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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】レーザ発振器
(51)【国際特許分類】
   H01S 3/041 20060101AFI20241016BHJP
   H01S 3/097 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
H01S3/041
H01S3/097 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020115641
(22)【出願日】2020-07-03
(65)【公開番号】P2022013224
(43)【公開日】2022-01-18
【審査請求日】2023-05-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105887
【弁理士】
【氏名又は名称】来山 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】河村 譲一
(72)【発明者】
【氏名】田中 研太
【審査官】右田 昌士
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第101752780(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0105993(US,A1)
【文献】特開平09-148655(JP,A)
【文献】特開平07-038176(JP,A)
【文献】特開2003-338645(JP,A)
【文献】特開昭63-048877(JP,A)
【文献】特開平06-204587(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0244137(US,A1)
【文献】特開昭60-021584(JP,A)
【文献】特開2019-134122(JP,A)
【文献】特開昭58-176985(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101615759(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 3/00 - 3/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ媒質ガスを収容するチェンバ内に放電を生じさせる放電電極と、
前記チェンバ内に配置され、前記放電電極で放電が生じる領域を通る光軸を持つ前記チェンバ内の光共振器を保持し、前記光共振器の光軸の方向に長い単一の部材である共振器ベースと、
前記共振器ベースの表面のうち、前記放電電極の方を向く第1表面と、前記放電電極とは反対側を向く第2表面との温度差を低減させる温度差低減構造と
を有するレーザ発振器。
【請求項2】
前記温度差低減構造は、前記共振器ベースと前記放電電極との間に配置され、断熱または遮熱を行う熱遮蔽部材を含む請求項1に記載のレーザ発振器。
【請求項3】
前記熱遮蔽部材は前記共振器ベースに、前記光共振器の光軸方向に伸縮可能に支持されている請求項2に記載のレーザ発振器。
【請求項4】
前記温度差低減構造は、前記第1表面の上、または前記共振器ベースの内部であって、前記第2表面より前記第1表面に近い位置に設けられた冷却流路を含む請求項1乃至3のいずれか1項に記載のレーザ発振器。
【請求項5】
前記光共振器の共振器ミラーが、前記第1表面の上に固定されている請求項1乃至4のいずれか1項に記載のレーザ発振器。
【請求項6】
前記光共振器の光軸と前記共振器ベースとの間に、前記放電電極の一方が配置されてい
る請求項1乃至5のいずれか1項に記載のレーザ発振器。
【請求項7】
レーザ媒質ガスを収容するチェンバ内に放電を生じさせる放電電極と、
前記チェンバ内に配置され、前記放電電極で放電が生じる領域を通る光軸を持つ光共振器を保持する共振器ベースと、
前記共振器ベースの表面のうち、前記放電電極の方を向く第1表面と、前記放電電極とは反対側を向く第2表面との温度差を低減させる温度差低減構造と
を有し、
前記温度差低減構造は、前記第1表面に接する空間と、前記第2表面に接する空間との間でレーザ媒質ガスを循環させるガス循環機構を含むレーザ発振器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ発振器に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ発振器に用いられる光共振器は一対の共振器ミラーを有し、共振器ミラーの間に光を閉じ込めて誘導放出を生じさせる。一対の共振器ミラーの光軸がずれるとレーザ光の出力が低下してしまう。レーザ光の出力低下を回避するために、一対の共振器ミラーの光軸のずれを抑制することが重要である。光軸ずれを抑制するために、一対の共振器ミラーを共振器ベースに固定する構造が採用される場合がある。
【0003】
下記の特許文献1に、レーザ媒質と光共振器とを収容した容器を外側の他の容器の中に配置し、外側の容器と内側の容器との間を真空にしたレーザ発振器が開示されている。この構成により、外部からの熱の影響が軽減される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭58-176985号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一対の共振器ミラーを1つの共振器ベースに支持した構成において光軸ずれを抑制するためには、共振器ベースを変形しにくい剛性の高い部材を用いることが好ましい。ところが、剛性を高めるために、共振器ベースとして分厚くて大きな部材を用いると、装置が大型化し、コスト上昇につながる。
【0006】
本発明の目的は、装置の大型化及びコスト上昇を抑制し、かつ光共振器の光軸ずれを抑制することが可能なレーザ発振器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一観点によると、
レーザ媒質ガスを収容するチェンバ内に放電を生じさせる放電電極と、
前記チェンバ内に配置され、前記放電電極で放電が生じる領域を通る光軸を持つ前記チェンバ内の光共振器を保持し、前記光共振器の光軸の方向に長い単一の部材である共振器ベースと、
前記共振器ベースの表面のうち、前記放電電極の方を向く第1表面と、前記放電電極とは反対側を向く第2表面との温度差を低減させる温度差低減構造と
を有するレーザ発振器が提供される。
【発明の効果】
【0008】
温度差低減構造により、共振器ベースの第1表面と第2表面との温度が低減される。これにより、共振器ベースとして分厚くて剛性の高い部材を用いることなく、温度差に起因する反り変形を抑制することができる。共振器ベースの変型が生じにくくなるため、光共振器の光軸ずれも生じにくくなる。共振器ベースとして分厚くて剛性の高い部材を用いる必要がないため、装置の大型化及びコスト上昇を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施例によるレーザ発振器を搭載したレーザ装置、及びレーザ発振器から出力されたレーザビームで加工を行う加工装置の概略図である。
図2図2は、実施例によるレーザ発振器の光軸を含む断面図である。
図3図3は、実施例によるレーザ発振器の光軸に垂直な断面図である。
図4図4Aは、実施例によるレーザ発振器に用いられている共振器ベースの平面図であり、図4B及び図4Cは、それぞれ図4Aの一点鎖線4B-4B及び一点鎖線4C-4Cにおける断面図である。
図5図5は、他の実施例によるレーザ発振器の光軸を含む断面図である。
図6図6は、さらに他の実施例によるレーザ発振器の光軸に垂直な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、実施例によるレーザ発振器12を搭載したレーザ装置10、及びレーザ装置10から出力されたレーザビームで加工を行う加工装置80の概略図である。共通ベース100に、レーザ装置10及び加工装置80が固定されている。共通ベース100は、例えば床である。
【0011】
レーザ装置10は、共通ベース100に固定された架台11と、架台11に支持されたレーザ発振器12とを含む。加工装置80は、ビーム整形光学系81及びステージ82を含む。ステージ82の上に加工対象物90が保持される。ビーム整形光学系81及びステージ82は、共通ベース100に固定されている。レーザ発振器12から出力されたレーザビームが、ビーム整形光学系81によってビームプロファイルを整形され、加工対象物90に入射する。
【0012】
図2は、レーザ発振器12の光軸を含む断面図である。レーザ発振器12は、レーザ媒質ガス及び光共振器20等を収容するチェンバ15を含む。チェンバ15にレーザ媒質ガスが収容される。チェンバ15の内部空間が、相対的に上側に位置する光学室16と、相対的に下側に位置するブロワ室17と区分されている。光学室16とブロワ室17とは、上下仕切り板18で仕切られている。なお、上下仕切り板18には、レーザ媒質ガスを光学室16とブロワ室17との間で流通させる開口が設けられている。ブロワ室17の側壁から光学室16の底板19が、光共振器20の光軸20Aの方向に張り出しており、光学室16の光軸方向の長さが、ブロワ室17の光軸方向の長さより長くなっている。
【0013】
チェンバ15の底板19が、4個の支持箇所35で架台11(図1)に支持されている。4個の支持箇所35は、平面視において長方形の4個の頂点に相当する位置に配置されている。
【0014】
光学室16内に、放電電極21及び光共振器20が配置されている。光共振器20は、一対の共振器ミラー25を含む。放電電極21は一対の導電部材21Aを含み、一対の導電部材21Aは、それぞれ電極ボックス22に固定されている。一対の電極ボックス22は電極支持部材23を介して底板19に支持されている。放電電極21を構成する一対の導電部材21Aは、上下方向に間隔を隔てて配置され、両者の間に放電領域24が画定される。放電電極21は放電領域24に放電を生じさせることにより、レーザ媒質ガスを励起させる。光共振器20の光軸20Aは放電領域24を通る。後に図3を参照して説明するように、放電領域24を図2の紙面に垂直な方向にレーザ媒質ガスが流れる。
【0015】
一対の共振器ミラー25を含む光共振器20は、光学室16内に配置された1つの共振器ベース26に固定されている。共振器ベース26は、光軸20Aの方向に長い板状の単一の部材であり、4個の光共振器支持部材27を介して底板19に支持されている。共振器ベース26の上面に、熱遮蔽部材30が、光軸20Aの方向に伸縮可能に保持されている。熱遮蔽部材30は、共振器ベース26から脱落しないようにボルト31によって共振器ベース26に保持されている。本明細書において、共振器ベース26の上下の表面のうち、放電電極21側を向く表面(図2において上面)を第1表面26Aといい、反対側を向く表面(図2において下面)を第2表面26Bということとする。
【0016】
光共振器20の光軸20Aを一方向(図1において左方向)に延伸させた延長線と光学室16の壁面との交差箇所に、レーザビームを透過させる光透過窓28が取り付けられている。光共振器内で励振されたレーザビームが光透過窓28を透過して外部に放射される。
【0017】
ブロワ室17にブロワ29が配置されている。ブロワ29は、光学室16とブロワ室17との間でレーザ媒質ガスを循環させる。
【0018】
図3は、実施例によるレーザ発振器12の光軸20A(図2)に垂直な断面図である。図2を参照して説明したように、チェンバ15の内部空間が上下仕切り板18により、上方の光学室16と下方のブロワ室17とに区分されている。光学室16内に、放電電極21、共振器ベース26、熱遮蔽部材30が配置されている。放電電極21を構成する一対の導電部材21Aが、それぞれ電極ボックス22に固定されている。電極ボックス22は、電極支持部材23によってチェンバ15の底板19(図2)に支持されている。一対の導電部材21Aの間に放電領域24が画定される。共振器ベース26は、光共振器支持部材27によってチェンバ15の底板19(図2)に支持されている。電極支持部材23及び光共振器支持部材27は、図3に示した断面からずれた位置に配置されているため、図3において電極支持部材23及び光共振器支持部材27を破線で表している。
【0019】
光学室16内に仕切り板40が配置されている。仕切り板40は、上下仕切り板18に設けられた開口18Aから放電領域24までの第1ガス流路41、放電領域24から上下仕切り板18に設けられた他の開口18Bまでの第2ガス流路42を画定する。レーザ媒質ガスは、放電領域24を、光軸20A(図2)に対して直交する方向に流れる。放電方向は、レーザ媒質ガスが流れる方向、及び光軸20Aの両方に対して直交する。ブロワ室17、第1ガス流路41、放電領域24、及び第2ガス流路42によって、レーザ媒質ガスが循環する循環路が形成される。ブロワ29は、この循環路をレーザ媒質ガスが循環するように、矢印で示したレーザ媒質ガスの流れを発生させる。
【0020】
ブロワ室17内の循環路に、熱交換器43が収容されている。放電領域24で加熱されたレーザ媒質ガスが熱交換器43を通過することによって冷却され、冷却されたレーザ媒質ガスが放電領域24に再供給される。
【0021】
次に、図4A図4Cを参照して、共振器ベース26及び熱遮蔽部材30の支持構造について説明する。
【0022】
図4Aは、共振器ベース26及び熱遮蔽部材30の平面図であり、図4B及び図4Cは、それぞれ図4Aの一点鎖線4B-4B及び一点鎖線4C-4Cにおける断面図である。共振器ベース26の上に、熱遮蔽部材30が載せられて、光軸20Aの方向に伸縮可能に支持されている。共振器ベース26は、光軸20Aの方向に長い平板である。共振器ベース26の両端近傍の第1表面26Aの上に共振器ミラー25が固定されている。
【0023】
平面視において共振器ベース26に包含される位置に、4本の光共振器支持部材27A、27B、27C、27Dが配置されている。光共振器支持部材27A、27Bの各々は段付きピンであり、平面視において光軸20Aから見て同じ側に配置されている。平面視において光共振器支持部材27A、27Bの中心を通過する直線は、光軸20Aと平行である。他の2つの光共振器支持部材27C、27Dは、段差が設けられていないピンであり、それぞれ平面視において光軸20Aに関して光共振器支持部材27A、27Bの線対称の位置に配置されている。すなわち、4個の光共振器支持部材27A~27Dは、長方形の4つの頂点に対応する位置に配置されている。4個の光共振器支持部材27A~27Dの下端は、底板19に埋め込まれて底板19に固定されている。
【0024】
共振器ベース26に、円形孔51及び長孔52が設けられている。円形孔51及び長孔52は、それぞれ、平面視において光共振器支持部材27A、27Bに対応する位置に配置されている。長孔52は、平面視において光軸20Aに平行な方向に長い形状を持つ。光共振器支持部材27A、27Bのそれぞれの段差より上方の部分が、円形孔51及び長孔52に挿入されている。共振器ベース26は、光共振器支持部材27A、27Bの段差部分、及び光共振器支持部材27C、27Dの上端面によって、荷重が加わる方向に支持されている。
【0025】
共振器ベース26のうち円形孔51の周囲の部分は、光共振器支持部材27Aに対して水平面内の位置が拘束されている。長孔52に挿入された光共振器支持部材27Bは、共振器ベース26に対して光軸20Aに平行な一次元方向に移動可能である。光共振器支持部材27C、27Dは、共振器ベース26に対して水平面内の二方向に移動可能である。すなわち、共振器ベース26は、チェンバ15に対して1か所において水平方向の位置が拘束され、他の3か所においては水平方向の位置が拘束されていない。
【0026】
熱遮蔽部材30は、共振器ベース26から脱落しないように、熱遮蔽部材30を貫通する4本のボルト31で共振器ベース26に支持されている。4本のボルト31のうち2本のボルト31が通過する熱遮蔽部材30の孔は長孔32とされており、熱遮蔽部材30は共振器ベース26に対して光軸20Aの方向に伸縮可能である。
【0027】
次に、上記実施例の優れた効果について説明する。
熱遮蔽部材30が配置されていない構成では、放電電極21及び電極ボックス22で発生した熱が共振器ベース26まで伝わり、共振器ベース26の第1表面26Aの温度が第2表面26Bの温度より高くなる。共振器ベース26の厚さ方向に温度差が発生すると、共振器ベース26の第1表面26Aと第2表面26Bとで熱膨張量が異なり、共振器ベース26に反り変形が発生してしまう。共振器ベース26に反り変形が発生すると、一対の共振器ミラー25の平行度が低下する。すなわち、一対の共振器ミラー25の光軸がずれる。一対の共振器ミラー25の光軸がずれると、レーザ出力が低下してしまう。共振器ベース26の反り変形を低減させるためには、共振器ベース26を分厚くして剛性を高めなければならない。または、共振器ベース26に、高価な低熱膨張部材を用いなければならない。
【0028】
これに対して上記実施例では、熱遮蔽部材30が、放電電極21及び電極ボックス22から共振器ベース26の第1表面26Aへの、レーザ媒質ガスを介した熱の伝達を抑制する。熱遮蔽部材30には、例えばPTFE等の熱伝導率の小さな材料が用いられる。熱遮蔽部材30の上面が加熱されて温度が上昇しても、下面の温度上昇は抑制される。その結果、熱遮蔽部材30の下面に対向する共振器ベース26の第1表面26Aの温度上昇も抑制される。このため、共振器ベース26の第1表面26Aと第2表面26Bとの間で温度差が生じにくくなり、温度差に起因する反り変形も生じにくくなる。したがって、共振器ベース26を薄くすることが可能になり、装置の大型化を抑制することができる。さらに、共振器ベース26に高特性の低熱膨張部材を用いる必要がなくなるため、装置のコストダウンを図ることが可能になる。共振器ベース26の第1表面26Aと第2表面26Bとの間で温度差が生じにくくなるという十分な効果を得るために、熱遮蔽部材30として、共振器ベース26の熱伝導率より小さな熱伝導率を持つ材料を用いることが好ましい。
【0029】
さらに、熱遮蔽部材30は共振器ベース26に対して光軸20A(図2)の方向に伸縮可能であるため、熱遮蔽部材30自体が熱膨張しても、共振器ベース26に変形は生じない。
【0030】
次に、上記実施例の変型例について説明する。
上記実施例では、熱遮蔽部材30(図2図3)に、PTFE等の熱伝導率の小さな材料を用いたが、その他の断熱材料を用いてもよい。また、放電電極21及び電極ボックス22から共振器ベース26への放射熱を遮蔽する遮熱部材を用いてもよい。上記実施例では、熱遮蔽部材30が共振器ベース26の第1表面26Aに載せられているが、放電電極21と共振器ベース26との間の空間に、熱遮蔽部材30を支持する構成としてもよい。
【0031】
上記実施例では、一対の共振器ミラー25で光共振器20を構成しているが、1枚以上のミラーを追加して折返し光共振器を構成してもよい。この場合には、光共振器を構成する一対の共振器ミラー25と、光共振器に含まれる他のミラーとを、共振器ベース26に支持する構成とするとよい。この構成においても、熱遮蔽部材30を配置することにより、一対の共振器ミラー25及び他のミラーを含めた光学部品の光軸のずれを抑制することができる。
【0032】
次に、図5を参照して他の実施例によるレーザ発振器について説明する。以下、図1図4Cに示した実施例によるレーザ発振器と共通の構成については説明を省略する。
【0033】
図5は、本実施例によるレーザ発振器の光軸20Aを含む断面図である。本実施例においては、熱遮蔽部材30(図2図3)に代えて、共振器ベース26の内部に冷却流路60が設けられている。チェンバ15の壁面に隔壁継手62、63が取り付けられている。冷却水供給回収装置61から隔壁継手62、63を介してチェンバ15内に、それぞれ管路64、65が導入されている。管路64、65は、それぞれ継手66、67を介して共振器ベース26内の冷却流路60に接続されている。冷却水供給回収装置61は、一方の管路64を通して冷却流路60に冷却水を供給し、他方の管路65を通して冷却流路60から冷却水を回収する。
【0034】
冷却流路60は、第2表面26Bより第1表面26Aに近い位置に設けられている。すなわち、厚さ方向に関して中央よりも放電電極21側に配置されている。
【0035】
次に、図5に示した実施例の優れた効果について説明する。
本実施例においては、共振器ベース26が、冷却流路60を流れる冷却水によって冷却される。冷却流路60が、第1表面26A側に配置されているため、第1表面26Aが第2表面26Bよりも優先的に冷却される。相対的に高温になりやすい第1表面26Aが優先的に冷却されるため、共振器ベース26の上下面の温度差を軽減させることができる。このため、図1図4Cに示した実施例と同様に、共振器ベース26に、温度差に起因する反り変形が生じにくくなるという優れた効果が得られる。
【0036】
次に、本実施例の変型例について説明する。
本実施例では、冷却流路60を共振器ベース26の内部に設けているが、第1表面26Aの上に設けてもよい。本実施例では、冷却流路60に冷却水を流しているが、その他の冷却用流体を流してもよい。例えば、冷却流路60に流す流体としてガスを用いてもよい。
【0037】
次に、図6を参照してさらに他の実施例について説明する。以下、図1図4Cに示した実施例によるレーザ発振器と共通の構成については説明を省略する。
【0038】
図6は、本実施例によるレーザ発振器の光軸20Aに垂直な断面図である。本実施例では、熱遮蔽部材30(図2図3)に代えて、ガス循環機構70が配置されている。ガス循環機構70は、共振器ベース26の第1表面26Aに接する空間と、第2表面26Bに接する空間との間でレーザ媒質ガスを循環させる。ガス循環機構70は、例えば送風ファンを含む。
【0039】
ガス循環機構70は、第1表面26Aに接する空間のレーザ媒質ガスを、光軸20A(図2)に対して交差する方向に流す。第1表面26Aに沿って流れたレーザ媒質ガスは、仕切り板40の手前で折り返され、第2表面26Bに接する空間に流入する。第2表面26Bに沿って流れたレーザ媒質ガスは、反対側の仕切り板40の手前で折り返され、第1表面26Aに接する空間に戻る。
【0040】
次に、図6に示した実施例の優れた効果について説明する。本実施例では、第1表面26Aに接する空間と、第2表面26Bに接する空間との間で循環するレーザ媒質ガスを介して、第1表面26Aと第2表面26Bとの間で熱の伝達が行われる。その結果、第1表面26Aと第2表面26Bとの間の温度差が低減される。このため、図1図4Cに示した実施例と同様に、共振器ベース26に、温度差に起因する反り変形が生じにくくなるという優れた効果が得られる。
【0041】
上述の3つの実施例のいずれにおいても、レーザ発振器は、共振器ベース26の第1表面26Aと第2表面26Bとの温度差を低減させる温度差低減構造を有している。図1図4Cに示した実施例では、温度差低減構造が熱遮蔽部材30(図2図3)を含む。図5に示した実施例では、温度差低減構造が冷却流路60(図5)等を含む。図6に示した実施例では、温度差低減構造がガス循環機構70(図6)を含む。温度差低減構造が、熱遮蔽部材30(図2図3)、冷却流路60(図5)、及びガス循環機構70(図6)の複数を含むようにしてもよい。さらに、温度差低減構造としてその他の構造を採用してもよい。
【0042】
上述の各実施例は例示であり、異なる実施例で示した構成の部分的な置換または組み合わせが可能であることは言うまでもない。複数の実施例の同様の構成による同様の作用効果については実施例ごとには逐次言及しない。さらに、本発明は上述の実施例に制限されるものではない。例えば、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。
【符号の説明】
【0043】
10 レーザ装置
11 架台
12 レーザ発振器
15 チェンバ
16 光学室
17 ブロワ室
18 上下仕切り板
18A、18B 開口
19 底板
20 光共振器
20A 光軸
21 放電電極
21A 放電電極を構成する一対の導電部材
22 電極ボックス
23 電極支持部材
24 放電領域
25 光共振器ミラー
26 共振器ベース
26A 第1表面
26B 第2表面
27、27A、27B、27C、27D 光共振器支持部材
28 光透過窓
29 ブロワ
30 熱遮蔽部材
31 ボルト
32 長孔
35 チェンバの支持箇所
40 仕切り板
41 第1ガス流路
42 第2ガス流路
43 熱交換器
51 円形孔
52 長孔
60 冷却流路
61 冷却水供給回収装置
62、63 隔壁継手
64、65 管路
66、67 継手
70 ガス循環機構
80 加工装置
81 ビーム整形光学系
82 ステージ
90 加工対象物
100 共通ベース

図1
図2
図3
図4
図5
図6