IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日東電工株式会社の特許一覧

特許7572264光半導体素子封止用シートおよび光半導体装置の製造方法
<>
  • 特許-光半導体素子封止用シートおよび光半導体装置の製造方法 図1
  • 特許-光半導体素子封止用シートおよび光半導体装置の製造方法 図2
  • 特許-光半導体素子封止用シートおよび光半導体装置の製造方法 図3
  • 特許-光半導体素子封止用シートおよび光半導体装置の製造方法 図4
  • 特許-光半導体素子封止用シートおよび光半導体装置の製造方法 図5
  • 特許-光半導体素子封止用シートおよび光半導体装置の製造方法 図6
  • 特許-光半導体素子封止用シートおよび光半導体装置の製造方法 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】光半導体素子封止用シートおよび光半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/54 20100101AFI20241016BHJP
   H01L 33/56 20100101ALI20241016BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20241016BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20241016BHJP
   H01L 21/56 20060101ALI20241016BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20241016BHJP
   G09F 9/33 20060101ALI20241016BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20241016BHJP
   G02F 1/13357 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
H01L33/54
H01L33/56
H01L23/30 F
H01L21/56 J
G09F9/30 360
G09F9/30 309
G09F9/33
G09F9/00 342
G02F1/13357
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021028574
(22)【出願日】2021-02-25
(65)【公開番号】P2022129763
(43)【公開日】2022-09-06
【審査請求日】2023-08-17
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002239
【氏名又は名称】弁理士法人G-chemical
(72)【発明者】
【氏名】田中 俊平
(72)【発明者】
【氏名】浅井 量子
(72)【発明者】
【氏名】飛永 駿
(72)【発明者】
【氏名】植野 大樹
【審査官】右田 昌士
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/203793(WO,A1)
【文献】特開2017-075281(JP,A)
【文献】特開2020-169262(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第111276505(CN,A)
【文献】特開2019-204905(JP,A)
【文献】国際公開第2019/225761(WO,A1)
【文献】特開平10-219136(JP,A)
【文献】国際公開第2019/087963(WO,A1)
【文献】特許第6411685(JP,B1)
【文献】特開2017-171749(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0144722(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00 - 33/64
H01L 23/28 - 23/31
H01L 21/56
G09F 9/00
G09F 9/30 - 9/33
G02F 1/13357
H01S 5/00 - 5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に配置された1以上の光半導体素子を封止するためのシートであって、
基材部と、前記基材部の一方の面に設けられた、前記光半導体素子を封止するための封
止部とを備え、
前記封止部は、光半導体素子を封止した際に光半導体素子側の表面に位置する放射線非
硬化性粘着剤層と、前記放射線非硬化性粘着剤層に積層された、放射線硬化性樹脂層とを
有し、
前記基材部と、前記放射線硬化性樹脂層と、前記放射線非硬化性粘着剤層とがこの順に積層され、
前記放射線は、電子線、紫外線、α線、β線、γ線、およびX線からなる群より選択される少なくとも1種であり、
前記放射線非硬化性粘着剤層は、感圧型の粘着剤によって形成される、光半導体素子封止用シート。
【請求項2】
前記放射線硬化性樹脂層は前記放射線非硬化性粘着剤層よりも厚い、請求項1に記載の
光半導体素子封止用シート。
【請求項3】
前記封止部は着色剤を含む層を含む、請求項1または2に記載の光半導体素子封止用シ
ート。
【請求項4】
アンチグレア性および/または反射防止性を有する層を備える、請求項1~3のいずれ
か1項に記載の光半導体素子封止用シート。
【請求項5】
ポリエステル系樹脂および/またはポリイミド系樹脂を主成分とする層を備える、請求
項1~4のいずれか1項に記載の光半導体素子封止用シート。
【請求項6】
前記放射線硬化性樹脂層の硬化後断面における、温度23℃におけるナノインデンテー
ション法による硬さが1.4MPa以上である、請求項1~5のいずれか1項に記載の光
半導体素子封止用シート。
【請求項7】
前記放射線非硬化性粘着剤層と前記放射線硬化性樹脂層とは、他の層を介さずに直接積層する、請求項1~6のいずれか1項に記載の光半導体素子封止用シート。
【請求項8】
基板と、前記基板上に配置された光半導体素子と、前記光半導体素子を封止する、請求
項1~7のいずれか1項に記載の光半導体素子封止用シートの前記放射線硬化性樹脂層が
硬化した硬化物と、を備える光半導体装置。
【請求項9】
液晶画面のバックライトである請求項8に記載の光半導体装置。
【請求項10】
請求項9に記載のバックライトと表示パネルとを備える画像表示装置。
【請求項11】
自発光型表示装置である請求項8に記載の光半導体装置。
【請求項12】
請求項11に記載の自発光型表示装置を備える画像表示装置。
【請求項13】
基板と、前記基板上に配置された光半導体素子と、前記光半導体素子を封止する、請求
項1~7のいずれか1項に記載の光半導体素子封止用シートの前記放射線硬化性樹脂層が
硬化した硬化物と、を備える積層体をダイシングして光半導体装置を得るダイシング工程
を備える、光半導体装置の製造方法。
【請求項14】
さらに、前記基板と、前記基板上に配置された光半導体素子と、前記光半導体素子を封
止する前記光半導体素子封止用シートと、を備える積層体に放射線を照射して前記放射線
硬化性樹脂層を硬化させて前記硬化物を得る放射線照射工程を備える、請求項13に記載
の光半導体装置の製造方法。
【請求項15】
前記光半導体素子封止用シートを、前記基板上に設けられた前記光半導体素子に貼り合
わせて前記光半導体素子を前記封止部により封止する封止工程を備え、その後前記放射線
照射工程を行う、請求項14に記載の光半導体装置の製造方法。
【請求項16】
さらに、前記ダイシング工程で得られた複数の光半導体装置を平面方向に接触するよう
に並べるタイリング工程を備える、請求項13~15のいずれか1項に記載の光半導体装
置の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光半導体素子封止用シートに関する。より具体的には、基板上に配置された1以上の光半導体素子を封止するためのシートに関する。また、本発明は、光半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば液晶表示装置に使用されるバックライトは、基板上に複数のLEDが配置されており、上記複数のLEDが封止樹脂により封止された構造を有するものが知られている。上記封止樹脂を用いて上記複数のLEDを一括して封止する方法としては、複数のLEDが配置された領域に液状樹脂を流し込み、上記複数のLEDを埋没させた後、熱や紫外線照射により液状樹脂を硬化する方法が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-66390号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、液状樹脂を用いてLEDなどの光半導体素子を封止する方法では、液状樹脂を塗布する際に液だれが起こる、意図しない領域に液状樹脂が付着するなど、取り扱い性に劣るという問題があった。
【0005】
これに対し、液状樹脂を用いるのではなく、光半導体素子を封止するための封止層を備える封止用シートの形式とすることで、容易であり、簡易な工程且つ短時間で光半導体素子を封止することが考えられる。ここで、上記封止用シートは、光半導体素子の封止性に優れ、光半導体素子を充分に封止すべく、光半導体素子や、光半導体素子を備える基板に対する密着性に優れることが重要である。
【0006】
ところで、4K、8Kなどの高画質化に伴い、より大画面の画像表示装置の需要が伸びている。また、屋外、公共施設等における広告表示や掲示板などのサイネージへの大画面の画像表示装置の利用も進んでいる。しかしながら、大画面の画像表示装置を製造すると歩留まりが低下し、製造コストが上昇するという問題が生じる。大画面画像表示装置をより低コストで製造するために、画像表示装置等の光半導体装置を複数、タイル状に並べる、タイリングディスプレイが検討されている。複数の光半導体装置をタイル状に並べる、すなわちタイリングの際、隣接して配置された光半導体装置同士で位置ずれなどが起こった場合や並び替えが必要となった場合に位置修正が行われる。
【0007】
ここで、封止用シートにより光半導体素子が封止された状態の光半導体装置をタイリングする場合において、タイリング時に位置修正をするために隣接する光半導体装置を一旦引き離す必要がある。しかしながら、引き離す際、一方の光半導体装置における封止用シートと隣接する他方の光半導体装置における封止用シートとが密着して引き合い、一方の光半導体装置における封止用シートに欠損が生じる、他方の光半導体装置に一方の封止用シートの一部が転写して付着するといった不具合が生じる場合がある。光半導体素子や基板に対し密着性に優れる封止用シートは、このような不具合が特に生じやすい。
【0008】
本発明は、このような事情のもとで考え出されたものであって、その目的は、光半導体素子の封止性に優れながら、隣接した光半導体装置同士を引き離す際、シートの欠損や隣接する光半導体装置のシートの付着が起こりにくい光半導体素子封止用シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、放射線非硬化性粘着剤層と放射線硬化性樹脂層とを有する封止部を備え、放射線非硬化性粘着剤層を封止部の光半導体素子側の表面に位置する光半導体素子封止用シートによれば、光半導体素子の封止性に優れながら、隣接した光半導体装置同士を引き離す際、シートの欠損や隣接する光半導体装置のシートの付着が起こりにくいことを見出した。本発明は、これらの知見に基づいて完成されたものである。
【0010】
すなわち、本発明は、基板上に配置された1以上の光半導体素子を封止するためのシートであって、
基材部と、上記基材部の一方の面に設けられた、上記光半導体素子を封止するための封止部とを備え、
上記封止部は、光半導体素子を封止した際に光半導体素子側の表面に位置する放射線非硬化性粘着剤層と、上記放射線非硬化性粘着剤層に積層された、放射線硬化性樹脂層とを有する、光半導体素子封止用シートを提供する。
【0011】
上記光半導体素子封止用シートは、上述のように、放射線非硬化性粘着剤層と放射線硬化性樹脂層とが積層した封止部を備える。上記封止部は、上記光半導体素子封止用シートにおいて、光半導体素子を封止する領域である。そして、放射線非硬化性粘着剤層は、光半導体素子を封止する際において光半導体素子側となる封止部表面に位置する。上記放射線非硬化性粘着剤層が上記表面に位置することにより、上記光半導体素子封止用シートが光半導体素子を封止した際に、上記放射線非硬化性粘着剤層の光半導体素子および基板に対する密着性が優れ、光半導体素子の封止性に優れる。そして、封止後は放射線照射により上記放射線硬化性樹脂層が硬化して、封止用シート側面の密着性が低下する。これにより、タイリング状態において隣接する光半導体装置における封止部同士の密着性が低く、隣接した光半導体装置同士を引き離す際、シートの欠損や隣接する光半導体装置のシートの付着が起こりにくい。また、上記基材部は、上記封止部の支持体となり、上記基材部を備えることにより上記光半導体素子封止用シートは取り扱い性に優れる。また、光半導体素子封止用シートで光半導体素子を封止して光半導体装置を作製した後にダイシングする際において、ダイシング部分のべとつきをよりいっそう抑制でき、見栄えが良い光半導体装置を作製することができる。
【0012】
上記放射線硬化性樹脂層は上記放射線非硬化性粘着剤層よりも厚いことが好ましい。このような構成を有することにより、タイリング状態において隣接する光半導体装置における放射線非硬化性粘着剤層同士の高い密着性よりも、隣接する光半導体装置における放射線硬化性樹脂層の硬化後の低い密着性が支配的となるため、封止部同士の密着性がよりいっそう低く、隣接する光半導体装置同士を引き離す際、シートの欠損や隣接する光半導体装置のシートの付着がよりいっそう起こりにくい。また、光半導体素子封止用シートで光半導体素子を封止して光半導体装置を作製した後にダイシングする際において、ダイシング部分のべとつきをよりいっそう抑制でき、見栄えが良い光半導体装置を作製することができる。
【0013】
上記封止部は着色剤を含む層を含んでいてもよい。このような構成を有することにより、上記光半導体装置をタイリングしてディスプレイに適用した際において、光半導体装置の使用時においては各光半導体素子が発する光の混色を抑制し、光半導体装置の不使用時においてはディスプレイの見栄えを調整することができる。
【0014】
上記光半導体素子封止用シートは、アンチグレア性および/または反射防止性を有する層を備えることが好ましい。このような構成を有することにより、上記光半導体装置をタイリングしてディスプレイに適用した際において、ディスプレイの光沢や光の反射を抑制し、ディスプレイの見栄えを良くすることができる。
【0015】
上記光半導体素子封止用シートは、ポリエステル系樹脂および/またはポリイミド系樹脂を主成分とする層を備えることが好ましい。このような構成を有することにより、上記光半導体素子封止用シートは耐熱性に優れ、高温環境下において光半導体素子封止用シートの熱膨張が抑制でき、寸法安定性が向上する。また、シートとしての剛性を付与することができるため、取り扱い性や保持性が向上する。
【0016】
上記放射線硬化性樹脂層の硬化後断面における、温度23℃におけるナノインデンテーション法による硬さは1.4MPa以上であることが好ましい。このような構成を有することにより、上記放射線硬化性樹脂層は硬化後において適度な硬さを有することとなり、タイリング状態において隣接する光半導体装置同士を引き離す際、シートの欠損や隣接する光半導体装置のシートの付着がよりいっそう起こりにくい。
【0017】
また、本発明は、基板と、上記基板上に配置された光半導体素子と、上記光半導体素子を封止する上記光半導体素子封止用シートの上記放射線硬化性樹脂層が硬化した硬化物と、を備える光半導体装置を提供する。このような光半導体装置は、上記放射線硬化性樹脂の硬化後において、隣接する光半導体装置同士を引き離す際、シートの欠損や隣接する光半導体装置のシートの付着が起こりにくい。また、ダイシングする際、ダイシング部分のべとつきを抑制でき、見栄えが良い光半導体装置を作製することができる。
【0018】
上記光半導体装置は液晶画面のバックライトであってもよい。また、上記光半導体装置は自発光型表示装置であってもよい。上記光半導体装置は、ディスプレイを有する光半導体装置に適用した際に見栄えが良いため、液晶画面のバックライトや自発光型表示装置として好ましく適用される。
【0019】
また、本発明は、上記バックライトと表示パネルとを備える画像表示装置を提供する。
【0020】
また、本発明は、上記自発光型表示装置を備える画像表示装置を提供する。
【0021】
また、本発明は、基板と、上記基板上に配置された光半導体素子と、上記光半導体素子を封止する、上記光半導体素子封止用シートの上記放射線硬化性樹脂層が硬化した硬化物と、を備える積層体をダイシングして光半導体装置を得るダイシング工程を備える、光半導体装置の製造方法を提供する。
【0022】
放射線硬化性樹脂層を放射線照射して硬化する際、酸素が存在する側面においては硬化が阻害され、硬化が不充分となりやすい。これに対し、上記ダイシング工程を備える上記製造方法によれば、放射線照射により上記放射線硬化性樹脂層を硬化させた硬化封止層を含む光半導体素子封止用シートの硬化物を備える積層体について、上記ダイシング工程において硬化が不充分である側端部を切り落として除去することにより、充分に硬化して密着性が低下した領域が側面に露出した光半導体装置を得ることができる。このようにして製造された光半導体装置は、硬化後の放射線硬化性樹脂層側面の密着性が充分に低下しているため、タイリング状態において隣接する光半導体装置同士を引き離す際、シートの欠損や隣接する光半導体装置のシートの付着が起こりにくい。
【0023】
上記製造方法は、さらに、上記基板と、上記基板上に配置された光半導体素子と、上記光半導体素子を封止する上記光半導体素子封止用シートと、を備える積層体に放射線を照射して上記放射線硬化性樹脂層を硬化させて上記硬化物を得る放射線照射工程を備えていてもよい。
【0024】
上記製造方法は、上記光半導体素子封止用シートを、上記基板上に設けられた上記光半導体素子に貼り合わせて上記光半導体素子を上記封止部により封止する封止工程を備え、その後上記放射線照射工程を行ってもよい。
【0025】
上記製造方法は、さらに、上記ダイシング工程で得られた複数の光半導体装置を平面方向に接触するように並べるタイリング工程を備えていてもよい。
【発明の効果】
【0026】
本発明の光半導体素子封止用シートによれば、光半導体素子の封止性に優れながら、隣接する光半導体装置同士を引き離す際、シートの欠損や隣接する光半導体装置のシートの付着が起こりにくい。このため、光半導体装置のタイリング後において、隣接する光半導体装置同士で位置ずれなどが起こった場合や並び替えが必要となった場合に不具合なく容易に位置修正を行うことができ、光半導体装置の損失を軽減でき、また見栄えが良いディスプレイを経済的に優れつつ製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の一実施形態に係る光半導体素子封止用シートの断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る光半導体素子封止用シートを用いた光半導体装置の断面図である。
図3図2に示す光半導体装置がタイリングして作製された光半導体装置の一実施形態を示す外観図である。
図4】光半導体装置の製造方法の一実施形態における封止工程の様子を示す断面図を表す。
図5図4に示す封止工程後に得られる積層体を示す断面図を表す。
図6図5に示す積層体に放射線照射工程を実施して得られる積層体を示す断面図を表す。
図7図6に示す積層体のダイシング工程におけるダイシング位置を示す断面図を表す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
[光半導体素子封止用シート]
本発明の光半導体素子封止用シートは、基材部と、上記基材部の一方の面に設けられた、光半導体素子を封止するための封止部とを少なくとも備える。なお、本明細書において、光半導体素子封止用シートとは、基板上に配置された1以上の光半導体素子を封止するためのシートをいうものとする。また、本明細書において、「光半導体素子を封止する」とは、光半導体素子の少なくとも一部を封止部内に埋め込むことをいう。
【0029】
本発明の光半導体素子封止用シートは、上記基材部および上記封止部の他に、剥離ライナーを備えていてもよい。この場合、上記剥離ライナーは上記封止部の上記基材部とは反対側の表面に貼り合わせられる。剥離ライナーは上記封止部の保護材として用いられ、光半導体素子を封止する際に剥がされる。なお、剥離ライナーは必ずしも設けられなくてもよい。
【0030】
また、本発明の光半導体素子封止用シートは、上記基材部表面(上記封止部とは反対側の表面)に、表面保護フィルムを備えていてもよい。上記基材部として例えば後述の光学フィルムを用いる場合、光学フィルムを使用時まで保護することができる。なお、表面保護フィルムは必ずしも設けられなくてもよい。
【0031】
以下、本発明の光半導体素子封止用シートの一実施形態について説明する。図1は、本発明の光半導体素子封止用シートの一実施形態を示す断面図である。図1に示すように、光半導体素子封止用シート1は、基板上に配置された1以上の光半導体素子を封止するために使用することのできるものであり、基材部2と、封止部3と、剥離ライナー4とを備える。封止部3は、基材部2の一方の面に設けられている。剥離ライナー4は、封止部3の表面(基材部2を有する側とは反対側の表面)に貼付されている。言い換えると、光半導体素子封止用シート1は、基材部2、封止部3、および剥離ライナー4をこの順に備える。
【0032】
上記光半導体素子封止用シートは、アンチグレア性および/または反射防止性を有する層を備えることが好ましい。このような構成を有することにより、上記光半導体装置をタイリングしてディスプレイに適用した際において、ディスプレイの光沢や光の反射を抑制し、ディスプレイの見栄えを良くすることができる。上記アンチグレア性を有する層としてはアンチグレア処理層が挙げられる。上記反射防止性を有する層としては反射防止処理層が挙げられる。アンチグレア処理および反射防止処理は、それぞれ、公知乃至慣用の方法で実施することができる。上記アンチグレア性を有する層および上記反射防止性を有する層は、同一層であってもよいし、互いに異なる層であってもよい。上記アンチグレア性および/または反射防止性を有する層は、一層のみ有していてもよいし、二層以上を有していてもよい。
【0033】
上記アンチグレア性および/または反射防止性を有する層は、上記基材部に含まれる層、上記封止部に含まれる層、あるいは上記基材部および上記封止部に含まれない他の層のいずれであってもよいが、上記基材部および/または上記封止部に含まれる層であることが好ましく、より好ましくは上記基材部に含まれる層である。
【0034】
上記光半導体素子封止用シートは、ポリエステル系樹脂および/またはポリイミド系樹脂を主成分(構成樹脂のうち最も質量割合の高い成分)とする層を備えることが好ましい。このような構成を有することにより、上記光半導体素子封止用シートは耐熱性に優れ、高温環境下において光半導体素子封止用シートの熱膨張が抑制でき、寸法安定性が向上する。また、シートとしての剛性を付与することができるため、取り扱い性や保持性が向上する。上記ポリエステル系樹脂および/またはポリイミド系樹脂を主成分とする層は、一層のみ有していてもよいし、二層以上を有していてもよい。
【0035】
上記ポリエステル系樹脂および/またはポリイミド系樹脂を主成分とする層は、上記基材部に含まれる層、上記封止部に含まれる層、あるいは上記基材部および上記封止部に含まれない他の層のいずれであってもよいが、上記基材部および/または上記封止部に含まれる層であることが好ましく、より好ましくは上記基材部に含まれる層である。
【0036】
(封止部)
上記封止部は、放射線照射により硬化する性質を有する樹脂層(放射線硬化性樹脂層)と、放射線照射により硬化する性質を有しない粘着剤層(放射線非硬化性粘着剤層)とを有する。そして、上記放射線非硬化性粘着剤層は、光半導体素子を封止する際において光半導体素子側となる封止部表面に位置する。具体的には、上記放射線非硬化性粘着剤層は、光半導体素子を封止する際において光半導体素子側となる光半導体素子封止用シート表面(剥離ライナーを備える場合は剥離ライナーを除くシート表面)に位置する。例えば、図1に示す光半導体素子封止用シート1では、封止部3は放射線硬化性樹脂層31および放射線非硬化性粘着剤層32から構成される。放射線非硬化性粘着剤層32は、剥離ライナー4を除いて光半導体素子封止用シート1の基材部2とは反対側の表面に位置する。
【0037】
上記放射線非硬化性粘着剤層が上記表面に位置することにより、上記光半導体素子封止用シートが光半導体素子を封止した際に、上記放射線非硬化性粘着剤層の光半導体素子および基板に対する密着性が優れ、光半導体素子の封止性に優れる。そして、封止後は放射線照射により上記放射線硬化性樹脂層が硬化して、封止用シート側面の密着性が低下する。これにより、タイリング状態において隣接する光半導体装置における封止部同士の密着性が低く、隣接した光半導体装置同士を引き離す際、シートの欠損や隣接する光半導体装置のシートの付着が起こりにくい。また、上記基材部は、上記封止部の支持体となり、上記基材部を備えることにより上記光半導体素子封止用シートは取り扱い性に優れる。また、光半導体素子封止用シートで光半導体素子を封止して光半導体装置を作製した後にダイシングする際において、ダイシング部分のべとつきをよりいっそう抑制でき、見栄えが良い光半導体装置を作製することができる。
【0038】
上記封止部において、上記放射線非硬化性粘着剤層と上記放射線硬化性樹脂層とは積層している。上記放射線非硬化性粘着剤層と上記放射線硬化性樹脂層とは、他の層を介さずに直接積層していてもよいし、他の層を介して積層していてもよい。上記放射線非硬化性粘着剤層および上記放射線硬化性樹脂層は、それぞれ、単層であってもよいし、同一または組成や厚さ等が異なる複層であってもよい。上記封止部が上記放射線非硬化性粘着剤層および上記放射線硬化性樹脂層のうちの少なくとも一方を複数有する場合、複数ある層は連続して積層していてもよく、他の層を介して積層していてもよい。なお、上記放射線非硬化性粘着剤層を複層有する場合、光半導体素子封止用シートの基材部とは反対側の表面に1層有していればよく、他の放射線非硬化性粘着剤層の位置は特に限定されない。
【0039】
上記放射線非硬化性粘着剤層の厚さ(総厚さ)に対する上記放射線硬化性樹脂層の厚さ(総厚さ)の比[放射線硬化性樹脂層の厚さ/放射線非硬化性粘着剤層の厚さ]は、0.1以上であることが好ましく、より好ましくは0.8以上、さらに好ましくは1.0超、特に好ましくは4以上である。上記割合が0.1以上であると、隣接する光半導体装置同士を引き離す際、シートの欠損や隣接する光半導体装置のシートの付着がより起こりにくい。また、上記割合は、200以下であることが好ましく、より好ましくは150以下である。
【0040】
上記放射線硬化性樹脂層は上記放射線非硬化性粘着剤層よりも厚いことが好ましい。このような構成を有することにより、タイリング状態において隣接する光半導体装置における放射線非硬化性粘着剤層同士の高い密着性よりも、隣接する光半導体装置における放射線硬化性樹脂層の硬化後の低い密着性が支配的となるため、封止部同士の密着性がよりいっそう低く、隣接する光半導体装置同士を引き離す際、シートの欠損や隣接する光半導体装置のシートの付着がよりいっそう起こりにくい。また、光半導体素子封止用シートで光半導体素子を封止して光半導体装置を作製した後にダイシングする際において、ダイシング部分のべとつきをよりいっそう抑制でき、見栄えが良い光半導体装置を作製することができる。なお、上記放射線硬化性樹脂層や上記放射線非硬化性粘着剤層を複数有する場合、上記厚さは、複層の合計厚さ(総厚さ)である。
【0041】
上記光半導体素子封止用シートの表面(すなわち上記封止部の表面)に位置する放射線非硬化性粘着剤層の厚さは、1μm以上であることが好ましく、より好ましくは4μm以上、さらに好ましくは15μm以上である。上記厚さが1μm以上であると、光半導体素子封止用シートの光半導体素子や基板に対する密着性により優れる。上記厚さは、500μm以下であることが好ましく、より好ましくは300μm以下、さらに好ましくは200μm以下である。上記厚さが500μm以下であると、隣接した光半導体装置同士を引き離す際、シートの欠損や隣接する光半導体装置のシートの付着がより起こりにくい。また、光半導体装置をダイシングする際において、ダイシング部分のべとつきをより抑制でき、見栄えが良い光半導体装置を作製することができる。
【0042】
上記放射線硬化性樹脂層の厚さ(総厚さ)は、20~800μmであることが好ましく、より好ましくは30~700μm、さらに好ましくは50~600μmである。上記厚さが20μm以上であると、隣接する光半導体装置同士を引き離す際、シートの欠損や隣接する光半導体装置のシートの付着がよりいっそう起こりにくい。上記厚さが800μm以下であると、封止部の厚さを薄くすることができ、光半導体装置をより薄くすることができる。
【0043】
上記光半導体素子封止用シートは、1層の厚さが上記封止部を構成する全ての層の中で最も厚い放射線硬化性樹脂層を備えることが好ましい。なお、同一組成の複数の層を直接積層した層は1つの層として考えられる。また、最も厚い層を2以上有する場合、いずれの層も最も厚い層に該当する。
【0044】
上記放射線硬化性樹脂層の厚さ(総厚さ)の、光半導体素子封止用シートの総厚さ(但し、剥離ライナーおよび表面保護フィルムを除く)100%に対する割合は、5~90%が好ましく、より好ましくは10~85%、さらに好ましくは40~80%である。上記割合が5%以上であると、隣接する光半導体装置同士を引き離す際、シートの欠損や隣接する光半導体装置のシートの付着がよりいっそう起こりにくい。上記厚さが90%以下であると、封止部の厚さを薄くすることができ、光半導体装置をより薄くすることができる。
【0045】
上記放射線硬化性樹脂層は、硬化後において、層断面における、温度23℃におけるナノインデンテーション法による硬さが1.4MPa以上であることが好ましく、より好ましくは11.0MPa以上、さらに好ましくは63.0MPa以上である。上記ナノインデンテーション法による硬さは、圧子を対象表面に押し込んだときの、圧子への負荷荷重と押し込み深さとを、負荷時および除荷時に渡り連続的に測定し、得られた負荷荷重-押し込み深さ曲線から求められる。上記硬さが1.4MPa以上であると、上記放射線硬化性樹脂層は硬化後において適度な硬さを有することとなり、タイリング状態において隣接する光半導体装置同士を引き離す際、シートの欠損や隣接する光半導体装置のシートの付着がよりいっそう起こりにくい。
【0046】
上記放射線硬化性樹脂層は、放射線硬化性を有する。上記放射線としては、例えば、電子線、紫外線、α線、β線、γ線、またはX線などが挙げられる。
【0047】
上記放射線硬化性樹脂層は、例えば、ベースポリマーと放射線重合性の炭素-炭素二重結合等の官能基を有する放射線重合性のモノマー成分やオリゴマー成分とを含有する層、放射線重合性の官能基を有するポリマーをベースポリマーして含む層などが挙げられる。
【0048】
上記放射線硬化性樹脂層を構成する樹脂としては、公知乃至慣用の放射線硬化性を有する樹脂が挙げられ、例えば、アクリル系樹脂、ウレタンアクリレート系樹脂、エポキシ系樹脂、エポキシアクリレート系樹脂、オキセタン系樹脂、シリコーン樹脂、シリコーンアクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂などが挙げられる。上記樹脂は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
【0049】
上記放射線硬化性樹脂層は、粘着性を有する樹脂層、すなわち、放射線硬化性粘着剤層であることが好ましい。このような構成を有することにより、光半導体素子を封止する際、光半導体素子を容易に埋め込むことができ、また、放射線硬化前において基材部と、光半導体素子側表面に位置する放射線非硬化性粘着剤層との密着性に優れ、光半導体素子の封止性により優れる。
【0050】
上記放射線非硬化性粘着剤層を形成する粘着剤としては、放射線硬化性を有しない、すなわち放射線硬化性を有する化合物を含有しない、公知乃至慣用の感圧型の粘着剤を用いることができる。但し、積層した他の層から移行して侵入する不可避の放射線硬化性を有する化合物を少量含み得る。上記粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤(天然ゴム系、合成ゴム系、これらの混合系等)、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ポリエーテル系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、フッ素系粘着剤などが挙げられる。上記粘着剤は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
【0051】
上記封止部は、上記放射線硬化性樹脂層および上記放射線非硬化性粘着剤層以外のその他の層を有していてもよい。但し、上記封止部の厚さ100%に対する、上記放射線硬化性樹脂層および上記放射線非硬化性粘着剤層の合計の厚さの割合は、70%以上であることが好ましく、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、特に好ましくは96%以上である。
【0052】
上記封止部は、着色剤を含む層を含んでいてもよい。このような構成を有することにより、上記光半導体装置をタイリングしてディスプレイに適用した際において、光半導体装置の使用時においては各光半導体素子が発する光の混色を抑制し、光半導体装置の不使用時においてはディスプレイの見栄えを調整することができる。上記着色剤を含む層は、一層のみ有していてもよいし、二層以上を有していてもよい。
【0053】
上記着色剤を含む層は、上記放射線硬化性樹脂層、上記放射線非硬化性粘着剤層、およびこれら以外のその他の層であってもよいが、上記放射線硬化性樹脂層および/または上記放射線非硬化性粘着剤層が着色剤を含む層であることが好ましく、上記放射線非硬化性粘着剤層が着色剤を含む層であることがより好ましい。
【0054】
上記着色剤としては、黒系着色剤が好ましい。上記黒系着色剤としては、公知乃至慣用の黒色を呈するための着色剤(顔料、染料等)を用いることができ、例えば、カーボンブラック(ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラック、松煙等)、グラファイト、酸化銅、二酸化マンガン、アニリンブラック、ペリレンブラック、チタンブラック、シアニンブラック、活性炭、フェライト(非磁性フェライト、磁性フェライト等)、マグネタイト、酸化クロム、酸化鉄、二硫化モリブデン、クロム錯体、アントラキノン系着色剤、窒化ジルコニウムなどが挙げられる。黒系着色剤は一種のみを用いてもよいし、二種以上を用いてもよい。また、黒色以外の色を呈する着色剤を組み合わせて配合して黒系着色剤として機能する着色剤を用いてもよい。
【0055】
(基材部)
上記基材部は、上記封止部の支持体となり、上記基材部を備えることにより上記光半導体素子封止用シートは取り扱い性に優れる。上記基材部は、単層であってもよいし、同一または組成や厚さ等が異なる複層であってもよい。上記基材部が複層である場合、各層は粘着剤層などの他の層により貼り合わせられていてもよい。なお、基材部に使用される基材層は、光半導体素子封止用シートを用いて光半導体素子を封止する際には、封止部とともに光半導体素子を備える基板に貼付される部分であり、光半導体素子封止用シートの使用時(貼付時)に剥離される剥離ライナーや、基材部表面を保護するに過ぎない表面保護フィルムは「基材部」には含まない。
【0056】
上記基材部を構成する基材層としては、例えば、ガラスやプラスチック基材(特に、プラスチックフィルム)などが挙げられる。上記プラスチック基材を構成する樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、ランダム共重合ポリプロピレン、ブロック共重合ポリプロピレン、ホモポリプロレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン、アイオノマー、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル(ランダム、交互)共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-プロピレン共重合体、環状オレフィン系ポリマー、エチレン-ブテン共重合体、エチレン-ヘキセン共重合体等のポリオレフィン樹脂;ポリウレタン;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル;ポリカーボネート;ポリイミド系樹脂;ポリエーテルエーテルケトン;ポリエーテルイミド;アラミド、全芳香族ポリアミド等のポリアミド;ポリフェニルスルフィド;フッ素樹脂;ポリ塩化ビニル;ポリ塩化ビニリデン;トリアセチルセルロース(TAC)等のセルロース樹脂;シリコーン樹脂;ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル系樹脂;ポリサルフォン;ポリアリレート;ポリ酢酸ビニルなどが挙げられる。上記樹脂は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
【0057】
上記基材層は、反射防止(AR)フィルム、偏光板、位相差板等の各種光学フィルムであってもよい。上記基材部が光学フィルムを有する場合、上記光半導体素子封止用シートは光学部材にそのまま適用することができる。
【0058】
上記プラスチックフィルムは、ポリエステル系樹脂および/またはポリイミド系樹脂を主成分(構成樹脂のうち最も質量割合の高い成分)として含むことが好ましい。このような構成を有することにより、上記光半導体素子封止用シートは耐熱性に優れ、高温環境下において光半導体素子封止用シートの熱膨張が抑制でき、寸法安定性が向上する。また、シートとしての剛性を付与することができるため、取り扱い性や保持性が向上する。
【0059】
上記プラスチックフィルムの厚さは、20~200μmであることが好ましく、より好ましくは40~150μmである。上記厚さが20μm以上であると、光半導体素子封止用シートの支持性および取り扱い性がより向上する。上記厚さが200μm以下であると、光半導体素子封止用シートの厚さを薄くすることができ、光半導体装置をより薄くすることができる。
【0060】
上記基材部は、ポリエステル系樹脂および/またはポリイミド系樹脂を主成分とするプラスチックフィルムと、光学フィルムとを含むことが好ましい。偏光板等の光学フィルムは一般的に支持性や取り扱い性に劣る傾向があり、上記プラスチックフィルムと組み合わせて用いることで、双方の長所を活かすことができる。この場合、特に、上記基材部において、上記プラスチックフィルムが上記封止部側であることが好ましい。
【0061】
上記基材部は、アンチグレア性および/または反射防止性を有する層を備えることが好ましい。上記アンチグレア性および/または反射防止性を有する層は、例えば、上記基材層の少なくとも一方の面に、アンチグレア処理および/または反射防止処理を施すことで、上記アンチグレア処理層や反射防止処理層として得られる。上記アンチグレア処理層および上記反射防止処理層は、同一層であってもよいし、互いに異なる層であってもよい。アンチグレア処理および反射防止処理は、それぞれ、公知乃至慣用の方法で実施することができる。
【0062】
上記基材部の上記封止部を備える側の表面は、封止部との密着性、保持性等を高める目的で、例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理、サンドマット加工処理、オゾン暴露処理、火炎暴露処理、高圧電撃暴露処理、イオン化放射線処理等の物理的処理;クロム酸処理等の化学的処理;コーティング剤(下塗り剤)による易接着処理等の表面処理が施されていてもよい。密着性を高めるための表面処理は、基材部における封止部側の表面全体に施されていることが好ましい。
【0063】
図1に示す光半導体素子封止用シート1において、基材部2は、光学フィルム21と、プラスチックフィルム23とを有する複層であり、光学フィルム21とプラスチックフィルム23とは粘着剤層22を介して貼り合わせられている。また、光学フィルム21のプラスチックフィルム23と対向する面には、アンチグレア処理および反射防止処理が施されている。
【0064】
上記基材部の厚さは、支持体としての機能および表面の耐擦傷性に優れる観点から、5μm以上が好ましく、より好ましくは10μm以上である。上記基材部の厚さは、透明性により優れる観点から、300μm以下が好ましく、より好ましくは200μm以下である。
【0065】
(剥離ライナー)
上記剥離ライナーは、上記封止部表面を被覆して保護するための要素であり、光半導体素子が配置された基板に光半導体素子封止用シートを貼り合わせる際には当該シートから剥がされる。
【0066】
上記剥離ライナーとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、フッ素系剥離剤や長鎖アルキルアクリレート系剥離剤等の剥離剤により表面コートされたプラスチックフィルムや紙類などが挙げられる。
【0067】
上記剥離ライナーの厚さは、例えば10~200μm、好ましくは15~150μm、より好ましくは20~100μmである。上記厚さが10μm以上であると、剥離ライナーの加工時に切り込みにより破断しにくい。上記厚さが200μm以下であると、使用時に上記封止部から剥離ライナーをより剥離しやすい。
【0068】
(光半導体素子封止用シート)
上記光半導体素子封止用シートにおける上記基材部および上記封止部の合計の厚さの割合は、上記光半導体素子封止用シートの厚さ(但し、剥離ライナーおよび表面保護フィルムを除く)100%に対し、80%以上であることが好ましく、より好ましくは90%以上である。また、基材部および封止部を含む、基材部表面から封止部表面までの厚さの割合が上記範囲内であることが好ましい。
【0069】
上記光半導体素子封止用シートにおける上記基材部および上記封止部の合計の厚さは、100~900μmであることが好ましく、より好ましくは200~800μmである。また、基材部および封止部を含む、基材部表面から封止部表面までの厚さが上記範囲内であることが好ましい。
【0070】
本発明の光半導体素子封止用シートの製造方法の一実施形態について説明する。例えば、図1に示す光半導体素子封止用シート1は、下記の方法で作製することができる。まず、基材部2を構成するプラスチックフィルム23に、放射線硬化性樹脂層31を形成する。上記放射線硬化性樹脂層31は、放射線硬化性樹脂層31を形成する樹脂組成物をプラスチックフィルム23の一方の面に塗布して樹脂組成物層を形成した後、加熱による脱溶媒や熱硬化等の放射線照射以外の硬化を行い、該樹脂組成物層を固化させることによって作製することができる。放射線硬化性樹脂層31の厚さを厚くする場合、別途剥離ライナーの剥離処理面上に同様にして作製された放射線硬化性樹脂層を、上記プラスチックフィルム23上に形成された放射線硬化性樹脂層上に重ね合わせて積層してもよい。
【0071】
上記放射線硬化性樹脂層を形成する樹脂組成物は、上記放射線硬化性樹脂層の放射線硬化性を損なわない限り、いずれの形態であってもよい。例えば、粘着剤組成物は、エマルジョン型、溶剤型(溶液型)、熱溶融型(ホットメルト型)などであってもよい。中でも、生産性に優れる粘着剤層が得やすい点より、溶剤型が好ましい。
【0072】
一方、別途準備した剥離ライナー4の剥離処理面上に放射線非硬化性粘着剤層32を形成する。上記放射線非硬化性粘着剤層32は、放射線非硬化性粘着剤層32を形成する粘着剤組成物を剥離ライナー4の剥離処理面上に塗布して粘着剤組成物層を形成した後、加熱による脱溶媒や硬化を行い、該粘着剤組成物層を固化させることによって作製することができる。そして、上記放射線非硬化性粘着剤層を上記放射線硬化性樹脂層上に積層する。このようにして、[プラスチックフィルム23/放射線硬化性樹脂層31/放射線非硬化性粘着剤層32/剥離ライナー4]の構成を有する積層体が得られる。
【0073】
上記放射線非硬化性粘着剤層を形成する粘着剤組成物はいずれの形態であってもよい。例えば、粘着剤組成物は、エマルジョン型、溶剤型(溶液型)、活性エネルギー線硬化型、熱溶融型(ホットメルト型)などであってもよい。中でも、生産性に優れる粘着剤層が得やすい点より、溶剤型、活性エネルギー線硬化型の粘着剤組成物が好ましい。
【0074】
他方、光学フィルム21と粘着剤層22の積層体を作製する。具体的には、例えば、別途準備した剥離ライナーの剥離処理面上に、放射線非硬化性粘着剤層32と同様にして粘着剤層22を形成し、次いで光学フィルム21を粘着剤層22上に貼り合わせて作製することができる。そして、上記剥離ライナーを剥離して粘着剤層22を露出させ、上記積層体のプラスチックフィルム23の、放射線硬化性樹脂層31が形成されていない表面に貼り合わせる。上記樹脂組成物や粘着剤組成物の塗布手法としては、例えば、公知乃至慣用の塗布手法を採用でき、ロール塗工、スクリーン塗工、グラビア塗工など挙げられる。また、各種層の積層は、公知のローラーやラミネーターを用いて行うことができる。このようにして、図1に示す光半導体素子封止用シート1を作製することができる。
【0075】
なお、本発明の光半導体素子封止用シートは、上述の方法に限定されず、基材部が複層で構成される場合はまず基材部を作製し、基材部に、放射線硬化性樹脂層および放射線非硬化性粘着剤層を適宜組み合わせて順次積層し、表面に放射線非硬化性粘着剤層が位置するように作製することができる。
【0076】
本発明の光半導体装置封止用シートを用いて、光半導体素子が配置された基板上に放射線非硬化性粘着剤層を貼り合わせて封止部により光半導体素子を封止することで、光半導体装置を得ることができる。具体的には、まず、本発明の光半導体素子封止用シートから剥離ライナーを剥離して放射線非硬化性粘着剤層を露出させる。そして、基板と、上記基板上に配置された光半導体素子(好ましくは複数の光半導体素子)とを備える光学部材の、光半導体素子が配置された基板面に、本発明の光半導体素子封止用シートの露出面である放射線非硬化性粘着剤層面を貼り合わせ、上記光学部材が複数の光半導体素子を備える場合はさらに複数の光半導体素子間の隙間を放射線非硬化性粘着剤層が充填するように配置し、複数の光半導体素子を一括して封止する。このようにして、本発明の光半導体装置封止用シートを用いて光半導体素子を封止することができる。また、本発明の光半導体装置封止用シートを用いて、減圧環境下あるいは加圧しつつ貼り合わせることにより光半導体素子を封止してもよい。このような方法としては、例えば、特開2016-29689号公報や特開平6-97268に開示の方法が挙げられる。
【0077】
[光半導体装置]
本発明の光半導体素子封止用シートを用いて光半導体装置を作製することができる。本発明の光半導体素子封止用シートを用いて製造される光半導体装置は、基板と、上記基板上に配置された光半導体素子と、上記光半導体素子を封止する本発明の光半導体素子封止用シートが硬化した硬化物と、を備える。上記硬化物は、本発明の光半導体素子封止用シートが放射線照射により硬化した硬化物であり、具体的には、本発明の光半導体素子封止用シートにおける放射線硬化性樹脂層が放射線照射により硬化した硬化封止層を備える。
【0078】
上記光半導体素子としては、例えば、青色発光ダイオード、緑色発光ダイオード、赤色発光ダイオード、紫外線発光ダイオード等の発光ダイオード(LED)が挙げられる。
【0079】
上記光半導体装置において、本発明の光半導体素子封止用シートは、光半導体素子を凸部、複数の光半導体素子間の隙間を凹部としたときの凹凸への追従性に優れ光半導体素子の埋め込み性に優れるため、複数の光半導体素子を一括して封止していることが好ましい。
【0080】
図2に、図1に示す光半導体素子封止用シート1を用いた光半導体装置の一実施形態を示す。図2に示す光半導体装置10は、基板5と、基板5の一方の面に配置された複数の光半導体素子6と、光半導体素子6を封止する光半導体素子封止用シートの硬化物1’とを備える。光半導体素子封止用シートの硬化物1’は光半導体素子封止用シート1から剥離ライナー4が剥離され、放射線硬化性樹脂層31が放射線照射により硬化して形成された硬化封止層31’が形成されたものである。複数の光半導体素子6は、一括して封止部に封止されている。封止部における放射線非硬化性粘着剤層32は、複数の光半導体素子6で形成された凹凸形状に追従して光半導体素子6および基板5に密着し、光半導体素子6を埋め込んでいる。
【0081】
なお、図2に示す光半導体装置10において、光半導体素子6は、放射線非硬化性粘着剤層32内に完全に埋め込まれて封止されており、且つ、硬化封止層31’により間接的に封止されている。上記光半導体装置は、このような態様に限定されず、光半導体素子6の一部が放射線非硬化性粘着剤層32から突出しており、当該一部が硬化封止層31’内に埋め込まれており、放射線非硬化性粘着剤層32と硬化封止層31’とで光半導体素子6が完全に埋め込まれて封止されている態様であってもよい。
【0082】
上記光半導体装置は、上述のように、放射線非硬化性粘着剤層と、放射線硬化性樹脂層の硬化物である硬化封止層とにより光半導体素子を封止している。このため、光半導体素子は放射線非硬化性粘着剤層に密着しており、光半導体素子の封止性に優れ、且つ、硬化封止層の側面の粘着性が低いため、タイリングされた状態において、隣接する光半導体装置同士を引き離す際、容易に引き離すことができ、シートの欠損や隣接する光半導体装置のシートの付着が起こりにくい。
【0083】
上記光半導体装置は、個々の光半導体装置がタイリングされたものであってもよい。すなわち、上記光半導体装置は、複数の光半導体装置が平面方向にタイル状に配置されたものであってもよい。
【0084】
図3に複数の光半導体装置が配置されて作製された光半導体装置の一実施形態を示す。図3に示す光半導体装置20は、複数の光半導体装置10が縦方向に4個、横方向に4個の計16個が平面方向にタイル状に配置(タイリング)されたものである。隣接する2つの光半導体装置10間の境界20aでは、光半導体装置10同士が隣接しているが、これらは容易に引き離すことができ、封止部側面の欠損や、隣接する光半導体装置の一方から他方に、上記封止部側面において欠損した樹脂の付着が起こりにくい。
【0085】
上記光半導体装置は、液晶画面のバックライトであることが好ましく、特に全面直下型のバックライトであることが好ましい。また、上記バックライトと表示パネルとを組み合わせることで画像表示装置とすることができる。上記光半導体装置が液晶画面のバックライトである場合の光半導体素子はLED素子である。例えば、上記バックライトにおいて、上記基板上には、各LED素子に発光制御信号を送るための金属配線層が積層されている。赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の各色の光を発する各LED素子は、表示パネルの基板上に金属配線層を介して交互に配列されている。金属配線層は、銅などの金属によって形成されており、各LED素子の発光を反射して、画像の視認性を低下させる。また、RGBの各色の各LED素子が発する光が混色し、コントラストが低下する。
【0086】
また、上記光半導体装置は、自発光型表示装置であることが好ましい。また、上記自発光型表示装置と、必要に応じて表示パネルとを組み合わせることで画像表示装置とすることができる。上記光半導体装置が自発光型表示装置である場合の光半導体素子はLED素子である。上記自発光型表示装置としては、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)表示装置などが挙げられる。例えば、上記自発光型表示装置において、上記基板上には、各LED素子に発光制御信号を送るための金属配線層が積層されている。赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の各色の光を発する各LED素子は、基板上に金属配線層を介して交互に配列されている。金属配線層は、銅などの金属によって形成されており、各LED素子の発光度合いを調整して各色を表示させる。
【0087】
本発明の光半導体素子封止用シートは、折り曲げて使用される光半導体装置、例えば、折り曲げ可能な画像表示装置(フレキシブルディスプレイ)(特に、折り畳み可能な画像表示装置(フォルダブルディスプレイ))を有する光半導体装置に用いることができる。具体的には、折り畳み可能なバックライトおよび折り畳み可能な自発光型表示装置などに使用することができる。
【0088】
本発明の光半導体素子封止用シートは、光半導体素子の埋め込み性に優れるため、上記光半導体装置がミニLED表示装置である場合およびマイクロLED表示装置である場合のいずれにも好ましく使用することができる。
【0089】
[光半導体装置の製造方法]
上記光半導体装置は、例えば、基板と、上記基板上に配置された光半導体素子と、上記光半導体素子を封止する、本発明の光半導体素子封止用シートの上記放射線硬化性樹脂層が硬化した硬化物と、を備える積層体をダイシングして光半導体装置を得るダイシング工程とを少なくとも備える製造方法により製造することができる。上記硬化物は、本発明の光半導体素子封止用シートが放射線照射により硬化した硬化物であり、具体的には、本発明の光半導体素子封止用シートにおける放射線硬化性樹脂層が放射線照射により硬化した硬化封止層を備える。
【0090】
放射線硬化性樹脂層を放射線照射して硬化する際、酸素が存在する側面においては硬化が阻害され、硬化が不充分となりやすい。これに対し、上記ダイシング工程を備える上記製造方法によれば、放射線照射により上記放射線硬化性樹脂層を硬化させた硬化封止層を含む光半導体素子封止用シートの硬化物を備える積層体について、上記ダイシング工程において硬化が不充分である側端部を切り落として除去することにより、充分に硬化して密着性が低下した領域が側面に露出した光半導体装置を得ることができる。このようにして製造された光半導体装置は、硬化後の放射線硬化性樹脂層側面の密着性が充分に低下しているため、タイリング状態において隣接する光半導体装置同士を引き離す際、シートの欠損や隣接する光半導体装置のシートの付着が起こりにくい。
【0091】
上記製造方法は、さらに、上記基板と、上記基板上に配置された光半導体素子と、上記光半導体素子を封止する上記光半導体素子封止用シートと、を備える積層体に放射線を照射して上記放射線硬化性樹脂層を硬化させて上記硬化物を得る放射線照射工程を備えていてもよい。
【0092】
上記製造方法は、上記放射線照射工程の前に、上記光半導体素子封止用シートを、上記基板上に設けられた上記光半導体素子に貼り合わせて上記光半導体素子を上記封止部により封止する封止工程を備えていてもよい。
【0093】
また、上記製造方法は、さらに、上記ダイシング工程で得られた複数の光半導体装置を平面方向に接触するように並べるタイリング工程を備えていてもよい。以下、図2に示す光半導体装置10および図3に示す光半導体装置20の製造方法を適宜参酌して説明する。
【0094】
(封止工程)
上記封止工程では、本発明の光半導体素子封止用シートを、光半導体素子が配置された基板に貼り合わせ、封止部により光半導体素子を封止する。上記封止工程では、具体的には、図4に示すように、剥離ライナー4を剥離した光半導体素子封止用シート1の放射線非硬化性粘着剤層32を、基板5の光半導体素子6が配置された面に対向するように配置し、光半導体素子封止用シート1を基板5の光半導体素子6が配置された面に貼り合わせ、図5に示すように光半導体素子6を封止部3に埋め込む。図4に示すように、貼り合わせに使用される基板5は、図2に示す光半導体装置10における基板5よりも平面方向に広く延びており、基板5の端部付近には光半導体素子6が配置されていない。また、貼り合わせる光半導体素子封止用シート1は、貼り合わせに使用される基板5よりも平面方向に広く延びている。すなわち、封止工程において貼り合わせられる光半導体素子封止用シート1の基板5に対向する面の面積は、封止工程において貼り合わせられる基板5の光半導体素子封止用シート1に対向する面の面積よりも大きい。これは、光半導体素子封止用シート1および基板5の積層体において光半導体装置に使用される領域においては後の放射線照射工程において充分に硬化を進行させ、光半導体素子封止用シート1および基板5の、硬化が不充分である可能性のある端部付近は後のダイシング工程においてダイシングされて除去されるためである。
【0095】
上記貼り合わせの際の温度は、例えば室温から110℃の範囲内である。また、上記貼り合わせの際、減圧または加圧してもよい。減圧や加圧により封止部と基板または光半導体素子との間に空隙が形成されるのを抑制することができる。また、上記封止工程では、減圧下で光半導体素子封止用シートを貼り合わせ、その後加圧することが好ましい。減圧する場合の圧力は例えば1~100Paであり、減圧時間は例えば5~600秒である。また、加圧する場合の圧力は例えば0.05~0.5MPaであり、減圧時間は例えば5~600秒である。
【0096】
(放射線照射工程)
上記放射線照射工程では、上記光半導体素子が配置された上記基板に上記光半導体素子封止用シートが貼り合わせられた積層体(例えば、上記封止工程で得られた積層体)に対し、放射線を照射して、上記放射線硬化性樹脂層を硬化させる。上記放射線照射工程では、具体的には、図6に示すように、放射線硬化性樹脂層31を硬化させて硬化封止層31’が形成され、光半導体素子封止用シート1の硬化物1’が得られる。上記放射線としては上述のように、電子線、紫外線、α線、β線、γ線、X線などが挙げられる。中でも、紫外線が好ましい。放射線照射時の温度は、例えば室温から100℃の範囲内であり、照射時間は例えば1分~1時間である。
【0097】
(ダイシング工程)
上記ダイシング工程では、基板と、上記基板上に配置された光半導体素子と、上記光半導体素子を封止する、本発明の光半導体素子封止用シートの硬化物と、を備える積層体(例えば、上記放射線照射工程を経た積層体)をダイシングする。ここで、ダイシング工程に付す積層体において、光半導体素子封止用シートの硬化物1’および基板5は、上述のように、最終的に得られる光半導体装置10よりも平面方向に広く延びている。そして、上記ダイシング工程では、光半導体素子封止用シートの硬化物および基板の側端部をダイシングして除去する。具体的には、図7に示す鎖線の位置でダイシングを行い、側端部を除去する。上記ダイシングは、公知乃至慣用の方法により行うことができ、例えば、ダイシングブレードを用いた方法や、レーザー照射により行うことができる。このようにして、例えば図2に示す光半導体装置10を製造することができる。
【0098】
ここで、上記製造方法においては、例えば、上記放射線照射工程を経ること等により得られる、放射線硬化性樹脂層が硬化した状態においてダイシングを行うことが重要である。放射線硬化性樹脂層が硬化していない状態でダイシングを行った場合、ダイシング後に光半導体素子封止用シートの側端部を引き離して除去しようとする際、除去される側端部および残される光半導体装置における放射線硬化性樹脂層同士の粘着性が高く、密着して引き合い、残される光半導体装置中の放射線硬化性樹脂層に欠損が生じる、残される光半導体装置に除去される側端部の放射線硬化性樹脂層の一部が転写して付着するといった不具合が生じる場合がある。これに対し、放射線硬化性樹脂層が硬化した状態でダイシングを行う、上記ダイシング工程を備えることにより、放射線硬化性樹脂層は硬化して硬化封止層となっているため、ダイシング部分の側面の密着性が低く、上記不具合の発生を抑制することができる。
【0099】
また、放射線硬化性樹脂層を放射線照射して硬化する際、酸素が存在する側面においては硬化が阻害され、硬化が不充分となりやすい。これに対し、上記ダイシング工程を備える上記製造方法によれば、上記放射線硬化性樹脂層が硬化した状態で、上記ダイシング工程において硬化が不充分である端部を切り落として除去することにより、側面が充分に硬化して密着性が低下した光半導体装置を得ることができる。このようにして製造された光半導体装置は、放射線硬化性樹脂層の硬化後において側面の密着性が充分に低下しているため、タイリング状態において隣接する光半導体装置同士を引き離す際、シートの欠損や隣接する光半導体装置のシートの付着が起こりにくい。一方、上記ダイシング工程を備えない場合、タイリングの際、硬化が不充分である側面が隣接する光半導体装置と接触することになるため、隣接する光半導体装置同士を引き離そうとする際、側面同士が密着して引き合い、一方の光半導体装置中の放射線硬化性樹脂層に欠損が生じたり、一方の光半導体装置に他方の光半導体装置における放射線硬化性樹脂層の一部が転写して付着したりするといった不具合が生じやすい。
【0100】
(タイリング工程)
上記タイリング工程では、上記ダイシング工程で得られた複数の光半導体装置を平面方向に接触するように並べてタイリングする。このようにして、例えば図3に示す光半導体装置20を製造することができる。タイリングして得られた光半導体装置は、光半導体素子の封止性に優れながら、隣接する光半導体装置同士を引き離す際、シートの欠損や隣接する光半導体装置のシートの付着が起こりにくい。
【実施例
【0101】
以下に実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0102】
実施例1
<TACフィルム/バインダー粘着剤層>
モノマー成分として、アクリル酸2-エチルヘキシル(2EHA)69.7質量部、アクリル酸2-メトキシエチル(MEA)10質量部、アクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEA)13質量部、N-ビニル-2-ピロリドン(NVP)6質量部、N-ヒドロキシエチルアクリルアミド(HEAA)1.3質量部、重合開始剤として2,2’-アゾビスイソブチロニトリル0.1質量部、および重合溶媒として酢酸エチル200質量部を、セパラブルフラスコに投入し、窒素ガスを導入しながら、1時間撹拌した。このようにして、重合系内の酸素を除去した後、63℃に昇温し、10時間反応させて、酢酸エチルを加え、固形分濃度30質量%のアクリル系ポリマー溶液を得た。上記アクリル系ポリマー100質量部に対して、架橋剤としてイソシアネート系架橋剤(商品名「タケネートD110N」、三井化学株式会社製)を0.2質量部、シランカップリング剤としてγ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(商品名「KBM-403」、信越化学工業株式会社製)0.15質量部、架橋促進剤としてエチレンジアミンにプロピレンオキシドを付加したポリオール(商品名「EDP-300」、株式会社ADEKA製)0.2質量部を加え、粘着剤組成物(溶液)を調製した。次に、上記粘着剤組成物(溶液)を、剥離ライナー(セパレータ)(商品名「MRF38」、三菱ケミカル株式会社製)の剥離処理面上に、乾燥後の厚さが25μmとなるように塗布し、常圧下、60℃で1分間および155℃で1分間加熱乾燥し、バインダー粘着剤層としての両面粘着シートを得た。そして、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム(商品名「DSR3-LR」、大日本印刷株式会社製、総厚45μm、アンチグレア/反射防止処理)の非処理面に対して、ハンドローラーを用いて、バインダー粘着剤層の粘着面を気泡が入らないように貼り合わせた。このようにして、[TACフィルム/バインダー粘着剤層/剥離ライナー]の構成を有する積層体を作製した。
【0103】
<PETフィルム/紫外線硬化性粘着剤層/放射線非硬化性粘着剤層>
(紫外線硬化性粘着剤層)
アクリル酸ブチルアクリレート(BA)189.77質量部、アクリル酸シクロヘキシル(CHA)38.04質量部、アクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEA)85.93質量部、重合開始剤として2,2’-アゾビスイソブチロニトリル0.94質量部、および重合溶媒としてメチルエチルケトン379.31質量部を、1L丸底セパラブルフラスコに、セパラブルカバー、分液ロート、温度計、窒素導入管、リービッヒ冷却器、バキュームシール、撹拌棒、撹拌羽が装備された重合用実験装置に投入し、撹拌しながら、常温で6時間、窒素置換した。その後、窒素を流入下、撹拌しながら、65℃下で4時間そして75℃下で2時間保持して重合し、樹脂溶液を得た。
次いで、得られた樹脂溶液を室温まで冷却した。その後、上記樹脂溶液に、重合性炭素-炭素二重結合を有する化合物として、2-イソシアナトエチルメタクリレート(商品名「カレンズMOI」、昭和電工株式会社製)57.43質量部を加えた。さらにジラウリン酸ジブチルスズ(IV)(富士フイルム和光純薬株式会社製)0.29質量部を添加し、空気雰囲気下、50℃で24時間撹拌して、ベースポリマーを得た。
得られたベースポリマーの固形分100質量部に対して、イソシアネート化合物(商品名「コロネートL」、東ソー株式会社製、固形分75質量%)1.5質量部、および、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニル-1-オン(商品名「omnirad 651」、IGM Resins Italia Srl社製)1質量部を混合した。トルエンを希釈溶剤として用いて、固形分率20~40質量%となるように調整し、粘着剤溶液(1)を得た。
【0104】
この粘着剤溶液(1)を、PETフィルム(商品名「T912E75(UE80-)」、三菱ケミカル株式会社製、厚さ75μm)の処理面上に、乾燥後の厚さが112.5μmとなるように塗布し、常圧下、50℃で1分間および125℃で5分間加熱乾燥させ、紫外線硬化性粘着剤層(1)を形成した。他方、上記で得られた粘着剤溶液(1)を、剥離ライナー(商品名「MRF38」、三菱ケミカル株式会社製)の剥離処理面上に、乾燥後の厚さが112.5μmとなるように塗布し、常圧下、50℃で1分間および125℃で5分間加熱乾燥させ、紫外線硬化性粘着剤層(2)を形成した。
【0105】
そして、PETフィルム上に形成した紫外線硬化性粘着剤層(1)と剥離ライナー上に形成した紫外線硬化性粘着剤層(2)の粘着剤層面同士をハンドローラーを用いて気泡が入らないように貼り合わせ、1つの紫外線硬化性粘着剤層を形成した。その後剥離ライナーを剥離した。このようにして、[PETフィルム/紫外線硬化性粘着剤層]の構成を有する積層体を作製した。
【0106】
(放射線非硬化性粘着剤層)
アクリル酸ブチルアクリレート(BA)189.77質量部、アクリル酸シクロヘキシル(CHA)38.04質量部、アクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEA)85.93質量部、重合開始剤として2,2’-アゾビスイソブチロニトリル0.94質量部、および重合溶媒としてメチルエチルケトン379.31質量部を、1L丸底セパラブルフラスコに、セパラブルカバー、分液ロート、温度計、窒素導入管、リービッヒ冷却器、バキュームシール、撹拌棒、撹拌羽が装備された重合用実験装置に投入し、撹拌しながら、常温で6時間、窒素置換した。その後、窒素を流入下、撹拌しながら、65℃下で4時間そして75℃下で2時間保持して重合し、樹脂溶液を得た。
得られた樹脂溶液に、ベースポリマーの固形分100質量部に対して、イソシアネート化合物(商品名「コロネートL」、東ソー株式会社製、固形分75質量%)1.5質量部を混合した。トルエンを希釈溶剤として用いて、固形分率20~40質量%となるように調整し、粘着剤溶液(2)を得た。
【0107】
この粘着剤溶液(2)を、剥離ライナー(商品名「MRF38」、三菱ケミカル株式会社製)の剥離処理面上に、乾燥後の厚さが25μmとなるように塗布し、常圧下、125℃で2分間加熱乾燥させ、放射線非硬化性粘着剤層を形成した。
【0108】
(PETフィルム/紫外線硬化性粘着剤層/放射線非硬化性粘着剤層)
上記放射線非硬化性粘着剤層を、[PETフィルム/紫外線硬化性粘着剤層]の構成を有する積層体の紫外線硬化性粘着剤層面に対して、ハンドローラーを用いて気泡が入らないように貼り合わせた。このようにして、[PETフィルム/紫外線硬化性粘着剤層/放射線非硬化性粘着剤層/剥離ライナー]の構成を有する積層体を作製した。
【0109】
<光半導体素子封止用シート>
[TACフィルム/バインダー粘着剤層/剥離ライナー]の構成を有する積層体から剥離ライナーを剥がし、露出したバインダー粘着剤層面を、[PETフィルム/紫外線硬化性粘着剤層/放射線非硬化性粘着剤層/剥離ライナー]の構成を有する積層体のPETフィルム面に対して、ハンドローラーを用いて気泡が入らないように貼り合わせた。その後、50℃で48時間エージングを行い、[TACフィルム/バインダー粘着剤層/PETフィルム/紫外線硬化性粘着剤層/放射線非硬化性粘着剤層/剥離ライナー]の層構成を有する、実施例1の光半導体素子封止用シートを作製した。
【0110】
実施例2
紫外線硬化性粘着剤層(1)の厚さを100μm、紫外線硬化性粘着剤層(2)の厚さを100μm(紫外線硬化性粘着剤層の総厚さ:200μm)とし、放射線非硬化性粘着剤層の厚さを50μmとしたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2の光半導体素子封止用シートを作製した。
【0111】
実施例3
<PETフィルム/紫外線硬化性粘着剤層/放射線非硬化性粘着剤層>
(紫外線硬化性粘着剤層)
実施例1で作製した粘着剤溶液(1)を、PETフィルム(商品名「T912E75(UE80-)」、三菱ケミカル株式会社製、厚さ75μm)の処理面上に、乾燥後の厚さが125μmとなるように塗布し、常圧下、50℃で1分間および125℃で5分間加熱乾燥させ、紫外線硬化性粘着剤層を形成した。
【0112】
(放射線非硬化性粘着剤層)
実施例1で作製した粘着剤溶液(2)を、剥離ライナー(商品名「MRF38」、三菱ケミカル株式会社製)の剥離処理面上に、乾燥後の厚さが125μmとなるように塗布し、常圧下、50℃で1分間および125℃で5分間加熱乾燥させ、放射線非硬化性粘着剤層を形成した。
【0113】
<光半導体素子封止用シート>
上記で得られた放射線非硬化性粘着剤層および紫外線硬化性粘着剤層を用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例3の光半導体素子封止用シートを作製した。
【0114】
実施例4
実施例1で作製した粘着剤溶液(1)を、PETフィルム(商品名「T912E75(UE80-)」、三菱ケミカル株式会社製、厚さ75μm)の処理面上に、乾燥後の厚さが125μmとなるように塗布し、常圧下、50℃で1分間および125℃で5分間加熱乾燥させ、紫外線硬化性粘着剤層(1)を形成した。他方、実施例1で作製した粘着剤溶液(1)を、剥離ライナー(商品名「MRF38」、三菱ケミカル株式会社製)の剥離処理面上に、乾燥後の厚さが125μmとなるように塗布し、常圧下、50℃で1分間および125℃で5分間加熱乾燥させ、紫外線硬化性粘着剤層(2)を形成した。
そして、上記紫外線硬化性粘着剤層(1)に、別途作製した上記紫外線硬化性粘着剤層(2)を順次3層積層し、総厚さ500μmの紫外線硬化性粘着剤層を作製した。
【0115】
実施例1で作製した粘着剤溶液(2)を、剥離ライナー(商品名「MRF38」、三菱ケミカル株式会社製)の剥離処理面上に、乾燥後の厚さが5μmとなるように塗布し、常圧下、125℃で2分間加熱乾燥させ、放射線非硬化性粘着剤層を形成した。
【0116】
上記で得られた放射線非硬化性粘着剤層および紫外線硬化性粘着剤層を用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例4の光半導体素子封止用シートを作製した。
【0117】
実施例5
実施例1で作製した粘着剤溶液(1)を、PETフィルム(商品名「T912E75(UE80-)」、三菱ケミカル株式会社製、厚さ75μm)の処理面上に、乾燥後の厚さが25μmとなるように塗布し、常圧下、50℃で1分間および125℃で2分間加熱乾燥させ、紫外線硬化性粘着剤層を形成した。
【0118】
実施例1で作製した粘着剤溶液(2)を、剥離ライナー(商品名「MRF38」、三菱ケミカル株式会社製)の剥離処理面上に、乾燥後の厚さが112.5μmとなるように塗布し、常圧下、50℃で1分間および125℃で5分間加熱乾燥させ、放射線非硬化性粘着剤層(1)を形成した。
【0119】
そして、PETフィルム上に形成した紫外線硬化性粘着剤層と剥離ライナー上に形成した放射線非硬化性粘着剤層(1)の粘着剤層面同士をハンドローラーを用いて気泡が入らないように貼り合わせ、その後剥離ライナーを剥離した。このようにして、[PETフィルム/紫外線硬化性粘着剤層/放射線非硬化性粘着剤層(1)]の構成を有する積層体を作製した。
【0120】
他方、実施例1で作製した粘着剤溶液(2)を、剥離ライナー(商品名「MRF38」、三菱ケミカル株式会社製)の剥離処理面上に、乾燥後の厚さが112.5μmとなるように塗布し、常圧下、50℃で1分間および125℃で5分間加熱乾燥させ、放射線非硬化性粘着剤層(2)を形成した。
【0121】
そして、[PETフィルム/紫外線硬化性粘着剤層/放射線非硬化性粘着剤層(1)]の構成を有する積層体における放射線非硬化性粘着剤層(1)と剥離ライナー上に形成した放射線非硬化性粘着剤層(2)の粘着剤層面同士をハンドローラーを用いて気泡が入らないように貼り合わせ、1つの放射線非硬化性粘着剤層を形成した。このようにして、[PETフィルム/紫外線硬化性粘着剤層/放射線非硬化性粘着剤層/剥離ライナー]の構成を有する積層体を作製した。
【0122】
実施例1で作製した[TACフィルム/バインダー粘着剤層/剥離ライナー]の構成を有する積層体から剥離ライナーを剥がし、露出したバインダー粘着剤層面を、[PETフィルム/紫外線硬化性粘着剤層/放射線非硬化性粘着剤層/剥離ライナー]の構成を有する積層体のPETフィルム面に対して、ハンドローラーを用いて気泡が入らないように貼り合わせた。その後、50℃で48時間エージングを行い、[TACフィルム/バインダー粘着剤層/PETフィルム/紫外線硬化性粘着剤層/放射線非硬化性粘着剤層/剥離ライナー]の層構成を有する、実施例5の光半導体素子封止用シートを作製した。
【0123】
比較例1
実施例1で作製した粘着剤溶液(2)を、PETフィルム(商品名「T912E75(UE80-)」、三菱ケミカル株式会社製、厚さ75μm)の処理面上に、乾燥後の厚さが125μmとなるように塗布し、常圧下、50℃で1分間および125℃で5分間加熱乾燥させ放射線非硬化性粘着剤層(1)を形成した。他方、実施例1で作製した粘着剤溶液(2)を、剥離ライナー(商品名「MRF38」、三菱ケミカル株式会社製)の剥離処理面上に、乾燥後の厚さが125μmとなるように塗布し、常圧下、50℃で1分間および125℃で5分間加熱乾燥させ、放射線非硬化性粘着剤層(2)を形成した。
【0124】
そして、PETフィルム上に形成した放射線非硬化性粘着剤層(1)と剥離ライナー上に形成した放射線非硬化性粘着剤層(2)の粘着剤層面同士をハンドローラーを用いて気泡が入らないように貼り合わせ、1つの放射線非硬化性粘着剤層を形成した。このようにして、[PETフィルム/放射線非硬化性粘着剤層/剥離ライナー]の構成を有する積層体を作製した。
【0125】
実施例1で作製した[TACフィルム/バインダー粘着剤層/剥離ライナー]の構成を有する積層体から剥離ライナーを剥がし、露出したバインダー粘着剤層面を、[PETフィルム/放射線非硬化性粘着剤層/剥離ライナー]の構成を有する積層体のPETフィルム面に対して、ハンドローラーを用いて気泡が入らないように貼り合わせた。その後、50℃で48時間エージングを行い、[TACフィルム/バインダー粘着剤層/PETフィルム/放射線非硬化性粘着剤層/剥離ライナー]の層構成を有する、比較例1の光半導体素子封止用シートを作製した。
【0126】
比較例2
実施例1で作製した粘着剤溶液(1)を、PETフィルム(商品名「T912E75(UE80-)」、三菱ケミカル株式会社製、厚さ75μm)の処理面上に、乾燥後の厚さが125μmとなるように塗布し、常圧下、50℃で1分間および125℃で5分間加熱乾燥させ紫外線硬化性粘着剤層(1)を形成した。他方、実施例1で作製した粘着剤溶液(1)を、剥離ライナー(商品名「MRF38」、三菱ケミカル株式会社製)の剥離処理面上に、乾燥後の厚さが125μmとなるように塗布し、常圧下、50℃で1分間および125℃で5分間加熱乾燥させ、紫外線硬化性粘着剤層(2)を形成した。
【0127】
そして、PETフィルム上に形成した紫外線硬化性粘着剤層(1)と剥離ライナー上に形成した紫外線硬化性粘着剤層(2)の粘着剤層面同士をハンドローラーを用いて気泡が入らないように貼り合わせ、1つの紫外線硬化性粘着剤層を形成した。このようにして、[PETフィルム/紫外線硬化性粘着剤層/剥離ライナー]の構成を有する積層体を作製した。
【0128】
実施例1で作製した[TACフィルム/バインダー粘着剤層/剥離ライナー]の構成を有する積層体から剥離ライナーを剥がし、露出したバインダー粘着剤層面を、[PETフィルム/紫外線硬化性粘着剤層/剥離ライナー]の構成を有する積層体のPETフィルム面に対して、ハンドローラーを用いて気泡が入らないように貼り合わせた。その後、50℃で48時間エージングを行い、[TACフィルム/バインダー粘着剤層/PETフィルム/紫外線硬化性粘着剤層/剥離ライナー]の層構成を有する、比較例2の光半導体素子封止用シートを作製した。
【0129】
比較例3
実施例1で作製した粘着剤溶液(2)を、PETフィルム(商品名「T912E75(UE80-)」、三菱ケミカル株式会社製、厚さ75μm)の処理面上に、乾燥後の厚さが25μmとなるように塗布し、常圧下、50℃で1分間および125℃で2分間加熱乾燥させ、放射線非硬化性粘着剤層を形成した。
【0130】
実施例1で作製した粘着剤溶液(1)を、剥離ライナー(商品名「MRF38」、三菱ケミカル株式会社製)の剥離処理面上に、乾燥後の厚さが112.5μmとなるように塗布し、常圧下、50℃で1分間および125℃で5分間加熱乾燥させ、紫外線硬化性粘着剤層(1)を形成した。
【0131】
そして、PETフィルム上に形成した放射線非硬化性粘着剤層と剥離ライナー上に形成した紫外線硬化性粘着剤層(1)の粘着剤層面同士をハンドローラーを用いて気泡が入らないように貼り合わせ、その後剥離ライナーを剥離した。このようにして、[PETフィルム/放射線非硬化性粘着剤層/紫外線硬化性粘着剤層(1)]の構成を有する積層体を作製した。
【0132】
他方、実施例1で作製した粘着剤溶液(1)を、剥離ライナー(商品名「MRF38」、三菱ケミカル株式会社製)の剥離処理面上に、乾燥後の厚さが112.5μmとなるように塗布し、常圧下、50℃で1分間および125℃で5分間加熱乾燥させ、紫外線硬化性粘着剤層(2)を形成した。
【0133】
そして、[PETフィルム/放射線非硬化性粘着剤層/紫外線硬化性粘着剤層(1)]の構成を有する積層体における紫外線硬化性粘着剤層(1)と剥離ライナー上に形成した紫外線硬化性粘着剤層(2)の粘着剤層面同士をハンドローラーを用いて気泡が入らないように貼り合わせ、1つの紫外線硬化性粘着剤層を形成した。このようにして、[PETフィルム/放射線非硬化性粘着剤層/紫外線硬化性粘着剤層/剥離ライナー]の構成を有する積層体を作製した。
【0134】
実施例1で作製した[TACフィルム/バインダー粘着剤層/剥離ライナー]の構成を有する積層体から剥離ライナーを剥がし、露出したバインダー粘着剤層面を、[PETフィルム/放射線非硬化性粘着剤層/紫外線硬化性粘着剤層/剥離ライナー]の構成を有する積層体のPETフィルム面に対して、ハンドローラーを用いて気泡が入らないように貼り合わせた。その後、50℃で48時間エージングを行い、[TACフィルム/バインダー粘着剤層/PETフィルム/放射線非硬化性粘着剤層/紫外線硬化性粘着剤層/剥離ライナー]の層構成を有する、比較例3の光半導体素子封止用シートを作製した。
【0135】
<評価>
実施例および比較例で得られた紫外線硬化性粘着剤層および光半導体素子封止用シートについて、以下の評価を行った。結果を表に示す。
【0136】
(1)ナノインデンテーション法による硬さ
実施例および比較例でそれぞれ得られた光半導体素子封止用シートについて、TACフィルム側から下記の紫外線照射条件にて紫外線照射を行い、紫外線硬化性粘着剤層を硬化させた。その後、-40℃~-30℃で10~15分間凍結させた後、当該凍結条件下でウルトラミクロトームを用いて厚さ方向に切断して硬化後の紫外線硬化性粘着剤層の断面を露出させた。そして、装置に付属している金属製ステージに、断面が露出した光半導体素子封止用シートを、Pentel修正液(品番「XEZL1-W」)を固めることで固定した後、装置の窓等にポリイミドフィルムを貼り遮光した上で評価を行った。ナノインデンター(商品名「TriboIndenter」、HYSITRON Inc.社製)を用い、下記のナノインデンテーション測定条件で、硬化後の紫外線硬化性粘着剤層の表面のナノインデンテーション測定を行った。そして、得られた硬さを表1に示す。
<紫外線照射条件>
紫外線照射装置:商品名「UM810」、日東精機株式会社製
光源:高圧水銀灯
照射強度:50mW/cm2(測定機器:商品名「紫外線照度計UT-101」、ウシオ電機株式会社製)
照射時間:100秒
積算光量:5000mJ/cm2
<ナノインデンテーション測定条件>
使用圧子:Berkovich(三角錐型)
測定方法:単一押し込み測定
測定温度:23℃
押し込み深さ設定:3.0μm
負荷速度:500nm/s
除荷速度:500nm/s
【0137】
(2)ダイシング評価
実施例および比較例で得られた光半導体素子封止用シートについて、基板(商品名「鉛フリーユニバーサル基板ICB93SGPBF」、サンハヤト株式会社製)のパターン面に対して、剥離ライナーを剥離して露出した粘着剤層面全面をハンドローラーで貼り合わせ、試験サンプルを作製した。なお、光半導体素子封止用シートの粘着剤層面積は、貼り合わせられる基板の面積よりも大きい。貼り合わせは、温度22℃、湿度50%の環境下で、気泡が入らないようにして行った。その後、上記試験サンプルについてTACフィルム側から下記の紫外線照射条件(1)にて紫外線照射を行い、紫外線硬化性粘着剤層を硬化させた。なお、紫外線硬化性粘着剤層を有しない比較例1の光半導体素子封止用シートを用いた試験サンプルについては紫外線照射を行わなかった。
<紫外線照射条件(1)>
紫外線照射装置:商品名「UM810」、日東精機株式会社製
光源:高圧水銀灯
照射強度:50mW/cm2(測定機器:商品名「紫外線照度計UT-101」、ウシオ電機株式会社製)
照射時間:100秒
積算光量:5000mJ/cm2
【0138】
紫外線照射後、試験サンプルの光半導体素子封止用シートを貼付していない側である基板表面にダイシングテープ(商品名「NBD-5172K」、日東電工株式会社製)を貼付した。ダイシングテープの粘着剤面にはダイシングするためのダイシングリングを貼付した。貼付後、遮光下および温度22℃の環境下で30分放置した。その後、下記のダイシング条件で、試験サンプルおよびダイシングテープの積層体について、基板の側端から内側に向かって5mmの位置のブレードダイシングを行った。
<ダイシング条件>
ダイシング装置:商品名「DFD-6450」、株式会社ディスコ製
カット方式:シングルカット
ダイシング速度:30mm/秒
ダイシングブレード:商品名「P1A861 SDC400N75BR597」、株式会社ディスコ製
ダイシングブレード回転数:30,000rpm
ブレード高さ:85μm
水量:1.5L/分
ダイシング間隔:10mm
1回のダイシングの距離:試験サンプルの全長分
【0139】
なお、ダイシングに用いたブレードは、以下の方法でドレスダイシングを行ったものを用いた。
ダイシングテープ(商品名「NBD-7163K」、日東電工株式会社製)の粘着剤層に、ダイシングリングと、ボード(商品名「DRESSER BOARD BGCA0172」、株式会社ディスコ製)とを貼り付け、処理用のワークを作製した。次いで、得られたワークを下記のドレスダイシング条件でダイシングし、上記ブレードダイシング用のブレードを得た。
<ドレスダイシング条件>
ダイシング装置:製品名「DFD-6450」、株式会社ディスコ製
カット方式:シングルカット
ダイシング速度:55mm/秒
ダイシングブレード:商品名「P1A861 SDC400N75BR597」(新品)、株式会社ディスコ製
ダイシングブレード回転数:35,000rpm
ブレード高さ:500μm
水量:1.5L/分
1回のダイシングの距離:ボードの全長
ダイシング間隔:1mm刻み
ダイシング回数:100回
【0140】
ブレードダイシング後、ダイシングテープ基材側からの下記の紫外線照射条件(2)で紫外線を照射し、基板に対するダイシングテープの剥離強度を低下させた。
<紫外線照射条件(2)>
紫外線照射装置:商品名「UM810」、日東精機株式会社製
光源:高圧水銀灯
照射強度:50mW/cm2(測定機器:商品名「紫外線照度計UT-101」、ウシオ電機株式会社製)
照射時間:10秒
積算光量:500mJ/cm2
【0141】
その後、ブレードダイシングによって短冊状に切断された、試験サンプルおよび基板の積層体をダイシングテープから剥離して、ダイシング中に試験サンプルの基板からの剥がれが確認されたものを「B」とし、剥がれが確認できかったものを「A」として評価した。
【0142】
(3)糸曳き評価
上記ダイシング評価において短冊状に切断された、試験サンプルおよび基板の積層体を2枚、ダイシングテープから剥離した。次いで、上記2枚の積層体を、ダイシングにより露出した切断面同士を接着させ、その状態で温度50℃の環境下で24時間放置した。その後、接着させた上記2枚の短冊を取り出し、温度22℃、湿度50%の環境下に3時間放置した。その後、接着させた切断面同士を手で引き剥がすことを試み、引き剥がせなかった、または、引き剥がせたが粘着剤層の糸曳きが顕著に確認できたものを「D」とし、引き剥がせたが粘着剤層の糸曳きがわずかに確認できたものを「C」とし、引き剥がすのに力は必要としたが粘着剤層の糸曳きなく引き剥がせたものを「B」とし、引き剥がすのに特に力を必要とせず粘着剤層の糸曳きなく引き剥がせたものを「A」として評価した。
【0143】
【表1】
【0144】
表1に示すように、本発明の光半導体素子封止用シート(実施例)は、ダイシング評価の結果が良好であり、光半導体素子および基板に対するシートの密着性に優れ、光半導体素子の封止性に優れると評価された。また、糸曳き評価の結果が良好であり、封止部側面の密着性が低く、隣接する光半導体装置同士を引き離す際、シートの欠損や隣接する光半導体装置のシートの付着が起こりにくいと評価された。
【0145】
一方、紫外線硬化性粘着剤層を有しない場合(比較例1)、糸曳き評価の結果が劣っていた。また、放射線非硬化性粘着剤層を有しない場合(比較例2)、および、光半導体素子側の表面に位置する層が紫外線硬化性粘着剤層である場合(比較例3)、ダイシング評価の結果が劣っており、光半導体素子の封止性に劣ると評価された。
【符号の説明】
【0146】
1 光半導体素子封止用シート
1’ 光半導体素子封止用シートの硬化物
2 基材部
21 光学フィルム
22 粘着剤層
23 プラスチックフィルム
3 封止部
31 放射線硬化性樹脂層
31’ 硬化封止層
32 放射線非硬化性粘着剤層
4 剥離ライナー
5 基板
6 光半導体装置
10,20 光半導体装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7