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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】建設機械の油圧駆動システム
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/22 20060101AFI20241016BHJP
【FI】
E02F9/22 K
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021050588
(22)【出願日】2021-03-24
(65)【公開番号】P2022148775
(43)【公開日】2022-10-06
【審査請求日】2023-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】398071668
【氏名又は名称】株式会社日立建機ティエラ
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】森 和繁
(72)【発明者】
【氏名】高橋 究
(72)【発明者】
【氏名】古東 宥輝
【審査官】小倉 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-227715(JP,A)
【文献】特開2000-273913(JP,A)
【文献】特許第6463537(JP,B1)
【文献】特開2018-150728(JP,A)
【文献】特開2004-197901(JP,A)
【文献】特開2015-190587(JP,A)
【文献】特開2013-068011(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0145433(US,A1)
【文献】特開2020-169708(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定容量型で両吐出型の複数の油圧ポンプと、
前記複数の油圧ポンプのそれぞれに閉回路で接続された複数の油圧アクチュエータと、
前記複数の油圧ポンプをそれぞれ駆動する複数の電動モータと、
前記複数の油圧アクチュエータによって駆動される複数の被駆動体のそれぞれの動作を指示する複数の操作装置とを備えた建設機械の油圧駆動システムにおいて、
前記複数の油圧ポンプのそれぞれの吐出圧を検出する複数の圧力センサと、
前記複数の操作装置のそれぞれの操作量を検出する複数の操作センサと、
前記複数の電動モータを制御するコントローラとを備え、
前記コントローラは、
前記複数の油圧アクチュエータのうち、少なくとも2つの特定の油圧アクチュエータが同時に駆動されるよう前記少なくとも2つの特定の油圧アクチュエータに対応する操作装置が操作されたとき、前記複数の圧力センサによって検出された前記複数の油圧ポンプのそれぞれの吐出圧と前記複数の操作センサによって検出された前記複数の操作装置のそれぞれの操作量とに基づいて、前記複数の油圧ポンプのうち前記少なくとも2つの特定の油圧アクチュエータに対応する油圧ポンプの消費動力が予め設定したポンプ動力を超えないよう、前記複数の電動モータのうち前記少なくとも2つの特定の油圧アクチュエータに対応する電動モータの回転数を制御するとともに、
前記コントローラは、
前記ポンプ動力に加え、前記少なくとも2つの特定の油圧アクチュエータに対応する油圧ポンプの容量に等しいポンプ設定容量を予め設定しており
記複数の圧力センサによって検出された前記少なくとも2つの特定の油圧アクチュエータに対応する油圧ポンプの吐出圧と、前記ポンプ動力と、前記ポンプ設定容量とに基づいて、前記少なくとも2つの特定の油圧アクチュエータに対応する電動モータの回転数制限値を演算し、
前記複数の操作センサによって検出された前記少なくとも2つの特定の油圧アクチュエータに対応する操作装置の操作量に基づいて前記少なくとも2つの特定の油圧アクチュエータに対応する電動モータの第1目標回転数を演算し、
前記回転数制限値を超えないよう前記少なくとも2つの特定の油圧アクチュエータに対応する電動モータの前記第1目標回転数を補正して前記少なくとも2つの特定の油圧アクチュエータに対応する電動モータの第2目標回転数を演算し、前記第2目標回転数に基づいて前記少なくとも2つの特定の油圧アクチュエータに対応する電動モータの回転数を制御することを特徴とする建設機械の油圧駆動システム。
【請求項2】
請求項記載の建設機械の油圧駆動システムにおいて、
前記少なくとも2つの特定の油圧アクチュエータは、前記複数の被駆動体の一部であるブームを駆動するブームシリンダと、前記複数の被駆動体の一部であるアームを駆動するアームシリンダと、前記複数の被駆動体の一部であるバケットを駆動するバケットシリンダとを含み、
前記複数の油圧ポンプは、前記ブームシリンダに圧油を供給するブームポンプと、前記アームシリンダに圧油を供給するアームポンプと、前記バケットシリンダに圧油を供給するバケットポンプとを含み、
前記複数の電動モータは、前記ブームポンプを駆動するブーム電動モータと、前記アームポンプを駆動するアーム電動モータと、前記バケットポンプを駆動するバケット電動モータとを含み、
前記複数の操作装置は、前記ブームの動作を指示するブーム操作装置と、前記アームの動作を指示するアーム操作装置と、前記バケットの動作を指示するバケット操作装置とを含み、
前記コントローラは、
前記ブームポンプの吐出圧、前記アームポンプの吐出圧及び前記バケットポンプの吐出圧と、前記ポンプ動力及び前記ポンプ設定容量とに基づいて、前記ポンプ設定容量と等しいポンプ容量を有する仮想ポンプの回転数を演算し、更にこの仮想ポンプの回転数に基づいて前記回転数制限値として第1回転数制限値を演算し、
前記ブーム操作装置の操作量と、前記アーム操作装置の操作量と、前記バケット操作装置の操作量とに基づいて、前記第1目標回転数として、前記ブーム電動モータの第1目標回転数と、前記アーム電動モータの第1目標回転数と、前記バケット電動モータの第1目標回転数とを演算し、
前記第1回転数制限値を超えないよう前記ブーム電動モータの前記第1目標回転数と、前記アーム電動モータの前記第1目標回転数と、前記バケット電動モータの前記第1目標回転数とを補正して、前記第2目標回転数として、前記ブーム電動モータの第2目標回転数と、前記アーム電動モータの第2目標回転数と、前記バケット電動モータの第2目標回転数とを演算し、前記ブーム電動モータの前記第2目標回転数と、前記アーム電動モータの前記第2目標回転数と、前記バケット電動モータの前記第2目標回転数とに基づいて、前記ブーム電動モータ、前記アーム電動モータ及び前記バケット電動モータのそれぞれの回転数を制御することを特徴とする建設機械の油圧駆動システム。
【請求項3】
請求項記載の建設機械の油圧駆動システムにおいて、
前記コントローラは、前記ブームポンプの吐出圧及び前記バケットポンプの吐出圧と、前記ブーム操作装置の操作量及び前記バケット操作装置の操作量とのいずれかに基づいて、前記ブームシリンダ及び前記バケットシリンダが駆動されているかどうかを判定し、その判定結果に基づいて現在駆動中のアクチュエータ数を演算し、
前記ブーム電動モータの前記第2目標回転数と、前記バケット電動モータの前記第2目標回転数のそれぞれを前記アクチュエータ数で除算して前記ブーム電動モータの第3目標回転数と前記バケット電動モータの第3目標回転数とを演算し、前記ブーム電動モータの前記第3目標回転数と前記バケット電動モータの前記第3目標回転数に基づいて前記ブーム電動モータ及び前記バケット電動モータのそれぞれの回転数を制御することを特徴とする建設機械の油圧駆動システム。
【請求項4】
請求項記載の建設機械の油圧駆動システムにおいて、
前記複数の油圧アクチュエータは、更に、前記複数の被駆動体の1つである旋回体を駆動する旋回モータを含み、
前記複数の油圧ポンプは、更に、前記旋回モータに圧油を供給する旋回ポンプを含み、
前記複数の電動モータは、更に、前記旋回ポンプを駆動する旋回電動モータを含み、
前記複数の操作装置は、更に、前記旋回体の動作を指示する旋回操作装置を含み、
前記コントローラは、
前記旋回操作装置の操作量に基づいて前記旋回電動モータの第1目標回転数を演算し、前記旋回電動モータの第1目標回転数に基づいて、前記旋回電動モータの回転数を制御し、
前記旋回ポンプの吐出圧に基づいて前記吐出圧が上昇するにしたがって減少する第1回転数低減割合を演算し、
前記仮想ポンプの回転数に前記第1回転数低減割合を乗算して前記第1回転数制限値を演算することを特徴とする建設機械の油圧駆動システム。
【請求項5】
請求項記載の建設機械の油圧駆動システムにおいて、
前記少なくとも2つの特定の油圧アクチュエータは、更に、前記複数の被駆動体の一部であるクローラタイプの左走行装置及び右走行装置を駆動する左走行モータ及び右走行モータを含み、
前記複数の油圧ポンプは、更に、前記左走行モータに圧油を供給する左走行ポンプと、前記右走行モータに圧油を供給する右走行ポンプとを含み、
前記複数の電動モータは、更に、前記左走行ポンプを駆動する左走行電動モータと、前記右走行ポンプを駆動する右走行電動モータとを含み、
前記複数の操作装置は、更に、前記左走行装置の動作を指示する左走行操作装置と、前記右走行装置の動作を指示する右走行操作装置とを含み、
前記コントローラは、
前記左走行ポンプの吐出圧及び前記右走行ポンプの吐出圧と、前記ポンプ動力及び前記ポンプ設定容量とに基づいて、前記ポンプ設定容量に等しいポンプ容量を有する仮想ポンプの回転数を演算し、更にこの仮想ポンプの回転数に基づいて前記回転数制限値として第2回転数制限値を演算し、
前記左走行操作装置の操作量と、前記右走行操作装置の操作量とに基づいて、前記第1目標回転数として、前記左走行電動モータの第1目標回転数と、前記右走行電動モータの第1目標回転数とを演算し、
前記第2回転数制限値を超えないよう前記左走行電動モータの前記第1目標回転数と、前記右走行電動モータの前記第1目標回転数とを補正して、前記第2目標回転数として、前記左走行電動モータの第2目標回転数と、前記右走行電動モータの第2目標回転数とを演算し、前記左走行電動モータの前記第2目標回転数と前記右走行電動モータの前記第2目標回転数とに基づいて、前記左走行電動モータ及び前記右走行電動モータのそれぞれの回転数を制御することを特徴とする建設機械の油圧駆動システム。
【請求項6】
請求項記載の建設機械の油圧駆動システムにおいて、
前記複数の油圧アクチュエータは、更に、前記複数の被駆動体の1つである旋回体を駆動する旋回モータを含み、
前記複数の油圧ポンプは、更に、前記旋回モータに圧油を供給する旋回ポンプを含み、
前記複数の電動モータは、更に、前記旋回ポンプを駆動する旋回電動モータを含み、
前記複数の操作装置は、更に、前記旋回体の動作を指示する旋回操作装置を含み、
前記コントローラは、
前記旋回操作装置の操作量に基づいて前記旋回電動モータの第1目標回転数を演算し、前記旋回電動モータの第1目標回転数に基づいて、前記旋回電動モータの回転数を制御し、
前記ブームポンプの吐出圧と前記アームポンプの吐出圧と前記バケットポンプの吐出圧と前記旋回ポンプの吐出圧のうちの最大圧力が上昇するにしたがって減少する第2回転数低減割合を演算し、
前記仮想ポンプの回転数に前記第2回転数低減割合を乗算して前記第2回転数制限値を演算することを特徴とする建設機械の油圧駆動システム。
【請求項7】
請求項記載の建設機械の油圧駆動システムにおいて、
前記複数の油圧アクチュエータは、更に、前記複数の被駆動体の一部である旋回体、スイングポスト及びブレードを駆動する旋回モータ、スイングシリンダ及びブレードシリンダを含み、
前記複数の油圧ポンプは、更に、前記旋回モータに圧油を供給する旋回ポンプと、前記スイングシリンダに圧油を供給するスイングポンプと、前記ブレードシリンダに圧油を供給するブレードポンプとを含み、
前記複数の電動モータは、更に、前記旋回ポンプを駆動する旋回電動モータと、前記スイングポンプを駆動するスイング電動モータと、前記ブレードポンプを駆動するブレード電動モータと含み、
前記複数の操作装置は、更に、前記旋回体の動作を指示する旋回操作装置と、前記スイングポストの動作を指示するスイング操作装置と、前記ブレードの動作を指示するブレード操作装置と含み、
前記コントローラは、
前記旋回操作装置の操作量と、前記スイング操作装置の操作量と、前記ブレード操作装置の操作量とに基づいて前記旋回電動モータの第1目標回転数と、前記スイング電動モータの第1目標回転数と、前記ブレード電動モータの第1目標回転数とを演算し、前記旋回電動モータの前記第1目標回転数と、前記スイング電動モータの前記第1目標回転数と、前記ブレード電動モータの前記第1目標回転数とに基づいて、前記旋回電動モータ、前記スイング電動モータ及び前記ブレード電動モータのそれぞれの回転数を制御し、
前記旋回ポンプの吐出圧、前記スイングポンプの吐出圧及び前記ブレードポンプの吐出圧と、前記旋回操作装置の操作量、前記スイング操作装置の操作量及び前記ブレード操作装置の操作量とのいずれかに基づいて、前記旋回モータ、前記スイングシリンダ及び前記ブレードシリンダが駆動されているかどうかを判定し、その判定結果に基づいて現在駆動中のアクチュエータ数を演算し、
前記旋回電動モータの前記第1目標回転数と、前記スイング電動モータの前記第1目標回転数と、前記ブレード電動モータの前記第1目標回転数のそれぞれを前記アクチュエータ数で除算して前記旋回電動モータの第2目標回転数と前記スイング電動モータの第2目標回転数と前記ブレード電動モータの第2目標回転数とを演算し、前記旋回電動モータの第2目標回転数と前記スイング電動モータの第2目標回転数と前記ブレード電動モータの第2目標回転数と基づいて前記旋回電動モータ、前記スイング電動モータ及び前記ブレード電動モータのそれぞれの回転数を制御することを特徴とする建設機械の油圧駆動システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベル等の建設機械の油圧駆動システムに係わり、特に、複数の油圧アクチュエータと両吐出型で固定容量型の複数の油圧ポンプとがそれぞれ複数の閉回路を形成するように接続された建設機械の油圧駆動システムに関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベル等の建設機械の油圧駆動システムとして、複数の油圧アクチュエータと両吐出型で固定容量型の複数の油圧ポンプとがそれぞれ複数の閉回路を形成するように接続され、複数の油圧ポンプがそれぞれ複数の電動モータによって駆動される閉回路型の油圧駆動システムが、例えば特許文献1の図1及び図6に記載されている。
【0003】
また、油圧ショベル等の建設機械の油圧駆動システムとして、2つの可変容量型の第1及び第2油圧ポンプと、1つの固定容量型の第3油圧ポンプの3つのポンプを備え、第1~第3油圧ポンプがそれぞれ複数のオープンセンタ型の方向切換弁を介して異なる複数の油圧アクチュエータに接続され、それぞれの複数のアクチュエータを駆動するようにした開回路型の3ポンプシステムが、例えば特許文献2に記載されている。
【0004】
特許文献2に記載の3ポンプシステムおいて、第1及び第2油圧ポンプは共通のレギュレータを備え、レギュレータは、第1及び第2油圧ポンプの吐出圧に加えて第3油圧ポンプの吐出圧も導かれ、第1~第3油圧ポンプのいずれの吐出圧が上昇した場合でも、第1及び第2油圧ポンプの流量を減少させて第1及び第2油圧ポンプのそれぞれの吸収馬力を減少させる馬力制御を行い、エンジンへの過負荷を防止するようになっている。
【文献】WO2013-105357号公報
【文献】特許第6619314号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
油圧ショベル等の建設機械には、油圧駆動システムとして、従来では一般的に、特許文献2に記載のような開回路型の3ポンプシステムが搭載されている。
【0006】
これに対し、近年、省エネルギー化の観点から、特許文献1に記載されているような閉回路型の油圧駆動システムの開発が進められている。閉回路型の油圧システムは、油圧ポンプを油圧アクチュエータに直接接続して閉回路を形成し、油圧ポンプによって油圧アクチュエータを直接駆動するため、オープンセンタ型の方向切換弁による圧損や分流リークが無く、省エネルギー化を実現することができる。
【0007】
しかし、特許文献1に記載されている閉回路型の油圧駆動システムでは、複数の油圧アクチュエータの同時駆動時に、複数の油圧アクチュエータの負荷が増大したとき、複数の油圧ポンプの吐出圧の上昇とともに、それぞれのポンプ動力が増大し、消費動力が増大してしまう。
【0008】
また、特許文献2に記載されている開回路型の3ポンプシステムでは、複数の油圧アクチュエータの同時駆動時に、複数の油圧アクチュエータのいずれかの負荷が増大し、油圧ポンプの吐出圧が上昇したとき、馬力制御により複数の油圧ポンプのそれぞれの吐出流量を減少させ、その減少した流量の圧油が複数の油圧アクチュエータに供給される。これにより、複数の油圧アクチュエータの駆動速度が共に低下し、複数の油圧アクチュエータ間の速度バランスが確保され、良好な複合操作性が得られる。
【0009】
これに対し、特許文献1に記載されている閉回路型の油圧駆動システムでは、仮に油圧ポンプの制御に馬力制御を適用したとしても、複数の油圧アクチュエータの同時駆動時に、複数の油圧アクチュエータのいずれかの油圧アクチュエータの負荷が増大し、油圧ポンプの吐出圧が上昇したとき、負荷が上昇した油圧アクチュエータの油圧ポンプの吐出流量だけが減少してしまい、複数の油圧アクチュエータ間の速度バランスが崩れ、複合操作性が悪化してしまう。
【0010】
本発明の目的は、複数の油圧アクチュエータの同時駆動時に、油圧ポンプの消費動力を低減し、かつ複数の油圧アクチュエータ間の良好な速度バランスを確保し、良好な複合操作性を得ることができる閉回路型の建設機械の油圧駆動システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明は、固定容量型で両吐出型の複数の油圧ポンプと、前記複数の油圧ポンプのそれぞれに閉回路で接続された複数の油圧アクチュエータと、前記複数の油圧ポンプをそれぞれ駆動する複数の電動モータと、前記複数の油圧アクチュエータによって駆動される複数の被駆動体のそれぞれの動作を指示する複数の操作装置とを備えた建設機械の油圧駆動システムにおいて、前記複数の油圧ポンプのそれぞれの吐出圧を検出する複数の圧力センサと、前記複数の操作装置のそれぞれの操作量を検出する複数の操作センサと、前記複数の電動モータを制御するコントローラとを備え、前記コントローラは、前記複数の油圧アクチュエータのうち、少なくとも2つの特定の油圧アクチュエータが同時に駆動されるよう前記少なくとも2つの特定の油圧アクチュエータに対応する操作装置が操作されたとき、前記複数の圧力センサによって検出された前記複数の油圧ポンプのそれぞれの吐出圧と前記複数の操作センサによって検出された前記複数の操作装置のそれぞれの操作量とに基づいて、前記複数の油圧ポンプのうち前記少なくとも2つの特定の油圧アクチュエータに対応する油圧ポンプの消費動力が予め設定したポンプ動力を超えないよう、前記複数の電動モータのうち前記少なくとも2つの特定の油圧アクチュエータに対応する電動モータの回転数を制御するとともに、前記コントローラは、前記ポンプ動力に加え、前記少なくとも2つの特定の油圧アクチュエータに対応する油圧ポンプの容量に等しいポンプ設定容量を予め設定しており、前記複数の圧力センサによって検出された前記少なくとも2つの特定の油圧アクチュエータに対応する油圧ポンプの吐出圧と、前記ポンプ動力と、前記ポンプ設定容量とに基づいて、前記少なくとも2つの特定の油圧アクチュエータに対応する電動モータの回転数制限値を演算し、前記複数の操作センサによって検出された前記少なくとも2つの特定の油圧アクチュエータに対応する操作装置の操作量に基づいて前記少なくとも2つの特定の油圧アクチュエータに対応する電動モータの第1目標回転数を演算し、前記回転数制限値を超えないよう前記少なくとも2つの特定の油圧アクチュエータに対応する電動モータの前記第1目標回転数を補正して前記少なくとも2つの特定の油圧アクチュエータに対応する電動モータの第2目標回転数を演算し、前記第2目標回転数に基づいて前記少なくとも2つの特定の油圧アクチュエータに対応する電動モータの回転数を制御するものとする。
【0012】
これにより、開回路型の3ポンプシステムの馬力制御を模擬した制御を行うことが可能となり、油圧ポンプの消費動力を低減し、かつ複数の油圧アクチュエータ間の良好な速度バランスを確保し、良好な複合操作性を得ることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、開回路型の3ポンプシステムの馬力制御を模擬した制御を行うことが可能となり、油圧ポンプの消費動力を低減し、かつ複数の油圧アクチュエータ間の良好な速度バランスを確保し、良好な複合操作性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の油圧駆動システムが搭載される建設機械の代表例である油圧ショベルを示す図である。
図2】本発明の一実施形態に係わる建設機械の油圧駆動システムを示す図である。
図3】コントローラの演算内容を示す機能ブロック図である。
図3A】制限値演算部の演算内容の詳細を示す機能ブロック図である。
図3B】複合操作判定部の演算内容の詳細を示す機能ブロック図である。
図3C】回転数演算部の演算内容の詳細を示す機能ブロック図である。
図4】テーブルに設定された回転数低減割合特性を示す図である。
図5】テーブルに設定された目標回転数特性を示す図である。
図6】開回路型の油圧駆動システムの一例である3ポンプシステムを示す図である。
図7】レギュレータのトルク制御(馬力制御)とバネにより得られるトルク制御特性(馬力制御特性)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に従い説明する。
【0016】
~建設機械(油圧ショベル)~
図1は、本発明の油圧駆動システムが搭載される建設機械の代表例である油圧ショベルを示す図である。
【0017】
図1において、油圧ショベルは、旋回体300と、走行体301と、フロント作業機302とを備え、フロント作業機302はブーム306、アーム307、バケット308を有している。旋回体300は走行体301の中央上部に旋回可能に搭載され、旋回モータ22の回転によって走行体301上を旋回する。旋回体300の前部にはスイングポスト303が取付けられ、このスイングポスト303にフロント作業機302が上下動可能に取付けられている。スイングポスト303はスイングシリンダ20(図2参照)の伸縮により旋回体300に対して水平方向に回動可能であり、フロント作業機302のブーム306、アーム307、バケット308はブームシリンダ17、アームシリンダ18、バケットシリンダ19の伸縮により上下方向に回動可能である。
【0018】
走行体301の中央フレームには、クローラタイプの左右の走行装置301a,301bと、ブレード304が取付けられている。左右の走行装置301a,301bはそれぞれ左右の走行モータ23,24により駆動され、走行を行う。ブレード304はブレードシリンダ21の伸縮により上下動作を行う。
【0019】
旋回体300には運転室350が形成され、運転室350内には、運転席351と、ブーム306、アーム307、バケット308、旋回体300の駆動を指示するレバー方式の左右の操作装置309,310が設けられている。
【0020】
また、運転室350内には、左右の走行装置301a,301bの駆動を指示するレバー/ペダル方式の左右の走行操作装置311,312と、スイングポスト303の駆動を指示するペダル方式のスイング操作装置313(図2参照)と、ブレード304の駆動を指示するレバー方式のブレード操作装置314(図2参照)とが設けられている。
【0021】
左右の操作装置309,310の操作レバーは、それぞれ、左右、前後の十字方向を基準として全方向に操作可能である。左操作装置309の操作レバーを左右方向に操作したとき、左操作装置309はアーム操作装置309-1(図2参照)として機能し、左操作装置309の操作レバーを前後方向に操作したとき、左操作装置309は旋回操作装置309-2(図2参照)として機能する。右操作装置310の操作レバーを前後方向に操作したとき、右操作装置310はブーム操作装置310-1(図2参照)として機能し、右操作装置310の操作レバーを左右方向に操作したとき、右操作装置310はバケット操作装置310-2(図2参照)として機能する。
【0022】
ここで、「左方向」及び「右方向」とは、運転席351に着座したオペレーターから見た左方向及び右方向を言い、「前方向」及び「後方向」とは、運転席351に着座したオペレーターから見た前方向及び後方向を言う。
【0023】
~油圧駆動システム1~
図2は、本発明の一実施形態に係わる建設機械の油圧駆動システムを示す図である。
【0024】
図2において、本実施形態に係わる油圧駆動システムは、ブームポンプ9、アームポンプ10、バケットポンプ11、スイングポンプ12、ブレードポンプ13、旋回ポンプ14、走行左ポンプ15及び走行右ポンプ16を含む固定容量型で両吐出型の複数の油圧ポンプ9~16と、複数の油圧ポンプ9~16のそれぞれに閉回路A~Hで接続された、前述したブームシリンダ17、アームシリンダ18、バケットシリンダ19、スイングシリンダ20、ブレードシリンダ21、旋回モータ22、走行左モータ23及び走行右モータ24を含む複数の油圧アクチュエータ17~24と、複数の油圧ポンプ9~16をそれぞれ駆動するブーム電動モータ1、アーム電動モータ2、バケット電動モータ3、スイング電動モータ4、ブレード電動モータ5、旋回電動モータ6、走行左電動モータ7及び走行右電動モータ8を含む複数の電動モータ1~8とを備えている。
【0025】
閉回路Aは、ブームポンプ9の2つの吐出ポートをブームシリンダ17のロッド側室79及びボトム側室80に接続する第1供給ライン(ボトム側管路ライン)41及び第2供給ライン(ロッド側管路ライン)42を備えている。閉回路B~Eも、同様に、アームポンプ10、バケットポンプ11、スイングポンプ12及びブレードポンプ13のそれぞれの2つの吐出ポートをアームシリンダ18、バケットシリンダ19、スイングシリンダ20及びブレードシリンダ21のロッド側室81,83,85,87及びボトム側室82,84,86,88に接続する第1供給ライン(ボトム側管路ライン)43,45,47,49及び第2供給ライン(ロッド側管路ライン)44,46,48,50を備えている。
【0026】
閉回路Fは、旋回ポンプ14の2つの吐出ポートを旋回モータ22の第1ポート89及び第2ポート90に接続する第1供給ライン51及び第2供給ライン52を備え、閉回路G,Hも、同様に、走行左ポンプ15及び走行右ポンプ16のそれぞれの2つの吐出ポートを走行左モータ23及び走行右モータ24の第1ポート91,93及び第2ポート92,94に接続する第1供給ライン53,55及び第2供給ライン54,56を備えている。
【0027】
また、閉回路Aは、第1供給ライン41と第2供給ライン42との間に接続されたリリーフバルブ25,26とシャトル弁95を備えている。閉回路B~Hも、同様に、第1供給ライン43,45,47,49,51,53,55と第2供給ライン44,46,48,50,52,54,56との間にそれぞれ接続されたリリーフバルブ27,28;29,30;31,32;33,34;35,36;37,38;39,40と、シャトル弁96,97,98,99,100,101,102とを備えている。
【0028】
リリーフバルブ25,26~39,40は、第1供給ライン41,43,45,47,49,51,53,55と第2供給ライン42,44,46,48,50,52,54,56の高圧側の供給ラインの圧力が設定圧力を超えると開弁して閉回路A~Hの最高負荷圧が設定圧力以上にならないように回路圧力を規制する。シャトル弁95~102は、第1供給ライン41,43,45,47,49,51,53,55と第2供給ライン42,44,46,48,50,52,54,56の高い方の圧力を選択して出力する。この出力圧は油圧ポンプ9~16の吐出圧として圧力センサ103~110(後述)によって検出される。
【0029】
閉回路Aは、更に、第1供給ライン41から分岐してタンク77へつながる第1タンクライン67と、第1タンクライン67に設けられ、タンク77から第1供給ライン41へ向かう流れは許容するが、その逆の流れは禁止するチェック弁57と、第2供給ライン42から分岐してタンク77へつながる第2タンクライン68と、第2タンクライン68に設けられ、タンク77から第2側供給ライン42へ向かう流れは許容する一方、第2供給ライン42からタンク77へ向かう流れに対しては、第1供給ライン41の圧力が設定圧力よりも小さいときは禁止し、設定圧力よりも大きいときは許容するオペレートチェック弁58とを備えている。
【0030】
閉回路B,C,D,Eも、同様に、第1タンクライン69,71,73,75、チェック弁59,61,63,65、第2タンクライン70,72,74,76、オペレートチェック弁60,62,64,66をそれぞれ備えている。
【0031】
ブームシリンダ17、アームシリンダ18、バケットシリンダ19、スイングシリンダ20、ブレードシリンダ21はそれぞれ片ロッド式の油圧シリンダである。片ロッド式の油圧シリンダは、ロッド側室とボトム側室とで受圧面積が異なり(ロッド側<ボトム側)、油圧ポンプからの圧油の供給により油圧シリンダを駆動するとき、その受圧面積差により、ロッド側室に流入する圧油とボトム側室から流出する圧油、或いはボトム側室に流入する圧油とロッド側室から流出する圧油に流量差が発生する。第1タンクライン67,69,71,73,75、チェック弁57,59,61,63,65、第2タンクライン68,70,72,74,76、オペレートチェック弁58,60,62,64,66は、その流量差分の余剰の圧油をタンク77に排出し、不足分の圧油をタンクから吸引することで、その流量差を吸収する。
【0032】
なお、ブームシリンダ17、アームシリンダ18及びバケットシリンダ19は、フロント作業機302の自重で伸長或いは収縮する場合があり、その場合でもオペレートチェック弁58,60,62を開くことで、ロッド側室とボトム側室とで受圧面積差に起因する余剰の圧油をタンク77に排出する必要がある。そのために、第1供給ライン41,43,45及び第2供給ライン42,44,46には、ブームシリンダ17、アームシリンダ18及びバケットシリンダ19がフロント作業機302の自重で収縮(或いは伸長)する場合に、第1供給ライン41,43,45(或いは第2供給ライン42,44,46)に所定の圧力を確保し、第2供給ライン42,44,46(或いは第1供給ライン41,43,45)の圧力を第1供給ライン41,43,45(或いは第2供給ライン42,44,46)の圧力より高くならないように抑制する、絞りとオペレートチェック弁を含む圧力調整機構が設けられている。また、その圧力調整機構を設けることにより、ブームシリンダ17、アームシリンダ18及びバケットシリンダ19がフロント作業機302の自重で収縮(或いは伸長)する場合であっても、シャトル弁95~97は油圧ポンプ9~11の吐出圧を検出し、圧力センサ103~105はその油圧ポンプ9~11の吐出圧を検出することができる。この圧力調整機構は、本出願人の日本特許出願である「特願2020-053376号」に詳しい。
【0033】
以上のように本実施形態の油圧駆動システムは、ブームシリンダ17を駆動するブーム用の閉回路A、アームシリンダ18を駆動するアーム用の閉回路B、バケットシリンダ19を駆動するバケット用の閉回路C、スイングシリンダ20を駆動するスイング用の閉回路D、ブレードシリンダ21を駆動するブレード用の閉回路E、旋回モータ22を駆動する旋回用の閉回路F、走行左モータ23を駆動する走行左用の閉回路G及び走行右モータを駆動する走行右用の閉回路Hを備えた閉回路型の油圧駆動システムとして構成されている。
【0034】
~油圧駆動システム2~
また、本実施形態の油圧駆動システムは、複数の油圧アクチュエータ19~24によって駆動される複数の被駆動体のそれぞれの動作を指示する複数の操作装置309-1~314と、複数の油圧ポンプ9~16のそれぞれの吐出圧を検出する複数の圧力センサ103~110と、複数の操作装置309~314のそれぞれの操作量を検出する複数の操作センサ209-1~214と、コントローラ78とを備えている。
【0035】
複数の被駆動体はブーム306、アーム307、バケット308、スイングポスト303、ブレード304、旋回体300、左右の走行装置301a,301bを含み、複数の操作装置309-1~314はブーム操作装置310-1、アーム操作装置309-1、バケット操作装置310-2、スイング操作装置313、ブレード操作装置314、旋回操作装置309-2、走行左操作装置311及び走行右操作装置312を含む。
【0036】
また、複数の圧力センサ103~110は、シャトル弁95~102から出力された油圧ポンプ9~16の吐出圧を検出し、圧力信号を生成するブーム圧力センサ103、アーム圧力センサ104、バケット圧力センサ105、スイング圧力センサ106、ブレード圧力センサ107、旋回圧力センサ108、走行左圧力センサ109、走行右圧力センサ110を含む。
【0037】
複数の操作装置309-1~314は、操作レバー/ペダルの操作量に応じた電気信号を生成する電気レバー方式であり、複数の操作センサは209-1~214、その電気信号を検出し、操作信号を生成する操作センサ209-1,209-2,210-1,210-2,211~214を含む。
【0038】
操作装置309-1~314は、従来一般的な操作パイロット圧を生成する油圧パイロット方式であってもよく、その場合は、操作センサとして操作パイロット圧を検出する圧力センサを設け、この圧力センサによって操作信号を生成すればよい。
【0039】
コントローラ78は、圧力センサ103~110からの圧力信号と、操作センサ209-1~214からの操作信号を入力し、所定の演算処理を行い、電動モータ1~8の目標回転数を演算し、電動モータ1~8の回転方向と回転数を制御する。
【0040】
本実施形態において、電動モータ1~8はサーボモータである。以下において、電動モータ1~8はサーボモータと言うことがある。
【0041】
~コントローラ78~
図3はコントローラ78の演算内容を示す機能ブロック図である。
【0042】
図3において、コントローラ78には圧力センサ103~110からの圧力信号と、操作装置309~314からの操作信号とが導かれる。
【0043】
コントローラ78は、圧力センサ103~110からの圧力信号から電動モータ1~8のうちブームシリンダ17、アームシリンダ18、バケットシリンダ19、走行左モータ23及び走行右モータ24(少なくとも2つの特定のアクチュエータ)に対応する電動モータであるサーボモータ1~3,7,8の回転数制限値Nlimita,Nlimitbを演算する制限値演算部78-1と、圧力センサ103,105~108からの圧力信号から複合操作を判定する複合操作判定部78-2と、操作装置309~314の操作信号に基づいてサーボモータ1~8の目標回転数を演算する回転数演算部78-3とを備えている。
【0044】
図3Aは、制限値演算部78-1の演算内容の詳細を示す機能ブロック図である。
【0045】
図3Aにおいて、制限値演算部78-1は、ブームポンプ9の吐出圧を検出する圧力センサ103(ブーム圧力センサ)とバケットポンプ11の吐出圧を検出する圧力センサ105(バケット圧力センサ)の圧力信号の圧力のうち高いほうの圧力を最大値選択部Maにおいて選択し、この選択した圧力と、アームポンプ10の吐出圧を検出する圧力センサ104(アーム圧力センサ)の圧力信号の圧力との平均値を平均値演算部Aaにおいて演算し、この平均圧力(N/m)と、予め設定したポンプ動力Hset(N・m/秒)と、数値「60」を用いて下記の式(1)により、当該演算圧力で圧油を吐出して当該ポンプ動力Hsetを消費する仮想の油圧ポンプのポンプ流量Qa(m/分)を演算する。次いで、そのポンプ流量Qaと、予め設定したポンプ設定容量Dset(L(リットル)/回転(rev))と、数値「1000」とを用いて、下記の式(2)により、当該ポンプ設定容量Dsetと等しいポンプ容量を有する仮想の油圧ポンプのポンプ回転数Na(rev/分)を演算する。
【0046】
ポンプ流量=(ポンプ動力Hset×60)÷圧力 ・ ・ ・ (1)
ポンプ回転数=(ポンプ流量×1000)÷ポンプ設定容量Dset ・ ・ ・(2)
ここで、本発明は、従来の3ポンプシステムの馬力制御(後述)を模擬するよう閉回路システムを動作させるものであり、「ポンプ動力Hset」は、その3ポンプシステムのポンプレギュレータで行う馬力制御の最大馬力H12max(HP)(後述)と等しい値に設定される。また、「ポンプ設定容量Dset」は、ブーム/アーム/バケットの油圧ポンプ9,10,11の容量と同じ値に設定される。
【0047】
制限値演算部78-1は、また、スイングポンプ12の吐出圧を検出する圧力センサ106(スイング圧力センサ)、ブレードポンプ13の吐出圧を検出する圧力センサ107(ブレード圧力センサ)、旋回ポンプ14の吐出圧を検出する圧力センサ108(旋回圧力センサ)のそれぞれの圧力信号の圧力のうちの最大圧力を最大値選択部Mabにおいて選択し、この選択した圧力(ポンプ吐出圧)とテーブル124を用いて第1回転数低減割合Raを演算し、この第1回転数低減割合Raを上記式(2)で演算したポンプ回転数Naに乗算することで第1回転数制限値Nlimitaを演算し、この第1回転数制限値Nlimitaをサーボモータ1~3に出力する。
【0048】
図4は、テーブル124に設定された回転数低減割合特性を示す図である。テーブル124には、最大値選択部Mabで選択されたポンプ吐出圧が所定の圧力P0以下にあるとき、回転数低減割合Raは1であり、ポンプ吐出圧が最高圧力Pmaxまで上昇すると回転数低減割合Raは0.5であり、ポンプ吐出圧がP0からPmaxまで高くなるにしたがって回転数低減割合Raが1から0.5まで比例的に減少するように回転数低減割合特性が設定されている。
【0049】
所定の圧力P0は、操作装置が操作されたときのポンプ吐出圧範囲の最低圧力と同じか、それよりも少し高い圧力に設定され、最高圧力Pmaxは閉回路に設けられたリリーフバルブ(例えば旋回の閉回路Fのリリーフバルブ35,36)のリリーフ設定圧力と同じか、それよりも少し低い圧力に設定されている。
【0050】
制限値演算部78-1は、更に、走行左ポンプ15の吐出圧を検出する圧力センサ109(走行左圧力センサ)と走行右ポンプ16の吐出圧を検出する圧力センサ110(走行右圧力センサ)の圧力信号の圧力の平均値を平均値演算部Abにおいて演算し、この演算圧力と、ポンプ動力Hset及びポンプ設定容量Dsetと、数値「60」及び「1000」を用いて、第1回転数制限値Nlimitaを演算するためにポンプ流量Qaとポンプ回転数Naを演算した場合と同様、上記式(1)により、当該演算圧力で圧油を吐出して当該ポンプ動力Hsetを消費する仮想の油圧ポンプのポンプ流量Qbを演算し、上記式(2)により、当該ポンプ設定容量Dsetと等しいポンプ容量を有する仮想の油圧ポンプのポンプ回転数Nbを演算する。
【0051】
ここで、ポンプ流量Qbを演算するためのポンプ動力Hsetは、ポンプ流量Qaを演算するためのポンプ動力Hsetと同じ値に設定され、ポンプ回転数Nbを演算するためのポンプ設定容量Dsetは、走行左及び走行右の油圧ポンプ15,16の容量Dsetと同じ値に設定される。
【0052】
制限値演算部78-1は、また、ブーム圧力センサ103、アーム圧力センサ104、バケット圧力センサ105、スイング圧力センサ106、ブレード圧力センサ107、旋回圧力センサ108のそれぞれの圧力信号の圧力のうちの最大圧力を最大値選択部Mbにおいて選択し、この選択した圧力とテーブル125を用いて第2回転数低減割合Rbを演算し、この回転数低減割合Rbを上記式(2)で演算したポンプ回転数Nbに乗算することで第2回転数制限値Nlimitbを演算し、この第2回転数制限値Nlimitbをサーボモータ7,8に出力する。
【0053】
テーブル125にも、図4に示したテーブル124と同様の回転数低減割合特性が設定されている。
【0054】
図3Bは、複合操作判定部78-2の演算内容の詳細を示す機能ブロック図である。
【0055】
図3Bにおいて、複合操作判定部78-2は、圧力判定部Ja,Jbにおいて圧力センサ103,105の圧力信号の圧力が予め設定された判定圧力以上であるかどうかを判定し、圧力が判定圧力以上であるときは、圧力センサ103,105の圧力信号に対応する閉回路A,Cの油圧アクチュエータ(ブームシリンダ17及びバケットシリンダ19)の操作装置310-1,310-2が操作されていると判定し、加算部126において操作装置が操作されているアクチュエータ数をブーム/バケットの複合操作判定値Jnaとして演算する。
【0056】
同様に、複合操作判定部78-2は、圧力判定部Jc,Jd,Jeにおいて圧力センサ106,107,108の圧力信号の圧力が予め設定された判定圧力以上であるかどうかを判定し、圧力が判定圧力以上であるときは、圧力センサ106,107,108の圧力信号に対応する閉回路D,E,Fの油圧アクチュエータ(スイングシリンダ20、ブレードシリンダ21及び旋回モータ22)の操作装置314,315,309-2が操作されていると判定し、加算部127において操作装置が操作されているアクチュエータ数を旋回/スイング/ブレードの複合操作判定値Jnbとして演算する。
【0057】
予め設定された判定圧力は、例えば図4で説明した所定の圧力P0(操作装置が操作されたときのポンプ吐出圧範囲の最低圧力と同じか、それよりも少し高い圧力)に設定されている。
【0058】
また、圧力センサに代え、操作装置の操作信号を用いて操作装置が操作されているかどうかを判定してもよい。
【0059】
図3Cは、回転数演算部78-3の演算内容の詳細を示す機能ブロック図である。
【0060】
図3Cにおいて、回転数演算部78-3は、操作装置309-1~314の操作信号とテーブル116~123を用いてサーボモータ1~8の第1目標回転数Nta1~Nth1を演算する。
【0061】
図5は、テーブル116~123に設定された目標回転数特性を示す図である。横軸は操作装置の操作レバー/ペダルの操作量を示し、縦軸はサーボモータ1~8の第1目標回転数を示している。また、横軸と縦軸によって作られた4つの平面座標のうち、第1象限に、操作レバー/ペダルを一方向に操作したときの目標回転数特性が示され、第3象限に、操作レバー/ペダルを他方向に操作したときの目標回転数特性を示している。
【0062】
操作装置309~314は、操作レバー/ペダルを一方向に操作したとき正の値の操作信号を生成し、テーブル116~123の第1象限には、操作信号が正の値であるとき、操作量が増加するにしたがって正の値の第1目標回転数Nta1~Nth1が増加するよう目標回転数特性が設定されている。正の値の第1目標回転数Nta1~Nth1は、油圧ポンプ9~16が第1供給ライン41,43,45,47,49,51,53,55に圧油を吐出する方向にサーボモータ1~8を回転させる目標回転数である。
【0063】
また、操作装置309~314は、操作レバー/ペダルを他方向(上記一方向の反対方向)に操作したとき負の値の操作信号を生成し、テーブル116~123の第3象限には、操作信号が負の値であるとき、操作量の絶対値が増加するにしたがって負の値の第1目標回転数Nta1~Nth1の絶対値が増加するよう目標回転数特性が設定されている。負の値の第1目標回転数Nta1~Nth1は、油圧ポンプ9~16が第2供給ライン42,44,46,48,50,52,54,56に圧油を吐出するする方向にサーボモータ1~8が回転させる目標回転数である。
【0064】
回転数演算部78-3は、リミッタ111~115において、テーブル116~120で演算された第1目標回転数Nta1~Nte1の上限と下限を制限し、第2目標回転数Nta2~Nte2を生成する。
【0065】
ブーム,アーム,バケットのリミッタ111~113には、前述した制限値演算部78-1で演算されたブーム/アーム/バケットのサーボモータ1~3の第1回転数制限値Nlimitaが上限値として入力され、かつ第1回転数制限値Nlimitaが負の値に変換されて下限値として入力される。走行左、走行右のリミッタ114,115には、前述した制限値演算部78-1で演算された走行左、走行右のサーボモータ7,8の第2回転数制限値Nlimitbが上限値として入力され、第2回転数制限値Nlimitbが負の値に変換されて下限値として入力される。
【0066】
回転数演算部78-3は、次いで除算部Da,Dcにおいて、ブームとバケットのリミッタ111,113によって生成された第2目標回転数Nta2,Ntc2を前述した複合操作判定部78-2で演算されたブーム/バケットの複合操作判定値(アクチュエータ数)で除算して第3目標回転数Nta3,Ntc3を演算し、第3目標回転数Nta3,Ntc3をサーボモータ1,3の目標回転数として出力する。一方、アームのリミッタ112及び走行左、走行右のリミッタ114,115によって生成された第2目標回転数Ntb2は、そのままサーボモータ2,7,8の目標回転数として出力される。
【0067】
回転数演算部78-3は、また、除算部Df~Dhにおいて、テーブル121~123で演算されたサーボモータ6,4,5の第1目標回転数Ntf1~Nth1を上述した複合操作判定部78-2で演算された旋回/スイング/ブレードの複合操作判定値(アクチュエータ数)Jnbで除算して第2目標回転数Ntf2~Nth2を演算し、第2目標回転数Ntf2~Nth2をサーボモータ6,4,5の目標回転数として出力する。
【0068】
~開回路型の油圧駆動システム(比較例)~
図6は、3ポンプシステムと呼ばれている開回路型の油圧駆動システムの一例を示す図である。図6において、油圧アクチュエータには図2に示した本実施形態の油圧アクチュエータと同じ符号を付している。また、操作装置は油圧パイロット式であるが、便宜上、図2に示した本実施形態の操作装置と同じ符号を付している。
【0069】
図6において、開回路型の3ポンプシステムは、原動機(例えばディーゼルエンジン、以下エンジンという)Eと、原動機Eによって駆動されるメインポンプである第1油圧ポンプP1、第2油圧ポンプP2及び第3油圧ポンプP3と、第1、第2及び第3油圧ポンプP1,P2,P3と連動してエンジンEにより駆動されるパイロットポンプP4と、第1油圧ポンプP1から吐出された圧油により駆動される油圧アクチュエータ17,19,23と、第2油圧ポンプP2から吐出された圧油により駆動される油圧アクチュエータ18,24と、第3油圧ポンプP3から吐出された圧油により駆動される油圧アクチュエータ20,21,22と、コントロールバルブVとを備えている。
【0070】
第1及び第2油圧ポンプP1,P2は可変容量型の油圧ポンプである。また、第1及び第2油圧ポンプP1,P2は共通のレギュレータPRを備えたスプリットフロータイプの油圧ポンプPWによって構成され、油圧ポンプPWの2つの吐出ポートが第1及び第2油圧ポンプP1,P2を構成している。第3油圧ポンプP3は固定容量型の油圧ポンプである。レギュレータPRは、第1、第2及び第3油圧ポンプP1,P2,P3の吐出圧が導かれ、それらの圧力の上昇によって第1及び第2油圧ポンプP1,P2の容量(斜板の傾転角)を減少させるトルク制御(馬力制御)ピストンPp1,Pp2,Pp3と、第1、第2及び第3油圧ポンプP1,P2,P3が利用可能な最大トルクを設定するバネPsとを備えている。
【0071】
アクチュエータ21はブレードシリンダであり、アクチュエータ22は旋回モータであり、アクチュエータ20はスイングシリンダであり、アクチュエータ17はブームシリンダであり、アクチュエータ18はアームシリンダであり、アクチュエータ19はバケットシリンダであり、アクチュエータ23,24は左右の走行モータである。
【0072】
コントロールバルブVは、第1油圧ポンプP1の圧油供給油路に接続され、第1油圧ポンプP1からアクチュエータ23,17,19に供給される圧油の方向をそれぞれ制御するオープンセンタ型の複数の方向切換弁V9,V10,V11と、第2油圧ポンプP2からアクチュエータ24,18に供給される圧油の方向をそれぞれ制御するオープンセンタ型の複数の方向切換弁V7,V8と、第3油圧ポンプP3からアクチュエータ21,22,20に供給される圧油の方向をそれぞれ制御するオープンセンタ型の複数の方向切換弁V3,V4,V5と、第1,第2及び第3油圧ポンプP1,P2,P3の圧油供給油路に設けられ第1油圧ポンプP1の吐出圧を制限するメインリリーフ弁V26と、第2油圧ポンプP2の吐出圧を制限するメインリリーフ弁V27と、第3油圧ポンプP3の吐出圧を制限するメインリリーフ弁V28とを有している。このように、図6の油圧駆動システムはオープンセンタ型の方向切換弁V3~V11を備えた開回路型の3ポンプシステムとして構成されている。
【0073】
操作装置310-1,310-2,311の操作レバー/ペダルが中立にあるとき、方向切換弁V9,V10,V11は中立位置にあり、第1油圧ポンプP1の吐出油は方向切換弁V9,V10,V11を介してタンクTに戻される。操作装置310-1,310-2,311の操作レバー/ペダルのいずれかを操作すると方向切換弁V9,V10,V11のいずれかが切り換えられ、第1油圧ポンプP1から走行モータ23、ブームシリンダ17、バケットシリンダ19のいずれかに圧油が供給され、走行モータ23、ブームシリンダ17、バケットシリンダ19のいずれかが駆動される。
【0074】
操作装置309-1,312の操作レバー/ペダルが中立であるとき、方向切換弁V7,V8は中立位置にあり、第2油圧ポンプP2の吐出油は方向切換弁V7,V8を介してタンクTに戻される。操作装置309-1,312の操作レバー/ペダルのいずれかを操作すると、方向切換弁V7,V8が切り換えられ、第2油圧ポンプP2から走行モータ24、アームシリンダ18のいずれかに圧油が供給され、走行モータ24、アームシリンダ18のいずれかが駆動される。
【0075】
操作装置314,309-2,313の操作レバー/ペダルが中立であるとき、第3油圧ポンプP3の吐出油は方向切換弁V3,V4,V5を介してタンクTに戻される。操作装置314,309-2,313の操作レバー/ペダルのいずれかを操作すると方向切換弁V3,V4,V5が切り換えられ、第3油圧ポンプP3からブレードシリンダ21、旋回モータ22、スイングシリンダ20のいずれかに圧油が供給され、ブレードシリンダ21、旋回モータ22、スイングシリンダ20のいずれかが駆動される。
【0076】
操作装置309-1~314の2つ以上の操作装置の操作レバー/ペダルを操作したときは、対応する複数の方向切換弁が切り換えられ、第1~第3油圧ポンプP1~P3に対応する油圧ポンプから対応する複数の油圧アクチュエータに圧油が供給され、それら油圧アクチュエータが駆動される。
【0077】
図7は、レギュレータPRのトルク制御(馬力制御)ピストンPp1,Pp2,Pp3とバネPsにより得られるトルク制御特性(馬力制御特性)を示す図である。図7中、横軸は、油圧ポンプP1,P2の吐出圧Pd1,Pd2の平均値Pd12(=(Pd1+Pd2)/2)であり、縦軸は油圧ポンプP1,P2の容量(スプリットフローポンプPWの容量(斜板の傾転角))q12であり、横軸のP12maxはメインリリーフ弁V26,V27によって得られる油圧ポンプP1,P2の最高吐出圧の平均値であり、縦軸のq12maxはスプリットフローポンプPWの構造で決まる油圧ポンプP1,P2の最大容量(最大傾転角)である。
【0078】
また、図7において、C1,C2はバネ112uによって設定される最大トルクの特性線C1,C2であり、この特性線C1,C2に接する曲線(双曲線)は油圧ポンプP1,P2が利用可能な最大トルクT12maxである。
【0079】
前述した操作装置の操作レバー/ペダルの操作により、油圧ポンプP1,P2から吐出される圧油によってアクチュエータが駆動され、油圧ポンプP1,P2の合計の吸収トルクが特性線C1,C2上の値まで増加すると、油圧ポンプP1,P2の合計の吸収トルクがそれ以上増加しないよう油圧ポンプP1,P2の容量q12はレギュレータPRのトルク制御ピストンPp1,Pp2によって制限され、その結果、油圧ポンプP1,P2の合計の吸収トルクが最大トルクT12maxを超えないよう制御される。
【0080】
図7中、符号TEで示す曲線は原動機Eの定格トルクであり、最大トルクT12maxは定格トルクTEよりも小さい値に設定されている。
【0081】
また、図7において、矢印AR1,AR2は、トルク制御ピストンPp3の効果を示している。第3油圧ポンプP3の吐出圧或いは容量が増大して第3油圧ポンプP3の吸収トルクが増加するとき、トルク制御ピストンPp3は、図7に矢印AR1,AR2で示すように、バネPsによって設定された最大トルクの特性線C1,C2をシフトさせ、油圧ポンプP1,P2が利用可能な最大トルクT12maxを、第3油圧ポンプP3の吸収トルク分、減少させる。これにより第1及び第2油圧ポンプP1,P2に係わるアクチュエータと第3油圧ポンプP3に係わるアクチュエータを同時に駆動する複合操作時においても、第1及び第2油圧ポンプP1,P2と第3油圧ポンプP3の合計の吸収トルクが最大トルクT12maxを超えないように制御される(3ポンプ全トルク制御)。
【0082】
なお、油圧ポンプP1,P2の合計の吸収トルク(スプリットフローポンプPWの吸収トルク)は、油圧ポンプP1,P2の吐出圧の平均値P12と油圧ポンプP1,P2の容量q12との積で表され、その吸収トルクにスプリットフローポンプPWの回転数を乗じた値が、油圧ポンプP1,P2の合計の吸収馬力(スプリットフローポンプPWの吸収馬力)である。言い換えると、図7の縦軸のパラメータを油圧ポンプP1,P2の合計の吐出流量に置き換えることで、図7は馬力制御特性を示す図となる。
【0083】
この場合、特性線C1,C2に接する曲線(双曲線)は油圧ポンプP1,P2が利用可能な最大馬力H12maxの特性線であり、最大馬力H12maxは原動機Eの定格馬力HEより小さい値に設定されている。建設機械の油圧駆動システムには、原動機Eの目標回転数を指示すためのエンジンコントロールダイヤルが設けられており、通常の作業時には、原動機Eの目標回転数を最大に設定して作業を行う。最大馬力H12maxは原動機Eの定格トルクTEにその最大回転数を乗じた値である。
【0084】
このように、図7を馬力制御特性を示す図に置き換えた場合、上記のようにトルク制御を行うことで、第1及び第2油圧ポンプP1,P2の合計の吸収馬力或いは第1及び第2油圧ポンプP1,P2と第3油圧ポンプP3の合計の吸収馬力が、最大馬力H12maxを超えないように馬力制御或いは3ポンプ全馬力制御を行うことができる。
【0085】
また、ブームとアームを同時に駆動する場合など、複数のアクチュエータを駆動する複合操作時に、上記のようにいずれかの油圧ポンプの吐出圧が上昇したとき、馬力制御により油圧ポンプP1,P2の両方の油圧ポンプの吐出流量が特性線C1,C2沿って減少し、この減少した流量の圧油が複数のアクチュエータに供給される。これにより、複数のアクチュエータの駆動速度が共に低下し、複数のアクチュエータ間の速度バランスが確保され、良好な複合操作性が得られる。
【0086】
更に、旋回とフロントスイングを同時に行う場合など、第3ポンプP3に係わる複数のアクチュエータの2つ以上が同時に駆動された場合は、第3ポンプP3の出力馬力が当該複数の油圧アクチュエータに分配され、第3ポンプP3の消費馬力が予め設定したポンプ動力を超えないように制御される。
【0087】
~動作~
次に、本実施形態の油圧駆動システムの動作を説明する。
【0088】
<ブーム上げの単独操作>
ブーム上げを意図して、ブーム操作装置310-1の操作レバーを操作したとき、ブーム操作装置310-1の操作信号とブーム圧力センサ103の圧力信号がコントローラ78へ入力される。
【0089】
コントローラ78へ入力されたブーム操作装置310-1の操作信号は回転数演算部78-3に入力され、ブーム圧力センサ103の圧力信号は制限値演算部78-1と複合操作判定部78-2へそれぞれ入力される。
【0090】
制限値演算部78-1では、ブーム圧力センサ103の圧力信号の値(ブーム圧力)とバケット圧力センサ105の圧力信号の値(バケット圧力)の高圧側の圧力が最大値選択部Maにおいて選択される。このとき、バケット操作装置310-2の操作レバーが操作されていないため、最大値選択部Maではブーム圧力が選択される。次いで、平均値演算部Aaにおいて、ブーム圧力と、アーム圧力センサの圧力信号の値(アーム圧力)との平均値が演算されるが、アーム操作装置309-1の操作レバーが操作されていないため、平均値演算部Aaではブーム圧力の1/2の値が平均値として演算され、この平均値とポンプ動力Hset及びポンプ設定容量Dsetを用いて、前述した式(1)及び(2)によりポンプ回転数Naが演算される。
【0091】
また、このときは、ブーム操作装置310-1以外の操作装置は操作されておらず、旋回圧力センサの圧力信号の値(旋回圧力)、スイング圧力センサの圧力信号の値(スイング圧力)、ブレード圧力センサの圧力信号の値(ブレード圧力)はほぼ0MPaである。このため、テーブル124において回転数低減割合Raとして1が演算され、この演算値がポンプ回転数Naに乗算され、第1回転数制限値Nlimitaが出力される。
【0092】
複合操作判定部78-2では、圧力判定部Jaにおいて、ブーム圧力が判定圧力以上であると判定され、加算部126において、操作装置が操作されているアクチュエータ数として1が演算され、ブーム/バケットの複合操作判定値Jnaとして1が出力される。
【0093】
回転数演算部78-3では、テーブル116において、ブーム操作装置310-1の操作信号の値(ブーム操作量)に応じた第1目標回転数Nta1が正の値として演算され、制限値演算部78-1で演算された第1回転数制限値Nlimitaが上限値としてセットされたリミッタ111において、第1目標回転数Nta1が第1回転数制限値Nlimita以下に制限された第2目標回転数Nta2が演算される。更に、除算部Daにおいて、複合操作判定部78-2で演算された複合操作判定値Jnaのアクチュエータ数「1」により第2目標回転数Nta2が除算され、第3目標回転数Nta3が演算される。この第3目標回転数Nta3はサーボモータ1の目標回転数として出力され、サーボモータ1が右方向に回転する。
【0094】
サーボモータ1が右方向に回転すると、ブームポンプ9から吐出された圧油は第2供給ライン42を通ってブームシリンダ17のボトム側室80に流入し、ロッド側室79から圧油が排出されることでブームシリンダ17が伸長する。
【0095】
ブームシリンダ17のロッド側室79から排出された圧油は第1供給ライン41を通り、ブームポンプ9へと戻される。ブームシリンダ17のロッド側室79とボトム側室80との面積差分の不足の圧油は第1タンクライン67、チェック弁57を通ってタンク77からブームポンプ9に補給される。
【0096】
<ブーム下げの単独操作>
ブーム下げを意図して、ブーム操作装置310-1の操作レバーを操作したとき、ブーム上げの場合と同様、ブーム操作装置310-1の操作信号とブーム圧力センサ103の圧力信号がコントローラ78へ入力され、制限値演算部78-1及び複合操作判定部78-2において、ブーム上げの場合と同様の演算が行われる。
【0097】
また、回転数演算部78-3では、テーブル116において、第1目標回転数Nta1が負の値として演算され、
制限値演算部78-1で演算された第1回転数制限値Nlimitaの負の値が下限値としてセットされたリミッタ111において、第1目標回転数Nta1が第1回転数制限値Nlimita以上に制限された負の値の第2目標回転数Nta2が演算され、更に、除算部Daにおいて、負の値の第3目標回転数Nta3が演算される。この負の値の第3目標回転数Nta3はサーボモータ1の目標回転数として出力され、サーボモータ1は左方向に回転する。
【0098】
サーボモータ1が左方向に回転すると、ブームポンプ9から吐出された圧油は第1供給ライン41を通ってブームシリンダ17のロッド側室79へ圧油が流入し、ボトム側室80から圧油が排出されることでブームシリンダ17が収縮する。
【0099】
ブームシリンダ17のボトム側室80から排出された圧油は第2供給ライン42を通り、ブームポンプ9へと戻される。
【0100】
ブームシリンダ17のロッド側室79とボトム側室80との面積差分の余剰の圧油は第2タンクライン68、オペレートチェック弁58を通ってタンク77に還流する。
【0101】
<バケットクラウドの単独操作>
バケットクラウドを意図して、バケット操作装置310-2の操作レバーを操作したときは、バケット操作装置310-2の操作信号とバケット圧力センサ105の圧力信号がコントローラ78へ入力される。
【0102】
コントローラ78の制限値演算部78-1では、最大値選択部Maにおいて最大値としてバケット圧力が選択される点を除いて、ブーム上げの場合と同様の演算が行われ、第1回転数制限値Nlimitaが出力される。
【0103】
複合操作判定部78-2では、圧力判定部Jbにおいて、バケット圧力が判定圧力以上であると判定され、加算部126において、ブーム上げの場合と同様に、操作装置が操作されているアクチュエータ数として1が演算され、ブーム/バケットの複合操作判定値Jnaとして1が出力される。
【0104】
また、回転数演算部78-3では、テーブル118とリミッタ113と除算部Dcを用いて、ブーム上げの場合と同様に第3目標回転数Ntc3が演算される。この第3目標回転数Ntc3はサーボモータ3の目標回転数として出力され、サーボモータ3が右方向に回転する。
【0105】
サーボモータ3が右方向に回転すると、バケットポンプ11から吐出された圧油は第2供給ライン46を通ってバケットシリンダ19のボトム側室84へ流入し、ロッド側室83から圧油が排出されることでバケットシリンダ19が伸長する。
【0106】
バケットシリンダ19のロッド側室83から排出された圧油は第1供給ライン45を通り、バケットポンプ11へと戻される。バケットシリンダ19のロッド側室83とボトム側室84との面積差分の不足の圧油は第1タンクライン71、チェック弁61を通ってタンク77からバケットポンプ11に補給される。
【0107】
<バケットダンプの単独操作>
バケットダンプを意図して、バケット操作装置310-2の操作レバーを操作したときは、バケット操作装置310-2の操作信号とバケット圧力センサ105の圧力信号がコントローラ78へ入力され、制限値演算部78-1及び複合操作判定部78-2では、ブーム上げの場合と同様の演算が行われる。
【0108】
また、回転数演算部78-3では、テーブル118において、第1目標回転数Ntc1が負の値として演算され、リミッタ113において負の値の第2目標回転数Ntc2が演算され、除算部Dcにおいて負の値の第3目標回転数Ntc3が演算される。この負の値の第3目標回転数Ntc3はサーボモータ3の目標回転数として出力され、サーボモータ3は左方向に回転する。
【0109】
サーボモータ3が左方向に回転すると、バケットポンプ11から吐出された圧油は第1供給ライン45を通ってバケットシリンダ19のロッド側室83へ流入し、ボトム側室84から圧油が排出されることでバケットシリンダ19が収縮する。
【0110】
バケットシリンダ19のボトム側室84から排出された圧油は第2供給ライン46を通り、バケットポンプ11へと戻される。バケットシリンダ19のロッド側室83とボトム側室84との面積差分の余剰の圧油は第2タンクライン72、オペレートチェック弁62を通ってタンク77に還流する。
【0111】
<アームクラウドの単独操作>
アームクラウドを意図して、アーム操作装置309-1の操作レバーを操作したとき、アーム操作装置309-1の操作信号とアーム圧力センサ104の圧力信号がコントローラ78へ入力される。
【0112】
コントローラ78へ入力された操作装置319-1の操作信号は回転数演算部78-3に入力され、アーム圧力センサ104の圧力信号は制限値演算部78-1に入力される。
【0113】
制限値演算部78-1では、平均値演算部Aaにおいて、最大値選択部Aaで選択されたブーム圧力とバケット圧力の最大値とアーム圧力との平均値が演算されるが、ブーム操作装置310-1とバケット操作装置310-2の操作レバーが操作されていないため、平均値演算部Aaではアーム圧力の1/2の値が平均値として演算され、この演算値とポンプ動力Hset及びポンプ設定容量Dsetを用いて、前述した式(1)及び(2)によりポンプ回転数Naが演算される。このようにポンプ回転数Naが演算される点を除いて、制限値演算部78-1ではブーム上げの場合と同様に第1回転数制限値Nlimitaが演算され、回転数演算部78-3に出力される。
【0114】
回転数演算部78-3では、テーブル117とリミッタ112により上記ブーム上げの場合と同様に第1目標回転数Ntb1及び第2目標回転数Ntb2が演算される。第2目標回転数Ntb2はサーボモータ2の目標回転数として出力され、サーボモータ2が右方向に回転する。
【0115】
サーボモータ2が右方向に回転すると、アームポンプ10から吐出された圧油は第2供給ライン44を通ってアームシリンダ18のボトム側室82へ流入し、ロッド側室81から圧油が排出されることでアームシリンダ18が伸長する。
【0116】
アームシリンダ18のロッド側室81から排出された圧油は第1供給ライン43を通り、アームポンプ10へと戻される。アームシリンダ18のロッド側室81とボトム側室82との面積差分の不足の圧油は第1タンクライン69、チェック弁59を通ってタンク77からアームポンプ10に補給される。
【0117】
<アームダンプの単独操作>
アームダンプを意図して、アーム操作装置309-1の操作レバーを操作したとき、アーム操作装置309-1の操作信号とアーム圧力センサ104の圧力信号がコントローラ78へ入力され、制限値演算部78-1及び複合操作判定部78-2では、アームクラウドの場合と同様の演算が行われる。
【0118】
また、回転数演算部78-3では、テーブル117において、第1目標回転数Ntb1が負の値として演算され、リミッタ112において負の値の第2目標回転数Ntb2が演算される。この負の値の第2目標回転数Ntb2はサーボモータ2の目標回転数として出力され、サーボモータ2が左方向に回転する。
【0119】
サーボモータ2が左方向に回転すると、アームポンプ10から吐出された圧油は第1供給ライン43を通ってアームシリンダ18のロッド側室81へ流入し、ボトム側室82から圧油が排出されることでアームシリンダ18が収縮する。
【0120】
アームシリンダ18のボトム側室82から排出された圧油は第2供給ライン44を通り、アームポンプ10へと戻される。アームシリンダ18のロッド側室81とボトム側室82との面積差分の余剰の圧油は第2タンクライン70、オペレートチェック弁60を通ってタンク77に還流する。
【0121】
<走行前進の単独操作>
走行前進を意図して、走行左操作装置311と走行右操作装置312の操作ペダルを操作したとき、操作装置311,312の操作信号と走行左圧力センサ109、走行右圧力センサ110の圧力信号がコントローラ78へ入力される。
【0122】
コントローラ78へ入力された操作装置311,312の操作信号は回転数演算部78-3に入力され、圧力センサ109,110の圧力信号は制限値演算部78-1に入力される。
【0123】
制限値演算部78-1では、平均値演算部Aaにおいて、走行左圧力センサ109の圧力信号の値(走行左圧力)と走行右圧力センサ110の圧力信号の値(走行右圧力)との平均値が演算され、この平均値とポンプ動力Hset及びポンプ設定容量Dsetを用いて、前述した式(1)及び(2)によりポンプ回転数Nbが演算される。
【0124】
また、このとき、ブーム操作装置310-1、アーム操作装置309-1、バケット操作装置310-2、旋回操作装置309-2、スイング操作装置313及びブレード操作装置314の操作レバー/ペダルは操作されておらず、ブーム圧力、アーム圧力、バケット圧力、旋回圧力、スイング圧力、ブレード圧力はほぼ0MPaであるため、テーブル125において回転数低減割合Rbとして1が演算され、この演算値がポンプ回転数Nbに乗算され、第2回転数制限値Nlimitbが出力される。
【0125】
回転数演算部78-3では、テーブル119,120において、走行左操作装置311と走行右操作装置312の操作信号の値(走行左操作量及び走行右操作量)に応じた第1目標回転数Ntd1,Nte1が正の値として演算され、制限値演算部78-1で演算された第2回転数制限値Nlimitbが上限値としてセットされたリミッタ114,115において、第1目標回転数Ntd1,Nte1が第2回転数制限値Nlimitb以下に制限された第2目標回転数Ntd2,Nte2が演算される。この第2目標回転数Ntd2,Nte2はサーボモータ7,8の目標回転数として出力され、サーボモータ7,8が右方向に回転する。
【0126】
サーボモータ7,8が右方向に回転すると、走行左ポンプ15及び走行右ポンプ16から吐出された圧油は第2供給ライン54,56を通って走行左モータ23及び走行右モータ24の第2ポート94に流入し、走行左モータ23及び走行右モータ24の第1ポート91から圧油が排出されることで走行左モータ23及び走行右モータ24が前進方向に回転する。
【0127】
走行左モータ23及び走行右モータ24から排出された圧油は第1供給ライン53,55を通り、走行左ポンプ15及び走行右ポンプ16に戻される。
【0128】
<走行後進の単独操作>
走行後進を意図して、走行左操作装置311と走行右操作装置312の操作ペダルを操作したとき、操作装置311,312の操作信号と走行左圧力センサ109、走行右圧力センサ110の圧力信号がコントローラ78へ入力され、制限値演算部78-1において、走行前進単独操作の場合と同様の演算が行われる。
【0129】
また、回転数演算部78-3では、テーブル119,120において、第1目標回転数Ntd1,Nte1が負の値として演算され、リミッタ111において負の値の第2目標回転数Ntd2,Nte2が演算される。この負の値の第2目標回転数Ntd2,Nte2はサーボモータ7,8の目標回転数として出力され、サーボモータ7,8が左方向に回転する。
【0130】
サーボモータ7,8が左方向に回転すると、走行左ポンプ15及び走行右ポンプ16から吐出された圧油は第1供給ライン53,55を通って走行左モータ23及び走行右モータ24の第1ポート91,92に流入し、走行左モータ23及び走行右モータ24の第2ポート92,94から圧油が排出されることで走行左モータ23及び走行右モータ24が後進方向に回転する。
【0131】
走行左モータ23及び走行右モータ24から排出された圧油は第2供給ライン54,56を通り、走行左ポンプ15及び走行右ポンプ16に戻される。
【0132】
<旋回左の単独操作>
旋回左を意図して、旋回操作装置309-2の操作レバーを操作したとき、旋回操作装置309-2の操作信号と旋回圧力センサ108の圧力信号がコントローラ78へ入力される。
【0133】
コントローラ78へ入力された旋回操作装置319-2の操作信号は回転数演算部78-3に入力され、旋回圧力センサ108の圧力信号は制限値演算部78-1と複合操作判定部78-2へそれぞれ入力される。
【0134】
制限値演算部78-1では、最大値選択部Mabにおいて旋回圧力が選択され、テーブル124において旋回圧力に応じた第1回転数低減割合Raが演算されるとともに、最大値選択部Mbにおいて再度旋回圧力が選択され、テーブル125において旋回圧力に応じた第2回転数低減割合Rbが演算されるが、これらの値は、回転数演算部78-3における旋回のサーボモータ6の目標回転数の演算には影響を与えない。
【0135】
複合操作判定部78-2では、圧力判定部Jcにおいて、旋回圧力が判定圧力以上であると判定され、加算部127において、操作装置が操作されているアクチュエータ数として1が演算され、旋回/スイング/ブレードの複合操作判定値Jnbとして1が出力される。
【0136】
回転数演算部78-3では、テーブル121において、旋回操作量に応じた第1目標回転数Ntf1が正の値として演算され、除算部Dfにおいて、複合操作判定部78-2で演算された複合操作判定値Jnbのアクチュエータ数「1」により第1目標回転数Ntf1が除算され、第2目標回転数Ntf2が演算される。この第2目標回転数Ntf2はサーボモータ6の目標回転数として出力され、サーボモータ6が右方向に回転する。
サーボモータ6が右方向に回転すると、旋回ポンプ14から吐出された圧油は第2供給ライン52を通って旋回モータ22の第2ポート90に流入し、旋回モータ22の第1ポート89から圧油が排出されることで旋回モータ22が左方向に回転する。
【0137】
旋回モータ22の第1ポート89から排出された圧油は第1供給ライン51を通り、旋回ポンプ14に戻される。
【0138】
<旋回右の単独操作>
旋回右を意図して、旋回操作装置309-2の操作レバーを操作したとき、旋回操作装置309-2の操作信号と旋回圧力センサ108の圧力信号がコントローラ78へ入力され、制限値演算部78-1及び複合操作判定部78-2では、旋回左の場合と同様の演算が行われる。
【0139】
また、回転数演算部78-3では、テーブル121において、第1目標回転数Ntf1が負の値として演算され、除算部Dfにおいて負の値の第2目標回転数Ntf2が演算される。この負の値の第2目標回転数Ntf2はサーボモータ6の目標回転数として出力され、サーボモータ6は左方向に回転する。
【0140】
サーボモータ6が左方向に回転すると、旋回ポンプ14から吐出された圧油は第1供給ライン51を通って旋回モータ22の第1ポート89に流入し、旋回モータ22の第2ポート90から圧油が排出されることで旋回モータ22が右方向に回転する。
【0141】
旋回モータ22の第2ポート90から排出された圧油は第2供給ライン52を通り、旋回ポンプ14に戻される。
【0142】
<スイング、ブレードの単独操作>
スイング左或いはスイング右を意図して、スイング操作装置313の操作ペダルを操作したとき、スイング操作装置313の操作信号とスイング圧力センサ106の圧力信号がコントローラ78へ入力され、旋回左単独操作或いは旋回右単独操作の場合と同様にテーブル122及び除算部Dgにおいて第1目標回転数Ntg1及び第2目標回転数Ntg2が演算され、第2目標回転数Ntg2に基づいてサーボモータ4は右方向に或いは左方向に回転する。このサーボモータ4の回転によりスイングポンプ12から圧油が吐出され、例えばブーム上げ或いはブーム上げ単独操作の場合と同様、スイングシリンダ20が伸長或いは収縮する。また、スイングシリンダ20から排出された圧油はスイングポンプ12に戻されるとともに、スイングシリンダ20の面積差分の不足の圧油はタンク77からチェック弁63を通ってスイングポンプ12に補給され、余剰の圧油はオペレートチェック弁64を通ってタンク77に還流する。
【0143】
ブレード下げ或いはブレード上げを意図して、ブレード操作装置314の操作レバーを操作したときも、スイング左或いはスイング右を意図して、スイング操作装置313の操作ペダルを操作したときと同様、テーブル123及び除算部Dhにおいて第1目標回転数Nth1及び第2目標回転数Nth2が演算され、第2目標回転数Nth2に基いてサーボモータ5は右方向に或いは左方向に回転し、ブレードシリンダ21が伸長或いは収縮する。また、ブレードシリンダ21から排出された圧油はブレードポンプ13に戻されるとともに、ブレードシリンダ21の面積差分の不足の圧油はタンク77からチェック弁65を通ってブレードポンプ13に補給され、余剰の圧油はオペレートチェック弁66を通ってタンク77に還流する。
【0144】
<ブーム上げとアームクラウドの複合操作>
ブーム上げとアームクラウドの複合操作を意図して、ブーム操作装置310-1及びアーム操作装置309-1の操作レバーを操作したとき、ブーム操作装置310-1及びアーム操作装置309-1の操作信号とブーム圧力センサ103及びアーム圧力センサ104の圧力信号がコントローラ78へ入力される。
【0145】
コントローラ78へ入力された操作装置310-1,309-1の操作信号は回転数演算部78-3に入力され、ブーム圧力センサ103及びアーム圧力センサ104の圧力信号は制限値演算部78-1に入力され、ブーム圧力センサ103の圧力信号は更に複合操作判定部78-2に入力される。
【0146】
制限値演算部78-1では、バケット操作装置310-2の操作レバーが操作されていないため、最大値選択部Maではブーム圧力が選択され、平均値演算部Aaにおいて、ブーム圧力とアーム圧力との平均値が演算され、この平均値とポンプ動力Hset及びポンプ設定容量Dsetを用いて、前述した式(1)及び(2)によりポンプ回転数Naが演算される。
【0147】
また、このときは、ブーム操作装置310-1とアーム操作装置309-1以外の操作装置は操作されておらず、旋回圧力、スイング圧力、ブレード圧力はほぼ0MPaであるため、テーブル124において回転数低減割合Raとして1が演算され、この演算値がポンプ回転数Naに乗算され、第1回転数制限値Nlimitaが出力される。
【0148】
複合操作判定部78-2では、圧力判定部Jaにおいて、ブーム圧力が判定圧力以上であると判定され、加算部126において、操作装置が操作されているアクチュエータ数として1が演算され、ブーム/バケットの複合操作判定値Jnaとして1が出力される。
【0149】
回転数演算部78-3では、テーブル116とリミッタ111と除算部Daを用いてブーム上げの単独操作の場合と同様に第3目標回転数Nta3が演算され、テーブル117とリミッタ112を用いてアームクラウドの単独操作の場合と同様に第2目標回転数Ntb2が演算される。この第3目標回転数Nta3と第2目標回転数Ntb2はサーボモータ1,2の目標回転数として出力され、サーボモータ1,2が右方向に回転し、ブームシリンダ17及びアームシリンダ18が伸長する。また、ブームシリンダ17及びアームシリンダ18から排出された圧油はブームポンプ9及びアームポンプ10に戻されるとともに、ブームシリンダ17及びアームシリンダ18のそれぞれの面積差分の不足の圧油はタンク77からチェック弁57,59を通ってブームポンプ9及びアームポンプ10に補給される。
【0150】
<ブーム上げとバケットクラウドの複合操作>
ブーム上げとバケットクラウドの複合操作を意図して、ブーム操作装置310-1及びバケット操作装置310-2の操作レバーを操作したとき、ブーム操作装置310-1及びバケット操作装置310-2の操作信号とブーム圧力センサ103及びバケット圧力センサ105の圧力信号がコントローラ78へ入力される。
【0151】
コントローラ78へ入力された操作装置310-1,310-2の操作信号は回転数演算部78-3に入力され、ブーム圧力センサ103及びバケット圧力センサ105の圧力信号は制限値演算部78-1に入力され、バケット圧力センサ105の圧力信号は更に複合操作判定部78-2に入力される。
【0152】
制限値演算部78-1では、最大値選択部Maにおいて、ブーム圧力とバケット圧力の高圧側の圧力が最大値として選択され、平均値演算部Aaにおいて、ブーム圧力とバケット圧力の高圧側の圧力とアーム圧力との平均値が演算されるが、アーム操作装置309-1の操作レバーが操作されていないため、平均値演算部Aaではブーム圧力とバケット圧力の高圧側の圧力の1/2の値が平均値として演算され、この平均値とポンプ動力Hset及びポンプ設定容量Dsetを用いて、前述した式(1)及び(2)によりポンプ回転数Naが演算される。
【0153】
また、このときも、ブーム操作装置310-1とバケット操作装置310-2以外の操作装置は操作されておらず、旋回圧力、スイング圧力、ブレード圧力はほぼ0MPaであるため、テーブル124において回転数低減割合Raとして1が演算され、この演算値がポンプ回転数Naに乗算され、第1回転数制限値Nlimitaが出力される。
【0154】
前記複合操作判定部78-2では、圧力判定部Jbにおいて、バケット圧力が判定圧力以上であると判定され、加算部126において、操作装置が操作されているアクチュエータ数として1が演算され、ブーム/バケットの複合操作判定値Jnaとして1が出力される。
【0155】
回転数演算部78-3では、テーブル116,118とリミッタ111,113と除算部Da,Dcを用いてブーム上げ及びバケットダンプの単独操作の場合と同様に第3目標回転数Nta3,Ntc3が演算される。この第3目標回転数Nta3,Ntc3はサーボモータ1,3の目標回転数として出力され、サーボモータ1,3が右方向に回転し、ブームシリンダ17及びバケットシリンダ19が伸長する。また、ブームシリンダ17及びバケットシリンダ19から排出された圧油はブームポンプ9及びバケットポンプ11に戻されるとともに、ブームシリンダ17及びバケットシリンダ19のそれぞれの面積差分の不足の圧油はタンク77からチェック弁57,61を通ってブームポンプ9及びバケットポンプ11に補給される。
【0156】
<アームクラウドとバケットクラウドの複合操作>
アームクラウドとバケットクラウドの複合操作を意図して、アーム操作装置309-1及びバケット操作装置310-2の操作レバーを操作したとき、アーム操作装置309-1及びバケット操作装置310-2の操作信号とアーム圧力センサ104及びバケット圧力センサ105の圧力信号がコントローラ78へ入力される。
【0157】
コントローラ78へ入力された操作装置309-1,310-2の操作信号は回転数演算部78-3に入力され、アーム圧力センサ104及びバケット圧力センサ105の圧力信号は制限値演算部78-1に入力され、バケット圧力センサ105の圧力信号は更に複合操作判定部78-2に入力される。
【0158】
制限値演算部78-1では、ブーム操作装置310-1の操作レバーが操作されていないため、最大値選択部Maにおいてバケット圧力が選択され、平均値演算部Aaにおいてアーム圧力とバケット圧力との平均値が演算され、この平均値とポンプ動力Hset及びポンプ設定容量Dsetを用いて、前述した式(1)及び(2)によりポンプ回転数Naが演算される。
【0159】
また、このときも、旋回圧力、スイング圧力、ブレード圧力はほぼ0MPaであるため、テーブル124において回転数低減割合Raとして1が演算され、この演算値がポンプ回転数Naに乗算され、第1回転数制限値Nlimitaが出力される。
【0160】
前記複合操作判定部78-2では、圧力判定部Jbにおいて、バケット圧力が判定圧力以上であると判定され、加算部126において、操作装置が操作されているアクチュエータ数として1が演算され、ブーム/バケットの複合操作判定値Jnaとして1が出力される。
【0161】
回転数演算部78-3では、テーブル117とリミッタ112を用いてアームクラウドの単独操作の場合と同様に第2目標回転数Ntb2が演算され、テーブル118とリミッタ113と除算部Dcを用いてバケットクラウドの単独操作の場合と同様に第3目標回転数Ntc3が演算される。この第2目標回転数Ntb2と第3目標回転数Ntc3はサーボモータ2,3の目標回転数として出力され、サーボモータ2,3が右方向に回転し、アームシリンダ18及びバケットシリンダ19が伸長する。また、アームシリンダ18及びバケットシリンダ19から排出された圧油はアームポンプ10及びバケットポンプ11に戻されるとともに、アームシリンダ18及びバケットシリンダ19のそれぞれの面積差分の不足の圧油はタンク77からチェック弁59,61を通ってアームポンプ10及びバケットポンプ11に補給される。
【0162】
<ブーム上げと旋回右の複合操作>
ブーム上げと旋回右の複合操作を意図して、ブーム操作装置310-1及び旋回操作装置309-2の操作レバーを操作したとき、ブーム操作装置310-1及び旋回操作装置310-1,309-2の操作信号とブーム圧力センサ103及び旋回圧力センサ108の圧力信号がコントローラ78へ入力される。
【0163】
コントローラ78へ入力された操作装置310-1,309-2の操作信号は回転数演算部78-3に入力され、ブーム圧力センサ103及び旋回圧力センサ108の圧力信号は制限値演算部78-1に入力され、ブーム圧力センサ103と旋回圧力センサ108の圧力信号は更に複合操作判定部78-2に入力される。
【0164】
制限値演算部78-1では、バケット操作装置310-2の操作レバーが操作されていないため最大値選択部Maにおいてブーム圧力が選択され、アーム操作装置309-1の操作レバーが操作されていないため、平均値演算部Aaにおいてブーム圧力の1/2の値が平均値として演算され、この平均値とポンプ動力Hset及びポンプ設定容量Dsetを用いて、前述した式(1)及び(2)によりポンプ回転数Naが演算される。
【0165】
また、スイング操作装置313とブレード操作装置314の操作レバー/ペダルが操作されておらず、スイング圧力及びブレード圧力はほぼ0MPaであるため、最大値選択部Mabにおいて旋回圧力が選択され、テーブル124において旋回圧力に応じた第1回転数低減割合Raが演算され、この演算値がポンプ回転数Naに乗算され、第1回転数制限値Nlimitaが出力される。
【0166】
複合操作判定部78-2では、圧力判定部Ja,Jcにおいて、ブーム圧力及び旋回圧力がそれぞれ判定圧力以上であると判定され、加算部126,127において、操作装置が操作されているアクチュエータ数として1が演算され、ブーム/バケットの複合操作判定値Jna及び旋回/スイング/ブレードの複合操作判定値Jnbとしてそれぞれ1が出力される。
【0167】
回転数演算部78-3では、テーブル116とリミッタ111と除算部Daを用いて第3目標回転数Nta3が演算され、テーブル121と除算部Dfを用いて第2目標回転数Ntf2(負の値)が演算される。この第3目標回転数Nta3と第2目標回転数Ntf2はサーボモータ1,6の目標回転数として出力され、サーボモータ1が右方向に回転し、サーボモータ6が左方向に回転し、ブームシリンダ17が伸長し、旋回モータ右方向に回転する。
【0168】
また、ブームシリンダ17から排出された圧油はブームポンプ9に戻されるとともに、ブームシリンダ17の面積差分の不足の圧油はタンク77からチェック弁57,59を通ってブームポンプ9及びアームポンプ10に補給される。
【0169】
<旋回右とスイング左の複合操作>
旋回右とスイング左の複合操作を意図して、旋回操作装置309-2及びスイング操作装置313の操作レバー/ペダルを操作したとき、旋回操作装置309-2及びスイング操作装置313の操作信号と旋回圧力センサ108及びスイング圧力センサ106の圧力信号がコントローラ78へ入力される。
【0170】
コントローラ78へ入力された操作装置309-2,313の操作信号は回転数演算部78-3に入力され、旋回圧力センサ108及びスイング圧力センサ106の圧力信号は制限値演算部78-1及び複合操作判定部78-2に入力される。
【0171】
制限値演算部78-1では、最大値選択部Mabにおいて、旋回圧力とスイング圧力の高圧側の圧力が選択され、テーブル124,125において旋回圧力とスイング圧力の高圧側の圧力に応じた第1及び第2回転数低減割合Ra,Rbが演算されるが、これらの値は、回転数演算部78-3における旋回及びスイングのサーボモータ6,5の目標回転数の演算には影響を与えない。
【0172】
複合操作判定部78-2では、圧力判定部Jc,Jdにおいて、旋回圧力及びスイング圧力がそれぞれ判定圧力以上であると判定され、加算部127において、操作装置が操作されているアクチュエータ数として2が演算され、旋回/スイング/ブレードの複合操作判定値Jnbとして2が出力される。
【0173】
回転数演算部78-3では、テーブル121において、旋回操作量に応じた第1目標回転数Ntf1が負の値として演算され、除算部Dfにおいて、複合操作判定部78-2で演算された複合操作判定値Jnbのアクチュエータ数「2」により第1目標回転数Ntf1が除算され、第2目標回転数Ntf2として第1目標回転数Ntf1の1/2の値が演算される。この第2目標回転数Ntf2はサーボモータ6の目標回転数として出力され、サーボモータ6が左方向に回転する。
【0174】
このサーボモータ6の回転により旋回ポンプ14から圧油が吐出され、旋回モータ22が右方向に回転する。旋回モータ22から排出された圧油は旋回ポンプ14に戻される
また、テーブル122において、スイング操作量に応じた第1目標回転数Ntg1が演算され、除算部Dgにおいて、複合操作判定部78-2で演算された複合操作判定値Jnbのアクチュエータ数「2」により第1目標回転数Ntg1が除算され、第1目標回転数Ntg1の1/2の値として第2目標回転数Nt2が演算される。この第2目標回転数Ntg2はサーボモータ4の目標回転数として出力され、サーボモータ4が左方向に回転する。
【0175】
このサーボモータ4の回転によりスイングポンプ12から圧油が吐出され、スイングシリンダ20が収縮する。また、スイングシリンダ20から排出された圧油はスイングポンプ12に戻されるとともに、スイングシリンダ20の面積差分の余剰の圧油はオペレートチェック弁64を通ってタンク77に還流する。
【0176】
<ブーム上げとアームクラウドと旋回右の複合操作>
ブーム上げとアームクラウドと旋回右の複合操作を意図して、ブーム操作装置310-1、アーム操作装置309-1、旋回操作装置309-2の操作レバーを操作したとき、ブーム操作装置310-1、アーム操作装置309-1、旋回操作装置309-2の操作信号とブーム圧力センサ103、アーム圧力センサ104及び旋回圧力センサ108の圧力信号がコントローラ78へ入力される。
【0177】
コントローラ78へ入力された操作装置310-1,309-1,309-2の操作信号は回転数演算部78-3に入力され、ブーム圧力センサ103、アーム圧力センサ104及び旋回圧力センサ108の圧力信号は制限値演算部78-1に入力され、ブーム圧力センサ103と旋回圧力センサ108の圧力信号は更に複合操作判定部78-2に入力される。
【0178】
制限値演算部78-1では、バケット操作装置310-2の操作レバーが操作されていないため、最大値選択部Maにおいてブーム圧力が選択され、平均値演算部Aaにおいて、ブーム圧力とアーム圧力との平均値が演算され、この平均値とポンプ動力Hset及びポンプ設定容量Dsetを用いて、前述した式(1)及び(2)によりポンプ回転数Naが演算される。
【0179】
また、ブーム操作装置310-1、アーム操作装置309-1、旋回操作装置309-2以外の操作装置は操作されていないため、最大値選択部Mabにおいて旋回圧力が選択され、テーブル124において旋回圧力に応じた第1回転数低減割合Raが演算され、この演算値がポンプ回転数Naに乗算され、第1回転数制限値Nlimitaが出力される。
【0180】
複合操作判定部78-2では、圧力判定部Ja,Jcにおいて、ブーム圧力及び旋回圧力がそれぞれ判定圧力以上であると判定され、加算部126,127において、操作装置が操作されているアクチュエータ数として1が演算され、ブーム/バケットの複合操作判定値Jna及び旋回/スイング/ブレードの複合操作判定値Jnbとしてそれぞれ1が出力される。
【0181】
回転数演算部78-3では、テーブル116とリミッタ111と除算部Daを用いて第3目標回転数Nta3が演算され、テーブル117とリミッタ112を用いて第2目標回転数Ntb2が演算され、テーブル121と除算部Dfを用いて第2目標回転数Ntf2(負の値)が演算される。この第3目標回転数Nta3と第2目標回転数Ntb2と第2目標回転数Ntf2はサーボモータ1,2,6の目標回転数として出力され、サーボモータ1,2が右方向に回転し、サーボモータ6が左方向に回転し、ブームシリンダ17及びアームシリンダ18が伸長し、旋回モータ22が右方向に回転する。
【0182】
また、ブームシリンダ17及びアームシリンダ18から排出された圧油はブームポンプ9及びアームポンプ10に戻されるとともに、ブームシリンダ17及びアームシリンダ18のそれぞれの面積差分の不足の圧油はタンク77からチェック弁57,59を通ってブームポンプ9及びアームポンプ10に補給される。
【0183】
~効果~
1.主たる効果
本発明は、ブームシリンダ17、アームシリンダ18及びバケットシリンダ19と、走行左モータ23及び走行右モータ24を「少なくとも2つの特定の複数の油圧アクチュエータ」として位置づけている。
【0184】
そのような前提で、コントローラ78は、複数の油圧アクチュエータ19~24のうち、少なくとも2つの特定の油圧アクチュエータが同時に駆動されるよう少なくとも2つの特定の油圧アクチュエータに対応する操作装置が操作されたとき、複数の圧力センサ103~110によって検出された複数の油圧ポンプ9~16のそれぞれの吐出圧と複数の操作センサ209~215によって検出された複数の操作装置309~314のそれぞれの操作量とに基づいて、複数の油圧ポンプ9~16のうち少なくとも2つの特定の油圧アクチュエータに対応する油圧ポンプの消費動力がポンプ動力Hsetを超えないよう、複数の電動モータ1~8のうち少なくとも2つの特定の油圧アクチュエータに対応する電動モータ1~3,7,8の回転数を制御する。
【0185】
また、コントローラ78は、複数の圧力センサ103~110によって検出された少なくとも2つの特定の油圧アクチュエータに対応する油圧ポンプの吐出圧と、上記ポンプ動力Hsetと、上記ポンプ設定容量Dsetとに基づいて、上記少なくとも2つの特定の油圧アクチュエータに対応する電動モータ1~3,7,8の回転数制限値Nlimita又はNlimitbを演算し、上記少なくとも2つの特定の油圧アクチュエータに対応する操作装置の操作量に基づいて上記少なくとも2つの特定の油圧アクチュエータに対応する電動モータ1~3,7,8の第1目標回転数を演算し、かつ上記回転数制限値Nlimita又はNlimitbを超えないよう上記少なくとも2つの特定の油圧アクチュエータに対応する電動モータ1~3,7,8の第1目標回転数を補正して上記少なくとも2つの特定の油圧アクチュエータに対応する電動モータ1~3,7,8の第2目標回転数を演算し、当該第2目標回転数に基づいて上記少なくとも2つの特定の油圧アクチュエータに対応する電動モータ1~3,7,8の回転数を制御する。
【0186】
これにより、図6に示した開回路型の3ポンプシステムにおける図7に示したような馬力制御を模擬した制御を行うことが可能となり、そのような制御を模擬した制御を行わない場合に比べて油圧ポンプの消費動力を低減することができる。また、「少なくとも2つの特定の複数の油圧アクチュエータ」がブームシリンダ17、アームシリンダ18及びバケットシリンダ19である場合は、更に、複数の油圧アクチュエータ間の良好な速度バランスを確保し、良好な複合操作性を得ることができる。
【0187】
以下に具体的に説明する。
【0188】
(1)「ブーム上げとアームクラウドの複合操作」
コントローラ78の制限値演算部78-1において、ブーム圧力とアーム圧力との平均値とポンプ動力Hset及びポンプ設定容量Dsetに基づいてブーム圧力とアーム圧力との平均値に応じた第1回転数制限値Nlimitaが演算される。ポンプ動力Hsetは、馬力制御を模擬しようとする開回路型の3ポンプシステムの図7に示す最大馬力H12maxに等しい値に設定されている。回転数演算部78-3において、その第1回転数制限値Nlimita以下に制限された第3目標回転数Nta3と第2目標回転数Ntb2が演算され、この第3目標回転数Nta3を目標回転数としてサーボモータ1が駆動され、第2目標回転数Ntb2を目標回転数としてサーボモータ2が駆動され、ブームポンプ9及びアームポンプ10が駆動される。
【0189】
これにより、ブームポンプ9及びアームポンプ10の吐出圧が上昇してブームポンプ9及びアームポンプ10の合計の消費馬力がポンプ動力Hsetを超えようとした場合、消費馬力がポンプ動力Hsetを超えないようにブームポンプ9及びアームポンプ10の吐出流量を減少させる。この制御は、図6に示した開回路型の3ポンプシステムにおいて、ブームポンプ9及びアームポンプ10の合計の消費馬力が最大馬力H12maxを超えようとした場合に、図7に示した最大馬力H12maxの特性線に沿ってブームポンプ9及びアームポンプ10の吐出流量を減少させ、消費馬力が最大馬力H12maxを超えないようにする制御と等価である。このように、図6に示した開回路型の3ポンプシステムの馬力制御を模擬した制御が行われ、馬力制御を模擬した制御を行わない場合に比べて、ブームポンプ9及びアームポンプ10の消費動力を低減することができる。
【0190】
また、ブーム上げとアームクラウドの複合操作時に、ブームシリンダ17とアームシリンダ18のいずれか一方の負荷が増大してブームポンプ9又はアームポンプ10の吐出圧(ブーム圧力又はアーム圧力)が上昇した場合も、同様に、図6に示した開回路型の3ポンプシステムの馬力制御を模擬した制御が行われ、ブームシリンダ9及びアームシリンダの両方の駆動速度が低下する。これにより、ブームシリンダ17及びアームシリンダ18間の速度バランスが確保され、良好な複合操作性を得ることができる。
【0191】
(2)「アームクラウドとバケットクラウドの複合操作」
「ブーム上げとアームクラウドの複合操作」の場合と同様に、図6に示した開回路型の3ポンプシステムの馬力制御を模擬した制御が行われ、「ブーム上げとアームクラウドの複合操作」の場合と同様に消費動力低減と複合操作性確保の効果が得られる。
【0192】
(3)「アームクラウドとバケットクラウドの複合操作」
「ブーム」が「アーム」に変わり、第3目標回転数Nta3が第3目標回転数Ntc3に変わった点を除いて、コントローラ78の制限値演算部78-1及び回転数演算部78-3において、「ブーム上げとアームクラウドの複合操作」の場合と同様の制御が行われる。これにより「ブーム上げとアームクラウドの複合操作」の場合と同様に、図6に示した開回路型の3ポンプシステムの馬力制御を模擬した制御が行われ、「ブーム上げとアームクラウドの複合操作」の場合と同様に消費動力低減と複合操作性確保の効果が得られる。
【0193】
(4)「ブーム上げとアームクラウドと旋回右の複合操作」
コントローラ78の制限値演算部78-1において、テーブル124で旋回圧力に応じた第1回転数低減割合Raが演算され、この演1回転数低減割合Raが、ブーム圧力とアーム圧力との平均値とポンプ動力Hset及びポンプ設定容量Dsetを用いて、式(1)及び(2)から演算されたポンプ回転数Naに乗算され、第1回転数制限値Nlimitaが出力される。これにより第1回転数制限値Nlimitaは第1回転数低減割合Raに応じた小さな値となり、リミッタ111,112によって演算される第2目標回転数Nta2,Ntb2も、第1回転数低減割合Raが1である場合よりも小さな値となり、サーボモータ1,2の回転数も同様に減少し、ブームポンプ9及びアームポンプ10の吐出流量も減少する。その結果、ブームポンプ9、アームポンプ10及び旋回ポンプ14の合計の消費馬力がポンプ動力Hsetを超えないように制御される。この制御は、図6に示した開回路型の3ポンプシステムにおいて、第3油圧ポンプP3の吐出圧が増大して第3油圧ポンプP3の消費馬力が増加するとき、図7に矢印AR1,AR2で示すように最大馬力の特性線C1,C2をシフトさせ、第1及び第2油圧ポンプP1,P2と第3油圧ポンプP3の合計の消費馬力が最大馬力T12maxを超えないように、油圧ポンプP1,P2で消費可能な最大馬力を、第3油圧ポンプP3の消費馬力の分、減少させる制御と等価である。このように、図6に示した開回路型の3ポンプシステムの全馬力制御を模擬した制御が行われ、全馬力制御を行わない場合に比べて、ブームポンプ9、アームポンプ10及び旋回ポンプ14の消費動力を低減することができる。
【0194】
また、ブーム上げとアームクラウドの複合操作部分に対して、「ブーム上げとアームクラウドの複合操作」の場合と同様、ブームシリンダ17及びアームシリンダ18間の速度バランスが確保され、良好な複合操作性を得ることができる。
【0195】
(5)「走行前進の単独操作」
コントローラ78の制限値演算部78-1において、走行左圧力と走行右圧力との平均値とポンプ動力Hset及びポンプ設定容量Dsetに基づいて走行左圧力と走行右圧力との平均値に応じた第2回転数制限値Nlimitbが演算される。回転数演算部78-3において、その第2回転数制限値Nlimitb以下に制限された第2目標回転数Ntd2,Nte2が演算され、この第2目標回転数Ntd2,Nte2を目標回転数としてサーボモータ7,8が駆動され、走行左ポンプ15及び走行右ポンプ16が駆動される。
【0196】
これにより、走行左ポンプ15及び走行右ポンプ16の吐出圧が上昇して走行左ポンプ15及び走行右ポンプ16の合計の消費馬力がポンプ動力Hsetを超えようとした場合、前述したブーム上げとアームクラウドの複合操作の場合と同様に、消費馬力がポンプ動力Hseを超えないように走行左ポンプ15及び走行右ポンプ16の吐出流量を減少させる。このように、この場合も、図6に示した開回路型の3ポンプシステムの馬力制御を模擬した制御が行われ、馬力制御を行わない場合に比べて、走行左ポンプ15及び走行右ポンプ16の消費動力を低減することができる。
【0197】
(6)「走行後進の単独操作」
【0198】
「走行前進の単独操作」の場合と同様に、図6に示した開回路型の3ポンプシステムの馬力制御を模擬した制御が行われ、「走行前進の単独操作」の場合と同様に消費動力低減と複合操作性確保の効果が得られる。
【0199】
2.その他の効果
(7)「ブーム上げと旋回右の複合操作」
「ブーム上げとアームクラウドと旋回右の複合操作」の場合と同様、コントローラ78の制限値演算部78-1において、テーブル124で旋回圧力に応じて演算された第1回転数低減割合Raが、ブーム圧力の1/2の値(平均値)とポンプ動力Hset及びポンプ設定容量Dsetを用いて、式(1)及び(2)から演算されたポンプ回転数Naに乗算され、第1回転数制限値Nlimitaが出力される。これにより第1回転数制限値Nlimitaは第1回転数低減割合Raに応じた小さな値となり、リミッタ111によって演算される第2目標回転数Nta2も、第1回転数低減割合Raが1である場合よりも小さな値となり、サーボモータ1の回転数も同様に減少し、ブームポンプ9の吐出流量も減少する。その結果、図7に矢印AR1,AR2で示したのと同様にブームポンプ9で消費可能な最大馬力を旋回ポンプ14の消費馬力の分、減少させ、ブームポンプ9及び旋回ポンプ14の合計の消費馬力がポンプ動力Hsetを超えないように制御される。このように、アームクラウドとバケットクラウドの複合操作の場合と同様、図6に示した開回路型の3ポンプシステムの全馬力制御を模擬した制御が行われ、全馬力制御を行わない場合に比べて、ブームポンプ9及び旋回ポンプ14の消費動力を低減することができる。
【0200】
(8)「旋回右とスイング左の複合操作」
コントローラ78の複合操作判定部78-2では、圧力判定部Jc,Jdにおいて、旋回圧力及びスイング圧力がそれぞれ判定圧力以上であると判定され、加算部127において、操作装置が操作されているアクチュエータ数として2が演算され、旋回/スイング/ブレードの複合操作判定値Jnbとして「アクチュエータ数」2が出力される。
【0201】
回転数演算部78-3では、除算部Df,Dgにおいて、複合操作判定値Jnbのアクチュエータ数「2」により第1目標回転数Ntf1,Ntg1が除算され、第2目標回転数Ntf2,Ntg2として第1目標回転数Ntf1,Ntg1の1/2の値が演算され、サーボモータ6とサーボモータ4の回転数も第1目標回転数Ntf1,Ntg1が複合操作判定値Jnbで除算されない場合の半分になる。これにより旋回ポンプ14及びスイングポンプ12の吐出流量も同様に減少し、その減少した吐出流量で旋回モータ22とスイングシリンダ20が駆動される。これにより、図6に示した開回路型の3ポンプシステムで旋回とスイングの複合操作を行った場合と同様、旋回ポンプ14及びスイングポンプ12の合計の消費馬力がポンプ動力を超えないように制御され、そのような制御を行わない場合に比べて、旋回ポンプ14及びスイングポンプ12の合計の消費動力を低減することができる。
【0202】
<その他>
本実施形態において、コントローラ78は、図6に示す開回路型の3ポンプシステムの馬力制御を模擬した制御を行えるように電動モータ1~3の回転数を制御する構成した。しかし、馬力制御を模擬する開回路型の3ポンプシステムは、図6に示すシステムに限られず、他の開回路型の3ポンプシステムの馬力制御を模擬するようにしてもよい。例えば、図6に示す開回路型の3ポンプシステムでは、第1及び第2油圧ポンプP1,P2を、共通のレギュレータPRを備えたスプリットフロータイプの油圧ポンプPWの2つの吐出ポートによって構成したが、共通のレギュレータを備えた独立した2つの可変容量型油圧ポンプであってもよい。この場合でも、コントローラ78は図3に示した機能ブロック図の演算処理を用いることで、同様に馬力制御を模擬した制御を行うことができる。
【0203】
また、第1~第3油圧ポンプP1,P2,P3とそれらの吐出油によって駆動される油圧アクチュエータの組み合わせは、図6に示されたものに限らず、他の組み合わせであってもよい。この場合は、図3に示した機能ブロック図を、組み合わせの違いに応じて修正することで、その組み合わせの馬力制御を模擬した制御を行うことができる。
【符号の説明】
【0204】
1~7 サーボモータ(電動モータ)
9 ブームポンプ(油圧ポンプ)
10 アームポンプ(油圧ポンプ)
11 バケットポンプ(油圧ポンプ)
12 スイングポンプ(油圧ポンプ)
13 ブレードポンプ(油圧ポンプ)
14 旋回ポンプ(油圧ポンプ)
15 走行左ポンプ(油圧ポンプ)
16 走行右ポンプ(油圧ポンプ)
17 ブームシリンダ(特定の油圧アクチュエータ)
18 アームシリンダ(特定の油圧アクチュエータ)
19 バケットシリンダ(特定の油圧アクチュエータ)
20 スイングシリンダ(油圧アクチュエータ)
21 ブレードシリンダ(油圧アクチュエータ)
22 旋回モータ(油圧アクチュエータ)
23 走行左モータ(特定の油圧アクチュエータ)
24 走行右モータ(特定の油圧アクチュエータ)
78 コントローラ
78-1 制限値演算部
78-2 複合操作判定部
78-3 回転数演算部
103 (ブーム)圧力センサ
104 (アーム)圧力センサ
105 (バケット)圧力センサ
106 (スイング)圧力センサ
107 (ブレード)圧力センサ
108 (旋回)圧力センサ
109 (走行左)圧力センサ
110 (走行右)圧力センサ
209-1 (アーム)操作センサ
209-2 (旋回)操作センサ
210-1 (ブーム)操作センサ
210-2 (バケット)操作センサ
211 (走行左)操作センサ
212 (走行右)操作センサ
213 (スイング)操作センサ
214 (ブレード)操作センサ
300 旋回体
301 走行体
301a,301b 左右の走行装置
302 フロント作業機
303 スイングポスト
304 ブレード
306 ブーム
307 アーム
308 バケット
309-1 アーム操作装置
309-2 旋回操作装置
310-1 ブーム操作装置
310-2 バケット操作装置
311 走行左操作装置
312 走行右操作装置
313 スイング操作装置
314 ブレード操作装置
Hset ポンプ動力
Dset ポンプ設定容量
Nta1~Nth1 第1目標回転数
Nta2~Nth2 第2目標回転数
Nta3,Ntc3 第3目標回転数
Qa 仮想の油圧ポンプの流量
Na 仮想の油圧ポンプの回転数
Ra 第1回転数低減割合
Rb 第2回転数低減割合
Nlimita 第1回転数制限値
Nlimitb 第2回転数制限値
Jna,Jnb 複合操作判定値
図1
図2
図3
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6
図7