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  • 特許-難燃発泡体および発泡部材 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】難燃発泡体および発泡部材
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/04 20060101AFI20241016BHJP
   B32B 5/18 20060101ALI20241016BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20241016BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20241016BHJP
   C08L 23/12 20060101ALI20241016BHJP
   C08L 23/16 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
C08J9/04 103
C08J9/04 CES
B32B5/18
B32B27/00 M
B32B27/18 B
C08L23/12
C08L23/16
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020070759
(22)【出願日】2020-04-10
(65)【公開番号】P2020172641
(43)【公開日】2020-10-22
【審査請求日】2023-04-05
(31)【優先権主張番号】P 2019074692
(32)【優先日】2019-04-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122471
【弁理士】
【氏名又は名称】籾井 孝文
(74)【代理人】
【識別番号】100186185
【弁理士】
【氏名又は名称】高階 勝也
(72)【発明者】
【氏名】児玉 清明
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 誠
【審査官】加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-204621(JP,A)
【文献】国際公開第2010/106912(WO,A1)
【文献】特開2013-049830(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/04
B32B 5/18
B32B 27/00
B32B 27/18
C08L 23/12
C08L 23/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
見かけ密度が0.02g/cm~0.40g/cmであり、
50%圧縮加重が0.5N/cm~8.0N/cmであり、
引張試験での破断伸びが120%以下であり、
気泡径の変動係数が0.5以下である、
難燃発泡体。
【請求項2】
平均気泡径が10μm~200μmである、請求項1に記載の難燃発泡体。
【請求項3】
気泡率が30%以上である、請求項1または2に記載の難燃発泡体。
【請求項4】
気泡壁の厚みが0.1μm~10μmである、請求項1からまでのいずれかに記載の難燃発泡体。
【請求項5】
難燃剤を含む、請求項1からまでのいずれかに記載の難燃発泡体。
【請求項6】
前記難燃剤が、ノンハロゲン-ノンアンチモン系難燃剤を含む、請求項に記載の難燃発泡体。
【請求項7】
前記難燃剤のかさ密度が0.8g/cm以下である、請求項またはに記載の難燃発泡体。
【請求項8】
650℃における残渣が20重量%以上である、請求項1からまでのいずれかに記載の難燃発泡体。
【請求項9】
前記難燃発泡体を構成する樹脂がポリオレフィン系樹脂である、請求項1からまでのいずれかに記載の難燃発泡体。
【請求項10】
前記ポリオレフィン系樹脂が、ポリオレフィン系エラストマー以外のポリプロピレンとポリオレフィン系エラストマーの混合物である、請求項に記載の難燃発泡体。
【請求項11】
請求項1から10までのいずれかに記載の難燃発泡体が難燃発泡層であり、該難燃発泡層の少なくとも一方の側に粘着剤層を有する、発泡部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃発泡体および発泡部材に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂発泡体や発泡部材が使用される部分のクリアランスの大きさについて、近年、変化が生じ、より小さいクリアランスに対応できるものが求められるようになってきている。
【0003】
樹脂発泡体や発泡部材は、電子機器の画面保護や基板の保護等で使用される。近年、スマートフォンやノートパソコンのような電子機器は、室内のみならず、外での移動時に使用されるケースが増えており、その結果、機器の落下や外部からの圧力負荷によって予期せぬ荷重がかかりやすくなる。そこで、このような荷重を効果的に応力分散させることができれば、予期せぬ荷重による電子機器の破壊を防ぐことができる。
【0004】
このため、柔軟性に優れて、より小さいクリアランスに対応でき、且つ、より高いレベルでの応力分散性を有する、樹脂発泡体や発泡部材が求められるようになってきている。
【0005】
ここで、樹脂発泡体は熱可塑性ポリマーで構成されているため、燃えやすいという問題を有している。スマートフォンやノートパソコンのような電子機器には、バッテリーや各種素子などの発熱体が採用されており、発火のおそれもあるため、難燃性の付与が不可欠である。
【0006】
従来、難燃性を付与するために、各種の難燃剤を配合することが行われている。このような難燃剤として、例えば、臭素系樹脂、塩素系樹脂、リン系化合物、アンチモン系化合物などが用いられている。しかし、これらの難燃剤は、取り扱い性や環境への影響等のため、できるだけ採用を回避したいという要求があり、最近は、これらの化合物を含んでいない難燃剤が検討されている。このような難燃剤として、水酸化マグネシウムや水酸化アルミニウムなどの金属水酸化物が採用されている。しかし、これらの金属水酸化物を用いた難燃剤は、従来の臭素系樹脂、塩素系樹脂、リン系化合物、アンチモン系化合物などの難燃剤に比べて、難燃性に劣り、従来と同等の難燃性を付与させるには多量の配合量を必要とするため、成形性が劣ってしまうという問題がある。
【0007】
近年、微細気泡構造を有する発泡体を得る方法として、不活性ガスを高圧下でポリマーに溶解させた後、急激に圧力を低下させて発泡構造を形成する方法が提案されている。例えば、特許文献1には、圧力容器に熱可塑性ポリマーを仕込み、ポリマーの軟化点まで加熱しながら高圧ガスを仕込み、その後圧力を低下させて気泡を形成させる方法が開示されている。
【0008】
しかし、特許文献1に記載の発泡体は、ある程度柔軟な発泡体であるものの、難燃性を有しておらず、また、応力分散性については何ら開示も示唆もされていない。
【0009】
特許文献2には、環境への負荷が少ない難燃剤として用いられる金属水酸化物をカーボンブラックと組み合わせて用い、高発泡で難燃性および柔軟性に優れた樹脂発泡体を得る方法が開示されている。
【0010】
しかし、特許文献2に記載の樹脂発泡体は、十分な柔軟性は発現できておらず、また、応力分散性については何ら開示も示唆もされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開平6-322168号公報
【文献】特開2003-165860公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の課題は、高い難燃性を有するとともに、柔軟性に優れ、且つ、応力分散性に優れる、難燃発泡体を提供することにある。また、そのような難燃発泡体を難燃発泡層として有する発泡部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の難燃発泡体は、
見かけ密度が0.02g/cm~0.40g/cmであり、
50%圧縮加重が0.5N/cm~8.0N/cmであり、
引張試験での破断伸びが120%以下である。
【0014】
一つの実施形態においては、上記難燃発泡体は、平均気泡径が10μm~200μmである。
【0015】
一つの実施形態においては、上記難燃発泡体は、気泡径の変動係数が0.5以下である。
【0016】
一つの実施形態においては、上記難燃発泡体は、気泡率が30%以上である。
【0017】
一つの実施形態においては、上記難燃発泡体は、気泡壁の厚みが0.1μm~10μmである。
【0018】
一つの実施形態においては、上記難燃発泡体は、難燃剤を含む。
【0019】
一つの実施形態においては、上記難燃剤が、ノンハロゲン-ノンアンチモン系難燃剤を含む。
【0020】
一つの実施形態においては、上記難燃剤のかさ密度が0.8g/cm以下である。
【0021】
一つの実施形態においては、上記難燃発泡体は、650℃における残渣が20重量%以上である。
【0022】
一つの実施形態においては、上記難燃発泡体を構成する樹脂がポリオレフィン系樹脂である。
【0023】
一つの実施形態においては、上記ポリオレフィン系樹脂が、ポリオレフィン系エラストマー以外のポリプロピレンとポリオレフィン系エラストマーの混合物である。
【0024】
本発明の発泡部材は、上記難燃発泡体が難燃発泡層であり、該難燃発泡層の少なくとも一方の側に粘着剤層を有する。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、高い難燃性を有するとともに、柔軟性に優れ、且つ、応力分散性に優れる、難燃発泡体を提供することができる。また、そのような難燃発泡体を難燃発泡層として有する発泡部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】応力緩和試験機の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
≪≪1.難燃発泡体≫≫
本発明の難燃発泡体は、見かけ密度が0.02g/cm~0.40g/cmであり、50%圧縮加重が0.5N/cm~8.0N/cmであり、引張試験での破断伸びが120%以下である。本発明の難燃発泡体は、見かけ密度、50%圧縮加重、引張試験での破断伸びが上記範囲内にあることにより、高い難燃性を有するとともに、柔軟性に優れ、且つ、応力分散性に優れる。
【0028】
本発明の難燃発泡体は、気泡構造(セル構造)を有する。このような気泡構造(セル構造)としては、独立気泡構造、連続気泡構造、半連続半独立気泡構造(独立気泡構造と連続気泡構造が混在している気泡構造)などが挙げられる。本発明の効果をより発現させ得る点で、本発明の難燃発泡体の気泡構造は、連続気泡構造、半連続半独立気泡構造が好ましく、半連続半独立気泡構造がより好ましい。本発明の難燃発泡体の気泡構造が半連続半独立気泡構造である場合、その中の独立気泡構造の割合は、好ましくは40%以下であり、より好ましくは30%以下である。
【0029】
本発明の難燃発泡体の独泡率は、例えば、温度23℃、湿度50%の環境下で、測定対象を水分中に沈め、その後の質量を測定し、その後、80℃のオーブンで十分に乾燥させた後、再度質量を測定して求められる。また、連続気泡であれば水分を保持できるため、その質量分を連続気泡として測定して求められる。
【0030】
本発明の難燃発泡体は、見かけ密度が0.02g/cm~0.40g/cmであり、好ましくは0.03g/cm~0.30g/cmであり、より好ましくは0.04g/cm~0.20g/cmであり、特に好ましくは0.05g/cm~0.15g/cmであり、最も好ましくは0.07g/cm~0.10g/cmである。見かけ密度が上記範囲内にあることにより、本発明の難燃発泡体は、より高い難燃性を有し得るとともに、柔軟性により優れ得、且つ、応力分散性により優れ得る。見かけ密度の測定方法については、後に詳述する。
【0031】
本発明の難燃発泡体は、50%圧縮加重が0.5N/cm~8.0N/cmであり、好ましくは0.6N/cm~6.0N/cmであり、より好ましくは0.7N/cm~5.5N/cmであり、特に好ましくは0.8N/cm~5.0N/cmであり、最も好ましくは0.9N/cm~4.5N/cmである。50%圧縮加重が上記範囲内にあることにより、本発明の難燃発泡体は、より高い難燃性を有し得るとともに、柔軟性により優れ得、且つ、応力分散性により優れ得る。50%圧縮加重の測定方法については、後に詳述する。
【0032】
本発明の難燃発泡体は、引張試験での破断伸びが120%以下であり、好ましくは110%以下であり、より好ましくは105%以下であり、さらに好ましくは100%以下であり、特に好ましくは95%以下であり、最も好ましくは90%以下である。本発明の難燃発泡体の、引張試験での破断伸びの下限としては、現実的には、好ましくは1%以上であり、より好ましくは5%以上であり、さらに好ましくは10%以上であり、特に好ましくは15%以上であり、最も好ましくは20%以上である。引張試験での破断伸びが上記範囲内にあることにより、本発明の難燃発泡体は、より高い難燃性を有し得るとともに、柔軟性により優れ得、且つ、応力分散性により優れ得る。なお、引張試験での破断伸びが小さいと、難燃発泡体に荷重が加わったときに、該難燃発泡体のセル壁の変形が小さくなり、例えば、フィラーが添加されている場合、該難燃発泡体を構成する樹脂と該フィラーとの界面で滑りが発生しやすくなり、荷重をより緩和し得る。一方、引張試験での破断伸びが大き過ぎると、難燃発泡体のセル壁の変形が大きくなり、荷重を緩和しにくくなるおそれがある。引張試験での破断伸びの測定方法については、後に詳述する。
【0033】
本発明の難燃発泡体は、平均気泡径(平均セル径)が、好ましくは10μm~200μmであり、より好ましくは15μm~180μmであり、さらに好ましくは20μm~150μmであり、特に好ましくは23μm~120μmであり、特に好ましくは25μm~100μmである。平均気泡径が上記範囲内にあることにより、本発明の難燃発泡体は、より高い難燃性を有し得るとともに、柔軟性により優れ得、且つ、応力分散性により優れ得る。また、圧縮回復性にも優れ得、さらに、衝撃を受けてから短時間で元の厚み近くまで戻ることができるため、繰り返し衝撃に対する耐性により優れ得る。平均気泡径の測定方法については、後に詳述する。
【0034】
本発明の難燃発泡体は、気泡径(セル径)の変動係数が、好ましくは0.5以下であり、より好ましくは0.48以下であり、さらに好ましくは0.45以下であり、特に好ましくは0.43以下であり、最も好ましくは0.4以下である。本発明の難燃発泡体の、気泡径の変動係数の下限としては、現実的には、好ましくは0.01以上であり、より好ましくは0.05以上であり、さらに好ましくは0.1以上であり、特に好ましくは0.15以上であり、最も好ましくは0.2以上である。気泡径の変動係数が上記範囲内にあることにより、本発明の難燃発泡体は、より高い難燃性を有し得るとともに、柔軟性により優れ得、且つ、応力分散性により優れ得る。気泡径の変動係数は、大きいほど応力が局所に集中してしまうため、小さいほうが好ましい。気泡径の変動係数の測定方法については、後に詳述する。
【0035】
本発明の難燃発泡体は、気泡率(セル率)が、好ましくは30%以上であり、より好ましくは50%以上であり、さらに好ましくは65%以上であり、さらに好ましくは75%以上であり、特に好ましくは80%以上であり、最も好ましくは90%以上である。気泡率の上限としては、現実的には、99%以下である。気泡率が上記範囲内にあることにより、本発明の難燃発泡体は、より高い難燃性を有し得るとともに、柔軟性により優れ得、且つ、応力分散性により優れ得る。気泡率が小さいと、難燃発泡体を圧縮した時の反発応力が高くなり、難燃発泡体を機器の隙間に入れて使用する際に、機器にダメージを及ぼすおそれがある。気泡率の測定方法については、後に詳述する。
【0036】
本発明の難燃発泡体は、気泡壁(セル壁)の厚みが、好ましくは0.1μm~10μmであり、より好ましくは0.3μm~8μmであり、さらに好ましくは0.5μm~5μmであり、特に好ましくは0.7μm~4μmであり、最も好ましくは1μm~3μmである。気泡壁(セル壁)の厚みが上記範囲内にあることにより、本発明の難燃発泡体は、より高い難燃性を有し得るとともに、柔軟性により優れ得、且つ、応力分散性により優れ得る。気泡壁の厚みが薄すぎると、荷重に対して難燃発泡体が容易に変形してしまい、十分な荷重分散効果が得られないおそれがある。気泡壁の厚みが厚過ぎると、荷重に対して難燃発泡体が変形し難くなり、機器の隙間で使用する際に、段差追従性が悪くなるおそれがある。気泡壁の厚みの測定方法については、後に詳述する。
【0037】
本発明の難燃発泡体は、650℃における残渣が、好ましくは20重量%以上であり、より好ましくは20重量%~80重量%であり、さらに好ましくは22重量%~70重量%であり、特に好ましくは26重量%~60重量%であり、最も好ましくは30重量%~50重量%である。650℃における残渣の測定方法については、後に詳述する。
【0038】
本発明の難燃発泡体の形状としては、目的に応じて、任意の適切な形状を採用し得る。このような形状としては、代表的には、シート状であり、この場合、本発明の難燃発泡体は難燃発泡層として扱い得る。
【0039】
本発明の難燃発泡体の形状がシート状の場合(すなわち、難燃発泡層の場合)、その厚みは、好ましくは30μm~5000μmであり、より好ましくは35μm~4000μmであり、さらに好ましくは40μm~3000μmであり、特に好ましくは45μm~2500μmである。難燃発泡層の厚みが上記範囲内にあることにより、該難燃発泡層は、微小クリアランスに対しても容易に追従し得る。また、難燃発泡層の厚みが上記範囲内にあることにより、気泡を均一に含有することができ、優れた衝撃吸収性を発現し得る。
【0040】
本発明の難燃発泡体は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な方法によって形成することができる。このような方法としては、代表的には、樹脂材料(ポリマー)を含む樹脂組成物を発泡させる方法が挙げられる。
【0041】
≪1-1.樹脂組成物≫
本発明の難燃発泡体は、代表的には、樹脂組成物を発泡させて得られ得る。樹脂組成物は、樹脂材料(ポリマー)を含む。
【0042】
樹脂組成物に含まれる樹脂材料(ポリマー)としては、本発明の効果を損なわない範囲で任意の適切な樹脂材料(ポリマー)を採用し得る。このような樹脂材料(ポリマー)としては、例えば、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、エステル系樹脂、ゴム系樹脂などが挙げられる。このような樹脂材料(ポリマー)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0043】
樹脂組成物中の樹脂材料(ポリマー)の含有割合は、好ましくは30重量%~95重量%であり、より好ましくは35重量%~90重量%であり、さらに好ましくは40重量%~80重量%であり、特に好ましくは40重量%~60重量%である。樹脂組成物中の樹脂材料(ポリマー)の含有割合が上記範囲内にあることにより、本発明の難燃発泡体は、より高い難燃性を有し得るとともに、柔軟性により優れ得、且つ、応力分散性により優れ得る。
【0044】
樹脂組成物に含まれる樹脂材料(ポリマー)としては、本発明の効果をより発現し得る点で、好ましくは、ポリオレフィン系樹脂である。ポリオレフィン系樹脂は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0045】
樹脂組成物に含まれる樹脂材料(ポリマー)中のポリオレフィン系樹脂の含有割合は、好ましくは50重量%~100重量%であり、より好ましくは70重量%~100重量%であり、さらに好ましくは90重量%~100重量%であり、特に好ましくは95重量%~100重量%であり、最も好ましくは実質的に100重量%である。
【0046】
ポリオレフィン系樹脂としては、好ましくは、ポリオレフィンおよびポリオレフィン系エラストマーからなる群から選ばれる少なくとも1種が挙げられ、より好ましくは、ポリオレフィンとポリオレフィン系エラストマーを併用する形態である。
【0047】
ポリオレフィン系樹脂としてポリオレフィンとポリオレフィン系エラストマーを併用する場合、ポリオレフィンとポリオレフィン系エラストマーの含有比率(ポリオレフィン/ポリオレフィン系エラストマー)は、本発明の効果をより発現させ得る点で、重量比率で、好ましくは1/99~99/1であり、より好ましくは10/90~90/10であり、さらに好ましくは20/80~80/20であり、特に好ましくは30/70~70/30である。
【0048】
ポリオレフィンは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0049】
ポリオレフィン系エラストマーは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0050】
なお、本明細書において、「ポリオレフィン」と称する場合には、「ポリオレフィン系エラストマー」は含まれないものとする。
【0051】
ポリオレフィンとしては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切なポリオレフィンを採用し得る。このようなポリオレフィンとしては、例えば、直鎖状のポリオレフィン、分岐鎖状の(分岐鎖を有する)ポリオレフィンなどが挙げられる。
【0052】
このようなポリオレフィンとしては、例えば、α-オレフィンを必須のモノマー成分として構成(形成)されたポリマー、すなわち、分子中(1分子中)に、少なくともα-オレフィンに由来する構造単位を有するポリマーである。このようなポリオレフィンは、例えば、α-オレフィンのみから構成されたポリマーであってもよいし、α-オレフィンと、α-オレフィン以外のモノマー成分とから構成されたポリマーであってもよい。
【0053】
ポリオレフィンは、単独重合体(ホモポリマー)であってもよいし、2種以上のモノマーを含む共重合体(コポリマー)であってもよい。ポリオレフィンが共重合体である場合、その共重合形態としては、任意の適切な共重合形態を採用し得る。このような共重合形態としては、例えば、ランダムコポリマー、ブロックコポリマーなどが挙げられる。
【0054】
ポリオレフィンを構成し得るα-オレフィンとしては、例えば、炭素数2~8のα-オレフィン(例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-へプテン、1-オクテンなど)が好ましい。ポリオレフィンを構成し得るα-オレフィンは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0055】
ポリオレフィンを構成し得るα-オレフィン以外のモノマー成分としては、例えば、酢酸ビニル、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、ビニルアルコールなどのエチレン性不飽和単量体が挙げられる。ポリオレフィンを構成し得るα-オレフィン以外のモノマー成分は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0056】
ポリオレフィンとしては、具体的には、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン(プロピレンホモポリマー)、エチレンとプロピレンとの共重合体、エチレンとエチレン以外のα-オレフィンとの共重合体、プロピレンとプロピレン以外のα-オレフィンとの共重合体、エチレンとプロピレンとエチレンおよびプロピレン以外のα-オレフィンとの共重合体、プロピレンとエチレン性不飽和単量体との共重合体などが挙げられる。
【0057】
ポリオレフィンとしては、本発明の効果をより発現させ得る点で、好ましくは、プロピレンを必須のモノマー成分として構成されたポリマー(ポリプロピレン系重合体)、すなわち、少なくともプロピレンに由来する構造単位を有するポリマーである。このようなポリプロピレン系重合体としては、例えば、ポリプロピレン(プロピレンホモポリマー)、エチレンとプロピレンとの共重合体、プロピレンとプロピレン以外のα-オレフィンとの共重合体などが挙げられ、好ましくはポリプロピレン(プロピレンホモポリマー)である。ポリプロピレン系重合体は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0058】
ポリオレフィンの温度230℃におけるメルトフローレート(MFR)は、本発明の効果をより発現させ得る点で、好ましくは0.2g/10分~10g/10分であり、より好ましくは0.25g/10分~5g/10分であり、さらに好ましくは0.3g/10分~3g/10分であり、特に好ましくは0.35g/10分~1.5g/10分である。なお、ポリオレフィンの温度230℃におけるメルトフローレート(MFR)は、ISO1133(JIS-K-7210)に基づき、温度230℃、荷重2.16kgfで測定されたMFRをいうものとする。
【0059】
ポリオレフィンとしては、本発明の効果をより発現させ得る点で、温度230℃におけるメルトフローレート(MFR)が上記の範囲内で異なる2種以上のポリオレフィンを併用することが好ましい。この場合、温度230℃におけるメルトフローレート(MFR)が、好ましくは0.2g/10分以上0.7g/10分未満(より好ましくは0.2g/10分~0.65g/10分)のポリオレフィンと、温度230℃におけるメルトフローレート(MFR)が好ましくは0.7g/10分~10g/10分(より好ましくは0.7g/10分~5g/10分であり、さらに好ましくは0.7g/10分~3g/10分であり、特に好ましくは0.7g/10分~1.5g/10分であり、最も好ましくは0.7g/10分~1.3g/10分である)のポリオレフィンとの併用である。
【0060】
ポリオレフィンとして、温度230℃におけるメルトフローレート(MFR)が上記の範囲内で異なる2種以上のポリオレフィンを併用する場合、例えば、上記の温度230℃におけるメルトフローレート(MFR)が、好ましくは0.2g/10分以上0.7g/10分未満(より好ましくは0.2g/10分~0.65g/10分)のポリオレフィンと、温度230℃におけるメルトフローレート(MFR)が好ましくは0.7g/10分~10g/10分(より好ましくは0.7g/10分~5g/10分であり、さらに好ましくは0.7g/10分~3g/10分であり、特に好ましくは0.7g/10分~1.5g/10分であり、最も好ましくは0.7g/10分~1.3g/10分である)のポリオレフィンとの含有比率は、本発明の効果をより発現させ得る点で、重量比率で、好ましくは1/99~99/1であり、より好ましくは10/90~90/10であり、さらに好ましくは20/80~80/20であり、特に好ましくは30/70~70/30であり、最も好ましくは40/60~60/40である。
【0061】
ポリオレフィンとしては、市販品を用いてもよく、例えば、「E110G」(株式会社プライムポリマー製)、「EA9」(日本ポリプロ株式会社製)、「EA9FT」(日本ポリプロ株式会社製)、「E-185G」(株式会社プライムポリマー製)、「WB140HMS」(ボレアリス社製)、「WB135HMS」(ボレアリス社製)などが挙げられる。
【0062】
ポリオレフィン系エラストマーとしては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切なポリオレフィン系エラストマーを採用し得る。このようなポリオレフィン系エラストマーとしては、例えば、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリブテン、ポリイソブチレン、塩素化ポリエチレン、ポリオレフィン成分とゴム成分とが物理的に分散したエラストマー、ポリオレフィン成分とゴム成分とがミクロ相分離した構造を有したエラストマーなどの、いわゆる非架橋型の熱可塑性オレフィン系エラストマー(TPO);マトリックスを形成する樹脂成分A(オレフィン系樹脂成分A)およびドメインを形成するゴム成分Bを含む混合物を、架橋剤の存在下、動的に熱処理することにより得られ、マトリックス(海相)である樹脂成分A中に、架橋ゴム粒子がドメイン(島相)として細かく分散した海島構造を有する多相系のポリマーである動的架橋型熱可塑性オレフィン系エラストマー(TPV);などが挙げられる。
【0063】
ポリオレフィン系エラストマーは、好ましくは、ゴム成分を含む。このようなゴム成分としては、特開平08-302111号公報、特開2010-241934号公報、特開2008-024882号公報、特開2000-007858号公報、特開2006-052277号公報、特開2012-072306号公報、特開2012-057068号公報、特開2010-241897号公報、特開2009-067969号公報、再表03/002654号公報などに記載のものが挙げられる。
【0064】
ポリオレフィン成分とオレフィン系ゴム成分とがミクロ相分離した構造を有したエラストマーとしては、具体的には、ポリプロピレン樹脂(PP)とエチレン-プロピレンゴム(EPM)とからなるエラストマー、ポリプロピレン樹脂(PP)とエチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)とからなるエラストマーなどが挙げられる。ポリオレフィン成分とオレフィン系ゴム成分の重量比は、相溶性の観点から、ポリオレフィン成分/オレフィン系ゴムとして、好ましくは90/10~10/90であり、より好ましくは80/20~20/80である。
【0065】
動的架橋型熱可塑性オレフィン系エラストマー(TPV)は、一般的に、非架橋型の熱可塑性オレフィン系エラストマー(TPO)より、弾性率が高く、かつ圧縮永久歪みも小さい。これにより、回復性が良好であり、発泡体とした場合に優れた回復性を示し得る。
【0066】
動的架橋型熱可塑性オレフィン系エラストマー(TPV)とは、上述したように、マトリックスを形成する樹脂成分A(オレフィン系樹脂成分A)およびドメインを形成するゴム成分Bを含む混合物を、架橋剤の存在下、動的に熱処理することにより得られ、マトリックス(海相)である樹脂成分A中に、架橋ゴム粒子がドメイン(島相)として細かく分散した海島構造を有する多相系のポリマーである。
【0067】
動的架橋型熱可塑性オレフィン系エラストマー(TPV)としては、例えば、特開2000-007858号公報、特開2006-052277号公報、特開2012-072306号公報、特開2012-057068号公報、特開2010-241897号公報、特開2009-067969号公報、再表03/002654号等に記載のものなどが挙げられる。
【0068】
動的架橋型熱可塑性オレフィン系エラストマー(TPV)としては、市販品を用いてもよく、例えば、「ゼオサーム」(日本ゼオン社製)、「サーモラン」(三菱化学社製)、「サーリンク3245D」(東洋紡績株式会社製)などが挙げられる。
【0069】
ポリオレフィン系エラストマーの温度230℃におけるメルトフローレート(MFR)は、本発明の効果をより発現させ得る点で、好ましくは2g/10分~15g/10分であり、より好ましくは3g/10分~10g/10分であり、さらに好ましくは3.5g/10分~9g/10分であり、特に好ましくは4g/10分~8g/10分であり、最も好ましくは4.5g/10分~7.5g/10分である。なお、ポリオレフィン系エラストマーの温度230℃におけるメルトフローレート(MFR)は、ISO1133(JIS-K-7210)に基づき、温度230℃、荷重2.16kgfで測定されたMFRをいうものとする。
【0070】
ポリオレフィン系エラストマーの溶融張力(190℃、破断時)は、本発明の効果をより発現させ得る点で、好ましくは10cN未満であり、より好ましくは5cN~9.5cNである。
【0071】
ポリオレフィン系エラストマーのJIS A硬度は、本発明の効果をより発現させ得る点で、好ましくは30°~95°であり、より好ましくは35°~90°であり、さらに好ましくは40°~88°であり、特に好ましくは45°~85°であり、最も好ましくは50°~83°である。なお、JIS A硬度とは、ISO7619(JIS K6253)に基づいて測定された硬度をいうものとする。
【0072】
樹脂組成物は、本発明の効果をより発現させ得る点で、好ましくは、難燃剤を含む。樹脂組成物に含まれ得る難燃剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0073】
樹脂組成物中の難燃剤の含有割合は、好ましくは10重量%~70重量%であり、より好ましくは15重量%~65重量%であり、さらに好ましくは20重量%~60重量%であり、特に好ましくは40重量%~60重量%である。樹脂組成物中の難燃剤の含有割合が上記範囲内にあることにより、本発明の難燃発泡体は、より高い難燃性を有し得るとともに、柔軟性により優れ得、且つ、応力分散性により優れ得る。
【0074】
樹脂組成物に含まれ得る難燃剤としては、例えば、臭素系難燃剤、塩素系難燃剤、リン系難燃剤、アンチモン系難燃剤などが挙げられる。しかしながら、塩素系難燃剤や臭素系難燃剤は、燃焼時に人体に対して有害で機器類に対して腐食性を有するガス成分を発生し、また、リン系難燃剤やアンチモン系難燃剤は、有害性や爆発性などの問題がある。そのため、本発明においては、樹脂組成物に含まれ得る難燃剤としては、ノンハロゲン-ノンアンチモン系難燃剤が好ましい。
【0075】
ノンハロゲン-ノンアンチモン系難燃剤としては、本発明の効果をより発現させ得る点で、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、ニッケル、コバルト、スズ、亜鉛、銅、鉄、チタン及びホウ素からなる群から選択される少なくとも1種を含む化合物である。このような無機化合物としては、代表的には、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム・酸化ニッケルの水和物、酸化マグネシウム・酸化亜鉛の水和物等の水和金属化合物などが挙げられる。なお、水和金属化合物は表面処理されていてもよい。
【0076】
樹脂組成物に含まれ得る難燃剤のかさ密度としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切なかさ密度を採用し得る。このようなかさ密度としては、本発明の効果をより発現させ得る点で、好ましくは0.8g/cm以下であり、より好ましくは0.6g/cm以下であり、さらに好ましくは0.4g/cm以下であり、特に好ましくは0.35g/cm以下、最も好ましくは0.3g/cm以下である。かさ密度の下限値は、現実的には0.01g/cm以上であり、好ましくは0.05g/cm以上であり、より好ましくは0.1g/cm以上である。樹脂組成物に含まれ得る難燃剤のかさ密度が上記範囲内にあれば、難燃剤の使用量が少なくても十分な難燃性を付与し得る。そして、難燃剤の使用量が少なくすることができれば、高発泡で柔軟で応力分散性に優れた難燃発泡体を得ることができる。また、樹脂組成物に含まれ得る難燃剤のかさ密度が高すぎると、樹脂組成物中での難燃剤の分散性が悪くなるおそれがあり、難燃発泡体の難燃性にばらつきが生じたり、難燃発泡体の外観品位を損なったりするおそれがある。
【0077】
樹脂組成物に含まれ得る難燃剤の粒子径としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な粒子径を採用し得る。このような粒子径としては、本発明の効果をより発現させ得る点で、好ましくは5μm以下であり、より好ましくは3μm以下であり、さらに好ましくは1μm以下である。樹脂組成物に含まれ得る難燃剤の粒子径の下限値は、現実的には0.1μm以上である。樹脂組成物に含まれ得る難燃剤の粒子径が上記範囲内にあれば、樹脂組成物中での難燃剤の分散性が向上し得るので、難燃発泡体の難燃性が均一に発現し得るとともに、難燃発泡体の外観品位も保たれ得る。樹脂組成物に含まれ得る難燃剤の粒子径が高すぎると、樹脂組成物中での難燃剤の分散性が悪くなるおそれがあり、難燃発泡体の難燃性にばらつきが生じたり、難燃発泡体の外観品位を損なったりするおそれがある。また、樹脂組成物に含まれ得る難燃剤の粒子径が高すぎると、難燃発泡体の荷重分散性が低下するおそれがある。
【0078】
樹脂組成物に含まれ得る難燃剤の比表面積としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な比表面積を採用し得る。このような比表面積としては、本発明の効果をより発現させ得る点で、好ましくは2m/g以上であり、より好ましくは4m/g以上であり、さらに好ましくは6m/g以上である。樹脂組成物に含まれ得る難燃剤の比表面積の上限値は、現実的には20m/g以下である。樹脂組成物に含まれ得る難燃剤の比表面積が上記範囲内にあれば、樹脂組成物中での難燃剤の分散性が向上し得るので、難燃発泡体の難燃性が均一に発現し得るとともに、難燃発泡体の外観品位も保たれ得る。樹脂組成物に含まれ得る難燃剤の比表面積が高すぎると、樹脂組成物中での難燃剤の分散性が悪くなるおそれがあり、難燃発泡体の難燃性にばらつきが生じたり、難燃発泡体の外観品位を損なったりするおそれがある。また、樹脂組成物に含まれ得る難燃剤の比表面積が高すぎると、難燃発泡体の荷重分散性が低下するおそれがある。
【0079】
樹脂組成物に含まれ得る難燃剤は、表面処理が施されていてもよい。このような表面処理としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な表面処理を採用し得る。このような表面処理としては、例えば、シランカップリング処理、ステアリン酸処理などが挙げられる。
【0080】
樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な他の成分が含まれていてもよい。このような他の成分は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。このような他の成分としては、例えば、ゴム、樹脂材料として配合されているポリマー以外の樹脂、軟化剤、脂肪族系化合物、老化防止剤、酸化防止剤、光安定剤、耐候剤、紫外線吸収剤、分散剤、可塑剤、カーボン、帯電防止剤、界面活性剤、架橋剤、増粘剤、防錆剤、シリコーン系化合物、張力改質剤、収縮防止剤、流動性改質剤、ゲル化剤、硬化剤、充填剤、補強剤、発泡剤、発泡核剤、着色剤(顔料や染料等)、pH調整剤、溶剤(有機溶剤)、熱重合開始剤、光重合開始剤、滑剤、結晶核剤、結晶化促進剤、加硫剤、表面処理剤、分散助剤などが挙げられる。
【0081】
≪1-2.難燃発泡体の形成≫
本発明の難燃発泡体は、代表的には、樹脂組成物を発泡させて得られる。発泡の方法(気泡の形成方法)としては、物理的方法や化学的方法など、発泡成形に通常用いられる方法が採用できる。すなわち、本発明の難燃発泡体は、代表的には、物理的方法により発泡して形成された発泡体(物理発泡体)であってもよいし、化学的方法により発泡して形成された発泡体(化学発泡体)であってもよい。物理的方法は、一般的に、空気や窒素等のガス成分をポリマー溶液に分散させて、機械的混合により気泡を形成させるもの(機械発泡体)である。化学的方法は、一般的に、ポリマーベースに添加された発泡剤の熱分解により生じたガスによりセルを形成し、発泡体を得る方法である。
【0082】
発泡成形に付す樹脂組成物は、例えば、構成成分を、任意の適切な溶融混練装置、例えば、開放型のミキシングロール、非開放型のバンバリーミキサー、1軸押出機、2軸押出機、連続式混練機、加圧ニーダーなど、任意の適切な手段を用いて混合することにより調製すればよい。
【0083】
<本発明の難燃発泡体を形成させる実施形態1>
本発明の難燃発泡体を形成させる一つの実施形態1としては、例えば、エマルション樹脂組成物(樹脂材料(ポリマー)などを含むエマルション)を機械的に発泡させて起泡化させる工程(工程A)を経て難燃発泡体を形成する形態が挙げられる。起泡装置としては、例えば、高速せん断方式の装置、振動方式の装置、加圧ガスの吐出方式の装置などが挙げられる。これらの起泡装置の中でも、気泡径の微細化、大容量作製の観点から、高速せん断方式の装置が好ましい。本発明の難燃発泡体を形成させるこの一つの実施形態1は、どのような樹脂組成物からの形成にも適用可能である。
【0084】
エマルションの固形分濃度は、成膜性の観点から高い方が好ましい。エマルションの固形分濃度は、好ましくは30重量%以上、より好ましくは40重量%以上、さらに好ましくは50重量%以上である。
【0085】
機械的撹拌により起泡した際の気泡は、気体(ガス)がエマルション中に取り込まれたものである。ガスとしては、エマルションに対して不活性であれば、本発明の効果を損なわない範囲で任意の適切なガスを採用し得る。このようなガスとしては、例えば、空気、窒素、二酸化炭素などが挙げられる。
【0086】
上記方法により起泡化したエマルション樹脂組成物(気泡含有エマルション樹脂組成物)を基材上に塗工して乾燥する工程(工程B)を経ることによって、本発明の難燃発泡体を得ることができる。基材としては、例えば、剥離処理したプラスチックフィルム(剥離処理したポリエチレンテレフタレートフィルム等)、プラスチックフィルム(ポリエチレンテレフタレートフィルム等)等が挙げられる。
【0087】
工程Bにおいて、塗工方法、乾燥方法としては、本発明の効果を損なわない範囲で任意の適切な方法を採用できる。工程Bは、基材上に塗布した気泡含有エマルション樹脂組成物を50℃以上125℃未満で乾燥する予備乾燥工程B1と、その後さらに125℃以上200℃以下で乾燥する本乾燥工程B2を含んでいることが好ましい。
【0088】
予備乾燥工程B1と本乾燥工程B2を設けることにより、急激な温度上昇による気泡の合一化、気泡の破裂を防止できる。特に、厚みの小さい発泡シートでは温度の急激な上昇により気泡が合一化、破裂するので、予備乾燥工程B1を設ける意義は大きい。予備乾燥工程B1における温度は、好ましくは50℃~100℃である。予備乾燥工程B1の時間は、好ましくは0.5分~30分であり、より好ましくは1分~15分である。本乾燥工程B2における温度は、好ましくは130℃~180℃以下であり、より好ましくは130℃~160℃である。本乾燥工程B2の時間は、好ましくは0.5分~30分であり、より好ましくは1分~15分である。
【0089】
<本発明の難燃発泡体を形成させる実施形態2>
本発明の難燃発泡体を形成させる一つの実施形態2としては、樹脂組成物を発泡剤により発泡させて発泡体を形成する形態が挙げられる。発泡剤としては、発泡成形に通常用いられるものを使用でき、環境保護及び被発泡体に対する低汚染性の観点から、高圧の不活性ガスを用いることが好ましい。
【0090】
不活性ガスとしては、樹脂組成物に対して不活性で且つ含浸可能なものであれば、任意の適切な不活性ガスを採用し得る。このような不活性ガスとしては、例えば、二酸化炭素、窒素ガス、空気などが挙げられる。これらのガスは混合して用いてもよい。これらのうち、樹脂材料(ポリマー)への含浸量が多く、含浸速度の速いという観点から、二酸化炭素が好ましい。
【0091】
不活性ガスは超臨界状態であることが好ましい。すなわち、超臨界状態の二酸化炭素を用いることが特に好ましい。超臨界状態では、樹脂組成物への不活性ガスの溶解度がより増大し、不活性ガスの高濃度の混入が可能であるとともに、急激な圧力降下時に不活性ガスが高濃度となるため、気泡核の発生が多くなり、その気泡核が成長してできる気泡の密度が、気孔率が同じであっても他の状態の場合より大きくなるため、微細な気泡を得ることができる。なお、二酸化炭素の臨界温度は31℃、臨界圧力は7.4MPaである。
【0092】
樹脂組成物に高圧の不活性ガスを含浸させることにより発泡体を形成する方法としては、例えば、樹脂材料(ポリマー)を含む樹脂組成物に不活性ガスを高圧下で含浸させるガス含浸工程、該工程後に圧力を低下させて樹脂材料(ポリマー)を発泡させる減圧工程、および、必要に応じて加熱により気泡を成長させる加熱工程を経て形成する方法などが挙げられる。この場合、予め成形した未発泡成形体を不活性ガスに含浸させてもよく、また、溶融した樹脂組成物に不活性ガスを加圧状態下で含浸させた後に減圧の際に成形に付してもよい。これらの工程は、バッチ方式、連続方式のいずれの方式で行ってもよい。すなわち、予め樹脂組成物を、シート状などの適宜な形状に成形して未発泡樹脂成形体とした後、この未発泡樹脂成形体に、高圧のガスを含浸させ、圧力を解放することにより発泡させるバッチ方式であってもよく、樹脂組成物を加圧下、高圧のガスと共に混練し、成形すると同時に圧力を解放し、成形と発泡を同時に行う連続方式であってもよい。
【0093】
バッチ方式で発泡体を製造する例を以下に示す。例えば、樹脂組成物を単軸押出機、2軸押出機等の押出機を使用して押し出すことにより、発泡体成形用樹脂シートを作製する。あるいは、樹脂組成物を、ローラ、カム、ニーダー、バンバリ型等の羽根を設けた混練機を使用して均一に混練しておき、熱板のプレスなどを用いて所定の厚みにプレス加工することにより、未発泡樹脂成形体を作製する。こうして得られた未発泡樹脂成形体を高圧容器中に入れて、高圧不活性ガス(超臨界状態の二酸化炭素など)を注入し、未発泡樹脂成形体中に不活性ガスを含浸させる。十分に不活性ガスを含浸させた時点で圧力を解放し(通常、大気圧まで)、樹脂中に気泡核を発生させる。気泡核はそのまま室温で成長させてもよいが、場合によっては加熱することによって成長させてもよい。加熱の方法としては、ウォーターバス、オイルバス、熱ロール、熱風オーブン、遠赤外線、近赤外線、マイクロ波などの公知や慣用の方法を採用できる。このようにして気泡を成長させた後、冷水などにより急激に冷却し、形状を固定化することにより発泡体を得ることができる。なお、発泡に供する未発泡樹脂成形体はシート状物に限らず、用途に応じて種々の形状のものを使用できる。また、発泡に供する未発泡樹脂成形体は押出成形、プレス成形のほか、射出成形等の他の成形法により作製することもできる。
【0094】
連続方式で発泡体を製造する例を以下に示す。例えば、樹脂組成物を、単軸押出機、二軸押出機等の押出機を使用して混練しながら、高圧のガス(特に不活性ガス、さらには二酸化炭素)を注入(導入)し、十分に高圧のガスを樹脂組成物に含浸させる混練含浸工程、押出機の先端に設けられたダイスなどを通して樹脂組成物を押し出すことにより圧力を解放し(通常、大気圧まで)、成形と発泡を同時に行う成形減圧工程により発泡成形する。また、連続方式での発泡成形の際には、必要に応じて、加熱することによって気泡を成長させる加熱工程を設けてもよい。このようにして気泡を成長させた後、必要により冷水などにより急激に冷却し、形状を固定化してもよい。また、高圧のガスの導入は連続的に行ってもよく不連続的に行ってもよい。さらに、混練含浸工程および成形減圧工程では、例えば、押出機や射出成形機を用い得る。なお、気泡核を成長させる際の加熱の方法としては、ウォーターバス、オイルバス、熱ロール、熱風オーブン、遠赤外線、近赤外線、マイクロ波などの任意の適切な方法が挙げられる。発泡体の形状としては、任意の適切な形状を採用し得る。このような形状としては、例えば、シート状、角柱状、円筒状、異型状などが挙げられる。
【0095】
樹脂組成物を発泡成形する際のガスの混合量は、高発泡な発泡体を得られ得る点で、例えば、樹脂組成物全量に対して、好ましくは2重量%~10重量%であり、より好ましくは2.5重量%~8重量%であり、さらに好ましくは3重量%~6重量%である。
【0096】
不活性ガスを樹脂組成物に含浸させるときの圧力は、操作性等を考慮して適宜選択できる。このような圧力は、例えば、好ましくは6MPa以上(例えば、6MPa~100MPa)であり、より好ましくは8MPa以上(例えば、8MPa~50MPa)である。なお、超臨界状態の二酸化炭素を用いる場合の圧力は、二酸化炭素の超臨界状態を保持する観点から、好ましくは7.4MPa以上である。圧力が6MPaより低い場合には、発泡時の気泡成長が著しく、気泡径が大きくなりすぎて、好ましい平均セル径(平均気泡径)を得ることができない場合がある。これは、圧力が低いとガスの含浸量が高圧時に比べて相対的に少なく、気泡核形成速度が低下して形成される気泡核数が少なくなるため、1気泡あたりのガス量が逆に増えて気泡径が極端に大きくなるからである。また、6MPaより低い圧力領域では、含浸圧力を少し変化させるだけで気泡径、気泡密度が大きく変わるため、気泡径及び気泡密度の制御が困難になりやすい。
【0097】
ガス含浸工程における温度は、用いる不活性ガスや樹脂組成物中の成分の種類等によって異なり、広い範囲で選択できる。操作性等を考慮した場合、好ましくは10℃~350℃である。未発泡成形体に不活性ガスを含浸させる場合の含浸温度は、バッチ式では、好ましくは10℃~250℃であり、より好ましくは40℃~230℃である。また、ガスを含浸させた溶融ポリマーを押し出して発泡と成形とを同時に行う場合の含浸温度は、連続式では、好ましくは60℃~350℃である。なお、不活性ガスとして二酸化炭素を用いる場合には、超臨界状態を保持するため、含浸時の温度は、好ましくは32℃以上であり、より好ましくは40℃以上である。
【0098】
減圧工程において、減圧速度としては、均一な微細気泡を得るため、好ましくは5MPa/秒~300MPa/秒である。
【0099】
加熱工程における加熱温度は、好ましくは40℃~250℃であり、より好ましくは60℃~250℃である。
【0100】
≪≪2.発泡部材≫≫
本発明の発泡部材は、上記で説明した本発明の難燃発泡体が難燃発泡層であり、該難燃発泡層の少なくとも一方の側に粘着剤層を有する。
【0101】
本発明の発泡部材が有する難燃発泡層の厚みは、好ましくは30μm~5000μmであり、より好ましくは35μm~4000μmであり、さらに好ましくは40μm~3000μmであり、特に好ましくは45μm~2500μmである。難燃発泡層の厚みが上記範囲内にあることにより、該難燃発泡層は、微小クリアランスに対しても容易に追従し得る。また、難燃発泡層の厚みが上記範囲内にあることにより、気泡を均一に含有することができ、優れた衝撃吸収性を発現し得る。
【0102】
粘着剤層の厚さは、好ましくは5μm~300μmであり、より6μm~200μmであり、さらに好ましくは7μm~100μmであり、特に好ましくは8μm~50μmである。粘着剤層の厚さが上記範囲内にあることによって、本発明の発泡部材は、優れた衝撃吸収性を発揮できる。
【0103】
粘着剤層としては、任意の適切な粘着剤からなる層を採用し得る。粘着剤層を構成する粘着剤としては、例えば、ゴム系粘着剤(合成ゴム系粘着剤、天然ゴム系粘着剤など)、ウレタン系粘着剤、アクリルウレタン系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、エポキシ系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、フッ素系粘着剤、ゴム系粘着剤などが挙げられる。粘着剤層を構成する粘着剤としては、好ましくは、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ゴム系粘着剤から選ばれる少なくとも1種である。このような粘着剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。粘着剤層は、1層であってもよいし、2層以上であってもよい。
【0104】
粘着剤としては、粘着形態で分類すると、例えば、エマルジョン型粘着剤、溶剤型粘着剤、紫外線架橋型(UV架橋型)粘着剤、電子線架橋型(EB架橋型)粘着剤、熱溶融型粘着剤(ホットメルト型粘着剤)などが挙げられる。このような粘着剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0105】
粘着剤層の水蒸気透湿度は、好ましくは50(g/(m・24時間))以下であり、より好ましくは30(g/(m・24時間))以下であり、さらに好ましくは20(g/(m・24時間))以下であり、特に好ましくは10(g/(m・24時間))以下である。粘着剤層の水蒸気透湿度が上記範囲内にあれば、本発明の発泡シートは、水分による影響を受けずに衝撃吸収性を安定化させることができる。
【0106】
粘着剤層を構成する粘着剤には、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な他の成分を含んでいてもよい。
【0107】
他の成分としては、例えば、他のポリマー成分、軟化剤、老化防止剤、硬化剤、可塑剤、充填剤、酸化防止剤、熱重合開始剤、光重合開始剤、紫外線吸収剤、光安定剤、着色剤(顔料や染料など)、溶剤(有機溶剤)、界面活性剤(例えば、イオン性界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤など)、架橋剤(例えば、ポリイソシアネート系架橋剤、シリコーン系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アルキルエーテル化メラミン系架橋剤など)などが挙げられる。なお、熱重合開始剤や光重合開始剤は、ポリマー成分を形成するための材料に含まれ得る。
【0108】
本発明の発泡部材は、任意の適切な方法によって製造し得る。本発明の発泡部材は、例えば、難燃発泡層と粘着剤層とを積層して製造する方法や、粘着剤層の形成材料と難燃発泡層を積層した後に硬化反応等によって粘着剤層を形成させて製造する方法などが挙げられる。
【実施例
【0109】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例になんら限定されるものではない。なお、実施例等における、試験および評価方法は以下のとおりである。なお、「部」と記載されている場合は、特記事項がない限り「重量部」を意味し、「%」と記載されている場合は、特記事項がない限り「重量%」を意味する。
【0110】
<見かけ密度の測定方法>
難燃発泡体の密度(見かけ密度)は、以下のように算出した。実施例・比較例で得られた樹脂発泡構造体を20mm×20mmサイズに打ち抜いて試験片とし、試験片の寸法をノギスで測定した。次に、試験片の重量を電子天秤にて測定した。そして、次式により算出した。
見かけ密度(g/cm)=試験片の重量/試験片の体積
【0111】
<50%圧縮加重の測定方法>
JIS K 6767に記載されている発泡体の圧縮硬さ測定方法に準じて測定した。具体的には、実施例・比較例で得られた樹脂発泡構造体を30mm×30mmサイズに切り出して試験片とし、圧縮速度10mm/minで圧縮率が50%となるまで圧縮したときの応力(N)を単位面積(1cm)当たりに換算して、50%圧縮加重(N/cm)とした。
【0112】
<引張試験での破断伸びの測定方法>
JIS K 6767に記載されている発泡体の引張伸び測定方法に準じて測定した。
【0113】
<平均気泡径(平均セル径)、気泡径(セル径)の変動係数の測定方法>
計測器としてデジタルマイクロスコープ(商品名「VHX-500」、キーエンス株式会社製)を用い、実施例・比較例で得られた樹脂発泡構造体の気泡部の拡大画像を取り込み、同計測器の解析ソフトを用いて、画像解析することにより、平均気泡径(平均セル径)(μm)を求めた。なお、取り込んだ拡大画像の気泡数は400個程度であった。また、セル径の全データから標準偏差を計算し、以下の式を用いて変動係数を算出した。
変動係数=標準偏差/平均気泡径(平均セル径)
【0114】
<気泡率(セル率)の測定方法>
温度23℃、湿度50%の環境下で測定を行った。100mm×100mmの打抜き刃型にて実施例・比較例で得られた樹脂発泡構造体を打抜き、打抜いた試料の寸法を測定した。また、測定端子の直径(φ)20mmである1/100ダイヤルゲージにて厚みを測定した。これらの値から実施例・比較例で得られた樹脂発泡構造体の体積を算出した。次に、実施例・比較例で得られた樹脂発泡構造体の重量を最小目盛り0.01g以上の上皿天秤にて測定した。これらの値より、実施例・比較例で得られた樹脂発泡構造体の気泡率(セル率)を算出した。
【0115】
<気泡壁(セル壁)の厚みの測定方法>
計測器としてデジタルマイクロスコープ(商品名「VHX-500」、キーエンス株式会社製)を用いて、実施例・比較例で得られた樹脂発泡構造体の気泡部の拡大画像を取り込み、同計測器の解析ソフトを用いて、画像解析することにより、気泡壁(セル壁)の厚み(μm)を求めた。なお、取り込んだ拡大画像の気泡数は400個程度であった。
【0116】
<難燃発泡体の650℃における残渣の測定方法>
白金製容器に5mgの実施例・比較例で得られた樹脂発泡構造体を入れ、窒素ガス雰囲気下で25℃から680℃の測定範囲で昇温速度20℃/minの条件で昇温し、TG/DTA6200(SIIナノテクノロジー社製)を用いて、650℃における残渣を測定した。
【0117】
<水平燃焼距離の測定方法>
UL94に記載されている発泡体の難燃試験方法に準じて測定を行った。水平燃焼距離が小さいほど、難燃性に優れる傾向がある。
【0118】
<応力分散度の測定方法>
図1は、応力分散度の測定に用いる応力緩和試験機1000の概略断面図である。
図1に示すように、鉄製の支持体100にポリカーボネート板(200mm×300mm×厚み1mm)200を置き、その上に応力測定フィルム300(商品名「プレスケール」(ツーシート、微圧用(4LW)、富士フイルム株式会社製、加圧した部分が発色する面を有するシート、50mm×50mm×厚み0.16mm)を置いた。次に、応力測定フィルム300の上に測定対象の実施例・比較例で得られた樹脂発泡構造体(150mm×200mm×厚み0.5mm)400を置き、その上に両面接着テープ(No.5603、日東電工製、厚み0.03mm)500を貼り、厚み0.3mmのスペーサー600を配置させて、最上部にABS板(200mm×300mm×厚み3mm)700を置いた。その上から、中心部に鉄球(φ25mm)800を置き、100Nの荷重を1min加えた。
その後、応力測定フィルム300の色の変化を観察し、色が応力測定フィルム300の中心から広がらず点状になっているものをC,色が応力測定フィルム300の中心から25mmまで広がるものをB,色が応力測定フィルム300の中心から50mm端部まで大きく広がっているものをAとした。
【0119】
〔実施例1〕
ポリプロピレン[メルトフローレート(MFR)(230℃):0.40g/10min]:32.5重量部、ポリプロピレン[メルトフローレート(MFR)(230℃):1.1g/10min]:32.5重量部、ポリオレフィン系エラストマー[商品名「サーモラン5850N」、三菱化学製]:35重量部、水酸化マグネシウム:120重量部(商品名「MGZ-1」、堺化学工業製)、カーボン(商品名「旭♯35」、旭カーボン株式会社製):10重量部、およびステアリン酸モノグリセリド:1重量部を、日本製鋼所(JSW)社製の二軸混練機にて、200℃の温度で混練した後、ストランド状に押出し、水冷後、ペレット状に成形した。このペレットを、日本製鋼所社製の単軸押出機に投入し、220℃の雰囲気下、13(注入後12)MPaの圧力で、二酸化炭素ガスを注入した。二酸化炭素ガスは、樹脂100重量部に対して3重量部の割合で注入した。二酸化炭素ガスを十分飽和させた後、発泡に適した温度まで冷却し、ダイから押出して、厚みが2.2mmのシート状の樹脂発泡構造体(1)を得た。
この樹脂発泡構造体(1)において、見かけ密度は0.07g/cm、50%圧縮加重は4.0N/cm、破断伸びは89%であった。
結果を表1に示した。
【0120】
〔実施例2〕
ポリプロピレン[メルトフローレート(MFR)(230℃):0.40g/10min]:32.5重量部、ポリプロピレン[メルトフローレート(MFR)(230℃):1.1g/10min]:32.5重量部、ポリオレフィン系エラストマー[商品名「ミラストマー8030N」、三井化学製]:35重量部、水酸化マグネシウム:120重量部(商品名「KISUMA 5P、協和化学工業製)、カーボン(商品名「旭♯35」、旭カーボン株式会社製):10重量部、およびステアリン酸モノグリセリド:1重量部を、日本製鋼所(JSW)社製の二軸混練機にて、200℃の温度で混練した後、ストランド状に押出し、水冷後、ペレット状に成形した。このペレットを、日本製鋼所社製の単軸押出機に投入し、220℃の雰囲気下、13(注入後12)MPaの圧力で、二酸化炭素ガスを注入した。二酸化炭素ガスは、樹脂100重量部に対して3重量部の割合で注入した。二酸化炭素ガスを十分飽和させた後、発泡に適した温度まで冷却し、ダイから押出して、厚みが2.2mmのシート状の樹脂発泡構造体(2)を得た。
この樹脂発泡構造体(2)において、見かけ密度は0.07g/cm、50%圧縮加重は3.5N/cm、破断伸びは77%であった。
結果を表1に示した。
【0121】
〔実施例3〕
ポリプロピレン[メルトフローレート(MFR)(230℃):0.40g/10min]:19重量部、ポリプロピレン[メルトフローレート(MFR)(230℃):1.1g/10min]:19重量部、ポリオレフィン系エラストマー[商品名「ミラストマー8030N」、三井化学製]:67重量部、水酸化マグネシウム:80重量部(商品名「KISUMA 5P」、協和化学工業製)、カーボン(商品名「旭♯35」、旭カーボン株式会社製):10重量部、およびステアリン酸モノグリセリド:1重量部を、日本製鋼所(JSW)社製の二軸混練機にて、200℃の温度で混練した後、ストランド状に押出し、水冷後、ペレット状に成形した。このペレットを、日本製鋼所社製の単軸押出機に投入し、220℃の雰囲気下、13(注入後12)MPaの圧力で、二酸化炭素ガスを注入した。二酸化炭素ガスは、樹脂100重量部に対して3重量部の割合で注入した。二酸化炭素ガスを十分飽和させた後、発泡に適した温度まで冷却し、ダイから押出して、厚みが1.8mmのシート状の樹脂発泡構造体(3)を得た。
この樹脂発泡構造体(3)において、見かけ密度は0.07g/cm、50%圧縮加重は1.7N/cm、破断伸びは90%であった。
結果を表1に示した。
【0122】
〔実施例4〕
ポリプロピレン[メルトフローレート(MFR)(230℃):0.40g/10min]:16.5重量部、ポリプロピレン[メルトフローレート(MFR)(230℃):1.1g/10min]:16.5重量部、ポリオレフィン系エラストマー[商品名「ミラストマー8030N」、三井化学製]:67重量部、水酸化マグネシウム:60重量部(商品名「KISUMA 5P」、協和化学工業製)、カーボン(商品名「旭♯35」、旭カーボン株式会社製):10重量部、およびステアリン酸モノグリセリド:1重量部を、日本製鋼所(JSW)社製の二軸混練機にて、200℃の温度で混練した後、ストランド状に押出し、水冷後、ペレット状に成形した。このペレットを、日本製鋼所社製の単軸押出機に投入し、220℃の雰囲気下、13(注入後12)MPaの圧力で、二酸化炭素ガスを注入した。二酸化炭素ガスは、樹脂100重量部に対して3重量部の割合で注入した。二酸化炭素ガスを十分飽和させた後、発泡に適した温度まで冷却し、ダイから押出して、厚みが1.8mmのシート状の樹脂発泡構造体(4)を得た。
この樹脂発泡構造体(4)において、見かけ密度は0.085g/cm、50%圧縮加重は2.1N/cm、破断伸びは85%であった。
結果を表1に示した。
【0123】
〔実施例5〕
ポリプロピレン[メルトフローレート(MFR)(230℃):0.40g/10min]:20.5重量部、ポリプロピレン[メルトフローレート(MFR)(230℃):1.1g/10min]:20.5重量部、ポリオレフィン系エラストマー[商品名「ミラストマー8030N」、三井化学製]:59重量部、水酸化マグネシウム:60重量部(商品名「KISUMA 5P」、協和化学工業製)、カーボン(商品名「旭♯35」、旭カーボン株式会社製):100重量部、およびステアリン酸モノグリセリド:1重量部を、日本製鋼所(JSW)社製の二軸混練機にて、200℃の温度で混練した後、ストランド状に押出し、水冷後ペレット状に成形した。このペレットを、日本製鋼所社製の単軸押出機に投入し、220℃の雰囲気下、13(注入後12)MPaの圧力で、二酸化炭素ガスを注入した。二酸化炭素ガスは、樹脂100重量部に対して3重量部の割合で注入した。二酸化炭素ガスを十分飽和させた後、発泡に適した温度まで冷却し、ダイから押出して、厚みが1.8mmのシート状の樹脂発泡構造体(5)を得た。
この樹脂発泡構造体(5)において、見かけ密度は0.085g/cm、50%圧縮加重は2.9N/cm、破断伸びは80%であった。
結果を表1に示した。
【0124】
〔比較例1〕
ポリプロピレン[メルトフローレート(MFR)(230℃):0.40g/10min]:16.5重量部、ポリプロピレン[メルトフローレート(MFR)(230℃):1.1g/10min]:16.5重量部、ポリオレフィン系エラストマー[商品名「サーモラン5850N」、三菱化学製]:67重量部、水酸化マグネシウム:40重量部(商品名「KISUMA 5P」、協和化学工業製)、カーボン(商品名「旭♯35」、旭カーボン株式会社製):10重量部、およびステアリン酸モノグリセリド:1重量部を、日本製鋼所(JSW)社製の二軸混練機にて、200℃の温度で混練した後、ストランド状に押出し、水冷後ペレット状に成形した。このペレットを、日本製鋼所社製の単軸押出機に投入し、220℃の雰囲気下、13(注入後12)MPaの圧力で、二酸化炭素ガスを注入した。二酸化炭素ガスは、樹脂100重量部に対して3重量部の割合で注入した。二酸化炭素ガスを十分飽和させた後、発泡に適した温度まで冷却し、ダイから押出して、厚みが1.8mmのシート状の樹脂発泡構造体(C1)を得た。
この樹脂発泡構造体(C1)において、見かけ密度は0.065g/cm、50%圧縮加重は1.8N/cm、破断伸びは140%であった。
結果を表1に示した。
【0125】
〔比較例2〕
ポリウレタンを主成分とする発泡体を、樹脂発泡構造体(C2)とした。
この樹脂発泡構造体(C2)において、見かけ密度は0.40g/cm、50%圧縮加重は12N/cm、破断伸びは130%であった。
結果を表1に示した。
【0126】
〔比較例3〕
ポリプロピレン[密度:0.9g/cm、メルトフローレート(MFR)(230℃):4g/10min]:50重量部、オレフィン系エラストマー[商品名「ミラストマー8030N」、三井化学製]:50重量部、オイルファーネス法により製造されたカーボンブラック:10重量部、MgO・NiO・HOの式で表される多面体形状の複合化金属水酸化物(平均粒径0.7μm):100重量部を、ローラ型の翼を設けたラボプラストミル(東洋精機製作所製)によって180℃の温度で混練した後、180℃に加熱した熱板プレスを用いて厚さ0.5mm、φ80mmのシート状に成型した。このシートを耐圧容器に入れ、150℃の雰囲気中、15MPaの加圧下で、10分間保持することにより、二酸化炭素を含浸させた。次いで、急激に減圧することにより、樹脂発泡構造体(C3)を得た。
この樹脂発泡構造体(C3)において、見かけ密度は0.033g/cm、50%圧縮加重は2.49N/cm、破断伸びは140%であった。
結果を表1に示した。
【0127】
〔比較例4〕
アクリルエマルション溶液(固形分量55%、アクリル酸エチル-アクリル酸ブチル-アクリロニトリル共重合体(用いた単量体の重量比として45:48:7)):100重量部、脂肪酸アンモニウム系界面活性剤(ステアリン酸アンモニウムの水分散液、固形分量33%)(界面活性剤A):2重量部、カルボキシベタイン型両性界面活性剤(「アモーゲンCB-H」、第一工業製薬社製)(界面活性剤B):2重量部、オキサゾリン系架橋剤(「エポクロスWS-500」、日本触媒社製、固形分量39%):4重量部、顔料(カーボンブラック)(「NAF-5091」、大日精化工業社製):1重量部、をディスパー(「ロボミックス」、プライミクス社製)で撹拌混合して起泡化した。この発泡組成物を、剥離処理をしたPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム(厚さ:38μm、商品名「MRF#38」、三菱樹脂社製)上に塗布し、70℃で4.5分、140℃で4.5分乾燥させ、樹脂発泡構造体(C4)(厚み:0.20mm)を得た。
この樹脂発泡構造体(C4)において、見かけ密度は0.70g/cm、50%圧縮加重は7.2N/cm、破断伸びは100%であった。
結果を表1に示した。
【0128】
〔比較例5〕
アクリルエマルション溶液(固形分量55%、アクリル酸エチル-アクリル酸ブチル-アクリロニトリル共重合体(用いた単量体の重量比として45:48:7)):100重量部、脂肪酸アンモニウム系界面活性剤(ステアリン酸アンモニウムの水分散液、固形分量33%)(界面活性剤A):1.6重量部、カルボキシベタイン型両性界面活性剤(「アモーゲンCB-H」、第一工業製薬社製)(界面活性剤B):1.6重量部、オキサゾリン系架橋剤(「エポクロスWS-500」、日本触媒社製、固形分量39%):4重量部、顔料(カーボンブラック)(「NAF-5091」、大日精化工業社製):2重量部、ポリアクリル酸系増粘剤(アクリル酸エチル-アクリル酸共重合体(用いた単量体の含有割合としてアクリル酸20重量%)、固形分量28.7%):0.8重量部、表面処理シリカ粒子(「Nipsil E150J」、東ソー・シリカ株式会社製):25重量部を、ディスパー(「ロボミックス」、プライミクス社製)で撹拌混合して起泡化した。この発泡組成物を、剥離処理をしたPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム(厚さ:38μm、商品名「MRF♯38」、三菱樹脂社製)上に塗布し、70℃で4.5分、140℃で4.5分乾燥させ、樹脂発泡構造体(C5)(厚み:0.20mm)を得た。
この樹脂発泡構造体(C5)において、見かけ密度は0.30g/cm、50%圧縮加重は11N/cm、破断伸びは80%であった。
結果を表1に示した。
【0129】
【表1】
【0130】
〔製造例1〕
攪拌機、温度計、窒素ガス導入管、還流冷却器、滴下ロートを備えた反応容器に、モノマー成分としてのブチルアクリレート(BA)60部、2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)40部、アクリル酸(AA)5部と、重合溶媒としてのトルエン135部とを仕込み、窒素ガスを導入しながら2時間撹拌した。このようにして重合系内の酸素を除去した後、重合開始剤としてのアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.1部を加え、60℃で6時間溶液重合して、アクリル系ポリマーのトルエン溶液を得た。このアクリル系ポリマーのMwは40×10であった。
上記トルエン溶液に含まれるアクリル系ポリマー100部に対し、粘着付与樹脂として重合ロジンエステル(商品名「ペンセルD-125」、軟化点120~130℃、荒川化学工業社製)30部およびイソシアネート系架橋剤(商品名「コロネートL」、東ソー社製、固形分75%)2部を加えてアクリル系粘着剤組成物を調製し、このアクリル系粘着剤組成物を、剥離処理をしたPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム(厚み:38μm、商品名「MRF♯38」、三菱樹脂(株)製)上に塗布し、120℃で5分乾燥させることにより、厚みが30μmの粘着剤層(1)を得た。
【0131】
〔実施例6〕
実施例1で得られた樹脂発泡構造体(1)の一方の側に製造例1で得られた粘着剤層(1)を貼り合わせることで、樹脂発泡構造体(1)/粘着剤層(1)の2層構造の発泡部材(1)を得た。
【0132】
〔実施例7〕
実施例1で得られた樹脂発泡構造体(1)の両側に製造例1で得られた粘着剤層(1)を貼り合わせることで、粘着剤層(1)/樹脂発泡構造体(1)/粘着剤層(1)の3層構造の発泡部材(2)を得た。
【産業上の利用可能性】
【0133】
本発明の難燃発泡体は、例えば、電子機器用の難燃発泡体として好適に利用できる。
【符号の説明】
【0134】
応力緩和試験機 1000
鉄製の支持体 100
ポリカーボネート板 200
応力測定フィルム 300
樹脂発泡構造体 400
両面接着テープ 500
スペーサー 600
ABS板 700
鉄球 800
図1