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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】冷感付与組成物
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/00 20060101AFI20241016BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20241016BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20241016BHJP
   D06M 13/165 20060101ALI20241016BHJP
   D06M 13/144 20060101ALI20241016BHJP
   A61K 8/33 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
C09K3/00 B
A61K8/34
A61Q19/00
D06M13/165
D06M13/144
A61K8/33
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020158967
(22)【出願日】2020-09-23
(65)【公開番号】P2022052528
(43)【公開日】2022-04-04
【審査請求日】2023-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】390011442
【氏名又は名称】株式会社マンダム
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森野 修
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 格
【審査官】井上 恵理
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-112634(JP,A)
【文献】特開2015-093859(JP,A)
【文献】特開2014-129243(JP,A)
【文献】特開2008-285436(JP,A)
【文献】国際公開第2015/178445(WO,A1)
【文献】特開2019-216614(JP,A)
【文献】特開2011-079953(JP,A)
【文献】特開2016-088882(JP,A)
【文献】特表2010-520161(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
D06M13/00-13/715
C09K 3/00
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
織布、不織布、または合成樹脂製布に冷感を付与するための組成物であって、
下記成分(A)を6.0~40質量%、および下記成分(B)を5.0~90質量%含有する組成物。
成分(A):l-メンチルグリセリルエーテル
成分(B):エタノール
【請求項2】
織布、不織布、および合成樹脂製布からなる群より選ばれる1以上により構成されたタオル、包帯、またはマスクに冷感を付与するための組成物であって、
下記成分(A)を6.0~40質量%、および下記成分(B)を5.0~90質量%含有する組成物。
成分(A):l-メンチルグリセリルエーテル
成分(B):エタノール
【請求項3】
さらに水を3.0質量%以上含有する、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
さらに下記成分(C)を0.005~5.0質量%含有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
成分(C):TRPA1活性抑制剤
【請求項5】
さらに下記成分(D)を含有し、前記成分(A)に対する前記成分(D)の質量含有比が0.001~0.25である、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
成分(D):l-メントール
【請求項6】
前記成分(D)の含有量が0.05~1.0質量%である、請求項5記載の組成物。
【請求項7】
さらに下記成分(E)を0.01~5.0質量%含有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
成分(E):分岐アルキル基を有するポリオキシエチレンアルキルエーテル
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷感を付与する組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マスクは、日常生活や、工場、病院など、清潔や衛生を維持すべき環境において着用され、人前に出る際のエチケットや、感染症の予防、ウイルス飛散および感染防止、異物混入防止等を目的に使用されている。特に、ウイルス飛散および感染防止を目的とするマスクの着用は、ウイルス感染リスクが高まる冬場が主であったが、新型コロナウイルスの流行に伴い、季節に関係なくマスクを着用する必要性が生じている。
【0003】
マスクは、着用時に階段を上る、歩くなどの運動や、温度の高い場所での作業を行う場合においては、非着用時に比べて呼吸がし難い、マスク内が呼気や汗により蒸れて不快度が高くなるという問題がある。また、夏場のマスクの着用は、上記の問題に加え、非着用時に比べて熱中症のリスクが高くなることが指摘されている。
【0004】
上記問題を解消する手段として、接触冷感等の技術を用いたマスクが市販されている。また、夏場の暑さや、活動時の暑さ対策として、衣類に適用することで衣類に冷感を付与可能な組成物(特許文献1)などが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2010-84269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の衣類用冷感付与剤をマスクに適用した場合、着用直後は充分な冷感が得られるが、冷感の持続性は充分なものではなかった。また、該衣類用冷感付与剤は、エタノールおよびl-メントールの配合量が多いため、マスクに適用した場合、皮膚および目への刺激性が懸念される。
【0007】
本発明は、冷感および冷感の持続性に優れ、皮膚刺激および眼刺激が低減された冷感付与組成物、および該冷感付与組成物を用いた冷感性材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討した結果、所定量のl-メンチルグリセリルエーテルおよび低級アルコールを含有する組成物が、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明は
〔1〕下記成分(A)を6.0~40質量%、および下記成分(B)を5.0~90質量%含有する冷感付与組成物、
成分(A):l-メンチルグリセリルエーテル
成分(B):低級アルコール
〔2〕さらに下記成分(C)を0.005~5.0質量%含有する、上記〔1〕記載の冷感付与組成物、
成分(C):TRPA1活性抑制剤
〔3〕さらに下記成分(D)を含有し、前記成分(A)に対する前記成分(D)の質量含有比が0.001~0.25である、上記〔1〕または〔2〕記載の冷感付与組成物、
成分(D):l-メントール
〔4〕前記成分(D)の含有量が0.05~1.0質量%である、上記〔3〕記載の冷感付与組成物、
〔5〕さらに下記成分(E)を0.01~5.0質量%含有する、上記〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の冷感付与組成物、
成分(E):分岐アルキル基を有するポリオキシエチレンアルキルエーテル
〔6〕上記〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の冷感付与組成物を用いて冷感付与された冷感性材料、
〔7〕上記〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の冷感付与組成物を用いて、被処理材料に少なくとも前記成分(A)を付着させる工程を含む、冷感性材料の製造方法、
〔8〕下記成分(A)および下記成分(C)が付着した冷感性材料であって、前記成分(A)に対する前記成分(C)の質量比が0.001~1.0である冷感性材料、
成分(A):l-メンチルグリセリルエーテル
成分(C):TRPA1活性抑制剤
〔9〕下記成分(A)および下記成分(D)が付着した冷感性材料であって、前記成分(A)に対する前記成分(D)の質量比が0.001~0.25である冷感性材料、に関する。
成分(A):l-メンチルグリセリルエーテル
成分(D):l-メントール
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、冷感および冷感の持続性に優れ、皮膚刺激および眼刺激が低減された冷感付与組成物、および該冷感付与組成物を用いた冷感性材料が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本実施形態に係る冷感付与組成物は、所定量のl-メンチルグリセリルエーテルおよび低級アルコールを含有する。なお、本明細書において、「~」を用いて数値範囲を示す場合、その両端の数値を含むものとする。
【0012】
<冷感付与組成物>
本実施形態に係る冷感付与組成物は、l-メンチルグリセリルエーテルおよび低級アルコールを必須の成分として含有する。また、任意成分としては、TRPA1活性抑制剤、l-メントール、および分岐アルキル基を有するポリオキシエチレンアルキルエーテルが挙げられ、これら任意成分を含むことが好ましい。
【0013】
なお、本明細書においては、上記l-メンチルグリセリルエーテルを「成分(A)」;上記低級アルコールを「成分(B)」;上記TRPA1活性抑制剤を「成分(C)」;上記l-メントールを「成分(D)」;上記分岐アルキル基を有するポリオキシエチレンアルキルエーテルを「成分(E)」と称する場合がある。
【0014】
本実施形態に係る冷感付与組成物に含有される上記各成分の含有量は、それぞれ、冷感付与組成物中の合計の含有量が100質量%以下となるように、記載の範囲内から適宜選択することができる。
【0015】
[成分(A):l-メンチルグリセリルエーテル]
本実施形態に係る冷感付与組成物は、l-メンチルグリセリルエーテルを含有する。l-メンチルグリセリルエーテルを用いることで、冷感の持続性に優れた冷感付与組成物を得ることができる。
【0016】
冷感付与組成物100質量%中の成分(A)の含有量は、冷感の持続性の観点から、6.0質量%以上であり、7.0質量%以上が好ましく、8.0質量%以上がより好ましく、9.0質量%以上がさらに好ましく、10質量%以上が特に好ましい。一方、安全性および製剤化の観点からは、40質量%以下であり、30質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、16質量%以下がさらに好ましい。
【0017】
[成分(B):低級アルコール]
本実施形態に係る冷感付与組成物は、上記成分(A)を溶解させ、かつ速乾性を有する観点から、低級アルコールを含有する。低級アルコールとしては、例えば、炭素数1~4の直鎖状または分枝状の脂肪族アルコールが挙げられ、具体的には、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、t-ブタノール等が挙げられる。なかでも、エタノールが好ましい。これらの成分(B)は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。前記の低級アルコールを適宜組み合わせることにより、冷感付与組成物の揮発性を調整することができる。
【0018】
冷感付与組成物100質量%中の成分(B)の含有量は、速乾性の観点から、5.0質量%以上であり、8.0質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、15質量%以上がさらに好ましく、20質量%以上が特に好ましい。一方、成分(B)の含有量は、90質量%以下であり、60質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましく、40質量%以下がさらに好ましく、30質量%以下が特に好ましい。
【0019】
[成分(C):TRPA1活性抑制剤]
本実施形態に係る冷感付与組成物は、刺激性低減の観点から、TRPA1活性抑制剤を含有することが好ましい。TRPA1は、刺激受容体としての機能を発現する一過性受容体電位チャネル(TRPチャネル)の1つである。TRPA1の活性を抑制することにより、TRPA1の活性化に起因する皮膚における不快な刺激感を緩和することができる。
【0020】
TRPA1活性抑制剤としては、例えば、特開2012-62304号公報、特開2014-65690号公報、国際公開第2018/180460号等に記載の公知のTRPA1活性抑制剤を使用することができる。TRPA1活性抑制剤の具体例としては、例えば、[1R,2S,4R,(+)]-1,7,7-トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2β-オール、[1S,2R,4S,(-)]-1,7,7-トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2α-オール、[1S,2S,4S,(+)]-1,7,7-トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2β-オール、[1R,2R,4R,(-)]-1,7,7-トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2α-オール、(1S)-1,2,7,7-テトラメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-オール、(1R)-1,2,7,7-テトラメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-オール、[1R,4S,(+)]-1,3,3-トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2β-オール、[1S,4R,(-)]-1,3,3-トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2β-オール、2-{[rel-(1R,2R,4R)-1,7,7-トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-イル]オキシ}エタノール(イソボルニルオキシエタノールとも称される)、1,3,3-トリメチル-2-オキサビシクロ[2.2.2]オクタン(1,8-シネオール、またはユーカリプトールとも称される)が挙げられ、イソボルニルオキシエタノールおよび/またはユーカリプトールが好ましく、イソボルニルオキシエタノールおよびユーカリプトールを併用することがより好ましい。
【0021】
冷感付与組成物100質量%中の成分(C)の含有量は、特に限定されないが、刺激性低減の観点から、0.005質量%以上が好ましく、0.01質量%以上がより好ましく、0.05質量%以上がさらに好ましく、0.1質量%以上が特に好ましい。一方、皮膚に対する負荷の観点からは、5.0質量%以下が好ましく、3.0質量%以下がより好ましく、1.5質量%以下がさらに好ましく、1.0質量%以下が特に好ましい。
【0022】
冷感付与組成物中の成分(A)に対する成分(C)の質量含有比は、使用初期における冷感向上と冷感の持続性とのバランスの観点から、0.001~1.0が好ましく、0.005~0.80がより好ましく、0.01~0.50がさらに好ましく、0.03~0.30が特に好ましい。
【0023】
[成分(D):l-メントール]
本実施形態に係る冷感付与組成物は、l-メントールを含有することが好ましい。l-メントールを用いることで、使用初期における冷感を向上させることができる。なお、上記「使用初期」とは、特に限定されないが、例えば、本実施形態に係る冷感付与組成物で処理した冷感性材料を備えるマスク等を着用した直後から5分間程度をいう。
【0024】
冷感付与組成物100質量%中の成分(D)の含有量は、特に限定されないが、使用初期における冷感向上の観点から、0.05質量%以上が好ましく、0.08質量%以上がより好ましく、0.10質量%以上がさらに好ましい。一方、刺激性低減の観点からは、1.0質量%以下が好ましく、0.80質量%以下がより好ましく、0.50質量%以下がさらに好ましく、0.30質量%以下が特に好ましい。
【0025】
冷感付与組成物中の成分(A)に対する成分(D)の質量含有比は、使用初期における冷感向上と冷感の持続性とのバランスの観点から、0.001~0.25が好ましく、0.003~0.20がより好ましく、0.005~0.15がさらに好ましく、0.007~0.10が特に好ましい。
【0026】
[成分(E):分岐アルキル基を有するポリオキシエチレンアルキルエーテル]
本実施形態に係る冷感付与組成物は、冷感の持続性をより向上させる観点から、分岐アルキル基を有するポリオキシエチレンアルキルエーテルを含有することが好ましい。
【0027】
前記分岐アルキル基の炭素数は、冷感の持続性向上の観点から、10~24が好ましく、12~22がより好ましく、16~20がさらに好ましい。成分(E)の具体例としては、例えば、ポリオキシエチレンイソステアリルエーテル、ポリオキシエチレンイソセチルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルドデシルエーテルなどが挙げられ、ポリオキシエチレンイソステアリルエーテルが好ましい。これらの成分(E)は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0028】
成分(E)のオキシエチレン基(エチレンオキサイド基)の付加モル数は、冷感の持続性向上の観点から、5~30が好ましく、10~25がより好ましい。
【0029】
上記成分(E)を含有する場合の冷感付与組成物100質量%中の含有量は、特に限定されないが、冷感の持続性向上の観点から、0.05質量%以上が好ましく、0.08質量%以上がより好ましく、0.10質量%以上がさらに好ましい。一方、刺激性低減の観点からからは、1.0質量%以下が好ましく、0.50質量%以下がより好ましく、0.30質量%以下がさらに好ましい。
【0030】
[その他の成分]
本実施形態に係る冷感付与組成物は、上記成分(A)、成分(B)、成分(C)、成分(D)、および成分(E)以外の成分(その他の成分)を含有していてもよい。その他の成分としては、特に限定されないが、例えば、水、上記成分(E)以外のノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、多価アルコール、水溶性増粘剤、香料、色素、酸化防止剤、ビタミン類、動植物抽出物、金属イオン封鎖剤等の添加剤等が挙げられる。上記その他の成分は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なお、上記その他の成分からは、成分(A)~(E)に含まれるものは除かれるものとする。
【0031】
本実施形態に係る冷感付与組成物は、水を含有することが好ましい。本実施形態において使用する水としては、例えば、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水、超純水等が挙げられる。
【0032】
冷感付与組成物100質量%中の水の含有量は、特に制限されず、上記成分(A)、成分(B)、成分(C)、成分(D)、成分(E)、およびその他の成分を除いた残部を、その含有量とすることができる。本実施形態に係る冷感付与組成物中の水の含有量は、水溶性成分の溶解性を担保する観点、みずみずしい使用感を付与する観点から、3.0質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、20質量%以上がさらに好ましく、45質量%以上が特に好ましい。また、速乾性の観点からは、80質量%以下が好ましく、75質量%以下がより好ましく、70質量%以下がさらに好ましく、65質量%以下が特に好ましい。
【0033】
上記成分(E)以外のノニオン性界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンヒマシ油、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレングリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸アルキロールアミド等が挙げられる。
【0034】
上記アニオン性界面活性剤としては、高級脂肪酸石鹸、アルキル硫酸エステル塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、アシルメチルタウリン塩、N-アシル-N-メチル-β-アラニン塩、N-アシルグリシン塩、N-アシルグルタミン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルカルボン酸塩、アルキルフェニルエーテルスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸およびその塩、N-アシルサルコシンおよびその塩、ポリオキシエチレンヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド硫酸塩等が挙げられる。
【0035】
上記カチオン性界面活性剤としては、アルキルアミン塩、脂肪酸アミドアミン塩、エステル含有3級アミン塩等のアミン塩;モノアルキル型4級アンモニウム塩、ジアルキル型4級アンモニウム塩、トリアルキル型4級アンモニウム塩、ベンザルコニウム型4級アンモニウム塩等のアルキル4級アンモニウム塩;アルキルピリジニウム塩等の環式4級アンモニウム塩;塩化ベンゼトニウム等が挙げられる。
【0036】
上記両性界面活性剤としては、アルキルグリシン塩、カルボキシメチルグリシン塩、N-アシルアミノエチル-N-2-ヒドロキシエチルグリシン塩等のグリシン型両性界面活性剤;アルキルアミノプロピオン酸塩、アルキルイミノジプロピオン酸塩等のアミノプロピオン酸型両性界面活性剤、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン等のアミノ酢酸ベタイン型両性界面活性剤;アルキルヒドロキシスルホベタイン等のスルホベタイン型両性界面活性剤等が挙げられる。
【0037】
上記多価アルコールとしては、例えば、グリコール類、グリセリン類、糖アルコール等が挙げられ、グリコール類およびグリセリン類が好ましく、グリコール類がより好ましい。上記多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、イソプレングリコール、グリセリン、ジグリセリン等が挙げられる。これらの多価アルコールは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0038】
多価アルコールを含有する場合の冷感付与組成物100質量%中の含有量は、特に限定されず、冷感付与組成物の揮発性を調整するために適宜選択することができるが、例えば、1~60質量%、5~50質量%、10~40質量%、15~35質量%とすることができる。
【0039】
上記水溶性増粘剤としては特に限定されず、冷感付与組成物の用途に応じた粘度調整のために適宜選択することができるが、例えば、キサンタンガム、カルボマー、ベントナイト等が挙げられる。これらの水溶性増粘剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0040】
水溶性増粘剤を含有する場合の冷感付与組成物100質量%中の含有量は、特に限定されず、冷感付与組成物の用途に応じた粘度調整のために適宜選択することができるが、例えば、0.5~15質量%、1.0~10質量%とすることができる。
【0041】
本実施形態に係る冷感付与組成物の粘度は、冷感付与組成物の用途に応じて適宜選択することができるが、4000mPa・s以下が好ましく、10~2000mPa・sがより好ましく、50~1000mPa・sがさらに好ましく、100~400mPa・sが特に好ましい。なお、上記粘度は、B型粘度計を用いて、ローターNo.2を使用して、25℃、回転速度60rpmの条件等で測定される。上記B型粘度計としては、例えば、東機産業(株)製のTV-25型粘度計を使用することができる。
【0042】
本実施形態に係る冷感付与組成物は、常法により製造することができる。例えば、上記各成分を混合し、公知の方法、具体的には、パドルミキサー等で攪拌する方法等で、各成分を均一化する方法が挙げられる。
【0043】
<冷感性材料>
本実施形態に係る冷感付与組成物を付着させる被処理材料としては、織布、不織布、合成樹脂製布などにより構成された、衣類、タオル、包帯、マスク、シート化粧料などが挙げられる。
【0044】
織布および不織布の素材は特に限定されず、合成繊維であっても、天然繊維であっても、これらの混合繊維であってもよい。合成繊維としては、例えば、ナイロン繊維、ポリエステル繊維(例えば、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維等)、アクリル繊維、ポリオレフィン繊維(例えば、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維等)等が挙げられる。天然繊維としては、例えば、綿、パルプ、麻、リンター、カポック等の植物繊維を原料とする天然セルロース繊維、レーヨン、アセテート等の植物のセルロースを用いて調製した半天然セルロース繊維、前記天然セルロース繊維以外の天然繊維が挙げられる。合成樹脂製布の素材は特に限定されず、例えばポリウレタン、ポリエチレンなどが挙げられる。
【0045】
不織布としては、特に限定されないが、スパンレース不織布、スパンボンド不織布、サーマルボンド不織布、メルトブローン不織布、ニードルパンチ不織布、スティッチボンド不織布、湿式混紗不織布等が挙げられる。
【0046】
本実施形態に係る冷感性材料は、前記の冷感付与組成物および被処理材料を用い、公知慣用の製造方法により製造することができる。例えば、前記の冷感付与組成物をスプレー剤型とし、前記の被処理材料に噴霧し、その後乾燥させる方法;前記の冷感付与組成物を前記の被処理材料に含侵させ、その後乾燥させる方法;前記の被処理材料に、印刷などの方法により前記の冷感付与組成物を塗工し、その後乾燥させる方法などが挙げられる。
【0047】
本実施形態に係る冷感性材料の製造における、被処理材料に対する冷感付与組成物の使用量の質量比は、被処理材料の材質、構造、特性等によって適宜選択できるが、本発明の効果を充分に発揮する観点から、被処理材料100質量部に対して、10質量部以上が好ましく、50質量部以上がより好ましく、100質量部以上がさらに好ましい。また、使用時にたれ落ちが発生する等使用感が低下することを防止する観点、また乾燥時間が長くなるという理由から、1000質量部以下が好ましく、500質量部以下が好ましい。
【0048】
冷感付与組成物の被処理材料の表面積に対する使用量は、被処理材料の種類、構造、特性等によって適宜選択できるが、本発明の効果を充分に発揮する観点から、0.01mg/cm2以上が好ましく、0.05mg/cm2以上がより好ましく、0.1mg/cm2以上がさらに好ましい。また、使用時にたれ落ちが発生する等使用感が低下することを防止する観点、また乾燥時間が長くなるという理由から、10.0mg/cm2以下が好ましく、5.0mg/cm2以下がより好ましく、3.0mg/cm2以下がさらに好ましい。
【0049】
上記の方法により製造された冷感性材料は、前記の被処理材料に成分(A)が付着している。また、成分(C)および/または成分(D)が付着していることが好ましい。
【0050】
冷感性材料に付着した成分(A)に対する成分(C)の質量比は、使用初期における冷感向上と冷感の持続性とのバランスの観点から、0.001~1.0が好ましく、0.005~0.80がより好ましく、0.01~0.50がさらに好ましく、0.03~0.30が特に好ましい。
【0051】
冷感性材料に付着した成分(A)に対する成分(D)の質量比は、使用初期における冷感向上と冷感の持続性とのバランスの観点から、0.001~0.25が好ましく、0.003~0.20がより好ましく、0.005~0.15がさらに好ましく、0.007~0.10が特に好ましい。
【実施例
【0052】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。
【0053】
以下、実施例および比較例において用いた各種材料をまとめて示す。なお、括弧内のE.O.はオキシエチレン基の平均付加モル数を表す。
l-メンチルグリセリルエーテル:高砂香料工業(株)製の「クーリングエージェント10(N)」
イソボニルオキシエタノール:高砂香料工業(株)製の「セダノール」
l-メントール:高砂香料工業(株)製の「メントール JP COS」
イソステアレス-20:日本エマルジョン(株)製の「EMALEX 1820」(ポリオキシエチレンイソステアリルエーテル(20E.O.))
【0054】
(実施例および比較例)
表1に記載の組成に従い、実施例および比較例の各冷感付与組成物を常法により調製した。得られた各冷感付与組成物をミストスプレーボトルに充填し、マスクの内側に2回ずつ噴霧(合計約1.0mg/cm2)し、該マスクを25℃で15分間乾燥させた。得られたマスクの着用後(着用直後、1時間後、および4時間後)の冷感強度および刺激の有無について、下記の評価基準により評価した。上記評価は、専門評価員3名により、25℃、湿度50%RHの恒温恒湿の条件下で実施した。
【0055】
(1)冷感強度(着用直後、1時間後、および4時間後にそれぞれ評価)
5:非常に強い
4:強い
3:充分に感じる
2:弱い
1:なし
【0056】
(2)皮膚刺激
4:刺激なし
3:わずかな刺激あり
2:刺激あり
1:強い刺激あり
【0057】
(3)眼刺激
+:刺激あり
-:刺激なし
【0058】
【表1】
【0059】
表1の結果より、所定量のl-メンチルグリセリルエーテルおよび低級アルコールを含有する本発明の冷感付与組成物で処理した冷感性材料は、冷感および冷感の持続性に優れ、かつ、皮膚刺激および眼刺激が低減されていることがわかる。一方、比較例1および2の冷感性材料の冷感の持続性は満足のいくものではなかった。さらに、比較例1の冷感性材料は、着用直後から強い皮膚刺激および眼刺激が感じられ、比較例3の冷感性材料は、着用10分後からやや強い皮膚刺激が感じられた。
【0060】
処方例1
不織布(厚さ:300μm、セルロース繊維含有量:100質量%、目付:50g/m2)100質量部に下記組成からなる冷感付与組成物300質量部を含浸させて、シート化粧料とした。
l-メンチルグリセリルエーテル 12.00質量%
エタノール 25.00質量%
イソボニルオキシエタノール 0.30質量%
ユーカリプトール 0.30質量%
l-メントール 0.50質量%
イソステアレス-20 0.10質量%
ジプロピレングリコール 25.00質量%
精製水 残部
合計 100.00質量%
【0061】
処方例2
不織布(厚さ:300μm、セルロース繊維含有量:100質量%、目付:50g/m2)100質量部に下記組成からなる冷感付与組成物300質量部を含浸させて、シート化粧料とした。
l-メンチルグリセリルエーテル 12.00質量%
エタノール 50.00質量%
イソボニルオキシエタノール 1.00質量%
l-メントール 0.50質量%
イソステアレス-20 0.30質量%
ジプロピレングリコール 15.00質量%
プロピレングリコール 5.00質量%
キサンタンガム 0.15質量%
ハッカ油 0.20質量%
アロエエキス 0.10質量%
香料 0.10質量%
精製水 残部
合計 100.00質量%
【0062】
処方例3
不織布(厚さ:300μm、セルロース繊維含有量:100質量%、目付:50g/m2)100質量部に下記組成からなる冷感付与組成物300質量部を含浸させて、シート化粧料とした。
l-メンチルグリセリルエーテル 8.00質量%
エタノール 25.00質量%
イソボニルオキシエタノール 0.75質量%
l-メントール 0.30質量%
イソステアレス-20 0.20質量%
ジプロピレングリコール 5.00質量%
グリセリン 3.00質量%
カルボマー 0.10質量%
トリエタノールアミン 0.10質量%
イソプロピルメチルフェノール 0.10質量%
パンテノール 0.10質量%
香料 0.10質量%
精製水 残部
合計 100.00質量%
【0063】
処方例4
不織布(厚さ:300μm、セルロース繊維含有量:100質量%、目付:50g/m2)100質量部に下記組成からなる冷感付与組成物300質量部を含浸させて、シート化粧料とした。
l-メンチルグリセリルエーテル 15.00質量%
エタノール 25.00質量%
イソボニルオキシエタノール 1.50質量%
イソステアレス-20 0.10質量%
ジプロピレングリコール 10.00質量%
1,3-ブタンジオール 10.00質量%
PEG-400 0.20質量%
フルオロケイ酸(Na/Mg) 0.30質量%
イノシトール 0.10質量%
香料 0.10質量%
精製水 残部
合計 100.00質量%
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の冷感付与組成物を用いることにより、冷感および冷感の持続性に優れ、かつ、皮膚刺激および眼刺激が低減されたさまざまな冷感性材料が製造可能となる。