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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
   A01D 41/12 20060101AFI20241016BHJP
   B60K 11/04 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
A01D41/12 R
B60K11/04 D
B60K11/04 E
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021030884
(22)【出願日】2021-02-26
(65)【公開番号】P2022131766
(43)【公開日】2022-09-07
【審査請求日】2023-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000001878
【氏名又は名称】三菱マヒンドラ農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】弁理士法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山根 達也
(72)【発明者】
【氏名】生馬 正貴
(72)【発明者】
【氏名】稲本 雅之
(72)【発明者】
【氏名】松原 正彦
【審査官】家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-094316(JP,A)
【文献】特開2004-019487(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 41/00-41/16
B60K 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンを冷却するためのラジエータと、
回転することで冷却風を吸引方向に吸引する冷却ファンであって、前記吸引方向において前記冷却ファンに対向する前記ラジエータを該冷却風によって冷却する冷却ファンと、
前記吸引方向において前記ラジエータよりも上流に配置され、前記冷却ファンにより吸引される空気から塵を回収する集塵網と、
前記吸引方向において、前記集塵網と前記ラジエータ及び前記冷却ファンとの間に設けられ、前記冷却ファンに重なる領域である前記集塵網の第1領域とは異なる領域である前記集塵網の第2領域を通過して吸引される空気を前記吸引方向に沿った方向に整流する整流部と、
取付空間を画定し、前記取付空間内に前記ラジエータが位置するように取り付けられる取付枠と、を備え
前記整流部は、前記取付空間を第1空間と第2空間とに仕切るように前記取付枠に架け渡され、
前記取付枠は、前記取付空間を画定する互いに対向する一対の側面を有し、
前記整流部は、一端及び他端が前記一対の側面にそれぞれ固定され、前記一対の側面の間に架け渡されている、
ことを特徴とする作業車両。
【請求項2】
前記取付枠は、前記吸引方向において前記ラジエータと前記集塵網との間に配置され、冷却装置を設置するために設けられる取付部を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
前記吸引方向から視た場合に、前記第2領域は前記第1領域の上方の領域を含み、前記整流部は板状であって前記作業車両の水平方向に沿うように設けられている、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、農業用のコンバイン等の作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンバイン等の作業車両を使用して田圃で作物の刈り取りを行う場合、作物が細かく粉砕されて発生した塵等が巻き上げられることが多く、その塵等がラジエータを冷却するための冷却ファンの冷却風により、ラジエータの集塵網に吸着されてしまうことがある。特に塵等の発生の多い田圃では、長時間の使用により、集塵網におけるラジエータに対向した部分が塵等で目詰まりしてしまい、その結果、ラジエータへの冷却風が不足して、エンジンを効率的に冷却できなくなる可能性がある。
【0003】
これを解決するために、ラジエータを大型化して、塵等によって集塵網が目詰まりしても冷却性能に余裕があるように設定したり、あるいは、冷却ファンを定期的に逆回転させて、冷却風を逆流させることにより塵等を集塵網から強制的に除去する等の対策が採られていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-83213号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1に記載した作業車両では、ラジエータを大型化したり、冷却ファンに逆転機構を設けているので、大型化や設備の増加によりコストが増加してしまう。特に安価で小型のコンバインでは、コスト低減が要求されており、これらのコスト増を招く対策は採用するのが難しいため、コストの増加を抑えながら長時間の使用によってもラジエータの冷却性能の低下を抑えることが望まれていた。
【0006】
そこで、本発明は、コスト増を抑えながら、ラジエータの冷却性能の低下を抑制可能な作業車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、エンジン(11)を冷却するためのラジエータ(12)と、
回転することで冷却風を吸引方向(Ds)に吸引する冷却ファン(22)であって、前記吸引方向(Ds)において前記冷却ファン(22)に対向する前記ラジエータ(12)を該冷却風によって冷却する冷却ファン(22)と、
前記吸引方向(Ds)において前記ラジエータ(12)よりも上流に配置され、前記冷却ファン(22)により吸引される空気から塵を回収する集塵網(24)と、
前記吸引方向(Ds)において、前記集塵網(24)と前記ラジエータ(12)及び前記冷却ファン(22)との間に設けられ、前記冷却ファン(22)に重なる領域である前記集塵網(24)の第1領域(24a)とは異なる領域である前記集塵網(24)の第2領域(24b)を通過して吸引される空気を前記吸引方向(Ds)に沿った方向に整流する整流部(25,26,28,29,30)と、を備える。
【0008】
例えば図4図5図6図9図10を参照して、取付空間(S1)を画定し、前記取付空間(S1)内に前記ラジエータ(12)が位置するように取り付けられる取付枠(23)を備え、
前記整流部(25,26,28)は、前記取付空間(S1)を第1空間(S11,S14)と第2空間(S12,S13,S15)とに仕切るように前記取付枠(23)に架け渡されている。
【0009】
例えば図5図6図9を参照して、前記取付枠(23)は、前記取付空間(S1)を画定する互いに対向する一対の側面(23a,23e,23f,23c,23d)を有し、
前記整流部(25,26,28)は、一端(25b,26b,28a)及び他端(25a,26a,28b)が前記一対の側面(23a,23e,23f,23c,23d)にそれぞれ固定され、前記一対の側面(23a,23e,23f,23c,23d)の間に架け渡されている。
【0010】
例えば図6図9を参照して、前記取付枠(23)は、前記吸引方向(Ds)において前記ラジエータ(12)と前記集塵網(24)との間に配置され、冷却装置(27)を設置するために設けられる取付部(23e,23f)を有する。
【0011】
例えば図9を参照して、前記吸引方向(Ds)から視た場合に、前記第2領域(24b)は前記第1領域(24a)の上方の領域を含み、前記整流部(28)は板状であって前記作業車両(1)の水平方向に沿うように設けられている。
【0012】
なお、上述カッコ内の符号は、図面と対照するためのものであるが、何ら本発明の構成を限定するものではない。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る本発明は、吸引方向において、冷却ファンに重なる領域である集塵網の第1領域とは異なる領域である集塵網の第2領域を通過して吸引される空気を吸引方向に沿った方向に整流する整流部を備えているので、冷却ファンによって吸引された空気が三次元的に大きな渦を巻くことを抑制できる。このため、整流部が無い場合に比べて、渦を巻いていてラジエータに向けた流路を形成できない領域を減少できるので、ラジエータに対して供給される吸気量の損失を抑制できること、また、冷却風がラジエータの全域に流通できるようになることで、冷却効率を向上することができる。しかも、取付枠に整流部を設けるだけの簡易な構成であるので、コスト増を抑えながら、ラジエータの冷却性能の低下を抑制可能な作業車両を提供することができる。
【0014】
請求項に係る本発明は、整流部は、取付空間を第1空間と第2空間とに仕切るように取付枠に架け渡されているので、流通する空気を効率よく整流することができる。
【0015】
請求項に係る本発明は、整流部は、一端及び他端が一対の側面にそれぞれ固定され、一対の側面の間に架け渡されている。このため、整流部はより確実に取付空間を第1空間と第2空間とに仕切るようにできるので、流通する空気を効率よく整流することができる。
【0016】
請求項に係る本発明は、取付枠は、冷却装置を設置するために設けられる取付部を有するので、取付部を有する従来から利用されている取付枠をそのまま用いることができ、部品コストの増加を抑制できる。
【0017】
請求項に係る本発明は、第2領域は第1領域の上方の領域を含み、整流部は板状であって作業車両の水平方向に沿うように設けられている。このため、吸引された空気は、取付枠において、水平方向の板状の整流部によって、ラジエータ側に向いた方向に整流される。このとき、上側の第2領域を流通する空気は整流部によって吸引され易くなり、整流部が無い場合に比べて、渦を巻いていてラジエータに向けた流路を形成できない領域を減少できるので、ラジエータに対して供給される吸気量の損失を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第1の実施形態に係るコンバインを示す側面図。
図2】第1の実施形態に係るコンバインの運転操縦部を閉じた状態を示す正面図。
図3】第1の実施形態に係るコンバインの運転操縦部を開いた状態を示す正面図。
図4】第1の実施形態に係るラジエータの冷却構造の分解組立図。
図5】第1の実施形態に係る取付枠を示す正面図。
図6】第1の実施形態に係るラジエータの冷却構造の集塵網を取り外した状態を示す正面図。
図7】第1の実施形態に係るラジエータの冷却構造を示す正面図。
図8】第1の実施形態に係るラジエータの冷却構造を示す側面図。
図9】第2の実施形態に係るラジエータの冷却構造の集塵網を取り外した状態を示す正面図。
図10】第3の実施形態に係るラジエータの冷却構造の集塵網を取り外した状態を示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<第1の実施形態>
以下、図面に沿って、本発明の第1の実施形態について説明する。図1は、本発明の作業車両を適用したコンバイン1の側面図である。図1において、コンバイン1は、茎稈を刈り取る前処理部2と、刈り取った茎稈から穀粒を脱穀して選別する不図示の脱穀部と、選別した穀粒が貯留される穀粒タンク4と、脱穀済みの排稈を後処理する後処理部5と、オペレータが乗車する運転部6と、クローラ式の走行部7とを備えて構成されている。尚、コンバイン1における前方を前側F、後方を後側Bとして示す。
【0020】
運転部6は、走行機体1aの右前端部に配置されており、その右側面部に形成される乗降口8を介して乗り降りされるようになっている。また、図2に示すように、運転部6には運転シート9が設けられている。図3に示すように、運転シート9の下方スペースは、エンジンルーム10となっており、ここに、エンジン11、エンジン11を冷却するためのラジエータ12、エアクリーナ13、リザーブタンク14などが配置されている。ラジエータ12は、エンジン11の冷却水を冷却することによりエンジン11を冷却する。尚、ラジエータ12を冷却するための構成については、後述する。
【0021】
エンジンルーム10を覆うエンジンカバー15は、エンジン11の上方を覆い、かつ、運転シート9を支持するシートフレーム16と、エンジン11の右側方を覆い、かつ、エンジン冷却風の上吸込口17b及び下吸込口17a(図1参照)が形成された吸気パネル17と、を一体的に備えて構成されている。例えば、本実施形態のエンジンカバー15は、板材を側面視逆U字状に曲げ加工して形成されたシートフレーム16の右端部に、吸気パネル17を一体的に取り付けて構成されている。
【0022】
図2及び図3に示すように、エンジンカバー15は、その右下端部に設けた前後方向の回動支点18を中心として右側方へ開放可能としてある。このようにすると、エンジンカバー15を開放することにより、エンジン11の上方及び右側方(本実施形態では、前方及び後方露出)を露出させることができるので、エンジン整備時の作業性が向上するという利点がある。尚、エンジンカバー15の上面左端部には、エンジンカバーロック用フック19が設けられており、このエンジンカバーロック用フック19を固定側に設けられるエンジンカバーロック用クランプ20で係止することにより、エンジンカバー15の開放動作がロックされるようになっている。
【0023】
次に、ラジエータ12を冷却するための冷却構造について、図4図8を用いて詳細に説明する。図4に示すように、ラジエータ12よりもコンバイン1の左側(以下、内側Diという)には、ラジエータ12側から順に、ラジエータ12の内側Diの全面を覆うファンシュラウド21と、ファンシュラウド21に接続された冷却ファン22と、が設けられている。また、ラジエータ12よりもコンバイン1の右側(以下、外側Doという)には、ラジエータ12側から順に、ラジエータ12を走行機体1aに取り付けるための取付枠23と、吸気パネル17と、が設けられている。
【0024】
冷却ファン22は、回転することで冷却風を吸引方向Dsに吸引する。尚、本実施形態では、冷却ファン22の吸引方向Dsは、内側Diと同方向である。冷却ファン22は、吸引方向Dsにおいて、冷却ファン22に対向するラジエータ12を該冷却風によって冷却する。
【0025】
取付枠23は、略ロ字形状のフレームにより形成されており、フレームの内側に囲まれた取付空間S1を画定し、取付空間S1内にラジエータ12が位置するように取り付けられる。図5に示すように、取付枠23は、略ロ字形状のフレームにおいて、上枠23aと下枠23bと後枠23cと前枠23dとを有している。後枠23cの下部には、前側Fに突出した取付部23eが設けられ、前枠23dの下部には、後側Bに突出した取付部23fが設けられている。各取付部23e,23fには、図6に示すように、冷却装置の一例であるオイルクーラ27がボルト27aにより固定されている。即ち、取付部23e,23fは、吸引方向Dsにおいてラジエータ12と集塵網24との間に配置され、オイルクーラ27を設置するために設けられている。
【0026】
吸気パネル17は、図4,7,8に示すように、空間S2を有するダクト形状で、外側Doに下吸込口17a及び上吸込口17bを有し、内側Diに排出口17cを有している。下吸込口17a及び上吸込口17bには、それぞれ集塵網の一例である下集塵網24a及び上集塵網24bが設けられている。排出口17cは、取付枠23に取り付けられており、空間S2は取付空間S1に連通している。吸気パネル17は、冷却ファン22の駆動により、下吸込口17a及び上吸込口17bから外気を吸引し、排出口17cから取付枠23に向けて空気を流通させる。下集塵網24a及び上集塵網24bは、吸引方向Dsにおいてラジエータ12よりも上流に配置され、冷却ファン22により吸引される空気から作物が細かく粉砕されて発生した藁や埃といった塵等を回収し、ラジエータ12側に入り込まないように防塵する。下集塵網24a及び上集塵網24bのメッシュの大きさは、防塵の程度などに応じて適宜設定することができる。
【0027】
本実施形態では、図7に示すように、吸引方向Dsから視た場合に、冷却ファン22の回転軸22aは、吸気パネル17の下吸込口17aに重なって位置している。このため、冷却ファン22の羽根部は、大部分が下吸込口17aに重なって配置されている。これにより、下吸込口17aは上吸込口17bよりも外気の吸引量が多くなり、下集塵網24aは上集塵網24bよりも目詰まりを起こしやすくなる。尚、本実施形態では、下集塵網24aは、吸引方向Dsにおいて冷却ファン22に重なる領域である集塵網24の第1領域に相当する。また、上集塵網24bは、第1領域とは異なる領域である集塵網24の第2領域に相当する。即ち、吸引方向Dsから視た場合に、上集塵網24bは、下集塵網24aの上方の領域を含む。
【0028】
ここで、コンバイン1を長時間使用すると、下集塵網24aの特に冷却ファン22に対向して吸引量が多い部分が目詰まりを起こしてしまい、下吸込口17aの吸引量が減って、上吸込口17bの吸引量が増える場合がある。この場合、図8に示すように、上吸込口17bから吸引された空気は、吸気パネル17の空間S2を下方に向けた流路f1に沿って流通する。このため、吸引された空気が直線的に流通するのではなく、内側Diに向けて流通したり下方に向けて流通したりすることで、三次元的に大きな渦を巻いてしまい、渦を巻いている部分ではラジエータ12に向けた流路を形成できないことから、ラジエータ12に対して供給される吸気量を損失してしまう可能性がある。また、上吸込口17bから吸引された空気は、上吸込口17bからラジエータ12の下側までの距離が遠く、且つ、上吸込口17bからラジエータ12の下側までの間で渦が発生する可能性があるため、ラジエータ12の下側には届きにくく、冷却効率が低下してしまう虞がある。そこで、本実施形態では、コスト増を抑えながら、渦の発生を抑制することでラジエータ12の冷却性能の低下を抑制するために、整流部の一例として導風板25,26を設けるようにしている。
【0029】
以下、導風板25,26の構成について、詳細に説明する。導風板25,26は、図4に示すように、取付枠23の内部に設けられており、吸引方向Dsにおいて集塵網24とラジエータ12及び冷却ファン22との間に設けられている。導風板25,26は、上集塵網24bを通過して吸引される空気を吸引方向Dsに沿った方向に整流する整流板として機能する。導風板25,26は、板状で、長手方向をコンバイン1の上下方向、幅方向をコンバイン1の左右方向、厚み方向を吸引方向Dsに直交する方向にして設けられている。即ち、導風板25,26は、冷却ファン22の回転軸22aに沿った平板状の仕切部材として設けられており、導風板25,26と集塵網24との間には空気が行き来する隙間が存在している。また、本実施形態では、図7に示すように、吸引方向Dsから視た場合に、冷却ファン22の回転軸22aは、各導風板25,26の間に位置している。
【0030】
図5及び図6に示すように、導風板25は、取付空間S1を第1空間S11と第2空間S12とに仕切るように、取付枠23に上下方向に架け渡されて設けられている。ここでは、導風板25の他端の一例である下端部25aは、後側Bに曲折されて、取付部23eにボルトにより固定されている。導風板25の一端の一例である上端部25bは、前側Fに曲折されて、上枠23aにボルトにより固定されている。また、導風板25の下端部25aの前端部は、斜め上方に曲折されて傾斜部25cを形成している。傾斜部25cは、オイルクーラ27を取付部23eに締結するためのボルト27aに導風板25が干渉しないように設けられている。導風板25は、オイルクーラ27の後側Bに近接して設けられている。
【0031】
同様に、導風板26は、取付空間S1を第1空間S11と第3空間(第2空間)S13とに仕切るように、取付枠23に上下方向に架け渡されて設けられている。ここでは、導風板26の他端の一例である下端部26aは、前側Fに曲折されて、取付部23fにボルトにより固定されている。導風板26の一端の一例である上端部26bは、後側Bに曲折されて、上枠23aにボルトにより固定されている。また、導風板26の下端部26aの後端部は、斜め上方に曲折されて傾斜部26cを形成している。傾斜部26cは、オイルクーラ27を取付部23fに締結するためのボルト27aに導風板26が干渉しないように設けられている。導風板26は、オイルクーラ27の前側Fに近接して設けられている。即ち、本実施形態では、取付枠23において取付空間S1を画定する互いに対向する一対の側面の一例は取付部23e,23fと上枠23aとであり、導風板25,26は、下端部25a,26a及び上端部25b,26bが取付部23e,23fと上枠23aとにそれぞれ固定され、取付部23e,23fと上枠23aとの間に架け渡されている。
【0032】
上述した本実施形態の導風板25,26を適用したコンバイン1を長時間使用した場合について、詳細に説明する。この場合も、下集塵網24aが目詰まりを起こしてしまい、下吸込口17aの吸引量が減って、上吸込口17bの吸引量が増える場合がある。尚、この場合、下集塵網24aの吸引量の多い中心部では目詰まりを起こしていても、下側、前側F、後側Bの部分では必ずしも目詰まりせずに吸引することもある。
【0033】
図8に示すように、上吸込口17bから吸引された空気は、吸気パネル17の空間S2を下方に向けた流路f1に沿って流通する。吸引された空気は、取付枠23において、上下方向を長手方向とする板状の導風板25,26によって、下方に向いた方向、あるいは、内側Diに向いた方向に整流される。これにより、導風板25,26が無い場合に比べて、空気は下方あるいは内側Diに向いた直線に近い状態に整流されて導風されるので、三次元的に大きな渦を巻くことが抑制される。このため、導風板25,26が無い場合に比べて、渦を巻いていてラジエータ12に向けた流路を形成できない領域を減少できるので、ラジエータ12に対して供給される吸気量の損失を抑制することができる。
【0034】
また、上吸込口17bから吸引された空気は、上吸込口17bからラジエータ12の下側までの距離が遠いものの、導風板25,26が上下方向を長手方向として設けられているので、ラジエータ12の下側まで流通するようになり、導風板25,26が無い場合に比べて冷却効率を向上することができる。
【0035】
上述したように本実施形態のラジエータ12の冷却構造によれば、上集塵網24bを通過して吸引される空気を吸引方向Dsに沿った方向に整流して導風する導風板25,26を有しているので、三次元的に大きな渦を巻くことが抑制される。このため、導風板25,26が無い場合に比べて、渦を巻いていてラジエータ12に向けた流路を形成できない領域を減少できるので、ラジエータ12に対して供給される吸気量の損失を抑制できること、また、冷却風がラジエータ12の下側まで流通できるようになることで、冷却効率を向上することができる。しかも、取付枠23に板状の導風板25,26を設けるだけの簡易な構成であるので、コスト増を抑えることができる。
【0036】
また、本実施形態のラジエータ12の冷却構造によれば、導風板25,26は、取付空間S1を第1空間S11,第2空間S12,第3空間S13に仕切るように取付枠23に架け渡されているので、流通する空気を効率よく整流して導風することができる。
【0037】
また、本実施形態のラジエータ12の冷却構造によれば、導風板25,26は、下端部25a,26a及び上端部25b,26bが取付部23e,23fと上枠23aとにそれぞれ固定され、取付部23e,23fと上枠23aとの間に架け渡されている。このため、導風板25,26はより確実に取付空間S1を第1空間S11,第2空間S12,第3空間S13に仕切るようにできるので、流通する空気を効率よく整流することができる。また、導風板25,26は上下方向を長手方向として配置されるので、上吸込口17bから吸引された空気は、取付枠23において、下方に向いた方向、あるいは、内側Diに向いた方向に効率よく整流されるようになる。
【0038】
また、本実施形態のラジエータ12の冷却構造によれば、取付枠23といして、取付部23e,23fを有する従来から利用されている取付枠23をそのまま用いることができるので、部品コストの増加を抑制できる。
【0039】
尚、上述した本実施形態の導風板25,26では、オイルクーラ27と干渉しないようにオイルクーラ27の後側B及び前側Fに近接して設けられているが、これには限られず、それぞれ後枠23c及び前枠23dとオイルクーラ27との間に配置されていればよい。あるいは、オイルクーラ27が設けられていない場合は、導風板25,26はより中心側に配置されるようにしてもよい。また、この場合、導風板25,26を上枠23aと下枠23bとの間に架け渡すように設けるようにしてもよい。
【0040】
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態を、図9を参照しながら詳細に説明する。本実施形態では、取付枠23に取り付けられた導風板28は、水平方向を長手方向としている点で、第1の実施形態と構成を異にしている。但し、それ以外の構成については、第1の実施形態と同様であるので、符号を同じくして詳細な説明を省略する。
【0041】
図9に示すように、導風板28は、取付枠23の内部に設けられており、板状で、長手方向をコンバイン1の前後方向、幅方向をコンバイン1の左右方向、厚み方向を吸引方向Dsに直交する方向にして設けられている。即ち、導風板28は、板状であって、コンバイン1の水平方向に沿うように設けられている。また、本実施形態では、導風板28は、吸引方向Dsから視た場合に、冷却ファン22の回転軸22aより下方に設けられている。
【0042】
導風板28は、取付空間S1を第4空間(第1空間)S14と、第4空間S14より下側の第5空間(第2空間)S15とに仕切るように、取付枠23に水平方向に架け渡されて設けられている。ここでは、導風板28の一端の一例である後端部28aは、下側に曲折されて、後枠23cにボルトにより固定されている。導風板28の他端の一例である前端部28bは、下側に曲折されて、前枠23dにボルトにより固定されている。即ち、本実施形態では、取付枠23において取付空間S1を画定する互いに対向する一対の側面の一例は後枠23cと前枠23dとであり、導風板28は、後端部28a及び前端部28bが後枠23cと前枠23dとにそれぞれ固定され、後枠23cと前枠23dとの間に架け渡されている。
【0043】
上述した本実施形態の導風板28を適用したコンバイン1を長時間使用した場合について、詳細に説明する。この場合も、下集塵網24aが目詰まりを起こしてしまい、下吸込口17aの吸引量が減って、上吸込口17bの吸引量が増える場合がある。上吸込口17bから吸引された空気は、吸気パネル17の空間S2を下方に向けた流路f1(図8参照)に沿って流通する。吸引された空気は、取付枠23において、板状の導風板28によって、内側Diに向いた方向に整流される。このとき、上側の第4空間S14を流通する空気は特に吸引され易くなり、導風板28が無い場合に比べて、渦を巻いていてラジエータ12に向けた流路を形成できない領域を減少できるので、ラジエータ12に対して供給される吸気量の損失を抑制することができる。特に本実施形態では、導風板28は冷却ファン22の回転軸22aより下方に設けられているので、上方の空気の吸引を阻害することを抑制している。
【0044】
上述したように本実施形態のラジエータ12の冷却構造によれば、上集塵網24bを通過して吸引される空気を吸引方向Dsに沿った方向に整流して導風する導風板28を有しているので、三次元的に大きな渦を巻くことが抑制される。このため、導風板28が無い場合に比べて、渦を巻いていてラジエータ12に向けた流路を形成できない領域を減少できるので、ラジエータ12に対して供給される吸気量の損失を抑制でき、冷却効率を向上することができる。しかも、取付枠23に板状の導風板28を設けるだけの簡易な構成であるので、コスト増を抑えることができる。
【0045】
<第3の実施形態>
次に、本発明の第3の実施形態を、図10を参照しながら詳細に説明する。本実施形態では、取付枠23に、上下方向を長手方向とする導風板25,26に加えて、水平方向を長手方向とする導風板29,30を設けた点で、第1の実施形態と構成を異にしている。但し、それ以外の構成については、第1の実施形態と同様であるので、符号を同じくして詳細な説明を省略する。
【0046】
図10に示すように、取付枠23には、上下方向を長手方向とする導風板25,26と、水平方向を長手方向とする導風板29,30とを有している。導風板25,26については、第1の実施形態と同様であるので、詳細な説明を省略する。導風板29,30は、板状で、長手方向をコンバイン1の前後方向、幅方向をコンバイン1の左右方向、厚み方向を吸引方向Dsに直交する方向にして設けられている。即ち、導風板29,30は、板状であって、コンバイン1の水平方向に沿うように設けられている。また、本実施形態では、導風板29,30は、吸引方向Dsから視た場合に、冷却ファン22の回転軸22aより下方に設けられている。
【0047】
導風板29は、取付空間S1を第2空間S12と、第2空間S12より下側の第6空間S16とに仕切るように、後枠23cと導風板25とに水平方向に架け渡されて設けられている。ここでは、導風板29は、導風板25に溶接等により一体化されたものとしている。但し、これには限られず、導風板29を導風板25及び後枠23cにボルト等により締結するようにしてもよい。導風板30は、取付空間S1を第3空間S13と、第3空間S13より下側の第7空間S17とに仕切るように、前枠23dと導風板26とに水平方向に架け渡されて設けられている。ここでは、導風板30は、導風板26に溶接等により一体化されたものとしている。但し、これには限られず、導風板30を導風板26及び前枠23dにボルト等により締結するようにしてもよい。
【0048】
上述した本実施形態の導風板28を適用したコンバイン1を長時間使用した場合について、詳細に説明する。この場合も、下集塵網24aが目詰まりを起こしてしまい、下吸込口17aの吸引量が減って、上吸込口17bの吸引量が増える場合がある。上吸込口17bから吸引された空気は、吸気パネル17の空間S2を下方に向けた流路f1(図8参照)に沿って流通する。吸引された空気は、取付枠23の第1空間S11において、上下方向を長手方向とする板状の導風板25,26によって、下方に向いた方向、あるいは、内側Diに向いた方向に整流される。これにより、導風板25,26が無い場合に比べて、空気は下方あるいは内側Diに向いた直線に近い状態に整流されて導風されるので、三次元的に大きな渦を巻くことが抑制される。また、吸引された空気は、取付枠23の第2空間S12及び第3空間S13において、水平方向を長手方向とする板状の導風板29,30によって、内側Diに向いた方向に整流される。このとき、第2空間S12及び第3空間S13を流通する空気は特に吸引され易くなり、導風板29,30が無い場合に比べて、渦を巻いていてラジエータ12に向けた流路を形成できない領域を減少できる。
【0049】
これらの理由により、第1の実施形態のように上下方向を長手方向とする導風板25,26を設けた効果と、第2の実施形態のように水平方向を長手方向とする導風板29,30を設けた効果との相乗効果を得ることができる。このため、導風板25,26,29,30が無い場合に比べて、渦を巻いていてラジエータ12に向けた流路を形成できない領域を減少できるので、ラジエータ12に対して供給される吸気量の損失を抑制することができる。
【0050】
上述したように本実施形態のラジエータ12の冷却構造によれば、上集塵網24bを通過して吸引される空気を吸引方向Dsに沿った方向に整流して導風する導風板25,26,29,30を有しているので、三次元的に大きな渦を巻くことが抑制される。このため、導風板25,26,29,30が無い場合に比べて、渦を巻いていてラジエータ12に向けた流路を形成できない領域を減少できるので、ラジエータ12に対して供給される吸気量の損失を抑制でき、冷却効率を向上することができる。しかも、取付枠23に板状の導風板25,26,29,30を設けるだけの簡易な構成であるので、コスト増を抑えることができる。
【0051】
尚、上述した第1~第3の実施形態では、各導風板25,26,28,29,30の厚み方向を吸引方向Dsに直交する方向とした場合について説明したが、これには限られず、吸引方向Dsに傾斜した方向にしてもよい。この場合、吸引した空気に対して所望の整流を行うように、適宜設定することができる。
【0052】
また、上述した第1~第3の実施形態では、各導風板25,26,28は取付枠23の互いに対向する一対の側面に架け渡されている場合について説明したが、これには限られず、各導風板25,26,28は途中で途切れていてもよい。この場合も、各導風板25,26,28の設けられている範囲で空気を導風することができる。
【0053】
また、上述した第1~第3の実施形態では、各導風板25,26,28,29,30は取付枠23に取り付けられている場合について説明したが、これには限られず、他の部材に取り付けられるようにしてもよい。
【0054】
また、上述した第1~第3の実施形態では、冷却ファン22に重なる領域である集塵網24の第1領域とは異なる領域である集塵網24の第2領域を上集塵網24bである場合について説明したが、これには限られず、第2領域としては、冷却ファン22の正面以外の部分を広く含めることができ、例えば、集塵網24の前側Fや後側Bの脇部分等に吸込口がある場合は、それも含めることができる。
【0055】
また、上述した第1~第3の実施形態では、取付枠23に取り付けた冷却装置としてオイルクーラ27を適用した場合について説明したが、これには限られず、冷却装置として、例えば、燃料クーラやエアコンのコンデンサを取り付けるようにしてもよい。あるいは、取付枠23に冷却装置を取り付けなくてもよい。
【0056】
また、上述した第1~第3の実施形態では、冷却ファン22は、吸引方向Dsにおいてラジエータ12の下流側に設けられている場合について説明したが、これには限られず、冷却ファン22は、ラジエータ12の上流側で、集塵網24の下流側に設けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0057】
1:コンバイン(作業車両)
11:エンジン
12:ラジエータ
22:冷却ファン
23:取付枠
23a:上枠(側面)
23c:後枠(側面)
23d:前枠(側面)
23e,23f:取付部(側面)
24:集塵網
24a:下集塵網(第1領域)
24b:上集塵網(第2領域)
25,26,28,29,30:導風板(整流部)
25a,26a,28b:他端
25b,26b,28a:一端
27:オイルクーラ(冷却装置)
Ds:吸引方向
S1:取付空間
S11:第1空間
S12:第2空間
S13:第3空間(第2空間)
S14:第4空間(第1空間)
S15:第5空間(第2空間)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10