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  • 特許-緩衝材、および該緩衝材の巻回体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】緩衝材、および該緩衝材の巻回体
(51)【国際特許分類】
   B65D 81/03 20060101AFI20241016BHJP
【FI】
B65D81/03 100Z
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021000687
(22)【出願日】2021-01-06
(65)【公開番号】P2022106026
(43)【公開日】2022-07-19
【審査請求日】2023-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000205306
【氏名又は名称】大阪シーリング印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100150348
【弁理士】
【氏名又は名称】嶋田 太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100161942
【弁理士】
【氏名又は名称】鴨 みどり
(72)【発明者】
【氏名】槌井弘樹
(72)【発明者】
【氏名】吉田雅彦
(72)【発明者】
【氏名】播摩英伸
(72)【発明者】
【氏名】三田真己
(72)【発明者】
【氏名】盛屋考治
【審査官】宮崎 基樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-231858(JP,A)
【文献】実開昭58-103767(JP,U)
【文献】特開2003-238908(JP,A)
【文献】特開昭61-178820(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 81/00-81/17
B65D 65/40
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用時に緩衝性を備える緩衝材であって、
基材と、
該基材の少なくとも一方の面に積層された、未発泡粒子及び粘着剤を含む未発泡粒子含有層とを備え、
該未発泡粒子含有層の、該基材とは反対側の表面は自着性を有し、
該未発泡粒子含有層における該未発泡粒子は、該緩衝材の供給時は未発泡状態である、
緩衝材。
【請求項2】
前記未発泡粒子含有層が、
前記未発泡粒子及び前記粘着剤を含む発泡層と、
前記発泡層の前記基材とは反対側の面に、自着性粘着剤を含む自着性粘着剤層と
を有する、
請求項1に記載の緩衝材。
【請求項3】
前記未発泡粒子含有層の前記粘着剤が、自着性粘着剤である、
請求項1に記載の緩衝材。
【請求項4】
前記未発泡粒子の含有量が、前記未発泡粒子含有層100質量%に対し25質量%~55質量%である
請求項1~3のいずれか1項に記載の緩衝材。
【請求項5】
前記粘着剤の含有量が、前記未発泡粒子含有層100質量%に対し45質量%~75質量%である
請求項1~4のいずれか1項に記載の緩衝材。
【請求項6】
前記未発泡粒子の粒径が5μm~35μmである
請求項1~5のいずれか1項に記載の緩衝材。
【請求項7】
前記未発泡粒子は、発泡後の粒径が20μm~130μmとなる未発泡粒子である
請求項1~6のいずれか1項に記載の緩衝材。
【請求項8】
前記未発泡粒子の発泡温度が100℃~200℃である
請求項1~7のいずれか1項に記載の緩衝材。
【請求項9】
前記未発泡粒子含有層の膜厚が5μm~1000μmである
請求項1~8のいずれか1項に記載の緩衝材。
【請求項10】
膜厚が10μm~3000μmである
請求項1~9のいずれか1項に記載の緩衝材。
【請求項11】
前記粘着剤がアクリル系粘着剤またはシリコン系粘着剤である
請求項1~10のいずれか1項に記載の緩衝材。
【請求項12】
空隙率が50%以下である
請求項1~11のいずれか1項に記載の緩衝材。
【請求項13】
前記基材が、透明あるいは半透明の樹脂フィルム、非透明の紙あるいは樹脂フィルム、ラミネートフィルム、および感熱フィルムのいずれか1つである
請求項1~12のいずれか1項に記載の緩衝材。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1項に記載の緩衝材を8m以上巻回した
巻回体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緩衝材、および該緩衝材の巻回体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、梱包用の緩衝材は、エアーキャップやウレタンフォーム等のように、既に発泡した状態で販売されている。このため、厚みが大きく、巻回体にした際に直径当たりの巻きメーター数が少なく、持ち運び難く、また、カットし難いといった問題点があり、また、物品を梱包する際には、物品に対して密着させて包装後、別途、粘着テープ等で固定する必要があった。
一方、特許文献1~3には、自着性を有する感圧接着剤(自着性粘着剤)を表面に施し、該自着性粘着剤を施した面同士を接着させることにより、物品をその大きさに対応して好適に、かつ、ずれ動くことなく簡単に包装封止でき、物品には貼着しない包装材が記載されている。
しかしながら、これらの包装材では、緩衝性を高めるためには、エアーキャップやウレタンフォーム、スポンジ等と積層することが必要であり、この場合、厚みが大きく、巻回体にした際に直径当たりの巻きメーター数が少なく、持ち運び難く、また、カットし難いといった問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2014-515320号公報
【文献】特開2015-231858号公報
【文献】特開2020-50834号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、このような実情に着目してなされたものであって、自着性を有する表面を有し、該自着性を有する表面同士を接着させることにより、物品には貼着しない状態で、物品をその大きさに対応して好適に、かつ、ずれ動くことなく簡単に包装封止できるという優れた物品ホールド性を有すると同時に、任意のタイミングで発泡させることが可能であり、使用時には緩衝性を備えながら、未発泡状態で供給するため、供給時には厚みが薄く、巻回体にした際に直径当たりの巻きメーター数が多く、持ち運び易く、カットし易い緩衝材、および、上記緩衝材の巻きメーター数が多く、持ち運び易い巻回体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明では次のように構成している。
【0006】
本発明の緩衝材は、基材と、該基材の少なくとも一方の面に積層された、未発泡粒子及び粘着剤を含む未発泡粒子含有層とを備え、該未発泡粒子含有層の、該基材とは反対側の表面は自着性を有することを特徴とする。
以上のように構成された緩衝材は、自着性を有する表面同士を接着させることにより、物品には貼着しない状態で、物品をその大きさに対応して好適に、かつ、ずれ動くことなく簡単に包装封止できるという優れた物品ホールド性を有する。そして、使用時には緩衝性を備えながら、供給時には厚みが薄く、巻回体にした際に直径当たりの巻きメーター数が多く、持ち運び易く、カット性に優れる。
【0007】
また、請求項2に記載の緩衝材では、上記未発泡粒子含有層が、上記未発泡粒子及び上記粘着剤を含む発泡層と、上記発泡層の上記基材とは反対側の面に、自着性粘着剤を含む自着性粘着剤層とを有する。
以上のように構成された緩衝材は、上記発泡層の粘着剤と、上記自着性粘着剤層の自着性粘着剤とを別個に選択でき、発泡効果、発泡後凝集力および自着性粘着力により優れ、物品ホールド性により優れる。
【0008】
また、請求項3に記載の緩衝材では、上記未発泡粒子含有層の上記粘着剤が、自着性粘着剤である。
以上のように構成された緩衝材は、使用時には緩衝性を備えながら、供給時には厚みが薄く、巻回体にした際に直径当たりの巻きメーター数が多く、持ち運び易く、カット性により優れる。
【0009】
また、請求項4に記載の緩衝材では、上記未発泡粒子の含有量が、上記未発泡粒子含有層100質量%に対し25質量%~55質量%である。
以上のように構成された緩衝材は、より高い発泡効果および高い発泡後凝集力を有し、物品ホールド性により優れる。
【0010】
また、請求項5に記載の緩衝材では、上記粘着剤の含有量が、上記未発泡粒子含有層100質量%に対し45質量%~75質量%である。
以上のように構成された緩衝材は、より高い発泡効果および高い発泡後凝集力を有し、物品ホールド性により優れる。
【0011】
また、請求項6に記載の緩衝材では、上記未発泡粒子の粒径が5μm~35μmである。
以上のように構成された緩衝材は、より高い発泡効果および高い発泡後凝集力を有し、物品ホールド性により優れる。
【0012】
また、請求項7に記載の緩衝材では、上記未発泡粒子は、発泡後の粒径が20μm~130μmとなる未発泡粒子である。
以上のように構成された緩衝材は、より高い発泡効果およびより高い発泡後凝集力を有し、物品ホールド性により優れる。
【0013】
また、請求項8に記載の緩衝材では、上記未発泡粒子の発泡温度が100℃~200℃である。
以上のように構成された緩衝材は、使用時に発泡をより容易に行える。
【0014】
また、請求項9に記載の緩衝材では、上記未発泡粒子含有層の膜厚が5μm~1000μmである。
以上のように構成された緩衝材は、使用時には緩衝性を備えながら、供給時には厚みが薄く、巻回体にした際に直径当たりの巻きメーター数が多く、持ち運び易く、カット性により優れる。
【0015】
また、請求項10に記載の緩衝材では、膜厚が10μm~3000μmである。
以上のように構成された緩衝材は、使用時には緩衝性を備えながら、供給時には厚みが薄く、巻回体にした際に直径当たりの巻きメーター数が多く、持ち運び易く、カット性により優れる。
【0016】
また、請求項11に記載の緩衝材では、上記粘着剤がアクリル系粘着剤またはシリコン系粘着剤である。
以上のように構成された緩衝材は、より高い発泡効果およびより高い発泡後凝集力を有し、物品ホールド性により優れる。
【0017】
また、請求項12に記載の緩衝材では、空隙率が50%以下である。
以上のように構成された緩衝材は、使用時には緩衝性を備えながら、供給時には厚みが薄く、巻回体にした際に直径当たりの巻きメーター数が多く、持ち運び易く、カット性により優れる。
【0018】
また、請求項13に記載の緩衝材では、上記基材が、透明あるいは半透明の樹脂フィルム、非透明の紙あるいは樹脂フィルム、ラミネートフィルム、及び感熱フィルムのいずれか1つである。
以上のように構成された緩衝材によれば、より安価に製造でき、環境に優しいものとしたり、印刷したり、保温性を高めたりと、多様な機能を付加できる。
【0019】
また、本発明の巻回体は、上記緩衝材を8m以上巻回していることを特徴とする。
以上のように構成された巻回体は、直径当たりの巻きメーター数が多く、運搬性に優れる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、自着性を有する表面を有し、該自着性を有する表面同士を接着させることにより、物品には貼着しない状態で、物品をその大きさに対応して好適に、かつ、ずれ動くことなく簡単に包装封止できるという優れた物品ホールド性を有すると同時に、任意のタイミングで発泡させることが可能であり、使用時には緩衝性を備えながら、未発泡状態で供給するため、供給時には厚みが薄く、巻回体にした際に直径当たりの巻きメーター数が多く、持ち運び易く、カットし易い緩衝材、および、上記緩衝材の巻きメーター数が多く、持ち運び易い巻回体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明に係る緩衝材の、一実施形態の断面を模式的に表した図である。
図2】本発明に係る一実施形態の緩衝材を用いて、物品を梱包した梱包体の断面を模式的に表した図である。
図3】本発明に係る一実施形態の緩衝材を用いて物品を梱包した梱包体について、未発泡粒子を加熱して発泡させた状態の断面を模式的に表した図である。
図4】本発明に係る緩衝材の、他の実施形態の断面を模式的に表した図である。
図5】本発明に係る他の実施形態の緩衝材を用いて、物品を梱包した梱包体の断面を模式的に表した図である。
図6】本発明に係る他の実施形態の緩衝材を用いて物品を梱包した梱包体について、未発泡粒子を加熱して発泡させた状態の断面を模式的に表した図である。
図7】緩衝材の緩衝効果を評価する試験装置を模式的に表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0023】
1.緩衝材
本発明の緩衝材は、基材と、該基材の少なくとも一方の面に積層された、未発泡粒子及び粘着剤を含む未発泡粒子含有層とを備える。上記未発泡粒子含有層の、上記基材とは反対側の表面は自着性を有する。本発明の緩衝材は、含有する未発泡粒子が発泡前の状態である。本明細書において、「緩衝材」、「未発泡粒子」、「未発泡粒子含有層」、後述する「発泡層」は発泡処理前の未発泡状態のものを指し、発泡処理後は「既発泡緩衝材」、「既発泡粒子」、「既発泡粒子含有層」、「既発泡層」として、明確に区別される。
本発明の緩衝材中の未発泡粒子の発泡は、物品を梱包する前に行っても良く、物品の梱包後に行っても良い。物品に密着させてずれ動きを抑制し、ホールド性を向上する点からは、未発泡粒子の発泡は、物品の梱包後に行うことが好ましい。
【0024】
図1に、本発明の一実施形態の緩衝材1の断面を模式的に示す。2は基材、3は未発泡粒子含有層、4は未発泡粒子、5は粘着剤である。緩衝材1の表面31は、自着性を有している。
【0025】
図2に、上記緩衝材1を用いて、物品6を梱包した梱包体10の断面を模式的に示す。図1と同じ参照符号は、同じものを表す(以下同様)。上記梱包体10では、適当な大きさにカットした緩衝材1を、上記物品6の上下に、上記緩衝材1の表面31が接するように配置して、上記物品6を挟みこむ。そして、上記物品6の周囲にはみ出して対向している上記緩衝材1の上記表面31同士を圧接して、上記表面31の有する自着性により接合し、上記物品6を梱包する。緩衝材1は十分に薄いため、はさみやカッターナイフ等を用いて容易にカットできる。
上記物品6は、上記緩衝材1により密封することが好ましい。密封することにより、後述のように上記未発泡粒子4を発泡させた場合にガスがより抜けにくくなり、物品サポート性が高くなり易い。
【0026】
図3に、図2で示した梱包体10について、上記未発泡粒子4(図2)の発泡開始温度以上に加熱した後の既発泡梱包体20の断面を模式的に示す。上記既発泡梱包体20では、上記未発泡粒子4(図2)が発泡して既発泡粒子7となり、粘着剤5が伸長して、既発泡粒子7を包含する膜となっている。その結果、上記未発泡粒子含有層3(図2)は膨張して既発泡粒子含有層37となっている。緩衝材1(図2)は膨張した既発泡緩衝材107となり、物品6に好ましくは密着して物品6のずれ動きを抑制し、物品6を好適にサポートしている。
【0027】
本発明の緩衝材は、他の実施形態において、上記未発泡粒子含有層が、未発泡粒子及び粘着剤を含む発泡層と、上記発泡層の上記基材とは反対側の面に、自着性粘着剤を含む自着性粘着剤層とを有する。この場合には、発泡層における粘着剤の選択及び自着性粘着剤層における自着性粘着剤の選択がより容易になり、粘着剤の発泡効果、発泡後凝集力および自着性粘着力をより優れたものとできる。
【0028】
図4に、本発明の他の実施形態の緩衝材11の断面を模式的に示す。12は基材、13は未発泡粒子含有層であり、緩衝材11の表面131は、自着性を有している。上記未発泡粒子含有層13は、未発泡粒子14及び粘着剤15を含む発泡層132と、自着性粘着剤を含む自着性粘着剤層133とを有する。
【0029】
図5に、上記緩衝材11を用いて、物品16を梱包した梱包体110の断面を模式的に示す。図4と同じ参照符号は、同じものを表す(以下同様)。上記梱包体110では、適当な大きさにカットした緩衝材11を、上記物品16の上下に、上記緩衝材11の表面131が接するように配置して、上記物品16を挟みこむ。そして、上記物品16の周囲にはみ出して対向している上記緩衝材11の上記表面131同士を圧接して、上記表面131の有する自着性により接合し、上記物品16を梱包する。緩衝材11は十分に薄いため、はさみやカッターナイフ等を用いて容易にカットできる。
上記物品16は、上記緩衝材11により密封することが好ましい。密封することにより、後述のように上記未発泡粒子14を発泡させた場合にガスがより抜けにくくなり、物品サポート性が高くなり易い。
【0030】
図6に、図5で示した梱包体110について、上記未発泡粒子14(図5)の発泡開始温度以上に加熱した後の既発泡梱包体120の断面を模式的に示す。上記既発泡梱包体120では、上記未発泡粒子14(図5)が発泡して既発泡粒子17となり、粘着剤15は伸長して、既発泡粒子17を包含する膜となっている。その結果、上記発泡層132(図5)は膨張して既発泡層134となり、上記未発泡粒子含有層13も膨張して(厚みを増して)既発泡粒子含有層137となっている。緩衝材11(図5)は膨張した既発泡緩衝材117となり、物品16に好ましくは密着して物品16のずれ動きを抑制し、物品16を好適にサポートしている。
【0031】
上記図2及び図3図5及び図6では、2枚の緩衝材を用いて物品を上下方向から梱包した例を示したが、1枚の緩衝材を略U字に折り曲げて、その間に物品を挟み込み、物品の周囲の緩衝材の自着性を有する面同士を圧接して接合し、梱包してもよい。その他、物品の梱包方法は、任意である。
【0032】
上記緩衝材の膜厚は、10μm~3000μmであることが好ましく、15μm~1000μmであることがより好ましく、20μm~500μmであることがさらに好ましく、50μm~200μmであることが特に好ましい。緩衝材の膜厚をこのようにすることにより、緩衝材をより供給し易く、易カット性にもより優れたものとすることができる。
【0033】
上記緩衝材(未発泡粒子を発泡させていない状態)の空隙率は、50%以下であることが好ましく、30%以下であることがより好ましく、10%以下であることがさらに好ましく、5%以下であることが特に好ましい。緩衝材の空隙率をこのようにすることにより、使用時には緩衝性を備えながら、供給時には厚みが薄く、巻回体にした際に直径当たりの巻きメーター数が多く、持ち運び易く、易カット性にもより優れたものとすることができる。
【0034】
1-1 基材
上記基材としては、透明あるいは半透明の樹脂フィルム、非透明の各種の紙や樹脂フィルム、ラミネートフィルム、感熱フィルムなど、任意の素材を使用することができる。このような基材を使用することにより、緩衝材をより安価に製造でき、環境に優しいものとしたり、印刷したり、保温性を高めたりと、多様な機能を付加できる。基材を感熱フィルムとする場合には、印字温度を発泡温度よりも高く設定することが好ましい。
【0035】
上記基材としては、また、任意の厚みの素材を使用することができ、基材の外表面に任意の意匠や着色を施すことで、見栄えのする包装を行うことができる。さらに、基材を、防水性、気密性、伸縮性、あるいは、断熱性等に優れた素材、あるいは、それらの素材を組合せて構成することができる。基材を、防水性及び気密性に優れたシート素材で構成することによって、水分を含んだ物品や流動性を有する物品などを密封包装することができる。
【0036】
上記基材の膜厚は、5μm~1000μmであることが好ましく、5μm~500μmであることがより好ましく、5μm~100μmであることがさらに好ましく、10μm~30μmであることが特に好ましい。上記基材の膜厚をこのようにすることにより、より供給し易く、易カット性により優れた緩衝材とすることができる。
【0037】
1-2 未発泡粒子含有層
上記未発泡粒子含有層は未発泡粒子と粘着剤とを含み、上記基材とは反対側の表面に自着性を有する。上記粘着剤は、自着性粘着剤であってもよい。また、上記未発泡粒子含有層は、上記未発泡粒子及び上記粘着剤を含む発泡層と、上記発泡層の上記基材とは反対側の面に、自着性粘着剤を含む自着性粘着剤層を有することが好ましい。
【0038】
上記未発泡粒子含有層の膜厚は、5μm~1000μmであることが好ましく、5μm~500μmであることがより好ましく、5μm~100μmであることがさらに好ましく、10μm~30μmであることが特に好ましい。上記未発泡粒子含有層の膜厚をこのようにすることにより、発泡時により高い耐衝撃性を有し、且つ、より供給し易く、易カット性により優れた緩衝材とすることができる。未発泡粒子含有層は、15~25g/m(乾燥時)であることが好ましい。
【0039】
また、上記発泡層の膜厚は、5μm~1000μmであることが好ましく、5μm~500μmであることがより好ましく、5μm~100μmであることがさらに好ましく、10μm~30μmであることが特に好ましい。上記発泡層の膜厚をこのようにすることにより、発泡時により高い耐衝撃性を有し、且つ、より供給し易く、易カット性により優れた緩衝材とすることができる。発泡層は、15~25g/m(乾燥時)であることが好ましい。
【0040】
1-2-1 未発泡粒子
上記未発泡粒子は従来公知の未発泡粒子を使用できる。
上記未発泡粒子の含有量は、上記未発泡粒子含有層100質量%に対し15質量%~85質量%であることが好ましく、20質量%~75質量%であることがより好ましく、25質量%~55質量%であることがさらに好ましい。このようにした場合に、より高い発泡効果および高い発泡後凝集力を有し、物品ホールド性により優れた緩衝材を提供できる。
【0041】
上記未発泡粒子の粒径は、5μm~35μmであることが好ましく、10μm~35μmであることがより好ましく、15μm~25μmであることがさらに好ましい。このようにした場合に、より高い発泡効果および高い発泡後凝集力を有し、物品ホールド性により優れた緩衝材を提供できる。
【0042】
上記未発泡粒子は、発泡後の粒径が20μm~130μmであることが好ましく、50μm~130μmであることがより好ましく、70μm~90μmであることがさらに好ましい。このようにした場合に、より高い発泡効果および高い発泡後凝集力を有し、物品ホールド性により優れた緩衝材を提供できる。発泡後の粒径が小さすぎると、緩衝性が不十分になる場合がある。また、発泡後の粒径が大きすぎると、周りの粘着剤の壁の膜厚が薄くなりすぎ、凝集力が低下する場合がある。
なお、上記発泡後の粒径は、発泡開始温度における発泡後の既発泡粒子について、SEMでの観察及び粒度分布系(レーザー回折型 マイクロトラックベル社製)から求めた値であり、市販の発泡粒子のカタログに記載の数値を採用できる。
【0043】
上記未発泡粒子の発泡温度は、70℃~285℃程度であることが好ましく、90℃~230℃程度であることがより好ましく、100℃~200℃であることがさらに好ましい。ここで、上記発泡温度とは、緩衝材の発泡処理時に、実際に発泡させる温度であり、通常、発泡開始温度~最大膨張温度から選択される温度である。このようにした場合に、発泡が容易となり十分に発泡させることができ、例えばドライヤーやシュリンクトンネル、温水等の使用も可能となる。
さらに、基材を感熱フィルムとする場合には、発泡温度は、印字温度よりも低いことが好ましい。
【0044】
1-2-2 粘着剤
本発明の緩衝材で使用する粘着剤としては、未発泡粒子含有層の基材とは反対側の表面が自着性を有していれば特に限定されない。上記粘着剤は、自着性粘着剤であってもよい。
【0045】
上記自着性粘着剤としては、従来公知の自着性粘着剤を使用でき、エラストマー高分子結合剤、非エラストマー高分子結合剤等が使用できる。中でも、長期にわたる可撓性、伸張性、及び/又は弾性等の観点から、エラストマー高分子結合剤が好ましい。エラストマー高分子結合剤としては、例えば、天然ゴムラテックス、合成ラテックスが挙げられ、具体的には、アクリル、ブタジエン、スチレン/ブタジエンゴム、クロロプレン、エチレン、酢酸ビニル/エチレン、イソプレン、ニトリル及びウレタンのホモポリマー及びコポリマーラテックス、又はそれらの混合物等が挙げられる。
【0046】
上記自着性粘着剤は、感圧接着面同士を貼り合わせてT型剥離強度として測定される自着力が4.0N/cm以上であることが好ましく、5.0N/cm以上であることがより好ましく、6.0N/cm以上であることがさらに好ましい。このような範囲とすることにより、緩衝材で物品を梱包した場合に、封止がより容易になる。
上記自着力の上限としては、15N/cm以下であることが好ましく、12N/cm以下であることがより好ましい。このような範囲とすることにより、取扱い性がより向上する。
【0047】
上記未発泡粒子含有層が上記自着性粘着剤層133(図4)等の自着性粘着剤層を有する場合、上記発泡層132(図4)等の発泡層に含まれる、上記粘着剤15(図4)等の粘着剤としては、自着性粘着剤以外の従来公知の粘着剤であっても良い。上記発泡層中の粘着剤の具体例としては、伸張性に優れ、膜を形成し易い粘着剤が好ましく、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコン系粘着剤等が挙げられる。中でもアクリル系粘着剤またはシリコン系粘着剤が、未発泡粒子の発泡効果ならびに発泡後の凝集力に優れるため、好ましい。コスト面、汎用性の観点からは、アクリル系粘着剤が好ましい。
【0048】
上記未発泡粒子含有層が上記自着性粘着剤層を有さない場合、上記未発泡粒子含有層中の粘着剤は自着性粘着剤であることが好ましい。この自着性粘着剤としては、上記と同様に、従来公知の自着性粘着剤を使用できるが、自着性以外に、未発泡粒子の発泡を妨げず、伸張性に優れ、膜を形成し易く、未発泡粒子の発泡後に凝集力が高いものが好ましい。
【0049】
上記粘着剤の含有量は、上記未発泡粒子含有層100質量%に対し15質量%~85質量%であることが好ましく、25質量%~80質量%であることがより好ましく、45質量%~75質量%であることがさらに好ましい。このようにした場合に、より高い発泡効果および高い発泡後凝集力を有し、物品ホールド性により優れる緩衝材を提供できる。
【0050】
また、上記未発泡粒子含有層が発泡層を含む場合、粘着剤の含有量は、上記発泡層100質量%に対し15質量%~85質量%であることが好ましく、25質量%~80質量%であることがより好ましく、45質量%~75質量%であることがさらに好ましい。このようにした場合に、より高い発泡効果および高い発泡後凝集力を有し、物品ホールド性により優れる緩衝材を提供できる。
【0051】
1-2-3 自着性粘着剤層
上記未発泡粒子含有層は、好ましくは、上記発泡層と共に、基材とは反対側の面に自着性粘着剤を含む自着性粘着剤層を有する。上記自着性粘着剤層は、未発泡粒子を含んでいても良く、含まなくても良い。
上記自着性粘着剤層における上記自着性粘着剤としては、上記の従来公知の自着性粘着剤を使用でき、上記した自着性粘着剤と好ましい態様を同じとできる。なお、発泡層において緩衝材の緩衝性が充足されるため、特に柔軟性や凝集性が高くないものも使用できる。上記自着性粘着剤層における上記自着性粘着剤としては、梱包体の密封性をより高めるために、自着性が高いものが好ましい。具体的には、天然ゴム系自着性粘着剤が好適である。
【0052】
上記自着性粘着剤層の膜厚は、1μm~100μmであることが好ましく、5μm~50μmであることがより好ましく、10μm~30μmであることがさらに好ましい。自着性粘着剤層の膜厚をこのようにすることにより、より供給し易く、易カット性により優れた緩衝材とすることができる。
【0053】
1-2-4 その他成分
上記未発泡粒子含有層、発泡層、自着性粘着剤層は、それぞれ、本発明の効果を損なわない範囲で、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、充填材、可塑剤、鉱油等のその他成分を含んでいても良い。その他成分の含有量は、各層において、0.1~10質量%程度であることが好ましい。
【0054】
1-3 その他の層
本発明の緩衝材は、本発明の効果を損なわない範囲で、離型シート、中間層等のその他の層を有していても良い。
【0055】
本発明の緩衝材の好ましい未発泡粒子と粘着剤の組み合わせとしては、以下のものが挙げられる。
(1)発泡層:未発泡時の粒径が15~25μm、発泡時の粒径が75~85μm、発泡開始温度110~130℃の未発泡粒子25~55質量%と、軟化点-55~-45℃のアクリル系粘着剤45~75質量%
自着性粘着剤層:軟化点-55~-45℃の天然ゴム系自着性粘着剤
(2)発泡層:未発泡時の粒径が25~35μm、発泡時の粒径が115~125μm、発泡開始温度110~130℃の未発泡粒子25~35質量%と、軟化点-55~-45℃のアクリル系粘着剤65~75質量%
自着性粘着剤層:軟化点-55~-45℃の天然ゴム系自着性粘着剤
(3)発泡層:未発泡時の粒径が15~25μm、発泡時の粒径が75~85μm、発泡開始温度110~130℃の未発泡粒子25~40質量%と、軟化点-55~-45℃のシリコン系粘着剤60~75質量%
自着性粘着剤層:軟化点-55~-45℃の天然ゴム系自着性粘着剤
【0056】
本発明の緩衝材は、物品の全周を包み込むことができ、衝撃等による物品の損傷を防止することができ、郵便や宅配便等の配送物品の包装に好適である。また、幅の異なった複数種の緩衝材を提供することで、各種大きさの物品に対応することができる。緩衝材は巻回した巻回体として提供してもよく、また、必ずしも巻回体として提供するに限られるものではなく、適当長さに裁断した枚葉状態の緩衝材を複数枚積層し、ケースや袋に収納して提供することもできる。
【0057】
2.巻回体
本発明の巻回体は、上記緩衝材を8m以上巻回したものである。本発明の巻回体では、上記緩衝材の厚みが小さいため、8m以上巻回していても、スペースを取らず、保管や持ち運びが容易である。上記緩衝材を8m巻回した巻回体の直径は、好ましくは、3cm~10cm程度である。
【実施例
【0058】
次に、実施例に基づいて、本発明について、更に詳細に説明する。なお、以下において、部は質量部を意味する。
【0059】
実施例1
未発泡状態(発泡前)における粒径が20μm、発泡後の粒径が80μmとなる未発泡粒子(NOURYON社製、発泡開始温度120℃)50部と、アクリル系粘着剤(東洋インキ社製、エマルション、軟化点-50℃)50部とを混合し、発泡塗料を作成した。この発泡塗料を、約20g/m(DRY)となるように、基材としての上質紙に塗工して、基材上に発泡層(塗工層)が積層された積層体を作製した(発泡層の膜厚約10μm~30μm)。なお、発泡後の粒径は、発泡開始温度におけるカタログ記載の粒径である(以下、同様)。
この積層体の発泡層の上に天然ゴム系自着性粘着剤(サイデン化学社製)を塗布し、厚みが10μmの自着性粘着剤層を形成して、発泡層と自着性粘着剤層からなる未発泡粒子含有層を有する緩衝材を得た。
【0060】
(発泡効果試験)
得られた緩衝材を、大気中にて150℃で1分加熱して発泡させ、塗工層内において未発泡粒子が発泡したときの体積が著しく膨張できたかを、以下の基準で評価した。
AAA:発泡後の塗工層厚みが15倍以上
AA:発泡後の塗工層厚みが10倍以上15倍未満
A:発泡後の塗工層厚みが5倍以上10倍未満
B:発泡後の塗工層厚みが5倍未満
上記試験の結果、評価はAAであった。
【0061】
(発泡後凝集力試験)
上記発泡効果試験に用いた発泡後の試料について、凝集力を、塗工層に指で触れた時に取れるかどうかで試験した。結果を以下の基準で評価した。
AA:脱落全く無し
A:脱落無し
B:一部脱落有り
上記試験の結果、評価はAであった。
【0062】
実施例2~10
下記表1に示すように未発泡粒子の含有量と粘着剤の種類と割合を変化させた以外は、実施例1と同様にして緩衝材を作製し、実施例1と同様に発泡効果試験と発泡後凝集力試験を行った。結果を表1に示す。
【0063】
【表1】
【0064】
表1において、MBR Emは、日本ゼオン社製エマルション(軟化点-50℃)、アクリル Emは、三井化学社製エマルション(軟化点-50℃)を使用した。
【0065】
実施例11~15
下記表2に示すように未発泡粒子の粒子径と含有量を変化させた以外は、実施例1と同様にして緩衝材を作製し、実施例1と同様に発泡効果試験と発泡後凝集力試験を行った。結果を表2に示す。
【0066】
【表2】
【0067】
表2において、未発泡状態(発泡前)における粒径が5μm、発泡後の粒径が20μmとなる未発泡粒子はNOURYON社製(発泡開始温度120℃)を、未発泡状態(発泡前)における粒径が30μm、発泡後の粒径が120μmとなる未発泡粒子はNOURYON社製(発泡開始温度120℃)を使用した。
【0068】
実施例16~17
下記表3に示すように粘着剤の種類と割合を変化させた以外は、実施例1と同様にして緩衝材を作製し、実施例1と同様に発泡効果試験と発泡後凝集力試験を行った。結果を表3に示す。
【0069】
【表3】
【0070】
表3において、ゴム系粘着剤はサイデン化学社製(軟化点-50℃)、シリコン系粘着剤はセメダイン社製(軟化点-50℃)を使用した。
【0071】
実施例18
未発泡状態(発泡前)における粒径が20μm、発泡後の粒径が80μmとなる未発泡粒子(NOURYON社製)50部と、自着性粘着剤(サイデン化学社製、天然ゴム系粘着剤 軟化点-50℃)50部とを混合し、発泡塗料を作成した。この発泡塗料を、約20g/m(DRY)となるように、基材としての上質紙に塗工して、基材上に未発泡粒子含有層が積層された緩衝材を作製した(未発泡粒子含有層の膜厚約10μm~30μm)。この緩衝材について、実施例1と同様に発泡効果試験と発泡後凝集力試験を行った。結果は、発泡効果B、発泡後凝集力Aであった。
【0072】
実施例1~18で得られた緩衝材は、未発泡粒子含有層の基材とは反対側の表面は、感圧接着面同士を貼り合わせてT型剥離強度として測定された自着力が4.0N/cm以上であり、十分な自着性を有していた。
【0073】
(緩衝効果試験)
以下の方法で緩衝効果を確認した。
(1)実施例1で得られた緩衝材を用いて、該緩衝材の自着性粘着剤層側がカバーガラスに接するように、カバーガラスを挟み込むように包み、カバーガラスの周囲の緩衝材どうしが接する部分を自着させて梱包体を作成した。
(2)(1)で用意した梱包体を大気中150℃で1分加熱して、緩衝材を発泡させた。
(3)図7に示すように、厚み2mmの板(物差し)23を2枚隙間を空けて並べた。
(4)(2)で用意した、発泡後の緩衝材(既発泡緩衝材)21で梱包されたカバーガラス22を、板23に橋を渡すように置いた。
(5)長さ40cmの筒24(中身は空洞)を、上記既発泡緩衝材21の上の、橋掛けしている部分(宙に浮いている部分)に置いた。
(6)大きさと重さの異なる種々のステンレスの球25を1個ずつ筒24の上から矢印の方向に自由落下させ、上記既発泡緩衝材21に包まれたカバーガラス22に衝突させた。
(7)カバーガラス22が割れているかどうかで耐衝撃性を評価した。
上記カバーガラス22は、高橋技研社製の厚み160μmのものを使用した。
カバーガラスが割れなかったものを○、割れたものを×とした。
結果を表4に示す。
【0074】
【表4】
【0075】
表4に示すように、実施例で製造した緩衝材は、梱包用の緩衝材として、十分な機能を有することが明らかとなった。
【符号の説明】
【0076】
1、11:緩衝材
107、117:既発泡緩衝材
2、12:基材
3、13:未発泡粒子含有層
37、137:既発泡粒子含有層
132:発泡層
134:既発泡層
133:自着性粘着剤層
4、14:未発泡粒子
7、17:既発泡粒子
5、15:粘着剤
6、16:物品
31、131:自着性を有する表面
10、110:梱包体
20、120:既発泡梱包体
21:発泡後の緩衝材(既発泡緩衝材)
22:カバーガラス
23:板
24:筒
25:ステンレスの球
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7