(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】カメラ装置
(51)【国際特許分類】
G03B 17/04 20210101AFI20241016BHJP
G02B 7/04 20210101ALI20241016BHJP
【FI】
G03B17/04
G02B7/04 E
(21)【出願番号】P 2021023065
(22)【出願日】2021-02-17
【審査請求日】2024-01-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000001225
【氏名又は名称】ニデックプレシジョン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109896
【氏名又は名称】森 友宏
(72)【発明者】
【氏名】桐原 武久
(72)【発明者】
【氏名】村山 美樹
【審査官】岡田 弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-056009(JP,A)
【文献】特開2012-185391(JP,A)
【文献】特開2006-300992(JP,A)
【文献】特開2000-089275(JP,A)
【文献】特開2016-024336(JP,A)
【文献】特開2018-077374(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/02-7/16
G03B 17/02
G03B 17/22
G03B 17/04-17/17
H04N 5/222-5/257
H04N 23/00
H04N 23/40-23/76
H04N 23/90-23/959
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バレル部と、
前記バレル部の内部に収容された沈胴状態から光軸方向に沿った繰出方向に移動可能なレンズ鏡筒と
を備え、
前記レンズ鏡筒は、
前記バレル部の半径方向内側に収容された状態から前記バレル部に対して前方に移動可能な第1の鏡筒ユニットと、
前記第1の鏡筒ユニットの半径方向内側に収容される第1の位置から前記第1の鏡筒ユニットから前方に繰り出した第2の位置まで移動可能な第2の鏡筒ユニットであって、半径方向外側に突出する突起部を有する第2の鏡筒ユニットと、
前記第1の鏡筒ユニットに形成されるバネ軸部と前記第2の鏡筒ユニットの前記突起部との間に架け渡される切替バネであって、前記第2の鏡筒ユニットの前記突起部が基準位置よりも前記繰出方向とは反対の沈胴方向側に位置しているときには、前記第2の鏡筒ユニットの前記突起部を前記沈胴方向に付勢し、前記第2の鏡筒ユニットの前記突起部が前記基準位置よりも前記繰出方向側に位置しているときには、前記第2の鏡筒ユニットの前記突起部を前記繰出方向に付勢するように前記バネ軸部を中心として回転可能な切替バネと
を含み、
前記第1の鏡筒ユニットは、
第1の基部と、
前記第1の基部から前記沈胴方向に向かって延びる第1の弾性片であって、前記繰出方向に移動する前記第2の鏡筒ユニットの前記突起部の経路上に突出して前記突起部の前記繰出方向への移動を規制する第1の突出部を有する第1の弾性片と、
第2の基部と、
前記第1の弾性片よりも前記バネ軸部から離れた位置で前記第2の基部から前記沈胴方向に向かって延びる第2の弾性片であって、前記第2の鏡筒ユニットの前記突起部の前記経路上に突出して前記突起部の前記繰出方向への移動を規制する第2の突出部を有する第2の弾性片と、
前記第2の鏡筒ユニットの前記突起部が前記第2の弾性片の前記第2の突出部を越えて前記繰出方向に移動する際に前記第2の弾性片の弾性変形を抑制する変形抑制手段と
を有する、
カメラ装置。
【請求項2】
前記変形抑制手段の少なくとも一部は、前記第2の基部の前記光軸方向に沿った幅を前記第1の基部の前記光軸方向に沿った幅よりも大きくすることにより実現される、請求項1に記載のカメラ装置。
【請求項3】
前記変形抑制手段の少なくとも一部は、前記第2の基部から前記第2の弾性片の前記第2の突出部までの前記光軸方向に沿った長さを前記第1の基部から前記第1の弾性片の前記第1の突出部までの前記光軸方向に沿った長さよりも短くすることにより実現される、請求項1又は2に記載のカメラ装置。
【請求項4】
前記第1の鏡筒ユニットは、前記第2の弾性片の前記第2の突出部の反対側で前記第2の弾性片に当接可能な当接部をさらに有し、
前記変形抑制手段の少なくとも一部は、前記当接部により実現される、
請求項1から3のいずれか一項に記載のカメラ装置。
【請求項5】
前記第2の弾性片は、前記当接部に向かって延出する延出部をさらに有する、請求項4に記載のカメラ装置。
【請求項6】
前記基準位置は、前記第1の弾性片の前記第1の突出部の頂部及び前記第2の弾性片の前記第2の突出部の頂部よりも前記繰出方向側にある、請求項1から5のいずれか一項に記載のカメラ装置。
【請求項7】
前記第2の鏡筒ユニットの前記突起部は円筒状である、請求項1から6のいずれか一項に記載のカメラ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラ装置に係り、特にレンズ鏡筒を光軸方向に沿って前方に繰り出すことができるカメラ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来からレンズ鏡筒を光軸方向に沿って前方に繰り出す鏡筒繰出機構を有するカメラが知られている(例えば、特許文献1参照)。このようなカメラにおいて、通常の撮影に加えて近距離での撮影(マクロ撮影)を行うためには、通常の撮影時からさらにレンズ鏡筒を前方に繰り出す必要がある。しかしながら、レンズ鏡筒を多段階で前方に繰り出すための機構は複雑になり易く、大きな収容スペースを必要とする。このため、通常の撮影時からさらに前方にレンズ鏡筒を繰り出す機構を簡単かつコンパクトな構造で実現することが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、簡単かつコンパクトな構造で2つの撮影状態を実現することができるカメラ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様によれば、簡単かつコンパクトな構造で2つの撮影状態を実現することができるカメラ装置が提供される。このカメラ装置は、バレル部と、上記バレル部の内部に収容された沈胴状態から光軸方向に沿った繰出方向に移動可能なレンズ鏡筒とを備える。上記レンズ鏡筒は、上記バレル部の半径方向内側に収容された状態から上記バレル部に対して前方に移動可能な第1の鏡筒ユニットと、上記第1の鏡筒ユニットの半径方向内側に収容される第1の位置から上記第1の鏡筒ユニットから前方に繰り出した第2の位置まで移動可能な第2の鏡筒ユニットとを含む。上記第2の鏡筒ユニットは、半径方向外側に突出する突起部を有する。上記レンズ鏡筒は、上記第1の鏡筒ユニットに形成されるバネ軸部と上記第2の鏡筒ユニットの上記突起部との間に架け渡される切替バネを含む。上記切替バネは、上記第2の鏡筒ユニットの上記突起部が基準位置よりも上記繰出方向とは反対の沈胴方向側に位置しているときには、上記第2の鏡筒ユニットの上記突起部を上記沈胴方向に付勢し、上記第2の鏡筒ユニットの上記突起部が上記基準位置よりも上記繰出方向側に位置しているときには、上記第2の鏡筒ユニットの上記突起部を上記繰出方向に付勢するように上記バネ軸部を中心として回転することができる。上記第1の鏡筒ユニットは、第1の基部と、上記第1の基部から上記沈胴方向に向かって延びる第1の弾性片と、第2の基部と、上記第1の弾性片よりも上記バネ軸部から離れた位置で上記第2の基部から上記沈胴方向に向かって延びる第2の弾性片とを有する。上記第1の弾性片は、上記繰出方向に移動する上記第2の鏡筒ユニットの上記突起部の経路上に突出して上記突起部の上記繰出方向への移動を規制する第1の突出部を有する。上記第2の弾性片は、上記第2の鏡筒ユニットの上記突起部の上記経路上に突出して上記突起部の上記繰出方向への移動を規制する第2の突出部を有する。上記第1の鏡筒ユニットは、上記第2の鏡筒ユニットの上記突起部が上記第2の弾性片の上記第2の突出部を越えて上記繰出方向に移動する際に上記第2の弾性片の弾性変形を抑制する変形抑制手段を有する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態におけるカメラ装置を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示すカメラ装置のフロントカバー、リアカバー、及びトップカバーにより形成される内部空間に収容される構成要素の一部を示す分解斜視図である。
【
図3】
図3は、
図2に示すレンズ鏡筒が+X方向に最大限伸びた状態を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、
図1に示すカメラ装置の通常撮影状態を示す斜視図である。
【
図5】
図5は、
図1に示すカメラ装置のマクロ撮影状態を示す斜視図である。
【
図6】
図6は、
図4の通常撮影状態におけるレンズ鏡筒の一部を示す斜視図である。
【
図7】
図7は、
図6のレンズ鏡筒の一部を側方から見た図である。
【
図9】
図9は、
図5のマクロ撮影状態におけるレンズ鏡筒の一部を側方から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明に係るカメラ装置の実施形態について
図1から
図11を参照して詳細に説明する。
図1から
図11において、同一又は相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。また、
図1から
図11においては、各構成要素の縮尺や寸法が誇張されて示されている場合や一部の構成要素が省略されている場合がある。以下の説明では、特に言及がない場合には、「第1」や「第2」などの用語は、構成要素を互いに区別するために使用されているだけであり、特定の順位や順番を表すものではない。
【0008】
図1は、本発明の一実施形態におけるカメラ装置1を示す斜視図である。本実施形態におけるカメラ装置1は、撮影後に自動的に現像が行われる写真フィルムを用いるカメラ(インスタントカメラ)であるが、本発明はこのようなインスタントカメラ以外にも適用できることは言うまでもない。なお、本実施形態では、便宜的に、
図1における+X方向を「前」又は「前方」といい、-X方向を「後」又は「後方」ということとする。
【0009】
図1に示すように、カメラ装置1は、フロントカバー2と、フロントカバー2の後方に装着されるリアカバー3と、フロントカバー2とリアカバー3とに挟まれるトップカバー4とを備えている。フロントカバー2にはファインダ窓5が形成されており、このファインダ窓5に隣接してフラッシュ窓6が配置されている。また、ファインダ窓5の-Z方向側にはレリーズボタン7が配置されている。トップカバー4には、Y方向に延びる排出スリット4Aが形成されており、この排出スリット4Aから撮影後に現像された写真フィルムが排出されるようになっている。
【0010】
図2は、フロントカバー2、リアカバー3、及びトップカバー4により形成される内部空間に収容される構成要素の一部を示す分解斜視図である。
図2に示すように、カメラ装置1は、フロントカバー2の筒状部2A(
図1参照)の内側に収容されるレンズ鏡筒10と、レンズ鏡筒10が取り付けられるフレーム20とを有している。このフレーム20は、略直方体状のベース部21と、ベース部21から前方に延び、レンズ鏡筒10を保持する筒状のバレル部22とを含んでいる。
【0011】
本実施形態におけるレンズ鏡筒10は、+X方向に伸長可能な構造となっている。
図3は、+X方向に最大限伸長した状態のレンズ鏡筒10を示す斜視図である。
図3に示すように、レンズ鏡筒10は、第1の筒部11と第2の筒部12と第3の筒部13とを含んでいる。第1の筒部11はフレーム20のバレル部22に対してX方向に移動可能であり、第2の筒部12は第1の筒部11に対してX方向に移動可能となっている。また、第3の筒部13は第2の筒部12に対してX方向に移動可能となっている。本実施形態では、第1の筒部11及び第2の筒部12は後方鏡筒ユニット31(第1の鏡筒ユニット)を構成しており、第3の筒部13は前方鏡筒ユニット32(第2の鏡筒ユニット)を構成している。第3の筒部13の内部にはレンズ(図示せず)が収容されている。
【0012】
図3に示すように、レンズ鏡筒10の第1の筒部11の後端部には半径方向外側に突出する2つの係合突起14が形成されている。それぞれの係合突起14に対応して、フレーム20のバレル部22には、
図2に示すように、光軸Pの方向(X方向)に沿って延びる2つのガイド溝24が形成されている。レンズ鏡筒10のそれぞれの係合突起14は、バレル部22のガイド溝24の内部に収容され、ガイド溝24に係合するようになっている。ガイド溝24のZ方向の幅は、係合突起14のZ方向の幅よりわずかに大きい程度となっている。したがって、係合突起14はガイド溝24にガイドされつつ、ガイド溝24の内部で光軸Pの方向(X方向)に移動するようになっている。
【0013】
図2に示すように、フレーム20のバレル部22の近傍には、操作ボタン8がコイルバネ8Aにより+X方向に付勢された状態で設けられている。この操作ボタン8は、
図1に示すように、フロントカバー2の筒状部2Aの近傍でフロントカバー2から+X方向に突出しており、ユーザが操作ボタン8を-X方向に押し込めるようになっている。ユーザが操作ボタン8を-X方向に押し込むと、バレル部22に取り付けられた鏡筒繰出機構9によってレンズ鏡筒10の係合突起14が+X方向に押し出され、
図4に示すように、レンズ鏡筒10が+X方向(繰出方向)に繰り出されるようになっている。このようにレンズ鏡筒10がバレル部22から+X方向に飛び出すと、図示しないスイッチ機構によりカメラ装置1の電源が入る。
【0014】
鏡筒繰出機構9は、操作ボタン8に連動して係合突起14を+X方向に押し出すレバー9Aと、係合突起14の位置によって係合突起14を付勢する方向が反転するねじりコイルバネ(図示せず)とを含んでいる。このねじりコイルバネは、係合突起14が所定の位置を越えて+X方向に移動すると、係合突起14を+X方向に付勢し、反対に、係合突起14が所定の位置を越えて-X方向に移動すると、係合突起14を-X方向に付勢するように構成されている。なお、鏡筒繰出機構9は特定のものに限られるものではなく、レンズ鏡筒10を+X方向に繰り出すことができるのであればどのような構造のものであってもよい。
【0015】
本実施形態では、第1の筒部11がバレル部22に対して+X方向に移動する際に、図示しない移動機構により第2の筒部12が第1の筒部11に対して+X方向に移動するようになっている。このため、
図4に示すように、第2の筒部12が第1の筒部11から+X方向に繰り出した状態となる。この状態における第2の筒部12に対する第3の筒部13の位置を「第1の位置」ということとする。この状態でユーザは通常の撮影を行うことができる(通常撮影状態)。この通常撮影状態においては、前方鏡筒ユニット32の第3の筒部13は、後方鏡筒ユニット31の第2の筒部12の半径方向内側に収容されている。
【0016】
また、本実施形態では、
図4に示す状態においてユーザが手で第3の筒部13を第2の筒部12からさらに+X方向に引き出すことができるようになっている。第3の筒部13を第2の筒部12からさらに+X方向に引き出すと、
図5に示すように、第2の筒部が第1の筒部11から+X方向に繰り出し、さらに第3の筒部13が第2の筒部12から+X方向に繰り出した状態となる。このときの第2の筒部12に対する第3の筒部13の位置を「第2の位置」ということとする。この状態でユーザは例えば近距離のマクロ撮影を行うことができる(マクロ撮影状態)。
【0017】
一方、
図1は、レンズ鏡筒10がフレーム20のバレル部22に収容された状態を示しており、この状態ではレンズ鏡筒10がX方向に最も短くなっている。以下、この状態を「沈胴状態」ということとする。
【0018】
図6は、
図4の通常撮影状態におけるレンズ鏡筒10の一部を示す斜視図、
図7は
図6に示すレンズ鏡筒10の一部を側方から見た図、
図8は分解斜視図である。
図6から
図8に示すように、前方鏡筒ユニット32の第3の筒部13は、半径方向外側に突出する2つの円筒状の突起部41と2つのガイド爪42とを有している(
図6から
図8ではそれぞれ1つのみ図示)。
【0019】
図8に示すように、後方鏡筒ユニット31の第2の筒部12の内周面には、第3の筒部13のガイド爪42に対応して、X方向に延びるガイド溝51が形成されている。第3の筒部13のガイド爪42は第2の筒部12のガイド溝51に係合しており、第3の筒部13は、このガイド溝51にガイドされつつ第2の筒部12に対してX方向に移動できるようになっている。
【0020】
第2の筒部12は、ガイド溝51の後方でX軸とは垂直な方向に互いに対向するように延びる第1の基部54A及び第2の基部54Bを有している。第1の基部54Aからは第1の弾性片52Aが-X方向に片持ち梁状に延びており、第2の基部54Bからは第2の弾性片52Bが-X方向に片持ち梁状に延びている。したがって、これらの弾性片52A,52Bの自由端側(-X方向側)は弾性変形可能となっている。これらの弾性片52Aと52Bとの間には、上述した第3の筒部13の突起部41が移動するための移動空間Sが形成されており、第3の筒部13の突起部41はこの移動空間Sを通って第2の筒部12の外側まで延びている。
【0021】
第1の弾性片52A及び第2の弾性片52Bは、それぞれ-X方向側の端部近傍で移動空間Sの内側に向かって突出する第1の突出部53A及び第2の突出部53Bを有している。これら2つの突出部53A,53BはX方向に移動する突起部41の経路上に位置しており、突出部53A,53Bによって移動空間Sの幅が狭くなっている。
【0022】
第2の筒部12は、第2の弾性片52Bの第2の突出部53Bの反対側で第2の弾性片52Bに当接可能な当接部56を有している。第2の弾性片52Bの当接部56が当接する箇所には、第2の突出部53Bとは反対側に向かって延出する延出部57が形成されている。
【0023】
第2の筒部12の第1の弾性片52Aの近傍には、半径方向外側に突出するピン状のバネ軸部55が形成されており、このバネ軸部55の周囲には、例えばねじりコイルバネからなる切替バネ60の一方の腕部61の端部が巻回され、切替バネ60の腕部61とバネ軸部55とが係合している。この切替バネ60の他方の腕部62の端部は、移動空間Sを通って第2の筒部12の外側まで延びる第3の筒部13の突起部41の周囲に巻回され、切替バネ60の腕部62と突起部41とが係合している。すなわち、第2の筒部12のバネ軸部55と第3の筒部13の突起部41との間に、上述した切替バネ60がバネ軸部55を中心として回転できるように架け渡されている。この切替バネ60は、腕部61,62の間の開き角度が切替バネ60の自由角度よりも小さくなるように装着されている。図示の例では、この切替バネ60はねじりコイルバネにより構成されているが、他の種類のバネ(例えば板バネ)により構成することも可能である。なお、
図8に示すように、第3の筒部13の突起部41の先端からは張出部43が延びており、この張出部43によって突起部41に係合している切替バネ60が突起部41から外れてしまうことが防止される。
【0024】
ここで、
図7に示す状態では、第3の筒部13の突起部41に係合する切替バネ60の腕部62が腕部61よりも-X方向側に位置しているので、第3の筒部13の突起部41には切替バネ60の付勢力の-X方向成分が作用する。したがって、この切替バネ60の付勢力の-X方向成分を上回る力が第3の筒部13に作用しなければ、第3の筒部13は+X方向には動かないようになっている。また、
図7に示す状態では、第3の筒部13の突起部41は、第2の筒部12の弾性片52A,52Bの突出部53A,53Bよりも-X方向にあるため、切替バネ60の付勢力の-X方向成分を上回る力が第3の筒部13に作用した場合であっても、弾性片52A,52Bの突出部53A,53Bが第3の筒部13の突起部41に係合するため、第3の筒部13の突起部41が弾性片52A,52Bの突出部53A,53Bを越えて+X方向側に移動するためには、第3の筒部13の突起部41が弾性片52A,52Bの突出部53A,53Bを乗り越える程度まで弾性片52A,52Bを弾性変形させる力が必要となる。このように、
図7に示す状態から第3の筒部13を+X方向に移動させるためにはある程度の力が必要である。このため、鏡筒繰出機構9によってレンズ鏡筒10が沈胴状態から+X方向(繰出方向)に繰り出される際に第3の筒部13に多少の力が作用しても、第3の筒部13は第2の筒部12に対して
図7に示す第1の位置を維持することができ、通常撮影が可能となる。
【0025】
上述したように、通常撮影状態からマクロ撮影状態にする際には、ユーザが手で第3の筒部13(例えばフランジ部13A)を持って+X方向に引き出す。このとき、ユーザが、第3の筒部13の突起部41が弾性片52A,52Bの突出部53A,53Bを乗り越える程度まで弾性片52A,52Bを弾性変形させる力よりも大きな力で第3の筒部13を引き出すと、第3の筒部13の突起部41が弾性片52A,52Bの突出部53A,53Bを乗り越えて+X方向に移動する。ここで、第3の筒部13の突起部41が、
図9に示す基準位置R(切替バネ60の腕部61と腕部62のX方向の位置が一致するときの突起部41の位置)を越えて+X方向に移動すると、切替バネ60の付勢方向が反転し、第3の筒部13の突起部41には切替バネ60から+X方向の力が作用することとなる。したがって、ユーザが第3の筒部13を+X方向に引き出さなくても、第3の筒部13は、切替バネ60の付勢力の+X方向成分によって第2の筒部12に対して+X方向(繰出方向)に移動する。最終的には、第3の筒部13は、第2の筒部12のストッパ(図示せず)に当接する第2の位置まで+X方向に移動し、
図5及び
図9に示すマクロ撮影状態となる。
【0026】
このように、本実施形態における切替バネ60は、第3の筒部13の突起部41が基準位置Rよりも-X方向(沈胴方向)側に位置しているときには、突起部41を-X方向に付勢し、第3の筒部13の突起部41が上述した基準位置Rよりも+X方向(繰出方向)側に位置しているときには、突起部41を+X方向に付勢するように構成されている。なお、第3の筒部13の突起部41を+X方向側に付勢するタイミングを突起部41が弾性片52A,52Bの突出部53A,53Bを乗り越えた後とするために、弾性片52A,52Bの突出部53A,53Bの頂部よりも+X方向(繰出方向)側に基準位置Rを設定することが好ましい。
【0027】
マクロ撮影状態から通常撮影状態又は沈胴状態にする際には、ユーザは、切替バネ60の付勢力の+X方向成分よりも大きく、さらに第3の筒部13の突起部41が弾性片52A,52Bの突出部53A,53Bを乗り越える程度まで弾性片52A,52Bを弾性変形させる力よりも大きな力で第3の筒部13(例えばフランジ部13A)を-X方向に押し込む。これにより、第3の筒部13の突起部41が弾性片52A,52Bの突出部53A,53Bを乗り越えて-X方向に移動する。このとき、第3の筒部13の突起部41は、
図9に示す基準位置Rよりも-X方向側に位置しているため、切替バネ60から第3の筒部13の突起部41に-X方向の力が作用し、第3の筒部13の突起部41は上述した第1の位置に移動する。
【0028】
また、本実施形態では、第3の筒部13の突起部41が円筒状であるため、第3の筒部13の突起部41と弾性片52A,52Bの突出部53A,53Bとの摩擦が小さくなるため、第3の筒部13のX方向への移動がスムーズになるとともに、突起部41及び突出部53A,53Bの耐久性が向上する。また、第3の筒部13に対するユーザの操作感も向上する。
【0029】
本実施形態では、2つの弾性片52A,52Bの突出部53A,53Bが互いに対向するように配置されているため、2つの弾性片52A,52Bの互いに対向する突出部53A,53Bによって第3の筒部13の突起部41をより確実に第1の位置に保持することができる。
【0030】
ここで、第3の筒部13は周方向にわずかな遊びを持って第2の筒部12に取り付けられている。
図7に示す状態では、第3の筒部13の突起部41は、切替バネ60によってバネ軸部55から離れる方向に付勢されている。したがって、第3の筒部13の突起部41に対して繰出方向の力が作用した場合には、上述した周方向の遊びによって、突起部41は、バネ軸部55に近い位置にある第1の弾性片52Aの第1の突出部53Aよりも先にバネ軸部55から遠い位置にある第2の弾性片52Bの第2の突出部53Bに接触することになる。このとき、突起部41との接触により第2の弾性片52Bが第1の弾性片52Aよりも先に弾性変形してしまうと、第1の弾性片52Aの第1の突出部53Aからの力と第2の弾性片52Bの第2の突出部53Bからの力とを同時に突起部41に作用させることができなくなってしまい、第1の弾性片52Aの第1の突出部53A及び第2の弾性片52Bの第2の突出部53Bによる突起部41の保持力が低下してしまうことが考えられる。
【0031】
このような観点から、本実施形態においては、以下に述べるような変形抑制手段によって第2の弾性片52Bの変形を抑制して、第1の弾性片52Aの第1の突出部53A及び第2の弾性片52Bの第2の突出部53Bによる突起部41の保持力の低下を抑制している。
【0032】
図10は、
図7の一部を拡大して示す模式図である。
図10に示すように、第2の弾性片52Bの根元にある第2の基部54Bの光軸方向(X方向)に沿った幅T
Bは、第1の弾性片52Aの根元にある第1の基部54Aの光軸方向に沿った幅T
Aよりも大きくなっている。このような構成により、第1の弾性片52Aに比べて第2の弾性片52Bの弾性変形が生じにくくなる。したがって、第3の筒部13の突起部41が第1の弾性片52Aの第1の突出部53A及び第2の弾性片52Bの第2の突出部53Bの両方に接触するまで第2の弾性片52Bの弾性変形を抑えることができ、第1の弾性片52Aの第1の突出部53A及び第2の弾性片52Bの第2の突出部53Bの両方によってしっかりと突起部41を保持することが可能となる。このように、第2の基部54Bの光軸方向に沿った幅を第1の基部54Aの光軸方向に沿った幅よりも大きくすることにより、第2の弾性片52Bの弾性変形を抑制する変形抑制手段の一部を実現することができる。
【0033】
また、本実施形態では、第2の基部54Bから第2の弾性片52Bの第2の突出部53B(突起部41と接触する部分)までの光軸方向(X方向)に沿った長さL
Bは、第1の基部54Aから第1の弾性片52Aの第1の突出部53A(突起部41と接触する部分)までの光軸方向に沿った長さL
Aよりも短くなっている。このような構成によっても、第1の弾性片52Aに比べて第2の弾性片52Bの弾性変形が生じにくくなる。すなわち、
図11に示すように、第2の基部54Bの幅を第1の基部54Aの幅T
Aと同一にした場合においても、第2の基部54Bから第2の弾性片52Bの第2の突出部53Bまでの光軸方向に沿った長さL
Bを第1の基部54Aから第1の弾性片52Aの第1の突出部53Aまでの光軸方向に沿った長さL
Aよりも短くすることで、第1の弾性片52Aに比べて第2の弾性片52Bの弾性変形を生じにくくすることができる。このように、第2の基部54Bから第2の弾性片52Bの第2の突出部53Bまでの光軸方向に沿った長さL
Bを第1の基部54Aから第1の弾性片52Aの第1の突出部53Aまでの光軸方向に沿った長さL
Aよりも短くすることによっても、第2の弾性片52Bの弾性変形を抑制する変形抑制手段の一部を実現することができる。
【0034】
また、上述したように、本実施形態では、第2の弾性片52Bの第2の突出部53Bの反対側で第2の弾性片52Bに当接可能な当接部56が設けられている。この当接部56は、第3の筒部13の突起部41が第2の弾性片52Bの第2の突出部53Bに接触して第2の弾性片52Bを弾性変形させる際に、第2の弾性片52Bに接触して第2の弾性片52Bの弾性変形を抑制するように機能する。このような当接部56も第2の弾性片52Bの弾性変形を抑制する変形抑制手段の一部を構成する。この場合において、より効果的に第2の弾性片52Bの弾性変形を抑制するために、図示の例のように、第2の弾性片52Bの当接部56が当接する箇所に、第2の突出部53Bとは反対側に向かって延出する延出部57を形成することが好ましい。
【0035】
なお、本明細書において使用した用語「前」、「前方」、「後」、「後方」、「上」、「上方」、「下」、「下方」、その他の位置関係を示す用語は、図示した実施形態との関連において使用されているのであり、装置の相対的な位置関係によって変化するものである。
【0036】
以上述べたように、本発明の一態様によれば、簡単かつコンパクトな構造で2つの撮影状態を実現することができるカメラ装置が提供される。このカメラ装置は、バレル部と、上記バレル部の内部に収容された沈胴状態から光軸方向に沿った繰出方向に移動可能なレンズ鏡筒とを備える。上記レンズ鏡筒は、上記バレル部の半径方向内側に収容された状態から上記バレル部に対して前方に移動可能な第1の鏡筒ユニットと、上記第1の鏡筒ユニットの半径方向内側に収容される第1の位置から上記第1の鏡筒ユニットから前方に繰り出した第2の位置まで移動可能な第2の鏡筒ユニットとを含む。上記第2の鏡筒ユニットは、半径方向外側に突出する突起部を有する。上記レンズ鏡筒は、上記第1の鏡筒ユニットに形成されるバネ軸部と上記第2の鏡筒ユニットの上記突起部との間に架け渡される切替バネを含む。上記切替バネは、上記第2の鏡筒ユニットの上記突起部が基準位置よりも上記繰出方向とは反対の沈胴方向側に位置しているときには、上記第2の鏡筒ユニットの上記突起部を上記沈胴方向に付勢し、上記第2の鏡筒ユニットの上記突起部が上記基準位置よりも上記繰出方向側に位置しているときには、上記第2の鏡筒ユニットの上記突起部を上記繰出方向に付勢するように上記バネ軸部を中心として回転することができる。上記第1の鏡筒ユニットは、第1の基部と、上記第1の基部から上記沈胴方向に向かって延びる第1の弾性片と、第2の基部と、上記第1の弾性片よりも上記バネ軸部から離れた位置で上記第2の基部から上記沈胴方向に向かって延びる第2の弾性片とを有する。上記第1の弾性片は、上記繰出方向に移動する上記第2の鏡筒ユニットの上記突起部の経路上に突出して上記突起部の上記繰出方向への移動を規制する第1の突出部を有する。上記第2の弾性片は、上記第2の鏡筒ユニットの上記突起部の上記経路上に突出して上記突起部の上記繰出方向への移動を規制する第2の突出部を有する。上記第1の鏡筒ユニットは、上記第2の鏡筒ユニットの上記突起部が上記第2の弾性片の上記第2の突出部を越えて上記繰出方向に移動する際に上記第2の弾性片の弾性変形を抑制する変形抑制手段を有する。
【0037】
このような構成により、沈胴状態において第2の鏡筒ユニットの突起部が基準位置よりも沈胴方向側に位置するように構成すれば、沈胴状態からレンズ鏡筒が前方に繰り出す際に、切替バネの付勢力の沈胴方向成分を上回る力が第2の鏡筒ユニットに作用しなければ、第2の鏡筒ユニットは繰出方向に動かないし、また、切替バネの付勢力の沈胴方向成分を上回る力が第2の鏡筒ユニットに作用した場合であっても、延出片の保持部が第2の鏡筒ユニットの突起部に係合するため、第2の鏡筒ユニットを繰出方向に移動させるためにはある程度の力が必要となる。このため、第2の鏡筒ユニットに多少の力が作用しても、第2の鏡筒ユニットは第1の位置を維持することができ、第1の撮影状態を実現することができる。
【0038】
また、第2の鏡筒ユニットの突起部が延出片の保持部を乗り越える程度まで延出片を弾性変形させて第2の鏡筒ユニットを前方に引き出すと、切替バネの付勢方向が反転し、第2の鏡筒ユニットの突起部には切替バネから繰出方向に力が作用して、第2の鏡筒ユニットを第2の位置まで移動させることができるので、第2の撮影状態を実現することができる。
【0039】
このように、本発明によれば、2つの撮影状態、すなわち、第2の鏡筒ユニットが第1の鏡筒ユニットに対して第1の位置にある第1の撮影状態と、第2の鏡筒ユニットが第1の鏡筒ユニットに対して第2の位置にある第2の撮影状態とを簡単かつコンパクトな構造により実現することができる。
【0040】
また、第2の鏡筒ユニットの突起部が第2の弾性片の第2の突出部を越えて繰出方向に移動する際に、変形抑制手段により第2の弾性片の弾性変形が抑制されるため、第2の鏡筒ユニットの突起部が第1の弾性片の第1の突出部及び第2の弾性片の第2の突出部の両方に接触するまで第2の弾性片の弾性変形を抑えることができる。したがって、第1の弾性片の第1の突出部及び第2の弾性片の第2の突出部の両方によってしっかりと突起部を保持することが可能となる。
【0041】
上記変形抑制手段の少なくとも一部は、上記第2の基部の上記光軸方向に沿った幅を上記第1の基部の上記光軸方向に沿った幅よりも大きくすることにより実現してもよく、上記第2の基部から上記第2の弾性片の上記第2の突出部までの上記光軸方向に沿った長さを上記第1の基部から上記第1の弾性片の上記第1の突出部までの上記光軸方向に沿った長さよりも短くすることにより実現してもよい。
【0042】
また、上記変形抑制手段の少なくとも一部は、上記第2の弾性片の上記第2の突出片部の反対側で上記第2の弾性片に当接可能な当接部によって実現してもよい。この場合において、より効果的に第2の弾性片の弾性変形を抑制するために、上記第2の弾性片は、上記当接部に向かって延出する延出部をさらに有していてもよい。
【0043】
第2の鏡筒ユニットの突起部を繰出方向側に付勢するタイミングを突起部が弾性片の突出部を乗り越えた後とするために、上記基準位置は、上記第1の弾性片の上記第1の突出部の頂部及び上記第2の弾性片の上記第2の突出部の頂部よりも上記繰出方向側にあることが好ましい。
【0044】
また、上記第2の鏡筒ユニットの上記突起部は円筒状であることが好ましい。突起部を円筒状とすることで、第2の鏡筒ユニットの突起部と弾性片の突出部との間の摩擦が小さくなるため、第2の鏡筒ユニットの光軸方向への移動がスムーズになるとともに、突起部及び弾性片の突出部の耐久性が向上する。また、第2の鏡筒ユニットに対するユーザの操作感も向上する。
【0045】
これまで本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0046】
1 カメラ装置
2 フロントカバー
3 リアカバー
4 トップカバー
5 ファインダ窓
6 フラッシュ窓
7 レリーズボタン
8 操作ボタン
9 鏡筒繰出機構
10 レンズ鏡筒
11 第1の筒部
12 第2の筒部
13 第3の筒部
14 係合突起
20 フレーム
21 ベース部
22 バレル部
24 ガイド溝
31 後方鏡筒ユニット(第1の鏡筒ユニット)
32 前方鏡筒ユニット(第2の鏡筒ユニット)
41 突起部
42 ガイド爪
51 ガイド溝
52A 第1の弾性片
52B 第2の弾性片
53A 第1の突出部
53B 第2の突出部
54A 第1の基部
54B 第2の基部
55 バネ軸部
56 当接部
57 延出部
60 切替バネ
61,62 腕部