(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】電子マネーシステム及び電子マネー処理方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 20/06 20120101AFI20241016BHJP
【FI】
G06Q20/06 300
(21)【出願番号】P 2020065750
(22)【出願日】2020-04-01
【審査請求日】2023-04-03
(73)【特許権者】
【識別番号】302064762
【氏名又は名称】株式会社日本総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100125645
【氏名又は名称】是枝 洋介
(74)【代理人】
【識別番号】100145609
【氏名又は名称】楠屋 宏行
(74)【代理人】
【識別番号】100149490
【氏名又は名称】羽柴 拓司
(72)【発明者】
【氏名】中島 多加子
(72)【発明者】
【氏名】南部 智子
【審査官】久慈 渉
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-213736(JP,A)
【文献】特開2007-299252(JP,A)
【文献】特開2004-005734(JP,A)
【文献】特開2017-204109(JP,A)
【文献】国際公開第2014/041700(WO,A1)
【文献】特開2014-038407(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子マネーの使用に供される可搬型装置毎に、少なくとも1つの使用条件で構成される使用制限枠を設定可能な電子マネーシステムであって、
使用者の行動に応じて成否が定まり、成立した場合には使用可能額が増額することを示す使用条件で構成される使用制限枠が設定されており、
前記可搬型装置にチャージされている電子マネーの残高及び前記使用者の行動に基づいて、前記使用制限枠における電子マネーの使用可能額を特定する特定手段と、
特定した使用可能額、前記使用制限枠を構成する使用条件、及び前記使用条件に係る行動の内容を、電子マネーの使用者に通知する通知手段と
を備
え、
前記可搬型装置毎に、互いに異なる使用条件で構成される複数の使用制限枠が設定されており、
前記特定手段は、設定された使用制限枠毎に、電子マネーの使用可能額を特定する、
電子マネーシステム。
【請求項2】
一の使用制限枠における使用可能額を他の使用制限枠に移動させる移動手段をさらに備える、
請求項1に記載の電子マネーシステム。
【請求項3】
前記移動手段は、前記一の使用制限枠における使用可能額のうちの未使用額を他の使用制限枠に移動させる、
請求項2に記載の電子マネーシステム。
【請求項4】
複数の使用制限枠にて決済が可能な場合に、使用する使用制限枠の選択を使用者から受け付ける受付手段をさらに備える、
請求項1乃至3の何れかに記載の電子マネーシステム。
【請求項5】
使用制限枠毎に、電子マネーの入金を受け付けるチャージ手段をさらに備える、
請求項1乃至4の何れかに記載の電子マネーシステム。
【請求項6】
使用者の行動の内容を示す行動情報を取得する取得手段をさらに備え、
前記特定手段は、取得した行動情報に基づいて前記使用制限枠における電子マネーの使用可能額を特定する、
請求項5に記載の電子マネーシステム。
【請求項7】
電子マネーの使用に供される可搬型装置毎に、少なくとも1つの使用条件で構成される使用制限枠を設定可能な電子マネーシステムであって、
使用者の行動に応じて成否が定まり、成立した場合には使用可能額が増額することを示す使用条件で構成される使用制限枠が設定されており、
前記可搬型装置にチャージされている電子マネーの残高及び前記使用者の行動に基づいて、前記使用制限枠における電子マネーの使用可能額を特定する特定手段と、
特定した使用可能額、前記使用制限枠を構成する使用条件、及び前記使用条件に係る行動の内容を、電子マネーの使用者に通知する通知手段と
を備
え、
前記可搬型装置毎に、所定期間毎に所定額が使用可能であるとの使用条件で構成される使用制限枠が設定されており、
前記特定手段は、先行する期間における前記所定額のうちの未使用額を後の期間における前記所定額に加算した額を、前記後の期間における使用可能額として特定する、
電子マネーシステム。
【請求項8】
電子マネーの使用に供される可搬型装置毎に、少なくとも1つの使用条件で構成される使用制限枠を設定可能な電子マネーシステムであって、
使用者の行動に応じて成否が定まり、成立した場合には使用可能額が増額することを示す使用条件で構成される使用制限枠が設定されており、
前記可搬型装置にチャージされている電子マネーの残高及び前記使用者の行動に基づいて、前記使用制限枠における電子マネーの使用可能額を特定する特定手段と、
特定した使用可能額、前記使用制限枠を構成する使用条件、及び前記使用条件に係る行動の内容を、電子マネーの使用者に通知する通知手段と
を備
え、
前記可搬型装置毎に、所定期間毎に所定額が使用可能であるとの使用条件で構成される使用制限枠が設定されており、
前記通知手段は、複数の前記所定期間における使用可能額の合計額を使用者に通知する、
電子マネーシステム。
【請求項9】
電子マネーの使用に供される可搬型装置毎に、少なくとも1つの使用条件で構成される使用制限枠を設定可能な電子マネー処理方法であって、
使用者の行動に応じて成否が定まり、成立した場合には使用可能額が増額することを示す使用条件で構成される使用制限枠が設定されており、
情報処理装置が、
前記可搬型装置にチャージされている電子マネーの残高及び前記使用者の行動に基づいて、当該使用制限枠における電子マネーの使用可能額を特定し、
特定した使用可能額、前記使用制限枠を構成する使用条件、及び前記使用条件に係る行動の内容を、電子マネーの使用者に通知
し、
前記可搬型装置毎に、互いに異なる使用条件で構成される複数の使用制限枠が設定されており、
前記情報処理装置が、
設定された使用制限枠毎に、電子マネーの使用可能額を特定する、
電子マネー処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子マネーの使用を管理する電子マネーシステム及び電子マネー処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子マネーの使用制限を行うための技術が種々提案されている。例えば、特許文献1には、異なる複数の使用制限項目によって使用が制限された電子マネーを作成する電子マネーシステムが開示されている。この電子マネーシステムによれば、子供への小遣いやお使いなどの際に使用用途を限定することが可能になる(特許文献1の段落[0079])。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電子マネーの使用者が子供の場合、上記の従来技術のように使用用途を限定することは、親などの保護者にとって好ましくない使用を防止することができるという点で有効であるものの、制限された範囲内で使用を許可するだけではお金の使い方について学ぶ機会を子供に与えることができないなどの不都合がある。
【0005】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、上記の課題を解決することができる電子マネーシステム及び電子マネー処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の一の態様の電子マネーシステムは、電子マネーの使用に供される可搬型装置毎に、少なくとも1つの使用条件で構成される使用制限枠を設定可能な電子マネーシステムであって、前記可搬型装置にチャージされている電子マネーの残高及び前記使用制限枠を構成する使用条件に基づいて、当該使用制限枠における電子マネーの使用可能額を特定する特定手段と、特定した使用可能額及び前記使用制限枠を構成する使用条件を、電子マネーの使用者に通知する通知手段とを備える。
【0007】
前記態様において、前記可搬型装置毎に、互いに異なる使用条件で構成される複数の使用制限枠が設定されており、前記特定手段は、設定された使用制限枠毎に、電子マネーの使用可能額を特定してもよい。
【0008】
また、前記態様において、一の使用制限枠における使用可能額を他の使用制限枠に移動させる移動手段をさらに備えてもよい。
【0009】
また、前記態様において、前記移動手段は、前記一の使用制限枠における使用可能額のうちの未使用額を他の使用制限枠に移動させてもよい。
【0010】
また、前記態様において、複数の使用制限枠にて決済が可能な場合に、使用する使用制限枠の選択を使用者から受け付ける受付手段をさらに備えてもよい。
【0011】
また、前記態様において、使用制限枠毎に、電子マネーの入金を受け付けるチャージ手段をさらに備えてもよい。
【0012】
また、前記態様において、使用者の行動に応じて成否が定まる使用条件で構成される使用制限枠が設定されており、前記特定手段は、使用者の行動に基づいて前記使用制限枠における電子マネーの使用可能額を特定してもよい。
【0013】
また、前記態様において、使用者の行動の内容を示す行動情報を取得する取得手段をさらに備え、前記特定手段は、取得した行動情報に基づいて前記使用制限枠における電子マネーの使用可能額を特定してもよい。
【0014】
また、前記態様において、前記可搬型装置毎に、所定期間毎に所定額が使用可能であるとの使用条件で構成される使用制限枠が設定されており、前記特定手段は、先行する期間における前記所定額のうちの未使用額を後の期間における前記所定額に加算した額を、前記後の期間における使用可能額として特定してもよい。
【0015】
また、前記態様において、前記可搬型装置毎に、所定期間毎に所定額が使用可能であるとの使用条件で構成される使用制限枠が設定されており、前記通知手段は、複数の前記所定期間における使用可能額の合計額を使用者に通知してもよい。
【0016】
また、本発明の一の態様の電子マネー処理方法は、電子マネーの使用に供される可搬型装置毎に、少なくとも1つの使用条件で構成される使用制限枠を設定可能な電子マネー処理方法であって、情報処理装置が、前記可搬型装置にチャージされている電子マネーの残高及び前記使用制限枠を構成する使用条件に基づいて、当該使用制限枠における電子マネーの使用可能額を特定し、特定した使用可能額及び前記使用制限枠を構成する使用条件を、電子マネーの使用者に通知する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、簡易な構成で、サービスの利用者の認証を適切に行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施の形態1の電子マネーシステム及びその通信先の構成を示すブロック図。
【
図2】実施の形態1のサーバの詳細な構成を示すブロック図。
【
図3】管理データベースのレイアウトの一例を示す図。
【
図4】使用制限枠を構成する使用条件及びチャージ条件を説明するための図。
【
図5】使用履歴データベースのレイアウトの一例を示す図。
【
図6】実施の形態1のサーバ及び情報端末によって実行される問い合わせ処理の手順を示すフローチャート。
【
図7】実施の形態1のサーバ及び電子マネー端末によって実行される決済処理の手順を示すフローチャート。
【
図8】実施の形態1のサーバ及び電子マネー端末によって実行されるチャージ処理の手順を示すフローチャート。
【
図9】実施の形態1のサーバによって実行される使用可能額移動処理の手順を示すフローチャート。
【
図10】実施の形態2の電子マネーシステム及びその通信先の構成を示すブロック図。
【
図11】実施の形態2の電子マネー端末2によって実行される問い合わせ処理の手順を示すフローチャート。
【
図12】実施の形態2の電子マネー端末2によって実行される決済処理の手順を示すフローチャート。
【
図13】実施の形態2の電子マネー端末2によって実行されるチャージ処理の手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下に示す各実施の形態は、本発明の技術的思想を具体化するための方法及び装置を例示するものであって、本発明の技術的思想は下記のものに限定されるわけではない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において種々の変更を加えることができる。
【0020】
なお、以下の各実施の形態では、子供が電子マネーの使用者である場合にその使用を制限することを可能にする例について説明するが、本発明はこれに限定されるわけではなく、子供以外の様々な者による電子マネーの使用を制限する電子マネーシステムに適用可能である。
【0021】
(実施の形態1)
実施の形態1の電子マネーシステムはサーバで構成されており、当該サーバが各装置と協働することによりサービスが実施される。以下、各装置の構成及びその動作について説明する。
【0022】
図1は、本実施の形態の電子マネーシステム及びその通信先の構成を示すブロック図である。本実施の形態の電子マネーシステムは、電子マネーサービスを提供する事業者によって運営されるサーバ1で構成されている。サーバ1は、店舗のPOS端末及び駅の自動券売機等に設けられる電子マネー端末2と、専用線101を介して通信可能に接続されている。
【0023】
サーバ1は、インターネットを含む通信ネットワーク102とも通信可能に接続されており、この通信ネットワーク102を介して、電子マネーの使用者によって利用される情報端末4と通信する。なお、情報端末4は、例えば、パーソナルコンピュータ、スマートフォン等の携帯電話機又はタブレット端末等で構成される。なお、サーバ1の詳細な構成については後述する。
【0024】
電子マネー端末2は、電子マネーの使用に供される可搬型装置3と通信可能なリーダライタ21を備えている。リーダライタ21は、可搬型装置3であるICカード3a及びスマートフォン等の携帯電話機3bとNFC(Near Field Communication)で通信を行う。但し、通信方式はNFCに限定されるわけではなく、Wi-Fi(登録商標)、BLUETOOTH(登録商標)及び赤外線通信などであってもよい。
【0025】
[サーバの構成]
図2は、実施の形態1のサーバ1の詳細な構成を示すブロック図である。
図2に示すように、サーバ1は、CPU11、ROM12、RAM13、入力部14、表示部15、ハードディスク16、及び通信インタフェース(I/F)17を備えており、これらの各要素はバス18によって接続されている。
【0026】
CPU11は、ROM12及びハードディスク16に記憶されているコンピュータプログラムを実行する。これにより、サーバ1は、後述するような動作を実行することが可能になる。
【0027】
ROM12は、CPU11によって実行されるコンピュータプログラム及びこれに用いられるデータなどを記憶している。また、RAM13は、ハードディスク16に記憶されているコンピュータプログラムの読み出しに用いられる。
【0028】
入力部14は、キーボード及びマウスなどから構成されており、USBなどから構成される入出力インタフェースを介してバス18に接続されている。また、表示部15は、LCD又はCRTなどで構成されており、画像出力インタフェースを介してバス18に接続されている。この表示部15は、CPU11から与えられる画像データに応じた映像信号にしたがって画像を表示する。
【0029】
ハードディスク16には、オペレーティングシステム及びアプリケーションプログラムを含む種々のコンピュータプログラム、並びにそれらのコンピュータプログラムの実行に用いられるデータなどがインストールされている。また、このハードディスク16には、管理データベース(以下「DB」)161、使用条件DB162、行動DB163、及び使用履歴DB164が設けられている。これらのデータベースの詳細については後述する。
【0030】
なお、本実施の形態では、管理DB161、使用条件DB162、行動DB163、及び使用履歴DB164がサーバ1の内部に設けられているが、サーバ1がアクセス可能であれば、これらのデータベースのうちの少なくとも一部が外部の他の装置に設けられていてもよい。
【0031】
[データベースの詳細]
以下、各データベースの詳細について説明する。
(A)管理DB161
管理DB161には、可搬型装置3に対して設定される使用制限枠に関する情報が格納される。
図3は、管理DB161のレイアウトの一例を示す図である。
図3に示す例では、可搬型装置3を識別するための装置ID毎に、可搬型装置3にチャージされている電子マネーの残高である装置残高、並びに、使用制限枠AからEを構成する使用条件及びその使用制限枠内の残高である枠残高が格納されている。なお、枠残高は、当該使用制限枠のみで使用可能な額の残高であり、これらの枠残高と装置残高との合計が可搬型装置3全体の残高となる。
【0032】
各使用制限枠は、少なくとも1つの使用条件によって構成されている。この使用条件は、使用可能額、使用可能店舗、使用可能商品、使用可能時期、及びそれらの組み合わせなどからなり、様々なものが想定可能である。また、本実施の形態の場合、使用制限枠毎に電子マネーの入金、すなわちチャージすることが可能であり、その条件であるチャージ条件が各使用制限枠について設定されている。各使用制限枠を構成可能な使用条件及びチャージ条件の具体例をまとめると、
図4のとおりとなる。
【0033】
図4に示す使用制限枠のうち、使用制限枠Aは、電子マネーの使用者である子供が自由に商品を購入することができる枠である。この使用制限枠Aを構成可能な使用条件は、使用可能額及び使用可能時期などの組合せで規定されている。例えば、使用条件a1として1日の使用可能額の上限が50円であることが、使用条件a2として平日と休日とで使用可能額の上限が変わり、平日は50円、休日は100円であることが、使用条件a3として事前に定められた特定の日のみ使用可能額が500円に増額されることが、それぞれ規定されている。
【0034】
上記の使用条件a1からa3の場合、1日の使用額が上限額に満たなかったとき、その差額(未使用額)を他の使用制限枠に移動させることができる。本実施の形態では、使用制限枠Aから使用制限枠Eへ未使用額を移動させることができるものとし、使用制限枠Eではその移動された額の範囲内で電子マネーを使用することができるものとする。
【0035】
また、使用制限枠Aでは、チャージ条件として、前月までに1ヵ月分をまとめてチャージすることが規定されている。このチャージ条件によれば、例えば、使用制限枠Aが使用条件a1のみで構成される場合であって、当月が30日までの月の場合、その前月の末日までに1,500円をまとめてチャージすることになる。
【0036】
使用制限枠Bは、電子マネーを使用する店舗によって使用の可否及び/又は使用可能額が変動する枠である。この使用制限枠Bを構成可能な使用条件は、使用可能店舗、使用可能商品、及び使用可能額などの組合せで規定されている。例えば、使用条件b1として文房具屋及び本屋では商品不問で毎月500円まで電子マネーを使用可能であること、使用条件b2としてコンビニエンスストアでは食品及び飲料品以外の商品であれば毎月300円まで使用可能であることが、それぞれ規定されている。
【0037】
なお、使用制限枠Bにおいてはチャージ条件が設定されていない。このようにチャージ条件が設定されていない使用制限枠の場合、その使用制限枠のみで使用可能な残高、すなわち枠残高は存在せず、装置残高の範囲で電子マネーの使用が行われる。
【0038】
使用制限枠Cは、電子マネーの使用者である子供の行動によって成否が定まる使用条件によって構成される枠である。この使用制限枠Cを構成可能な使用条件は、使用可能額、使用可能商品、及び使用者の行動内容などの組合せで規定されている。例えば、使用条件c1として使用者である子供が当日の宿題を終えている場合は商品不問で200円まで使用可能であることが、使用条件c2として同じく子供が家の手伝いをした場合は使用可能額が300円増額されることが、使用条件c3として同一商品について異なる3店舗以上で値段の比較を行った場合に当該商品が購入可能であることが、それぞれ規定されている。また、チャージ条件として、3,000円までチャージ可能であることが規定されている。
【0039】
使用制限枠Dは、緊急時にのみ使用することが可能になる枠である。この使用制限枠Dを構成可能な使用条件は、緊急時の該当条件などで構成されている。例えば、使用条件d1として使用者である子供が通学に利用する定期券等をなくした場合に通学範囲の交通費に使用可能であることが、使用条件d2として公衆電話で自宅に電話をかける場合に使用可能であることが、それぞれ規定されている。なお、使用制限枠Dにはチャージ条件が設定されていない。
【0040】
使用制限枠Eは、他の使用制限枠(本実施の形態では使用制限枠A)からの移動額が使用可能額となる枠である。この使用制限枠Eを構成可能な使用条件は、使用可能額などで構成されている。例えば、使用条件e1として枠残高の範囲内で使用可能であることが、使用条件e2として枠残高の範囲内で300円まで使用可能であることが、それぞれ規定されている。なお、使用制限枠Eにはチャージ条件が設定されていない。
【0041】
なお、上記の使用制限枠、並びにその使用制限枠を構成する使用条件及びチャージ条件は例示にすぎず、種々のものが想定可能である。また、使用制限枠の数も5に限定されるわけではなく、1以上であればいくつであってもよい。
【0042】
(B)使用条件DB162
使用条件DB162には、各使用制限枠を構成する使用条件に係る種々の情報が格納される。各使用条件は、電子マネーサービスを提供する事業者によって作成され、使用条件DB162に格納される。なお、上記の使用条件a1からa3のように未使用額を他の使用制限枠に移動させることが可能な使用条件については、そのことが識別できるように使用条件DB162に格納される。
【0043】
(C)行動DB163
行動DB163には、電子マネーの使用者である子供の行動の内容を示す行動情報が格納される。この行動情報は、種々の手法によって取得され、行動DB163に格納される。例えば、子供又はその親などが行動の内容を示す情報を情報端末4に入力し、情報端末4が当該情報をサーバ1に送信することが想定される。また、子供が情報端末4を用いて宿題を行う場合、宿題が終了したときに情報端末4がその旨をサーバ1に送信することも可能である。その他、各所に設置された装置が子供の行動を検知し、その結果をサーバ1に送信するなど、種々の態様が考えられる。
【0044】
(D)使用履歴DB164
使用履歴DB164には、電子マネーの使用履歴が格納される。
図5は、使用履歴DB164のレイアウトの一例を示す図である。
図5に示すとおり、使用履歴DB164には、使用された可搬型装置3の装置ID、電子マネーの使用日時、その使用時に用いられた電子マネー端末2の端末ID、使用された使用制限枠及び使用条件、並びに使用額が少なくとも格納される。これらの情報は、電子マネー端末2にて生成され、サーバ1に提供される。
【0045】
[システムの動作]
次に、上述したように構成された本実施の形態の電子マネーシステムの動作について、フローチャート等を参照しながら説明する。以下では、(1)電子マネーの使用可能額の問い合わせを行うための問い合わせ処理、(2)電子マネーを使用して決済を行うための決済処理、(3)電子マネーのチャージを行うためのチャージ処理、及び(4)一の使用制限枠から他の使用制限枠へ使用可能額を移動させるための使用可能額移動処理の各処理について説明する。
【0046】
(1)問い合わせ処理
可搬型装置3における電子マネーの使用可能額をサーバ1に問い合わせるために以下の問い合わせ処理が実行される。なお、下記では情報端末4を用いて問い合わせ処理が実行される例が示されるが、情報端末4の代わりに電子マネー端末2を用いて同様の処理を行うようにしてもよい。
【0047】
図6は、本実施の形態のサーバ1及び情報端末4によって実行される問い合わせ処理の手順を示すフローチャートである。
図6に示すとおり、情報端末4はまず、可搬型装置3の所有者又は使用者からの指示にしたがって、可搬型装置3の装置IDをサーバ1に対して送信する(S101)。ここで、情報端末4と可搬型装置3とが同一の装置である場合、すなわち可搬型装置3自体が情報端末4である場合、情報端末4は自身の記憶装置に記憶されている装置IDをサーバ1に送信する。また、情報端末4と可搬型装置3とが異なる装置である場合、情報端末4は、別途設けられたリーダを用いて可搬型装置3から装置IDを読み取り、その装置IDをサーバ1に送信する。
【0048】
サーバ1は、情報端末4から送信された装置IDを受信すると(S201)、管理DB161を参照してその装置IDに対して設定されている使用制限枠を特定する(S202)。次に、サーバ1は、管理DB161に格納されているチャージ残高、特定した各使用制限枠の使用条件、及び使用履歴DB164に格納されている使用履歴などに基づいて、各使用制限枠における使用可能額を特定する(S203)。
【0049】
例えば、使用制限枠Aが使用条件a1(1日の使用上限額50円)から構成されている場合、サーバ1は、使用履歴を用いて当日既に50円まで使用されていないかどうか、50円未満の額が使用されている場合は50円からその使用額を差し引いた額以上の枠残高があるか否かをそれぞれ確認し、使用可能額を特定する。既に20円が使用されていて、50円から20円を差し引いて得られた30円以上の枠残高がある場合であれば、使用可能額は30円と特定される。
【0050】
なお、この使用条件a1のように、所定期間毎に所定額が使用可能であるとの使用条件の場合、サーバ1が、先行する期間における未使用額を後の期間における使用可能額として特定するようにしてもよい。例えば、使用制限枠Aが使用条件a1から構成されている場合において、前日の使用額の合計が20円のときは、その未使用額である30円が当日の使用可能額に持ち越され、30円+50円で得られる80円が使用制限枠Aにおける当日の使用可能額となる(但し、枠残高が80円以上ある場合に限る)。
【0051】
その他にも、例えば、使用制限枠Bが使用条件b1(文房具屋・本屋では毎月500円まで使用可能)から構成されている場合、サーバ1は、使用履歴を用いて文房具屋・本屋の当月の使用額を確認するとともに、可搬型装置3の装置残高を確認し、その確認結果に基づいて使用可能額を特定する。文房具屋・本屋での当月の使用額が100円であって、可搬型装置3の装置残高が400円以上である場合、使用可能額は400円と特定される。
【0052】
また、例えば、使用制限枠Cが使用条件c1(当日の宿題を終えている場合は200円使用可能)から構成されている場合、サーバ1は、行動DB163を参照して電子マネーの使用者である子供が当日の宿題を終えているか否か、使用履歴を用いて既に当該使用制限枠Cにて当日使用していないか否か、使用制限枠Cの枠残高があるか否かをそれぞれ確認し、使用可能額を特定する。当日の宿題を終えていて、しかも使用制限枠Cでの当日使用可能額がゼロの場合、使用可能額は200円と特定される。
【0053】
上述したようにして各使用制限枠における使用可能額が特定された後、サーバ1は、それらの使用可能額及び各使用制限枠を構成する使用条件を含む回答情報を情報端末4に対して送信する(S204)。
【0054】
情報端末4は、サーバ1から送信された回答情報を受信すると(S102)、その回答情報に含まれる使用可能額及び使用条件を表示部に表示する(S103)。
【0055】
以上の問い合わせ処理の結果、可搬型装置3の所有者及び使用者は、各使用制限枠における使用可能額、及びその使用可能額を使用するための使用条件を把握することができる。その結果、所有者及び使用者は、どのような使用条件でどの程度の額を使用可能であるのかを把握することができるため、例えば、当日又は当月などの所定の期間にどの店舗においてどの程度の額の電子マネーを使用すべきかなどの検討を行うことが可能になる。特に当該使用者が子供である場合、このような検討を通してお金の使い方について学ぶことができる。
【0056】
なお、使用条件a1のように、所定期間毎に所定額が使用可能であるとの使用条件の場合、サーバ1が、複数の所定期間における使用可能額の合計額を情報端末4に提供するようにしてもよい。より具体的には、例えば、使用制限枠Aが使用条件a1から構成されている場合において、当月の残りが20日間であるときは、50円×20日間で得られる1,000円をサーバ1が情報端末4に通知することが想定される。可搬型装置3の所有者及び使用者は、この合計額も考慮した上で、電子マネーの使用計画を立てることが可能になる。
【0057】
(2)決済処理
電子マネーの使用者が各店舗にて電子マネーを用いて商品を購入する場合、次の決済処理が実行される。
図7は、サーバ1及び電子マネー端末2によって実行される決済処理の手順を示すフローチャートである。電子マネー端末2はまず、リーダライタ21を用いて使用者が購入しようとしている商品のタグなどに付されている商品ID(JANコード等)を読み取るとともに、可搬型装置3から装置IDを読み取る(S301)。
【0058】
次に、電子マネー端末2は、支払に利用する使用制限枠の選択を受け付ける(S302)。例えば、使用者が使用制限枠Aでの使用を希望する場合、使用者又は店舗の担当者などが電子マネー端末2を操作し、使用制限枠Aの選択を指示する。なお、使用制限枠の特定が行われない場合、この選択は行われずに次のステップに進む。その場合、どの使用制限枠を用いるのかは、使用条件などに基づいてサーバ1が決定する。
【0059】
次に、電子マネー端末2は、読み取った商品ID及び装置ID、その商品IDと対応付けて予め記憶されている商品名及び価格、使用制限枠の選択の有無及び選択された場合はその制限使用枠を識別するための識別子、並びに自装置の端末IDを含む決済要求をサーバ1に対して送信する(S303)。
【0060】
サーバ1は、電子マネー端末2から送信された決済要求を受信した場合(S401)、管理DB161を参照して決済要求に含まれる装置IDに対して設定されている使用制限枠を特定する(S402)。
【0061】
次に、サーバ1は、特定した使用制限枠の中から、今回の決済に使用可能な使用制限枠があるか否かを判定する(S403)。ここで、支払に利用する使用制限枠が既に選択されている場合、サーバ1は今回の決済に使用可能な使用制限枠があると判定する。他方、使用制限枠の選択がなされていない場合、サーバ1は、今回の決済がいずれかの使用制限枠を構成する使用条件を満足するか否かを判定し、満足する使用条件がある場合、その使用条件によって構成される使用制限枠を今回の決済に使用可能なものとして特定する。なお、満足する使用条件がない場合、今回の決済に使用可能な使用制限枠はないものと判断される。
【0062】
ステップS403にて今回の決済に使用可能な使用制限枠はないと判定した場合(S403でNO)、サーバ1は、電子マネーでの決済ができないことを示す決済不可情報を電子マネー端末2に対して送信する(S404)。電子マネー端末2は、その決済不可情報を受信すると(S304)、使用可能な使用制限枠が存在しないため電子マネーによる決済ができないことを示す決済不可メッセージを表示部に表示し(S305)、処理を終了する。
【0063】
他方、ステップS403において今回の決済に使用可能な使用制限枠があると判定した場合(S403でYES)、サーバ1は、その使用制限枠における使用可能額を特定する(S405)。この使用可能額の特定は、上記の問い合わせ処理におけるステップS203と同様に、管理DB161に格納されているチャージ残高、特定した各使用制限枠の使用条件、及び使用履歴DB164に格納されている使用履歴などに基づいて行われる。
【0064】
次に、サーバ1は、今回の決済に係る商品の価格が特定した使用可能額以下であるか否かを判定する(S406)。ここで、商品の価格が特定した使用可能額を超える額であると判定した場合(S406でNO)、サーバ1は、電子マネーでの決済ができないことを示す決済不可情報を電子マネー端末2に対して送信する(S407)。電子マネー端末2は、その決済不可情報を受信すると(S306)、使用可能額が不足しているため電子マネーによる決済ができないことを示す決済不可メッセージを表示部に表示し(S307)、処理を終了する。
【0065】
他方、ステップS406において商品の価格が特定した使用可能額以下であると判定した場合(S406でYES)、サーバ1は、使用可能額から商品の価格を差し引くことによって決済処理を実行し(S408)、決済が完了したことを示す決済完了情報を電子マネー端末2に対して送信する(S409)。この決済完了情報には、使用した使用制限枠の決済後の使用可能額及び当該使用制限枠を構成する使用条件が含まれている。
【0066】
電子マネー端末2は、サーバ1から送信された決済完了情報を受信すると(S308)、電子マネーでの決済が完了したことを示す決済完了メッセージ、並びにその決済完了情報に含まれる使用可能額及び使用条件を出力する(S309)。この場合、電子マネー端末2の表示部に当該情報を表示してもよく、また紙媒体に当該情報を印刷してもよい。
【0067】
また、サーバ1は、決済後の残高を書き込むことによって管理DB161を更新するとともに、今回の決済に関する使用履歴を書き込むことにより使用履歴DB164を更新する(S410)。
【0068】
上記の決済処理の結果、可搬型装置3の使用者は、使用した使用制限枠における最新の使用可能額、及びその使用可能額を使用するための使用条件を把握することができる。これにより、上記の問い合わせ処理の場合と同様に、使用者は、当日又は当月などの所定の期間にどの店舗においてどの程度の額の電子マネーを使用すべきかなどの検討を行うことができ、このような検討を通してお金の使い方について学ぶことが可能になる。
【0069】
なお、本実施の形態では、使用した使用制限枠における使用可能額及び使用条件を使用者に通知しているが、問い合わせ処理の場合と同様、各使用制限枠における使用可能額及び使用条件を使用者に通知するようにしてもよい。また、所定期間毎に所定額が使用可能であるとの使用条件の場合、サーバ1が、複数の所定期間における使用可能額の合計額を電子マネー端末2に提供するようにしてもよいことも、問い合わせ処理の場合と同様である。
【0070】
また、本実施の形態では、実店舗で決済を行う場合を例示したが、仮想店舗(オンラインショップ)での決済にも適用可能である。その場合、電子マネーの使用者が、情報端末4を用いて可搬型装置3の装置IDを入力し、情報端末4がサーバ1にその装置IDを送信することによって、上記の決済処理と同様の処理が実現可能になる。
【0071】
(3)チャージ処理
可搬型装置3の所有者は、電子マネーの残高が少なくなってきたときなどに、可搬型装置3に対してチャージを実行する。その際、所有者は、可搬型装置3を電子マネー端末2のリーダライタ21にかざす。これにより、次のチャージ処理が開始される。
【0072】
図8は、本実施の形態のサーバ1及び電子マネー端末2によって実行されるチャージ処理の手順を示すフローチャートである。まず電子マネー端末2は、リーダライタ21を用いて可搬型装置3の装置IDを読み取る(S501)。次に、電子マネー端末2は、チャージ対象となる使用制限枠の選択を受け付ける(S502)。例えば、使用制限枠Aのみで使用可能な電子マネーのチャージを行う場合、可搬型装置3の所有者は、使用制限枠Aの選択を電子マネー端末2に対して指示する。なお、特定の使用制限枠に対してチャージを行うのでなければ、この選択は行われずに次のステップに進む。
【0073】
電子マネー端末2は、所有者からチャージ額に相当する金銭の入金を受け付ける(S503)。この入金は、現金又はクレジットカードなどによって行われる。入金を受け付けた電子マネー端末2は、装置ID、使用制限枠の選択の有無及び選択された場合はその使用制限枠の識別子、並びにチャージ額を含むチャージ要求をサーバ1に対して送信する(S504)。
【0074】
サーバ1は、電子マネー端末2から送信されたチャージ要求を受信すると(S601)、そのチャージ要求に含まれる各情報を用いて、管理DB161に格納されている残高を更新する(S602)。このとき、チャージ対象の使用制限枠が特定されている場合はその特定された使用制限枠の枠残高が増額され、特定されていない場合は装置残高が増額される。なお、使用制限枠を構成するチャージ条件を満足しない場合は残高の更新は行われず、その旨を示す情報がサーバ1から電子マネー端末2に対して送信される。
【0075】
上記の残高の更新が行われた後、サーバ1は、チャージ後の使用制限枠における使用可能額及びその使用制限枠を構成する使用条件を含むチャージ完了情報を電子マネー端末2に対して送信する(S603)。
【0076】
電子マネー端末2は、サーバ1から送信されたチャージ完了情報を受信すると(S505)、チャージが完了したことを示すチャージ完了メッセージ、並びにそのチャージ完了情報に含まれる使用可能額及び使用条件を出力し(S506)、処理を終了する。
【0077】
このように、本実施の形態では、使用制限枠毎に電子マネーの入金が受け付けられる。そのため、可搬型装置3の所有者は、使用の必要性が高いと判断した使用制限枠については十分な残高を確保する一方で、使用の必要性が低いと判断した使用制限枠については少ない残高にとどめるなど、きめ細かな残高管理を行うことが可能になる。
【0078】
(4)使用可能額移動処理
上述したように、本実施の形態では、使用制限枠Aから使用制限枠Eに使用額を移動させることができる。以下、そのための使用可能額移動処理について説明する。
【0079】
図9は、サーバ1によって実行される使用可能額移動処理の手順を示すフローチャートである。サーバ1はまず、管理DB161及び使用条件DB162を参照し、処理対象の可搬型装置3の装置IDに対して設定されている使用制限枠の各使用条件の中から、使用可能額を移動させることが可能な使用条件を特定する(S701)。本実施の形態の場合、使用条件a1乃至a3が当該使用条件に該当する。
【0080】
次に、サーバ1は、特定した使用条件を構成する使用制限枠(本実施の形態の場合、使用制限枠A)の使用履歴を使用履歴DB164から抽出し(S702)、使用制限枠間の移動が可能であるか否かを判定する(S703)。例えば、使用制限枠Aが使用条件a1から構成されている場合であって、1日の使用額が上限額である50円に満たない日があるとき、サーバ1はその差額を使用制限枠Eに移動可能であると判定する。
【0081】
ステップS703において移動可能ではないと判定した場合(S703でNO)、サーバ1は処理を終了する。他方、移動可能であると判定した場合(S703でYES)、サーバ1は、移動可能な金額を移動先の使用制限枠(本実施の形態の場合、使用制限枠E)の枠残高に格納する(S704)。これにより、移動元の使用制限枠Aの枠残高が減少する一方、移動先の使用制限枠Eの枠残高が増加する。
【0082】
このように、特定の使用制限枠において節約することにより、他の使用制限枠の枠残高を増やすことが可能になる。電子マネーの使用者は、このように使用額の移動が可能であることを考慮した上で、電子マネーの使用計画を立てることが可能になる。
【0083】
なお、上記では、未使用額と同額を他の使用制限枠に移動させているが、その未使用額に所定の係数を乗じることによって未使用額よりも多い又は少ない額を移動させるようにしてもよい。また、未使用額がある場合にその未使用額の多寡にかかわらず所定の額を移動させるようにしてもよい。
【0084】
(実施の形態2)
実施の形態2の電子マネーシステムは電子マネー端末で構成されており、当該電子マネー端末が各装置と協働することによりサービスが実施される。以下、各装置の構成及びその動作について説明する。なお、実施の形態1と同様の構成及び動作については適宜説明を省略する。
【0085】
図10は、本実施の形態の電子マネーシステム及びその通信先の構成を示すブロック図である。本実施の形態の電子マネーシステムは、店舗のPOS端末及び駅の自動券売機等に設けられる電子マネー端末5で構成されている。電子マネー端末5は、電子マネーの使用に供される可搬型装置6と通信可能なリーダライタ51を備えている。リーダライタ51は、可搬型装置6であるICカード6a及びスマートフォン等の携帯電話機6bとNFC(Near Field Communication)で通信を行う。なお、本実施の形態の場合、可搬型装置6のICチップに電子マネーが格納される。
【0086】
電子マネー端末5は、実施の形態1の場合と同様に、専用線101を介してサーバ7と通信可能に接続されている。また、サーバ7は、実施の形態1の場合と同様に、通信ネットワーク102を介して情報端末4と通信可能に接続される。
【0087】
電子マネー端末5は、実施の形態1のサーバ1が備える使用条件DB162と同様の使用条件DB52を備えている。なお、本実施の形態の場合、実施の形態1のサーバ1が備える管理DB161に格納されている装置残高及び使用制限枠に関する情報、同じく使用履歴DB164に格納されている使用履歴は各可搬型装置6に記録されている。また、実施の形態1のサーバ1が備える行動DB163がサーバ7に設けられている。
【0088】
次に、本実施の形態における各装置の動作について説明する。
本実施の形態においても、実施の形態1の場合と同様に、(1)問い合わせ処理、(2)決済処理、(3)チャージ処理、及び(4)使用可能額移動処理が実行される。このうち、使用可能額移動処理については、電子マネー端末5が、実施の形態1のサーバ1と同様の処理を実行するのみなので、説明を省略する。以下、問い合わせ処理、決済処理、及び使用可能額移動処理について説明する。
【0089】
(1)問い合わせ処理
図11は、本実施の形態の電子マネー端末5によって実行される問い合わせ処理の手順を示すフローチャートである。
図11に示すとおり、電子マネー端末5はまず、リーダライタ21を用いて可搬型装置6に記録されている情報を読み取り(S801)、その記録情報に含まれている使用制限枠、すなわち当該可搬型装置6に対して設定されている使用制限枠を特定する(S802)。
【0090】
次に、電子マネー端末5は、特定した使用制限枠、記録情報に含まれているチャージ残高及び使用履歴、並びに使用条件DB52に格納されている各使用条件などに基づいて、各使用制限枠における使用可能額を特定する(S803)。この使用可能額の特定は、実施の形態1の問い合わせ処理におけるステップS203と同様に行われる。なお、使用可能額の特定にあたって行動情報が必要な場合、電子マネー端末5はサーバ7から行動情報を取得する。
【0091】
次に、電子マネー端末5は、特定した各使用制限枠における使用可能額及び各使用制限枠を構成する使用条件を出力する(S804)。この場合、電子マネー端末5の表示部に当該情報を表示してもよく、また紙媒体に当該情報を印刷してもよい。
【0092】
上記の問い合わせ処理の結果、可搬型装置6の所有者又は使用者は、各使用制限枠における使用可能額、及びその使用可能額を使用するための使用条件を把握することができるため、実施の形態1の場合と同様に、当日又は当月などの所定の期間にどの店舗においてどの程度の額の電子マネーを使用すべきかなどの検討を行うことができ、このような検討を通してお金の使い方について学ぶことが可能になる。
【0093】
(2)決済処理
電子マネーの使用者が各店舗にて電子マネーを用いて商品を購入する場合、次の決済処理が実行される。
図12は、電子マネー端末5によって実行される決済処理の手順を示すフローチャートである。電子マネー端末5はまず、リーダライタ21を用いて使用者が購入しようとしている商品のタグなどに付されている商品IDを読み取るとともに、可搬型装置6から装置IDを読み取る(S901)。
【0094】
次に、電子マネー端末5は、支払に利用する使用制限枠の選択を受け付ける(S902)。使用制限枠の特定が行われない場合、この選択は行われずに次のステップに進むことは、実施の形態1の場合と同様である。その場合、どの使用制限枠を用いるのかは、使用条件などに基づいて電子マネー端末5が決定する。
【0095】
次に、電子マネー端末5は、読み取った記録情報に含まれている使用制限枠、すなわち当該可搬型装置6に対して設定されている使用制限枠を特定し(S903)、その特定した使用制限枠の中から、今回の決済に使用可能な使用制限枠があるか否かを判定する(S904)。この判定は、実施の形態1の決済処理におけるステップS403と同様に行われる。
【0096】
ステップS904にて今回の決済に使用可能な使用制限枠はないと判定した場合(S904でNO)、電子マネー端末5は、使用可能な使用制限枠が存在しないため電子マネーによる決済ができないことを示す決済不可メッセージを表示部に表示し(S905)、処理を終了する。
【0097】
他方、ステップS904において今回の決済に使用可能な使用制限枠があると判定した場合(S904でYES)、電子マネー端末5は、その使用制限枠における使用可能額を特定する(S906)。この使用可能額の特定は、実施の形態1の問い合わせ処理におけるステップS203と同様に行われる。
【0098】
次に、電子マネー端末5は、今回の決済に係る商品の価格が特定した使用可能額以下であるか否かを判定する(S907)。ここで、商品の価格が特定した使用可能額を超える額であると判定した場合(S907でNO)、電子マネー端末5は、使用可能額が不足しているため電子マネーによる決済ができないことを示す決済不可メッセージを表示部に表示し(S908)、処理を終了する。
【0099】
他方、ステップS907において商品の価格が特定した使用可能額以下であると判定した場合(S907でYES)、電子マネー端末5は、使用可能額から商品の価格を差し引くことによって決済処理を実行し(S909)、リーダライタ51を用いて決済後の残高及び使用履歴を可搬型装置6に書き込む(S910)。
【0100】
次に、電子マネー端末5は、電子マネーでの決済が完了したことを示す決済完了メッセージ、並びに使用した使用制限枠の決済後の使用可能額及び当該使用制限枠を構成する使用条件を出力し(S911)、処理を終了する。
【0101】
上記の決済処理の結果、可搬型装置6の使用者は、使用した使用制限枠における最新の使用可能額、及びその使用可能額を使用するための使用条件を把握することができる。これにより、実施の形態1の場合と同様に、使用者は、当日又は当月などの所定の期間にどの店舗においてどの程度の額の電子マネーを使用すべきかなどの検討を行うことができ、このような検討を通してお金の使い方について学ぶことが可能になる。
【0102】
(3)チャージ処理
図13は、実施の形態2の電子マネー端末2によって実行されるチャージ処理の手順を示すフローチャートである。電子マネー端末5はまず、リーダライタ51を用いて可搬型装置6の記録情報を読み取り(S1001)、チャージ対象となる使用制限枠の選択を受け付ける(S1002)。特定の使用制限枠に対してチャージを行うのでなければこの選択は行われないことは実施の形態1の場合と同様である。
【0103】
次に、電子マネー端末5は、所有者からチャージ額に相当する金銭の入金を受け付ける(S1003)。この入金は、現金又はクレジットカードなどによって行われる。入金を受け付けた電子マネー端末5は、読み取った記録情報及び入金額に基づいて残高を算出し、リーダライタ51を用いて可搬型装置6に書き込む(S1004)。この処理は、実施の形態1のチャージ処理におけるステップS602と同様に行われる。
【0104】
次に、電子マネー端末5は、チャージが完了したことを示すチャージ完了メッセージ、並びにチャージ後の使用制限枠における使用可能額及びその使用制限枠を構成する使用条件を出力し(S1005)、処理を終了する。
【0105】
このチャージ処理においても、実施の形態1の場合と同様に、使用の必要性が高いと判断した使用制限枠については十分な残高を確保する一方で、使用の必要性が低いと判断した使用制限枠については少ない残高にとどめるなど、きめ細かな残高管理を実現することができる。
【0106】
(その他の実施の形態)
上述したとおり、使用制限枠並びにその使用制限枠を構成する使用条件及びチャージ条件は例示にすぎず、種々のものが想定可能である。例えば、可搬型装置の所有者による許可がなければ原則として使用することができない使用制限枠を設け、所有者の許可があれば枠残高の全額を使用することができることを使用条件として規定することが可能である。この場合、当該使用制限枠について、使用者である子供が受け取ったお年玉に相当する額を所有者がチャージすることなどが想定される。この使用制限枠については原則使用不可であるため、枠残高、すなわち使用可能額は一方的に増えることになる。この場合に、上記の各実施の形態の問い合わせ処理などが実行されて、当該使用制限枠における使用可能額を知ることにより、使用者である子供は貯金について学ぶことが可能になる。さらに、所定期間(例えば1年など)使用しなかった分について、所有者である親が利息として適宜の額を当該使用制限枠にチャージすることも想定可能である。その場合、子供は金融の仕組みについて学ぶことが可能になる。
【0107】
また、上記の実施の形態1ではサーバによって電子マネーシステムが構成され、実施の形態2では電子マネー端末によって電子マネーシステムが構成されているが、サーバと電子マネー端末との組み合わせによって電子マネーシステムを構成することも可能である。例えば、各使用制限枠における電子マネーの使用可能額の特定を、サーバ及び電子マネー端末が協働して実行することもできる。
【0108】
なお、上記の各実施の形態では、サーバ1及び7が1台のコンピュータによって構成されているが、これに限定されるわけではなく、複数のコンピュータによる分散システムによって構成されていてもよい。電子マネー端末2及び5についても同様であり、1台の装置ではなく、複数の装置によって実現されてもよい。
【符号の説明】
【0109】
1,7 サーバ
11 CPU
12 ROM
13 RAM
14 入力部
15 表示部
16 ハードディスク
161 管理データベース
162 使用条件データベース
163 行動データベース
164 使用履歴データベース
17 通信インタフェース
18 バス
2,5 電子マネー端末
21,51 リーダライタ
3,6 可搬型装置
3a,6a ICカード
3b,6b 携帯電話機
4 情報端末
101 専用線
102 通信ネットワーク