(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】プレス成形装置及び金属成形物の製造方法
(51)【国際特許分類】
B22D 18/02 20060101AFI20241016BHJP
【FI】
B22D18/02 C
B22D18/02 T
B22D18/02 Q
(21)【出願番号】P 2021193475
(22)【出願日】2021-11-29
【審査請求日】2023-09-05
(73)【特許権者】
【識別番号】391002498
【氏名又は名称】フタバ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】中尾 拡
(72)【発明者】
【氏名】金武 篤史
(72)【発明者】
【氏名】兵藤 清岳
【審査官】有田 恭子
(56)【参考文献】
【文献】特公昭48-008372(JP,B1)
【文献】特開2000-052017(JP,A)
【文献】特開昭56-047263(JP,A)
【文献】特開2015-150396(JP,A)
【文献】特開昭61-276762(JP,A)
【文献】国際公開第2015/053373(WO,A1)
【文献】実開平05-078360(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 18/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半凝固金属材料をプレス成形して成形物を製造するプレス成形装置であって、
第1の金型と、前記第1の金型と対向して配置され、前記第1の金型と組み合わされたときに前記半凝固金属材料の成形を行うための成形空間が形成される第2の金型と、を備え、
前記第1の金型は、気体を外部へ排出可能な隙間を有し、
前記隙間の少なくとも一部は、前記成形物の外縁に位置する外縁部を形成する外縁形成部に沿って配置されて
おり、
前記外縁形成部は、前記第2の金型から前記第1の金型へ向かう方向である第1方向に窪んだ溝状の部分であり、
前記外縁形成部から前記第1の金型の中央に向かう方向を内側としたとき、前記隙間は、前記外縁形成部の外縁から前記内側に間隔を空けて配置されており、
前記隙間の少なくとも一部は、前記外縁形成部における前記第1方向の端部から、前記第1方向に伸びている、プレス成形装置。
【請求項2】
請求項1に記載のプレス成形装置であって、
前記第1の金型は、前記成形空間に至るように構成された貫通孔と、前記貫通孔に配置されるエジェクター部材と、を備え、
前記隙間は、前記貫通孔を構成する壁面と前記エジェクター部材との間に形成される隙間である、プレス成形装置。
【請求項3】
請求項1
又は請求項
2に記載のプレス成形装置であって、
前記隙間は、前記第2の金型から前記第1の金型へ向かう方向に向かって気体を排出可能に形成されている、プレス成形装置。
【請求項4】
請求項1から請求項
3のいずれか1項に記載のプレス成形装置であって、
前記成形物は、調理器具の少なくとも一部である、プレス成形装置。
【請求項5】
請求項1から請求項
4のいずれか1項に記載のプレス成形装置を用いた金属成形物の製造方法であって、
前記第1の金型及び前記第2の金型の間に半凝固金属材料を配置することと、
前記第1の金型及び前記第2の金型を接近させて前記半凝固金属材料を圧縮変形させると共に、前記隙間に前記半凝固金属材料を流しこむことと、を有する金属成形物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半凝固金属をプレス成形する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金型の中に直接半凝固金属材料を投入してプレス成形する方法が提案されている。特許文献1では、成分偏析や収縮巣の抑制された半凝固アルミニウム成形物を得るために、変形速度を調整することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
半凝固金属材料のプレス成形では、プレス工程において成形物の端部に気体が溜まり、端部まで材料が行き渡らずに不良品が発生しやすいという問題があった。特に成形物の端部に複雑な形状がある場合に、その問題が顕著であった。特許文献1に開示される技術では、そのような問題を解消することが難しい。
【0005】
本開示の目的は、成形物の端部まで材料を充填することができる技術を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、半凝固金属材料をプレス成形して成形物を製造するプレス成形装置であって、第1の金型と、第2の金型と、を備える。第2の金型は、第1の金型と対向して配置され、第1の金型と第2の金型とが組み合わされたときに半凝固金属材料の成形を行うための成形空間が形成される。第1の金型は、気体を外部へ排出可能な隙間を有する。上述した隙間の少なくとも一部は、成形物の外縁に位置する外縁部を形成する外縁形成部に沿って配置されている。
【0007】
このような構成であれば、上述した隙間の少なくとも一部が、プレス工程時の排気孔として機能するうえ、その隙間に半凝固金属材料も進入することができる。そのため、プレス工程において、半凝固金属材料を外縁形成部(すなわち、成形物の端部)にまで良好に充填することができ、それにより不良品の発生を抑制できる。
【0008】
上述したプレス成形装置において、第1の金型は、成形空間に至るように構成された貫通孔と、貫通孔に配置されるエジェクター部材と、を備え、上記隙間は、貫通孔を構成する壁面とエジェクター部材との間に形成される隙間であってもよい。
【0009】
このような構成であれば、上述した隙間は、金型から成形物を押し出すためのエジェクター部材により構成されているため、エジェクター部材を駆動させることで隙間に入り込んだ半凝固金属材料をスムーズに除去することができる。よって、半凝固金属材料が詰まることにより上記隙間が排気孔として機能しなくなってしまうことを抑制できる。
【0010】
また上述したプレス成形装置において、外縁形成部は、第2の金型から第1の金型へ向かう方向に窪んだ溝状の部分であってもよい。このような構成であれば、半凝固金属材料の充填がなされにくい部分である外縁形成部に対して充填を好適に行うことができるようになり、不良の発生を抑制できる。
【0011】
また上述したプレス成形装置において、上記隙間の少なくとも一部は、外縁形成部の外縁から間隔を空けて配置されていてもよい。このような構成であれば、上記隙間の少なくとも一部による排気孔としての作用が外縁形成部の外縁に偏らないので、外縁形成部の広い範囲で半凝固金属材料の充填を良好に実現させることができる。
【0012】
また上述したプレス成形装置において、上記隙間は、第2の金型から第1の金型へ向かう方向に向かって気体を排出可能に形成されていてもよい。このような構成であれば、プレス工程においてスムーズに気体を抜くことができるので、気体が成形空間に溜まることで材料が充填されなくなってしまうことを抑制できる。
【0013】
また上述したプレス成形装置において、上記成形物は、調理器具の少なくとも一部であってもよい。このような構成であれば、調理器具を構成する成形物の端部まで材料を良好に充填することができ、調理器具を高い歩留まりで製造することができる。
【0014】
本開示の別の一態様は、上述した本開示の一態様のプレス成形装置を用いた金属成形物の製造方法である。この製造方法では、第1の金型及び第2の金型の間に半凝固金属材料を配置することと、第1の金型及び第2の金型を接近させて半凝固金属材料を圧縮変形させると共に、隙間に半凝固金属材料を流しこむことと、を有してもよい。
【0015】
このような製造方法であれば、半凝固金属材料を成形物の端部に良好に充填することができ、それにより不良品の発生を抑制できる。なお、第1の金型は、上記成形空間に至るように構成された貫通孔と、貫通孔に配置されるエジェクター部材と、を備え、上記隙間が、貫通孔を構成する壁面とエジェクター部材との間に形成される隙間であってもよい。その場合、エジェクター部材を駆動させることで隙間に入り込んだ半凝固金属材料をスムーズに除去することができため、半凝固金属材料が詰まることで上記隙間が排気孔として機能しなくなってしまうことを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施形態のプレス成形装置の模式的な正面図である。
【
図2】実施形態のプレス成形装置の模式的な側面図である。
【
図3】実施形態の第1の金型の模式的な平面図であって、エジェクトピン及びエジェクトブロックを除いた図である。
【
図4】実施形態の第1の金型の模式的な平面図であって、エジェクトピン及びエジェクトブロックを含む図である。
【
図5】プレス成形装置のエジェクトブロックの上端周辺を示す模式的な正面図である。
【
図6】プレス成形装置による成形物を示す模式的な正面断面図である。
【
図7】第1の金型におけるエジェクトブロックの周辺を示す模式的な平面図である。
【
図9】
図9A-9Dが、実施形態のプレス成形装置を用いた成形物の製造方法を説明する図である。
【
図10】
図9Bのときのエジェクトブロックの周辺を示す模式的な平面図である。
【
図11】従来のプレス成形装置を用いた成形物の製造方法を説明する図であり、
図11Aがプレス工程前を示す図であり、
図11Bがプレス工程中を示す図であり、
図11Cが、プレス工程後に金型を開いた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本開示の実施形態を図面と共に説明する。
[1.実施形態]
[1-1.プレス成型装置の全体構成]
図1,
図2に示すプレス成形装置1は、半凝固金属材料をプレス成形して金属成形物を製造する装置である。本実施形態では、金属成形物の一例として鍋の金属部分を例示する。この鍋は金属部分のみで構成されるものであってもよいし、持ち手となる樹脂や木材が取り付けられてもよい。また、以下の説明では半凝固金属材料の一例として、半凝固アルミニウム材料を例示する。なお、本開示のプレス成形装置及び製造方法において採りうる金属種はアルミニウムに限定されることなく、様々な金属を用いることができる。
【0018】
なお、以下の図面は、本開示における金型の形状の理解を容易にすることを目的として模式的な図を用いている。そのため、一部の線の表示が省略されており、また、他の図と厳密には対応しない部分がある。また以下の説明における上下、左右、前後の方向は、説明の便宜上用いるものであり、プレス成形装置1の使用態様を限定するものではない。
【0019】
プレス成形装置1は、第1の金型11と、第1の金型11と対向して配置される第2の金型13と、を備える。第1の金型11と第2の金型13は、それぞれ、対向する側に凹凸形状が形成されている。第1の金型11と第2の金型13を組み合わせたときには、半凝固アルミニウム材料の成形を行うための空間である成形空間3が形成される。この成形空間3の形状は、成形物の形状に対応する。
【0020】
図3に、第1の金型11を上方から見た図を示す。第1の金型11は、成形空間3の中央部近傍に設けられる複数の丸いエジェクト孔21と、成形空間3の左右の端部に設けられ、開口が前後に長さを有する2つの貫通孔23と、を有する。エジェクト孔21及び貫通孔23は、第1の金型11の下端部から成形空間3に至るように構成されている。
【0021】
図4に示されるように、2つのエジェクト孔21には、エジェクトピン27が配置される。エジェクトピン27は、上下に長さを有する円柱状の部材であり、
図1に示されるエジェクトプレート25によって第1の金型11に対して上下に駆動する。
【0022】
2つの貫通孔23には、エジェクトブロック29が配置される。エジェクトブロック29は、上下に長さを有する板状の部材である。エジェクトブロック29の上部は、上方向から見たときに、前後方向に長さを有しており、左右方向の内側面(第1の金型11の中央側)が平坦面であり、左右方向の外側面が前後の中央ほど外側に張り出す曲面である。
【0023】
図5に示されるように、エジェクトブロック29の上面には段差が形成されている。エジェクトブロック29の上面は、左右方向の内側の第1面31と、左右方向外側の第2面33と、を有する。第2面33は第1面31よりも下側に位置する。第1面31及び第2面33は、いずれも、第1の金型11の成形空間3を構成する面と、後述する隙間51を挟んで滑らかに繋がるように配置可能である。成形空間3を構成する壁面の一部はエジェクトブロック29の上面により構成される。また、このエジェクトブロック29は、エジェクトプレート25によって第1の金型11に対して上下に駆動する。エジェクトブロック29が、貫通孔に配置されるエジェクター部材に相当する。エジェクター部材は、成形物を金型から押し出す機能を有する部材である。
【0024】
第2の金型13は、円柱状のエジェクトピン41を有している。エジェクトピン41はエジェクトプレート43によって、第2の金型13に対して上下に駆動する。
図6に示されるように、第1の金型11と第2の金型13とによるプレス工程によって形成される成形物5は、器状部分91と、把持部93と、垂下部95と、を有する。把持部93は、器状部分91の上端面における左右の端部から左右方向外側に延び出す部分である。垂下部95は、把持部93の延び出した先端から、下方に延び出す部分である。垂下部95が、外縁部に相当する。成形空間3のうち、垂下部95に対応する部分が、第1の金型11における外縁形成部61である。外縁形成部61は、第1の金型11と、エジェクトブロック29の上端部と、により構成される。この外縁形成部61は、第2の金型13から第1の金型11へ向かう方向(すなわち下方)に窪んだ溝状の部分である。
【0025】
[1-2.排気構造]
図5、
図7、及び
図8に示されるように、第1の金型11における貫通孔23を構成する壁面と、エジェクトブロック29と、の間には、隙間51が形成される。
図7に示されるように、隙間51はエジェクトブロック29の周囲に形成される。言い換えると、隙間51は、貫通孔23の内周を沿うように環状に形成される。この隙間51は、成形空間3の気体を金型の外部に排出可能な排気孔として構成されている。別の言い方をすると、この隙間51は空気抜き孔である。また後述するプレス加工の工程において、後述する材料7が進入可能な幅に構成されている。この隙間51は、第2の金型13から第1の金型11へ向かう方向(すなわち下方)に向かって気体を排出可能に形成されている。なお、ここでいう気体とは、一例として、プレス成形装置1の配置される環境中の気体、すなわち第1の金型11と第2の金型13の間に予め存在していた気体が挙げられるが、これに限られない。例えば、半凝固金属材料から発生するガスも含む。気体の具体的な内容としては、空気、窒素ガス、アルゴンガスなどが例示されるが、これらに限られない。
【0026】
隙間51のうち、エジェクトブロック29の左右方向外側の曲面に沿って形成される隙間51を、第1隙間51aとする。第1隙間51aは、上述した外縁形成部61に沿って配置されている。より詳細には、外縁形成部61における垂下部95の下端を形成する部分において、外縁形成部61の外縁から間隔を空けて、垂下部95の厚さ方向(おおよそ左右方向)の中央に位置するように配置される。ここでいう外縁形成部61の外縁とは、外縁形成部61の左右方向外側の端部61aである(
図8参照)。上方から見たときに、外縁形成部61の下端部分の形状、すなわち、前後方向の中央部が外側に張り出すように曲がった形状と、第1隙間51aの形状と、は類似した形状になる。
【0027】
なお、上述した隙間51の形状は、少なくともエジェクトブロック29の上端部分において実現されていればよい。つまり、隙間51の上端の開口から下方に離れた部分における隙間51の形状は、成形物の製造が可能な範囲において適宜変更可能である。
【0028】
[1-3.製造工程]
プレス成形装置1による成形物の製造方法を説明する。本開示では、半凝固アルミニウム材料(以下、材料7とする)をプレス成形することで、アルミニウム成形物を製造する。
【0029】
図9Aに示されるように、まず、第1の金型11と第2の金型13の間に材料7を配置する。
図9Aでは第1の金型11に材料7を配置しているが、材料7は第2の金型13に配置されてもよい。
【0030】
続いて、
図9Bに示されるように、第2の金型13を下方に移動させることで第1の金型11及び第2の金型13を接近させて材料7をプレスし、材料7を圧縮変形させる。この圧縮変形と共に、隙間51に材料7を流しこむ。以下の説明において、この工程をプレス工程と記載する。プレス工程により、成形空間3において成形物5が形成される。
図10に示されるように、隙間51に材料7が進入したことにより、成形物5の下面にはバリ5aが形成されている。
【0031】
続いて、
図9Cに示されるように、第2の金型13を上方へ移動させることで第2の金型13を第1の金型11から離脱させる。また、このような第2の金型13の移動とともに、エジェクトブロック29及びエジェクトピン27を第2の金型13に向かって上方に移動させる。これにより成形物5を第1の金型11から取り外す。成形物5は第2の金型13と共に上方に移動する。
【0032】
続いて、
図9Dに示されるように、エジェクトピン41を下方に移動させ、第2の金型13から成形物5を取り外す。その後、バリ5aを切断して切断面を研磨する。以上の工程により、成形物5が製造される。
【0033】
[1-4.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1a)プレス成形装置1では、第1隙間51aが成形物5の外縁に位置する垂下部95を形成する外縁形成部61に沿って配置されている。第1隙間51aは排気孔として機能するうえ、その中に材料7も進入できる。そのため、プレス工程において、材料7を成形物5の端部に位置する垂下部95の全体に良好に充填することができ、不良品の発生を抑制して、製品の歩留まりを向上できる。
【0034】
また、隙間51はエジェクトブロック29により構成されているため、プレス工程の後にエジェクトブロック29を駆動させることで隙間51に入り込んだ材料7をスムーズに除去することができる。よって、隙間51に材料7が入り込んで詰まることで隙間51が排気孔として機能しなくなってしまうことを抑制できる。
【0035】
(1b)外縁形成部61は、第2の金型13から第1の金型11へ向かう方向に窪んだ溝状の部分である。このような外縁形成部61の下端に沿って第1隙間51aが形成されているため、材料7が充填されにくい垂下部95にも材料7を良好に充填できる。
図11A-11Cに、本開示の第2の金型13の特徴を有さない従来の下金型101と上金型103とによって材料7をプレス成型した場合を示す。下金型101における成形物105の端部を構成する部位に溝111などの複雑な形状があると、溝111に十分に材料7が充填されず、成形物105において溝111の形状が形成されない恐れがある。しかしながら、本開示のプレス成形装置1では、そのような問題の発生を抑制することができる。
【0036】
(1c)プレス成形装置1において、第1隙間51aは、外縁形成部61の外縁から間隔を空けて配置されている。より具体的には、外縁形成部61の左右幅方向の中央近傍に配置されている。よって、外縁形成部61の広い範囲で排気孔としての機能を良好に発揮させることができる。また、成形物5の外縁部(垂下部95の下端の外縁部分)にはバリ5aが形成されないので、バリ5aの除去面が外側から視認されにくくなり、成形物5の外観品質を向上させることができる。
【0037】
(1d)プレス成形装置1において、隙間51は、第2の金型13から第1の金型11へ向かう方向に向かって気体を排出可能に形成されている。そのため、プレス工程においてスムーズに気体が抜けるので、気体が溜まることで材料7が成形空間3の端部などに充填されなくなることを抑制できる。
【0038】
[2.その他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に何ら限定されることはなく、本開示の技術的範囲に属する限り種々の形態をとり得ることはいうまでもない。
【0039】
(2a)上記実施形態では、エジェクター部材の例として、エジェクトブロック29を例示した。しかしながら、エジェクター部材は、貫通孔との間に形成される隙間の少なくとも一部が外縁形成部に沿って配置されていれば、その具体的な形状は特に限定されない。例えば、外縁形成部61が金型を上方から見たときに直線状の形状であれば、第1隙間51aも直線状に形成されていればよい。
【0040】
(2b)上記実施形態では、隙間51の一部である第1隙間51aが外縁形成部61に沿って配置される構成を例示した。しかしながら、エジェクター部材と貫通孔との間に形成される隙間全部が、外縁形成部に沿って配置されていてもよい。
【0041】
また上記実施形態では、第1隙間51aが端部61aから間隔を空けた位置に配置される構成を例示した。しかしながら、第1隙間51aは、外縁形成部61におけるどの位置に配置されていてもよい。
【0042】
(2c)上記実施形態では、外縁形成部61が、成形物5の垂下部95を形成するために下方に延びる溝である構成を例示した。しかしながら、外縁形成部61は溝で無くともよい。例えば、成形物5が垂下部95を有さない形状である場合、把持部93の延び出した端部が外縁部に相当するため、外縁形成部は把持部93の延び出した先の端部を形成する部分となる。
【0043】
なお外縁部は、成形物の中央から最も離れた端部であってもよい。また、プレス工程において半凝固アルミニウム材料が充填されにくい部分であってもよい。したがって、外縁形成部は、そのような外縁部を形成する部分であってもよい。外縁部は様々な形状をとり得るものであり、外縁形成部も外縁部に応じて様々な形状をとり得る。
【0044】
(2d)上記実施形態では、貫通孔23が上下方向に貫通する孔であり、下方に向けて気体を排出可能である構成を例示した。しかしながら貫通孔の向きは特に限定されず、例えば左右に貫通する孔であってもよい。
【0045】
(2e)上記実施形態では、第1の金型11と第2の金型13によりプレス成形を行う構成を例示した。しかしながら、第1の金型と第2の金型は、それぞれ2つ以上の金型により構成されていてもよい。
【0046】
(2f)上記実施形態では、成形物5として、調理器具の一例である鍋を例示した。しかしながら、本開示のプレス成形装置により製造される成形物は、鍋以外の調理器具であってもよいし、調理器具でなくてもよい。鍋以外の調理器具としては、例えばフライパンが挙げられる。
【0047】
(2g)上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加又は置換してもよい。
【符号の説明】
【0048】
1…プレス成形装置、3…成形空間、5,105…成形物、5a…バリ、7…材料、11…第1の金型、13…第2の金型、21…エジェクト孔、23…貫通孔、25,43…エジェクトプレート、27,41…エジェクトピン、29…エジェクトブロック、31…第1面、33…第2面、51…隙間、51a…第1隙間、61…外縁形成部、61a…端部、91…器状部分、93…把持部、95…垂下部、101…下金型、103…上金型、111…溝