(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】5員環環状エーテルとラクトン類の共重合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08G 63/87 20060101AFI20241016BHJP
C08G 63/58 20060101ALI20241016BHJP
C08G 63/08 20060101ALI20241016BHJP
C08G 18/42 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
C08G63/87
C08G63/58
C08G63/08
C08G18/42 069
(21)【出願番号】P 2020139410
(22)【出願日】2020-08-20
【審査請求日】2023-07-20
(31)【優先権主張番号】P 2019176094
(32)【優先日】2019-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005315
【氏名又は名称】保土谷化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】松本 明洋
(72)【発明者】
【氏名】青木 良和
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 剛
【審査官】内田 靖恵
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-200120(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G63
C08G18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
5員環環状エーテル(A)とラクトン類(B)の共重合体の製造方法であり、10℃~50℃の温度範囲で共重合反応を行い、ヘテロポリ酸を触媒とする、水酸基、アミノ基、
あるいはメルカプト基を含む活性水素原子含有化合物を反応開始剤(C)として
任意選択的に使用する、且つ3ないし4員環環状エーテル(D)を併用することを特徴とする共重合体の製造方法
であって、
前記触媒の添加量が、5員環環状エーテル(A)とラクトン類(B)の合計モル数に対して0.01~2モル%である、共重合体の製造方法。
【請求項2】
前記5員環環状エーテル(A)がテトラヒドロフラン類であり、その添加量が5員環環状エーテル(A)とラクトン類(B)の合計モル数に対して1~90モル%である請求項1記載の共重合体の製造方法。
【請求項3】
ラクトン類(B)は置換基を有していてもよい、β-プロピオラクトン、γ-ブチロラクトン、δ-バレロラクトン、またはε-カプロラクトンであり、その添加量が5員環環状エーテル(A)とラクトン類(B)の合計モル数に対して1~90モル%である請求項1記載の共重合体の製造方法。
【請求項4】
前記反応開始剤(C)は1以上の水酸基を有するヒドロキシ化合物であり、その添加量が5員環環状エーテル(A)とラクトン類(B)の合計モル数に対して0~20モル%である請求項1記載の共重合体の製造方法。
【請求項5】
前記3ないし4員環環状エーテル(D)がエポキシド類、
あるいはオキセタン類であり、その添加量が5員環環状エーテル(A)とラクトン類(B)の合計モル数に対して0.1~50モル%である請求項1記載の共重合体の製造方法。
【請求項6】
前記触媒は無処理のヘテロポリ
酸である請求項1記載の共重合体の製造方法。
【請求項7】
5員環環状エーテル(A)とラクトン類(B)の共重合体の製造方法であり
、5員環環状エーテル(A)とラクトン類(B)の合計モル数に対して
、0~5モル%である1以上の水酸基を有するヒドロキシ化合物を反応開始剤(C)とする、40~80モル%であるテトラヒドロフラン類とする5員環環状エーテル(A)、20~60モル%であるε-カプロラクトンとするラクトン類(B)および5~20モル%である3ないし4員環環状エーテル(D)と併用することを特徴とする請求項1記載の共重合体の製造方法。
【請求項8】
請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の製造方法により得られた共重合物とポリイソシアネート化合物を反応させてポリウレタンを製造するポリウレタンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、5員環環状エーテルとラクトン類の共重合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
環状エーテル類は、例えばテトラヒドロフラン(THF)は、プロトン酸、ルイス酸、イオンコンプレックスなどカチオン系触媒で重合することが従来から知られている。またラクトン類は、例えばβ-プロピオラクトンやε-カプロラクトンなどはカチオン触媒でもアニオン触媒でも容易に重合することが知られている。このようにして得られるポリテトラメチレンエーテルグリコールやポリカプロラクトングリコールなどの重合体は、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂のソフトセグメントとして有用な素材である。
【0003】
ポリテトラメチレンエーテルグリコールは、ポリエーテルを主鎖とし、一方ポリカプロラクトングリコールなどラクトン類の開環重合体はポリエステルを主鎖とするため、耐加水分解性、耐熱性、耐光性などの点において、それぞれ相反する長所、短所を有する。これら相互の欠点を補完する解決策として、THFとラクトン類との共重合によるポリエーテルポリエステルグリコールが考えられる。しかしTHFとラクトン類とは重合性に大きな差があり、共重合しにくい。THFとε-カプロラクトンの共重合方法としてルイス酸を触媒とする方法(非特許文献1)が知られているが、得られる共重合体はブロック性が高く、つまり、THFとε-カプロラクトンがランダムに重合せず、ポリテトラヒドロフランとポリε-カプロラクトンのブロック共重合体あるいはポリテトラメチレンエーテルとポリカプロラクトングリコールの混合物のようなものになってしまう。
【0004】
これらの問題を解決するため、触媒にルイス酸として三フッ化ホウ素(BF3)系、発煙硫酸系、フルオロ硫酸などを使用し、3ないし4員環状エーテルを併用することを特徴とするTHFとε-カプロラクトンの共重合法が報告されている(例えば、特許文献1)。
【0005】
また、テトラブチルチタネートのようなアニオン開環重合触媒を使用したことや、また100℃~200℃の高温で反応を行う手法によりラクトンと環状エーテルとの共重合法が報告されている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開昭63-178131号公報
【文献】特開2019-23256号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】「Polymer Journal」、(日本)、1971年、第3巻、第3号、p.389-393
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
3ないし4員環状エーテルを併用するのみでは、共重合物の分子量を制御できないため、目標とする分子量の共重合体を得る事が出来ない。さらに、三フッ化ホウ素系、発煙硫酸系、フルオロ硫酸等の触媒系は、その後の処理でのフッ化処理や多量の廃酸処理を必要などの問題があった。また、高温化によるアニオン重合は、エステル交換反応等の副反応が併発して低重合体も多量に含まれるなどのことから、従来の製造方法には共重合物の分子量を制御できない、多量の廃酸処理、及び高温での重合は副反応による不純物の問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記実情に鑑み、鋭意検討を重ねた結果、ヘテロポリ酸触媒の使用量を微量まで減少する条件の下で、3ないし4員環環状エーテルを開始剤として併用することで重合を行うプロセスによって5員環環状エーテルとラクトン類が共重合することができる製造方法を見出したから、本発明に至った。
【0010】
すなわち、本発明の共重合体の製造方法は、
[1]5員環環状エーテル(A)とラクトン類(B)の共重合体の製造方法であり、10℃~50℃の温度範囲で共重合反応を行い、ルイス酸及び/又は固体酸(好ましくはヘテロポリ酸)を触媒とする、水酸基、アミノ基、メルカプト基を含む活性水素原子含有化合物を反応開始剤(C)として任意選択的に使用する、且つ3ないし4員環環状エーテル(D)を併用することを特徴とする共重合体の製造方法。
【0011】
[2]前記5員環環状エーテル(A)がテトラヒドロフラン類であり、その添加量(配合割合)が5員環環状エーテル(A)とラクトン類(B)の合計モル数に対して1~90モル%である[1]記載の共重合体の製造方法。
【0012】
[3]ラクトン類(B)は置換基を有していてもよい、β-プロピオラクトン、γ-ブチロラクトン、δ-バレロラクトン、またはε-カプロラクトンであり、その添加量(配合割合)が5員環環状エーテル(A)とラクトン類(B)の合計モル数に対して1~90モル%である[1]記載の共重合体の製造方法。
【0013】
[4]前記反応開始剤(C)は1以上の水酸基を有するヒドロキシ化合物であり、その添加量が5員環環状エーテル(A)とラクトン類(B)の合計モル数に対して0~20モル%である[1]記載の共重合体の製造方法。
【0014】
[5]前記3ないし4員環環状エーテル(D)がエポキシド類、またはオキセタン類であり、その添加量が5員環環状エーテル(A)とラクトン類(B)の合計モル数に対して0.1~50モル%である[1]記載の共重合体の製造方法。
【0015】
[6]前記触媒は無処理のヘテロポリ酸であり、その添加量が、5員環環状エーテル(A)とラクトン類(B)の合計モル数に対して0.01~2モル%である[1]記載の共重合体の製造方法。
【0016】
[7]5員環環状エーテル(A)とラクトン類(B)の共重合体の製造方法であり、10℃~50℃の温度範囲で共重合反応を行い、5員環環状エーテル(A)とラクトン類(B)の合計モル数に対して、0.01~2モル%であるヘテロポリ酸を触媒とする、0~5モル%である1以上の水酸基を有するヒドロキシ化合物を反応開始剤(C)とする、40~80モル%であるテトラヒドロフラン類とする5員環環状エーテル(A)、20~60モル%であるε-カプロラクトンとするラクトン類(B)および5~20モル%である3ないし4員環環状エーテル(D)を併用することを特徴とする[1]記載の共重合体の製造方法。
【0017】
[8][1]から[7]のいずれか1項に記載の製造方法により得られた共重合物(共重合体)とポリイソシアネート化合物を反応させてポリウレタンを製造するポリウレタンの製造方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明における5員環環状エーテルとラクトン類の共重合体の製造方法は、ヘテロポリ酸を無処理のまま、且つ微量使用する事により、ヘテロポリ酸はイオン交換樹脂にて簡単に吸着除去することができ、その後は未反応の環状エーテルを留去するだけで、5員環環状エーテルとラクトン類との共重合物が得られる。本発明における5員環環状エーテルとラクトン類の共重合体の製造方法は、加水分解操作や洗浄操作等の工程もないことから、発生する廃酸や廃水の処理も必要としない極めて簡単な製造方法である。
【0019】
また、本発明における5員環環状エーテルとラクトン類の共重合体の製造方法は、開始剤の種類、使用量、目的とする重合体の品質、分子量等から最適重合反応温度を決めることにより、重合反応は不活性有機溶媒下においても実施できる。しかも50℃以下の温度で得られる共重合体は副反応に基づく品質劣化、たとえば着色がない。
【0020】
また、本発明における5員環環状エーテルとラクトン類の共重合体の製造方法は、触媒の使用量、及び開始剤の仕込み量を変化させることで分子量制御が容易に制御可能となったので、共重合物の分子量を制御することが実現できた。
【0021】
従って、本発明における5員環環状エーテルとラクトン類の共重合体の製造方法は工業的にも非常に簡単で無駄がなく、高品質のポリエーテルを得る事ができる優れた方法である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に好ましい実施形態を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。
【0023】
具体的なラクトン類(B)の例としてはβ-プロピオラクトン、β-ブチロラクトン、β-バレロラクトン、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、γ-カプリロラクトン、δ-バレロラクトン、β-メチル-δ-バレロラクトン、δ-ステアロラクトン、ε-カプロラクトン、2-メチル-ε-カプロラクトン、4-メチル-ε-カプロラクトン、ε-カプリロラクトン、ε-パルミトラクトンなどである。
【0024】
3~4員環環状エーテル(D)としてはエチレンオキシド、プロピレンオキシド、エピクロルヒドリンなどのエポキシド類、3-メチルオキセタン、3,3-ビス(クロロメチル)-オキセタンなどのオキセタン類を挙げることができる。
【0025】
3~4員環環状エーテル(D)を使用するにあたり、それらの添加量が5員環環状エーテル(A)とラクトン類(B)の合計モル数に対して好ましくは0.1~50モル%であり、特に好ましくは0.1~10モル%である。3~4員環環状エーテル(D)を未使用の場合は、共重合化が進行せず環状エーテルポリマーとラクトン類ポリマーの混合物のようなものになってしまう。3~4員環環状エーテル(D)が50モル%を超える場合、重合物の組成比率が大きく変化するため物性の低下を起こし、また、未反応物が多量に発生するため、その除去にコストがかかるため、好ましくない。
【0026】
5員環環状エーテル(A)としては、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、3-メチルテトラヒドロフランなどのテトラヒドロフラン類、ジオキソランを挙げることができる。
【0027】
5員環状エーテル(A)を使用するにあたり、それらの添加量が5員環環状エーテル(A)とラクトン類(B)の合計モル数に対して好ましくは1~90モル%であり、特に好ましくは10~80モル%であることを特徴とする5員環環状エーテル(A)とラクトン類(B)の共重合方法の製造方法である。
【0028】
活性水素原子含有化合物とは水酸基、アミノ基、メルカプト基を含むものであり、反応開始剤(C)として使用される。水酸基を含む化合物の例としてはメタノール、エタノール、プロパノール、n-ブタノール、第2-、第3-ブタノール、アリルアルコール、2-ヒドロキシエチルメタクリレートなどの脂肪族アルコール、ベンジルアルコールやフェニルメチルカルビノールのような芳香族アルコール、シクロヘキサノールやトリメチルヘキサノールのような脂環式アルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール、またグリセリン、トリメチロールプロパン、シクロヘキサンジオール、キシリレングリコールなどのポリオール類であり、その他各種フェノール類、有機カルボン酸類、アミノ基を含む化合物の例としてはメチル-、エチル-、n-プロピル-、イソプロピル-、n-ブチル-、第2-、第3-ブチルのような第一脂肪族アミン及びこれらに対応するジアルキルアミンのような第2脂肪族アミン、アニリン、トリイジン、ジフエニルアミン、シクロヘキシルアミン、ピペリジンのような芳香族、脂環族及び複素環式アミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、o-、m-、p-フェニレンジアミン、1,4-シクロヘキサンジアミン、ピペラジン、ジエチレントリアミン、4,4’,4”-メチリダイントリアニリンなどの脂肪族、芳香族、脂環族及び複素環式ポリアミンである。メルカプト基含有化合物の例としてはメチル-、エチル-、プロピル-、ブチル-のような脂肪族メルカプタン、ベンジルメルカプタンのような芳香族メルカプタン、エチレンジチオグリコール、キシリレンジメルカプタン、メルカプトエタノールなどである。
【0029】
開始剤(C)に多価アルコールを使用にあたり、その使用量が5員環環状エーテル(A)とラクトン類(B)の合計モル数に対し好ましくは0~20モル%(好ましくは0モル%を除く)であり、特に好ましくは0.1~1.0モルであることを特徴とする5員環環状エーテル(A)とラクトン類(B)の共重合方法の製造方法である。開始剤(C)の使用量が20モル%を超える場合、生成物の分子量が小さく、十分な高分子体が生成しないことがある。開始剤(C)を未使用の場合は、分子量の制御ができず、目的とする分子量のものが得られないことがある。
【0030】
本発明に使用する固体酸としては二酸化ケイ素、二酸化チタン、二酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、ヘテロポリ酸(例、リンタングステン酸、ケイタングステン酸、リンモリブデン酸、ケイモリブデン酸)などが挙げられる。ルイス酸としては三フッ化ホウ素、五弗化リン、五弗化アンチモン、五塩化アンチモン、塩化アルミニウム、四塩化チタン、四塩化スズなどの金属または非金属ハロゲン化物が挙げられる。さらにこれらの触媒使用時の形態としては、三フッ化ホウ素、五塩化アンチモンなどとジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどの鎖状及び環状エーテルとの錯体などをあげることができる。
【0031】
本発明に使用するルイス酸及び/又は固体酸触媒の使用量が5員環環状エーテル(A)とラクトン類(B)の合計モル数に対し好ましくは2モル%以下であり、特に好ましくは0.1~1.0モルであることを特徴とする5員環環状エーテル(A)とラクトン類(B)の共重合方法の製造方法である。触媒の使用量が極少量のため、その除去も容易であることを特徴とする。触媒の使用量が2モル%を超える場合、発熱が顕著となり、分子量分布が極端に広がるほかに副反応に基づく品質劣化、たとえば着色が著しいことがある。また、イオン交換樹脂による触媒の除去が困難になるため、水洗浄工程が必要となり、触媒の除去にコストがかかり好ましくないことがある。
【0032】
本発明を実施する上で好ましい重合反応温度は、50℃以下であり、特に好ましくは0℃~40℃であるが、最適温度は開始剤(C)の種類、使用量、目的とする重合体の品質、分子量等によって決められ、通常20℃~40℃である。重合反応は不活性有機溶媒下においても実施できる。比較的低温度における塊状重合では重合の進行と共に結晶化が起こり易くなるのでベンゼン、トルエン、キシレンのような不活性有機溶媒下に実施するのが好ましい。100℃を越える温度では分子量分布が極端に広がるほかに副反応に基づく品質劣化、たとえば着色が著しい。一方重合反応時間は反応速度と関係し、温度、開始剤(C)の種類、使用量等によって変ってくる。一般に2~10時間以上とされる。この重合系においては未反応のラクトンが消失するまで重合を行うほうが重合体の精製操作の簡略化、品質向上のため好ましく、熟成を充分行う必要がある。
【0033】
本発明で得られた5員環環状エーテル(A)とラクトン類(B)の共重合体を使用したポリウレタン樹脂の製造方法は特に限定されず、公知の方法等で製造できる。例えば、ポリオール、鎖延長剤、有機金属触媒中にポリイソシアネート成分を一括して仕込んで反応させてもよいし、ポリオールとポリイソシアネート成分とを反応させてイソシアネート基末端のプレポリマーを得た後、鎖伸長剤を添加して伸長反応を行ってもよい。
【0034】
ポリイソシアネート化合物としては、イソシアネート基を2以上有する、芳香族系、脂環族系、脂肪族系等のポリイソシアネート等が挙げられる。
【0035】
具体例としては、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(MDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)のポリイソシアネート等が挙げられる。これらの中でも、入手および水酸基との反応制御が容易であるという観点から、MDIが特に好ましい。
【0036】
鎖延長剤については、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール等の低分子量二価アルコールが挙げられる。
【0037】
有機金属触媒としては、特に限定するものではないが、具体的には、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジクロライド、ジオクチル錫ジラウレート等の有機スズ触媒や、オクチル酸ニッケル、ナフテン酸ニッケル、オクチル酸コバルト、ナフテン酸コバルト、オクチル酸ビスマス、ナフテン酸ビスマス等が例示される。これらのうち、好ましい化合物としては、有機スズ触媒であり、更に好ましくはジブチルスズジラウレートである。
【0038】
前記有機金属触媒の使用量は、5員環環状エーテル(A)とラクトン類(B)の共重合体を100.0重量部としたとき、通常0.0001~5.0重量部の範囲であり、更に好ましくは0.001~3.0重量部の範囲である。
【0039】
以下、本発明に使用した測定方法について、説明する。
【0040】
[5員環環状エーテルとラクトン共重合体の数平均分子量(Mn)の測定方法]
本発明におけるラクトン重合物の数平均分子量(Mn)、はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、GPCと略記)を用いて例えば以下の条件で測定することができる。
装置 TOSOH HPLC-8320GPC(東ソー株式会社製)
カラム TSKgelG4000H+G2500H(同上)
検出器 RI
溶離液 テトラヒドロフラン
標準物質 ポリテトラメチレンエーテルグリコール
注入量 100μL
流速 1.0mL/min
測定温度 40℃
【0041】
[5員環環状エーテルとラクトン共重合体の色数の測定方法]
本発明における色数はJIS K4101-1993-13法により求めることができる。
【実施例】
【0042】
以下、実施例をもって本発明を説明するが、これらは本発明をなんら制限するものではない。
【0043】
[実施例1]
[THF-ポリカプロラクトン共重合体の合成]
500mL四ツ口セパラブルフラスコにε-カプロラクトン(B)63.3g(0.56モル、5員環環状エーテル(A)とラクトン類(B)の合計モル数に対して50モル%、東京化成工業株式会社製)、THF(A)40.0g(0.56モル、5員環環状エーテル(A)とラクトン類(B)の合計モル数に対して50モル%)、1,4-ブタンジオール(C)1.7g(0.02モル、5員環環状エーテル(A)とラクトン類(B)の合計モル数に対して1.6モル%、キシダ化学株式会社製)、リンタングステン酸(触媒)0.6g(0.0003モル、5員環環状エーテル(A)とラクトン類(B)の合計モル数に対して0.02モル%、日本新金属株式会社製)を仕込み、温度計、窒素シール、撹拌装置を付けた。25℃で15分撹拌後、これにプロピレンオキシド(D)6.4g(0.11モル、5員環環状エーテル(A)とラクトン類(B)の合計モル数に対して10.0モル%、キシダ化学株式会社製)を添加し、25℃で4時間反応した。次にこの反応混合物に洗浄溶媒としてTHF100mL及びイオン交換樹脂IRA-96S50g(オルガノ社製)を加えて2時間撹拌した。この反応混合物を濾過し、濾液からTHFを減圧蒸留にて除き、重合体を得た。各原料の組成比、反応温度/撹拌時間及び得られた重合体の収率、数平均分子量(Mn)、色数の分析結果は表1に掲載した。
【0044】
[実施例2]
[THF-ポリカプロラクトン共重合体の合成]
実施例1のε-カプロラクトンを37.7g(0.33モル)、THFを55.5g(0.77モル)とした以外は実施例1と同条件、同操作によって重合反応を行った。各原料の組成比、反応温度/撹拌時間及び得られた重合体の収率、数平均分子量(Mn)、色数の分析結果を表1に掲載した。
【0045】
[実施例3]
[3-メチル-THF-ポリカプロラクトン共重合体の合成]
実施例1のTHF40.0g(0.56モル)を3-メチル-THF48.2g(0.56モル)とした以外は実施例1と同条件、同操作によって重合反応を行った。各原料の組成比、反応温度/撹拌時間及び得られた重合体の収率、数平均分子量(Mn)、色数の分析結果を表1に掲載した。
【0046】
[実施例4]
[ジオキソラン-ポリカプロラクトン共重合体の合成]
実施例1のTHF40.0g(0.56モル)を1,3-ジオキソラン41.5g(0.56モル、キシダ化学株式会社製)とした以外は実施例1と同条件、同操作によって重合反応を行った。各原料の組成比、反応温度/撹拌時間及び得られた重合体の収率、数平均分子量(Mn)、色数の分析結果を表1に掲載した。
【0047】
[実施例5]
[THF-ポリカプロラクトン共重合体の合成]
実施例1のリンタングステン酸0.6g(0.0003モル)を三フッ化ホウ素テトラヒドロフラン錯体1.5g(0.01モル、シグマアルドリッチジャパン製)とした以外は実施例1と同条件、同操作によって重合反応を行った。各原料の組成比、反応温度/撹拌時間及び得られた重合体の収率、数平均分子量(Mn)、色数の分析結果を表1に掲載した。
【0048】
[実施例6]
[THF-ポリカプロラクトン共重合体の合成]
実施例1の1,4-ブタンジオール1.7g(0.02モル)を2.4g(0.03モル)とした以外は実施例1と同条件、同操作によって重合反応を行った。各原料の組成比、反応温度/撹拌時間及び得られた重合体の収率、数平均分子量(Mn)、色数の分析結果を表1に掲載した。
【0049】
[実施例7]
[THF-ポリカプロラクトン共重合体の合成]
実施例1の1,4-ブタンジオール1.7g(0.02モル)を3.2g(0.04モル)とした以外は実施例1と同条件、同操作によって重合反応を行った。各原料の組成比、反応温度/撹拌時間及び得られた重合体の収率、数平均分子量(Mn)、色数の分析結果を表1に掲載した。
【0050】
[実施例8]
<THF-ポリカプロラクトン共重合体の合成>
実施例1の1,4-ブタンジオール1.7g(0.02モル)を未使用とした以外は実施例1と同条件、同操作によって重合反応を行った。THFの種類、各原料の組成比、反応温度/撹拌時間及び得られた重合体の収率、数平均分子量(Mn)、色数の分析結果を表1に掲載した。
【0051】
[比較例1]
<THF-ポリカプロラクトン共重合体の合成>
実施例1の反応温度を60℃とした以外は実施例1と同条件、同操作によって重合反応を行った。各原料の組成比、反応温度/撹拌時間及び得られた重合体の収率、数平均分子量(Mn)、色数の分析結果を表1に掲載した。
【0052】
[比較例2]
<THF-ポリカプロラクトン共重合体の合成>
実施例1の触媒添加量を2.1モル%とした以外は実施例1と同条件、同操作によって重合反応を行った。得た反応混合物に洗浄溶媒としてTHF100mL及びイオン交換樹脂IRA-96S50g(オルガノ社製)を加えて2時間撹拌し、この反応混合物を濾過した。濾液は濁っておりpHは酸性であり、明らかに触媒の残存を示していた。そのため、濾液にイオン交換水100gを添加し、60℃で1時間撹拌後、1時間静置し水層を分液廃棄した。この操作を3回繰り返した。得られた油層に対して、イオン交換樹脂IRA-96S50g(オルガノ社製)を加えて2時間撹拌した。この反応混合物を濾過した。濾液からTHFを減圧蒸留にて除き、重合体を得た。各原料の組成比、反応温度/撹拌時間及び得られた重合体の収率、数平均分子量(Mn)、色数の分析結果は表1に掲載した。
【0053】
【0054】
表1中に記載する略語は以下に説明する。
CL:ε-カプロラクトン
3MeTHF:3-メチル-テトラヒドロフラン
DOX:1,3-ジオキソラン
PO:プロピレンオキシド
【産業上の利用可能性】
【0055】
実施例及び比較例から明らかなように本発明の製造方法で得られる重合体は、開始剤(C)の仕込み量を変化させることで分子量が容易に制御可能となった。また触媒であるヘテロポリ酸、金属または非金属ハロゲン化物が微量添加でも(5員環環状エーテル(A)とラクトン類(B)の合計モル数に対して1モル%以下)共重合反応は順調に進行できる、更に5員環環状エーテル(A)とラクトン類(B)の合計モル数に対して2モル%以下添加であれば、イオン交換樹脂にて容易に残存触媒である廃酸を完全に除去可能であり、その後は未反応のTHF類を留去するだけで共重合体が得られる。また、反応は常温で行うため、着色や不純物の生成が少ない、満足できる色数の共重合体が得られる。本発明の製造方法は、工業的にも非常に簡単で無駄がなく、高品質のポリエーテルを得る事が出来る優れた製造方法である。