(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】老化関連疾患の治療におけるカロテノイドの使用
(51)【国際特許分類】
A23L 33/105 20160101AFI20241016BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20241016BHJP
A61K 31/336 20060101ALI20241016BHJP
A61K 31/122 20060101ALI20241016BHJP
A61K 31/047 20060101ALI20241016BHJP
A61K 31/5377 20060101ALI20241016BHJP
A61K 31/496 20060101ALI20241016BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20241016BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20241016BHJP
A61K 8/35 20060101ALI20241016BHJP
A61K 8/49 20060101ALI20241016BHJP
A61Q 19/08 20060101ALI20241016BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20241016BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20241016BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241016BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20241016BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20241016BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20241016BHJP
A61P 19/00 20060101ALI20241016BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20241016BHJP
A61K 31/015 20060101ALI20241016BHJP
A61K 45/06 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
A23L33/105
A61K45/00
A61K31/336
A61K31/122
A61K31/047
A61K31/5377
A61K31/496
A61P17/00
A61K8/34
A61K8/35
A61K8/49
A61Q19/08
A61P35/00
A61P35/02
A61P43/00 105
A61P11/00
A61P9/00
A61P13/12
A61P19/00
A61P1/16
A61K31/015
A61K45/06
(21)【出願番号】P 2021552492
(86)(22)【出願日】2020-03-04
(86)【国際出願番号】 EP2020055636
(87)【国際公開番号】W WO2020178309
(87)【国際公開日】2020-09-10
【審査請求日】2023-03-02
(32)【優先日】2019-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】521393926
【氏名又は名称】ジーエーティー、セラピューティクス、ソシエダッド、リミターダ
【氏名又は名称原語表記】GAT THERAPEUTICS, S.L.
(74)【代理人】
【識別番号】100107342
【氏名又は名称】横田 修孝
(74)【代理人】
【識別番号】100155631
【氏名又は名称】榎 保孝
(74)【代理人】
【識別番号】100137497
【氏名又は名称】大森 未知子
(74)【代理人】
【識別番号】100207907
【氏名又は名称】赤羽 桃子
(74)【代理人】
【識別番号】100217294
【氏名又は名称】内山 尚和
(72)【発明者】
【氏名】エウヘニア、ルイス、カノヴァス
(72)【発明者】
【氏名】アリアドナ、エメリック、カステラ
(72)【発明者】
【氏名】シャビエル、アルヴァレス、ミコ
(72)【発明者】
【氏名】ジャウマ、メルカデ、ロカ
(72)【発明者】
【氏名】ノエリア、ヘステイラ、ペレス
【審査官】井上 政志
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0070258(US,A1)
【文献】国際公開第2018/025944(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P
A23L
A61Q
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カロテノイド、カロテノイド代謝産物、カロテノイド誘導体、類似体またはそのエステルもしくは塩と、BCL-2抗アポトーシスタンパク質ファミリーの1以上のメンバーの阻害剤、BCL-2アポトーシス促進ファミリーメンバーの活性剤、老化細胞除去剤および老化細胞阻害剤からなる群から選択される第2の成分とを含んでなる
組合せであって、アマロウシアキサンチンAおよびナビトクラックス、フコキサンチンおよびベネトクラックス、並びにフコキサンチンおよびナビトクラックスからなる群から選択される、組合せ。
【請求項2】
請求項1に記載の組合せを含んでなる、食品、薬用化粧品、栄養補助食品または医薬組成物。
【請求項3】
急性骨髄性白血病(AML)または黒色腫の治療に使用するための、請求項1に記載の組合せまたは請求項
2に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、医薬の分野にある。より具体的には、本発明は、老化細胞の除去が有益である疾患または病態の治療の分野にある。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
細胞老化は、増殖能の不可逆的喪失、並びに最終的に細胞機能の障害をもたらす細胞形態および遺伝子発現の特定の変化を特徴とする。
【0003】
老化細胞と加齢に関連する健康の低下のある側面との因果関係が見出され、老化細胞が特定の疾患に寄与する可能性があり、また、必要な生命維持的化学療法薬および放射線治療の結果として誘発され得ることを考えれば、老化細胞の存在は、世界の何百万という患者に有害な影響を与え得る。
【0004】
文献US2016339019には、BCL-2抗アポトーシスタンパク質ファミリーの阻害剤が開示され、文献EP3247375A2には、ヒトにおいて老化細胞を除去するために好適な薬剤としてSYKの阻害剤およびASK1の阻害剤が開示されている。
【0005】
当技術分野の現状において老化細胞を治療標的とし、細胞老化に関連する疾患の治療において使用可能な新規および既存の化合物を提供する必要が依然としてある。
【発明の概要】
【0006】
本発明の著者らは、カロテノイドが、老化の軽減および癌治療において、BLC2抗アポトーシスファミリーメンバーの阻害剤、BCL-2アポトーシス促進ファミリーメンバーの活性剤、老化細胞除去剤(senolytic agents)および老化細胞阻害剤(senomorphic agents)と相乗作用することを見出した。
【0007】
よって、第1の側面において、本発明は、カロテノイド、カロテノイド代謝産物、カロテノイド誘導体、類似体またはそのエステルもしくは塩と、BCL-2抗アポトーシスタンパク質ファミリーの1以上のメンバーの阻害剤、BCL-2アポトーシス促進ファミリーメンバーの活性剤、老化細胞除去剤および老化細胞阻害剤からなる群から選択される第2の成分とを含んでなる、組合せに関する。
【0008】
第2の側面において、本発明は、本発明の組合せを含んでなる、食品、薬用化粧品、栄養補助食品、化粧品または医薬組成物に関する。
【0009】
第3の側面において、本発明は、請求項1~4のいずれか一項に記載の組合せまたは請求項5に記載の食品、薬用化粧品、栄養補助食品もしくは化粧品組成物を、それを必要とする対象に投与することを含んでなる、皮膚老化を予防および/もしくは軽減するため、並びに/または加齢の美容上の悪影響を改善するための美容方法に関する。
【0010】
第4の側面において、本発明は、医薬に使用するための本発明の組合せまたは本発明による医薬組成物に関する。
【0011】
第5の側面において、本発明は、癌の治療に使用するための本発明による組合せまたは本発明による医薬組成物に関する。
【0012】
第6の側面において、本発明は、老化関連疾患または障害の治療に使用するための本発明による組合せまたは本発明による医薬組成物に関する。
【0013】
第7の側面において、本発明は、抗腫瘍化合物の有効性の増強に使用するための本発明による組合せ、または本発明による食品、栄養補助食品もしくは医薬組成物に関する。
【0014】
第8の側面において、本発明は、老化関連疾患または障害の治療に使用するためのカロテノイド、カロテノイド代謝産物、カロテノイド誘導体、類似体またはそのエステルもしくは塩に関する。
【0015】
第9の側面において、本発明は、抗腫瘍化合物の有効性の増強に使用するためのカロテノイド、カロテノイド代謝産物、カロテノイド誘導体、類似体またはそのエステルもしくは塩に関する。
【0016】
第10の側面において、本発明は、抗腫瘍治療の悪影響の軽減に使用するためのカロテノイド、カロテノイド代謝産物、カロテノイド誘導体、類似体またはそのエステルもしくは塩に関する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】パルボシクリブ処理時のSK-Mel-103細胞によるIL分泌。エラーバーは、3回の技術的反復からの標準偏差を示す。SC、老化細胞;F、フコキサンチン。
【
図2】ドキソルビシン処理時のSK-Mel-103細胞による分泌。エラーバーは、3回の技術的反復からの標準偏差を示す。SC、老化細胞;F、フコキサンチン。
【
図3】10μMのアマロウシアキサンチンAとともにインキュベートした際の肝硬変ラット由来HSCにおけるα-SMA発現の変化倍率。値はビヒクル対照に対して正規化し、エラーバーは標準偏差を示す。
【
図4】10μMのアマロウシアキサンチンAとともにインキュベートした際のLX2細胞におけるCOL1A1発現の変化倍率。値はビヒクル対照に対して正規化し、エラーバーは標準偏差を示す。
【0018】
発明の詳細な説明
組合せ
本発明の著者らは、カロテノイドおよびBCl-2阻害剤が特定の癌系統において相乗的細胞傷害効果を示すことを見出した。よって、第1の側面において、本発明は、カロテノイド、カロテノイド代謝産物、カロテノイド誘導体、類似体またはそのエステルもしくは塩と、BCL-2抗アポトーシスタンパク質ファミリーの1以上のメンバーの阻害剤、BCL-2アポトーシス促進ファミリーメンバーの活性剤、老化細胞除去剤および老化細胞阻害剤からなる群から選択される第2の成分とを含んでなる組合せに関する。
【0019】
「組合せ」または「組成物」は、本明細書に使用する場合、カロテノイド、カロテノイド代謝産物、カロテノイド誘導体、類似体またはそのエステルもしくは塩、並びに、BCL-2抗アポトーシスタンパク質ファミリーの1以上のメンバー、BCL-2アポトーシス促進ファミリーメンバーの活性剤、老化細胞除去剤および老化細胞阻害剤は同じ医薬製剤として調剤することもでき、または異なる医薬製剤として調剤することもできるが、異なる医薬製剤は、組合せパッケージによって同じ薬物中に含まれるべきであり、同時、順次または逐次に使用されるべきであることを示す。
【0020】
用語「カロテノイド」は、本明細書に使用する場合、主として植物、酵母および藻類により産生され、発色団を形成し、中央の二重結合に対して近対称である長いポリエン鎖である共通のポリイソプレノイドに基づく構造を有する天然色素の一群を指す。2つのC20ゲラニルゲラニル二リン酸分子のテール-テール結合が親C40炭素骨格を生成する。このポリエン鎖はまた、分子の一端または両端にシクリル基も有する。
【0021】
カロテノイドは、キサントフィル(酸素原子を含む)およびカロテン(酸素原子を含まない)の2つのクラスに分けられる。
【0022】
好ましい態様では、本発明のカロテノイドは、キサントフィルである。より好ましい態様において、キサントフィルは、α-クリプトキサンチン、β-クリプトキサンチン、アドニルビン、アドニキサンチン、アロキサンチン、アマロウシアキサンチン(特に、アマロウシアキサンチンA)、アンテラキサンチン、アスタキサンチン、アウロキサンチン、カロキサンチン、カンタキサンチン、カプサンチン、カプサンチン-5-6-エポキシド、カプソルビン、クロコキサンチン、ジアジノキサンチン、ジアトキサンチン、エキネノン、フコキサンチン、フコキサンチノール、イソ-フコキサンチン、イソ-フコキサンチノール、ルテイン、ルテオキサンチン、ムタトキサンチン、ネオキサンチン、ノストキサンチン、ビオラキサンチン、ゼアキサンチンおよびそれらの組合せまたは誘導体からなる群から選択される。より好ましくは、キサントフィルは、アマロウシアキサンチンA、カプサンチン、フコキサンチン、フコキサンチノール、ネオキサンチン、ルテイン、ゼアキサンチンおよびそれらの組合せから選択される。より好ましくは、キサントフィルは、アマロウシアキサンチンA、フコキサンチン、フコキサンチノール、ネオキサンチン、ルテインおよびそれらの組合せから選択される。さらにより好ましくは、キサントフィルは、アマロウシアキサンチンA、フコキサンチン、フコキサンチノール、ネオキサンチンおよびそれらの組合せから選択される。さらにより好ましくは、キサントフィルは、アマロウシアキサンチンA、フコキサンチン、フコキサンチノールおよびそれらの組合せから選択される。いっそうより好ましくは、キサントフィルは、フコキサンチンまたはアマロウシアキサンチンAである。
【0023】
一態様では、上記のキサントフィルは、それらの総てのトランス型を指す。
【0024】
別の好ましい態様において、カロテノイドは、フコキサンチンである。別の好ましい態様において、カロテノイドは、フコキサンチノールである。別の好ましい態様において、カロテノイドは、アマロウシアキサンチンである。より好ましい態様において、カロテノイドは、アマロウシアキサンチンAである。別の好ましい態様において、カロテノイドは、ネオキサンチンである。別の好ましい態様において、カロテノイドは、アスタキサンチンである。別の好ましい態様において、カロテノイドは、ゼアキサンチンである。別の好ましい態様において、カロテノイドは、ルテインである。
【0025】
本発明のカロテノイドは、藻類、真菌または植物抽出物から供給することができる。本発明で使用される上述のキサントフィルなどのカロテノイドは植物抽出物または藻類抽出物に由来する場合、その生成物は、生物または植物のいずれかに対する抽出工程により、前記生物または植物を溶媒に浸漬するか、または圧力もしくは超臨界流体の使用を含むより精密な技術を用いた抽出によって得られる。
【0026】
本発明の組合せにおけるカロテノイドの提供のために好適な藻類の例としては、藍藻植物門(Cyanophyta)、緑藻植物門(Chlorophyta)、紅藻植物門(Rhodophyta)、不等毛植物門(Heterokontophyta)、およびハプト植物門(Haptophyta)由来の微細藻類が挙げられる。藻類は、クロレラ属(Chlorella)、イカダモ属(Scenedesmus)、ドナリエラ属(Dunialiella)(β-カロテン対象)、ヘマトコッカス属(Haematococcus)(アスタキサンチン対象)およびブラクテアコックス属(Bracteacoccus)などの緑藻微細藻類;イソクリシス属(Isochrysis)(フコキサンチンおよびルテイン対象)などのハプト植物門微細藻類;並びにフェオダクチラム属(Phaeodactylum)、オクロモナス属(Ochromonas)およびオドンテラ属(Odontella)などの不等毛植物門微細藻類であり得る。好適な微細藻類の例としては、総ての褐色藻類、特に、コンブ(Fucus
vesiculosus)、ヒバマタ(Fucus
evanescens)、コンブ属種(Laminaria
sp.)、およびホンダワラ属種(Sargassum
sp.)(総てフコキサンチン対象)が挙げられる。キサントフィロマイセス・デンドロアス(Xanthophyllomyces
dendrorhous)などのある種の真菌は、キサントフィルを産生することが知られる。加えて、カロテノイドはまた、卵黄などの動物源から得ることもできる。本発明で使用されるキサントフィルなどのカロテノイドの産生に好適な植物および植物部分としては、限定されるものではないが、マリーゴールド花、トウモロコシ、キウイ、レッドシードレスグレープ、ズッキーニ、カボチャ、ホウレンソウ、オレンジパプリカ、黄カボチャ、キュウリ、エンドウ、グリーンパプリカ、赤ブドウ、バターナッツ、オレンジ、ハネデュー、セロリ、白ブドウ、メキャベツ、スキャリオン、サヤインゲン、ブロッコリー、リンゴ、マンゴ、グリーンレタス、トマト、モモ、イエローパプリカ、ネクタリン、赤トウガラシ、ニンジン、カンタロープ、アプリコット、ピーマンおよびインゲンマメが挙げられる。
【0027】
「カロテノイド代謝産物」は、本明細書に使用する場合、異なる条件下で例えば、水素化、脱水素化、二重結合移動、鎖短縮または延長、転位、異性化、酸化またはこれらのプロセスの組合せによって修飾されたカロテノイドに関する。これらの他、カロテノイド代謝産物は、酵素モノオキシゲナーゼ、シクロオキシゲナーゼおよびジオキシゲナーゼの存在によって形成され得る。
【0028】
β-カロテン代謝産物の例は、レチノール、レチナールおよびレチノイン酸、β-イオノン、β-アポ-l4’-カロテナール、β-アポ-10’-カロテナール、β-アポ-8’-カロテナールおよびβ-カロテン5,8-エンドペルオキシド-2,3-ジヒドロ-β-アポカロテン-13-オン、5,6-モノエポキシド、レチノイルβ-D-グルクロニド、β-アポ-12’-カロテン酸、β-アポ-14’-カロテン酸、β-アポ-14’-カロテナール、β-アポ-14’-カロテン酸、およびβ-アポ-13-カロテノンである。
【0029】
リコペン代謝産物は、例えば、シクロレチノイン酸、2,7,11-トリメチル-テトラデカヘキサエン-1,14-ジアール、(E,E,E)-4-メチル-8-オキソ-2,4,6-ノナトリエナール(MON)、アポ-6-、アポ-8’-、アポ-10’-、アポ-12’-およびアポ-14’-リコペナールおよびアポ-10’-リコペン酸である。
【0030】
ルテイン代謝産物の例は、3’-エピルテイン、3’-オキソルテイン、3’-デヒドロルテイン、メソ-ゼアキサンチン、メトキシ-ゼアキサンチン、3-ヒドロキシ-β-イオノンおよび3-ヒドロキシ-14-アポカロテナールのオキシム誘導体、3-ヒドロキシ-3’,4’-ジデヒドロ-β,γ-カロテンおよび3-ヒドロキシ-2’,3’-ジデヒドロ-β,ε-カロテンである。
【0031】
アスタキサンチン代謝産物は、例えば、3-ヒドロキシ-4-オキソ-β-イオノンおよび3-ヒドロキシ-4-オキソ-7,8-ジヒドロ-β-イオノンである。カンタキサンチン代謝産物の例は、4-オキソレチノイン酸である。
【0032】
「カロテノイドの誘導体」はまた、本発明の内容に含まれる。特定の態様において、前記誘導体としては、1以上のシス二重結合を含有するキサントフィルおよびカロテンが挙げられ、限定されるものではないが、9シス誘導体、9’シス誘導体、13シス誘導体、13’シス誘導体、15シス誘導体、15’シス誘導体およびそれらの任意の組合せが含まれる。
【0033】
別の態様において、キサントフィルおよびカロテンが前記カロテノイド誘導体の開始足場として使用される合成誘導体が使用される。いくつかの態様において、カロテノイド誘導体には、ポリエン鎖(すなわち、分子の骨格)を含む構造を有する化合物が含まれる。前記ポリエン鎖は、約5~約15個の不飽和結合、より詳しくは、7個以上の共役二重結合を含み得る。
【0034】
本発明の組合せはまた、カロテノイド類似体も含み得る。本明細書に使用する場合、用語「カロテノイド類似体」は、カロテノイドおよびそれらの生物学的に活性な構造類似体として一般に定義され得る。典型的な類似体には、同等または改善された生物学的に有用かつ関連のある機能を示すが、親化合物とは構造的に異なる分子が含まれる。親カロテノイドは、文献に記載されている600を超える天然カロテノイド、並びにそれらの立体異性体および幾何異性体から選択される。このような類似体として、スペーサー(リンカー)を伴うまたは伴わない、限定されるものではないが、エステル、エーテル、炭酸塩、アミド、カルバミン酸、リン酸エステルおよびエーテル、硫酸塩、グリコシドエーテルが挙げられる。
【0035】
本発明の組合せはまた、カロテノイドのエステル(例えば、酢酸誘導体、ギ酸誘導体、および安息香酸誘導体)も含んでなり得る。
【0036】
本発明の組合せはまた、カロテノイド、カロテノイド代謝産物、カロテノイド誘導体またはカロテノイド類似体の塩も含んでなり得る。用語「塩」は、本発明による有効化合物のいずれの形態も意味すると理解されるべきであり、ここで、これはイオン形態を想定するか、または電荷を有して対イオン(陽イオンもしくは陰イオン)と共役するか、または溶液中にある。これは有効化合物と他の分子およびイオンの複合体、特に、イオン相互作用を介して複合体を形成した複合体と理解されるべきである。この定義には、特に、生理学的に許容される塩が含まれ、この用語は、「薬理学上許容される塩」または「薬学上許容される塩」と等価と理解されなければならない。
【0037】
本発明によれば、第2の成分は、老化細胞除去剤、老化細胞阻害剤、BCL-2抗アポトーシスタンパク質ファミリーの1以上のメンバーの阻害剤およびBCL-2アポトーシス促進ファミリーメンバーの活性剤からなる群から選択される。本発明において、第2の成分は、トログリタゾンおよび/またはプニカ酸ではない。
【0038】
「老化細胞除去剤」は、本明細書に使用する場合、(優先的にまたはより大きな程度で)老化細胞を破壊する、死滅させる、除去する、または老化細胞の選択的破壊を促進する化合物に関連する。言い換えれば、老化細胞除去剤は、非老化細胞を破壊するまたは死滅させる能力に比べて、老化細胞を生物学的に、臨床的に、および/または統計的に有意に破壊するまたは死滅させる。老化細胞除去剤は、確立された老化細胞を選択的に死滅させるに十分であるが非老化細胞を臨床的に有意にまたは生物学的に有意に死滅させる(破壊する、その死を引き起こす)には十分でない量および時間で使用される。特定の態様において、本明細書に記載の老化細胞除去剤は、老化細胞の死を誘導し(誘発し、刺激し、惹起し、活性化し、促進し)、それをもたらす(すなわち、引き起こす、それに至る)様式で、少なくとも1つのシグナル伝達経路を変化させる。老化細胞除去剤は、例えば、細胞生存シグナル伝達経路(例えば、Akt経路)または炎症経路のいずれかまたは両方を、例えば、老化細胞における細胞生存および/または炎症経路内のタンパク質に拮抗することによって変化させることができる。老化細胞除去剤は、細胞死をもたらすアポトーシス経路を誘導する(活性化する、刺激する、その阻害を除去する)ことによってその機能を遂行し得る。
【0039】
当業者は、例えば、薬剤による老化細胞の軽減を決定することによって老化細胞除去剤を同定および選択するための方法を知っている。老化細胞のレベルは、当技術分野で公知のイン・ビトロ(in vitro)アッセイまたは技術のいずれかに従って決定され得る。例えば、老化細胞は、形態(例えば、顕微鏡により観察される);老化関連β-ガラクトシダーゼ(SA-β-gal)、p16INK4a、p21、PAI-Iなどの老化関連マーカーの産生;または任意の1以上のSASP因子(例えば、IL-6、MMP3)によって検出され得る。よって、当業者は、薬剤を老化細胞除去剤として特徴付け、および薬剤による死滅のレベルを決定することは、試験薬剤の活性を適当な陰性対照(例えば、ビヒクルもしくは希釈剤単独および/または当技術分野で老化細胞を死滅させないことが知られる組成物もしくは化合物並びに適当な陽性対照と比較することによって達成することができる。老化細胞除去剤を特徴付けるためのイン・ビトロ細胞アッセイはまた、非老化細胞(例えば、休止細胞または増殖細胞)に対する薬剤の効果を決定するための対照を含む。老化細胞除去剤は、複数の老化細胞の生存率を1以上の陰性対照に比べて低減する(すなわち、低下させる)(すなわち、いくつかの様式では、動物または細胞アッセイにおける生存老化細胞の量を低減する)。
【0040】
特定の態様において、老化細胞除去剤は、ポリペプチド、ペプチド、抗体、抗原結合フラグメント(すなわち、少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を含んでなるペプチドおよびポリペプチド)、ペプチボディ、組換えウイルスベクター、または核酸であり得る。特定の態様において、老化細胞除去剤は、アンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNA、shRNA、またはペプチドである。特定の態様において、ポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(例えば、shRNAを含む)は、目的のポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドが組み込まれている組換えベクターにより送達され得る。別の好ましい態様において、老化細胞除去剤は、ポリクローナルまたはモノクローナル抗体である。
【0041】
好ましい態様において、老化細胞除去剤は、Nutlin-3a、RG-7112、ABT-263(ナビトクラックス)、ABT-199(ベネトクラックス)、ABT-737、WEHI-539 A-1155463、MK-2206からなる群から選択される。より好ましい態様において、老化細胞除去剤は、ナビトクラックスおよびベネトクラックスからなる群から選択される。より好ましい態様において、老化細胞除去剤は、ナビトクラックスである。別の好ましい態様において、老化細胞除去剤は、ベネトクラックスである。
【0042】
別の好ましい態様において、老化細胞除去剤は、フラボノイドである。
【0043】
「フラボノイド」は、本明細書において使用する場合、2つのフェニル環(AおよびB)と1つの複素環式環(C)からなる、炭素15個の骨格の一般構造を有する化合物に関する。この炭素構造は、C6-C3-C6と略すことができる。
【0044】
より好ましい態様において、フラボノイドは、フィセチン、クルクミン、アルボシジブおよびケルセチンからなる群から選択される。
【0045】
別の好ましい態様において、本発明の組合せは、老化細胞阻害剤を含んでなり得る。
【0046】
「老化細胞阻害剤」は、本明細書において使用する場合、細胞を死滅させることなく老化表現型を抑制する小分子に関する。
【0047】
好ましい態様において、老化細胞阻害剤は、ラパマイシン、フルスピリレン、シクロヘキシミド、NVP-BEZ235、ロペラミド、チモサポニンA-III、イグルジピン(iguldipine)およびノルジヒドログアイヤレチン酸からなる群から選択される。
【0048】
老化細胞阻害剤を同定するためおよび老化細胞除去剤と区別するためのスクリーニング法は、Fuhrmann-Stroissnigg H. et al., Nat Commun. 2017 Sep 4;8(1):422における実例として当技術分野で公知である。
【0049】
別の好ましい態様において、本発明の組合せは、タンパク質のBCL-2抗アポトーシスファミリーの阻害剤を含んでなり得る。本発明において、前記阻害剤はトログリタゾンおよび/またはプニカ酸でない。
【0050】
「BCL-2抗アポトーシスタンパク質ファミリーの1以上のメンバーの阻害剤」は、BHI-BH4ドメインを有する抗アポトーシス(生存促進)タンパク質からなるカスパーゼ活性化の重要なレギュレータークラス(BCL-2(すなわち、BCL-2抗アポトーシスタンパク質ファミリーのBCL-2タンパク質メンバー)、BCL-xL、BCL-w、Al、MCL-I、およびBCL-B)の阻害剤に関する。
【0051】
特定の態様において、BCL2阻害剤は選択的阻害剤であり、これは他のタンパク質よりもBCL2ファミリーメンバー(例えば、BCL-2、MCL-1、BCL-w、BCL-b、およびBFL-1/A1)に優先的に結合することを意味する。
【0052】
BCL-2ファミリータンパク質に対する阻害剤の結合親和性を測定するための方法は当技術分野で公知である。例として、阻害剤の結合親和性は、蛍光BAK BH3ドメインペプチドが、漸増濃度の、例えば、従前に米国特許公開第20140005190号に記載されているような阻害剤の存在下または不在下で、BCL-xLタンパク質(または他のBCL-2ファミリータンパク質)とインキュベートされる競合蛍光偏光アッセイを用いて決定され得る。
【0053】
加えて、例示であって限定されるものではないが、抗アポトーシス効果を阻害する能力を決定すること、例えばMTTアッセイ、アネキシンV結合アッセイ、カスパーゼ活性アッセイ、ミトコンドリア膜電位アッセイを実施すること、またはDNAの断片化および形態を分析することによって、化合物がBCL2阻害剤であるかどうかを決定するために、当技術分野で公知のいずれの方法も使用可能である。
【0054】
特定の態様において、BCL-2抗アポトーシスタンパク質ファミリーの1以上のメンバーのBCL2阻害剤は、小分子、ポリペプチド、ペプチド、抗体抗原結合フラグメント(すなわち、少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を含んでなるペプチドおよびポリペプチド)、ペプチボディ、組換えウイルスベクター、または核酸である。特定の態様において、BCL2阻害剤は、アンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNA、shRNA、またはペプチドである。例として、特定の態様において、BCL-xL選択的ペプチド阻害剤は、BH3ペプチド模倣剤である。別の好ましい態様において、BCL2阻害剤は、標的タンパク質(例えば、BCL-2、MCL-1、BCL-w、BCL-b、およびBFL-1/A1、BCL-x)をコードするmRNAの一部に特異的にハイブリダイズするポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドである。アンチセンスポリヌクレオチドは、mRNAまたはDNAなどの核酸に、配列特異的な様式で結合する。アンチセンス薬剤として使用するためのオリゴヌクレオチドおよびリボザイムの同定および標的化送達のための標的遺伝子をコードするDNAの同定は、当技術分野で周知の方法を含む。例えば、このようなオリゴヌクレオチドの望ましい特性、長さ、およびその他の特徴は周知である。
【0055】
好ましい態様において、BCL2阻害剤は、式(I)の化合物、ディサリブ(Disarib)、S55746、A1331852、WEHI-S39、オバトクラックス(Obatoclax)、TW-37、AT101、サブトクラックス(Sabutoclax)、A1210477、Umi-77、BTSA1、BAM7、MIM1、AMG-176、MIK665(S64315)、APG-1252、BXI-61およびBXI-72からなる群から選択される。
【0056】
式(I)の化合物およびそれらの合成は、米国特許第8,546,399 B2号に記載されている。式(I)の化合物は以下に示される構造を有し、
【化1】
式中、
R
1はHであり;
R
2は、NO
2、SO
2R
7、H、CN、F、Cl、Br、I、CF
3、R
7、OR
7、SR
7およびC(O)NH
2からなる群から選択され;
R
3は、NHR
8、NHC(O)R
8、OR
8、R
8、F、Br、I、およびClからなる群から選択され;
R
4およびR
5は、H、F、Br、IおよびClからなる群から独立に選択され;
R
6は、H、OR
9、R
9、SR
9、S(O)R
9、SO
2R
9、C(O)R
9、CO(O)R
9、OC(O)R
9、NHR
9、N(R
9)
2、NHC(O)R
9、NR
9C(O)R
9、NHSO
2R
9、NR
9SO
2R
9、NHC(O)OR
9、およびNR
9C(O)OR
9からなる群から選択され;
R
7は、F、Cl、BrおよびIから独立に選択される1個以上の置換基で場合により置換されていてもよい直鎖または分岐型C
1-C
6アルキルであり;
R
8は、SR
10、OR
10、およびR
10、並びにN、OおよびSからなる群から選択される1個以上のヘテロ原子を含有する5~10員の単環式または二環式ヘテロシクリルからなる群から選択される1個以上の置換基で場合により置換されていてもよい直鎖または分岐型C
1-C
6アルキルであり;
R
9は、N、OおよびSからなる群から選択される1個以上のヘテロ原子を含有する5~10員の単環式または二環式ヘテロアリールからなる群から選択され;
R
10は、C
6-C
10単環式または二環式アリールであり、
またはその薬学上許容される塩である。
【0057】
特定の態様において、式(I)の化合物において、R1はHである。
【0058】
別の特定の態様において、式(I)の化合物において、R2は、NO2、SO2R7からなる群から選択され、R7は、1個以上のF原子で場合により置換されていてもよい直鎖または分岐型C1-C3アルキルである。
【0059】
別の特定の態様において、式(I)の化合物において、R3はNHR8であり、ここで、R8は、-S-フェニル、並びにNおよびOからなる群から選択される1または2個のヘテロ原子を含有する5~6員単環式ヘテロシクリルからなる群から選択される1個以上の置換基で場合により置換されていてもよい直鎖または分岐型C1-C6アルキル;好ましくは、-S-フェニル、モルホリニルおよびテトラヒドロピラニルからなる群から選択される1個以上の置換基で場合により置換されていてもよいC1-C6アルキルから選択される。
【0060】
別の特定の態様において、式(I)の化合物において、R4はHである。
【0061】
別の特定の態様において、式(I)の化合物において、R5はHである。
【0062】
別の特定の態様において、式(I)の化合物において、R6は、HおよびOR9(ここで、R9は、1個以上の窒素原子を含有する8~10員の二環式ヘテロアリールからなる群から選択され;好ましくは、HおよびOR9(ここで、R9はピロロピリジニルである);より好ましくは、HおよびOR9(ここで、R9は7-アザインドールである)からなる群から選択される。
【0063】
別の特定の態様において、式(I)の化合物において、R8は、-S-フェニル、並びにNおよびOからなる群から選択される1または2個のヘテロ原子を含有する5~6員の単環式ヘテロシクリル(好ましくは、モルホリニルまたはテトラヒドロピラニル)からなる群から選択される1個以上の置換基で場合により置換されていてもよい直鎖または分岐型C1-C6アルキルである。
【0064】
特定の態様において、式(I)の化合物において、R1、R4およびR5はHであり;R2は、NO2、SO2R7からなる群から選択され;R3はNHR8であり;R6は、HおよびOR9からなる群から選択され;R7は、1個以上のF原子で場合により置換されていてもよい直鎖または分岐型C1-C3アルキルであり;R8は、-S-フェニル、並びにNおよびOからなる群から選択される1または2個のヘテロ原子を含有する5~6員の単環式ヘテロシクリル(好ましくは、モルホリニルまたはテトラヒドロピラニル)からなる群から選択される1個以上の置換基で場合により置換されていてもよい直鎖または分岐型C1-C6アルキルであり;およびR9は、1個以上の窒素原子を含有する8~10員の二環式ヘテロアリールからなる群から選択され;またはその薬学上許容される塩(好ましくは、ピロロピリジニル、より好ましくは、7-アザインドール);またはその薬学上許容される塩である。
【0065】
本明細書において使用する場合、本発明の一般構造に存在する原子、ラジカル、鎖または環の一部は「場合により置換されていてもよい」。これは、これらの原子、ラジカル、鎖または環が非置換であり得る、あるいは任意の位置で、1個以上、例えば、1、2、3もしくは4個の置換基、1、2もしくは3個の置換基、または1もしくは2個の置換基により置換され、それにより、非置換原子、ラジカル、鎖または環に結合している水素原子が示されたような置換基で置換されていてもよいことを意味する。2個以上の置換基が存在する場合、各置換基は同じであっても異なっていてもよい。
【0066】
「アルキル」基は、分岐型または非分岐型であり得、好ましくは、1~6個の炭素原子を有する。アルキル基の1つのより好ましいクラスは、1~4個の炭素原子または1~3個の炭素原子を有する。アルキル基の例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソ-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、sec-ペンチル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、2,2-ジメチルプロピル、ペンタン-3-イル、およびn-ヘキシルが挙げられる。
【0067】
「ヘテロシクリル」は、本明細書において使用する場合、N、OおよびSからなる群から選択される1個以上のヘテロ原子、例えば、1、2または3個のヘテロ原子、好ましくは、1または2個のヘテロ原子を含有する5~10員の単環式または二環式環系を指す。二環式環系において、ヘテロ原子は一方または両方の環に存在してヘテロシクリル環系を形成していてもよい。ヘテロシクリル環の例は、モルホリニル、テトラヒドロピラニル、ピペリジニル、チオモルホリニル、テトラヒドロフラニル、およびピペラジニルである。好ましくは、ヘテロシクリル環は、完全に飽和している。好ましくは、ヘテロシクリル環は、NおよびOから選択される1または2個のヘテロ原子を含有する5~6員単環式環である。
【0068】
「ヘテロアリール」は、本明細書において使用する場合、N、OおよびSからなる群から選択される1個以上のヘテロ原子、例えば、1、2または3個のヘテロ原子、好ましくは、1または2個のヘテロ原子を含有する芳香族5~10員単環式または二環式環系を指す。二環式環系において、ヘテロ原子は、一方または両方の環に存在してヘテロアリール環系を形成していてもよい。ヘテロアリール環の例は、ピロロピリジニル、キノリニル、イソキノリニル、キナゾリニル、キノキサリニル、フタラジニル、シンノリニル、ベンズイミダゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾフラザニル、ベンゾチオフェニル、ベンゾチアゾリル、ベンゾキサゾリル、ナフチリジニル、ピリジル、ピラジニル、ピラゾリル、ピリミジニル、フリル、ピロリル、チエニル、チアゾリル、イソチアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、イソキサゾリル、オキサゾリル、イミダゾリル、インドリル、イソインドリル、インダゾリル、インドリジニル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、ピリダジニル、およびトリアジニルである。好ましくは、ヘテロアリール環は、環内に1または2個のヘテロ原子、好ましくは、1または2個の窒素原子を含有する8~10員二環式環である。
【0069】
「アリール」は、本明細書において使用する場合、水素および6~10個の炭素原子からなる芳香族6員単環式または二環式環系を指す。アリール環の例は、フェニル、およびナフチル、好ましくは、フェニルである。
【0070】
用語「薬学上許容される塩」は、レシピエントに投与した際に、本明細書に記載されるような化合物を(直接的または間接的に)提供し得るいずれの塩も指す。例えば、本明細書で提供される化合物の薬学上許容される塩は酸付加塩、塩基付加塩または金属塩であり得、それらは塩基性または酸性部分を含有する親化合物から従来の化学法によって合成することができる。一般に、このような塩は、遊離酸または塩基形態のこれらの化合物を、水中または有機溶媒中またはその2つの混合物中、化学量論量の適当な塩基または酸と反応させることによって作製される。一般に、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノールまたはアセトニトリルのような非水性媒体が好ましい。酸付加塩の例としては、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩などの無機酸付加塩、並びに例えば、酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、クエン酸塩、シュウ酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、リンゴ酸塩、マンデル酸塩、メタンスルホン酸塩およびp-トルエンスルホ酸塩などの有機酸付加塩が挙げられる。アルカリ付加塩の例としては、例えば、アンモニウムなどの無機塩、並びに有機アルカリ塩、例えば、エチレンジアミン、エタノールアミン、N,N-ジアルキレンエタノールアミン、トリエタノールアミン、グルカミンおよび塩基性アミノ酸塩が挙げられる。金属塩の例としては、例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウムおよびリチウム塩が挙げられる。
【0071】
より好ましい態様において、BCL2阻害剤は、ベネトクラックス、ナビトクラックス、ディサリブ、S55746、A1331852、WEHI-S39、オバトクラックス、TW-37、AT101、サブトクラックス、A1210477、Umi-77、BTSA1、BAM7、MIM1、AMG-176、MIK665(S64315)、APG-1252、BXI-61およびBXI-72からなる群から選択される。好ましい態様において、BCL2阻害剤は、ベネトクラックスおよびナビトクラックスからなる群から選択される。好ましい態様において、BCL2阻害剤は、GDC-0199、ABT-199、RG7601、CAS番号1257044-40-8としても知られるベネトクラックスであり、その式は下記に示される(化合物Ia)。別の好ましい態様において、BCL2阻害剤は、ABT-263、CAS番号923564-51-6としても知られるナビトクラックスであり、その式は下記に示される(化合物Ib)。
【化2】
【0072】
好ましい態様において、本発明の組合せは、ナビトクラックスまたはベネトクラックスからなる群から選択されるBCL-2抗アポトーシスタンパク質ファミリーの1以上のメンバーの阻害剤並びにフコキサンチン、フコキサンチノール、アマロウシアキサンチンAおよびネオキサンチンからなる群から選択されるカロテノイドを含んでなる。
【0073】
よって、好ましい態様において、本発明の組合せは、ナビトクラックスおよびフコキサンチン、ナビトクラックスおよびフコキサンチノール、ナビトクラックスおよびアマロウシアキサンチンA、ナビトクラックスおよびネオキサンチン、ベネトクラックスおよびフコキサンチン、ベネトクラックスおよびフコキサンチノール、ベネトクラックスおよびアマロウシアキサンチンAまたはベネトクラックスおよびネオキサンチンを含んでなる。
【0074】
より好ましい態様において、本発明の組合せは、ナビトクラックスまたはベネトクラックスからなる群から選択されるBCL-2抗アポトーシスタンパク質ファミリーの1以上のメンバーの阻害剤並びにフコキサンチン、フコキサンチノールおよびアマロウシアキサンチンAからなる群から選択されるカロテノイドを含んでなる。
【0075】
よって、別のより好ましい態様において、本発明の組合せは、ナビトクラックスおよびフコキサンチン、ナビトクラックスおよびフコキサンチノール、ナビトクラックスおよびアマロウシアキサンチンA、ベネトクラックスおよびフコキサンチン、ベネトクラックスおよびフコキサンチノール、またはベネトクラックスおよびアマロウシアキサンチンAを含んでなる。
【0076】
別の好ましい態様において、本発明の組合せは、BCL-2アポトーシス促進ファミリーメンバーの活性剤を含んでなる。
【0077】
「BCL-2アポトーシス促進ファミリーメンバーの活性剤」は、本明細書において使用する場合、BH1、BH2、およびBH3ドメインを有するアポトーシス促進タンパク質種(BAX、BAK、およびBOK);およびアポトーシス促進BH3単独タンパク質(BIK、BAD、BID、BIM、BMF HRK、NOXA、およびPUMA)の活性剤に関する。好ましい態様において、BCL-2アポトーシス促進ファミリーメンバーの活性剤は、合成ペプチドである。別の好ましい態様において、活性剤は、BCL-2、例えば、HA14-1またはZhao G. et al., (Mol Cell Biol. 2014 Apr; 34(7): 1198-1207)に開示されているような化合物106の表面ポケットと相互作用する任意の化合物である。
【0078】
化合物がBCL-2アポトーシス促進ファミリーメンバーの活性剤であるかどうかを決定するために、当技術分野で公知のいずれの方法を使用してもよい。イン・ビトロにおけるBcl-2タンパク質に対する有機化合物の結合親和性は、例えば蛍光偏光に基づく競合結合アッセイによって決定してもよい。加えて、抗アポトーシス効果を阻害する能力に関して従前に開示されているいずれの方法も、アポトーシス促進を活性化する化合物の能力を決定するために使用可能である。
【0079】
別の好ましい態様において、本発明の組合せは、BCL-2アポトーシス促進ファミリーメンバーの活性剤並びにフコキサンチン、フコキサンチノール、アマロウシアキサンチンAおよびネオキサンチンからなる群から選択されるカロテノイドを含んでなる。
【0080】
本発明の組合せは、例えば、細胞傷害効果の生成または老化細胞数の低減において相乗作用を示すので、それぞれより低用量のBCL-2抗アポトーシスタンパク質ファミリーの阻害剤、BCL-2アポトーシス促進ファミリーメンバーの活性剤、老化細胞除去剤または老化細胞阻害剤で同じ細胞傷害効果または老化細胞除去もしくは老化細胞阻害効果が得られる。
【0081】
特定の態様において、組合せにおけるカロテノイド、カロテノイド代謝産物、カロテノイド誘導体、類似体またはそのエステルまたは塩とBCL-2抗アポトーシスタンパク質ファミリーの1以上のメンバーの阻害剤、BCL-2アポトーシス促進ファミリーメンバーの活性剤、老化細胞除去剤および老化細胞阻害剤からなる群から選択される第2の成分のモル比は、0.1:100~100:0.01、好ましくは0.2:100~100:0.05、より好ましくは0.5:100~100:0.1である。さらなる態様において、組合せにおけるカロテノイド、カロテノイド代謝産物、カロテノイド誘導体、類似体またはそのエステルまたは塩とBCL-2抗アポトーシスタンパク質ファミリーの1以上のメンバーの阻害剤、BCL-2アポトーシス促進ファミリーメンバーの活性剤、老化細胞除去剤および老化細胞阻害剤からなる群から選択される第2の成分のモル比は、1:100~10:0,01、1:10~1:0,01、1:1~0,1:0,01または0,1:1~1:1である。
【0082】
本発明の組合せにおいて、第2の成分は、トログリタゾンおよび/またはプニカ酸ではない。
【0083】
食品、薬用化粧品、栄養補助食品、化粧品または医薬組成物
別の側面において、本発明は、本発明の組合せを含んでなる食品、薬用化粧品、栄養補助食品、化粧品または医薬組成物に関する。
【0084】
本明細書において使用する場合、用語「食品」は、その特徴、適用、成分、製法および保存の状態のために、以下の目的のいくつかのために通常または理想的に使用可能な自然の、固体または液体の、天然のまたは加工されたいずれの物質または産物である:a)ヒトもしくは動物の通常の栄養素として、または嗜好食品として;あるいはb)ヒトまたは動物食品(飼料)の特殊な場合の栄養製品として。用語「飼料」としては、別個にまたは好都合には互いに混合して動物食品として好適な、いずれの起源のあらゆる天然材料および最終製品を含む。
【0085】
インスタント(ready-to-eat)食品は、例えば、摂取に好適な水溶液の手段によって希釈する必要がないものである。基本的に、インスタント食品中に存在する成分はバランスがとれ、当業者により考えられるそれをインスタントとするために食品に付加的成分を添加する必要はない。濃縮食品は、1以上の成分がインスタント食品の場合よりも高濃度で存在する食品であり、従って、使用のためには、例えば、摂取に好適な水溶液の手段によりそれを希釈する必要がある。本発明により提供される食品の限定されない実例としては、例えば、発酵乳、ヨーグルト、ケフィア、カード、チーズ、バター、アイスクリーム、ミルクに基づくデザートなどの乳製品および派生物、並びに例えば、ベーカリー製品、ケーキおよびペイストリー、シリアル、チョコレート、ジャム、ジュース、その他のフルーツ派生物、オイルおよびマーガリン、加工調理済み食品などの非乳製品の両方が含まれる。
【0086】
本明細書において使用する場合、用語「薬用化粧品」は、1以上の薬用化粧品(機能性化粧品、皮膚用医薬(dermaceuticals)または有効化粧品)、すなわち、使用者の皮膚、毛髪および/または爪に効果を有する有効成分をより高濃度およびより有効な濃度で含有する化粧品-医薬品的特徴を備えた局所用ハイブリッド製品を含んでなる、身体または動物身体に使用するために好適な製品を指し、従って、それらは化粧品と薬物の中間のレベルに位置付けられる。薬用化粧品の実例としては、精油、セラミド、酵素、ミネラル、ペプチド、ビタミンなどが挙げられる。
【0087】
本明細書において使用する場合、用語「栄養補助食品」は、健康利益を提供する、または疾病予防もしくは軽減に関連した治療作用を有する1以上の天然物を含んでなる、ヒトまたは動物に使用するために好適な製品を指し、これには、食品中に通常存在する(または存在しない)濃縮された天然生物活性製品の非食品基剤(例えば、カプセル剤、散剤など)中に提供され、それらの食品中に存在するよりも高用量で摂取すると、通常の食品が有し得る効果よりも高い健康上の有利な効果を発揮する栄養補助食品が含まれる。よって、用語「栄養補助食品」には、単離または精製された食品並びに通常に経口使用される剤形、例えば、カプセル剤、錠剤、サシェ剤、飲用ファイアルなどに一般に提供される添加剤または食品添加物が含まれ、このような製品は、疾患、一般には慢性疾患に対する生理学的利益または保護を提供する。所望により、本発明により提供される栄養補助食品は、キサントフィルに加えて、1以上の栄養補助食品(疾病予防または軽減に関連する製品または物質)、例えば、フラボノイド、オメガ-3脂肪酸など、および/または1以上のプレバイオティクス(プロバイオティクス活性および/または成長を刺激する非消化性食品成分)、例えば、オリゴフルクトース、ペクチン、イヌリン、ガラクトオリゴ糖、ラクツロース、ヒト乳汁オリゴ糖、食物繊維などを含有することができる。
【0088】
本明細書において使用する場合、本発明の「栄養組成物」という用語は、より良い健康および安寧を提供するために身体の1以上の機能に有益な影響を及ぼす食品に関する。従って、このような栄養組成物は、疾病または疾病を引き起こす因子の予防および/または治療に意図され得る。従って、本発明の「栄養組成物」という用語は、特定の栄養目的のための1もしくは複数の機能性食品、または医療用食品の類義語として使用することができる。栄養組成物は従来の食品の場合と同様であり、通常の食事の形の一部として消費される。
【0089】
用語「化粧品組成物」または「パーソナルケア組成物」は、本明細書において使用する場合、ヒトまたは動物の個々の衛生に使用するために、あるいはヒトまたは動物身体の構造または機能に影響を与えずに自然の美しさを増進する、または身体の外観を変化させるために好適である、このような効果を提供する1以上の製品を含んでなる組成物を指す。所望により、本発明により提供される化粧品組成物は、本発明の組合せに加えて、1以上の化粧品または化粧用製品、すなわち、それらを洗浄する、それらに芳香を与える、それらの外観を変化させる、それらを保護する、それらを良好な状態に保つまたは体臭を矯正する排他的なまたは主要な目的で、ヒトもしくは動物の身体(例えば、表皮、体毛系、爪、口唇など)の外表部分とまたは歯および口腔粘膜と接触させて配されることを意図する物質または混合物を含有し得る。化粧上許容されるビヒクルの実例としては、INCI(化粧品原料国際命名法(International Nomenclature of Cosmetic Ingredients))一覧に含まれる製品が挙げられる。化粧品またはパーソナルケア組成物には、バーム、パッド、ポマード、クリームなど、オイル、界面活性剤、保湿剤、植物抽出物、ビタミン、抗酸化剤、サンスクリーン剤、香料、保存剤などの製品が含まれる。保湿剤、植物抽出物、ビタミン、抗酸化剤およびサンスクリーン剤の実例。
【0090】
本明細書に上記するような成分は、好ましくは、クリーム、ゲル、ローション、オイル、軟膏、パウダー、スティック、ケーク、または局所適用可能なその他の形態に配合可能な化粧品組成物で提供される。得られる化粧品組成物は、液体、固体、半固体、分散液、懸濁液、溶液またはエマルジョンの形態であってもよく、水性系または無水のいずれかであり得る。本発明の化粧品組成物はまた、ファンデーション、マスカラ、リップカラー、ほお紅、アイシャドーなどのカラー化粧品組成物の形態であってもよい。特定の他の派生物は親油性であり、エマルジョンの油相に見られる可能性が高い。本発明の組合せは好ましくは、エマルジョンの水相に見られるか、またはリポソーム内の水相に封入される。
【0091】
用語「化粧的に有効な量」は、本明細書において使用する場合、化合物(すなわち、本発明の組合せ)の、所望の効果を提供するために十分な量に関し、それは一般に、他の理由の中でも、化合物自体の特徴および達成される化粧上の効果によって決定される。化粧的に有効な量を得るための用量はまた、動物、好ましくは、哺乳動物、より好ましくはヒトの年齢、体重、性別または忍容性などの一定の範囲の因子によって異なる。
【0092】
本発明の特定の好ましい態様において、本発明の化粧品組成物は局所経路によって投与される。本発明の組成物の局所投与のために十分な配合物は、本発明の医薬組成物に関して詳細に示され、本発明の化粧品組成物にも同等に当てはまる。
【0093】
所望により、本発明の化粧品組成物は、織物、不織布または医療器具に組み込まれる。前記織物、不織布または医療器具の実例としては、限定されるものではないが、帯具、ガーゼ、Tシャツ、パンティーストッキング、ソックス、アンダーウエア、ガードル、手袋、おむつ、生理用ナプキン、包帯、ベッドカバー、タオル、接着性パッチ剤、非接着性パッチ剤、閉塞用パッチ剤、マイクロエレクトロニクスパッチ剤およびフェイスマスクが挙げられる。
【0094】
加えて、本発明はまた、本発明の組合せを含んでなる医薬組成物に関する。
【0095】
用語「医薬組成物」は、本明細書において使用する場合、少なくとも本発明により提供される組合せを薬学上許容される担体とともに含んでなる組成物に関する。
【0096】
本明細書において互換的に使用される用語「薬学上許容されるビヒクル」、「薬学上許容される担体」、「薬学上許容される希釈剤」または「薬学上許容される賦形剤」は、非毒性固体、半固体または液体増量剤、希釈剤、封入剤または従来のいずれの種類の配合助剤も指す。薬学上許容される担体は、使用する用量および濃度ではレシピエントに本質的に非毒性であり、その配合物の他の成分と適合する。薬学上許容される担体の数および性質は所望の剤形によって異なる。薬学上許容される担体は公知であり、当技術分野で周知の方法によって調製され得る。それらは、過度な毒性、刺激作用、アレルギー反応、または他の問題または難点なく、妥当なベネフィット/リスク比に見合って対象化学物質をある器官または身体の部分から別の器官または身体の部分へ運搬または輸送することに関わる。各担体は、その配合物の他の成分と適合し、患者に有害でないという意味で「許容され」なければならない。薬学上許容される担体として働き得る材料のいくつかの例としては、(a)糖(例えば、ラクトース、グルコースおよびスクロース)、(b)デンプン(例えば、コーンスターチおよびジャガイモデンプン)、(c)セルロースおよびその誘導体(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよび酢酸セルロース)、(d)粉末トラガカントガム、(e)麦芽、(f)ゼラチン、(g)タルク、(h)賦形剤(例えば、カカオ脂および坐剤ワックス)、(i)オイル(例えば、落花生油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油およびダイズ油)、(j)グリコール(例えば、プロピレングリコール)、(k)ポリオール(例えば、グリセリン、ソルビトール、マンニトールおよびポリエチレングリコール)、(l)エステル(例えば、オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチル)、(m)寒天、(n)緩衝剤(例えば、水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウム)、(o)アルギン酸、(p)発熱性物質除去水、(q)等張性生理食塩水、(r)リンゲル溶液、(s)エチルアルコール、(t)リン酸バッファー溶液および(u)医薬製剤に使用されるその他の非毒性適合物質が挙げられる。湿潤剤、乳化剤および滑沢剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウム)、並びに着色剤、離型剤、コーティング剤、甘味剤、香味剤および芳香剤、保存剤および抗酸化剤も組成物中に存在可能である。薬学上許容される抗酸化剤の例としては、(a)水可溶性抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸、塩酸システイン、重硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウムまたは亜硫酸ナトリウム)、(b)油溶性抗酸化剤(例えば、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピルまたはα-トコフェロール)、および(c)金属キレート剤(例えば、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸またはリン酸)が挙げられる。
【0097】
より好ましくは、医薬製剤は、局所投与または経口投与に好適なビヒクルまたは担体を含んでなる。
【0098】
特定の投与様式に基づき、医薬製剤は、錠剤、丸剤、カプセル剤、サシェ剤、顆粒剤、散剤、懸濁液、エマルジョン、無水または水和局所製剤および溶液に調剤され得る。
【0099】
製薬上許容される担体またはビヒクルは当業者に周知であり、容易に一般入手可能である。薬学上許容される担体またはビヒクルは有効配合物およびその成分のそれぞれに対して化学的に不活性であるもの、並びに使用条件下で有害な副作用または毒性のないものであることが好ましい。
【0100】
いくつかの態様において、医薬製剤は、治療薬を経口的に、非経口的にまたは静脈内に、対象の循環系へと輸送するための送達系として適合される。
【0101】
静脈内投与以外の場合、組成物は、微量の湿潤剤もしくは乳化剤、またはpH緩衝剤を含有し得る。組成物は、溶液、懸濁液、エマルジョン、ゲル、ポリマー、または徐放性製剤であり得る。組成物は、当技術分野で公知のような従来の結合剤および担体とともに調剤することができる。配合物は、製薬等級のマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、ナトリウムサッカライド、セルロース、炭酸マグネシウムなどの標準的な担体、医薬の製造に十分確立された機能性を有する不活性担体を含み得る。様々な送達系が知られ、リポソーム、微粒子、マイクロカプセルなどへの封入を含め、本発明の治療薬を投与するために使用され得る。
【0102】
必要であれば、本発明の組合せまたは医薬組成物は、可溶化剤および注射部位の疼痛を改善するための局所麻酔薬も含む組成物中に含まれる。一般に、これらの成分は、例えば、有効薬の量を示すアンプルまたはサシェなどの密封容器中に凍結乾燥粉末または無水濃縮物として、個別にまたは単位剤形として一緒に混合して供給される。組成物が注入により投与される場合、それは無菌製薬等級水または生理食塩水を含有する注入ボトルで分配することができる。組合せが注射により投与される場合、投与前に成分を混合できるように無菌注射水または生理食塩水のアンプルを提供することができる。
【0103】
経口投与に好適な配合物には、水または生理食塩水などの希釈剤に溶解させた溶液;所定量の本発明の組合せをそれぞれ含有するカプセル剤、サシェ剤、錠剤、トローチ剤;散剤;適当な液体中の懸濁液;およびエマルジョンが含まれる。経口投与のための液体剤形としては、当技術で慣用される水などの不活性希釈剤を含有する薬学上許容されるエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップおよびエリキシルが挙げられる。このような組成物はまた、湿潤剤、乳化剤および沈殿防止剤、並びに甘味剤、香味剤および芳香剤などの助剤を含んでなり得る。
【0104】
経口投与のための固体剤形としては、従来のカプセル剤、徐放性カプセル剤、従来の錠剤、徐放性錠剤、チュアブル錠、舌下錠、発泡錠、丸剤、懸濁液、散剤、顆粒剤およびゲルが挙げられる。これらの固体剤形において、有効化合物は、スクロース、ラクトースまたはデンプンなどの少なくとも1つの不活性賦形剤と混合することができる。このような剤形は、通常の実施と同様に、不活性希釈剤以外の付加的物質、例えば、ステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤も含んでなり得る。カプセル剤、錠剤、発泡錠および丸剤の場合、これらの剤形はまた緩衝剤も含んでなり得る。錠剤および丸剤は腸溶コーティングを施すことができる。
【0105】
非経口製剤は、アンプルおよびバイアルなどの単位用量または多用量の密封容器中に提供することができ、使用直前に無菌液体担体、例えば、注射水を加えるだけのフリーズドライ(凍結乾燥)状態で保存することができる。
【0106】
本発明の医薬組成物は、局所経路、経皮経路または皮下経路によって投与することができる。局所投与または経皮投与の実例としては、限定されるものではないが、イオン泳動、ソノフォレシス、エレクトロポレーション、機械的圧力、浸透圧勾配、密封包帯法、マイクロインジェクション、圧力の手段による無針注射、マイクロエレクトロニクスパッチおよびそれらの任意の組合せが挙げられる。いずれにせよ、賦形剤は、選択される医薬剤形に応じて選択される。
【0107】
注射用製剤、例えば、水性または油性懸濁液、無菌注射剤は、既知の技術に従い、好適な分散剤、湿潤剤および/または沈殿防止剤を用いて調剤することができる。使用可能な許容されるビヒクルおよび溶媒としては、水、リンゲル溶液および等張性塩化ナトリウム溶液がある。無菌オイルも溶媒または懸濁媒として慣例的に使用される。
【0108】
本発明の特定の好ましい態様において、本発明の医薬組成物は、局所経路によって投与される。局所投与に関して、本発明の医薬組成物は、クリーム、ゲル、ローション、リキッド、ポマード、スプレー溶液、分散液、固形バー、エマルジョン、マイクロエマルジョン、並びに例えば、乳化剤、界面活性剤、増粘剤、着色剤およびそれらの2種類以上の組合せなどの好適な賦形剤を使用する従来の方法に従って処方され得る類似のものとして調剤することができる。
【0109】
加えて、本発明の医薬組成物は、経皮パッチまたはイオン泳動デバイスの形態で投与してもよい。好適な経皮パッチは当業者によりよく知られている。
【0110】
いくつかの薬物送達システムが知られ、例えば、リポソーム、マイクロバブル、エマルジョン、微粒子、マイクロカプセル、ナノ粒子、ナノカプセルおよび類似のものへの封入を含め、本発明の組合せを投与するために使用することができる。必要な用量は、単一単位としてまたは徐放性形態で投与することができる。本発明の特定の好ましい態様において、医薬組成物は、リポソームに封入される。
【0111】
徐放性形態並びにそれらの調製のための適当な材料および方法は当技術分野の水準において周知である。本発明の一態様において、本発明による組合せの経口投与形態は徐放性形態であり、少なくとも1つのコーティング剤または基剤をさらに含んでなる。コーティング剤または徐放性基剤としては、限定されるものではないが、天然ポリマー、半合成もしくは合成水不溶性の、改質された、ワックス、脂肪、脂肪アルコール、脂肪酸、天然半合成もしくは合成可塑剤、またはそれらの2種類以上の組合せが挙げられる。腸溶コーティングは、当技術分野の専門家に知られている従来技術を用いて施すことができる。
【0112】
本発明の組合せに関して従前に記載された総ての用語および態様は、本発明のこの側面にも同等に当てはまる。
【0113】
化粧方法
本発明の著者らは、Bcl-2阻害剤などのカロテノイドおよび老化細胞除去剤の組合せは相乗作用的老化細胞除去効果をもたらすことを見出した。よって、本発明はまた、老化細胞の望まれない蓄積が存在する疾患の治療のための方法並びに老化細胞の排出が望まれる化粧方法を提供する。
【0114】
よって、別の側面において、本発明は、皮膚老化を予防および/もしくは軽減するため、並びに/または加齢の美容上の悪影響を改善するための化粧方法であって、本発明による組合せ、または本発明による食品、薬用化粧品、栄養補助食品もしくは化粧品組成物を、それを必要とする対象に投与することを含んでなる方法に関する。
【0115】
本明細書において使用する場合、用語「化粧方法」は、対象において皮膚の外観を向上させるために使用される方法に関する。本発明の化粧方法において使用される化粧品組成物には、肌ケアクリーム、ローション、パウダー、リップスティック、アイおよびフェイシャルメークアップ、ウェットティッシュ、ゲル、デオドラント、手指消毒剤、ベビー製品、バスオイル、バブルバス、バスソルト、バターおよび他の多くの種類の製品が含まれる。
【0116】
皮膚加齢は、その生物学および機能のほとんど総ての側面に影響を及ぼす多因子プロセスであり、それは内因的因子(例えば、時間、遺伝的因子、ホルモン)および外因的因子(例えば、UV曝露、汚染、喫煙)の両方によって駆動される。皮膚加齢はまた、老化によっても産生される。
【0117】
細胞老化は、DNA損傷、テロメアの短縮および機能不全または発癌ストレスを含む種々の傷害刺激の結果として生じる成長停止である。老化細胞は、発生、組織加齢および再生、炎症、創傷治癒並びに腫瘍抑制に対して多面発現効果を発揮する。老化細胞は、増殖不能、アポトーシス耐性、並びに炎症および組織の劣化を促進する因子の分泌を特徴とする。
【0118】
老化ケラチノサイトおよび線維芽細胞は、ヒト皮膚において加齢とともに蓄積されると思われる。さらに、老化細胞は、広範囲の多面発現性効果を有する遺伝子-分解酵素、増殖因子、および炎症性サイトカインを発現する。
【0119】
「加齢の美容上の悪影響」は、本明細書において使用する場合、内因的加齢または経時的加齢の特徴に関し、例として、限定されるものではないが、薄い乾燥した皮膚、小じわ、弾力の低下、異常な色素沈着、白髪および脱毛などの目に見える徴候が挙げられる。
【0120】
「皮膚老化」は、本明細書において使用する場合、老いる状態、特に、細胞の部分的損傷または完全な破壊、酸素代謝の毒性副生成物、フリーラジカル病理機構により、または光損傷および全身性加齢により引き起こされるコラーゲンおよび/またはエラスチンにおけるイミド結合のアミド結合への変換から生じるヒト皮膚の表皮細胞への損傷を意味する。
【0121】
本発明の化粧方法は、光損傷の回復または潜在する皮膚血管分布の増加、細胞複製速度の増大およびより若々しい容姿を作る落屑、コラーゲン合成および均質化の増大、皮膚萎縮並びに表皮および真皮の薄化の遅延などの他の再生効果などの1以上の影響を含む、老化の軽減または阻害により、ヒトにおいて表皮細胞を、それにより皮膚老化を減らすことを意図する。
【0122】
本発明の組合せは、化粧的に有効な量で投与され得る。
【0123】
用語「化粧的に有効な量」は、本明細書において使用する場合、所望の効果を提供するために十分な量の化合物(すなわち、本発明の組合せ)に関し、一般に、それは他の原因の中でも化合物自体の特徴および達成されるべき化粧的効果によって決定される。化粧的に有効な量を得るための用量はまた、動物、好ましくは、哺乳動物、より好ましくはヒトの年齢、体重、性別または忍容性などの一定の範囲の因子によって異なる。
【0124】
本発明の化粧方法の特定の好ましい態様において、本発明の化粧品組成物は、局所経路によって投与される。本発明の組成物の局所投与のために十分な配合物は、本発明の化粧品組成物に関して詳細に示されており、本発明の化粧方法にも同等に当てはまる。
【0125】
所望により、本発明の化粧品組成物は、織物、不織布または医療器具に組み込まれる。前記織物、不織布または医療器具の実例としては、限定されるものではないが、帯具、ガーゼ、Tシャツ、パンティーストッキング、ソックス、アンダーウエア、ガードル、手袋、おむつ、生理用ナプキン、包帯、ベッドカバー、タオル、接着性パッチ剤、非接着性パッチ剤、閉塞用パッチ剤、マイクロエレクトロニクスパッチ剤およびフェイスマスクが挙げられる。
【0126】
従前に記載される総ての用語および態様は、本発明のこの側面にも同等に当てはまる。
【0127】
医学的使用
別の側面において、本発明は、医薬に使用するための本発明による組合せ、または本発明による医薬組成物に関する。
【0128】
本発明による組成物は、医薬において使用する場合、治療上有効な量の(i)カロテノイド、カロテノイド代謝産物、カロテノイド誘導体、類似体またはそのエステルもしくは塩および(ii)BCL-2抗アポトーシスタンパク質ファミリーの1以上のメンバーの阻害剤(阻害物質)、BCL-2アポトーシス促進ファミリーメンバーの活性剤(活性化物質)、老化細胞除去剤または老化細胞阻害剤の同時投与によって、または任意の様式の個別もしくは逐次投与によって使用することができる。用語「組合せ」はまた、例えば、単一の組成物における、単一の有効化合物の別個の配合物からなる組合せ混合物、例えば、「タンクミックス」、および逐次様式において、すなわち、数時間もしくは数日などの妥当に短い期間で一方の後に他方を、または同時投与において適用される場合の単一有効成分の組合せ使用における、化合物(i)と(ii)の種々の組合せを表す。
【0129】
好ましくは、投与が同時にない場合、これらの化合物は、互いに近接した時間内で投与される。さらに、これらの化合物が同じ剤形でまたは同じ経路で投与されるかどうかは重要ではなく、例えば、一方の化合物を局所投与し、他方の化合物を経口投与してもよい。好適には、両化合物を経口投与してもよい。
【0130】
本発明の組合せは、その同時投与、個別投与または逐次投与のために調剤することができる。これは2種類の化合物の組合せが、
同じ薬剤配合物の一部である組合せとして(従って、これらの2種類の化合物は常に同時に投与される)、
2つの単位の組合せとして(それぞれ同時、逐次または個別投与の可能性を生じる物質の1つとの)
投与され得るという含意を有する。
【0131】
特定の態様において、カロテノイド、カロテノイド代謝産物、カロテノイド誘導体、類似体またはそのエステルもしくは塩は、老化細胞除去剤、老化細胞阻害剤、BCL-2抗アポトーシスタンパク質ファミリーの1以上のメンバーの阻害剤またはBCL-2アポトーシス促進ファミリーメンバーの活性剤とは独立に(すなわち、2つの単位で)同時に投与される。
【0132】
別の特定の態様において、カロテノイド、カロテノイド代謝産物、カロテノイド誘導体、類似体またはそのエステルもしくは塩がまず投与され、次に、老化細胞除去剤、老化細胞阻害剤、BCL-2抗アポトーシスタンパク質ファミリーの1以上のメンバーの阻害剤またはBCL-2アポトーシス促進ファミリーメンバーの活性剤が個別投与または逐次投与される。
【0133】
さらに別の特定の態様において、老化細胞除去剤、老化細胞阻害剤、BCL-2抗アポトーシスタンパク質ファミリーの1以上のメンバーの阻害剤またはBCL-2アポトーシス促進ファミリーメンバーの活性剤がまず投与され、次に、カロテノイド、カロテノイド代謝産物、カロテノイド誘導体、類似体またはそのエステルもしくは塩が、定義された通りに個別投与または逐次投与される。
【0134】
別の側面において、本発明は、癌の治療に使用するための本発明による組合せ、または本発明による医薬組成物に関する。
【0135】
あるいは、本発明は、本発明による組合せまたは本発明による医薬組成物を、それを必要とする対象に投与することを含んでなる、癌を予防および/または治療するための方法に関する。
【0136】
あるいは、本発明は、必要とする対象において癌を予防および/または治療するための薬剤の調製のための、本発明による組合せまたは本発明による医薬組成物の使用に関する。
【0137】
用語「予防」は、本明細書において使用する場合、一例として癌を有する可能性があると診断されていないが、前記疾患を発症することが通常予想されるか、または前記疾患に対して高いリスクのある対象への本発明による組合せ、または前記組合せを含んでなる薬剤の投与に関する。予防は前記疾患の出現を回避することを意図する。予防は完全であり得る(例えば、ある疾患が全く存在しない)。予防はまた、例えば、対象における疾患の発生が本発明の組成物を投与しない場合に見られるものより少ないというような部分的なものであってもよい。予防はまた、病態に対する感受性の低下も指す。
【0138】
用語「治療」は、本明細書において使用する場合、本明細書に記載されるような病態に対する感受性の終結、予防、改善または軽減を目的とするいずれの種類の療法も指す。好ましい態様において、用語治療は、本明細書に定義されるような障害または病態の予防的処置(すなわち、病態に対する感受性を軽減するための療法)に関する。よって、「治療」およびそれらの等価な用語は、所望の薬理学的または生理学的効果を得ることを指し、ヒトを含む哺乳動物における病状または障害の治療を包含する。効果は、障害もしくはその症状を完全にもしくは部分的に防ぐという点で予防的であり得、並びに/または障害および/もしくは障害に関与する有害作用の部分的もしくは完全な治癒という点で治療的であり得る。すなわち、「治療」は、(1)対象において障害が発生または再発しないように予防すること、(2)その発生の停止などの障害の阻害、(3)宿主が障害またはその症状にもはや苦しまないように障害または少なくともそれに関連する症状を停止または終結させること、例えば、消失した、欠いているもしくは欠陥のある機能を回復もしくは修復することによるか、または不十分なプロセスを刺激することによって障害またはその症状の退縮を生じさせること、あるいは(4)障害またはそれに関連する症状を寛解、緩和、または改善すること、ここで、改善は、広義で、少なくともパラメーターの大きさの低減を指して使用される。
【0139】
用語「癌」は、本明細書において使用する場合、制御を欠いた細胞分裂(または生存もしくはアポトーシス耐性の増大)および他の隣接組織へ侵入し(浸潤)およびリンパ管および血管を介してそれらの細胞が通常は位置しない身体の他の領域へ拡散し(転移)、血流中を循環し、次いで、身体の他所の正常組織へ侵入する前記細胞の能力を特徴とする疾患を指す。それらが浸潤および転移によって拡散可能かどうかによって、腫瘍は良性または悪性のいずれかに分類され、良性腫瘍は浸潤または転移によって拡散できない腫瘍であり、すなわち、それらは局所で増殖するにすぎず、一方、悪性腫瘍は浸潤および転移によって拡散できる腫瘍である。本明細書において使用する場合、癌という用語には、限定されるものではないが、以下の種類の癌が含まれる:乳癌;胆道癌;膀胱癌;膠芽腫、特に、多形性膠芽腫、および髄芽細胞腫を含む脳癌;子宮頸癌;頭頸部癌;絨毛癌;結腸癌、結腸直腸癌;子宮内膜癌;食道癌;胃癌;急性リンパ球性および骨髄性白血病を含む造血器新生物;T細胞急性リンパ芽球性白血病/リンパ腫;有毛細胞白血病;慢性骨髄性白血病、多発性骨髄腫;AIDS関連白血病および成人T細胞白血病/リンパ腫;ボーエン病およびパジェット病を含む上皮内新生物;肝臓癌、肝細胞腫;肺癌、胸腔中皮腫;ホジキン病およびリンパ球性リンパ腫を含むリンパ腫;神経芽腫;扁平上皮癌を含む口腔癌;耳下腺癌;上皮細胞、間質細胞、生殖細胞および間葉細胞から生じるものを含む卵巣癌;膵臓癌;前立腺癌;腎臓癌、副腎癌;直腸癌;平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、脂肪肉腫、線維肉腫、および骨肉腫を含む肉腫;黒色腫、メルケル細胞癌、カポジ肉腫、基底細胞癌、および扁平上皮細胞癌を含む皮膚癌;子宮頸癌、子宮内膜癌;精上皮腫、非精上皮腫(奇形腫、絨毛癌)、間質腫瘍、および生殖細胞腫瘍などの胚性腫瘍を含む精巣癌;甲状腺腺癌および髄質癌を含む甲状腺癌;並びに腺癌およびビルムス腫瘍を含む腎臓癌。他の癌も当業者に周知である。
【0140】
好ましい態様において、癌は造血器癌または造血器悪性腫瘍である。用語「造血器癌または造血器悪性腫瘍」は、血液、骨髄、およびリンパ節に影響を及ぼす癌の種類である。造血器悪性腫瘍は、2つの主要な血液細胞系統:骨髄細胞系統およびリンパ細胞系統のいずれかに由来し得る。骨髄細胞系統は、通常、顆粒球、赤血球、血小板、マクロファージおよび肥満細胞を産生し;リンパ細胞系統は、B細胞、T細胞、NK細胞および形質細胞を産生する。リンパ腫、リンパ球性白血病、および骨髄腫はリンパ細胞系統に由来するが、急性および慢性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群(MDS)および骨髄増殖性疾患は骨髄起源である。造血器悪性腫瘍の限定されない実例は、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、急性単球性白血病(AMoL)、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫(NHL)および骨髄腫、例えば、多発性骨髄腫(MM)である。より好ましい態様において、造血器悪性腫瘍は白血病である。より好ましい態様において、白血病は骨髄起源である。より好ましい態様において、白血病は急性骨髄性白血病である。別の好ましい態様において、血液癌は、AML、NHL、MDS、MM、CLLまたは骨髄線維症である。
【0141】
別の好ましい態様において、癌は、乳癌、肺癌、黒色腫、膵臓癌、結腸癌、腎臓癌、基底細胞癌、扁平上皮癌、再発性または難治性悪性腫瘍、前立腺癌、神経芽腫、膠芽腫、星状細胞腫または卵巣癌である。好ましい態様において、癌は皮膚癌、より好ましくは、黒色腫である。
【0142】
本発明の著者らは、カロテノイドと老化細胞除去剤の併用が相乗作用的老化細胞除去効果をもたらすことを示した。よって、本発明はまた、老化細胞の選択的破壊を必要とする疾患の治療のためのこれら組成物の使用を提供する。
【0143】
別の側面において、本発明は、老化関連疾患または障害の予防および/または治療に使用するための本発明による組合せ、または本発明による医薬組成物に関する。
【0144】
あるいは、本発明は、本発明による組合せまたは医薬組成物を投与することを含んでなる老化関連疾患または障害を予防および/または治療するための方法に関する。
【0145】
あるいは、本発明は、老化関連疾患または障害を予防および/または治療するための薬剤の調製のための本発明の組合せまたは医薬組成物に関する。
【0146】
「老化関連疾患または障害」は、本明細書において使用する場合、老化細胞の存在および作用がその病態の病態生理学に実質的に寄与する病態に関する。
【0147】
別の好ましい態様において、老化関連疾患または障害は線維化である。
【0148】
「線維化」は、本明細書において使用する場合、修復プロセスまたは反応プロセスにおいて器官または組織の過度の繊維性結合組織の形成に関する。線維化は良性状態である場合もあるが、本発明は好ましくは、病的状態にある線維化に関する。
【0149】
好ましい態様において、線維化は、多数の老化細胞を含むことを特徴とする。
【0150】
別の好ましい態様において、多数の老化細胞を含む線維化は、肺線維症、慢性閉塞性肺疾患、心筋線維症、腎線維症、骨髄線維症または肝線維症である。
【0151】
「多数の老化細胞」は、本明細書において使用する場合、線維症に罹患している組織における老化細胞の数が正常組織における細胞数に比べて増加していることを指す。好ましい態様において、線維症に罹患している組織における老化細胞の数は、正常組織における老化細胞の数の少なくとも1.1倍、1.5倍、5倍、10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍またはさらにはそれより多い。正常組織は、線維症に罹患していない組織を意味する。
【0152】
老化細胞は、以下の特徴のうちいずれか1以上を示し得る。(I)老化成長休止は本質的に恒久的であって、既知の生理学的刺激によって逆転させることはできない。(2)老化細胞は大きくなり、時には非老化対照物の大きさの2倍を超えて拡大することがある。(3)老化細胞は老化関連P-ガラクトシダーゼ(SAP-gal)を発現し、これはリソソーム質量の増大を反映する。(4)ほとんどの老化細胞はp16INK4aを発現し、これは休止細胞または最終分化細胞によっては一般に発現されない。(5)持続的なDDRシグナル伝達を伴って老化する細胞は、DNA segments with chromatin alterations reinforcing senescence(DNA-SCARS)と呼ばれる持続的核内フォーカスを有する。これらのフォーカスは、活性化されたDDRタンパク質を含有し、一過性の損傷フォーカスとは区別される。DNA-SCARSは、機能不全テロメアまたはテロメア機能不全誘導フォーカス(telomere dysfunction-induced foci)(TIF)を含む。(6)老化細胞は本明細書において老化細胞関連分子と呼ばれる分子を発現し、分泌する場合があり、これは特定の場合には、持続的DDRシグナル伝達の存在下で見られ得る。
【0153】
組織における老化細胞の存在は、増殖因子、プロテアーゼ、サイトカイン(例えば、炎症性サイトカイン)、ケモカイン、細胞関連代謝産物、反応性酸素種(例えば、H2O2)、並びに炎症および/または対象の基礎疾患を促進し得るもしくは増悪させ得る他の生物学的効果もしくは反応を刺激するその他の分子を含む老化細胞関連分子の存在を介して検出することができる。好ましい態様において、老化細胞は、老化関連分泌表現型(senescence-associated secretory phenotype)(SASP、すなわち、老化細胞の炎症誘発性表現型を構成し得る分泌因子))、老化伝令セクレトーム(senescent-messaging secretome)、およびDNA損傷分泌プログラム(DNA damage secretory program)(DDSP)を検出することによって検出される。
【0154】
老化細胞および老化細胞関連分子は、当技術分野に記載されている技術および手順によって検出することができる。例えば、組織における老化細胞の存在は、老化マーカーSA-βガラクトシダーゼ(SA-Pgal)を検出する組織化学または免疫組織化学技術によって分析することができる(例えば、Dimri et al, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92: 9363-9367 (1995)参照)。老化細胞関連ポリペプチドpl6の存在は、免疫ブロット法分析などの当技術分野で実施される多くの免疫化学的方法のいずれか1つによって決定することができる。細胞におけるpl6 mRNAの発現は、定量的PCRを含む、当技術分野で実施される様々な技術によって測定することができる。老化細胞関連ポリペプチド(例えば、SASPのポリペプチド)の存在およびレベルは、当技術分野で記載されている自動Luminexアレイアッセイ(例えば、Coppe et al, PLoS Biol 6 : 2853-68 (2008))などの自動ハイスループットアッセイを使用することによって決定することができる。老化細胞の存在は、増殖因子、プロテアーゼ、サイトカイン(例えば、炎症性サイトカイン、実施例4のようにIL-1βのレベルを決定するなど)、ケモカイン、細胞関連代謝産物、反応性酸素種(例えば、H2O2)、並びに炎症および/または対象の基礎疾患を促進し得るもしくは増悪させ得る他の生物学的効果もしくは反応を刺激するその他の分子を含む老化細胞関連分子の検出によって決定することもできる。
【0155】
老化関連疾患および障害には、例えば、心血管疾患および障害、炎症性疾患および障害、自己免疫疾患および障害、肺疾患および障害、眼疾患および障害、代謝疾患および障害、神経疾患および障害(例えば、神経変性疾患および障害);老化により誘発される加齢性疾患および障害;皮膚病態;加齢性疾患;皮膚科疾患および障害;並びに移植関連疾患および障害が含まれる。
【0156】
別の特定の態様において、老化関連疾患または障害は、アテローム性動脈硬化症、アンギナ、不整脈、心筋症、鬱血性心不全、冠動脈疾患、頚動脈疾患、心内膜炎、冠動脈血栓症、心筋梗塞、高血圧症、大動脈瘤、心拡張機能障害、高コレステロール血症、高脂血症、僧帽弁逸脱、末梢血管疾患、心臓ストレス耐性、心線維症、脳動脈瘤、および脳卒中から選択される心血管疾患である。別の特定の態様において、老化関連疾患または障害は、変形性関節症、骨粗鬆症、口腔粘膜炎、炎症性腸疾患、脊柱後湾症、および椎間板ヘルニアから選択される炎症性または自己免疫疾患または障害である。別の特定の態様において、老化関連疾患または障害は、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、認知症、軽度認知障害、および運動ニューロン機能不全から選択される神経変性疾患である。別の特定の態様において、老化関連疾患または障害は、糖尿病、糖尿病性潰瘍、代謝症候群、および肥満から選択される代謝疾患である。別の特定の態様において、老化関連疾患または障害は、肺線維症、慢性閉塞性肺疾患、喘息、嚢胞性線維症、気腫、気管支拡張症、および加齢性肺機能低下から選択される肺疾患である。別の特定の態様において、老化関連疾患または障害は、黄斑変性、緑内障、白内障、老眼、および視力低下から選択される眼疾患または障害である。別の特定の態様において、老化関連疾患または障害は、腎疾患、腎不全、フレイル、難聴、筋肉疲労、皮膚病態、皮膚創傷治癒、肝線維症、膵線維症、口腔粘下線維症、およびサルコペニアから選択される加齢性障害である。別の特定の態様において、老化関連疾患または障害は、湿疹、乾癬、色素沈着亢進、母斑、発疹、アトピー性皮膚炎、じんま疹、光感受性または光加齢に関連する疾患および障害、しわから選択される皮膚科疾患または障害;掻痒;感覚不全;湿疹性発疹;好酸球性皮膚病;反応性好中球性皮膚病;天疱瘡;類天疱瘡;免疫水疱性皮膚症;皮膚の線維組織球性増殖;皮膚リンパ腫;および皮膚狼瘡である。別の特定の態様において、老化関連疾患または障害は、アテローム性動脈硬化症;変形性関節症;肺線維症;高血圧症、慢性閉塞性肺疾患;骨髄線維症;または肝線維症である。
【0157】
好ましい態様において、老化関連疾患または障害は、癌、線維症および化学療法誘発または放射線療法誘発老化からなる群から選択される。
【0158】
好ましい態様において、老化関連疾患または障害は、癌、より好ましくは、血液癌または皮膚癌である。
【0159】
別の好ましい態様において、多数の老化細胞を含む線維症は、肺線維症、慢性閉塞性肺疾患、心筋線維症、腎線維症、骨髄線維症または肝線維症である。
【0160】
別の好ましい態様において、老化障害は、治療誘発性老化、好ましくは、化学療法誘発または放射線療法誘発老化である。より好ましい態様において、癌における治療誘発性老化。癌の例示的な限定されない例は、従前に記載されている。
【0161】
「治療誘発性老化」、またはTISは、本明細書において使用する場合、療法によって誘発される老化に関する。DNA傷害放射線療法および化学療法は、イン・ビボ(in vivo)においてSASPを誘発し得る(例えば、Coppe et al, 2008, PLoS Biol. 6:2853-2868参照)が、これは有害な全身作用、並びに抗癌療法によっては根絶されなかった腫瘍細胞の再増殖を刺激する能力を有し得る。その生残物が大きな炎症性応答を伴わずに貪食作用によって速やかに排除されるアポトーシス細胞死とは異なり、老化細胞は腫瘍部位に様々な期間で持続し得る。
【0162】
治療誘発性老化の存在を決定するためには、SA-β-galアッセイ、Ki67および/もしくはH3K9me3染色またはIL-1βの増加の決定などのいくつかのアッセイが使用可能である。
【0163】
好ましい態様において、療法は放射線または化学療法である。好ましい態様において、放射線療法は、γ照射である。
【0164】
「化学療法」は、化学療法薬を用いた治療に関する。用語「化学療法薬」は、標準的な化学療法薬、これは(一般に急速に分裂する細胞を攻撃する)、標的化療法薬および免疫調節薬を含む。本発明に従い得る癌化学療法薬の例示的な限定されない例としては、アルキル化剤、代謝拮抗薬、アントラサイクリン系抗生物質、血管新生促進因子を標的とする抗体、トポイソメラーゼ阻害剤、抗微小管薬、サイクリン依存性キナーゼ阻害剤、血管新生促進増殖因子の低分子量チロシンキナーゼ阻害剤およびマトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤が挙げられる。
【0165】
より好ましい態様において、化学療法薬は、アフィディコリン、ブレオマイシン、カンプトテシン、カルボプラチン、ドセタキセル、シスプラチン、シクロホスファミド、ダウノルビシン、ドキソルビシン、シタラビン、パルボシクリブ、5-フルオロウラシル、ジアジコン/AZQ、没食子酸エピガロカテキン、エトポシド、ヒドロキシ尿素、K858、ロバスタチン、ミトキサントロン、MLN4924、MLN8054、ピリチオン、レスベラトロール、TPA、PEP005、PEP008およびVO-OHpicからなる群から選択される。
【0166】
より好ましい態様において、化学療法薬は、ドキソルビシンである。別の好ましい態様において、化学療法薬は、パルボシクリブである。
【0167】
本発明の医学的使用のためには、本発明の組合せまたは前記組合せを含んでなる医薬組成物は、治療上有効な量で投与され得る。
【0168】
用語「治療上有効な量」は、本明細書において使用する場合、所望の効果を提供するために十分な量の化合物(すなわち、本発明の組合せ)に関し、それは一般に、他の理由の中でも、化合物自体の特徴および達成される治療効果によって決定される。それはまた、治療される対象、前記対象が罹患している疾患の重症度、選択される剤形、投与経路などによっても異なる。このため、当業者は、前述の変数に応じて用量を調整しなければならない。
【0169】
本発明の医学的使用のためには、本発明の組合せまたは医薬組成物は、任意の投与経路、例えば、全身(例えば、静脈内、皮下、筋肉内注射)、経口、非経口(鼻腔内、舌下)または局所的投与によって投与してもよい。
【0170】
いくつかの癌種で老化が癌治療薬に対する治療係数の低さに関連しているという多くの報告がある。
【0171】
多くの腫瘍細胞は老化に入ることによって化学療法に対して耐性となること、および化学療法を止めると、それらの細胞は老化を脱しておよび増殖を再開するか、または隣接細胞の増殖を誘導することは当技術分野で周知である(例えば、Gordin and Nelson, Drug Resist Updat. 2012, 15: 123-131参照)。よって、本発明による組成物は、それらの老化細胞除去効果を考えれば、化学療法処置に応答して老化に入った細胞を破壊し、それにより化学療法処置の高い有効性を得るために使用可能である。よって、別の側面において、本発明は、抗腫瘍化合物の有効性の増強に使用するための、本発明による組合せ、または本発明による食品、栄養補助食品もしくは医薬組成物に関する。
【0172】
「有効性の増強」は、本明細書において使用する場合、抗腫瘍化合物によって生じる効果を増大、強化、加速化、拡大、および増進することを含む。
【0173】
本発明の組合せは療法によって誘発される老化を軽減するので、医学療法の治療利益および/または予防利益を、その薬剤を投与しない場合に見られる利益に比べて改善または増大する。よって、本発明の組合せを伴う特定の用量の抗腫瘍化合物は、同じ対象に対して、本発明の組合せを投与しない場合の、同じ用量の抗腫瘍化合物に比べて高い効果に至らせる。
【0174】
本発明の組合せに関して従前に記載される総ての用語および態様は、本発明のこれらの側面にも同等に当てはまる。
【0175】
カロテノイドの医学的使用
本発明の著者らは、カロテノイドが細胞傷害性薬剤により誘発された老化表現型を逆転させ得ることを示した(実施例3参照)。よって、これは細胞が老化表現型を捨て去ることを促進することにより、望ましくない数の老化細胞を特徴とする疾患の治療のためのカロテノイドの使用を可能とする。よって、別の側面において、本発明は、老化関連疾患または障害の治療に使用するためのカロテノイド、カロテノイド代謝産物、カロテノイド誘導体、類似体またはそのエステルもしくは塩に関する。
【0176】
あるいは、本発明は、老化関連疾患または障害の治療のための薬剤の調製のためのカロテノイド、カロテノイド代謝産物、カロテノイド誘導体、類似体またはそのエステルもしくは塩に関する。
【0177】
あるいは、本発明は、カロテノイド、カロテノイド代謝産物、カロテノイド誘導体、類似体またはそのエステルもしくは塩を、それを必要とする対象に投与することを含んでなる老化関連疾患または障害を治療するための方法に関する。
【0178】
用語「老化関連疾患または障害」およびその態様は従前に記載されており、本発明のこの側面にも同等に当てはまる。
【0179】
好ましい態様において、老化関連疾患または障害は、癌、より好ましくは、血液癌または皮膚癌である。
【0180】
別の好ましい態様において、老化関連疾患または障害は、線維症である。好ましい態様において、線維症は、多数の老化細胞を有すると特徴付けられる。
【0181】
別の好ましい態様において、多数の老化細胞を有する線維症は、肺線維症、慢性閉塞性肺疾患、心筋線維症または腎線維症である。
【0182】
別の好ましい態様において、老化障害は、治療誘発性老化、より好ましくは、化学療法誘発老化または放射線療法誘発老化である。
【0183】
好ましい態様において、カロテノイドは、フコキサンチン、フコキサンチノール、アマロウシアキサンチンA、ネオキサンチン、アスタキサンチン、ゼアキサンチンおよびルテインからなる群から選択される。好ましい態様において、カロテノイドは、フコキサンチンである。別の好ましい態様において、カロテノイドは、アマロウシアキサンチンAである。別の好ましい態様において、カロテノイドは、フコキサンチンでない。別の好ましい態様において、カロテノイドは、フコキサンチノールでない。別の好ましい態様において、カロテノイドは、アマロウシアキサンチンAでない。別の好ましい態様において、カロテノイドは、ネオキサンチンでない。別の好ましい態様において、カロテノイドは、アスタキサンチンでない。別の好ましい態様において、カロテノイドは、ゼアキサンチンでない。別の好ましい態様において、カロテノイドは、ルテインでない。
【0184】
別の側面において、本発明は、抗腫瘍化合物の有効性の増強に使用するためのカロテノイド、カロテノイド代謝産物、カロテノイド誘導体、類似体またはそのエステルもしくは塩に関連する。
【0185】
加えて、ある種の抗腫瘍薬は非腫瘍細胞において老化の誘導による二次的効果を生じることが周知である(Demaria, Mol. Cell Oncol. 2017; 4(3): e1299666参照)。よって、細胞の老化表現型からの脱出を促進するカロテノイドの能力は、抗腫瘍治療の有害作用を軽減するためのカロテノイドの使用を可能とする。よって、別の側面において、本発明は、抗腫瘍治療の有害な効果の軽減に使用するためのカロテノイド、カロテノイド代謝産物、カロテノイド誘導体、類似体またはそのエステルもしくは塩に関する。
【0186】
「有害な作用」、副作用、毒性副作用または有害副作用は、本明細書において使用する場合、抗腫瘍化合物の投薬から生じる望ましくない有害作用に関する。好ましくは、有害作用は、消化管毒性、末梢神経障害、疲労、倦怠感、身体活動低下、造血器毒性、肝毒性、脱毛症、疼痛、粘膜炎、体液貯留、皮膚毒性、疲労または心毒性である。
【0187】
「悪影響の軽減」は、本明細書において使用する場合、前記有害作用の現れがカロテノイド、カロテノイド代謝産物、カロテノイド誘導体、類似体またはそのエステルもしくは塩を受容していない対象に比べて低い、あるいは有害作用がカロテノイド、カロテノイド代謝産物、カロテノイド誘導体、類似体またはそのエステルもしくは塩を受容していない対象に比べて低強度である可能性に関する。
【0188】
好ましい態様において、抗腫瘍化合物で処置された対象における有害作用の可能性は少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%または少なくとも55%軽減される。
【0189】
有害作用を軽減する可能性は、判定される有害作用に応じて、当技術分野で公知の方法によって測定され得る。
【0190】
好ましい態様において、有害作用は化学療法処置によるものである。別の好ましい態様において、有害作用は放射線療法処置によるものである。
【0191】
本発明の組合せに関して従前に記載された総ての用語および態様は、本発明のこれらの側面にも同等に当てはまる。
【0192】
老化を阻害するための方法
別の側面において、本発明は、細胞集団または対象において老化を阻害するための方法であって、それを必要とする細胞集団または対象にカロテノイド、カロテノイド代謝産物、カロテノイド誘導体、類似体またはそのエステルもしくは塩を有効量で投与することを含んでなる方法に関する。
【0193】
「阻害」は、本明細書において使用する場合、老化の軽減または低減に関する。「低減」は、本明細書において使用する場合、カロテノイド、カロテノイド代謝産物、カロテノイド誘導体、類似体またはそのエステルもしくは塩を投与しない場合の老化のレベルに比べて少なくとも5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%、または100%を超える老化の軽減に関する。
【0194】
老化を判定するための方法は従前に記載されている。好ましい態様において、老化のレベルは、老化細胞の数を検出することによって決定される。別の好ましい態様において、老化のレベルは、老化マーカーの数を定量することによって決定される。
【0195】
本発明の細胞集団において老化を阻害するための方法は、細胞集団にカロテノイド、カロテノイド代謝産物、カロテノイド誘導体、類似体またはそのエステルもしくは塩を接触させ第一工程を含んでなる。細胞集団が個体の一部をなす場合には、接触工程は、カロテノイド、カロテノイド代謝産物、カロテノイド誘導体、類似体またはそのエステルもしくは塩をその個体に投与することによって行うことができる。従前に記載されているカロテノイド、カロテノイド代謝産物、カロテノイド誘導体、類似体またはそのエステルもしくは塩を投与するためのいずれの方法も使用可能である。老化細胞のレベルは、当技術分野で公知のいずれのイン・ビトロアッセイまたは技術に従って決定してもよい。例えば、老化細胞は、形態(例えば顕微鏡によって観察される);老化関連β-ガラクトシダーゼ(SA-β-gal)、p16INK4a、p21、PAI-I、または任意の1以上のSASP因子(例えば、IL-6、MMP3)などの老化関連マーカーの産生によって検出され得る。
【0196】
加えて、老化を阻害するための方法は、老化のレベルを測定し、それを参照値と比較する第2工程を含んでなる。
【0197】
「参照値」は、本明細書において使用する場合、サンプルから得られる値/データに対して参照値として使用される検査値に関する。参照値(または参照レベル)は、絶対値、相対値、上限および/または下限を有する値、一連の値、平均値(an average value)、中央値、平均値(a mean value)、または対照値もしくは参照値を参照して表される値であり得る。参照値は、個々のサンプルから得られる値、例えば、試験サンプルから、従前の時点で得られた値に基づき得る。参照値は、サンプル集団において得られた値などの多数のサンプに基づいてもよいし、または試験サンプルを含むもしくは除くサンプルプールに基づいてもよい。
【0198】
特定の態様において、参照値は、同じカロテノイド、カロテノイド代謝産物、カロテノイド誘導体、類似体またはそのエステルもしくは塩の不在下で細胞または対象における老化のレベルである。
【0199】
本発明の組合せに関して従前に記載された総ての用語および態様は、本発明のこれらの側面にも同等に当てはまる。
本発明は以下の通りである。
[1]カロテノイド、カロテノイド代謝産物、カロテノイド誘導体、類似体またはそのエステルもしくは塩と、BCL-2抗アポトーシスタンパク質ファミリーの1以上のメンバーの阻害剤、BCL-2アポトーシス促進ファミリーメンバーの活性剤、老化細胞除去剤および老化細胞阻害剤からなる群から選択される第2の成分とを含んでなる、組合せ。
[2]前記カロテノイドが、フコキサンチン、フコキサンチノール、アマロウシアキサンチンA、ネオキサンチン、アスタキサンチン、ゼアキサンチンおよびルテインからなる群から選択される、上記[1]に記載の組合せ。
[3]前記第2の成分が、BCL-2抗アポトーシスタンパク質ファミリーの1以上のメンバーの阻害剤である、上記[1]または[2]に記載の組合せ。
[4]前記BCL-2抗アポトーシスタンパク質ファミリーの1以上のメンバーの阻害剤が、ナビトクラックスまたはベネトクラックスであり、かつ、前記カロテノイドが、フコキサンチン、フコキサンチノール、アマロウシアキサンチンAおよびネオキサンチンからなる群から選択される、上記[3]に記載の組合せ。
[5]上記[1]~[4]のいずれかに記載の組合せを含んでなる、食品、薬用化粧品、栄養補助食品、化粧品または医薬組成物。
[6]上記[1]~[4]のいずれかに記載の組合せ、または上記[5]に記載の食品、薬用化粧品、栄養補助食品もしくは化粧品組成物を、それを必要とする対象に投与することを含んでなる、皮膚老化を予防および/もしくは軽減するための、並びに/または加齢の美容上の悪影響を改善するための美容方法。
[7]医薬に使用するための、上記[1]~[4]のいずれかに記載の組合せまたは上記[5]に記載の医薬組成物。
[8]癌の治療に使用するための、上記[1]~[4]のいずれかに記載の組合せまたは上記[5]に記載の医薬組成物。
[9]前記癌が、皮膚癌、または血液癌、特に、AML、NHL、MDS;MM、CLLまたは骨髄線維症である、上記[8]に記載の組合せまたは医薬組成物。
[10]老化関連疾患または障害の治療に使用するための、上記[1]~[4]のいずれかに記載の組合せまたは上記[5]に記載の医薬組成物。
[11]抗腫瘍化合物の有効性の増強に使用するための、上記[1]~[4]のいずれかに記載の組合せまたは上記[5]に記載の食品、栄養補助食品または医薬組成物。
[12]老化関連疾患または障害の治療に使用するための、カロテノイド、カロテノイド代謝産物、カロテノイド誘導体、類似体またはそのエステルもしくは塩。
[13]前記老化関連疾患が癌である、上記[12]に記載の使用のためのカロテノイド、カロテノイド代謝産物、カロテノイド誘導体、類似体またはそのエステルもしくは塩。
[14]前記癌が血液癌または皮膚癌である、上記[13]に記載の使用のためのカロテノイド、カロテノイド代謝産物、カロテノイド誘導体、類似体またはそのエステルもしくは塩。
[15]前記老化関連障害が線維症である、上記[10]に記載の使用のための組合せ、あるいは上記[12]に記載の使用のためのカロテノイド、カロテノイド代謝産物、カロテノイド誘導体、類似体またはそのエステルもしくは塩。
[16]前記線維症が多数の老化細胞を有することを特徴とする、上記[15]に記載の使用のための組合せあるいはカロテノイド、カロテノイド代謝産物、カロテノイド誘導体、類似体またはそのエステルもしくは塩。
[17]前記線維症が、肺線維症、慢性閉塞性肺疾患、心筋線維症、腎線維症、骨髄線維症または肝線維症である、上記[15]または[16]に記載の使用のための組合せあるいはカロテノイド、カロテノイド代謝産物、カロテノイド誘導体、類似体またはそのエステルもしくは塩。
[18]前記線維症が肝線維症である、上記[15]または[16]に記載の使用のための組合せあるいはカロテノイド、カロテノイド代謝産物、カロテノイド誘導体、類似体またはそのエステルもしくは塩。
[19]前記老化障害が治療誘導性老化である、上記[10]に記載の組合せ、あるいは上記[12]に記載のカロテノイド、カロテノイド代謝産物、カロテノイド誘導体、類似体またはそのエステルもしくは塩。
[20]抗腫瘍化合物の有効性の増強に使用するための、カロテノイド、カロテノイド代謝産物、カロテノイド誘導体、類似体またはそのエステルもしくは塩。
[21]抗腫瘍治療の悪影響の軽減に使用するための、カロテノイド、カロテノイド代謝産物、カロテノイド誘導体、類似体またはそのエステルもしくは塩。
[22]前記抗腫瘍治療が化学療法または放射線療法である、上記[21]に記載の使用のためのカロテノイド、カロテノイド代謝産物、カロテノイド誘導体、類似体またはそのエステルもしくは塩。
[23]前記カロテノイドが、フコキサンチン、フコキサンチノール、アマロウシアキサンチンA、ネオキサンチン、アスタキサンチン、ゼアキサンチンおよびルテインからなる群から選択される、上記[12]~[22]のいずれかに記載のカロテノイド。
【0200】
以下、実施例により本発明を説明するが、これらを限定と考えるべきではない。
【実施例】
【0201】
実施例1-癌におけるカロテノイドおよびBCL2阻害剤の相乗作用
材料および方法
細胞培養
BCL-2ファミリー阻害剤ナビトクラックス(ABT-263)およびベネトクラックス(ABT-199)と組み合わせたフコキサンチンおよびアマロウシアキサンチンAの効果を評価するために、ヒトMV-4-11およびPL-21細胞株を使用した。細胞を37℃、加湿5%CO2雰囲気下、10%FCSを添加したRPMI培地で培養し、PCRにより評価した場合に一貫してマイコプラズマフリーであった。継代培養は総て、80~90%の集密度および90%を超える生存率で行った。
【0202】
MTTアッセイ
細胞傷害性の決定のために、MV-4-11細胞およびPL-21細胞を、96ウェルマイクロプレートに104細胞/ウェルの密度で播種した。24時間後、種々の濃度のナビトクラックスまたはベネトクラックスとフコキサンチンまたはアマロウシアキサンチンAの組合せを加えた。プレートを37℃および5%CO2で72時間インキュベートした。DMSOをビヒクル対照として使用した。この期間の後、50μLのSDS10%を陰性対照ウェル(生存率0%、死亡率100%)に加えた。次に、培養培地を、各ウェルにてPBS中10μLのMTT 5mg/mlを含む新鮮培地に置き換えた。プレートを37℃および5%CO2で4時間インキュベートした。次に、培養培地を除去し、100μLの抽出バッファー(SDS、DSA、酢酸2%、pH4.7)を各ウェルに加えた。プレートを37℃および5%CO2で1時間インキュベートした後、培養物をホモジナイズした。最後に、プレートを分光光度計Multiskan Ascent(MTX Lab systems)で570nmにて読み取った。各製品の効力をIC50(50%阻害濃度)の計算によって決定した。
【0203】
結果
癌細胞において、種々の薬物(BCL2阻害剤)と組み合わせたフコキサンチンおよびアマロウシアキサンチンA細胞傷害効果を試験するために、一連の濃度のフコキサンチンを以下の化合物と同時にインキュベートした:
ナビトクラックス(ABT-263)
ベネトクラックス(ABT-199)
各化合物の細胞傷害効力、並びにそれらのフコキサンチンとの併用効力を、MV-4-11およびPL-21細胞におけるMTTアッセイで得た。このパラメーターは表1においてIC50として表される。種々の相乗作用的組合せスコアも得、MV-4-11細胞については表2に、PL-21細胞については表3に示す。
【0204】
【0205】
表2および表3に示されるように、フコキサンチンとナビトクラックス(MV-4-11細胞およびPL-21細胞の両方で)、アマロウシアキサンチンAとナビトクラックスおよびフコキサンチンとベネトクラックス(MV-4-11で)の組合せについて、IC50の相乗作用的低下が見られた。
【0206】
実施例2-老化におけるカロテノイドおよびBCL2阻害剤の効果
材料および方法
細胞培養
Sk-Mel-103細胞株(ヒト皮膚黒色腫)を、10%FCSを添加したDMEM-高グルコース中で培養した。総ての細胞を37℃、加湿5%CO2雰囲気下で培養し、PCRにより評価した場合に一貫してマイコプラズマフリーであった。継代培養は総て、80~90%の集密度および90%を超える生存率で行った。
【0207】
処理および試験条件
106個のSk-Mel-103細胞を24ウェルプレートに播種した。Error! No se encuentra el origen de la referenciaに記載のとおりに、培養物を老化誘導剤としてのパルボシクリブ(Palbo);フコキサンチン;またはそれらの組合せとともにインキュベートした。7日後、培養物を種々の濃度のBCL2阻害剤ナビトクラックスで処理した。各条件の細胞傷害性をMTTアッセイによりIC50(50%阻害濃度)の計算によって
【0208】
【0209】
MTTアッセイ
細胞傷害性の決定のために、細胞を96ウェルマイクロプレートに104細胞/ウェルの密度で播種した。上記の最初の処理の後に、種々の濃度のナビトクラックスを加えた。次に、プレートを37℃および5%CO2で72時間インキュベートした。DMSOをビヒクル対照として使用した。この期間の後、50μLのSDS10%を陰性対照ウェル(生存率0%、死亡率100%)に加えた。次に、培養培地を各ウェルにてPBS中10μLのMTT 5mg/mlを含む新鮮培地に置き換えた。プレートを37℃および5%CO2で4時間インキュベートした。次に、培養培地を除去し、100μLの抽出バッファー(SDS、DSA、酢酸2%、pH4.7)を各ウェルに加えた。プレートを37℃および5%CO2で1時間インキュベートした後、培養物をホモジナイズした。最後に、プレートを分光光度計Multiskan Ascent(MTX Lab systems)で570nmにて読み取った。各製品の効力をIC50(50%阻害濃度)の計算によって決定した。
【0210】
結果
BCL2阻害剤に対する細胞の感受性に対するフコキサンチンによる前処理の効果を検討するために、パルボシクリブ(老化誘導剤)単独またはフコキサンチンとの組合せによるインキュベーションを7日間行った(Error! No se encuentra el origen de la referenciaに見られるとおり)。その後、ナビトクラックス(BCL2阻害剤)の細胞傷害性をMTTアッセイにより評価した。データを基底状態にあるまたはフコキサンチンで処理した対照細胞(非老化)と比較した。
【表5】
【0211】
表5に見られるように、対照細胞および老化細胞におけるナビトクラックスのIC50は、細胞をフコキサンチンで処理した場合に低下した。よって、フコキサンチンによる前処理はナビトクラックスの老化細胞除去活性を増強した。
【0212】
実施例3-老化におけるカロテノイドの効果
材料および方法
細胞培養
BJ-11細胞株(ヒト初代皮膚線維芽細胞)を、10%FCSと2mM L-グルタミンを添加したMEMで培養した。総ての細胞を37℃、加湿5%CO2雰囲気下で培養し、PCRにより評価した場合に一貫してマイコプラズマフリーであった。継代培養は総て、80~90%の集密度および90%を超える生存率で行った。
【0213】
処理および試験条件
老化に対するフコキサンチンの効果を評価するために、104個のBJ-11細胞を24ウェルプレートに播種した。表6に記載されるように、培養物を種々の濃度の老化誘導剤としてのパルボシクリブ(Palbo)またはドキソルビシン(Doxo)、およびフコキサンチン(Fuco)とともにインキュベートした。
【0214】
【0215】
ドキソルビシン処理を24時間だけ行った。その後、ドキソルビシンを除去し、以下に示される期間、細胞を完全培養培地中で培養した。他方、パルボシクリブは培養培地中に一定に存在し、定期的に新鮮なものを加えた。
【0216】
続いて2つの異なるアプローチを行った。
アプローチ1:老化予防に対するフコキサンチン効果
下記に見られるように、細胞培養物をフコキサンチンおよび老化誘導剤で同時に処理した。7日後、β-ガラクトシダーゼ活性を決定した。
【0217】
【0218】
アプローチ2:老化逆転に対するフコキサンチン効果
下記に見られるように、細胞培養物をまず老化誘導剤で7日間処理した。その後、フコキサンチンによる処理を7日間行った。この期間の後、β-ガラクトシダーゼ活性を決定した。
【0219】
【0220】
老化関連β-ガラクトシダーゼ(SA-β-gal)染色
処理後、BJ-11細胞における老化関連β-ガラクトシダーゼ発現の決定のためにSA-β-ガラクトシダーゼ染色を用いた。β-ガラクトシダーゼ染色は製造者の推奨に基づいて行った(9860S、Cell Signaling Technology)。増殖培地を細胞から除去し、プレートをPBSで1回すすいだ。次に、各ウェルに固定溶液を加え、細胞を室温で10~15分間固定した。プレートをPBSで2回すすいだ後、各ウェルにβ-ガラクトシダーゼ染色溶液を加えた。最後に、プレートを乾燥インキュベーター(CO2無し)内で37℃にて24時間インキュベートして、染色結果に影響を及ぼし得るpHの変化を防いだ。β-ガラクトシダーゼ活性陽性細胞(青色で染色)の量を、染色された細胞の計数によって評価した。
【0221】
結果
老化の予防および逆転に対するフコキサンチン効果を検討するために、細胞増殖抑制薬ドキソルビシンおよびパルボシクリブとのインキュベーションを、従前に記載したようにBJ-11細胞で行った。β-ガラクトシダーゼ活性を決定し、老化マーカーとして使用した。β-ガラクトシダーゼ活性陽性老化細胞のパーセンテージは、表7および表8に見られるように、フコキサンチン処理後に減少した。
【0222】
【表9】
【表10】
(老化逆転に対するフコキサンチン効果の評価)
【0223】
実施例4-老化関連分泌表現型(SASP)の軽減におけるカロテノイドの効果
材料および方法
細胞培養
Sk-Mel-103細胞株(ヒト皮膚黒色腫)を、10%FCSを添加したDMEM-高グルコースで培養した。総ての細胞を37℃、加湿5%CO2雰囲気下で培養し、PCRにより評価した場合に一貫してマイコプラズマフリーであった。継代培養は総て、80~90%の集密度および90%を超える生存率で行った。
【0224】
処理および試験条件
106個のSk-Mel-103細胞を24ウェルプレートに播種した。表9に記載されるように、培養物を老化誘導剤としてのパルボシクリブまたはドキソルビシン;フコキサンチン;またはそれらの組合せとともにインキュベートした。処理後、細胞および上清を遠心分離により回収し、-20℃で保存した。
【0225】
【0226】
分泌されたインターロイキン(IL)の決定
IL-1β、IL-6およびIL-8の分泌を、市販のELISAキット(DY201、DY206、DY208、R&D Sytems)により、製造者の説明書に従って上清中で定量した。得られた値を、ブラッドフォードアッセイ(B6916、Sigma-Aldrich)により定量した、試験の終了時の各ウェルの総細胞タンパク質含量により正規化した。第2の正規化は、フコキサンチンインキュベーション後に分泌されたインターロイキンを老化細胞のその対応する対照で割ることにより行った。
【0227】
結果
IL-1β、IL-6およびIL-8は老化細胞において上方調節され、SASPの一部をなす。SASP因子に対するフコキサンチン効果を検討するために、ドキソルビシンまたはパルボシクリブで老化が誘導されたSK-Mel-103細胞の上清で分泌されたILを定量した。
【0228】
図1および
図2に示されるように、IL-1β、IL-6およびIL-8の分泌は、両老化誘導処理に関して、フコキサンチンとのインキュベーション時に有意に減少した(p値<0.01)。
【0229】
実施例5-肝線維症に対するアマロウシアキサンチンAの効果
肝星細胞(HSC)は肝臓の類洞周囲腔内に見られる。それらは肝線維症に関与する主要な細胞種を構成し、肝臓傷害に応答して瘢痕組織の形成を担う。
【0230】
材料および方法
試験条件
HSCの活性化に対するアマロウシアキサンチンAの効果を評価するために、不死化ヒト細胞株LX2を使用した。加えて、初代HSCを、四塩化炭素吸入を受けた肝硬変ラットから抽出した。両場合とも、細胞を24時間培養した後、化合物を添加した。その後、10μMのアマロウシアキサンチンAまたはビヒクル(DMSO)を培養物に加えた。細胞を処理24時間後および72時間後に採取し、線維化バイオマーカーを分析するために溶解した。遺伝子転写は24時間および72時間の時点で定量的PCRにより決定し、タンパク質発現は72時間の時点でウエスタンブロット法により決定した。ラットHSCにおいてα-平滑筋アクチン(α-SMA)を分析した。細胞外マトリックスの主成分であるコラーゲンI a1(COL1A1)をLX2において分析した。
【0231】
結果
α-SMAは、微小繊維を形成する構造タンパク質であり、およびHSCの一般的な活性化バイオマーカーである。HSCは、病的条件下でCOL1A1の合成を増し、肝線維症の出現に寄与する。
【0232】
図3に示されるように、アマロウシアキサンチンAは、肝硬変ラットHSCにおけるα-SMA転写を24時間後および72時間後に80%前後阻害した。タンパク質レベルでの発現もまた95%低下した。また、キサントフィルも、ヒトLX2細胞においてCOL1A1転写を24時間後に50%前後、72時間後に80%阻害した(
図4)。コラーゲン発現はウエスタンブロットにより定量したところ95%前後減少した(
図4)。
【0233】
結論として、アマロウシアキサンチンAはHSCの不活性化を促進し、転写レベルおよび翻訳レベルの両方で線維化マーカーの下方調節により証明されるように、激化した細胞外マトリックスの合成を阻害する。