IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社マキタの特許一覧

<>
  • 特許-打ち込み工具 図1
  • 特許-打ち込み工具 図2
  • 特許-打ち込み工具 図3
  • 特許-打ち込み工具 図4
  • 特許-打ち込み工具 図5
  • 特許-打ち込み工具 図6
  • 特許-打ち込み工具 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】打ち込み工具
(51)【国際特許分類】
   B25C 7/00 20060101AFI20241016BHJP
【FI】
B25C7/00 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020205747
(22)【出願日】2020-12-11
(65)【公開番号】P2022092819
(43)【公開日】2022-06-23
【審査請求日】2023-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】星山 信幸
(72)【発明者】
【氏名】長尾 雅也
(72)【発明者】
【氏名】下前 拓人
【審査官】荻野 豪治
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-160411(JP,A)
【文献】特開平08-047871(JP,A)
【文献】特開平07-246574(JP,A)
【文献】特開2007-083361(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25C 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
打ち込み工具であって、
打ち込み具を打撃する打撃機構を内装した工具本体部と、
使用者が把持するグリップ部と、
前記工具本体部の前記打撃機構を起動するために前記使用者が操作するスイッチレバーと、
前記スイッチレバーの上部に一体的に結合され、且つ前記工具本体部の長手方向に延出するレール部と、
前記レール部を前記工具本体部の長手方向にスライド可能に支持するガイド部を備え、
前記ガイド部は、前記レール部のスライド方向の複数個所に分散して配置され、かつ前記スイッチレバーのオフ位置とオン位置との間のスライド距離よりも長いスパンで前記レール部をスライド可能に支持する打ち込み工具。
【請求項2】
打ち込み工具であって、
打ち込み具を打撃する打撃機構を内装した工具本体部と、
使用者が把持するグリップ部と、
前記工具本体部の前記打撃機構を起動するために前記使用者が操作するスイッチレバーと、
前記スイッチレバーの上部に一体的に結合され、且つ前記工具本体部の長手方向に延出するレール部と、
前記レール部を前記工具本体部の長手方向にスライド可能に支持するガイド部と、
前記グリップ部に一体に設けられ、前記スイッチレバーの下部に沿って延在されるスイッチガード部を備え、
前記スイッチレバーの操作中に、前記スイッチレバーの下部と前記スイッチガード部との間に常時隙間が設けられる打ち込み工具。
【請求項3】
請求項1又は2記載の打ち込み工具であって、
前記工具本体部に供給される打ち込み具を収容するマガジンと、
前記マガジン内の打ち込み具の残数が一定数まで減少した時点で前記スイッチレバーのオン操作を規制する規制部材と、備え、
前記規制部材が前記レール部を兼ねている打ち込み工具。
【請求項4】
請求項1~3の何れか1つに記載の打ち込み工具であって、
前記工具本体部に供給される打ち込み具を収容するマガジンを有し、
前記レール部は、前記マガジンから前記スイッチレバーに延在するレール本体と、前記レール本体から前記スイッチレバーの側面に沿って延在する当接部と、前記当接部から前記スイッチレバー内に嵌合するように延在する嵌合部を有する打ち込み工具。
【請求項5】
請求項記載の打ち込み工具であって、
前記スイッチレバーは、側面に前記当接部が圧入される溝部と、前記嵌合部が圧入されるように前記溝部から交差方向に形成された嵌合孔を有する打ち込み工具。
【請求項6】
請求項記載の打ち込み工具であって、
前記スイッチレバーをオフ位置へ戻すスプリングを有し、
前記スプリングは、上下方向において前記レール本体と前記レール本体の下方に位置する前記嵌合孔との間に位置する打ち込み工具。
【請求項7】
請求項の何れか1つに記載の打ち込み工具であって、
前記ガイド部は、前記スイッチレバーのオフ位置とオン位置との間のスライド距離よりも長いスパンで前記レール部をスライド可能に支持する打ち込み工具。
【請求項8】
請求項2~7の何れか1つに記載の打ち込み工具であって、
前記ガイド部は、前記レール部のスライド方向の複数個所に分散して配置される打ち込み工具。
【請求項9】
請求項1~の何れか1つに記載の打ち込み工具であって、
前記レール部の前記ガイド部に対する許容傾動角度は、前記スイッチレバーの全スライド範囲において、前記スイッチレバーの下面と前記グリップ部との間に隙間が発生するように設定されている打ち込み工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えば充電式のタッカ等の打ち込み工具に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば圧縮エアのエア圧や圧縮ばねの付勢力を打ち込み力として利用する打ち込み工具では、多数本の打ち込み具を収容するマガジンを備えている。マガジンには、工具本体部の打ち込み動作に連動して打ち込み具を打ち込み通路側に送るプッシャプレートを有する送り機構と、打ち込み具の残数が例えばゼロになった時点で打ち込み動作を規制する空打ち防止機構が具備されている。工具本体部には、起動操作用のスイッチレバーが具備されている。グリップ部を把持した手の指先でスイッチレバーがオン位置側に引き操作されると、工具本体部の打ち込み動作がなされる。スイッチレバーはスプリングによりオフ位置側に付勢されている。スイッチレバーの下方には、グリップ部の前面から前方にスイッチガード部が張り出されている。スイッチガード部によりスイッチレバーの不用意なオン操作が防止される。
【0003】
特許文献1に開示された空打ち防止機構では、マガジン内の打ち込み具の残数が例えばゼロになるとスイッチレバーの引き操作が規制されて打ち込み動作ができないようになる。スイッチレバーはストッパロッドの一端側に結合されている。ストッパロッドの他端側はマガジンの内部に至っている。打ち込み具の残数が例えばゼロになってプッシャプレートが一定位置に至ると、ストッパロッドの先端部がプッシャプレートに係合されて、スイッチレバーがオフ位置に戻されなくなる。これにより、マガジン内の打ち込み具の残数がゼロ若しくは一定数になった後におけるスイッチレバーの引き操作ができなくなって、打ち込み動作(空打ち)が防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-160411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
スイッチレバーは、通常使用時ではオン位置とオフ位置との間をこじることなくスムーズに移動されるようにグリップ部に支持される必要がある。従来スイッチレバーのグリップ部に対するスムーズな移動動作を確保するため、スイッチレバーの下面をスイッチガード部の上面に摺接させてこじりが発生しにくいようにしていた。その結果、スイッチレバーの下面とスイッチガード部との間の隙間が無くなり若しくは小さくなっていた。このため、スイッチレバーの下面とスイッチガード部との間の隙間に粉塵等が堆積し、これが移動抵抗となってかえってスイッチレバーの動きが阻害されやすくなっていた。
【0006】
本開示では、マガジンの空打ち防止機構が連携されたスイッチレバーのスムーズな動作がより確実になされるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示によれば、打ち込み工具は、打ち込み具を打撃する打撃機構を内装した工具本体部と、使用者が把持するグリップ部と、工具本体部の打撃機構を起動するために使用者が操作するスイッチレバーを備える。また、打ち込み工具は、スイッチレバーの上部に一体的に結合され、且つ工具本体部の長手方向に延出するレール部と、レール部を工具本体部の長手方向にスライド可能に支持するガイド部を備える。
【0008】
従って、スイッチレバーは上部側でスライド可能に吊り下げ支持される。このため、スイッチレバーの下面とグリップ部との間に常時適切な隙間が発生するよう、各部の大きさや相対位置を設定することができる。これにより、スイッチレバーのスムーズなスライド動作を確保しつつ、スイッチレバーの下面とグリップ部との間の隙間に粉塵が堆積しにくくなる。
【0009】
本開示の他の特徴によると、打ち込み工具は、工具本体部に供給される打ち込み具を収容するマガジンと、マガジン内の打ち込み具の数が一定数に至った時点でスイッチレバーのオン操作を規制する規制部材を備える。規制部材がレールを兼ねている。従って、空打ち防止用の規制部材を介してスイッチレバーがスライド可能に支持される。これにより、スイッチレバーとグリップ部との間の隙間が適切に設定される。
【0010】
本開示の他の特徴によると、レール部はマガジンからスイッチレバーに延在するレール本体と、レール本体からスイッチレバーの側面に沿って延在する当接部と、当接部からスイッチレバー内に嵌合するように延在する嵌合部を有する。従って、レール本体がスイッチレバーにガタツキなく結合される。これにより、スイッチレバーにレール部としての規制部材が一体化される。
【0011】
本開示の他の特徴によると、スイッチレバーは、側面に当接部が圧入される溝部と、嵌合部が圧入されるように溝部から交差方向に形成された嵌合孔を有する。従って、簡単な組み付け作業で規制部材がスイッチレバーに対して確実に一体化される。これにより組み付け性が良くなる。
【0012】
本開示の他の特徴によると、スイッチレバーをオフ位置へ戻すスプリングを有する。スプリングは、上下方向の位置についてレール本体とレール本体の下方に位置する嵌合孔との間に位置する。従って、当接部がスプリングに対して上下方向に跨って当接される。これにより、スイッチレバーがスプリングの付勢力によりこじることなくスムーズにスライドするように支持される。
【0013】
本開示の他の特徴によると、ガイド部は、スイッチレバーのオフ位置とオン位置との間のスライド距離よりも長いスパンでレール部をスライド可能に支持する。従って、スイッチレバーがより安定的にスライド可能に支持される。
【0014】
本開示の他の特徴によると、ガイド部は、レール部のスライド方向の複数個所に分散して配置される。従って、レール部が複数に分散されたガイド部により長いスパンで支持されることにより、スイッチレバーが安定的にスライド支持される。
【0015】
本開示の他の特徴によると、レール部のガイド部に対する許容傾動角度は、スイッチレバーの全スライド範囲において、スイッチレバーの下面がグリップ部に当接することを抑制する程度に小さい。従って、スイッチレバーの下面とグリップ部との間に、常時適切な隙間が確保されて粉塵が堆積しにくくなる。これによりスイッチレバーのスムーズなスライド動作が確保される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施形態に係る打ち込み工具の側面図である。本図は、左右半割り構造のハウジングの右側を分離して内部構造を露出させた状態で示されている。本図では、マガジンとグリップ部と駆動部の下部側の図示が省略されている。
図2】スイッチレバーと規制部材とマガジンのプッシャを取り出して示す側面図である。本図は、空打ち防止機構が作動していない状態を示している。
図3】スイッチレバーと規制部材とマガジンのプッシャを取り出して示す側面図である。本図は、空打ち防止機構が作動した状態を示している。
図4】スイッチレバーと規制部材を左側から見た斜視図である。
図5】規制部材を左側から見た斜視図である。
図6】スイッチレバーを左側から見た斜視図である。
図7図6中VII-VII線断面矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の実施形態を図1図7に基づいて説明する。図1に示すように、本実施形態では打ち込み工具1として、圧縮ばねの付勢力を打ち込み力として利用する打ち込み工具で、いわゆる充電式タッカと称される手持ち工具を例示する。以下の説明では、打ち込み具nの打ち込み方向を前側、反打ち込み方向を後側とする。従って、打ち込み具nが前方へ打ち出されて被打ち込み材Wに打ち込まれる。使用者はグリップ部30を把持して当該打ち込み工具1の後方に位置する。従って、左右方向については使用者を基準として用いる。
【0018】
本実施形態の打ち込み工具1は、打撃機構12を内装した工具本体部10と、駆動源としての電動モータ21を内装した駆動部20と、使用者が把持するグリップ部30を備えている。駆動部20の前方に沿って、多数の打ち込み具nを装填するためのマガジン40を備えている。図では省略されているが、駆動部20の下部とグリップ部30の下部に跨ってバッテリ取り付け部が設けられている。バッテリ取り付け部の下面に沿って、電源としてのバッテリパックが取り付けられる。
【0019】
図1~3に示すように工具本体部10は、概ね円筒形で左右半割り構造の本体ハウジング11を有する。本体ハウジング11の下部には、駆動部20とグリップ部30とバッテリ取り付け部の外郭を成すハウジング部が一体に成形されている。これらを含めた全体として左右半割り構造のハウジングが用いられている。
【0020】
本体ハウジング11内に、圧縮ばね13と打撃ドライバ14を有する打撃機構12が内装されている。圧縮ばね13の付勢力により打撃ドライバ14が前進する。工具本体部10の前部に打ち込みノーズ部15が設けられている。打撃ドライバ14の先端部は、打ち込みノーズ部15の打ち込み通路15b内に至っている。
【0021】
打撃ドライバ14が打ち込み通路15b内を前進することにより打ち込み具nが打撃されてその先端の射出口15aから打ち出される。打ち込みノーズ部15は、工具本体部10に対して前後方向(打ち込み方向)に一定の範囲で変位可能に設けられている。図示するように射出口15aを被打ち込み材Wに押し付けて打ち込みノーズ部15を相対的に後退させた状態でのみ打ち込み動作がなされる。
【0022】
打ち込み動作は、打ち込みノーズ部15を後退させた状態で、スイッチレバー31をオン操作することによりなされる。スイッチレバー31は、グリップ部30の上部前面に設けられている。図2,3に示すようにスイッチレバー31はスプリング33により前方のオフ位置側に付勢されている。スプリング33の前部は、スイッチレバー31の後面に設けた円形の保持孔31aの底部に当接されている。スイッチレバー31の後面であって保持孔31aの下側には、作動アーム部31bが後方へ突き出す状態に設けられている。
【0023】
使用者は、グリップ部30を把持した手の指先でスイッチレバー31を後方へ引き操作することができる。スイッチレバー31の後方に起動スイッチ32が内装されている。スイッチレバー31がスプリング33に抗して後方へ引き操作されると、作動アーム部31bにより起動スイッチ32がオンする。起動スイッチ32がオンされると電源回路が導通されて電動モータ21が起動する。電動モータ21の起動により打撃機構12の打ち込み動作が開始される。引き操作を解除すると、スイッチレバー31はスプリング33の付勢力により前方のオフ位置に戻される。打ち込み後一定のタイミングで電動モータ21が停止される。
【0024】
打ち込み通路15b内に、マガジン40から打ち込み具nが1本ずつ供給される。マガジン40の内部には、多数本の打ち込み具nが並列に仮結合されて帯板形を有する状態で装てんされる。マガジン40は開閉式の蓋を有する。図1では蓋が開放された状態で示されている。蓋の図示は省略されている。マガジン40の内部には、ばね付勢されたプッシャプレート41が内装されている。プッシャプレート41は、図では見えていない引っ張りばねにより打ち込み具nの供給側(打ち込みノーズ部15側)に付勢されている。プッシャプレート41により多数本の打ち込み具nが一体で打ち込みノーズ部15側に押される。これにより打ち込みノーズ部15の打ち込み通路内に打ち込み具nが1本ずつ供給される。
【0025】
マガジン40には、工具本体部10の空打ち動作を防止するための機構が設けられている。図2は、マガジン40内の最後の打ち込み具nが打ち込み通路15b内に供給された状態を示している。図3は、最後の打ち込み具nが打ち込まれて打ち込み通路15b内及びマガジン40内に打ち込み具nが無くなった状態を示している。図3に示す状態では、プッシャプレート41が打ち込み具供給方向の最先端位置であって打ち込み通路15b内に進入した状態となっている。
【0026】
プッシャプレート41が最先端位置に移動すると、係合凸部41aに規制部材42が係合される。規制部材42は、工具本体部10の長手方向(前後方向)に延在されて、マガジン40とスイッチレバー31との間に掛け渡されている。規制部材42は、前後に長いレール部(レール本体)43と係合ロッド部44を備えている。レール部43の前部に係合ロッド部44が一体に結合されている。係合ロッド部44は、後面側からマガジン40内に進入している。係合ロッド部44に係合凹部44aが設けられている。プッシャプレート41が上記最先端位置に移動すると、係合凸部41aが係合凹部44a内に係合される。これにより係合ロッド部44の後方への変位が規制される。係合ロッド部44がプッシャプレート41の係合凸部41aに係合されることで規制部材42の後方への変位が規制される。
【0027】
規制部材42の後部であって、レール部43の後部はスイッチレバー31の上部(工具本体部10側)に結合されている。規制部材42の後方への変位が規制されることで、スイッチレバー31の後方への引き操作(オン操作)ができなくなる。これにより、工具本体部10の空打ち動作が回避される。規制部材42によるスイッチレバー31のオン位置への規制は、マガジン40内の打ち込み具nが空になってプッシャプレート41が最先端位置に移動した時点でのみなされる。打ち込み通路15b内に最後の打ち込み具nが供給された状態若しくはマガジン40内に1本以上の打ち込み具nが残っている段階では、係合凸部41aが係合凹部44aに係合されないため、規制部材42によるスイッチレバー31のオン位置の操作は規制されない。
【0028】
レール部43は金属部品で、鋼板を打ち抜き、曲げ加工等して形成されている。レール部43の前部に上方に起立する前起立部43aが設けられている。前起立部43aの上部に係合ロッド部44の後部が結合されている。係合ロッド部44は、前起立部43aの上部から直角方向に突き出して前方へ延在されている。
【0029】
図4,5に示すようにレール部43の後部には、当接部43bが曲げ加工されている。当接部43bは下方へ直角に張り出す状態に設けられている。当接部43bの下部に嵌合部43cが曲げ加工されている。嵌合部43cは、当接部43bの下部から右方へ直角に曲げられている。
【0030】
図6,7に示すように、スイッチレバー31の左側部には、一定幅の溝部31cが設けられている。溝部31cは、スイッチレバー31の上部から下方へ延在されている。溝部31cは、保持孔31aよりも下方へ延在されている。溝部31cの後側の側部には、圧入用の突部31dが設けられている。突部31dは上下方向の2箇所に設けられている。溝部31cに沿ってレール部43の当接部43bが圧入されている。当接部43bは、その板厚方向を溝部31cの深さ方向に沿わせた向きで圧入されている。
【0031】
溝部31cの下部に、矩形の嵌合孔31eが設けられている。嵌合孔31eは、溝部31cの下部から直角に曲がって当該スイッチレバー31の内部へ進入する方向に一定深さで設けられている。嵌合孔31eの上面に圧入用の突部31fが設けられている。突部31fは、前後方向の2箇所に設けられている。嵌合孔31eにレール部43の嵌合部43cが圧入されている。当接部43bと嵌合部43cがスイッチレバー31の左側部に食い込むように圧入されることで、レール部43がスイッチレバー31に対してガタつきなく強固に結合されている。
【0032】
図2,3に示すように規制部材42のレール部43は、本体ハウジング11に設けた複数個所のガイド部11a,11bにより前後にスライド可能に支持されている。レール部43の前部と後部の2箇所において、レール部43の下面側にガイド部11a,11bが摺接されて、レール部43がガイド部11a,11bにより下方から受けられている。前後のガイド部11a,11bの間隔(支持スパン)は、スイッチレバー31のオン位置とオフ位置との移動距離よりも十分に大きい。レール部43が大きなスパンでスライド支持されることで、スイッチレバー31がこじることなくスムーズにスライド操作される。
【0033】
上記したようにレール部43がスイッチレバー31にガタつきなく強固に結合され、かつレール部43がガイド部11a,11bによりスライド可能に支持されることで、スイッチレバー31がスライド操作可能に支持されている。この点、従来は空打ち防止用のストッパロッドの後部側がスイッチレバーに対してオン操作側に単に係合させた構成であった。このため、スイッチレバーのスライド動作についてはその下面をグリップ部ハウジングのスイッチガード部に摺接させてスライド支持する必要があった。この点で、本実施形態に係るスイッチレバー31のスライド支持構造は、従来とは大きく異なっている。
【0034】
本実施形態では、スイッチレバー31はレール部43を介して前後にスライド可能に吊り下げ支持されている。このため、スイッチレバー31をグリップ部30のスイッチガード部30aに摺接させる必要がない。本実施形態では、図1~3に示すようにスイッチレバー31の下面とグリップ部30のスイッチガード部30aとの間には隙間Cが設けられている。この隙間Cによりスイッチレバー31の下面とスイッチガード部30aとの間に粉塵が詰まることが抑制される。
【0035】
レール部43のガイド部11a,11bに対する許容傾動角度は、極力小さくなるようにガタツキが規制されている。これにより、スイッチレバー31の全スライド範囲において、スイッチレバー31の下面がグリップ部のスイッチガード部30aに当接することが抑制される。このため、スイッチレバー31の下面とスイッチガード部30aとの間に、常時適切な隙間Cが確保されて粉塵が堆積しにくくなる。これによりスイッチレバー31のスムーズなスライド動作が確保される。
【0036】
後側のガイド部11bの後方にも平板形状のガイド部11cが設けられている。このガイド部11cも本体ハウジング11の内面に一体に設けられている。このガイド部11cは、スイッチレバー31の上面に摺接されている。このガイド部11cによりスイッチレバー31の上方への変位及びガタツキが規制される。
【0037】
以上のように構成した本実施形態に係る打ち込み工具1によれば、マガジン40の空打ち防止機構を構成する規制部材42を利用してスイッチレバー31が吊り下げ支持されている。規制部材42のレール部43はガイド部11a,11bにより前後にスライド可能に支持されている。このため、レール部43がスイッチレバー31を前後にスライド可能に支持するレールとして機能する。
【0038】
このようにスイッチレバー31がスライドレールとして機能するレール部43を介して吊り下げ支持されることから、従来のようにスイッチレバー31の下面をグリップ部30のスイッチガード部30aの上面に摺接させてスライド支持する必要がない。このため、本実施形態では、スイッチレバー31の下面とスイッチガード部30aの上面との間に隙間Cが設けられている。隙間Cが十分に大きく設定されることにより、粉塵等の異物が侵入しても容易に排出されて堆積しにくくなる。これにより、スイッチレバー31のスムーズなスライド動作が確保される。
【0039】
スイッチレバー31の溝部31cに当接部43bを圧入し、嵌合部43cを嵌合孔31eに圧入して、レール部43の後部にスイッチレバー31が結合される。このため、簡単な組み付け作業で規制部材42がスイッチレバー31に対して確実に一体化される。
【0040】
レール部43の当接部43bは、スイッチレバー31の上面からスプリング33の下方に至る範囲に延在されている。これにより、当接部43bがスプリング33に対して上下方向に跨って当接される。これにより、スイッチレバー31がスプリング33の付勢力によりこじることなくスムーズにオン位置とオフ位置との間をスライド可能に支持される。
【0041】
また、レール部43が、スイッチレバー31のオフ位置とオン位置との間のスライド距離よりも長いスパンで2箇所に配置されたガイド部11a,11bによりスライド支持されている。これにより、スイッチレバー31がより安定的にスライド可能に支持される。
【0042】
さらに、レール部43のガイド部11a,11bに対する許容傾動角度は、スイッチレバー31の全スライド範囲において、スイッチレバー31の下面がスイッチガード部30aの上面に当接することがない程度に小さく設定されている。このため、スイッチレバー31の下面とスイッチガード部30aとの間に、常時適切な隙間Cが確保されて粉塵が堆積しにくくなる。これによりスイッチレバー31のスムーズなスライド動作が確保される。
【0043】
以上説明した実施形態には種々変更を加えることができる。例えば、レール部43に当接部43bと嵌合部43cを設けて、それぞれを溝部31cと嵌合孔31eに圧入してレール部43の後部をスイッチレバー31に結合する構成を例示したが、当接部43bと嵌合部43cを省略してレール部43の後部をスイッチレバー31の上面若しくはその周辺に例えばねじ止めする構成としてもよい。
【0044】
また、レール部43の後部をスイッチレバー31の上部前面から差し込むように圧入して結合する構成としてもよい。さらに、インサート成形により規制部材をスイッチレバーに一体化する構成としてもよい。
【0045】
規制部材42のレール部43を前後方向の2箇所のガイド部11a,11bでスライド支持する構成を例示したが、前後に長い1箇所のガイド部、あるいは前後に3箇所以上のガイド部により支持する構成としてもよい。
【0046】
圧縮ばね13を打撃の推力として利用する機械バネ式の打ち込み工具1を例示したが、圧縮ガスを打撃のための推力として利用するガスバネ式の打ち込み工具についても例示したスイッチレバーの支持構造を適用できる。
【符号の説明】
【0047】
n…打ち込み具
W…被打ち込み材
1…打ち込み工具(充電式タッカ)
10…工具本体部
11…本体ハウジング
11a,11b,11c…ガイド部
12…打撃機構
13…圧縮ばね
14…打撃ドライバ
15…打ち込みノーズ部
15a…射出口、15b…打ち込み通路
20…駆動部
21…電動モータ
30…グリップ部
30a…スイッチガード部
31…スイッチレバー
31a…保持孔、31b…作動アーム部、31c…溝部、31d…突部
31e…嵌合孔、31f…突部
32…起動スイッチ
33…スプリング
40…マガジン
41…プッシャプレート
41a…係合凸部
42…規制部材(空打ち防止機構)
43…レール部
43a…前起立部、43b…当接部、43c…嵌合部
44…係合ロッド部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7