(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】少なくとも1つのポリマーとリチウムイオン伝導性粒子とを含むリチウムイオン伝導性複合材料、および前記複合材料からのリチウムイオン伝導体の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01B 5/16 20060101AFI20241016BHJP
H01B 1/06 20060101ALI20241016BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20241016BHJP
C08L 71/02 20060101ALI20241016BHJP
C08L 29/14 20060101ALI20241016BHJP
C08K 5/42 20060101ALI20241016BHJP
C08K 5/521 20060101ALI20241016BHJP
C08K 5/05 20060101ALI20241016BHJP
C08K 3/10 20180101ALI20241016BHJP
C01D 15/00 20060101ALI20241016BHJP
C01G 25/00 20060101ALI20241016BHJP
C04B 35/50 20060101ALI20241016BHJP
C04B 35/447 20060101ALI20241016BHJP
C04B 35/486 20060101ALI20241016BHJP
C03B 19/06 20060101ALI20241016BHJP
H01M 10/056 20100101ALN20241016BHJP
H01M 4/62 20060101ALN20241016BHJP
H01M 12/08 20060101ALN20241016BHJP
【FI】
H01B5/16
H01B1/06 A
C08L101/00
C08L71/02
C08L29/14
C08K5/42
C08K5/521
C08K5/05
C08K3/10
C01D15/00
C01G25/00
C04B35/50
C04B35/447
C04B35/486
C03B19/06 D
H01M10/056
H01M4/62 Z
H01M12/08 K
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018226845
(22)【出願日】2018-12-03
【審査請求日】2021-09-21
(31)【優先権主張番号】10 2017 128 719.1
(32)【優先日】2017-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】504299782
【氏名又は名称】ショット アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】SCHOTT AG
【住所又は居所原語表記】Hattenbergstr. 10, 55122 Mainz, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】イェアク シューマッハー
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ トライス
(72)【発明者】
【氏名】ヨヘン ドレヴケ
(72)【発明者】
【氏名】ハンス-ヨアヒム シュミット
(72)【発明者】
【氏名】ロルフ ザムジンガー
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ロータース
(72)【発明者】
【氏名】マイケ シュナイダー
(72)【発明者】
【氏名】イヴォンヌ メンケ-ベアク
【審査官】神田 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-157084(JP,A)
【文献】国際公開第2016/210371(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/198626(WO,A1)
【文献】特開2017-216066(JP,A)
【文献】国際公開第2016/017714(WO,A1)
【文献】特開平11-016574(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 5/16
H01B 1/06
C08L 101/00
C08L 71/02
C08L 29/14
C08K 5/42
C08K 5/521
C08K 5/05
C08K 3/10
C01D 15/00
C01G 25/00
C04B 35/50
C04B 35/447
C04B 35/486
C03B 19/06
H01M 10/056
H01M 4/62
H01M 12/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのポリマーとリチウムイオン伝導性粒子とを含むリチウムイオン伝導性複合材料であって、
前記粒子が少なくとも0.7の球形度Ψを有し、且
つ
前記複合材料は、粒径分布の多分散度指数PIが1.2を上回り、且つ少なくとも40体積%の前記粒子を含有し、
前記粒子は、平均粒径0.2μm~2μmを有し、且つ前記多分散度指数PIは、
PI=log(d
90/d
10)
によって計算されることを特徴とする、
前記リチウムイオン伝導性複合材料。
【請求項2】
前記ポリマーが、以下の化合物:
・ ポリエチレンオキシド、
・ ポリエチレンオキシドの誘導体、
・ ポリビニルブチラール
の少なくとも1つを含むことを特徴とする、請求項1に記載のリチウムイオン伝導性複合材料。
【請求項3】
前記ポリマーが、少なくとも1つのリチウムイオン伝導性化合物を含有することを特徴とする、請求項1または2に記載のリチウムイオン伝導性複合材料。
【請求項4】
前記粒子が、以下のリチウムイオン伝導性化合物:
・ リチウムランタンジルコネート(LLZO)、
・ リチウムアルミニウムチタンホスフェート(LATP)、
・ ガーネット型結晶構造を有する化合物、
・ NaSIConと同形の結晶構造を有する化合物
の少なくとも1つからなることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載のリチウムイオン伝導性複合材料。
【請求項5】
前記ポリマーと前記粒子との間の、リチウムイオン伝導性についての界面抵抗が、前記粒子の表面改質に基づき低減されていることにより、リチウムイオン伝導性が、前記ポリマーと前記粒子との間の界面抵抗が低減されていない比較可能な複合材料の場合よりも高いことを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載のリチウムイオン伝導性複合材料。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか1項に記載のリチウムイオン伝導性複合材料の製造方法であって、前記粒子が、噴霧か焼、または溶融塩からのフィラメント化、または液滴化、またはガラス球製造を用いて製造されることを特徴とする、前記方法。
【請求項7】
リチウムイオン伝導体の製造方法であって、請求項1から5までのいずれか1項に記載の複合材料を、高められた温度および/または高められた圧力の作用下で焼結することを特徴とする、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つのポリマーとリチウムイオン伝導性粒子とを含むリチウムイオン伝導性複合材料、および前記複合材料からのリチウムイオン伝導体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、リチウムイオン電池およびリチウム電池は、殊にエネルギー密度が高いこと、メモリ効果がないこと、並びに電圧の降下が非常に遅いことに基づき、殊に電子素子のために、または電気自動車の分野においてますます重要となってきている。リチウムイオン電池およびリチウム電池は一般に、上記の分野のための蓄電池媒体として使用される再充電可能な電池タイプの系列である(二次電池タイプとも称される)。
【0003】
リチウムイオン電池もしくはリチウム電池は、基本的に3つの主構造単位、つまり、アノード(負電極)、カソード(正電極)並びにその両電極間に配置され、稼働(充電または放電)中にリチウムイオンの移動をもたらす非水電解質からなる。リチウムイオン電池の場合、アノードは通常、グラファイトに基づき、リチウムイオンは充電の際にそこに挿入され、放電の際にそこから脱離される。これに対し、リチウム電池の場合、元素リチウムがアノードとして使用される。
【0004】
現在のところ、市販のリチウムイオン電池において、リチウム塩が有機溶剤中で溶解されている電解質が主に使用される。ただし、これらのリチウムイオン電池は、誤った使用または過度の負荷の際に自己破壊し、極端な場合には発火しかねないという欠点を有する。
【0005】
これらの問題を解決するために、近年、殊にいわゆるリチウム固体電池が研究されており、それは有機に基づく液体の電解質マトリックスが、やはりリチウムイオン伝導性の固体で置き換えられている。その際、固体電解質は電池システム中で一般に種々の位置で使用されることができ、一方ではセパレータとして、電極間に導入されて不所望の短絡から保護し、そのことによりシステム全体の機能性を保証する純粋な固体電解質の使用が考えられる。このために、固体電解質を、一方または両方の電極上の層として施与して、または自立式の膜としてのいずれかで、電池に組み込むことができる。他方で、電極活物質と配合することが考えられる。この場合、固体電解質は、電池が放電または充電されているかに依存して、関連する電荷担体(リチウムイオンおよび電子)が電極材料へ、および伝導性電極へ、向かうもしくはそこから離れる輸送をもたらす。
【0006】
原理的に、固体電解質は、ポリマー電解質もしくは多価電解質であってよい。前者の場合、液体電解質と類似して、リチウム系の支持塩は固体のポリマーマトリックス中で溶解される(多くの場合、このためにポリエチレンオキシドが用いられる)。2番目のものは、ポリマーの多官能価のリチウム塩である。ポリマー電解質と多価電解質との両者の電解質は、液体に基づく電解質と類似して、通常は元素リチウムに対して不十分な化学的安定性および電気化学的安定性しか有さず、ひいてはリチウム電池中での使用にはむしろ適さない。しかし、選択的に、従来使用されている有機系の液体電解質の置き換えとして、純粋な無機の固体イオン伝導体を使用することも考えられる。リチウムイオン伝導性の観点で、酸化物系(例えばガーネット型構造を有するリチウム伝導性混合酸化物)、リン酸塩系および硫化物系のリチウムイオン伝導性材料が特に有望であると議論されている。それらの特定の態様は、元素リチウムに対して十分な化学的安定性および電気化学的安定性を有する。従って、それらはリチウム電池内で使用するために適している。しかしながら、これは、純粋な無機の固体イオン伝導体の分類からの他の代表物については当てはまらない。従って、いずれにせよ、リチウム電池内の固体電解質としての相応の材料の可用性は、個々のケースにおいて個別に検証されるべきである。リチウム伝導性固体のための三番目の態様はいわゆるハイブリッド電解質であり、これは、無機のリチウムイオン伝導性材料製の粒子が、ポリマー電解質または多価電解質からなるリチウム伝導性ポリマーマトリックス中に組み込まれている複合材料である。特定のハイブリッド電解質の態様も、元素リチウムに対して十分な化学的安定性および電気化学的安定性を示し、且つ、リチウム電池中で使用される能力を有する。
【0007】
純粋な無機のリチウムイオン伝導性固体電解質の中で、硫化物組成物であるLi-S-PおよびLi2S-P2S5-P2O5は場合により、保護ガス下で出発材料を粉砕し引き続き(同様に通常は保護ガス下で)温度処理することによって製造される。Li-P-Sガラスセラミックの製造は、米国特許出願公開第2005/0107239号明細書(US20050107239 A1)、米国特許出願公開第2009/159839号明細書(US2009159839 A)、特開2008-120666号公報の文献内に記載されている。Li2S-P2S5-P2O5は、A.Hayashi et al., Journal of Non-Crystalline Solids 355(2009)1919-1923に記載されるとおり、粉砕プロセスを介しても、溶融を介しても製造できる。Li2S-B2S3-Li4SiO4の系によるガラスセラミックも、溶融経路および引く続く急冷を介して製造できるが、ただし、この工程段階は空気の遮断下で実施されなければならない(米国特許出願公開第2009/011339号明細書(US2009011339 A)およびY.Seino et al., Solid State Ionics 177(2006)2601-2603参照)。到達可能なリチウムイオン伝導率は、室温で2×10-4~6×10-3S/cmである。注意すべきは、硫化物のリチウムイオン伝導性固体電解質の場合、保護ガス下での製造、および場合により手間のかかる粉砕が、それらの製造を高価にしかねないことである。さらに、多くの場合、保護ガス下または少なくとも無水の環境下での取り扱いおよび保管も、特定の環境下でのリチウム電池の製造にとっては不利であることがある。
【0008】
これに対し、酸化物系に基づく固体リチウムイオン伝導体は、より容易な、ひいては好都合な製造およびより高い化学安定性を特徴とする。NASICON(ナトリウム超イオン伝導体)に類似の結晶構造を有する、結晶層を有するリン酸塩系組成物が主に知られている。一般にこれはガラスセラミックであり、その際、まず出発ガラスが溶融され、熱成形(例えばキャスティング)される。出発ガラスは、第2の段階において、直接(「バルクのガラスセラミック」)または粉末(「焼結ガラスセラミック」)のいずれかとしてセラミック化される。セラミック化の際、相応に選択された温度・時間に則って、制御された結晶化を行うことができ、それはリチウムイオン伝導性について最適化されたガラスセラミックの構造の調節を可能にする。それによって、10倍より大きなオーダーで伝導性の改善が達成され得る。米国特許出願公開第2003/0205467号明細書(US20030205467 A1)の文献は、P2O5、TiO2、SiO2、M2O3(M=AlまたはGa)およびLi2Oからの、主結晶相Li(1+x)(Al,Ga)xTi(2-x)(PO4)3(0<x≦0.8)を有するガラスセラミックの製造を記載している。結晶化後、イオン伝導率0.6~1.5×10-3S/cmが達成された。出発ガラスは結晶化に非常に敏感であり、且つ制御されない結晶化を回避するために金属板上で急冷されなければならない。このことは、成形の可能性およびガラスセラミック中の構造の制御を制限する。
【0009】
米国特許第6030909号明細書(US6030909)および米国特許第6485622号明細書(US6485622)の文献ではさらに、GeO2およびZrO2がガラスセラミック中に導入されている。GeO2はガラス化領域を広げ、且つ結晶化傾向を低下させる。しかしながら実際には、この良い効果は、ゲルマニウムの原料価格が高いことにより制限される。これに対し、ZrO2は結晶化の強化をもたらす。これらの文献内で挙げられている出発ガラスは制御されない結晶化傾向があり、適した出発ガラスを得るためには通常、急冷しなければならない。
【0010】
Xuらは、Electrochem. Commun., 6(2004)1233-1237内、もしくはMaterials Letters, 58(2004),3428-3431内で、同様に5.7×10-4~6.8×10-4S/cmの高い伝導率を有するLi2O-Cr2O3-P2O5ガラスセラミックを記載している。しかしながら、これらの出発ガラスも、強い結晶化傾向ゆえに急冷されなければならない。
【0011】
Fe2O3を含有するガラスセラミックも記載されている(K.Nagamine et al., Solid State Ionics, 179(2008)508-515)。ここでは、3×10-6S/cmのイオン伝導率が判明した。ただし、鉄(または他の多価元素)の使用は多くの場合、電子伝導性の出現をもたらし、それは固体電解質においては回避されなければならない。従って、このガラスセラミックは、特開2008-047412号公報(JP2008047412 A)によれば、カソード材料として好ましく使用され、なぜなら、ここではカソードのコンタクトを容易にするために電子伝導性が望まれるからである。
【0012】
米国特許出願公開第2014/0057162号明細書(US2014/0057162 A1)は、リチウムイオン伝導性リン酸塩系ガラスセラミックであって、少なくとも5×10-7S/cmのイオン伝導率を有し、且つその出発ガラスが十分な結晶化安定性を有するので、溶融物からキャスティングによって、急冷する必要なく製造され得る、前記ガラスセラミックを記載している。そのうえ、そのガラスセラミックも出発ガラスも空気中で十分な化学的安定性を有するので、貯蔵が可能である。これは、相応のリン酸塩系ガラスセラミックがTa2O5および/またはNb2O5を含有することにより可能になる。Ta2O5およびNb2O5はガラスの結晶化安定性を改善でき、なぜなら、それらは同様に結晶相中に組み込まれることができ、結晶相の割合を高めることにより、イオン伝導性に良い方向で影響を及ぼすことができるからである。
【0013】
高いリチウムイオン伝導性に基づき特に重要である酸化物系の無機の固体イオン伝導体の物質類は、ガーネット型構造を有するリチウム含有混合酸化物、例えば独国特許出願公開第102007030604号明細書(DE102007030604 A1)の文献内に記載されるものである。これに関し、ジルコニウムおよびランタンを有する材料類が特に良好な伝導性を有し、それは最も単純な形では式Li7La3Zr2O12を有する。その化合物またはそこから誘導される化合物は、多くの場合、略してLLZOと称される。そのガーネットは正方晶変態と立方晶変態の2つの変態で生じる。殊にLLZOの立方晶変態は高いリチウムイオン伝導性を有するので、LLZOの立方晶変態はリチウム固体電池にとって特に重要である。LLZOのさらなる調査は、LLZOの立方晶変態の形成は、殊にさらなるドーピング金属、例えばアルミニウムを添加すると安定化され得ることを示している。本願の範囲において、ノンドープまたはドープされたリチウムランタンジルコニウム酸化物、またはそこから誘導された化合物を一般にLLZOと称する。過去において、LLZOは、リチウム電池内でアノードとして使用される元素リチウムに対して化学的および電気化学的に安定であることが立証されており、従って相応のシステムにおける電解質としての使用について大きな可能性を有している。
【0014】
LLZOを製造するために、文献内で多くの方法が挙げられており、例えば1つにはLLZOを製造するためのいわゆる固相法が知られており、例えば米国特許出願公開第2010/047696号明細書(US2010/047696 A1)または米国特許出願公開第2010/0203383号明細書(US2010/0203383 A1)内に記載される。最後に挙げられた文献において記載される方法においては、場合により900℃までの温度で12時間予め乾燥された出発材料をボールミル内で粉砕し、その後、12時間900~1125℃の温度で加熱し、得られた生成物を再度、ボールミル内で粉砕する。それに引き続き、得られた粉末を等方プレスし、1230℃の範囲の温度で36時間、再度か焼する。固相法の代替として、ゾルゲル法を使用した前駆体の製造が試みられ、それをガーネット型構造を有する所望の結晶性混合酸化物へとさらに加工できる。そのような方法は場合によりPechini法と記載されることもあり、例えばY.Shimonishi et al, Solid State Ionics 183(2011)48-53内に記載されている。この場合、リチウム、ランタンおよびジルコニウムをその硝酸塩の形態で使用し、水、クエン酸およびエチレングリコールからの混合物中で一緒に加熱し、その際、黒い固体が形成され、次いでそれを改めて350℃で5時間、熱処理しなければならず、その後、粉末形体の中間生成物が得られ、次いでそれを所望の最終生成物にさらに加工できる。独国特許出願公開第102013101145号明細書(DE102013101145 A1)および独国特許出願公開第102013224045号明細書(DE102013224045 A1)においては、ゾルゲル法を介した立方晶または正方晶に結晶化するLLZOの製造が記載されており、その際、ある場合にはアルコールから、およびある場合には水系ゾルから出発する。米国特許出願公開第2011/0053001号明細書(US2011/0053001 A1)から、アモルファスのLLZOを製造するためのさらなるゾルゲル法が公知である。
【0015】
独国特許出願公開第102014116378号明細書(DE102014116378 A1)は、ガラスセラミックの形態のLLZOの製造を開示している。ガラスセラミックとは、上記でリン酸塩系固体リチウムイオン伝導体の際に記載したように、溶融技術により製造され、続いてガラスセラミックに変換された材料と理解される。ガラスセラミックは、少なくとも5質量%の割合のアモルファスを含有する。アモルファスの割合によって、伝導性は良い影響を及ぼされる。ただし、アモルファス相の割合は40質量%以下、好ましくは30質量%以下であるべきであり、なぜなら、そうでなければ全体の伝導性が低下するからである。ガラスセラミックとしての製造のさらなる利点は、その構造が制御された結晶化によって直接的に影響され、そのことによって伝導性がさらに良い方向に影響され得ることである。独国特許出願公開第102014116378号明細書内に記載されたガラスセラミックは、有利には少なくとも5×10-5S/cm、好ましくは少なくとも1×10-4S/cmのイオン伝導率を有する。場合によりイオン伝導率はさらに著しく高いことがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【文献】米国特許出願公開第2005/0107239号明細書
【文献】米国特許出願公開第2009/159839号明細書
【文献】特開2008-120666号公報
【文献】米国特許出願公開第2009/011339号明細書
【文献】米国特許出願公開第2003/0205467号明細書
【文献】米国特許第6030909号明細書
【文献】米国特許第6485622号明細書
【文献】特開2008-047412号公報
【文献】米国特許出願公開第2014/0057162号明細書
【文献】独国特許出願公開第102007030604号明細書
【文献】米国特許出願公開第2010/047696号明細書
【文献】米国特許出願公開第2010/0203383号明細書
【文献】独国特許出願公開第102013101145号明細書
【文献】独国特許出願公開第102013224045号明細書
【文献】米国特許出願公開第2011/0053001号明細書
【文献】独国特許出願公開第102014116378号明細書
【非特許文献】
【0017】
【文献】A.Hayashi et al., Journal of Non-Crystalline Solids 355(2009)1919-1923
【文献】Y.Seino et al., Solid State Ionics 177(2006)2601-2603
【文献】Xu et.al., Electrochem. Commun., 6(2004)1233-1237
【文献】Xu et.al., Materials Letters, 58(2004),3428-3431
【文献】K.Nagamine et al., Solid State Ionics, 179(2008)508-515
【文献】Y.Shimonishi et al, Solid State Ionics 183(2011)48-53
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の課題は、少なくとも1つのポリマーとリチウムイオン伝導性粒子とを含むリチウムイオン伝導性複合材料を提供することであり、その複合材料は従来達成可能なものよりも本質的により高い粒子充填度を有するべきである。それは容易且つ経済的に製造可能であるべきである。さらに、本発明の課題は、前記複合材料からのリチウムイオン伝導体の製造方法を見出すことである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
前記課題は、少なくとも1つのポリマーとリチウムイオン伝導性粒子とを含むリチウムイオン伝導性複合材料であって、
前記粒子が少なくとも0.7の球形度Ψを有し、且つ
前記複合材料が、粒径分布の多分散度指数PIが0.7未満である際に少なくとも20体積%の前記粒子を含有するか、または
前記複合材料が、粒径分布の多分散度指数PIが0.7から1.2未満の範囲である際に少なくとも30体積%の前記粒子を含有するか、または
前記複合材料が、粒径分布の多分散度指数PIが1.2を上回る際に少なくとも40体積%の前記粒子を含有する、
前記リチウムイオン伝導性複合材料によって解決される。
【0020】
ここで、前記球形度Ψは、粒子がどれだけ球形であるかのパラメータである。H.Wadellによる定義によれば、粒子の球形度Ψは等体積球の表面積の、粒子の表面積に対する比として計算される:
【数1】
前記式中、V
pは粒子の体積であり、A
pはその表面を意味する。
【0021】
種々の種類の粒子についての典型的な球形度Ψは以下のとおりである:
球: 1.0
液滴、泡、丸い粒: 0.7~1.0
角ばった粒: 0.45~0.6
針状粒子: 0.2~0.45
小板状粒子: 0.06~0.16
非常に凹凸のある表面を有する粒子: 10-8~10-4
【0022】
本発明に関し、高い球形度Ψは、Ψが少なくとも0.7の値を有する場合に達成される。
【0023】
本発明に関し、粒径分布の多分散度指数PIとは、分布のd90値とd10値からの商の常用対数と理解される:
PI=log(d90/d10)
【0024】
通常、複合材および複合材の前駆体において、粒径分布がより広い際、つまり、多分散度指数PIがより大きな値をとる場合に、より高い粒子充填度を達成できる。
【0025】
PIを決定するためのd値、殊にd90値およびd10値の定義
粉末の粒子は一般に、その球形度Ψとは関係なく、測定されるべき等体積球相当径で区別され、且つその大きさに応じて、選択された分類に区分される。粒径分布を記述するために、粉末中でそれぞれの粒子分類が存在する量の割合を測定する。
【0026】
ここで、様々な量の種類が使用される。粒子が計数される場合、量の種類は数である。これに対し、計量の場合、それは質量であり、均一の密度ρの場合は体積である。さらには長さ、投影および表面に由来する。
【0027】
以下が区別される:
量の種類: 指数r:
数 0
長さ 1
面積 2
体積(質量) 3
【0028】
粉末中の粒径分布を記述するための慣例的な定量手段は、累積分布Qrである。指数rは上記の表による量の種類を示す。
【0029】
累積分布関数Q
r(d)は、d以下の等価直径を有する全ての粒子の正規化した量を示す。以下に、2つの最も慣例的な量の種類の累積分布を明示的に定義する:
・ 粒子数(r=0)
N
iは考慮中の直径d
i以下の直径dを有する調べられる全ての粒子の数とし、並びにNは調べられる全ての粒子の総数とする。その場合、
【数2】
・ 粒子質量(r=3)
m
iは考慮中の直径d
i以下の直径dを有する調べられる全ての粒子の質量とし、並びにmは調べられる全ての粒子の総質量とする。その場合、
【数3】
【0030】
本発明に関し、di値は、Q3(di)累積分布関数が以下の値をとる等価直径値であると理解される:
d10: Q3(d10)=10%、つまり、粒子の10質量%がd10以下の直径を有する、
d50: Q3(d50)=50%、つまり、粒子の50質量%がd50以下の直径を有する、
d90: Q3(d90)=90%、つまり、粒子の90質量%がd90以下の直径を有する、
d99: Q3(d99)=99%、つまり、粒子の99質量%がd99以下の直径を有する、
d100: Q3(d100)=100%、つまり、粒子の100質量%がd100以下の直径を有する。
【0031】
本願に関し、多分散度指数との用語は、多分散指数との用語と同義的に理解できる。
【0032】
本発明による複合材料は、a)1つの実施態様において、リチウムイオン伝導体として直接的に使用できるか、またはb)さらなる実施態様において、リチウムイオン伝導体へとさらに加工するための中間生成物として使用できる。
【0033】
意外なことに、少なくとも0.7の球形度Ψを有する粒子を用いて、本質的により高い粒子充填度が達成できることが判明した。従って、粒径分布の多分散度指数PIが0.7未満の値を有する場合、少なくとも20体積%の前記粒子を含有するか、または粒径分布の多分散度指数PIが0.7以上1.2未満の値を有する場合、少なくとも30体積%の前記粒子を含有するか、または前記多分散度指数が1.2以上の値を有する場合、少なくとも40体積%の前記粒子を含有する、本発明による複合材料が入手可能である。
【0034】
本発明の特に好ましい実施態様において、粒子は、少なくとも0.8、特に好ましくは少なくとも0.9の球形度Ψを有する。
【0035】
さらなる実施態様において、前記複合材料は、粒径分布の多分散度指数PIが0.7未満の値を有する場合、好ましくは少なくとも25体積%の前記粒子、および特に好ましくは少なくとも30体積%の前記粒子を含有し、粒径分布の多分散度指数PIが0.7以上1.2未満の値を有する場合、好ましくは少なくとも35体積%の前記粒子、および特に好ましくは少なくとも40体積%の前記粒子を含有するか、または粒径分布の多分散度指数PIが1.2以上の値を有する場合、好ましくは少なくとも45体積%の前記粒子、および特に好ましくは少なくとも50体積%の前記粒子を含有する。
【0036】
好ましくは、前記ポリマーは以下の化合物の少なくとも1つを含む:
・ ポリエチレンオキシド
・ ポリエチレンオキシドの誘導体
・ ポリビニルブチラール。
【0037】
さらに、以下のポリマーの使用が考えられる: ポリアクリロニトリル、ポリエステル、ポリプロピレンオキシド、エチレンオキシド/プロピレンオキシドコポリマー、三官能性ウレタンで架橋されたポリエチレンオキシド、ポリ(ビス(メトキシ-エトキシ-エトキシド))ホスファゼン(MEEP)、二官能性ウレタンで架橋されたトリオール型ポリエチレンオキシド、ポリ((オリゴ)オキシエチレン)メタクリレート-co-アルカリ金属メタクリレート、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリメチルアクリロニトリル(PMAN)、ポリシロキサン並びにそれらのコポリマーおよび誘導体、ポリフッ化ビニリデンまたはポリ塩化ビニリデン並びにそれらのコポリマーおよび誘導体、ポリ(クロロトリフルオロエチレン)、ポリ(エチレン-クロロトリフルオロエチレン)、ポリ(フッ化エチレン-プロピレン)、アクリレート系ポリマー、それらの縮合または架橋された組み合わせ、および/またはそれらの物理的混合物。
【0038】
前記ポリマーは、少なくとも1つのリチウムイオン伝導性化合物、殊にリチウムビストリフルオロメタンスルホンイミダートをリチウムイオン伝導性化合物として含有し得る。
【0039】
さらなる使用可能な支持塩として、LiAsF6、LiClO4、LiSbF6、LiPtCl6、LiAlCl4、LiGaCl4、LiSCN、LiAlO4、LiCF3CF2SO3、Li(CF3)SO3(LiTf)、LiC(SO2CF3)3、リン酸塩系リチウム塩、好ましくはLiPF6、LiPF3(CF3)3(LiFAP)およびLiPF4(C2O4)(LiTFOB)、ホウ酸塩系リチウム塩、好ましくはLiBF4、LiB(C2O4)2(LiBOB)、LiBF2(C2O4)(LiDFOB)、LiB(C2O4)(C3O4)(LiMOB)、Li(C2F5BF3)(LiFAB)およびLi2B12F12(LiDFB)、および/またはスルホニルイミドのリチウム塩、好ましくはLiN(FSO2)2(LiFSI)、LiN(SO2CF3)2(LiTFSI)および/またはLiN(SO2C2F5)2(LiBETI)が考慮される。
【0040】
上記のポリマー電解質の他に、選択的に多価電解質も使用できる。ここで、それらは、Li+を対イオンとして有するポリマー、例えばポリスチレンスルホネート(PSS)、または、イミダゾリウム、ピリジニウム、ホスホニウムまたはグアニジウムに基づく重合されたイオン性液体であって、離散数の化学結合したイオン性基を有し且つその理由から本質的にリチウムイオン伝導性であるものである。
【0041】
前記リチウムイオン伝導性粒子は、好ましくは少なくとも1つのリチウムイオン伝導性化合物から、殊に、少なくとも以下のリチウムイオン伝導性化合物:
・ リチウムランタンジルコネート(LLZO)
・ リチウムアルミニウムチタンホスフェート(LATP)
・ ガーネット型結晶構造を有する化合物、殊に、以下の実験式
Li7+x-yMx
IIM3-x
IIIM2-y
IVMy
VO12
[前記式中、
MIIは2価のカチオンであり、
MIIIは3価のカチオンであり、
MIVは4価のカチオンであり、
MVは5価のカチオンであり、ここで、
有利には0≦x<3、さらに好ましくは0≦x≦2、0≦y<2、且つ特に好ましくは0≦y≦1である]
を有するガーネット型結晶構造を有する材料、またはそこから誘導される化合物、殊にAl、NbまたはTaでドープされた化合物、
・ NaSIConと同形の結晶構造を有する化合物、殊に実験式
Li1+x-yM5+
yM3+
xM4+
2-x-y(PO4)3
[前記式中、
xおよびyは0~1の範囲であり且つ(1+x-y)>1であり、且つ
Mは+3価、+4価または+5価のカチオンである]
を有する化合物、またはそこから誘導される化合物
からなる。
【0042】
前記粒子は好ましくは、0.02μm~100μmの範囲の平均粒径を有する。0.2μm~2μmと、5μm~70μmとの2つの範囲も特に好ましい。0.2μm~2μmまたは5μm~70μmの2つの範囲のうちの1つも特に好ましい。
【0043】
さらに好ましい実施態様において、前記リチウムイオン伝導性複合材料の場合、前記ポリマーと前記粒子との間の、リチウムイオン伝導性についての界面抵抗が、前記粒子の表面改質に基づき低減されており、ひいては、リチウムイオン伝導性が、前記ポリマーと前記粒子との間の界面抵抗が低減されていない比較可能な複合材料の場合よりも高い。
【0044】
好ましくは、前記粒子は、以下の方法の少なくとも1つを用いて製造されている:
・ 噴霧か焼(特にパルス反応器技術を使用)
・ 溶融塩からのフィラメント化(Filamentierung)
・ 液滴化
・ ガラス球製造。
【0045】
純粋な無機の固体リチウムイオン伝導体が酸化物系、リン酸塩系または硫化物系であるかには関わらず、従来技術においてこれまで記載されている製造方法の全てに共通することは、それぞれの工程において得られるリチウムイオン伝導性材料がモノリス状の構造または少なくとも定義されない粗粒の構造のいずれかで生じ、さらなる細分化段階、通常は微粉砕工程によって、定義された粒径および粒径分布を有する粉末として最終的な施与形態にされなければならないことである。多くの場合、達成されるべき粒径はμmの範囲またはサブμmの範囲である。そのことによって初めて、さらなる加工が可能になる。これについて、特に一方では、最終的な製造のためのハイブリッド電解質のポリマー、ポリマー電解質または多価電解質中への組み込みが挙げられる。他方で、この際、圧縮またはセラミックスラリー中への組み込み、および成形段階においてさらに加工して(例えばテープキャスティング)セラミックのグリーン体を形成し、それを焼結することによって、最終的に純粋な無機固体イオン伝導体からなるセラミック部材へと変換する。
【0046】
細分化工程、例えば前記の微粉砕工程によって、球状の粉末粒子を作り出すことは実際には可能ではない。この場合はむしろ、角や縁を備えた破片状の粒子が形成される。従って、これらは0.7よりも著しく低い球形度を有する。
【0047】
1つ且つ同じ材料の、球状ではない粒子は、同じ粒径および粒径分布を前提とするその球形の対応物よりも、多くの用途において加工が著しく困難である。殊に、熱可塑性マトリックス(例えばハイブリッド電解質を製造する場合)および液体のマトリックス(例えばセラミックスラリーを製造する場合に関連)中に組み込む場合、このことが顕著になる。同じ体積充填度の場合、比較可能な粒径もしくは粒径分布を有する際に、粒子を充填された配合物の粘度は、非球状粒子を使用する場合、同じ材料製の球状粒子を使用する場合よりも著しく高い。逆に、球状の態様の場合、相応の配合物は非球状の態様の場合よりも著しく高い充填度を備えることができる。これは、非球状粒子で充填された配合物においては、それらの粒子が、外部剪断力の影響のために、配合物内で互いにすれ違う場合に、互いに引っかかる傾向があることによって内部摩擦が高められることに起因する。これに対し、球状粒子の場合、これらは互いにより良好にすれ違うことができる。
【0048】
球状粒子を使用する際、これで充填された配合物は比較可能な前提条件下で著しく高い体積充填度が達成されることは実際に非常に重要であり、例えば、ハイブリッド電解質中で球状粒子からなる無機の固体電解質の組み込みが増加することにより明らかにより良好なリチウムイオン伝導性が達成でき、なぜなら、無機成分のリチウムイオン伝導性は通常、ポリマー系マトリックスのリチウムイオン伝導性よりも高いからである。セラミックスラリーは、その配合物で球状粒子が使用される場合、充填度が比較的高くても注ぐことができるままである。溶剤の乾燥後に生じるグリーン体は、引き続き著しくより低い多孔度を有し、そのことは、最終的な焼結段階の際に著しくより少ない収縮をもたらす。多くの場合、焼結収縮と関連する人工の産物(例えばクラックの形成等)は、それらの作用によりこのように著しく低減され得る。
【0049】
従って、従来技術に鑑み、マイクロスケールまたはサブマイクロスケールの粒子からなり、高い球形度Ψを有する粉末形態のリチウムイオン伝導性固体電解質材料が望まれている。
【0050】
例えば、以下の方法が挙げられる:
ガラス球の製造: リチウムイオン伝導性材料から粒子を製造するための経路は、それらの材料を、とりわけガラスセラミックの経路を介して作り出すこともできることを活用する。このために、慣例的な溶融法においては、理想的には結晶不含のグリーンガラスをまず溶融し、後続の加熱段階の間にセラミック化して、本来のガラスセラミックに変換する。原理的に、第1の工程段階において使用されたガラス溶融物を、冷却の際に、ガラス球の製造のために用いられる慣例的な熱成形工程に供することができる。これについて、以下の方法のアプローチが考え得る: 米国特許第3499745号明細書(US3499745)において開示された方法は、溶融ガラス噴流を打撃ホイール(Schlagrad)上に衝突させ、十分に大きな力が生成されると、そのガラス噴流の部分ストランド、いわゆるフィラメントへの分裂がもたらされる。引き続き、これをまず加熱された領域、冷却領域を通し、最後に収集ゾーンに吐出する。フィラメント形成後に表面張力の最小化傾向が作用するので、前記フィラメントが丸くなる。その際、欧州特許第1135343号明細書(EP1135343 B1)によれば、式T=(d×μ)/σによって記述され得る緩和時間Tがフィラメント形成の時点から経過すると、十分な球形度に達する。前記式中、dは形成される球の直径であり、μはフィラメントの粘度であり、且つσは緩和時間の間のフィラメントの表面張力である。米国特許第3495961号明細書(US3495961)内に記載されるとおり、打撃ホイールの代わりに、ローターを使用することもできる。ガラス球の製造のための他の公知の方法は、溶融ガラス流を通る燃焼ガス流を膨張させて、ガラスを個々の粒子へと分割することを含む。そのような方法は、米国特許第3279905号明細書(US3279905)内に開示されている。このために選択的に、例えば東独国特許出願公開第282675号明細書(DD282675 A5)内に記載されるとおり、比較的低い球形度のガラス粒子を、火炎中にもたらすことにより(部分的に)再度溶融させて、丸くすることができる。
【0051】
溶融塩のフィラメント化: 上述のフィラメント形成、および引き続く表面エネルギーを減少する緩和効果に起因して生じる、溶融ガラス噴流からの球状の液滴の形成と類似して、溶融塩から生じる材料の噴流から相応してこれを行うことができる。このために、技術的には類似した方式で進めることができるが、その際、それぞれの場合において選択された温度によっては、溶融ガラスの粘度が溶融塩の粘度とは互いに著しく異なり得ることに注意する。液滴状の材料をまず、より熱い領域を通過させることによって、多くの場合は多孔質であるが等方性の収縮を除き形態安定であるプレセラミックの中間段階に変換しなければならず、引き続き、その段階、または別の追加的な後続の加熱段階のいずれかにおいて、本来の固体リチウムイオン伝導体に変換する。理想的には、そのようにして、固体リチウムイオン伝導体材料製の密に焼結された球が得られる。
【0052】
噴霧か焼(パルス反応器技術を使用): パルス反応器を使用する場合、独国特許出願公開第10111938号明細書(DE10111938 A1)、独国特許出願公開第102006027133号明細書(DE102006027133 A1)、独国特許出願公開第102006039462号明細書(DE102006039462 A1)または欧州特許出願公開第1927394号明細書(EP1927394 A1)内に開示されるとおり、リチウムイオン伝導性材料を製造するための全ての成分を含有する、ガス状、または溶液、懸濁液または分散液の形態の液状の混合物を、後者の場合は微細噴霧化により、パルス状の熱ガス流にもたらす。この場合、パルス状の熱ガス流はそれ自体、反応器の熱ガス発生器内で、天然ガスまたは水素を周囲の空気と共に燃焼させることによって生成される。そこで支配的な温度は、噴霧導入点の位置の選択に依存して500~1500℃である。パルス状の熱ガス流内で中間生成物が形成され、それを同じ反応器または他の反応器内でさらに熱により後処理して、最終的な形態に変換する。前者の場合、反応器は追加的な燃料供給部を備えることができ、それはパルス状の熱ガス流に沿って噴霧導入点に後続している。
【0053】
液滴化法: 液滴化法の場合、リチウムイオン伝導性材料のための前駆体としての水性または溶剤系の塩溶液またはゾルから、もしくはリチウムイオン伝導性材料のナノ粒子溶液から出発し、適したノズル装置を介して液滴に変換する。その液滴を、形成後、選択的に、例えば米国特許第4043507号明細書(US4043507)または米国特許第5500162号明細書(US5500162)内に記載されるように、適したプロセスガス流中で直接的に乾燥させるか、または、米国特許第5484559号明細書(US5484559)、米国特許第6197073号明細書(US6197073)、米国特許出願公開第2004/0007789号明細書(US2004/0007789 A1)または国際公開第2015/014930号(WO2015/014930 A1)内に開示されるように、適した液体媒体中にもたらすことにより、まず刺激してさらに凝集させ、引き続きエージングし、洗浄し且つ乾燥させる。このようにして作り出された球状の多孔質のグリーン体を、引き続く焼結段階において、高い球形度を有するリチウムイオン伝導性セラミック体へと圧密化する。
【0054】
さらに前記課題は、本発明による複合材料を、殊に高められた温度および/または高められた圧力の作用下で焼結する、リチウムイオン伝導体の製造方法によって解決される。
【0055】
本発明によるリチウムイオン伝導性複合材料も、そのリチウムイオン伝導性複合材料から製造されたリチウムイオン伝導体も、リチウムイオン伝導性部品またはかかる部品の構成要素として、ニーズおよび用途範囲に依存して使用できる。
【0056】
さらに、ハイブリッド電解質のための複合材前駆体を製造するための配合物、または焼結された純粋な無機の固体リチウムイオン伝導体部品を製造するためのセラミックスラリーであって、非球状粒子を使用する場合、本発明により製造された高い球形度Ψの粒子を使用する場合よりも、同じ体積充填度で粒子を充填された配合物の粘度が著しく高いものが記載され、ここで、両方の場合における粒径もしくは粒径分布は同じであるという前提条件である。
【0057】
さらには、ハイブリッド電解質のための複合材前駆体を製造するための配合物、または焼結された純粋な無機の固体リチウムイオン伝導体部品を製造するためのセラミックスラリーであって、相応の配合物が、球状の態様の場合、本質的に粘度を変えることなく、非球状の実施態様の場合よりも著しく高い充填度を備えることができるものが記載される。この場合もまた、粒径および粒径分布は両方の場合で本質的に異ならないことが前提条件である。
【0058】
本発明により、球状粒子の形態でμmまたはサブμmの範囲の粒径を有して製造されたリチウムイオン伝導性材料は、充填材としてポリマー電解質または多価電解質内に組み込むことができ、その際、相応の複合材は一般にハイブリッド電解質と称される。このために選択的に、適した器具を用いて、それを圧密体へとプレスするか、またはセラミックスラリー中に組み込んで(結合剤を添加しないかまたは添加して)、適した成形工程(例えばテープキャスティング)に供し、両方の場合において、純粋な無機のイオン伝導性成形体を形成する温度下で焼結される。ハイブリッド電解質と純粋な無機のセラミック固体イオン伝導体との両方の施与形態を、固体電解質として、次世代の充電式リチウムイオン電池またはリチウム電池、例えば固体リチウム電池(全固体電池(ASSB))またはリチウム空気電池内で使用できる。その際、一方では、セパレータとしての使用が考えられ、つまり、それを電極間に導入し、それが電極を望ましくない短絡から保護し、且つそのことによりシステム全体の機能性を確実にする。このために、相応の複合材を、一方または両方の電極上の層として施与して、または自立式の膜としてのいずれかで、固体電解質として電池に組み込むことができる。他方で、電極活物質と混合することが考えられ、ハイブリッド電解質の場合はハイブリッド電解質配合物中への電極活物質の包含により、純粋な無機のセラミック電解質の場合はそれと共焼結することによる。この場合、固体電解質は、電池が放電または充電されているかに依存して、関連する電荷担体(リチウムイオンおよび電子)が電極材料へ、および伝導性電極へ、向かうもしくはそこから離れる輸送をもたらす。
【実施例】
【0059】
リチウムイオン伝導性材料からの、少なくとも0.7の高い球形度Ψを有するリチウムイオン伝導性粒子の製造例
1. 球状LAGP粒子の製造
(A) グリーンガラス溶融物からの直接的な成形
5.7質量%のLi2O、6.1質量%のAl2O3、37.4質量%のGeO2および50.8質量%のP2O5の組成の、最終的なリチウムイオン伝導性のリン酸塩系ガラスセラミックのための出発ガラスを、流出るつぼ(Ablauftiegel)内で温度1650℃で溶融した。
【0060】
そのガラス溶融物を、選択された溶融装置内で温度1600℃で保持した。るつぼの底に取り付けられた直径2mmのノズルを介して、それを流出させた。そのように生成されたガラス噴流を、回転数5000rpmで軸周りに回転する、外径135mmを有する53個の歯付きの8mm厚の打撃ホイール上に滴下した。このようにして、ガラス流を個々の部分ストランドへとフィラメント化し、水平に対して測定した傾斜角20~30°で加速した。引き続きそれを、フィラメント化されたガラス流の軌跡を模倣する曲がった形状に構成された3m長の管状炉を通過させ、2つのガスバーナーで1550℃に加熱した。縦長に形成されたフィラメントが、表面エネルギーの最小化傾向のために球へと変形された。管状炉から出た後、ガラス球はさらに空気中を飛行して十分な形態安定性を達成するまで冷却され、最終的に収集容器内に収容された。
【0061】
上述の熱成形工程により製造され、冷却され、大部分がX線でアモルファスであるグリーンガラス球を、温度範囲500~600℃で2~4時間の核生成後、最高温度850℃で保持時間12時間のさらなる温度処理の過程でセラミック化し、ひいては最終的なリチウムイオン伝導性ガラスセラミックへと変換した。
【0062】
(B) 非球状のグリーンガラス粒子を丸くすることによる成形
5.7質量%のLi2O、6.1質量%のAl2O3、37.4質量%のGeO2および50.8質量%のP2O5の組成の、最終的なリチウムイオン伝導性のリン酸塩系ガラスセラミックのための出発ガラスを、流出るつぼ内で温度1650℃で溶融した。
【0063】
そのガラス溶融物を、選択された溶融装置内で温度1600℃で保持した。るつぼの底に取り付けられた直径2mmのノズルを介してそれを流出させて2つの対向して回転する水冷されたローラー間の隙間に流し、急冷してグリーンガラスリボンを形成した。そのグリーンガラスリボンをハンマーで機械的に小さな破片へと個別化した。
【0064】
そのガラス破片をボールミル内での予備粉砕によって粗く細分化し、そこから粒径d100<100μmを有する粉末分画を篩別した。この篩別されたグリーンガラス粉末を、さらなる後続の段階において、対向ジェットミルでの乾式粉砕でd10=0.9μm、d50=5μm、d90=13μmおよびd99=18μmの分布を有する粒径へとさらに細分化した。
【0065】
粉末を酸水素ガス火炎中にもたらすことにより、ガラス粒子が再度溶融し、表面エネルギーの最小化傾向のために丸くされる。火炎から出た後、粒子を冷却し、収集容器内に収容する。
【0066】
上述の熱成形工程により製造され、冷却され、大部分がX線でアモルファスであるグリーンガラス球を、温度範囲500~600℃で2~4時間の核生成後、最高温度850℃で保持時間12時間のさらなる温度処理の過程でセラミック化し、ひいては最終的なリチウムイオン伝導性ガラスセラミックへと変換した。
【0067】
2. 溶融塩のフィラメント化
第1の段階において、以下のとおり、ジルコニウム含有前駆体粉末を製造した: 23.4kg(50.0mol)のジルコニウム-n-プロポキシド(70%の溶液)に、丸底フラスコ内で撹拌しながら5.0kg(50.0mol)のアセチルアセトンを滴下した。生じる反応混合物を60分、室温で撹拌する。引き続き、2.7kg(150.0)molの蒸留水をそこに添加して加水分解させる。約1時間の反応時間の後、生じる前加水分解物を、回転蒸発器で完全に乾燥させた。引き続き、酸化物含有率を測定するために生じる粉末の試料を加熱する(900℃/5時間)。
【0068】
先行する段階で製造されたジルコニウム含有前駆体粉末(酸化物含有率: 35質量%)の1.77kg(5.0mol)のZrO2当量を、2.5kg(7.5mol)の酢酸ランタンセスキ水和物、1.95kg(19.2mol)の酢酸リチウム二水和物および0.15kg(0.61mol)の塩化アルミニウム六水化物と一緒にボールミルに添加し、そこで4時間粉砕して、できるだけ均質な粉末混合物を製造した。このための粉砕用ボールとして、直径40mmのAl2O3球を使用した。
【0069】
それを篩別した後、前記粉末混合物をAl2O3の流出るつぼに添加し、そこで、無水酢酸リチウムの融点である280~285℃を辛うじて上回る温度300℃にもたらした。その際、溶融塩が形成され、るつぼの底に取り付けられた直径2mmのノズルを介して、それを流出させた。そのように生成された溶融塩からなる噴流を、回転数5000rpmで軸周りに回転する、外径135mmを有する53個の歯付きの8mm厚の打撃ホイール上に滴下した。このようにして、溶融塩からなる噴流を個々の部分ストランドへとフィラメント化し、水平に対して測定した傾斜角20~30°で加速した。引き続きそれを、フィラメント化された溶融塩からなる噴流の軌跡を模倣する曲がった形状に構成された3m長の管状炉を通過させた。前記の炉を、入口領域で中程度の温度である300~320℃に保持するように電気加熱して、溶融塩のままさらに保持し、最初は縦長に形成されたフィラメントが、表面エネルギーの最小化傾向のために、液体のままで球へと変形した。後続の領域においては、温度が著しく高く選択され、ここでは約900℃の温度に達した。それゆえに、液体の球をか焼するための第1の段階がここで行われ、中間段階としての多孔質のプレセラミック粒子が形成された。管状炉から出た後、これはさらに空気中を飛行して冷却され、最終的に収集容器内に収容された。
【0070】
それらの多孔質のプレセラミック粒子を、1050℃の炉内で保持時間7~8時間のさらなるか焼段階で、最終的なリチウムイオン伝導性LLZO材料からなる球へと圧密化した。
【0071】
3. パルス反応器法を使用した噴霧か焼による球状のLLZO粒子の製造
2.3kg(4.7mol)のジルコニウムアセチルアセトンを、適した反応容器内で、少なくとも10.0kg(556mol)の蒸留水中に溶解した。2.4kg(7mol)の酢酸ランタンセスキ水和物をさらなる反応容器内で10kg(556mol)の蒸留水中に溶解した。1.8kg(18mol)の酢酸リチウム二水和物および0.14kg(0.58mol)の塩化アルミニウム六水和物を、第3の反応容器内で5.0kg(278mol)の蒸留水中に溶解した。該成分を完全に溶解した後、それらの溶液を一緒にし、生じる反応混合物を12時間、室温で撹拌した。
【0072】
前記溶液を、蠕動ポンプを用いてパルス反応器内に3kg/時間の体積流で搬送し、そこで1.8mmのチタンノズルを介して反応器内部に微細噴霧し、そこで熱処理する。その際、燃焼室の温度は1030℃、共鳴管の温度は1136℃に保持する。燃焼空気量の燃料量(天然ガス)に対する比は10:1(空気:ガス)である。
【0073】
前記粉末を角形のコランダムのるつぼに充填し、箱形炉内に載置する。その材料を炉内、空気雰囲気下で、1050℃の温度にもたらし、LLZOからなる球状の微細粒子を完全に圧密化する。
【0074】
4. 液滴化法による球状LLZO粒子の製造
まずLLZO材料をいわゆるスカルるつぼ内で、例えば独国特許出願公開第19939782号明細書(DE19939782 C1)内に記載されるように溶融した。これについて水冷されたるつぼを使用して、溶融の間に、溶融されるべき材料からより冷たい保護層が形成される。従って、溶融プロセスの間にるつぼ材料は溶解しない。溶融物へのエネルギーの投入を、溶融材料中への取り囲む誘導コイルを介した高周波結合を用いて実現する。この場合の条件は溶融物の十分な伝導性であり、それはリチウムガーネットの溶融物の場合には、高いリチウム含有率によってもたらされる。溶融プロセスの間にリチウムの蒸気が生じ、それは過剰なリチウムによって容易に補正できる。このために、通常の場合は1.1~2倍のリチウム過剰で作業する。
【0075】
原料を以下の組成に相応して混合し、上向きに開いたスカルるつぼに充填する: 14.65質量%のLi2O、56.37質量%のLa2O3、21.32質量%のZrO2および7.66質量%のNb2O5。特定の最低限の伝導性を達成するために、その混合物をまず予熱する必要があった。このために、バーナー加熱を使用した。結合温度に達した後、誘導コイルを介した高周波結合によって、溶融物のさらなる加熱および均質化を達成した。溶融物の均質化を改善するために、水冷された撹拌機で撹拌した。
【0076】
この経路で製造された材料は原理的に、溶融物からの直接的な凝固または急冷のいずれかに続く温度処理(セラミック化)によって、ガーネット型の主結晶相を有するガラスセラミック材料へと変換できる。ここで記載される例においては、直接的な急冷による態様が選択された。
【0077】
この場合、材料はモノリス状のブロックとして得られ、様々な粗い細分化工程を介して、例えば第1の段階においてハンマーおよびのみを用いて加工し、この際に得られる破片を第2の段階においてジョークラッシャー内で細分化し、さらにそこで生じる粗粉末をプラネタリーミル内でさらに予備粉砕して引き続き第3の段階で篩別して、粒径d100<100μmを有する粉末に変換した。この粉末を、さらなる後続の段階において、磨砕機内で実施された水中粉砕で、d10=0.14μm、d50=0.42μm、d90=1.87μmおよびd99=2.92μmの分布を有する粒径へとさらに細分化した。その際使用された粉砕スラリー中でのLLZOの固形分含有率は約30%であった。粒子を安定化するために、粉砕の前にこれに分散剤(Dolapix CE 64もしくはDolapix A88、Zschimmer&Schwarz GmbH&Co KG社)を添加し、ここで、懸濁液中のLLZOの割合に対して1.0%の割合で良好に作業可能であることが証明されている。
【0078】
さらなる加工のために、回転蒸発器で部分的に水を蒸発させることにより、粘度に関して適した混合比を得るために、粉砕スラリーの固形分含有率を含有率60%へと高めた。
【0079】
引き続き、アルギン酸アンモニウムを結合剤として1.0%の量で添加した。
【0080】
そのスラリーから、液滴化法を用いてノズルおよび/またはカニューレを介して、乳酸アルミニウムまたは無機酸または有機酸の溶液中で浸漬し且つ反応させることによって、0.3~2.5mmの大きさの形態安定なグリーン体を得た。
【0081】
引き続き、これから焼結プロセスによって焼結された球を形成した。焼結は標準圧力下で温度1150℃の空気雰囲気下で行われた。
【0082】
少なくとも0.7の高い球形度を有し、粒径分布の多分散度指数PIが0.7未満の際に少なくとも20体積%のリチウムイオン伝導性粒子、または粒径分布の多分散度指数PIが0.7を上回り且つ1.2未満の際に少なくとも30体積%の相応の粒子、または粒径分布の多分散度指数PIが1.2を上回る際に少なくとも40体積%の相応の粒子で充填された、リチウムイオン伝導性複合材料用の配合物の製造例:
1. 本発明による複合材料の製造(LLZO粒子で充填されたポリエチレンオキシド(PEO)/リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)ポリマー電解質に基づくハイブリッド電解質膜の製造)
モル質量4×106g/molを有する、ポリエチレンオキシド(PEO、Dow Chemical)1.4gを真空中で48時間、50℃で乾燥させた。そのポリマーに、乾燥条件下(露点<-70℃)で、球形度0.92を有する粒子からなり且つその粒径分布がd10=1.22μm、d50=2.77μm、d90=5.85μm、d99=9.01μmの値を有する、リチウムランタンジルコニウム酸化物粉末8.5gを添加した。相応して、その粒径分布の多分散度指数は本発明によるPI=0.681である。その混合物を、乳鉢内で強力に粉砕する。引き続きここに、電池用途に適した99%を上回る純度を有し、予め24時間120℃で真空(10-7bar)下で乾燥されたリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI、3M)0.6gを混合した。全ての成分を乳鉢内で強力に混合し、最終的に均質なペーストが形成された。これによってリチウムイオン:エチレンオキシドモノマー単位の比(Li:EO)が1:15であるPEO/LiTFSIポリマー電解質マトリックスが得られ、体積割合50体積%の無機の固体リチウムイオン伝導体が埋め込まれた。そのように製造されたハイブリッド電解質を、パウチ袋内へと真空パックした後、終夜、100℃で熱処理し、引き続き100℃でプレス圧50kN(50~750kg/cm2)でホットプレスした(Servitec Polystat 200 T-Presse)。約100μm厚を有する複合材膜が得られた。
【0083】
同一の手順により、以下の粒径分布:d10=0.44μm、d50=1.24μm、d90=3.50μm、d99=6.94μmを有する非球状粒子(Ψ=0.48)からなるLLZO粉末を使用してハイブリッド電解質膜を製造した。前記粒径分布の多分散度指数はこの場合、本発明によるPI=0.900であった。ただし、この場合、4.6gのLLZO粉末しかPEO/LiTFSIポリマー電解質マトリックス中に有効に組み込まれず、つまりこの場合、ハイブリッド電解質は最大29体積%の体積含有率でしか製造され得ない。
【0084】
2. 本発明による複合材料からの本発明によるリチウムイオン伝導体の製造(LATP粒子を充填したキャスティングスラリーに基づくテープキャスティング法を用いた、純粋な無機の焼結された固体電解質膜の製造)
分子量35000g/molを有する11.4gのポリビニルブチラール(PVB)(ビニルブチラール単位の他に、1.7質量%の酢酸ビニルおよび18.9質量%のビニルアルコール単位を含有)を、エタノール:トルエン(4:6)からなる溶剤混合物68.4g中に溶解した。溶液の粘度は、200~450mPa・sであった。その混合物に、可塑剤として機能する5.7gのジオクチルフタレートを添加する。最後にその混合物に、溶解機を使用して、球形度0.94を有する粒子からなり且つその粒径分布が以下の値d10=0.81μm、d50=2.23μm、d90=5.17μm、d99=8.46μmを有する、リチウムアルミニウムチタンホスフェート(LATP)ガラスセラミック粉末200gを導入して分散させた。その粒径分布の多分散度指数はこの場合、本発明によるPI=0.805である。得られるキャスト材料は、粘度4000~5000mPa・sを有した。ガラスセラミック粉末の含有率は約43体積%であった。
【0085】
そのように生成された均質な材料を、引き続き、真空技術によって気泡を除去した(脱気)。この脱気された材料をフィルム延伸装置における慣例的なテープキャスティング工程に供給し、そのようにして約0.3mm厚(乾燥後に測定)のテープへとキャスティングした。そのように製造されたグリーンテープを、その後、所望の形式に切断して個別化した。
【0086】
その個別化されたテープ片を、最終的に1000℃で4時間焼結し、緻密化されたLATP膜にした。その際、フィルムの収縮は約9%であった。
【0087】
同一の手順により、以下の値の粒径分布:d10=0.68μm、d50=1.74μm、d90=3.86μm、d99=7.21μmを有する非球状粒子(Ψ=0.46)からなるLATP粉末を使用して純粋な無機の固体リチウムイオン伝導体膜を製造した。ここで、前記粒径分布の多分散度指数は、本発明によるPI=0.754であった。ただし、この場合、90gのLATP粉末しかPVB、ジオクチルフタレートおよびエタノール:トルエンからなる結合剤溶液中に有効に組み込まれず、つまりこの場合、テープキャスティングスラリーは、目標の粘度4000~5000mPa・sを著しく上回ることなく最大28体積%の体積含有率でしか製造され得なかった。著しく低減された固体含有率ゆえに、焼結の際の収縮は約15%であった。