(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】帯状担体の補強構造
(51)【国際特許分類】
C02F 3/28 20230101AFI20241016BHJP
B09B 3/65 20220101ALI20241016BHJP
C02F 3/06 20230101ALI20241016BHJP
C02F 3/10 20230101ALI20241016BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
C02F3/28 B
B09B3/65
C02F3/06
C02F3/10 Z
C12M1/00 H
(21)【出願番号】P 2021060984
(22)【出願日】2021-03-31
【審査請求日】2023-12-04
(73)【特許権者】
【識別番号】507214083
【氏名又は名称】メタウォーター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 慧
【審査官】松井 一泰
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-137164(JP,A)
【文献】特開2010-136670(JP,A)
【文献】特表平06-508057(JP,A)
【文献】特開昭63-209789(JP,A)
【文献】特開2005-199182(JP,A)
【文献】実開昭53-083861(JP,U)
【文献】特開平10-259562(JP,A)
【文献】中国実用新案第207468638(CN,U)
【文献】特開2013-059734(JP,A)
【文献】特開平5-007885(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 3/28- 3/34
C02F 3/02- 3/10
C02F 11/00- 11/20
B09B 1/00- 5/00
B09C 1/00- 1/10
C12M 1/00- 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
不織布からなり帯状に延びた形状をなし、メタン発酵槽の上部に配置された上部支持体と前記メタン発酵槽の底部に配置された下部支持体との間で上下端が支持される帯状担体において、その長手方向の上端部が、前記帯状担体の幅方向の全体に亘って添設された薄板部材によって補強された、帯状担体の補強構造であって、
前記薄板部材は、その上端縁が、前記帯状担体の長手方向の上端縁から延出するように、前記帯状担体の一方の面に配置されており、
前記帯状担体の上端部であって、前記薄板部材の添設面とは反対側の面が、幅方向の全体に亘って接着された第1補強テープによって補強されており、
前記帯状担体の上端部は、前記薄板部材及び前記第1補強テープの間に配置されており、前記帯状担体の上端部、前記薄板部材及び前記第1補強テープは、前記帯状担体の幅方向に等間隔で配置された複数の固定具によって挟み付けられるように互いに固定されており、
前記薄板部材の、前記帯状担体の上端縁から延出した部分が、前記上部支持体によって支持されることを特徴とする帯状担体の補強構造。
【請求項2】
前記帯状担体は、複数枚重ね合わせられ、その片面に配置された帯状担体の幅方向中央部に、帯状担体の長手方向に沿って伸びる第2補強テープが配置されて、この第2補強テープが配置された部分に沿って、複数枚の前記帯状担体が互いに溶着されており、
前記薄板部材は、その上端縁が、複数枚重ね合わされた前記帯状担体の、長手方向の上端縁から延出するように、複数枚重ね合わされた前記帯状担体の前記第2補強テープが設けられた面に配置されており、
複数枚重ね合わされた前記帯状担体の、前記薄板部材が添設された面とは反対側の面が、幅方向の全体に亘って接着された第1補強テープによって補強されており、
複数枚の前記帯状担体の上端部は、前記薄板部材及び前記第1補強テープの間にそれぞれ配置され、前記帯状担体の上端部、前記薄板部材及び前記第1補強テープは、前記帯状担体の幅方向に等間隔で配置された複数の前記固定具によって挟み付けられるように互いに固定されて束ねられており、
複数枚の前記帯状担体は、前記メタン発酵槽内の発酵液に浸漬した状態で、その上端部から下方に向かうに従って菊花状に開くように構成されている請求項1記載の帯状担体の補強構造。
【請求項3】
前記帯状担体の上端部、前記第1補強テープ、及び前記薄板部材のそれぞれには、対応する部位において挿通孔がそれぞれ形成されており、
前記固定具は、前記挿通孔に挿通されてかしめられたものからなる請求項1又は2記載のメタン発酵槽。
【請求項4】
前記固定具は、前記帯状担体の上端部の幅方向中央部を避けて、その幅方向の左右の領域に同数個配置され、合計で偶数個のもので構成される請求項1~3のいずれか1つに記載のメタン発酵槽。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタン発酵槽に支持される帯状担体の補強構造に関する。
【背景技術】
【0002】
メタン発酵処理は、有機性廃棄物を嫌気性下で、メタン菌などの嫌気性微生物による作用により処理して、メタンガスに転換する処理方法である。
【0003】
上記メタン発酵処理を行うメタン発酵槽は、メタン発酵の処理効率を高めるため、帯状に延びる担体が、吊り下げ支持される構造が知られている。この担体は、通常のメタン発酵処理時には、メタン発酵槽内の発酵液に水没しており、浮力が働くため、下方に引っ張られる力は作用しにくい。
【0004】
しかし、例えば、メンテナンス時において、メタン発酵槽内の発酵液の液位が低下した場合は、担体に浮力が生じにくくなり、下方に引っ張られる力が強くなり、担体が切断されやすい。また、担体が切断されると、担体の切断片がメタン発酵槽内を浮遊して、発酵液の排出口や、有機性破棄物の投入口などの配管を閉塞する等の不具合が生じる。
【0005】
上記のような担体の切断という不都合を解消するため、本出願人は、担体の上下端が、下部支持体と上部支持体との間で支持され、且つ、担体の上端が、浮力が作用しない状態で含水された担体の重さによって伸びることが可能な伸縮継手を介して、上部支持体と連結された構造をなす、メタン発酵槽を開発した(下記特許文献1)。
【0006】
また、下記特許文献2には、メタン発酵槽にも利用可能な、不織布形成体が記載されている。この不織布形成体は、複数枚の不織布と、この複数枚の不織布を互いに接着して形成された接合部と、この接合部に形成された少なくとも1つの開口部とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2010-136670号公報
【文献】特開平10-259562号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献2の不織布形成体の場合、切断対策が何ら施されていないので、これをメタン発酵槽に利用した場合、メンテナンス時に、水位が低下して不織布成形体に浮力が生じににくなると、不織布成形体が切断されやすい。
【0009】
また、上記特許文献1のメタン発酵槽においては、伸縮継手により担体の切断が抑制されるが、伸縮継手は高価であり、その設置やメンテンナンスに手間がかかる。
【0010】
したがって、本発明の目的は、比較的安価で、設置やメンテナンスが容易で、切断もされにくい、帯状担体の補強構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明に係る帯状担体の補強構造は、不織布からなり帯状に延びた形状をなし、メタン発酵槽の上部に配置された上部支持体と前記メタン発酵槽の底部に配置された下部支持体との間で上下端が支持される帯状担体において、その長手方向の上端部が、前記帯状担体の幅方向の全体に亘って添設された薄板部材によって補強された、帯状担体の補強構造であって、前記薄板部材は、その上端縁が、前記帯状担体の長手方向の上端縁から延出するように、前記帯状担体の一方の面に配置されており、前記帯状担体の上端部であって、前記薄板部材の添設面とは反対側の面が、幅方向の全体に亘って接着された第1補強テープによって補強されており、前記帯状担体の上端部は、前記薄板部材及び前記第1補強テープの間に配置されており、前記帯状担体の上端部、前記薄板部材及び前記第1補強テープは、前記帯状担体の幅方向に等間隔で配置された複数の固定具によって挟み付けられるように互いに固定されており、前記薄板部材の、前記帯状担体の上端縁から延出した部分が、前記上部支持体によって支持されることを特徴とする。
【0012】
上記発明によれば、帯状担体の上端部であって、薄板部材の添設面とは反対側の面が、幅方向の全体に亘って接着された第1補強テープによって補強されているので、帯状担体の上端部の補強を図ることができる。
【0013】
また、帯状担体の上端部は、薄板部材及び第1補強テープの間に配置され、それらは帯状担体の幅方向に等間隔で配置された複数の固定具によって挟み付けられるように互いに固定され、薄板部材の延出部分が、メタン発酵槽の上部支持体に支持されているので、帯状担体の上端部を、薄板部材と第1補強テープを介して幅方向にしっかりと挟持して、メタン発酵槽の上部支持体に支持することができる。
【0014】
その結果、メンテナンス時等において、メタン発酵槽内の液位が低下して、帯状担体に含水した水の重力によって、帯状担体が下方に引っ張られた際に、その引っ張り荷重を、帯状担体の上端部の幅方向の広い範囲に亘って作用しやすくして、引っ張り荷重が所定箇所に集中することを抑制できるので、帯状担体を切断しにくくすることができる。
【0015】
また、帯状担体の上端部の挟み付けに用いた薄板部材を利用して、メタン発酵槽の上部支持体に、帯状担体を支持させたので、メタン発酵槽内に帯状担体を容易に設置することができる。更に、薄板部材は板材であり、特許文献1のメタン発酵槽における伸縮継手のように伸縮動作するものではなく、薄板部材自体のメンテナンスはほとんど不要か又は少なくて済み、コストの低廉化を図ることができる。
【0016】
本発明に係る帯状担体の補強構造においては、前記帯状担体は、複数枚重ね合わせられ、その片面に配置された帯状担体の幅方向中央部に、帯状担体の長手方向に沿って伸びる第2補強テープが配置されて、この第2補強テープが配置された部分に沿って、複数枚の前記帯状担体が互いに溶着されており、前記薄板部材は、その上端縁が、複数枚重ね合わされた前記帯状担体の、長手方向の上端縁から延出するように、複数枚重ね合わされた前記帯状担体の前記第2補強テープが設けられた面に配置されており、複数枚重ね合わされた前記帯状担体の、前記薄板部材が添設された面とは反対側の面が、幅方向の全体に亘って接着された第1補強テープによって補強されており、複数枚の前記帯状担体の上端部は、前記薄板部材及び前記第1補強テープの間にそれぞれ配置され、前記帯状担体の上端部、前記薄板部材及び前記第1補強テープは、前記帯状担体の幅方向に等間隔で配置された複数の前記固定具によって挟み付けられるように互いに固定されて束ねられており、複数枚の前記帯状担体は、前記メタン発酵槽内の発酵液に浸漬した状態で、その上端部から下方に向かうに従って菊花状に開くように構成されていることが好ましい。
【0017】
上記態様によれば、複数枚の帯状担体の上端部は、薄板部材及び第1補強テープの間にそれぞれ配置されており、帯状担体の上端部、薄板部材及び第1補強テープは、帯状担体の幅方向に等間隔で配置された複数の固定具によって幅方向に挟み付けられるように互いに固定されて束ねられているので、メタン発酵槽のメンテナンス時等に、複数枚の帯状担体が下方に引っ張られた際に、その引っ張り荷重を、帯状担体の上端部の幅方向の広い範囲に亘って作用しやすくして、引っ張り荷重が所定箇所に集中することを抑制できるため、帯状担体を切断しにくくすることができる。
【0018】
また、複数枚の帯状担体は、メタン発酵槽内の発酵液に浸漬した状態で、その上端部よりも下方部分が菊花状に開くように構成されているので、帯状担体の表面積を大きく確保することできる。
【0019】
このように、複数枚の帯状担体をメタン発酵槽内にて支持した場合でも、帯状担体の切断しにくさと、帯状担体の表面積確保との、両立を図ることができる。
【0020】
本発明に係る帯状担体の補強構造においては、前記帯状担体の上端部、前記第1補強テープ、及び前記薄板部材のそれぞれには、対応する部位において挿通孔がそれぞれ形成されており、前記固定具は、前記挿通孔に挿通されてかしめられたものからなることが好ましい。
【0021】
上記態様によれば、固定具は、帯状担体の上端部、第1補強テープ、薄板部材にそれぞれ形成された挿通孔に挿通されてかしめられたものからなるので、帯状担体と、第1補強テープと、薄板部材との、固定強度を高めることができ、メタン発酵槽の上部支持体から、帯状担体が脱落することを抑制することができる。
【0022】
本発明に係る帯状担体の補強構造においては、前記固定具は、前記帯状担体の上端部の幅方向中央部を避けて、その幅方向の左右の領域に同数個配置され、合計で偶数個のもので構成されることが好ましい。
【0023】
上記態様によれば、固定具は、帯状担体の上端部の幅方向中央を避けて、その幅方向の左右の領域に同数個配置され、合計で偶数個のもので構成されるので、帯状担体の上端部における、帯状担体と、第1補強テープと、薄板部材との、固定強度をより高めることができ、メタン発酵槽の上部支持体からの、帯状担体の脱落をより確実に防止することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、メンテナンス時等の際に、帯状担体が下方に引っ張られたときに、引っ張り荷重を、帯状担体の上端部の幅方向の広い範囲に亘って作用しやすくして、引っ張り荷重が所定箇所に集中することを抑制できるので、帯状担体を切断しにくくすることができる。また、薄板部材を利用して、メタン発酵槽の上部支持体に、帯状担体を支持させたので、メタン発酵槽内に帯状担体を容易に設置することができる。更に、薄板部材は板材であり、それ自体のメンテナンスはほとんど不要か又は少なくて済み、コストの低廉化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明に係る帯状担体の補強構造の、一実施形態を示しており、同補強構造を適用したメタン発酵槽の斜視図である。
【
図3】
図2の帯状担体が更に開いた状態の斜視図である。
【
図6】
図3の状態の補強構造を、平面方向から見た場合の説明図である。
【
図7】帯状担体の補強構造の変形例を示しており、(A)は第1変形例を示す要部拡大正面図、(B)は第2変形例を示す要部拡大正面図である。
【
図8】(A)は比較例1を示す要部拡大正面図、(B)は比較例2を示す要部拡大正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(帯状担体の補強構造の、一実施形態)
以下、図面を参照して、本発明に係る帯状担体の補強構造の、一実施形態について説明する。
【0027】
図1に示すように、本発明の帯状担体の補強構造(以下、単に「担体補強構造」ともいう)は、メタン発酵槽10に適用されるものである。この実施形態におけるメタン発酵槽10(以下、単に「発酵槽10」ともいう)は略円筒状をなしている。この発酵槽10の内部に、不織布からなり帯状に延びた形状をなした帯状担体20が、複数配置されている。
【0028】
発酵槽10の上部及び下部には、上部支持体11及び下部支持体13がそれぞれ配置されている。各支持体11,13は環状をなしており、互いに平行に配置されている。また、発酵槽10の内部には、均等な間隔を空けて、複数の支持柱15が配置されている。そして、各支持柱15の上下端部が、両支持体11,13の外周にそれぞれ連結されることで、両支持体11,13及び複数の支持柱15が一体化されて、籠状のフレームが構成される。また、各支持柱15の下端部が、発酵槽10の底壁10aに当接して、籠状のフレーム全体が支持される。更に、両支持体11,13には、複数の横フレーム11a,13aが互いに平行となるように架設されている。
【0029】
なお、発酵槽10の形状や構造は、あくまで一例であり、上記態様に限定されるものではない。
【0030】
そして、この担体補強構造は、
図2、
図3及び
図5に示すように、上部支持体11と下部支持体13との間で上下端が支持される帯状担体20において、その長手方向の上端部21が、帯状担体20の幅方向の全体に亘って添設された薄板部材30によって補強されたものとなっている。
【0031】
図3及び
図4に示すように、この実施形態の帯状担体20は、一定幅をなして所定長さで帯状に延びており、その長手方向の上端部21を発酵槽10の上部に、長手方向の下端部23(
図2参照)を発酵槽10の下部に向けて、発酵槽10内に配置されるようになっている。
【0032】
なお、後で詳述するが、
図5に示すように、帯状担体20の上端部21の一方の面28に薄板部材30が添設され、帯状担体20の上端部21の他方の面29が第1補強テープ40により補強されており、更に、帯状担体20の上端部21は、薄板部材30及び第1補強テープ40の間に配置され、帯状担体20の上端部21、薄板部材30及び第1補強テープ40は、帯状担体20の幅方向に等間隔で配置された複数の固定具50によって挟み付けられるように互いに固定されるようになっている。
【0033】
帯状担体20は単独(一枚)であってもよいが、複数枚を重ね合わせた構造としてもよい。この実施形態では、
図2や
図3に示すように、帯状担体20は、複数枚(ここでは5枚)重ね合わせられた構成となっている。なお、帯状担体20の延びる方向に直交する方向を、幅方向とする。
【0034】
図2、
図3及び
図5に示すように、複数枚の帯状担体20の重ね合わせ部分の、幅方向中央部25に、その長手方向の全体に亘って第2補強テープ60が配置されており(
図4参照)、この第2補強テープ60が配置された部分に沿って、複数枚の帯状担体20が互いに溶着されて、帯状担体20の両側部が菊花状に開く形状をなしている。
【0035】
この実施形態の場合、5枚の帯状担体20が重ね合わせられて、その重ね合わせ部分の幅方向中央部25において、帯状担体20の長手方向の全体に亘って、第2補強テープ60が配置されている。すなわち、
図4に示すように、第2補強テープ60の長手方向の上端部61は、帯状担体20の上端部21に重ね合わせされている。
【0036】
また、この第2補強テープ60は、帯状担体20に対して、第1補強テープ40が接着される面29とは、相違する面28に配置される。ここでは、
図5に示すように、複数枚重ね合わせられた帯状担体20のうち、最も外側に位置する(
図5紙面で最も右側)帯状担体20の上端部21の外面における、幅方向中央部25(
図4参照)に第2補強テープ60が配置される。そして、この第2補強テープ60が配置された部分に沿って、5枚の帯状担体20の重ね合わせ部分の幅方向中央部25が互いに溶着されることで(この際、第2補強テープ60も帯状担体20の幅方向中央部25に溶着される)、5枚の帯状担体20が幅方向中央部25を介して一体化され、一つの担体構造体が形成される。
【0037】
換言すれば、この第2補強テープ60は、5枚の帯状担体20を一体化している溶着に係る部分を補強する機能を果たし、これにより、5枚の帯状担体20が互いに裂けてしまう事態を有効に回避することが可能になる。
【0038】
この担体構造体は、
図2や
図3に示すように、幅方向中央部25を介して、その幅方向一側に5枚の帯状担体20が互いに開き可能に配置され、幅方向他側にも、5枚の帯状担体20が互いに開き可能に配置される。すなわち、この実施形態の担体構造体は、帯状担体20の幅方向片側で5枚ずつ、幅方向の左右両側で合計10枚の開き可能な帯状担体20が配置された構造となっている(片側5枚の花弁、両側で10枚の花弁を有するとも言える)。その結果、
図6に示すように、担体構造体が発酵槽10内に収容支持されて、帯状担体20が発酵液に浸漬された状態で、幅方向中央部25を介して、複数の帯状担体20が、その上端部21から下方に向かうに従って菊花状に開くようになっている。すなわち、幅方向中央部25を中心として、複数枚の帯状担体20が、その上端部21から下方に向かうに従って、放射状に開くことになる。
【0039】
なお、この実施形態における複数枚の帯状担体20は、その上端部21と、薄板部材30と、第1補強テープ40とが、帯状担体20の上端部21、薄板部材30及び第1補強テープ40は、帯状担体20の幅方向に等間隔で配置された複数の固定具50によって挟み付けられるように互いに固定されて束ねられるようになっているので、発酵槽10内の発酵液に浸漬した状態で、上端部21よりも下方部分が菊花状に開くように構成されている。
【0040】
また、各帯状担体20の上端部21には、後述する固定具50を挿通するための、丸孔状をなした挿通孔27(
図5参照)が複数形成されている。この実施形態の場合、帯状担体20の、第2補強テープ60が配置される幅方向中央部25を避けて、一方の領域A(
図4参照、詳細は後述する)に2つの挿通孔27,27が形成され、他方の領域B(
図4参照、詳細は後述する)に2つの挿通孔27,27が形成されており、4つの挿通孔27が形成されている。
【0041】
なお、この実施形態における帯状担体20は、上端部21から下端部23に至るまで一定幅で延びているが、例えば、上端部21側を幅狭にし下端部23側を幅広にしたり、上端部21側を幅広にし下端部23側を幅狭にしたり、長手方向途中部分を他の部分に対して幅広や幅狭にしたりしてもよく、その形状は特に限定されない。
【0042】
また、帯状担体20の幅は、20~300mmであることが好ましく、50~150mmであることがより好ましい。また、帯状担体20の、発酵液が含浸される前の厚さは、1~30mmであることが好ましく、2~10mmであることがより好ましい。
【0043】
なお、この実施形態では、片側5枚ずつ両側で10枚の帯状担体20が配置された構造となっているが、例えば、(1)片側2枚ずつ両側で4枚の帯状担体が配置された構造としたり、(2)片側4枚ずつ両側で8枚の帯状担体が配置された構造としたりしてもよく、更に、(3)左右両側で異なる枚数の帯状担体(例えば、片側で4枚、異なる側で5枚の帯状担体を配置)が配置された構造としたりしてもよく、帯状担体の配置枚数や配置構造は特に限定されない。
【0044】
上記の帯状担体20としては、例えば、ポリエステル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリスチレン繊維、ビニロン繊維、ポリ塩化ビニリデン繊維、アクリル繊維、炭素繊維等から選ばれる繊維素材を、不織布状に成形したものを採用することができる。これらの材料を用いた帯状担体20は、微生物の付着効率を高めることができる。また、帯状担体20の一部又は全体に、ひも状物、メッシュ、織編物等を埋設して、帯状担体20を補強してもよい。
【0045】
上記の第2補強テープ60としては、ポリエチレンや、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、アクリル、不織布、織布、紙、布、ゴム等からなり、一定幅で帯状に延びたものであって、例えば、積水成型工業社製の商品名「フォルテ」等を採用することができる。また、第2補強テープ60の幅(帯状担体20の幅方向に沿った長さ)としては、5~50mmであることが好ましく、10~30mmであることがより好ましい。
【0046】
なお、この実施形態における第2補強テープ60は、帯状担体20の重ね合わせ部分の幅方向中央部25の溶着に伴って、帯状担体20に溶着されることで、同帯状担体20の面29に接着されるようになっている。
【0047】
また、第2補強テープ60としては、粘着性を有し帯状担体20に接着可能なテープであってもよいが、粘着性を有さないテープであってもよい。後者の場合は、第2補強テープの一方の面に、接着剤(例えば、エチレン及びエチレン共重合体、ポリプロピレン、アクリル樹脂、ポリウレタン等からなる接着剤)を塗布し、帯状担体20に接着することができる。
【0048】
また、複数枚の帯状担体20の重ね合わせ部分や第2接着テープ60の溶着手段としては、例えば、超音波溶着や、高周波溶着、熱溶着等を用いることができる。
【0049】
次に、薄板部材30について説明する。
【0050】
図5に示すように、薄板部材30は、その上端縁31aが、帯状担体20の長手方向の上端縁21aから延出するように、帯状担体20の一方の面28(薄板部材30の添設面)に配置されている。すなわち、この薄板部材30は、複数枚重ね合わされた帯状担体20の、第2補強テープ60が設けられた面28に配置されている(
図5参照)。
【0051】
この実施形態では、複数枚重ね合わせられた帯状担体20のうち、最も外側に位置する帯状担体20の上端部21の外面に、第2補強テープ60を介在させるようにして、薄板部材30が配置されている(
図5参照)。なお、
図5は、帯状担体20の幅方向中央部25における断面ではないため、第2補強テープ60の上端部61は、実線では記載されていないが、実際には、帯状担体20の長手方向全体に亘って延びる第2補強テープ60の上端部61は、最も外側に位置する帯状担体20の上端部21と、薄板部材30の下端部33との間に配置され、それらによって挟み付けられるようになっている(
図5の仮想線参照)。
【0052】
また、薄板部材30の下端部33には、固定具50の挿通用の、挿通孔37(
図5参照)が複数形成されている。この実施形態の場合、帯状担体20に形成した挿通孔27に適合するように、丸孔状の挿通孔37が4つ形成されている。
【0053】
なお、薄板部材30の厚さは、1~5mmであることが好ましく、1~3mmであることがより好ましい。
【0054】
また、薄板部材30としては、例えば、SUS304,430等のステンレスや、ステンレス以外の鉄系合金、アルミニウム系合金、チタン系合金、銅系合金等の金属材料や、合成樹脂材料、セラミック等の無機材料などによって形成することができる。
【0055】
次に、第1補強テープ40について説明する。
【0056】
図4に示すように、帯状担体20の上端部21であって、薄板部材30の添設面とは反対側の面29(
図5参照)が、第1補強テープ40の上端縁が、帯状担体20の上端縁に位置するようにしながら、幅方向の全体に亘って接着された第1補強テープ40によって補強されている。
【0057】
この実施形態では、複数枚重ね合わせられた帯状担体20のうち、薄板部材30の添設面(一方の面28)とは厚さ方向において反対側の面29(
図5紙面で最も左側に位置する帯状担体29の外面)に、第1補強テープ40が、その幅方向の全体に亘って接着されることで、帯状担体20が補強されるようになっている。すなわち、
図5に示すように、帯状担体20の、第1補強テープ40が接着される面29と、帯状担体20の、第2補強テープ60が配置される面28とは相違している。なお、帯状担体20における、第1補強テープ40の接着面と、第2補強テープ60の配置面とは、同一面であってもよいが(例えば、第2補強テープ60を帯状担体20の面29に接着してもよい)、上記のように相違していることが望ましい。
【0058】
また、第1補強テープ40には、固定具50の挿通用の、挿通孔41(
図5参照)が複数形成されている。この実施形態の場合、帯状担体20に形成した挿通孔27や、薄板部材30に形成した挿通孔37に適合するように、丸孔状の挿通孔41が4つ形成されている。
【0059】
更に
図4に示すように、第1補強テープ40は、帯状担体20の上端部21の他方の面29に、その幅方向全体に亘って帯状担体20の長手方向に直交するように接着される一方、前記第2補強テープ60は、帯状担体20の一方の面28に、長手方向に沿って配置されているので、帯状担体20を正面側から見たときに、重複部分(第2補強テープ60の上端部61と、第1補強テープ40の幅方向中央部)を有しながら、略T字状をなすように両テープ40,60が配置されるようになっている。
【0060】
また、第1補強テープ40としては、上記第2補強テープ60と同様のものを採用することができる(段落0046参照)。なお、第1補強テープ40の幅(帯状担体20の長手方向に沿った長さ)としては、10~50mmであることが好ましく、15~30mmであることがより好ましい。この実施形態における第1補強テープ40は、帯状担体20の面29に対して、例えば、超音波溶着や、高周波溶着、熱溶着等で溶着することで、帯状担体20の面29に接着されるようになっている。
【0061】
また、第1補強テープ40としては、粘着性を有し帯状担体20に接着可能なテープであってもよいが、粘着性を有さないテープであってもよい。後者の場合は、第2補強テープの一方の面に、接着剤(例えば、エチレン及びエチレン共重合体、ポリプロピレン、アクリル樹脂、ポリウレタン等からなる接着剤)を塗布し、帯状担体20に接着することになる。
【0062】
次に、固定具50について説明する。
【0063】
この固定具50は、帯状担体20の上端部21を、薄板部材30及び第1補強テープ40で挟み付けて固定するものである。この実施形態の場合、帯状担体20の挿通孔27、第1補強テープ40の挿通孔41、薄板部材30の挿通孔37にそれぞれ挿通されてかしめられたものからなる。具体的には、この実施形態の固定具50は、かしめ前の状態で、略円筒状の筒部51と、その一端にフランジ状の頭部53を有する、いわゆるハトメとなっている。
【0064】
そして、固定具50の筒部51を、第1補強テープ40の挿通孔41、帯状担体20の挿通孔27、薄板部材30の挿通孔37にそれぞれ挿入して、筒部51の他端をかしめることで、フランジ状に広がる、カシメ部55が形成される。その結果、
図5に示すように、第1補強テープ40の挿通孔41の表側周縁に頭部53が係合し、薄板部材30の挿通孔37の表側周縁にカシメ部55が係合して、固定具50によって、第1補強テープ40と薄板部材30との間で、帯状担体20の上端部21が挟み付けられて、帯状担体20と薄板部材30と第1補強テープ40とが互いに固定されるようになっている。
【0065】
また、この際、帯状担体20の上端部21、薄板部材30及び第1補強テープ40は、帯状担体20の幅方向に等間隔で配置された複数の固定具50によって挟み付けられるように互いに固定される。それによって、帯状担体20の上端部21、薄板部材30及び第1補強テープ40が、複数の固定具50によって幅方向に均等に挟み付けられるように構成されている。
【0066】
このような技術的手段において、固定具の配置及び個数としては、材料力学的観点からバランスのとれた位置及び個数で配置されることが望ましく、帯状担体20の幅方向中央線について左右対称の位置及び個数で配置されることが望ましい。この場合において、第2補強テープ60の機能を減殺させないようにして、複数枚の帯状担体20が互いに裂けてしまう事態を有効に回避する観点からすれば、固定具の50の配置としては、帯状担体20の上端部21の幅方向中央部25を避けることが好ましい。
【0067】
すなわち、
図4に示すように、帯状担体20の上端部21を、帯状担体20の幅方向中心線C1を境にして、幅方向に2等分して幅方向左右に2つの領域A,Bを設けたときに、各領域A,Bに少なくとも1個の固定具50が配置されると共に、隣接する固定具50と固定具50とが等間隔で配置されている。
【0068】
この実施形態では、
図4に示すように、帯状担体20の上端部21は、幅方向中央部25を避けて、幅方向の左右の領域A,Bに、同数個(ここでは2個)の固定具50が配置されており、合計で偶数個の固定具50(ここでは4個)で構成されている。
【0069】
また、帯状担体20の幅方向に隣接する固定具50と固定具50との、中心C2,C2どうしの間隔を「T1」としたとき、各間隔T1は全て同一寸法となっており、帯状担体20の幅方向に、4個の固定具50が等間隔で配置されている。
【0070】
更に、領域Aにおける帯状担体20の幅方向一端20aと、それに隣接する固定具50の中心C2との距離、又は、領域Bにおける帯状担体20の幅方向他端20bとそれに隣接する固定具50の中心C2との距離を、「T2」としたとき、各領域A,Bにおける「T2」は同一寸法となっている。なお、各距離T2は、上記間隔T1よりも小さい寸法であることが好ましい。
【0071】
また、複数の固定具50について、隣り合う固定具50,50どうしの間隔T1に係る部分、固定具50と帯状担体20の幅方向の両端20a,20bとの距離T2に係る部分、及び、固定具50と帯状担体20の上端縁との距離に係る部分が、固定具50への応力集中により破断しないようにする観点からすれば、隣り合う固定具50,50どうしの間隔T1、固定具50と帯状担体20の幅方向の両端20a,20bとの距離T2、及び、固定具50と帯状担体20の上端縁との距離は、 固定具50への応力集中により破断しない程度の長さ寸法に設定されていることが望ましい。なお、第1補強テープ40の補強機能を減殺させないようにする観点からすれば、固定具50は、第1補強テープ40の幅方向中央に位置させることが望ましく、第1補強テープ40の幅寸法は、上記固定具50への応力集中により破断しない程度の長さ寸法が、固定具50を中心にして幅方向の両側に確保されたものとして設定される。
【0072】
また、固定具としては、円筒状の筒部51、頭部53、及びカシメ部55を有するハトメ状の固定具50のみならず、柱状部及びその一端に頭部を有するいわゆるリベットとし、柱状部の他端をカシメる固定具としたり(この場合の固定具も、帯状担体20の挿通孔27、第1補強テープ40の挿通孔41、薄板部材30の挿通孔37に挿通され、かしめられたものからなる)、或いは、ボルト及びナットからなる固定具としたり、軸部材及び止め輪(CリングやEリング等)からなる固定具としたりしてもよく、特に限定はされない。
【0073】
なお、固定具50は、
図7(A),(B)のように配置してもよい。
図7(A)の場合は、帯状担体20の上端部21の2等分された各領域A,Bに、1個ずつ固定具50が配置されている。この場合、帯状担体20の幅方向中心線C1と領域Aに配置された固定具50の中心C2との距離、及び、帯状担体20の幅方向中心線C1と領域Bに配置された固定具50の中心C2との間隔が、同一寸法となっている。すなわち、固定具50が2個の場合、固定具50が「帯状担体20の幅方向に等間隔で配置され」とは、帯状担体20の幅方向中心線C1に対して、領域A,Bにそれぞれ配置された固定具50,50の間隔が等しいことを意味する。
図7(B)の場合は、帯状担体20の上端部21の幅方向中心線C1上に固定具50を配置すると共に、各領域A,Bに1個ずつ固定具50が配置されている。この場合、3個の固定具50の間隔が、等間隔となっている。
【0074】
(作用効果)
次に、上記構成からなる担体補強構造の作用効果について説明する。
【0075】
図1に示すように、この担体補強構造は、メタン発酵槽10に適用される。複数枚の帯状担体20からなる担体構造体を、発酵槽10内にて支持する際には、上部支持体11の横フレーム11aに連結された上部支持具11bを、薄板部材30の支持孔35に引き掛けることで、担体構造体を吊り下げると共に、担体構造体の下端側に配置された下部支持具13bを、下部支持体13の横フレーム13aに連結する。それによって、
図1に示すように、発酵槽10内に、複数の担体構造体が支持される。
【0076】
そして、発酵槽10内に、図示しない有機性廃棄物導入管などから有機性廃棄物を供給し、発酵槽10内に供給された有機性廃棄物を、帯状担体20及び発酵槽10内に滞留する発酵液に担持された嫌気性微生物によって、メタン発酵させる。なお、発酵槽10内の発酵液は、供給された有機性廃棄物と同量の発酵液が、図示しない発酵廃液引き抜き管等から引き抜かれ、発酵槽10内には、常時一定量の発酵液が満ちている。そして、有機性廃棄物をメタン発酵して得られたバイオガスは、図示しないバイオガス取出し管等から取り出される。
【0077】
定常運転時は、発酵槽10内の発酵液の液面は、ほぼ帯状担体20の上端部21以上の高さまで満ちている。このため、帯状担体20のほぼ全体に浮力が働いており、重力によって下方へ引っ張られる力が弱いため、帯状担体20は切断されにくい。また、帯状担体20の上下端が、上下支持体11,13によって支持されているので、発酵液中に帯状担体20が浮遊することもない。
【0078】
そして、この担体補強構造においては、帯状担体20の上端部21であって、薄板部材30の添設面とは反対側の面が、幅方向の全体に亘って接着された第1補強テープ40によって補強されているので、帯状担体20の上端部21の補強を図ることができる。
【0079】
また、帯状担体20の上端部21は、薄板部材30及び第1補強テープ40の間に配置され、それらは帯状担体20の幅方向に等間隔で配置された固定具50によって挟み付けられるように互いに固定され、帯状担体20の挟み付けに利用した薄板部材30の延出部分が、発酵槽10の上部支持体11に支持されているので、帯状担体20を、薄板部材30を介して発酵槽10の上部支持体11に支持することができる。
【0080】
その結果、例えば、発酵槽10のメンテナンス時において、発酵槽10内の液位が低下して、帯状担体20に含水した水の重力によって、帯状担体20が下方に引っ張られた際に、その引っ張り荷重を、帯状担体20の上端部21の幅方向の広い範囲に亘って作用しやすくして、引っ張り荷重が所定箇所に集中することを抑制できるので、帯状担体20を切断しにくくすることができる。
【0081】
また、帯状担体20の上端部21の挟み付けに用いた薄板部材30を利用して、発酵槽10の上部支持体11に、帯状担体20を支持させたので、発酵槽10内に帯状担体20を容易に設置することができる。更に、薄板部材30は板材であり、特許文献1のメタン発酵槽における伸縮継手のように伸縮動作するものではなく、薄板部材30自体のメンテナンスはほとんど不要か又は少なくて済み、コストの低廉化を図ることができる。
【0082】
更に、帯状担体20の上端部21、薄板部材30及び第1補強テープ40が、固定具50によって幅方向に均等に挟み付けられた場合には、メンテナンス時等において、メタン発酵槽10内の液位が低下して、帯状担体20に含水した水の重力によって、帯状担体20が下方に引っ張られた際に、その引っ張り荷重が、帯状担体20の上端部21の幅方向に均等にかかるので、帯状担体20をより切断しにくくすることができる。
【0083】
また、この実施形態においては、
図3や
図6に示すように、帯状担体20は、複数枚重ね合わせられ、その重ね合わせ部分に第2補強テープ60が配置されて、この第2補強テープ60が配置された部分に沿って、複数枚の帯状担体20が互いに溶着されて、帯状担体20の両側部が下方に向かうに従って菊花状に開く形状をなしている。更に、複数枚の帯状担体20の上端部21は、薄板部材30及び第1補強テープ40の間にそれぞれ配置されており、帯状担体20の上端部21、薄板部材30及び第1補強テープ40は、帯状担体20の幅方向に等間隔で配置された固定具50によって挟み付けられるように互いに固定されて束ねられており(
図5参照)、複数枚の帯状担体20は、発酵槽10内の発酵液に浸漬した状態で、その上端部よりも下方部分が菊花状に開くように構成されている(
図6参照)。
【0084】
上記形態によれば、複数枚の帯状担体20の上端部21は、薄板部材30及び第1補強テープ40の間にそれぞれ配置されており、帯状担体20の上端部21、薄板部材30及び第1補強テープ40は、帯状担体20の幅方向に等間隔で配置された固定具50によって挟み付けられるように互いに固定されて束ねられているので、発酵槽10のメンテナンス時等に、複数枚の帯状担体20が下方に引っ張られた際に、その引っ張り荷重を、帯状担体20の上端部21の幅方向の広い範囲に亘って作用しやすくして、引っ張り荷重が所定箇所に集中することを抑制できるため、帯状担体20を切断しにくくすることができる。
【0085】
なお、この実施形態では、第2補強テープ60は、帯状担体20の長手方向全体に亘って延びており、その上端部61が、帯状担体20の上端部21と薄板部材30の下端部33との間に配置されており、帯状担体20の上端部21、薄板部材60、及び第1補強テープ40が、帯状担体20の幅方向に等間隔で配置された複数の固定具50で挟み付けられたときに、第2補強テープ60の上端部61が、帯状担体20の上端部21と薄板部材30の下端部33とで挟み込まれるように構成されている(
図5の想像線参照)。そのため、第2補強テープ60の上端部61が、帯状担体20の上端部21と薄板部材30の下端部33とで挟み込まれるので、帯状担体20の上端部21から、第2補強テープ60が剥がれる等の事態を防止することができ、帯状担体20の上端部21を安定して補強することが可能となり、帯状担体20をより一層切断しにくくすることができる。
【0086】
また、
図6に示すように複数枚の帯状担体20は、発酵槽10内の発酵液に浸漬した状態で、その上端部21から下方に向かうに従って菊花状に開くように構成されているので、帯状担体20の表面積を大きく確保することできる。
【0087】
このように、この実施形態の担体補強構造においては、複数枚の帯状担体20を発酵槽10内にて支持した場合でも、帯状担体20の切断しにくさと、帯状担体20の表面積確保との、両立を図ることができる。
【0088】
更に、この実施形態においては、
図5に示すように、固定具50は、帯状担体20の上端部21、第1補強テープ40、薄板部材30にそれぞれ形成された挿通孔(挿通孔27、挿通孔41、挿通孔37)に挿通されてかしめられたものからなる。そのため、帯状担体20と、第1補強テープ40と、薄板部材30との、固定強度を高めることができ、発酵槽10の上部支持体11から、帯状担体20が脱落することを抑制することができる。
【0089】
また、この実施形態においては、
図4に示すように、固定具50は、帯状担体20の上端部21の幅方向中央部25を避けて、その幅方向の左右の領域A,Bに同数個配置され、合計で偶数個のもので構成される。そのため、帯状担体20の上端部21における、帯状担体20と、第1補強テープ40と、薄板部材30との、固定強度をより高めることができ、発酵槽10の上部支持体11からの、帯状担体20の脱落をより確実に防止することができる。
【0090】
更に、この実施形態においては、
図5に示すように、帯状担体20の、第1補強テープ40が接着される面29と、帯状担体20の、第2補強テープ60が配置される面28とは相違している。そのため、第1補強テープ40と第2補強テープ60とが重なることを防止して、複数の帯状担体20の重ね合わせ部分に、溶着されない部分が生じることを防ぐことができる。
【0091】
また、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で、各種の変形実施形態が可能であり、そのような実施形態も本発明の範囲に含まれる。
【実施例】
【0092】
メタン発酵槽に吊り下げ支持した帯状担体の脱落試験を行った。
【0093】
(実施例)
図4に示す帯状担体20と同様の、複数枚の帯状担体からなる、実施例の帯状担体構造体を製造した。固定具は4個であり、花弁(開き可能な帯状担体)の数は、帯状担体の幅方向片側側で5枚、幅方向の左右両側で合計10枚となっている。
【0094】
(比較例1)
図8(A)に示すような、複数枚の帯状担体からなる、比較例1の帯状担体構造体を製造した。花弁数は、実施例と同様に、帯状担体の幅方向片側側で5枚、幅方向の左右両側で合計10枚となっている。また、帯状担体の幅方向中央部であって、その裏側には帯状担体の長さ方向に沿って延びる、吊り下げ具が配置されており、この吊り下げ具の下端部が2つの固定具で固定されている。
【0095】
(比較例2)
図8(B)に示すような、複数枚の帯状担体からなる、比較例2の帯状担体構造体を製造した。また、帯状担体の幅方向中央部であって、その両側には帯状担体の長さ方向に沿って延びる、一対の吊り下げ具が配置されており、これらの一対の吊り下げ具によって、複数枚の帯状担体が挟持され、2つの固定具で固定されている。なお、花弁数は、実施例及び比較例1と同様である。
【0096】
(比較例3)
比較例1と同様に吊り下げ具を裏側のみとすると共に、花弁数を10枚から4枚(片側2枚)へ減少させたものを有する、比較例3の帯状担体構造体を製造した。
【0097】
(試験方法)
上記実施例及び比較例1~3をメタン発酵槽の上部支持体に吊り下げ支持したまま運用し、所定期間経過後、メタン発酵槽から発酵液を引き抜いた。その際に、上部支持体から脱落した本数を測定した。その結果を下記表1に示す。
【表1】
【0098】
上記表1に示すように、実施例では、脱落したものは存在せず、帯状担体が切断されにくいことが実証できた。
【符号の説明】
【0099】
10 メタン発酵槽(発酵槽)
10a 底壁
11 上部支持体
11a 横フレーム
11b 上部支持具
13 下部支持体
13a 横フレーム
13b 下部支持具
15 支持柱
20 帯状担体
21 上端部
21a 上端縁
23 下端部
25 幅方向中央部
27 挿通孔
28 面
29 面
30 薄板部材
31 上端部
31a 上端縁
33 下端部
35 支持孔
37 挿通孔
41 挿通孔
50 固定具
51 筒部
53 頭部
55 カシメ部
60 第2補強テープ
61 上端部