(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】建具枠取り付け構造とこれを使用した建具枠の施工方法
(51)【国際特許分類】
E06B 1/56 20060101AFI20241016BHJP
E06B 1/60 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
E06B1/56 B
E06B1/60
(21)【出願番号】P 2021016494
(22)【出願日】2021-02-04
【審査請求日】2023-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(73)【特許権者】
【識別番号】307038540
【氏名又は名称】三和シヤッター工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154726
【氏名又は名称】宮地 正浩
(72)【発明者】
【氏名】藤田 和典
(72)【発明者】
【氏名】村井 剛
(72)【発明者】
【氏名】森田 翔
(72)【発明者】
【氏名】香川 卓也
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 拓真
(72)【発明者】
【氏名】吉原 信哉
(72)【発明者】
【氏名】沼野 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】山本 一平
(72)【発明者】
【氏名】高木 隆司
(72)【発明者】
【氏名】清 貴裕
【審査官】砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-218839(JP,A)
【文献】特開平4-153486(JP,A)
【文献】特表2000-505515(JP,A)
【文献】特開平8-4424(JP,A)
【文献】実公昭48-45447(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 1/56-1/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建具枠を、壁の開口部を形成する枠体に取付金物を介して取り付ける建具枠取り付け構造であって、
前記取付金物は、前記建具枠に取り付けられる建具枠取付部が、前記枠体に取り付けられる枠体取付部よりも前記壁の面外方向外側に張り出す形状に形成され、
前記建具枠取付部には、前記枠体に対する前記面外方向での前記建具枠の建ち調整を可能にするルーズ孔が形成されている建具枠取り付け構造。
【請求項2】
前記建具枠取付部には、前記建ち調整後に前記枠体に対する前記建具枠の位置決め固定を可能にする丸孔が形成されている請求項1に記載の建具枠取り付け構造。
【請求項3】
前記取付金物は、前記枠体における前記面外方向の両外端面に対して、前記枠体取付部が前記壁の面内方向に位置調整可能に取り付けられる一対のアングル材である請求項1又は2に記載の建具枠取り付け構造。
【請求項4】
請求項3に記載の
建具枠取り付け構造において、前記建具枠取付部には、前記建ち調整後に前記枠体に対する前記建具枠の位置決め固定を可能にする丸孔が形成されている建具枠取り付け構造を使用した建具枠の施工方法であって、
事前に前記ルーズ孔を使用して前記建具枠取付部が前記建具枠に仮止めされた一方の前記アングル材の前記枠体取付部を、前記枠体における前記面外方向の一方の外端面に対して前記面内方向に位置調整して、前記枠体に対する前記面内方向での前記建具枠の建ち調整を行う面内方向建ち調整工程と、
前記面内方向建ち調整工程後に、一方の前記アングル材の前記枠体取付部を前記枠体における前記面外方向の一方の外端面に取り付けて、前記建具枠を前記面内方向に位置決め固定する面内方向位置決め固定工程と、
前記面内方向位置決め固定工程後に、前記ルーズ孔を利用して前記建具枠を前記枠体に対して前記面外方向に建ち調整する面外方向建ち調整工程と、
前記面外方向建ち調整工程後に、前記丸孔を利用して前記枠体に対して前記建具枠を前記面外方向に位置決め固定する面外方向位置決め固定工程と、
前記面外方向位置決め固定工程後に、他方の前記アングル材の前記建具枠取付部を前記建具枠に取り付けるとともに、他方の前記アングル材の前記枠体取付部を前記枠体における前記面外方向の他方の外端面に取り付けて、前記建具枠を前記枠体に固定する建具枠固定工程とが含まれている建具枠取り付け構造を使用した建具枠の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建具枠を、壁の開口部を形成する枠体に取付金物を介して取り付ける建具枠取り付け構造とこれを使用した建具枠の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような建具枠取り付け構造としては、例えば、建築壁の一部に設ける開口部(出入口)に嵌って引戸やドアが装着される建具枠(門形枠体)を枠体(鉄筋下地補強)に取り付ける場合に、枠体には概略コ形断面の長尺材をなす第1パッキング材を取着し、建具枠の背面には概略コ形断面の長尺材を成す第2パッキング材を取り付け、これら第1パッキング材と第2パッキング材の両側板を互いに当接して抱き合わせ、引戸やドアを閉じた場合に建具枠との間に隙間が発生しないように調整し、この状態で互いに抱き合っている側板をネジ止めなどにて連結・固定するように構成されたものがある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
つまり、特許文献1に記載の建具枠取り付け構造では、枠体における壁の面内方向での組付け誤差などに起因して、閉じ位置の引戸又はドアと建具枠との間に隙間が発生する場合には、第1パッキング材と第2パッキング材との壁の面内方向での重なり具合を調整することにより、前述した隙間を無くすことができる。
しかしながら、枠体における壁の面外方向での組付け誤差の影響を受けることなく、枠体に対して建具枠を適正な建ち精度で取り付けるためには、枠体に対する壁の面外方向での建具枠の建ち調整を、枠体に対する第1パッキング材の取り付けや建具枠に対する第2パッキング材の取り付けを行う段階で、枠体における壁の面外方向での組付け誤差を考慮して行う必要がある。その結果、建具枠を適正な建ち精度で枠体に取り付けるのにかなりの手間を要するようになっていた。
【0005】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、枠体に対する壁の面外方向での建具枠の建ち調整を容易に行えるようにして、枠体に対する建具枠の適正な取り付けを容易に精度良く行えるようにする点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1特徴構成は、建具枠を、壁の開口部を形成する枠体に取付金物を介して取り付ける建具枠取り付け構造であって、
前記取付金物は、前記建具枠に取り付けられる建具枠取付部が、前記枠体に取り付けられる枠体取付部よりも前記壁の面外方向外側に張り出す形状に形成され、
前記建具枠取付部には、前記枠体に対する前記面外方向での前記建具枠の建ち調整を可能にするルーズ孔が形成されている点にある。
【0007】
本構成によると、取付金物を、建具枠取付部のルーズ孔を利用して建具枠に取り付けることができ、取り付けた取付金物の枠体取付部を利用して、建具枠を枠体に取り付けることができる。そして、この取り付け状態においては、取付金物の建具枠取付部が枠体取付部よりも壁の面外方向外側に張り出していることから、建具枠取付部のルーズ孔を利用することにより、取付金物を枠体に取り付けた状態で、枠体に対する壁の面外方向での建具枠の建ち調整を容易に行うことができ、この建ち調整により、枠体における壁の面外方向での組付け誤差の影響を受けることなく、枠体に対して建具枠を適正な建ち精度で取り付けることができる。
その結果、壁の開口部を形成する枠体に対する建具枠の適正な取り付けを容易に精度良く行うことができる。
【0008】
本発明の第2特徴構成は、
前記建具枠取付部には、前記建ち調整後に前記枠体に対する前記建具枠の位置決め固定を可能にする丸孔が形成されている点にある。
【0009】
本構成によると、建具枠を、枠体に対する壁の面外方向での建ち調整後に、建具枠取付部の丸孔を利用して枠体に固定することにより、枠体に対する壁の面外方向での変位が防止された適正な取り付け状態に安定して維持することができる。
【0010】
本発明の第3特徴構成は、
前記取付金物は、前記枠体における前記面外方向の両外端面に対して、前記枠体取付部が前記壁の面内方向に位置調整可能に取り付けられる一対のアングル材である点にある。
【0011】
本構成によると、建具枠を枠体に取り付ける場合には、建具枠に仮止めされたアングル材の枠体取付部を、枠体における面外方向の両外端面に対して壁の面内方向に位置調整することにより、枠体に対する壁の面内方向での建具枠の建ち調整を行うことができ、この建ち調整により、枠体における壁の面内方向での組付け誤差の影響を受けることなく、枠体に対して建具枠を適正な建ち精度で取り付けることができる。
その結果、壁の開口部を形成する枠体に対する建具枠の適正な取り付けを、より精度良く容易に行うことができる。
又、取付金物が前述した一対のアングル材であることにより、建具や壁厚に応じて異なる建具枠や枠体における面外方向の幅寸法などの固有条件にかかわらず、使用する取付金物の共通化が可能になる。
その結果、取付金物の量産化を容易に行えるとともに、現場での作業性の向上を図ることができる。
【0012】
本発明の第4特徴構成は、上記第3特徴構成に記載の建具枠取り付け構造において、前記建具枠取付部には、前記建ち調整後に前記枠体に対する前記建具枠の位置決め固定を可能にする丸孔が形成されている建具枠取り付け構造を使用した建具枠の施工方法であって、
事前に前記ルーズ孔を使用して前記建具枠取付部が前記建具枠に仮止めされた一方の前記アングル材の前記枠体取付部を、前記枠体における前記面外方向の一方の外端面に対して前記面内方向に位置調整して、前記枠体に対する前記面内方向での前記建具枠の建ち調整を行う面内方向建ち調整工程と、
前記面内方向建ち調整工程後に、一方の前記アングル材の前記枠体取付部を前記枠体における前記面外方向の一方の外端面に取り付けて、前記建具枠を前記面内方向に位置決め固定する面内方向位置決め固定工程と、
前記面内方向位置決め固定工程後に、前記ルーズ孔を利用して前記建具枠を前記枠体に対して前記面外方向に建ち調整する面外方向建ち調整工程と、
前記面外方向建ち調整工程後に、前記丸孔を利用して前記枠体に対して前記建具枠を前記面外方向に位置決め固定する面外方向位置決め固定工程と、
前記面外方向位置決め固定工程後に、他方の前記アングル材の前記建具枠取付部を前記建具枠に取り付けるとともに、他方の前記アングル材の前記枠体取付部を前記枠体における前記面外方向の他方の外端面に取り付けて、前記建具枠を前記枠体に固定する建具枠固定工程とが含まれている点にある。
【0013】
本構成によると、前述した面内方向建ち調整工程と面内方向位置決め固定工程とを行うことにより、枠体における壁の面内方向での組付け誤差の影響を受けることなく、壁の面内方向において、建具枠を、枠体に対して適正な建ち精度で取り付けることができる。又、その後の面外方向建ち調整工程においては、取付金物を枠体に取り付けた状態で、枠体に対する壁の面外方向での建具枠の建ち調整を容易に行うことができる。
そして、前述した面外方向建ち調整工程と面外方向位置決め固定とを行うことにより、枠体における壁の面外方向での組付け誤差の影響を受けることなく、壁の面外方向において、建具枠を、枠体に対して適正な建ち精度で取り付けることができ、その後、建具枠固定工程を行うことにより、建具枠を、枠体に対して適正な建ち精度で取り付けた状態に安定して維持することができる。
その結果、壁の開口部を形成する枠体に対する適正な建具枠の取り付けを、枠体における壁の面内方向と面外方向の双方での組付け誤差にかかわらず、容易に精度良く行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図4】扉枠取付部(建具枠取付部)におけるルーズ孔及び丸孔の配置を示すアングル材(取付金物)の側面図
【
図5】別実施形態での建具枠取り付け構造の概略を示す水平断面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態の一例として、本発明に係る建具枠取り付け構造を、建具の一例である扉を保持する建具枠である扉枠に適用した実施形態を図面に基づいて説明する。
尚、本発明に係る建具枠取り付け構造は、扉枠に限らず、例えば、建具の一例である窓を保持する建具枠である窓枠などに適用することができる。又、以下の実施形態においては、扉枠として、扉の一例である開き戸がヒンジを介して取り付けられるものを例示するが、扉枠は、扉の一例である引き戸を溝やレールで案内するように構成されたものなどであってもよい。
【0016】
図1~3に示すように、本実施形態で例示する扉枠(建具枠の一例)10は、建物の壁1に扉取り付け用の開口部1Aを形成する枠体20に取付金物30を介して取り付けられている。
【0017】
扉枠10は、鋼製の扉2(
図2参照)がヒンジ3(
図2参照)を介して取り付けられる軽量鋼板製の第1縦枠部材11と、第1縦枠部材11に対向する軽量鋼板製の第2縦枠部材12と、各縦枠部材11,12の上端部にわたる軽量鋼板製の横枠部材13とを工場で溶接して門型に形成されている。扉枠10は、その廊下側(壁1の面外方向Xの一端側)の外周部が、枠体20の廊下側外端面(面外方向Xの一方の外端面)20Aに取り付けられる第1取付部10Aに設定され、部屋側(壁1の面外方向Xの他端側)の外周部が、枠体20の部屋側外端面(面外方向Xの他方の外端面)20Bに取り付けられる第2取付部10Bに設定されている。扉枠10における廊下側の内周部には、閉じ位置の扉2を受け止める戸当り部10Cが備えられている。各戸当り部10Cには、閉じ位置に操作された扉2を受け止める受止部材4(
図2参照)が備えられている。
尚、扉枠10は、上記の軽量鋼板製に限らず、例えばアルミニウム合金製などであってもよい。
【0018】
枠体20は、扉枠10の第1縦枠部材11が取り付けられる第1縦補強部材21と、扉枠10の第2縦枠部材12が取り付けられる第2縦補強部材22と、扉枠10の横枠部材13が取り付けられる横補強部材23とから構成されている。各縦補強部材21,22及び横補強部材23には、軽量形鋼の一例であるリップ溝形鋼が採用されており、各縦補強部材21,22の上部側に横補強部材23が掛け渡されることで、扉取り付け用の開口部1Aが形成されている。
【0019】
取付金物30としては、扉枠10の第1縦枠部材11を枠体20の第1縦補強部材21に取り付ける一対の第1アングル材31と、扉枠10の第2縦枠部材12を枠体20の第2縦補強部材22に取り付ける一対の第2アングル材32と、扉枠10の横枠部材13を枠体20の横補強部材23に取り付ける一対の第3アングル材33とが備えられている。各アングル材31~33は、軽量形鋼の一例である不等辺のアングル材であり、各アングル材31~33の短辺部が、扉枠10に取り付けられる扉枠取付部(建具枠取付部の一例)31A~33Aとして使用され、各アングル材31~33の長辺部が、枠体20に取り付けられる枠体取付部31B~33Bとして使用されている。
【0020】
扉枠10は、その第1取付部10Aと第2取付部10Bとが枠体20よりも面外方向Xの外側に位置するように、枠体20よりも面外方向Xで幅広に形成されている。各アングル材31~33は、それらの枠体取付部31B~33Bが、枠体20における面外方向Xの両外端面20A,20Bに沿って壁1の面内方向Yに延びるとともに、それらの扉枠取付部31A~33Aが枠体取付部31B~33Bよりも面外方向Xの外側に張り出すL字形に形成されている。
【0021】
図4に示すように、各アングル材31~33の各扉枠取付部31A~33Aには、枠体20に対する面外方向Xでの扉枠10の建ち調整を可能にするルーズ孔31a~33aとして、面外方向Xに長い長孔が形成されている。又、各扉枠取付部31A~33Aには、面外方向Xでの扉枠10の建ち調整後に枠体20に対する扉枠10の位置決め固定を可能にする丸孔31b~33bが形成されている。
【0022】
各アングル材31~33のうち、一対の第1アングル材31と一対の第2アングル材32には、同じ長さで、ルーズ孔31a,32aと丸孔31b,32bとが上下対称位置に形成された同一部材が使用されている。又、一対の第3アングル材33には、同じ長さで、ルーズ孔33aと丸孔33bとが左右対称位置に形成された同一部材が使用されている。
【0023】
以上の構成により、本実施形態で例示した建具枠取り付け構造においては、各アングル材31~33を、扉枠取付部31A~33Aのルーズ孔31a~33aを利用して扉枠10に第1ビス5にて仮止めすることができる。そして、この仮止め状態においては、各アングル材31~33の枠体取付部31B~33Bが、枠体20における面外方向Xの外端面20A,20Bに沿って壁1の面内方向Yに延びていることから、各枠体取付部31B~33Bを利用して、各アングル材31~33とともに扉枠10を、枠体20における面外方向Xの外端面20A,20Bに対して壁1の面内方向Yに位置調整することが可能になる。これにより、枠体20に対する面内方向Yでの扉枠10の建ち調整を容易に行うことができ、この建ち調整により、枠体20における壁1の面内方向Yでの組付け誤差の影響を受けることなく、枠体20に対して扉枠10を適正な建ち精度で取り付けることが可能になる。
【0024】
その後、扉枠10に仮止めした各アングル材31~33の枠体取付部31B~33Bを枠体20に第2ビス6にて取り付けると、この取り付け状態においては、各アングル材31~33の扉枠取付部31A~33Aが枠体取付部31B~33Bよりも面外方向Xの外側に張り出していることから、各扉枠取付部31A~33Aのルーズ孔31a~33aを利用することが可能になり、各ルーズ孔31a~33aを利用することにより、各アングル材31~33を枠体20に取り付けた状態で、枠体20に対する面外方向Xでの扉枠10の建ち調整を容易に行うことができる。そして、この建ち調整により、枠体20における壁1の面外方向Xでの組付け誤差の影響を受けることなく、枠体20に対して扉枠10を適正な建ち精度で取り付けることが可能になる。
【0025】
その結果、扉取り付け用の開口部1Aを形成する枠体20に対する扉枠10の適正な取り付けを容易に精度良く行うことが可能になる。
【0026】
そして、枠体20に対する壁1の面外方向Xでの扉枠10の建ち調整後に、各第1ビス5を本締めするとともに、各扉枠取付部31A~33Aの各丸孔31b~33bを利用して、各扉枠取付部31A~33Aを扉枠10に第3ビス7にて取り付けることにより、扉枠10を枠体20に固定することができ、扉枠10を、枠体20に対する壁1の面外方向Xでの変位が防止された適正な取り付け状態に安定して維持することができる。
【0027】
しかも、取付金物30として、前述した第1アングル材31と第2アングル材32と第3アングル材33とを備えることにより、使用する扉2に応じて異なる扉枠10や枠体20の高さ寸法や幅寸法などの固有条件にかかわらず、各アングル材31~33(取付金物30)を共通して使用することが可能になる。これにより、各アングル材31~33の量産化が可能になり、各アングル材31~33に要するコストの削減などを図ることができる。
【0028】
又、各アングル材31~33が一対ずつであることにより、使用する扉2や壁1の厚みに応じて異なる扉枠10や枠体20における面外方向Xの幅寸法などの固有条件にかかわらず、各アングル材31~33を共通して使用することが可能になる。
その結果、各アングル材31~33の量産化を更に促進させることが可能になるとともに、現場での各アングル材31~33の管理や扉枠10や枠体20に対する取り付けなどを容易にすることができる。
【0029】
更に、一対の第1アングル材31と一対の第2アングル材32とのそれぞれに、共通する同一部材が使用され、又、一対の第3アングル材33のそれぞれに、共通する同一部材が使用されることにより、それらに共通しない異なる部材を使用する場合に比較して、各アングル材31~33の量産化をより好適に促進させることが可能になるとともに、各アングル材31~33の管理や扉枠10や枠体20に対する取り付けなどを更に容易にすることができる。
【0030】
以下、上記の建具枠取り付け構造を使用した建具枠の施工方法の一例について説明する。
尚、本実施形態で例示する建具枠の施工方法においては、扉枠10や各アングル材31~33などを製作する工場からの出荷段階において、廊下側の各アングル材31~33が、それらのルーズ孔31a~33aを使用して、扉枠10の第1取付部10Aに第1ビス5にて仮止めされている。
【0031】
本実施形態で例示する建具枠の施工方法には、扉取り付け用の開口部1Aを形成する枠体20に対して扉枠10を面内方向Yで建ち調整する面内方向建ち調整工程と、面内方向建ち調整工程後に扉枠10を面内方向Yに位置決め固定する面内方向位置決め固定工程と、面内方向位置決め固定工程後に扉枠10を枠体20に対して面外方向Xに建ち調整する面外方向建ち調整工程と、面外方向建ち調整工程後に扉枠10を面外方向Xに位置決め固定する面外方向位置決め固定工程と、面外方向位置決め固定工程後に扉枠10を枠体20に固定する扉枠固定工程とが含まれている。
【0032】
面内方向建ち調整工程においては、事前に扉枠10に第1ビス5にて仮止めされた廊下側の各アングル材31~33を、それらの枠体取付部31B~33Bを利用して、枠体20の廊下側外端面20Aに対して面内方向Yに位置調整して、枠体20に対する面内方向Yでの扉枠10の建ち調整を行う(
図3の(a)参照)。
【0033】
面内方向位置決め固定工程においては、廊下側の各アングル材31~33における枠体取付部31B~33Bを、枠体20の廊下側外端面20Aに第2ビス6を使用して取り付けて、扉枠10を枠体20に対して面内方向Yに位置決め固定する(
図3の(b)参照)。
【0034】
面外方向建ち調整工程においては、廊下側の各アングル材31~33の扉枠取付部31A~33Aを扉枠10に仮止めしている各第1ビス5を緩めて、各扉枠取付部31A~33Aのルーズ孔31a~33aを利用して、扉枠10を枠体20に対して面外方向Xに建ち調整する(
図3の(b)参照)。
【0035】
面外方向位置決め固定工程においては、緩めた各第1ビス5を本締めするとともに、廊下側の各アングル材31~33における扉枠取付部31A~33Aを、各扉枠取付部31A~33の丸孔31b~33bを利用して扉枠10に第3ビス7にて取り付けて、扉枠10を枠体20に対して面外方向Xに位置決め固定する(
図3の(b)参照)。
【0036】
扉枠固定工程においては、部屋側の各アングル材31~33の扉枠取付部31A~33Aを、各扉枠取付部31A~33Aのルーズ孔31a~33a及び丸孔31b~33bを利用して扉枠10の第2取付部10Bに第1ビス5及び第3ビス7にて取り付けるとともに、部屋側の各アングル材31~33の枠体取付部31B~33Bを、枠体20の部屋側外端面20Bに第2ビス6にて取り付けて、扉枠10を枠体20に固定する(
図3の(c)参照)。
【0037】
このように、前述した面内方向建ち調整工程と面内方向位置決め固定工程とを行うことにより、枠体20における壁1の面内方向Yでの組付け誤差の影響を受けることなく、壁1の面内方向Yにおいて、扉枠10を、枠体20に対して適正な建ち精度で取り付けることができる。又、その後の面外方向建ち調整工程においては、廊下側の各アングル材31~33を枠体20に取り付けた状態で、枠体20に対する壁1の面外方向Xでの扉枠10の建ち調整を容易に行うことができる。
そして、前述した面外方向建ち調整工程と面外方向位置決め固定とを行うことにより、枠体20における壁1の面外方向Xでの組付け誤差の影響を受けることなく、壁1の面外方向Xにおいて、扉枠10を、枠体20に対して適正な建ち精度で取り付けることができ、その後、扉枠固定工程を行うことにより、扉枠10を、枠体20に対して適正な建ち精度で取り付けた状態に安定して維持することができる。
その結果、壁1の開口部1Aを形成する枠体20に対する適正な扉枠10の取り付けを、枠体20における壁1の面内方向Yと面外方向Xの双方での組付け誤差にかかわらず、容易に精度良く行うことができる。
【0038】
〔別実施形態〕
本発明の別実施形態について説明する。
尚、以下に説明する各別実施形態の構成は、それぞれ単独で適用することに限らず、上記の実施形態や他の別実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0039】
(1)上記の実施形態においては、各アングル材31~33として、廊下側のアングル材31~33と部屋側のアングル材31~33とに同じ部材を使用したものを例示したが、これに限らず、例えば、
図5に示すように、廊下側のアングル材31~33と部屋側のアングル材31~33とに異なる部材を使用するようにしてもよい。
尚、
図5においては、廊下側のアングル材31~33と部屋側のアングル材31~33とに、それらの枠体取付部31B~33Bの長さが異なる部材を使用したものを例示している。
又、図示は省略するが、前述した面外方向建ち調整工程において扉枠取付部31A~33Aが扉枠10に仮止めされている廊下側の各アングル材31~33には、扉枠取付部31A~33Aに建ち調整用のルーズ孔31a~33aと位置決め用の丸孔31b~33bとが形成された部材を使用し、面外方向建ち調整工程後の前述した扉枠固定工程において扉枠取付部31A~33Aが扉枠10に取り付けられる部屋側の各アングル材31~33には、扉枠取付部31A~33Aに位置決め用の丸孔31b~33bのみが形成された部材を使用するようにしてもよい。
【0040】
(2)上記の実施形態においては、各アングル材31~33の扉枠取付部31A~33Aに形成する建ち調整用のルーズ孔31a~33aとして、壁1の面外方向Xに長い長孔を例示したが、これに限らず、例えば、扉枠取付部31A~33Aに形成する位置決め用の丸孔31b~33bよりも大径の丸孔を形成するようにしてもよい。
【0041】
(3)上記の実施形態においては、工場からの出荷段階で、廊下側の各アングル材31~33が扉枠10の第1取付部10Aに仮止めされているものを例示したが、これに限らず、例えば、工場からの出荷段階で、部屋側の各アングル材31~33が扉枠10の第2取付部10Bに仮止めされているものであってもよく、又、工場からの出荷段階では、各アングル材31~33が扉枠10に仮止めされていないものであってもよい。
【0042】
(4)上記の実施形態においては、建具枠の施工方法として、廊下側の各アングル材31~33を扉枠10に仮止めして、面内方向建ち調整工程と面内方向位置決め固定工程と面外方向建ち調整工程と面外方向位置決め固定工程とを行った後に、部屋側のアングル材31~33を建具枠10と枠体20とに取り付けて建具枠10を枠体20に固定する建具枠固定工程を行うものを例示したが、これに限らず、例えば、部屋側の各アングル材31~33を扉枠10に仮止めして、面内方向建ち調整工程と面内方向位置決め固定工程と面外方向建ち調整工程と面外方向位置決め固定工程とを行った後に、廊下側のアングル材31~33を建具枠10と枠体20とに取り付けて建具枠10を枠体20に固定する建具枠固定工程を行うものであってもよく、又、廊下側の各アングル材31~33と部屋側のアングル材31~33とを扉枠10に仮止めして、面内方向建ち調整工程と面内方向位置決め固定工程と面外方向建ち調整工程と面外方向位置決め固定工程とを行った後に、建具枠固定工程において廊下側の各アングル材31~33と部屋側のアングル材31~33とを扉枠10に本止めして建具枠10を枠体20に固定するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0043】
1 壁
1A 開口部
10 扉枠(建具枠)
20 枠体
20A 廊下側外端面(面外方向の一方の外端面)
20B 部屋側外端面(面外方向の他方の外端面)
30 取付金物
31 第1アングル材
31A 扉枠取付部(建具枠取付部)
31B 枠体取付部
31a ルーズ孔
31b 丸孔
32 第2アングル材
32A 扉枠取付部(建具枠取付部)
32B 枠体取付部
32a ルーズ孔
32b 丸孔
33 第3アングル材
33A 扉枠取付部(建具枠取付部)
33B 枠体取付部
33a ルーズ孔
33b 丸孔
X 壁の面外方向
Y 壁の面内方向