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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】吐出ポンプ及びポンプ容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 47/34 20060101AFI20241016BHJP
   F04B 9/14 20060101ALI20241016BHJP
   B05B 11/00 20230101ALI20241016BHJP
【FI】
B65D47/34 200
F04B9/14 B
B05B11/00 101E
B05B11/00 101G
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020181411
(22)【出願日】2020-10-29
(65)【公開番号】P2022072127
(43)【公開日】2022-05-17
【審査請求日】2023-05-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100156867
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 欣浩
(74)【代理人】
【識別番号】100143786
【弁理士】
【氏名又は名称】根岸 宏子
(72)【発明者】
【氏名】前田 信也
【審査官】長谷川 一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-193128(JP,A)
【文献】特開2014-141288(JP,A)
【文献】特表2007-517643(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 47/34
F04B 9/14
B05B 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物を収容する容器本体の口部に装着される装着部と、
前記内容物を吐出するための吐出口を有する吐出口部と、
前記口部の軸方向に沿って前記容器本体側に押下可能に前記装着部に設けられ、前記吐出口部を第一位置と第二位置との間で回動可能に保持する押下ヘッドと、
前記押下ヘッドの押下動作に伴い前記内容物を前記吐出口部側に送出するポンプ機構と、
前記吐出口部が挿入される挿入孔を有し、前記吐出口部を前記挿入孔に挿入させた状態で、前記押下ヘッドに前記第一位置と前記第二位置との間で回動可能に取り付けられる取付部と、
前記第一位置において前記挿入孔から前記軸方向に所定の距離L1上方に配置される開口を有する開口枠、及び、前記取付部に連結されるとともに前記取付部に対して前記開口枠を支持する支持部を有し、前記取付部を介して前記押下ヘッドに前記第一位置と前記第二位置との間で回動可能に設けられた吐出カバーと、
を備え、
前記第一位置は、前記口部と同軸になるよう前記吐出口を配置する位置であり、
前記第二位置は、前記第一位置における前記吐出口を前記軸方向と交差する方向回りに回動させた位置であり、
前記吐出カバーの回動に伴って前記吐出口部も回動し、前記第一位置において前記吐出カバーを前記軸方向下方に押下すること、及び、前記第二位置において前記取付部を前記軸方向に押下することの少なくとも一方によって前記押下ヘッドが押下されることで、前記吐出口から吐出された前記内容物が前記開口の内側を通過して外部に吐出されるよう構成されており、
前記所定の距離L1が30mm以下であり、前記開口の内径D1が40mm以上85mm以下である吐出ポンプ。
【請求項2】
前記開口の内径D1が50mm以上70mm以下である請求項1に記載の吐出ポンプ。
【請求項3】
前記第二位置において、前記開口枠の内面の一部と前記装着部の外周面とが対向し、そのときの前記内面と前記外周面との間の距離L2が10mm以上である請求項1又は請求項2に記載の吐出ポンプ。
【請求項4】
前記開口枠の一部に切欠部、又は、前記第一位置において軸方向上方に突出する凸部が設けられ、
前記吐出カバーが前記第二位置にあるとき、前記開口枠と前記装着部の外周面とが対向する位置に、前記切欠部又は前記凸部が配置されている請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の吐出ポンプ。
【請求項5】
前記ポンプ機構は、前記押下ヘッドに接続され、前記軸方向に沿って前記内容物が前記吐出口側に向かう流路が形成されるステムを有し、
前記吐出口部は、第一位置において前記ステムと同軸になるよう配置されると共に前記吐出口を一端側に有する吐出筒、及び、前記吐出筒の他端側に当該吐出筒と一体に設けられ、前記押下ヘッド内に回動可能に収容される回動筒を有し、
前記押下ヘッドは前記ステムと接続され、前記ステムから流出された前記内容物を貯留すると共に前記回動筒を収容する回動筒収容部を有し、
前記回動筒収容部と前記回動筒内の流路とが接続されている請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の吐出ポンプ。
【請求項6】
請求項1~請求項5のいずれか一項に記載の吐出ポンプと、前記容器本体とを備えた吐出容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器本体内に収容された内容物をポンプ機構により吐出する吐出ポンプ及びポンプ容器に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、感染症予防又は感染症拡大対策として、手指の消毒が求められている。例えば、事業所、店舗、病院、公共施設等、各種施設の入口には消毒用アルコール等の消毒液が配置され、来訪者に手指の消毒を促している。消毒液は、例えば、特許文献1に開示されるような吐出ポンプを備えたポンプ容器に収容される。当該吐出ポンプは、内容物が吐出されるノズルを有するノズルヘッドと、ポンプ機構とを有し、ノズルヘッドを手のひらなどで押下するといった簡易な操作で、ポンプ機構が作動し、容器本体に収容された内容物が吸引されて所定量の消毒液がノズルから吐出させるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-81592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、各種施設の入口等に配置された消毒液は、不特定多数の来訪者が使用する。ノズルヘッドは手指を消毒する前に押下操作されるため、ノズルヘッドにはウィルスや細菌等が付着するおそれがある。来訪者はノズルヘッドを押下操作した後に手指を消毒するため、ノズルヘッドに触れることで手指に付着したウィルスは除去、除菌される。しかしながら、ノズルヘッドと手のひら等の接触面積は比較的大きく、不特定多数の来訪者が触れるため、不衛生な印象を受ける場合がある。また、本来であれば使用の都度ノズルヘッドも消毒、除菌等されることが好ましい。
【0005】
さらに、これらの施設ではドアノブや手すりなどの手指が触れる箇所の定期的な消毒、除菌が求められる。また、飲食店等ではテーブル等の消毒、除菌が求められる。そのような場合に、例えば、ペーパータオル等に容器から吐出された消毒液を簡易に染み込ませることができるハンドラップ容器や、消毒箇所等に消毒液を直接噴出させるなどスプレー容器等が用いられている。
【0006】
このように現時点では用途に応じて、形態の異なる容器に収容された消毒液を複数用意する必要がある他、ストックの管理なども煩雑である。そのため、一つでこれらの種々の用途に適用可能な容器があると好ましい。さらに、容器全体をコンパクトに構成しつつ、子供から大人まで操作性に優れた容器であるとより好ましい。
【0007】
そこで、本発明の課題は、用途に応じて種々の使用方法で使用することができ、操作性が良好であり、且つ、押下操作部を衛生的に保持することが容易な吐出ポンプ及びポンプ容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明に係る吐出ポンプは、内容物を収容する容器本体の口部に装着される装着部と、前記内容物を吐出するための吐出口を有する吐出口部と、前記口部の軸方向に沿って前記容器本体側に押下可能に前記装着部に設けられ、前記吐出口部を第一位置と第二位置との間で回動可能に保持する押下ヘッドと、前記押下ヘッドの押下動作に伴い前記内容物を前記吐出口部側に送出するポンプ機構と、前記吐出口部が挿入される挿入孔を有し、前記吐出口部を前記挿入孔に挿入させた状態で、前記押下ヘッドに前記第一位置と前記第二位置との間で回動可能に取り付けられる取付部と、前記第一位置において挿入孔から前記軸方向に所定の距離L1上方に配置される開口を有する開口枠、及び、前記取付部に連結されるとともに前記取付部に対して前記開口枠を支持する支持部を有し、前記取付部を介して前記押下ヘッドに前記第一位置と前記第二位置との間で回動可能に設けられた吐出カバーと、を備え、前記第一位置は、前記口部と同軸になるよう前記吐出口を配置する位置であり、前記第二位置は、前記第一位置における前記吐出口を前記軸方向と交差する方向回りに回動させた位置であり、前記吐出カバーの回動に伴って前記吐出口部も回動し、前記第一位置において前記吐出カバーを前記軸方向下方に押下すること、及び、前記第二位置において前記取付部を前記軸方向に押下することの少なくとも一方によって前記押下ヘッドが押下されることで、前記吐出口から吐出された内容物が前記開口の内側を通過して外部に吐出されるよう構成されており、前記所定の距離L1が30mm以下であり、前記開口の内径D1が40mm以上85mm以下であることを特徴とする。
【0009】
本件発明に係る吐出ポンプにおいて、前記開口の内径D1が50mm以上70mm以下であることが好ましい。
【0010】
本件発明に係る吐出ポンプでは、前記第二位置において、前記開口枠の内面の一部と前記装着部の外周面とが対向し、そのときの前記内面と前記外周面との間の距離L2が10mm以上であることが好ましい。
【0011】
本件発明に係る吐出ポンプにおいて、前記開口枠の一部に切欠部、又は、前記第一位置において軸方向上方に突出する凸部が設けられ、前記吐出カバーが前記第二位置にあるとき、前記開口枠と前記装着部の外周面とが対向する位置に、前記切欠部又は前記凸部が配置されていることが好ましい。
【0012】
本件発明に係る吐出ポンプにおいて、前記ポンプ機構は、前記押下ヘッドに接続され、前記軸方向に沿って前記内容物が前記吐出口側に向かう流路が形成されるステムを有し、前記吐出口部は、第一位置において前記ステムと同軸になるよう配置されると共に前記吐出口を一端側に有する吐出筒、及び、前記吐出筒の他端側に当該吐出筒と一体に設けられ、前記押下ヘッド内に回動可能に収容される回動筒を有し、前記押下ヘッドは前記ステムと接続され、前記ステムから流出された前記内容物を貯留すると共に前記回動筒を収容する回動筒収容部を有し、前記回動筒収容部と前記回動筒内の流路とが接続されていることが好ましい。
【0013】
上記課題を解決するため、本件発明に係る吐出容器は、上記吐出ポンプと、前記容器本体とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る吐出ポンプは、内容物を収容する容器本体の口部に装着される装着部と、内容物を外部に吐出するための吐出口を有する吐出口部と、前記口部の軸方向に沿って容器本体側に押下可能に前記装着部に設けられる押下ヘッドと、押下ヘッドの押下動作に伴い内容物を吐出口側に送出するポンプ機構とを備えている。押下ヘッドには吐出カバーが取付部により第一位置と第二位置との間で回動可能に設けられており、少なくとも第一位置及び第二位置において吐出カバーを軸方向下方に押下すると押下ヘッドが押下され、吐出口から開口の内側を通過して開口枠の外部に内容物が吐出される。
【0015】
第一位置において、開口枠の開口は吐出口に対して容器本体の口部の軸方向上方に配置される。従って、第一位置では開口枠を使用者の手のひら等で容器本体側に押下するという簡易な動作で、内容物を手のひら等の側に向かって吐出させ、手のひら等に内容物を付着させることができる。開口枠が押下操作部となるため、手のひら等と押下操作部との接触面積を小さくすることができ、押下操作部を衛生的に保持することが容易になる。さらに、手のひら等に付着しなかった余剰の内容物は開口枠等に落下する。よって、内容物として消毒液等を収容すれば、使用の都度、開口枠も消毒等されるため、押下操作部を衛生的に保持することができる。
【0016】
また、当該吐出ポンプでは吐出カバーを回動させることで、吐出口部も回動する。例えば、第二位置において吐出口の向きを軸方向に交差する向きにすることで、内容物を軸方向に交差する向きに吐出させることができる。従って、用途に応じて種々の使用方法で使用することができる。さらに吐出カバーを回動させるという簡易な操作で、吐出口の向きを少なくとも第一位置と第二位置とに切り替えることができる。また、吐出カバーにおいて挿入孔と開口との間の距離L1が30mm以下とされているため、ポンプ機構を駆動させるためのストロークを確保しつつ、全体をコンパクトに構成することができる。つまり、第一位置においては軸方向の長さを短くすることができ、第二位置においては開口枠が容器本体の口部から離れすぎないようにしつつ、容器本体の口部を指で把持するためのスペースを確保することができる。また、開口の内径D1を40mm以上85mm以下とすることで、開口枠が大きくなり過ぎないように維持しつつ、第一位置において手のひら等で開口枠を押下する際に子供の手から大人の手まで押下しやすい大きさとしつつ、内容物を手のひら等に比較的広い付着面積で良好に付着させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施の形態の吐出ポンプを備えたポンプ容器の正面図であり、一部を断面図として表している。但し、断面部分は図5(a)に示すC-C断面である。
図2図1に示す吐出ポンプが備える吐出口部の構成等を説明するための斜視図である。
図3図1に示す吐出ポンプが備える吐出口部が押下ヘッド内に収容された状態を説明するための斜視図である。
図4図1に示す吐出ポンプが備える押下ヘッド及び吐出口部内の構成を説明するための斜視図である。
図5図1に示すポンプ容器の横断面を表す図であり、(a)は図1のA-A矢視断面を表す図であり、(b)は図1のB-B矢視断面を表す図である。
図6】種々の構成を説明するための図であり、(a)は本発明にいう所定の距離L1及び内容物の流路を説明するための部分図であり、(b)は本発明にいう所定の距離L1及びL2を説明するための部分図(但し、第二位置(第二姿勢))であり、(c)は開口枠(リング状部)の開口の内径D1を説明するための図である。
図7図1に示すポンプ容器の第一位置(第一姿勢)における使用形態を説明するための図であり、図1に示すポンプ容器の側断面図である。但し、断面は図5(a)に示すD-D断面を表す。
図8図1に示すポンプ容器の第二位置(第二姿勢)における使用形態を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明に係る吐出ポンプ及びポンプ容器の実施の形態を説明する。
図1は第一の実施の形態の吐出ポンプ100a及びポンプ容器100の正面図であり、一部を断面図として表している。但し、断面は図5(a)のC-C断面を表す。図1に示すように、ポンプ容器100は、容器本体10と、容器本体10の口部11に装着部20を介して装着される吐出ポンプ100aとを備えている。本実施の形態では容器本体10に内容物として消毒用アルコールや消毒用の次亜塩素酸ナトリウム水溶液等の消毒液が収容される場合を想定して説明する。しかしながら、本発明においてポンプ容器の容器本体には消毒液に限らず各種液体を収容することができる。
【0019】
吐出ポンプ100aは、容器本体10の口部11に装着される装着部20と、内容物を外部に吐出するため吐出口31を有する吐出口部30と、口部11の軸方向に沿って容器本体10側に押下可能に装着部20に設けられる押下ヘッド40と、押下ヘッド40の押下動作に伴い作動するポンプ機構50と、押下ヘッド40に回動可能に取り付けられる吐出カバー60とを備えている。吐出カバー60は取付部70により、吐出カバー60の姿勢を図1及び図7に示す第一姿勢(第一位置)と、第一姿勢から略90度回転させた第二姿勢(第二位置)(図8参照)に回動可能に押下ヘッド40に取り付けられている。図7に示すように第一姿勢では、吐出カバー60の上方に設けられるリング状部61を手のひら等で押下することにより、容器本体10内の内容物が軸方向上方に向かって吐出され、リング状部61の開口61aの内側を通って手のひら側に吐出されるように構成されている。
【0020】
以下、各部の具体的な構成を説明する。なお、本明細書において「上」、「下」は相対的な位置関係を示すものであり、容器本体10を図1に示す正立姿勢に配置した状態で、吐出ポンプ100aを容器本体10の口部11に装着したときに、容器本体10が位置する側を「下」、押下ヘッド40が位置する側を「上」と称するものとする。また、「軸方向」とは、容器本体10の口部11の中心軸Oの軸方向を意味する。また、中心軸Oに対して直交する方向を径方向といい、中心軸O周りに周回する方向を週方向という。また、図1は吐出ポンプ100a及びポンプ容器100の正面図である。
【0021】
図1に示すように、容器本体10は、底部12、胴部13、肩部14及び上記口部11を備え、これらは一体に構成されている。図示例では、胴部13は底部12から肩部14に向かって徐々に縮径されている。口部11は胴部13よりも小径であり、肩部14により、口部11と胴部13とが連設されている。口部11の外周面には雄ねじ11aが設けられている。
【0022】
装着部20は、口部11に着脱可能に装着されるキャップ部21と、キャップ部21の外側を被覆する外筒22とを備え、これらは中心軸Oと同軸に配設されている。キャップ部21はその内周面に雌ねじ21aを備え、この雌ねじ21aが上記口部11に設けられた雄ねじ11aに螺合する。キャップ部21の天壁面は環状を呈し、その中央部分はポンプ機構50のステム52等が挿入される挿通孔21bとなっている。キャップ部21の天壁面により口部11の上端開口縁が被覆される。
【0023】
外筒22は全体が略筒状に形成されており、軸方向下方から上方に向けて順に下部外筒22aと、連設部22bと、上部外筒22cとを備えている。下部外筒22aは、キャップ部21の外周面の外側を被覆する。連設部22bは下部外筒22aと上部外筒22cとを連設する。また、連設部22bの内側においてキャップ部21が連設されている。上部外筒22cの上端はキャップ部21の天壁面よりも上方に配置される。上部外筒22cに対して押下ヘッド40が軸方向に沿って上下に移動可能に挿入される。
【0024】
次に、ポンプ機構50について説明する。ポンプ機構50は従来公知のものを適宜適用することができるが、本実施の形態では図1に示すポンプ機構50を採用した。図1に示すポンプ機構50は、シリンダ51、ステム52、ピストン53、ピストンガイド54及びコイルスプリング55を備えている。
【0025】
シリンダ51は口部11から容器本体10の内側に垂下されている。シリンダ51の下端開口には下方に向けて延びる取付筒51aが配設されている。取付筒51aには容器本体10に収容された内容物を吸い上げるための吸上筒51bが挿嵌されている。取付筒51a及び吸上筒51bは連通し、シリンダ51、取付筒51a及び吸上筒51bはそれぞれ中心軸Oと同軸に配設されてる。シリンダ51の下端には吸込弁部51cが配設されている吸込弁部51cは、シリンダ51内が加圧状態にあるときシリンダ51の下端開口を閉塞し、シリンダ51内が減圧状態にあるときシリンダ51の下端開口を開放する。
また、シリンダ51の上端部に、径方向の外側に向けて突出するフランジ部51dが形成されている。フランジ部51dは、パッキン58を介して容器本体10の口部11の上端開口縁に配置されており、フランジ部51dの上面にキャップ部21の天壁面が配置される。
【0026】
ステム52はコイルスプリング55により上方付勢された状態で軸方向に上下に移動可能に配設される。ステム52の下部は、シリンダ51の上端開口部より下方に位置している。ステム52の上部は、シリンダ51の上端開口部より上方に位置している。ステム52のうち、下端部は他の部分より拡径された拡径部52aとなっている。ステム52の上端開口縁は、装着部20の上部外筒22cより上方に位置している。
【0027】
ピストン53は、ステム52の拡径部52aの下端に配設されており、ステム52の上下動に連係して、軸方向に上下に移動可能にシリンダ51内に収容される。ピストン53は筒状に形成されるとともに、中心軸Oと同軸に配設されている。
【0028】
ピストンガイド54は中心軸Oと同軸に配置されている。ピストンガイド54の上部は、上記拡径部52aの上方においてステム52の内側に挿嵌されている。ピストンガイド54の下部はピストン53に連係している。ピストンガイド54の下部には、径方向に貫く連通孔54aが形成されている。ピストンガイド54には、この連通孔54aの下部に、径方向の外側に突出した台座部54bが形成されている。台座部54bは、ピストン53を、ピストン53の下方から支持している。これにより、シリンダ51内において、ピストン53より下方に位置する部分と、連通孔54aとの連通が遮断されている。ピストンガイド54が、ピストン53に対して下方移動し、台座部54bがピストン53から下方に離間したときに、シリンダ51内において、ピストン53より下方に位置する部分と、連通孔54aとが連通する。
【0029】
コイルスプリング55は、内側にステム52が挿入されるとともに、ステム52を上方付勢状態で下方移動可能に支持する。コイルスプリング55の下端部は、シリンダ51の上端部内に挿入されている。コイルスプリング55のうち下端部を除く全域が、シリンダ51の上端開口部より上方に位置している。コイルスプリング55の下端部は、シリンダ51に配設された下支持部56に支持され、コイルスプリング55の上端部は、ステム52の上部に配設された上支持部57に支持されている。
【0030】
次に、吐出口部30及び押下ヘッド40について説明する。まず、図1図6を参照して吐出口部30の構成を説明する。なお、図1には吐出口部30及び押下ヘッド40の各部についての符号の表示を一部省略している。図2は吐出口部30の外観を示す斜視図である。図3は吐出口部30が押下ヘッド40内に収容された状態を示す斜視図である。図4は取付部70が押下ヘッド40に取り付けられた状態で、吐出口部30及び押下ヘッド40の一部を断面で表す斜視図である。図5(a)は図1におけるA-A矢視断面図であり、図6(a)に押下ヘッド40及び吐出口部30内の流路を矢印a~eで示す。
【0031】
吐出口部30は液体を霧状にして吐出口31から吐出するスプレーノズルとして構成される。図1に示すように、吐出口部30は、先端に吐出口31を備えている。吐出口31の吐出面(ノズルチップ)の略中心位置には微細な孔が形成されている(図2図4参照)。この微細な孔は中心軸Oと同軸に配置されており、当該微細な孔を通過して内容物が外部に噴霧される。また、図1及び図2等に示すように、吐出口部30は吐出筒32と回動筒33とを備え、全体がT字状を呈する。図1に示すように吐出筒32は中心軸Oと同軸に配置され、その先端に吐出口31を備える。図2に示すように、回動筒33は径方向に長尺であり、回動筒33の略中央位置において、吐出筒32の下端に連結される。回動筒33は、図4図5(a)及び図6(a)等に示すように、吐出筒32に連通する細管部33aと、細管部33aより大径の摺動軸部33bとを備えている。図5(a)及び図6(a)等に示すように細管部33aの一側端は開口し、他端側は吐出筒32と連通している。細管部33aと、吐出筒32によって、図6(a)に示す矢印dのように径方向に延びる流路と、同図に示す矢印eのように軸方向に延びる流路とが接続されたL字状の流路が形成されている。なお、図4には細管部33a内の流路を(d)で示している。
【0032】
また、吐出口部30は、図2及び図5(a)等に示すように、細管部33aの他端側に摺動軸部33bが設けられ、細管部33aと摺動軸部33bとは同軸に径方向に並んで配置される。図5(a)に示すように、細管部33aと摺動軸部33bとの間は隔壁により遮断されており、細管部33aから摺動軸部33b内に内容物が流入しないようにされている。また、摺動軸部33bの他端側は押下ヘッド40の上部ヘッド部43の周壁部43aに摺接されている。
このように構成された回動筒33は、押下ヘッド40に設けられる回動筒保持部44により、回動可能に保持される(図2図4図7及び図8等参照)。なお、回動筒保持部44については後述する。
【0033】
次に押下ヘッド40について説明する。押下ヘッド40は、図1に示すように、軸方向下方から上方に向けて順に、ポンプ機構50のステム52等を保持する保持台座部41と、保持台座部41を内側に収容する下部ヘッド部42と、下部ヘッド部42に連設される上部ヘッド部43とを備えている。また、押下ヘッド40は上部ヘッド部43内に、上記回動筒保持部44(図1及び図2参照)を備えている。上部ヘッド部43は本発明にいう回動筒収容部に該当する。
【0034】
図1図2及び図4に示すように、保持台座部41は、下部台座部41bと、上部台座部41cと、嵌挿筒41aとを有する。これらは中心軸Oと同軸に配設される。下部台座部41bは有天短筒状を呈し、その外周面は下部ヘッド部42の内周面に圧接されている。下部台座部41bの天壁面は円環状に形成されており、その天壁面に連設して上部台座部41cが設けられている。上部台座部41cは下部台座部41bより小径の有天短筒状を呈する。嵌挿筒41aは上部台座部41cの天壁面を厚み方向に貫通するように設けられている。嵌挿筒41aの下部は、上部台座部41cの天壁面の下方に延在し、ステム52の内側に嵌挿されている。嵌挿筒41aの上部は上部台座部41cの天壁面の上方に突出し、回動筒保持部44に連設される。
【0035】
図1図3及び図4等に示すように、下部ヘッド部42は略筒状に形成され、保持台座部41を収容保持した状態で外筒22内を軸方向上下に移動可能に構成されている。また、図1及び図5(b)に示すように、装着部20の外筒22の内周面上端には径方向内側に突出する略環状の抜止部22dが設けられている。また、下部ヘッド部42の外周面下端には径方向外側に突出する抜止部42aが設けられている。押下ヘッド40が軸方向上方に移動した際、これらにより抜け止めされている。また、押下ヘッド40が軸方向下方に移動した際、下部台座部41bの下端がキャップ部21の天壁面に当接することで、押下ヘッド40の軸方向下方への移動が規制される。なお、図5(b)は図1におけるC-C矢視断面図である。また、図5(b)において、ポンプ機構50に関する構成(ステム52、コイルスプリング55等)に対する符号は省略している。
【0036】
また、図5(b)に示すように、外筒22側に設けられた抜止部22dには抜止部42aを軸方向に挿抜可能な溝部22eが形成されている。押下ヘッド40が装着部20に取り付けられた状態で、押下ヘッド40を回転させて、溝部22eの位置に抜止部42aを移動させて、押下ヘッド40を軸方向上方に移動させることで、押下ヘッド40を装着部20から取り外すことができる。
【0037】
上部ヘッド部43は、主に図3及び図4に示すように、上面視において略方形の角筒状の周壁部43aと、周壁部43aの上部を覆うドーム状の曲面を有する天壁部43bとを備えている。天壁部43bには中心軸Oと天壁部43bとが交差する位置から周壁部43aに向かって案内溝孔43cが設けられている。図3に示すように案内溝孔43cには吐出口部30の吐出筒32が挿入され、吐出口部30の回動筒33が回動筒保持部44に回動可能に保持された状態で吐出筒32を上記第一姿勢に応じた第一位置(図1等参照)から、図3に示す中間位置を経由して、第二姿勢に応じた第二位置への移動可能に案内する(図6(b)及び図8参照)。図1等に示すように第一位置では吐出口31は中心軸Oと同軸に配置され、吐出面は軸方向上方を向いている。また、図8等に示すように第二位置では吐出口31は軸方向と略直交する向きに配置され、吐出口も軸方向と略直交する向きを向く。
【0038】
また、上部ヘッド部43の周壁部43aには、図1に示す正面視においてその両側方に径方向に突出する一対の回動軸部43dが設けられている(図3図5(a)等参照)。この回動軸部43dは取付部70の側面部72に形成された軸受孔72aに挿入される(図1図5(a)等参照)。
【0039】
上述のとおり、上部ヘッド部43内に上記回動筒保持部44が収容されている(図1及び図3参照)。回動筒保持部44は、主に図2に示すように、上部台座部41cの天壁面から立設される支持台44aと、支持台44a支持される曲壁面部44bと、支持台44a及び曲壁面部44bの一側端側に設けられる内容物貯留部44cと、当該内容物貯留部44cを一端側から密閉するシール部44dとを有する(図2及び図5(a)参照)。
【0040】
支持台44aは、図2図4及び図7等に示すように、上部台座部41cの天壁面に設けられており、曲壁面部44bを保持台座部41に対して支持する。また、図2に示すように支持台44aの他側方は下部台座部41bの天壁面まで延在する。図4に示すように支持台44aの一側方の内部は流路(図6(a)に示す矢印b)となっている。当該流路は断面視において略方形を呈する。また、当該流路は図6(a)に示すように、保持台座部41に設けられた嵌挿筒41a内の流路(図6(a)に示す矢印a)の上端と連通しており、ポンプ機構50により送出された内容物が当該流路に流入する。
【0041】
曲壁面部44bは図2及び図4等に示すように、回動筒33の摺動軸部33bの外周面に沿う曲壁面を有する。当該曲壁面は、図7等に示すように、断面において中心角が120°以上の円弧形状を呈する。当該曲壁面部44b内に摺動軸部33bが挿入され、摺動軸部33bが曲壁面部44b内で抜け止めされた状態で回動保持される。
【0042】
内容物貯留部44cは、図2及び図5(a)等に示すように、支持台44a内の流路及び回動筒33の細管部33aの流路の一側方に設けられる。内容物貯留部44cはこれらの流路と接続され、一側方から上記シール部44dによりシールされている。図5(a)及び図6(a)に示すように、支持台44a側の流路(矢印b)から送出された内容物は、シール部44dにより内容物が上部ヘッド部43内に漏出しないように密閉された状態で、軸方向上方に送出され(図6(a)に示す矢印c)、回動筒33の細管部33a側の流路(矢印d)に送出される。
【0043】
次に、吐出カバー60及び取付部70について説明する。図1図4図5(a)、図6図8を参照して、取付部70の構成を説明する。図1及び図4等に示すように、取付部70は吐出口部30が挿入される挿入孔71aを有する天壁面71と、天壁面71から垂設される上記側面部72とを備える。また、図5(a)及び図7等に示すように両側面部72の間には背面部73が設けられている。図1に示す第一姿勢において、挿入孔71aには、吐出口31の吐出面が吐出カバー60のリング状部(開口枠)61側を向くようにして吐出口部30が挿入されている。第一姿勢において、挿入孔71a、吐出口31及びリング状部61の開口61aは中心軸Oと同軸に配置される。図6(b)及び図8に示す第二姿勢においても、挿入孔71a、吐出口31及びリング状部61の開口61aは同軸に配置された状態を維持する。但し、第二姿勢では、これらは、中心軸Oに対して略直交する向きに配置される。
【0044】
図1及び図5(a)等に示すように、側面部72には上記軸受孔72aが設けられており、軸受孔72aには回動軸部43dが挿入されている。側面部72と背面部73とは上部ヘッド部43を3方から取り囲むように設けられている。取付部70はこの回動軸部43dを回動中心として、図7に示す第一姿勢から図8に示す第二姿勢まで略90度回動可能に上部ヘッド部43に取り付けられている。また、図8に示すように、取付部70が第二姿勢まで回動したとき、天壁面71の端部が下部ヘッド部42の天壁面に当接し、それ以上の回動が規制される。また、第二姿勢において、背面部73は口部11の軸方向上方に配置される。背面部73は、第二姿勢において、上部ヘッド部43の天壁部43bの全面を覆うことができる程度の面積を有する。
【0045】
吐出カバー60は、図1等に示すように、第一姿勢において取付部70の天壁面71に設けられた挿入孔71aに対して軸方向上方に配置される開口61aを有するリング状部61と、取付部70の天壁面71に対してリング状部61を支持する支持部62とを有する。図5(a)に示すように、リング状部61は円環状の板状部材から形成されている。また、図1等に示すように、リング状部61は平板状ではなく、一部が側面視において波形状に上方に突出する凸部61bを複数有している。本実施の形態ではリング状部61は4つの凸部61bを有する。
【0046】
次に、図6を参照しながら、吐出カバー60の構成についてより詳細に説明する。図6(a)に示すように、取付部70の天壁面71に設けられた挿入孔71aからリング状部61の開口61aは軸方向に所定の距離L1上方に配置される。当該所定の距離L1は30mm以下となるようにされている。当該所定の距離L1は、中心軸O上の挿入孔71aと開口61aとの離間距離をいう。当該距離L1は次のようにして測定する値とする。挿入孔71aは天壁面71に設けられた貫通孔であり開口している。挿入孔71aの上端開口縁を中心軸Oに直交する仮想面で、開口上面を塞ぐ。同様に、リング状部61の開口61a下端開口縁を中心軸Oに直交する仮想面で開口下面を塞ぐ。このときの両仮想面間の中心軸O上の距離を上記所定の距離L1とする。この所定の距離L1が30mm以下であると、ポンプ機構50を駆動させるためのストロークを確保しつつ、吐出ポンプ100a及びポンプ容器100の軸方向の高さが高くなりすぎないように、全体をコンパクトに構成することができる。全体がよりコンパクトな吐出ポンプ100a及びポンプ容器100を得る上で、当該所定の距離L1は28mm以下であることがより好ましく、25mm以下であることがさらに好ましい。なお、本実施の形態では、吐出口31の吐出面の上端外周縁と、挿入孔71aの上端開口縁とは軸方向において略同じ高さに配設されるが、吐出口31の吐出面が挿入孔71aの上端開口縁から軸方向上方に突出するように吐出口部30が挿入孔71aに挿入されていてもよいし、吐出口31の吐出面が挿入孔71aの上端開口縁よりも軸方向においてやや下方に配置されるように吐出口部310が挿入孔71aに挿入されていてもよい。上記所定の距離L1は、吐出口31の吐出面の位置によらず、挿入孔71aとリング状部61の開口61a(開口面)との間の上記距離とする。
【0047】
また、吐出カバー60を第一姿勢から第二姿勢に回動させたとき、図6(b)に示すように、リング状部61の内面の一部と装着部20の外筒22の連設部22b及び下部外筒22aの外周面とが対向する。本実施の形態の吐出ポンプ100a及びポンプ容器100では、第二姿勢において、リング状部61の内面と外筒22の外周面との間の距離L2が10mm以上確保されている。図8に示すように、第二姿勢において、取付部70の背面部73を指で押下する際、装着部20の連設部22b付近が指把持される。その際、当該距離L2が10mm未満であると装着部20を指で把持することが困難になる、或いは、把持した指がリング状部61に当接し、装着部20を把持した状態で背面部73を押下することできなくなるなど、操作性が低下する。当該距離L2は装着部20の外筒22の外径等によっても変化する。上記所定の距離L1を30mm以下としつつ、当該距離L2を10mm以上、好ましくは15mm以上とすることで、第二姿勢における操作性も確保することができる。また、本実施の形態では、図6(b)に示すように、リング状部61の上記凸部61bは、第二姿勢において、外筒22の外周面と対向する位置に設けられている。それにより、上記所定の距離L1を30mm以下にしつつ、当該所定の距離L2を10mm以上とすることが容易になる。なお、上記所定の距離L1が30mmであるとき、リング状部61が平板状であっても、すなわち、上記凸部61bを設けずとも、装着部20を指で把持するためのスペースを確保することができる。
【0048】
また、図6(c)に示すように、リング状部61の開口61aの内径D1は40mm以上85mm以下であるものとする。リング状部61の開口61aが大きくなり過ぎないように維持しつつ、図7に示すように第一姿勢において手のひら等でリング状部61を押下する際に子供の手から大人の手まで押下しやすい大きさとしつつ、内容物を手のひら等に比較的広い付着面積で良好に付着させることができる。リング状部61の開口61aの内径D1は50mm以上70mm以下であることがより好ましく、55mm以上65mm以下であることがさらに好ましい。但し、本実施の形態では、リング状部61の開口61aは円形を呈し、図6(c)に示す内径D1と、内径D2とは同じ長さを有する。開口61aが不定形状である場合、中心軸Oを通る最小内径及び最大内径のいずれもが上記範囲内であることが好ましい。
【0049】
さらに、リング状部61を上面視したとき、リング状部61を成すリング環の幅W(図6(c)参照)は3mm以上であることが好ましい。図7に示すように第一姿勢において、リング状部61を手のひらで押下したときに、この幅Wが小さすぎると、手のひらにリング状部61が食い込むことが想定される。この幅Wが3mm以上あると、リング状部61を押下した際における手のひらへの食い込みを抑制することができる。そのため、子供の軟らかい手で操作したときも、子供に痛みを感じさせることなく操作性を良好にすることができる。なお、本実施の形態では、リング状部61のリング環の外縁端及び内縁端に所定の曲率で丸みを設けており、押下操作時に手のひらに角の部分で食い込みが生じないようにしている。また、リング状部61を成すリング環の幅Wが一定ではない場合、その最小幅が3mm以上であることが好ましい。
【0050】
リング状部61の材料は、ポリプロピレン樹脂(PP)、ABS樹脂、ポリアセタール樹脂(POM(ポリオキシメチレン樹脂))、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)などを好適に用いることができる。これら列挙した各樹脂は強度が高いため、リング状部61(及び吐出カバー60全体)をこれらの樹脂で形成することにより、厚みが薄く、上記幅Wを2mm~3mmとしたときなども、使用時の繰り返し押下操作に耐える耐久性を付与することができる。
【0051】
次に、支持部62について説明する。図5(a)に示すように、本実施の形態では、支持部62は4本の板状部材62aから構成されている。各板状部材62aの両端が取付部70の側面部72とリング状部61とに連結されることで、取付部70に対してリング状部61を支持している(図1図7等参照)。また、図5(a)及び図7等に示すように、各板状部材62aは2本ずつ側面部72に取り付けられており、取付部70の前面側と背面部73側において、互いに隣接する板状部材62aの間が大きく開口するようになっている。
【0052】
次に、図7及び図8を参照して当該吐出ポンプ100aの動作を説明する。なお、図7及び図8では一部符号を省略している。図7に示すように、吐出カバー60が第一姿勢になるように配置されたとき、リング状部61が第一の押下操作部として機能する。手のひら等でリング状部61を軸方向に押下すると、押下ヘッド40が軸方向下方に移動する。押下ヘッド40の移動に伴い、ステム52が軸方向下方に移動し、ポンプ機構50が作動する。ポンプ機構50により吸い上げられた内容物はステム52、嵌挿筒41aを介して図6(a)に示す流路(矢印a)を軸方向上方に送出される。そして、図6(a)に示すように、嵌挿筒41aの上端において支持台44a内の流路(矢印b)を経由して、回動筒保持部44内の内容物貯留部44cを軸方向上方に送出される(矢印c)。そして、回動筒33の細管部33a内の流路(矢印d)により径方向に送出される。そして、吐出筒32に流入した内容物は吐出口31に向かって軸方向上方(矢印e)に送出される。吐出口31はリング状部61を向いている。また、ポンプ機構50により所定の勢いが付与された状態で内容物が吐出される。そのため、内容物は吐出口31から吐出されたときよりも拡径しながら上方に向かって噴霧される。そして、噴霧された内容物はリング状部61の略中央に設けられた円形の開口61aの内側を通過しつつ、リング状部61の上方(外部)に吐出され、リング状部61を押下した手のひら等に内容物が付着する。
【0053】
一方、図8に示すように、吐出カバー60が第二姿勢になるように配置されたとき、背面部73が第二の押下操作部として機能する。例えば、指等で背面部73を軸方向に押下すると、押下ヘッド40が押し下げられる。第二姿勢では、吐出口部30が上記案内溝孔43cに案内されて図8に示す第二位置に配置されている。すなわち、吐出口31は径方向を向いている。そのため、第二姿勢では、ポンプ機構50から送出された内容物が径方向に噴霧される。
【0054】
以上説明した本実施の形態の吐出ポンプ100aによれば、吐出カバー60を第一姿勢になるように配置した場合、リング状部61を使用者の手のひら等で容器本体10側に押下するという簡易な動作で、手のひら等に内容物を付着させることができる。その際、第一の押下操作部をリング状部61とすることで、当該押下操作部を円形の平板状に構成した場合と比較すると、押下操作部と手のひらとの接触面積が小さくすることができる。そのため、操作時に操作者から押下操作部に移行する汚れやウィルス等の付着面積が小さくなる。また、操作後にこれらを拭き取る作業等も簡易になる。これらのことから、押下操作部を衛生的に保持することが容易である。さらに、手のひら等に付着しなかった余剰の内容物はリング状部61等に落下する。よって、内容物として消毒液等を収容すれば、使用の都度、吐出カバー60側には消毒液が落下し、吐出カバー60を衛生的に保持することができる。
【0055】
本実施の形態では、第一姿勢時におけるリング状部61を上面(押下面)には側面視において波形状に上方に突出する凸部61bが設けられている。そのため、手のひらとの接触面積をより小さくすることができる。
【0056】
また、本実施の形態では、リング状部61を取付部70に対して支持する支持部62が4本の板状部材62aから構成されており、各板状部材62aの間は開口している。そのため、吐出口31から吐出された内容物が吐出カバー60内に貯留することがない。従って、リング状部61を押下した際に手のひら側から落下した内容物が吐出カバー60内に貯留されることがなく、吐出カバー60を衛生的に保持することができる。
【0057】
さらに、本実施の形態では、吐出カバー60が取付部70により第一姿勢と第二姿勢とに変位可能に押下ヘッド40に取り付けられている。そのため、使用形態に応じて、第一姿勢と第二姿勢に変位させて使用可能な2way容器として使用することができる。例えば、第一姿勢では、上述したように押下操作する手のひら等に直接内容物を付着させてもよいし、ハンドラップ容器のようにペーパータオル等の塗布具に内容物を付着させるようにしてもよい。また、第二姿勢では、当該ポンプ容器100を例えば頭部を押下すると、軸方向と交差する方向に内容物が噴霧されるスプレー容器のように使用することができる。
【0058】
また、本実施の形態では吐出カバー60を第二姿勢に変位させたときに、平板状の背面部73が口部11の上方に配置されるようにし、当該背面部73を第二の押下操作部として機能するため、第二姿勢の場合も押下ヘッド40の押下操作が容易である。
【0059】
さらに、本実施の形態では上述のとおり支持部62を4本の板状部材62aにより構成し、それらを取付部70の側面部72に二本ずつ取り付けている。そのため、第二の姿勢の際には軸方向下方に広い開口を確保することができる。そのため、第二姿勢で押下ヘッド40を押下させた際に、吐出口31から内容物を噴霧する際の噴霧範囲を広くしたときに、支持部62に遮られることなく、リング状部61の中央部分の開口に加えて板状部材62aの間の開口からも内容物を外部に噴霧することができる。
【0060】
また、本実施の形態では、上部ヘッド部43に案内溝孔43cを設け、吐出口部30を案内溝孔43cに沿って移動させることで簡易に内容物が吐出される方向を切り替えることができる。その際、本実施の形態では、吐出カバー60を傾斜させて回転させるという簡易な操作で吐出口部30を案内溝孔43cに沿って移動させることができる。そのため、従来の2way仕様の吐出容器のように、例えば、吐出口31を複数設けて、使用しない吐出口31をシール部材により塞ぐ必要がなく、簡易な構成とすることができる。
【0061】
さらに、本実施の形態では、吐出口部30を回動筒33と吐出筒32とを備える構成とし、回動筒33を回動筒保持部44に回動可能に保持させる。そのため、ポンプ機構50のステム52と、吐出口部30とを接続しつつ、吐出口部30を回動させることが容易であり、また、ステム52の上端と吐出口部30との下端との間の距離を小さくすることができる。この点に加えて、回動筒33と、ステム52とを直接連結する管状の連結部材を用いていない。回動筒33とステム52とを連結部材により直接連結した場合には、回動筒33を回動させたときに、連結部材が曲がる等の機械的ストレスが負荷され、連結部材の劣化が生じることも想定される。しかしながら、本実施の形態では、上述の構成を採用することで、機械的ストレスを受けやすい部材を用いなくてもよいため、当該吐出ポンプ100a及びポンプ容器100を長期間にわたって良好に使用することができる。
【0062】
上記実施の形態は本発明に係る吐出ポンプ及びポンプ容器の一例であり、本発明に係る吐出ポンプ及びポンプ容器は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、上記実施の形態では、円形の開口を有する円環状の平板部材からなるリング状部61を上記第一の押下操作部とした。しかしながら、本発明に係る吐出ポンプでは、上記リング状部61を、上記吐出カバー60が所定の向きに取り付けられたときに、吐出口31の軸方向上方が開口し、当該開口の矩形、多角形、不定形等、各種形状の枠状に形成された開口枠に置換し、当該開口枠を上記第一の押下操作部として機能させてもよい。このとき、開口枠は、開口形状と外形状とが相似形である必要はない。つまり、本発明にいう開口枠は開口形状と外形状とは異なる形状であってもよく、開口枠の具体的な形状が限定される訳ではない。
【0063】
さらに、上記実施の形態では開口枠を閉図形である円環状のリング環から成るリング状部61として構成したが、本発明にいう開口枠は閉図形形状である必要はなく、例えば、図8に示す第二姿勢においてリング状部61の下部に切欠部を設けたC字状形状としてもよいし、第二姿勢においてリング状部61の上部及び下部に切欠部を設けてもよい。また、開口枠が他の形状であっても、このような切欠部を設けてもよいのは勿論である。
【0064】
また、上記実施の形態では、吐出カバー60を4本の板状部材62aにより構成し、互いに隣接する板状部材62aの間を開口部としたが、板状部材62aの数は4本に限定されるものではない。上記実施の形態のように支持部62を複数の板状部材62aにより構成し、隣接する板状部材62aの間を開口部とすれば、吐出カバー60内に内容物が貯留されるのを抑制することができる。しかしながら、例えば、取付部70の天壁面71,支持部62及びリング状部61を一体に形成したカップ状或いは皿状に形成してもよい。また、その際にメッシュ状或いは多数の孔を設けることなど、取付部70とリング状部61との間を支持する支持部として構成しつつ、支持部に開口部を複数設けることで、リング状部61を吐出口31に対して軸方向上方に配置しつつ、吐出口31から吐出された内容物が吐出カバー60内に貯留されないようにすることで、上記と同様の効果を得ることができる。
【0065】
さらに、吐出口部30の構成やポンプ機構50等の具体的な構成は特に限定されるものではなく、適宜、従来公知の構成を採用することができる。また、上記実施の形態において、吐出カバー60を、押下ヘッド40に対して取付部70により簡易に脱着可能な構成としてもよい。ユーザが吐出カバー60を押下ヘッド40から簡易に脱着可能な構成とすることで、所望のタイミングで吐出カバー60を洗浄することができる。そのため、操作押下部としての吐出カバー60を衛生的に保持することができる。
【0066】
また、当該ポンプ容器100及び吐出ポンプ100aは容器包装材として用いられる各種樹脂材料(例えば、ポリプロピレン樹脂(PP)、低密度ポリエチレン(LDPE)や高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)等のポリエチレン樹脂(PE)の他、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)等)を適宜採用することができる。また、抗菌剤が練り込まれた樹脂材料等により吐出ポンプ100a及びポンプ容器100が構成されていてもよいし、表面に抗菌コート等が施されていてもよい。さらに、容器本体10は樹脂製に限らず、硝子製、金属製等でもよい。
【符号の説明】
【0067】
10 :容器本体
11 :口部
11a :雄ねじ
12 :底部
13 :胴部
14 :肩部
20 :装着部
21 :キャップ部
21a :雌ねじ
21b :挿通孔
22 :外筒
22a :下部外筒
22b :連設部
22c :上部外筒
22d :抜止部
22e :溝部
30 :吐出口部
31 :吐出口
32 :吐出筒
33 :回動筒
33a :細管部
33b :摺動軸部
40 :押下ヘッド
41 :保持台座部
41a :嵌挿筒
41b :下部台座部
41c :上部台座部
42 :下部ヘッド部
42a :抜止部
43 :上部ヘッド部
43a :周壁部
43b :天壁部
43c :案内溝孔
43d :回動軸部
44 :回動筒保持部
44a :支持台
44b :曲壁面部
44c :内容物貯留部
44d :シール部
50 :ポンプ機構
51 :シリンダ
51a :取付筒
51b :吸上筒
51c :吸込弁部
51d :フランジ部
52 :ステム
52a :拡径部
53 :ピストン
54 :ピストンガイド
54a :連通孔
54b :台座部
55 :コイルスプリング
56 :下支持部
57 :上支持部
58 :パッキン
60 :吐出カバー
61 :リング状部
61a :開口
61b :凸部
62 :支持部
62a :板状部材
70 :取付部
71 :天壁面
71a :挿入孔
72 :側面部
72a :軸受孔
73 :背面部
100 :ポンプ容器
100a :吐出ポンプ
D1 :内径
L1 :所定の距離
L2 :距離
O :中心軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8