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特許7572227操作支援機能付き操作スイッチ、操作支援機能付き非常停止スイッチおよび操作スイッチ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】操作支援機能付き操作スイッチ、操作支援機能付き非常停止スイッチおよび操作スイッチ
(51)【国際特許分類】
   H01H 13/20 20060101AFI20241016BHJP
   H01H 13/62 20060101ALI20241016BHJP
   H01H 3/28 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
H01H13/20 A
H01H13/62
H01H3/28 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020207574
(22)【出願日】2020-12-15
(65)【公開番号】P2022094600
(43)【公開日】2022-06-27
【審査請求日】2023-11-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000000309
【氏名又は名称】IDEC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103241
【弁理士】
【氏名又は名称】高崎 健一
(72)【発明者】
【氏名】大西 祥太
(72)【発明者】
【氏名】福井 孝男
(72)【発明者】
【氏名】藤谷 繁年
【審査官】荒木 崇志
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2002/0195883(US,A1)
【文献】実開昭54-045377(JP,U)
【文献】実開昭59-110926(JP,U)
【文献】特開2020-198207(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 3/00 - 7/16
H01H 13/00 - 13/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作支援機能付き操作スイッチにおいて、
手動により押込み操作可能な操作部と、
前記操作部に連結され、接点を切り替えるための操作軸と、
前記操作部の押込み方向に沿った第1の力を前記操作軸に作用させるための第1の作用手段と、
前記第1の作用手段による前記第1の力の作用方向とは逆向きの第2の力を前記操作軸に作用させるための第2の作用手段とを備え、
前記操作部の手動による押込み操作前においては、前記第2の作用手段による前記第2の力が前記第1の作用手段による前記第1の力より大きく、前記接点が第1の状態におかれており、
前記操作部の手動による押込み操作後または前記操作部の操作支援後においては、前記第1の作用手段による前記第1の力が前記第2の作用手段による前記第2の力より大きく、前記接点が前記第1の状態と異なる第2の状態におかれており、
前記操作軸が、前記第1の作用手段による前記第1の力が作用する第1の操作軸と、前記第2の作用手段による前記第2の力が作用するとともに、前記接点を切り替える第2の操作軸とを有し、前記第1、第2の操作軸が分離可能に設けられている、
ことを特徴とする操作支援機能付き操作スイッチ。
【請求項2】
請求項1において、
前記操作部の手動による押込み操作後または前記操作部の操作支援後において、前記操作部の手動による復帰の際に前記第2の操作軸が前記第1の操作軸とともに移動せず、前記接点が前記第2の状態を維持している
ことを特徴とする操作支援機能付き操作スイッチ。
【請求項3】
請求項1において、
前記第1の作用手段が弾性部材である
ことを特徴とする操作支援機能付き操作スイッチ。
【請求項4】
請求項1において、
前記第2の作用手段がアクチュエータであり、前記アクチュエータが、少なくとも前記第1の状態において、通電時に前記操作軸に対して前記第2の力を作用させている
ことを特徴とする操作支援機能付き操作スイッチ。
【請求項5】
請求項1において、
前記第1の作用手段が圧縮ばねであり、前記第2の作用手段が電磁ソレノイドである
ことを特徴とする操作支援機能付き操作スイッチ。
【請求項6】
請求項において、
前記接点の状態変化を検出する検出部をさらに備えた
ことを特徴とする操作支援機能付き操作スイッチ。
【請求項7】
請求項1において、
前記操作軸に対して外周側から保持力を作用させる保持手段をさらに備えた
ことを特徴とする操作支援機能付き操作スイッチ。
【請求項8】
操作支援機能付き操作スイッチにおいて、
手動により押込み操作可能な操作部と、
前記操作部に連結された第1の操作軸と、
前記第1の操作軸と分離可能に設けられ、前記操作部の押込み操作時に前記第1の操作軸とともに移動して、接点を切り替えるための第2の操作軸と、
前記操作部の押込み方向に沿った第1の力を前記第1の操作軸に作用させるための第1の作用手段と、
前記操作部の押込み方向に沿った第1’の力を前記第2の操作軸に作用させるための第1’の作用手段と、
前記第1の作用手段による前記第1の力および前記第1’の作用手段による前記第1’の力の各作用方向とは逆向きの第2の力を前記第2の操作軸に作用させるための第2の作用手段とを備え、
前記操作部の手動による押込み操作前においては、前記第2の作用手段による前記第2の力が前記第1の作用手段による前記第1の力および第1’の作用手段による前記第1’の力の合力より大きく、前記接点が第1の状態におかれており、
前記操作部の手動による押込み操作後または前記操作部の操作支援後においては、前記第1の作用手段による前記第1の力および第1’の作用手段による前記第1’の力の合力が前記第2の作用手段による前記第2の力より大きく、前記接点が前記第1の状態と異なる第2の状態におかれている
ことを特徴とする操作支援機能付き操作スイッチ。
【請求項9】
操作支援機能付き非常停止スイッチにおいて、
手動により押込み操作可能な押しボタンと、
前記押しボタンに連結され、接点を切り替えるための操作軸と、
前記押しボタンの押込み方向に沿った第1の力を前記操作軸に作用させるための第1の作用手段と、
前記第1の作用手段による前記第1の力の作用方向とは逆向きの第2の力を前記操作軸に作用させるための第2の作用手段とを備え、
前記押しボタンの手動による押込み操作前においては、前記第2の作用手段による前記第2の力が前記第1の作用手段による前記第1の力より大きく、前記接点が第1の状態におかれており、
前記押しボタンの手動による押込み操作後または前記押しボタンの操作支援後においては、前記第1の作用手段による前記第1の力が前記第2の作用手段による前記第2の力より大きく、前記接点が、前記第1の状態と異なる第2の状態におかれており、
前記操作軸が、前記第1の作用手段による前記第1の力が作用する第1の操作軸と、前記第2の作用手段による前記第2の力が作用するとともに、前記接点を切り替える第2の操作軸とを有し、前記第1、第2の操作軸が分離可能に設けられている
ことを特徴とする操作支援機能付き非常停止スイッチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手動により押込み操作可能な操作部を有する操作支援機能付き操作スイッチ、操作支援機能付き非常停止スイッチおよび操作スイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
非常停止スイッチは、一般に、作業者が押込み操作可能な押しボタンと、押しボタンの押込み操作により移動する操作軸と、操作軸の移動に応じて接断される接点とを備えており(特開2001-35302号公報の図1参照)、押しボタンが押込み操作されると、操作軸が移動して接点がON状態からOFF状態に切り替わることにより電気回路が遮断されて、機械やシステムが緊急停止するようになっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
非常停止スイッチは、押しボタンの押込み操作前の状態(つまり接点のON状態)において、押しボタンが機械的なラッチ機構により保持されており、作業者が押しボタンを押し込むには、この機械的なラッチ機構による保持力の作用に打ち勝つだけの押付力を作用させる必要があった。
【0004】
また、非常停止スイッチにおいては、押しボタンの押込み操作の際に作業者が非常停止スイッチのすぐ近くにいる必要があり、非常停止スイッチから離れた場所では操作できなかった。そのため、非常停止スイッチから離れた場所からでも、より安全に操作支援を行える操作支援機能付き非常停止スイッチの要請があった。
【0005】
本発明は、このような従来の実情に鑑みてなされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、機械的なラッチ機構を有さず、より安全に操作支援を行うことができる操作支援機能付き操作スイッチ、操作支援機能付き非常停止スイッチおよび操作スイッチを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る操作支援機能付き操作スイッチは、手動により押込み操作可能な操作部と、操作部に連結され、接点を切り替えるための操作軸と、操作部の押込み方向に沿った第1の力を操作軸に作用させるための第1の作用手段と、第1の作用手段による第1の力の作用方向とは逆向きの第2の力を操作軸に作用させるための第2の作用手段とを備える。操作部の手動による押込み操作前においては、第2の作用手段による第2の力が第1の作用手段による第1の力より大きく、接点が第1の状態におかれている。操作部の手動による押込み操作後または操作部の操作支援後においては、第1の作用手段による第1の力が第2の作用手段による第2の力より大きく、接点が第1の状態と異なる第2の状態におかれている。そして、操作軸が、第1の作用手段による第1の力が作用する第1の操作軸と、第2の作用手段による第2の力が作用するとともに、接点を切り替える第2の操作軸とを有し、第1、第2の操作軸が分離可能に設けられている。
【0007】
本発明によれば、操作部の手動による押込み操作前においては、第2の作用手段による第2の力が第1の作用手段による第1の力より大きく、接点が第1の状態におかれており、操作部の手動による押込み操作後においては、第1の作用手段による第1の力が第2の作用手段による第2の力より大きく、接点が第1の状態と異なる第2の状態におかれている。したがって、操作部を手動により押込み操作するには、第1の力の作用方向である操作部の押込み方向に沿って外部から押付力を加える必要があり、これにより、機械的なラッチ機構を用いることなく、手動による押込み操作が不用意に行われないようにすることができる。しかも、操作部を手動により復帰動作させるには、操作部に対して第2の力の作用方向と同方向に外部から引張力を加える必要があり、これにより、機械的なラッチ機構を用いることなく、手動による復帰動作が簡単に行えないようにすることができる。このようにして、機械的なラッチ機構を有さない操作支援機能付き操作スイッチを実現できる。さらに、本発明によれば、操作部の手動による押込み操作前においては、第2の作用手段による第2の力を第1の作用手段による第1の力よりも小さくすれば、接点が第1の状態から第2の状態に移行することになるので、操作支援が容易に行えるようになる。
【0008】
本発明では、操作部の手動による押込み操作後または操作部の操作支援後において、操作部の手動による復帰後に第2の操作軸が第1の操作軸とともに移動せず、接点が第2の状態を維持している。
【0009】
本発明では、第1の作用手段が弾性部材である。
【0010】
本発明では、第2の作用手段がアクチュエータであり、アクチュエータが、少なくとも第1の状態において、通電時に操作軸に対して第2の力を作用させている。これにより、フェールセーフが考慮された、より安全な操作支援を行うことが可能な操作支援機能付き操作スイッチを実現できる。
【0011】
本発明では、第1の作用手段が圧縮ばねであり、第2の作用手段が電磁ソレノイドである。
【0014】
本発明では、接点の状態変化を検出する検出部をさらに備えている。
【0015】
本発明では、操作軸に対して外周側から保持力を作用させる保持手段をさらに備えている。
【0016】
本発明に係る操作支援機能付き操作スイッチは、手動により押込み操作可能な操作部と、操作部に連結された第1の操作軸と、第1の操作軸と分離可能に設けられ、操作部の押込み操作時に第1の操作軸とともに移動して、接点を切り替えるための第2の操作軸と、操作部の押込み方向に沿った第1の力を第1の操作軸に作用させるための第1の作用手段と、操作部の押込み方向に沿った第1’の力を第2の操作軸に作用させるための第1’の作用手段と、第1の作用手段による第1の力および第1’の作用手段による第1’の力の各作用方向とは逆向きの第2の力を第2の操作軸に作用させるための第2の作用手段とを備える。操作部の手動による押込み操作前においては、第2の作用手段による第2の力が第1の作用手段による第1の力および第1’の作用手段による第1’の力の合力より大きく、接点が第1の状態におかれている。操作部の手動による押込み操作後または操作部の操作支援後においては、第1の作用手段による第1の力および第1’の作用手段による第1’の力の合力が第2の作用手段による第2の力より大きく、接点が第1の状態と異なる第2の状態におかれている。
【0017】
本発明によれば、操作部の手動による押込み操作前においては、第2の作用手段による第2の力が第1の作用手段による第1の力および第1’の作用手段による第1’の力の合力より大きく、接点が第1の状態におかれており、操作部の手動による押込み操作後においては、第1の作用手段による第1の力および第1’の作用手段による第1’の力の合力が第2の作用手段による第2の力より大きく、接点が第1の状態と異なる第2の状態におかれている。したがって、操作部を手動により押込み操作するには、第1および第1’の力の合力の作用方向である操作部の押込み方向に沿って外部から押付力を加える必要があり、これにより、機械的なラッチ機構を用いることなく、手動による押込み操作が不用意に行われないようにすることができる。しかも、操作部を手動により復帰動作させるには、操作部に対して第2の力の作用方向と同方向に外部から引張力を加える必要があり、これにより、機械的なラッチ機構を用いることなく、手動による復帰動作が簡単に行えないようにすることができる。このようにして、機械的なラッチ機構を有さない操作スイッチを実現できる。
【0018】
さらに、本発明によれば、操作部の手動による押込み操作前においては、第2の作用手段による第2の力を第1の作用手段による第1の力および第1’の作用手段による第1’の力の合力よりも小さくすれば、接点が第1の状態から第2の状態に移行することになるので、操作支援が容易に行えるようになる。
【0019】
本発明に係る操作支援機能付き非常停止スイッチは、手動により押込み操作可能な押しボタンと、押しボタンに連結され、接点を切り替えるための操作軸と、押しボタンの押込み方向に沿った第1の力を操作軸に作用させるための第1の作用手段と、第1の作用手段による第1の力の作用方向とは逆向きの第2の力を操作軸に作用させるための第2の作用手段とを備える。押しボタンの手動による押込み操作前においては、第2の作用手段による第2の力が第1の作用手段による第1の力より大きく、接点が第1の状態におかれている。押しボタンの手動による押込み操作後または押しボタンの操作支援後においては、第1の作用手段による第1の力が第2の作用手段による第2の力より大きく、接点が第1の状態と異なる第2の状態におかれている。そして、操作軸が、第1の作用手段による第1の力が作用する第1の操作軸と、第2の作用手段による第2の力が作用するとともに、接点を切り替える第2の操作軸とを有し、第1、第2の操作軸が分離可能に設けられている。
【0020】
本発明によれば、押しボタンの手動による押込み操作前においては、第2の作用手段による第2の力が第1の作用手段による第1の力より大きく、接点が第1の状態におかれており、押しボタンの手動による押込み操作後においては、第1の作用手段による第1の力が第2の作用手段による第2の力より大きく、接点が第1の状態と異なる第2の状態におかれている。したがって、押しボタンを手動により押込み操作するには、第1の力の作用方向である操作部の押込み方向に沿って外部から押付力を加える必要があり、これにより、機械的なラッチ機構を用いることなく、手動による押込み操作が不用意に行われないようにすることができる。しかも、押しボタンを手動により復帰動作させるには、押しボタンに対して第2の力の作用方向と同方向に外部から引張力を加える必要があり、これにより、機械的なラッチ機構を用いることなく、手動による復帰動作が簡単に行えないようにすることができる。このようにして、機械的なラッチ機構を有さない非常停止スイッチを実現できる。
【0021】
さらに、本発明によれば、押しボタンの手動による押込み操作前においては、第2の作用手段による第2の力を第1の作用手段による第1の力よりも小さくすれば、接点が第1の状態から第2の状態に移行することになるので、操作支援が容易に行えるようになる。
【発明の効果】
【0025】
以上のように本発明によれば、機械的なラッチ機構を有さない操作スイッチ/非常停止スイッチを実現できるばかりでなく、フェールセーフが考慮された、より安全な操作支援を容易に行うことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の第1の実施例による非常停止スイッチの縦断面概略構成図であって、押しボタンの押込み操作前の状態を示している。
図2】前記非常停止スイッチ(図1)において、押しボタンの手動による押込み操作時の状態を示している。
図3】前記非常停止スイッチ(図1)において、押しボタンの手動による押込み操作後の状態を示している。
図4】前記非常停止スイッチ(図1)において、押しボタンの手動による復帰動作途中の状態を示している。
図5】前記非常停止スイッチ(図1)において、押しボタンの手動による復帰動作後の状態を示している。
図6】前記非常停止スイッチ(図1)において、押しボタンの操作支援時の状態を示している。
図7】前記非常停止スイッチ(図1)において、押しボタンの操作支援時からの復帰動作後の状態を示している。
図8A】前記非常停止スイッチ(図1)において、第1の作用手段による第1の力F1および第2の作用手段による第2の力F2と押しボタンの押込みストロークとの関係を表すグラフであって、押しボタンの手動による押込み操作時の変化を示している。
図8B】前記非常停止スイッチ(図1)において、第1の作用手段による第1の力F1および第2の作用手段による第2の力F2と押しボタンの押込みストロークとの関係を表すグラフであって、押しボタンの手動による復帰動作時の変化を示している。
図9】本発明の第2の実施例による非常停止スイッチの押しボタン部分の縦断面概略図である。
図10】本発明の第3の実施例による非常停止スイッチの縦断面概略構成図であって、押しボタンの押込み操作前の状態を示している。
図11】前記非常停止スイッチ(図10)において、押しボタンの手動による押込み操作時の状態を示している。
図12】前記非常停止スイッチ(図10)において、押しボタンの手動による押込み操作後の状態を示している。
図13】前記非常停止スイッチ(図10)において、押しボタンの手動による復帰動作時の状態を示している。
図14】前記非常停止スイッチ(図10)において、押しボタンの手動による復帰動作後の状態を示している。
図15】前記非常停止スイッチ(図10)において、押しボタンの操作支援時の状態を示している。
図16】前記非常停止スイッチ(図10)において、押しボタンの操作支援時からの復帰動作後の状態を示している。
図17】本発明の第4の実施例による非常停止スイッチの縦断面概略構成図であって、押しボタンの押込み操作前の状態を示している。
図18】前記非常停止スイッチ(図17)において、押しボタンの手動による押込み操作時の状態を示している。
図19】前記非常停止スイッチ(図17)において、押しボタンの手動による押込み操作後に電磁ソレノイドをオフにした状態を示している。
図20】前記非常停止スイッチ(図19)において、押しボタンの手動による復帰動作時の状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施例を添付図面に基づいて説明する。
<第1の実施例>
図1ないし図8Bは、本発明の第1の実施例による操作支援機能付き非常停止スイッチ(以下、単に「非常停止スイッチ」とも呼称する)を説明するための図である。図1は非常停止スイッチの押しボタンの押込み操作前の状態を、図2は押しボタンの手動による押込み操作時の状態を、図3は押しボタンの手動による押込み操作後の状態を、図4は押しボタンの手動による復帰動作時の状態を、図5は押しボタンの手動による復帰動作後の状態を、図6は押しボタンの操作支援時の状態を、図7は押しボタンの操作支援時からの手動による復帰動作後の状態をそれぞれ示している。図8Aおよび図8Bは、第1の作用手段による第1の力F1および第2の作用手段による第2の力F2と押しボタンの押込みストロークとの関係を表すグラフである。図8A図8B中、ローマ数字I~Vは、それぞれ図1図5の状態に対応している(図1図5の下部に記されたローマ数字I~V参照)。
【0028】
図1ないし図7はいずれも非常停止スイッチの縦断面を示しているが、図示の便宜上、各図において断面を表すハッチングが省略されている個所がある(以下の他の実施例においても同様)。また、説明の便宜上、各図における上下方方向を上下方向と呼称することにする。この第1の実施例では、操作スイッチとして非常停止スイッチを例にとる(以下の他の実施例においても同様)。
【0029】
図1に示すように、非常停止スイッチ1は、手動により押込み操作可能な押しボタン(操作部)2を有している。押しボタン2の下方には、軸方向(上下方向)に延びる操作軸3が配設されている。操作軸3の上端は、押しボタン2の下部に連結されている。操作軸3は、筐体10Aおよびその下部に一体に設けられた筐体10Bの内部において軸方向に移動可能に支持されている。操作軸3の下端には、接点(メイン接点)11が設けられている。接点11は、固定接点11と、操作軸3の下端に連結され、操作軸3とともに移動することにより、固定接点11に対して開閉する可動接点11とを有している。
【0030】
筐体10Aの内部において、操作軸3には、外周に張り出すフランジ部30が設けられている。フランジ部30の上側において、操作軸3の周囲には圧縮ばね(第1の作用手段)4が配設されている。圧縮ばね4の上端は筐体10Aの内壁面に圧接し、下端はフランジ部30に圧接している。圧縮ばね4は、フランジ部30を介して操作軸3に対し、下向き(すなわち、押しボタン2の押込み方向に沿った向き)に弾性反発力を作用させており、ここでは、この圧縮ばね4による下向きの弾性反発力を第1の力F1と呼称する。圧縮ばね4による第1の力F1は、接点11を開離させる向きに作用している。
【0031】
筐体10Bの内部には、電磁ソレノイド5が設けられている。電磁ソレノイド5は、コイルからなるソレノイド本体(第2の作用手段)51を有している。ソレノイド本体51の内部空間において、上側には固定鉄芯52が固定され、下側には筒状のプランジャ(可動鉄芯)53が配置されている。固定鉄芯52およびプランジャ53は、いずれも磁性体であって、上下方向の貫通孔52c、53cをそれぞれ有しており、これらの貫通孔52c、53cには操作軸3が移動可能に挿通している。固定鉄芯52は、筐体10Bの上部に固定された固定ベース52Aと、その下方に延びる筒状部52Bとを有している。プランジャ53は、上側に開口する凹部53aを有しており、凹部53a内に固定鉄芯52の筒状部52Bが収容されている。プランジャ53の上端53bは、固定鉄芯52の固定ベース52Aの下面52aに当接可能に設けられている。なお、図1に示す押しボタン2の押込み操作前の状態においては、電磁ソレノイド5に電流が供給されてソレノイド本体51が励磁されており、このことを明示するために、同図では、ソレノイド本体51が太線で示されている。この表示の仕方は、以下の図面および他の実施例においても同様である。
【0032】
筐体10Bの内部において、操作軸3には、外周に張り出すフランジ部31、32が軸方向の間隔を隔てて設けられている。フランジ部31はプランジャ53の凹部53a内に配置されており、フランジ部32はプランジャ53の下方に配置されている。
【0033】
電磁ソレノイド5に電流が供給(つまり通電)されてソレノイド本体51が励磁されたとき、ソレノイド本体51はプランジャ53に対して上向きの力を作用させるが、このとき、操作軸3には、フランジ部31を介してプランジャ53から上向き(すなわち、圧縮ばね4による下向きの第1の力F1の作用方向とは逆向き)の力が作用しており、ここでは、ソレノイド本体51の作用による上向き力を第2の力F2と呼称する。
【0034】
次に、本実施例の作用効果について説明する。
図1に示す押しボタン2の押込み操作前の状態においては、プランジャ53の上端53bが固定鉄芯52の固定ベース52Aの下面52aに当接している。このとき、図8A中の「I」に示すように、押しボタン2の押込みストロークは0(mm)であって、第1の力F1および第2の力F2は最大になっており、第1の力F1と第2の力F2との大小関係は
F2>F1
になっている。また、このとき、接点11は、可動接点11が固定接点11に接触していてON状態(第1の状態)におかれている(図1参照)。
【0035】
第1の力F1は圧縮ばね4による下向きの弾性反発力であって、押しボタン2の押込みストロークが増えるにつれて圧縮ばね4の長さが伸びることから、第1の力F1は、押しボタン2の押込みストロークの増加ととともに減少する(図8A中の直線状のグラフF1参照)。また、第2の力は電磁ソレノイド5のソレノイド本体51の電磁力の作用による上向きの力であって、押しボタン2の押込みストロークの増加とともに減少する(同図中の曲線状のグラフF2参照)。したがって、第1の力F1および第2の力F2は、押しボタン2の押込みストロークに応じて定まる大きさになっている。
【0036】
次に、図2に示すように、押しボタン2に作業者が押付力Fを作用させて、押しボタン2を押し込むと、押しボタン2とともに操作軸3が下方に移動する。
【0037】
このとき、操作軸3のフランジ部31はプランジャ53の凹部53aの底部に当接していて、操作軸3はフランジ部31を介してプランジャ53から上向きの第2の力F2の作用を受けている。操作軸3はこの第2の力F2に抗しつつ下方に移動するが、操作軸3が下方に移動するにつれて、押しボタン2の押込みストロークが大きくなるので、図8A中のグラフF2に示すように、第2の力F2は徐々に減少する。
【0038】
その一方、操作軸3のフランジ部30には、圧縮ばね4の弾性反発力が作用しており、操作軸3はフランジ部30を介して圧縮ばね4から下向きの第1の力F1の作用を受けている。操作軸3は第1の力F1の作用を受けつつ下方に移動するが、操作軸3が下方に移動するにつれて、押しボタン2の押込みストロークが大きくなるので、図8A中のグラフF1に示すように、第1の力F1は徐々に減少する。
【0039】
図2に示す押しボタン2の押込み操作時の状態においては、図8A中の「II」に示すように、押しボタン2に所定の押込みストロークが発生しており、このとき、第1の力F1と第2の力F2との大小関係は
F1>F2
となっている。また、このとき、接点11は、可動接点11が固定接点11から開離していてOFF状態(第2の状態)におかれている(図2参照)。
【0040】
このように本実施例によれば、押しボタン2の手動による押込み操作前においては、ソレノイド本体51の作用による第2の力F2が圧縮ばね4による第1の力F1より大きく、接点11がON状態におかれており、押しボタン2の手動による押込み操作後においては、圧縮ばね4による第1の力F1がソレノイド本体51の作用による第2の力F2より大きく、接点11がOFF状態におかれている。したがって、押しボタン2を手動により押込み操作するには、第1の力F1の作用方向である押しボタン2の押込み方向に沿って押しボタン2に外部から押付力Fを加える必要があり、これにより、機械的なラッチ機構を用いることなく、手動による押込み操作が不用意に行われないようにすることができる。
【0041】
次に、図3に示す押しボタン2の押込み操作後の状態においては、図8B中の「III」に示すように(図8A中の「II」と同様)、押しボタン2に所定の押込みストロークが発生しており、このとき、第1の力F1と第2の力F2との大小関係は
F1>F2
となっている。また、このとき、接点11は、可動接点11が固定接点11から開離していてOFF状態(第2の状態)におかれている(図3参照)。
【0042】
この状態から、図4に示すように、押しボタン2に作業者が引張力F’を作用させて、押しボタン2を引っ張ると、押しボタン2とともに操作軸3が上方に移動する。
【0043】
このとき、操作軸3のフランジ部31はプランジャ53の凹部53aの底部に当接していて、操作軸3はフランジ部31を介してプランジャ53から上向きの第2の力F2の作用を受けている。操作軸3は第2の力F2の作用を受けつつ上方に移動するが、操作軸3が上方に移動するにつれて、押しボタン2の押込みストロークが小さくなるので、図8B中のグラフF2に示すように、第2の力F2は徐々に増加する。
【0044】
その一方、操作軸3のフランジ部30には、圧縮ばね4の弾性反発力が作用しており、操作軸3はフランジ部30を介して圧縮ばね4から下向きの第1の力F1の作用を受けている。操作軸3は第1の力F1に抗しつつ上方に移動するが、操作軸3が上方に移動するにつれて、押しボタン2の押込みストロークが小さくなるので、図8B中のグラフF1に示すように、第1の力F1は徐々に増加する。
【0045】
図4に示す押しボタン2の復帰動作途中の状態においては、図8B中の「IV」に示すように、押しボタン2に押込みストロークが残っており、このとき、第1の力F1と第2の力F2との大小関係は
F1>F2
となっている。また、このとき、接点11は、可動接点11が固定接点11から開離していて依然としてOFF状態(第2の状態)におかれている(図4参照)。
【0046】
この状態からさらに押しボタン2を引っ張って操作軸3を上方に移動させると、図5に示すように、押しボタン2が復帰動作後の状態に移行する。このとき、プランジャ53の上端53bが固定鉄芯52の固定ベース52Aの下面52aに当接している。図8B中の「V」に示すように、押しボタン2の押込みストロークは0(mm)であって、第1の力F1および第2の力F2は最大になっており、第1の力F1と第2の力F2との大小関係は
F2>F1
になっている。また、このとき、接点11は、可動接点11が固定接点11に接触していてON状態(第1の状態)に切り替わっている(図5参照)。
【0047】
このように本実施例によれば、押しボタン2の手動による復帰動作前においては、圧縮ばね4による第1の力F1がソレノイド本体51による第2の力F2より大きく、接点11がOFF状態におかれており、押しボタン2の手動による復帰動作後においては、ソレノイド本体51の作用による第2の力F2が圧縮ばね4による第1の力F1より大きく、接点11がON状態におかれている。したがって、押しボタン2を手動により復帰動作させるには、押しボタン2に対して第2の力の作用方向と同方向に外部から引張力を加える必要があり、これにより、機械的なラッチ機構を用いることなく、手動による復帰動作が簡単に行えないようにすることができる。
【0048】
このようにして、機械的なラッチ機構を有さない非常停止スイッチを実現できる。
【0049】
次に、押しボタン2の操作支援を行うには、図1に示す押しボタン2の手動操作前の状態から、図6に示すように、電磁ソレノイド5への電流供給を停止してソレノイド本体51を非励磁にする。
【0050】
すると、プランジャ53に対してソレノイド本体51からの電磁力の作用がなくなるので、操作軸3にはプランジャ53から第2の力F2が作用しなくなり、その結果、操作軸3に作用する力は、圧縮ばね4からの第1の力F1のみになる。操作軸3はこの第1の力F1の作用を受けて下方に移動し、それに伴って、プランジャ53も下方に移動する。このとき、接点11は、可動接点11が固定接点11から開離していてOFF状態(第2の状態)におかれている(図6参照)。また、このとき、プランジャ53の底部53dは、操作軸3のフランジ部32に当接している。
【0051】
このように本実施例によれば、押しボタン2の手動による押込み操作前において電磁ソレノイド5への電流供給を停止すれば、接点がON状態からOFF状態に移行することになるので、作業者が実際に押しボタン2を直接押さなくても、押した場合と同様の接点切替え操作を作業者に代わって容易かつ安全に行えるようになって、非常停止スイッチ1から離れた場所から操作支援を行える。この場合、非常停止スイッチ1から離れた場所で発した操作支援信号に基づいて電磁ソレノイド5への電流供給を停止するようにすればよい。
【0052】
また、本実施例によれば、電磁ソレノイド5に電流を供給するための配線に断線が生じた場合や、システムが停電した場合においても、電磁ソレノイド5への電流供給が停止することで押しボタン2が押込み操作された状態になるので、より安全に操作支援を行えるようになり、これにより、フェールセーフが考慮された操作支援機能付き非常停止スイッチを実現できる。
【0053】
次に、図6に示す状態から、電磁ソレノイド5に電流を供給してソレノイド本体51を励磁すると、図7に示すように、プランジャ53から操作軸3に作用する第2の力F2が復活するので、その状態において、作業者が押しボタン2に対して上方への引張力を作用させることにより、押しボタン2が押込み操作前の状態に戻る(図7参照)。
【0054】
<第2の実施例>
図9は、本発明の第2の実施例による非常停止スイッチにおいて、押しボタン部分の縦断面概略図である。同図において、前記第1の実施例と同一符号は同一または相当部分を示している。
【0055】
図9に示すように、押しボタン2の内部には、操作軸3の上端が連結されている。操作軸3には、外周に突出する突出部35が設けられている。突出部35は、上側に配置されたテーパー面35と、その下側に配置され、上下方向に延びる立壁面35とを有している。一方、筐体側には、突出部35の立壁面35に弾性的に当接する複数の当接ブロック6が設けられている。当接ブロック6は、圧縮ばね7の弾性反発力により突出部35に向かって付勢されている。当接ブロック6は、突出部35の立壁面35に当接する当接面6を有している。当接ブロック6および圧縮ばね7は、筐体側に設けられた収容部12に収容されており、当接ブロック6は収容部12内において図示左右方向に移動可能になっている。また、収容部12は、操作軸3が上下方向に挿通する貫通孔12aを有している。当接ブロック6および圧縮ばね7は、操作軸3の突出部35の立壁面35に対してラジアル方向の押付力つまり保持力を作用させる保持手段として機能している。
【0056】
操作軸3の突出部35の立壁面35に当接ブロック6からの押付力が作用していることにより、押しボタン2の押込み操作時および復帰動作時には、操作軸3の移動方向とは逆方向の摩擦力を操作軸3に作用させる。
【0057】
すなわち、押しボタン2の押込み操作の際には、当接ブロック6からの押付力の作用に伴う摩擦力が操作軸3に対して上向きに作用して第2の力F2に加担することになるので、前記第1の実施例の図8Aにおいて、F2>F1からF2<F1への移行が小さなストロークで行われないようにすることができる。これにより、押しボタン2の手動による押込み操作が不用意に行われないようにすることができる。たとえば、振動や衝撃等が作用しても押しボタン2が簡単に押込み方向に移動しないようにすることができる。
【0058】
また、押しボタン2の押込み操作後には、当接ブロック6が操作軸3の突出部35のテーパー面35と当接しており、この状態から押しボタン2の復帰動作を行うには、当接ブロック6を縮退させつつ操作軸3を上方に移動させるとともに、操作軸3の突出部35の立壁面35に当接ブロック6を当接させて操作軸3を上方に移動させる必要があり、このとき、操作軸3に対して下向きの摩擦力が作用して第1の力F1に加担することになるので、押しボタン2の復帰動作中(つまり操作軸3の移動中)は、前記第1の実施例の図8Bにおいて、F1>F2からF1<F2への移行が大きなストロークで行われないようにすることができる。これにより、押しボタン2の手動による復帰動作が簡単に行われないようにすることができる。なお、当接ブロック6および圧縮ばね7による押付力(保持力)は、押しボタン2の操作支援を妨げない大きさに設定されている。
【0059】
<第3の実施例>
図10ないし図16は、本発明の第3の実施例による操作支援機能付き非常停止スイッチ(非常停止スイッチ)を説明するための図である。図10は非常停止スイッチの押しボタンの押込み操作前の状態を、図11は押しボタンの手動による押込み操作時の状態を、図12は押しボタンの手動による押込み操作後の状態を、図13は押しボタンの手動による復帰動作時の状態を、図14は押しボタンの手動による復帰動作後の状態を、図15は押しボタンの操作支援時の状態を、図16は押しボタンの操作支援時からの手動による復帰動作後の状態をそれぞれ示している。これらの図において、前記第1の実施例と同一符号は同一または相当部分を示している。
【0060】
この第3の実施例では、前記第1の実施例における操作軸3が2本の操作軸3A、3Bから構成されている点、および第1’の作用手段としての圧縮ばね8が追加されている点等が前記第1の実施例と異なっている。
【0061】
すなわち、図10に示すように、非常停止スイッチ1において、押しボタン(操作部)2の下方には、軸方向(上下方向)に延びる第1の操作軸3Aが配設されている。この例では、第1の実施例の操作軸3よりも大径の操作軸が採用されている。第1の操作軸3Aの上端は、押しボタン2の下部に連結されている。第1の操作軸3Aは、筐体10Aの内部において軸方向移動可能に支持されている。第1の操作軸3Aのフランジ部30の下部には、ボス部30Aが設けられている。ボス部30Aは、その下方に配置された固定鉄芯52の貫通孔52cの内径よりも大径の部位である。第1の操作軸3Aには、フランジ部30を介して圧縮ばね(第1の作用手段)4の弾性反発力である第1の力F1が下向きに作用している。
【0062】
筐体10B内において、第1の操作軸3Aの下方には、軸方向(上下方向)に延び、固定鉄芯52の貫通孔52cを挿通する第2の操作軸3Bが配設されている。図10に示す押しボタン2の押込み操作前の状態においては、第2の操作軸3Bの上端は、筐体10Aの内部まで延びており、第1の操作軸3Aのボス部30Aの下端に当接している。第2の操作軸3Bは、第1の操作軸3Aとは別体に設けられており、第1の操作軸3Aに対して分離可能に設けられている。第2の操作軸3Bは、筐体10Bの内部において軸方向移動可能に支持されている。第2の操作軸3Bの下端には、固定接点11および可動接点11からなる接点(メイン接点)11が設けられている。第2の操作軸3Bには、電磁ソレノイド5への電流供給により励磁されたソレノイド本体(第2の作用手段)51の作用により、プランジャ53からフランジ部31を介して第2の力F2が上向きに作用している。
【0063】
電磁ソレノイド5のプランジャ53の凹部53a内において、第2の操作軸3Bの周りには圧縮ばね(第1’の作用手段)8が配設されている。圧縮ばね8の上端は固定鉄芯52の筒状部52Bの下端に圧接し、下端は第2の操作軸3Bのフランジ部31に圧接している。これにより、第2の操作軸3Bには、フランジ部31を介して圧縮ばね8の弾性反発力である第1’の力F1’が、押しボタン2の押込み方向に沿った下向きに作用している。
【0064】
次に、本実施例の作用効果について説明する。
図10に示す押しボタン2の押込み操作前の状態においては、プランジャ53の上端53bが固定鉄芯52の固定ベース52Aの下面52aに当接しており、第1の力F1、第1’の力F1’および第2の力F2は最大になっていて、第1の力F1および第1’の力F1’の合力と、第2の力F2との大小関係は
F2>F1+F1’
となっている。また、このとき、接点11は、可動接点11が固定接点11に接触していてON状態(第1の状態)におかれている(図10参照)。
【0065】
次に、図11に示すように、押しボタン2に作業者が押付力Fを作用させて、押しボタン2を押し込むと、押しボタン2とともに第1の操作軸3Aが下方に移動する。第1の操作軸3は、ボス部30Aの下端が固定鉄芯52の固定ベース52Aの上面に当接するまで移動する。このとき、第1の操作軸3Aのボス部30Aの下端には、第2の操作軸3Bの上端が当接しているので、第2の操作軸3Bは、第1の操作軸3Aとともに下方に移動する。このとき、第1の操作軸3Aは圧縮ばね4による下向きの第1の力F1の作用を受けつつ、第2の操作軸3Bは圧縮ばね8による下向きの第1’の力F1’の作用を受けるとともに、ソレノイド本体51の作用による上向きの第2の力F2に抗しつつ移動する。
【0066】
ここで、第1の力F1、第1’の力F1’はそれぞれ圧縮ばね4、8による弾性反発力であり、押しボタン2の押込みストロークが増えるにつれて圧縮ばね4、8の長さが伸びることから、第1の力F1、第1’の力F1’は、押しボタン2の押込みストロークの増加ととともに減少する。また、第2の力は電磁ソレノイド5のソレノイド本体51の電磁力の作用による力であって、押しボタン2の押込みストロークの増加につれて減少する(図8A中の曲線状のグラフF2参照)。したがって、第1の力F1、第1’の力F1’および第2の力F2は、押しボタン2の押込みストロークに応じた大きさになっている。
【0067】
図11に示す押しボタン2の押込み操作時の状態においては、第1の力F1および第1’の力F1’の合力と、第2の力F2との大小関係は
F1+F1’>F2
となっている。また、このとき、接点11は、可動接点11が固定接点11から開離していてOFF状態(第2の状態)におかれている(図11参照)。
【0068】
このように本実施例によれば、押しボタン2の手動による押込み操作前においては、ソレノイド本体51の作用による第2の力F2が圧縮ばね4による第1の力F1および圧縮ばね8による第1’の力F1’の合力より大きく、接点11がON状態におかれており、押しボタン2の手動による押込み操作後においては、圧縮ばね4による第1の力F1および圧縮ばね8による第1’の力F1’の合力がソレノイド本体51による第2の力F2より大きく、接点11がOFF状態におかれている。したがって、押しボタン2を手動により押込み操作するには、第1の力F1および第1’の力F1’の合力の作用方向である押しボタン2の押込み方向に沿って押しボタン2に外部から押付力Fを加える必要があり、これにより、機械的なラッチ機構を用いることなく、手動による押込み操作が不用意に行われないようにすることができる。
【0069】
次に、図12に示す押しボタン2の押込み操作後の状態においては、第1の力F1および第1’の力F1’の合力と、第2の力F2との大小関係は
F1+F1’>F2
となっている。また、このとき、接点11は、可動接点11が固定接点11から開離していてOFF状態(第2の状態)におかれている(図12参照)。
【0070】
この状態から、図13に示すように、押しボタン2に作業者が引張力F’を作用させて、押しボタン2を引っ張ると、押しボタン2とともに第1の操作軸3Aが上方に移動する。第1の操作軸3Aのボス部30Aの下端には、第2の操作軸3Bの上端が当接しているので、第2の操作軸3Bは、第1の操作軸3Aとともに上方に移動する。このとき、第1、第2の操作軸3A、3Bは、ソレノイド本体51による上向きの第2の力F2の作用を受けつつ、圧縮ばね4による下向きの第1の力F1および圧縮ばね8による下向きの第1’の力F1’に抗しつつ移動する。
【0071】
ここで、第1の力F1、第1’の力F1’はそれぞれ圧縮ばね4、8による弾性反発力であり、押しボタン2の押込みストロークが減少するにつれて圧縮ばね4、8の長さが縮むことから、第1の力F1、第1’の力F1’は、押しボタン2の押込みストロークの減少ととともに増加する。また、第2の力は電磁ソレノイド5のソレノイド本体51の電磁力の作用による力であって、押しボタン2の押込みストロークが減少するにつれて増加する(図8B中の曲線状のグラフF2参照)。したがって、第1の力F1、第1’の力F1’および第2の力F2は、押しボタン2の押込みストロークに応じた大きさになっている。
【0072】
図13に示す押しボタン2の復帰動作途中の状態においては、第1の力F1および第1’の力F1’の合力と、第2の力F2との大小関係は
F1+F1’>F2
となっている。また、このとき、接点11は、可動接点11が固定接点11から開離していて依然としてOFF状態(第2の状態)におかれている(図13参照)。なお、この復帰動作途中の状態において、作業者が押しボタン2から手を離すと、上記不等式の関係から、接点11はOFF状態(図12に示す第2の状態)に戻る。
【0073】
この状態からさらに押しボタン2とともに第1、第2の操作軸3A、3Bが上方に移動すると、図14に示す押しボタン2の復帰動作後の状態に移行する。このとき、プランジャ53の上端53bは固定鉄芯52の固定ベース52Aの下面52aに当接しており、第1の力F1、第1’の力F1’および第2の力F2は最大になっている。この状態においては、第1の力F1および第1’の力F1’の合力と、第2の力F2との大小関係は
F2>F1+F1’
となっている。また、このとき、接点11は、可動接点11が固定接点11に接触していてON状態(第1の状態)に切り替わっている(図14参照)。
【0074】
このように本実施例によれば、押しボタン2の手動による復帰動作前においては、圧縮ばね4による第1の力F1および圧縮ばね8による第1’の力F1’の合力がソレノイド本体51の作用による第2の力F2より大きく、接点11がOFF状態におかれており、押しボタン2の手動による復帰動作後においては、ソレノイド本体51の作用による第2の力F2が圧縮ばね4による第1の力F1および圧縮ばね8による第1’の力F1’の合力より大きく、接点11がON状態におかれている。したがって、押しボタン2を手動により復帰動作させるには、押しボタン2に対して第2の力の作用方向と同方向に外部から引張力を加える必要があり、これにより、機械的なラッチ機構を用いることなく、手動による復帰動作が簡単に行えないようにすることができる。
【0075】
このようにして、機械的なラッチ機構を有さない非常停止スイッチを実現できる。
【0076】
次に、押しボタン2の操作支援を行うには、図10に示す押しボタン2の手動操作前の状態から、図15に示すように、電磁ソレノイド5への電流供給を停止してソレノイド本体51を非励磁にする。
【0077】
すると、プランジャ53には、ソレノイド本体51からの電磁力の作用がなくなるので、第2の操作軸3Bにはプランジャ53から第2の力F2が作用しなくなり、その結果、第2の操作軸3Bに作用する力は、圧縮ばね8からの第1’の力F1’のみになる。第2の操作軸3Bはこの第1の力F1’の作用を受けて下方に移動し、それに伴って、プランジャ53も下方に移動する。第1の操作軸3Aには、圧縮ばね4による下向きの第1の力F1が作用しているので、第1の操作軸3Aは第2の操作軸3Bとともに下方に移動する。このとき、接点11は、可動接点11が固定接点11から開離していてOFF状態(第2の状態)に切り替わっている(図15参照)。また、このとき、プランジャ53の底部53dは、操作軸3のフランジ部32に当接している。
【0078】
このように本実施例によれば、押しボタン2の手動による押込み操作前において、電磁ソレノイド5への電流供給を停止すれば、接点がON状態からOFF状態に移行することになるので、作業者が実際に押しボタン2を直接押さなくても、押した場合と同様の接点切替え操作を作業者に代わって容易かつ安全に行えるようになって、非常停止スイッチ1から離れた場所から操作支援を行える。この場合、非常停止スイッチ1から離れた場所で発した操作支援信号に基づいて電磁ソレノイド5への電流供給を停止するようにすればよい。
【0079】
また、本実施例によれば、電磁ソレノイド5に電流を供給するための配線に断線が生じた場合や、システムが停電した場合においても、電磁ソレノイド5への電流供給が停止することで押しボタン2が押込み操作された状態になるので、より安全に操作支援を行えるようになり、これにより、フェールセーフが考慮された操作支援機能付き非常停止スイッチを実現できる。
【0080】
次に、図15に示す状態から、電磁ソレノイド5に電流を供給してソレノイド本体51を励磁すると、図16に示すように、プランジャ53から第2の操作軸3Bに作用する第2の力F2が復活するので、その状態において、作業者が押しボタン2に対して上方への引張力を作用させることにより、押しボタン2が押込み操作前の状態に戻る。
【0081】
<第4の実施例>
図17ないし図20は、本発明の第4の実施例による操作支援機能付き非常停止スイッチ(非常停止スイッチ)を説明するための図である。図17は非常停止スイッチの押しボタンの押込み操作前の状態を、図18は押しボタンの手動による押込み操作時の状態を、図19は押しボタンの操作支援時の状態を、図20は押しボタンの操作支援時からの手動による復帰動作後の状態をそれぞれ示している。これらの図において、前記第3の実施例と同一符号は同一または相当部分を示している。
【0082】
この第4の実施例においては、第2の操作軸3Bの下端にモニタ接点(検出部)15が設けられている点が前記第3の実施例と異なっている。モニタ接点15は、押しボタン2が押込み操作されたこと、押しボタン2の復帰動作が完了したこと、および非常停止スイッチ1が操作支援されたことによる接点(メイン接点)の状態変化を第2の操作軸3Bの移動により検出するためのものであって、固定接点15と、第2の操作軸3Bに連結されて第2の操作軸3Bとともに移動することにより、固定接点15に対して開閉する可動接点15とを有しており、モニタ接点15からの信号に基づいて電磁ソレノイド5の駆動が制御されるようになっている。
【0083】
次に、本実施例の作用効果について説明する。
図17に示す押しボタン2の押込み操作前の状態において、接点(メイン接点)11は、可動接点11が固定接点11に接触していてON状態(第1の状態)におかれており、モニタ接点15は、可動接点15が固定接点15から開離していてOFF状態におかれている
図17参照)。
【0084】
次に、図18に示すように、押しボタン2に作業者が押付力Fを作用させて、押しボタン2を押し込むと、押しボタン2とともに第1の操作軸3Aが下方に移動する。第1の操作軸3Aのボス部30Aの下端には、第2の操作軸3Bの上端が当接しているので、第2の操作軸3Bは、第1の操作軸3Aとともに下方に移動する。このとき、接点11は、可動接点11が固定接点11から開離していてOFF状態(第2の状態)に切り替わり、モニタ接点15は、可動接点15が固定接点15に接触してON状態に移行する(図18参照)。
【0085】
モニタ接点15の接点信号に基づいて、図19に示すように、電磁ソレノイド5への電流供給を停止して、ソレノイド本体51を非励磁にする。すると、プランジャ53には、ソレノイド本体51からの電磁力の作用がなくなるので、第2の操作軸3Bにはプランジャ53から第2の力F2が作用しなくなり、その結果、第2の操作軸3Bに作用する力は、圧縮ばね8からの第1’の力F1’のみになる。
【0086】
この状態から、図20に示すように、押しボタン2に作業者が引張力F’を作用させて、押しボタン2を引っ張ると、押しボタン2が上方に移動するとともに第1の操作軸3Aが上方に移動するが、このとき、第2の操作軸3Bには、プランジャ53から第2の力F2が作用していないので、第2の操作軸3Bは、第1の操作軸3Aへの上方への移動に追随することができず、第1の操作軸3Aから分離されて筐体10の内部に留まる(図20参照)。その結果、図20に示すように、接点11は、可動接点11が固定接点11から開離したOFF状態(第2の状態)のままである。
【0087】
なお、図19に示す状態は、前記第3の実施例において、押しボタン2の押込み操作前に操作支援を行った状態を示す図15の状態と同様であり(よって、操作支援がなされたこともモニタ接点15により検出可能)、したがって、ソレノイド本体51を非励磁にした後、押しボタン2を復帰動作したときに、第2の操作軸3Bが第1の操作軸3Aへの上方への移動に追随せず筐体10の内部に留まって、接点11がOFF状態のままにおかれる事象は、押しボタン2の手動による押込み操作後のみならず、押しボタン2の操作支援後においても発生する。
【0088】
前記第3の実施例およびこの第4の実施例のように、操作軸が第1の操作軸3Aおよびこれと分離可能な第2の操作軸3Bから構成されている場合には、電磁ソレノイド5に電流が供給されていなければ、押しボタン2を手動で復帰した場合でも、接点11をONにすることができない(つまり非常停止状態をリセットできない)。別の言い方をすれば、手動による押しボタン2の復帰動作と電磁ソレノイド5への通電という2つの条件が満たされなければ、非常停止状態をリセットすることができない。これにより、非常停止スイッチとしての安全性を向上でき、事故防止を期待できる。
【0089】
<第5の実施例>
前記第1の実施例では、押しボタン2の操作支援時を除いて、電磁ソレノイド5に電流が常時供給されている例を示したが、本発明の適用はこれに限定されない。電磁ソレノイド5への電流は、少なくとも接点1がONの状態(つまり第1の状態、すなわち押しボタン2の押込み操作前の状態)において供給されるようにしてもよい。
【0090】
<第6の実施例>
前記第1の実施例では、押しボタン2の操作支援の際には、電磁ソレノイド5への電流供給を停止するようにした例を示したが、本発明の適用はこれに限定されない。電磁ソレノイド5への供給電流を制限することで、プランジャ53から操作軸3に作用する第2の力F2を小さくすることにより、F1>F2の関係式が成立するようにしてもよい。
【0091】
<第7の実施例>
前記各実施例において、電磁ソレノイド5への電流供給を停止して押しボタン2の操作支援を行った後、再び電磁ソレノイド5への電流供給を許容する信号として、たとえばRFID(Radio Frequency Identification)による信号を用いるようにしてもよい。この場合には、作業者が非常停止後に装置の安全確認を行った後、各自が携帯するRFタグをタグリーダに読み込ませるようにすればよい。
【0092】
<第8の実施例>
前記各実施例では、本発明による第2の作用手段として、電磁ソレノイド5のソレノイド本体51を用いた例を示したが、本発明の適用はこれに限定されない。電磁ソレノイド5の代わりに、シリンダやモータ、その他の(電気式/電動)アクチュエータを採用するようにしてもよい。
【0093】
この場合においても、(電気式/電動)アクチュエータに電力を供給するための配線(経路)に断線(不具合)が生じた場合や、システムが停電した場合において、(電気式/電動)アクチュエータへの電力供給が停止することで押しボタン2が押込み操作された状態にすることによって、より安全に操作支援を行えるようになり、これにより、フェールセーフが考慮された操作支援機能付き非常停止スイッチを実現できる。
【0094】
<第10の実施例>
前記各実施例では、弾性部材として圧縮ばね4を用いた例を示したが、圧縮ばね4の代わりに引張(コイル)ばねやねじり(コイル)ばね、板ばね等の弾性部材を採用するようにしてもよい。引張ばねは、たとえば操作軸3のフランジ部30の下方に配設され、操作軸3に対して下向きの第1の力Fを作用させる。
【0095】
<第11の実施例>
前記第4の実施例におけるモニタ接点15のON/OFF状態の設定は逆にしてもよい。すなわち、押しボタン2の押込み操作前にモニタ接点がONとなり、押しボタン2の手動による押込み操作後および操作支援後にモニタ接点がOFFになるように構成してもよい。
【0096】
〔その他の変形例〕
上述した各実施例はあらゆる点で本発明の単なる例示としてのみみなされるべきものであって、限定的なものではない。本発明が関連する分野の当業者は、本明細書中に明示の記載はなくても、上述の教示内容を考慮するとき、本発明の精神および本質的な特徴部分から外れることなく、本発明の原理を採用する種々の変形例やその他の実施例を構築し得る。
【0097】
〔他の適用例〕
前記各実施例では、本発明による操作スイッチとして、非常停止スイッチを例にとって説明したが、本発明の適用はこれに限定されず、本発明は、非常停止スイッチ以外のその他の押しボタンスイッチにも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明は、手動により押込み操作可能な操作部を有する操作支援機能付き操作スイッチ、操作支援機能付き非常停止スイッチおよび操作スイッチに有用である。
【符号の説明】
【0099】
1: 操作支援機能付き非常停止スイッチ(操作支援機能付き操作スイッチ)

2: 押しボタン(操作部)

3: 操作軸
3A: 第1の操作軸
3B: 第2の作用軸

4: 圧縮ばね(第1の作用手段)

5: 電磁ソレノイド
51: ソレノイド本体(第2の作用手段)

6、7: 保持手段

8: 圧縮ばね(第1’の作用手段)

11: 接点

15: モニタ接点(検出部)

F1: 第1の力
F1’: 第1’の力
F2: 第2の力
【先行技術文献】
【特許文献】
【0100】
【文献】特開2001-35302号公報(図1参照)
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