(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】電子モジュール
(51)【国際特許分類】
G01R 15/18 20060101AFI20241016BHJP
【FI】
G01R15/18 A
(21)【出願番号】P 2020528585
(86)(22)【出願日】2018-07-04
(86)【国際出願番号】 JP2018025306
(87)【国際公開番号】W WO2020008544
(87)【国際公開日】2020-01-09
【審査請求日】2021-05-11
【審判番号】
【審判請求日】2023-07-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000002037
【氏名又は名称】新電元工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】230117802
【氏名又は名称】大野 浩之
(72)【発明者】
【氏名】池田 康亮
(72)【発明者】
【氏名】指田 和之
【合議体】
【審判長】中塚 直樹
【審判官】小島 寛史
【審判官】素川 慎司
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-82134(JP,A)
【文献】特開2007-163228(JP,A)
【文献】国際公開第2016/190290(WO,A1)
【文献】特開2013-130571(JP,A)
【文献】特開2001-343401(JP,A)
【文献】特開平7-167896(JP,A)
【文献】国際公開第2005/103737(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R15/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子素子と、
前記電子素子の上面に設けられる接続体と、
前記接続体を取り囲むようにして設けられた巻線部と、前記巻線部の終端部で接続されて前記終端部から始端部側に向かって戻り、前記接続体を取り囲む巻戻し線部と、
前記巻線部及び前記巻戻し線部の内方に位置し、前記接続体が通過する開口部と、を有する検知部と、
前記電子素子、前記接続体及び前記検知部の全体を封止する封止部と、
を備え、
前記封止部内において、前記接続体は
前記開口部内を上下方向に延在し、
前記
検知部は、その周縁外方から前記開口部に連通する切込みを有さないことを特徴とする電子モジュール。
【請求項2】
前記接続体は、ヘッド部と、前記ヘッド部からヘッド部の厚み方向で延びた柱部とを有し、
前記柱部は前記開口部内を通過し、前記巻線部及び前記巻戻し線部は前記ヘッド部を取り囲むことなく、前記柱部を取り囲むようにして設けられることを特徴とする請求項1に記載の電子モジュール。
【請求項3】
電子素子と、
前記電子素子の上面に設けられる接続体と、
前記接続体を取り囲むようにして設けられた巻線部と、前記巻線部の終端部で接続されて前記終端部から始端部側に向かって戻る巻戻し線部と、
前記巻線部及び前記巻戻し線部の内方に位置し、前記接続体が通過する開口部と、を有する検知部と、
を備え、
前記接続体は、ヘッド部と、前記ヘッド部からヘッド部の厚み方向で延びた柱部とを有し、
前記柱部は前記開口部内を通過し、前記巻線部及び前記巻戻し線部は前記ヘッド部を取り囲むことなく、前記柱部を取り囲むようにして設けられ、
前記電子素子は、前記柱部が設けられる第一電子素子と、前記ヘッド部に設けられる第二電子素子とを有することを特徴とする電子モジュール。
【請求項4】
電子素子と、
前記電子素子の上面に設けられる接続体と、
前記接続体を取り囲むようにして設けられた巻線部と、前記巻線部の終端部で接続されて前記終端部から始端部側に向かって戻る巻戻し線部と、
前記巻線部及び前記巻戻し線部の内方に位置し、前記接続体が通過する開口部と、を有する検知部と、
を備え、
前記電子素子は、第一電子素子と、前記第一電子素子の上面側に設けられた第二電子素子とを有し、
前記接続体は、前記第一電子素子の上面に設けられる第一接続体と、前記第二電子素子の上面に設けられる第二接続体とを有し、
前記検知部は、前記第一接続体を取り囲む第一巻線部及び第一巻戻し線部
と、前記第一巻線部及び前記第一巻戻し線部の内方に位置し、前記第一接続体が通過する第一開口部と、を有する第一検知部と、前記第二接続体を取り囲む第二巻線部及び第二巻戻し線部
と、前記第二巻線部及び前記第二巻戻し線部の内方に位置し、前記第二接続体が通過する第二開口部と、を有する第二検知部とを有することを特徴とする電子モジュール。
【請求項5】
前記第二接続体は、前記第二電子素子の上面に接続される接続子であることを特徴とする請求項4に記載の電子モジュール。
【請求項6】
前記第一接続体は、ヘッド部と、前記ヘッド部からヘッド部の厚み方向で延びた柱部とを有し、
前記柱部は前記第一電子素子の上面に設けられ、
前記ヘッド部に前記第二電子素子が設けられることを特徴とする請求項4に記載の電子モジュール。
【請求項7】
前記検知部は、前記巻戻し線部は、前記巻線部内を通過しないことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の電子モジュール。
【請求項8】
下面側に設けられた第二素子電極を有する電子素子と、
前記電子素子の第二素子電極が載置される第一検知電極と、前記電子素子に流れる電流が通過する導体部と、前記導体部を
周縁外方で取り囲むようにして設けられた巻線部と、前記巻線部の終端部で接続されて前記終端部から始端部側に向かって戻り、前記導体部を
周縁外方で取り囲む巻戻し線部と、を有する検知部と、
前記電子素子、前記導体部及び前記検知部の全体を封止する封止部と、
を備え、
前記封止部内において、前記導体部は前記巻線部及び前記巻戻し線部の内方で上下方向に延在し、
前記
検知部は、その周縁外方から前記導体部に達する切込みを有さないことを特徴とする電子モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、巻線部及び巻戻し線部を有する検知部を備えた電子モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電流検出センサとしてロゴスキーコイルを活用することが検討されている。このロゴスキーコイルはコアレスコイルであり、巻芯と、巻芯に巻かれた巻線と、巻線の終端部に接続され始端部側に戻る巻戻し線とを有している(例えば、特開2012-88224号参照)。また、ロゴスキーコイルは積分器に接続され、この積分器によって出力電圧を積分することで測定対象における電流の変化を測定することができる。
【0003】
他方、電子モジュールで用いられる電子素子(例えばスイッチング素子)に流れる電流の変化を検知するセンサが提案されている。従来、電子モジュールにはシャント抵抗を用いて電流を検出しているが、シャント抵抗を設けるためのスペースが必要になる。特に200A以上のような大電流である場合にはシャント抵抗のサイズが大きくなり、電子モジュール内での実装が困難になり、また電流精度が悪いという課題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、電子素子に流れる電流の変化を、大きさが大きくなりすぎることなく、かつ精度よく検出する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
[概念1]
本発明による電子モジュールは、
電子素子と、
前記電子素子のおもて面に設けられる接続体と、
前記接続体を取り囲むようにして設けられた巻線部と、前記巻線部の終端部で接続されて前記終端部から始端部側に向かって戻る巻戻し線部と、を有する検知部と、
を備えてもよい。
【0006】
[概念2]
本発明の概念1による電子モジュールにおいて、
前記接続体は、ヘッド部と、前記ヘッド部からヘッド部の厚み方向で延びた柱部とを有し、
前記巻線部及び前記巻戻し線部は前記柱部を取り囲むようにして設けられてもよい。
【0007】
[概念3]
本発明の概念2による電子モジュールにおいて、
前記電子素子は、前記柱部が設けられる第一電子素子と、前記ヘッド部に設けられる第二電子素子とを有してもよい。
【0008】
[概念4]
本発明の概念1乃至3のいずれか1項による電子モジュールにおいて、
前記電子素子は、第一電子素子と、前記第一電子素子のおもて面側に設けられた第二電子素子とを有し、
前記接続体は、前記第一電子素子のおもて面に設けられる第一接続体と、前記第二電子素子のおもて面に設けられる第二接続体とを有し、
前記検知部は、前記第一接続体を取り囲む第一巻線部及び第一巻戻し線部を有する第一検知部と、前記第二接続体を取り囲む第二巻線部及び第二巻戻し線部を有する第二検知部とを有してもよい。
【0009】
[概念5]
本発明の概念4による電子モジュールにおいて、
前記第二接続体は、前記第二電子素子のおもて面に接続される接続子であってもよい。
【0010】
[概念6]
本発明の概念4又は5による電子モジュールにおいて、
前記第一接続体は、ヘッド部と、前記ヘッド部からヘッド部の厚み方向で延びた柱部とを有し、
前記柱部は前記第一電子素子のおもて面に設けられ、
前記ヘッド部に前記第二電子素子が設けられてもよい。
【0011】
[概念7]
本発明の概念1乃至6のいずれか1つによる電子モジュールにおいて、
前記検知部は、前記巻戻し線部は、前記巻線部内を通過しなくてもよい。
【0012】
[概念8]
本発明による電子モジュールは、
裏面側に設けられた第二素子電極を有する電子素子と、
前記電子素子の第二素子電極が載置される第一検知電極と、前記電子素子に流れる電流が通過する導体部と、前記導体部を取り囲むようにして設けられた巻線部と、前記巻線部の終端部で接続されて前記終端部から始端部側に向かって戻る巻戻し線部と、を有する検知部と、
を備えてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、電子素子に電気的に接続される接続体又は導体部を取り囲むようにして、巻線部と巻戻し線部とを有する検知部が設けられる。このため、電子素子に流れる電流の変化を、大きさが大きくなりすぎることなく、かつ精度よく検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施の形態で用いられうる電子モジュールの側方断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の第1の実施の形態で用いられうる検知部の平面図である。
【
図3】
図3(a)は、本発明の第1の実施の形態で用いられうる電子モジュールの斜視面であり、
図3(b)は、
図3(a)で示した電子モジュールの縦断面図であり、
図3(c)は、
図3(a)で示した電子モジュールの平面図である。
図3(a)では、
図3(b)とは異なる縦断面を示すために、
図3(b)(c)の右側の部分は示していない。
【
図4】
図4は、本発明の第1の実施の形態で用いられうるさらに別の検知部の縦断面図である。
図4では、巻戻し線部が巻線部内を通過することを示すために、縦断面であれば見えない紙面のおもて面側の第二直線部も示している。
【
図5】
図5は、本発明の第1の実施の形態で用いられうる検知部と積分回路との関係を示した図である。
【
図6】
図6は、本発明の第1の実施の形態で用いられうる電子モジュールの検知部及び接続体の一部を拡大した側方断面図である。
【
図7】
図7は、本発明の第2の実施の形態で用いられうる電子モジュールの側方断面図である。
【
図8】
図8は、本発明の第3の実施の形態で用いられうる電子モジュールの側方断面図である。
【
図9】
図9(a)は、本発明の第3の実施の形態で用いられうる第一検知部及び第一接続体の一部を拡大した側方断面図であり、
図9(b)は、本発明の第3の実施の形態で用いられうる第二検知部及び第二接続体の一部を拡大した側方断面図である。
【
図10】
図10は、本発明の第4の実施の形態で用いられうる電子モジュールの側方断面図である。
【
図11】
図11は、本発明の第4の実施の形態で用いられうる検知部の側方断面図である。
【
図12】
図12は、本発明の第4の実施の形態で用いられうる、
図10とは異なる態様における電子モジュールの側方断面図である。
【
図13】
図13は、本発明の第5の実施の形態で用いられうる検知部の平面図である。
【
図14】
図14は、本発明の第5の実施の形態で用いられうる、
図13とは異なる態様における検知部の平面図である。
【
図15】
図15は、本発明の第6の実施の形態で用いられうる半導体装置の縦断面である。
【
図16】
図16は、本発明の第6の実施の形態で用いられうる、
図15とは異なる態様における別の半導体装置の縦断面である。
【
図17】
図17は、本発明の第6の実施の形態で用いられうる、
図15及び
図16とは異なる態様における半導体装置の縦断面である。
【
図18】
図18は、本発明の第7の実施の形態で用いられうる検知部の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
第1の実施の形態
《構成》
本実施の形態で「一方側」とは
図1の上方側を意味し、「他方側」とは
図1の下方側を意味する。また、
図1の上下方向(他方から一方に向かう方向及び一方から他方に向かう方向)を「第一方向」とし、第一方向に直交する第二方向及び第三方向(
図2参照)を含む面内方向を「面内方向」といい、
図1の上方から見た場合を「平面視」という。
【0016】
本実施の形態の電子モジュールは、銅等の金属層からなる導体層110と、導体層110にはんだ等の導電性接着剤(図示せず)を介して設けられる電子素子210と、電子素子210のおもて面(
図1の上面)に設けられる接続体250と、接続体250を取り囲むようにして設けられた検知部100と、を有してもよい。検知部100は、接続体250を取り囲むようにして設けられた巻線部10と、巻線部10の終端部で接続されて終端部から始端部側に向かって戻る巻戻し線部50と、を有してもよい。
図6に示すように、検知部100は接続体250が通過する開口部190を有してもよい。
【0017】
電子素子210はおもて面に第一素子電極211aを有し、裏面(
図1の下面)に第二素子電極211bを有してもよい。第一素子電極211aは導電性接着剤を介して接続体250に接続され、第二素子電極211bは導電性接着剤を介して導体層110に接続されてもよい。第一素子電極211aは例えばMOSFETのソース電極であり、第二素子電極211bは例えばMOSFETのドレイン電極である。また、別の例で言えば、第一素子電極211aは例えばMOSFETのドレイン電極であり、第二素子電極211bは例えばMOSFETのソース電極である。
【0018】
図1に示すように、検知部100が載置される載置部160が設けられてもよい。載置部160は導体層110に設けられてもよいし、載置部160は導体層110が設けられた基板105に直接載置されてもよい。電子モジュールは、検知部100、接続体250等を封止する封止樹脂からなる封止部140を有してもよい。
【0019】
図3に示すように、本実施の形態の検知部100は半導体層1を有し、この半導体層1に巻線部10及び巻戻し線部50が形成されて設けられてもよい。半導体の材料としては、シリコン、炭化珪素、窒化ガリウム等の材料を用いることができる。
【0020】
巻線部10及び巻戻し線部50はポリシリコン等の半導体材料から形成されてもよいが、これに限られることはなく、銅、アルミ等の金属材料等から形成され、金属膜が巻線部10及び巻戻し線部50となってもよい。
【0021】
巻戻し線部50は、巻線部10内を通過しないようにしてもよい。本実施の形態では、
図2に示すように、巻戻し線部50は巻線部10の周縁外方を取り囲むようにして設けられている。巻線部10内は酸化膜等の絶縁材料で埋められてもよい。
図3に示す態様では、巻線部10の周縁外方の一部及び底面に設けられた第一絶縁膜91と、第一絶縁膜91に設けられた第二絶縁膜92と、巻線部10内を埋める第三絶縁膜93が設けられている。
【0022】
図1では、巻戻し線部50が巻線部10内を通過しない態様を用いて説明しているが、これに限られることはなく、
図4に示すように、巻戻し線部50が巻線部10内を通過する態様を用いてもよい。なお本実施の形態では、
図3に示す態様を「疑似的なロゴスキーコイル」と呼び、
図4に示す態様を「ロゴスキーコイル」と呼ぶ。
図6で「10,50」という符号が用いられているが、これらは疑似的なロゴスキーコイルが用いられてもよいし、ロゴスキーコイルが用いられてもよいことを意味している。本実施の形態では、主に、ロゴスキーコイル又は疑似的なロゴスキーコイルが半導体材料によって形成される態様を用いて説明するが、これに限られることはなく、フレキシブル基板内にロゴスキーコイル又は疑似的なロゴスキーコイルが形成される態様を用いてもよいし、従前から知られているロゴスキーコイルが用いられてもよい。検知部100としてロゴスキーコイル又は疑似的なロゴスキーコイルを用いることで電流の変化を検知することができるが、電流の変化による検知に限られず、例えば磁界の変化等のその他の事象の変化(電気信号の変化)を検知するようにしてもよい。この場合には、電流の変化に起因する磁界の変化等を検知するようにしてもよいし、電流の変化とは無関係に磁界の変化等を検知するようにしてもよい。
【0023】
図3に示すように、巻線部10は、巻線方向に沿った第一直線部11と、第一直線部11の端部から周縁内方(
図3右側)かつ巻線方向に向かって面方向(第二方向及び第三方向を含む方向)で延びた第二直線部12と、第二直線部12の端部から一方側から他方側に向かって延びた第三直線部13と、第三直線部13の端部から周縁外方(
図3左側)かつ巻線方向に直交する方向に向かって面方向で延びた第四直線部14と、他方側から一方側に向かって第四直線部14の端部から延びた第五直線部15とを有してもよい(第一態様)。また、巻線部10の終端部では、第五直線部15の端部から周縁外方に向かって面方向で延びた第六直線部16が設けられ、第六直線部16の端部と巻戻し線部50の始端部とが接続されてもよい。巻戻し線部50は面方向に延びてもよい。
【0024】
図3に示す態様では、縦断面で見たときに、第二直線部12、第三直線部13、第四直線部14及び第五直線部15によって矩形状が形成される態様となっているが、このような態様に限られることはなく、縦断面で見たときに三角形状となってもよいし、より多くの角を有する多角形(五角形状以上)となってもよい。
【0025】
本実施の形態の半導体層1の巻戻し線部50及び巻線部10は、
図5に示すように、外部に設けられた抵抗部125、コンデンサ120及びオペアンプ130に接続されることで、積分回路が形成されてもよい。このような態様には限られず、半導体層1に積分回路の抵抗部125、コンデンサ120又は抵抗部125及びコンデンサ120が形成されてもよい。一例として、
図5では、巻線部10の始端部に接続された巻線電極パッド19が抵抗部125に接続され、抵抗部125がコンデンサ120及びオペアンプ130の反転入力端子に接続され、巻戻し線部50の終端部に接続された巻戻し線電極パッド59がオペアンプ130の非反転入力端子に接続されている。
【0026】
図2に示すように、巻線部10は、第二方向に延びたA方向巻線部31と、A方向巻線部31の端部に接続されるとともに第三方向に延びたB方向巻線部32と、B方向巻線部32の端部に接続されるとともに第二方向に延びたC方向巻線部33と、C方向巻線部33の端部に接続されるとともに第三方向に延びたD方向巻線部34とを有してもよい。このような態様を採用した場合には、直線形状で各方向巻線部31-34を形成することができ、比較的容易に製造することができる点で有益である。本実施の形態では4つの方向巻線部31-34を用いて説明するが、これに限られることはなく、3つの方向巻線部10によって面方向で三角形状が形成されるようにしてもよいし、5つ以上の方向巻線部10によって面方向で多角形状が形成されるようになってもよい。
【0027】
また、A方向巻線部31、B方向巻線部32、C方向巻線部33及びD方向巻線部34の長さは対応してもよい。長さが対応するというのは、A方向巻線部31、B方向巻線部32、C方向巻線部33及びD方向巻線部34の各々が、これらA方向巻線部31、B方向巻線部32、C方向巻線部33及びD方向巻線部34の平均値の±5%以内にあることを意味している。A方向巻線部31、B方向巻線部32、C方向巻線部33及びD方向巻線部34の各々に含まれる巻線の数は同数となってもよい。また、A方向巻線部31と巻線電極パッド19が接続される関係から、A方向巻線部31の巻き数が、B方向巻線部32、C方向巻線部33及びD方向巻線部34の巻き数よりも例えば1つ又は2つ若しくはそれ以上短くなっていてもよい。
【0028】
《効果》
次に、上述した構成からなる本実施の形態による効果の一例について説明する。なお、「効果」で説明するあらゆる態様を、上記構成で採用することができる。
【0029】
本実施の形態において、
図1に示すように、電子素子210に電気的に接続される接続体250を取り囲むようにして、巻線部10と巻戻し線部50とを有する検知部100が設けられる態様を採用した場合には、電子素子210に流れる電流の変化を、大きさが大きくなりすぎることなく、かつ精度よく検出できる。
【0030】
特に半導体層1に巻線部10が設けられる態様を採用した場合には、半導体装置の製造技術を利用することで巻線部10の構成を微細化することができ、単位長さあたりにおいて巻数を増やすことができる。このため、電流の変化を精度よく検出できる。また、このように微細化が可能であることから、巻線部10及び巻戻し線部50を半導体層1に設けても、大きさが大きくなることを防止できる。
【0031】
図6に示すように、接続体250の通過する開口部190が検知部100に設けられ、接続体250を取り囲むようにして検知部100が設けられる態様を採用した場合には、ある程度面内方向の位置の決まった接続体250内に流れる電流の変化を検知部250で検知することができ、精度の高い検知を実現できる。
【0032】
図2に示すように、巻戻し線部50が巻線部10内を通過しない態様を採用した場合には、製造工程を容易にすることができる点で非常に有益である。つまり、
図4に示すように巻戻し線部50が巻線部10内を通過する態様を採用した場合には、巻戻し線部50を巻線部10内に形成する工程が煩雑なものとなり、製造コストが上がってしまう。他方、巻戻し線部50を巻線部10内に形成しないようにすることで、格段に製造工程を容易にすることができ、製造コストを低減できる点で有益である。
【0033】
電子素子210がMOSFETのようなスイッチング素子である場合にはONとOFFを切り替える際に電流が変化することから、本実施の形態における疑似的なロゴスキーコイル及びロゴスキーコイルを採用することは有益である。
【0034】
図3(a)(b)に示すように、巻線部10の第一直線部11、第二直線部12及び第六直線部16と巻戻し線部50の高さ位置が同じ態様を採用した場合には、これらに対して同じ工程を採用することができる点で有益である。つまり、第一絶縁膜91の上面に導電性材料を積み上げ、導電性材料をエッチングすることで生成することができる点で有益である。
【0035】
本実施の形態において巻戻し線部50を巻線部10の周縁外方に位置づける態様を採用した場合には、第一素子電極61と第二素子電極62との間で流れる電流に巻線部10を極力近接して配置させることができる点で有益である。
【0036】
第2の実施の形態
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。
【0037】
本実施の形態では、
図7に示すように、接続体260が、ヘッド部261と、ヘッド部261からヘッド部261の厚み方向で延びた柱部262とを有している。そして、検知部100の巻線部10及び巻戻し線部50が開口部190を通過する柱部262を取り囲むようにして設けられている。電子素子210は、第一電子素子210aと、第一電子素子210aのおもて面側に設けられた第二電子素子210bとを有してもよい。第一電子素子210aには柱部262が設けられ、ヘッド部261に第二電子素子210bが設けられてもよい。第1の実施の形態で採用したあらゆる構成を第2の実施の形態でも採用することができる。第1の実施の形態で説明した部材に対しては同じ符号を付して説明する。
【0038】
本実施の形態によれば、第一電子素子210aと第二電子素子210bとを積層して配置し、これら第一電子素子210aと第二電子素子210bとの間に流れる電流の変化を検知部100で検出することができる。本実施の形態のようにヘッド部261を設けることで第二電子素子210bを安定した状態で配置することができ、柱部262を設けることで開口部190の大きさを大きくすることなく、この結果として巻線部10及び巻戻し線部50を面内方向においてコンパクトな状態として設けることができる。
【0039】
第一電子素子210a及び第二電子素子210bの各々はMOSFETのようなスイッチング素子であってもよい。この場合には、例えば第一電子素子210aのおもて面に設けられたソース電極と第二電子素子210bの裏面に設けられたドレイン電極とが接続体260によって接続されてもよいし、別の例として、第一電子素子210aのおもて面に設けられたドレイン電極と第二電子素子210bの裏面に設けられたソース電極とが接続体260によって接続されてもよい。
【0040】
第3の実施の形態
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。
【0041】
上記各実施の形態では、
図8に示すように、接続体250が、第一電子素子210aのおもて面に設けられる第一接続体270aと、第二電子素子210bのおもて面に設けられる第二接続体270bとを有している。
図9に示すように、検知部100は、第一接続体270aを取り囲む第一巻線部10a及び第一巻戻し線部50aを有する第一検知部100aと、第二接続体270bを取り囲む第二巻線部10b及び第二巻戻し線部50bを有する第二検知部100bとを有している。一例として、第二接続体270bは、第二電子素子210bのおもて面に接続される接続子となっている。第二接続体270bは、第二検知部100bの開口部190を通過する第二接続先端部281と、導体層110に導電性接着剤を介して設けられる第二接続基端部282とを有している。第一接続体270aは、ヘッド部261と、ヘッド部261からヘッド部261の厚み方向で延びた柱部262と、導体層110に導電性接着剤を介して設けられる第一接続基端部269とを有している。柱部262は第一電子素子210aのおもて面に設けられ、ヘッド部261に第二電子素子210bが設けられている。
【0042】
本実施の形態によれば、第一電子素子210aと第二電子素子210bとを積層して配置し、これら第一電子素子210aと第二電子素子210bとの間に流れる電流の変化を第一検知部100aで検出することができる。また、第二電子素子210bに流れる電流の変化を第二検知部100bで検出することができる。このため、本態様によれば、積層される第一電子素子210a及び第二電子素子210bの各々に関する電流の変化をより確実に検出することができる。
【0043】
第二接続体270bの第二接続先端部282と第一接続体270aの柱部262の太さが略同一となってもよい。このような態様を採用した場合には、これら第二接続先端部282と第一接続体270aの柱部262を流れる電流の変化を同じ程度の精度で検出できる点で有益である。特に第一検知部100aと第二検知部100bとで同じ部材を用いる場合には、このように第二接続先端部282と柱部262の太さを略同一とすることで、概ね同じ精度で第二接続先端部282と柱部262を流れる電流の変化を検出できる点で有益である。なお「太さ」が「略同一」とは、両者の「太さ」の差が「太さ」の太い方の5%以内にあることを意味し、太さW1と太さW2(W1≧W2)とが略同一であるというのは、W1×0.95≦W2≦W1となることを意味している。
【0044】
第4の実施の形態
次に、本発明の第4の実施の形態について説明する。
【0045】
本実施の形態では、
図10に示すように、裏面側に設けられた第二素子電極211bを有する電子素子210と、電子素子210の第二素子電極211bが載置される検知部100とが設けられてもよい。本実施の形態の検知部100は、
図11に示すように、電子素子210の第二素子電極211bが載置される第一検知電極61と、電子素子210に流れる電流が通過する導体部63と、導体部63を取り囲むようにして設けられた巻線部10と、巻線部10の終端部で接続されて終端部から始端部側に向かって戻る巻戻し線部50と、を有している。上記各実施の形態で採用したあらゆる構成を本実施の形態でも採用することができる。上記各実施の形態で説明した部材に対しては同じ符号を付して説明する。
【0046】
検知部100は裏面側に第二検知電極63を有してもよい。この第二検知電極63は導電性接着剤を介して導体層110に載置されてもよい。導体部63は金属材料から構成されてもよいし、半導体材料から構成されてもよい。導体部63が半導体材料から構成される場合には導体部63の不純物濃度が導体部63を取り囲む周辺領域における半導体層1と比較して高い態様となってもよい。
【0047】
図12に示すように、巻線電極パッド19に接続される接続子290及び/又は巻戻し線電極パッド59に接続される接続子290が設けられてもよい。この場合には、接続子290及び導体層110を介して、抵抗部125、コンデンサ120及びオペアンプ130と、巻線部10及び巻戻し線部50とが接続されてもよい。
【0048】
第5の実施の形態
次に、本発明の第5の実施の形態について説明する。
【0049】
第1の実施の形態では、一例として
図2に示すような検知部100の構成となっていたが、
図13に示すように巻戻し線部50が巻線部10の周縁内方に設けられる態様を採用してもよい。また、
図14に示すように、平面視(第二方向及び第三方向を含む平面)において巻線部10及び巻戻し線部50の各々が円形状となってもよい。また、平面視において巻線部10及び巻戻し線部50の各々が三角形状となってもよい。上記各実施の形態で採用したあらゆる構成を本実施の形態でも採用することができる。
【0050】
第6の実施の形態
次に、本発明の第6の実施の形態について説明する。
【0051】
上記各実施の形態では、一つの疑似的なロゴスキーコイル又はロゴスキーコイルが設けられている態様であったが、第6の実施の形態では、複数の疑似的なロゴスキーコイル又はロゴスキーコイルが設けられている。上記各実施の形態で採用したあらゆる構成を本実施の形態でも採用することができる。上記各実施の形態で説明した部材に対しては同じ符号を付して説明する。
【0052】
図15に示すように、疑似的なロゴスキーコイル又はロゴスキーコイルが第一方向で整列して配置されてもよい。より具体的には、巻線部10と巻線部10内を通過しない巻戻し線部50(疑似的なロゴスキーコイル)、又は、巻線部10と巻線部10内を通過する巻戻し線部50(ロゴスキーコイル)が第一方向で並んで設けられてもよい。この態様を採用した場合には、第一方向の2箇所以上で電流の変化を検知することができるので、より正確に電流の変化を検知することができる点で有益である。但し、この態様では、巻線部10及び巻戻し線部50を第一方向で積み重ねるようにして配置する必要があることから、第1の実施の形態と比較すると製造工程が煩雑になることには留意が必要である。
【0053】
図16に示すように、疑似的なロゴスキーコイル又はロゴスキーコイルの外周側に別の疑似的なロゴスキーコイル又はロゴスキーコイルが配置されてもよい。より具体的には、巻線部10と巻線部10内を通過しない巻戻し線部50(疑似的なロゴスキーコイル)、又は、巻線部10と巻線部10内を通過する巻戻し線部50(ロゴスキーコイル)が第二方向又は第三方向で並んで設けられてもよい。この態様を採用した場合にも、より正確に電流の変化を検知することができる点で有益である。また、この態様では、第1の実施の形態と同様の製造工程を採用することができる点でも有益である。
【0054】
これらの態様が組み合わされてもよく、
図17に示すように、第一方向で疑似的なロゴスキーコイル又はロゴスキーコイルが積層され、かつ疑似的なロゴスキーコイル又はロゴスキーコイルの外周側に別の疑似的なロゴスキーコイル又はロゴスキーコイルが設けられてもよい。より具体的には、巻線部10と巻線部10内を通過しない巻戻し線部50(疑似的なロゴスキーコイル)、又は、巻線部10と巻線部10内を通過する巻戻し線部50(ロゴスキーコイル)が第二方向又は第三方向で並んで設けられ、かつ、第一方向でも並んで設けられてもよい。なお、
図15及び
図16では開口部190が設けられ、開口部190内を接続体250が通過する態様を用いて説明し、
図17では第一素子電極61、第二素子電極62及び導体部63が設けられる態様を用いて説明している。
【0055】
第7の実施の形態
次に、本発明の第7の実施の形態について説明する。
【0056】
本実施の形態では、
図18及び
図19に示すように、巻戻し線部50が巻線部10の一方側に位置づけられるようになっている。上記各実施の形態で採用したあらゆる構成を本実施の形態でも採用することができる。上記各実施の形態で説明した部材に対しては同じ符号を付して説明する。本実施の形態の変形例として、巻戻し線部50は巻線部10の他方側に位置づけられてもよい。
【0057】
図19に示すように、巻線部10の終端部と巻戻し線部50の始端部は第一方向で延びる連結体18によって連結されてもよい。なお、連結体18を形成するために用いる導電性材料は巻線部10を形成する際に用いた導電性材料と同じ材料であってもよいし、異なる材料であってもよい。
【0058】
上述した各実施の形態の記載及び図面の開示は、請求の範囲に記載された発明を説明するための一例に過ぎず、上述した実施の形態の記載又は図面の開示によって請求の範囲に記載された発明が限定されることはない。また、出願当初の請求項の記載はあくまでも一例であり、明細書、図面等の記載に基づき、請求項の記載を適宜変更することもできる。
【符号の説明】
【0059】
1 半導体層
10 巻線部
10a 第一巻線部
10b 第二巻線部
50 巻戻し線部
50a 第一巻戻し線部
50b 第二巻戻し線部
61 第一検知電極
62 第二検知電極
63 導体部
100 検知部
100a 第一検知部
100b 第二検知部
210 電子素子
210a 第一電子素子
210b 第二電子素子
211b 第二素子電極
250,260 接続体
261 ヘッド部
262 柱部
270a 第一接続体
270b 第二接続体