は、他に言及されないかぎり、溶媒和物、多形体、プロドラッグ、コドラッグ、共結晶、互変異性体、ラセミ体、エナンチオマーもしくはジアステレオマーまたはこれらの混合物を包含することが理解される。
【0026】
本発明の化合物が結晶形態で提供されるとき、構造は溶媒分子を含有することができる
。溶媒は、典型的には、薬学的に許容される溶媒であり、とりわけ、水(水和物)または有機溶媒を含む。可能な溶媒和物の例は、エタン酸塩およびイソ-プロパノレート(iso-propanolate)を含む。
【0027】
「コドラッグ」という用語は、共有結合性の化学結合を介して結合した2つ以上の治療用化合物を指す。詳細な定義は、例えば、N.Dasら、European Journal of Pharmaceutical Sciences、41、2010、571~588において見出すことができる。
【0028】
「共結晶」という用語は、すべての成分がそれらが純粋形態であるときに周囲条件下で固体である、多成分結晶を指す。これらの成分は、標的分子またはイオン(すなわち、本発明の化合物)と1つまたは複数の中性分子共結晶形成剤の化学量論または非化学量論比として共存する。詳細な議論は、例えば、Ning Shanら、Drug Discovery Today、13(9/10)、2008、440~446およびD.J.Goodら、Cryst.Growth Des.、9(5)、2009、2252~2264において見出すことができる。
【0029】
本発明の化合物は、プロドラッグの形態、つまりインビボで活性代謝産物へと代謝される化合物の形態でも提供することができる。好適なプロドラッグは、例えば、エステルである。好適な基の具体的な例は、とりわけ、US 2007/0072831中のプロドラッグおよび保護基という見出し下の段落[0082]~[0118]に示されている。
【0030】
本発明の化合物がpH依存性の荷電状態を呈するかぎりにおいて、すべての可能な荷電状態が包含されると理解される。この関連において好ましいpH範囲は、0~14である。
【0031】
本発明による化合物が正味荷電を保持するかぎりにおいて、化合物は電気的中性形態で提供されることが理解される。これは1つまたは複数の対イオンによって達成され、好ましい対イオンは、上記で、「塩」という用語との関連で定義されている。
【0032】
式(I)において、mは2~6の整数である。好ましくは、mは2~4、より好ましくは2である。R1Lは、CH2、NHまたはO、好ましくはNHである。R2LはCまたはP(OH)、好ましくはCである。R3Lは、CH2、NHまたはO、好ましくはNHである。このように、式(I)の化合物またはこれらの塩も好ましく、mは2であり、R1LはNHであり、R2LはCであり、およびR3LはNHである。
【0033】
nは、2~6の整数、好ましくは2~4、より好ましくは2または4、最も好ましくは2である。
このように、式(I)の化合物またはこれらの塩は特に好ましく、mは2であり、nは2または4であり、R1LはNHであり、R2LはCであり、およびR3LはNHである。最も好ましくは、式(I)の化合物またはこれらの塩であり、mは2であり、nは2であり、R1LはNHであり、R2LはCであり、およびR3LはNHである。
【0034】
式(I)におけるX1は、アミド結合(すなわち、-C(O)-NH-)、エーテル結合(すなわち、-O-)、チオエーテル結合(すなわち、-S-)、エステル結合(すなわち、-C(O)-O-、チオエステル結合(すなわち、-C(S)-O-または-C(O)-S-)、尿素架橋(すなわち、-NH-C(O)-NH-)、およびアミン結合(すなわち、-NH-)から選択される。X1として好ましくは、アミド結合である。
【0035】
さらに、式(I)においてさらに好ましくは、nが2であり、X1が、アミド結合-C
(O)-NH-の炭素原子が基-(CH2)n-に付着しているアミド結合であるか、またはnが4であり、X1が、アミド結合-C(O)-NH-の炭素原子が基-(CH2)n-に付着しているアミド結合であるかのいずれかである。これらの中で、より好ましくは、nが2であり、X1が、アミド結合-C(O)-NH-の炭素原子が基-(CH2)n-に付着しているアミド結合である選択肢である。
【0036】
このように、特に好ましくは、式(I)の化合物およびそれらの塩であり、式(I)中、mは2であり、nは2であり、R1LはNHであり、R2LはCであり、R3LはNHであり、X1は、アミド結合-C(O)-NH-の炭素原子が基-(CH2)n-に付着しているアミド結合である。
【0037】
式(I)中のL1は、オリゴアミド、オリゴエーテル、オリゴチオエーテル、オリゴエステル、オリゴチオエステル、オリゴ尿素、オリゴ(エーテル-アミド)、オリゴ(チオエーテル-アミド)、オリゴ(エステル-アミド)、オリゴ(チオエステル-アミド)、オリゴ(尿素-アミド)、オリゴ(エーテル-チオエーテル)、オリゴ(エーテル-エステル)、オリゴ(エーテル-チオエステル)、オリゴ(エーテル-尿素)、オリゴ(チオエーテル-エステル)、オリゴ(チオエーテル-チオエステル)、オリゴ(チオエーテル-尿素)、オリゴ(エステル-チオエステル)、オリゴ(エステル-尿素)、およびオリゴ(チオエステル-尿素)から選択される構造、好ましくはオリゴアミドおよびオリゴ(エステル-アミド)から選択される構造、より好ましくは結合基がEDS基を有し得るオリゴアミド構造を有する二価の連結基である。
【0038】
L1の定義に用いられる、オリゴアミド、オリゴエーテル、オリゴチオエーテル、オリゴエステル、オリゴチオエステル、オリゴ尿素、オリゴ(エーテル-アミド)、オリゴ(チオエーテル-アミド)、オリゴ(エステル-アミド)、オリゴ(チオエステル-アミド)、オリゴ(尿素-アミド)、オリゴ(エーテル-チオエーテル)、オリゴ(エーテル-エステル)、オリゴ(エーテル-チオエステル)、オリゴ(エーテル-尿素)、オリゴ(チオエーテル-エステル)、オリゴ(チオエーテル-チオエステル)、オリゴ(チオエーテル-尿素)、オリゴ(エステル-チオエステル)、オリゴ(エステル-尿素)、およびオリゴ(チオエステル-尿素)の用語中の「オリゴ」という用語は、好ましくは、2~20、より好ましくは2~10のサブユニットが同一の用語で指定される結合の種類により連結する基を指すものと理解される。当業者により理解されるように、2つの異なる結合の種類が括弧中に示される場合、両方の結合の種類は、関係する基中に含有される(例えば、「オリゴ(エステル-アミド)」中、エステル結合およびアミド結合が含有される)。
【0039】
より好ましくは、L1は、その主鎖中に合計1~5つ、より好ましくは合計1~3つ、最も好ましくは合計1つまたは2つのアミド結合を含むオリゴアミド、ならびに、その主鎖中に合計2~5つ、より好ましくは合計2~3つ、最も好ましくは合計2つのアミドおよびエステル結合を含むオリゴ(エステル-アミド)から選択される構造を有する。特に好ましい実施形態では、L1は、その主鎖中に1つまたは2つのアミド結合を含むオリゴアミド構造を有する二価の連結基を表す。
【0040】
さらに、L1は、本明細書で定義されるEDS基(すなわち、高い電子密度の置換基または「高電子密度置換基」を有する基)、すなわち、L1に共有結合的に付着するEDS基を有することができる。好ましくは、任意のEDS基は、二価の連結基L1の主鎖に置換基として付着し、L1は、上記で定義されるような、オリゴアミド、オリゴエーテル、オリゴチオエーテル、オリゴエステル、オリゴチオエステル、オリゴ尿素、オリゴ(エーテル-アミド)、オリゴ(チオエーテル-アミド)、オリゴ(エステル-アミド)、オリゴ(チオエステル-アミド)、オリゴ(尿素-アミド)、オリゴ(エーテル-チオエーテ
ル)、オリゴ(エーテル-エステル)、オリゴ(エーテル-チオエステル)、オリゴ(エーテル-尿素)、オリゴ(チオエーテル-エステル)、オリゴ(チオエーテル-チオエステル)、オリゴ(チオエーテル-尿素)、オリゴ(エステル-チオエステル)、オリゴ(エステル-尿素)、およびオリゴ(チオエステル-尿素)から選択される構造、好ましくはオリゴアミドおよびオリゴ(エステル-アミド)から選択される構造、ならびに最も好ましくは、主鎖が式(I)の化合物中のX1とX2との間に延長するオリゴアミド構造を有する。この点についても、L1についてのさらなる好ましい定義を適用し、すなわちより好ましくは、L1は、その主鎖中に合計1~5つ、より好ましくは合計1~3つ、最も好ましくは合計1つまたは2つのアミド結合を含むオリゴアミド、および、その主鎖中に合計2~5つ、より好ましくは合計2~3つ、最も好ましくは合計2つのアミドおよびエステル結合を含むオリゴ(エステル-アミド)から選択される構造を有する。特に好ましい実施形態では、L1は、その主鎖中に1つまたは2つのアミド結合を含むオリゴアミド構造を有する二価の連結基を表す。
【0041】
上記によると、L1は、1つまたは複数、例えば2または3つの、EDS基を有することができる。しかし、好ましくは、L1はEDS基を有さず、またはL1は1つのEDS基を有し、より好ましくは、L1は1つのEDS基を有する。
【0042】
L1がEDS基を有する場合(EDSが1つのEDS基を有するより好ましい事例を含む)、好ましくは、EDS基は、(E-1A)、(E-2A)および(E-2B)から選択される構造を有する。より好ましくは、EDS基は、(E-2A)および(E-2B)から選択される構造を有し、最も好ましくは、EDS基は、構造(E-2A)を有する。
【0043】
当業者により理解されるように、L1がEDS基を有し得るという適応は、本発明による化合物における、この基の可能な位置についての情報として役立つ。L1がEDS基を有し得るという事実は、例えばL1の主鎖上に代替またはさらなる置換基として存在し得る他の基の存在について制限を課すものではない。例えば好ましくは、連結基L1は、独立して、1つまたは複数、例えば2つの、その主鎖に置換基として付着する、-OH、-OCH3、-COOH、-COOCH3、-NH2および-NHC(NH)NH2から選択される基を含有する。より好ましくは、連結基L1は、1つまたは複数、例えば2つの、その主鎖に置換基として付着する基-COOHを含有する。
【0044】
式(I)中、X2は、アミド結合、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合、チオエステル結合、尿素架橋およびアミン結合から選択され、好ましくはアミド結合である。より好ましくは、アミド結合-C(O)-NH-の窒素原子は、L1に付着する。
【0045】
このように、また好ましくは、X1およびX2は両方アミド結合、特に上記でさらに定義される好ましい方向に配置されるアミド結合である。
上記に即して、好ましくは、式(I)中の部分-X2-L1-X1-は:
*-C(O)-NH-R7-NH-C(O)-R8-C(O)-NH- (L-1)、
*-C(O)-NH-R9A-NH-C(O)-R10A-C(O)-NH-R11A-NH-C(O)- (L-2A)、および
*-C(O)-NH-R9B-C(O)-NH-R10B-C(O)-NH-R11B-NH-C(O)- (L-2B)
から選択される構造を有する
(式中、*の印のついたアミド結合は、式(I)中のR2を有する炭素原子に付着し、
R7、R8、R9A、R9B、R11AおよびR11Bは、独立して、任意選択で置換されたC2~C10アルカンジイル、好ましくは任意選択で置換された直鎖のC2~C10アルカンジイルから選択され、アルカンジイル基は、各々が、独立して-OH、-OCH3、-COOH、-COOCH3、-NH2、-NHC(NH)NH2およびEDS基
から選択される1つまたは複数の置換基により置換されていてもよく、ならびに
R10AおよびR10Bは、任意選択で置換されたC2~C10アルカンジイル、好ましくは任意選択で置換された直鎖のC2~C10アルカンジイル、および任意選択で置換されたC6~C10アレーンジイル、好ましくはフェニレンから選択され、アルカンジイルおよびアレーンジイル基は、各々が、独立して-OH、-OCH3、-COOH、-COOCH3、-NH2、-NHC(NH)NH2およびEDS基から選択される1つまたは複数の置換基により置換されていてもよい。R10Aは、好ましくは、上記で定義される任意選択で置換されたC2~C10アルカンジイル、より好ましくは任意選択で置換された直鎖のC2~C10アルカンジイルである。R10Bは、好ましくは、上記で定義される任意選択で置換されたC6~C10アレーンジイル、より好ましくはフェニレン基、例えば、パラ-フェニレン基である)。
【0046】
式(L-1)、(L-2A)および(L-2B)の基において、好ましくは、R7上の任意の置換基は-COOHであり、R8の任意の置換基はEDS基であり、R9AおよびR9B上の任意の置換基は-COOHであり、R10A上の任意の置換基はEDS基であり、ならびにR11AおよびR11B上の任意の置換基は-COOHである。
【0047】
また好ましくは、式(L-1)および(L-2A)の基の各々は、上記で説明したように、少なくとも1つの置換基として、好ましくはR8およびR10Aの置換基として、EDS基を有する。この文脈においても、好ましくは、EDS基は、(E-1A)、(E-2A)および(E-2B)から選択される構造を有する。より好ましくは、EDS基は、(E-2A)および(E-2B)から選択される構造を有し、最も好ましくは、EDS基は、構造(E-2A)を有する。
【0048】
さらに、好ましくは、式(L-1)のR7およびR8中の炭素原子の合計数は、任意の置換基中に含有される炭素原子を除いて、6~20、より好ましくは6~16であり、式(L-2A)のR9A、R10AおよびR11A中の炭素原子の合計数は、任意の置換基中に含有される炭素原子を除いて、6~20、より好ましくは6~16であり、ならびに、式(L-2B)のR9B、R10BおよびR11B中の炭素原子の合計数は、任意の置換基中に含有される炭素原子を除いて、6~20、より好ましくは6~16である。
【0049】
上記のnおよびX1の好ましい意味に関して提供される情報から、なおさらに好ましくは、式(I)中の-X2-L1-X1-が、nが4である場合に構造(L-1)を有し、式(I)中の-X2-L1-X1-が、nが2である場合に構造(L-2A)または(L-2B)を有することが理解される。
【0050】
上記の定義に即して、なおさらに好ましくは、式(I)中の部分-X2-L1-X1-は:
*-C(O)-NH-CH(COOH)-R12-NH-C(O)-R13-C(O)-NH- (L-3)、
*-C(O)-NH-CH(COOH)-R14-NH-C(O)-R15-C(O)-NH-R16-CH(COOH)-NH-C(O)- (L-4)、および
*-C(O)-NH-CH(COOH)-R17-C(O)-NH-R18-C(O)-NH-R19-CH(COOH)-NH-C(O)- (L-5)
から選択される構造を有する
(式中、*の印のついた結合は、式(I)中のR2を有する炭素原子に付着し、
R12およびR14は、独立して、直鎖のC2~C6アルカンジイルから、好ましくは直鎖のC3~C6アルカンジイルから選択され、
R13は、直鎖のC2~C10アルカンジイル、好ましくは直鎖のC4~C8アルカンジイルであり、
R15およびR16は、独立して、直鎖のC2~C6アルカンジイルから、好ましくは直鎖のC2~C4アルカンジイルから選択され、
ならびに、R13およびR15の各々は、置換基として1つのEDS基を有してもよく、好ましくは、R13およびR15の各々は、置換基として1つのEDS基を有し、
R17は、直鎖のC2~C6アルカンジイル、好ましくは直鎖のC2~C4アルカンジイルであり、
R18は、フェニレン基、例えば、パラ-フェニレン基であり、ならびに
R19は、直鎖のC2~C6アルカンジイル、好ましくは直鎖のC2~C4アルカンジイルである)。
【0051】
この文脈においても、好ましくは、R13およびR15に付着していてもよいEDS基は、(E-1A)、(E-2A)および(E-2B)から選択される構造を有する。より好ましくは、EDS基は、(E-2A)および(E-2B)から選択される構造を有し、最も好ましくは、EDS基は、構造(E-2A)を有する。
【0052】
さらに、好ましくは、式(L-3)中のR12およびR13中の炭素原子の合計数は、置換基としてEDS基中に含有される炭素原子を除いて、6~16、より好ましくは6~14であり、式(L-4)中のR14、R15およびR16中の炭素原子の合計数は、置換基としてEDS基中に含有される炭素原子を除いて、6~16、より好ましくは6~14である。
【0053】
上記のnおよびX1の好ましい意味に関して提供される情報から、特に好ましくは、式(I)中の-X2-L1-X1-が、nが4である場合に構造(L-3)を有し、式(I)中の-X2-L1-X1-が、nが2である場合に構造(L-4)または(L-5)を有することが理解される。
【0054】
具体的に好ましくは、式(I)中、nは2であり、部分-X2-L1-X1-は、以下の構造:
*-C(O)-NH-CH(COOH)-(CH2)4-NH-C(O)-CH(EDS)-CH2-C(O)-NH-(CH2)3-CH(COOH)-NH-C(O)- (L-6)
*-C(O)-NH-CH(COOH)-(CH2)2-C(O)-NH-Ph-C(O)-NH-(CH2)3-CH(COOH)-NH-C(O)- (L-7)
の1つを有する
(式中、*の印のついた結合は、式(I)中のR2を有する炭素原子に付着し、EDSは、その好ましい実施形態を含む、本明細書で定義されるEDS基であり、Phは、パラ-フェニレン基である)。
【0055】
この文脈においても、好ましくは、EDS基は、(E-1A)、(E-2A)および(E-2B)から選択される構造を有する。より好ましくは、EDS基は、(E-2A)および(E-2B)から選択される構造を有し、最も好ましくは、EDS基は、構造(E-2A)を有する。
【0056】
式(I)中、R2は、任意選択で置換されたアリール基または任意選択で置換されたアラルキル基、好ましくは任意選択で置換されたアラルキル基である。理解されるように、本明細書で使用される場合、「アラルキル基」という用語は、水素原子が置換基としてのアリール基により置換されているアルキル基を指す。好ましくは、アラルキル基は、1つのアリール基がアルカンジイル基に結合する基である。R2により表されるアリール基またはアラルキル基は、その芳香族環上で、ハロゲン、好ましくはIおよび-OHから選択される1つまたは複数の置換基で置換されていてもよい。アリールおよびアラルキル基の
アリール部分は、好ましくは、フェニルおよび2-ナフチルのようなナフチルから選択される。アラルキル基のアルカンジイル部分は、好ましくはC1~C4アルカンジイル基、より好ましくは-CH2-基である。このように、R2は、より好ましくは、任意選択で置換された-CH2-フェニル、および任意選択で置換された-CH2-ナフチル、特に任意選択で置換された-CH2-(2-ナフチル)から選択される。任意選択で置換された-CH2-(2-ナフチル)は、R2について特に好ましい選択肢である。
【0057】
任意選択で置換されたアリール基および任意選択で置換されたアラルキル基のアリール部分は、これらの好ましい実施形態を含め、ハロゲン、好ましくはIおよび-OHから選択される1つまたは複数の置換基で置換されていてもよい。このように、ハロゲン、好ましくはIおよび-OHから選択される、1つまたは1つを超える、例えば、2または3つの置換基が存在することができる。しかし、好ましくは、R2は非置換である。
【0058】
上記の観点において、R2は、最も好ましくは非置換の-CH2-(ナフチル)であり、ナフチル基は、R2を-CH2-(2-ナフチル)として提供するために、最も好ましくは2-ナフチル基であることが理解される。
【0059】
式(I)中、R3は、任意選択で置換されたアリール基または任意選択で置換されたアラルキル基、好ましくは任意選択で置換されたアラルキル基である。アリール基またはアラルキル基は、その芳香族環上で、ハロゲン、好ましくはIおよび-OHから選択される1つまたは複数の置換基で置換されていてもよい。アリールおよびアラルキル基のアリール部分は、好ましくは、フェニルおよび2-ナフチルのようなナフチルから選択される。より好ましくは、アリールおよびアラルキルのアリール部分は、フェニルである。アラルキル基のアルカンジイル部分は、好ましくはC1~C4アルカンジイル基、より好ましくは-CH2-基である。このように、R3は、より好ましくは任意選択で置換された-CH2-フェニルである。
【0060】
任意選択で置換されたアリール基および任意選択で置換されたアラルキル基のアリール部分は、これらの好ましい実施形態を含め、ハロゲン、好ましくはIおよび-OHから選択される1つまたは複数の置換基で置換されていてもよい。このように、ハロゲン、好ましくはIおよび-OHから選択される、1つまたは1つを超える、例えば、2または3つの置換基が存在することができる。好ましくは、R3は、-OHである1つの置換基、または1つの置換基-OHおよび1つの置換基-Iの組合せで置換されている。
【0061】
このように、特に好ましくは、R3は、フェニル環上で、-OHである1つの置換基、または1つの置換基-OHおよび1つの置換基-Iの組合せで置換されている-CH2-フェニルであり、最も好ましくは、置換基-OHは、-CH2-基に対して、フェニル環のパラ位に存在する。
【0062】
上記の定義に即して、好ましくは、式(I)中、R2は、式
【0063】
【0064】
の基であり、R3は、式
【0065】
【0066】
の基である
(式中、
【0067】
【0068】
は、R2およびR3を、それぞれ、式(I)の化合物の残部へと付着させる結合に印をつけたものである)。
なおより強く好ましくは、R2およびR3の組合せであり、R2は式
【0069】
【0070】
の基であり、R3は、式
【0071】
【0072】
の基である
(式中、
【0073】
【0074】
は、それぞれ、R2およびR3を化合物の残部へと付着させる結合に印をつけたものである)。
式(I)中、rは0または1であることができ、好ましくは、rは1である。
【0075】
さらに、上記で説明したように、pは0または1であり、qは0または1であり、好ましくはp+q=1である。より好ましくは、pは0であり、qは1である。
式(I)中のR4は、アリール基およびEDS基から選択される。アリールは、好ましくは、フェニルおよび2-ナフチルのようなナフチルから選択される。このように、R4は、より好ましくは、フェニル、2-ナフチルのようなナフチル、およびEDS基から選択される。R4は、最も好ましくはEDS基である。
【0076】
R4がEDS基である場合、好ましくは、EDS基は、(E-1A)、(E-2A)および(E-1B)から選択される構造を有する。
X3は、アミド結合、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合、チオエステル結合、尿素架橋、アミン結合、および式
【0077】
【0078】
から選択される(式中、カルボニル基の印のついた結合は、X3をRMへと付着させ、他の印のついた結合は、X3を分子の残部へと付着させる)。
好ましくは、X3は、アミド結合および式
【0079】
【0080】
の基から選択される(式中、カルボニル基の印のついた結合は、X3をRMへと付着させ、他の印のついた結合は、X3を分子の残部へと付着させる)。
より好ましい実施形態では、X3は、炭素原子がRMに付着したアミド結合-C(O)-NH-である。
【0081】
RMは、キレート化された非放射性または放射性の陽イオンを任意選択で含有するキレート基を含む標識基である。
当業者により理解されるように、RMがキレート基を含むことによる上記の定義は、RMがキレート基である事例を包含し、この事例において、キレート基は典型的にはX3と直接結合し、
および、RMが、キレート基と一緒になって、例えばさらなるリンカー部分を含む事例を包含し、この事例において、キレート基はこのさらなるリンカー部分を介してX3と間接的に結合することができる。
【0082】
RMにより提供されるキレート基は、放射性または非放射性の陽イオンを伴いキレートを形成するのに好適である。多様な陽イオンについての好適なキレート基は当技術分野で周知であり、本発明の文脈において使用することができる。
【0083】
キレート化された非放射性または放射性の陽イオンを任意選択で含有するキレート基は、好ましくは、
(i)2つ以上、好ましくは3つ以上が、酸素原子、硫黄原子および窒素原子から選択される8~20の環原子を伴う大環状環構造;ならびに
(ii)2つ以上、好ましくは3つ以上が、酸素原子、硫黄原子および窒素原子から選択されるヘテロ原子である8~20の主鎖原子を伴う非環式、開鎖のキレート構造
のうちの少なくとも1つを含むキレート基から選択される。
【0084】
例示的なキレート基、したがって例示的な基RMも、ビス(カルボキシメチル)-1,4,8,11-テトラアザビシクロ[6.6.2]ヘキサデカン(CBTE2a)、シクロヘキシル-1,2-ジアミン四酢酸(CDTA)、4-(1,4,8,11-テトラアザシクロテトラデカ-1-イル)-メチル安息香酸(CPTA)、N’-[5-[アセチル(ヒドロキシ)アミノ]ペンチル]-N-[5-[[4-[5-アミノペンチル-(ヒドロキシ)アミノ]-4-オキソブタノイル]アミノ]ペンチル]-N-ヒドロキシブタンジアミド(DFO)、4,11-ビス(カルボキシメチル)-1,4,8,11-テトラアザビシクロ[6.6.2]ヘキサデカン(DO2A)1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-N,N’,N’’,N’’’-四酢酸(DOTA)、2-[1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-4,7,10-三酢酸]-ペンタン二酸(DOTAGA)、N,N’-ジピリドキシルエチレンジアミン-N,N’-ジアセテート-5,5’-ビス(ホスフェート(phosphat))(DPDP)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、エチレンジアミン-Ν,Ν’-四酢酸(EDTA)、エチレングリコール(ethyleneglykol)-O,O-ビス(2-アミノエチル)-N,N,N’,N’-四酢酸(EGTA)、N,N-ビス(ヒドロキシベンジル)-エチレンジアミン-N,N’-二酢酸(HBED)、ヒドロキシエチルジアミン三酢酸(HEDTA)、1-(p-ニトロベンジル)-1,4,7,10-テトラアザシクロデカン-4,7,10-トリアセテート(HP-DOA3)、6-ヒドラジニル-N-メチルピリジン-3-カルボキサミド(HYNIC)、1,4,7-トリアザシクロノナン-1-コハク酸-4,7-二酢酸(NODASA)、1-(1-カルボキシ-3-カルボキシプロピル)-4,7-(カルボキシ(carbooxy))-1,4,7-トリアザシクロノナン(NODAGA)、1,4,7-トリアザシクロノナン三酢酸(NOTA)、4,11-ビス(カルボキシメチル)-1,4,8,11-テトラアザビシクロ[6.6.2]ヘキサデカン(TE2A)、1,4,8,11-テトラアザシクロドデカン-1,4,8,11-四酢酸(TETA)、テルピリジン-ビス(メチレンアミン四酢酸(methyleneamintetraacetic acid)(TMT)、1,4,7,10-テトラアザシクロトリデカン-N,N’,N’’,N’’’-四酢酸(TRITA)、トリエチレンテトラアミン六酢酸(TTHA)、N,N’-ビス[(6-カルボキシ-2-ピリジル(pyridil))メチル]-4,13-ジアザ-18-クラウン-6(H2マクロパ(macropa))および4-アミノ-4-{2-[(3-ヒドロキシ-1,6-ジメチル-4-オキソ-1,4-ジヒドロ-ピリジン-2-イルメチル)-カルバモイル]-エチル}ヘプタン二酸 ビス-[(3-ヒドロキシ-1,6-ジメチル-4-オキソ-1,4-ジヒドロ-ピリジン-2-イルメチル)-アミド](THP)から選択されるキレート剤の残基であり;
残基は、エステルまたはアミド結合、好ましくはアミド結合を介する、キレート剤中に含有されるカルボキシル基と化合物の残部との共有結合により提供される。式(I)中、このエステルまたはアミド結合は、この事例において、X3により包含され得、または好ましくはX3により表され得ることが、当業者により理解される。
【0085】
これらのキレート剤の中では、DOTAおよびDOTAGAが好ましい。
このように、また好ましくは、式(I)中のRM-X3-は、式
【0086】
【0087】
の基である
(式中、
【0088】
【0089】
の印のついた結合は、式(I)の化合物の残部に付着し、キレート基は、キレート化された非放射性または放射性の陽イオンを含有してもよい)。
任意選択でキレート基によりキレート化された例示的な放射性陽イオンは、44Sc、47Sc、51Cr、52mMn、58Co、52Fe、56Ni、57Ni、62Cu、64Cu、67Cu、66Ga、68Ga、67Ga、89Zr、90Y、89Y、94mTc、99mTc、97Ru、105Rh、109Pd、111Ag、110mIn、111In、113mIn、114mIn、117mSn、121Sn、127Te、142Pr、143Pr、149Pm、151Pm、149Tb、153Sm、157Gd、161Tb、166Ho、165Dy、169Er、169Yb、175Yb、172Tm、177Lu、186Re、188Re、191Pt、197Hg、198Au、199Au、212Pb、203Pb、211At、212Bi、213Bi、223Ra、225Ac、および227Thの陽イオン、または18F-[AlF]2+のような18Fを含む陽イオン性分子から選択される。
【0090】
好ましいキレート化された陽イオンは、44Sc、47Sc、64Cu、67Cu、68Ga、90Y、111In、161Tb、166Ho、177Lu、188Re、212Pb、212Bi、213Bi、225Ac、および227Thの陽イオン、または18Fを含む陽イオン性分子から選択される。
【0091】
式(I)中、EDS基は、少なくとも1回含有され、したがって、例えば1、2または3つのEDS基が含有され得る。好ましくは、本発明による化合物または塩は、1つのEDS基または2つのEDS基を含有する。上記で説明したように、EDS基は、L1が有
してもよく、および/またはR4により表されてもよい。
【0092】
式(I)の最も好ましい化合物およびこれらの塩は、上記のその好ましい実施形態を含め、連結基L1が有する1つのEDS基を含有するもの、および上記のその好ましい実施形態を含め、1つはR4により表され(すなわち、rは1である)、1つはL1が有する2つのEDS基を含有するものである。
【0093】
上記で提示したように、EDS基は、(E-1A)、(E-1B)、(E-2A)および(E-2B):
【0094】
【0095】
から選択される構造を有する
(式中、
【0096】
【0097】
は、EDS基を式(I)の化合物の残部へと付着させる結合に印をつけたものであり;
sは、1、2または3、好ましくは1または2、より好ましくは1であり;
tは、1、2または3、好ましくは1または2、より好ましくは2であり;
R5Aは、独立して、s>1では各出現について、好ましくは-NO2および-COOHから選択され、より好ましくは-COOHである電子吸引性置換基であり、R5Aとフェニル環との間の結合は、s個のR5A基がフェニル環上の任意の位置でs個の水素原子を置換することを表し;
R5Bは、独立して、s>1では各出現について、式(E-1B)において示されるフェニル環に直接付着する原子において孤立電子対を有する置換基であり、置換基は、好ましくは-OHおよび-NH2から選択され、より好ましくは-NH2であり、R5Bとフェニル環との間の結合は、s個のR5B基がフェニル環上の任意の位置でs個の水素原子を置換することを表し;
R6Aは、独立して、t>1では各出現について、好ましくは-NO2および-COOHから選択され、より好ましくは-COOHである電子吸引性置換基であり、R6Aとフ
ェニル環との間の結合は、t個のR6A基がフェニル環上の任意の位置でt個の水素原子を置換することを表し;ならびに
R6Bは、独立して、t>1では各出現について、式(E-1B)において示されるフェニル環に直接付着する原子において孤立電子対を有する置換基であり、置換基は、好ましくは-OHおよび-NH2から選択され、より好ましくは-OHであり、R6Bとフェニル環との間の結合は、t個のR6B基がフェニル環上の任意の位置でt個の水素原子を置換することを表す)。
【0098】
一般的に好ましくは、EDS基(E-1A)中、置換基R5Aはs>1について同一であり、-NO2および-COOHから選択され、より好ましくは-COOHであり、EDS基(E-2A)中、置換基R6Aはt>1について同一であり、-NO2および-COOHから選択され、より好ましくは-COOHである。
【0099】
同様に一般的に好ましくは、EDS基(E-1B)中、置換基R5Bはs>1について同一であり、-OHおよび-NH2から選択され、より好ましくは-NH2であり、EDS基(E-2B)中、置換基R6Bはt>1について同一であり、-OHおよび-NH2から選択され、より好ましくは-OHである。
【0100】
このように、さらに好ましくは、式(I)の化合物は、式(E-2A):
【0101】
【0102】
を有するEDS基を含有する
(式中、
【0103】
【0104】
は、EDS基を式(I)の化合物の残部へと付着させる結合に印をつけたものであり;および
tは1または2であり、R6Aは-NO2または-COOHである)。
【0105】
本発明の文脈において、EDS基として最も好ましくは、基
【0106】
【0107】
である。
上記の定義に即して、式(I)の好ましい化合物は、以下の式(Ia)
【0108】
【0109】
により説明される
(式中、n、X1、L1、X2、R2、R3、R4、q、p、X3およびRMは、これらの好ましい実施形態を含めて上記のように定義され、EDS基は、少なくとも1回含有され、好ましい実施形態を含めて上記で定義される構造を有する)。
【0110】
式(I)のより好ましい化合物は、以下の式(Ib)
【0111】
【0112】
により説明される
(式中、n、X1、L1、X2、R2、R3、R4、X3およびRMは、これらの好ましい実施形態を含めて上記のように定義され、EDS基は、少なくとも1回含有され、好ましい実施形態を含めて上記で定義される構造を有する)。
【0113】
式(I)のなおより好ましい化合物は、以下の式(Ic)
【0114】
【0115】
により説明される
(式中、n、X1、L1、X2、R4、X3およびRMは、これらの好ましい実施形態を含めて上記のように定義され、EDS基は、少なくとも1回含有され、その好ましい実施形態を含めて上記で定義される構造を有する)。
【0116】
式(I)のなおより好ましい化合物は、以下の式(Id)および(Ie)により説明される:
【0117】
【0118】
(式中、R9A、R10A、R11A、R4、X3およびRMは、これらの好ましい実施形態を含めて上記のように定義され、(i)R4は、その好ましい実施形態を含めて上記で定義される構造を有するEDS基であるか、もしくは(ii)R10Aは、その好ましい実施形態を含めて上記で定義される構造を有する1つのEDS基を有するかのいずれか、または(i)および(ii)の両方が当てはまり);
【0119】
【0120】
(式中、R9B、R10B、R11B、R4、X3およびRMは、これらの好ましい実施形態を含めて上記のように定義され、R4は、その好ましい実施形態を含めて上記で定義される構造を有するEDS基である)。
【0121】
式(I)の特に好ましい化合物は、以下の式(If)および(Ig)により説明される
【0122】
【0123】
(式中、R9A、R10A、R11A、R4、X3およびRMは、これらの好ましい実施形態を含めて上記のように定義され、(i)R4は、その好ましい実施形態を含めて上記で定義される構造を有するEDS基であるか、もしくは(ii)R10Aは、その好ましい実施形態を含めて上記で定義される構造を有する1つのEDS基を有するかのいずれか、または(i)および(ii)の両方が当てはまり;
【0124】
【0125】
(式中、R9B、R10B、R11B、R4、X3およびRMは、これらの好ましい実施形態を含めて上記のように定義され、R4は、その好ましい実施形態を含めて上記で定義される構造を有するEDS基である)。
【0126】
好ましい実施形態では、該キレート基には、α線を放出する放射性核種が結合している。α線を放出する放射性核種は、212Bi、213Biおよび225Acを含む。
上記で指摘したように、電子不足置換基の導入は、内部移行能力を大幅に増大させる。この特性は、インビトロの実験により示されるように、より高い腫瘍取込および腫瘍組織中の特により長い保持をもたらす(実施例を参照)。キレート剤およびアルファ粒子を放出する放射性核種の錯体は、物理的な反跳作用を介して脱錯体化する傾向にあるため、延長された細胞内保持の特性は、インビボで遊離循環放射性核種の確率を減少させ、このように、安全性を増大させ、所望されない放射線を減少させる。
【0127】
本発明の特に好ましい化合物は、以下:
DOTAGA-y(3-I)fk(L-Asu[KuE]-2,4-DNBA)(PSMA-36):
【0128】
【0129】
DOTAGA-F(4-NH2)y-2-nal-k(Suc-N5-orn-C4-EuE)(PSMA-49):
【0130】
【0131】
DOTAGA-F(4-NO2)-y-2-nal-k(Suc-N5-orn-C4-EuE)(PSMA-52):
【0132】
【0133】
2,4-DNBA-Dap(DOTAGA)-y-2-nal-k(Suc-N5-orn-C4-EuE)(PSMA-53):
【0134】
【0135】
DOTAGA-F(4-NH2)y-2-nal-e(Abz-N5-orn-C4-EuE)(PSMA-60):
【0136】
【0137】
DOTAGA-F(4-NH2)y-2-nal-k(d[N5-orn-C4-EuE]-2,4-DNBA)(PSMA-61):
【0138】
【0139】
DOTAGA-F(4-NH2)y-2-nal-k(d[N5-orn-C4-EuE]-TMA)(PSMA-62):
【0140】
【0141】
2,4-DNBA-Dap(DOTAGA)y-2-nal-e(Abz-N5-orn-C4-EuE)(PSMA-65):
【0142】
【0143】
DOTAGA-Dap(TMA)y-2-nal-k(d[N5-orn-C4-EuE]-TMA)(PSMA-66):
【0144】
【0145】
DOTAGA-2-Nal-y-2-nal-k(d[N5-orn-C4-EuE]-TMA)(PSMA-71):
【0146】
【0147】
DOTAGA-F(4-NH2)y-2-nal-k(d[N5-orn-C4-EuE]-3,5-DHBA)(PSMA-78):
【0148】
【0149】
である。
これらの発明の化合物の有利な性質は、
図1において図で提供される、以下の表1および2中のデータに見出すことができる。
【0150】
表1.EuKベースのPSMA阻害剤についてインビトロで調査されたすべてのパラメーターの概要。EはGluを示し、uは尿素、およびKはLysを示す。(「y」のような)小文字1文字は、それぞれのアミノ酸のD型を示す。PSMA阻害剤の半数阻害濃度(IC50)は、LNCaP細胞(1.5*105細胞/ウェル、1時間、4℃、HBSS+1% BSA)および放射性リガンドとして([125I]I-BA)KuEを使用する競合結合アッセイにおいて決定した。([125I]I-BA)KuE(1.25*105細胞/ウェル、PLLコーティングプレート、([125I]I-BA)KuEについてc=0.2nMおよび177Lu標識PSMA阻害剤についてc=1.0nM、DMEM/F-12 +5% BSA、37℃、60分)に対する相対的な細胞取込として[%]で表した内部移行活性。データを、非特異的結合(10μM 2-PMPA)について補正した。IC50および内部移行データを、平均±標準偏差(n=3)として表した。放射標識PSMA阻害剤のlogP(n-オクタノール/PBS中の分配係数)として表した親油性。logPについてのデータを、平均±標準偏差(n=6)として表した。アルブミン結合(HSA)を、対数プロットおよび較正(n=1)後の[%]で表した。構成は、キレート剤を伴わないペプチドスペーサーおよびリンカーの、単純化されたNからC末端の構造組成を記載する。n.d.=未決定。「-II-」は、単純化されたコンジュゲーションを表す。
【0151】
【0152】
表2.EuEベースのPSMA阻害剤についてインビトロで調査されたすべてのパラメーターの概要。PSMA阻害剤の半数阻害濃度(IC50)は、LNCaP細胞(1.5*105細胞/ウェル、1時間、4℃、HBSS+1% BSA)および放射性リガンドとして([125I]I-BA)KuEを使用する競合結合アッセイにおいて決定した。([125I]I-BA)KuE(1.25*105細胞/ウェル、PLLコーティングプレート、([125I]I-BA)KuEについてc=0.2nMおよび177Lu標識PSMA阻害剤についてc=1.0nM。DMEM/F-12 +5% BSA、37℃、60分)に対する相対的な細胞取込として[%]で表した内部移行活性。データを、非特異的結合(10μM 2-PMPA)について補正した。IC50および内部移行データを、平均±標準偏差(n=3)として表した。放射標識PSMA阻害剤のlogP(n-オクタノール/PBS中の分配係数)として表した親油性。平均±標準偏差(n=6)として表したlogPについてのデータ。対数プロットおよび較正(n=1)後の[%]で表したアルブミン結合(HSA)。構成は、キレート剤を伴わないペプチドスペーサーおよびリンカーの、単純化されたNからC末端の構造組成を記載する。n.d.=未決定。「-II-」は、単純化されたコンジュゲーションを表す。
【0153】
【0154】
これらの最も好ましい化合物についての好ましい標識スキームは、本明細書の上記で定義されたとおりである。
さらなる態様では、本発明は、本明細書の上記で開示されたような本発明の1つまたは複数の化合物または塩を含むまたはこれらからなる薬学的組成物を提供する。
【0155】
さらなる態様では、本発明は、本明細書の上記で開示されたような本発明の1つまたは複数の化合物または塩を含むまたはこれらからなる診断用組成物を提供する。
さらなる態様では、本発明は、本明細書の上記で開示されたような本発明の1つまたは複数の化合物または塩を含むまたはこれらからなる治療用組成物を提供する。
【0156】
薬学的組成物は、薬学的に許容される担体、賦形剤および/または希釈剤をさらに含んでもよい。好適な薬学的担体、賦形剤および/または希釈剤の例は、当技術分野で周知であり、リン酸緩衝生理食塩溶液、水、油/水エマルションのようなエマルション、様々な種類の湿潤剤、滅菌溶液等を含む。このような担体を含む組成物は、周知の従来の方法により製剤化することができる。これらの薬学的組成物は、対象に、好適な用量で投与することができる。好適な組成物の投与は、異なる方法により、例えば、静脈内、腹腔内、皮下、筋肉内、局所、皮内、鼻腔内または気管支内投与により、実行されてもよい。特に好
ましくは、該投与は、例えば、膵臓中の部位または脳動脈中または直接脳組織中への、注入および/または送達により実施される。組成物はまた、例えば膵臓または脳等の外部または内部の標的部位への微粒子銃送達により、標的部位に直接投与されてもよい。投与計画は、主治医および臨床的因子により決定される。医学分野で周知のように、任意のある患者についての投与量は、患者の体格、体表面積、年齢、投与されることとなる特定の化合物、性、投与の時間および経路、全体的な健康状態、ならびに同時に投与されている他の薬物を含む、多数の因子に依存する。薬学的に活性な物質は、用量あたり0.1ng~10mg/kg体重の間の量で存在し得るが、特に上述の因子を考慮して、この例示的な範囲を下回るまたは上回る用量が想定される。
【0157】
上記で開示された薬学的組成物、診断用組成物および治療用組成物が本発明の1つまたは複数の化合物を含むかぎりにおいて、好ましくは、さらなる薬学的に活性な化合物、診断用に活性な化合物または治療用に活性な化合物は存在しない。代替的に、さらなる薬学的に活性な、診断用に活性な、または治療用に活性な化合物は、例えば抗がん剤として存在してもよい。
【0158】
化学療法または免疫療法と組み合わせた[177Lu]DOTATATE放射線療法を用いた神経内分泌腫瘍の処置と同様に、治療処置と本発明の化合物との組合せは、相乗的または累積的な処置作用を有するであろう。177Lu PRRTと経口化学療法剤のカペシタビン(ゼローダ;Genentech)との組合せと、[177Lu]DOTATATE単独とを比較する最初の第3相試験は、2017年に、Erasmus MC、Rotterdamで開始された(van Essen M、Krenning EP、Kam BL、de Herder WW、van Aken MO、Kwekkeboom DJ、Report on short-term side effects of treatments with 177Lu-octreotate in combination with capecitabine in seven patients with gastroenteropancreatic neuroendocrine tumours.Eur J Nucl Med Mol Imaging.2008;35:743~748)。
【0159】
ペプチド受容体化学放射性核種療法(PRCRT)と命名された組合せ療法のさらなる試験は、近年公開された(Kong G、Callahan J、Hofman MSら、High clinical and morphologic response using 90Y-DOTA-octreotate sequenced with
177Lu-DOTA-octreotate induction peptide
receptor chemoradionuclide therapy (PRCRT) for bulky neuroendocrine tumours.Eur
J Nucl Med Mol Imaging.2017;44:476~489)。同様の「組合せ処置手法」は、近い将来、PSMA標的放射性リガンド療法の有効性を改善するために実施される。
【0160】
さらなる態様では、本発明は、医薬における使用のための、本明細書の上記で開示されたような本発明の1つまたは複数の化合物または塩を提供する。
好ましい医薬における使用は、核分子画像化とも命名される核画像診断、および/または過剰発現に関連する疾患の標的放射線療法、好ましくは疾患組織に対するPSMAのような、核医薬におけるものである。
【0161】
さらなる態様では、本発明は、がん、好ましくは前立腺がんを診断および/または病期分類する方法における使用のための、本明細書の上記で定義される本発明の化合物または塩を提供する。
【0162】
好ましい適応は、限定されないが、高グレードの神経膠腫、肺がんならびに特に前立腺がんおよび転移性前立腺がんのようながんの検出または病期分類、中リスクから高リスクの原発性前立腺がんを有する患者における転移性疾患の検出、ならびに、生化学的再発前立腺がんを有する患者における血清PSA値が低い場合においてもなおなされる、転移部位の検出である。別の好ましい適応は、血管新生の画像化および可視化である。
【0163】
治療、特に放射性治療に供される医学的適応の観点において、がんは好ましい適応である。前立腺がんは、特に好ましい適応である。
さらなる態様では、本発明は、がん、好ましくは前立腺がんを診断するおよび/または病期分類する方法における使用のための、本明細書の上記で定義される本発明の化合物または塩を提供する。
【0164】
本明細書、特に特許請求の範囲において特徴付けられる実施形態に関して、従属請求項において言及される各実施形態は、該従属請求項が従属する各請求項(独立または従属)の各実施形態と組み合わされることが意図される。例えば、独立請求項1が3つの代替物A、BおよびCを列挙し、従属請求項2が3つの代替物D、EおよびFを列挙し、ならびに請求項3が請求項1および2に従属し3つの代替物G、HおよびIを列挙する事例において、明細書は、他に具体的に言及されないかぎり、A、D、G;A、D、H;A、D、I;A、E、G;A、E、H;A、E、I;A、F、G;A、F、H;A、F、I;B、D、G;B、D、H;B、D、I;B、E、G;B、E、H;B、E、I;B、F、G;B、F、H;B、F、I;C、D、G;C、D、H;C、D、I;C、E、G;C、E、H;C、E、I;C、F、G;C、F、H;C、F、Iの組合せに対応する実施形態を明白に開示することが理解される。
【0165】
同様に、独立および/または従属請求項が代替物を列挙しない事例においても、従属請求項が複数の先行する請求項に戻って言及する場合、これらにより含まれる主題の任意の組合せは、明白に開示されているとみなされることが理解される。例えば、独立請求項1、請求項1に戻って言及する従属請求項2、および請求項2および1の両方に戻って言及する従属請求項3の事例において、請求項3および1の主題の組合せは、請求項3、2および1の主題の組合せのように、明らかにかつ明白に開示されることになる。請求項1から3のいずれか一項に言及するさらなる従属請求項4が存在する事例において、請求項4および1、請求項4、2および1、請求項4、3および1ならびに請求項4、3、2および1の主題の組合せは、明らかにかつ明白に開示されることになる。
【0166】
特に、本発明は、以下の項目において概括される主題を提供する。
1.式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩
【0167】
【0168】
(式中、
mは、2~6の整数、好ましくは2~4、より好ましくは2であり;
nは、2~6の整数、好ましくは2~4、より好ましくは2または4であり;
R1Lは、CH2、NHまたはO、好ましくはNHであり;
R2Lは、CまたはP(OH)、好ましくはCであり;
R3Lは、CH2、NHまたはO、好ましくはNHであり;
X1は、アミド結合、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合、チオエステル結合、尿素架橋、およびアミン結合から選択され、好ましくはアミド結合であり;
L1は、オリゴアミド、オリゴエーテル、オリゴチオエーテル、オリゴエステル、オリゴチオエステル、オリゴ尿素、オリゴ(エーテル-アミド)、オリゴ(チオエーテル-アミド)、オリゴ(エステル-アミド)、オリゴ(チオエステル-アミド)、オリゴ(尿素-アミド)、オリゴ(エーテル-チオエーテル)、オリゴ(エーテル-エステル)、オリゴ(エーテル-チオエステル)、オリゴ(エーテル-尿素)、オリゴ(チオエーテル-エステル)、オリゴ(チオエーテル-チオエステル)、オリゴ(チオエーテル-尿素)、オリゴ(エステル-チオエステル)、オリゴ(エステル-尿素)、およびオリゴ(チオエステル-尿素)から選択される構造を有する、好ましくはオリゴアミドおよびオリゴ(エステル-アミド)から選択される構造を有する二価の連結基であり、
連結基はEDS基を有することができ;
X2は、アミド結合、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合、チオエステル結合、尿素架橋およびアミン結合から選択され、好ましくはアミド結合であり;
R2は、任意選択で置換されたアリール基または任意選択で置換されたアラルキル基であり、アリール基またはアラルキル基は、その芳香族環上で、ハロゲン、好ましくはIおよび-OHから選択される1つまたは複数の置換基で置換されていてもよく;
R3は、任意選択で置換されたアリール基または任意選択で置換されたアラルキル基であり、アリール基またはアラルキル基は、その芳香族環上で、ハロゲン、好ましくはIおよび-OHから選択される1つまたは複数の置換基で置換されていてもよく;
rは、0または1、好ましくは1であり;
pは、0または1であり;
qは、0または1であり;
好ましくはp+q=1であり;
R4は、任意選択で置換されたアリール基およびEDS基から選択され、アリール基は、その芳香族環上で、ハロゲン、好ましくはI、-OHおよび-NH2から選択される1つまたは複数の置換基で置換されていてもよく;
X3は、アミド結合、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合、チオエステル結合、尿素架橋、アミン結合、および式
【0169】
【0170】
の基から選択され、式中、カルボニル基の印のついた結合は、X3をRMへと付着させ、他の印のついた結合は、X3を式(I)の化合物の残部へと付着させ;
好ましくはアミド結合であり;
RMは、キレート化された非放射性または放射性の陽イオンを任意選択で含有するキレート基を含む標識基であり;
ならびに、式中、EDS基は、式(I)の化合物中に少なくとも1回含有され、(E-1A)、(E-1B)、(E-2A)および(E-2B):
【0171】
【0172】
から選択される構造を有し、
式中、
【0173】
【0174】
は、EDS基を式(I)の化合物の残部へと付着させる結合に印をつけたものであり;
sは、1、2または3、好ましくは1または2、より好ましくは1であり;
tは、1、2または3、好ましくは1または2、より好ましくは2であり;
R5Aは、独立して、s>1では各出現について、好ましくは-NO2および-COOHから選択され、より好ましくは-COOHである電子吸引性置換基であり、R5Aとフェニル環との間の結合は、s個のR5A基がフェニル環上の任意の位置でs個の水素原子を置換することを表し;
R5Bは、独立して、s>1では各出現について、式(E-1B)において示される
フェニル環に直接付着する原子において孤立電子対を有する置換基であり、置換基は、好ましくは-OHおよび-NH2から選択され、より好ましくは-NH2であり、R5Bとフェニル環との間の結合は、s個のR5B基がフェニル環上の任意の位置でs個の水素原子を置換することを表し;
R6Aは、独立して、t>1では各出現について、好ましくは-NO2および-COOHから選択され、より好ましくは-COOHである電子吸引性置換基であり、R6Aとフェニル環との間の結合は、t個のR6A基がフェニル環上の任意の位置でt個の水素原子を置換することを表し;ならびに
R6Bは、独立して、t>1では各出現について、式(E-1B)において示されるフェニル環に直接付着する原子において孤立電子対を有する置換基であり、置換基は、好ましくは-OHおよび-NH2から選択され、より好ましくは-OHであり、R6Bとフェニル環との間の結合は、t個のR6B基がフェニル環上の任意の位置でt個の水素原子を置換することを表す)。
【0175】
2.mが2であり、nが2または4であり、R1LがNHであり、R2LがCであり、およびR3LがNHである、項目1の化合物または塩。
3.nが2である、項目1または2の化合物または塩。
【0176】
4.X1がアミド結合である、項目1から3のいずれかの化合物または塩。
5.nが2であり、X1が、アミド結合-C(O)-NH-の炭素原子が基-(CH2)n-に付着しているアミド結合である、項目4の化合物または塩。
【0177】
6.L1が、その主鎖中に合計1~5つ、より好ましくは合計1~3つ、最も好ましくは合計1つまたは2つのアミド結合を含むオリゴアミド、ならびに、その主鎖中に合計2~5つ、より好ましくは合計2~3つ、最も好ましくは合計2つのアミドおよびエステル結合を含むオリゴ(エステル-アミド)から選択される構造を有する二価の連結基であり、連結基がEDS基を有してもよい、項目1から5のいずれかの化合物または塩。
【0178】
7.L1が、その主鎖中に1つまたは2つのアミド結合を含むオリゴアミド構造を有する二価の連結基を表し、連結基がEDS基を有してもよい、項目6の化合物または塩。
8.連結基L1が1つのEDS基を有する、項目1から7のいずれかの化合物または塩。
【0179】
9.X2がアミド結合である、項目1から8のいずれかの化合物または塩。
10.X2が、アミド結合-C(O)-NH-の窒素原子がL1に付着しているアミド結合である、項目9の化合物または塩。
【0180】
11.式(I)の部分-X2-L1-X1-が:
*-C(O)-NH-R7-NH-C(O)-R8-C(O)-NH- (L-1)、
*-C(O)-NH-R9A-NH-C(O)-R10A-C(O)-NH-R11A-NH-C(O)- (L-2A)、および
*-C(O)-NH-R9B-C(O)-NH-R10B-C(O)-NH-R11B-NH-C(O)- (L-2B)
から選択される構造を有する、項目1から10のいずれかの化合物または塩
(式中、*の印のついたアミド結合は、式(I)中のR2を有する炭素原子に付着し、
R7、R8、R9A、R9B、R11AおよびR11Bは、独立して、任意選択で置換されたC2~C10アルカンジイル、好ましくは任意選択で置換された直鎖のC2~C10アルカンジイルから選択され、アルカンジイル基は、各々が、独立して-OH、-OCH3、-COOH、-COOCH3、-NH2、-NHC(NH)NH2およびEDS基から選択される1つまたは複数の置換基により置換されていてもよく、ならびに
R10AおよびR10Bは、任意選択で置換されたC2~C10アルカンジイル、好ましくは任意選択で置換された直鎖のC2~C10アルカンジイル、および任意選択で置換されたC6~C10アレーンジイル、好ましくはフェニレンから選択され、アルカンジイルおよびアレーンジイル基は、各々が、独立して-OH、-OCH3、-COOH、-COOCH3、-NH2、-NHC(NH)NH2およびEDS基から選択される1つまたは複数の置換基により置換されていてもよい。R10Aは、好ましくは、上記で定義される任意選択で置換されたC2~C10アルカンジイル、より好ましくは任意選択で置換された直鎖のC2~C10アルカンジイルである。R10Bは、好ましくは、上記で定義される任意選択で置換されたC6~C10アレーンジイル、より好ましくはフェニレン基、例えば、パラ-フェニレン基である)。
【0181】
12.式(L-1)のR7およびR8中の炭素原子の合計数が、任意の置換基中に含有される炭素原子を除いて、6~20、より好ましくは6~16であり、式(L-2A)のR9A、R10AおよびR11A中の炭素原子の合計数が、任意の置換基中に含有される炭素原子を除いて、6~20、より好ましくは6~16であり、ならびに、式(L-2B)のR9B、R10BおよびR11B中の炭素原子の合計数が、任意の置換基中に含有される炭素原子を除いて、6~20、より好ましくは6~16である、項目11の化合物または塩。
【0182】
13.部分-X2-L1-X1-が構造(L-1)を有し、R8が少なくとも1つの置換基としてEDS基を有し、または
部分-X2-L1-X1-が構造(L-2A)を有し、R10Aが少なくとも1つの置換基としてEDS基を有する、項目11または12の化合物または塩。
【0183】
14.部分-X2-L1-X1-が、
*-C(O)-NH-CH(COOH)-R12-NH-C(O)-R13-C(O)-NH- (L-3)、
*-C(O)-NH-CH(COOH)-R14-NH-C(O)-R15-C(O)-NH-R16-CH(COOH)-NH-C(O)- (L-4)、および
*-C(O)-NH-CH(COOH)-R17-C(O)-NH-R18-C(O)-NH-R19-CH(COOH)-NH-C(O)- (L-5)
から選択される構造を有する、項目7の化合物または塩
(式中、*の印のついた結合は、式(I)中のR2を有する炭素原子に付着し、
R12およびR14は、独立して、直鎖のC2~C6アルカンジイルから、好ましくは直鎖のC3~C6アルカンジイルから選択され、
R13は、直鎖のC2~C10アルカンジイル、好ましくは直鎖のC4~C8アルカンジイルであり、
R15およびR16は、独立して、直鎖のC2~C6アルカンジイルから、好ましくは直鎖のC2~C4アルカンジイルから選択され、
ならびに、R13およびR15の各々は、置換基として1つのEDS基を有してもよく、より好ましくは、R13およびR15の各々は、置換基として1つのEDS基を有し、
R17は、直鎖のC2~C6アルカンジイル、好ましくは直鎖のC2~C4アルカンジイルであり、
R18は、フェニレン基、例えば、パラ-フェニレン基であり、ならびに
R19は、直鎖のC2~C6アルカンジイル、好ましくは直鎖のC2~C4アルカンジイルである)。
【0184】
15.式(L-3)中のR12およびR13中の炭素原子の合計数が、置換基としてEDS基中に含有される炭素原子を除いて、6~16、より好ましくは6~14であり、式(L-4)中のR14、R15およびR16中の炭素原子の合計数が、置換基としてED
S基中に含有される炭素原子を除いて、6~16、より好ましくは6~14である、項目14の化合物または塩。
【0185】
16.R2が、任意選択で置換された-CH2-フェニルおよび任意選択で置換された-CH2-ナフチル、より好ましくは任意選択で置換された-CH2-(2-ナフチル)から選択される任意選択で置換されたアラルキル基であり、フェニルおよびナフチル基が、ハロゲン、好ましくはIおよび-OHから選択される置換基で任意選択で置換されている、項目1から15のいずれかの化合物または塩。
【0186】
17.R2が、式-CH2-ナフチル、より好ましくは-CH2-(2-ナフチル)のアラルキル基である、項目16の化合物または塩。
18.R3が、任意選択で置換された-CH2-フェニルおよび任意選択で置換された-CH2-ナフチル、より好ましくは任意選択で置換された-CH2-フェニルから選択される任意選択で置換されたアラルキル基であり、フェニルおよびナフチル基が、ハロゲン、好ましくはIおよび-OHから選択される置換基で任意選択で置換されている、項目1から17のいずれかの化合物または塩。
【0187】
19.R3が、式-CH2-フェニルのアラルキル基であり、フェニル環は、-OHである1つの置換基と、または1つの置換基-OHと1つの置換基-Iとの組合せで置換されている、項目18の化合物または塩。
【0188】
20.R2が、式
【0189】
【0190】
の基であり、R3が、式
【0191】
【0192】
の基である、項目1から15のいずれかの化合物または塩
(式中、
【0193】
【0194】
は、R2およびR3を、それぞれ、式(I)の化合物の残部へと付着させる結合に印をつけたものである)。
21.R2が、式
【0195】
【0196】
の基であり、R3が、式
【0197】
【0198】
の基である、項目20の化合物または塩
(式中、
【0199】
【0200】
は、R2およびR3を、それぞれ、分子の残部へと付着させる結合に印をつけたものである)。
22.rが1である、項目1から21のいずれかの化合物または塩。
【0201】
23.pが0であり、qが1である、項目1から22のいずれかの化合物または塩。
24.R4が、フェニル、任意選択でナフチル、およびEDS基から選択される、項目1から23のいずれかの化合物または塩。
【0202】
25.R4が、ナフチル、より好ましくは2-ナフチル、およびEDS基から選択される、項目24の化合物または塩。
26.X3が、アミド結合または式
【0203】
【0204】
の基である、項目1から25のいずれかの化合物または塩
(式中、カルボニル基の印のついた結合は、X3をRMへと付着させ、他の印のついた結合は、X3を分子の残部へと付着させる)。
【0205】
27.X3が、炭素原子がRMに付着しているアミド結合-C(O)-NH-である、項目26の化合物または塩。
28.RMが、キレート化された非放射性または放射性の陽イオンを任意選択で含有するキレート基である、項目1から27のいずれかの化合物または塩。
【0206】
29.キレート基が、
(i)2つ以上、好ましくは3つ以上が、酸素原子、硫黄原子および窒素原子から選択される8~20の環原子を伴う大環状環構造;ならびに
(ii)2つ以上、好ましくは3つ以上が、酸素原子、硫黄原子および窒素原子から選択されるヘテロ原子である8~20の主鎖原子を伴う非環式、開鎖のキレート構造
のうちの少なくとも1つを含むキレート基から選択される、項目1から28のいずれかの化合物または塩。
【0207】
30.キレート基が、ビス(カルボキシメチル)-1,4,8,11-テトラアザビシクロ[6.6.2]ヘキサデカン(CBTE2a)、シクロヘキシル-1,2-ジアミン四酢酸(CDTA)、4-(1,4,8,11-テトラアザシクロテトラデカ-1-イル)-メチル安息香酸(CPTA)、N’-[5-[アセチル(ヒドロキシ)アミノ]-ペンチル]-N-[5-[[4-[5-アミノペンチル-(ヒドロキシ)アミノ]-4-オキソブタノイル]アミノ]ペンチル]-N-ヒドロキシブタンジアミド(DFO)、4,11-ビス(カルボキシメチル)-1,4,8,11-テトラアザビシクロ[6.6.2]ヘキサデカン(DO2A)1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-N,N’,N’’,N’’’-四酢酸(DOTA)、2-[1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-4,7,10-三酢酸]-ペンタン二酸(DOTAGA)、N,N’-ジピリドキシルエチレンジアミン-N,N’-ジアセテート-5,5’-ビス(ホスフェート)(DPDP)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、エチレンジアミン-Ν,Ν’-四酢酸(EDTA)、エチレングリコール-O,O-ビス(2-アミノエチル)-N,N,N’,N’-四酢酸(EGTA)、N,N-ビス(ヒドロキシベンジル)-エチレンジアミン-N,N’-二酢酸(HBED)、ヒドロキシエチルジアミン三酢酸(HEDTA)、1-(p-ニトロベンジル)-1,4,7,10-テトラアザシクロデカン-4,7,10-トリアセテート(HP-DOA3)、6-ヒドラジニル-N-メチルピリジン-3-カルボキサミド(HYNIC)、1,4,7-トリアザシクロノナン-1-コハク酸-4,7-二酢酸(NODASA)、1-(1-カルボキシ-3-カルボキシプロピル)-4,7-(カルボキシ)-1,4,7-トリアザシクロノナン(NODAGA)、1,4,7-トリアザシクロノナン三酢酸(NOTA)、4,11-ビス(カルボキシメチル)-1,4,8,11-テトラアザビシクロ[6.6.2]ヘキサデカン(TE2A)、1,4,8,11-テトラアザシクロドデカン-1,4,8,11-四酢酸(TETA)、テルピリジン-ビス(メチレンアミン四酢酸(TMT)、1,4,7,10-テトラアザシクロトリデカン-N,N’,N’’,N’’’-四酢酸(TRITA)、トリエチレンテトラアミン六酢酸(TTHA)、N,N’-ビス[(6-カルボキシ-2-ピリジル)メチル]-4,13-ジアザ-18-クラウン-6(H2マクロパ(macropa))および4-アミノ-4-{2-[(3-ヒドロキシ-1,6-ジメチル-4-オキソ-1,4-ジヒドロ-ピリジン-2-イルメチル)-カルバモイル]-エチル}ヘプタン二酸 ビス-[(3-ヒドロキシ-1,6-ジメチル-4-オキソ-1,4-ジヒドロ-ピリジン-2-イルメチル)-アミド](THP)から選択されるキレート剤の残基であり;
残基が、エステルまたはアミド結合、より好ましくはアミド結合を介する、キレート剤中に含有されるカルボキシル基と化合物の残部との共有結合により提供される、項目1から29のいずれかの化合物または塩。
【0208】
31.キレート剤がDOTAおよびDOTAGAから選択される、項目30の化合物ま
たは塩。
32.X3が、キレート基が分子の残部に付着しているアミド結合である、項目30または31の化合物または塩。
【0209】
33.RM-X3-が、式
【0210】
【0211】
の基である、項目32の化合物または塩
(式中、
【0212】
【0213】
の印のついた結合は、式(I)の化合物の残部に付着し、キレート基は、キレート化された非放射性または放射性の陽イオンを含有してもよい)。
34.キレート基が、キレート化された陽イオン、好ましくは、44Sc、47Sc、51Cr、52mMn、58Co、52Fe、56Ni、57Ni、62Cu、64Cu、67Cu、66Ga、68Ga、67Ga、89Zr、90Y、89Y、94mTc、99mTc、97Ru、105Rh、109Pd、111Ag、110mIn、111In、113mIn、114mIn、117mSn、121Sn、127Te、142Pr、143Pr、149Pm、151Pm、149Tb、153Sm、157Gd、161Tb、166Ho、165Dy、169Er、169Yb、175Yb、172Tm、177Lu、186Re、188Re、191Pt、197Hg、198Au、199Au、212Pb、203Pb、211At、212Bi、213Bi、223Ra、225Ac、および227Thの陽イオン、または18F-[AlF]2+のような18Fを含む陽イオン性分子から選択されるキレート化された放射性の陽イオンを含む、項目1から33のいずれかの化合物または塩。
【0214】
35.キレート基が、44Sc、47Sc、64Cu、67Cu、68Ga、90Y、111In、161Tb、166Ho、177Lu、188Re、212Pb、212Bi、213Bi、225Ac、および227Thの陽イオン、または18Fを含む陽イオ
ン性分子から選択されるキレート化された陽イオンを含む、項目34の化合物または塩。
【0215】
36.式(I)の化合物が1つまたは2つのEDS基を含有する、項目1から35のいずれかの化合物または塩。
37.式(I)の化合物が、連結基L1が有する1つのEDS基を含有するか、または1つはR4により表され、1つはL1が有する2つのEDS基を含有するかのいずれかである、項目36の化合物または塩。
【0216】
38.EDS基(E-1A)中、置換基R5Aはs>1について同一であり、-NO2および-COOHから選択され;EDS基(E-2A)中、置換基R6Aはt>1について同一であり、-NO2および-COOHから選択される、項目1から37のいずれかの化合物または塩。
39.EDS基(E-1B)中、置換基R5Bはs>1について同一であり、-OHおよび-NH2から選択され;EDS基(E-2B)中、置換基R6Bはt>1について同一であり、-OHおよび-NH2から選択される、項目1から38のいずれかの化合物または塩。
【0217】
40.式(E-2A):
【0218】
【0219】
を有するEDS基を含有する、項目1から39のいずれかの化合物または塩
(式中、
【0220】
【0221】
は、EDS基を式(I)の化合物の残部へと付着させる結合に印をつけたものであり;および
tは1または2であり、R6Aは-NO2または-COOHから選択される)。
【0222】
41.EDS基が式(E-3)
【0223】
【0224】
を有する、項目1から38のいずれかの化合物
(式中、
【0225】
【0226】
は、EDS基を式(I)の化合物の残部へと付着させる結合に印をつけたものである)。
42.以下の式(Ia)
【0227】
【0228】
または薬学的に許容されるその塩を有する、項目1から41のいずれかの化合物
(式中、n、X1、L1、X2、R2、R3、R4、q、p、X3およびRMは、項目1から41におけるように定義され、EDS基は、少なくとも1回含有され、項目1から41において定義される構造を有する)。
【0229】
43.以下の式(Ib)
【0230】
【0231】
または薬学的に許容されるその塩を有する、項目42の化合物
(式中、n、X1、L1、X2、R2、R3、R4、X3およびRMは、項目1から42におけるように定義され、EDS基は、少なくとも1回含有され、項目1から42において定義される構造を有する)。
【0232】
44.以下の式(Ic)
【0233】
【0234】
または薬学的に許容されるその塩を有する、項目43の化合物
(式中、n、X1、L1、X2、R4、X3およびRMは、項目1から42におけるように定義され、EDS基は、少なくとも1回含有され、項目1から42において定義される構造を有する)。
【0235】
45.以下の式(Id)または(Ie)または薬学的に許容されるその塩を有する、項目44の化合物
【0236】
【0237】
(式中、R9A、R10A、R11A、R4、X3およびRMは、項目1から44におけるように定義され、(i)R4が、項目1から44で定義される構造を有するEDS基であるか、もしくは(ii)R10Aが、項目1から44において定義される構造を有する1つのEDS基を有するかのいずれか、または(i)および(ii)の両方が当てはまり);
【0238】
【0239】
(式中、R9B、R10B、R11B、R4、X3およびRMは、項目1から44で定義され、R4は、項目1から44において定義される構造を有するEDS基である)。
46.以下の式(If)または(Ig)または薬学的に許容されるその塩を有する、項目45の化合物
【0240】
【0241】
(式中、R9A、R10A、R11A、R4、X3およびRMは、項目1から45におけるように定義され、(i)R4が、項目1から45で定義される構造を有するEDS基であるか、もしくは(ii)R10Aが、項目1から45において定義される構造を有する1つのEDS基を有するかのいずれか、または(i)および(ii)の両方が当てはまり);
【0242】
【0243】
(式中、R9B、R10B、R11B、R4、X3およびRMは、項目1から45におけるように定義され、R4は、項目1から45において定義される構造を有するEDS基である)。
【0244】
47.以下の式:
【0245】
【0246】
【0247】
【0248】
【0249】
の1つを有する、項目1の化合物またはその塩。
48.項目1から47のいずれか1つの、1つまたは複数の化合物または塩を含む、またはそれらからなる薬学的または診断用組成物。
【0250】
49.(a)前立腺がんを含むがん;または
(b)血管新生/血管形成
の診断および/または処置の方法における使用のための、項目1から47のいずれか1つの化合物または塩。
【図面の簡単な説明】
【0251】
【
図1】[
nat/
177Lu]PSMA I&Tおよび[
nat/
177Lu]PSMA-62および[
nat/
177Lu]PSMA-66についての特徴のウェブチャートの図である。
【
図2】選択された
177Lu標識PSMA阻害剤の、LNCaP細胞からの外部移行動態を示す図である。1.25*10
5細胞/ウェルを、DMEM溶液(5% BSA)中、37℃で、それぞれの放射性リガンド(c=1.0nm)とともに1時間インキュベートした。次に、上清を除去し、DMEM溶液(5% BSA、37℃)で1回洗浄した。その後、A)DMEM溶液(5% BSA)のみ、またはB)遮断DMEM溶液(5% BSA、10μm 2-PMPA)のいずれかを、代替として添加した。t=0分での総細胞内部移行活性を非特異的結合(10μm 2-PMPA)について補正し、100%に正規化した。すべてのデータを、平均±標準偏差(n=3)として表した。
【
図3】LNCaP腫瘍担持CB-17 SCIDマウス(それぞれ、n=4)における、2.5~3.0MBq(0.15~0.25nmol)の[
177Lu]PSMA-66および[
177Lu]PSMA I&Tの生体内分布(%ID/g単位で)を示す図である。
【
図4】LNCaP腫瘍担持CB-17 SCIDマウスにおける、およそ10.3MBq(0.19nmol トレーサー)の[
68Ga]PSMA-36の注入後のμPETスキャンの最大値投影法(MIP)(動的スキャン、合計フレーム1~1.5時間 p.i.)(左上)を示す図である。LNCaP腫瘍担持CB-17 SCIDマウスにおける血液プール(心臓)、腎臓、腫瘍、筋肉、涙腺および唾液腺の動的PETデータ(取得時間90分、OSEM 3D再構成)からの、[
68Ga]PSMA-36の%ID/mL単位のTAC(対数プロット)。
【
図5-1】LNCaP腫瘍担持CB-17 SCIDマウスにおける、それぞれおよそ11および13MBq(0.15~0.25nmolトレーサー)の
68Ga標識PSMA阻害剤、PSMA-62およびPSMA-66の注入後の、μPETスキャンの最大値投影法(MIP)(動的スキャン、合計フレーム1~1.5時間 p.i.)(左上)を示す図である。
【
図5-2】両方の
68Ga標識トレーサーについての、LNCaP腫瘍担持CB-17 SCIDマウスにおける、血液プール(心臓)、腎臓、腫瘍、筋肉の動的PETデータ(取得時間90分、OSEM 3D再構成)からの、それぞれの
68Ga標識PSMA阻害剤の%ID/mL単位のTAC(対数プロット)。
【
図6】LNCaP腫瘍担持CB-17 SCIDマウス(それぞれ、n=4)における、2.5~6.0MBq(0.15~0.25nmol)の[
177Lu]PSMA-62、[
177Lu]PSMA-66、[
177Lu]PSMA-71および[
177Lu]PSMA I&Tの生体内分布(%ID/g単位で)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0252】
実施例は、本発明を説明する。
【実施例】
【0253】
実施例1
材料および方法
1.全体的な情報
Fmoc-(9-フルオレニルメトキシカルボニル-)およびすべての他の保護されたアミノ酸類似体を、Bachem(Bubendorf、Switzerland)またはIris Biotech(Marktredwitz、Germany)から購入した。2-クロロトリチルクロリド(2-CTC)樹脂を、PepChem(Tubingen、Germany)から入手した。Chematech(Dijon、France)が、キレート剤DOTAGA無水物を送達した。PSMA-DKFZ-617を、ABX advanced chemical compounds(Radeberg、Germany)から購入した。すべての必要な溶媒および他の有機試薬を、Alfa Aesar(Karlsruhe、Germany)、Sigma-Aldrich(Munich、Germany)またはVWR(Darmstadt、Germany)のいずれかから購入した。ペプチドの固相合成を、Intelli-Mixerシリンジ振とう器(Neolab、Heidelberg、Germany)を使用して、手動操作により実施した。分析的逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)を、Shimadzu勾配RP-HPLCシステム(Shimadzu Deutschland GmbH、Neufahrn、Germany)を使用して、Nucleosil 100
C18カラム(5μm、125×4.0mm、CS GmbH、Langerwehe、Germany)で行った。ペプチドの分析を、異なる勾配のH2O(溶媒A)中の0.1%(v/v)トリフルオロ酢酸(TFA)およびアセトニトリル(MeCN)(溶媒B)を一緒に伴う0.1%TFA(v/v)を、1mL/分の一定流量で(具体的な勾配は本文中で引用される)適用することにより行った。Shimadzu SPD 20 A prominence UV/VIS検出器(Shimadzu Deutschland GmbH)を、λ=220nmおよび254nmで使用した。HSA結合を、Chiral Technologies Europe(Illkirch、France)から購入したChiralpak HSA(5μm、10×3mm)ガードカートリッジ(Daicel Chemical Industries)に接続されたChiralpak HSA(5μm、50×3mm)分析カラムを使用して決定した。HSA結合についての非線形回帰を、OriginPro 2016G(Northampron、USA)を使用して行った。保持時間tR、ならびに容量因子K’は、本文に引用される。ペプチドの分取RP-HPLCを、5mL/分の一定流量で、Multospher
100 RP 18-5カラム(250×20mm、CS GmbH)を使用するShimadzu RP-HPLCシステムで達成した。放射性ヨウ化された参照リガンドの分析的および分取ラジオRP-HPLCを、Nucleosil 100 C18カラム(5μm、125×4.0mm)を使用して行った。放射能を、UV光度計の差し込み口を、EG&G Ortec(Munich、Germany)からのNaI(Tl)ウェル型シンチレーション検出器へ接続することで検出した。68Gaおよび177Lu標識
化合物を、前に公開したように[1、2]分析した。エレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI-MS)スペクトルを、expressionL CMS質量分析装置(Advion Ltd.、Harlow、UK)およびVarian 500-MS IT質量分析装置(Agilent Technologies、Santa Clara、USA)で入手した。ブラッドフォードアッセイについて、JASCO Germany GmbH(Gross-Umstadt、Germany)からのV-630 UV-Vis分光光度計を使用し、S9分画の遠心分離を、Beckman Coulter GmbH(Krefeld、Germany)からのAvanti JXN-26遠心機で行った。放射性のS9代謝産物アッセイの遠心分離を、Thermo Fisher Scientific Messtechnik GmbH(Munich、Germany)からのHeraeus PICO 17遠心機を使用して行った。NMRデータを、Bruker(Billerica、USA)からのAV 300(300 MHz)またはAV 400(400 MHz)を使用して、300Kを適用して入手した。エクスビボでの代謝産物解析のためのS9分画のインキュベーションを、Biometra UNO Thermoblock(Biometra、Gottingen、Deutschland)で行った。
【0254】
2.合成プロトコル(SP)
SP-1:2-CTC樹脂ローディング:N,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)(4.5当量)を伴う無水ジクロロメタン(DCM)中、2-CTC樹脂(1.6mmol/g)に、Fmoc-AA-OH(1.5当量)を、室温(RT)で2時間ロードした。残りのトリチルクロリドを、2mL/gメタノール(MeOH)を添加し15分間おくことによりキャッピングした。この後、樹脂を濾過し、DCM(2×)、ジメチルホルムアミド(DMF)(2×)およびMeOH(2×)でそれぞれよく洗浄し、真空下で終夜保存した。ローディングを、重量の差異を使用して決定する。
【0255】
【0256】
式1.樹脂ローディングの決定:m合計:ロードされた樹脂(Fmoc-AA-OHおよびHCl)の質量;MAs:アミノ酸のモル質量;M正味重量:使用した樹脂の質量;MHCl:塩酸のモル質量
SP-2:TBTU/HOBtカップリングを介したペプチド合成:DMF(8ml/g 樹脂)中のFmoc-AA-OH(2.0当量)、N,N,N’,N’-テトラメチル-O-(ベンゾトリアゾール-1-イル)ウロニウムテトラフルオロボレート(TBTU)(2.0当量)、N-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)(2.0当量)、DIPEA(4.5当量)溶液を、樹脂に結合した遊離アミンペプチドに添加し、2時間室温で振盪し、DMF(6×)で洗浄した。第二級または芳香族アミンとのカップリングを、異なるプロトコルを採用して行った。Fmoc-AA-OH(3.0当量)を、1-[Bis(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジニウム 3-オキシド ヘキサフルオロ-ホスフェート(HATU)(3.0当量)、1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾール(HOAt)(3.0当量)およびDIPEA(6.0当量)と一緒にDMF(8mL/g 樹脂)に溶解し、15分間撹拌した。予備活性化した溶液を、樹脂に結合したペプチドに添加し、室温で2時間振盪した。反応完了後、樹脂をDMF(6×)で洗浄した。全体として、すべてのペプチド足場を、前に記載したように合成した(Weineisen,M.;Schottelius,M.;Simecek,J.;Eiber,M.;Schwaiger,M.;Weste
r,H. Development and first in human evaluation of PSMA I&T-A ligand for diagnostic imaging and endoradiotherapy of prostate cancer.Journal of Nuclear Medicine 2014、55、1083~1083;Weineisen,M.;Simecek,J.;Schottelius,M.;Schwaiger,M.;Wester,H.-J. Synthesis and preclinical evaluation of DOTAGA-conjugated PSMA ligands for functional imaging and endoradiotherapy of prostate cancer. EJNMMI research 2014、4、1)。
【0257】
SP-3:樹脂上でのFmoc脱保護:樹脂に結合したFmoc保護ペプチドを、DMF中の20%ピペリジン(v/v)で5分間、2回目には15分間処理した。その後、樹脂をDMF(8×)でよく洗浄した。
【0258】
SP-4:樹脂上でのDde脱保護:N-(1-(4,4-ジメチル-2,6-ジオキソシクロヘキシリデン)-エチル)(Dde)保護ペプチド(1.0当量)を、DMF中の2.0% ヒドラジン一水和物(N2H4・H2O)(v/v)溶液に溶解した。15分後、脱保護したペプチドを、樹脂に結合した場合、DMF(6×)で洗浄するか、またはジエチルエーテル(Et2O)中に沈殿させ、粗生成物を得た。FmocおよびDde保護基が存在し、Dde脱保護のみが必要な場合、樹脂にロードしたペプチドを、NH2OH・HCl(630mg)、イミダゾール(460mg)、DCM(0.5mL)、DMF(0.5mL)およびN-メチル-2-ピロリドン(NMP)(2.5mL)を含有する溶液で、室温で3時間処理した。その後、樹脂にロードしたペプチドをDMF(6×)でよく洗浄した。
【0259】
SP-5:樹脂上のアロック/アリル脱保護:アロック/アリル保護基を、トリイソプロピルシラン(TIPS)(50.0当量)および(トリフェニル)パラジウム(0)(Pd(PPh3)4)(0.3当量)を含有するDCM溶液(6.0mL)を使用して、樹脂に結合したペプチドから除去した。樹脂を、この溶液で、室温で1.5時間処理した。最終的に、樹脂をDCM(3×)で洗浄して、Pd(PPh3)4を除去した。
【0260】
SP-6:tBu/Boc脱保護:TFA(およそ500μL)中の粗生成物を溶解し、室温で40分間撹拌することにより、tert-ブチル(tBu)/tert-ブチルオキシカルボニル(Boc)保護基の除去を実行した。その後、窒素気流を使用して、TFAをほぼ完全に除去した。Et2O中での沈殿後、粗生成物を遠心分離し、上清を除去した。乾燥ペレットを、以下の合成ステップのためにさらに使用した。
【0261】
SP-7.1:A)側鎖保護基の保存を伴う樹脂からのペプチド切断:完全に保護された、樹脂に結合したペプチドを、DCM/トリフルオロエタノール(TFE)/酢酸(AcOH)(6/3/1;v/v/v)の混合物中に溶解し、30分間振盪した。溶液を濾別し、樹脂を別の切断溶液中に、さらに30分間溶解した。分画を合わせ、溶媒を減圧下で濃縮した。濾液をトルエン中に再溶解し、減圧下で濃縮してAcOHを除去した。水またはEt2O中での沈殿により、粗製の側鎖保護ペプチドが生じた。
【0262】
SP-7.2:B)同時にすべての酸不安定性保護基の脱保護を伴う、樹脂からのペプチド切断:完全に保護された、樹脂に結合したペプチドを、TFA/TIPS/水(95/2.5/2.5;v/v/v)の混合物中に溶解し、30分間振盪した。溶液を濾別し、樹脂を同一の方法で、さらに30分間処理した。その後、分画を合わせ、溶媒を一定の
窒素気流下で濃縮した。粗製ペプチドをEt2Oに沈殿させ、終夜放置して乾燥させた。
【0263】
SP-8:炭水化物部分の脱アセチル化:KCN(0.5当量)を含有するMeOH中に、終夜室温で、同時に撹拌しながら、PSMA阻害剤を溶解することにより(Herzig,J.、Nudelman,A.、Gottlieb,H. E.、Fischer,B. Studies in sugar chemistry. 2. A simple method for O-deacylation of polyacylated sugars. The Journal of Organic Chemistry 1986、51、727~730)脱アセチル化を完遂した。最終生成物を、RP-HPLCにより精製した。
【0264】
SP-9:非放射性の金属錯化PSMA阻害剤の調製:
SP-9.1:natGa化合物:natGaIII錯体の調製のために、2.0mmのPSMA阻害剤の水性(aq.)溶液(50μL)および2.0mmのGa(NO3)3のaq.溶液(50μL)を混合し、40℃で30分間加熱した。キレート形成を、RP-HPLCおよびESI-MSを使用して評価した。生じた1.0mm溶液を希釈し、インビトロのIC50決定およびHSA結合のために使用した。
【0265】
SP-9.2:natLu化合物:対応するnatLuIII錯体を、2.5モル過剰のLuCl3(20mm aq.溶液)を伴う2.0mmのPSMA阻害剤の水性溶液から調製し、95℃に30分間加熱した。冷却後、natLuIIIキレート形成を、RP-HPLCおよびESI-MSを使用して確認した。生じたそれぞれのnatLu錯体の1.0mm水性溶液を、次に希釈し、さらなる処理なしに、インビトロのIC50試験に使用した。
【0266】
3.PSMA-36およびEuEベースのPSMA阻害剤の構成要素
ジ-tert-ブチル(((S)-6-アミノ-1-(tert-ブトキシ)-1-オキソヘキサン-2-イル)カルバモイル)-L-グルタメート
【0267】
【0268】
((OtBu)KuE(OtBu)2)(1):tert-ブチル保護されたLys-尿素-Glu結合モチーフ(EuK)の合成を、液相合成により前に記載したように合成した[3]。簡潔には、L-ジ-tert-ブチル-グルタメート・HCl(2.0g、7.71mmol、1.0当量)を含有するDCMの溶液を氷上で30分冷却し、その後、トリメチルアミン(TEA)(2.69mL、19.28mmol、2.5当量)および4-(ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP)(3.3mg、0.3mmol、0.04当量)で処理した。5.0分間のさらなる撹拌後、1,1’-カルボニルジイミダゾール(CDI)(1.38g、8.84mmol、1.1当量)をDCM中に溶解し、30分間の期間をかけてゆっくりと添加した。反応混合物を終夜さらに撹拌し、室温まで加温することができた。飽和(sat.)NaHCO3溶液(8mL)を使用し、それに伴っ
て水(2×)およびブライン(2×)で洗浄するステップを行い反応を停止させ、飽和Na2SO4溶液で乾燥させた。残りの溶媒を真空中で除去し、粗生成物(S)-ジ-tert-ブチル 2-(1H-イミダゾール-1-カルボキサミド)ペンタンジオエートを、さらなる精製なしに使用した。RP-HPLC(15分間、10~90% B):tR=12.2分;K’=5.8。モノアイソトピック質量計算値(C17H27N3O5):353.4;実測値:m/z=376.1[M+Na]+。粗生成物(S)-ジ-tert-ブチル 2-(1H-イミダゾール-1-カルボキサミド)ペンタンジオエート(2.72g、7.71mmol、1.0当量)を1,2-ジクロロエタン(DCE)中に溶解し、氷上で30分冷却した。この溶液に、TEA(2.15mL、15.42mmol、2.0当量)およびH-Lys(Cbz)-OtBu・HCl(2.87g、7.71mmol、1.0当量)を添加し、溶液を40℃で終夜撹拌した。残りの溶媒を蒸発させ、酢酸エチル(EtOAc)/ヘキサン/TEA(500/500/0.8;v/v/v)を含有する溶離液混合物を伴うシリカゲルフラッシュクロマトグラフィーを使用して、粗生成物を精製した。溶媒の除去後、(9R,13S)-トリ-tert-ブチル-3,11-ジオキソ-1-フェニル-2-オキサ-4,10,12-トリアザペンタデカン-9,13,15-トリカルボキシレートを、無色の油状物として得た。RP-HPLC(15分間、40~100% B):tR=14.5分;K’=6.25。モノアイソトピック質量計算値(C32H51N3O9)=621.8;実測値:m/z=622.3[M+H]+。(OtBu)KuE(OtBu)2(1)の合成のために、(9R,13S)-トリ-tert-ブチル-3,11-ジオキソ-1-フェニル-2-オキサ-4,10,12-トリアザペンタデカン-9,13,15-トリカルボキシレート(3.4g、5.47mmol、1.0当量)を、エタノール(EtOH)(75mL)に溶解し、活性炭上のパラジウム(0.34g、0.57mmol、0.1当量)(10%)をこの溶液に与えた。反応混合物を含有するフラスコを、最初に水素気流でパージし、溶液を、軽い水素圧下(バルーン)で、終夜室温で撹拌させた。粗生成物をセライトで精製し、溶媒を真空中で蒸発させた。所望の生成物1を、ろう状の固体として得た(1.9g、3.89mmol、収率71.6%)。RP-HPLC(15分間、10~90% B):tR=12.6分;K’=6.4。モノアイソトピック質量計算値(C24H45N3O7)=487.6;実測値:m/z=488.3[M+H]+,510.3[M+Na]+。
【0269】
(S)-5-(tert-ブトキシ)-4-(3-((S)-1,5-ジ-tert-ブトキシ-1,5-ジオキソペンタン-2-イル)ウレイド)-5-オキソペンタン酸((OtBu)EuE(OtBu)2)(2):
【0270】
【0271】
tert-ブチル保護されたGlu-尿素-Glu結合モチーフ(EuE)の合成を、H-L-Lys(Cbz)-OtBu・HClの代わりにH-L-Glu(OBzl)-OtBu・HClを使用して、1[3]について記載されたものと同様に合成した。所望の生成物を、ろう状かつ吸湿性の強い固体として得た(4.10g、8.39mmol、収率84%)。RP-HPLC(15分間、10~90% B):tR=11.3分;K
’=7.69。モノアイソトピック質量計算値(C23H49N2O9)=488.3;実測値:m/z=489.4[M+H]+,516.4[M+Na]+。
【0272】
(S)-NHFmoc-Asu(OtBu)-OBzl(5):DMF中の(S)-Fmoc-Asu(OtBu)-OH(50mg、107.0μmol、1.0当量)溶液を、HOAt(21.8mg、0.16mmol、1.5当量)、HATU(61.0mg、161.0μmol、1.5当量)およびDIPEA(73.2μL、0.48mmol、4.5当量)に添加した。室温での15分間の撹拌後、ベンジルアルコール(22.2μL、0.32mmol、3.0当量)をさらに添加し、溶液を終夜撹拌した。最終的に溶媒を真空中で除去した。5の反応完了を、RP-HPLCにより分析した(15分間、10~90% B):tR=17.1分;K’=7.55。5についてのモノアイソトピック質量計算値(C34H39NO6):557.28;実測値:m/z=580.7[M+Na]+。
【0273】
(S)-NHFmoc-Asu-OBzl(6):粗生成物5のtBu脱保護を、TFA(95%)およびDCM(5%)の撹拌混合物(v/v)を用いて、45分間、室温で行った。溶液の蒸発後、粗生成物6を分取RP-HPLCを使用して精製した(15分間、60~80% B):tR=9.3分;K’=8.9。6についてのモノアイソトピック質量計算値(C30H31NO6)=501.22;実測値:m/z=524.5[M+Na]+。
【0274】
OBzl-(S)-Fmoc-Asu[(OtBu)KuE(OtBu)2](7):DMF中の6(51.8mg、10.3μmol、1.0当量)の溶液を、HOBt(20.9mg、0.15mmol、1.5当量)、TBTU(36.3mg、15.5μmol、1.5当量)およびDIPEA(79.4μL、59.7mg、0.46mmol、4.5当量)に添加した。15分間の撹拌後、1(75.6mg、15.5μmol、1.5当量)を添加し、20時間、室温でさらに撹拌した。粗生成物7を分取RP-HPLCを使用して精製した(15分間、70~80% B):tR=8.9分;K’=1.97。7についてのモノアイソトピック質量計算値(C54H74N4O12)=970.53;実測値:m/z=971.8[M+H]+。
【0275】
(S)-Fmoc-Asu[(OtBu)KuE(OtBu)2](8):ベンジルアルコール(Bzl)脱保護のために、7(57.2mg、65.0μmol、1.0当量)をEtOH(2.0mL)に溶解し、活性炭上のパラジウム(10%)(5.72mg、9.0μmol、0.1当量)を添加した。フラスコを、水素気流であらかじめパージし、溶液を、軽い水素圧下(バルーン)で撹拌した。70分間の撹拌後、粗生成物をセライトで濾過し、EtOHを真空中で蒸発させ、生成物を分取RP-HPLCを使用して精製した(15分間、70~70.5% B):tR=6.5分;K’=0.54。5についてのモノアイソトピック質量計算値(C47H68N4O12)=880.48;実測値:m/z=881.8[M+H]+。
【0276】
OPfp-(S)-Fmoc-Asu[(OtBu)KuE(OtBu)2](9):
【0277】
【0278】
乾燥DMF中の8(13.6mg、15.4μmol、1.0当量)の溶液を、DIC(4.77μL、1.94mg、30.8μmol、2.0当量)およびPfpOH(5.67mg、30.8μmol、2.0当量)に添加した。5分間の撹拌後、ピリジン(2.49μL、31.0μmol、2.0当量)を添加し、溶液を終夜室温で撹拌させた。9の反応完了を、RP-HPLCにより分析した(15分間、10~90% B):tR=17.2分;K’=7.6。9についてのモノアイソトピック質量計算値(C53H67F5N4O12):1046.47;実測値:m/z=1069.8[M+Na]+。
【0279】
NHS-2,4-ジニトロベンゾエート(NHS-DNBA)(27):
【0280】
【0281】
乾燥THF中の2,4-ジニトロ安息香酸(DNBA)溶液(10.0mg、47.1μmol、1.0当量)を、N、N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)(9.7mg、47.1μmol、1.0当量)およびN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)(10.8mg、94.3μmol、2.0当量)に与え、反応混合物を終夜撹拌させた。粗生成物を、RP-HPLCを使用して精製した。RP-HPLC(15分間、10~90% B):tR=10.21分;K’=4.1。モノアイソトピック質量計算値(C11H7N3O8)=309.02;実測値:ESI-MSで未検出。
DOTAGA-3-iodo-D-Tyr-D-Phe-D-Lys-OH(DOTAGA-y(3-I)fk)(30):
【0282】
【0283】
30の合成を、前に記載したような[2、3]固相法を介して完遂した。簡潔には、最初の開始点は、SP-1のFmoc-D-Lys(Boc)-OHによる2-CTC樹脂のローディングであった。リシンのコンジュゲート後、FmocをSP-3により脱保護し、Fmoc-D-フェニルアラニンを、SP-2を適用してカップリングした。同一の手順を、Fmoc-D-Tyr(3-I)-OHをカップリングするために使用した。反応完了後、Fmoc保護基をSP-3により切断し、樹脂に結合したペプチドを、DMF中のDOTAGA無水物(2.0当量)およびDIPEA(2.0当量)を使用して、キレート剤とともに凝縮した。反応物を、48時間、室温で撹拌させた。最終的に、粗生成物をSP-7.2により樹脂から切断し、Et2O中で沈殿させ、遠心分離した。上清を除去し、30をRP-HPLCを使用して精製した。RP-HPLC(15分間、10~90% B):tR=6.2分;K’=2.1。モノアイソトピック質量計算値(C43H61IN8O14)=1,040.34;実測値:m/z=1,040.5[M+H]+、m/z=521.3[M+2H]2+、m/z=1,063.4=[M+Na]+。
【0284】
DOTAGA-y(3-I)fk(L-Asu[KuE]) (PSMA-8):
【0285】
【0286】
30(5.0mg、4.8μmol、1.0当量)、9(7.5mg、7.2μmol、1.5当量)およびDIPEA(3.3μL、21.6μmol、4.0当量)を含有するDMFの溶液を添加した。反応溶液を、終夜室温で撹拌させた。反応完了後、溶媒を真空中で除去し、粗生成物をDMF中のピペリジン(20/80;v/v)の混合物で15分間処理し、Fmoc脱保護を達成した。溶媒を、真空中の蒸発を介して、およそ300μLまで減少させ、Et2O中で沈殿させ、遠心分離した。生じたペレットを、tBu除去のためにSP-6により処理した。最終生成物をRP-HPLCを介して精製した(15分間、10~90% B):tR=6.09分;K’=2.05。モノアイソトピック質量計算値(C63H93IN12O23)=1,512.55;実測値:m/z=1,513.9[M+H]+,757.8[M+2H]2+。
【0287】
DOTAGA-y(3-I)fk(L-Asu[KuE]-2,4-DNBA)(PSMA-36):
【0288】
【0289】
PSMA-36の合成を、PSMA-8(3.0mg、3.3μmol、1.0当量)のDMF中への溶解、ならびに27(4.1mg、13.2μmol、4.0当量)およびDIPEA(2.3μL、13.2μmol、4.0当量)の添加により、達成した。溶液を、10時間、室温で撹拌し、最終生成物をRP-HPLCにより精製した(15分間、10~50% B):tR=12.12分;K’=5.06。モノアイソトピック質量計算値(C70H95IN14O28)=1,706.55;実測値:m/z=1,707.8[M+H]+,854.7[M+2H]2+。
【0290】
[natLu]DOTAGA-y(3-I)fk(L-Asu[KuE]-2,4-DNBA)([natLu]PSMA-36):RP-HPLC(15分間、10~60%
B):tR=9.81分;K’=3.91。モノアイソトピック質量計算値(C70H92IN14O28Lu)=1,878.47;実測値:m/z=1,879.9[M+H]+。
【0291】
【0292】
PSMA-36の合成の概略図。(a)HOAt、HATU、DIPEA、ベンジル-アルコール、[DMF];(b)95% TFA、5% DCM;(c)1、HOBt、TBTU、DIPEA、[DMF];(d)Pd/C(10%)、H2、[EtOH];(
e)DIC、PFP、ピリジン、[DMF];(f)30、DIPEA、[DMF];(g)DMF中の20% ピペリジン、[DMF];(h)TFA;(i)27、DIPEA[DMF]
4.EuEベースのPSMA阻害剤PSMA-52およびPSMA-53の合成
DOTAGA-F(4-NO2)-y-2-nal-k(Suc-N5-orn-C4-EuE)(PSMA-52):
【0293】
【0294】
最初のFmoc-D-Orn(NHDde)-OHの樹脂ローディングを、SP-1に記載したように行った。SP-3によるFmoc脱保護後、SP-2により、2(1.5当量)をD-Orn(NHDde)にカップリングした。次のステップにおいて、Dde保護基をSP-4により切断し、遊離アミノ基をDMF中に溶解した無水コハク酸(4.0当量)およびDIPEA(1.5当量)で処理した。反応溶液を、終夜室温で撹拌させた。次に、Fmoc-D-Lys-OtBu・HCl(1.5当量)をSP-2によりカップリングし、SP-3に記載したように、Fmocを脱保護した。続いてのFmoc保護されたアミノ酸Fmoc-D-2-Nal-OH、Fmoc-D-Tyr(OtBu)-OHおよびFmoc-L-Phe(4-NO2)-OHとのコンジュゲーションを、SP-2に記載したように実施した。N末端Fmoc脱保護アミノ酸を、最終ステップにおいて、DOTAGA無水物(2.0当量)およびDIPEA(2.0当量)を使用してキレート剤とコンジュゲートした。反応物を、48時間、室温で撹拌させた。DOTAGA無水物との反応完了後、SP-7.2によりペプチドを樹脂から切断し、粗生成物をEt2O中で沈殿させ、遠心分離し、上清を除去した。最終生成物を、RP-HPLCを介して精製した。RP-HPLC(15分間、10~60% B):tR=9.71分;K’=3.86。モノアイソトピック質量計算値(C76H100N14O29)=1,672.68;実測値:m/z=1,673.0[M+H]+。
【0295】
[natLu]DOTAGA-F(4-NO2)-y-2-nal-k(Suc-N5-orn-C4-EuE)([natLu]PSMA-52):RP-HPLC(15分間、10~60% B):tR=9.4分;K’=3.7。モノアイソトピック質量計算値(C76H97N14O29Lu)=1,844.6;実測値:m/z=1,846.0[M+H]+。
【0296】
2,4-DNBA-Dap(DOTAGA)-y-2-nal-k(Suc-N5-orn-C4-EuE)(PSMA-53):
【0297】
【0298】
最初のFmoc-D-Orn(NHDde)-OHの樹脂ローディングを、SP-1に記載したように行った。SP-3によるFmoc脱保護後、SP-2により、2(1.5当量)をD-Orn(NHDde)にカップリングした。次のステップにおいて、Dde保護基をSP-4により切断し、遊離アミノ基をDMF中に溶解した無水コハク酸(4.0当量)およびDIPEA(1.5当量)で処理した。反応混合物を、終夜室温で撹拌させた。次に、Fmoc-D-Lys-OtBu・HCl(1.5当量)をSP-2によりカップリングし、SP-3に記載したように、Fmocを脱保護した。続いてのFmoc保護されたアミノ酸Fmoc-D-2-Nal-OH、Fmoc-D-Tyr(OtBu)-OHおよびFmoc-L-Dap(NHDde)-OHとのコンジュゲーションを、SP-2に記載したように実施した。Fmoc-L-Dap(NHDde)-OHとのカップリング後、Fmoc脱保護を、SP-3に記載したように達成した。次に、遊離アミノ基を、DMF中の2,4-DNBA(2.0当量)、HOBt(2.0当量)、TBTU(2.0当量)およびDIPEA(4.0当量)を使用して、2,4-ジニトロ安息香酸(2,4-DNBA)にコンジュゲートした。反応完了後、Dde脱保護を、SP-5を使用して達成した。N末端遊離アミノ酸L-Dapを、最終ステップにおいて、DOTAGA無水物(2.0当量)およびDIPEA(2.0当量)を使用してキレート剤とコンジュゲートした。反応物を、48時間、室温で撹拌させた。DOTAGA無水物との反応完了後、SP-7.2によりペプチドを樹脂から切断し、粗生成物をEt2O中で沈殿させ、遠心分離し、上清を除去した。最終生成物を、RP-HPLCを介して精製した。RP-HPLC(15分間、10~60% B):tR=11.71分;K’=4.86。モノアイソトピック質量計算値(C77H100N16O32)=1,760.67;実測値:m/z=1,762.1[M+H]+。
【0299】
[natLu]2,4-DNBA-Dap(DOTAGA)-y-2-nal-k(Suc-N5-orn-C4-EuE)([natLu]PSMA-53):RP-HPLC(15分間、10~60% B):tR=8.3分;K’=3.15。モノアイソトピック質量計算値(C77H97N16O32Lu)=1,932.59;実測値:m/z=1,933.7[M+H]+。
【0300】
【0301】
PSMA-52により例示される、EuEベースのPSMA阻害剤PSMA-52およびPSMA-53の一般的な合成手順の概略図。(a)DMF、2、HOBt、TBTU、DIPEA[DMF]中の20% ピペリジン;(b)無水コハク酸、DIPEA[DMF];(c)Fmoc-D/L-Lys-OAll・HCl、HOBt、TBTU、DIPEA[DMF];(d)DMF、Fmoc-D-2-Nal-OH、HOBt、TBTU、DIPEA[DMF]中の20% ピペリジン;(e)DMF、Fmoc--D-Tyr(OtBu)-OH、HOBt、TBTU、DIPEA[DMF]中の20% ピペリジン;(f)DMF、Fmoc-D-Phe(4-NH2)-OH、HOBt、TBTU、DIPEA[DMF]中の20% ピペリジン;(g)DOTAGA無水物、DIPEA[DMF];(h)TFA;
5.PSMA-61およびPSMA-62の合成
DOTAGA-F(4-NH2)y-2-nal-k(d[N5-orn-C4-EuE]-2,4-DNBA)(PSMA-61):
【0302】
【0303】
最初のFmoc-D-Orn(NHDde)-OHの樹脂ローディングを、SP-1に記載したように行った。SP-3によるFmoc脱保護後、SP-2により、2(1.5当量)をD-Orn(NHDde)にカップリングした。次のステップにおいて、Dde保護基をSP-4により切断し、遊離アミノ基を、SP-2により、Fmoc-D-Asp-OAll・HCl(1.5当量)で処理した。Fmoc-D-Asp-OAll・HClのアミノ基を、SP-3により脱保護し、DMF中の2,4-DNBA(1.5当量)、HOBt(2.0当量)、TBTU(2.0当量)およびDIPEA(4.0当量)を使用して2,4-DNBAにコンジュゲートした。反応完了後、アリル脱保護を、SP
-5により達成した。次のステップに、SP-2による、Fmoc-D-Lys-OtBu・HCl(1.5当量)、Fmoc-D-2-Nal-OH、Fmoc-D-Tyr(OtBu)-OHおよびFmoc-L-Phe(4-NHBoc)-OHとの繰り返しのコンジュゲーションを含めた。N末端Fmoc脱保護アミノ酸L-Phe(4-NHBoc)-OHを、最終ステップにおいて、DOTAGA無水物(2.0当量)およびDIPEA(2.0当量)を使用してキレート剤とコンジュゲートした。反応物を、48時間、室温で撹拌させた。DOTAGA無水物との反応完了後、SP-7.2によりペプチドを樹脂から切断し、粗生成物をEt2O中で沈殿させ、遠心分離し、上清を除去した。最終生成物を、RP-HPLCを介して精製した。
【0304】
RP-HPLC(15分間、10~90% B):tR=6.40分;K’=2.2。モノアイソトピック質量計算値(C83H105N17O32)=1,851.71;実測値:m/z=1,852.5[M+H]+,926.7[M+2H]2+。
[natLu]DOTAGA-F(4-NH2)y-2-nal-k(d[N5-orn-C4-EuE]-2,4-DNBA)([natLu]PSMA-61):RP-HPLC(15分間、10~90% B):tR=8.22分;K’=3.11。モノアイソトピック質量計算値(C83H102N17O32Lu)=2,023.63;実測値:m/z=1,013.1[M+2H]2+。
【0305】
DOTAGA-F(4-NH2)y-2-nal-k(d[N5-orn-C4-EuE]-TMA)(PSMA-62):
【0306】
【0307】
最初のFmoc-D-Orn(NHDde)-OHの樹脂ローディングを、SP-1に記載したように行った。SP-3によるFmoc脱保護後、SP-2により、2(1.5当量)をD-Orn(NHDde)にカップリングした。次のステップにおいて、Dde保護基をSP-4により切断し、遊離アミノ基を、SP-2により、Fmoc-D-Asp-OAll・HCl(1.5当量)で処理した。Fmoc-D-Asp-OAll・HClのアミノ基を、SP-3によりFmoc脱保護し、DMF中のDde-OH(2.0当量)およびDIPEA(4.0当量)で、室温で保護した。反応物を、終夜撹拌させた。その後、D-Aspのアリル脱保護を、SP-5を適用して達成した。次のステップに、SP-2による、Fmoc-D-Lys-OtBu・HCl(1.5当量)、Fmoc-D-2-Nal-OH、Fmoc-D-Tyr(OtBu)-OHおよびFmoc-L-Phe(4-NHBoc)-OHとの繰り返しのコンジュゲーションを含めた。TMAをD-Aspにコンジュゲートするために、選択的Dde脱保護を、SP-4を適用して達成し、遊離アミノ基を得た。TMAを、DMF中のTMA(2.0当量)、HOBt(1.5当量)、TBTU(1.5当量)およびDIPEA(10当量)を使用してカップリングした。反応物を、8時間、室温で撹拌させた。TMAのコンジュゲーション後、F
moc-L-Phe(4-NHBoc)-OHのFmoc脱保護を、SP-3を使用して達成した。N末端Fmoc脱保護アミノ酸L-Phe(4-NHBoc)-OHを、最終ステップにおいて、DOTAGA無水物(2.0当量)およびDIPEA(2.0当量)を使用してキレート剤とコンジュゲートした。反応物を、48時間、室温で撹拌させた。DOTAGA無水物との反応完了後、SP-7.2によりペプチドを樹脂から切断し、粗生成物をEt2O中で沈殿させ、遠心分離し、上清を除去した。最終生成物を、RP-HPLCを介して精製した。RP-HPLC(15分間、10~70% B):tR=7.48分;K’=2.74。モノアイソトピック質量計算値(C83H105N17O32)=1,849.72;実測値:m/z=1,850.5[M+H]+,925.7[M+2H]2+。
【0308】
[natLu]DOTAGA-F(4-NH2)y-2-nal-k(d[N5-orn-C4-EuE]-TMA)([natLu]PSMA-62):RP-HPLC(15分間、10~70% B):tR=7.27分;K’=2.64。モノアイソトピック質量計算値(C85H104N15O32Lu)=2,021.64;実測値:m/z=1,012.3[M+2H]2+。
【0309】
6.PSMA-65、PSMA-66およびPSMA-71の合成
2,4-DNBA-Dap(DOTAGA)y-2-nal-e(Abz-N5-orn-C4-EuE)(PSMA-65):
【0310】
【0311】
最初のFmoc-D-Orn(NHDde)-OHの樹脂ローディングを、SP-1に記載したように行った。SP-3によるFmoc脱保護後、SP-2により、2(1.5当量)をD-Orn(NHDde)にカップリングした。次のステップにおいて、Dde保護基をSP-4により切断し、遊離アミノ基をDMF中のFmoc-4-Abz-OH(1.5当量)、HOAt(1.5当量)、HATU(1.5当量)およびDIPEA(4.0当量)で処理した。反応物を、終夜室温で撹拌させた。次のステップにおいて、Abz残基を、SP-3によりFmoc脱保護した。次のステップに、SP-2による、Fmoc-D-Glu-OtBu、Fmoc-D-2-Nal-OH、Fmoc-D-Tyr(OtBu)-OHおよびFmoc-L-Dap(Dde)-OHとの繰り返しのコンジュゲーションを含めた。SP-3によるFmoc-L-Dap(Dde)-OHのFmoc脱保護後、DMF中の2,4-DNBA(1.5当量)、HOBt(2.0当量)、TBTU(2.0当量)およびDIPEA(4.0当量)を使用して2,4-DNBAをカップリングした。反応完了後、L-Dap(Dde)-残基をSP-4によりDde脱保護し、DOTAGA無水物(2.0当量)およびDIPEA(2.0当量)を使用してキレート剤とコンジュゲートした。反応物を、48時間、室温で撹拌させた。DOTAGA無水物との反応完了後、SP-7.2によりペプチドを樹脂から切断し、粗生成物をE
t2O中で沈殿させ、遠心分離し、上清を除去した。最終生成物を、RP-HPLCを介して精製した。RP-HPLC(15分間、10~60% B):tR=10.2分;K’=4.1。モノアイソトピック質量計算値(C79H96N16O32)=1,780.64;実測値:m/z=1,781.3[M+H]+。
【0312】
[natLu]2,4-DNBA-Dap(DOTAGA)y-2-nal-e(Abz-N5-orn-C4-EuE)([natLu]PSMA-65):RP-HPLC(15分間、10~60% B):tR=9.8分;K’=3.9。モノアイソトピック質量計算値(C79H93N16O32Lu)=1,952.56;実測値:m/z=1,954.0[M+H]+。
DOTAGA-Dap(TMA)y-2-nal-k(d[N5-orn-C4-EuE]-TMA)(PSMA-66):
【0313】
【0314】
最初のFmoc-D-Orn(NHDde)-OHの樹脂ローディングを、SP-1に記載したように行った。SP-3によるFmoc脱保護後、SP-2により、2(1.5当量)をD-Orn(NHDde)にカップリングした。次のステップにおいて、Dde保護基をSP-4により切断し、遊離アミノ基を、SP-2により、Fmoc-D-Asp-OAll・HCl(1.5当量)で処理した。Fmoc-D-Asp-OAll・HClのアミノ基を、SP-3によりFmoc脱保護し、DMF中の2.0当量のDde-OHおよび4.0当量のDIPEAで保護した。反応物を、終夜撹拌させた。その後、D-Aspのアリル脱保護を、SP-5を適用して達成した。次のステップに、SP-2による、Fmoc-D-Lys-OtBu・HCl(1.5当量)、Fmoc-D-2-Nal-OH、Fmoc-D-Tyr(OtBu)-OHおよびFmoc-L-Dap(Dde)-OHとの繰り返しのコンジュゲーションを含めた。TMAをD-AspおよびL-Dapにコンジュゲートするために、選択的Dde脱保護を、SP-4を適用して達成し、遊離アミノ基を得た。TMAを、DMF中のTMA(4.0当量)、HOBt(3.0当量)、TBTU(3.0当量)およびDIPEA(20当量)を使用してカップリングした。反応物を、8時間、室温で撹拌させた。TMAのコンジュゲーション後、Fmoc-L-Dap(TMA)-OHのFmoc脱保護を、SP-3を使用して達成した。N末端Fmoc脱保護アミノ酸L-Dapを、最終ステップにおいて、DOTAGA無水物(2.0当量)およびDIPEA(2.0当量)を使用してキレート剤とコンジュゲートした。反応物を、48時間、室温で撹拌させた。DOTAGA無水物との反応完了後、SP-7.2によりペプチドを樹脂から切断し、粗生成物をEt2O中で沈殿させ、遠心分離し、上清を除去した。最終生成物を、RP-HPLCを介して精製した。RP-HPLC(15分間、10~70% B):tR=7.48分;K’=2.74。モノアイソトピック質量計算値(C88H107N15O37)=1,965.70;実測値:m/z=1,966.4[M+H]+,984.1[M+2H]2+。
【0315】
[natLu]DOTAGA-Dap(TMA)y-2-nal-k(d[N5-orn-C4-EuE]-TMA)(PSMA-66)RP-HPLC(15分間、10~70% B):tR=7.46分;K’=2.73。モノアイソトピック質量計算値(C88H108N15O37Lu)=2,137.62;実測値:m/z=1,070.4[M+2H]2+。
【0316】
DOTAGA-2-Nal-y-2-nal-k(d[N5-orn-C4-EuE]-TMA)(PSMA-71):
【0317】
【0318】
最初のFmoc-D-Orn(NHDde)-OHの樹脂ローディングを、SP-1に記載したように行った。SP-3によるFmoc脱保護後、SP-2により、2(1.5当量)をD-Orn(NHDde)にカップリングした。次のステップにおいて、Dde保護基をSP-4により切断し、遊離アミノ基を、SP-2により、Fmoc-D-Asp-OAll・HCl(1.5当量)で処理した。Fmoc-D-Asp-OAll・HClのアミノ基を、SP-3によりFmoc脱保護し、DMF中のDde-OH(2.0当量)およびDIPEA(4.0当量)で、室温で保護した。反応物を、終夜撹拌させた。その後、D-Aspのアリル脱保護を、SP-5を適用して達成した。次のステップに、SP-2による、Fmoc-D-Lys-OtBu・HCl(1.5当量)、Fmoc-D-2-Nal-OH、Fmoc-D-Tyr(OtBu)-OHおよびFmoc-L-2-Nal-OHとの繰り返しのコンジュゲーションを含めた。TMAをD-Aspにコンジュゲートするために、選択的Dde脱保護を、SP-4を適用して達成し、遊離アミノ基を得た。TMAを、DMF中のTMA(2.0当量)、HOBt(1.5当量)、TBTU(1.5当量)およびDIPEA(10当量)を使用してカップリングした。反応物を、8時間、室温で撹拌させた。TMAのコンジュゲーション後、Fmoc-L-2-Nal-OHのFmoc脱保護を、SP-3を使用して達成した。N末端Fmoc脱保護アミノ酸L-2-Nal-OHを、最終ステップにおいて、DOTAGA無水物(2.0当量)およびDIPEA(2.0当量)を使用してキレート剤とコンジュゲートした。反応物を、48時間、室温で撹拌させた。DOTAGA無水物との反応完了後、SP-7.2によりペプチドを樹脂から切断し、粗生成物をEt2O中で沈殿させ、遠心分離し、上清を除去した。最終生成物を、RP-HPLCを介して精製した。RP-HPLC(15分間、10~80% B):tR=7.57分;K’=2.79。モノアイソトピック質量計算値(C89H108N14O32)=1,884.73;実測値:m/z=1,886.1[M+H]+、943.5[M+2H]2+。
【0319】
[natLu]DOTAGA-2-Nal-y-2-nal-k(d[N5-orn-C4-EuE]-TMA)([natLu]PSMA-67):RP-HPLC(15分間、10~90% B):tR=7.81分;K’=2.91。モノアイソトピック質量計算値(C89H105N14O32Lu)=2,056.64;実測値:m/z=1,
029.7[M+2H]2+。
7.放射標識
68Ga標識:68Ge/68Ga発生物質をaq. HCl(1.0M)に溶出し、そこからおよそ80%の活性(600~800MBq)を含有する1.25mLの分画を、反応バイアル(ALLTECH、5mL)中に移した。バイアルに、それぞれの化合物(5.0nmol)およびaq. 2-(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル)-エタンスルホン酸(HEPES)溶液(950μL、2.7M)を、あらかじめロードした。反応バイアルを、95℃で5分間加熱し、続いて予備状態調節されたSPEカートリッジ(C8 light、SepPak)上に放射標識された化合物を固定した。水(10mL)での事前のカートリッジのパージ後、カートリッジからの放射標識PSMA阻害剤の溶出を、EtOHおよび水の混合物(1/1;v/v)、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)(1.0mL)および再び水(1.0mL)を用いて達成した。放射標識の終了後、EtOHを真空中で蒸発させ、トレーサーを、いかなるさらなる精製なしに使用した。放射化学的純度を、ラジオTLC(1.0M クエン酸ナトリウム緩衝液および0.06M NH4OAc/MeOH緩衝液(1/1;v/v))を使用して調節した。
【0320】
177Lu標識:177Lu標識された化合物を、前に記載したもの[5]を微修正して調製し、さらなる精製なしに使用した。簡潔には、NH4OAc緩衝液(10μL、1.0 M、pH=5.9)にそれぞれのトレーサー(0.75~1.0nmol、7.5~10μL)、177LuCl3(10~40MBq;AS>3000GBq/mg、740MBq/mL、0.04M HCl、ITG、Garching、Germany)を添加し、最終的に微量の純水(最大100μL)(Merck、Darmstadt、Germany)で充填した。反応混合物を95℃で40分間加熱し、放射化学的純度を、ラジオTLCを使用して決定した。
【0321】
125I標識:手短には、スタニル化した前駆体(SnBu3-BA)(OtBu)KuE(OtBu)2(PSMA-45)(およそ0.1mg)を、過酢酸(20μL)、[125I]NaI(5.0μL、およそ21.0MBq)(74TBq/mmol、3.1GBq/mL、40mM NaOH、Hartmann Analytic、Braunschweig、Germany)、MeCN(20μL)およびAcOH(10μL)を含有する溶液中に溶解した。反応溶液を、室温で10分間インキュベートし、カートリッジ上(C18 Sep Pak Plus、10mL MeOHおよび10mLの水で予備状態調節した)にロードし、水(10mL)ですすいだ。1/1混合(v/v)のEtOHおよびMeCN(2.0mL)を用いた溶出後、溶液を穏やかな窒素気流下で蒸発乾固し、TFA(200μL)で30分間処理し、続いてTFAを蒸発させた。([125I]I-BA)KuEの粗生成物を、ラジオRP-HPLCにより精製した(20分間、20~40% B):tR=13.0分;K’=6.2。
8.HSA結合の決定
HSA結合実験を、前に記載したように[6]行った。移動相は、一定総流量が0.5mL/分である二成分勾配からなる。移動相Aは、50mm pH6.9 NH4OAc溶液であり、移動相Bは、2-プロパノール(RP-HPLCグレード、VWR、Germany)である。移動相Aの勾配は、0~3分で100%であり、3分~各実験の終了まで、移動相Bは20%に設定した。各実験日に、カラムを9つの参照物質で較正し、性能を確認し、非線形回帰を確立した。PSMA阻害剤を、2-プロパノールおよびNH4OAc緩衝液(50mm pH6.9)(1/1;v/v)の混合物中、0.5mg/mLの濃度で溶解した。各実験について、阻害剤を含有する10μLの溶液をRP-HPLCシステムに注入し、保持時間を測定した。HSA結合[%]の文献を、Valkoら、またはYamazakiら[6、7]から得た。非線形回帰を、OriginPro 2016Gを用いて確立した。
【0322】
9.親油性の決定
親油性:PBS(500μL、pH=7.4)中に溶解した放射標識PSMA阻害剤(0.5~1.0MBq)を、反応バイアル(1.5mL)中のn-オクタノール(500μL)に添加し、3分間厳密にボルテックスした(n=6)。定量相の分離のために、混合物を6,000gで5分間遠心分離した(Biofuge 15、Heraus Sepatech、Osterode、Germany)。各相の試料(100μL)からの活性を、γカウンターで測定し、logP(o/w)値を得た。
【0323】
10.細胞実験
細胞培養:PSMA陽性LNCAP細胞(300265;Cell Lines Service GmbH)を、ウシ胎児血清(FCS)(10%、Biochrom)を加えたダルベッコ改変イーグル培地/栄養混合物F-12(1/1)(DMEM-F12、Biochrom)中で培養し、加湿CO2雰囲気(5%)中で、37℃で維持した。LNCaP細胞を用いるすべての実験の1日(24時間± 2時間)前に、培養細胞を、トリプシン/エチレンジアミン四酢酸(0.05%/ 0.02%)およびPBSの混合物を使用して採取し、遠心分離した。遠心分離後、上清を廃棄し、細胞ペレットを培養培地中に再懸濁した。その後、細胞を、血球計算器(Neubauer)を用いて算出し、24ウェルプレートに播種した。IC50値を、ウェルあたり150,000細胞/mLを24ウェルプレート中に移すことで決定し、一方、内部移行率を、ウェルあたり125,000細胞/mLを24ウェルPLLコーティングプレート中に移すことにより得た。
【0324】
11.親和性(IC50)
培養培地の除去後、細胞をHBSS(500μL,ハンクス平衡塩溶液、Biochrom、Berlin、Germany、1% BSAを添加)で1回処理し、HBSS(200μL、1% BSA)中で平衡化させるために、氷上で15分間放置した。次に、HBSS(1% BSA、対照)または濃度を増大させたそれぞれのリガンド(HBSS(1% BSA)中、10-10~10-4m)のいずれかを含有する溶液(ウェルあたり25μL)を添加し、続いてHBSS(1% BSA)中の([125I]I-BA)KuE(25μL、2.0nm)を添加した。すべての実験を、各濃度について少なくとも3回行った。氷上での60分間のインキュベーション後、培地を除去することにより実験を終了させ、引き続いて、HBSS(200μL)ですすいだ。両方のステップの培地を1つの分画に合わせ、遊離放射性リガンドの量を表した。その後、細胞をNaOH(250μL、1.0m)に溶解し、その後の洗浄するステップのHBSS(200μL)と合わせた。結合および遊離の放射性リガンドの定量を、γカウンターで完遂した。
【0325】
12.内部移行
培養培地の除去に続き、細胞をDMEM-F12溶液(500μL、5% BSA)で1回洗浄し、DMEM-F12溶液(200μL、5% BSA)中、37℃で少なくとも15分間放置して平衡化させた。その後、各ウェルを、遮断のために、DMEM-F12溶液(25μL、5% BSA)または2-PMPA溶液(25μL、100μm)のいずれかで処理した。次に、それぞれの68Gaまたは177Lu標識PSMA阻害剤(25μL;それぞれ2.0nmおよび10nm)を添加し、細胞をそれぞれ、37℃で、5、15、30および60分間、インキュベートした。実験を、24ウェルプレートを氷上に3分間置くことにより終了させ、引き続いて、培地を除去した。各ウェルをHBSS(250μL)ですすぎ、これらの最初の2つのステップからの分画を合わせ、遊離の放射性リガンドの量を表した。表面結合活性の除去を、氷冷2-PMPA溶液(PBS中、250μL、10μm)での5分間の細胞のインキュベーションにより完遂し、続いて、氷冷PBS(250μL)ですすいだ。内部移行活性を、NaOH(250μL、1.0m)中での細胞のインキュベーション、および再びNaOH(250μL、1.0m)を用いた続いての洗浄するステップにおける分画との組合せを通して決定した。各実験(対
照および遮断)を、各時点について3回行った。遊離、表面結合および内部移行活性を、γカウンターで定量した。
【0326】
13.外部移行
放射標識PSMA阻害剤の外部移行動態を、内部移行アッセイについて記載されたものと同様に調製したLNCaP細胞を使用して決定した。DMEM-F12溶液(5% BSA)で細胞を洗浄する最初のステップの後、細胞を37℃で少なくとも15分間放置して再調整した。続いて、LNCaP細胞を、それぞれの放射標識ペプチド(25μL、10.0nm)とともに、各ウェル中の全体積250μLで、37℃で60分間インキュベートした。60分後、未結合の遊離分画を伴う上清を除去し、加えた総放射能の算出のために、γカウンターで測定した。続く外部移行および再利用試験中の酵素の完全性を保証するために、酸洗浄ステップを避けた。再利用率を決定するために、新鮮なDMEM-F12溶液(250μL、5% BSA)を細胞に与え、再内部移行を可能にした。対照的に、再内部移行は、2-PMPA(225μL DMEM-F12(5% BSA)および25μLの100μm 2-PMPA溶液(PBS))を含有するDMEM-F12溶液の添加により阻害された。細胞を、次に、37℃で0、20、40および60分間インキュベートした。結果として、上清を除去し、細胞を氷冷HBSS(250μL)で洗浄した。上清と、それに伴うHBSS(200μL)で洗浄するステップの体積との組合せは、調査された時点での外部移行した放射性リガンドに相当する。さらに、細胞を次に氷冷2-PMPA HBSS溶液(250μL、10μm)で2回洗浄し、合わせ、これはしたがって膜結合放射性リガンドの分画を表した。内部移行分画の決定を、NaOH(250μL、1.0m)を用いた内部移行アッセイについて記載したような溶解により達成した。遊離、外部移行、膜結合および内部移行した放射性リガンドの活性を、γカウンターで定量した。
【0327】
14.動物実験
すべての動物実験を、ドイツにおける一般的な動物福祉法に従って実行した(Deutsches Tierschutzgesetz、承認番号55.2-1-54-2532-71-13)。腫瘍モデルについて、LNCaP細胞(およそ107細胞)を無血清DMEM-F12培地およびマトリゲル(1/1;v/v)(BD Biosciences、Germany)中に懸濁し、雄、6~8週齢のCB-17 SCID マウス(Charles River Laboratories、Sulzfeld、Germany)の右肩上に接種した。動物を、腫瘍サイズが直径4~8mmに達した後、実験のために使用した。
15.PET
画像化実験を、Siemens Inveon小動物用PETを使用して実施し、データを、関連するInveon Research Workplaceソフトウェアにより分析した。マウスをイソフルランで麻酔し、およそ4.0~17MBqの68Ga標識化合物を、尾静脈を介して注入した(およそ150~300μL)。動的画像化をベッド上での注入後に90分間実施した。静的遮断画像を、15分間の取得時間で、1時間 p.i.後に得た。PSMA遮断を、8mg/kgの2-PMPA-溶液(PBS)の同時注入により達成した。すべての画像を、OSEM3Dアルゴリズムを使用して、スキャナおよび減衰補正なしに再構成した。
【0328】
16.生体内分布
およそ4.0~12.0MBq(およそ150~300μL)の、それぞれの68Gaまたは177Lu標識PSMA阻害剤を、LNCaP腫瘍担持雄CB-17 SCIDマウスの尾静脈中に注入し、マウスを特定の時間枠の後に屠殺した(それぞれ、n=4)。選択した器官を除去し、秤量し、γカウンターで測定した。
【0329】
17.実施例1における参考文献
1. Simecek, J., et al., A Monoreactive Bifunctional Triazacyclononane Phosphinate Chelator with High Selectivity for Gallium-68. ChemMedChem, 2012. 7(8): p. 1375-1378.
2. Weineisen, M., et al., Development and first in human evaluation of PSMA I&T-A ligand for diagnostic imaging and endoradiotherapy of prostate cancer. Journal of Nuclear Medicine, 2014. 55(supplement 1): p. 1083-1083.
3. Weineisen, M., et al., Synthesis and preclinical evaluation of DOTAGA-conjugated PSMA ligands for functional imaging and endoradiotherapy of prostate cancer. EJNMMI research, 2014. 4(1): p. 1.
4. Weineisen, M., et al., 68Ga- and 177Lu-Labeled PSMA I&T: Optimization of a PSMA-Targeted Theranostic Concept and First Proof-of-Concept Human Studies. Journal of Nuclear Medicine, 2015. 56(8): p. 1169-1176.
5. Sosabowski, J.K. and S.J. Mather, Conjugation of DOTA-like chelating agents to peptides and radiolabeling with trivalent metallic isotopes. Nat. Protocols, 2006. 1(2): p. 972-976.
6. Valko, K., et al., Fast gradient HPLC method to determine compounds binding to human serum albumin. Relationships with octanol/water and immobilized artificial membrane lipophilicity. Journal of pharmaceutical sciences, 2003. 92(11): p.
2236-2248.
7. Yamazaki, K. and M. Kanaoka, Computational prediction of the plasma protein-binding percent of diverse pharmaceutical compounds. Journal of pharmaceutical sciences, 2004. 93(6): p. 1480-1494.
実施例2
結果:
1.PSMA I&Tのリンカー領域中への2,4-ジニトロ安息香酸の導入の作用
【0330】
【0331】
【0332】
わずかにより高い親和性、および内部移行の251%の増大。
2.結合モチーフをEuKからEuEに、ペプチドスペーサーを-y(3-I)fk-から-y-2-nal-k-に変更した。
【0333】
【0334】
【0335】
参照PSMA I&Tと比較して、改善された参照化合物PSMA-46は、より高い
内部移行を示し、改善された親和性を呈した。このように、PSMA-46の構造に基づき、電子不足芳香族残基を、さらなる開発ステップにおいて導入した。
【0336】
3.4-ニトロフェニルアラニンおよび2,4-DNBAを、PSMA-46のペプチドスペーサー中へ導入した。
【0337】
【0338】
【0339】
親和性は同様なままであった一方、4-ニトロフェニルアラニンの導入は、内部移行をわずかに増大させたが、2,4-DNBAを通したさらなるニトロ基の導入により、内部移行を有意に増加させることが可能であった。
【0340】
内部移行の増大のために、2つの電子吸引性基が好ましい。
4.4-アミノ-フェニルアラニンの導入
【0341】
【0342】
【0343】
両方の修飾、2,4-DNBAおよびトリメシン酸は、内部移行のさらなる増大を可能にした。
5.ペプチドスペーサー中の電子不足基の導入
【0344】
【0345】
【0346】
電子不足芳香族修飾2,4-DNBAは、内部移行を増大させることを可能にした。
6.トリメシン酸を、PSMA阻害剤のリンカーおよびペプチドスペーサー中へと組み込んだ。
【0347】
【0348】
【0349】
4-アミノ-フェニルアラニンのDap(TMA)への交換は、同様な親和性をもたらしたが、内部移行能力をわずかに減少させた。両方のリガンドが非常に有望であると思われるため、両方のトレーサーをさらなる実験において評価した。
【0350】
これらの実験の結論は、電子不足芳香族残基は転移可能であり、高い親和性を維持しながら内部移行を増大させることが可能であるということである。
7.細胞保持に対する内部移行のインビトロの影響を、[177Lu]PSMA I&Tおよび[177Lu]PSMA-617と比較して、化合物[177Lu]PSMA-62および[177Lu]PSMA-66について評価した。
【0351】
[177Lu]PSMA-66は、1時間後に腫瘍細胞中で最も高い細胞内活性を示し、これに[177Lu]PSMA-62が続いたが、[177Lu]PSMA-62の内部移行は、[177Lu]PSMA-66よりも高いことが見出された(それぞれ、343.9%対297.8%)。興味深いことに、再内部移行を100μM 2-PMPA溶液で遮断した場合でもなお、[177Lu]PSMA-66の細胞内クリアランスは調査された他のすべての化合物よりも低かった。再内部移行を遮断した場合、参照[177Lu]PSMA I&Tと比較した差異は2倍を超えていた。
【0352】
[177Lu]PSMA-66は9つの遊離カルボキシル基を有し、これはインビボ(pH=7.4)で9つの負電荷と等しい。この化合物の広範に荷電する特徴は、負に荷電した細胞膜からの静電反発作用に起因する細胞内保持の延長について考えられる説明であり得る。
【0353】
8.インビボ実験:生体内分布
【0354】
【0355】
1時間 p.i後の[177Lu]PSMA I&Tの腫瘍取込と比較して(4.69±0.95%)、内部移行および親和性の改善を通して、腫瘍活性の有意な増大が達成された。[177Lu]PSMA-16、[177Lu]PSMA-40および[177Lu]PSMA-41について既に観察されたように、4-アミノ-D-フェニルアラニンを用いたペプチドスペーサーの延長は、高い腎臓取込をもたらし、この修飾が腎臓蓄積を増大させることが確認された。
【0356】
[177Lu]PSMA-62のリンカー中へのトリメシン酸の導入は、参照と比較して、腎臓取込の減少をもたらし(それぞれ、106.45±17.18%対162.96±23.20%)、腫瘍取込をわずかに低下させた。[177Lu]PSMA-62のついての内部移行は[177Lu]PSMA-49との直接比較においてより高かったため、腫瘍取込の低下は予期されなかった。内部移行が腫瘍取込にどの程度寄与するか、および親和性よりも重要でないかどうかは、不明である。[177Lu]PSMA-49がPSMAに対してよりアフィンであるため(それぞれ2.5±0.6nM対4.0±0.2nM)、[177Lu]PSMA-49と[177Lu]PSMA-62との直接比較は、親和性がより決定的であることを示す。
【0357】
【0358】
表10の結果は、評価したトレーサー[177Lu]PSMA-62、[177Lu]PSMA-66および[177Lu]PSMA-71の間の明白な差異を示す。腎クリアランスに関して、すべてのリガンドについて、1時間 p.i.(表9)と比較して腎臓取込における低減が観察されたことが明白であった。[177Lu]PSMA I&Tが24時間 p.i.後に最も高い腎臓取込を示した一方、[177Lu]PSMA-62が最も低い腎臓取込を示し、このことは、PET試験において観察された腎クリアランスと一致した。24時間 p.i.後の[177Lu]PSMA-61の腫瘍取込は、23時間にわたりほぼ安定したままであった(それぞれ、8.00±0.75対7.70±1.35%ID/g、1時間 p.i.および24時間 p.i.)[177Lu]PSMA-62および[177Lu]PSMA-66は、内部移行および親和性に関して同様なインビトロのパラメーターを示したが、[177Lu]PSMA-66の腫瘍取込は、[177Lu]PSMA-62と比較して、1時間 p.i.から24時間 p.iまでに大幅に低減した(それぞれ、10.00±0.44対5.73±1.39%ID/g、1
時間 p.i.および24時間 p.i.)。より有益な腫瘍対肝臓および腫瘍対筋肉の比とあわせて、より強い腫瘍保持は、[177Lu]PSMA-66と比較して[177Lu]PSMA-62に優越性を与えた。最も高い腫瘍取込はPSMA-71について観察され、PSMA-71は最も高いHSA結合値も呈した。24時間 p.i.の腎臓取込は[177Lu]PSMA I&Tと同様であった一方、腫瘍取込は[177Lu]PSMA-71について3倍を超えて高かった(それぞれ、4.06±1.12対14.29±0.89%ID/g、[177Lu]PSMA I&Tおよび[177Lu]PSMA-71)。
【0359】
この点において、[177Lu]PSMA-71は、内部放射線治療適用について特に価値あるトレーサーであり、臨床適用についての候補であると考えることができる。
9.インビボ実験PET画像化
EuKベースの阻害剤に対する2,4-ジニトロ安息香酸リンカー置換の作用
EuKベースの阻害剤PSMA-36を、小動物PETスキャンにおいて評価し、インビボ分布に対するリンカー中の2,4-ジニトロ安息香酸の影響を検査した。
【0360】
対数TACプロットは、[68Ga]PSMA-36の特異的な腎臓および腫瘍取込を示す。血液プール活性の、および筋肉領域における直線的な低減は、非特異的結合およびすみやかな排出を暗示する。腫瘍中の蓄積は、観察期間にわたり安定のままであった。[177Lu]PSMA-36は、[177Lu]PSMA I&Tよりも3倍を超える高い内部移行率を呈したが、腫瘍取込は、85分 p.i.後に3.5% ID/mLで中等度にすぎなかった。[68Ga]PSMA I&Tと比較して最も有意な差異は、涙腺および唾液腺における高くかつ安定な取込であり、両方の領域においておよそ2% ID/mLを示した。参照[68Ga]PSMA I&Tとの唯一の構造的差異は2,4-ジニトロ安息香酸の導入であるため、リンカー修飾は、この強化された取込の理由であるに違いない。しかし、この作用を確認するために、さらなる研究が必要である。
【0361】
また興味深いことに、これらの領域中のクリアランスは、血液プールおよび筋肉と比較してより遅く、別個の保持機構が関与することを暗示する。PSMAは、マウスにおける眼球の新血管新生中、血管形成に関与することが報告され、したがって[68Ga]PSMA-36の取込を説明するであろう[1]。唾液腺中のトレーサー蓄積は、177Lu標識PSMA阻害剤を用いる臨床治療手法中の一般的な問題である[2]。唾液腺中への薬物取込は、細胞内または細胞外経路、および最も一般的には腺房細胞のリン脂質二重層中の単純拡散に依存する。唾液中薬物濃度は、受動拡散に関しては、主に血漿中の遊離、非イオン化分画により反映される[3~5]。この点において、受動拡散が唾液腺取込の原因である可能性は非常に低い。EuKベースのPSMA阻害剤はインビボで高荷電であり、このように高い極性を呈するため、他の機構が関与するに違いない。さらに、受動拡散はすべての領域において高いバックグラウンド活性としてPETスキャン中に可視化されるであろうが、急速なクリアランスが血液プールからトレーサーを除去するため、大半のPSMAリガンドについては可視化が起こらない。
【0362】
EuEベースの阻害剤に対するトリメシン酸の作用
PSMAリガンドの電子不足芳香族系による置換は、[177Lu]PSMA-62および[177Lu]PSMA-66の内部移行率の強化をもたらす(それぞれ、343.9%および297.8%)。したがって、両方のリガンドを、PET試験において評価し、互いに比較した。
【0363】
両方のトレーサーは、腎臓、筋肉および血液プール取込に関して、優れたトレーサー動態を呈した。腎臓中の特異的取込は、[68Ga]PSMA-62と比較して、[68Ga]PSMA-66についてわずかに高かった(それぞれ、45.3% ID/mL対3
4.8% ID/mL)。[68Ga]PSMA-62と比較した、[68Ga]PSMA-66のPETスキャンにおけるより高い腎臓蓄積は、生体内分布実験とよく相関した。筋肉および血液プール活性についてのTACは、これらの区画からの線形の取込および進行中のクリアランスを示した。
【0364】
10.実施例2における参考文献
1. Grant, C.L., et al., Prostate specific membrane antigen (PSMA) regulates angiogenesis independently of VEGF during ocular neovascularization. PloS one, 2012. 7(7): p. e41285.
2. Kulkarni, H.R., et al., PSMA-Based Radioligand Therapy for Metastatic Castration-Resistant Prostate Cancer: The Bad Berka Experience Since 2013. Journal of Nuclear Medicine, 2016. 57(Supplement 3): p. 97S-104S.
3. Haeckel, R., Factors influencing the saliva/plasma ratio of drugs. Annals of
the New York Academy of Sciences, 1993. 694(1): p. 128-142.
4. Jusko, W.J. and R.L. Milsap, Pharmacokinetic Principles of Drug Distribution
in Salivaa. Annals of the New York Academy of Sciences, 1993. 694(1): p. 36-47.5. Aps, J.K. and L.C. Martens, Review: the physiology of saliva and transfer of
drugs into saliva. Forensic science international, 2005. 150(2): p. 119-131.
6. Young, J.D., et al., 68Ga-THP-PSMA: a PET imaging agent for prostate cancer offering rapid, room temperature, one-step kit-based radiolabeling. Journal of Nuclear Medicine, 2017: p. jnumed. 117.191882.
7. Wustemann, T., et al., Design of Internalizing PSMA-specific Glu-ureido-based Radiotherapeuticals. Theranostics, 2016. 6(8): p. 1085.
8. Hao, G., et al., A multivalent approach of imaging probe design to overcome an endogenous anion binding competition for noninvasive assessment of prostate specific membrane antigen. Molecular pharmaceutics, 2013. 10(8): p. 2975-2985.
9. Soret, M., S.L. Bacharach, and I. Buvat, Partial-volume effect in PET tumor imaging. Journal of Nuclear Medicine, 2007. 48(6): p. 932-945.
10. Bao, Q., et al., Performance evaluation of the inveon dedicated PET preclinical tomograph based on the NEMA NU-4 standards. Journal of Nuclear Medicine, 2009. 50(3): p. 401-408.