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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】電動圧縮機
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20241016BHJP
   F04B 39/00 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
F04B39/00 106Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020157668
(22)【出願日】2020-09-18
(65)【公開番号】P2022051274
(43)【公開日】2022-03-31
【審査請求日】2023-08-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000001845
【氏名又は名称】サンデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【氏名又は名称】西山 春之
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【弁理士】
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(72)【発明者】
【氏名】伊東 亨
(72)【発明者】
【氏名】下田 真之
【審査官】武内 大志
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-147596(JP,A)
【文献】特開2014-113025(JP,A)
【文献】特開2016-92932(JP,A)
【文献】国際公開第2019/098088(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/131336(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
F04B 39/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のパワースイッチング素子と前記複数のパワースイッチング素子の上方に配置される制御基板とを有するインバータ回路部を含む、電動圧縮機であって、
前記インバータ回路部は、
金属製の薄板材からなり、当該インバータ回路部の配線の一部を構成するバスバーと、
前記バスバーと一体に成形された樹脂材からなり、前記複数のパワースイッチング素子と前記制御基板との間に配置されると共に前記制御基板を下方から支持する板状の支持板と、
を含み、
前記バスバーは、前記支持板内に埋設される埋設部であって、前記支持板の厚み方向と直交する方向に延伸しており、且つ、当該埋設部における前記薄板材の厚み方向が前記支持板の厚み方向に対して直交している前記埋設部を有している、
電動圧縮機。
【請求項2】
前記インバータ回路部は、前記バスバーを複数個有し、
複数の前記バスバーのうちの少なくとも一つのバスバーにおける前記埋設部は、前記支持板の中央部を横切るように前記支持板内を延伸している、
請求項1に記載の電動圧縮機。
【請求項3】
前記インバータ回路部が取り付けられる壁面を有するハウジングを含み、
前記インバータ回路部は、前記支持板の外縁部における互いに離隔した複数の部位に配置されるスリーブであって、前記制御基板を前記ハウジングの前記壁面に固定するためのボルトが挿通される前記スリーブを有し、
前記支持板は、前記外縁部における前記複数の部位のうちの少なくとも一つの部位から当該支持板の中央部まで延在する補強リブであって、当該支持板の厚み方向の一方の面から突出した前記補強リブを有する、
請求項1又は2に記載の電動圧縮機。
【請求項4】
前記複数のパワースイッチング素子は、前記ハウジングの前記壁面のうちの前記バスバーに対応する領域を避けた部分にそれぞれ配置されている、
請求項3に記載の電動圧縮機。
【請求項5】
前記インバータ回路部が取り付けられる壁面を有するハウジングを含み、
前記複数のパワースイッチング素子は、その電源側素子と接地側素子とを対向させ、且つ、その端子部を同一相の一対のパワースイッチング素子毎に対向させた状態で、前記壁面に配置されており、
前記バスバーは、前記一対のパワースイッチング素子の間を接続する配線の中間点と給電先であるモータとの間の配線の一部を構成する、
請求項1又は2に記載の電動圧縮機。
【請求項6】
前記バスバーの前記埋設部は、前記複数のパワースイッチング素子のうちの前記電源側素子と前記複数のパワースイッチング素子のうちの前記接地側素子の間の帯状領域の上方に配置されている、請求項5に記載の電動圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用空調装置などにおいて冷媒の圧縮に用いられ、インバータ回路部を一体に備える電動圧縮機(インバータ一体型電動圧縮機)に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の電動圧縮機としては、例えば、特許文献1に記載された電動圧縮機が知られている。特許文献1に記載された電動圧縮機は、三相交流電力をモータへ給電するためのインバータ回路部を有している。インバータ回路部は、複数のパワースイッチング素子が実装された高放熱基板と、高放熱基板の上方に配置されると共に制御回路が実装された制御基板と、高放熱基板と制御基板との間に配置されるバスバーアセンブリとを有している。バスバーアッセンブリは、インバータ回路部の配線の一部をなす複数のバスバーと、制御基板とバスバーアッセンブリとの間の間隔保持用の複数のダミーバスバーと、バスバー及びダミーバスバーと一体に成形された樹脂材からなる樹脂成形板(以下では、支持板という)とを有している。各バスバーは支持板の外縁部において制御基板側に突出するように設けられており、各ダミーバスバーは支持板の中央部において制御板側に突出するように設けられている。制御基板における各バスバーに対応する部分は切り欠かれており、各バスバーは制御基板によって覆われていない。一方、各ダミーバスバーの上方には、制御基板が位置しており、各ダミーバスバーの端部が制御基板に接続されている。このように、バスバーアッセンブリの各ダミーバスバーが制御基板に接続されることによって、バスバーアッセンブリと制御基板との間の間隔が良好に保たれると共に、インバータ回路部の主な構造体をなす支持板及び制御基板を含む積層体に必要な剛性が確保され得るようになっている。また、各ダミーバスバーは、インバータ回路部の配線の一部としての機能を有しておらず、制御基板とバスバーアッセンブリとの間の間隔保持や補強用の専用部材として用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-172509号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された電動圧縮機では、支持板及び制御基板を含む積層体に必要な剛性を確保するための専用部材(つまり、複数のダミーバスバー)が必要であり、部品点数の増加などを招くこととなり、その工夫が求められ得る。
【0005】
本発明は、このような実状に鑑み、部品点数を増加させることなく、支持板及び制御基板を含む積層体に必要な剛性を確保することが可能な電動圧縮機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面によると、複数のパワースイッチング素子と前記複数のパワースイッチング素子の上方に配置される制御基板とを有するインバータ回路部を含む、電動圧縮機が提供される。この電動圧縮機において、前記インバータ回路部は、バスバーと板状の支持板とを含む。前記バスバーは、金属製の薄板材からなり、前記インバータ回路部の配線の一部を構成する。前記支持板は、前記バスバーと一体に成形された樹脂材からなり、前記複数のパワースイッチング素子と前記制御基板との間に配置されると共に前記制御基板を下方から支持する。そして、前記バスバーは、前記支持板内に埋設される埋設部を有している。この埋設部は、前記支持板の厚み方向と直交する方向に延伸しており、且つ、当該埋設部における前記薄板材の厚み方向が前記支持板の厚み方向に対して直交している。
【発明の効果】
【0007】
前記電動圧縮機では、金属製の薄板材からなるバスバーにおける前記埋設部が、前記支持板の厚み方向と直交する方向に延伸し、且つ、当該埋設部における前記薄板材の厚み方向が前記支持板の厚み方向に対して直交している。このような姿勢で、バスバーの埋設部が支持板内に埋設されることにより、支持板及び制御基板が撓み易い方向である支持板(換言すると制御基板)の厚み方向が、埋設部における薄板材の幅方向と一致することになる。その結果、支持板内における埋設部の高さ方向(支持板の厚み方向)についての寸法が十分に確保されることになり、バスバーの埋設部によって、バスバーと一体に成形された支持板の剛性を向上させることができるようになっている。このように、埋設部の支持板内における姿勢を工夫して埋設部を配置することによって、インバータ回路部の配線の一部である埋設部を利用して支持板の剛性を向上させることができる。その結果、部品を増加させることなく、支持板及び制御基板を含む積層体に必要な剛性が確保され得る。
【0008】
このようにして、部品点数を増加させることなく、支持板及び制御基板を含む積層体に必要な剛性を確保することが可能な電動圧縮機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る電動圧縮機の概略の外観を示す図である。
図2】前記電動圧縮機の概略の回路図の一例である。
図3】前記電動圧縮機のパワースイッチング素子がケーシングの壁面に取り付けられた状態を説明するための図である。
図4図3において、さらにバスバーアッセンブリが取り付けられた状態を示した図である。
図5図4において、さらに制御基板が取り付けられた状態を示した図である。
図6図5に示すA方向から視たインバータ回路部の要部側面図である。
図7図5に示すB方向から視たインバータ回路部の要部側面図である。
図8】前記バスバーアッセンブリの斜視図である。
図9】前記バスバーアッセンブリの複数のバスバーの斜視図である。
図10】前記バスバーアッセンブリの下面図である。
図11】前記バスバーアッセンブリの上面図である。
図12】前記バスバーの埋設部の埋設状態を説明するための概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。図1は、本発明の一実施形態による電動圧縮機の外観の概略を示している。本実施形態による電動圧縮機1は、例えば、車両用空調装置の冷媒回路に組み込まれた、いわゆるインバータ一体型の電動圧縮機であり、吸入した冷媒を圧縮して吐出するように構成されている。
【0011】
電動圧縮機1は、ハウジング2と、冷媒を圧縮する圧縮機構3と、圧縮機構3を駆動するモータ4と、モータ4に給電するためのインバータ回路部5と、を含む。
【0012】
ハウジング2は、圧縮機構3、モータ4及びインバータ回路部5を内部に収容するものであり、メインハウジング2a、インバータハウジング2b及び二つの蓋部材2c、2dを含んで構成される。これら(2a~2d)はボルトなどにより一体的に締結される。
【0013】
メインハウジング2a内には、圧縮機構3及びモータ4が収容され、インバータハウジング2b内には、インバータ回路部5が収容される。メインハウジング2aは概ね円筒状に形成され、その一端側の開口部が蓋部材2cにより閉止され、他端側の開口部がインバータハウジング2bにより閉止される。インバータハウジング2bは、メインハウジング2aと反対側に開口した概ね箱状に形成され、その開口部は蓋部材2dによって閉止される。インバータハウジング2bは、その開口部側から視た平面視では、後述の図3のように、メインハウジング2aの円筒状の周壁に合わせた輪郭を有した円弧状の第1周壁部2b1と、メインハウジング2aの周壁の外面よりも外側に張り出すように形成された第2周壁部2b2とを有している。なお、図1は第1周壁部2b1だけが視える方向から示されており、第2周壁部2b2は図1の紙面奥側に隠れている。
【0014】
インバータハウジング2bは、その底壁となる区画壁部2eを有している。ハウジング2内の領域は、区画壁部2eによって、圧縮機構3及びモータ4を収容する第1空間S1とインバータ回路部5を収容する第2空間S2とに区画される。また、区画壁部2eは、モータ4の駆動軸4aの一端部を回動可能に支持する円筒状支持部2fを有する。インバータ回路部5は、ハウジング2の区画壁部2eにおける第2空間側の壁面2e1に取り付けられる。つまり、ハウジング2は、インバータ回路部5が取り付けられる壁面2e1を有している。なお、図示を省略したが、メインハウジング2aの周壁には冷媒の吸入口が設けられ、この吸入口から第1空間S1内に流入した冷媒はモータ4の周囲などを流れて圧縮機構3内に吸入される。したがって、区画壁部2e、メインハウジング2a及びモータ4は冷媒により冷却される。そして、圧縮機構3により圧縮された冷媒は、吐出口(図示省略)から吐出される。
【0015】
また、インバータ回路部5からの電力は、後述する出力端子8(後述の図3参照)、出力端子8に接続される後述する密封式端子9(後述の図3図6及び図7参照)、及び、密封式端子9に接続される図示省略のリード線を介して、モータ4に供給される。そして、密封式端子9はシールされた状態で区画壁部2eを貫通している。
【0016】
次に、インバータ回路部5を含む回路の概略の構成を説明する。図2は、本実施形態におけるインバータ回路部5を含む回路の概略図である。
【0017】
インバータ回路部5は、図示を省略したバッテリ等の外部電源からの直流電力を三相交流電力に変換し、この三相交流電力をモータ4に給電するものである。インバータ回路部5は、その回路構成として、例えば、平滑用のコンデンサ51と、パワースイッチング素子群52と、パワースイッチング素子群制御回路53とを含む。
【0018】
パワースイッチング素子群52は、複数(図では6個)のパワースイッチング素子Qを有する。各パワースイッチング素子Qは、同一の絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT=Insulated Gate Bipolar Transistor)からなる。つまり、インバータ回路部5は、複数のパワースイッチング素子Qを有している。以下では、各パワースイッチング素子Qを簡略化して適宜に素子Qと呼び、各素子Qを互いに区別する場合には、Q1~Q6の符号を付して説明する。
【0019】
パワースイッチング素子群52について更に詳しく説明する。パワースイッチング素子群52は、PWM制御(擬似的に正弦波を得るために一定周期でパルス幅を変調した電圧を発生させる制御)により、コンデンサ51からの直流電圧を交流電圧に変換してモータ4に供給するものである。そして、パワースイッチング素子群52は、コンデンサ51の電源側ラインと接地側ラインとの間に、並列に、U相アームと、V相アームと、W相アームとを有する。
【0020】
U相アームは、コンデンサ51の電源側ラインと接地側ラインとの間に直列に、2つの素子(Q1,Q2)を有する。V相アームも、コンデンサ51の電源側ラインと接地側ラインとの間に直列に、2つの素子(Q3,Q4)を有する。W相アームも、コンデンサ51の電源側ラインと接地側ラインとの間に直列に、2つの素子(Q5,Q6)を有する。
【0021】
U、V、W各相アームの中間点は、モータ4のU、V、W各相コイルに接続される。すなわち、二つの素子(Q1,Q2)の間を接続する配線の中間点がモータ4のU相コイルに接続され、二つの素子(Q3,Q4)の間を接続する配線の中間点がモータ4のV相コイルに接続され、二つの素子(Q5,Q6)の間を接続する配線の中間点がモータ4のW相コイルに接続される。
【0022】
本実施形態において、素子(Q1,Q3,Q5)が本発明に係る「電源側素子」に相当し、素子(Q2,Q4,Q6)が本発明に係る「接地側素子」に相当し、素子(Q1,Q2)、素子(Q3,Q4)、素子(Q5,Q6)がそれぞれ本発明に係る「同一相の一対のパワースイッチング素子」に相当する。
【0023】
パワースイッチング素子群制御回路53は、外部の車両空調制御装置からの制御信号に基づいて、モータ4を駆動すべく、素子(Q1~Q6)を制御するためのものであり、マイコン部や、素子(Q1~Q6)の駆動を直接的に制御する複数の駆動制御用素子などを含む。前記マイコン部は、車両空調制御装置からの制御信号等に基づいて、前記駆動制御用素子へ制御信号を出力し前記駆動制御用素子の駆動を制御するものである。前記複数の駆動制御用素子は、それぞれ、前記マイコン部からの制御信号に基づいて駆動し、制御対象の素子Q(Q1~Q6のうちのいずれかの素子)の駆動を直接的に制御するものである。各駆動制御用素子は、例えば、制御対象の素子Qのゲート端子G及びエミッタ端子E側に接続されている。
【0024】
ここで、インバータ回路部5はバスバーアッセンブリ6と制御基板7とを有しており、これら(6、7)はインバータ回路部5の主な構造体をなしている。
【0025】
図3はインバータハウジング2b内において、複数の素子Qが区画壁部2eの壁面2e1に取り付けられた状態を説明するための図であり、図4図3においてさらにバスバーアッセンブリ6が取り付けられた状態を示した図であり、図5図4においてさらに制御基板7が取り付けられた状態を示した図である。そして、図6図5に示すA方向から視たインバータ回路部5の概略の要部側面図であり、図7図5に示すB方向から視たインバータ回路部5の概略の要部側面図である。
【0026】
具体的には、インバータ回路部5では、区画壁部2e側から、複数の素子Q、バスバーアッセンブリ6、制御基板7の順で、これら(Q、6、7)が配置されている。各素子Qは、区画壁部2eの第2空間S2側の壁面2e1(詳しくは後述の絶縁シート10)上に配置されている(図3図6及び図7参照)。バスバーアッセンブリ6は、複数の素子Qの上方に配置されており(図4図6及び図7参照)、制御基板7はバスバーアッセンブリ6(換言すると複数の素子Q)の上方に配置されている(図5図7参照)。このように、インバータ回路部5は、複数の素子Q、バスバーアッセンブリ6及び制御基板7からなる積層構造を有している。
【0027】
図8図10は、バスバーアッセンブリ6の構造を説明するための図である。図8はバスバーアッセンブリ6の斜視図であり、図9はバスバーアッセンブリ6の後述する複数のバスバー6aの斜視図であり、図10はバスバーアッセンブリ6の下面図である。
【0028】
バスバーアッセンブリ6は、適宜形状に形成されインバータ回路部5内の配線の一部を構成するバスバー6aと、バスバー6aと一体に成形された樹脂材からなる概ね板状の支持板6bと、を有する(図8参照)。換言すると、バスバーアッセンブリ6は、インサート成形によるバスバー6aと支持板6bとの一体品である。
【0029】
バスバー6aは、所定の厚みを有した金属製(電導性)の薄板材からなるものである。本実施形態において、バスバーアッセンブリ6(インバータ回路部5)は、バスバー6aを複数個(図では3個)有している(図8及び図9参照)。各バスバー6aは、それぞれの大半の部分が支持板6b内に埋設されている。なお、図9(a)では、各バスバー6aの斜視図が支持板6b内に埋設されるときの位置関係で示されており、図9(b)では、各バスバー6aの明確化のため隣接するバスバー6a同士の間の間隔が広げられている。
【0030】
本実施形態では、各バスバー6aは、それぞれ、モータ4への給電側の配線の一部を構成している。具体的には、各バスバー6aは、それぞれ、同一相の一対の素子Q(具体的には、(Q1,Q2)、(Q3,Q4)、(Q5,Q6))の間を接続する配線の中間点(図2参照)と給電先であるモータ4との間の配線の一部を構成している。以下では、3個のバスバー6aのそれぞれを区別する場合には、素子(Q1,Q2)用のバスバー6aをU相バスバー61と呼び、素子(Q3,Q4)用のバスバー6aをV相バスバー62と呼び、素子(Q5,Q6)用のバスバー6aをW相バスバー63と呼ぶ。
【0031】
具体的には、U相バスバー61は、U相アームの一対の素子(Q1,Q2)の中間点と三相交流電力のU相用の出力端子8(図3参照)との間の配線の一部を構成し、V相バスバー62は、V相アームの一対の素子(Q3,Q4)の中間点とV相用の出力端子8との間の配線の一部を構成し、W相バスバー63は、W相アームの一対の素子(Q5,Q6)の中間点とW相用の出力端子8との間の配線の一部を構成している。
【0032】
U相バスバー61、V相バスバー62及びW相バスバー63は、互いに近接して並列された状態(図9(a)参照)で、それぞれの大半の部分が支持板6b内に埋設されている(図8参照)。例えば、U相バスバー61とW相バスバー63との間に、V相バスバー62が位置するように、各バスバー6a(61、62、63)が配置されている。
【0033】
各バスバー6a(61、62、63)は、金属製の薄板材に対して、打ち抜き加工、孔加工及び折り曲げ加工などを施すことによって形成されている。そして、各バスバー6aは、図9(a)及び図9(b)に示すように、その薄板材の厚みを有していると共に、複数箇所で屈曲している。
【0034】
具体的には、U相バスバー61は、所定の幅を有し支持板6b内に埋設される帯状のU相埋設部611と、U相埋設部611の長手方向の一端部に設けられ配線経路における素子Q側の接続端をなすU相第1接続部612と、U相埋設部611の長手方向の他端部に設けられ配線経路における出力端子8側の接続端をなすU相第2接続部613と、からなる。
【0035】
U相埋設部611は、その長手方向の概ね中間部において直角に折り曲げられており、帯状のU相埋設部611における帯の幅方向(つまり、前記長手方向と直交し且つバスバー6aの薄板材の厚み方向と直交する方向)の一端面に正対して視ると、概ねL字状に屈曲している。U相埋設部611は、その長手方向の一端部側(U相第1接続部612側)の部分であるU相第1埋設部611aと、その長手方向の他端部側(U相第2接続部613側)の部分であるU相第2埋設部611bと、からなる。
【0036】
U相第1接続部612は、U相埋設部611の幅方向の一端面(図9では上側の端面)におけるU相埋設部611の長手方向の前記一端部側の部分から幅方向の外側(図9では上側)に向かって突出している。詳しくは、U相第1接続部612は、素子Q側の直接的な接続端をなし、概ね角柱状の断面を有して上方に延伸している細長いU相第1接続片612aと、U相埋設部611に接続されると共にU相埋設部611と同程度の幅を有しているU相第1基端片612bと、からなる。
【0037】
U相第2接続部613は、U相埋設部611の幅と同程度の幅を有している。そして、U相第2接続部613は、U相第2接続片613aとU相中間片613bとからなり、U相第2埋設部611bにおける薄板材の厚み方向の一方の面側(具体的にはU相第2埋設部611bと反対の面側)に位置している。U相第2接続片613aは、出力端子8側の直接的な接続端をなし、U相第2埋設部611bにおける薄板材の厚み方向の一方の面に相対する面を有している。そして、U相第2接続片613aには、ねじ止め用の孔が開口されている。U相中間片613bは、U相第2接続片613aとU相埋設部611の長手方向の前記他端部(U相第2埋設部611b)との間を接続するものである。そして、U相中間片613bは、U相埋設部611の幅方向の一端面(図9では上側の端面)におけるU相埋設部611の長手方向の前記他端部側の部分からU相第1埋設部611aと反対側に向かって突出するように延伸している(詳しくは、U相第2埋設部611bに対して直角な方向に延伸している)。
【0038】
V相バスバー62は、U相埋設部611と同程度の幅を有し支持板6b内に埋設される帯状のV相埋設部621と、V相埋設部621の長手方向の一端部に設けられ配線経路における素子Q側の接続端をなすV相第1接続部622と、V相埋設部621の長手方向の他端部に設けられ配線経路における出力端子8側の接続端をなすV相第2接続部623と、からなる。
【0039】
V相埋設部621は、一方向に直線的に延伸しており、支持板6b内に埋設された状態では、U相第1埋設部611aにおける薄板材の厚み方向の一方の面(具体的にはU相第2接続部613と反対側の面)に相対し、U相第1埋設部611aと平行に延伸している。そして、V相埋設部621は、U相埋設部611のU相第1埋設部611aよりも長手方向に長く形成されている。
【0040】
V相第1接続部622は、V相埋設部621の幅方向の一端面(図9では上側の端面)におけるV相埋設部621の長手方向の前記一端部側の部分から幅方向の外側(図9では上側)に向かって突出している。詳しくは、V相第1接続部622は、素子Q側の直接的な接続端をなし、概ね角柱状の断面を有して上方に延伸している細長いV相第1接続片622aと、V相埋設部621に接続されると共にV相埋設部621と同程度の幅を有しているV相第1基端片622bと、からなる。
【0041】
V相第2接続部623は、U相埋設部611の幅と同程度の幅を有している。そして、V相第2接続部623は、V相第2接続片623aとV相中間片623bとからなり、V相埋設部621における薄板材の厚み方向の一方の面側(具体的にはU相バスバー61側の面側)に位置している。V相第2接続片623aは、出力端子8側の直接的な接続端をなし、V相埋設部621における長手方向の前記他端部側の端面と平行な面を有している。そして、V相第2接続片623aには、ねじ止め用の孔が開口されている。V相中間片623bは、V相第2接続片623aとV相埋設部621の長手方向の前記他端部と間を接続するものであり、上方から視た平面視でL字状に形成されている。そして、V相中間片623bは、V相埋設部621の幅方向の一端面(図9では上側の端面)におけるU相埋設部611の長手方向の前記他端部側の部分とV相第2接続片623aの端部との間を接続している。
【0042】
W相バスバー63は、他の埋設部611、621と同程度の幅を有し支持板6b内に埋設される帯状のW相埋設部631と、W相埋設部631の長手方向の一端部に設けられ配線経路における素子Q側の接続端をなすW相第1接続部632と、W相埋設部631の長手方向の他端部に設けられ配線経路における出力端子8側の接続端をなすW相第2接続部633と、からなる。
【0043】
W相埋設部631は、一方向に直線的に延伸しており、支持板6b内に埋設された状態では、V相埋設部621における薄板材の厚み方向の他方の面に相対し、V相埋設部621及びU相第1埋設部611aと平行に延伸している。そして、W相埋設部631は、V相埋設部621よりも長手方向に長く形成されている。
【0044】
W相第1接続部632は、W相埋設部631の幅方向の一端面(図9では上側の端面)におけるW相埋設部631の長手方向の前記一端部側の部分から幅方向の外側(図9では上側)に向かって突出している。詳しくは、W相第1接続部632は、素子Q側の直接的な接続端をなし、概ね角柱状の断面を有して上方に延伸している細長いW相第1接続片632aと、W相埋設部631に接続されると共にW相埋設部631と同程度の幅を有しているW相第1基端片632bと、からなる。
【0045】
W相第2接続部633は、W相埋設部631の幅と同程度の幅を有している。そして、W相第2接続部633は、W相第2接続片633aとW相中間片633bとからなり、W相埋設部631における長手方向の前記他端部側に位置している。W相第2接続片633aは、出力端子8側の直接的な接続端をなし、W相埋設部631における長手方向の前記他端部側の端面と平行で且つ当該端面に相対する面を有している。そして、W相第2接続片633aには、ねじ止め用の孔が開口されている。W相中間片633bは、W相第2接続片633aとW相埋設部631の長手方向の前記他端部と間を接続するものであり、上方から視た平面視で概ねL字状に形成されている。そして、W相中間片633bは、W相埋設部631の幅方向の一端面(図9では上側の端面)におけるW相埋設部631の長手方向の前記他端部側の部分とW相第2接続片633aの端部との間を接続している。
【0046】
以上のように形成された各バスバー6a(61、62、63)は、支持板6bと一体になった状態において、V相バスバー62のV相埋設部621がU相バスバー61のU相第1埋設部611aとW相バスバー63のW相埋設部631との間に位置している。そして、支持板6bと一体になった状態において、U相バスバー61のU相第2接続片613a、V相バスバー62のV相第2接続片623a、及び、W相バスバー63のW相第2接続片633aが一列に整列しており、且つ、V相第2接続部623がU相第2接続部613とW相第2接続部633との間に位置している(図9(a)参照)。なお、本実施形態において、U相埋設部611、V相埋設部621及びW相埋設部631のそれぞれが、本発明に係る「埋設部」に相当する。
【0047】
そして、支持板6bと一体になった状態において、U相バスバー61のU相第1接続片612aの先端部、V相バスバー62のV相第1接続片622aの先端部、及び、W相バスバー63のW相第1接続片632aの先端部は、支持板6bの上面(つまり、支持板6bにおける厚み方向の制御基板7側の面)よりも上方に突出している(図8参照)。そして、U相第1接続片612aの先端部、V相第1接続片622aの先端部、及び、W相第1接続片632aの先端部は、さらに、制御基板7に形成された貫通孔を介して制御基板7を貫通し(図6及び図7参照)、制御基板7に形成された配線パターンに電気的に接続されている。
【0048】
ここで、図6及び図7に示すように、インバータハウジング2bの区画壁部2eには、この区画壁部2eを貫通するように、各相用の密封式端子9が一体に取り付けられている。そして、各密封式端子9の第2空間S2側(インバータ回路5側)の端部には、それぞれ出力端子8が接続されている(図3参照)。各密封式端子9の第1空間S1側(モータ45側)の端部とモータ4の対応する相のコイルとの間は、図示を省略したリード線によって電気的に接続されている。
【0049】
そして、支持板6bと一体になった状態において、U相バスバー61のU相第2接続片613a、V相バスバー62のV相第2接続片623a、及び、W相バスバー63のW相第2接続片633aは、支持板6bの後述する収容部6b2において、インバータハウジング2bの区画壁部2e側に露出しており(図10参照)、収容部6b2内において対応する出力端子8にそれぞれねじ止めされるように構成されている。
【0050】
なお、支持板6b内における各バスバー6aの姿勢及び支持板6bにおける各バスバー6aの平面視での配置箇所については、後に詳述する。
【0051】
支持板6bは、前述したように、バスバー6aと一体に成形にされた樹脂材からなり、概ね板状に形成されている。そして、支持板6bは、複数の素子Q(Q1~Q6)と制御基板7との間に配置されると共に制御基板7を下方から支持するものである。
【0052】
支持板6bは、樹脂材により概ね平板状に形成されている。支持板6bは、上方から視た平面視では、概ね円弧状の第1周壁部2b1の内側の領域に収まるような形状で形成されている(図4参照)。特に限定されるものではないが、支持板6bは、第1周壁部2b1内に完全に収容され支持板6bの大半の部分を占める第1支持板部64と、第1周壁部2b1と第2周壁部2b2との境界部分の内側に収容される第2支持板部65と、からなる。第1支持板部64は平面視で概ね5角形のホームベース状の外形を有し、第2支持板部65は第1支持板部64におけるホームベースの山形部と反対側の辺から突出するように第1支持板部64と一体に成形されている(図4図8及び図10参照)。
【0053】
本実施形態では、支持板6bの外縁部における互いに離隔した複数の部位には、円筒状のスリーブ66が支持板6bをその厚み方向に貫通するように配置されている。各スリーブ66には、制御基板7をインバータハウジング2b(ハウジング2)の区画壁部2eの壁面2e1に固定するためのボルト67(図5参照)が挿通される。つまり、バスバーアッセンブリ6(インバータ回路部5)は、バスバー6aとスリーブ66と支持板6bとを有している。換言すると、バスバーアッセンブリ6は、インサート成形によるバスバー6a、スリーブ66及び支持板6bの一体品である。具体的には、スリーブ66は、第1支持板部64の各角部に設けられると共に、第2支持板部65に設けられており、合計で6個設けられている。
【0054】
本実施形態では、支持板6bは、その外縁部における前記複数の部位(つまり、スリーブ66が配置された角部)のうちの少なくとも一つの部位から平面視で支持板6bの中央部まで延在する補強リブ6b1を有している。この補強リブ6b1は、支持板6bの厚み方向の一方の面から突出している。本実施形態では、補強リブ6b1は、支持板6bの下面(つまり、支持板6bにおける厚み方向の制御基板7と反対側の面)から下方に突出している。具体的には、補強リブ6b1は、図10に示すように、第1支持板部64における5箇所の角部のうちの前記ホームベースの山形部の角部以外の4箇所の角部からそれぞれ支持板6bの平面視における中央部まで延在している。
【0055】
また、支持板6bの第2支持板部65の下面には、図10に示すように、主に、バスバー6aにおけるU相第2接続部613、V相第2接続部623、及び、W相第2接続部633がそれぞれ収容される収容部6b2が形成されている。この収容部6b2は相毎に区画され且つ下方に開口している。
【0056】
そして、支持板6bの第1支持板部64における各素子Q(Q1~Q6)の各端子(ゲート端子G、コレクタ端子C、エミッタ端子E)に対応する位置(図では18箇所)には、貫通孔6b3がそれぞれ形成されている。
【0057】
また、支持板6bの下面における前記ホームベースの山形部の角部から第2支持板部65までの部分は、補強リブ6b1よりも下方に突出しており、平面視で視て支持板6bの概ね中央部を横断するように帯状に形成されたバスバー埋め込み部6b4を構成している。支持板6bの下面うちの、外縁部、スリーブ66に対応する部分、補強リブ6b1、収容部6b2、及び、バスバー埋め込み部6b4以外の部分は、概ね薄肉に形成されている。収容部6b2及びバスバー埋め込み部6b4は、支持板6bの外縁部及びスリーブに対応する部分よりも下方に飛び出しており、肉厚に形成されている。
【0058】
次に、制御基板7の構成について詳述する。
【0059】
制御基板7は、各素子Q(Q1~Q6)の上方に配置される基板であり、その基板面が区画壁部2eの第2空間S2側の壁面2e1に対して平行になるように配置されている。この制御基板7には、コンデンサ51、前記マイコン部及び各駆動制御用素子等の各回路素子が実装されると共に、図2に示す配線経路のうちの各バスバー6a(61、62、63)により構成される配線経路以外の配線となる配線パターンが形成されている。
【0060】
制御基板7には、支持板6bのスリーブ66の貫通孔と合わせた位置に貫通孔が形成されている。また、区画壁部2eの壁面2e1におけるスリーブ66に対応する部分には、ネジ穴(止まり孔)が形成されたボス部2e2(図6及び図7参照)が制御基板7側に向かって突出するように形成されている(図6及び図7では、図の明瞭化のため一部のボス部2e2は図示を省略されている)。制御基板7及びバスバーアッセンブリ6の支持板6bは、それぞれの貫通孔の位置を合わせて配置された状態で、各貫通孔にボルト67が挿入され、このボルト頭部と区画壁部2eのボス部2e2との間に挟持されることによって、区画壁部2eの壁面2e1に取り付けられている。つまり、支持板6bにおけるスリーブ66に対応する部分の上面は制御基板7に当接し、支持板6bにおけるスリーブ66に対応する部分の下面はボス部2e2の端面に当接している。
【0061】
次に、複数の素子Q(Q1~Q6)の配置構成について説明する。
【0062】
本実施形態では、複数の素子Q(Q1~Q6)は、区画壁部2e(ハウジング2)の壁面2e1のうちのバスバー6a(換言するとバスバー埋め込み部6b4)に対応する領域(バスバー埋め込み部6b4の下方の領域)を避けた部分にそれぞれ配置されている(図3及び図7参照)。また、複数の素子Q(Q1~Q6)は、その電源側素子としての素子(Q1,Q3,Q5)と接地側素子としての素子(Q2,Q4,Q6)とを対向させ、且つ、各端子(G,C,E)が突出形成される端子部Tを、同一相の一対の素子Q毎に対向させた状態で、区画壁部2eの壁面2e1に配置されている(図3参照)。各素子Q(Q1~Q6)の底面と区画壁部2eの壁面2e1との間には絶縁シート10が設けられている(図3図6及び図7参照)。各素子Q(Q1~Q6)は、この絶縁シート10を介して区画壁部2eにボルト68により、壁面2e1に密着して取り付けられている。なお、特に限定されるものではないが、壁面2e1における複数の素子Q(詳しくは絶縁シート10)が取り付けられる部分は、図6及び図7に示すように、他の部分よりも上方に僅かに盛り上がっている。そして、この状態、複数の素子Qの上面と、支持板6bの薄肉部分の下面との間には隙間が空くようになっている。
【0063】
また、各素子Q(Q1~Q6)は、概略矩形板状に形成されている。各素子Q(Q1~Q6)における各端子(G,C,E)は、素子Q(Q1~Q6)の一側部(端子部T)から突出した後、上方(制御基板7側)に向かうように屈曲している。そして、各端子(G,C,E)の先端部は、支持板6bの貫通孔6b3及び制御基板7に形成された貫通孔を介して制御基板7の上面よりも上方に突出し、制御基板7に形成された配線パターンに電気的に接続されている。
【0064】
次に、支持板6b内における各バスバー6aの姿勢、及び、支持板6bにおける各バスバー6aの平面視での配置箇所について詳述する。図11はバスバーアッセンブリ6の上面図であり、図12は複数のバスバー6aの埋設状態(姿勢)を説明するための概念図である。なお、図11では埋設された各バスバー6aが点線で示され、図12では支持板6bが点線で示されている。
【0065】
図11及び図12に示すように、支持板6b内において、各バスバー6aの埋設部(U相埋設部611、V相埋設部621及びW相埋設部631)は、支持板6bの厚み方向と直交する方向に延伸しており、且つ、各埋設部(U相埋設部611、V相埋設部621及びW相埋設部631)における薄板材の厚み方向が支持板6bの厚み方向に対して直交している。なお、「直交」とは、概ね(略)90°であればよく(厳密に90°でなくてよい)、インサート成形におけるバスバー6aの金型内における位置決め精度などに基づく、例えば、最大で10°程度の製造誤差を許容しており、略90°を含む。
【0066】
換言すると、帯状の埋設部(611、621、631)の帯の幅方向の一端面がバスバーアッセンブリ6の支持板6bの上下面や制御基板7の基板面やインバータハウジング2bの区画壁部2eの壁面2e1と平行(略平行を含む)になる姿勢で、各埋設部(611、621、631)が支持板6b内に埋設されている。さらに、換言すると、薄板材からなる埋設部(611、621、631)の厚み方向の一側面がバスバーアッセンブリ6の支持板6bの上下面や制御基板7の基板面やインバータハウジング2bの区画壁部2eの壁面2e1に対して垂直(略垂直を含む)になる姿勢で、各埋設部(611、621、631)が支持板6b内に埋設されている。そして、各バスバー6a(61、62、63)は互いに近接して並列した姿勢で、それぞれの大半の部分が支持板6b内に埋設されている。
【0067】
このような姿勢で、バスバー6aの埋設部(611、621、631)が支持板6b内に埋設されることにより、支持板6b及び制御基板7が撓み易い方向である支持板6b(換言すると制御基板7)の厚み方向が、支持板6b内に埋設される埋設部(611、621、631)における薄板材の幅方向と一致することになる。その結果、支持板6b内における埋設部(611、621、631)の高さ方向(支持板6bの厚み方向)についての寸法が十分に確保されることになり、バスバー6aの埋設部(611、621、631)によって、バスバー6aと一体に成形された支持板6bの剛性を向上させることができるようになっている。
【0068】
本実施形態では、複数のバスバー6aのうちのW相バスバー63におけるW相埋設部631は、支持板6bのバスバー埋め込み部6b4内において、平面視で視て支持板6bの概ね中央部を横切るように支持板6b内を延伸している。つまり、他の部位より肉厚に形成されたバスバー埋め込み部6b4の長手方向の概ね全体に亘って、W相バスバー63のW相埋設部631が配置され、このW相埋設部631が支持板6bの撓み易い中央部を効果的に補強する骨組み部材として機能し得るようになる。
【0069】
また、本実施形態では、各バスバー6aの埋設部(611、621、631)は、複数の素子Q(Q1~Q6)のうちの電源側素子としての素子(Q1,Q3,Q5)と複数の素子Q(Q1~Q6)のうちの接地側素子としての素子(Q2,Q4,Q6)の間の帯状領域S(図3の二点鎖線で示した領域)の上方に配置されている(図7参照)。換言すると、電源側素子(Q1,Q3,Q5)と接地側素子(Q2,Q4,Q6)の間の帯状領域Sが、支持板6bのうちの肉厚になり得るバスバー埋め込み部6b4の下方に位置するように構成されている。
【0070】
かかる実施形態による電動圧縮機1では、金属製の薄板材からなる各バスバー6aにおける埋設部(611、621、631)が、支持板6bの厚み方向と直交する方向に延伸し、且つ、埋設部(611、621、631)における薄板材の厚み方向が支持板6bの厚み方向に対して直交している。そして、バスバー6aの一部である埋設部(611、621、631)はインバータ回路部5の配線の一部をなしている。このように、埋設部(611、621、631)の支持板6b内における姿勢を工夫して埋設部(611、621、631)を配置することによって、インバータ回路部5の配線の一部である埋設部(611、621、631)を利用して支持板6bの剛性を向上させることができる。その結果、部品を増加させることなく、支持板6b及び制御基板7を含む積層体に必要な剛性が確保され得る。
【0071】
このようにして、部品点数を増加させることなく、支持板6b及び制御基板7を含む積層体に必要な剛性を確保することが可能な電動圧縮機1を提供することができる。
【0072】
また、支持板6bの厚みが従来と同程度の場合には、バスバー6aの埋設部(611、621、631)によって、支持板6b(ひいては、インバータ回路部5)の主な支持構造体の剛性を従来よりも向上させることができる。その結果、耐振性に優れたインバータ回路部5を有した電動圧縮機1を提供することができる。
【0073】
本実施形態では、W相バスバー63におけるW相埋設部631が支持板6bの概ね中央部を横切るように支持板6b内を延伸している。これにより、支持板6bの撓み易い中央部がより効果的にバスバー6aの一部により補強されることになる。
【0074】
本実施形態では、支持板6bは、その外縁部における互いに離隔した複数の部位のうちの少なくとも一つの部位から支持板6bの平面視で概ね中央部まで延在する補強リブ6b1であって、支持板6bの厚み方向の一方の面から突出した補強リブ6b1を有している。これにより、支持板6bの厚み方向の剛性がより効果的に向上する。また、本実施形態では、4個の補強リブ6b1は、バスバー埋め込み部6b4と協働して、支持板6bの下面においてその中央部から外側に放射状に延びる骨組み部材として機能している。
【0075】
本実施形態では、複数の素子Q(Q1~Q6)は、区画壁部2e(ハウジング2)の壁面2e1のうちのバスバー6a(バスバー埋め込み部6b4)に対応する領域(バスバー埋め込み部6b4の下方の領域)を避けた部分にそれぞれ配置されている。つまり、壁面2e1のうちの、支持板6bにおける厚肉に形成され得るバスバー埋め込み部6b4の下方の領域を避けた部分に、各素子Qを配置することができる。換言すると、壁面2e1のうちの、支持板6bにおける比較的薄肉な部分の下方の領域に、各素子Qを配置することができる。これにより、インバータ回路部5における各素子Q及び支持板6bの積層部分の全体の高さ方向(厚み方向)のサイズを容易に小さくでき、ひいては、インバータハウジング2b(電動圧縮機1)の小型化を図ることができる。
【0076】
本実施形態では、複数の素子Qは、その電源側素子(Q1,Q3,Q5)と接地側素子(Q2,Q4,Q6)とを対向させ、且つ、その端子部Tを同一相の一対の素子Q毎に対向させた状態で、区画壁部2eの壁面2e1に配置されている。これにより、複数の素子Q間などの配線の距離を短くすることができる。
【0077】
本実施形態では、バスバー6aの埋設部(611、621、631)は、電源側素子(Q1,Q3,Q5)と接地側素子(Q2,Q4,Q6)の間の帯状領域Sの上方に配置されている。これにより、肉厚なバスバー埋め込み部6b4が、壁面2e1に正対して視た平面視において、電源側素子(Q1,Q3,Q5)と接地側素子(Q2,Q4,Q6)との間に挟まれるような形態で配置されることになり、平面視において、複数の素子Qをバスバー6a(バスバー埋め込み部6b4)側に寄せて配置することができる。その結果、各素子Q及び各バスバー6aが占める平面的な面積(フットプリント面積)を効果的に狭めることができるため、より効果的に、インバータハウジング2b(電動圧縮機1)の小型化を図ることができる。また、バスバー埋め込み部6b4における壁面2e1側の端部を電源側素子(Q1,Q3,Q5)と接地側素子(Q2,Q4,Q6)との間に、位置させることもできるため、インバータ回路部5における各素子Q及び支持板6bの積層部分の全体の高さ方向(厚み方向)のサイズをより効果的に小さくすることができる。
【0078】
なお、本実施形態では、各バスバー6aは、それぞれ、同一相の一対の素子Q((Q1,Q2)、(Q3,Q4)、(Q5,Q6))の間を接続する配線の中間点とモータ4との間の配線の一部を構成しているものとしたが、これに限定されるものではない。例えば、各バスバー6aは、図示を省略した直流電力の+側の入力端子(電源端子)と電源側素子(Q1,Q3,Q5)との間の配線の一部や、図示省略した接地端子と接地側素子(Q2,Q4,Q6)との間の配線の一部などを構成してもよい。また、本実施形態では、バスバーアッセンブリ6(インバータ回路部5)は、バスバー6aを3個有するものとしたが、4個以上でもよいし、2個でもよい。また、バスバー6aは、複数ではなく1個でもよい。
【0079】
また、W相埋設部631のみが支持板6bの概ね中央部を横切るように支持板6b内を延伸していたが、これに限らず、複数のバスバー6aのうちのV相バスバー62及びU相バスバー61についても、W相バスバー63と同様に、支持板6bの中央部を横切るように、第2支持板部65側から中央部を超えて第1支持板部64の前記ホームベースの山形部の角部側に向かって延びるように、形成されてもよい。これにより、より効果的に、支持板6bの中央部が補強される。
【0080】
以上、本発明の実施形態及びその変形例について説明したが、本発明は上述の実施形態や変形例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて更なる変形や変更が可能であることはもちろんである。
【符号の説明】
【0081】
1…電動圧縮機、
2…ハウジング、
2e1…壁面、
4…モータ、
5…インバータ回路部、
6a…バスバー、
61…U相バスバー(バスバー)、
611…U相埋設部(埋設部)、
62…V相バスバー(バスバー)、
621…V相埋設部(埋設部)、
63…W相バスバー(バスバー)、
631…W相埋設部(埋設部)、
6b…支持板、
6b1…補強リブ、
66…スリーブ、
67…ボルト、
7…制御基板、
Q…素子(パワースイッチング素子)
Q1,Q3,Q5…電源側素子、
Q2,Q4,Q6…接地側素子、
Q1,Q2…同一相の一対の素子(パワースイッチング素子)、
Q3,Q4…同一相の一対の素子(パワースイッチング素子)、
Q5,Q6…同一相の一対の素子(パワースイッチング素子)、
S…帯状領域、
T…端子部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12