IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日東電工株式会社の特許一覧

特許7572153フレキシブル画像表示装置内の積層体に用いる粘着シート、フレキシブル画像表示装置に用いる積層体、及びフレキシブル画像表示装置
<>
  • 特許-フレキシブル画像表示装置内の積層体に用いる粘着シート、フレキシブル画像表示装置に用いる積層体、及びフレキシブル画像表示装置 図1
  • 特許-フレキシブル画像表示装置内の積層体に用いる粘着シート、フレキシブル画像表示装置に用いる積層体、及びフレキシブル画像表示装置 図2
  • 特許-フレキシブル画像表示装置内の積層体に用いる粘着シート、フレキシブル画像表示装置に用いる積層体、及びフレキシブル画像表示装置 図3A
  • 特許-フレキシブル画像表示装置内の積層体に用いる粘着シート、フレキシブル画像表示装置に用いる積層体、及びフレキシブル画像表示装置 図3B
  • 特許-フレキシブル画像表示装置内の積層体に用いる粘着シート、フレキシブル画像表示装置に用いる積層体、及びフレキシブル画像表示装置 図3C
  • 特許-フレキシブル画像表示装置内の積層体に用いる粘着シート、フレキシブル画像表示装置に用いる積層体、及びフレキシブル画像表示装置 図4
  • 特許-フレキシブル画像表示装置内の積層体に用いる粘着シート、フレキシブル画像表示装置に用いる積層体、及びフレキシブル画像表示装置 図5
  • 特許-フレキシブル画像表示装置内の積層体に用いる粘着シート、フレキシブル画像表示装置に用いる積層体、及びフレキシブル画像表示装置 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】フレキシブル画像表示装置内の積層体に用いる粘着シート、フレキシブル画像表示装置に用いる積層体、及びフレキシブル画像表示装置
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20241016BHJP
   C09J 7/10 20180101ALI20241016BHJP
   C09J 133/14 20060101ALI20241016BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20241016BHJP
   B32B 7/022 20190101ALI20241016BHJP
   H10K 50/10 20230101ALI20241016BHJP
   H05B 33/02 20060101ALI20241016BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20241016BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J7/10
C09J133/14
B32B27/00 M
B32B7/022
H05B33/14 A
H05B33/02
G09F9/30 308Z
G09F9/00 313
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020046531
(22)【出願日】2020-03-17
(65)【公開番号】P2021147438
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2022-10-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004314
【氏名又は名称】弁理士法人青藍国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(74)【代理人】
【識別番号】100214639
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 圭亮
(72)【発明者】
【氏名】長田 潤枝
(72)【発明者】
【氏名】外山 雄祐
【審査官】井上 明子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-108498(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0083687(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0287096(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0191543(US,A1)
【文献】国際公開第2019/026760(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/026753(WO,A1)
【文献】特開2018-045213(JP,A)
【文献】特開2019-218513(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 7/38
C09J 7/10
C09J 133/14
B32B 27/00
B32B 7/022
H10K 50/10
H05B 33/02
H10K 59/10
G09F 9/30
G09F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル系ポリマー及び架橋剤を含む粘着剤組成物から形成された粘着シートであって、
前記(メタ)アクリル系ポリマーは、モノマー成分としてヒドロキシル基含有モノマーを含み、
前記(メタ)アクリル系ポリマーを構成する全モノマー中、前記ヒドロキシル基含有モノマーの配合割合が0.01~8重量%であり、
前記粘着シートは、
1000%モジュラスが0.01~0.6N/mm2であり、
ゲル分率が50%以上75%未満である、巻き取り可能な表示部を有するフレキシブル画像表示装置内の積層体に用いる粘着シート。
ただし、前記粘着シートは、
繰り返し屈曲されるデバイスを構成する一の屈曲性部材と他の屈曲性部材とを貼合するための繰り返し屈曲デバイス用粘着剤であって、
前記粘着剤からなる粘着剤層の一方の面と他方の面とを互いに反対方向に1000%変位させたときの最大せん断応力に対する、前記1000%変位時から60秒後のせん断応力の割合が、72%以下であり、
ゲル分率が、40%以上、90%以下である
ことを特徴とする繰り返し屈曲デバイス用粘着剤を除く。
【請求項2】
前記1000%モジュラスが0.1N/mm2以下である、請求項1に記載の粘着シート。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の粘着シートと、
前記粘着シートを支持する基材と、
を備えた、巻き取り可能な表示部を有するフレキシブル画像表示装置に用いる積層体。
【請求項4】
偏光膜をさらに備えた、請求項3に記載の積層体。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の積層体と、
画像表示パネルと、
を備え、
前記積層体が前記画像表示パネルよりも視認側に位置する、巻き取り可能な表示部を有するフレキシブル画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブル画像表示装置内の積層体に用いる粘着シート、フレキシブル画像表示装置に用いる積層体、及びフレキシブル画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ及び有機ELディスプレイ等の各種の薄型の画像表示装置は、例えば、画像表示パネル及び光学フィルムを含む積層構造を有している(例えば、特許文献1)。画像表示装置を構成する各層の接合には、粘着シートが使用されることが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-157745号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、湾曲が可能なフレキシブル画像表示装置が実用化されている。本発明者らの検討によると、巻き取り可能な表示部を有するフレキシブル画像表示装置を繰り返し使用した場合、当該装置に巻き癖などの跡が残ることが判明した。跡が残った画像表示装置を無理にフラットな状態に戻そうとすると、粘着シートによって接合された層が剥がれる、又は、画像の表示にムラが生じるといった不具合が生じうる。
【0005】
本発明者らは、鋭意検討の結果、巻き癖などの跡が、フレキシブル画像表示装置が湾曲したときに当該装置を構成する各層に生じる歪みに起因していることを見出した。この歪みは、ゲル分率が低く、柔軟な粘着シートを用いることによって緩和できると予想される。しかし、粘着シートのゲル分率を低下させた場合、巻き取り可能な表示部を有し、歪みが生じる範囲が比較的広いフレキシブル画像表示装置では、粘着シートによって接合された層が剥がれやすくなることが判明した。
【0006】
そこで本発明は、巻き取り可能な表示部を有するフレキシブル画像表示装置を繰り返し使用した場合であっても、巻き癖などの跡が残ることを抑制できるとともに、当該装置を構成する層が剥がれることを抑制できる粘着シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
1000%モジュラスが0.01~0.6N/mm2であり、
ゲル分率が30%以上である、巻き取り可能な表示部を有するフレキシブル画像表示装置内の積層体に用いる粘着シートを提供する。
【0008】
さらに本発明は、
上記の粘着シートと、
前記粘着シートを支持する基材と、
を備えた、巻き取り可能な表示部を有するフレキシブル画像表示装置に用いる積層体を提供する。
【0009】
さらに本発明は、
上記の積層体と、
画像表示パネルと、
を備え、
前記積層体が前記画像表示パネルよりも視認側に位置する、巻き取り可能な表示部を有するフレキシブル画像表示装置を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、巻き取り可能な表示部を有するフレキシブル画像表示装置を繰り返し使用した場合であっても、巻き癖などの跡が残ることを抑制できるとともに、当該装置を構成する層が剥がれることを抑制できる粘着シートを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態にかかるフレキシブル画像表示装置に用いる積層体及びフレキシブル画像表示装置の断面図である。
図2】本発明の別の実施形態にかかるフレキシブル画像表示装置に用いる積層体及びフレキシブル画像表示装置の断面図である。
図3A】フレキシブル画像表示装置を構成する各層の粘着シートによるずれ量を測定する方法を説明するための図である。
図3B】フレキシブル画像表示装置を構成する各層の粘着シートによるずれ量を測定する方法を説明するための図である。
図3C】フレキシブル画像表示装置を構成する各層の粘着シートによるずれ量を測定する方法を説明するための図である。
図4】フレキシブル画像表示装置の一例を示す側面図である。
図5】位相差膜の製造方法を説明するための図である。
図6】連続巻取試験を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施することができる。
【0013】
(粘着シートの実施形態)
本実施形態の粘着シートは、巻き取り可能な表示部を有するフレキシブル画像表示装置内の積層体に用いられる部材であり、1000%モジュラスが0.01~0.6N/mm2であり、ゲル分率が30%以上である。
【0014】
粘着シートの1000%モジュラスとは、一方向への引張力によって粘着シートに1000%の伸びを与えたときに粘着シートに生じる応力(引張応力)を、粘着シートの初期断面積で除した値により表される特性である。粘着シートの1000%モジュラスは、以下のように評価できる。
【0015】
評価対象である粘着シートを30mm×40mmの短冊状に切り出す。次に、切り出した粘着シートを、気泡が混入しないように長辺の方向に巻回して、短辺の長さに対応した30mmの高さを有する円柱状の試験片を得る。次に、得られた試験片をテンシロン等の引張試験機にセットして、その高さ方向に対して一軸引張試験を実施し、粘着シートの伸び-応力曲線を得る。なお、試験片の準備及び一軸引張試験は常温(23℃)で実施し、一軸引張試験における初期のチャック間距離は10mm、引張速度は300mm/分とする。得られた伸び-応力曲線から、伸び1000%(このときチャック間距離は110mm)時の応力を求め、これを試験片の初期断面積で除して、粘着シートの1000%モジュラスとする。
【0016】
粘着シートの1000%モジュラスが0.01~0.6N/mm2であるため、粘着シートは、十分な凝集力を確保しつつ、フレキシブル画像表示装置が巻き取られた場合、例えばフレキシブル画像表示装置が軸部材(ローラ)に巻き付けられた状態で保管された場合、であっても、当該装置を構成する層、特に粘着シートと接合している層、に加わる歪みを十分に緩和することができる。詳細には、巻き取り可能な表示部を有するフレキシブル画像表示装置は、その使用時において、軸部材に巻き付けられることが想定される。このとき、表示部において、広い範囲で歪みが生じる。この歪みに起因した大きい応力がフレキシブル画像表示装置内の積層体に生じ、粘着シートにも大きいせん断応力が生じる。粘着シートの1000%モジュラスが0.01~0.6N/mm2であれば、粘着シートに大きいせん断応力が生じたときに、上記の歪みを緩和することができる。そのため、フレキシブル画像表示装置を構成する層に加わる歪みが十分に緩和され、当該層に生じる応力が低減するため、当該装置に巻き癖などの跡が残ること、及び、当該層が剥がれることを十分に抑制できる。なお、本発明者らの検討によれば、折り曲げ可能な屈曲部を有するフォルダブル画像表示装置において、屈曲部で生じた応力は、屈曲部以外のフラット部で緩和されると推察される。そのため、フォルダブル画像表示装置については、粘着シートの1000%モジュラスは、ほとんど着目されることがなかった。
【0017】
粘着シートの1000%モジュラスは、好ましくは0.4N/mm2以下であり、より好ましくは0.25N/mm2以下であり、さらに好ましくは0.2N/mm2以下であり、特に好ましくは0.1N/mm2以下である。粘着シートの1000%モジュラスは、0.05N/mm2以上であってもよく、0.075N/mm2以上であってもよい。
【0018】
粘着シートのゲル分率は、例えば、次の方法によって評価することができる。まず、粘着シートの一部を掻き取って小片を得る。次に、得られた小片を、ポリテトラフルオロエチレンの延伸多孔質膜によって包んで凧糸で縛る。これにより、試験片が得られる。次に、粘着シートの小片、延伸多孔質膜及び凧糸の重量の合計(重量A)を測定する。なお、使用した延伸多孔質膜及び凧糸の合計は、重量Bと定義する。次に、酢酸エチルで満たされた容器に試験片を浸漬して、23℃で1週間静置する。静置後、容器から試験片を取り出し、130℃に設定した乾燥機中で2時間乾燥させた後、試験片の重量Cを測定する。下記式に基づいて、重量A、重量B及び重量Cから粘着シートのゲル分率を算出することができる。
ゲル分率(重量%)=(C-B)/(A-B)×100
【0019】
粘着シートのゲル分率が30%以上であることによって、粘着シートは、十分な凝集力を有する。これにより、巻き取り可能な表示部を有し、歪みが生じる範囲が比較的広いフレキシブル画像表示装置であっても、粘着シートによって接合された層の剥がれを十分に抑制することができる。粘着シートのゲル分率は、40%以上であってもよく、50%以上であってもよく、60%以上であってもよい。粘着シートのゲル分率の上限値は、特に限定されず、例えば95%以下であり、85%以下であってもよく、75%以下であってもよい。粘着シートのゲル分率は、場合によっては55%以下であってもよい。
【0020】
粘着シートの500%モジュラスは、例えば0.2N/mm2以下である。粘着シートの500%モジュラスとは、一方向への引張力によって粘着シートに500%の伸びを与えたときに粘着シートに生じる応力(引張応力)を、粘着シートの初期断面積で除した値により表される特性である。粘着シートの500%モジュラスは、粘着シートの1000%モジュラスについて上述した方法に準じて評価できる。
【0021】
粘着シートの500%モジュラスは、好ましくは0.15N/mm2以下であり、より好ましくは0.1N/mm2以下であり、さらに好ましくは0.08N/mm2以下であり、特に好ましくは0.05N/mm2以下である。粘着シートの500%モジュラスの下限値は、特に限定されず、例えば0.01N/mm2以上である。
【0022】
粘着シートの700%モジュラスは、例えば0.3N/mm2以下である。粘着シートの700%モジュラスとは、一方向への引張力によって粘着シートに700%の伸びを与えたときに粘着シートに生じる応力(引張応力)を、粘着シートの初期断面積で除した値により表される特性である。粘着シートの700%モジュラスは、粘着シートの1000%モジュラスについて上述した方法に準じて評価できる。
【0023】
粘着シートの700%モジュラスは、好ましくは0.2N/mm2以下であり、より好ましくは0.15N/mm2以下であり、さらに好ましくは0.1N/mm2以下である。粘着シートの700%モジュラスの下限値は、特に限定されず、例えば0.01N/mm2以上である。
【0024】
粘着シートのガラス転移温度(Tg)の上限値は、好ましくは5℃以下であり、より好ましくは-20℃以下、さらに好ましくは、-25℃以下である。粘着シートのTgがこのような範囲であれば、粘着シートが硬くなりにくく、応力緩和性に優れたフレキシブル画像表示装置を実現できる。
【0025】
粘着シートの可視光波長領域における全光線透過率(JIS K7136:2000に準じる)は、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上である。
【0026】
粘着シートを構成する粘着剤としては、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、ウレタン系粘着剤、フッ素系粘着剤、エポキシ系粘着剤、ポリエーテル系粘着剤などが挙げられる。なお、粘着シートを構成する粘着剤は、単独又は2種以上を組み合わせて用いられる。ただし、透明性、加工性、耐久性、密着性などの点から、(メタ)アクリル系ポリマーを含有するアクリル系粘着剤(組成物)を単独で用いることが好ましい。言い換えると、粘着シートは、(メタ)アクリル系ポリマーを含むことが好ましい。
【0027】
[(メタ)アクリル系ポリマー]
粘着剤組成物としてアクリル系粘着剤を使用する場合、モノマー単位として、直鎖状又は分岐鎖状の炭素数1~30のアルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマーを含む(メタ)アクリル系ポリマーを含有することが好ましい。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル系ポリマー」は、アクリル系ポリマー及び/又はメタクリル系ポリマーを意味し、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及び/又はメタクリレートを意味する。
【0028】
(メタ)アクリル系ポリマーの主骨格を構成する直鎖状又は分岐鎖状の炭素数1~30のアルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマーの具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、s-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n-ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、n-へキシル(メタ)アクリレート、イソヘキシル(メタ)アクリレート、イソヘプチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n-ドデシル(メタ)アクリレート(ラウリル(メタ)アクリレート)、n-トリデシル(メタ)アクリレート、n-テトラデシル(メタ)アクリレートなどが挙げられ、中でも、直鎖状又は分岐鎖状の炭素数6~30のアルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマー(以下、「長鎖アルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマー」という場合がある。)が好ましく、n-ドデシル(メタ)アクリレート(ラウリル(メタ)アクリレート)がさらに好ましい。長鎖アルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマーを使用することで、ポリマーの絡み合いが減少し、微小な歪みに対して変形しやすくなる。低温での密着性の観点より、ホモポリマーのガラス転移温度(Tg)が-70~-20℃となる(メタ)アクリル系モノマーを使用することも好ましく、中でも、2-エチルヘキシルアクリレートを用いることがより好ましい。(メタ)アクリル系モノマーとしては、1種又は2種以上を使用することができる。
【0029】
直鎖状又は分岐鎖状の炭素数1~30のアルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマーは、(メタ)アクリル系ポリマーを構成する全モノマー中の主成分である。ここで、主成分とは、(メタ)アクリル系ポリマーを構成する全モノマー中、直鎖状又は分岐鎖状の炭素数1~30のアルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマーが50~100重量%であることを意味し、80~100重量%がより好ましく、90~99.9重量%がさらに好ましく、94~99.9重量%が特に好ましい。
【0030】
(メタ)アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分は、直鎖状又は分岐鎖状の炭素数1~30のアルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマーの他にも、共重合可能なモノマー(共重合性モノマー)を含んでいてもよい。なお、共重合性モノマーは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
【0031】
共重合性モノマーとしては、特に限定されないが、反応性官能基を有するヒドロキシル基含有モノマーであることが好ましい。ヒドロキシル基含有モノマーを用いることにより、密着性に優れた粘着シートが得られる傾向がある。ヒドロキシル基含有モノマーは、例えば、その構造中にヒドロキシル基を含み、かつ(メタ)アクリロイル基、ビニル基等の重合性不飽和二重結合を含む化合物である。
【0032】
ヒドロキシル基含有モノマーの具体的としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10-ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12-ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートや(4-ヒドロキシメチルシクロヘキシル)-メチルアクリレート等が挙げられる。ヒドロキシル基含有モノマーの中でも、耐久性や密着性の点から、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが好ましい。なお、ヒドロキシル基含有モノマーとしては、1種又は2種以上を使用することができる。
【0033】
共重合性モノマーは、反応性官能基を有するカルボキシル基含有モノマー、アミノ基含有モノマー及びアミド基含有モノマー等のモノマーを含有することが可能である。これらのモノマーを用いることは、加湿や高温環境下での密着性の観点から好ましい。
【0034】
粘着剤組成物としてアクリル系粘着剤を使用する場合、粘着剤組成物は、モノマー単位として反応性官能基を有するカルボキシル基含有モノマーを含む(メタ)アクリル系ポリマーを含有することができる。カルボキシル基含有モノマーを用いることにより、加湿や高温環境下での密着性に優れた粘着シートが得られる傾向がある。カルボキシル基含有モノマーは、その構造中にカルボキシル基を含み、かつ(メタ)アクリロイル基、ビニル基等の重合性不飽和二重結合を含む化合物である。
【0035】
カルボキシル基含有モノマーの具体例としては、例えば、(メタ)アクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸等が挙げられる。
【0036】
粘着剤組成物としてアクリル系粘着剤を使用する場合、粘着剤組成物は、モノマー単位として、反応性官能基を有するアミノ基含有モノマーを含む(メタ)アクリル系ポリマーを含有することができる。アミノ基含有モノマーを用いることにより、加湿や高温環境下での密着性に優れた粘着シートが得られる傾向がある。アミノ基含有モノマーは、その構造中にアミノ基を含み、かつ(メタ)アクリロイル基、ビニル基等の重合性不飽和二重結合を含む化合物である。
【0037】
アミノ基含有モノマーの具体例としては、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0038】
粘着剤組成物としてアクリル系粘着剤を使用する場合、粘着剤組成物は、モノマー単位として、反応性官能基を有するアミド基含有モノマーを含む(メタ)アクリル系ポリマーを含有することができる。アミド基含有モノマーを用いることにより、密着性に優れた粘着シートが得られる傾向がある。アミド基含有モノマーは、その構造中にアミド基を含み、かつ(メタ)アクリロイル基、ビニル基等の重合性不飽和二重結合を含む化合物である。
【0039】
アミド基含有モノマーの具体例としては、(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-ヘキシル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-メチロール-N-プロパン(メタ)アクリルアミド、アミノメチル(メタ)アクリルアミド、アミノエチル(メタ)アクリルアミド、メルカプトメチル(メタ)アクリルアミド、メルカプトエチル(メタ)アクリルアミド等のアクリルアミド系モノマー;N-(メタ)アクリロイルモルホリン、N-(メタ)アクリロイルピペリジン、N-(メタ)アクリロイルピロリジン等のN-アクリロイル複素環モノマー;N-ビニルピロリドン、N-ビニル-ε-カプロラクタム等のN-ビニル基含有ラクタム系モノマー等が挙げられる。
【0040】
さらに、共重合モノマーとしては、多官能モノマー(多官能性モノマー)が挙げられる。多官能モノマーを含むと、重合により架橋効果が得られ、ゲル分率の調整や凝集力向上を容易に行うことができる。このため、切断が容易となり、加工性が向上しやすくなる。さらに、粘着シートの凝集破壊による剥れをより防ぐことができる。多官能モノマーとしては、特に限定されないが、例えば、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート(1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート)、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ビニル(メタ)アクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレートなどの多官能アクリレートや、ジビニルベンゼン等が挙げられ、中でも、多官能アクリレートとしては、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートが好ましい。なお、多官能モノマーは、単独で又は2種以上組み合わせて用いられてもよい。
【0041】
(メタ)アクリル系ポリマーを構成するモノマー単位において、反応性官能基を有するモノマー、及び、多官能モノマーの配合割合(合計量)は、(メタ)アクリル系ポリマーを構成する全モノマー中、20重量%以下が好ましく、10重量%以下がより好ましく、0.01~8重量%がさらに好ましく、0.01~5重量%が特に好ましく、0.05~3重量%が最も好ましい。20重量%を超えると、架橋点が多くなり、粘着剤(シート)の柔軟性が失われるため、応力緩和性が乏しくなる傾向がある。
【0042】
粘着剤組成物としてアクリル系粘着剤を使用する場合、モノマー単位として、反応性官能基を有するモノマー及び多官能モノマー以外に、本発明の効果を損なわない範囲で、その他共重合モノマーを導入することができる。
【0043】
その他共重合モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル[例えば、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-エトキシエチル、(メタ)アクリル酸メトキシトリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸3-メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-エトキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-メトキシブチル、(メタ)アクリル酸4-エトキシブチルなど];エポキシ基含有モノマー[例えば、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸メチルグリシジルなど];スルホン酸基含有モノマー[例えば、ビニルスルホン酸ナトリウムなど];リン酸基含有モノマー;脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル[例えば、(メタ)アクリル酸シクロペンチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニルなど];芳香族炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル[例えば、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸ベンジルなど];ビニルエステル類[例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなど];芳香族ビニル化合物[例えば、スチレン、ビニルトルエンなど];オレフィン類又はジエン類[例えば、エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソプレン、イソブチレンなど];ビニルエーテル類[例えば、ビニルアルキルエーテルなど];塩化ビニル等が挙げられる。
【0044】
その他共重合モノマーの配合割合は、特に限定されないが、(メタ)アクリル系ポリマーを構成する全モノマー中、30重量%以下が好ましく、10重量%以下がより好ましく、含まないことがさらに好ましい。30重量%を超えると、特に(メタ)アクリル系モノマー以外を用いた場合に、粘着シートとその他の層(フィルム、基材)との反応点が少なくなり、密着力が低下する傾向がある。
【0045】
粘着シートは、粘着剤組成物により形成され、粘着剤組成物は、いずれの形態を有している粘着剤組成物であってもよく、例えば、エマルション型、溶剤型(溶液型)、活性エネルギー線硬化型、熱溶融型(ホットメルト型)などが挙げられる。中でも、上記粘着剤組成物としては、溶剤型の粘着剤組成物や活性エネルギー線硬化型の粘着剤組成物が好ましく挙げられる。
【0046】
溶剤型の粘着剤組成物としては、(メタ)アクリル系ポリマーを必須成分として含む粘着剤組成物が好ましく挙げられる。活性エネルギー線硬化型の粘着剤組成物としては、(メタ)アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分の混合物(モノマー混合物)又はその部分重合物を必須成分として含む粘着剤組成物が好ましく挙げられる。なお、「部分重合物」とは、モノマー混合物に含まれるモノマー成分のうち1又は2以上の成分が部分的に重合している組成物を意味する。「モノマー混合物」は、モノマー成分が1種のみの場合を含む。
【0047】
特に、粘着剤組成物は、生産性の点、環境への影響の点、厚みのある粘着シートの得やすさの点より、(メタ)アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分の混合物(モノマー混合物)又はその部分重合物を必須成分として含む活性エネルギー線硬化型の粘着剤組成物であることが好ましい。
【0048】
(メタ)アクリル系ポリマーは、モノマー成分を重合することにより得られる。より具体的には、モノマー成分や、モノマー混合物又はその部分重合物を公知慣用の方法により重合することにより得られる。重合方法としては、例えば、溶液重合、乳化重合、塊状重合、熱や活性エネルギー線照射による重合(熱重合、活性エネルギー線重合)などが挙げられる。中でも、透明性、耐水性、コストなどの点で、溶液重合、活性エネルギー線重合が好ましい。なお、重合は、酸素による重合阻害を抑制する点より、酸素との接触を避けて行われることが好ましい。例えば窒素雰囲気下で重合を行うことや、剥離フィルム(セパレータ)で酸素を遮断して重合を行うことが好ましい。得られる(メタ)アクリル系ポリマーは、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体等のいずれであってもよい。
【0049】
活性エネルギー線重合(光重合)を行うときに照射される活性エネルギー線としては、例えば、α線、β線、γ線、中性子線、電子線などの電離性放射線や、紫外線などが挙げられ、特に紫外線が好ましい。活性エネルギー線の照射エネルギー、照射時間、照射方法などは特に限定されず、光重合開始剤を活性化させて、モノマー成分の反応を生じさせることができればよい。
【0050】
溶液重合を行うときには、各種の一般的な溶剤を用いることができる。このような溶剤としては、例えば、酢酸エチル、酢酸n-ブチル等のエステル類;トルエン、ベンゼン等の芳香族炭化水素類;n-ヘキサン、n-ヘプタン等の脂肪族炭化水素類;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類などの有機溶剤が挙げられる。なお、溶剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
【0051】
重合を行うときには、重合反応の種類に応じて、光重合開始剤(光開始剤)や熱重合開始剤などの重合開始剤が用いられてもよい。なお、重合開始剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
【0052】
光重合開始剤としては、特に限定されないが、例えば、ベンゾインエーテル系光重合開始剤、アセトフェノン系光重合開始剤、α-ケトール系光重合開始剤、芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤、光活性オキシム系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、ベンジル系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、ケタール系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤が挙げられる。
【0053】
ベンゾインエーテル系光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、アニソールメチルエーテルなどが挙げられる。アセトフェノン系光重合開始剤としては、例えば、2,2-ジエトキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、4-フェノキシジクロロアセトフェノン、4-(t-ブチル)ジクロロアセトフェノンなどが挙げられる。α-ケトール系光重合開始剤としては、例えば、2-メチル-2-ヒドロキシプロピオフェノン、1-[4-(2-ヒドロキシエチル)フェニル]-2-メチルプロパン-1-オンなどが挙げられる。芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤としては、例えば、2-ナフタレンスルホニルクロライドなどが挙げられる。光活性オキシム系光重合開始剤としては、例えば、1-フェニル-1,1-プロパンジオン-2-(o-エトキシカルボニル)-オキシムなどが挙げられる。ベンゾイン系光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインなどが挙げられる。ベンジル系光重合開始剤としては、例えば、ベンジルなどが挙げられる。ベンゾフェノン系光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3,3’-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン、ポリビニルベンゾフェノン、α-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどが挙げられる。ケタール系光重合開始剤としては、例えば、ベンジルジメチルケタールなどが挙げられる。チオキサントン系光重合開始剤としては、例えば、チオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-メチルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン、ドデシルチオキサントンなどが挙げられる。
【0054】
光重合開始剤の使用量は、特に限定されないが、モノマー成分全量100重量部に対して、0.01~1重量部が好ましく、より好ましくは0.05~0.5重量部である。
【0055】
溶液重合に用いられる重合開始剤としては、例えばアゾ系重合開始剤、過酸化物系重合開始剤(例えば、ジベンゾイルペルオキシド、tert-ブチルペルマレエートなど)、レドックス系重合開始剤などが挙げられる。中でも、特開2002-69411号公報に開示されたアゾ系重合開始剤が好ましい。上記アゾ系重合開始剤としては、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’-アゾビス-2-メチルブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオン酸)ジメチル、4,4’-アゾビス-4-シアノバレリアン酸などが挙げられる。
【0056】
アゾ系重合開始剤の使用量は、特に限定されないが、モノマー成分全量100重量部に対して、0.05~0.5重量部が好ましく、より好ましくは0.1~0.3重量部である。
【0057】
なお、共重合モノマーとして使用される多官能モノマー(多官能アクリレート)は、溶剤型又は活性エネルギー線硬化型の粘着剤組成物にも使用できるが、例えば、溶剤型の粘着剤組成物に多官能モノマー(多官能アクリレート)と光重合開始剤を混ぜて使用する場合には、熱乾燥後に、活性エネルギー線硬化を行うことになる。
【0058】
溶剤型の粘着剤組成物に用いられる(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、通常、100万~200万の範囲である。耐久性、特に耐熱性を考慮すれば、好ましくは、120万~200万、より好ましくは、140万~180万である。重量平均分子量が100万よりも小さいと、耐久性を確保するために、ポリマー鎖同士を架橋させる際、重量平均分子量が100万以上のものに比べて、架橋点が多くなり、粘着剤(シート)の柔軟性が失われるため、巻き取り時に画像表示装置を構成する各層(各フィルム)間で生じる曲げ外側(凸側)と曲げ内側(凹側)の歪みを緩和できず、各層の破断が生じやすくなることがある。重量平均分子量が250万よりも大きくなると、塗工に適した粘度に調整するために多量の希釈溶剤が必要となり、コストアップとなることから好ましくなく、また、得られる(メタ)アクリル系ポリマーのポリマー鎖同士の絡み合いが複雑になるため、柔軟性が劣り、巻き取り時に各層(フィルム)の破断が発生しやすくなることがある。なお、重量平均分子量(Mw)は、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)により測定し、ポリスチレン換算により算出された値をいう。
【0059】
[(メタ)アクリル系オリゴマー]
粘着剤組成物には、(メタ)アクリル系オリゴマーを含有させることができる。(メタ)アクリル系オリゴマーは、(メタ)アクリル系ポリマーよりも重量平均分子量(Mw)が小さい重合体を用いるのが好ましく、かかる(メタ)アクリル系オリゴマーを使用することで、(メタ)アクリル系ポリマー間に(メタ)アクリル系オリゴマーが介在して(メタ)アクリル系ポリマーの絡み合いが減少し、微小な歪みに対して変形しやすくなる。
【0060】
(メタ)アクリル系オリゴマーを構成するモノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、s-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレートのようなアルキル(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレートのような(メタ)アクリル酸と脂環族アルコールとのエステル;フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートのようなアリール(メタ)アクリレート;テルペン化合物誘導体アルコールから得られる(メタ)アクリレート等を挙げることができる。このような(メタ)アクリレートは単独であるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0061】
(メタ)アクリル系オリゴマーとしては、イソブチル(メタ)アクリレートやt-ブチル(メタ)アクリレートのようなアルキル基が分岐構造を持ったアルキル(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレートや、イソボルニル(メタ)アクリレートジシクロペンタニル(メタ)アクリレートのような(メタ)アクリル酸と脂環式アルコールとのエステル;フェニル(メタ)アクリレートやベンジル(メタ)アクリレートのようなアリール(メタ)アクリレートなどの環状構造を持った(メタ)アクリレートに代表される、比較的嵩高い構造を有するアクリル系モノマーをモノマー単位として含んでいることが好ましい。このような嵩高い構造を(メタ)アクリル系オリゴマーに持たせることで、粘着シートの接着性をさらに向上させることができる傾向がある。特に嵩高さという点で環状構造を持ったものは効果が高く、環を複数含有したものはさらに効果が高い。(メタ)アクリル系オリゴマーの合成や粘着シートの作製に紫外線を採用する場合には、重合阻害を起こしにくいという点で、飽和結合を有したものが好ましく、アルキル基が分岐構造を持ったアルキル(メタ)アクリレート、又は脂環式アルコールとのエステルを、(メタ)アクリル系オリゴマーを構成するモノマーとして好適に用いることができる。
【0062】
このような点から、好適な(メタ)アクリル系オリゴマーとしては、例えば、ブチルアクリレート(BA)とメチルアクリレート(MA)とアクリル酸(AA)の共重合体、シクロヘキシルメタクリレート(CHMA)とイソブチルメタクリレート(IBMA)の共重合体、シクロヘキシルメタクリレート(CHMA)とイソボルニルメタクリレート(IBXMA)の共重合体、シクロヘキシルメタクリレート(CHMA)とアクリロイルモルホリン(ACMO)の共重合体、シクロヘキシルメタクリレート(CHMA)とジエチルアクリルアミド(DEAA)の共重合体、1-アダマンチルアクリレート(ADA)とメチルメタクリレート(MMA)の共重合体、ジシクロペンタニルメタクリレート(DCPMA)とイソボルニルメタクリレート(IBXMA)の共重合体、ジシクロペンタニルメタクリレート(DCPMA)、シクロヘキシルメタクリレート(CHMA)、イソボルニルメタクリレート(IBXMA)、イソボルニルアクリレート(IBXA)、シクロペンタニルメタクリレート(DCPMA)とメチルメタクリレート(MMA)の共重合体、ジシクロペンタニルアクリレート(DCPA)、1-アダマンチルメタクリレート(ADMA)、1-アダマンチルアクリレート(ADA)の各単独重合体等を挙げることができる。
【0063】
(メタ)アクリル系オリゴマーの重合方法としては、(メタ)アクリル系ポリマーと同様に、溶液重合、乳化重合、塊状重合、乳化重合、熱や活性エネルギー線照射による重合(熱重合、活性エネルギー線重合)などが挙げられる。中でも、透明性、耐水性、コストなどの点で、溶液重合、活性エネルギー線重合が好ましい。得られる(メタ)アクリル系オリゴマーは、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体等のいずれであってもよい。
【0064】
(メタ)アクリル系オリゴマーは、(メタ)アクリル系ポリマーと同様に、溶剤型の粘着剤組成物や活性エネルギー線硬化型の粘着剤組成物に使用することができる。例えば、活性エネルギー線硬化型の粘着剤組成物としては、(メタ)アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分の混合物(モノマー混合物)又はその部分重合物に、さらに(メタ)アクリル系オリゴマーを混ぜて使用することができる。(メタ)アクリル系オリゴマーが溶剤に溶けている場合は、粘着剤組成物を熱乾燥により溶剤を揮発させた後に、活性エネルギー線硬化を完了させて、粘着シートを得ることができる。
【0065】
溶剤型の粘着剤組成物に用いられる(メタ)アクリル系オリゴマーの重量平均分子量(Mw)としては、1000以上が好ましく、2000以上がより好ましく、3000以上がさらに好ましく、4000以上が特に好ましい。(メタ)アクリル系オリゴマーの重量平均分子量(Mw)は、30000以下が好ましく、15000以下がより好ましく、10000以下がさらに好ましく、7000以下が特に好ましい。(メタ)アクリル系オリゴマーの重量平均分子量(Mw)を上記の範囲内に調整することで、例えば、(メタ)アクリル系ポリマーと併用する場合に、(メタ)アクリル系ポリマー間に(メタ)アクリル系オリゴマーが介在することによって、(メタ)アクリル系ポリマーの絡み合いが減少し、粘着シートが微小な歪みに対して変形しやすくなり、画像表示装置を構成するその他の層にかかる歪みを低減できる傾向がある。これにより、各層の割れや粘着シートとその他の層間における剥がれなどをより抑制できる傾向がある。なお、(メタ)アクリル系オリゴマーの重量平均分子量(Mw)は、(メタ)アクリル系ポリマーと同様、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)により測定し、ポリスチレン換算により算出された値をいう。
【0066】
粘着剤組成物に、(メタ)アクリル系オリゴマーを用いる場合、その配合量は特に限定されないが、(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対して70重量部以下であることが好ましく、さらに好ましくは1~70重量部であり、さらに好ましくは2~50重量部であり、さらに好ましくは3~40重量部である。(メタ)アクリル系オリゴマーの配合量を上記の範囲内に調整することで、(メタ)アクリル系ポリマー間に(メタ)アクリル系オリゴマーが適度に介在し、(メタ)アクリル系ポリマーの絡み合いが減少し、粘着シートが微小な歪みに対して変形しやすくなる傾向がある。これにより、画像表示装置を構成するその他の層にかかる歪みを低減でき、各層の割れや粘着シートとその他の層間における剥がれなどを抑制できる傾向がある。
【0067】
[架橋剤]
粘着剤組成物には、架橋剤を含有することができる。架橋剤としては、溶剤型又は活性エネルギー線硬化型の粘着剤組成物のいずれにおいても、有機系架橋剤や多官能性金属キレートを用いることができる。有機系架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤、過酸化物系架橋剤、エポキシ系架橋剤、イミン系架橋剤等が挙げられる。多官能性金属キレートでは、多価金属が有機化合物と共有結合又は配位結合している。多価金属原子としては、Al、Cr、Zr、Co、Cu、Fe、Ni、V、Zn、In、Ca、Mg、Mn、Y、Ce、Sr、Ba、Mo、La、Sn、Ti等が挙げられる。共有結合又は配位結合する有機化合物中の原子としては酸素原子等が挙げられ、有機化合物としてはアルキルエステル、アルコール化合物、カルボン酸化合物、エーテル化合物、ケトン化合物等が挙げられる。溶剤型の粘着剤組成物の場合は、過酸化物系架橋剤やイソシアネート架橋剤が好ましく、中でも、過酸化物系架橋剤を用いることが好ましい。過酸化物系架橋剤は、例えば、(メタ)アクリル系ポリマーの側鎖の水素の引き抜きにより、ラジカルを発生させ、(メタ)アクリル系ポリマーの側鎖同士での架橋を進行させるため、イソシアネート系架橋剤(例えば、多官能イソシアネート系架橋剤)を用いて架橋する場合と比較して、架橋状態が比較的緩く、微小な歪みに対する変形のしやすさを維持しつつ、凝集力を高めることができる傾向がある。これにより、画像表示装置を構成する各層の割れや粘着シートとその他の層間における剥がれなどを抑制できる傾向がある。イソシアネート系架橋剤(特に、三官能のイソシアネート系架橋剤)は、耐久性の点で好ましく、また、過酸化物系架橋剤とイソシアネート系架橋剤(特に、二官能のイソシアネート系架橋剤)は、巻き取り性の点から好ましい。過酸化物系架橋剤や二官能のイソシアネート系架橋剤は、どちらも柔軟な二次元架橋を形成するのに対して、三官能のイソシアネート系架橋剤は、より強固な三次元架橋を形成する。巻き取り時には、より柔軟な架橋である二次元架橋が有利となる。ただし、二次元架橋のみでは耐久性に乏しく、剥がれが生じやすくなることがあるため、二次元架橋と三次元架橋のハイブリッド架橋が良好である。そのため、三官能のイソシアネート系架橋剤と、過酸化物系架橋剤や二官能のイソシアネート系架橋剤とを併用することが好ましい態様である。なお、活性エネルギー線硬化型の粘着剤組成物としては、多官能モノマーを用いた重合によって架橋効果を得ることが、生産性や厚膜塗工の観点から好ましい。ただし、上述した架橋剤を用いてもよく、多官能モノマーと併用してもよい。例えば、(メタ)アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分の混合物(モノマー混合物)又はその部分重合物に、架橋剤を混合し、粘着剤組成物の活性エネルギー線による硬化の前後で、熱乾燥を行うことによって架橋剤の反応を完了させてもよい。
【0068】
架橋剤の使用量は、例えば、(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対して、0.1~10重量部が好ましく、0.2~5重量部がより好ましく、0.2~1重量部がさらに好ましい。
【0069】
過酸化物系架橋剤を単独で使用する場合には、(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対して、0.5~5重量部が好ましく、1~3重量部がより好ましい。上記の範囲内であると、粘着シートにおいて、微小な歪みに対する変形のしやすさを維持しつつ、凝集力を十分に高めることができ、耐久性を向上できる傾向がある。
【0070】
過酸化物系架橋剤とイソシアネート系架橋剤を併用する場合には、イソシアネート系架橋剤に対する過酸化物系架橋剤の重量比(過酸化物系架橋剤/イソシアネート系架橋剤)の下限値として、0.02以上が好ましく、1以上がより好ましく、10を上回ることがさらに好ましく、15以上であることが特に好ましい。この重量比の上限値としては、500以下が好ましく、100以下がより好ましく、50未満がさらに好ましく、40以下が特に好ましい。上記の範囲内であると、粘着シートにおいて、微小な歪みに対する変形のしやすさを維持しつつ、凝集力を十分に高めることができる傾向がある。
【0071】
[添加剤]
さらに、粘着剤組成物には、その他の公知の添加剤を含有していてもよく、例えば、各種シランカップリング剤、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコールのポリエーテル化合物、着色剤、顔料等の粉体、染料、界面活性剤、可塑剤、粘着性付与剤、表面潤滑剤、レベリング剤、軟化剤、酸化防止剤、老化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、重合禁止剤、帯電防止剤(イオン性化合物であるアルカリ金属塩やイオン液体、イオン固体など)、無機又は有機の充填剤、金属粉、粒子、箔状物等を使用する用途に応じて適宜添加することができる。制御できる範囲内で還元剤を加えたレドックス系を採用してもよい。
【0072】
粘着剤組成物の調製方法としては、特に限定されず、公知の方法を用いることができ、例えば、上述したように、溶剤型のアクリル系粘着剤組成物は、(メタ)アクリル系ポリマー、必要に応じて加えられる成分(例えば、(メタ)アクリル系オリゴマー、架橋剤、シランカップリング剤、溶剤、添加剤など)を混合することにより作製される。上述したように、活性エネルギー線硬化型のアクリル系粘着剤組成物は、モノマー混合物又はその部分重合物、必要に応じて加えられる成分(例えば、光重合開始剤、多官能モノマー、(メタ)アクリル系オリゴマー、架橋剤、シランカップリング剤、溶剤、添加剤など)を混合することにより作製される。
【0073】
粘着剤組成物は、取り扱いや塗工に適した粘度を有することが好ましい。このため、活性エネルギー線硬化型のアクリル系粘着剤組成物は、モノマー混合物の部分重合物を含むことが好ましい。部分重合物の重合率は、特に限定されないが、5~20重量%が好ましく、より好ましくは5~15重量%である。
【0074】
部分重合物の重合率は、以下のようにして求められる。部分重合物の一部をサンプリングして、試料とする。該試料を精秤しその重量を求めて、「乾燥前の部分重合物の重量」とする。次に、試料を130℃で2時間乾燥して、乾燥後の試料を精秤しその重量を求めて、「乾燥後の部分重合物の重量」とする。そして、「乾燥前の部分重合物の重量」及び「乾燥後の部分重合物の重量」から、130℃で2時間の乾燥により減少した試料の重量を求め、「重量減少量」(揮発分、未反応モノマー重量)とする。得られた「乾燥前の部分重合物の重量」及び「重量減少量」から、下記式より、モノマー成分の部分重合物の重合率(重量%)を求める。
モノマー成分の部分重合物の重合率(重量%)=[1-(重量減少量)/(乾燥前の部分重合物の重量)]×100
【0075】
[粘着シートの形成]
粘着シートを形成する方法としては、例えば、溶剤型の粘着剤組成物を剥離処理したセパレータ(剥離フィルム)等に塗布し、重合溶剤等を乾燥除去して粘着シートを形成する方法、偏光フィルム等に溶剤型の粘着剤組成物を塗布し、重合溶剤等を乾燥除去して粘着シートを偏光フィルム等に形成する方法、活性エネルギー線硬化型の粘着剤組成物を剥離処理したセパレータ等に塗布し、活性エネルギー線を照射することにより形成する方法などが挙げられる。なお、必要に応じて、活性エネルギー線照射に加えて、加熱乾燥が行われてもよい。粘着剤組成物を塗布するにあたって、重合溶剤以外の他の溶剤を新たに加えてもよい。
【0076】
剥離処理したセパレータとしては、シリコーン剥離ライナーが好ましく用いられる。このようなライナー上に粘着剤組成物を塗布、乾燥させて粘着シートを形成する場合、粘着剤を乾燥させる方法としては、目的に応じて、適宜、適切な方法が採用され得る。好ましくは、上記塗布膜を加熱乾燥する方法が用いられる。加熱乾燥温度は、例えば、(メタ)アクリル系ポリマーを使用したアクリル系粘着剤を調製する場合、好ましくは40~200℃であり、さらに好ましくは、50~180℃であり、特に好ましくは70~170℃である。加熱温度を上記の範囲とすることによって、優れた粘着特性を有する粘着シートが得られる傾向がある。
【0077】
乾燥時間は、適宜、適切な時間が採用され得る。上記乾燥時間は、例えば、(メタ)アクリル系ポリマーを使用したアクリル系粘着剤を調製する場合、好ましくは5秒~20分、さらに好ましくは5秒~10分、特に好ましくは10秒~5分である。
【0078】
粘着剤組成物の塗布方法としては、各種方法が用いられる。具体的には、例えば、ロールコート、キスロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、ディップロールコート、バーコート、ナイフコート、エアーナイフコート、カーテンコート、リップコート、ダイコーター等による押出しコート法等の方法が挙げられる。
【0079】
粘着シートの厚みは、好ましくは1~200μmであり、より好ましくは5~150μmであり、さらに好ましくは10~100μmである。粘着シートは、単一層であってもよく、積層構造を有していてもよい。上記の範囲内であれば、フレキシブル画像表示装置の巻き取りを阻害することなく、また、密着性(耐保持性)の観点からも好ましい。
【0080】
本実施形態の粘着シートを作製する手法としては、以下の手法が挙げられる。
【0081】
まず、溶剤型の粘着剤組成物を用いる手法(溶剤型の第1の手法~第4の手法)を説明する。溶剤型の第1の手法では、長鎖アルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマーを共重合した(メタ)アクリル系ポリマーを用いる。ここで、溶剤型の第1の手法においては、全モノマーに対して長鎖アルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマーを40重量%以上99重量%とすることが好ましい。
【0082】
溶剤型の第2の手法では、架橋剤として過酸化物系架橋剤を単独で用い、(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対して0.1重量部以上5重量部以下を添加する。
【0083】
溶剤型の第3の手法では、架橋剤として過酸化物系架橋剤とイソシアネート系架橋剤を併用し、イソシアネート系架橋剤に対する過酸化物系架橋剤の重量比(過酸化物系架橋剤/イソシアネート系架橋剤)を0.02以上500以下とし、かつ過酸化物系架橋剤の添加量を(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対して0.1重量部以上とする。
【0084】
溶剤型の第4の手法では、溶剤型の第2の手法又は第3の手法において、(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対して、さらに、(メタ)アクリル系オリゴマーを前述のとおり1重量部以上70重量部以下添加する。
【0085】
次に、活性エネルギー線硬化型の粘着剤組成物を用いる手法(活性エネルギー線硬化型の第1の手法~第2の手法)を説明する。活性エネルギー線硬化型の第1の手法では、長鎖アルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマーを主成分とし、炭素数1以上5以下のアルキル基又は官能基を有するモノマーを含む混合物(モノマー混合物)又は当該混合物の部分重合物を用いて多官能モノマーとともに重合する。
【0086】
活性エネルギー線硬化型の第2の手法では、活性エネルギー線硬化型の第1の手法において、長鎖アルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマーとして、炭素数10以上30以下のアルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマーと炭素数6以上9以下のアルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマーとの混合物(モノマー混合物)又は当該混合物の部分重合物を用いる。
【0087】
ここで、活性エネルギー線硬化型の第1の手法及び第2の手法において、全モノマー中における長鎖アルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマーの含有量を60重量%以上とすることが好ましく、70重量%以上とすることがより好ましく、一方で、100重量%以下とすることが好ましく、99重量%以下とすることがより好ましい。さらに、炭素数10以上30以下のアルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマーと炭素数6以上9以下のアルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマーとの混合物を用いる場合には、混合比を(炭素数10以上30以下のアルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマー):(炭素数6以上9以下のアルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマー)=40:60~90:10とすることが好ましい。
【0088】
(フレキシブル画像表示装置及び積層体の実施形態)
図1に示すとおり、本実施形態のフレキシブル画像表示装置100は、積層体10及び画像表示パネル3を備え、画像表示パネル3に対して視認側に積層体10が配置されている。
【0089】
[積層体]
積層体10は、フレキシブル画像表示装置100に用いられる部材であり、上述した粘着シート1と基材2とを備えている。基材2は、粘着シート1を支持しており、例えば粘着シート1に接している。基材2は、粘着シート1と直接接していなくてもよい。積層体10は、粘着シート1によって画像表示パネル3に取り付けられている。積層体10は、例えば、後述する偏光膜を備えていない。
【0090】
[基材]
基材2は、積層体10に含まれる部材を保護する保護膜としても機能する。図1において、基材2は、積層体10の最も外側に位置しているため、例えばウインドウとしても機能する。
【0091】
基材2は、例えば、透明樹脂から構成されている。透明樹脂としては、ノルボルネン系樹脂等のシクロオレフィン系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂などが挙げられる。
【0092】
基材2の厚さは、例えば5~60μmであり、好ましくは10~40μmであり、より好ましくは10~30μmである。基材2の厚さが上記の範囲内にあれば、基材2は、フレキシブル画像表示装置の巻き取りを阻害しにくい。基材2には、アンチグレア、反射防止、帯電防止などの表面処理が施されていてもよい。
【0093】
[画像表示パネル]
画像表示パネル3は、フレキシブル画像表示装置100の表示部を構成する。フレキシブル画像表示装置100において、画像表示パネル3で構成された表示部は、巻き取り可能である。画像表示パネル3は、典型的には有機EL表示パネルである。画像表示パネル3には、タッチセンサが組み込まれていてもよい。画像表示パネル3がタッチセンサを内蔵している場合、フレキシブル画像表示装置100は、いわゆるインセル型のフレキシブル画像表示装置である。
【0094】
[透明導電層]
積層体10は、タッチセンサを構成する透明導電層をさらに備えていてもよい。透明導電層は、粘着シート1と基材2との間に位置していてもよく、粘着シート1と画像表示パネル3との間に位置していてもよい。透明導電層は、例えば湾曲可能に構成されている。
【0095】
透明導電層の構成材料としては特に限定されず、インジウム、スズ、亜鉛、ガリウム、アンチモン、チタン、珪素、ジルコニウム、マグネシウム、アルミニウム、金、銀、銅、パラジウム、タングステン、モリブデンからなる群より選択される少なくとも1種の金属又は金属酸化物や、ポリチオフェン等の有機導電ポリマーが用いられる。当該金属酸化物は、必要に応じて、さらに上記群に示された金属原子を含んでいてもよい。例えば、酸化スズを含有する酸化インジウム(ITO)、アンチモンを含有する酸化スズ等が好ましく用いられ、ITOが特に好ましく用いられる。ITOは、酸化インジウム80~99重量%及び酸化スズ1~20重量%を含有することが好ましい。
【0096】
ITOとしては、結晶性のITO、非結晶性(アモルファス)のITOを挙げることができる。結晶性ITOは、スパッタ時の温度を高くすることや、非結晶性ITOをさらに加熱することにより得ることができる。
【0097】
透明導電層の厚みは、好ましくは0.005~10μmであり、より好ましくは0.01~3μmであり、さらに好ましくは0.01~1μmである。透明導電層の厚みが、0.005μm未満では、透明導電層の電気抵抗値の変化が大きくなる傾向がある。一方、10μmを超える場合は、透明導電層の生産性が低下し、コストも上昇し、さらに、光学特性も低下する傾向がある。
【0098】
透明導電層の全光線透過率は、好ましくは80%以上であり、より好ましくは85%以上であり、さらに好ましくは90%以上である。
【0099】
透明導電層の密度は、好ましくは1.0~10.5g/cm3であり、より好ましくは1.3~3.0g/cm3である。
【0100】
透明導電層の表面抵抗値は、好ましくは0.1~1000Ω/□であり、より好ましくは0.5~500Ω/□であり、さらに好ましくは1~250Ω/□である。
【0101】
透明導電層の形成方法としては特に限定されず、従来公知の方法を採用することができる。具体的には、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法を例示できる。また、必要とする膜厚に応じて適宜の方法を採用することもできる。
【0102】
透明導電層と基材2との間に、必要に応じて、アンダーコート層、オリゴマー防止層等をさらに設けてもよい。
【0103】
[導電性層(帯電防止層)]
積層体10は、導電性を有する層(導電性層、帯電防止層)をさらに有していてもよい。積層体10は、非常に薄い厚み構成をとりうるため、製造工程等で生じる微弱な静電気に対してダメージを受けやすい。積層体10が導電性層を有する場合、製造工程等での静電気による負荷が大きく軽減される傾向がある。
【0104】
積層体10を含むフレキシブル画像表示装置100について連続して巻き取り操作が行われた場合、巻き取り部分において、静電気が生じることがある。積層体10が導電性層を有する場合、巻き取りにより発生した静電気を速やかに取り除くことができる傾向がある。
【0105】
導電性層は、導電性機能を有する下塗り層であってもよく、導電成分又は帯電防止剤であるイオン性化合物を含む粘着剤であってもよく、さらに導電成分を含む表面処理層であってもよい。導電性層は、例えば、ポリチオフェン等の導電性高分子及びバインダーを含有する帯電防止剤組成物から形成されていてもよい。積層体10は、導電性層を1層以上有することが好ましく、2層以上含んでいてもよい。
【0106】
(フレキシブル画像表示装置及び積層体の変形例)
フレキシブル画像表示装置100の積層体10は、複数の粘着シート1及び複数の基材2を備えていてもよく、光学フィルムをさらに備えていてもよい。図2に示すフレキシブル画像表示装置110の積層体11は、粘着シート1として、第1の粘着シート1a及び第2の粘着シート1bを備えている。積層体11は、基材2として、第1の基材2a及び第2の基材2bを備えている。積層体11は、光学フィルム20をさらに備えている。以上を除き、積層体11の構造は、フレキシブル画像表示装置100の積層体10の構造と同じである。したがって、フレキシブル画像表示装置100の積層体10と本実施形態の積層体11とで共通する要素には同じ参照符号を付し、それらの説明を省略することがある。本明細書では、積層体11を粘着剤層付き光学フィルムと呼ぶことがある。
【0107】
後述するとおり、第1の基材2aは、光学フィルム20に含まれる部材である。第2の基材2bは、例えば、光学フィルム20よりも視認側に位置しており、積層体11の最も外側に位置している。第1の基材2a及び第2の基材2bは、互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0108】
第1の粘着シート1aは、光学フィルム20と画像表示パネル3との間に位置し、これらの部材を接合している。第2の粘着シート1bは、第2の基材2bと光学フィルム20との間に位置し、これらの部材を接合している。第1の粘着シート1a及び第2の粘着シート1bは、互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0109】
[光学フィルム]
光学フィルム20は、例えば、第1の基材2a、偏光膜4及び位相差膜5を有しており、偏光膜4が第1の基材2aと位相差膜5との間に位置する。第1の基材2aは、例えば、偏光膜4よりも視認側に位置し、偏光膜4の保護膜として機能する。偏光膜4及び位相差膜5は、例えば、偏光膜4の視認側から内部に入射した光が内部反射して視認側に射出されることを防止するための円偏光を生成し、視野角を補償する。
【0110】
光学フィルム20の厚みは、好ましくは92μm以下であり、より好ましくは60μm以下であり、さらに好ましくは10~50μmである。上記の範囲内であれば、光学フィルム20は、フレキシブル画像表示装置110の巻き取りを阻害しにくい。
【0111】
偏光膜4に必要とされる特性が維持される限り、偏光膜4及び第1の基材2aは、接着剤層(図示せず)により貼り合わされていてもよい。接着剤層を構成する接着剤としては、イソシアネート系接着剤、ポリビニルアルコール系接着剤、ゼラチン系接着剤、ビニル系ラテックス、水系ポリエステル等を例示できる。接着剤は、通常、水溶液として用いられ、例えば0.5~60重量%の固形分濃度を有する。接着剤層を構成する接着剤としては、紫外硬化型接着剤、電子線硬化型接着剤等も挙げられる。電子線硬化型接着剤は、第1の基材2aに対して、好適な接着性を示す。接着剤は、金属化合物フィラーを含んでいてもよい。
【0112】
[偏光膜]
偏光膜4としては、例えば、空中延伸(乾式延伸)やホウ酸水中延伸工程等の延伸工程によって延伸され、ヨウ素を配向させたポリビニルアルコール(PVA)系樹脂を用いることができる。
【0113】
偏光膜4の製造方法としては、代表的には、特開2004-341515号公報に記載された、PVA系樹脂の単層体を染色する工程と延伸する工程を含む製法(単層延伸法)がある。偏光膜4の製造方法としては、特開昭51-069644号公報、特開2000-338329号公報、特開2001-343521号公報、国際公開第2010/100917号、特開2012-073563号公報、特開2011-2816号公報に記載された、PVA系樹脂層及び延伸用樹脂基材の積層体を延伸する工程と染色する工程とを含む製法も挙げられる。この製法であれば、PVA系樹脂層が延伸用樹脂基材に支持されているため、PVA系樹脂層が薄くても、延伸による破断などの不具合を抑制することができる。
【0114】
積層体を延伸する工程と染色する工程とを含む製法としては、上述の特開昭51-069644号公報、特開2000-338329号公報、特開2001-343521号公報に記載された空中延伸(乾式延伸)法が挙げられる。高倍率に延伸でき、偏光性能を容易に向上できる点で、国際公開第2010/100917号、特開2012-073563号公報に記載された、ホウ酸水溶液中で延伸する工程を含む製法が好ましく、特に特開2012-073563号公報に記載された、ホウ酸水溶液中で延伸する前に空中補助延伸を行う工程を行う製法(2段延伸法)が好ましい。特開2011-2816号公報に記載された、PVA系樹脂層及び延伸用樹脂基材の積層体を延伸した後に、PVA系樹脂層を過剰に染色し、その後脱色する製法(過剰染色脱色法)も好ましい。偏光膜4としては、例えば、上述したヨウ素を配向させたポリビニルアルコール系樹脂からなり、空中補助延伸とホウ酸水中延伸とからなる2段延伸工程で延伸された偏光膜が挙げられる。偏光膜4としては、例えば、上述したヨウ素を配向させたポリビニルアルコール系樹脂からなり、延伸されたPVA系樹脂層及び延伸用樹脂基材の積層体を過剰に染色し、その後脱色することにより作製された偏光膜を用いることもできる。
【0115】
偏光膜4の厚みは、例えば20μm以下であり、好ましくは12μm以下であり、より好ましくは9μm以下であり、さらに好ましくは1~8μmであり、特に好ましくは3~6μmである。上記の範囲内であれば、積層体11の巻き取りがほとんど阻害されない。
【0116】
[位相差膜]
位相差膜5としては、高分子フィルムを延伸させて得られるものや液晶材料を配向、固定化させたものを用いることができる。本明細書において、位相差膜5は、面内及び/又は厚み方向に複屈折を有する。
【0117】
位相差膜5としては、反射防止用位相差膜(特開2012-133303号公報〔0221〕、〔0222〕、〔0228〕参照)、視野角補償用相差膜(特開2012-133303号公報〔0225〕、〔0226〕参照)、視野角補償用の傾斜配向位相差膜(特開2012-133303号公報〔0227〕参照)等が挙げられる。
【0118】
位相差膜5としては、実質的に上記の機能を有するものであれば、例えば、位相差値、配置角度、3次元複屈折率、単層か多層かなどは特に限定されず、公知の位相差膜を使用することができる。
【0119】
位相差膜5の厚みは、好ましくは20μm以下であり、より好ましくは10μm以下であり、さらに好ましくは1~9μmであり、特に好ましくは3~8μmである。上記の範囲内であれば、積層体11の巻き取りがほとんど阻害されない。
【0120】
位相差膜5は、例えば、液晶材料が配向、固定化された1/4波長板、1/2波長板の2層から構成される位相差膜である。
【0121】
(フレキシブル画像表示装置における粘着シートの評価)
上述のとおり、フレキシブル画像表示装置100(又は110)に含まれる粘着シート1は、当該装置が巻き取られた場合であっても、当該装置を構成する層に加わる歪みを十分に緩和することができる。粘着シート1による各層の歪みの緩和の程度は、フレキシブル画像表示装置100(又は110)がローラに巻き付けられた状態での粘着シートによる各層のずれ量によって評価することができる。以下では、一例として、フレキシブル画像表示装置110での粘着シート1(1a及び1b)による各層のずれ量を測定する方法を説明する。まず、第1の粘着シート1aを介して、フレキシブル画像表示装置110に含まれる積層体11をサポートフィルム55に貼り付け、320mm×50mmの短冊状に切り出して試験片15とする。図3Aは、試験片15の断面図を示している。サポートフィルム55には、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等の樹脂フィルムを使用できる。
【0122】
次に、サポートフィルム55がローラ45に接する状態で、試験片15をローラ45に巻き付ける。図3Bは、ローラ45によって完全に巻き取られた試験片15の側面図である。次に、ローラ45によって完全に巻き取られた試験片15の端部付近(領域C)をマイクロスコープなどによって観察する。図3Cは、図3Bの領域Cの拡大図である。次に、試験片15の巻き取り方向Xにおけるサポートフィルム55の端面と光学フィルム20の端面との距離を第1の粘着シート1aによるずれ量L1として特定する。巻き取り方向Xにおける光学フィルム20の端面と第2の基材2bの端面との距離を第2の粘着シート1bによるずれ量L2として特定する。ずれ量L1及びずれ量L2の合計値を積層体11での粘着シート1による部材のずれ量Lとして特定する。ずれ量Lが大きければ大きいほど、粘着シート1によって、各層の歪みが緩和される傾向がある。なお、同様の方法によって、フレキシブル画像表示装置100での粘着シート1による各層のずれ量を測定することも可能である。
【0123】
試験片15と接するローラ45の側面によって規定された円の半径rが5mmである場合、ずれ量Lは、例えば0.7mm以上であり、好ましくは1.0mm以上であり、より好ましくは1.5mm以上である。このときのずれ量Lの上限値は、特に限定されず、例えば3.0mm以下である。なお、半径rは、試験片15における最小の屈曲半径に相当する。本明細書において、最小の屈曲半径とは、試験片15が湾曲した状態での試験片15の内側表面において、最大の曲率を与える曲面にて定まる曲率半径を意味する。
【0124】
上記の半径rが10mmである場合、ずれ量Lは、例えば0.5mm以上であり、好ましくは0.8mm以上であり、より好ましくは1.0mm以上である。このときのずれ量Lの上限値は、特に限定されず、例えば2.0mm以下である。上記の半径rが15mmである場合、ずれ量Lは、例えば0.3mm以上であり、好ましくは0.5mm以上である。このときのずれ量Lの上限値は、特に限定されず、例えば1.0mm以下である。
【0125】
(フレキシブル画像表示装置の使用例)
上述のとおり、フレキシブル画像表示装置100(又は110)において、画像表示パネル3で構成された表示部は、巻き取り可能である。巻き取り可能な表示部を有するフレキシブル画像表示装置100(又は110)は、例えば、図4に示すように、ローラ45に巻き付けられて曲げられながら引き込まれるように設計されうる。図4のフレキシブル画像表示装置100は、いわゆるローラブル画像表示装置である。なお、図4よりもさらにフレキシブル画像表示装置100が引き込まれると、装置100は、渦巻き状に巻き込まれることになる。
【0126】
図4に示すフレキシブル画像表示装置100において、最小の屈曲半径は、例えば50mm以下であり、30mm以下であってもよく、20mm以下であってもよく、10mm以下であってもよい。最小の屈曲半径の下限値は、特に限定されず、例えば5mm以上である。図4に示すフレキシブル画像表示装置100において、最小の屈曲半径は、フレキシブル画像表示装置100と接するローラ45の側面によって規定された円の半径rに相当する。
【0127】
図4に示すフレキシブル画像表示装置100において、画像表示パネル3で構成された表示部全体の面積に対する巻き取り可能な表示部の部分の面積の比率は、例えば、50%以上90%以下であり、好ましくは50%超90%以下である。
【0128】
本発明のフレキシブル画像表示装置100(又は110)は、フレキシブルな液晶表示装置、有機EL(エレクトロルミネッセンス)表示装置、電子ペーパーなどの画像表示装置として好適に用いることができる。フレキシブル画像表示装置100(又は110)は、抵抗膜方式や静電容量方式といったタッチパネル等の方式に関係なく使用することができる。
【実施例
【0129】
以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明する。本発明は、以下に示す実施例に限定されない。
【0130】
[(メタ)アクリル系ポリマーA1]
攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた4つ口フラスコに、ブチルアクリレート(BA)99重量部、4-ヒドロキシブチルアクリレート(HBA)1重量部を含有するモノマー混合物を仕込んだ。さらに、モノマー混合物100重量部に対して、重合開始剤として2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.1重量部を酢酸エチルと共に仕込み、緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入して窒素置換した後、フラスコ内の液温を55℃付近に保って7時間重合反応を行った。その後、得られた反応液に、酢酸エチルを加えて、固形分濃度30%に調整した、重量平均分子量160万の(メタ)アクリル系ポリマーA1の溶液を調製した。
【0131】
[(メタ)アクリル系ポリマーA2及びA3]
使用するモノマーを表1のように変更したことを除き、(メタ)アクリル系ポリマーA1と同じ方法で、(メタ)アクリル系ポリマーA2の溶液及び(メタ)アクリル系ポリマーA3の溶液を調製した。
【0132】
[アクリル系オリゴマー(オリゴマーB1)]
攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた4つ口フラスコに、ブチルアクリレート(BA)95重量部、アクリル酸(AA)2重量部、メチルアクリレート(MA)3重量部、重合開始剤として2,2’-アゾビスイソブチロニトリル0.1重量部、及びトルエン140重量部を仕込み、緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入して十分に窒素置換した後、フラスコ内の液温を70℃付近に保って8時間重合反応を行い、アクリル系オリゴマー(オリゴマーB1)溶液を調製した。上記オリゴマーB1の重量平均分子量は4500であった。
【0133】
【表1】
【0134】
表1中の略称は以下のとおりである。
2EHA:2-エチルへキシルアクリレート
BA:n-ブチルアクリレート
LA:ラウリルアクリレート
MA:メチルアクリレート
NVP:N-ビニルピロリドン
AA:アクリル酸
HBA:4-ヒドロキシブチルアクリレート
AIBN:アゾ系重合開始剤、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(キシダ化学社製)
【0135】
[粘着シートの作製]
(実施例5、参照例1~6及び比較例1~2)
以下の表2に示す組成となるように(メタ)アクリル系ポリマー、(メタ)アクリル系オリゴマー、架橋剤及び添加剤を混合して、溶剤型の粘着剤組成物を得た。次に、基材フィルム(セパレータ)であるPETフィルムの表面に得られた粘着剤組成物を塗布した後、155℃に設定した空気循環式恒温オーブンにて2分間乾燥させて、実施例5、参照例1~6及び比較例1~2の粘着シートを形成した。粘着剤組成物の塗布には、ファウンテンコーターを使用した。
【0136】
【表2】
【0137】
表2中の略称は以下のとおりである。
D110N:トリメチロールプロパン/キシリレンジイソシアネート付加物(三井化学製、商品名:タケネートD110N)
C/L:トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート(日本ポリウレタン工業社製、商品名:コロネートL)
過酸化物:ベンゾイルパーオキサイド(日本油脂社製、商品名:ナイパーBMT)
【0138】
[粘着剤層付き光学フィルムの作製]
次に、各実施例及び比較例において得られた基材フィルム及び粘着シートの積層体(a)に対して、1/4波長板(λ/4板)、1/2波長板(λ/2板)、偏光膜及び基材(保護膜)がこの順に積層されてなる光学フィルムを当該粘着シートにより接合して、粘着剤層付き光学フィルムAを得た。粘着剤層付き光学フィルムAは、基材フィルム側から、基材フィルム|粘着シート|λ/4板|λ/2板|偏光膜|保護膜の多層構造を有している。なお、光学フィルムを構成する各層及び光学フィルムは、以下のように準備した。
【0139】
(λ/4板及びλ/2板)
λ/4板及びλ/2板の積層体である位相差膜は、配向膜の形成後にネマチック液晶相を示す重合性液晶材料(BASF社製、PaliocolorLC242)を使用して作製した。具体的には、次のとおりである。上記重合性液晶材料、及び光重合開始剤(BASF製、イルガキュア907)をトルエンに溶解させた後、塗工性向上を目的としてフッ素系界面活性剤(DIC製メガファック)を液晶厚みに応じて0.1~0.5重量%さらに加えて塗工液Lを調製した。塗工液Lの固形分濃度は25重量%とした。
【0140】
次に、図5に示す、位相差膜の製造装置200を準備した。製造装置200は、帯状のPET基材214を供給する供給リール221、加圧ローラ224,234、賦形ローラ230,240、剥離ローラ226,236、搬送ローラ231、ダイ222,229,232,239、及び高圧水銀灯による紫外線を照射する紫外線照射装置225,227,235,237を備えている。次に、供給リール221から繰り出したPET基材214の一方の面に対して、紫外線硬化性樹脂の溶液210をダイ222により塗布した。次に、加圧ローラ224により上記塗布膜と賦形ローラ230とを接触させ、両者が接触した状態のまま賦形ローラ230に沿ってPET基材214を搬送させるとともに、紫外線照射装置225によりPET基材214の側から紫外線を照射して塗布膜を硬化させた。賦形ローラ230におけるPET基材214の搬送面には、上記重合性液晶材料の配向膜をさらに形成したときにλ/4板が形成される線状の凹凸(PET基材のMD方向に対して75°の方向に延びる)が形成されており、上記硬化により、当該凹凸に対応する形状を露出面に有する紫外線硬化性樹脂の硬化膜が形成された。次に、剥離ローラ226によって、硬化膜が形成されたPET基材214を賦形ローラ230から剥離した後、上記硬化膜の露出面に、ダイ229により塗工液Lを塗布し、紫外線照射装置227により紫外線を照射して塗布膜を配向硬化させた。このようにして、PET基材214上に、紫外線硬化性樹脂の硬化膜及び重合性液晶材料の配向硬化膜からなるλ/4板(厚さ3μm)を形成した。
【0141】
次に、λ/4板を形成したPET基材214を搬送ローラ231により搬送し、さらに、λ/4板の露出面に対して、上記紫外線硬化性樹脂の溶液212をダイ232により塗布して塗布膜を形成した。次に、加圧ローラ234により上記塗布膜と賦形ローラ240とを接触させ、両者が接触した状態のまま賦形ローラ240に沿ってPET基材214を搬送させるとともに、紫外線照射装置235によりPET基材214の側から紫外線を照射して塗布膜を硬化させた。賦形ローラ240におけるPET基材214の搬送面には、上記重合性液晶材料の配向膜をさらに形成したときにλ/2板が形成される線状の凹凸(PET基材のMD方向に対して15°の方向に延びる)が形成されており、上記硬化により、当該凹凸に対応する形状を露出面に有する紫外線硬化性樹脂の硬化膜が形成された。次に、剥離ローラ236によって、硬化膜が形成されたPET基材214を賦形ローラ240から剥離した後、上記硬化膜の露出面に、ダイ239により塗工液Lを塗布し、紫外線照射装置237により紫外線を照射して塗布膜を配向硬化させた。このようにして、PET基材214のλ/4板上に、紫外線硬化性樹脂の硬化膜及び重合性液晶材料の配向硬化膜からなるλ/2板(厚さ3μm)をさらに形成して積層体(b)を得た。
【0142】
(偏光膜及び保護膜の積層体)
偏光膜及び保護膜の積層体は、以下のように作製した。
【0143】
熱可塑性樹脂基材として、イソフタル酸(IPA)ユニットを7モル%有するアモルファスのIPA共重合PETフィルム(厚さ100μm)を準備し、その表面にコロナ処理(58W/m2/分)を施した。これとは別に、アセトアセチル変性PVA(日本合成化学工業製、ゴーセファイマーZ200、平均重合度1200、ケン化度98.5モル%、アセトアセチル化度5モル%)を1重量%添加したPVA(重合度4200、ケン化度99.2%)を水に溶解させて、濃度5.5重量%のPVA塗工液を得た。次に、IPA共重合PETフィルムにおけるコロナ処理面に対して、乾燥後の膜厚が12μmになるように上記PVA塗工液を塗布し、60℃の熱風乾燥により塗布膜を10分間乾燥させて、基材と、基材上のPVA層とからなる積層体を得た。
【0144】
次に、得られた積層体を空気中、130℃にて1.8倍の延伸倍率で自由端延伸(空中補助延伸)して、延伸積層体を得た。次に、延伸積層体を液温30℃のホウ酸不溶化水溶液に30秒間浸漬させて、PVA層を不溶化した。ホウ酸不溶化水溶液におけるホウ酸の含有量は、水100重量部に対して3重量部とした。次に、PVA層を不溶化した延伸積層体を染色して、着色積層体を得た。染色は、ヨウ素及びヨウ化カリウムを含む液温30℃の染色液に延伸積層体を浸漬することで実施した。上記染色では、延伸積層体に含まれるPVA層がヨウ素により染色される。染色の時間は、最終的に得られる偏光膜を構成するPVA層の単体透過率が40~44%の範囲となるように調整した。染色液には、ヨウ素濃度0.1~0.4重量%、ヨウ化カリウム濃度0.7~2.8重量%の水溶液を使用した。染色液におけるヨウ素濃度に対するヨウ化カリウム濃度の比は7とした。次に、着色積層体を液温30℃のホウ酸架橋水溶液に60秒間浸漬させることで、ヨウ素を吸着したPVA層におけるPVA分子間に架橋構造を形成する架橋処理を実施した。ホウ酸架橋水溶液におけるホウ酸の含有量及びヨウ化カリウムの含有量は、いずれも水100重量部に対して3重量部とした。
【0145】
次に、架橋処理後の着色積層体を、ホウ酸水溶液中にて、延伸温度70℃及び延伸倍率3.05倍で延伸(ホウ酸水中延伸)して、最終的な延伸倍率が5.50倍である延伸積層体を得た。ホウ酸水中延伸の延伸方向は、最初に実施した空中補助延伸の延伸方向に一致させた。次に、延伸後の延伸積層体をホウ酸水溶液から取り出し、PVA層の表面に付着したホウ酸をヨウ化カリウム溶液(ヨウ化カリウムの含有量が水100重量部に対して4重量部)により洗浄した。次に、洗浄後の延伸積層体を60℃の熱風乾燥により乾燥させて、基材と、基材上に形成された偏光膜(厚さ5μm)との積層体を得た。
【0146】
次に、保護膜として、グルタルイミド環単位を有するメタクリル樹脂の延伸フィルム(厚さ20μm、透湿度160g/m2)を準備した。次に、上記作製した積層体における偏光膜の露出面に対して準備した保護膜を接合して、基材と、偏光膜及び保護膜を有する偏光フィルムとの積層体(c)を得た。偏光膜と保護膜との接合には、公知のアクリル系接着剤を使用した。
【0147】
次に、上記作製した積層体(a)、積層体(b)及び積層体(c)を用いて、以下のように粘着剤層付き光学フィルムAを作製した。最初に、積層体(c)から基材を剥離して偏光膜を露出させた。次に、露出させた偏光膜と積層体(b)のλ/2板とを公知のアクリル系接着剤により接合した。次に、積層体(b)からPET基材214を剥離してλ/4板を露出させた。次に、露出させたλ/4板と積層体(a)とを積層体(a)の粘着シートにより接合して、粘着剤層付き光学フィルムAを得た。
【0148】
各実施例及び比較例の粘着シートを用いて作製した粘着剤層付き光学フィルムAから、それぞれ、以下のようにして、PET層|粘着シート|λ/4板|λ/2板|偏光膜|保護膜|粘着シート|ポリイミド(PI)層の多層構造を有する粘着剤層付き光学フィルムBを得た。最初に、粘着剤層付き光学フィルムAから、基材フィルム(セパレータ)を剥離して粘着シートを露出させた。次に、露出させた粘着シートに対して厚さ125μmのPET層(コロナ処理済み)を接合した。次に、反対側の露出面である保護膜(コロナ処理済み)に対して、PET層とλ/4板との間に使用した粘着シートと同一の粘着シートにより、PI層(厚さ50μm、コロナ処理済み)を接合して、粘着剤層付き光学フィルムBを得た。
【0149】
[評価]
<(メタ)アクリル系ポリマー及びアクリル系オリゴマーの重量平均分子量(Mw)>
得られた(メタ)アクリル系ポリマー及びアクリル系オリゴマーの重量平均分子量(Mw)は、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)により測定した。
・分析装置:東ソー社製、HLC-8120GPC
・カラム:東ソー社製、G7000HXL+GMHXL+GMHXL
・カラムサイズ:各7.8mmφ×30cm 計90cm
・カラム温度:40℃
・流量:0.8ml/min
・注入量:100μl
・溶離液:テトラヒドロフラン
・検出器:示差屈折計(RI)
・標準試料:ポリスチレン
【0150】
<厚み>
粘着シート等の厚みは、ダイヤルゲージ(ミツトヨ製)を用いて測定した。
【0151】
<ゲル分率>
作製した粘着シートに対するゲル分率の評価は、上述の方法により実施した。粘着シートの一部を掻き取って得られた小片の重量は、約0.2gであった。ポリテトラフルオロエチレンの延伸多孔質膜には、日東電工製NTF1122(平均孔径0.2μm)を用いた。
【0152】
<モジュラス>
作製した粘着シートに対する1000%モジュラスの評価は、上述の方法により実施した。引張試験機には、島津製作所製AG-ISを用いた。なお、粘着シートの巻回は、基材フィルムから粘着シートを剥離しながら実施した。
【0153】
<連続巻取試験>
粘着剤層付き光学フィルムBを評価用試料として、連続巻取試験を行った。連続巻取試験は、ユアサシステム機器製の試験機を用いて、以下のように実施した。なお、図6(A)及び(B)に示すように、試験機は、面状体である試験片15Bに対して巻き取りを繰り返す機構を有しており、試験片15Bと接するローラ45の側面によって規定された円の半径を調整することにより、屈曲半径を変えることができる。連続巻取試験は、試験片15Bに100gfの荷重54を鉛直下方に加えた状態で行った。
【0154】
試験片15Bには、粘着剤層付き光学フィルムBを320mm×50mmの短冊状に切り出したものを使用した。試験片15Bは、その長辺方向に巻き取られるように、かつPET層が内側となるように、両面粘着テープによりローラ45に固定した。試験は、25℃の雰囲気下にて、屈曲半径10mm、巻取速度5.7m/minの条件で実施した。試験片15Bは、図6(A)の状態からローラ45が3.3回転するように巻き取られた。連続巻取試験は、粘着剤層付き光学フィルムBを構成する層に剥がれが発生する、又は、粘着剤層付き光学フィルムBに顕著な巻き癖が残るまでの巻き取り回数により評価した。なお、巻き取りの回数が10万回に達した場合は、試験を打ち切った。
【0155】
判定基準は次のとおりである。
AA:剥がれ又は顕著な巻き癖が発生するまでの巻き取り回数が10万回以上(実用上問題なし)
A:剥がれ又は顕著な巻き癖が発生するまでの巻き取り回数が5万~10万回未満(実用上問題なし)
B:剥がれ又は顕著な巻き癖が発生するまでの巻き取り回数が3万~5万回未満(実用上問題なし)
C:剥がれ又は顕著な巻き癖が発生するまでの巻き取り回数が1万~3万回未満(実用上問題なし)
D:剥がれ又は顕著な巻き癖が発生するまでの巻き取り回数が1万回未満(実用上問題あり)
【0156】
【表3】
【0157】
表3からわかるとおり、1000%モジュラスが0.01~0.6N/mm2であり、かつ、ゲル分率が30%以上である粘着シートを備えた粘着剤層付き光学フィルムB(実施例5及び参照例1~6)では、連続巻取試験において、顕著な巻き癖の発生及び層の剥がれを十分に抑制することができた。これに対して、1000%モジュラスが0.6N/mm2を大きく上回る粘着シートを備えた比較例1の粘着剤層付き光学フィルムBでは、連続巻取試験の早い段階で、顕著な巻き癖が発生した。ゲル分率が30%未満である粘着シートを備えた比較例2の粘着剤層付き光学フィルムBでは、連続巻取試験の早い段階で、粘着剤層付き光学フィルムBを構成する層に剥がれが発生した。
【産業上の利用可能性】
【0158】
本発明の粘着シートは、巻き取り可能な表示部を有するフレキシブル画像表示装置に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0159】
1 粘着シート
2 基材
3 画像表示パネル
4 偏光膜
5 位相差膜
10,11 フレキシブル画像表示装置用積層体
20 光学フィルム
100,110 フレキシブル画像表示装置
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6