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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】音響処理装置
(51)【国際特許分類】
   H04R 3/00 20060101AFI20241016BHJP
【FI】
H04R3/00 320
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020153325
(22)【出願日】2020-09-11
(65)【公開番号】P2022047418
(43)【公開日】2022-03-24
【審査請求日】2023-02-14
(73)【特許権者】
【識別番号】322003857
【氏名又は名称】パナソニックオートモーティブシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹本 誠
【審査官】佐久 聖子
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-219032(JP,A)
【文献】特開平11-355881(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 3/00- 3/14
H04R 7/00-31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のマイクと、
第2のマイクと、
第3のマイクと、
第4のマイクと、
前記第4のマイクに接続可能である第1の音声処理ユニットと、
前記第1のマイクと前記第2のマイクと前記第3のマイクとに接続可能である第2の音声処理ユニットと、
を備え、
前記第1の音声処理ユニットは、
第1のオペアンプと、
第2のオペアンプと、
第3のオペアンプと、
前記第2の音声処理ユニットに接続可能である第1の入力端子と、
前記第2の音声処理ユニットに接続可能である第2の入力端子と、
前記第4のマイクに接続可能である第3の入力端子と、
を有し、
前記第2の音声処理ユニットは、
前記第1のマイクに電気的に接続された第4のオペアンプと、
前記第2のマイクに電気的に接続された第5のオペアンプと、
前記第3のマイクに電気的に接続された第6のオペアンプと、
前記第4のオペアンプの出力ノードに電気的に接続された第1の音声処理部と、
前記第5のオペアンプの出力ノードに電気的に接続された第2の音声処理部と、
前記第6のオペアンプの出力ノードに電気的に接続された第3の音声処理部と、
前記第1の音声処理ユニットの前記第1の入力端子に接続可能である第1の出力端子と、
前記第1の音声処理ユニットの前記第2の入力端子に接続可能である第2の出力端子と、
第3の出力端子と、
前記第4のオペアンプの出力ノードと前記第1の出力端子との間に電気的に接続された第1のアッテネータと、
前記第5のオペアンプの出力ノードと前記第2の出力端子との間に電気的に接続された第2のアッテネータと、
前記第6のオペアンプの出力ノードと前記第3の出力端子との間に電気的に接続された第3のアッテネータと、
を有し、
前記第1のアッテネータは、前記第4のオペアンプによる信号の第1の増幅量をキャンセル可能な第1の減衰量を有し、
前記第2のアッテネータは、前記第5のオペアンプによる信号の第2の増幅量をキャンセル可能な第2の減衰量を有し、
前記第3のアッテネータは、前記第6のオペアンプによる信号の第3の増幅量をキャンセル可能な第3の減衰量を有し、
前記第1のアッテネータの入力インピーダンスは、前記第1の音声処理部の入力インピーダンスに均等であり、
前記第2のアッテネータの入力インピーダンスは、前記第2の音声処理部の入力インピーダンスに均等であり、
前記第3のアッテネータの入力インピーダンスは、前記第2の音声処理部の入力インピーダンスに均等である
音響処理装置。
【請求項2】
記第の音声処理ユニットは、
前記第1のアッテネータと前記第1の出力端子との間に電気的に接続された第1のトランジスタと、
前記第2のアッテネータと前記第2の出力端子との間に電気的に接続された第2のトランジスタと、
前記第3のアッテネータと前記第3の出力端子との間に電気的に接続された第3のトランジスタと、
をさらに有する
請求項1記載の音響処理装置。
【請求項3】
前記第1のマイク、前記第2のマイク、前記第3のマイク、前記第4のマイクのそれぞれは、コンデンサー型である
請求項1又は2に記載の音響処理装置。
【請求項4】
前記第1のトランジスタは、前記第1の出力端子に対してオープンエミッタ接続され、
前記第2のトランジスタは、前記第2の出力端子に対してオープンエミッタ接続され、
前記第3のトランジスタは、前記第3の出力端子に対してオープンエミッタ接続される
請求項2に記載の音響処理装置。
【請求項5】
前記第1のトランジスタは、ベースが前記第1のアッテネータに電気的に接続され、エミッタが前記第1の出力端子に電気的に接続され、コレクタがグランド電位に電気的に接続され
前記第2のトランジスタは、ベースが前記第2のアッテネータに電気的に接続され、エミッタが前記第2の出力端子に電気的に接続され、コレクタがグランド電位に電気的に接続され、
前記第3のトランジスタは、ベースが前記第3のアッテネータに電気的に接続され、エミッタが前記第3の出力端子に電気的に接続され、コレクタがグランド電位に電気的に接続され
請求項4に記載の音響処理装置。
【請求項6】
第1のマイクと、
第2のマイクと、
第3のマイクと、
第1の音声処理ユニットと、
前記第1のマイクと前記第2のマイクと前記第3のマイクとに接続可能である第2の音声処理ユニットと、
を備え、
前記第1の音声処理ユニットは、
第1のオペアンプと、
第2のオペアンプと、
第3のオペアンプと、
前記第2の音声処理ユニットに接続可能である第1の入力端子と、
前記第2の音声処理ユニットに接続可能である第2の入力端子と、
前記第2の音声処理ユニットに接続可能である第3の入力端子と、
を有し、
前記第2の音声処理ユニットは、
前記第1のマイクに電気的に接続された第4のオペアンプと、
前記第2のマイクに電気的に接続された第5のオペアンプと、
前記第3のマイクに電気的に接続された第6のオペアンプと、
前記第4のオペアンプの出力ノードに電気的に接続された第1の音声処理部と、
前記第5のオペアンプの出力ノードに電気的に接続された第2の音声処理部と、
前記第6のオペアンプの出力ノードに電気的に接続された第3の音声処理部と、
前記第1の音声処理ユニットの前記第1の入力端子に接続可能である第1の出力端子と、
前記第1の音声処理ユニットの前記第2の入力端子に接続可能である第2の出力端子と、
前記第1の音声処理ユニットの前記第3の入力端子に接続可能である第3の出力端子と、
前記第4のオペアンプの出力ノードと前記第1の出力端子との間に電気的に接続された第1のアッテネータと、
前記第5のオペアンプの出力ノードと前記第2の出力端子との間に電気的に接続された第2のアッテネータと、
前記第6のオペアンプの出力ノードと前記第3の出力端子との間に電気的に接続された第3のアッテネータと、
を有し、
前記第1のアッテネータは、前記第4のオペアンプによる信号の第1の増幅量をキャンセル可能な第1の減衰量を有し、
前記第2のアッテネータは、前記第5のオペアンプによる信号の第2の増幅量をキャンセル可能な第2の減衰量を有し、
前記第3のアッテネータは、前記第6のオペアンプによる信号の第3の増幅量をキャンセル可能な第3の減衰量を有し、
前記第1のアッテネータの入力インピーダンスは、前記第1の音声処理部の入力インピーダンスに均等であり、
前記第2のアッテネータの入力インピーダンスは、前記第2の音声処理部の入力インピーダンスに均等であり、
前記第3のアッテネータの入力インピーダンスは、前記第2の音声処理部の入力インピーダンスに均等である
音響処理装置。
【請求項7】
前記第2の音声処理ユニットは、
前記第1のアッテネータと前記第1の出力端子との間に電気的に接続された第1のトランジスタと、
前記第2のアッテネータと前記第2の出力端子との間に電気的に接続された第2のトランジスタと、
前記第3のアッテネータと前記第3の出力端子との間に電気的に接続された第3のトランジスタと、
をさらに有する
請求項6に記載の音響処理装置。
【請求項8】
前記第1のマイク、前記第2のマイク、前記第3のマイクのそれぞれは、コンデンサー型である
請求項6又は7に記載の音響処理装置。
【請求項9】
前記第1のトランジスタは、前記第1の出力端子に対してオープンエミッタ接続され、
前記第2のトランジスタは、前記第2の出力端子に対してオープンエミッタ接続され、
前記第3のトランジスタは、前記第3の出力端子に対してオープンエミッタ接続される
請求項7に記載の音響処理装置。
【請求項10】
前記第1のトランジスタは、ベースが前記第1のアッテネータに電気的に接続され、エミッタが前記第1の出力端子に電気的に接続され、コレクタがグランド電位に電気的に接続され、
前記第2のトランジスタは、ベースが前記第2のアッテネータに電気的に接続され、エミッタが前記第2の出力端子に電気的に接続され、コレクタがグランド電位に電気的に接続され、
前記第3のトランジスタは、ベースが前記第3のアッテネータに電気的に接続され、エミッタが前記第3の出力端子に電気的に接続され、コレクタがグランド電位に電気的に接続される
請求項9に記載の音響処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、音響処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両内に搭載される音響処理装置は、マイクを用いて、ハンズフリー通話、音声認識等の信号処理を行ったり、車室内雑音抑圧やアクティブノイズコントロール(ANC)等のノイズ制御を行ったりする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-247221号公報
【文献】特開2010-283505号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
音響処理装置において、信号処理用のマイクとノイズ制御用のマイクとは、それぞれ、別モジュールとして構成されることが多い。信号処理及びノイズ制御の性能向上のために、マイクの数は増加傾向にあり、後段の音声処理ユニットへの配線集中により、ワイヤーハーネスの配策にも支障が出る可能性がある。
【0005】
本開示は、マイクの個数を削減できる音響処理装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る音響処理装置は、1個以上のマイクと第1の音声処理ユニットと第2の音声処理ユニットとを有する。第2の音声処理ユニットは、マイク及び第1の音声処理ユニットの間に接続可能である。第2の音声処理ユニットは、オペアンプと出力端子とアッテネータとトランジスタとを有する。出力端子は、第1の音声処理ユニットに接続可能である。アッテネータは、オペアンプの出力ノードと出力端子との間に電気的に接続されている。
【発明の効果】
【0007】
本開示に係る音響処理装置によれば、マイクの個数を削減できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態に係る音響処理装置の構成を示す回路図である。
図2図2は、実施形態の第1の変形例に係る音響処理装置の構成を示す回路図である。
図3図3は、実施形態の第2の変形例に係る音響処理装置の構成を示す回路図である。
図4図4は、音声認識用のマイクとノイズ制御用のマイクとが別モジュールである場合の音響処理装置の構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本開示に係る音響処理装置の実施形態について説明する。
【0010】
(実施形態)
実施形態にかかる音響処理装置は、車両内に搭載され、マイクを有する。車両内のマイクは、ハンズフリー通話、音声認識、車室内雑音抑圧、ANC等、多岐に渡り使用されている。音響処理装置は、マイクを用いて、ハンズフリー通話や音声認識等における信号処理を行ったり、車室内雑音抑圧やアクティブノイズコントロール(ANC)等のノイズ制御を行ったりする。
【0011】
音響処理装置において、信号処理用のマイクとノイズ制御用のマイクとは、それぞれ、別モジュールとして構成されることが多い。信号処理及びノイズ制御の性能向上のために、マイクの数は増加傾向にある。
【0012】
例えば、図4に示す音響処理装置1000は、マイク11a,11b,11c、マイク21a,21b,21d、ANCユニット1002、信号処理ユニット1003を有する。図4は、信号処理用のマイクとノイズ制御用のマイクとが別モジュールである場合の音響処理装置1000の構成を示す回路図である。
【0013】
マイク11a,11b,11cは、ANC用のマイクロフォンモジュールであり、ANCユニット1002に必要とされる特性を持つ。マイク21a,21b,21dは、信号処理用のマイクロフォンモジュールであり、信号処理ユニット1003に必要とされる特性を持つ。マイク11a,11b,11cとマイク21a,21b,21dとは、ともに、動作させるために外部から電源供給がなされるタイプのマイクであり、例えばコンデンサー型のマイクである。
【0014】
マイク11a,11b,11cへの電源供給は、ファントム給電方式で行われる。マイク11a,11b,11cとANCユニット1002とを接続する信号ラインLa1,La2,Lb1,Lb2,Lc1,Lc2は、電源供給とマイク出力とで共用される。
【0015】
マイク21a,21b,21dへの電源供給は、ファントム給電方式で行われる。マイク21a,21b,21dと信号処理ユニット1003とを接続する信号ラインLLa1,LLa2,LLb1,LLb2,LLd1,LLd2は、電源供給とマイク出力とで共用される。
【0016】
ANCユニット1002は、入力端子2a1,2a2,2b1,2b2,2c1,2c2、ファントム電源回路212a,212b,212cを有する。ファントム電源回路212a,212b,212cは、それぞれ、電源電圧Vcc及び抵抗201a,201b,201cを有する。抵抗201a,201b,201cは、それぞれ、一端が電源電圧Vccに接続され、他端が入力端子2a1,2b1,2c1及び信号ラインLa1,Lb1,Lc1を介してマイク11a,11b,11cに接続されている。これにより、ファントム電源回路212a,212b,212cは、それぞれ、マイク11a,11b,11cへ電源電圧を供給する。また、マイク11a,11b,11cは、ANCユニット1002へ音声信号を供給する。
【0017】
信号処理ユニット1003は、入力端子1003a1,1003a2,1003b1,1003b2,1003d1,1003d2、ファントム電源回路312a,312b,312dを有する。ファントム電源回路312a,312b,312dは、それぞれ、電源電圧Vcc及び抵抗301a,301b,301dを有する。抵抗301a,301b,301dは、それぞれ、一端が電源電圧Vccに接続され、他端が入力端子1003a1,1003b1,1003d1及び信号ラインLLa1,LLb1,LLd1を介してマイク21a,21b,21dに接続されている。これにより、ファントム電源回路312a,312b,312dは、それぞれ、マイク21a,21b,21dへ電源電圧を供給する。また、マイク21a,21b,21dは、信号処理ユニット1003へ、音声信号を供給する。
【0018】
また、ANCユニット1002は、断線検知回路213a,213b,213c、増幅回路214a,214b,214c、及び音声処理部211a,211b,211cを有する。断線検知回路213a,213b,213cは、それぞれ、ダイオード202a,202b,202c及び抵抗203a,203b,203cを有する。ダイオード202a,202b,202cは、アノードが抵抗201a,201b,201cの他端と信号ラインLa1,Lb1,Lc1との間のノードに接続され、カソードが抵抗203a,203b,203cの一端に接続されている。抵抗203a,203b,203cの他端は、グランド電位に接続されている。ダイオード202a,202b,202cのカソード電圧は、信号ラインLa1,Lb1,Lc1を介したマイク11a,11b,11cの接続状態(正常、開放、ショート)によって変化する。すなわち、ダイオード202a,202b,202cのカソード電圧をモニターすることで、マイク11a,11b,11cの接続状態(正常、開放、ショート)を検知することができる。
【0019】
増幅回路214a,214b,214cは、それぞれ、コンデンサ204a,204b,204c、コンデンサ205a,205b,205c、オペアンプ206a,206b,206c及びコンデンサ208a,208b,208cを有する。オペアンプ206a,206b,206cは、それぞれ、電源電圧Vccを電源ノードで受けて動作する。オペアンプ206a,206b,206cは、それぞれ、信号ラインLa1,Lb1,Lc1からコンデンサ204a,204b,204c及びコンデンサ205a,205b,205c経由で伝達された音声信号のレベルを所定のレベルまで増幅する。オペアンプ206a,206b,206cは、それぞれ、増幅後の信号をコンデンサ208a,208b,208c経由で音声処理部211a,211b,211cへ供給する。音声処理部211a,211b,211cは、それぞれ、供給された信号からノイズ成分を抽出し、ノイズ成分と逆位相のノイズキャンセル信号を生成する。音声処理部211a,211b,211cは、それぞれ、ノイズキャンセル信号に応じたノイズキャンセル音をスピーカ(図示せず)から出力する。
【0020】
信号処理ユニット1003は、断線検知回路313a,313b,313d、増幅回路314a,314b,314d、及び音声処理部311a,311b,311dを有する。断線検知回路313a,313b,313dは、それぞれ、ダイオード302a,302b,302d及び抵抗303a,303b,303dを有する。ダイオード302a,302b,302dは、アノードが抵抗301a,301b,301dの他端と信号ラインLLa1,LLb1,LLd1との間のノードに接続され、カソードが抵抗303a,303b,303dの一端に接続されている。抵抗303a,303b,303dの他端は、グランド電位に接続されている。ダイオード302a,302b,302dのカソード電圧は、信号ラインLLa1,LLb1,LLd1を介したマイク21a,21b,21dの接続状態(正常、開放、ショート)によって変化する。すなわち、ダイオード302a,302b,302dのカソード電圧をモニターすることで、マイク21a,21b,21dの接続状態(正常、開放、ショート)を検知することができる。
【0021】
増幅回路314a,314b,314dは、それぞれ、コンデンサ304a,304b,304d、コンデンサ305a,305b,305d、オペアンプ306a,306b,306d及びコンデンサ308a,308b,308dを有する。オペアンプ306a,306b,306dは、それぞれ、電源電圧Vccを電源ノードで受けて動作する。オペアンプ306a,306b,306dは、それぞれ、信号ラインLLa1,LLb1,LLd1からコンデンサ304a,304b,304d及びコンデンサ305a,305b,305d経由で伝達された音声信号のレベルを所定のレベルまで増幅する。オペアンプ306a,306b,306dは、それぞれ、増幅後の信号をコンデンサ308a,308b,308d経由で音声処理部311a,311b,311dへ供給する。音声処理部311a,311b,311dは、それぞれ、供給された信号から信号成分を抽出し、出力音声信号を生成する。音声処理部311a,311b,311dは、それぞれ、出力音声信号に応じた音声をスピーカ(図示せず)から出力する。また、音声処理部311a,311b,311dは、出力音声信号に応じた操作コマンドを生成して機器に送信する。これにより、入力音声をもとに機器の操作を行うことができる。
【0022】
図4では、ANC用に3個のマイク11a,11b,11cが必要であり、信号処理用に3個のマイク21a,21b,21dが必要であり、合計で6個のマイクが必要である場合が例示されている。車両内において、ANCユニット1002は、マイク11a,11b,11c及びマイク21a,21b,21dと信号処理ユニット1003との間に配される。このため、3個のマイク11a,11b,11cとANCユニット1002との間は、短尺の6本の信号ラインLa1,La2,Lb1,Lb2,Lc1,Lc2で接続される。3個のマイク21a,21b,21cと信号処理ユニット1003との間は、長尺の6本の信号ラインLLa1,LLa2,LLb1,LLb2,LLd1,LLd2で接続される。
【0023】
例えば、マイク11a,11b,11cは、低周波領域におけるレベルと位相の平坦性とが求められ、高周波領域における特性は不問とする場合がある。一方、マイク21a,21b,21dは、マイク11a,11b,11cに求められる低周波領域におけるレベルと位相の平坦性は不問とする場合が多く、逆に、高周波領域における特性に対する要求はITU-T等の国際標準に代表されるように年々厳しさを増す方向にある。
【0024】
性能向上を目的としてマイクの数を増やした場合に、ANCユニット1002ないし信号処理ユニット1003へ接続すべき信号ラインの数が増えていき、配線集中は避けられない。後段の信号処理ユニットへの長尺の信号ライン等による配線集中により、ワイヤーハーネスの配策にも支障が出る可能性がある。
【0025】
そこで、本実施形態では、マイクの出力レベルとANCユニット2の出力レベルとが互いに均等になるように音響処理装置を構成することで、ANCユニットと信号処理ユニットとの従属接続を可能にし、マイクの個数の削減と信号処理ユニットへの配線集中の低減及び各マイク・各ユニットの断線検知とを図る。
【0026】
具体的には、音響処理装置100は図1に示すように構成され得る。図1は、音響処理装置100の構成を示す図である。以下では、図4に示す音響処理装置1000と異なる部分を中心に説明する。
【0027】
音響処理装置100は、マイク11a,11b,11c、マイク21a,21b,21d、ANCユニット1002(図4参照)に代えて、マイク1a,1b,1c,1d及びANCユニット(第2の音声処理ユニット)2を有する。ANCユニット2は、マイク1a,1b,1c,1dと信号処理ユニット(第1の音声処理ユニット)1003との間に配されている。
【0028】
マイク1a,1b,1c,1dは、ANCユニット2に必要とされる特性と信号処理ユニット1003に必要とされる特性の両方を併せ持つ。マイク1a,1b,1c,1dは、動作させるために外部から電源供給がなされるタイプのマイクであり、例えばコンデンサー型のマイクである。マイク1a,1b,1c,1dは、電源供給とマイク出力とを信号ラインLa1,La2,Lb1,Lb2,Lc1,Lc2,LLd1,LLd2で共用している。
【0029】
図1では、マイク1a,1bがANC用・信号処理用に使用され、マイク1cがANC用に使用され、マイク1dが信号処理用に使用される構成が例示されている。マイク1a,1bは、その出力側にANCユニット2及び信号処理ユニット1003が従属接続されている。これにより、ANC用に3個のマイク1a,1b,1cが使用され、信号処理用に3個のマイク1a,1b,1dが使用されているが、マイクの個数が合計で4個に抑えられている。すなわち、図1の構成では、図4の構成に比べて、マイクの個数を低減できる。
【0030】
また、図1の構成では、マイク1a,1bとANCユニット2とが短尺の4本の信号ラインLa1,La2,Lb1,Lb2を介して接続され、ANCユニット2と信号処理ユニット1003とが短尺の4本の信号ラインLa11,La12,Lb11,Lb12を介して接続されている。信号処理ユニット1003から見ると、6本の信号ラインのうち4本の信号ラインが長尺の信号ライン(LLa1,LLa2,LLb1,LLb2)から短尺の信号ライン(La11,La12,Lb11,Lb12)に置き換わっている。これにより、信号処理ユニット1003への配線の引き回しを低減できる。すなわち、図1の構成では、図4の構成に比べて、信号処理ユニット1003への配線集中を低減できる。
【0031】
ANCユニット2は、ファントム電源回路212a,212b,212c、断線検知回路213a,213b,213c、増幅回路214a,214b,214c、及び音声処理部211a,211b,211c(図4参照)に加えて、調整回路215a,215b,215c及び出力端子2a11,2a12,2b11,2b12,2c11,2c12を有する。調整回路215a,215b,215cは、それぞれ、ANCユニット2の出力レベルがマイク1a,1b,1cの出力レベルと均等になるように調整する。調整回路215a,215b,215cは、それぞれ、出力端子2a11,2a12,2b11,2b12,2c11,2c12及び信号ラインLa11,La12,Lb11,Lb12,Lc11,Lc12を介して信号処理ユニット1003に接続されている。
【0032】
調整回路215a,215b,215cは、それぞれ、コンデンサ207a,207b,207c、アッテネータ209a,209b,209c、トランジスタ210a,210b,210cを有する。コンデンサ207a,207b,207cは、それぞれ、一端がオペアンプ206a,206b,206cの出力ノードに接続され、他端がアッテネータ209a,209b,209cに接続されている。アッテネータ209a,209b,209cは、一端がコンデンサ207a,207b,207cに接続され、他端がトランジスタ210a,210b,210cに接続されている。
【0033】
トランジスタ210a,210b,210cは、例えばPNP型のバイポーラトランジスタであり、出力端子2a11,2b11,2c11に対してオープンエミッタ接続されている。すなわち、トランジスタ210a,210b,210cは、ベースがアッテネータ209a,209b,209cに接続され、エミッタが出力端子2a11,2b11,2c11に接続され、コレクタがグランド電位及び出力端子2a12,2b12,2c12に接続されている。トランジスタ210a,210bは、エミッタが出力端子2a11,2b11及び信号ラインLa11,Lb11を介して信号処理ユニット1003に接続され、コレクタが出力端子2a12,2b12及び信号ラインLa12,Lb12を介して信号処理ユニット1003に接続されている。トランジスタ210cは、コレクタ及びエミッタが信号処理ユニット1003に接続されていない。
【0034】
このとき、アッテネータ209a,209b,209cは、オペアンプ206a,206b,206cによる信号の増幅量に応じた減衰量を有する。例えば、アッテネータ209a,209b,209cは、オペアンプ206a,206b,206cによる信号の増幅量をキャンセルする減衰量を有する。これにより、アッテネータ209a,209b,209cを通りトランジスタ210a,210b,210cを介して出力端子2a11,2a12,2b11,2b12,2c11,2c12へ伝達される信号の出力レベルを、マイク1a,1b,1cの出力レベルに近いレベルにすることができる。この結果、マイク1a,1b,1cの出力レベルとANCユニット2の出力レベルとを互いに均等にすることができる。
【0035】
また、アッテネータ209a,209b,209cは、その入力インピーダンスが音声処理部211a,211b,211cの入力インピーダンスに均等になるように構成される。
【0036】
例えば、マイク1a,1b,1cの出力レベルを-20dBVと仮定する。オペアンプ206a,206b,206cは、ANCユニット2内で消費する音声信号に好適なレベルまで増幅する。オペアンプ206a,206b,206cの出力を2分岐し、一方を所定の入力インピーダンスで音声処理部211a~211cに入力し、もう一方を所定の入力インピーダンスでアッテネータ209a~209cに入力する。
【0037】
このとき、アッテネータ209a,209b,209cは、複数の抵抗をΠ型又はT型に結線することで構成され得る。Π型又はT型の構成において、各抵抗の抵抗値を調整することで、アッテネータ209a,209b,209cの入力インピーダンスを音声処理部211aの入力インピーダンスに均等にすることができる。これにより、トランジスタ210a~210cの後に信号処理ユニット1003が接続される場合と接続されない場合とで、オペアンプ206a,206b,206cの出力レベルが変わらないようにすることができる。
【0038】
また、アッテネータ209a,209b,209cの減衰量は、マイク1a,1b,1cの出力レベルとANCユニット2の出力レベルとが互いに均等になるように調整できる。例えば、アッテネータ209a,209b,209cのΠ型又はT型の構成において、各抵抗の抵抗値を調整することで、トランジスタ210a,210b,210cの出力レベルをマイク1a,1b,1cの出力レベルと均等にすることができる。例えば、アッテネータ209a~209cの減衰量はトランジスタ210a~210cの出力レベルが-20dBVとなるよう設定され得る。
【0039】
また、トランジスタ210a,210b,210cの出力レベルをマイク1a,1b,1cの出力レベルと均等にすることができるので、信号処理ユニット1003からANCユニット2を見た場合、マイクが繋がる場合とANCユニット2を介してマイクが繋がる場合とのいずれにおいても、接続される信号のレベルが均等になり得る。これにより、マイク1a,1b,1c,1dの出力側に、ANCユニット2及び信号処理ユニット1003を従属接続する場合と信号処理ユニット1003を直接接続する場合とのいずれにおいても、ANCユニット2及び信号処理ユニット1003をそれぞれ安定的に動作させることができる。
【0040】
例えば、マイク1a,1b,1c,1dの動作点が変わらないようにすることできるので、断線検知回路213a,213b,213cにおけるダイオード202a,202b,202cのカソード電圧をモニターすることで、マイク1a,1b,1cの接続状態(正常、開放、ショート)を適正に検知することができる。断線検知回路313a,313b,313dにおけるダイオード302a,302b,302dのカソード電圧をモニターすることで、ANCユニット2の接続状態(正常、開放、ショート)を適正に検知することができる。
【0041】
以上のように、本実施形態では、音響処理装置100は、マイク1a~1dの出力レベルとANCユニット2の出力レベルとが互いに均等になるように構成される。これにより、マイク1a~1dの出力側へANCユニット2と信号処理ユニット1003とを従属接続することが可能になるので、マイクの個数を削減でき、信号処理ユニット1003への配線集中を低減できる。更にマイクおよびANCユニット2の個別チャンネルによる断線検知が可能である。
【0042】
なお、ノイズ制御を強化したい場合等において、マイク1及び信号処理ユニット1003の間にANCユニット2を複数段で従属接続した構成としても良い。
【0043】
また、オペアンプ206a,206b,206c,306a,306b,306dは、差動入力の構成に代えて、シングルエンド入力の構成でも実現できる。
【0044】
また、マイク1cでマイク1dを代用可能である場合、音響処理装置200は、図2に示すように、マイク1cの出力側にANCユニット2と信号処理ユニット1003とを従属接続した構成であってもよい。これにより、マイクの個数をさらに削減でき、信号処理ユニット1003への配線集中をさらに低減できる。例えば、図1に示す4個のマイク1a~1dから図2に示す3個のマイク1a~1cに削減でき、図1に示す長尺の信号ラインLLd1,LLd2を図2に示す短尺の信号ラインLc11,Lc12へ置き換えて信号処理ユニット1003への配線の引き回しをさらに低減できる。
【0045】
本実施形態及びその変形例では、信号処理ユニット1003の前段にANCユニット2が配置される構成を例示したが、音響処理装置300は、図3に示すように、ANCユニット1002の前段に信号処理ユニット3が配置される構成であってもよい。例えば、図3に示す音響処理装置300は、マイク11a,11b,11c、マイク21a,21b,21d、信号処理ユニット1003(図4参照)に代えて、マイク1a,1b,1c,1d及び信号処理ユニット(第2の音声処理ユニット)3を有する。信号処理ユニット3は、マイク1a,1b,1c,1dとANCユニット(第1の音声処理ユニット)1002との間に配されている。ANCユニット1002は、図4に示すANCユニット1002と同様である。信号処理ユニット3は、実施形態でANCユニット1002に対してANCユニット2を得るために加えられた変更と同様の変更を信号処理ユニット1003(図4参照)に加えて得られる。信号処理ユニット3は、ファントム電源回路312a,312b,312c、断線検知回路313a,313b,313c、増幅回路314a,314b,314c、及び音声処理部311a,311b,311c(図4参照)に加えて、調整回路315a,315b,315c及び出力端子3a11,3a12,3b11,3b12,3c11,3c12を有する。調整回路315a,315b,315cは、それぞれ、信号処理ユニット3の出力レベルがマイク1a,1b,1cの出力レベルと均等になるように調整する。調整回路315a,315b,315cは、それぞれ、コンデンサ307a,307b,307c、アッテネータ309a,309b,309c、トランジスタ310a,310b,310cを有する。各構成の詳細に関しては、実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0046】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0047】
1a,1b,1c,1d,11a,11b,11c,21a,21b,21c マイク
2,1002 ANCユニット
2a1,2a2,2b1,2b2,2c1,2c2 入力端子
2a11,2a12,2b11,2b12,2c11,2c12 出力端子
100,200,300,1000 音響処理装置
206a,206b,206c,306a,306b,306d オペアンプ
209a,209b,209c アッテネータ
211a,211b,211c,311a,311b,311d 音声処理部
312a,312b,312d ファントム電源回路
3,1003 信号処理ユニット
1003a1,1003a2,1003b1,1003b2,1003d1,1003d2 入力端子
図1
図2
図3
図4