(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】半導体素子を用いたメモリ装置
(51)【国際特許分類】
G11C 16/04 20060101AFI20241016BHJP
G11C 11/401 20060101ALI20241016BHJP
H10B 12/00 20230101ALI20241016BHJP
H10B 99/00 20230101ALI20241016BHJP
H01L 29/786 20060101ALI20241016BHJP
H01L 21/8234 20060101ALI20241016BHJP
H01L 27/06 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
G11C16/04
G11C11/401
H10B12/00 801
H10B99/00 451
H01L29/78 613B
H01L27/06 102A
(21)【出願番号】P 2023534163
(86)(22)【出願日】2023-02-24
(86)【国際出願番号】 JP2023006662
【審査請求日】2023-06-05
(73)【特許権者】
【識別番号】311014428
【氏名又は名称】ユニサンティス エレクトロニクス シンガポール プライベート リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Unisantis Electronics Singapore Pte Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100141553
【氏名又は名称】鈴木 信彦
(72)【発明者】
【氏名】作井 康司
(72)【発明者】
【氏名】各務 正一
(72)【発明者】
【氏名】原田 望
【審査官】後藤 彰
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2023/281613(WO,A1)
【文献】国際公開第2022/137607(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11C 16/04
G11C 11/401
H10B 12/00
H10B 99/00
H01L 29/786
H01L 21/8234
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に平面視において、行方向に配列された複数のメモリセルによってページが構成され、列方向に配設されたビット線に接続した複数の前記ページによってメモリセルアレイが構成されたメモリ装置であって、
前記各ページに含まれる前記メモリセルは、
前記基板上にある第1の不純物層と、前記第1の不純物層に接して垂直方向に伸延する柱状の第1の半導体層と、前記第1の半導体層を囲んだ第1のゲート絶縁層と、前記第1のゲート絶縁層を覆った第1のゲート導体層と、前記第1のゲート導体層上の第2の絶縁層と、前記第1の半導体層の上に接触した第2の半導体層と、前記第2の半導体層の少なくとも上部を囲んだ第2のゲート絶縁層と、前記第2のゲート絶縁層を覆った第2のゲート導体層と、前記第2の半導体層が伸延する水平方向において、前記第2のゲート導体層の一端の外側にある前記第2の半導体層の両端に接続する第2の不純物層および第3の不純物層と、を有し、
ページ消去動作において、前記第1の半導体層、もしくは前記第2の半導体層に残存する多数キャリアを前記第1の不純物層、前記第2の不純物層、前記第3の不純物層の多数キャリアと再結合させることで抜き取り、
ページ書込み動作において、前記第2の不純物層と前記第3の不純物層との間に流す電流でインパクトイオン化現象、又はゲート誘起ドレインリーク電流により
多数キャリアを前記第2の半導体層及び前記第1の半導体層に発生させ、
前記第2の半導体層及び前記第1の半導体層における多数キャリアの一部または全てを、前記第2の半導体層及び前記第1の半導体層に残存させる動作と、を行い、
ページ読出し動作において、前記第2の半導体層及び前記第1の半導体層における多数キャリアの一部を、前記第1の半導体層から前記第2の半導体層に移動させる動作を行い、前記メモリセルの前記ビット線と前記ソース線との間のメモリセル電流の大小によって、前記メモリセルの消去状態、もしくは書込み状態を、判定する、
ことを特徴とする半導体素子を用いたメモリ装置。
【請求項2】
前記第2の不純物層は、ソース線と接続し、前記第3の不純物層は、前記ビット線と接続し、前記第2のゲート導体層は、ワード線と接続し、前記第1のゲート導体層は、プレート線と接続する、
ことを特徴とする請求項1に記載の半導体素子を用いたメモリ装置。
【請求項3】
前記ソース線と、前記ビット線と、前記ワード線と、前記プレート線と、に印加する電圧を制御して、ページ消去動作と、ページ書込み動作と、ページ読出し動作とを行う、
ことを特徴とする請求項
2に記載の半導体素子を用いたメモリ装置。
【請求項4】
前記メモリセルのデータ保持時には、前記プレート線に第1の電圧を印加し、前記ページ読出し動作時に前記第1の電圧よりも高い第2の電圧を印加する、
ことを特徴とする請求項
2に記載の半導体素子を用いたメモリ装置。
【請求項5】
前記メモリセルの前記データ保持時には、前記ソース線と、前記ビット線と、前記ワード線に接地電圧を印加する、
ことを特徴とする請求項4に記載の半導体素子を用いたメモリ装置。
【請求項6】
前記ページ消去動作において、前記プレート線に第1の正電圧を印加する、
ことを特徴とする請求項
2に記載の半導体素子を用いたメモリ装置。
【請求項7】
前記ページ書込み動作において、前記ワード線に第1の負電圧を印加する、
ことを特徴とする請求項
2に記載の半導体素子を用いたメモリ装置。
【請求項8】
前記ページ書込み動作において、前記ビット線に第2の正電圧を印加する、
ことを特徴とする請求項1に記載の半導体素子を用いたメモリ装置。
【請求項9】
前記ページ読出し動作において、前記ワード線に第3の正電圧を印加し、前記ビット線に第4の正電圧を印加する、
ことを特徴とする請求項
2に記載の半導体素子を用いたメモリ装置。
【請求項10】
前記第2の半導体層の底部から前記第1の不純物層の上部までの垂直距離が、前記第2の半導体層の底部から前記第1のゲート導体層の底部までの垂直距離よりも短い、
ことを特徴とする請求項1に記載の半導体素子を用いたメモリ装置。
【請求項11】
前記メモリセルの前記第2の不純物層に繋がる前記ソース線は、隣接する前記メモリセルの前記第2の不純物層に対応する不純物層と共有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の半導体素子を用いたメモリ装置。
【請求項12】
前記メモリセルの前記第3の不純物層に繋がる前記ビット線は、隣接する前記メモリセルの前記第3の不純物層に対応する不純物層と共有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の半導体素子を用いたメモリ装置。
【請求項13】
前記接地電圧は、零ボルトである、
ことを特徴とする請求項5に記載の半導体素子を用いたメモリ装置。
【請求項14】
前記第1の不純物層の底部が前記第1の
ゲート絶縁層の底部より深い位置にあり、前記第1の不純物層が複数の前記メモリセルで共有されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の半導体素子を用いたメモリ装置。
【請求項15】
前記第1の不純物層に繋がるボトム線を有し、前記ボトム線には所望の電圧が印加できる、
ことを特徴とする請求項1に記載の半導体素子を用いたメモリ装置。
【請求項16】
前記ページ消去動作において、前記ソース線に第2の負電圧を印加し、前記ワード線に第5の正電圧を印加する、
ことを特徴とする請求項1に記載の半導体素子を用いたメモリ装置。
【請求項17】
前記ページ消去動作において、前記ボトム線に第3の負電圧を印加する、
ことを特徴とする請求項15に記載の半導体素子を用いたメモリ装置。
【請求項18】
前記メモリセルのデータ保持時には、前記ボトム線に第3の電圧を印加し、前記ページ読出し動作時に前記第3の電圧よりも高い第4の電圧を印加する、
ことを特徴とする請求項15に記載の半導体素子を用いたメモリ装置。
【請求項19】
前記第2の不純物層は、ソース線と接続し、前記第3の不純物層は、前記ビット線と接続し、前記第2のゲート導体層は、ワード線と接続し、前記第1のゲート導体層は、プレート線と接続し、
前記ソース線と、前記ワード線と、前記プレート線と、前記ボトム線とは、前記行方向に平行に配設し、前記ページを構成し、前記列方向に配設するビット線は、前記ページと直交する、
ことを特徴とする請求項17に記載の半導体素子を用いたメモリ装置。
【請求項20】
前記ページ書込み動作において、前記ビット線と前記ソース線との間の直流電流が零である、
ことを特徴とする請求項1に記載の半導体素子を用いたメモリ装置。
【請求項21】
前記ページ消去動作において、前記第1のゲート導体層と前記第1の半導体層との間の容量結合により、前記第1の半導体層の電圧を昇圧する、
ことを特徴とする請求項1に記載の半導体素子を用いたメモリ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子を用いたメモリ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、LSI(Large Scale Integration)技術開発において、メモリ素子の高集積化、高性能化、低消費電力化、高機能化が求められている。
【0003】
通常のプレナー型MOSトランジスタでは、チャネルが半導体基板の上表面に沿う水平方向に延在する。これに対して、SGT(Surrounding Gate Transistor)のチャネルは、半導体基板の上表面に対して垂直な方向に延在する(例えば、特許文献1、非特許文献1を参照)。このため、SGTはプレナー型MOSトランジスタと比べ、半導体装置の高密度化が可能である。このSGTを選択トランジスタとして用いて、キャパシタを接続したDRAM(Dynamic Random Access Memory、例えば、非特許文献2を参照)、抵抗変化素子を接続したPCM(Phase Change Memory、例えば、非特許文献3を参照)、RRAM(Resistive Random Access Memory、例えば、非特許文献4を参照)、電流により磁気スピンの向きを変化させて抵抗を変化させるMRAM(Magneto-resistive Random Access Memory、例えば、非特許文献5を参照)などの高集積化を行うことができる。また、キャパシタを有しない、1個のMOSトランジスタで構成された、DRAMメモリセル(非特許文献6を参照)、キャリアをためる溝部とゲート電極を二つ有したDRAMメモリセル(非特許文献7を参照)などがある。しかし、キャパシタを持たないDRAMは、フローティングボディのワード線からのゲート電極のカップリングに大きく左右され電圧マージンが十分とれない問題点があった。さらに基板が完全空乏化するとその弊害は大きくなる。本願は、抵抗変化素子やキャパシタを有しない、MOSトランジスタのみで構成可能な、半導体素子を用いたメモリ装置に関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平3-171768号公報
【文献】US2008/0137394 A1
【文献】US2003/0111681 A1
【文献】特許第7057032号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】Hiroshi Takato, Kazumasa Sunouchi, Naoko Okabe, Akihiro Nitayama, Katsuhiko Hieda, Fumio Horiguchi, and Fujio Masuoka: IEEE Transaction on Electron Devices, Vol. 38, No.3, pp. 573-578 (1991).
【文献】H. Chung, H. Kim, H. Kim, K. Kim, S. Kim, K.W. Song, J. Kim, Y.C. Oh, Y. Hwang, H. Hong, G. Jin, and C. Chung: “4F2 DRAM Cell with Vertical Pillar Transistor(VPT),” 2011 Proceeding of the European Solid-State Device Research Conference, (2011).
【文献】H. S. Philip Wong, S. Raoux, S. Kim, Jiale Liang, J. R. Reifenberg, B. Rajendran, M. Asheghi and K. E. Goodson: “Phase Change Memory,” Proceeding of IEEE, Vol.98, No 12, December, pp2b012b27 (2010).
【文献】K. Tsunoda, K. Kinoshita, H. Noshiro, Y. Yamazaki, T. Iizuka, Y. Ito, A. Takahashi, A. Okano, Y. Sato, T. Fukano, M. Aoki, and Y. Sugiyama: “Low Power and high Speed Switching of Ti-doped NiO ReRAM under the Unipolar Voltage Source of less than 3V,” IEDM (2007).
【文献】W. Kang, L. Zhang, J. Klein, Y. Zhang, D. Ravelosona, and W. Zhao: “Reconfigurable Codesign of STT-MRAM Under Process Variations in Deeply Scaled Technology,” IEEE Transaction on Electron Devices, pp.1-9 (2015).
【文献】M. G. Ertosun, K. Lim, C. Park, J. Oh, P. Kirsch, and K. C. Saraswat: “Novel Capacitorless Single-Transistor Charge-Trap DRAM (1T CT DRAM) Utilizing Electron,” IEEE Electron Device Letter, Vol. 31, No.5, pp.405-407 (2010).
【文献】Md. Hasan Raza Ansari, Nupur Navlakha, Jae Yoon Lee, Seongjae Cho, “Double-Gate Junctionless 1T DRAM With Physical Barriers for Retention Improvement,” IEEE Trans, on Electron Devices vol. 67, pp. 1471-1479 (2020).
【文献】E. Yoshida, T. Tanaka, “A Capacitorless 1T-DARM Technology Using Gate-Induced Drain-Leakage (GIDL) Current for Low-Power and High-Speed Embedded Memory,” IEEE Trans, on Electron Devices vol.53, pp.692-697 (2006).
【文献】Takashi Ohasawa and Takeshi Hamamoto, “Floating Body Cell -a Novel Body Capacitorless DRAM Cell,” Pan Stanford Publishing (2011).
【文献】H. Jiang, N. Xu, B. Chen, L. Zeng1, Y. He, G. Du, X. Liu and X. Zhang: “Experimental investigation of self-heating effect (SHE) in multiple-fin SOI FinFETs,” Semicond. Sci. Technol. 29 (2014) 115021 (7pp).
【文献】J. Y. Song, W. Y. Choi, J. H. Park, J. D. Lee, and B-G. Park: “Design Optimization of Gate-All-Around (GAA) MOSFETs,” IEEE Trans. Electron Devices, vol. 5, no. 3, pp.186-191, May 2006.
【文献】N. Loubet, et al.: “Stacked Nanosheet Gate-All-Around Transistor to Enable Scaling Beyond FinFET,” 2017 IEEE Symposium on VLSI Technology Digest of Technical Papers, T17-5, T230-T231, June 2017.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
メモリ装置においてキャパシタを無くした、1個のトランジスタ型のDRAM(ゲインセル)では、ワード線とフローティング状態の素子があるボディとの容量結合カップリングが大きく、データ読み出し時や書き込み時にワード線の電位を振幅させると、直接半導体基板のボディへのノイズとして、伝達されてしまう問題点があった。この結果、誤読み出しや記憶データの誤った書き換えの問題を引き起こし、キャパシタを無くした1トランジスタ型のDRAMの実用化が困難となっていた。そして、上記問題を解決すると共に、DRAMメモリセルを高密度化する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、第1発明に係る半導体素子を用いたメモリ装置は、基板上に平面視において、行方向に配列された複数のメモリセルによってページが構成され、列方向に配設されたビット線に接続した複数の前記ページによってメモリセルアレイが構成されたメモリ装置であって、
前記各ページに含まれる前記メモリセルは、
前記基板上にある第1の不純物層と、前記第1の不純物層に接して垂直方向に伸延する柱状の第1の半導体層と、前記第1の半導体層を囲んだ第1のゲート絶縁層と、前記第1のゲート絶縁層を覆った第1のゲート導体層と、前記第1のゲート導体層上の第2の絶縁層と、前記第1の半導体層の上に接触した第2の半導体層と、前記第2の半導体層の少なくとも上部を囲んだ第2のゲート絶縁層と、前記第2のゲート絶縁層を覆った第2のゲート導体層と、前記第2の半導体層が伸延する水平方向において、前記第2のゲート導体層の一端の外側にある前記第2の半導体層の両端に接続する第2の不純物層および第3の不純物層と、を有し、
ページ消去動作において、前記第1の半導体層、もしくは前記第2の半導体層に残存する多数キャリアを前記第1の不純物層、前記第2の不純物層、前記第3の不純物層の多数キャリアと再結合させることで抜き取り、
ページ書込み動作において、前記第2の不純物層と前記第3の不純物層との間に流す電流でインパクトイオン化現象、又はゲート誘起ドレインリーク電流により前記電子群と前記正孔群を前記第2の半導体層及び前記第1の半導体層に発生させ、
前記第2の半導体層及び前記第1の半導体層における多数キャリアの一部または全てを、前記第2の半導体層及び前記第1の半導体層に残存させる動作と、を行い、
前記ページ読出し動作において、前記第2の半導体層及び前記第1の半導体層における多数キャリアの一部を、前記第1の半導体層から前記第2の半導体層に移動させる動作を行い、前記メモリセルの前記ビット線と前記ソース線との間のメモリセル電流の大小によって、前記メモリセルの消去状態、もしくは書込み状態を、判定する、
ことを特徴とする。
【0008】
第2発明は、上記の第1発明において、前記第2の不純物層は、ソース線と接続し、前記第3の不純物層は、前記ビット線と接続し、前記第2のゲート導体層は、ワード線と接続し、前記第1のゲート導体層は、プレート線と接続することを特徴とする。
【0009】
第3発明は、上記の第1発明において、前記ソース線と、前記ビット線と、前記ワード線と、前記プレート線と、に印加する電圧を制御して、ページ消去動作と、ページ書込み動作と、ページ読出し動作とを行うことを特徴とする。
【0010】
第4発明は、上記の第1発明において、前記メモリセルのデータ保持時には、前記プレート線に第1の電圧を印加し、前記ページ読出し動作時に前記第1の電圧よりも高い第2の電圧を印加することを特徴とする。
【0011】
第5発明は、上記の第4発明において、前記メモリセルの前記データ保持時には、前記ソース線と、前記ビット線と、前記ワード線に接地電圧を印加することを特徴とする。
【0012】
第6発明は、上記の第1発明において、前記ページ消去動作において、前記プレート線に第1の正電圧を印加することを特徴とする。
【0013】
第7発明は、上記の第1発明において、前記ページ書込み動作において、前記ワード線に第1の負電圧を印加することを特徴とする。
【0014】
第8発明は、上記の第1発明において、前記ページ書込み動作において、前記ビット線に第2の正電圧を印加することを特徴とする。
【0015】
第9発明は、上記の第1発明において、前記ページ読出し動作において、前記ワード線に第3の正電圧を印加し、前記ビット線に第4の正電圧を印加することを特徴とする。
【0016】
第10発明は、上記の第1発明において、前記第2の半導体層の底部から前記第1の不純物層の上部までの垂直距離が、前記第2の半導体層の底部から前記第1のゲート導体層の底部までの垂直距離よりも短いことを特徴とする。
【0017】
第11発明は、上記の第1発明において、前記メモリセルの前記第2の不純物層に繋がる前記ソース線は、隣接する前記メモリセルの前記第2の不純物層に対応する不純物層と共有することを特徴とする。
【0018】
第12発明は、上記の第1発明において、前記メモリセルの前記第3の不純物層に繋がる前記ビット線は、隣接する前記メモリセルの前記第3の不純物層に対応する不純物層と共有することを特徴とする。
【0019】
第13発明は、上記の第5発明において、前記接地電圧は、零ボルトであることを特徴とする。
【0020】
第14発明は、上記の第1発明において、前記第1の不純物層の底部が前記第1の絶縁層の底部より深い位置にあり、前記第1の不純物層が複数の前記メモリセルで共有されていることを特徴とする。
【0021】
第15発明は、上記の第1発明において、前記第1の不純物層に繋がるボトム線を有し、前記ボトム線には所望の電圧が印加できることを特徴とする。
【0022】
第16発明は、上記の第1発明において、前記ページ消去動作において、前記ソース線に第2の負電圧を印加し、前記ワード線に第5の正電圧を印加することを特徴とする。
【0023】
第17発明は、上記の第1発明において、前記ページ消去動作において、前記ボトム線に第3の負電圧を印加することを特徴とする。
【0024】
第18発明は、上記の第15発明において、前記メモリセルのデータ保持時には、前記ボトム線に第3の電圧を印加し、前記ページ読出し動作時に前記第3の電圧よりも高い第4の電圧を印加することを特徴とする。
【0025】
第19発明は、上記の第17発明において、前記ソース線と、前記ワード線と、前記プレート線と、前記ボトム線とは、前記行方向に平行に配設し、前記ページを構成し、前記列方向に配設するビット線は、前記ページと直交することを特徴とする。
【0026】
第20発明は、上記の第1発明において、前記ページ書込み動作において、前記ビット線と前記ソース線との間の直流電流が零であることを特徴とする。
【0027】
第21発明は、上記の第1発明において、前記ページ消去動作において、前記第1のゲート導体層と前記第1の半導体層との間の容量結合により、前記第1の半導体層の電圧を昇圧することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1A】第1実施形態に係る半導体素子を用いたメモリ装置の断面構造図である。
【
図1B】
図1Aのメモリセルを2×2の行列配置したメモリ装置の平面および断面構造図である。
【
図2】第1実施形態に係る半導体素子を用いたメモリ装置の書き込み動作、動作直後のキャリアの蓄積、セル電流を説明するための図である。
【
図3】第1実施形態に係る半導体素子を用いたメモリ装置の書き込み動作直後の正孔キャリの蓄積、消去動作、セル電流を説明するための図である。
【
図4A】第1実施形態に係るメモリ装置の動作方法を説明するための図である。
【
図4B】第1実施形態に係るメモリ装置の動作方法を説明するための図である。
【
図4C】第1実施形態に係るメモリ装置の動作方法を説明するための図である。
【
図4D】第1実施形態に係るメモリ装置の動作方法を説明するための図である。
【
図4E】第1実施形態に係るメモリ装置の動作方法を説明するための図である。
【
図4F】第1実施形態に係るメモリ装置の動作方法を説明するための図である。
【
図4G】第1実施形態に係るメモリ装置の動作方法を説明するための図である。
【
図4H】第1実施形態に係るメモリ装置の動作方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明に係る、半導体素子を用いたメモリ装置の構造、駆動方式、蓄積キャリアの挙動について、図面を参照しながら説明する。
【0030】
(第1実施形態)
図1A~
図3を用いて、本発明の第1実施形態に係る半導体素子を用いたメモリセルの構造と動作メカニズムを説明する。
図1Aを用いて、本実施形態による半導体素子を用いたメモリのセル構造を説明する。
図1Bを用いて、メモリのセル構造を詳細に説明する。
図2を用いて、半導体素子を用いたメモリのデータ書き込みメカニズムとキャリアの挙動を、
図3を用いて、データ消去メカニズムを説明する。
【0031】
図1Aに、本発明の第1実施形態に係る半導体素子を用いたメモリセルの垂直断面構造を示す。ここでは、基板上に垂直方向に立った第2の半導体層4の側面全体を囲んだ第1のゲート絶縁層5、第1のゲート導体層22を有するSGTを例にダイナミック フラッシュ メモリ素子を説明する。基板20上にアクセプタ不純物を含むp型の導電型を有するシリコンのp層1がある。p層1の表面から垂直方向に立つ柱状のドナー不純物を含むn層3(特許請求の範囲の「第1の不純物層」の一例である)を持つ半導体と、さらにその上部にアクセプタ不純物を含む柱状のp層4(特許請求の範囲の「第1の半導体層」の一例である)がある。p層1とn層3の一部を覆う第1の絶縁層2とp層4を覆う第1のゲート絶縁層5がある。承知致しました。どうもありがとうございます。また、第1のゲート導体層22xxxの一例である、を削除して頂き、どうもありがとうございます。が第1の絶縁層2、第1のゲート絶縁層5に接してある。ゲート絶縁層5とゲート導体層22に接した第2の絶縁層6がある。p層4に接触したアクセプタ不純物を含むp層8(特許請求の範囲の「第2の半導体層」の一例である)がある。
【0032】
p層8の片側に高濃度のドナー不純物を含んだn+層7a(特許請求の範囲の「第2の不純物層」の一例である)がある。n+層7aの反対側にn+層7b(特許請求の範囲の「第3の不純物層」の一例である)がある。
【0033】
p層8の上表面に第2のゲート絶縁層9がある。このゲート絶縁層9は、n+層7a、7bに、それぞれ接するか、または近接している。このゲート絶縁層9に接触して、半導体層8の反対側に第2のゲート導体層10がある。
【0034】
これにより基板20、p層1、絶縁層2、ゲート絶縁層5、ゲート導体層22、絶縁層6、n層3、p層4、n+層7a、n+層7b、p層8、ゲート絶縁層9、ゲート導体層10、からなる半導体素子を用いたメモリセルが形成される。そして、n+層7aはソース線SLに、n+層7bはビット線BLに、ゲート導体層10はワード線WLに、ゲート導体層22はプレート線PLに、n層3はボトム線BTL(特許請求の範囲の「ボトム線」の一例である)に、それぞれ接続している。ソース線、ビット線、プレート線、ワード線、ボトム線に供給する電位を操作することで、メモリの動作をさせる。このメモリセルよりなるメモリ装置を以下、ダイナミック フラッシュ メモリ と呼ぶ。
【0035】
本実施形態のメモリ装置では、上述のダイナミック フラッシュ メモリセルが基板20上にひとつ、もしくは2次元状に複数配置されている。
【0036】
また、
図1Aでp層1はp型の半導体としたが、不純物の濃度にプロファイルが存在してもよい。また、n層3、p層4、p層8の不純物の濃度にプロファイルが存在してもよい。また、p層4とp層8は独立して、不純物の濃度、プロファイルを設定してもよい。
【0037】
また、n+層7aとn+層7bを、正孔が多数キャリアであるp+層で形成したときは、p層1、p層4、p層8をn型半導体、n層3をp型半導体、ゲート導体層22の仕事関数をゲート導体層10の仕事関数よりも低い材料を用いて、書き込みのキャリアを電子とするダイナック フラッシュ メモリの動作がなされる。
【0038】
また、
図1Aでは半導体層1がp型の半導体としたが、基板20にn型の半導体基板を用い、pウェルを形成し、これを第1の半導体層1として、本発明のメモリセルを配置してもダイナック フラッシュ メモリの動作がなされる。
【0039】
また、
図1Aでは絶縁層2とゲート絶縁層5を区別して示したが、一体のものとして形成してもよい。以下では、絶縁層2とゲート絶縁層5とを併せてゲート絶縁層5とも言う。
【0040】
また、
図1Aでは第2の半導体層8はp型の半導体としたが、p層4の多数キャリア濃度、第2の半導体層8の厚さ、ゲート絶縁層9の材料、厚さ、ゲート導体層10の材料に依存し、第2の半導体層8はp型、n型、i型いずれのタイプも用いることができる。
【0041】
また、
図1Aではp層8の底部と絶縁層6の上表面が一致するように図示されているが、p層4とp層8が接触しており、かつp層4の底部が絶縁層6の底部よりも深ければ、p層4とp層8との界面は絶縁層6の上表面と一致しなくてもよい。
【0042】
また、第2の半導体層8の底部から第1の不純物層3の上部までの垂直距離が、第2の半導体層8の底部から第1のゲート導体層22の底部までの垂直距離よりも短い。
【0043】
また、基板20は絶縁体でも、半導体でも、導体でもp層1を支えられるものであれば任意の材料を用いることができる。
【0044】
また、ゲート導体層22は絶縁層2、もしくはゲート絶縁層5を介してメモリセルの一部の電位を変化させられるのであれば、高濃度にドープされた半導体層であっても導体層であってもよい。
【0045】
また、このメモリセルの中のMOSFETはソースとなるn+層7a、ドレインとなるn+層7b、ゲート絶縁層9、ゲートとなるゲート導体層10、基板となるp層8を構成要素として作動するが、MOSFETとして、FinFET(非特許文献10を参照)、GAA(非特許文献11を参照)、Nanosheet(非特許文献12を参照)でも良い。
【0046】
また、
図1Aではn層3の底部と絶縁層2の底部が一致するように図示されているが、一致しなくてもよい。また、n層3はp層1内に広がっていてもよい。また、n層3はp層1上部に広がり隣接メモリセルに繋がっていてもよい。また、n層3に電圧が印加される電極に繋がっていてもよい。
【0047】
図1Bは、
図1Aのメモリセルを2×2の行列に配置したメモリセルアレイを示しており、これを用いて本実施形態に係るダイナミック フラッシュ メモリの構造をより詳細に説明する。
図1Bにおいて、(a)は平面図、(b)は(a)のX-X’線に沿った垂直断面図、(c)は(a)のY-Y’線に沿った垂直断面図を示す。また、
図1Aに示す構成部分と同一または類似の構成部分には数字が同一の符号を付してある。
【0048】
図1Bにおいて、絶縁層31には、それぞれのメモリセルにコンタクト孔33aから33dが設けられ、各メモリセルはソース線SL35に接続する。ソース線SL35は、絶縁膜38で覆われ、第2のコンタクト孔37c、37dが設けられ、各メモリセルは、ビット線BL39に接続する。
【0049】
なお、
図1Bと
図1Aとの対比を記すると、n層3(
図1A)/n層3a(
図1B)(以下同様の記述)、p層4/p層4a、半導体層8/半導体層8a、SLに接続するn+層7a/n+層7a、BLに接続するn+層7b/n+層7c、ゲート絶縁層9/ゲート絶縁層9a、WLに接続されるゲート導体層10/ゲート導体層10a、PLに接続されるゲート導体層22/ゲート導体層22となる。
【0050】
また、
図1Bにおいて溝の形は矩形状の垂直断面として説明したが、台形状の形であってもよい。また、不純物層3や不純物層4を底面が四角形の柱状として示しているが、それ以外の多角形、もしくは円形の底面を持つ柱状であってもよい。
【0051】
図2を参照して、本発明の第1実施形態に係るダイナミック フラッシュ メモリのデータ書き込み動作時のキャリア挙動、蓄積、セル電流を説明する。まずn+層7aとn+層7bの多数キャリアが電子であり、たとえばプレート線PLに接続されるゲート導体層22にアクセプタ不純物を高濃度で含むpoly Si(以下、アクセプタ不純物を高濃度で含むpoly Siを「p+poly」と称する。)を使用する。WLに接続されるゲート導体層10にドナー不純物を高濃度で含むpoly Si(以下、ドナー不純物を高濃度で含むpoly Siを「n+poly」と称する。)を使用し、第2の半導体層8としてp型半導体を使用した場合について説明する。
図2(b)に示したように、このメモリセルの中のMOSFETはソースとなるn+層7a、ドレインとなるn+層7b、ゲート絶縁層9、ゲートとなるゲート導体層10、基板となるp層8を構成要素として作動する。p層1に例えば0Vを印加し、ソース線SLの接続されたn+層7aに接地電圧である例えば零ボルト(0V)を入力し、プレート線PLの接続されたゲート導体層22にメモリセルのデータ保持時に印加する第1の電圧、例えば-1Vを印加する。プレート線PLには、接地電圧、例えば0Vを入力しても良い。ビット線BLの接続されたn+層7bに例えば1.5Vを入力し、ワード線WLの接続されたゲート導体層10に第1の負電圧を印加する。第1の負電圧と第1の電圧とは、同一電圧の例えば-1Vにすると、回路設計が容易になる利点がある。
【0052】
図2を用いて、ページ書込み動作のメカニズムを説明する。
図2(a)は、ゲート誘起ドレインリーク電流の発生メカニズムを説明するためのバンド図である。ワード線WLの接続する第2のゲート導体層10の印加電圧よりも、ビット線BLの接続する第3の不純物層であるn+層7bの印加電圧を高くすると、ゲート誘起ドレインリーク電流(GIDL Current:
Gate
Induced
Drain
Leakage Current、非特許文献8を参照)が流れる。これは、第2のゲート導体層10と第3の不純物層であるn+層7bとの間の強電界によって、第2の半導体層8と第3の不純物層であるn+層7bとの間の価電子帯32bと伝導帯31bのバンドが曲げられ、バンド間トンネリング33b(Band-to-band tunneling)による電子群34が価電子帯32bと伝導帯31bへとトンネルし、第3の不純物層であるn+層7bへ流れる。この時に生成された正孔群11は、符号50で示すようにフローティングボディである第2の半導体層8および第1の半導体層4に流れる。その様子を
図2(b)に示している。
【0053】
図2(c)にはページ書込み動作直後、ワード線WLと、ビット線BLと、ソース線SLとが0Vになり、プレート線PLが第1の電圧になった書込み状態のp層4とp層8にある正孔群11を示す。生成された正孔群11は、p層4とp層8の多数キャリアであるが、生成された正孔濃度は一時的にp層8の領域で高濃度となり、その濃度の勾配によってp層4の方へ拡散によって移動する。さらに、第1のゲート導体層22にp+polyを用いるために、p層4の第1のゲート絶縁層5の近傍により高濃度に蓄積される。この結果、p層4の正孔濃度はp層8の正孔濃度に比較して高濃度となる。p層4とp層8が電気的につながっているために実質的に第2のゲート導体層10を持つMOSFETの基板であるp層8を正バイアスに充電する。また、空乏層内の正孔はSL側、BL側、もしくはn層3の方に移動し、電子と徐々に再結合するものの、第2のゲート導体層10をもつMOSFETのしきい値電圧は、p層4とp層8に一時的に蓄積される正孔により正の基板バイアス効果によって、低くなる。これにより、
図2(d)に示すように、ワード線WLの接続された第2のゲート導体層10をもつMOSFETのしきい値電圧は、低くなる。この書込み状態を論理「1」データに割り当てる。
【0054】
なお、上記のビット線BL、ソース線SL、ワード線WL、プレート線PL、ボトム線BTLに印加する電圧条件は、書き込み動作を行うための一例であり、書き込み動作ができる他の電圧条件であってもよい。
【0055】
本実施形態の構造によれば、ワード線WLの接続された第2のゲート導体層10をもつMOSFETのp層8は、p層4に電気的に接続されているので、発生された正孔を蓄積できる容量を、p層4の体積を調節することで自由に変えることができる。つまり、保持時間を長くするために例えば、p層4の深さを深くすればよい。したがって、p層4の底部はp層8の底部よりも深い位置にあることが要求される。また、正孔キャリアが蓄積されている部分、ここではp層4、p層8の体積に比べて、電子と再結合することに関与するn層3、n+層7a、n+層7bが接触する面積を意図的に小さくできるので、電子との再結合を抑制でき、蓄積された正孔の保持時間を長くできる。さらに、ゲート導体層22にp+polyを使用しているために蓄積されている正孔は第1のゲート絶縁層5に接した第1の半導体層であるp層4の界面近くに蓄積され、加えて、データが消失する原因となる、電子と正孔の再結合のもととなるpn接合部分、つまり、n+層7a、n+層7bとp層8の接触部分から離れた箇所に正孔を蓄積できるために安定した正孔の蓄積ができる。このために、このメモリ素子として基板に全体の基板バイアスの効果があがり、記憶を保持する時間が長くなり、論理「1」データの書込み状態の電圧マージンが広がる。
【0056】
また、ページ書込み動作において、ゲート誘起ドレインリーク電流を用いるため、ビット線とソース線との間の直流電流が零である。このため、ページ書込み動作は、著しく低消費電力で実行でき、多ビットのメモリセルを同時に書き込むことが可能である。
【0057】
なお、ページ書込み動作において、ゲート誘起ドレインリーク電流に換えて、第2の不純物層と第3の不純物層との間に流す電流で第3の不純物層近傍でインパクトイオン化現象を引き起こさせ、正孔群11を生成し、フローティングボディである第3の半導体層8および第2の半導体層4に流し込んでも良い(非特許文献9を参照)。
【0058】
次に、
図3を用いてページ消去動作のメカニズムを説明する。
図3(a)にページ消去動作前に、前のサイクルで書込み状態の正孔群11がp層4とp層8に蓄えられ、ワード線WLと、ビット線BLと、ソース線SLとが0Vになり、プレート線PLが接地電圧、もしくは第1の負電圧になった直後の状態を示している。
図3(b)に示すように、ページ消去動作時には、プレート線PLの電圧を第1の正電圧、例えば2Vにする。その結果、第2の半導体層8であるp層の初期電位の値に関係なく、プレート線PLとフローティング状態の第1の半導体層4との容量結合により、第1の半導体層4および第2の半導体層8であるp層の電圧が上昇する。これによって、第2の半導体層8とソース線SLおよびビット線BLが接続されているドレインとなるn+層7bと、p層8のPN接合が順バイアスとなる。その結果、前のサイクルで、p層4およびp層8に蓄えられていた正孔群11が、ソース線SLおよびビット線BLに接続されているn+層7aおよびn+層7bに移動する。また、PLの電圧を2Vに印加した結果、ゲート絶縁層5とp層4の界面に反転層14が形成され、ボトム線BTLに接続されたn層3と接触する。そのためにp層4に蓄積された正孔はp層4からn層3や反転層に流れ、電子と再結合する。その結果、p層4とp層8の正孔濃度は時間とともに低くなり、MOSFETのしきい値電圧は、論理「1」データの書込み状態よりも高くなり、消去状態となる。これにより、
図3(c)に示すように、このワード線WLが接続されたゲート導体層10をもつMOSFETは、消去状態のしきい値となる。このダイナミック フラッシュ メモリの消去状態を論理「0」データに割り当てる。
【0059】
本実施形態の構造によれば、データ消去時において、データ蓄積時と比べて、電子、正孔の再結合面積を実効的に増加させることができる。したがって、論理「0」データの安定した状態を短い時間で供与でき、このダイナミック フラッシュ メモリ素子の動作速度が向上する。
【0060】
なお、上記のビット線BL、ソース線SL、ワード線WL、プレート線PL、ボトム線BTLに印加する電圧条件は、消去動作を行うための一例であり、消去動作ができる他の電圧条件であってもよい。例えば、上記ではゲート導体層22を2Vにバイアスした例を説明したが、消去時に、例えばBLに0.2V、SLに0V、第1と第2のゲート導体層に2Vでバイアスすれば、p層8とゲート絶縁層9の界面、およびp層4とゲート絶縁層2の界面に電子が多数キャリアである反転層を形成することができ、電子と正孔の再結合面積を増やすことができ、さらにBLとSLの間に電子を多数キャリアとする電流を流すことでさらに積極的に消去時間を短くすることもできる。
【0061】
また、本実施形態によれば、情報を読み書きするMOSFETの構成要素の一つであるp層8は、p層1、n層3、p層4と電気的に接続されている。さらに、ゲート導体層22にある電圧を印加できる。したがって、書き込み動作においても、消去動作においても、例えば、SOI構造のようにMOSFET動作中に基板バイアスがフローティング状態で不安定になったり、ゲート絶縁層9の下の半導体部分が完全に空乏化したりすることがない。このために、MOSFETのしきい値、駆動電流などが動作状況に左右されにくい。したがってMOSFETの特性は、p層8の厚さ、不純物の種類、不純物濃度、プロファイル、p層4の不純物濃度、プロファイル、ゲート絶縁層9の厚さ、材料、ゲート導体層10、22の仕事関数、を調整することで、幅広く所望のメモリ動作に係る電圧を設定できる。また、MOSFETの下は完全空乏化せずに、空乏層がp層4の深さ方向に広がるので、キャパシタを持たないDRAMの欠点であったフローティングボディのワード線からのゲート電極のカップリングにほとんど左右されることがない。つまり、本実施形態によれば、ダイナミック フラッシュ メモリとしての動作電圧のマージンを広く設計できる。
【0062】
また、ページ消去動作において、第1のゲート導体層22と第1の半導体層4との間の大きな容量結合により、第2の半導体層4の電圧を昇圧することができる。この結果、第2の不純物層7aと、第3の不純物層7bと、第1の不純物層3と、第1の半導体層4および第2の半導体層8との間のPN接合を容易に順バイアスにすることができる。
【0063】
また、本実施形態によれば、メモリセルの誤動作防止に効果がある。メモリセルの動作において、目的セルの電圧操作により、セルアレイ内にある目的以外のセルの一部の電極に不要な電圧がかかり、誤動作をすることが大きな問題である(例えば、非特許文献9)。つまり、現象としては、論理「1」データを書込んだメモリセルが、ほかのメモリセルの動作によって論理「0」データになったり、論理「0」データを書いたセルがほかのセルの動作によって論理「1」データになったりすることをいう(これ以降、この誤動作による現象をディスターブ不良と表記する)。本実施形態によれば、元来、論理「1」データがデータ情報として書き込まれている場合に、蓄積されている正孔数の量は、トランジスタ動作によって起こる電子と正孔の再結合量に比較して、p層4の深さを調節することで増加でき、従来のメモリでディスターブ不良が起こる条件でも、MOSFETのしきい値変動に与える影響が少なく、不良を起こしにくい。また、元来、論理「0」データがデータ情報として書き込まれている場合は、読み出しの際のトランジスタ動作によって意図しない正孔の生成がされたとしても、ただちにp層4に拡散していくので、同じくp層4の深さを深くすれば、p層4とp層8全体の正孔濃度の変化率は小さく、この場合もMOSFETのしきい値に与える影響は少なく、従来よりもディスターブ不良の起こる確率を減少できる。したがって、本実施形態のメモリセルは、ディスターブ不良に強い構造になっている。
【0064】
また、データ情報が論理「0」データの場合、データ保持時にメモリセル内の空乏層において生成される電子-正孔対のうちの正孔がp層8に蓄積されて論理データが「0」から「1」に変化する可能性があるが、本発明の構造によればp層4の方により高濃度に正孔が蓄積されるためにMOSFETの直下にあるp層8の正孔濃度の変化に大きな影響を与えないので、安定した論理「0」データの情報保持ができる。
【0065】
また、
図1の構造から明らかなように、p層8、n+層7a,7b、ゲート絶縁層9、ゲート導体層10からなる素子構造は、このメモリセルだけではなく、それ以外の一般的なCMOS構造を含むMOS回路と共通に形成できる。したがって、このメモリセルは従来のCMOS回路と容易に組み合わせることができる。
【0066】
図4A~
図4Fを用いて、本実施形態に係るダイナミック フラッシュ メモリのページ書込み動作と、ページ消去動作と、ページ読出し動作を説明する。
【0067】
図4Aに、主要回路を含めたメモリセルアレイのブロック図を示す。ワード線WL0~WL2と、プレート線PL0~PL2と、ソース線SL00とSL12とは、ロウデコーダ回路RDECに接続する。また、ボトム線BTL0~BTL2もロウデコーダ回路RDECに接続する(接続する配線は図示していない)。ロウデコーダ回路RDECにはロウアドレスRADを入力し、ロウアドレスRADに従って、ページP0~P2のいずれかを選択する。また、ビット線BL0~BL2は、ワード線WL0~WL2と、プレート線PL0~PL2と、ソース線SL00とSL12と、ボトム線BTL0~BTL2と直交し、センスアンプ回路SAに接続する。センスアンプ回路SAは、カラムデコーダ回路CDECに接続し、カラムデコーダ回路CDECにはカラムアドレスCADを入力し、カラムアドレスCADに従って、センスアンプ回路SAが入出力回路IOに選択的に接続する。
【0068】
図4Aのメモリセルアレイにおいて、1個のメモリセルは、一点鎖線で囲む領域で示しており、
図1Aと
図1Bのメモリセルに対応している。すなわち、
図1Aと
図1Bにおける第2のゲート導体層10は、ワード線WLに接続し、第1のゲート導体層22は、プレート線PLに接続し、第2の不純物層n+層7aは、ソース線SLに接続し、第3の不純物層n+層7bは、ビット線BLに接続し、第1の不純物層n層3は、ボトム線BTLに接続している場合に対応している。ここでは、平面視において、3行×3列の計9個のメモリセルC00~C22を示しているが、実際のメモリアレイにあるメモリセルの数は、これよりも多い。メモリセルが行列状に配列されているときに、その配列の一方の方向を「行方向」、これに垂直な方向を「列方向」という。また、平面視において、ソース線SL00とSL12、ボトム線BTL0~BTL2、プレート線PL0~PL2、ワード線WL0~WL2は、平行に「行方向」に配設され、複数のページを構成している。それらに直交する方向にビット線BL0~BL2が配設されている。例えば、このメモリアレイにおいて、任意のページP1を選択することは、プレート線PL1とワード線WL1とソース線SL12とボトム線BTL1が接続するメモリセルC10~C12が選択することになる。
【0069】
図4Aにおいて、メモリセルC10とC20は、
図1に示した第2の不純物層7aに対応する不純物層は、配線で繋がっている。また、メモリセルC00とC10は、
図1に示した第3の不純物層7bに対応する不純物層を、共有している。
【0070】
図4Bの動作波形図を用いて、ページ書込み動作を説明する。第1の書込み時刻W1は、ページ書込み動作前の各ノードの電圧状態である。ワード線WL0~WL2には、接地電圧Vssが印加され、プレート線PL0~PL2には、データ保持時の印加電圧として、接地電圧Vss、もしくは第1の電圧V1が印加され、ビット線BL0~BL2には、接地電圧Vssが印加され、ソース線SL00とSL12には、接地電圧Vssが印加され、ボトム線BTL0~BTL2には、接地電圧Vssが印加されている。ここで、接地電圧Vssは、例えば0Vであり、第1の電圧V1は、例えば-1Vである。
【0071】
第2の書込み時刻W2で、ページP1のワード線WL1が選択され、接地電圧Vssから第1の負電圧VN1へと下降する。ここで、第1の負電圧VN1は、例えば第1の電圧V1と同一電圧の、-1Vである。第3の書込み時刻W3で、センスアンプ回路に予め蓄積(ロード)された書込みページデータに基づき、例えばビット線BL0とBL2は論理「1」データを書込むビット線で、ビット線BL1は論理「0」データを保持する(前のサイクルでページ消去済み)ビット線であると想定すると、ビット線BL0とBL2の電圧は接地電圧Vssから第2の正電圧VP2へと上昇する。この結果、メモリセルC10とC12の第2のゲート導体層10と第3の不純物層7bとの間の高電界により、ゲート誘起ドレインリーク電流(GIDL)が発生し、第3の半導体層8の内部に正孔群11が蓄積される。そして、メモリセルC10とC12の論理「0」データが論理「1」データへと書き換えられる。第4の書込み時刻W4で、選択していたワード線WL1の電圧は、第2の負電圧VN2から、接地電圧Vssへと上昇し、ビット線BL0とBL2の電圧は、第2の正電圧VP2から接地電圧Vssへと下降し、ページ書込み動作が終了する。
【0072】
図4Cの動作波形図を用いて、ページ消去動作を説明する。第1の消去時刻E1は、ページ消去動作前の各ノードの電圧状態である。ワード線WL0~WL2には、接地電圧Vssが印加され、プレート線PL0~PL2には、データ保持時の印加電圧として、接地電圧Vss、もしくは第1の電圧V1が印加され、ビット線BL0~BL2には、接地電圧Vssが印加され、ソース線SL00とSL12には、接地電圧Vssが印加され、ボトム線BTL0~BTL2には、接地電圧Vssが印加されている。ここで、接地電圧Vssは、例えば0Vであり、第1の電圧V1は、例えば-1Vである。
【0073】
第2の消去時刻E2で、ページP1のプレート線PL1が選択され、接地電圧Vssもしくは第1の電圧V1から第1の正電圧VP1へと上昇する。ここで、第1の正電圧VP1は、例えば2Vである。この時、ソース線SL12と、ビット線BL0~BL2の電圧は、接地電圧になっているため、プレート線PL1とページP1に属するメモリセルC10、C11、C12の第2の半導体層4との容量結合により、フローティング状態の第2の半導体層4の電圧が上昇する。この結果、メモリセルC10、C11、C12が前のサイクルのページ書込み動作で論理「1」データが書かれ、第1の半導体層4および第2の半導体層8の内部に正孔群11が蓄積されている。第2の不純物層7aと、第3の不純物層7bと、第1の不純物層3と、第2の半導体層4および第3の半導体層8との、PN接合が順バイアスになり、正孔群11が消滅する。また、メモリセルC10、C11、C12が前のサイクルで論理「0」データを維持している場合においても、その残留の正孔群11は消滅する。すなわち、ページP1に属する全てのメモリセルC10、C11、C12において、ページ消去動作が施され、論理「0」データが記憶される。第3の消去時刻E3で、選択していたプレート線PL1の電圧は、第1の正電圧VP1から、接地電圧Vssもしくは第1の電圧V1へと下降し、ページ消去動作が終了する。
【0074】
図4Dの動作波形図を用いて、ページ読出し動作を説明する。第1の読出し時刻R1は、ページ読出し動作前の各ノードの電圧状態である。ワード線WL0~WL2には、接地電圧Vssが印加され、プレート線PL0~PL2には、データ保持時の印加電圧として、接地電圧Vss、もしくは第1の電圧V1が印加され、ビット線BL0~BL2には、接地電圧Vssが印加され、ソース線SL00とSL12には、接地電圧Vssが印加され、ボトム線BTL0~BTL2には、接地電圧Vss、もしくは第3の電圧V3が印加されている。ここで、接地電圧Vssは、例えば0Vであり、第1の電圧V1は、例えば-1Vである。また、第3の電圧V3は、例えば0Vである。
【0075】
第2の読出し時刻R2で、ビット線BL0~BL2の電圧は、各ビット線に設けられた負荷トランジスタ回路によって、接地電圧Vssから第4の正電圧VP4へと上昇する(負荷トランジスタ回路は図示せず)。第3の読出し時刻R3で、ページP1のワード線WL1が選択され、接地電圧Vssから第3の正電圧VP3へと上昇する。ここで、第3の正電圧VP3は、例えば1.5Vである。また、プレート線PL1は、接地電圧Vss、もしくは第1の電圧V1から第2の電圧V2に上昇し、ボトム線BTL1は、接地電圧Vss、もしくは第3の電圧V1から第4の電圧V4に上昇する。ここで、第2の電圧V2は、例えば、1Vであり、第4の電圧V4は、例えば、1Vである。
【0076】
ここで、例えば、メモリセルC10とC12の記憶データが論理「1」データであり、メモリセルC11の記憶データが論理「0」データあることを想定する。この結果、
図4Eに示したように、メモリセルC10とC12の第2の半導体層4における多数キャリアである正孔群11の一部は、第1の半導体層4から第2の半導体層8に移動する。これによって、第2の半導体層8に正孔群11が集まり、基板バイアス効果により、メモリセルC10とC12の中のソースとなるn+層7a、ドレインとなるn+層7b、ゲート絶縁層9、ゲートとなるゲート導体層10、基板となるp層8を構成要素とするMOSFETのしきい値電圧は低くなり、メモリセル電流を流す。したがって、ビット線BL0とBL2の電圧は、センスアンプ回路SAをスタティック方式のカレントセンス方式で設計する場合には、負荷トランジスタ回路の電流値とメモリセル電流値が拮抗し、論理「0」データを読み出すビット線よりも低い電圧“1”BLになる。また、センスアンプ回路SAをDRAMと同様のダイナミックセンス方式で設計する場合には、ビット線BL0とBL2の電圧は、接地電圧Vssになる。一方、論理「0」データを記憶するメモリセルC11では、第3の半導体層8に正孔群11が集まらず、ビット線BL1の電圧は変化せず、第4の正電圧VP4を維持する。
【0077】
本発明では、ページ読出し動作時に記憶データが論理「1」データであるメモリセルC10とC12の半導体層4における多数キャリアである正孔群11の一部を、第1の半導体層4から第2の半導体層8に移動させることが可能であるため、メモリセルのMOSFETの微細化が可能である。この結果、メモリセルのMOSFETとして、FinFETやNanosheetやGAA等の微細な高集積化可能なMOSFETが実現可能である。
【0078】
第4の読出し時刻R4で、選択していたワード線WL1の電圧は、第3の正電圧VP3から、接地電圧Vssへと下降し、プレート線PL1の電圧は、第2の電圧V2から、接地電圧Vss、もしくは第1の電圧V1へと下降し、ボトム線BTL1の電圧は、第4の電圧V4から、接地電圧Vss、もしくは第3の電圧V3へと下降し、ビット線BL0とBL2の電圧は、論理「0」データを読み出す電圧“1”BLから接地電圧Vssへと下降し、ビット線BL1の電圧は、論理「0」データを読み出す電圧“0”BL、すなわち、第4の正電圧VP4から接地電圧Vssへと下降し、ページ読出し動作が終了する。
【0079】
図4Fの動作波形図のようにページ消去動作において、第2の消去時刻E2で、ソース線SL12に第2の負電圧VN2を印加し、ページP1とP2の2ページを同時に消去しても良い。ここで、第2の負電圧VN2は、例えば-0.7Vである。この時にワード線WL1とWL2の電圧を第5の正電圧VP5にすると、より効果的に消去が可能である。ここで、第5の正電圧VP5は、例えば1Vである。
【0080】
また、
図4Gの動作波形図のようにページ消去動作において、第2の消去時刻E2で、ボトム線BTL1とBTL2に第3の負電圧VN3を印加し、ページP1とP2の2ページを同時に消去しても良い。ここで、第3の負電圧VN3は、例えば-0.7Vである。この時にソース線SL12に第2の負電圧VN2を印加し、ワード線WL1とWL2の電圧を第5の正電圧VP5にすると、より効果的に消去が可能である。
【0081】
また、
図4Hの動作波形図のようにページ消去動作において、第2の消去時刻E2で、ボトム線BTL1に第3の負電圧VN3を印加し、ページP1に関するページ消去動作を行っても良い。この結果、単一ページ消去動作が可能である。
【0082】
本実施形態は、下記の特徴を有する。
(特徴1)
本発明の第1実施形態に係るダイナミック フラッシュ メモリは、ページ読出し動作において、記憶データが論理「1」データであるメモリセルの半導体層4における多数キャリアである正孔群11の一部を、第1の半導体層4から第2の半導体層8に移動させることが可能である。この結果、メモリセルのMOSFETの微細化を行っても、第2の半導体層8に正孔群11を集めることが容易に行える。したがって、メモリセルのMOSFETとして、FinFETやNanosheetやGAA等の微細な高集積化可能なMOSFETが実現可能であり、大容量化が可能なダイナミック フラッシュ メモリが安価で提供できる。
【0083】
(特徴2)
ページ消去動作において、第1のゲート導体層22と第1の半導体層4との間の容量結合により、第1の半導体層4の電圧を昇圧することができる。この結果、第2の不純物層7aと、第3の不純物層7bと、第1の不純物層3と、第1の半導体層4および第2の半導体層8との間のPN接合を順バイアスにすることができる。したがって、ページ書込み動作で論理「1」データが書かれたメモリセルにおいて、第1の半導体層4および第2の半導体層8の内部に蓄積された正孔群11を効率良く消滅させることができる。
【0084】
(特徴3)
本発明の第1実施形態に係るダイナミック フラッシュ メモリは、MOSFETのチャネルの形成される基板領域は、絶縁層2とゲート絶縁層5とn層3で囲まれたp層4とp層8で構成される。この構造のために論理「1」の書き込みの場合に発生する多数キャリアは、p層8とp層4に蓄積でき、その数を増加させることができる。さらに、書き込みの際に生成された正孔をゲート導体層22の近傍のp層4の界面近くに蓄積でき、情報保持時間が長くなる。また、データ消去時にはゲート導体層22に正電圧を与えて、反転層を形成し、正孔と電子の再結合面積を実効的に増加させることで、電子との再結合面積を増加させ、消去が短時間となる。さらに、ソース線SLに接続されているn+層7aに負電圧を与えることで、n+層7a、p層8、p層4、n層3、p層1のサイリスタ構造により、消去動作を加速することもできる。したがって、メモリの動作マージンを拡大でき、消費電力を低減でき、メモリの高速動作に繋がる。
【0085】
(特徴4)
本発明の第1実施形態に係るダイナミック フラッシュ メモリの中のMOSFETの構成要素の一つであるp層8は、p層4、n層3、p層1と接続されており、さらにゲート導体層22に印加する電圧を調整することで、ゲート絶縁層9の下のp層8やp層4が完全に空乏化しない。このために、MOSFETのしきい値、駆動電流などがメモリの動作状況に左右されにくい。さらに、MOSFETの下は完全空乏化しないために、キャパシタを持たないDRAMの欠点であったフローティングボディがワード線からのゲート電極のカップリングに大きく左右されることがない。つまり、本発明によればダイナミック フラッシュ メモリとしての動作電圧のマージンを広く設計できる。
【0086】
また、
図1Aと
図1Bでは、基板上に垂直方向に立った第1の半導体層4の側面全体を囲んだ第1のゲート絶縁層5、第1のゲート導体層22を有するSGTを例にダイナミック フラッシュ メモリ素子を説明した。本実施形態の説明で示したように、本ダイナミック フラッシュ メモリ素子は、ゲート誘起ドレインリーク電流により発生した正孔群11が第1の半導体層4および第2の半導体層8に保持される条件を満たす構造であればよい。このためには、第1の半導体層4および第2の半導体層8は基板20と電気的に分離されたフローティング ボディ構造であればよい。これより、例えばSGTの1つであるGAA(Gate All Around)技術、Nanosheet技術を用いて、第1の半導体層4および第2の半導体層8の半導体母体を基板20に対して水平に(半導体母体の中心軸が基板と平行になるように)形成されていても、前述のダイナミック フラッシュ メモリ動作ができる。また、水平方向に形成されたGAAやNanosheetを複数本積層させた構造であってもよい。また、SOI(Silicon On Insulator)を用いたデバイス構造であってもよい。このデバイス構造ではチャネル領域の底部がSOI基板の絶縁層に接しており、且つ他のチャネル領域を囲んでゲート絶縁層、及び素子分離絶縁層で囲まれている。この構造においても、チャネル領域はフローティング ボディ構造となる。このように、本実施形態が提供するダイナミック フラッシュ メモリ素子では、チャネル領域がフローティング ボディ構造である条件を満足すればよい。また、FinFETをSOI基板上に形成した構造であっても、チャネル領域がフローティング ボディ構造であれば、本ダイナミック フラッシュ メモリ動作が出来る。
【0087】
また、本発明は、本発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した各実施形態は、本発明の実施例を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。上記実施例及び変形例は任意に組み合わせることができる。さらに、必要に応じて上記実施形態の構成要件の一部を除いても本発明の技術思想の範囲内となる。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明に係る、半導体素子を用いたメモリ装置によれば、従来よりも記憶する時間の長い、消費電力の少ない高速のダイナミック フラッシュ メモリを供与することができる。
【符号の説明】
【0089】
1 半導体層
2 第1の絶縁層
3、3a、3b、3c 第1の不純物層
4、4a、4b、4c、4d 第1の半導体層
5、 第1のゲート絶縁層
6. 第2の絶縁層
7a、7b n+層
8、8a、8b、8c 第2の半導体層
9、9a、9b、9c 第2のゲート絶縁層
10、10a、10c 第2のゲート導体層
11 正孔群
12 反転層
13 ピンチオフ点
14 反転層
20 基板
22、22-1、22-2 第1のゲート導体層
25 絶縁層 (2と5を統合した総称)
31 第3の絶縁層
32 第4の絶縁層
SL SL00、SL12 ソース線
PL PL0、PL1、PL2 プレート線
WL、WL0、WL1、WL2 ワード線
BTL0、BTL1、BTL2 ボトム線
P0、P1、P2 ページ
SA センスアンプ回路
RDEC ロウデコーダ回路
RAD ロウアドレス
CAD カラムアドレス
IO 入出力線
BL BL0、BL1、BL2 ビット線
SC ソース線コンタクト孔
BC ビット線コンタクト孔
W1~W4 第1~第4の書込み時刻
E1~E3 第1~第3の消去時刻
R1~R4 第1~第4の読出し時刻
VN1~VN4 第1~第4の負電圧
VP1~VP5 第1~第5の正電圧
Vss 接地電圧、零ボルト
【要約】
基板上に平面視において、行方向に配列された複数のメモリセルによってページが構成され、列方向に配設されたビット線に複数の前記メモリセルが接続され、複数の前記ページと、複数の前記ビット線とによってメモリアレイが構成され、少なくとも1個の前記メモリアレイで構成されたメモリ装置である。基板上の一部に垂直方向に伸延する第1の不純物層とその上部の第1の半導体層があり、それらの側壁と半導体層を第1のゲート絶縁層で被膜し、そこにできた溝にプレート線PLに繋がる第1のゲート導体層と、第2の絶縁層があり、第1の半導体層の上に第2の半導体層と、その両端にあるソース線SLに繋がるn+層と、ビット線BLに繋がるn+層と、第2の半導体層を被膜するように形成された第2のゲート絶縁層と、ワード線WLに繋がる第2のゲート導体層10がある。ソース線SL、ビット線BL、ワード線WL、プレート線PL、ボトム線BTLに印加する電圧を制御して、第2の半導体層8のチャネル領域でインパクトイオン化現象、又はゲート誘起ドレインリーク電流により発生した正孔群をゲート絶縁層近傍に保持する書込み動作と、この正孔群を除去する消去動作と、正孔群の一部を、第1の半導体層から第2の半導体層に移動させる動作を行い、メモリセルのビット線とソース線との間のメモリセル電流の大小によって、メモリセルの消去状態、もしくは書込み状態を、判定する読出し動作を行うことを特徴とする。