(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】眼を検査する方法及び視力検査システム
(51)【国際特許分類】
A61B 3/103 20060101AFI20241016BHJP
G02B 21/00 20060101ALI20241016BHJP
A61B 3/18 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
A61B3/103
G02B21/00
A61B3/18
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020035406
(22)【出願日】2020-03-03
【審査請求日】2023-01-16
(31)【優先権主張番号】10 2019 105 756.6
(32)【優先日】2019-03-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】509081562
【氏名又は名称】オクルス オプティクゲレーテ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュタインミュラー アンドレアス
【審査官】▲高▼木 尚哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-187461(JP,A)
【文献】特開2016-158906(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03222204(EP,A1)
【文献】特開2018-064949(JP,A)
【文献】特開2016-077774(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0245756(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00-3/18
G02B 21/00-21/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1測定装置(11)、第2トポグラフィ測定装置(12)、第3屈折度測定装置(13)、及び処理手段(14)を備える視力検査システム(10)によって被験者の眼を検査する方法であって、
前記被験者の眼(16)の中央軸長(L
Z)及び周辺軸長(L
P)は、前記第1測定装置によって測定され、前記眼の角膜(35)の曲率は、前記第2トポグラフィ測定装置によって測定され、前記眼の屈折特性は、前記第3屈折度測定装置によって測定され、前記第1測定装置、前記第2トポグラフィ測定装置、及び前記第3屈折度測定装置の測定値の測定データは、前記処理手段によって処理され、前記処理手段は、前記測定データを出力
し、
前記被験者の前記眼(16)の異なる遠近調節状態が、前記視力検査システム(10)の固視手段(53)によって作られる
方法。
【請求項2】
前記中央軸長(L
Z)の測定の間、前記眼(16)の視軸(15)は、前記第1測定装置(11)の光学測定軸(17)とアラインされ、
周辺軸長(L
P)の測定の間、前記眼の前記視軸は、前記第1測定装置の光学測定軸に対して、角度α(α>0°)だけ傾けられている
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記眼の視軸(15)が前記第1測定装置(11)の光学測定軸(17)とアラインされている間に、及び/又は前記眼の前記視軸が前記第1測定装置の光学測定軸に対して、角度α(α>0°)だけ傾けられている間に、前記眼(16)の前記角膜(35)の曲率及び前記眼の屈折特性が測定される
請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記周辺軸長(L
P)の測定の間、前記眼(16)の前記視軸(15)は、前記第1測定装置(11)の光学測定軸(17)に対して、角度20°±10°だけ傾けられている請求項2又は請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記周辺軸長(L
P)は、前記第1測定装置(11)の光学測定軸(17)に対する、前記眼(16)の前記視軸(15)の異なる傾きについて測定され、
前記角度αは、5°の増分で変化される
請求項2-4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記眼(16)によって焦点が合わされる周辺固視マークは、前記視力検査システム(10)の固視手段(53)によって表示され、
前記眼は、前記周辺固視マークに焦点を合わせ、前記眼は、前記視力検査システムに対して固定される
請求項1-5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記眼(16)によって無限遠で焦点が合わされる中央固視マークは、前記視力検査システム(10)の固視手段(53)によって表示され、
前記眼は、前記中央固視マークに焦点を合わせ、前記眼は、前記視力検査システムに対して固定される
請求項1-6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記眼(16)の測定は、前記第1測定装置、前記第2トポグラフィ測定装置、及び前記第3屈折度測定装置(11,12,13)を同時に用いることによって実行される
請求項1-
7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記処理手段(14)によって、前記周辺軸長(L
P)に対する前記中央軸長(L
Z)の比較が実行され、前記比較の結果が前記測定データと併せて出力される
請求項1-
8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記処理手段(14)によって、前記周辺軸長(L
P)に対する前記測定データの比較が実行され、前記比較の結果が前記測定データと併せて出力される
請求項1-
9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
屈折度が
前記比較を通じて前記処理手段(14)によって求められる
請求項9又は請求項10に記載の方法。
【請求項12】
被験者の眼(16)の水晶体(41)の屈折率及び/又は屈折率勾配が、前記処理手段(14)によって測定データから求められる
請求項1-
11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記処理手段(14)は、正常データを持つデータベースを備え、
前記測定データの前記正常データに対する比較、及び前記比較の結果の出力は、前記処理手段によって実行される
請求項1-
12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
眼(16)の中央軸長(L
Z)及び/又は周辺軸長(L
P)、眼の角膜(35)の曲率、及び眼の屈折特性を含む正常集団の眼の測定データが正常データとして用いられる
請求項1-
13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記処理手段(14)は、それぞれ、眼(16)の前記測定された中央軸長(L
Z)及び/又は周辺軸長(L
P)、角膜(35)の曲率、及び屈折特性を、眼の中央軸長(L
Z)及び/又は周辺軸長(L
P)、角膜(35)の曲率、及び屈折特性の前記正常データと比較し、
前記処理手段は、前記測定の測定データに対する中央軸長(L
Z)及び/又は周辺軸長(L
P)、曲率、又は屈折特性の整合性に従って、前記比較のための正常データを選択する
請求項
13又は請求項
14に記載の方法。
【請求項16】
第1測定装置(11)、第2トポグラフィ測定装置(12)、第3屈折度測定装置(13)、及び処理手段(14)を備える、被験者の眼を検査する視力検査システム(10)であって、
前記被験者の眼(16)の中央軸長(L
Z)及び周辺軸長(L
P)は、前記第1測定装置によって測定され、前記眼の角膜(35)の曲率は、前記第2トポグラフィ測定装置によって測定され、前記眼の屈折特性は、前記第3屈折度測定装置によって測定され、前記処理手段は、前記第1測定装置、前記第2トポグラフィ測定装置、及び前記第3屈折度測定装置の測定値の測定データを処理するよう構成され、
前記視力検査システムは、固視手段(53)を備え、
前記眼は、中央軸長(L
Z)又は周辺軸長(L
P)のいずれかを測定するために、前記固視手段によって前記視力検査システムに対して固定され
、
前記固視手段(53)は、眼(16)について表示されるよう構成され、前記眼によって焦点が合わされるように構成される周辺固視マークを備え、
前記周辺固視マークは、前記周辺固視マークが前記眼によって焦点が合わされる時に、前記眼の視軸(15)が前記第1測定装置の光学測定軸(17)に対して角度α(α>0°)だけ傾くように配置され、
前記固視手段(53)は、中央固視マークの光路(70)内で旋回するよう構成される光学偏向要素(69)を備え、
前記中央固視マークの前記光路は、前記光学偏向要素を用いて偏向されることによって、前記中央固視マークが、前記光学測定軸(17)に対して、前記眼(16)に対向する前記視力検査システム(10)の筐体側上で偏心して配置される周辺固視マークとして表示される
視力検査システム。
【請求項17】
前記第1測定装置、前記第2トポグラフィ測定装置、及び前記第3屈折度測定装置(11,12,13)は、1つの機器として統合されている
請求項
16に記載の視力検査システム。
【請求項18】
前記固視手段(53)は、眼(16)について無限遠で表示されるよう構成され、前記眼によって焦点が合わされるように構成される中央固視マークを備え、
前記中央固視マークが眼によって焦点が合わされる時に、前記中央固視マークは、前記眼の視軸(15)が前記第1測定装置(11)の光学測定軸(17)とアラインされるように配置される
請求項
16又は請求項
17に記載の視力検査システム。
【請求項19】
前記周辺固視マークは、前記光学測定軸(17)に対して、前記眼(16)に対向する前記視力検査システム(10)の筐体側上で偏心して配置される少なくとも1つの発光ダイオード(68)によって実現される
請求項
16に記載の視力検査システム。
【請求項20】
前記第1測定装置(11)、前記第2トポグラフィ測定装置(12)、及び前記第3屈折度測定装置(13)は、前記眼(16)の光軸(15)と一致する共通測定軸(17)を備える
請求項
16-19のいずれか1項に記載の視力検査システム。
【請求項21】
前記第1測定装置(11)は、超音波測定装置又は干渉測定装置である
請求項
16-19のいずれか1項に記載の視力検査システム。
【請求項22】
前記第1測定装置(11)は、光コヒーレンス干渉法(OCT)のための干渉計である請求項
21に記載の視力検査システム。
【請求項23】
前記第1測定装置(11)は、部分コヒーレンス干渉計(18)であって、前記部分コヒーレンス干渉計は、前記眼(16)の前面(37)及び網膜(36)を同時にキャプチャする、コヒーレント光源(22)、2つの測定アーム(33,34)、及び検出器手段(27)を有するよう構成される
請求項
21に記載の視力検査システム。
【請求項24】
前記第2トポグラフィ測定装置(12)は、ケラトメータ(19)及び/又はシャインプルーフシステムである
請求項
16-23のいずれか1項に記載の視力検査システム。
【請求項25】
前記第3屈折度測定装置(13)は、オートレフラクトメータ(20)である
請求項
16-24のいずれか1項に記載の視力検査システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の特徴を有する被験者の眼を検査する方法及び請求項17の特徴を有する視力検査システムに関する。
【背景技術】
【0002】
屈折測定装置は、被験者の眼の屈折値を求めるために、十分に知られ、日常的にその役割を果たしている。屈折値は、眼の光学的屈折異常を評価するために利用され得る。屈折異常のよくある形態は、焦点面が網膜の前にある近視であり、これはぼやけた視覚的印象を生む。近視の異なる形態の間には差異がある。いわゆる軸性近視の場合には、眼軸長が伸びる。屈折性近視の場合には、眼の屈折部分、例えば角膜又は水晶体の屈折度が増す。増加した屈折度は、例えば、角膜のような屈折表面の増加した曲率によって生じる。水晶体の屈折率は、増加した屈折度が発生するようにも変化され得る。近視は、視距離が近い視覚的作業のような異なる環境因子によって小児期に既に進行し得て、又は近視は、年齢が進むにつれて、例えば水晶体の毛様体筋の調節能力の低下によって進行し得る。薬剤摂取以外にも、糖尿病のような病気又は遺伝素因も近視の原因となり得る。
【0003】
屈折測定装置を用いて、屈折値は、比較的容易に、ディオプトリ(dpt)の単位で客観的に求められ得る。視力検査システムは、例えば、屈折測定装置から及びトポグラフィ測定装置から構成されるDE 102 006 017 389 A1から知られている。屈折測定装置は、本件では、ケラトメータの形で実現される局所測定装置と組み合わせられるオートレフラクトメータである。ケラトメータを用いて、角膜のトポグラフィが決定され得て、これは、可能性がある近視の原因、例えば推定される(supposed)白内障についての情報を得ることを可能にする。
【0004】
それにもかかわらず、このようにして得られた屈折及びトポグラフィのデータを評価することは難しく、それは、屈折測定は、不正確であり得て、他の影響を及ぼす要因もある屈折値の原因であり得るからである。不正確である屈折測定は、例えば、被験者の眼が、測定の間に、近い範囲で遠近調節をするときに起こり得る。これを除外するために、毛様体筋は、薬剤によって麻痺(毛様体筋麻痺)され得るが、これは、時間がかかり被験者には不快である。
【0005】
軸性近視の場合、眼の中央軸長が長くなり、これが眼の壁構造、特に網膜が伸長されることにもつながる。この伸長はまた、周辺部の(輪状の)網膜にも影響を与える。したがって周辺網膜の領域においては、周辺屈折値は、視軸上において中央で測定される中央屈折値とは異なる。もし軸性近視が眼鏡又はコンタクトレンズによって補正されるなら、焦点面又は焦点は、視軸上で網膜上に、特に黄斑部にシフトされる。しかし屈折値は、軸性近視の場合、網膜の周辺領域においてはしばしば異なるので、焦点面又は焦点は、眼鏡又はコンタクトレンズによる補正を通じて、周辺領域において網膜の後ろにシフトされる。健康な眼の場合、焦点面は、網膜の形状に一致するので、焦点面は、カップ(cup)の形状を有するか、又は焦点杯(focal cup)に対応する。眼鏡又はコンタクトレンズによる補正の場合、この焦点杯は、黄斑部における網膜上にだけあり、網膜の周辺部においては後ろにシフトされる結果、近視は、周辺部においては過矯正されている。
【0006】
しかし小児期における眼の成長の間、軸性近視のそのような補正は、眼球の成長が影響されることにつながり得て、その結果、眼球の長さは長くなり続け、軸性近視は結果としてより速く進行する。この成長期において眼の成長は、水晶体の焦点へ向けて成長するので、一般的な推測は、視力補助は、成長を通しての眼の補正を防ぐことである。網膜の後ろにある周辺部における焦点杯のシフトは、眼のこの望ましくない成長発達を促進するようである。もし焦点杯が、視力補助によって網膜の周辺部における網膜の前でシフトされ得るなら、軸性近視の進行は遅くされ得ると推測され得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって本発明は、眼の屈折特性がより正確に求められ得る方法及び視力検査システムを提案するという目的に基づいている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、請求項17の特徴を有する視力検査システムによってと同時に、請求項1の特徴をする方法によって実現される。
【0009】
被験者の眼を検査する本発明の方法は、第1干渉測定装置、第2トポグラフィ測定装置、第3屈折度測定装置、及び処理手段を備える視力検査システムを用いて実行される。被験者の眼の中央軸長及び周辺軸長は、前記第1測定装置によって測定される。眼の角膜の曲率は、第2測定装置によって測定される。眼の屈折特性は、第3測定装置によって測定される。第1、第2、及び第3測定装置による測定の測定データは、処理手段によって編集され、処理手段は、測定データを出力する。
【0010】
屈折値を客観的に求めること以外に、眼の軸長と共に、角膜のトポグラフィ又は曲率についての測定データは、この方法を用いて特定され得る。よって同時に利用可能になるこれら測定データにより、検査を行う人は、測定された屈折値をより容易に評価し得る。視軸の領域に位置する中央軸長、及び中心窩の外の網膜の周辺領域において視軸の領域の外に配置される周辺軸長が、軸長として測定されることが本発明にとって本質的である。もし軸性近視の症例が存在するなら、中央軸長及び周辺軸長について異なる測定データが一般には得られる。本処理手段によって出力される測定データに基づいて、検査を実行する人は、軸長近視の症例が存在するか、又は周辺領域の網膜について中心窩内で網膜がどの程度まで変形したかについて評価する立場にある。これは、中央軸長及び周辺軸長の測定を通して、検査された眼のより広範な記述が得られることを意味する。得られた測定データによって、改良された光学補正又は視力補助は、その後、計算又は選択され得る。
【0011】
中央軸長の測定の間、眼の視軸は、第1測定装置の光学測定軸にアラインされ得てもよい。周辺軸長の測定の間、眼の視軸は、第1測定装置の光学測定軸に対して角度α(α>0°)傾けてもよい。視軸は、窩(fovea)から始まる網膜の中央領域をしばしば通る。網膜の周辺領域は、黄斑部又は周中心窩の外側端部域で始まる。したがって周辺軸長は、網膜の周辺領域から始まって測定される。原則として、周辺軸長は、角度α≧1°40’を持つ中心窩の外で、角度α≧5°を持つ窩の外で、角度α≧8°20’を持つ傍中心窩の外で、角度α≧18°20’を持つ周中心窩の外でも既に測定され得る。
【0012】
眼の角膜の曲率及び眼の屈折特性は、眼の視軸が第1測定装置の光学測定軸にアラインされている間に、及び/又は、眼の視軸が第1測定装置の光学測定軸に対して角度α(α>0°)だけ傾けられている間に、測定され得る。例えば、もし中央軸長を測定し周辺軸長も測定する視力検査システムに対して眼が角度αだけ傾けられるなら、眼の角膜の曲率及び屈折特性は、中央軸長の測定の間に測定され得るだけでなく、周辺軸長の測定の間にも測定され得る。眼の屈折特性についての測定値は、それから、周辺軸長が測定される網膜の周辺領域についても特に得られる。このように、眼の光学系を検査することは、より正確になる。
【0013】
眼の視軸は、周辺軸長の測定の間、第1測定装置の光学測定軸に対して20°±10°である角度αだけ傾けられ得る。光学測定軸に対する視軸のこの比較的強い傾きを通して、網膜の、又は対応して湾曲された眼の焦点カップ(focal cup)の周辺領域は、優位性をもって、検査され得る。この領域で得られる測定データは、検査を実行する人を通じて、近視又は軸性近視を決定又は評価することを可能にする。
【0014】
周辺軸長は、第1測定装置の光学測定軸に対する眼の視軸の異なる傾きについて測定され得て、角度αは、5°の増分で変化させられ得る。これによって、網膜の多くの点において眼の周辺軸長を測定することが例えば可能になる。測定のこれら点は、視軸に対しての同心円上に分散されることによって、それぞれの周辺軸長の多数の点の測定データが得られる。もし眼の屈折特性が、それぞれの周辺軸長の個々の測定のそれぞれの間に相補的に測定されるなら、眼の光学系を全体にわたってカバーすることが測定データを介して可能になる。
【0015】
眼によって焦点が合わされる周辺固視マークは、視力検査システムの固視手段によって表示され得る。これによって眼は、固視マーク上に焦点を合わすことができ、眼は、視力検査システムに対して固定され得る。周辺固視マークは、眼の光軸又は眼の視軸が第1測定装置の測定軸とアラインしないように配置され得て、これによってそれからずれるようにされ得る。例えば固視マークは、視覚的刺激が当該被験者に呈示される発光ダイオードであり得る。よってこの視覚的刺激は、第1測定装置の測定軸に対して眼の向きを所望のやり方で設定し得る。周辺固視マークが眼の近い範囲内に位置し、眼が周辺固視マーク上に遠近調節もされるという事実は、周辺軸長の測定については重要ではない。これと対照的に、近距離に遠近調節される眼の屈折特性を求めることは、誤差を伴ってでしか可能ではなく、毛様体筋の麻痺(毛様体筋麻痺剤(cycloplegia))が必要となる。これによって、周辺軸長の測定値を用いて、毛様体筋麻痺剤を用いることなく、眼の屈折の条件全般について求めることもできる。
【0016】
眼によって無限遠において焦点が合わされ得る中央固視マークは、視力検査システムの固視手段によって表示され得る。眼は、固視マーク上に焦点を合わすことが可能であり、眼は、視力検査システムに対して固定されることが可能である。視力検査システムの測定軸に対する眼の正確な位置付けは、視力検査システムの正確な測定のために必須である。有利には、ここでは眼の光軸は、視力検査システムの測定軸にアラインされる。ここで、眼は、被験者に呈示されている固視マークによって方向付けがなされ得る。被験者は、無限遠において固視マーク上に焦点を合わせることができる。固視マークは、例えば物体の画像表現であり得る。視力検査システムの光路に結合されたスクリーンは、画像表現を実行し得る。被験者の眼に対する画像表現は、無限遠においてであることによって、視力検査システムによる測定の間、眼の毛様体筋が完全にリラックスしていることが重要である。
【0017】
よって有利には、眼は、毛様体筋麻痺剤を処方することなく、検査され得る。よって眼をより容易にかつより速く検査することが可能である。
【0018】
被験者の異なる眼の遠近調節の状態も視力検査システムの固視手段によって作り出され得る。ここで、眼の屈折特性と共に、眼の中央軸長及び/又は周辺軸長は、それから遠近調節状態のそれぞれについて測定され得る。眼の異なる遠近調節の状態又は異なる見る位置は、眼の包括的な光学的記述を生成するために、処理手段によって用いられ得る。これら測定値を用いて、改良された光学補正、例えば眼鏡、コンタクトレンズ、眼内レンズ、有水晶体眼内レンズ、レーザ手術が計算され得る。
【0019】
測定は、第1、第2及び第3測定装置を用いて眼に対して同時に実行され得る。しかし軸長は、2ステップで測定される。
【0020】
もし眼の軸長、眼の角膜の曲率、及び眼の客観的屈折特性又は屈折値が例えばディオプトリで同時に測定されるなら、異なる測定機器による連続的測定値において発生するかもしれない測定誤差が除外され得る。第1、第2、及び第3測定装置が測定を同時に実行する時、全ての得られた測定データは、時間軸上でのこの時点における眼の状態を参照し、これは、同じ条件の下で得られた測定データを比較することが可能となる。異なる装置を用いる時、又は測定が順番に実行される時、眼は、眼の動きの結果、測定軸について常に異なる向きに向いているか、又は異なる遠近調節状態にある。
【0021】
中央軸長を周辺軸長と比較することが実行され得て、その比較の結果は、処理手段によって、測定データと共に出力され得る。ここで、処理手段は、その比較、前記比較の結果の出力を実行し、これにより検査を実行する人は、得られた測定データをより容易に評価することが可能になる。ここで、処理手段は、コンピュータ及びスクリーンのような、データ処理及び表示機能のための手段を備える。
【0022】
にもかかわらず、中央測定データを周辺軸長と比較することも実行され得て、この比較の結果は、処理手段によって測定データと共に出力され得る。よって中央測定データは、中央軸長以外にも客観的屈折値及び角膜のトポグラフィ又は曲率についての測定データを備え得る。その後に利用可能になる、これら測定データによって、検査を実行する人は、測定された屈折値をより容易に評価できる。
【0023】
屈折度は、比較を通じて処理手段によって求められ得る。屈折度によって、軸長の特定された測定値は、他方の測定データからの逸脱に基づいてカテゴライズされ得る。処理手段は、客観的屈折度を測定値の物理的量又は測定データに基づいて、特定し得る。ここで、測定値は、異なるように重み付けされ得るか、又は測定値は、相互に関連付けられ得る。処理手段は、客観的屈折度を例えばスクリーン上に出力し得て、眼の屈折特性をより容易に評価できるようになる。
【0024】
被験者の眼の水晶体の屈折率及び/又は屈折率勾配は、処理手段によって測定データから求められ得る。眼の水晶体の屈折率は、被験者の年齢と共に変化する。眼の水晶体の屈折率は、水晶体の異なる点においても異なり得る。周辺軸長及び少なくとも周辺領域における眼の屈折特性を測定することによって、眼の水晶体の屈折率、好ましくはこの領域での屈折率の中央値又は平均値も求めることができるようになる。その後、中央について特定された眼の測定データについて屈折率勾配が求められる。
【0025】
処理手段は、正常データを持つデータベースを備え、ここで測定データの正常データとの比較を実行し、比較の結果を処理手段によって出力することが可能である。もし処理手段が測定データの正常データに対する比較を実行するなら、逸脱は、前記比較の結果に基づいて、又は正常データからの測定データのそれぞれの差異に基づいて容易に評価され得る。
【0026】
もし、例えば、角膜の曲率についての測定値が正常値から大きく逸脱するなら、検査を実行している人は、正常値からやはり逸脱している屈折値を、より容易に解釈できる。前述された例では、角膜の曲率は、屈折値の原因であり得る。さらに、検査を実行している人は、屈折値の理由になるには大きすぎる軸長を求めることができる。もし正常値から逸脱する角膜の曲率及び眼の軸長の測定値が存在しないなら、水晶体の屈折率は、例えば異なり得る。全体的に見て、測定値が同時に得られるという事実により、正確な測定値を容易に素早く得て、それらを正常値と比較することができるようになる。ここで、処理手段は、上記比較を実行し、比較の結果を出力し、その結果、検査を実行する人が得られた測定データをより容易に評価できるようにする。
【0027】
正常集団の眼の測定データは、眼の中央軸長及び/又は周辺軸長、眼の角膜の曲率、及び眼の屈折特性と共に、正常データとして用いられ得る。
【0028】
正常データは、眼の測定データが特定された比較グループの人間の50パーセンタイルに対応し得る。正常データは、比較グループの全ての測定データを含み得るので、処理手段は、比較グループの50パーセンタイルから視力検査システムによって特定された測定データの正確な偏差を出力することができ、この偏差は、例えば、それぞれの例においてその測定データが比較グループのどのパーセンタイルに相当するかも示す。代表的な集団平均(representative population average)は、ここで正常集団(normal population)と呼ばれる比較グループであると理解される。
【0029】
この処理手段は、それぞれの例において、測定された眼の中央軸長及び/又は周辺軸長、曲率、及び屈折特性を、正常データの眼の中央軸長及び/又は周辺軸長、曲率、及び屈折特性と比較できるので、本処理手段は、中央軸長及び/又は周辺軸長、曲率、又は屈折特性の、測定の測定データとの一貫性に従って、比較のための正常データを選択するよう構成される。
【0030】
したがって処理手段は、軸長群、曲率、及び屈折特性について互いに独立して測定データ及び正常データのそれぞれの記録を比較するだけでなく、データベース又は正常データから、視力検査システムによって測定された又はそれらに対応する測定データに最も近い、眼又は当該眼に関連付けられた正常データ及び/又は測定データを選択できる。したがって処理手段は、視力検査システムによって測定された眼と、測定データの形でデータベースに記憶された眼の測定データとを比較し、この比較結果を出力する。この結果に基づいて、検査を実行する人は、視力検査システムによって測定された眼が、標準からどの程度、逸脱しているか、又は既知の症状を既に呈しているかをさらにより容易に評価できる。
【0031】
処理手段は、測定データを比較する時、被験者の年齢を考慮に入れ得る。正常データを有するデータベースは、それぞれの例において特定の年齢に割り当てられ得る正常データを同様に含み得る。処理手段は、正常データを有するデータベースから、被験者の年齢に対応する比較のための正常データをそれから選択し得る。被験者の年齢は、例えば、測定の前に又は後に、入力手段を介して処理手段に入力され得る。近視及び年齢の間の既知の関係のために、当該被験者の年齢を考慮することによって、測定データのさらにより正確な比較が可能になる。加えて、処理手段は、測定データを比較する時には、例えば、当該集団中の近視の有症率を考慮に入れてもよい。年齢以外には、職業プロファイル及び性質も考慮され得る。
【0032】
その測定の前のある時点で求められた被験者の測定データは、正常データとして用いられ得て、この測定データは、眼の周辺及び/又は中央軸長、眼の角膜の曲率、眼の屈折特性を有する。視力検査システムによって、このようにして、異なる時点において、同じ被験者の測定値を得て、それぞれの場合において測定データを取得及び記憶することが可能である。これら測定データは、比較のための正常データとして用いられ得る。このようにして、当該眼の光学的特性の潜在的な変化が、例えば、何ヶ月又は何年かの期間に渡って求められ得る。例えば、悪化していく屈折値の原因が、さらにより容易にこのようにして特定され得る。しかしオプションとしては、それぞれの測定時刻において測定された測定データを、比較グループの正常データと常に比較することも可能である。
【0033】
処理手段は、第3測定装置の測定データを、第1測定装置及び/又は第2測定装置によって訂正することが可能である。上述のように屈折は多くの要因及び環境条件によって影響されるので、客観的屈折値を求めることは、しばしば困難であり、誤差の影響を受ける。しかし角膜の曲率及び軸長は、例えば薬剤又は脳の活動の影響を受けない測定値である。したがって第3測定装置の測定データは、第1及び/又は第2測定装置の測定データによって、優位性をもって訂正され得る。
【0034】
このようにして、処理手段は、眼の測定された客観的屈折値についてのもっともらしさ(plausibility)のチェックを、眼の中央軸長及び/又は周辺軸長及び/又は角膜の曲率によって実行し、屈折値が異なるときに、その屈折値を中央及び/又は周辺軸長及び/又は角膜の曲率に従って訂正するよう構成される。ここでもっともらしさチェックは、それぞれの測定値についての公差を記述する範囲表示(range indications)に基づいて実行され得る。この範囲表示は、データベースに記憶されてもよい。範囲表示は、経験に基づいてもよく、又は統計的平均と併せて、標準偏差に基づいて決定されてもよい。
【0035】
本発明による、被験者の眼を検査する視力検査システムは、第1測定装置、第2トポグラフィ測定装置、第3屈折度測定装置、及び処理手段を備え、被験者の眼の中央軸長及び周辺軸長は、第1測定装置によって測定され、眼の角膜の曲率は、第2測定装置によって測定され、眼の屈折特性は、第3測定装置によって測定される。処理手段は、第1、第2、及び第3測定装置による測定の測定データを編集するよう構成され、視力検査システムは、固視手段を備え、眼は、中央軸長又は周辺軸長のいずれかを測定するために、固視手段によって視力検査システムに対して固定され得る。本発明による視力検査システムの優位性については、本発明による方法の優位性についての記載が参照される。
【0036】
もし第1、第2、及び第3測定装置が、1つの機器として統合されていると特に優位性がある。
【0037】
前記固視手段は、眼について無限遠で表示されるよう構成され、前記眼によって焦点が合わされるように構成される中央固視マークを備え得て、前記中央固視マークが眼によって焦点が合わされる時に、前記中央固視マークは、前記眼の視軸が前記第1測定装置の光学測定軸とアラインされるように配置され得る。原則として、第1測定装置、第2測定装置、及び/又は第3測定装置は、固視手段を含み得る。
【0038】
固視手段は、例えば、スクリーン又は適切なプロジェクタを備え得て、それによって中央固視マークは、無限遠において眼に可視的に呈示され得る。中央固視マークは、物体の画像表現であり得て、1点に眼が焦点を合わせることを避けることができる。中央固視マークは、例えばスプリッタキューブを介して視力検査システムの光路に結合されることによって、中央固視マークが被験者に可視であり得る。
【0039】
さらに、固視手段は、眼に表示されるよう構成され、眼によって焦点が合わされるように構成される周辺固視マークを備え得て、周辺固視マークは、周辺固視マークが眼によって焦点が合わされる時に、眼の視軸が第1測定装置の光学測定軸に対して角度α(α>0°)だけ傾くように配置される。
【0040】
周辺固視マークは、光学測定軸に対して、眼に対向する前記視力検査システムの筐体側上で偏心して配置される少なくとも1つの発光ダイオードによって実現され得る。そして被験者は、自分に対向する視力検査システムの筐体側の前に位置し得て、被験者の眼の動きは、光学的測定軸からある程度の距離にある視力検査システムの筐体側又は筐体上に偏心して配置されている発光ダイオードによって容易に影響され得て、それによって光刺激を作る。発光ダイオードによって、固視マークは、特に低コストで実現され得る。さらに、所望の向きへの眼の動きを開始させるために、複数の発光ダイオードを光学測定軸の周りに同軸上に配置することも想定され得る。加えて、複数の発光ダイオードは、光学測定軸に対して異なる角度αだけ眼の回転をもたらすために、光学測定軸に対して異なる間隔で筐体側に取り付けられてもよい。にもかかわらず、一つの発光ダイオードが、光学測定軸に対しての相対的位置について調整可能なように実現されてもよい。
【0041】
固視手段は、中央固視マークの光路中へと回転するよう構成される光偏向要素を備え得て、それを使うことによって、中央固視マークの光路が偏向されることによって、中央固視マークが、光学測定軸に対して、眼に対向する視力検査システムの筐体側上で偏心している周辺固視マークとして表示され得る。もし例えば中央固視マークがスクリーンによって又は他の適切なプロジェクタによって実現されるなら、スクリーンから来る光路は、光学偏向要素によって偏向され得るが、これは、例えばミラー又はプリズムであり得て、その結果として、光路は、光学測定軸とアラインされたり、又はそれと平行に走ったりはもはやしない。光学偏向要素は、例えば、必要に応じて中央固視マークの光路内に入ったり、出たりするよう回転され得る可動ティルティングミラー(movable tilting mirror)であり得る。よってそれは、一方で、無限遠において焦点が合わされ得る周辺固視マークを眼に呈示することも可能である。
【0042】
第1測定装置、第2測定装置、及び第3測定装置は、眼の光軸と一致させられ得る共通の測定軸を備え得る。測定装置群が共通の測定軸を備える事実により、特に正確で、特に良好に比較できる測定データを得ることが可能になる。もし共有された測定軸が眼の光軸とアラインさせられるなら、眼の軸長を正確に求めることができるという点で特に優位性がある。
【0043】
第2測定装置及び/又は第3測定装置は、眼と、第2測定装置及び/又は第3測定装置との間の距離を測定する距離測定装置を備え得る。距離測定手段は、屈折測定装置及び/又はトポグラフィ測定装置と、検査されるべき眼との間の距離を測定し得る。この距離は、測定データの補正のために必要であり、距離データを獲得することによって、被験者を視力検査システムの前にそれにしたがって正確に配置すること、又は屈折測定装置によって測定された測定データを適切に補正することが可能になる。このようにして、屈折測定装置と、眼の角膜、特に角膜の前面との間の距離は、距離測定手段によって有利に測定され得る。加えて、網膜又は眼の後面からの距離も、距離測定手段によって軸長を考慮しつつ求められ得る。オプションとして、角膜の後面、水晶体の前面、及び/又は水晶体の後面からの距離も求められ得る。距離測定手段の構造のタイプは、基本的に任意であり、この距離測定手段は、トポグラフィ測定装置によって、ケラトメータによって、又はシャインプルーフシステムによって実現され得る。
【0044】
第1測定装置は、超音波測定装置又は干渉法測定装置であり得る。原則として、第1測定装置は、眼の中央軸長及び周辺軸長が測定され得る測定装置の任意のタイプであり得る。
【0045】
さらに、第1測定装置は、光コヒーレンス干渉法(OCT)のための干渉計であり得る。
【0046】
代替として、第1測定装置は、部分コヒーレンス干渉計(partial coherence interferometer、PCI)であり得て、この干渉計は、角膜の前面及び網膜又は眼の光学的境界表面を同時にキャプチャする、コヒーレントな光源、2つの測定アーム、及び検出器手段を有するよう構成されている。この干渉計は、2つの測定アームを使用するという事実により、眼の前面及び網膜を同時に検出し、前面及び網膜の相対的距離を、結果的には眼の中央及び/又は周辺軸長を求めることが可能である。ここで、眼が視力検査システムからどのくらい離れているかは重要ではないが、これは、距離測定又は眼の軸長測定は、干渉計によって、視力検査システムからの距離には関係なく測定され得るからである。視力検査システムに対しての眼の距離位置に起因する干渉計の起こり得る測定誤差は、このようにして完全に除去され得る。軸長は、結果的に特に正確に測定され得る。軸長以外にも、角膜の後面、水晶体の前面、水晶体の後面、及び光学的境界表面の間の距離のような、眼の他の光学的境界表面は、干渉計によってさらに測定され得て、処理手段によって処理され得る。これら測定データは、対応する正常データとの比較のための処理手段によって同様に利用され得る。
【0047】
第2測定装置は、ケラトメータ及び/又はシャインプルーフシステムであり得る。そのような測定装置によって、眼の角膜のトポグラフィ又は曲率を求めることができる。
【0048】
ケラトメータは、カメラ及びカメラによってキャプチャされ得て、円形であり、平行化され(collimated)ない蛍光ストリップによって、及び2つの平行化された光点によって実現され得る測定マークを有する検査手段を備え得る。ケラトメータの測定マークの構成のタイプは、基本的に任意であり、発光ダイオードが光源として想定され得る。蛍光ストリップは、円形光伝導要素によって生成され得る。複数の同心円状の円形蛍光ストリップを生成することも想定され得る。有利には、測定マークのための光としては、赤外光も用いられ得る。検査手段は、視力検査システムの、又はケラトメータの光路にスプリッタキューブを介して結合されているカメラであり得る。カメラによって、眼の角膜上の測定マークの寄生画像(parasitic image)がキャプチャされ得る。画像処理によって、角膜の曲率は、測定マークの寄生画像から容易に導出され得て、処理手段によって表示され得る。さらに、被験者の眼の正確な配置及び方向付けのために、視力検査システムのためのセットアップカメラとして、又はオーバービューカメラとして前記のカメラを使用することが可能である。
【0049】
シャインプルーフシステムは、眼に光のギャップ(light gap)を照射するよう設計され得る投影手段、及び眼における光のギャップの断面図をキャプチャするよう設計され得るカメラを有する検査手段を備え得て、この投影手段及びカメラは、シャインプルーフの原理に従った関係で互いに対して配置されるよう構成される。投影手段によって、光のギャップは、それから眼の上に投影され得て、眼の光軸、つまり視軸に沿った眼のギャップ照射が実行され得るようになる。シャインプルーフ原理に従って配置されるカメラによって、このようにして生成される眼におけるライトギャップの断面図がキャプチャされ、照射された眼における断面領域又は眼の前部が光学的にキャプチャされ得る。このようにして生じる眼の長手方向の断面図は、角膜の及び水晶体の光学的境界表面をそれから有利に再現し得る。処理手段は、光学的境界表面の相対的距離を、このようにして得られた画像データのセットから容易に計算し得る。さらに、角膜の曲率も容易に特定され得る。シャインプルーフシステムは、第2測定装置単体を、又はケラトメータと併せて、実現し得る。
【0050】
有利には、第3測定装置は、オートレフラクトメータであり得る。
【0051】
このオートレフラクトメータは、ライティングパターンを眼の網膜上に投影するよう設計され得る投影手段、及び回折ユニット及び眼におけるライティングパターンをキャプチャするよう設計され得るカメラを有する検査手段を備え得る。ここで、ライティングパターンは、ライティングパターンの焦点が網膜上に合わされるようなやり方で投影され得る。光学的検査手段によって、網膜において反射されるライティングパターンは、画像パターンがカメラの光電センサ上に表示されることで、眼の水晶体を通して検査され得る。この画像パターンは、カメラによってキャプチャされ、画像編集によって分析される。眼の屈折特性に対応して、網膜上に投影されるライティングパターンは、特徴的に歪まされることで、眼の屈折特性は、歪の度合いからライティングパターンを分析するフレームワークの中で導出され得る。回折ユニットは、例えば、円形に配置されたいくつかの孔を有する開口板であり得て、この孔の光路はそれぞれ、偏光プリズム又は対応するレンズを介してカメラのセンサ上へと偏向される。代替として、回折ユニットは、回折光学要素(DOE)であってもよい。
【0052】
視力検査システムの他の優位性を持つ実施形態は、方法の請求項1を参照する従属請求項に含まれる特徴の記載から実現される。
【図面の簡単な説明】
【0053】
以下において、本発明は、添付の図面を参照して、より詳細に説明される。
【
図1】視力検査システムの概略表現を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
図1は、第1干渉測定装置11、第2トポグラフィ測定装置12、第3屈折測定装置13及び処理手段14を備える視力検査システム10の構成の概略的な表現を示す。視力検査システム10は、視軸15が視力検査システム10の測定軸17に対応しないよう、又はそれから逸脱するよう、視軸15つまり検査される眼16の光軸に対して配置されている。これにより、眼16の視軸15は、光学測定軸17に対して、角度αだけ傾きが付けられる。第1干渉測定装置11は、部分コヒーレンス干渉計18によって実現され、第2トポグラフィ測定装置12は、ケラトメータ19によって実現され、第3屈折測定装置13は、オートレフラクトメータ20によって実現される。
【0055】
干渉計18は、本質的には、第1スプリッタキューブ30及び第2スプリッタキューブ31と共に、レーザ光源22及びレンズ構成23を有するレーザ手段21、第1ミラー25及び第2ミラー26を有するミラー手段24、検出器28及びレンズ構成29を有する検出器手段27によって構成される。特に第2ミラー26は、両矢印32に沿って長手方向に変位可能であるように配置され、その結果、第2参照アームの長さ34又は対応する参照パスの長さは変更され得る。しかし第1参照アーム33は、その長さが変更され得るようには実現されていない。第2ミラー26の変位を通して、視軸15上に位置する眼16の異なる領域がスキャンされ得る。特に、眼16の角膜35から網膜36までの、つまり角膜35の前面37から網膜36の後面38までの中央軸長(LZ)及び周辺軸長(LP)を測定することが可能である。部分コヒーレンス干渉計18の既知の機能のより深い説明は、ここでは割愛される。さらに、角膜35の前面37、角膜35の後面39、水晶体41の前面40、水晶体41の後面42、網膜36の後面38のような視軸15上の光学境界表面の相対位置を記述する測定データも獲得され得る。
【0056】
ケラトメータ19は、カメラ44を用いてキャプチャされ得て、それぞれ赤外光源47によって及びレンズ構成48によって実現される測定マーク46と共に、カメラ44及びレンズ構成45を有する検査手段43を備える。赤外光源は、例えば、発光ダイオードであり得る。測定マーク46は、カメラ44を用いて両方共にキャプチャされ得る、角膜35上の2つの平行化された光点を実現し得る。測定マーク46は、円形で、平行化されず、図示されない蛍光ストリップ(fluorescent strip)によって補充される。検査手段43は、スプリッタキューブ49を介して視力検査システム10の光路50に結合される。
【0057】
オートレフラクトメータ20は、眼16の屈折特性を求める働きをし、固視手段53と共に、投影手段51及び検査手段52を実質的に備えるが、固視(fixation)手段53は、オートレフラクトメータ20とは独立しても実現され得る。光学的投影手段51を用いて、ライティングパターンが眼16の網膜36上に投影され、そこに焦点が集まり得る。ここで、投影手段51は、開口板54、レンズ構成55、及び赤外光源56を備える。ライティングパターンは、オートレフラクトメータ20の第1スプリッタキューブ59を介して開口板58を有するミラー57を介して視力検査システムの光路50に結合される。光学的検査手段52は、6つ折り(6-fold)開口板60、偏向プリズム(deflection prism)61、レンズ構成62、及びカメラ63を備える。カメラ63を用いてキャプチャされる画像データは、処理手段14において処理及び分析されることによって、眼16の屈折特性を求めることができる。検査手段52は、ミラー57及び第1スプリッタキューブ59を介して光路50に結合される。
【0058】
オートレフラクトメータ20の固視手段53は、中央固視マークの画像表現のためのスクリーン64によって、及び無限大における中央固視マークを表示するためのレンズ構成65によって実現される。レンズ構成65は、眼16の異なる遠近調節状態又は異なる視距離を設定することできるようにするために、スクリーン64の光路70の方向に移動され得る。第2スプリッタキューブ66は、中央固視マークを光路50に結合することを可能にする。また第1スプリッタキューブ59及び第2スプリッタキューブ66は、オートレフラクトメータ20の一部である。
【0059】
オートレフラクトメータ20の固視手段53は、眼16に表示されるよう構成され、眼16によって焦点が合わされるように構成され、ここで発光ダイオード68のうちの1つによって実現され得る周辺固視マークをさらに備える。発光ダイオード68は、光学測定軸17に対して、眼16に対向する視力検査システム10の筐体側において偏心して配置されるがここでは図示されない。周辺固視マークを説明するために、発光ダイオード68のうちの1つが点灯されることによって、発生された光の刺激に起因して、視軸15が測定軸17と成す角度αの眼16の回転が、周辺固視マーク上への遠近調節と共に、引き起こされる。このようにして、干渉計18によって眼の周辺軸長LPを測定することがそれから可能になる。周辺固視マークを呈示するのにどの発光ダイオード68が用いられるかに依存して、周辺軸長LPは、測定軸17に対する角度αによる視軸15の異なる傾きにおいて測定され得る。周辺固視マークが表示されている時に近い距離で眼の遠近調節が行われているという事実は、周辺軸長APの測定とは関連がない。中央軸長AZは、周辺軸長APの測定の前又は後に測定されるので、処理手段14は、周辺軸長APに対する中央軸長AZの比較を実行して、その他の測定データと併せて、当該比較の結果を出力する。中央軸長AZに対する周辺軸長APの比に依存して、それから検査を実行する人は、眼16の屈折特性を評価し得る。
【0060】
代替として、固視手段53は、スクリーン64、レンズ構成65、又は中央固視マークの光路70の中で旋回され得る傾斜するミラー69を備え得る。よって光路70は、第2スプリッタキューブ66の前においてさえも、傾斜するミラー69によって偏向され得て、測定軸17に対して角度αを成して眼16に向けられる。その後、中央固視マークは、周辺固視マークとして眼16に呈示される。眼16が無限遠において周辺固視マークに対して遠近調節できることもここで優位性をもつ。周辺軸長LPを測定すること以外にも、毛様体筋麻痺剤を処方することなく、オートレフラクトメータ20によって、眼16の屈折特性の測定もそれから可能である。測定軸17の周りに回転可能なように固視手段53も実現され得ることによって、周辺固視マークは、眼16の視野内のほとんど任意の点において呈示され得る。
【0061】
さらに、距離測定手段67は、ここではケラトメータ19によって実現されることが想定される。距離測定手段67は、測定マーク46及び検査手段43を備える。
【0062】
ここで図示される視力検査システム10によって、第1測定装置11、第2測定装置12、及び第3測定装置13で同時に測定が実行され、処理手段14は、第1測定装置11、第2測定装置12、及び第3測定装置13による測定の測定データを処理し、処理手段14は、ここでは図示されないが正常データを有するデータベースを備え、正常データに対する測定データの比較が実行され、その比較の結果は、処理手段14の手段によって出力される。
【0063】
図2は、視軸15及びカップ形状の焦点平面72又は眼16の焦点カップ(focal cup)においてよく焦点が合わされた画像の視軸15上の焦点71と共に、眼16を示す。焦点71は、ここでは網膜36の後面38の前であり、よって眼16は近視である。測定軸17が視軸15に対して角度αで旋回されるとき、焦点71と比較して後面38により近い焦点73が生じる。これから、カップ形状の焦点面72の形状が生じる。眼16の近視の可能な最良の補正を達成するために、視力補助又は侵襲性外科的介入によって後面38上に焦点71をシフトするだけでなく、網膜36の形状に対応させてカップ形状の焦点面72を適応させることもここで必要とされる。この適応は、網膜36の周辺領域における眼16の光学特性についての知識が存在するときだけ可能になる。近視がさらに進行することを防止するためには、例えば青年期において、網膜36の曲率を越えた視力補助の対応する選択を通して、カップ形状の焦点面72は、よりきつく湾曲させられ得る。眼16の屈折特性以外にも、眼16の中央軸長L
Z及び周辺軸長L
Pの知識がここでは特に重要である。