(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】レバースイッチ
(51)【国際特許分類】
B60Q 1/42 20060101AFI20241016BHJP
B60Q 1/40 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
B60Q1/42 Z
B60Q1/40 Z
(21)【出願番号】P 2021025197
(22)【出願日】2021-02-19
【審査請求日】2023-11-27
(73)【特許権者】
【識別番号】322003857
【氏名又は名称】パナソニックオートモーティブシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】善積 亮太
(72)【発明者】
【氏名】大澤 俊夫
【審査官】山崎 晶
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-225265(JP,A)
【文献】実開平05-054084(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60Q 1/42
B60Q 1/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中立位置を基準として左折指示位置と右折指示位置との間で操作レバーを回動させる回動体と、
前記回動体に対して移動可能に設けられているラチェットと、
前記ラチェットと前記回動体との間に配置される弾性体とを備え、
前記ラチェットは、回動することで前記弾性体を介して前記回動体に接触するように設けられ、
前記ラチェットは、
前記操作レバーが前記中立位置から前記左折指示位置又は前記右折指示位置に配置された場合、回転するステアリングカムの回転軌跡上に配置され、
前記回転軌跡上に配置された状態で、前記操作レバーが配置された前記左折指示位置又は前記右折指示位置が示す方向とは反対方向に前記ステアリングカムが操作された場合、前記ステアリングカムの回転による押圧力によって前記操作レバーを前記中立位置に回動させるためのキャンセル力を、前記弾性体を介して前記回動体に伝達し、
前記キャンセル力には、第1キャンセル力と、前記第1キャンセル力よりも大きいキャンセル力である第2キャンセル力とが含まれ、
前記弾性体は、
前記ステアリングカムから前記弾性体に前記第1キャンセル力が加わった場合、前記第1キャンセル力を前記回動体に伝達し、
前記ステアリングカムから前記弾性体に前記第2キャンセル力が加わった場合、前記第2キャンセル力によって弾性変形しながら移動する
レバースイッチ。
【請求項2】
前記弾性体は、前記回動体上に設けられ、
前記ラチェットは、回動することで前記弾性体に接触し、前記弾性体を押圧することで前記キャンセル力を前記回動体に伝達する
請求項1に記載のレバースイッチ。
【請求項3】
前記回動体は、一対の前記弾性体を取付け可能な一対の取付け部を有している
請求項1
又は2に記載のレバースイッチ。
【請求項4】
中立位置を基準として左折指示位置と右折指示位置との間で操作レバーを回動させる回動体と、
前記回動体に対して移動可能に設けられているラチェットと、
前記ラチェットと前記回動体との間に配置される弾性体とを備え、
前記回動体は、一対の前記弾性体を取付け可能な一対の取付け部を有しており、
前記ラチェットは、
前記操作レバーが前記中立位置から前記左折指示位置又は前記右折指示位置に配置された場合、回転するステアリングカムの回転軌跡上に配置され、
前記回転軌跡上に配置された状態で、前記操作レバーが配置された前記左折指示位置又は前記右折指示位置が示す方向とは反対方向に前記ステアリングカムが操作された場合、前記ステアリングカムの回転による押圧力によって前記操作レバーを前記中立位置に回動させるためのキャンセル力を、前記弾性体を介して前記回動体に伝達し、
前記キャンセル力には、第1キャンセル力と、前記第1キャンセル力よりも大きいキャンセル力である第2キャンセル力とが含まれ、
前記弾性体は、
前記ステアリングカムから前記弾性体に前記第1キャンセル力が加わった場合、前記第1キャンセル力を前記回動体に伝達し、
前記ステアリングカムから前記弾性体に前記第2キャンセル力が加わった場合、前記第2キャンセル力によって弾性変形しながら移動する
レバースイッチ。
【請求項5】
一対の前記取付け部のそれぞれは、前記弾性体を係止する係止部と、前記弾性体と当接することで前記弾性体を支持する取付け凹部とを有している
請求項
3又は4に記載のレバースイッチ。
【請求項6】
一対の前記弾性体のそれぞれは、前記係止部に係止される被係止部と、前記被係止部と連続している屈曲部と、前記屈曲部と連続し、前記取付け凹部と当接する当接部とを有している
請求項
5に記載のレバースイッチ。
【請求項7】
前記当接部は、前記ステアリングカムから前記弾性体に前記第2キャンセル力が加わった場合、前記取付け凹部の底面を摺動する
請求項
6に記載のレバースイッチ。
【請求項8】
前記取付け凹部は、第1凹部と、前記第1凹部からさらに窪んだ第2凹部とを有し、
前記当接部は、前記ステアリングカムから前記弾性体に前記第2キャンセル力が加わった場合、前記第2凹部から前記第1凹部に乗り上がる
請求項
6又は7に記載のレバースイッチ。
【請求項9】
前記弾性体は、前記ラチェットの移動軌跡上に配置されている
請求項1~
8のいずれか1項に記載のレバースイッチ。
【請求項10】
前記弾性体は、前記ラチェットの回転軸心と、前記回動体の回転軸心とを結ぶ直線状に存在しない
請求項1~
9のいずれか1項に記載のレバースイッチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レバースイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両のステアリングシャフトに取付けられる車両用方向指示装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この車両用方向指示装置は、操作レバーと共に回動するように設けられ、中立位置を中心として左折指示位置と右折指示位置との間で回動されるブラケットと、ブラケットを回動可能に支持するケースと、操作レバーが左折指示位置或いは右折指示位置に配置された状態でステアリングホイールがその指示方向とは反対方向へ操作されたときに、ステアリングホイールと共に回動されるキャンセルカムからの付勢力に基づいて操作レバーを中立位置へ戻す構成のキャンセル機構とを備えている。
【0004】
キャンセル機構は、操作レバーの指示位置とは反対方向にキャンセルカムが回動されることに伴い、キャンセルカムに押圧されることでブラケットを中立位置に戻すように回動するラチェットと、ラチェットを保持した状態で、ラチェットとブラケットとの間に配置され、ラチェットの回動に応じて伸縮することによって元の位置に戻す力を作用させるバネ及びバネを収容するバネ収容部とを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1の車両用方向指示装置では、ラチェットとブラケットとの間にバネ及びバネ収容部を配置するため、車両用方向指示装置が大型化してしまうという課題がある。
【0007】
そこで、本開示は、小型化可能なレバースイッチを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様に係るレバースイッチは、中立位置を基準として左折指示位置と右折指示位置との間で操作レバーを回動させる回動体と、前記回動体に対して移動可能に設けられているラチェットと、前記ラチェットと前記回動体との間に配置される弾性体とを備え、前記ラチェットは、回動することで前記弾性体を介して前記回動体に接触するように設けられ、前記ラチェットは、前記操作レバーが前記中立位置から前記左折指示位置又は前記右折指示位置に配置された場合、回転するステアリングカムの回転軌跡上に配置され、前記回転軌跡上に配置された状態で、前記操作レバーが配置された前記左折指示位置又は前記右折指示位置が示す方向とは反対方向に前記ステアリングカムが操作された場合、前記ステアリングカムの回転による押圧力によって前記操作レバーを前記中立位置に回動させるためのキャンセル力を、前記弾性体を介して前記回動体に伝達し、前記キャンセル力には、第1キャンセル力と、前記第1キャンセル力よりも大きいキャンセル力である第2キャンセル力とが含まれ、前記弾性体は、前記ステアリングカムから前記弾性体に前記第1キャンセル力が加わった場合、前記第1キャンセル力を前記回動体に伝達し、前記ステアリングカムから前記弾性体に前記第2キャンセル力が加わった場合、前記第2キャンセル力によって弾性変形しながら移動する。
また、本開示の一態様に係るレバースイッチは、中立位置を基準として左折指示位置と右折指示位置との間で操作レバーを回動させる回動体と、前記回動体に対して移動可能に設けられているラチェットと、前記ラチェットと前記回動体との間に配置される弾性体とを備え、前記回動体は、一対の前記弾性体を取付け可能な一対の取付け部を有しており、前記ラチェットは、前記操作レバーが前記中立位置から前記左折指示位置又は前記右折指示位置に配置された場合、回転するステアリングカムの回転軌跡上に配置され、前記回転軌跡上に配置された状態で、前記操作レバーが配置された前記左折指示位置又は前記右折指示位置が示す方向とは反対方向に前記ステアリングカムが操作された場合、前記ステアリングカムの回転による押圧力によって前記操作レバーを前記中立位置に回動させるためのキャンセル力を、前記弾性体を介して前記回動体に伝達し、前記キャンセル力には、第1キャンセル力と、前記第1キャンセル力よりも大きいキャンセル力である第2キャンセル力とが含まれ、前記弾性体は、前記ステアリングカムから前記弾性体に前記第1キャンセル力が加わった場合、前記第1キャンセル力を前記回動体に伝達し、前記ステアリングカムから前記弾性体に前記第2キャンセル力が加わった場合、前記第2キャンセル力によって弾性変形しながら移動する。
【発明の効果】
【0009】
本開示のレバースイッチは、小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施の形態におけるレバースイッチが搭載された車両の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、実施の形態におけるレバースイッチの外観を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、実施の形態におけるレバースイッチを示す分解斜視図である。
【
図4A】
図4Aは、
図2のA-A線で切断した場合のレバースイッチを示す断面図である。
【
図4B】
図4Bは、
図2のB-B線で切断した場合のレバースイッチにおける操作部が中立位置に配置されている場合を示す断面図である。
【
図4C】
図4Cは、実施の形態におけるレバースイッチの回動体と喰い付きバネとを示す部分拡大図である。
【
図5A】
図5Aは、
図2のB-B線で切断した場合のレバースイッチにおける操作部が右折指示位置に配置されている場合に、ラチェットの当接凸部がステアリングカムの回転軌跡上に配置された場合を示す断面図である。
【
図5B】
図5Bは、
図2のB-B線で切断した場合のレバースイッチにおける操作部が右折指示位置に配置されている場合に、ラチェットの当接凸部がステアリングカムの回転軌跡上に配置された場合であり、ステアリングカムがさらに回動することでラチェットと当接した場合を示す断面図である。
【
図6A】
図6Aは、
図2のB-B線で切断した場合のレバースイッチにおける操作部が右折指示位置に配置されていたときに、車両の右折が完了し、ステアリングカムが左回転している場合を示す断面図である。
【
図6B】
図6Bは、
図2のB-B線で切断した場合のレバースイッチにおける操作部が右折指示位置に配置されていたときに、車両の右折が完了してステアリングカムが左回転し、かつ、操作部が操作された場合を示す断面図である。
【
図7A】
図7Aは、実施の形態の変形例におけるレバースイッチの回動体及び喰い付きバネとを示す部分拡大図である。
【
図7B】
図7Bは、実施の形態の変形例におけるレバースイッチの喰い付きバネがラチェットで押圧された場合を示す部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示の一態様に係るレバースイッチは、中立位置を基準として左折指示位置と右折指示位置との間で操作レバーを回動させる回動体と、前記回動体に対して移動可能に設けられているラチェットと、前記ラチェットと前記回動体との間に配置される弾性体とを備え、前記ラチェットは、前記操作レバーが前記中立位置から前記左折指示位置又は前記右折指示位置に配置された場合、回転するステアリングカムの回転軌跡上に配置され、前記回転軌跡上に配置された状態で、前記操作レバーが配置された前記左折指示位置又は前記右折指示位置が示す方向とは反対方向に前記ステアリングカムが操作された場合、前記ステアリングカムの回転による押圧力によって前記操作レバーを前記中立位置に回動させるためのキャンセル力を、前記弾性体を介して前記回動体に伝達し、前記キャンセル力には、第1キャンセル力と、前記第1キャンセル力よりも大きいキャンセル力である第2キャンセル力とが含まれ、前記弾性体は、前記ステアリングカムから前記弾性体に前記第1キャンセル力が加わった場合、前記第1キャンセル力を前記回動体に伝達し、前記ステアリングカムから前記弾性体に前記第2キャンセル力が加わった場合、前記第2キャンセル力によって弾性変形しながら移動する。
【0012】
これによれば、操作レバーが左折指示位置又は右折指示位置に配置されたときに、ステアリングカムを回転させた場合、ステアリングカムの回転による押圧力(第1キャンセル力)はラチェットを介して弾性体に伝達されるため、弾性体は、その押圧力を回動体に伝達することで、左折指示位置又は右折指示位置の操作レバーを中立位置に戻すことができる。
【0013】
また、操作レバーが左折指示位置又は右折指示位置に配置されたときに、ステアリングカムを回動させながら操作レバーが保持(喰い付き操作)された場合の回転による押圧力(第2キャンセル力)は、ラチェットを介して弾性体に伝達されるため、弾性体は、その押圧力によって弾性変形する。これにより、ラチェットは、弾性体を弾性変形させることで、自身が損傷しないように移動することができる。
【0014】
このように、ラチェットと回動体との間に弾性体を設けることで、弾性体は、操作レバーを左折指示位置又は右折指示位置から中立位置に戻す役割と、喰い付き操作時にラチェットが移動できるように弾性変形する役割とを備える。これにより、従来のレバースイッチにおけるバネ及びバネ収容部が不要となるため、バネ及びバネ収容部を設けるための空間を省くことができる。
【0015】
したがって、このレバースイッチは、小型化することができる。
【0016】
特に、本開示のレバースイッチでは、従来のレバースイッチのようなバネ及びバネ収容部の代わりに、本開示の弾性体を用いるだけで、従来のレバースイッチと同等の作用を実現することができるため、部品点数の増加と重量化とを抑制することもできる。部品点数の増加を抑制することで、レバースイッチの組付け工数の増大を抑制することができるため、レバースイッチにおける製造コストの高騰化を抑制することができる。
【0017】
本開示の一態様に係るレバースイッチにおいて、前記回動体は、一対の前記弾性体を取付け可能な一対の取付け部を有している。
【0018】
これによれば、操作レバーが左折指示位置及び右折指示位置のいずれの位置に配置されたときに、第2キャンセル力がラチェットに加わっても、弾性体が取付け部に支持されているため、ラチェットが弾性体を弾性変形させることができる。これにより、ラチェットが損傷しないように弾性体を弾性変形させながら移動することができる。
【0019】
本開示の一態様に係るレバースイッチにおいて、一対の前記取付け部のそれぞれは、前記弾性体を係止する係止部と、前記弾性体と当接することで前記弾性体を支持する取付け凹部とを有している。
【0020】
これによれば、係止部によって弾性体を回動体に支持することができるため、回動体に対して弾性体を所定の姿勢で保持することができる。また、弾性体は取付け凹部と当接しているだけであるため、弾性体の弾性変形を許容させることができるとともに、弾性変形した弾性体を取付け部に取付けた状態で維持し易くなる。
【0021】
本開示の一態様に係るレバースイッチにおいて、一対の前記弾性体のそれぞれは、前記係止部に係止される被係止部と、前記被係止部と連続している屈曲部と、前記屈曲部と連続し、前記取付け凹部と当接する当接部とを有している。
【0022】
これによれば、被係止部が係止部に係止されることで、弾性体を取付け部に支持することができる。また、ラチェットに加わった第2キャンセル力によって、弾性体が押圧されても、屈曲部が弾性変形しながら当接部が取付け凹部を摺動することができる。これにより、第2キャンセル力が加えられたラチェットの負荷を緩和することができるため、ラチェットの損傷をより抑制することができる。
【0023】
本開示の一態様に係るレバースイッチにおいて、前記当接部は、前記ステアリングカムから前記弾性体に前記第2キャンセル力が加わった場合、前記取付け凹部の底面を摺動する。
【0024】
これによれば、第2キャンセル力によって弾性体が弾性変形する際に、当接部が弾性体の接触面を摺動することができる。このため、第2キャンセル力が加えられたラチェットの負荷をより緩和することができるため、ラチェットの損傷をより抑制することができる。
【0025】
本開示の一態様に係るレバースイッチにおいて、前記取付け凹部は、第1凹部と、前記第1凹部からさらに窪んだ第2凹部とを有し、前記当接部は、前記ステアリングカムから前記弾性体に前記第2キャンセル力が加わった場合、前記第2凹部から前記第1凹部に乗り上がる。
【0026】
これによれば、ラチェットに加わった第2キャンセル力によって、弾性体が押圧されると、屈曲部の弾性変形に応じて当接部が第2凹部から第1凹部に乗り上がることができる。このため、第2キャンセル力が加えられたラチェットの負荷をより緩和することができるため、ラチェットの損傷をより抑制することができる。
【0027】
本開示の一態様に係るレバースイッチにおいて、前記弾性体は、前記ラチェットの移動軌跡上に配置されている。
【0028】
これによれば、第2キャンセル力がラチェットに加わった場合、ラチェットが弾性体を確実に押圧することができる。このため、第2キャンセル力が加えられたラチェットの負荷をより緩和することができるため、ラチェットの損傷をより確実に抑制することができる。
【0029】
本開示の一態様に係るレバースイッチにおいて、前記弾性体は、前記ラチェットの回転軸心と、前記回動体の回転軸心とを結ぶ直線状に存在しない。
【0030】
これによれば、ラチェットと回動体とをできるだけ近づけることができるため、結果的にラチェットと操作レバーとを近づけることができる。その結果、レバースイッチをより小型化することができる。
【0031】
本開示の一態様に係るレバースイッチにおいて、前記ステアリングカムから前記弾性体に前記第2キャンセル力が加わった場合、前記ラチェットは、前記ステアリングカムの回転軌跡上とならない位置に移動する。
【0032】
これによれば、第2キャンセル力がラチェットに加わっても、ステアリングカムの回転軌跡の外側に移動するため、ラチェットの損傷をより抑制することができる。
【0033】
本開示の一態様に係るレバースイッチにおいて、前記ラチェットの回転軸心と前記回動体の回転軸心とを結ぶ直線に沿う方向と、前記弾性体の接触面に沿う方向との角度は、前記第2キャンセル力によって前記弾性体が弾性変形する際に変化する。
【0034】
これによれば、弾性体が弾性変形することで、ラチェットに負荷が加わり難いように、ステアリングカムの回転軌跡の外側に逃がすことができる。このため、ラチェットの損傷をより抑制することができる。
【0035】
以下、実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0036】
なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本開示を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0037】
また、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。また、各図において、同じ構成部材については同じ符号を付している。また、以下の実施の形態において、略平行などの表現を用いている。例えば、略平行は、完全に平行であることを意味するだけでなく、実質的に平行である、すなわち、例えば数%程度の誤差を含むことも意味する。また、略平行は、本開示による効果を奏し得る範囲において平行という意味である。他の「略」を用いた表現についても同様である。
【0038】
(実施の形態)
図1は、実施の形態におけるレバースイッチ1が搭載された車両4の一例を示す図である。
【0039】
本実施の形態におけるレバースイッチ1は、
図1に示すように、例えば右ハンドルの車両4の運転席に搭載されたステアリングシャフト3に隣接して配置される。そして、レバースイッチ1は、運転者による車両4のステアリングホイール8の操舵、並びに操作レバー20の各操作を受け付ける。車両4は、例えば自動車、バス、トラック又はトラクター等である。
【0040】
図2は、本実施の形態におけるレバースイッチ1の外観を示す斜視図である。なお、本実施の形態では、レバースイッチ1の厚み方向をZ軸方向と称し、Z軸方向に垂直な2つの方向をX軸方向及びY軸方向と称する。X軸方向は、レバースイッチ1の奥行き方向(すなわち左右方向)であり、Y軸方向は、レバースイッチ1の幅方向(すなわち前後方向)であって、X軸方向に垂直である。
【0041】
ステアリングシャフト3は、円筒状又は円柱状であって、Z軸方向に延びた回転軸である。ステアリングシャフト3にはステアリングカム5が設けられ、ステアリングカム5の回転に連動してレバースイッチ1の操作レバー20を移動させる。
【0042】
ステアリングカム5は、レバースイッチ1のラチェット60を押圧することで、ラチェット60等を介して、左折指示位置又は右折指示位置に配置されているレバースイッチ1の操作レバー20を中立位置に戻すことができるキャンセルカムである。また、ステアリングカム5は、ステアリングシャフト3の回転に応じて回転する。また、ステアリングカム5は、ラチェット60の軸心と回動体30の軸心とを結ぶ直線上に位置するように配置されている。
【0043】
また、ステアリングカム5は、Z軸マイナス方向側の端部の一部が切り欠かれた切り欠き凹部である。本実施の形態では、ステアリングシャフト3には2つのステアリングカム5(切り欠き)が形成され、2つのステアリングカム5は、ステアリングカム5の回転中心に対して線対象に形成されている。ステアリングカム5は、ステアリングシャフト3に連動して回転することで、その回転に連動してレバースイッチ1の操作レバー20を移動させる。
【0044】
レバースイッチ1は、車両4の旋回方向(左折又は右折)を指示する装置であって、操作者によって方向指示操作が行われる。レバースイッチ1は、例えば、ステアリングシャフト3のX軸プラス方向側に取付けられ、車両4の操作者の右手で操作される。
【0045】
なお、レバースイッチ1は、例えば、ターンシグナルランプを点滅させるためのターンシグナルスイッチ、ヘッドランプ、スモールランプ及びテールランプを点灯させるためのライティングスイッチ、ヘッドランプをパッシング点灯させるためのパッシングスイッチ、並びに、ヘッドランプのハイビームとロービームとを切り替えるためのディマスイッチ等を有するコンビネーションスイッチレバーを搭載していてもよい。
【0046】
レバースイッチ1の具体的な構成について、
図3及
図4Aを用いて説明する。
図3は、実施の形態におけるレバースイッチ1を示す分解斜視図である。
図4Aは、
図2のA-A線で切断した場合のレバースイッチ1を示す断面図である。
【0047】
レバースイッチ1は、
図3及び
図4Aに示すように、操作レバー20と、回動体30と、アクチュエータ41と、第1ホルダ42と、第2ホルダ43と、基板44、本体ケース51と、カバーケース52と、スイッチカバー53と、節度板54と、ラチェット60と、板バネ69と、一対の喰い付きバネ70とを備えている。
【0048】
操作レバー20は、操作者の右手によって方向指示操作が行われるように、ステアリングシャフト3に対して右側に向かって延びている。操作レバー20は、絶縁性樹脂等で構成されている。
【0049】
操作レバー20は、操作部21と、駆動部22と、第1ばね23と、ローラ24とを有している。
【0050】
操作部21は、略円柱形状であり、ステアリングシャフト3に対して右側に向かって延びることで、操作者によって操作が行われるレバーである。操作部21は、操作者の操作によって、中立位置を基準として左折指示位置と右折指示位置との間で変位する。
【0051】
駆動部22は、X軸方向に沿って延びる棒状であって、操作部21のX軸マイナス方向側の端部からステアリングシャフト3側に向かって延びている。駆動部22は、略直方体形状の回動体30の挿入部30aに挿入されることで、回動体30と連結されている。駆動部22が回動体30に連結されることで、駆動部22に接続されている操作部21が回動体30からX軸プラス方向側(右側)へ延びた状態に配置される。
【0052】
駆動部22には、Y軸方向に沿って延びる一対の駆動軸部22aが設けられている。一対の駆動軸部22aにおいて、一方の駆動軸部22aは駆動部22のY軸プラス方向側の面(前面)から突出し、他方の駆動軸部22aは駆動部22のY軸マイナス方向側の面(後面)から突出している。一対の駆動軸部22aは、回動体30の挿入孔30bに挿入されて軸支されている。これにより、一対の駆動軸部22aが支点となることで、操作レバー20がY軸方向を中心軸としてZ軸方向に回動(揺動)可能となるように回動体30に保持されている。
【0053】
また、駆動部22のX軸マイナス方向側の端部には、駆動穴部25が形成されている。駆動穴部25は、駆動部22の端部から、X軸プラス方向に窪む凹部である。駆動穴部25には、X軸方向に沿って延びるコイル状の第1ばね23と、ローラ24とがこの順番で挿入されている。つまり、ローラ24は、第1ばね23に対してX軸マイナス方向側で、第1ばね23に当接した状態で配置されているため、第1ばね23によってX軸マイナス方向へ付勢され、回動体30に形成されている凹凸状の回動カム30dに当接している。これにより、操作レバー20が回動体30に対してZ軸方向に回動(左回転又は右回転)する際に、操作者に対して適切な操作性を実現することができる。
【0054】
また、駆動部22のX軸マイナス方向側の端部と一対の駆動軸部22aとの間には、アクチュエータ41が連結されている。また、アクチュエータ41には第1ホルダ42が連結され、アクチュエータ41は第1ホルダ42を介して基板44に接続されている。このため、操作レバー20の変位による駆動部22の回動が、アクチュエータ41及び第1ホルダ42を介して基板44に伝達される。基板44には第1固定接点44aが構成され、第1ホルダ42の第1可動接片42aの移動によって第1固定接点44aと電気的に接離することができる。このため、操作レバー20の回動に伴い操作部21が回動することで、第1ホルダ42がX軸方向に沿って摺動し、基板44の第1固定接点44aに第1ホルダ42の第1可動接片42aが電気的に接離する。この第1固定接点44aと第1可動接片42aとで構成される第1スイッチ接点部により電気回路が開閉されることで、ディマの信号が出力される。
【0055】
本体ケース51、カバーケース52及びスイッチカバー53は、レバースイッチ1における外殻を構成し、操作部21、回動体30、アクチュエータ41、第1ホルダ42、第2ホルダ43、基板44、節度板54、ラチェット60の一部、板バネ69、一対の喰い付きバネ70等を収容している。本体ケース51は、カバーケース52に対してZ軸プラス方向側に配置されている。
【0056】
本体ケース51、カバーケース52及びスイッチカバー53で構成される筐体のX軸プラス方向側の側面からは、回動体30に接続している操作部21がX軸プラス方向側に向かって延びている。また、当該筐体のX軸マイナス方向側の側面には、ラチェット60の一部を飛び出た状態で設けるための開口55が形成されている。
【0057】
スイッチカバー53は、板状の部材であり、X-Y平面に対して略平行に配置されている。スイッチカバー53は、当該筐体における本体ケース51の天板と、カバーケース52の底板との間に配置され、当該筐体内における本体ケース51側の空間と、カバーケース52側の空間とを仕切っている。
【0058】
また、スイッチカバー53には、第1ホルダ42及び第2ホルダ43の移動を案内する2つのガイド部53a、53bが形成されている。第1ホルダ42を案内するガイド部53aは、X軸方向に沿って延びる長孔であり、第2ホルダ43を案内するガイド部53bは、Y軸方向に沿って延びる長孔である。具体的には、ガイド部53aには第1ホルダ42のピンが挿入され、ガイド部53bには第2ホルダ43のピンが挿入されることで、第1ホルダ42がガイド部53aに案内され、第2ホルダ43がガイド部53bに案内される。
【0059】
スイッチカバー53と本体ケース51との間には、節度板54が設けられている。節度板54は、スイッチカバー53及び本体ケース51のX軸マイナス方向側の端部に配置され、本体ケース51とともに開口55を規定している。また、節度板54は、Z-Y平面に対して略平行となる姿勢でスイッチカバー53のX軸マイナス方向側の端部に取付けられている。具体的には、節度板54は、第2ばね81、摺動ピン82及び回動体30と対向する姿勢となるように、スイッチカバー53のX軸マイナス方向側の端部に取付けられている。また、節度板54には、回動体30の摺動ピン82と係合することで、回動体30の姿勢を支持するための複数の節度カム54aが形成されている。本実施の形態では、節度板54には、Y軸方向に沿って並ぶ2つの節度カム54aが形成されている。節度カム54aは、節度板54におけるX軸プラス方向側の面に形成され、X軸プラス方向側に突出する凸部である。
【0060】
スイッチカバー53及び本体ケース51には、回動体30が取付けられている。
【0061】
回動体30は、操作レバー20の駆動部22からラチェット60まで延びる長尺状の作動部材である。回動体30は、中立位置を基準として左折指示位置と右折指示位置との間で回動することで、操作レバー20を中立位置、左折指示位置及び右折指示位置のいずれかの状態で保持する。
【0062】
また、回動体30には、Z軸方向に沿って延びる一対の作動軸部31が設けられている。
【0063】
一対の作動軸部31において、一方の作動軸部31は回動体30のZ軸プラス方向側の面(上面)から上方向へ突出し、他方の作動軸部31は回動体30のZ軸プラス方向側の面(下面)から下方向へ突出している。一対の作動軸部31は、スイッチカバー53及び本体ケース51のそれぞれの係合穴53c、51aに挿入されて軸支されている。一対の作動軸部31が支点となることで、Z軸方向を中心軸としてY軸方向に回動可能となるようにスイッチカバー53及び本体ケース51に回動体30が保持されている。これにより、回動体30に接続される操作レバー20は、スイッチカバー53及び本体ケース51に対してY軸方向に回動可能になる。
【0064】
また、回動体30は、コイル状の第2ばね81と筒状の摺動ピン82とを有している。また、回動体30のX軸マイナス方向側の端部には、作動穴部32が形成されている。作動穴部32は、回動体30の当該端部から、X軸プラス方向に窪む凹部である。また、作動穴部32には、X軸方向に沿って延びる、第2ばね81と摺動ピン82とがこの順番で挿入されている。つまり、摺動ピン82は、筒状の内部空間に第2ばね81を配置した状態で、第2ばね81に対してX軸マイナス方向側に配置されているため、第2ばね81によってX軸マイナス方向へ付勢されることで、節度板54の節度カム54aと係合し、回動体30の姿勢を保持する。例えば、摺動ピン82は、節度板54のY軸マイナス方向側の節度カム54aに引っ掛かることで、回動体30の作動軸部31を中心として回動体30が右回転(時計回りに回動、右回りに回動)した位置(右折指示位置)で、回動体30を支持することができる。また、摺動ピン82は、節度板54のY軸プラス方向側の節度カム54aに引っ掛かることで、回動体30の作動軸部31を中心として回動体30が左回転(反時計回りに回動、左回りに回動)した位置(左折指示位置)で、回動体30を支持することができる。このように、第2ばね81及び摺動ピン82によって、回動体30に接続される操作レバー20が中立位置、左折指示位置及び右折指示位置のいずれかの状態で保持される。これにより、操作レバー20が回動体30に対してY軸方向に回動する際に、操作者に対して適切な操作性を実現することができる。
【0065】
また、回動体30は、一対の喰い付きバネ70を取付け可能な一対の取付け部34を有している。喰い付きバネ70の具体的な構成について、
図4B及び
図4Cを用いて説明する。
図4Bは、
図2のB-B線で切断した場合のレバースイッチ1における操作部21が中立位置に配置されている場合を示す断面図である。
図4Cは、実施の形態におけるレバースイッチ1の回動体30と喰い付きバネ70とを示す部分拡大図である。
【0066】
回動体30のX軸マイナス方向側の端部には、
図4B及び
図4Cに示すように、一対の喰い付きバネ70を一対一で取付けるための一対の取付け部34が形成されている。一対の取付け部34のうち、一方の取付け部34は回動体30のY軸プラス方向側に配置され、他方の取付け部34は回動体30のY軸マイナス方向側に配置されている。
【0067】
また、一対の取付け部34には、一対の喰い付きバネ70が一対一で取付けられている。一対の喰い付きバネ70のうちの、一方の喰い付きバネ70はY軸プラス方向側に配置されている一方の取付け部34に取付けられ、他方の喰い付きバネ70はY軸マイナス方向側に配置されている他方の取付け部34に取付けられている。一対の取付け部34は、一対の喰い付きバネ70を回動体30に支持する。
【0068】
具体的には、一対の取付け部34のそれぞれは、一対の喰い付きバネ70のそれぞれの一端である被係止部71を係止する係止部34aと、一対の喰い付きバネ70のそれぞれの他端である当接部73と当接することで当接部73を支持する取付け凹部34bとを有している。係止部34aには被係止部71が嵌められることで、係止部34aは被係止部71を支持している。また、取付け凹部34bは、当接部73が挿入される、第1凹部34b1と、第1凹部34b1の底面(Y軸方向側の面)からさらに窪んだ第2凹部34b2とで構成されている。つまり、第1凹部34b1と第2凹部34b2との間には、段部が形成されている。当接部73の段部は、後述するが、操作レバー20と指示方向と反対方向にステアリングカム5が操作され、喰い付きバネ70に対してステアリングカム5からラチェット60に第2キャンセル力が加わった場合、第2凹部34b2から第1凹部34b1に乗り上がることで、取付け凹部34bの底面(Y軸方向側の面)を摺動できる程度の高さに形成されている。
【0069】
また、
図3及び
図4Aに示すように、回動体30の作動穴部32よりもZ軸マイナス方向側の部分には、第2ホルダ43が連結されている。回動体30は、第2ホルダ43を介して基板44に接続されている。このため、操作レバー20の変位による駆動部22を介した回動体30の回動が、第2ホルダ43を介して基板44に伝達される。基板44には第2固定接点44bが構成され、第2ホルダ43の第2可動接片43aの移動によって第2固定接点44bと電気的に接離することができる。このため、操作レバー20の回動に伴い回動体30が回動することで、第2ホルダ43がY軸方向に沿って摺動し、基板44の第2固定接点44bに第2ホルダ43の第2可動接片43aが電気的に接離する。この第2固定接点44bと第2可動接片43aとで構成される第2スイッチ接点部により電気回路が開閉されることで、旋回方向指示の信号が出力される。
【0070】
また、回動体30には、
図3に示すように、ラチェット60を案内するための、X軸マイナス方向側の端部からX軸プラス方向へ突出する保持カム33が形成されている。保持カム33は、回動体30のガイド部30c内において形成された三角形状の凸部である。保持カム33は、Z軸方向に沿って見た場合に、V字状をなしている。保持カム33の頂点は、ガイド部30c内のY軸方向において中央部分に位置し、保持カム33は、中央部分からY軸プラス方向及びY軸マイナス方向に沿って湾曲した傾斜面が形成されている。
【0071】
ラチェット60は、
図3及び
図4Aに示すように、回動体30からステアリングカム5まで延びる長尺状の部材である。ラチェット60は、操作レバー20が中立位置から左折指示位置又は右折指示位置に配置された場合、回転するステアリングカム5の回転軌跡上に配置される。また、ラチェット60は、ステアリングカム5の回転軌跡上に配置された状態で、ステアリングカム5が回転した方向とは反対方向にステアリングシャフト3が操作された場合、ステアリングカム5の回転による押圧力によって、操作レバー20を中立位置に回動させるためのキャンセル力を、喰い付きバネ70を介して回動体30に伝達する。
【0072】
ここで、キャンセル力には、第1キャンセル力と、第1キャンセル力よりも大きいキャンセル力である第2キャンセル力とが含まれている。第1キャンセル力は、操作レバー20が中立位置から左折指示位置又は右折指示位置に配置された場合において、ステアリングカム5の回転による押圧力がラチェット60を介して回動体30に伝達される、通常のキャンセル力である。また、第2キャンセル力は、操作レバー20が中立位置から左折指示位置又は右折指示位置に配置された場合において、ステアリングカム5の回転による押圧力がラチェット60を介して回動体30に伝達されている際に、操作レバー20を左折指示位置又は右折指示位置に維持する操作がされたときに、ステアリングカム5の回転による押圧力がラチェット60を介して回動体30に伝達されるキャンセル力である。
【0073】
ラチェット60は、回動体30のX軸マイナス方向側の端部(後部)のZ軸プラス方向側の面(上面)に載置されている。また、ラチェット60は本体ケース51に覆われている。当該筐体の開口55からラチェット60の一部分である当接凸部63が飛び出ている。
【0074】
ラチェット60は、X軸方向に沿って延びる長い長円の平板形状の基部61と、基部61のX軸プラス方向側の端部から突出し、喰い付きバネ70を押圧することが可能な押圧凸部62と、基部61のX軸マイナス方向側の端部から突出し、ステアリングカム5と当接することが可能な当接凸部63とを有している。
【0075】
押圧凸部62は、略Y字形状であって、基部61のX軸プラス方向側の端部(前端)からY軸プラス方向側及びY軸マイナス方向側に突出する二又状をなしている。押圧凸部62は、X軸プラス方向側へ向かってY軸方向に幅が広がるように延びている。
【0076】
ラチェット60には、Z軸方向に沿って延びる一対の歯止軸部64が設けられている。一対の歯止軸部64において、一方の歯止軸部64はラチェット60のZ軸プラス方向側の面(上面)から上方向へ突出し、他方の歯止軸部64はラチェット60のZ軸マイナス方向側の面(下面)から下方向へ突出している。一対の歯止軸部64は、本体ケース51及び回動体30に形成された凹状のガイド部51b、30cに挿入されている。一方の歯止軸部64は、本体ケース51のガイド部51b内に配置され、ガイド部51b内を移動する。また、他方の歯止軸部64は、回動体30の保持カム33が形成されたガイド部30c内に配置され、ガイド部30c内を移動する。これにより、ラチェット60がX-Y平面において移動しても、一対の歯止軸部64がガイド部51b、30cと当接することで、X-Y平面におけるラチェット60の移動を抑制することができる。つまり、ラチェット60は、本体ケース51及び回動体30のガイド部51b、30c内で移動することができる。このため、ラチェット60は、本体ケース51及び回動体30に対してX-Y平面上での移動が可能であり、かつ、一対の歯止軸部64を中心にして、本体ケース51及び回動体30に対して回動可能となる。
【0077】
なお、ラチェット60の一対の歯止軸部64と本体ケース51及び回動体30との間にはグリースが塗布されていてもよい。これにより、本体ケース51及び回動体30とラチェット60との摺動摩擦を抑制することができる。
【0078】
また、ラチェット60の基部61のZ軸マイナス方向側の面には、板バネ69を取付けるための係合凹部65が形成されている。係合凹部65は、溝状であり、押圧凸部62と当接凸部63との間に形成され、ラチェット60のZ軸マイナス方向側の面から上方へ凹み、かつ、Y軸方向に沿って延びている。
【0079】
板バネ69は、ラチェット60の基部61からY軸プラス方向及びY軸マイナス方向に延びた長尺状をなしている。板バネ69の中央部分は、ラチェット60の係合凹部65に嵌め込まれている。また、板バネ69の両端は、節度板54に形成された一対の係止部54bに係止されることで固定されている。これにより、板バネ69は、ラチェット60の基部61からY軸プラス方向及びY軸マイナス方向に沿って延びたV字状に形成されることで、ラチェット60をX軸マイナス方向側に付勢している。
【0080】
基板44は、スイッチカバー53とカバーケース52との間に配置され、カバーケース52のZ軸プラス方向側の面に、X-Y平面と略平行となる姿勢で固定されている。
【0081】
基板44のZ軸プラス方向側の面には、第1ホルダ42の第1可動接片42aと電気的に接続される第1固定接点44aと、第2ホルダ43の第2可動接片43aと電気的に接続される第2固定接点44bとが形成されている。第1固定接点44aは、X軸方向に沿って長尺の端子であり、第2固定接点44bは、Y軸方向に沿って長尺の端子である。
【0082】
また、基板44は、外部接続用のリード線等と連結されているため、第1スイッチ接点部及び第2スイッチ接点部が車両4の電子回路に電気的に接続されている。このため、車両4の電子回路は、第1スイッチ接点部及び第2スイッチ接点部からの旋回方向指示及びディマの信号に応じて、所定の処理を実行することで、例えばターンシグナルランプ等のランプを点滅させたりすることができる。
【0083】
一対の喰い付きバネ70は、回動体30のX軸マイナス方向側の端部に形成された一対の取付け部34に取付けられている。一対の喰い付きバネ70は、回動体30に対して移動可能に設けられているラチェット60と回動体30との間に配置されている。また、一対の喰い付きバネ70は、ラチェット60の回転軸心と、回動体30の回転軸心とを結ぶ直線状に存在しない。具体的には、一対の喰い付きバネ70は、ラチェット60における一対の歯止軸部64の回転軸心と、回動体30における一対の作動軸部31の回転軸心とを結ぶ直線状に存在しない。このため、一対の歯止軸部64と一対の作動軸部31との間には、一対の喰い付きバネ70を配置するスペースを設けなくてもよくなるため、一対の歯止軸部64と一対の作動軸部31との距離を近づけることができる。
【0084】
また、一対の喰い付きバネ70は、ラチェット60の移動軌跡上に配置されている。このため、ラチェット60が移動した場合、一対の喰い付きバネ70は、第1キャンセル力でラチェット60の押圧凸部62に押圧されることで、当該押圧力を回動体30に伝達する。これにより、一対の喰い付きバネ70は、押圧凸部62からの押圧を伝達することによって回動体30を回動させたり、第2キャンセル力で回動体30が回動できないときに、押圧凸部62と取付け部34とで挟まれることで弾性変形したりする。つまり、喰い付きバネ70は、ステアリングカム5からラチェット60を介して喰い付きバネ70に第1キャンセル力が加わった場合、第1キャンセル力を回動体30に伝達することで、回動体30を回動させることがある。また、喰い付きバネ70は、ステアリングカム5からラチェット60を介して喰い付きバネ70に第2キャンセル力が加わった場合、第2キャンセル力によって弾性変形しながら、被係止部71を軸に移動する。なお、喰い付きバネ70の移動には、一部が弾性変形する場合、一部が弾性変形することで回動する場合も含む。
【0085】
一対の喰い付きバネ70のそれぞれは、U字状、C字状、L字状、V字状等をなしている。本実施の形態では、U字状の喰い付きバネ70を例示している。また、一対の喰い付きバネ70のそれぞれは、リン青銅、ベリリウム銅、ステンレス等の板バネ材等である。喰い付きバネ70は、弾性体の一例である。
【0086】
一対の喰い付きバネ70のそれぞれは、取付け部34の係止部34aに係止される被係止部71と、被係止部71と連続して(連結されて)いる屈曲部72と、屈曲部72と連続し、回動体30に当接する当接部73とを有している。被係止部71は、その一端が取付け部34に取付けられる。また、被係止部71は、その他端が屈曲部72の一端と接続されている。屈曲部72は、所定の角度で折れ曲がっており、例えばU字状、C字状、L字状、V字状等である。屈曲部72は、取付け部34に取付けられた被係止部71から遠ざかる方向に延び、被係止部71よりもX軸プラス方向側に配置されている。当接部73は、その一端が屈曲部72の他端と連続し、屈曲部72から取付け部34に近づくように延び、その他端が回動体30の取付け凹部34bの底面に当接している。当接部73は、その他端側の部分が湾曲した円弧状をなし、取付け凹部34bの底面に接するように取付け凹部34bに配置されている。当接部73は、ステアリングカム5から喰い付きバネ70に第2キャンセル力が加わった場合、喰い付きバネ70がラチェット60によって押圧されることで弾性変形し、取付け凹部34bの底面を摺動する。具体的には、当接部73は、第2キャンセル力に応じた力でラチェット60によって押圧されることで、第2凹部34b2から段部を介して第1凹部34b1に乗り上がることで、取付け凹部34bの底面を摺動する。つまり、当接部73のY軸方向の幅は、第1凹部34b1及び第2凹部34b2のなす段部の高さよりも大きいため、当接部73は、第1凹部34b1と第2凹部34b2との間を摺動可能である。なお、第2キャンセル力が解除されると、当接部73は、第1凹部34b1から第2凹部34b2に移動し、喰い付きバネ70は元の姿勢に戻る。
【0087】
<動作>
本実施の形態におけるレバースイッチ1の動作について説明する。以下では、操作者が車両4を右折させる場合を想定する。
【0088】
図4Bでは、操作レバー20が中立位置であり、回動体30もその長手方向がX軸方向に沿って配置された中立位置であり、ラチェット60もその長手方向がX軸方向に沿って配置された中立位置である。また、
図5Aは、
図2のB-B線で切断した場合のレバースイッチ1における操作部21が右折指示位置に配置されている場合に、ラチェット60の当接凸部63がステアリングカム5の回転軌跡上に配置された場合を示す断面図である。
図5Bは、
図2のB-B線で切断した場合のレバースイッチ1における操作部21が右折指示位置に配置されている場合に、ラチェット60の当接凸部63がステアリングカム5の回転軌跡上に配置された場合であり、ステアリングカム5がさらに回動することでラチェット60と当接した場合を示す断面図である。なお、
図5A及び
図5Bでは、ステアリングカム5の回転位置が判断できるように、ステアリングカム5をステアリングカム5a、5bとして示す。また、後述する
図6A及び
図6Bについても同様である。
【0089】
[中立位置から右折指示位置]
まず、
図4B及び
図5Aに示すように、操作者は、レバースイッチ1の操作レバー20を操作して中立位置からY軸プラス方向に回動(右回転又は時計回りに回転)させることで、操作レバー20を右折指示位置に変位させる。すると、操作レバー20に連結されている回動体30は、中立位置から、回動体30の作動軸部31を中心として右回転する。回動体30は、所定角度だけ右回転し、回動体30の第2ばね81によってX軸マイナス方向側に押し出された摺動ピン82が節度板54のY軸マイナス方向側の節度カム54aと係合することで、右折指示位置で支持される。このとき、ラチェット60は、長手方向がX軸方向に沿って配置された中立位置のままである。
【0090】
次に、
図5Aに示すように、操作者がステアリングホイール8を右回転(時計回りに回転)させると、ステアリングシャフト3とともにステアリングカム5a、5bが右回転する。このとき、板バネ69の付勢力によって、ラチェット60の歯止軸部64が回動体30の保持カム33の傾斜面に沿って頂点からY軸プラス方向側へ移動する。これにより、ラチェット60の当接凸部63は、ステアリングカム5a、5bの回動軌道内に侵入することで、ステアリングカム5a、5bと当接可能位置に配置される。これらの場合、回動体30の回動に伴って、第2ホルダ43がY軸方向に沿って摺動する。これにより、第2スイッチ接点部の電気的な接離が行われることで、旋回方向指示の信号として車両4の電子回路に出力されるため、右側のターンシグナルランプが点滅する。さらに、
図5Bに示すように、ステアリングカム5a、5bが右回転した場合、ステアリングカム5aがラチェット60の当接凸部63を押圧することで、ラチェット60の押圧凸部62が一方の喰い付きバネ70から離れるように、ラチェット60が左回転(Y軸プラス方向に回動又は反時計回りに回転)する。このため、回動体30は回動しない。
【0091】
次に、
図5B及び
図6Aに示すように、操作者が車両4を右折させるためにステアリングホイール8を右回転させる操作をした後に、ステアリングホイール8を左回転させて、ステアリングホイール8を元の姿勢に戻す。
図6Aは、
図2のB-B線で切断した場合のレバースイッチ1における操作部21が右折指示位置に配置されていたときに、車両4の右折が完了し、ステアリングカム5a、5bが左回転している場合を示す断面図である。
【0092】
これにより、ステアリングホイール8に連動してステアリングカム5a、5bが左回転して、ステアリングカム5aの回動軌道内にあるラチェット60の当接凸部63を押圧することで、ラチェット60が右回転(Y軸マイナス方向に回動又は時計回りに回動)し、ラチェット60の押圧凸部62が一方の喰い付きバネ70をY軸プラス方向に押圧する。このため、一方の喰い付きバネ70が押圧されることによって、回動体30が作動軸部31を中心として左回転することで、
図4Bに示すように、右折指示位置から中立位置に復帰する。このとき、回動体30に接続する操作レバー20もY軸マイナス方向に回動することで、右折指示位置から中立位置に復帰する。また、ラチェット60も長手方向がX軸方向に沿って配置された中立位置に復帰する。
【0093】
[中立位置から左折指示位置]
操作レバー20が中立位置から左折指示位置に変位してから、中立位置に復帰するときの動作について説明する。なお、
図5A~
図6Aにおけるステアリングカム5a、5b、回動体30、ラチェット60及び喰い付きバネ70等の位置及び回転を左右逆転させたものと同様であるため、図示を省略する。
【0094】
まず、操作者は、レバースイッチ1の操作レバー20を中立位置からY軸マイナス方向に回動(左回転又は反時計回りに回転)させることで、操作レバー20を左折指示位置に変位させる。すると、操作レバー20に連結されている回動体30は、中立位置から、回動体30の作動軸部31を中心として左回転する。回動体30は、所定角度だけ左回転し、回動体30の第2ばね81によってX軸マイナス方向側に押し出された摺動ピン82が節度板54のY軸プラス方向側の節度カム54aと係合することで、左折指示位置で支持される。また、ラチェット60は、長手方向がX軸方向に沿って配置された中立位置のままである。
【0095】
次に、操作者がステアリングホイール8を左回転させると、ステアリングシャフト3とともにステアリングカム5a、5bが左回転する。このとき、板バネ69の付勢力によって、ラチェット60の歯止軸部64が回動体30の保持カム33の傾斜面に沿って頂点からY軸マイナス方向側へ移動する。これにより、ラチェット60の当接凸部63は、ステアリングカム5a、5bの回動軌道内に侵入することで、ステアリングカム5a、5bと当接可能位置に配置される。これらの場合、回動体30の回動に伴って、第2ホルダ43がY軸方向に沿って摺動する。これにより、第2スイッチ接点部の電気的な接離が行われることで、旋回方向指示の信号として車両4の電子回路に出力されるため、左側のターンシグナルランプが点滅する。さらに、ステアリングカム5a、5bが左回転した場合、ステアリングカム5bがラチェット60の当接凸部63を押圧することで、ラチェット60の押圧凸部62が他方の喰い付きバネ70から離れるように、ラチェット60が右回転する。このため、回動体30は回動しない。
【0096】
次に、操作者が車両4を左折させるためにステアリングホイール8を左回転させる操作をした後に、ステアリングホイール8を右回転させて、ステアリングホイール8を元の姿勢に戻す。これにより、ステアリングホイール8に連動してステアリングカム5a、5bが右回転して、ステアリングカム5a、5bの回動軌道内にあるラチェット60の当接凸部63を押圧することで、ラチェット60が左回転し、ラチェット60の押圧凸部62が他方の喰い付きバネ70をY軸マイナス方向に押圧する。このため、他方の喰い付きバネ70が押圧されることによって、回動体30が作動軸部31を中心として右回転することで、左折指示位置から中立位置に復帰する。これにより、回動体30に接続する操作レバー20もY軸プラス方向に回動することで、左折指示位置から中立位置に復帰する。また、ラチェット60も長手方向がX軸方向に沿って配置された中立位置に復帰する。
【0097】
[喰い付き操作時]
ここでは、操作者が車両4を右折又は左折させるためにステアリングホイール8を右回転又は左回転の操作をした後に、ステアリングホイール8を左回転又は右回転させてステアリングホイール8を元に戻すときに、レバースイッチ1の操作レバー20を操作(喰い付き操作)した場合について説明する。
【0098】
ここでは、一例として、
図6B及び
図6Cに示すように、操作者が車両4を右折させるためにステアリングホイール8を右回転させる操作をした後に、ステアリングホイール8を左回転させてステアリングホイール8を元に戻すときに、喰い付き操作をした場合について説明する。
図6Bは、
図2のB-B線で切断した場合のレバースイッチ1における操作部21が右折指示位置に配置されていた場合、車両4が右折してステアリングカム5が左回転しているときに、操作部21が操作された場合を示す断面図である。
図6Cは、
図6Bの喰い付きバネ70を示す部分拡大図である。
図6Cでは、喰い付きバネ70が弾性変形していない場合を二点鎖線で示し、喰い付きバネ70が弾性変形したときを実線で示す。
【0099】
ステアリングホイール8に連動してステアリングカム5が左回転して、ステアリングカム5の回動軌道内にあるラチェット60の当接凸部63をステアリングカム5が押圧することで、ラチェット60が右回転し、ラチェット60の押圧凸部62が一方の喰い付きバネ70をY軸プラス方向に押圧する。このとき、喰い付き操作時では、右折指示位置から中立位置へ変位できないように操作レバー20が固定(保持)されている。このため、操作レバー20が中立位置に戻れず、ラチェット60がステアリングカム5の回転軌跡内に存在したままとなる。この状態で、さらにステアリングカム5が左回転しようとすると、ラチェット60が一方の喰い付きバネ70をより強く押圧することとなる。具体的には、ステアリングカム5の回転によってラチェット60の当接凸部63が押圧されることで、ラチェット60の押圧凸部62が一方の喰い付きバネ70をより強く押圧することになる。これにより、ステアリングカム5の回転による押圧力が、ラチェット60を介して一方の喰い付きバネ70に伝達される。すると、一方の喰い付きバネ70の当接部73が第2凹部34b2から第1凹部34b1に乗り上がることで、取付け凹部34bの底面を摺動し、ラチェット60との接触面(一方の喰い付きバネ70の接触面72a)が傾斜することで、ラチェットがX軸プラス方向に移動する。このとき、喰い付きバネ70が被係止部71を支点として倒れ込むことで、ラチェットがX軸プラス方向側に移動可能となる。その結果、ラチェット60は、ステアリングカム5の回動軌道から外れる。つまり、ラチェット60は、ステアリングカム5の回転軌跡上とならない位置に移動する。このとき、喰い付き操作時におけるラチェット60と喰い付きバネ70との関係は、ラチェット60の回転軸心と回動体30の回転軸心とを結ぶ直線に沿う方向V1と、喰い付きバネ70の接触面72aに沿う方向V2との角度θは、第2キャンセル力によって喰い付きバネ70が弾性変形する際に変化する。
【0100】
このように、喰い付き操作時においては、ステアリングカム5にラチェット60が押圧されても、ラチェット60が喰い付きバネ70を弾性変形させながらX軸プラス方向に移動することができる。
【0101】
なお、ステアリングカム5の回転が続き、ステアリングカム5a、5bがラチェット60のX軸マイナス方向に位置しなくなった場合に、ラチェット60は、再びステアリングカム5の回転軌跡上に移動する。そして、操作者が喰い付き操作を止めた場合、
図6Aと同様に、当接凸部63が押圧されることで、ラチェット60が右回転し、ラチェット60の押圧凸部62が一方の喰い付きバネ70をY軸プラス方向に押圧する。そして、一方の喰い付きバネ70に対する押圧によって、回動体30が作動軸部31を中心として左回転することで、
図4Bに示すように、右折指示位置から中立位置に復帰する。このとき、回動体30に接続する操作レバー20もY軸マイナス方向に回動することで、右折指示位置から中立位置に復帰する。また、ラチェット60も長手方向がX軸方向に沿って配置された中立位置に復帰する。
【0102】
なお、操作者が車両4を左折させるためにステアリングホイール8を左回転させる操作をした後に、ステアリングホイール8を右回転させたときに、喰い付き操作をした場合についても上述におけるステアリングカム5、回動体30、ラチェット60及び喰い付きバネ70等の位置及び回転を左右逆転させたものと同様であるため、説明を省略する。
【0103】
<作用効果>
以上のように、本実施の形態におけるレバースイッチ1は、中立位置を基準として左折指示位置と右折指示位置との間で操作レバー20を回動させる回動体30と、回動体30に対して移動可能に設けられているラチェット60と、ラチェット60と回動体30との間に配置される喰い付きバネ70とを備え、ラチェット60は、操作レバー20が中立位置から左折指示位置又は右折指示位置に配置された場合、回転するステアリングカム5の回転軌跡上に配置され、回転軌跡上に配置された状態で、操作レバー20が配置された左折指示位置又は右折指示位置が示す方向とは反対方向にステアリングカム5が操作された場合、ステアリングカム5の回転による押圧力によって操作レバー20を中立位置に回動させるためのキャンセル力を、喰い付きバネ70を介して回動体30に伝達し、キャンセル力には、第1キャンセル力と、第1キャンセル力よりも大きいキャンセル力である第2キャンセル力とが含まれ、喰い付きバネ70は、ステアリングカム5から喰い付きバネ70に第1キャンセル力が加わった場合、第1キャンセル力を回動体30に伝達し、ステアリングカム5から喰い付きバネ70に第2キャンセル力が加わった場合、第2キャンセル力によって弾性変形しながら移動する。
【0104】
これによれば、操作レバー20が左折指示位置又は右折指示位置に配置されたときに、ステアリングカム5を回動させた場合、ステアリングカム5の回転による押圧力(第1キャンセル力)はラチェット60を介して喰い付きバネ70に伝達されるため、喰い付きバネ70は、その押圧力を回動体30に伝達することで、左折指示位置又は右折指示位置の操作レバー20を中立位置に戻すことができる。
【0105】
また、操作レバー20が左折指示位置又は右折指示位置に配置されたときに、ステアリングカム5を回動させながら操作レバー20が保持(喰い付き操作)された場合の回転による押圧力(第2キャンセル力)は、ラチェット60を介して喰い付きバネ70に伝達されるため、喰い付きバネ70は、その押圧力によって弾性変形する。これにより、ラチェット60は、喰い付きバネ70を弾性変形させることで、自身が損傷しないように移動することができる。
【0106】
このように、ラチェット60と回動体30との間に喰い付きバネ70を設けることで、喰い付きバネ70は、操作レバー20を左折指示位置又は右折指示位置から中立位置に戻す役割と、喰い付き操作時にラチェット60が移動できるように弾性変形する役割とを備える。これにより、従来のレバースイッチにおけるバネ及びバネ収容部が不要となるためバネ及びバネ収容部を設けるための空間を省くことができる。
【0107】
したがって、このレバースイッチ1は、小型化することができる。
【0108】
特に、本実施の形態のレバースイッチ1では、従来のレバースイッチのようなバネ及びバネ収容部の代わりに、本実施の形態の喰い付きバネ70を用いるだけで、従来のレバースイッチと同等の作用を実現することができるため、部品点数の増加と重量化とを抑制することもできる。また、部品点数の増加を抑制することで、レバースイッチ1の組付け工数の増大を抑制することができるため、レバースイッチ1における製造コストの高騰化を抑制することができる。
【0109】
本実施の形態におけるレバースイッチ1において、回動体30は、一対の喰い付きバネ70を取付け可能な一対の取付け部34を有している。
【0110】
これによれば、操作レバー20が左折指示位置及び右折指示位置のいずれの位置に配置されたときに、第2キャンセル力がラチェット60に加わっても、喰い付きバネ70が取付け部34に支持されているため、ラチェット60が喰い付きバネ70を弾性変形させることができる。これにより、ラチェット60が損傷しないように喰い付きバネ70を弾性変形させながら移動することができる。
【0111】
本実施の形態におけるレバースイッチ1において、一対の取付け部34のそれぞれは、喰い付きバネ70を係止する係止部34aと、喰い付きバネ70と当接することで喰い付きバネ70を支持する取付け凹部34bとを有している。
【0112】
これによれば、係止部34aによって喰い付きバネ70を回動体30に支持することができるため、回動体30に対して喰い付きバネ70を所定の姿勢で保持することができる。また、喰い付きバネ70は取付け凹部34bと当接しているだけであるため、喰い付きバネ70の弾性変形を許容させることができるとともに、弾性変形した喰い付きバネ70を取付け部34に取付けた状態で維持し易くなる。
【0113】
本実施の形態におけるレバースイッチ1において、一対の喰い付きバネ70のそれぞれは、係止部34aに係止される被係止部71と、被係止部71と連続している屈曲部72と、屈曲部72と連続し、取付け凹部34bと当接する当接部73とを有している。
【0114】
これによれば、被係止部71が係止部34aに係止されることで、喰い付きバネ70を取付け部34に支持することができる。また、ラチェット60に加わった第2キャンセル力によって、喰い付きバネ70が押圧されても、屈曲部72が弾性変形しながら当接部73が取付け凹部34bを摺動することができる。これにより、第2キャンセル力が加えられたラチェット60の負荷を緩和することができるため、ラチェット60の損傷をより抑制することができる。
【0115】
本実施の形態におけるレバースイッチ1において、当接部73は、ステアリングカム5から喰い付きバネ70に第2キャンセル力が加わった場合、取付け凹部34bの底面を摺動する。
【0116】
これによれば、第2キャンセル力によって喰い付きバネ70が弾性変形する際に、当接部73が喰い付きバネ70の接触面72aを摺動することができる。このため、第2キャンセル力が加えられたラチェット60の負荷をより緩和することができるため、ラチェット60の損傷をより抑制することができる。
【0117】
本実施の形態におけるレバースイッチ1において、取付け凹部34bは、第1凹部34b1と、第1凹部34b1からさらに窪んだ第2凹部34b2とを有する。そして、当接部73は、ステアリングカム5から喰い付きバネ70に第2キャンセル力が加わった場合、第2凹部34b2から第1凹部34b1に乗り上がる。
【0118】
これによれば、ラチェット60に加わった第2キャンセル力によって、喰い付きバネ70が押圧されると、屈曲部72の弾性変形に応じて当接部73が第2凹部34b2から第1凹部34b1に乗り上がることができる。このため、第2キャンセル力が加えられたラチェット60の負荷をより緩和することができるため、ラチェット60の損傷をより抑制することができる。
【0119】
本実施の形態におけるレバースイッチ1において、喰い付きバネ70は、ラチェット60の移動軌跡上に配置されている。
【0120】
これによれば、第2キャンセル力がラチェット60に加わった場合、ラチェット60が喰い付きバネ70を確実に押圧することができる。このため、第2キャンセル力が加えられたラチェット60の負荷をより緩和することができるため、ラチェット60の損傷をより確実に抑制することができる。
【0121】
本実施の形態におけるレバースイッチ1において、喰い付きバネ70は、ラチェット60の回転軸心(一対の歯止軸部64の回転軸心)と、回動体30の回転軸心(一対の作動軸部31の回転軸心)とを結ぶ直線状に存在しない。
【0122】
これによれば、ラチェット60と回動体30とをできるだけ近づけることができるため、結果的にラチェット60と操作レバー20とを近づけることができる。その結果、レバースイッチ1をより小型化することができる。
【0123】
本実施の形態におけるレバースイッチ1において、ステアリングカム5から喰い付きバネ70に第2キャンセル力が加わった場合、ラチェット60は、ステアリングカム5の回転軌跡上とならない位置に移動する。
【0124】
これによれば、第2キャンセル力がラチェット60に加わっても、ステアリングカム5の回転軌跡の外側に移動するため、ラチェット60の損傷をより抑制することができる。
【0125】
本実施の形態におけるレバースイッチ1において、ラチェット60の回転軸心と回動体30の回転軸心とを結ぶ直線に沿う方向V1と、喰い付きバネ70の接触面72aに沿う方向V2との角度θは、第2キャンセル力によって喰い付きバネ70が弾性変形する際に変化する。
【0126】
これによれば、喰い付きバネ70が弾性変形することで、ラチェット60に負荷が加わり難いように、ステアリングカム5の回転軌跡の外側に逃がすことができる。このため、ラチェット60の損傷をより抑制することができる。
【0127】
(実施の形態の変形例)
以下では、
図7A及び
図7Bに示すように、本変形例におけるレバースイッチ1の基本的な構成は、実施の形態のレバースイッチと基本的な構成と同様であるため、本変形例におけるレバースイッチ1の基本的な構成について適宜説明を省略する。本変形例では、喰い付きバネ70aの形状及び取付け部34の第2凹部34b2の位置が異なっている点で実施の形態と相違する。
図7Aは、実施の形態の変形例におけるレバースイッチ1の回動体30及び喰い付きバネ70aとを示す部分拡大図である。
図7Bは、実施の形態の変形例におけるレバースイッチ1の喰い付きバネ70aがラチェット60で押圧された場合を示す部分拡大図である。
【0128】
図7A及び
図7Bでは、一方の喰い付きバネ70aを示しているが、他方の喰い付きバネ70aについても、同様の構成であるため、一対の喰い付きばね70aと称することがある。本変形例では、L字状の喰い付きバネ70aを例示している。
【0129】
回動体30の取付け部34における取付け凹部34bは、第1凹部34b1と、第1凹部34b1の側面(第1凹部34b1のX軸プラス方向側の面)に形成された第2凹部34b2とを有している。また、取付け凹部34bには、第2凹部34b2から第1凹部34b1に跨って傾斜する傾斜面34b3が、回動体30のY軸方向における測面に形成されている。
【0130】
一対の喰い付きバネ70aのそれぞれの屈曲部72は、所定の角度で折れ曲がったL字状である。また、一対の喰い付きバネ70aのそれぞれの当接部73は、第2凹部34b2に挿入された状態で配置され、第2凹部34b2と当接している。例えば喰い付きバネ70aに対して第2キャンセル力に応じた力が加わった場合、当接部73が第2凹部34b2から傾斜面34b3に乗り上げ、傾斜面34b3に沿って摺動する。つまり、喰い付きバネ70aは、当接部73の円弧状の面が傾斜面34b3と接する状態で、取付けられているため、ラチェット60に加わった第2キャンセル力によって、喰い付きバネ70aが押圧されると、喰い付きバネ70aが弾性変形することで、当接部73が傾斜面34b3を摺動する。喰い付きバネ70aが弾性変形に伴い、喰い付きバネ70aの接触面72aをラチェット60の押圧凸部62が摺動する。
【0131】
本変形例においても実施の形態と同様の作用効果を奏する。
【0132】
(その他の変形例)
以上、本開示に係るレバースイッチについて、上記各実施の形態に基づいて説明したが、本開示は、これらの実施の形態に限定されるものではない。本開示の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思い付く各種変形を実施の形態に施したものも、本開示の範囲内に含まれてもよい。
【0133】
例えば、上記実施の形態では、取付け凹部34bは、第1凹部34b1と、第1凹部34b1からさらに窪んだ第2凹部34b2とを有することを説明したが、取付け凹部34bは、第2凹部34b2のみを有する構成であってもよい。例えば、平らな面に第2凹部34b2(取付け凹部34b)が形成され、ステアリングカム5から喰い付きバネ70に第2キャンセル力が加わった場合、当接部73が第2凹部34b2から平らな面に乗りあがる構成であってもよい。言い換えると、取付け凹部34bが、第1凹部34b1と、第2凹部34b2とを有する場合に、第1凹部34b1は、平らな面等の凹部以外の形状であってもよい。
【0134】
なお、上記の各実施の形態に対して当業者が思い付く各種変形を施して得られる形態や、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で各実施の形態における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本開示に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0135】
本開示のレバースイッチは、例えば、車両の入力装置等に適用可能である。
【符号の説明】
【0136】
1 レバースイッチ
5、5a、5b ステアリングカム
20 操作レバー
30 回動体
34 取付け部
34a 係止部
34b 取付け凹部
34b1 第1凹部
34b2 第2凹部
60 ラチェット
70、70a 喰い付きバネ(弾性体)
71 被係止部
72 屈曲部
72a 接触面
73 当接部