(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】封止構造及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
F16J 13/14 20060101AFI20241016BHJP
【FI】
F16J13/14
(21)【出願番号】P 2021082210
(22)【出願日】2021-05-14
【審査請求日】2023-12-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390025243
【氏名又は名称】ポップリベット・ファスナー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】竹永 智裕
(72)【発明者】
【氏名】内田 圭亮
(72)【発明者】
【氏名】岡本 竜也
(72)【発明者】
【氏名】安藤 悟
(72)【発明者】
【氏名】成田 登志雄
(72)【発明者】
【氏名】今泉 博司
(72)【発明者】
【氏名】山口 直樹
【審査官】鵜飼 博人
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-037985(JP,A)
【文献】特開2002-308319(JP,A)
【文献】特開平06-281010(JP,A)
【文献】特開平04-211766(JP,A)
【文献】特開平09-079382(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0238482(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 13/14
F16J 15/00
F16J 13/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定部材の貫通孔を封止する封止構造であって、
前記貫通孔内に挿入され、第1厚さの薄板で形成された円筒形状の一方が開口し他方が塞がれた本体部と、
前記本体部の開口側端に接続され、前記本体部から離れるに従って徐々に外側へ拡径するテーパ部と、
前記テーパ部に接続され、前記第1厚さよりも薄い薄板で形成され、内側に屈曲することで外側に張り出した張出部が前記貫通孔の内周面に弾性的に当接する第1屈曲部と、
前記第1屈曲部に接続され、前記第1厚さよりも薄い薄板で形成され、外側に屈曲することで先端部が前記貫通孔の内周面に弾性的に当接する第2屈曲部と、
を備える封止構造。
【請求項2】
請求項
1記載の封止構造であって、
前記貫通孔の内周面に凹状の切欠け部が形成されており、
前記第1屈曲部の張出部及び第2屈曲部の先端部うちの少なくとも一方が前記切欠け部に嵌っている、封止構造。
【請求項3】
請求項
1又は2に記載の封止構造であって、
前記第2屈曲部の先端部の厚さは、前記第1屈曲部の張出部の厚さよりも厚く形成されている、又は、
前記第2屈曲部の先端部は、外側へ拡径するテーパ形状となっている、封止構造。
【請求項4】
請求項1乃至
3のうちのいずれか1項記載の封止構造であって、
前記本体部の内周面には、前記本体部を軸線方向へ引っ張るための引張り用治具に形成された雄ネジ山が噛み合う雌ネジ山が形成されている、封止構造。
【請求項5】
所定部材の貫通孔を封止する封止構造の製造方法であって、
第1厚さの薄板で形成された円筒形状の一方が開口し他方が塞がれた本体部と、前記本体部の開口側端に一端が接続され前記本体部から離れるに従って徐々に外側へ拡径するテーパ部と、前記テーパ部の他端に接続され、前記第1厚さよりも薄い薄板で形成された円筒形状の円筒部と、を有する封止部材を前記貫通孔内に挿入するステップと、
前記貫通孔内の前記円筒部の先端側に押え用治具を配置するステップと、
前記本体部を前記円筒部側へ押圧しつつ又は引っ張りつつ、前記円筒部の先端を前記押え用治具で押さえることで、前記円筒部を外側に座屈させ、外側に張り出した張出部を前記貫通孔の内周面に弾性的に当接させるステップと、
を含む、封止構造の製造方法。
【請求項6】
請求項
5記載の封止構造の製造方法であって、
前記本体部を前記円筒部側へ押圧し又は引っ張り、前記円筒部の先端を前記押え用治具に当接させることで、該円筒部の先端を押さえる、
封止構造の製造方法。
【請求項7】
請求項
5記載の封止構造の製造方法であって、
前記押え用治具によって前記円筒部の先端を前記貫通孔の内周面に押し付けるように前記押え用治具を配置し、
前記本体部を前記円筒部側へ押圧する又は引っ張ることで、前記円筒部を外側に座屈させ、外側に張り出した第1屈曲部の張出部を前記貫通孔の内周面に弾性的に当接させると共に、前記第1屈曲部の先端側を外側に屈曲させて第2屈曲部を形成する、
封止構造の製造方法。
【請求項8】
請求項
5乃至7のうちのいずれか1項記載の封止構造の製造方法であって、
前記本体部の内周面に形成された雌ネジ山に引張り用治具の雄ネジ山を螺合させて、あるいは、前記本体部の内周面に形成された凹部又は凸部に引張り用治具を引っ掛けて、
前記引張り用治具を引っ張りつつ、前記円筒部の先端を前記押え用治具で押さえることで、前記円筒部を外側に座屈させ外側に張り出した張出部を前記貫通孔の内周面に弾性的に当接させる、
封止構造の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貫通孔を封止する封止構造及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
貫通孔をプラグ栓で封止する封止構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記封止構造においては、プラグ栓に内圧がかかった場合に、プラグ栓が抜け、貫通孔のシール性を担保できない虞がある。
【0005】
本発明は、かかる課題を解決するためになされたものであり、貫通孔のシール性が十分に担保できる封止構造及びその製造方法を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明の一態様は、
所定部材の貫通孔を封止する封止構造であって、
前記貫通孔内に挿入され、第1厚さの薄板で形成された円筒形状の一方が開口し他方が塞がれた本体部と、
前記本体部の開口側端に接続され、前記本体部から離れるに従って徐々に外側へ拡径するテーパ部と、
前記テーパ部に接続され、前記第1厚さよりも薄い薄板で形成され、内側に屈曲することで外側に張り出した張出部が前記貫通孔の内周面に弾性的に当接する第1屈曲部と、
を備える封止構造
である。
この一態様において、前記第1屈曲部に接続され、前記第1厚さよりも薄い薄板で形成され、外側に屈曲することで先端部が前記貫通孔の内周面に弾性的に当接する第2屈曲部を、更に備えていてもよい。
この一態様において、前記貫通孔の内周面に凹状の切欠け部が形成されており、前記第1屈曲部の張出部及び第2屈曲部の先端部うちの少なくとも一方が前記切欠け部に嵌っていてもよい。
この一態様において、前記第2屈曲部の先端部の厚さは、前記第1屈曲部の張出部の厚さよりも厚く形成されている、又は、前記第2屈曲部の先端部は、外側へ拡径するテーパ形状となっていてもよい。
この一態様において、前記本体部の内周面には、前記本体部を軸線方向へ引っ張るための引張り用治具に形成された雄ネジ山が噛み合う雌ネジ山が形成されていてもよい。
上記目的を達成するための本発明の一態様は、
所定部材の貫通孔を封止する封止構造の製造方法であって、
第1厚さの薄板で形成された円筒形状の一方が開口し他方が塞がれた本体部と、前記本体部の開口側端に一端が接続され前記本体部から離れるに従って徐々に外側へ拡径するテーパ部と、前記テーパ部の他端に接続され、前記第1厚さよりも薄い薄板で形成された円筒形状の円筒部と、を有する封止部材を前記貫通孔内に挿入するステップと、
前記貫通孔内の前記円筒部の先端側に押え用治具を配置するステップと、
前記本体部を前記円筒部側へ押圧しつつ又は引っ張りつつ、前記円筒部の先端を前記押え用治具で押さえることで、前記円筒部を外側に座屈させ、外側に張り出した張出部を前記貫通孔の内周面に弾性的に当接させるステップと、
を含む、封止構造の製造方法
であってもよい。
この一態様において、前記本体部を前記円筒部側へ押圧し又は引っ張り、前記円筒部の先端を前記押え用治具に当接させることで、該円筒部の先端を押さえてもよい。
この一態様において、前記押え用治具によって前記円筒部の先端を前記貫通孔の内周面に押し付けるように前記押え用治具を配置し、前記本体部を前記円筒部側へ押圧する又は引っ張ることで、前記円筒部を外側に座屈させ、外側に張り出した第1屈曲部の張出部を前記貫通孔の内周面に弾性的に当接させると共に、前記第1屈曲部の先端側を外側に屈曲させて第2屈曲部を形成してもよい。
この一態様において、前記本体部の内周面に形成された雌ネジ山に引張り用治具の雄ネジ山を螺合させて、あるいは、前記本体部の内周面に形成された凹部又は凸部に引張り用治具を引っ掛けて、前記引張り用治具を引っ張りつつ、前記円筒部の先端を前記押え用治具で押さえることで、前記円筒部を外側に座屈させ外側に張り出した張出部を前記貫通孔の内周面に弾性的に当接させてもよい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、貫通孔のシール性が十分に担保できる封止構造及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態1に係る封止構造の構成を示す断面図である。
【
図2】貫通孔の内周面に形成した切欠け部を示す図である。
【
図3】本実施形態1に係る封止構造の製造方法のフローを示すフローチャートである。
【
図4】本実施形態1に係る封止構造の製造工程を説明する図である。
【
図5】貫通孔の耐圧を検証した結果を示す図である。
【
図6】本実施形態2に係る封止構造の構成を示す断面図である。
【
図7】本実施形態2に係る封止構造の製造方法を説明するための図である。
【
図8】押え用治具を円筒部内のより深い位置に挿入した状態を示す図である。
【
図9】貫通孔の内周面に形成した切欠け部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施形態1
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態1に係る封止構造の構成を示す断面図である。なお、
図1及び後述の
図2乃至
図9において、構造を分かり易くするため、封止構造1、20の左側部分のみを示している。封止構造1、20の右側部分は、中心軸線を中心にして左側部分と対称の形状を有している。
【0010】
本実施形態1に係る封止構造1は、例えば、トランスアクスル用ケースの潤滑用穴などの所定部材の貫通孔5を封止する。
【0011】
本実施形態1に係る封止構造1は、本体部2と、本体部2に接続されたテーパ部3と、テーパ部3に接続された第1屈曲部4と、を備えている。本体部2、テーパ部3、及び、第1屈曲部4は、金属で一体成形されている。本体部2、テーパ部3、及び、第1屈曲部4は、例えば、SUS410などのステンレス鋼で成形されている。貫通孔5を構成するケースなどの部材は、例えば、ADC12などのアルミニウム合金で形成されている。
【0012】
本体部2は、貫通孔5内に挿入され、第1厚さの薄板で形成された円筒形状の部材である。円筒形状の一方は開口し、他方が塞がれている。本体部2の内周面には、後述の引張り用治具(引張り治具)の雄ネジ山が噛み合う雌ネジ山21が形成されていてもよい。
【0013】
テーパ部3の一端は、本体部2の開口側端に接続されている。テーパ部3は、本体部2から離れるに従って徐々に外側へ拡径する。テーパ部3は、本体部2側から離れるに従って徐々に薄くなる薄板で形成されている。
【0014】
第1屈曲部4は、テーパ部3の他端に接続されている。第1屈曲部4は、第1厚さよりも薄い薄板で形成されている。第1屈曲部4は、内側(中心軸線側)に屈曲することで外側(貫通孔5の内周面51側)に張り出した張出部41を有する。張出部41は、貫通孔5の内周面51に弾性的に当接している。
【0015】
ところで、従来、例えば、貫通孔を塞ぐプラグ栓に圧力がかかった場合に、プラグ栓が抜け、貫通孔のシール性を担保できないという問題が生じていた。
【0016】
これに対し、本実施形態1に係る封止構造1において、上述の如く、テーパ部3に接続され、第1厚さよりも薄い薄板で形成され、内側に屈曲することで外側に張り出した第1屈曲部4の張出部41が貫通孔5の内周面51に弾性的に当接する。
【0017】
このように、第1屈曲部4の張出部41が貫通孔5の内周面51に弾性的に当接することで、封止構造1が貫通孔5から抜け出すのを防止できる。これにより、貫通孔5のシール性を十分に担保できる。また、第1屈曲部4の張出部41が貫通孔5の内周面51に弾性的に当接して、貫通孔5を塞ぐため、貫通孔5の公差の影響を受けない。
【0018】
貫通孔5の内周面51において、
図2に示す如く、第1屈曲部4の張出部41が当接する部分に凹状の切欠け部52が形成されていてもよい。切欠け部52は、貫通孔5の内周面51において、周方向に溝状に形成されている。第1屈曲部4の張出部41は、切欠け部52に嵌っている。これにより、封止構造1が貫通孔5から抜け出すのをより確実に防止できる。
【0019】
続いて、本実施形態1に係る封止構造の製造方法について
図3及び
図4を参照して説明する。
図3は、本実施形態1に係る封止構造の製造方法のフローを示すフローチャートである。
図4は、本実施形態1に係る封止構造の製造工程を説明する図である。
【0020】
図4(a)に示す如く、封止部材10は、本体部11と、テーパ部12と、円筒部13を有している。本体部11は、第1厚さの薄板で形成された円筒形状の部材である。その円筒形状の一方は開口し、他方が塞がれている。本体部11の開口側端に、テーパ部12の一端が接続されている。テーパ部12は、本体部11から離れるに従って徐々に外側へ拡径する。テーパ部12の他端に円筒部13が接続されている。円筒部13は、第1厚さよりも薄い薄板で形成された円筒形状の部材である。
【0021】
最初に、
図4(a)に示す如く、封止部材10の本体部11の内周面の雌ネジ山111に引張り用治具100の雄ネジ山を螺合させ、封止部材10及び引張り用治具100を貫通孔5内に挿入する(ステップS101)。
【0022】
図4(b)に示す如く、貫通孔5内の円筒部13の先端側に押え用治具(押え治具)110を配置する(ステップS102)。
【0023】
引張り用治具100で本体部11を引っ張りつつ、円筒部13の先端を押え用治具110で押さえることで、円筒部13を外側に座屈(塑性変形)させる(ステップS103)。 これにより、
図4(c)に示す如く、外側に張り出した張出部41を貫通孔5の内周面51に弾性的に当接させる(ステップS104)。
【0024】
円筒部13は、第1厚さよりも薄い薄板で形成されているため、引張り用治具100により本体部11を引っ張りつつ、円筒部13の先端を押え用治具110で押さえることで、上述の如く、円筒部13を座屈させることができる。
【0025】
本体部11の内周面に、雌ネジ山111の代わりに、凹部又は凸部が形成されている構成であってもよい。本体部11の内周面の凹部又は凸部に引張り用治具を引っ掛け、上述の如く、引張ってもよい。このように、本体部11を容易に引張り、円筒部13を外側に座屈させ張出部41を貫通孔5の内周面51に弾性的に当接させることができる。
【0026】
なお、本体部11を、開口の反対側から押圧することで、円筒部13を外側に座屈させ張出部41を貫通孔5の内周面51に弾性的に当接させてもよい。
【0027】
図4(d)に示す如く、本体部2から引張り治具100を取り外し、第1屈曲部4の先端から押え用治具110を離間させる(ステップS105)。
【0028】
第1屈曲部4の先端から押え用治具110を離間させると、第1屈曲部4の張出部41が貫通孔5の内周面51に弾性的に当接する力(以下、スプリングバック力)により、封止構造1は、貫通孔5内に固定される。さらに、このスプリングバック力を大きくすることにより、封止構造1が貫通孔5からより抜け出し難くなる。
【0029】
ここで、スプリングバック力の調整方法について説明する。例えば、貫通孔5や第1屈曲部4における厚さ、ヤング率などを調整することで、スプリングバック力を大きくすることができる。
【0030】
図5は、貫通孔の肉厚を変化させ、その耐圧を検証した結果を示す図である。
図5に示す耐圧検証結果によれば、貫通孔5側をアルミニウム合金(ADC12:線膨張係数21×10
-6)で構成して、貫通孔5の肉厚を薄くして、封止構造1を収縮し難いステンレス鋼(SUS410:線膨張係数9.9×10
-6)で構成できる。これにより、上記スプリングバック力を大きくし、封止構造1のシール性を向上させることができる。なお、低温及び常温では、上記調整により、スプリングバック力を大きくすることができるが、高温時には線膨張差により締め代が減ってしまう為、全域でシール性を確保できるように調整を行うのが好ましい。
【0031】
以上、本実施形態1に係る封止構造1は、貫通孔5内に挿入され、第1厚さの薄板で形成された円筒形状の一方が開口し他方が塞がれた本体部2と、本体部2の開口側端に接続され、本体部2から離れるに従って徐々に外側へ拡径するテーパ部3と、テーパ部3に接続され、第1厚さよりも薄い薄板で形成され、内側に屈曲することで外側に張り出した張出部41が貫通孔5の内周面51に弾性的に当接する第1屈曲部4と、を備える。これにより、第1屈曲部4の張出部41を貫通孔5の内周面51に弾性的に当接させ、封止構造1が貫通孔5から抜け出すのを防止できる。したがって、貫通孔5のシール性が十分に担保できる。
【0032】
実施形態2
図6は、本実施形態2に係る封止構造の構成を示す断面図である。本実施形態2に係る封止構造20は、第1屈曲部4に接続され、第1厚さよりも薄い薄板で形成され、外側に屈曲することで先端部61が貫通孔5の内周面51に弾性的に当接する第2屈曲部6を、更に備えている。第1屈曲部4及び第2屈曲部6は一体的に成形されている。
【0033】
本実施形態2に係る封止構造20によれば、貫通孔5の内周面51に対し、第1屈曲部4の張出部41だけでなく、第2屈曲部6の先端部61も弾性的に当接する。したがって、封止構造20が貫通孔5から抜け出すのをより確実に防止でき、貫通孔5のシール性がより十分に担保できる。
【0034】
ここで、本実施形態2に係る封止構造の製造方法について、
図7を参照して説明する。
最初に、
図7(a)に示す如く、封止部材10の本体部11の内周面の雌ネジ山111に引張り用治具100の雄ネジ山を螺合させ、封止部材10及び引張り用治具100を貫通孔5内に挿入する。このように、封止部材10を引張り用治具100と共に貫通孔5内に挿入し、容易に位置決めできるため、作業性が向上する。
【0035】
図7(b)に示す如く、押え用治具110によって円筒部13の先端を貫通孔5の内周面51に押し付ける。
なお、封止部材10の本体部11を貫通孔5内に挿入し、押え用治具110によって円筒部13の先端を貫通孔5の内周面51に押し付け固定した後、本体部11の内周面の雌ネジ山111に引張り用治具100の雄ネジ山を螺合させてもよい。
【0036】
図7(c)に示す如く、引張り用治具100を引っ張りつつ、円筒部13の先端を押え用治具110で押さえることで、円筒部13を外側に座屈させて、外側に張り出した第1屈曲部4の張出部41を貫通孔5の内周面51に弾性的に当接させると共に、第1屈曲部4の先端を外側に屈曲させて、第2屈曲部6を形成する。
【0037】
円筒部13は、第1厚さよりも薄い薄板で形成されているため、引張り用治具100により本体部2を引っ張りつつ、円筒部13の先端を押え用治具110で押さえることで、上述の如く、円筒部13を座屈させて第1屈曲部4を形成することができる。さらに、押え用治具110によって円筒部13の先端を貫通孔5の内周面51に押し付けられているため、第1屈曲部4の先端を外側に屈曲させて第2屈曲部6を形成することができる。
【0038】
図7(d)に示す如く、本体部2から引張り治具100を取り外し、第2屈曲部6の先端61から押え用治具110を離間させる。
【0039】
なお、本実施形態2において、第2屈曲部6の先端部61の厚さを第1屈曲部4の張出部41の厚さよりも厚く形成されていてもよい。また、第2屈曲部6の先端部61は、外側へ拡径するテーパ形状となっていてもよい。
【0040】
これにより、厚いあるいはテーパ形状の円筒部13の先端部を押え用治具110で押え、屈曲可能な部分を短くすることで、上記第1及び第2屈曲部4、6のスプリングバック力を大きくすることができる。
【0041】
本実施形態2において、
図8に示す如く、押え用治具110を円筒部13内のより深い位置に挿入し、円筒部13の先端を押え用治具110で押さえてもよい。この場合、引張り用治具100を引っ張りつつ、円筒部13の先端を押え用治具110で押さえることで、円筒部13を外側に座屈させて、外側に張り出した第1屈曲部4の張出部41を貫通孔5の内周面51により強く当接させると共に、第1屈曲部4の先端を貫通孔5の内周面51に当接させることができる。
【0042】
本実施形態2において、
図9に示す如く、貫通孔5の内周面51において、第1屈曲部4の張出部41が当接する部分に切欠け部52を形成すると共に、第2屈曲部6の先端部61が当接する部分に切欠け部53を形成してもよい。これにより、封止構造が貫通孔5から抜け出すのをより確実に防止できる。
【0043】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他のさまざまな形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0044】
1 封止構造、2 本体部、3 テーパ部、4 第1屈曲部、5 貫通孔、6 第2屈曲部、10 封止部材、12 テーパ部、13 円筒部、20 封止構造、21 雌ネジ山、41 張出部、51 内周面、52 切欠け部、53 切欠け部、61 先端部、100 引張り用治具、110 押え用治具、111 雌ネジ山