(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】樹脂構造体
(51)【国際特許分類】
H05K 5/03 20060101AFI20241016BHJP
H02G 3/14 20060101ALI20241016BHJP
B60R 16/02 20060101ALN20241016BHJP
【FI】
H05K5/03 D
H02G3/14
B60R16/02 610Z
(21)【出願番号】P 2021040595
(22)【出願日】2021-03-12
【審査請求日】2023-12-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】大木 隆史
(72)【発明者】
【氏名】金子 信崇
(72)【発明者】
【氏名】加藤 哲也
(72)【発明者】
【氏名】天野 正貴
(72)【発明者】
【氏名】森田 蓮
(72)【発明者】
【氏名】丸山 崇
(72)【発明者】
【氏名】酒井 雄基
(72)【発明者】
【氏名】廣田 慧
(72)【発明者】
【氏名】橋口 寛
【審査官】八板 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-187540(JP,A)
【文献】特開平08-111592(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0295552(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 5/00- 5/06
H02G 3/08- 3/20
B60R 16/00-17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1開口部及び前記第1開口部と隣り合う第2開口部を有する樹脂体と、前記第1開口部を覆うように前記樹脂体に装着及び分離可能に組み付けられる第1カバーと、前記第2開口部を覆うように前記樹脂体に組み付けられる第2カバーと、を備えた樹脂構造体であって、
前記第1カバーは、
前記第2カバー側の壁部、及び、前記第1開口部を挟んで前記第2カバー側の前記壁部の逆側の壁部の各々に設けられる複数の係合突部を有し、
前記樹脂体は、
前記複数の前記係合突部の各々に対応する位置に、前記複数の前記係合突部とそれぞれ係合される複数の被係合部を有し、
当該樹脂構造体は、
前記第1カバーを前記第1開口部の開口面に沿う組付向きに移動させることにより、前記複数の前記係合突部と前記複数の前記被係合部とがそれぞれ係合されて、前記第1カバーが前記樹脂体に装着され、且つ、
前記第1カバーを前記開口面に沿う前記組付向きの逆向きに移動させることにより、前記複数の前記係合突部と前記複数の前記被係合部との係合が解除されて、前記第1カバーが前記樹脂体から分離する、ように構成さ
れ、
前記複数の前記被係合部は、
前記第1開口部を画成する前記樹脂体の壁部に設けられ、前記壁部側に開口する略半矩形状を有するように構成される、
樹脂構造体。
【請求項2】
請求項
1に記載の樹脂構造体において、
前記複数の前記被係合部は、
前記第1カバーの前記組付向きへの移動に伴って前記第1カバーを前記組付向きに交差して且つ前記樹脂体に近付く向きに押圧するように、前記複数の前記係合突部を案内する、ように構成される、
樹脂構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両に搭載される電気接続箱(例えば、リレーボックス)等のように、複数の樹脂体を互いに組み付けて構成される樹脂構造体が提案されている。一般に、電気接続箱は、上面が開口されるとともに電子部品等を収容するケース本体と、ケース本体の上面の開口を塞ぐように組み付けられるカバーと、を有している。
【0003】
例えば、電気接続箱は、車両のエンジンルーム等のような狭いスペースに搭載されることがある。このため、従来の電気接続箱の一種では、ケース本体の内部を、交換等のメンテナンスが必要な電子部品等が収容される領域と、交換等のメンテナンスが不要である電子部品等が収容される領域と、に区分けし、この区分けに合わせてカバーも分割されることがある(例えば、特許文献1~3を参照。)。なお、以下では、説明の便宜上、電子部品等の交換等のメンテナンスのことを、単に「メンテナンス」という。
【0004】
つまり、従来の電気接続箱は、車両搭載後であっても、メンテナンス領域上のカバー(以下、「メンテナンス用カバー」という。)を取り外すことで、メンテナンスを行うことが可能になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-121880号公報
【文献】特許第5088090号公報
【文献】特許第4605143号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述した従来の電気接続箱は、メンテナンス用カバーがケース本体に対して上下方向に沿って組み付けられるように構成されている。このため、従来の電気接続箱は、電気接続箱の上側に他の部品(例えば、バッテリ等)が存在するように車両に搭載された場合、メンテナンス用カバーの着脱時にメンテナンス用カバーが他の部品と干渉する可能性がある。このような干渉は、メンテナンスの作業性を損なう原因となり得るため、好ましくない。
【0007】
本発明は、上述した状況を鑑みてなされたものであり、その目的は、車両等への搭載後のメンテナンスの作業性に優れる樹脂構造体、の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した目的を達成するために、本発明に係る樹脂構造体は、下記[1]~[2]を特徴としている。
[1]
第1開口部及び前記第1開口部と隣り合う第2開口部を有する樹脂体と、前記第1開口部を覆うように前記樹脂体に装着及び分離可能に組み付けられる第1カバーと、前記第2開口部を覆うように前記樹脂体に組み付けられる第2カバーと、を備えた樹脂構造体であって、
前記第1カバーは、
前記第2カバー側の壁部、及び、前記第1開口部を挟んで前記第2カバー側の前記壁部の逆側の壁部の各々に設けられる複数の係合突部を有し、
前記樹脂体は、
前記複数の前記係合突部の各々に対応する位置に、前記複数の前記係合突部とそれぞれ係合される複数の被係合部を有し、
当該樹脂構造体は、
前記第1カバーを前記第1開口部の開口面に沿う組付向きに移動させることにより、前記複数の前記係合突部と前記複数の前記被係合部とがそれぞれ係合されて、前記第1カバーが前記樹脂体に装着され、且つ、
前記第1カバーを前記開口面に沿う前記組付向きの逆向きに移動させることにより、前記複数の前記係合突部と前記複数の前記被係合部との係合が解除されて、前記第1カバーが前記樹脂体から分離する、ように構成され、
前記複数の前記被係合部は、
前記第1開口部を画成する前記樹脂体の壁部に設けられ、前記壁部側に開口する略半矩形状を有するように構成される、
樹脂構造体であること。
[2]
上記[1]に記載の樹脂構造体において、
前記複数の前記被係合部は、
前記第1カバーの前記組付向きへの移動に伴って前記第1カバーを前記組付向きに交差して且つ前記樹脂体に近付く向きに押圧するように、前記複数の前記係合突部を案内する、ように構成される、
樹脂構造体であること。
【0009】
上記[1]の構成の樹脂構造体によれば、第1開口部及び第1開口部と隣り合う第2開口部を有する樹脂体と、第1開口部を覆うように装着及び分離可能に樹脂体に組み付けられる第1カバーと、第2開口部を覆うように樹脂体に組み付けられる第2カバーと、を備える。このため、交換等のメンテナンスが必要な電子部品等を第1開口部側の樹脂体の内部に配置することでメンテナンスの作業が容易となる。
【0010】
更に、本構成の樹脂構造体によれば、第1カバーが、第2カバー側の壁部及び第1開口部を挟んで第2カバー側の壁部と逆側の壁部の各々に設けられている複数の係合突部を有し、樹脂体が、複数の係合突部の各々に対応する位置に複数の被係合部を有する。そして、樹脂構造体は、第1カバーを第1開口部の開口面沿う組付向き移動させることにより、複数の係合突部と複数の被係合部とがそれぞれ係合されて、第1カバーが樹脂体に装着され、且つ、第1カバーを組付向きの逆向きに移動させることにより、複数の係合突部と複数の被係合部との係合が解除されて、第1カバーが樹脂体から分離する。換言すると、第1カバーは、第1開口部の開口面に沿って移動されることにより、樹脂体に装着及び分離されるように構成される。このため、本構成の樹脂構造体は、例えば、車両に搭載された際に、開口面に向かい合う位置に他の部品が存在する場合でも、第1カバーを樹脂体から容易に装着及び分離できる。
【0011】
この結果、本構成の樹脂構造体は、従来の電気接続箱に比べて、車両等への搭載後のメンテナンスの作業性に優れる。
【0012】
さらに、上記[1]の構成の樹脂構造体によれば、第1開口部が壁部によって画成され、その壁部の係合突部の各々に対応する位置に被係合部が設けられている。このため、第1カバーの樹脂体に対する位置決めが容易となり、第1カバーを樹脂体に容易に装着及び分離できる。この結果、本構成の樹脂構造体は、従来の電気接続箱に比べて、車両等への搭載後のメンテナンスの作業性に優れる。
【0013】
上記[2]の構成の樹脂構造体によれば、被係合部は、第1カバーの組付向きへの移動
に伴って第1カバーを組付向きに交差して且つ樹脂体に近付く向きに押圧するように、係
合突部を案内する。このため、第1カバーを第1開口部の開口面に沿う組付向きに移動さ
せるだけで、第1カバーが樹脂体に容易に装着される。
【発明の効果】
【0014】
このように、本発明によれば、車両等への搭載後のメンテナンスの作業性に優れる樹脂構造体、を提供できる。
【0015】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1(a)は、本発明の実施形態に係る樹脂構造体を前側から見た斜視図であり、
図1(b)は、
図1(a)に示す樹脂構造体を後側から見た斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1(a)に示す樹脂構造体の分解斜視図である。
【
図3】
図3(a)は、第1カバーを前側から見た斜視図であり、
図3(b)は、第1カバーを後側から見た斜視図である。
【
図4】
図4(a)は、被係合部を
図2よりも左側から見た斜視図であり、
図4(b)は、被係合部の正面図である。
【
図5】
図5(a)は、
図1(a)のA-A断面図であり(一部図示省略)、
図5(b)は、
図5(a)のD部拡大図である。
【
図6】
図6(a)は、
図4(b)のB-B断面図であり(一部図示省略)、
図6(b)は、
図4(b)のC-C断面図である(一部図示省略)。
【
図7】
図7は、樹脂体とカバーとの組み付け工程を説明する
図6(a)のE部に相当する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<実施形態>
以下、図面を参照しながら、
図1及び
図2に示す本発明の実施形態に係る樹脂構造体1について説明する。樹脂構造体1は、典型的には、車両に搭載され、リレー等の電子部品を収容するリレーボックス(電気接続箱)である。
【0018】
図1及び
図2に示すように、樹脂構造体1は、フレーム10と、第1カバー20と、第2カバー30と、を含んで構成される。フレーム10には、リレー等の電子部品(及び、その他の部品、図示省略)が収容されることになる。第1カバー20及び第2カバー30は、フレーム10の上端開口部をそれぞれ塞ぐようにフレーム10の上端部に組み付けられる。フレーム10と、第1カバー20と、第2カバー30との各々は、樹脂構造体1を構成する。フレーム10は、本発明の「樹脂体」に対応している。
【0019】
なお、樹脂構造体1は、ロアカバー40を更に含む。ロアカバー40は、フレーム10の下端開口部を塞ぐようにフレーム10の下端部に組み付けられる。ロアカバー40は、
図1~
図2に示すように、上下方向に延びる筒状の周壁41と、周壁41の下端開口部を塞ぐ底壁42と、を一体に有する。周壁41の外面には、係合部43が設けられている。係合部43は、フレーム10の後述する被係合部13と係合される。
【0020】
以下、説明の便宜上、
図1~8に示すように、「上下方向」、「前後方向」、「左右方向」、「上」、「下」、「前」、「後」、「左」及び「右」を定義する。「上下方向」、「前後方向」及び「左右方向」は、互いに直交している。
【0021】
「上下方向」は、第1開口部の開口面に直交する方向に対応し、「前後方向」は、フレーム10と第1カバー20との組付方向に対応し、「左右方向」は、樹脂構造体1を前側から見たときの左右に対応している。
【0022】
更に、フレーム10の後述する周壁11、第1カバー20の後述する周壁21、第2カバー30の後述する周壁31、及び、ロアカバー40の周壁41における周方向のことを、単に「周方向」という。なお、周方向の長手側は「左右方向」に位置し、周方向の短手側が「前後方向」に位置している。また、以下で用いる「内外方向」とは、周壁11及び周壁21における厚み方向に対応している。以下、樹脂構造体1を構成する各部材について順に説明する。
【0023】
まず、フレーム10について説明する。フレーム10は、
図1~
図2に示すように、上下方向に延びる略矩形筒状の周壁11を有する。周壁11は、周方向の長手側にある(即ち、前後方向に延びる)周壁11a、及び、周方向の短手側にある(即ち、左右方向に延びる)周壁11bから構成される。
【0024】
図2に示すように、フレーム10の内側には、周壁11aに沿って、前側の周壁11bから後側の周壁11bまで延びている壁部11c及び壁部11dがそれぞれ設けられている。
【0025】
図2に示すように、フレーム10は、第1開口部A1と、第2開口部A2と、を有する。第1開口部A1は、右側の周壁11a、前側の周壁11b、後側の周壁11b、及び、壁部11cによって画成されている。換言すると、右側の周壁11a、前側の周壁11b、後側の周壁11b、及び、壁部11cによって囲まれて画成された開口が第1開口部A1である。同様に、第2開口部A2は、左側の周壁11a、前側の周壁11b、後側の周壁11b、及び、壁部11dによって画成される。換言すると、左側の周壁11a、前側の周壁11b、後側の周壁11b、及び、壁部11dによって囲まれて画成された開口が第2開口部A2である。
【0026】
図1~
図2及び
図4に示すように、右側の周壁11a及び壁部11cの上端部には、第1カバー20の後述する係合突部23と係合される被係合部12が設けられている。被係合部12は、本例では、周壁11a及び壁部11cにそれぞれ2つずつ設けられている。
【0027】
被係合部12について、
図4を参照してフレーム10の右側の被係合部12を例に説明する。被係合部12は、前側及び周壁11a側に開口する略半矩形筒状の形状を有する。具体的には、被係合部12が有する基端部121、規制部122、ガイド部123、及び、奥部124によって略半矩形筒状の形状が構成される。
【0028】
基端部121は、周壁11aから外側に向かって突出している。基端部121の上側には、後述するフレーム10と第1カバー20との組付状態において、第1カバー20の係合突部23が位置することになる。
【0029】
規制部122は、周壁11aと対向するように基端部121から上側に向かって突出している。規制部122は、後述するフレーム10と第1カバー20との組付工程において、第1カバー20の係合突部23の外側への変位を規制することになる。
【0030】
ガイド部123は、基端部121と対向するように前後方向に延びる。ガイド部123は、規制部122及び奥部124と連続する。ガイド部123は、特に
図7に示すように、前端から後端に向けて、基端部121に対して近付くように傾斜する第1傾斜箇所123aと、基端部121に対して近付くように、第1傾斜箇所123aよりも大きく傾斜する第2傾斜箇所123bと、基端部121と略平行な平行箇所123cと、から構成される。つまり、ガイド部123は、前端が後端よりも基端部121から離れた位置に位置している。
【0031】
なお、基端部121に対して近付くように傾斜するとは、第1傾斜箇所123aが基端部121と角度をなすように傾斜していることを表す。第1傾斜箇所123aよりも大きく傾斜するとは、第2傾斜箇所123bと基端部121とのなす角度が、第1傾斜箇所123aと基端部121とのなす角度よりも大きいことを表す。
【0032】
ガイド部123は、このように第1傾斜箇所123a、第2傾斜箇所123b、及び、平行箇所123cから構成されることにより、後述するフレーム10と第1カバー20との組付工程において、第1カバー20の係合突部23を基端部121に近づけるように案内できる。
【0033】
奥部124は、前後方向の後側において、基端部121と規制部122とガイド部123と連続して設けられている。なお、ガイド部123の左側端部及び奥部124の左側端部と、周壁11aと、の間には、空隙S1が画成される。空隙S1には、後述するフレーム10と第1カバー20との組付状態において第1カバー20の周壁21aが位置することになる。
【0034】
左側の被係合部12は、前側及び壁部11c側に開口する略半矩形筒状の形状を有する。基端部121は、壁部11cから外側に向かって突出し、規制部122は、壁部11cと対向するように基端部121から上側に向かって突出している。左側の被係合部12においては、空隙S1は、ガイド部123の右側端部及び奥部124の右側端部と、壁部11cと、の間に画成される。フレーム10の左側の被係合部12は、上記を除いて右側の被係合部12と同様に構成される。
【0035】
図2に示すように、周壁11の下端部には、ロアカバー40の係合部43と係合される被係合部13が設けられている。例えば、ロアカバー40が上下方向に沿ってフレーム10に近づくように移動されることにより、被係合部13が係合部43と係合されて、フレーム10にロアカバー40が組み付けられる。なお、フレーム10とロアカバー40との組付方法はこれに限るものではない。
【0036】
以上が、フレーム10についての説明である。
【0037】
次いで、第1カバー20について説明する。第1カバー20は、
図3に示すように、上下方向に延びる略矩形筒状の周壁21と、周壁21の上端開口部を塞ぐ略矩形平板状の上壁22と、を一体に有する。周壁21は、周方向の長手側にある(即ち、前後方向に延びる)周壁21a、及び、周方向の短手側にある(即ち、左右方向に延びる)周壁21bから構成される。
【0038】
特に
図5(b)に示すように、周壁21aは、内外方向の内側に位置する略矩形筒状の内壁部211aと、内壁部211aに対して周方向全域に亘って所定距離だけ外側に位置する略矩形筒状の外壁部212aと、からなる。
【0039】
同様に、周壁21bは、内外方向の内側に位置する略矩形筒状の内壁部(不図示)と、内壁部に対して周方向全域に亘って所定距離だけ外側に位置する略矩形筒状の外壁部(不図示)と、からなる。つまり、周壁21は、内壁部及び外壁部とからなる二重壁構造を有する。
【0040】
図3に示すように、周壁21a(具体的には、外壁部212a)の下端部には、外側に向かって突出する係合突部23が設けられている。係合突部23は、右側及び左側の周壁21aにそれぞれ2つずつ設けられ、複数の係合突部23は複数の被係合部12と対応する位置にそれぞれ設けられている。
【0041】
図3及び
図7に示すように、係合突部23は、略矩形柱状の形状を有しており、係合突部23の上端面が、後端から所定距離だけ離れた箇所から後端部23aに向かうに連れて、下端面に近付くように傾斜している。このように、係合突部23の上端面が傾斜面を有することで、後述するフレーム10と第1カバー20との組付工程において、係合突部23が被係合部12のガイド部123に案内されやすくなる。
【0042】
以上が、第1カバー20についての説明である。
【0043】
次いで、第2カバー30について説明する。第2カバー30は、
図2に示すように、上下方向に延びる略矩形筒状の周壁31と、周壁21の上端開口部を塞ぐ略矩形平板上の上壁32と、を一体に有する。
図1に示すように、第2カバー30は、フレーム10の第2開口部A2を覆うようにフレーム10に組み付けられる。
【0044】
第2カバー30の周壁31に係合部(不図示)が設けられて、その係合部が第2カバー30の係合部に対応するフレーム10の被係合部(不図示)と係合される。一例として、第2カバー30がフレーム10に近付くように上下方向に沿って移動されることにより、第2カバー30の係合部とフレーム10の被係合部とが係合されて、第2カバー30がフレーム10に組み付けられる。なお、第2カバー30とフレーム10との組付方法はこれに限るものではない。
【0045】
以上が、第2カバー30についての説明である。
【0046】
次いで、フレーム10と第1カバー20との組付状態について説明する。フレーム10と第1カバー20との組付状態とは、
図1に示す態様であり、フレーム10の被係合部12と第1カバー20の係合突部23とが係合された状態である(
図7(c)参照)。
【0047】
図5に示すように、フレーム10と第1カバー20との組付状態においては、フレーム10の周壁11aは、第1カバー20の内壁部211a及び外壁部212aの間に位置する。同様に、周方向の短手側にある周壁11b(
図6(c)参照)は、周壁21bを構成する内壁部及び外壁部の間に位置する。このとき、外壁部212aは、空隙S1に位置している。
【0048】
図6(b)及び
図8に示すように、フレーム10と第1カバー20との組付状態においては、フレーム10の周方向の短手側の周壁11b及び第1カバー20の周方向の短手側の周壁21b(具体的には、短手側の外壁部)とが係り合っている。
【0049】
同様に、フレーム10と第1カバー20との組付状態においては、フレーム10の周方向の長手側の周壁11a及び第1カバー20の周方向の長手側の周壁21a(具体的には、長手側の外壁部212a)とが係り合っている。
【0050】
以上が、フレーム10と第1カバー20との組付状態についての説明である。
【0051】
次いで、フレーム10と第1カバー20との組付工程について説明する。フレーム10と第1カバー20との組付工程とは、第1カバー20を第1開口部A1の開口面に沿う組付向きに移動させることで、複数の係合突部23と複数の被係合部12とがそれぞれ係合されて、第1カバー20がフレーム10に装着される工程である。
【0052】
なお、第1カバー20のフレーム10への組付向きとは、前後方向における前側から後側へ向かう向きである。
【0053】
まず、第1カバー20がフレーム10の前方且つ上側に位置するように、フレーム10及び第1カバー20を配置する。そして、フレーム10及び第1カバー20を前後方向に近付けて、第1カバー20の係合突部23がフレーム10の被係合部12の前端に位置するように、且つ、係合突部23の後端部23aが被係合部12のガイド部123の第1傾斜箇所123aと当接されるように、フレーム10と第1カバー20との組み付けが開始される。
【0054】
第1カバー20の組付向きへの移動を続けると、
図7(a)に示すように、係合突部23は、ガイド部123の第1傾斜箇所123aによって下側に向かって少しずつ案内され、且つ、ガイド部123の第2傾斜箇所123bへと到達する。具体的には、係合突部23の傾斜面が、第1傾斜箇所123aに沿って滑りながら、係合突部23が下側に向かって案内される。
【0055】
更に、第1カバー20の組付向きへの移動を続けると、
図7(b)に示すように、係合突部23は、ガイド部123の第2傾斜箇所123bによって更に下側に向かって案内される。つまり、係合突部23の傾斜面が第2傾斜箇所123bに沿って滑りながら、係合突部23が更に下側に向かって案内される。
【0056】
そして、係合突部23の後端が第2傾斜箇所123bを通過して更に所定距離だけ組付向きに移動すると、第1カバー20の周壁21bの外壁部がフレーム10の周壁11bを乗り越えて周壁11bよりも後方に移動するとともに、周壁21bの外壁部が周壁11bの外側に嵌め合わされるように(
図8参照)、且つ、周壁21bの内壁部が周壁11bの内側に位置するように(不図示)、第1カバー20がフレーム10に装着される。換言すると、被係合部12と係合突部23との係合が完了する。このとき、係合突部23の後端部23aと奥部124との間に空隙S2が設けられた状態にて、係合突部23が被係合部12の基端部121上に位置する(
図6(a)及び
図7(c)参照)。
【0057】
つまり、上述した工程では、ガイド部123が、第1カバー20の組付向きへの移動に伴って第1カバー20を下向きに押圧するように、係合突部23を案内している。これにより、
図1に示すようなフレーム10と第1カバー20との組付状態が実現される。
【0058】
このとき、
図8に示すように、樹脂構造体1の後側では、周壁11bの外周面15及び周壁21bの外壁部の内周面25が係り合っている。これにより、フレーム10と第1カバー20との組付後に、第1カバー20のフレーム10に対する前側への意図しない変位が抑制される。
【0059】
図6(b)に示すように、樹脂構造体1の前側では、後側と同様に、周壁11bの外周面及び周壁21bの外壁部の内周面25が係り合っている。これにより、第1カバー20のフレーム10に対する後側への変位が抑制される。
【0060】
以上が、フレーム10と第1カバー20との組付工程についての説明である。
【0061】
次いで、フレーム10と第1カバー20との組付解除工程について説明する。フレーム10と第1カバー20との組付解除工程とは、第1カバー20を第1開口部A1の開口面に沿う組付向きの逆向きに移動させることで、複数の係合突部23と複数の被係合部12との係合が解除されて、第1カバー20がフレーム10から分離される工程である。
【0062】
なお、第1カバー20のフレーム10への組付向きの逆向きとは、前後方向における後側から前側へ向かう向きである。
【0063】
一例として、まず、被係合部12の基端部121と係合突部23との間に治具等(不図示)を挿入する。そして、係合突部23を被係合部12のガイド部123の平行箇所123cに近付くように持ち上げる。
【0064】
換言すると、周壁11bの外周面15と周壁21bの外壁部の内周面25との係り合い(
図8参照)を外すまで、第1カバー20がフレーム10から離れるように、第1カバー20を上側に持ち上げる。
【0065】
そして、第1カバー20を組付向きの逆向きに移動させることで、係合突部23は、ガイド部123の第2傾斜箇所123bに到達し、更に移動を続けると、第1傾斜箇所123aへと到達する。
【0066】
そして、係合突部23の後端部23aが第1傾斜箇所123aを通過すると、第1カバー20がフレーム10から分離される。つまり、フレーム10及び第1カバー20は、上述した工程を経て、組付状態が解除される。換言すると、被係合部12と係合突部23との係合が解除される。
【0067】
ほかにも、以下の2つの工程を行ってから第1カバー20を持ち上げてもよい。第1カバー20の前側をフレーム10から離れるように持ち上げて、樹脂構造体1の前側にて、周壁11bの外周面15及び周壁21bの外壁部の内周面25が係り合いを解除する。そして、第1カバー20を空隙S2の分だけ後側へ移動させて、樹脂構造体1の後側における周壁11bの外周面15及び周壁21bの外壁部の内周面25の係り合いを解除する。
【0068】
上述した2つの工程を行うことによって、より容易にフレーム10と第1カバー20との組付状態が解除される。なお、フレーム10と第1カバー20との組付解除工程は、上これに限られるものではない。
【0069】
以上が、フレーム10と第1カバー20との組付解除工程についての説明である。
【0070】
<作用・効果>
本実施形態に係る樹脂構造体1によれば、交換等のメンテナンスが必要な電子部品等を第1開口部A1側のフレーム10の内部に配置することでメンテナンスの作業が容易となる。更に、例えば、樹脂構造体1は、上側に他の部品が存在するように車両に搭載された場合でも、第1カバー20がフレーム10に対して前後方向に移動させるように構成されるため、第1カバー20のフレーム10に対する装着及び分離が容易に行える。
【0071】
更に、本実施形態に係る樹脂構造体1によれば、被係合部12が周壁11a及び壁部11cに設けられていることで、第1カバー20のフレーム10に対する位置決めが容易となる。このため、樹脂構造体1は、第1カバー20をフレーム10に対して容易に装着及び分離できる。
【0072】
更に、本実施液体に係る樹脂構造体1によれば、被係合部12は、第1カバー20の組付向きへの移動に伴って第1カバー20をフレーム10に近付く向き(即ち、下向き)に押圧するように、係合突部23を案内する。このため、第1カバー20を第1開口部A1の開口面に沿う組付向きに移動させるだけで、第1カバー20がフレーム10に容易に装着される。
【0073】
この結果、本実施形態に係る樹脂構造体1は、従来の電気接続箱に比べて、車両等への搭載後のメンテナンスの作業性に優れる。
【0074】
<他の形態>
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0075】
ここで、上述した本発明に係る樹脂構造体の実施形態の特徴をそれぞれ以下[1]~[3]に簡潔に纏めて列記する。
[1]
第1開口部及び前記第1開口部と隣り合う第2開口部を有する樹脂体(フレーム10)と、前記第1開口部を覆うように前記樹脂体に装着及び分離可能に組み付けられる第1カバー(20)と、前記第2開口部を覆うように前記樹脂体に組み付けられる第2カバー(30)と、を備えた樹脂構造体(1)であって、
前記第1カバー(20)は、
前記第2カバー側の壁部(左側の周壁21a:
図1参照)、及び、前記第1開口部を挟んで前記第2カバー側の前記壁部の逆側の壁部(右側の周壁21a:
図1参照)の各々に設けられる複数の係合突部(23)を有し、
前記樹脂体(フレーム10)は、
前記複数の前記係合突部の各々に対応する位置に、前記複数の前記係合突部とそれぞれ係合される複数の被係合部(12)を有し、
当該樹脂構造体(1)は、
前記第1カバー(20)を前記第1開口部(A1)の開口面に沿う組付向きに移動させることにより、前記複数の前記係合突部(23)と前記複数の前記被係合部(12)とがそれぞれ係合されて、前記第1カバー(20)が前記樹脂体(フレーム10)に装着され、且つ、
前記第1カバー(20)を前記開口面に沿う前記組付向きの逆向きに移動させることにより、前記複数の前記係合突部(23)と前記複数の前記被係合部(12)との係合が解除されて、前記第1カバー(20)が前記樹脂体(フレーム10)から分離する、ように構成される、
樹脂構造体(1)。
[2]
上記[1]に記載の樹脂構造体(1)において、
前記複数の前記被係合部(12)は、
前記第1開口部(A1)を画成する前記樹脂体(フレーム10)の壁部(周壁11a,壁部11c)に設けられている、
樹脂構造体(1)。
[3]
上記[1]又は上記[2]に記載の樹脂構造体(1)において、
前記複数の前記被係合部(12)は、
前記第1カバー(20)の前記組付向きへの移動に伴って前記第1カバー(20)を前記組付向きに交差して且つ前記樹脂体(フレーム10)に近付く向きに押圧するように、前記複数の前記係合突部(23)を案内する、ように構成される、
樹脂構造体(1)。
【符号の説明】
【0076】
1 樹脂構造体
10 フレーム(樹脂体)
11,11a,11b 周壁
11c,11d 壁部
12,13 被係合部
15 外周面
20 第1カバー
21,21a,21b 周壁
22 上壁
23 係合突部
23a 後端部
25 内周面
30 第2カバー
31 周壁
32 上壁
40 ロアカバー
41 周壁
42 底壁
43 係合部
121 基端部
122 規制部
123 ガイド部
123a 第1傾斜箇所
123b 第2傾斜箇所
123c 平行箇所
124 奥部
211a 内壁部
212a 外壁部
A1 第1開口部
A2 第2開口部
S1,S2 空隙