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  • 特許-グミ用コーティング製剤およびグミ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】グミ用コーティング製剤およびグミ
(51)【国際特許分類】
   A23G 3/34 20060101AFI20241016BHJP
   A23G 3/54 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
A23G3/34 101
A23G3/54
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020127398
(22)【出願日】2020-07-28
(65)【公開番号】P2022024677
(43)【公開日】2022-02-09
【審査請求日】2023-06-14
(73)【特許権者】
【識別番号】506009453
【氏名又は名称】オルガノフードテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柳澤 勝
【審査官】水野 浩之
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-094114(JP,A)
【文献】特開2020-103217(JP,A)
【文献】米国特許第02238149(US,A)
【文献】特開昭57-155955(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-0881974(KR,B1)
【文献】特公昭50-015742(JP,B1)
【文献】特開2000-078952(JP,A)
【文献】米国特許第4288460(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23G
A23L
Google
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クエン酸またはその塩の表面に、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、またはリン酸三カルシウムから選択される少なくとも1つであるコーティング材が付着されているグミ用コーティング製剤であって、
前記グミ用コーティング製剤の体積平均粒径は、100μm~1000μmの範囲であることを特徴とするグミ用コーティング製剤。
【請求項2】
請求項1に記載のグミ用コーティング製剤であって、
前記クエン酸またはその塩の体積平均粒径は、100μm~1000μmの範囲であることを特徴とするグミ用コーティング製剤。
【請求項3】
請求項1または2に記載のグミ用コーティング製剤であって、
前記クエン酸またはその塩と前記コーティング材の配合比率は、質量比で、クエン酸またはその塩:コーティング材=90:10~97:3の範囲であることを特徴とするグミ用コーティング製剤。
【請求項4】
請求項1~のいずれか1項に記載のグミ用コーティング製剤によってコーティングされていることを特徴とするグミ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グミ用のコーティング製剤、およびそのコーティング製剤を使用したグミに関する。
【背景技術】
【0002】
グミは、弾力があって噛み応えのある食感を有する菓子として幅広く食されている。グミは、ゲル化剤としてゼラチンの他に、砂糖、香料、その他添加物を含む。グミに酸味を付与する目的でグミの表面にクエン酸を付着させる場合がある。
【0003】
一方、クエン酸は吸湿しやすい性質があり、保管時に吸湿と乾燥を繰り返し、固結という、結晶同士が付着する現象が生じることがある。クエン酸の固結を抑制する技術としては、油脂でクエン酸の表面をコーティングしたり、クエン酸に固結防止剤等を添加するという方法がある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
油脂でクエン酸の表面をコーティングする方法は、吸湿は抑制することができるが、口腔内で溶解しにくいため、酸味を感じにくくなる。固結防止剤を添加する方法は、ある程度の効果は得られるが、吸湿を十分に完全に抑制することができない。
【0005】
また、クエン酸の吸湿性を抑制するために、クエン酸の表面をクエン酸カルシウム等の難溶性の塩でコーティングしたものや、炭酸カルシウムでコーティングしたものも知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2004-135515号公報
【文献】特許第2640108号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
クエン酸カルシウム等の難溶性の塩でコーティングしたクエン酸をグミに付着させて使用する場合、コーティングが不十分となり、クエン酸を粉で保管した際の固結は抑制することができるが、グミからの水分移行による吸湿を抑制することができない。
【0008】
炭酸カルシウムでコーティングしたクエン酸により、酸味を残しつつグミからの水分移行による吸湿をある程度抑制することはできるが、炭酸カルシウムとクエン酸との反応により、発泡感が残ってしまうため、最終製品で発泡感が不要となるような製品には使用することができない。
【0009】
本発明の目的は、発泡性を有さず、吸湿を抑制することができるグミ用のコーティング製剤、およびそのコーティング製剤を使用したグミを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、クエン酸またはその塩の表面に、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、またはリン酸三カルシウムから選択される少なくとも1つであるコーティング材が付着されているグミ用コーティング製剤であって、前記グミ用コーティング製剤の体積平均粒径は、100μm~1000μmの範囲である、グミ用コーティング製剤である。
【0012】
前記グミ用コーティング製剤において、前記クエン酸またはその塩の体積平均粒径は、100μm~1000μmの範囲であることが好ましい。
【0013】
前記グミ用コーティング製剤において、前記クエン酸またはその塩と前記コーティング材の配合比率は、質量比で、クエン酸またはその塩:コーティング材=90:10~97:3の範囲であることが好ましい。
【0014】
また、本発明は、前記グミ用コーティング製剤によってコーティングされている、グミである。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、発泡性を有さず、吸湿を抑制することができるグミ用のコーティング製剤、およびそのコーティング製剤を使用したグミを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】参考例における、グミにクエン酸、クエン酸カルシウム、フマル酸をそれぞれ(a)付着させた直後の様子、(b)付着させて2時間後の様子を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施の形態について以下説明する。本実施形態は本発明を実施する一例であって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
【0018】
本発明の実施形態に係るグミ用コーティング製剤は、クエン酸またはその塩の表面に、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、またはリン酸三カルシウムから選択される少なくとも1つであるコーティング材が付着されている製剤である。
【0019】
本発明者らは、クエン酸またはその塩の表面に、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、またはリン酸三カルシウムから選択される少なくとも1つであるコーティング材を付着させることによって、発泡性を有さず、吸湿を抑制することができることを見出した。クエン酸カルシウムでコーティングしたものよりもグミからの水分移行による吸湿を抑制することができ、炭酸カルシウムでコーティングしたもののような発泡性を有さないグミ用コーティング製剤の開発に至った。
【0020】
クエン酸は、C(OH)(CHCOOH)COOHで表される有機酸である。クエン酸は、グミに主に酸味を付与する目的で用いられる。
【0021】
クエン酸の塩としては、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム等が挙げられる。
【0022】
クエン酸またはその塩のうち、酸味の質等の点から、クエン酸が好ましい。
【0023】
コーティング材としては、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、またはリン酸三カルシウムが用いられる。コーティング材は、1種単独で用いてもよい、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
グミ用コーティング製剤の体積平均粒径は、100μm~1000μmの範囲であることが好ましく、200μm~300μmの範囲であることがより好ましい。得られるコーティング物であるグミ用コーティング製剤の粒径が100μm未満であると、コーティングが難しくなる場合があり、1000μmを超えると、使用上使い勝手が悪い場合がある。
【0025】
クエン酸またはその塩の体積平均粒径は、100μm~1000μmの範囲であることが好ましく、200μm~710μmの範囲であることがより好ましい。コーティングの核となるクエン酸またはその塩の粒径が100μm未満であると、コーティング材のコーティングが難しくなる場合があり、1000μmを超えると、使用上使い勝手が悪い場合がある。
【0026】
クエン酸またはその塩とコーティング材の配合比率は、質量比で、クエン酸またはその塩:コーティング材=90:10~97:3の範囲であることが好ましく、90:10~95:5の範囲であることがより好ましく、92:8~95:5の範囲であることがさらに好ましい。コーティング材の量が少なすぎると、クエン酸またはその塩の表面を十分に覆うことができず、吸湿を抑制できなくなる場合があり、多すぎると、酸味が弱くなりすぎたり、クエン酸またはその塩の表面に付着できなくなる場合がある。
【0027】
本実施形態に係るグミ用コーティング製剤は、例えば、クエン酸またはその塩に対して、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、またはリン酸三カルシウムから選択される少なくとも1つであるコーティング材を加えた後、水を加え、常温下で、所定の時間(例えば、10~20分間)、撹拌コーティングを行って粗製剤を得て、必要に応じて粗大粒を篩等によって除去して、得ることができる。
【0028】
本実施形態に係るグミは、原料グミに直接まぶす等の方法で上記グミ用コーティング製剤を付着させてコーティングすることによって得ることができる。
【0029】
原料グミは、例えば、ゲル化剤としてゼラチンの他に、砂糖、香料、その他添加物を含む。
【0030】
原料グミへのグミ用コーティング製剤の使用量は、求められる酸味等に基づき決めればよく、特に制限はないが、例えば、原料グミの質量に対して、0.5~5%の範囲とすればよい。
【実施例
【0031】
以下、実施例および比較例を挙げ、本発明をより具体的に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0032】
<参考例>
[吸湿状態の確認]
クエン酸、クエン酸カルシウム、フマル酸を、グミ表面を覆うようにそれぞれグミに付着させ、常温(23℃)下で放置した。図1(a)に付着直後の様子、図1(b)に付着させて2時間後の様子を示す。このように、クエン酸だけをグミに付着させると、グミからの水分移行による吸湿が生じた。
【0033】
<実施例1~3、比較例1~8>
[コーティング材の選定]
クエン酸(体積平均粒径:250μm)95質量部に対して、表1に示すコーティング材(体積平均粒径:10μm)5質量部をそれぞれ加えた後、水適量(約0.5質量部)を加え、室温(23℃)で3分間撹拌コーティングを行って粗製剤を得た。撹拌コーティングには、HEIDON スリーワンモーターを使用した。得られた粗製剤について粗大粒を篩(孔径710μm)で除去して、グミ用コーティング製剤を得た。得られたグミ用コーティング製剤を、表面全体を覆うようにしてグミに付着させた。コーティングされたクエン酸を付着させたグミを、温度35℃、湿度40~50%に調節したインキュベーター内で1時間保管し、コーティングの吸湿性に対する効果を下記の基準で目視により確認した。また、得られたグミ用コーティング製剤の体積平均粒径を測定した。結果を表1に示す。
【0034】
なお、体積平均粒径は、レーザー回折型粒度分布測定装置(マルバーン社製、マスターサイザー2000型)を用いて、分散圧4.0barの条件で測定した。
【0035】
(吸湿性評価基準)
◎:付着直後の状態を維持
○:わずかに水分移行があるが、潮解にまでは至っていない。
△:部分的に潮解もある
×:完全に潮解している。
【0036】
【表1】
【0037】
このように、炭酸カルシウムでなく、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、リン酸三カルシウムをクエン酸にコーティングすることによって、発泡性を持たせずにクエン酸の吸湿性を効果的に抑制することができた。また、クエン酸カルシウムのコーティング品よりも優位に吸湿を抑制することができた。
【0038】
<実施例4>
[コーティング品の体積平均粒径の影響]
クエン酸95質量部に対して、コーティング材として、酸化カルシウム(体積平均粒径:5μm)5質量部を用いて、クエン酸の体積平均粒径を表2に示すように変えて、実施例1と同様にして、グミ用コーティング製剤を得て、吸湿性の評価を行った。また、得られたグミ用コーティング製剤の体積平均粒径を測定した。結果を表2に示す。
【0039】
【表2】
【0040】
参考例4-1と実施例4-2~実施例4-6、参考例4-7との比較より、グミ用コーティング製剤の体積平均粒径は100μm~1000μmの範囲が好ましく、クエン酸の体積平均粒径は100μm~1000μmの範囲が好ましいことがわかった。
【0041】
<実施例5>
[クエン酸とコーティング材の配合比の影響]
クエン酸(体積平均粒径:250μm)に対して、コーティング材として酸化カルシウム(体積平均粒径:5μm)を用いて、配合比を表3に示すように変えて、実施例1と同様にして、グミ用コーティング製剤を得て、吸湿性の評価を行った。また、5名の評価者により、官能評価にて味の評価を行った。結果を表3に示す。
【0042】
【表3】
【0043】
この結果より、クエン酸またはその塩:コーティング材=90:10~97:3の範囲(質量比)が好ましいことがわかった。
【0044】
以上のように、実施例のグミ用コーティング製剤によって、発泡性を有さず、グミの吸湿を抑制することができた。
図1