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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】電極層成形装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/04 20060101AFI20241016BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20241016BHJP
   H01G 11/86 20130101ALI20241016BHJP
   H01G 13/00 20130101ALI20241016BHJP
【FI】
H01M4/04 Z
H01M4/139
H01G11/86
H01G13/00 381
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021198091
(22)【出願日】2021-12-06
(65)【公開番号】P2022184690
(43)【公開日】2022-12-13
【審査請求日】2023-11-24
(31)【優先権主張番号】P 2021092476
(32)【優先日】2021-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】森 健晴
(72)【発明者】
【氏名】田崎 智之
(72)【発明者】
【氏名】近藤 剛司
(72)【発明者】
【氏名】三村 哲矢
【審査官】前田 寛之
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録特許第10-1980226(KR,B1)
【文献】特開2003-157835(JP,A)
【文献】国際公開第2001/022506(WO,A1)
【文献】国際公開第2006/080045(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00- 4/62
H01M 4/86- 4/98
H01M12/00-16/00
H01G11/00-11/86
H01G13/00-13/06
B05C 1/00- 3/20
B05C 7/00-21/00
B05D 1/00- 7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する第1駆動ロール及び第2駆動ロールと、
前記第1駆動ロールにおける前記第2駆動ロールとは反対側に配置される第1押付部材と、
前記第2駆動ロールにおける前記第1駆動ロールとは反対側に配置される第2押付部材と、
前記第1押付部材を前記第1駆動ロールに押し付ける第1押付部と、
前記第2押付部材を前記第2駆動ロールに押し付ける第2押付部と、を備え、
前記第1駆動ロールと前記第2駆動ロールとの間に電極活物質、結着剤、及び溶剤を含む湿潤粉体を供給して、前記第1駆動ロールと前記第2駆動ロールとの間で電極層を成形する電極層成形装置であって、
前記第1駆動ロールの軸線が延びる方向を第1軸線方向とし、且つ前記第2駆動ロールの軸線が延びる方向を第2軸線方向とすると、
前記第1軸線方向における前記第1押付部材の長さは、前記第1軸線方向における前記第1駆動ロールの長さよりも短く、
前記第2軸線方向における前記第2押付部材の長さは、前記第2軸線方向における前記第2駆動ロールの長さよりも短く、
前記第1押付部材は、前記第1軸線方向における前記第1駆動ロールの中央に対向しており、
前記第2押付部材は、前記第2軸線方向における前記第2駆動ロールの中央に対向しており、
前記電極層成形装置は、前記第1押付部材における前記第1駆動ロールとは反対側に配置され、且つ前記第1押付部が取り付けられる第1支持部と、
前記第2押付部材における前記第2駆動ロールとは反対側に配置され、且つ前記第2押付部が取り付けられる第2支持部と、
2つのさらなる第1押付部と、
3つの測定器と、
制御装置と、を備え、
前記第1押付部は、前記第1軸線方向において2つの前記さらなる第1押付部の間に配置されており、
3つの前記測定器は、それぞれ、前記第1押付部及び2つの前記さらなる第1押付部が前記第1押付部材を前記第1駆動ロールに押し付ける位置における前記電極層の厚さ情報を出力するように構成され、
前記制御装置は、前記厚さ情報に基づいて、前記第1押付部及び2つの前記さらなる第1押付部のうち少なくとも1つの押圧する力を制御するように構成されることを特徴とする電極層成形装置。
【請求項2】
前記第2駆動ロールと間隔を空けて配置される第3駆動ロールと、
前記第3駆動ロールに向けて集電箔を繰り出すように構成された供給ロールと、
前記第3駆動ロールに巻き掛けられた前記集電箔を巻き取るように構成された巻取ロールと、を備え、
前記第1駆動ロールと前記第2駆動ロールとの間で成形された前記電極層が、前記第2駆動ロールと前記第3駆動ロールとの間で前記集電箔の一面に転写されるように構成され、
前記巻取ロールは、転写により前記電極層が成形された前記集電箔を巻き取るように構成されることを特徴とする請求項1に記載の電極層成形装置。
【請求項3】
対向する第1駆動ロール及び第2駆動ロールと、
前記第1駆動ロールにおける前記第2駆動ロールとは反対側に配置される第1押付部材と、
前記第2駆動ロールにおける前記第1駆動ロールとは反対側に配置される第2押付部材と、
前記第1押付部材を前記第1駆動ロールに押し付ける第1押付部と、
前記第2押付部材を前記第2駆動ロールに押し付ける第2押付部と、を備え、
前記第1駆動ロールと前記第2駆動ロールとの間に電極活物質、結着剤、及び溶剤を含む湿潤粉体を供給して、前記第1駆動ロールと前記第2駆動ロールとの間で電極層を成形する電極層成形装置であって、
前記第1駆動ロールの軸線が延びる方向を第1軸線方向とし、且つ前記第2駆動ロールの軸線が延びる方向を第2軸線方向とすると、
前記第1軸線方向における前記第1押付部材の長さは、前記第1軸線方向における前記第1駆動ロールの長さよりも短く、
前記第2軸線方向における前記第2押付部材の長さは、前記第2軸線方向における前記第2駆動ロールの長さよりも短く、
前記第1押付部材は、前記第1軸線方向における前記第1駆動ロールの中央に対向しており、
前記第2押付部材は、前記第2軸線方向における前記第2駆動ロールの中央に対向しており、
前記電極層成形装置は、前記第1押付部材における前記第1駆動ロールとは反対側に配置され、且つ前記第1押付部が取り付けられる第1支持部と、
前記第2押付部材における前記第2駆動ロールとは反対側に配置され、且つ前記第2押付部が取り付けられる第2支持部と、
前記第2駆動ロールと間隔を空けて配置される第3駆動ロールと、
前記第3駆動ロールに向けて集電箔を繰り出すように構成された供給ロールと、
前記第3駆動ロールに巻き掛けられた前記集電箔を巻き取るように構成された巻取ロールと、を備え、
前記第1駆動ロールと前記第2駆動ロールとの間で成形された前記電極層が、前記第2駆動ロールと前記第3駆動ロールとの間で前記集電箔の一面に転写されるように構成され、
前記巻取ロールは、転写により前記電極層が成形された前記集電箔を巻き取るように構成されることを特徴とする電極層成形装置。
【請求項4】
前記第3駆動ロールの直径は、前記第1駆動ロールの直径及び前記第2駆動ロールの直径よりも小さく、
前記第1駆動ロール、前記第2駆動ロール、及び前記第3駆動ロールは、それぞれ第1周速度、第2周速度、及び第3周速度で回転し、
前記第2周速度は前記第1周速度よりも大きく、前記第3周速度は前記第2周速度よりも大きいことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の電極層成形装置。
【請求項5】
前記第1支持部は、前記第1駆動ロールよりも断面二次モーメントが大きく、
前記第2支持部は、前記第2駆動ロールよりも断面二次モーメントが大きいことを特徴とする請求項1~請求項4のうちいずれか一項に記載の電極層成形装置。
【請求項6】
前記第1押付部材は、2つの第1サポートロールを含み、
2つの前記第1サポートロールの軸線は、前記第1軸線方向に延び、
前記第1サポートロールの軸線が延びる方向における2つの前記第1サポートロールの長さは、前記第1軸線方向における前記第1駆動ロールの長さよりも短く、
2つの前記第1サポートロールは、前記第1駆動ロールの回転に伴って回転するように構成されていることを特徴とする請求項1~請求項5のうちいずれか一項に記載の電極層成形装置。
【請求項7】
前記軸線が延びる方向における2つの前記第1サポートロールの長さは、前記第1軸線方向における前記第1駆動ロールの長さの半分未満であることを特徴とする請求項6に記載の電極層成形装置。
【請求項8】
2つの前記第1サポートロールは、前記第1駆動ロールに近づく又は離れる方向に移動可能に保持されていることを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の電極層成形装置。
【請求項9】
前記第1押付部は、
2つの前記第1サポートロールを回転可能に保持する第1保持部と、
前記第1保持部を前記第1駆動ロールに対して近づく又は離れるように移動させるための1以上の第1ねじ部と、を有することを特徴とする請求項6~請求項8のうちいずれか一項に記載の電極層成形装置。
【請求項10】
前記第1支持部は、前記第1軸線方向に延在する板材であることを特徴とする請求項1~請求項9のうちいずれか一項に記載の電極層成形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極層成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
塗料を塗工するための二つのロールを備える塗工装置が特許文献1に開示されている。塗工装置は、二つのロールの間に塗料を供給するホッパーを備える。塗料は、例えば固形分濃度の高い塗料である。ホッパーから二つのロールの間に塗料が供給されると、二つのロールの間で塗膜が成形される。なお、塗工装置は、二次電池やキャパシタの分野にも適用される。このため、二つのロールの間で活物質を含む電極層を成形することもできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-254422号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
二つのロールの間に供給された塗料は、二つのロールの間で圧縮されて二つのロールの軸線が延びる方向に広がる。二つのロールの軸線が延びる方向において、二つのロールそれぞれの中央には、塗料を起因として二つのロールを互いに離す方向への力が発生する。このため、二つのロールには、二つのロールそれぞれの中央が互いに離れるように反るたわみ変形が発生する。すると、二つのロールの間で電極層を成形する場合、二つのロールの間で成形される電極層の厚さは、ロールの中央で厚く、ロールの端部で薄くなる。よって、二つのロールの間で成形される電極層の厚さにばらつきが発生する虞がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する電極層の成形方法は、対向する第1駆動ロール及び第2駆動ロールと、前記第1駆動ロールにおける前記第2駆動ロールとは反対側に配置される第1押付部材と、前記第2駆動ロールにおける前記第1駆動ロールとは反対側に配置される第2押付部材と、前記第1押付部材を前記第1駆動ロールに押し付ける第1押付部と、前記第2押付部材を前記第2駆動ロールに押し付ける第2押付部と、を備える電極層成形装置を用いて、前記第1駆動ロールと前記第2駆動ロールとの間に電極活物質、結着剤、及び溶剤を含む湿潤粉体を供給して、前記第1駆動ロールと前記第2駆動ロールとの間で電極層を成形する成形工程を有する電極層の成形方法であって、前記第1駆動ロールの軸線が延びる方向を第1軸線方向とし、且つ前記第2駆動ロールの軸線が延びる方向を第2軸線方向とすると、前記第1軸線方向における前記第1押付部材の長さは、前記第1軸線方向における前記第1駆動ロールの長さよりも短く、前記第2軸線方向における前記第2押付部材の長さは、前記第2軸線方向における前記第2駆動ロールの長さよりも短く、前記第1押付部材は、前記第1軸線方向における前記第1駆動ロールの中央に対向しており、前記第2押付部材は、前記第2軸線方向における前記第2駆動ロールの中央に対向しており、前記成形工程の前に、前記第1押付部が前記第1押付部材を前記第1駆動ロールに押し付けることにより前記第1軸線方向における前記第1駆動ロールの中央が前記第2駆動ロールに向けて近づくように前記第1駆動ロールを反らせ、且つ前記第2押付部が前記第2押付部材を前記第2駆動ロールに押し付けることにより前記第2軸線方向における前記第2駆動ロールの中央が前記第1駆動ロールに向けて近づくように前記第2駆動ロールを反らせるベンド工程を有している。
【0006】
これによれば、成形工程において、第1軸線方向における第1駆動ロールの中央及び第2軸線方向における第2駆動ロールの中央には、湿潤粉体を起因として第1駆動ロール及び第2駆動ロールを互いに離す方向への力が発生する。このため、成形工程において、第1駆動ロールは、第1軸線方向における第1駆動ロールの中央が第2駆動ロールから離れる方向へ弾性変形する。同様に、第2駆動ロールは、第2軸線方向における第2駆動ロールの中央が第1駆動ロールから離れる方向へ弾性変形する。
【0007】
ベンド工程は、成形工程で想定される第1駆動ロールの弾性変形及び第2駆動ロールの弾性変形を予め吸収するように、第1押付部及び第1押付部材によって第1駆動ロールを反らせるとともに、第2押付部及び第2押付部材によって第2駆動ロールを反らせている。よって、ベンド工程を実施した後に成形工程を実施すると、ベンド工程を実施せずに成形工程を実施する場合と比較して、第1駆動ロール及び第2駆動ロールそれぞれの軸線の曲がりを抑制した状態で電極層を成形できる。このため、ベンド工程を実施せずに成形工程を実施した場合に成形される電極層と比較して、第1駆動ロールと第2駆動ロールとの間で成形される電極層の厚さのばらつきを抑制できる。
【0008】
上記課題を解決する電極層成形装置は、対向する第1駆動ロール及び第2駆動ロールと、前記第1駆動ロールにおける前記第2駆動ロールとは反対側に配置される第1押付部材と、前記第2駆動ロールにおける前記第1駆動ロールとは反対側に配置される第2押付部材と、前記第1押付部材を前記第1駆動ロールに押し付ける第1押付部と、前記第2押付部材を前記第2駆動ロールに押し付ける第2押付部と、を備え、前記第1駆動ロールと前記第2駆動ロールとの間に電極活物質、結着剤、及び溶剤を含む湿潤粉体を供給して、前記第1駆動ロールと前記第2駆動ロールとの間で電極層を成形する電極層成形装置であって、前記第1駆動ロールの軸線が延びる方向を第1軸線方向とし、且つ前記第2駆動ロールの軸線が延びる方向を第2軸線方向とすると、前記第1軸線方向における前記第1押付部材の長さは、前記第1軸線方向における前記第1駆動ロールの長さよりも短く、前記第2軸線方向における前記第2押付部材の長さは、前記第2軸線方向における前記第2駆動ロールの長さよりも短く、前記第1押付部材は、前記第1軸線方向における前記第1駆動ロールの中央に対向しており、前記第2押付部材は、前記第2軸線方向における前記第2駆動ロールの中央に対向しており、前記第1押付部材における前記第1駆動ロールとは反対側に配置され、且つ前記第1押付部が取り付けられる第1支持部と、前記第2押付部材における前記第2駆動ロールとは反対側に配置され、且つ前記第2押付部が取り付けられる第2支持部と、を備える。
【0009】
これによれば、電極層を成形するとき、第1軸線方向における第1駆動ロールの中央及び第2軸線方向における第2駆動ロールの中央には、湿潤粉体を起因として第1駆動ロール及び第2駆動ロールを互いに離す方向への力が発生する。このため、電極層を成形するとき、第1駆動ロールは、第1軸線方向における第1駆動ロールの中央が第2駆動ロールから離れる方向へ弾性変形する。同様に、第2駆動ロールは、第2軸線方向における第2駆動ロールの中央が第1駆動ロールから離れる方向へ弾性変形する。
【0010】
第1押付部が第1押付部材を第1駆動ロールに押し付けるため、電極層を成形するときに想定される第1駆動ロールの弾性変形を予め吸収するように、予め第1駆動ロールを弾性変形させることができる。具体的には、第1押付部及び第1押付部材によって第1軸線方向における第1駆動ロールの中央が第2駆動ロールに向けて近づくように第1駆動ロールを反らせることができる。
【0011】
同様に、第2押付部が第2押付部材を第2駆動ロールに押し付けるため、電極層を成形するときに想定される第2駆動ロールの弾性変形を予め吸収するように、第2駆動ロールを弾性変形させることができる。具体的には、第2押付部及び第2押付部材によって第2軸線方向における第2駆動ロールの中央が第1駆動ロールに向けて近づくように第2駆動ロールを反らせることができる。
【0012】
よって、第1駆動ロールの中央が第2駆動ロールに近づくように予め第1駆動ロールを反らせつつ、第2駆動ロールの中央が第1駆動ロールに近づくように予め第2駆動ロールを反らせた状態で電極層を成形すると、予め第1駆動ロール及び第2駆動ロールを反らせずに電極層を成形する場合と比較して、第1駆動ロール及び第2駆動ロールそれぞれの軸線の曲がりを抑制した状態で電極層を成形できる。このため、電極層を成形する前に予め第1駆動ロール及び第2駆動ロールを弾性変形させることができない構成の電極層成形装置と比較して、上記の電極層成形装置では、第1駆動ロールと第2駆動ロールとの間で成形される電極層の厚さのばらつきを抑制できる。
【0013】
上記の電極層成形装置において、前記第1支持部は、前記第1駆動ロールよりも断面二次モーメントが大きく、前記第2支持部は、前記第2駆動ロールよりも断面二次モーメントが大きいとよい。
【0014】
これによれば、電極層を成形するとき、第1駆動ロール及び第2駆動ロールを互いに離す方向への力は、第1押付部及び第1押付部材を介して第1支持部に受け止められるとともに、第2押付部及び第2押付部材を介して第2支持部に受け止められる。第1支持部が第1駆動ロールよりも変形し難く、且つ第2支持部が第2駆動ロールよりも変形し難い。このため、第1支持部の断面二次モーメントが第1駆動ロールの断面二次モーメントよりも小さく、且つ第2支持部の断面二次モーメントが第2駆動ロールの断面二次モーメントよりも小さい場合と比較して、電極層を成形するときに第1駆動ロール及び第2駆動ロールが湿潤粉体を起因として弾性変形を抑制できる。したがって、第1駆動ロールと第2駆動ロールとの間で成形される電極層の厚さのばらつきをより抑制できる。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、電極層の厚さのばらつきを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】電極層成形装置の第1実施形態を示す上面図。
図2】電極層成形装置の第1実施形態を示す概略端面図。
図3】電極層の成形方法における初期設定工程を示す図。
図4】電極層の成形方法におけるベンド工程を示す図。
図5】電極層の成形方法における成形工程での第1駆動ロールと第2駆動ロールの状態を示した図。
図6】電極層成形装置の第2実施形態を示す上面図。
図7】電極層成形装置の第2実施形態を示す概略端面図。
図8】電極層成形装置の第2実施形態における測定器の配置を示す図。
図9】電極層成形装置の第3実施形態を示す概略端面図。
図10】変更例における第1駆動ロールと第2駆動ロールの配置を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[第1実施形態]
以下、電極層の成形方法及び電極層成形装置を具体化した一実施形態を図1図5にしたがって説明する。
【0018】
図1及び図2に示すように、電極層成形装置1は、長尺帯状の集電箔50に湿潤粉体Pを押し付けることにより電極層60を成形する装置である。集電箔50は、厚さ1mm以下である。集電箔50の幅及び長さは、厚さよりも大きい。集電箔50は、厚さ方向の一方面に第1面S1を有するとともに厚さ方向の他方面に第2面S2を有している。電極層成形装置1は、集電箔50の第1面S1に電極層60を成形する。
【0019】
<湿潤粉体Pの構成>
湿潤粉体Pは、電極活物質、結着剤、及び溶剤を含む流動性が乏しい材料である。湿潤粉体Pは、溶剤中に固形分が60質量%~90質量%の範囲で分散されている材料である。固形分は、湿潤粉体Pから溶剤を乾燥等により分離した後に残存するものである。固形分は、電極活物質及び結着剤を含む電極材料である。また、電極材料には、導電助剤が含まれていてもよい。
【0020】
電極活物質は、正極活物質又は負極活物質である。
負極活物質としては、電荷担体を吸蔵及び放出し得る材料が使用可能である。負極活物質は、リチウムイオン等の電荷担体を吸蔵及び放出可能である単体、合金又は化合物であれば特に限定はない。例えば、負極活物質としては、リチウム、炭素、ケイ素、ゲルマニウム、錫等の14族元素、アルミニウム、インジウム等の13族元素をそれぞれ単体で採用してもよい。また、負極活物質としては、亜鉛、カドミウム等の12族元素、アンチモン、ビスマス等の15族元素、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属、銀、金等の11族元素をそれぞれ単体で採用してもよい。合金の具体例としては、Ag-Sn合金、Cu-Sn合金、Co-Sn合金等の錫系材料が挙げられる。化合物の具体例としては、各種黒鉛等の炭素系材料、ケイ素単体と二酸化ケイ素に不均化するSiOx(0.3≦x≦1.6)等のケイ素系材料が挙げられる。化合物の具体例としては、ケイ素単体もしくはケイ素系材料と炭素系材料を組み合わせた複合体が挙げられる。負極活物質として、Nb、TiO、LiTi12、WO、MoO、Fe等の酸化物、又は、Li-xMxN(M=Co、Ni、Cu)で表される窒化物を採用しても良い。負極活物質として、これらのものの一種以上を使用できる。
【0021】
正極活物質としては、電荷担体を吸蔵及び放出し得る材料が使用可能である。正極活物質としては、層状岩塩構造の一般式:LiNiCoMn(0.2≦a≦2、b+c+d+e=1、0≦e<1、1.7≦f≦3、DはW、Mo、Re、Pd、Ba、Cr、B、Sb、Sr、Pb、Ga、Al、Nb、Mg、Ta、Ti、La、Zr、Cu、Ca、Ir、Hf、Rh、Fe、Ge、Zn、Ru、Sc、Sn、In、Y、Bi、S、Si、Na、K、P、Vから選ばれる少なくとも1つの元素)で表されるリチウム複合金属酸化物、LiMnOを挙げることができる。また、正極活物質としては、LiMn等のスピネル構造の金属酸化物、スピネル構造の金属酸化物と層状化合物の混合物で構成される固溶体、LiMPO、LiMVO又はLiMSiO(式中のMはCo、Ni、Mn、Feのうちの少なくとも一種から選択される)等で表されるポリアニオン系化合物が挙げられる。正極活物質としては、LiFePOF等のLiMPOF(Mは遷移金属)で表されるタボライト系化合物、LiFeBO等のLiMBO(Mは遷移金属)で表されるボレート系化合物が挙げられる。正極活物質として用いられるいずれの金属酸化物も上記の組成式を基本組成とすればよく、基本組成に含まれる金属元素を他の金属元素で置換したものも使用可能である。
【0022】
結着剤は、集電箔50と電極層60とを結着する機能を有するものであればよく、その種類は特に限定されない。結着剤としては、スチレン-ブタジエンゴム等のゴム、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素ゴム等の含フッ素樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂を例示できる。結着剤としては、ポリイミド、ポリアミドイミド等のイミド系樹脂、アルコキシシリル基含有樹脂、アクリル酸やメタクリル酸等のモノマー単位を含むアクリル系樹脂を例示できる。結着剤としては、親水基を有するポリマーが採用されてもよい。親水基を有するポリマーの親水基としては、カルボキシル基、スルホ基、シラノール基、アミノ基、水酸基、リン酸基が例示される。
【0023】
親水基を有するポリマーの具体例としては、ポリアクリル酸、カルボキシメチルセルロースが挙げられる。親水基を有するポリマーの具体例としては、ポリメタクリル酸等の分子中にカルボキシル基を含むポリマー、又は、ポリ(p-スチレンスルホン酸)等のスルホ基を含むポリマーが挙げられる。親水基を有するポリマーの具体的としては、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコールが挙げられる。ポリアクリル酸、あるいはアクリル酸とビニルスルホン酸との共重合体等、カルボキシル基及び/又はスルホ基を多く含むポリマーは水溶性となる。
【0024】
親水基を有するポリマーは、水溶性ポリマーであることが好ましく、化学構造でいうと、一分子中に複数のカルボキシル基及び/又はスルホ基を含むポリマーが好ましい。なお、結着剤としては、上記の各種の結着剤を単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
【0025】
導電助剤は、化学的に不活性な電子高伝導体であればよい。導電助剤としては、炭素質微粒子であるカーボンブラック、黒鉛、気相法炭素繊維、カーボンナノチューブ、及び各種金属粒子等が例示される。カーボンブラックとしては、アセチレンブラック、ケッチェンブラック(登録商標)、ファーネスブラック、チャンネルブラック等が例示される。これらの導電助剤を単独又は二種以上組み合わせて電極材料に添加できる。
【0026】
固形分を分散する溶剤としては、特に限定されないが、水、N-メチル-2-ピロリドン、アルコール等が採用される。後述するように湿潤粉体Pをロールプレスにより集電箔50に押し付ける場合、溶剤には、ロールの加圧面での圧縮時における潤滑性に優れるN-メチル-2-ピロリドンが含まれることが好ましい。なお、溶剤は、その一部又は全部に電極材料に分類される材料を採用することもできる。また、溶剤は、固形分の一部又は全部を溶解できるものであってもよい。
【0027】
<電極層成形装置の構成>
図1に示すように、電極層成形装置1は、第1駆動ロール11と、第2駆動ロール12と、2つの第1サポートロール21,21と、2つの第2サポートロール22,22とを備えている。電極層成形装置1は、第1支持部31と、第2支持部32と、第1押付部41と、第2押付部42とを備えている。なお、第1サポートロール21は、第1押付部材の一例である。また、第2サポートロール22は、第2押付部材の一例である。
【0028】
第1駆動ロール11及び第2駆動ロール12は、金属製である。第1駆動ロール11及び第2駆動ロール12それぞれの直径は、全て同じである。第1駆動ロール11及び第2駆動ロール12それぞれの軸線は、互いに平行をなすように同じ方向に延びている。第1駆動ロール11の軸線が延びる方向及び第2駆動ロール12の軸線が延びる方向を、軸線方向Cとする。軸線方向Cにおいて、第1駆動ロール11及び第2駆動ロール12それぞれの長さは、全て同じである。なお、第1駆動ロール11の軸線が延びる方向は、請求項上の第1軸線方向である。また、第2駆動ロール12の軸線が延びる方向は、請求項上の第2軸線方向である。本実施形態では、軸線方向Cは、第1軸線方向及び第2軸線方向の一例である。
【0029】
第1駆動ロール11は、第1ロール部111と、2つの第1軸部112とを有している。第1ロール部111の軸線が延びる方向において、第1ロール部111は、第1端11a及び第2端11bを有している。第1ロール部111の直径は、2つの第1軸部112の直径よりも大きい。一方の第1軸部112は、第1ロール部111の第1端11aに設けられるとともに、他方の第1軸部112は、第1ロール部111の第2端12bに設けられている。第1ロール部111の軸線と、2つの第1軸部112の軸線とは一致している。
【0030】
第2駆動ロール12は、第2ロール部121と、2つの第2軸部122とを有している。第2ロール部121の軸線が延びる方向において、第2ロール部121は、第1端12a及び第2端12bを有している。第2ロール部121の直径は、2つの第2軸部122の直径よりも大きい。一方の第2軸部122は、第2ロール部121の第1端12aに設けられるとともに、他方の第2軸部122は、第2ロール部121の第2端12bに設けられている。第2ロール部121の軸線と、2つの第2軸部122の軸線とは一致している。
【0031】
図2に示すように、2つの駆動ロール11,12を軸線方向Cの外方から見たとき、2つの駆動ロール11,12は、重力方向Aにおいて同じ高さに配置されている。
図1に示すように、2つの駆動ロール11,12を重力方向Aの上方から見たとき、第1ロール部111の第1端11aと、第2ロール部121の第1端12aとは、水平方向Bで一列に配置される。2つの駆動ロール11,12を重力方向Aの上方から見たとき、第1ロール部111の第2端11bと、第2ロール部121の第2端12bとは、水平方向Bで一列に配置される。
【0032】
軸線方向Cにおける第1ロール部111の中間の位置を第1位置M1とする。軸線方向Cにおける第2ロール部121の中間の位置を第2位置M2とする。水平方向Bにおいて、第1位置M1と第2位置M2とは一致している。第1駆動ロール11及び第2駆動ロール12は、互いに接触しないように対向している。
【0033】
2つの第1軸部112は、図示しない軸受を介して第1固定台71に固定されている。第1駆動ロール11は、第1固定台71に対して回転可能に支持されている。2つの第2軸部122は、図示しない軸受を介して第2固定台72に固定されている。第2駆動ロール12は、第2固定台72に対して回転可能に支持されている。第1固定台71及び第2固定台72は、第1駆動ロール11と第2駆動ロール12とが水平方向Bに近づく又は離れるように位置の調整ができる。なお、第1駆動ロール11及び第2駆動ロール12は、図示しない動力部により第1駆動ロール11が回転する方向と第2駆動ロール12が回転する方向とが反対となるように回転する。
【0034】
2つの第1サポートロール21,21は、樹脂製である。2つの第1サポートロール21,21は、例えば超高分子量ポリエチレン製であることが好ましい。2つの第1サポートロール21,21それぞれの直径は、全て同じである。2つの第1サポートロール21,21それぞれの軸線は、互いに平行をなすように同じ方向に延びている。2つの第1サポートロール21,21それぞれの軸線は、軸線方向Cに延びている。
【0035】
2つの第1サポートロール21,21それぞれの軸線が延びる方向において、2つの第1サポートロール21,21それぞれの長さは、全て同じである。軸線方向Cにおける第1サポートロール21の長さは、軸線方向Cにおける第1駆動ロール11及び第2駆動ロール12それぞれの長さよりも短い。軸線方向Cにおける第1サポートロール21の長さは、軸線方向Cにおける第1駆動ロール11及び第2駆動ロール12それぞれの長さの半分未満である。
【0036】
図2に示すように、2つの第1サポートロール21,21を軸線方向Cの外方から見たとき、2つの第1サポートロール21,21は、重力方向Aにおいて互いに対向している。2つの第1サポートロール21,21は、重力方向Aにおいて互いに接触していない。
【0037】
2つの第1サポートロール21,21を軸線方向Cの外方から見たとき、2つの第1サポートロール21,21は、水平方向Bにおいて、第1駆動ロール11における第2駆動ロール12とは反対側に配置されている。2つの第1サポートロール21,21を軸線方向Cの外方から見たとき、水平方向Bにおいて、第1駆動ロール11が2つの第1サポートロール21,21に対向している。
【0038】
図1に示すように、第1サポートロール21を重力方向Aの上方から見たとき、第1サポートロール21は、水平方向Bにおいて、第1駆動ロール11における第2駆動ロール12とは反対側に配置されている。
【0039】
軸線方向Cにおける第1サポートロール21の中間の位置を第1中間位置Ms1とする。第1サポートロール21を重力方向Aの上方から見たとき、第1サポートロール21の第1中間位置Ms1と、第1ロール部111の第1位置M1とが水平方向Bにおいて一致している。2つの第1サポートロール21,21は、軸線方向Cにおける第1駆動ロール11の中央に対向している。なお、2つの第1サポートロール21,21は、金属製であってもよいが、2つの第1サポートロール21,21のロール面を樹脂でコーティングしたものを採用するとよい。
【0040】
2つの第2サポートロール22,22は、樹脂製である。2つの第2サポートロール22,22は、例えば超高分子量ポリエチレン製であることが好ましい。2つの第2サポートロール22,22それぞれの直径は、全て同じである。2つの第2サポートロール22,22それぞれの軸線は、互いに平行をなすように同じ方向に延びている。2つの第2サポートロール22,22それぞれの軸線は、軸線方向Cに延びている。
【0041】
2つの第2サポートロール22,22それぞれの軸線が延びる方向において、2つの第2サポートロール22,22それぞれの長さは、全て同じである。軸線方向Cにおける第2サポートロール22の長さは、軸線方向Cにおける第1駆動ロール11及び第2駆動ロール12それぞれの長さよりも短い。軸線方向Cにおける第2サポートロール22の長さは、軸線方向Cにおける第1駆動ロール11及び第2駆動ロール12それぞれの長さの半分未満である。
【0042】
図2に示すように、2つの第2サポートロール22,22を軸線方向Cの外方から見たとき、2つの第2サポートロール22,22は、重力方向Aにおいて互いに対向している。2つの第2サポートロール22,22は、重力方向Aにおいて互いに接触していない。
【0043】
2つの第2サポートロール22,22を軸線方向Cの外方から見たとき、2つの第2サポートロール22,22は、水平方向Bにおいて、第2駆動ロール12における第1駆動ロール11とは反対側に配置されている。2つの第2サポートロール22,22を軸線方向Cの外方から見たとき、水平方向Bにおいて、第2駆動ロール12が2つの第1サポートロール21,21に対向している。
【0044】
図1に示すように、第2サポートロール22を重力方向Aの上方から見たとき、第2サポートロール22は、水平方向Bにおいて、第2駆動ロール12における第1駆動ロール11とは反対側に配置されている。
【0045】
軸線方向Cにおける第2サポートロール22の中間の位置を第2中間位置Ms2とする。第2サポートロール22を重力方向Aの上方から見たとき、第2サポートロール22の第2中間位置Ms2と、第2ロール部121の第2位置M2とが水平方向Bにおいて一致している。2つの第2サポートロール22,22は、軸線方向Cにおける第2駆動ロール12の中央に対向している。なお、2つの第2サポートロール22,22は、金属製であってもよいが、2つの第2サポートロール22,22のロール面を樹脂でコーティングしたものを採用するとよい。
【0046】
図1に示すように、第1支持部31を重力方向Aの上方から見たとき、第1支持部31は、水平方向Bにおいて、第1サポートロール21における第1駆動ロール11とは反対側に配置されている。第2支持部32を重力方向Aの上方から見たとき、第2支持部32は、水平方向Bにおいて、第2サポートロール22における第2駆動ロール12とは反対側に配置されている。
【0047】
図2に示すように、第1支持部31を軸線方向Cの外方から見たとき、第1支持部31は、水平方向Bにおいて、2つの第1サポートロール21,21における第1駆動ロール11とは反対側に配置されている。第2支持部32を軸線方向Cの外方から見たとき、第2支持部32は、水平方向Bにおいて、2つの第2サポートロール22,22における第2駆動ロール12とは反対側に配置されている。
【0048】
図1に示すように、第1支持部31は、軸線方向Cに延在する矩形ブロック状の無垢材である。第1支持部31は、中実材である。第1支持部31は、第1駆動ロール11よりも断面二次モーメントが大きい。第1支持部31は、水平方向Bの両面のうちの一方に第1壁面31aを有するとともに、他方に第2壁面31bを有している。第1壁面31aは、第2壁面31bよりも第1駆動ロール11に近い面である。
【0049】
第2支持部32は、軸線方向Cに延在する矩形ブロック状の無垢材である。第2支持部32は、中実材である。第2支持部32は、第2駆動ロール12よりも断面二次モーメントが大きい。第2支持部32は、水平方向Bの両面のうち一方に第1壁面32aを有するとともに、他方に第2壁面32bを有している。第1壁面32aは、第2壁面32bよりも第2駆動ロール12に近い面である。
【0050】
図1及び図2に示すように、第1押付部41は、板状の第1支持板411と、2つの第1ねじ部412と、第1保持部413と、2つの第1固定板414とを有している。第1支持板411は、第1壁面31aに固定されている。2つの第1ねじ部412は、第2壁面31bから第1壁面31aに向けて第1支持部31を貫通している。2つの第1ねじ部412は、第1支持板411を貫通している。第1支持板411は、第1支持部31を貫通した2つの第1ねじ部412を支持している。
【0051】
2つの第1ねじ部412は、第1端412a及び第2端412bを有している。第1端412aは、第1壁面31aよりも第1駆動ロール11側に位置している。第1端412aは、第1支持板411よりも第1駆動ロール11側に位置している。一方の第1ねじ部412の第1端412aには、一方の第1固定板414が設けられ、他方の第1ねじ部412の第1端412aには、他方の第1固定板414が設けられている。第1固定板414は、第1ねじ部412に対して回転可能となるように第1端412aに取り付けられている。第2端412bは、第2壁面31bから離れている。2つの第1ねじ部412の外周面には、雄ねじが形成されている。第1支持板411における第1ねじ部412が貫通している部分には、雌ねじが形成されている。
【0052】
図1に示すように、第1保持部413を重力方向Aの上方から見たとき、第1保持部413は、U字形状をなしている。第1保持部413は、第1板413aと、2つの第2板413bとを有している。第1板413aは、水平方向Bに第1支持板411と対向している。第1板413aの厚さ方向は、第1支持板411の厚さ方向と同じである。第1板413aは、2つの第1固定板414に固定されている。
【0053】
第1保持部413を重力方向Aの上方から見たとき、2つの第2板413bは、軸線方向Cにおける第1板413aの両端それぞれから第1駆動ロール11に向けて延びている。2つの第2板413bは、軸線方向Cで対向している。
【0054】
第2端412bを第2壁面31bに近づかせるように2つの第1ねじ部412が第1支持板411に対して螺進することにより、第1保持部413は、第1駆動ロール11に向けて近づく。第2端412bを第2壁面31bから離すように2つの第1ねじ部412が第1支持板411に対して螺退することにより、第1保持部413は、第1駆動ロール11から離れる。
【0055】
図1及び図2に示すように、2つの第2板413bの間には、2つの第1サポートロール21,21が回転可能に保持されている。2つの第1サポートロール21,21の軸線に直交する方向の一部は、2つの第2板413bよりも第1駆動ロール11に向けて突出している。第1押付部41は、2つの第1サポートロール21,21が第1駆動ロール11に対して近づく又は離れるように第1支持部31に取り付けられている。なお、図1において、2つの第1サポートロール21,21は、第1駆動ロール11に接触していない。
【0056】
図1及び図2に示すように、第2押付部42は、板状の第2支持板421と、2つの第2ねじ部422と、第2保持部423と、2つの第2固定板424とを有している。第2支持板421は、第1壁面32aに固定されている。2つの第2ねじ部422は、第2壁面32bから第1壁面32aに向けて第2支持部32を貫通している。2つの第2ねじ部422は、第2支持板421を貫通している。第2支持板421は、第2支持部32を貫通した2つの第2ねじ部422を支持している。
【0057】
2つの第2ねじ部422は、第1端422a及び第2端422bを有している。第1端422aは、第1壁面32aよりも第2駆動ロール12側に位置している。第1端422aは、第2支持板421よりも第2駆動ロール12側に位置している。一方の第2ねじ部422の第1端422aには、一方の第2固定板424が設けられ、他方の第2ねじ部422の第1端422aには、他方の第2固定板424が設けられている。第2固定板424は、第2ねじ部422に対して回転可能となるように第1端422aに取り付けられている。第2端422bは、第2壁面32bから離れている。2つの第2ねじ部422の外周面には、雄ねじが形成されている。第2支持板421における第2ねじ部422が貫通している部分には、雌ねじが形成されている。
【0058】
図1に示すように、第2保持部423を重力方向Aの上方から見たとき、第2保持部423は、U字形状をなしている。第2保持部423は、第1板423aと、2つの第2板423bとを有している。第1板423aは、水平方向Bに第2支持板421と対向している。第1板423aの厚さ方向は、第2支持板421の厚さ方向と同じである。第1板423aは、2つの第2固定板424に固定されている。
【0059】
第2保持部423を重力方向Aの上方から見たとき、2つの第2板423bは、軸線方向Cにおける第1板423aの両端それぞれから第2駆動ロール12に向けて延びている。2つの第2板423bは、軸線方向Cで対向している。
【0060】
第2端422bを第2壁面32bに近づかせるように2つの第2ねじ部422が第2支持板421に対して螺進することにより、第2保持部423は、第2駆動ロール12に向けて近づく。第2端422bを第2壁面32bから離れるように2つの第2ねじ部422が第2支持板421に対して螺退することにより、第2保持部423は、第2駆動ロール12から離れる。
【0061】
図1及び図2に示すように、2つの第2板423bの間には、2つの第2サポートロール22,22が回転可能に保持されている。2つの第2サポートロール22,22の軸線に直交する方向の一部は、2つの第2板423bよりも第2駆動ロール12に向けて突出している。第2押付部42は、2つの第2サポートロール22,22が第2駆動ロール12に対して近づく又は離れるように第2支持部32に取り付けられている。なお、図1において、2つの第2サポートロール22,22は、第2駆動ロール12に接触していない。
【0062】
図2に示すように、集電箔50は、供給ロール80に巻かれている。供給ロール80は、重力方向Aにおいて、第2駆動ロール12の上方に配置されている。巻取ロール90は、重力方向Aにおいて、第2駆動ロール12の下方に配置されている。
【0063】
供給ロール80から繰り出された集電箔50は、電極層成形装置1を通過して巻取ロール90に巻き取られるようになっている。供給ロール80から下方に繰り出された集電箔50は、第2駆動ロール12に巻き掛けられている。集電箔50は、第1駆動ロール11と第2駆動ロール12との間を通過した後、巻取ロール90に向けて搬送される。その後、集電箔50は、巻取ロール90に巻き取られる。なお、集電箔50を搬送する方向を搬送方向Dとすると、集電箔50を搬送方向Dに搬送する動力は、第2駆動ロール12の回転力である。また、搬送方向Dは、長尺帯状の集電箔50の長手方向に一致している。
【0064】
電極層成形装置1は、湿潤粉体供給装置95を備えている。湿潤粉体供給装置95には、湿潤粉体Pが充填されている。湿潤粉体供給装置95は、第1駆動ロール11及び第2駆動ロール12の上方に配置されている。湿潤粉体供給装置95の下部は、第1駆動ロール11と第2駆動ロール12との間に挿入されている。湿潤粉体供給装置95は、第2駆動ロール12よりも第1駆動ロール11寄りに配置されている。湿潤粉体供給装置95の供給口は、第1駆動ロール11と第2駆動ロール12との間において、第2駆動ロール12よりも第1駆動ロール11寄りに設けられている。
【0065】
上記の電極層成形装置1を用いて集電箔50に電極層60を成形する電極層60の成形方法について以下説明する。なお、図3図4、及び図5は、説明の便宜上、集電箔50及び電極層60の構成を割愛している。
【0066】
<電極層の成形方法>
電極層60の成形方法は、初期設定工程PrIと、ベンド工程PrBと、成形工程PrMとを有している。初期設定工程PrIは、ベンド工程PrB及び成形工程PrMよりも前に実施される工程である。
【0067】
図3に示すように、初期設定工程PrIでは、第1固定台71及び第2固定台72の位置を調整することにより第1駆動ロール11と第2駆動ロール12との水平方向Bの距離を所定の初期距離G1に設定する。初期設定工程PrIでは、第1駆動ロール11及び第2駆動ロール12それぞれの軸線が互いに近づく又は離れる。このため、初期設定工程PrIで設定される初期距離G1は、第1駆動ロール11及び第2駆動ロール12の軸線方向Cの全長に亘って常に一定である。本実施形態では、初期設定工程PrIを実施することにより、第1駆動ロール11が2つの第1サポートロール21に接触し、且つ第2駆動ロール12が2つの第2サポートロール22に接触している。第1駆動ロール11と第1サポートロール21とは線接触している。第2駆動ロール12と第2サポートロール22とは線接触している。なお、初期設定工程PrIを実施することにより、第1駆動ロール11が2つの第1サポートロール21に接触していなくてもよい。同様に、初期設定工程PrIを実施することにより第2駆動ロール12が2つの第2サポートロール22に接触していなくてもよい。
【0068】
次に、ベンド工程PrBについて説明する。
ベンド工程PrBは、初期設定工程PrIの後に実施される。ベンド工程PrBは、成形工程PrMの前に実施される。
【0069】
ベンド工程PrBは、第1押付部41が第1サポートロール21を第1駆動ロール11に押し付ける工程である。ベンド工程PrBは、第1押付部41により軸線方向Cにおける第1駆動ロール11の中央が第2駆動ロール12に向けて近づくように第1駆動ロール11を反らせる工程である。ベンド工程PrBは、第2押付部42が第2サポートロール22を第2駆動ロール12に押し付ける工程である。ベンド工程PrBは、第2押付部42により軸線方向Cにおける第2駆動ロール12の中央が第1駆動ロール11に向けて近づくように第2駆動ロール12を反らせる工程である。
【0070】
図4に示すように、ベンド工程PrBでは、2つの第1ねじ部412を回転させ、2つの第1ねじ部412を第1支持板411に対して螺進させる。ベンド工程PrBでは、2つの第1ねじ部412の第1支持板411に対する螺進により第1サポートロール21を第1駆動ロール11に押し付け、且つ第1駆動ロール11を弓なり状にする。
【0071】
ベンド工程PrBでは、2つの第2ねじ部422を回転させ、2つの第2ねじ部422を第2支持板421に対して螺進させる。ベンド工程PrBでは、2つの第2ねじ部422の第2支持板421に対する螺進により第2サポートロール22を第2駆動ロール12に押し付け、且つ第2駆動ロール12を弓なり状にする。
【0072】
第1駆動ロール11の第1位置M1のうち最も第2駆動ロール12に近い点を点Ds1とする。第2駆動ロール12の第2位置M2のうち最も第1駆動ロール11に近い点を点Ds2とする。第1駆動ロール11の第1端11aのうち最も第2駆動ロール12に近い点を点Da1とする。第2駆動ロール12の第1端12aのうち最も第1駆動ロール11に近い点を点Da2とする。第1駆動ロール11の第2端11bのうち最も第2駆動ロール12に近い点を点Db1とする。第2駆動ロール12の第2端12bのうち最も第1駆動ロール11に近い点を点Db2とする。ベンド工程PrBにおける点Ds1と点Ds2との間の距離を距離Gaとする。ベンド工程PrBにおける点Da1と点Da2との間の距離を距離Gbとする。ベンド工程PrBにおける点Db1と点Db2との間の距離は、距離Gbである。
【0073】
ベンド工程PrBの後、距離Gaは、初期距離G1よりも小さくなる。ベンド工程PrBの後、距離Gbは、初期距離G1よりも小さくなる。距離Gaは、距離Gbよりも小さい。
【0074】
次に、成形工程PrMについて説明する。成形工程PrMは、ベンド工程PrBの後に実施される。
成形工程PrMは、第1駆動ロール11と第2駆動ロール12との間に集電箔50を通過させつつ、第1駆動ロール11と第2駆動ロール12との間に湿潤粉体供給装置95から湿潤粉体Pを供給する工程である。成形工程PrMは、第1駆動ロール11と第2駆動ロール12との間で集電箔50の第1面S1に湿潤粉体Pを押し付けることにより電極層60を成形する工程である。
【0075】
図2に示すように、供給ロール80から繰り出された集電箔50の第2面S2が第2駆動ロール12に接触している。第2駆動ロール12の回転により集電箔50が第1駆動ロール11と第2駆動ロール12との間を通過する。集電箔50の第1面S1と第1駆動ロール11とは接触していない。第1駆動ロール11の回転に伴い、2つの第1サポートロール21,21は、第1駆動ロール11に従動回転する。第2駆動ロール12の回転に伴い、2つの第2サポートロール22,22は、第2駆動ロール12に従動回転する。
【0076】
第1駆動ロール11と第2駆動ロール12との間に集電箔50を集電箔50が通過した状態で、湿潤粉体供給装置95の供給口から湿潤粉体Pが連続供給される。第1駆動ロール11の回転により湿潤粉体Pが集電箔50の第1面S1に向けて押し付けられる。湿潤粉体Pは、第1駆動ロール11及び第2駆動ロール12により集電箔50の厚さ方向にプレスされる。集電箔50の第1面S1に湿潤粉体Pが押し付けられることにより集電箔50の第1面S1に電極層60が成形される。なお、第1駆動ロール11と第2駆動ロール12との間を通過した直後の電極層60は、湿潤粉体Pに含まれる溶剤が除去されていない。第1駆動ロール11と第2駆動ロール12との間を通過した直後の電極層60は、電極活物質層の前駆体である。
【0077】
図5に示すように、成形工程PrMにおいて、軸線方向Cにおける第1駆動ロール11の中央及び軸線方向Cにおける第2駆動ロール12の中央には、湿潤粉体Pを起因として第1駆動ロール11及び第2駆動ロール12を互いに離す方向への力が発生する。このため、電極層60を成形するとき、第1駆動ロール11は、軸線方向Cにおける第1駆動ロール11の中央が第2駆動ロール12から離れる方向へ弾性変形する。同様に、第2駆動ロール12は、軸線方向Cにおける第2駆動ロール12の中央が第1駆動ロール11から離れる方向へ弾性変形する。なお、第1支持部31は、軸線方向Cにおける第1駆動ロール11の中央が第2駆動ロール12から離れる方向へ弾性変形した場合、変形する。また、第2支持部32は、軸線方向Cにおける第2駆動ロール12の中央が第1駆動ロール11から離れる方向へ弾性変形した場合、変形する。第1支持部31及び第2支持部32の変形様態は、種々考えられるため、図5中での記載を定めることができない。このため、図5では、図4に示す第1支持部31及び第2支持部32の位置を基準として、第1支持部31及び第2支持部32を2つの駆動ロール11,12から離れる方向に移動させることで第1支持部31及び第2支持部32の変形を示している。
【0078】
成形工程PrMにおける点Ds1と点Ds2との間の距離を距離GAとする。成形工程PrMにおける点Da1と点Da2との間の距離を距離GBとする。成形工程PrMにおける点Db1と点Db2との間の距離は、距離GBである。
【0079】
ベンド工程PrBの後に成形工程PrMを実施した場合、距離GAは、ベンド工程PrB時における距離Gaよりも大きい。また、ベンド工程PrBの後に成形工程PrMを実施した場合、距離GBは、ベンド工程PrB時における距離Gbよりも大きい。距離GBは、距離GAよりも小さい。
【0080】
距離GAを距離GBで除した値は、「1」となる、もしくは距離Gaを距離Gbで除した値よりも「1」に近い値となる。すなわち、成形工程PrM時の第1駆動ロール11及び第2駆動ロール12それぞれの軸線の曲がりが、ベンド工程PrB時の第1駆動ロール11及び第2駆動ロール12それぞれの軸線の曲がりよりも緩い。換言すると、成形工程PrMは、ベンド工程PrBと比較して第1駆動ロール11の軸線と第2駆動ロール12の軸線とが互いにより平行に近い状態となる。なお、初期距離G1、距離Ga,Gbは、成形工程PrMを実施したときに距離GAを距離GBで除した値が、「1」となる、もしくは距離Gaを距離Gbで除した値よりも「1」に近づくことを予め確認又は想定して設定された値である。
【0081】
図2に示すように、電極層60が成形された集電箔50は、第1駆動ロール11及び第2駆動ロール12よりも搬送方向Dの下流に搬送され、巻取ロール90に巻き取られる。本実施形態の電極層60は、集電箔50の長手方向の全長に亘って成形される。なお、第1駆動ロール11と第2駆動ロール12との間を通過した直後の電極層60は、巻取ロール90に巻き取られる前に乾燥させられるとよい。
【0082】
<本実施形態の作用>
本実施形態の作用を説明する。
ベンド工程PrBは、成形工程PrMで想定される第1駆動ロール11の弾性変形を予め吸収するように、第1押付部41及び第1サポートロール21によって第1駆動ロール11を反らせる。また、ベンド工程PrBは、成形工程PrMで想定される第2駆動ロール12の弾性変形を予め吸収するように、第2押付部42及び第2サポートロール22によって第2駆動ロール12を反らせる。
【0083】
図5の破線には、ベンド工程PrBを実施せずに成形工程PrMを実施した場合の第1駆動ロール11の反りを示す。この場合と比べると、ベンド工程PrBの後に成形工程PrMを実施した場合の第1駆動ロール11の軸線の曲がりが緩い。
【0084】
同様に、図5の破線には、ベンド工程PrBを実施せずに成形工程PrMを実施した場合の第2駆動ロール12の反りを示す。この場合と比べると、ベンド工程PrBの後に成形工程PrMを実施した場合の第2駆動ロール12の軸線の曲がりが緩い。
【0085】
さらに、電極層60を成形するとき、第1駆動ロール11及び第2駆動ロール12を互いに離す方向への力は、第1押付部41及び第1サポートロール21を介して第1支持部31に受け止められる。また、電極層60を成形するとき、第1駆動ロール11及び第2駆動ロール12を互いに離す力は、第2押付部42及び第2サポートロール22を介して第2支持部32に受け止められる。
【0086】
<本実施形態の効果>
本実施形態の効果を説明する。
(1)ベンド工程PrBを実施した後に成形工程PrMを実施すると、ベンド工程PrBを実施せずに成形工程PrMを実施する場合と比較して、第1駆動ロール11及び第2駆動ロール12それぞれの軸線の曲がりを抑制した状態で電極層60を成形できる。このため、ベンド工程PrBを実施せずに成形工程PrMを実施した場合に成形される電極層60と比較して、集電箔50に成形される電極層60の厚さのばらつきを抑制できる。すなわち、成形工程PrM時における第1駆動ロール11及び第2駆動ロール12のたわみ変形が抑制される。これに伴い、集電箔50上に成形される電極層60の厚さが、集電箔50の幅方向の中央で厚く、集電箔50の幅方向の端部で薄くなる分布となる板クラウンを抑制できる。
【0087】
(2)第1支持部31が第1駆動ロール11よりも変形し難く、且つ第2支持部32が第2駆動ロール12よりも変形し難い。このため、第1支持部31の断面二次モーメントが第1駆動ロール11の断面二次モーメントよりも小さく、且つ第2支持部32の断面二次モーメントが第2駆動ロール12の断面二次モーメントよりも小さい場合と比較して、電極層60を成形するときに第1駆動ロール11及び第2駆動ロール12が湿潤粉体Pを起因として弾性変形を抑制できる。したがって、集電箔50に成形される電極層60の厚さのばらつきをより抑制できる。
【0088】
(3)距離GAを距離GBで除した値が、「1」となる、もしくは距離Gaを距離Gbで除した値よりも「1」に近い値となる。このため、成形工程PrMを、第1駆動ロール11及び第2駆動ロール12それぞれの軸線をより平行にした状態で実施できる。よって、電極層60の厚さのばらつきをより抑制できる。
【0089】
(4)成形工程PrMにおける第1駆動ロール11及び第2駆動ロール12それぞれの軸線の曲がりを抑制する手段として、第1駆動ロール11及び第2駆動ロール12それぞれの直径を大きくすることが考えられる。その場合、第1駆動ロール11と第2駆動ロール12との間で湿潤粉体Pが圧縮されるニップアングルが大きくなり、湿潤粉体Pに作用する荷重が増大し過ぎる虞がある。
【0090】
その点、本実施形態では、成形工程PrMにおける第1駆動ロール11及び第2駆動ロール12それぞれの軸線の曲がりの抑制を、第1サポートロール21、第1押付部41、第2サポートロール22、及び第2押付部42で実現している。このため、第1駆動ロール11及び第2駆動ロール12の直径を大きくする必要がない。よって、成形工程PrMにおいて、湿潤粉体Pに作用する荷重を増大させないため、電極層60の密度の増加や集電箔50へのダメージを抑制できる。
【0091】
[第2実施形態]
<電極層成形装置の構成>
以下、電極層成形装置の第2実施形態を図6図7、及び図8にしたがって説明する。なお、第1実施形態と同じ構成については同じ符号を付し、詳細な説明を割愛する。
【0092】
図6に示すように、電極層成形装置1の第1押付部41は、2つの第1駆動部101を有している。第1駆動部101は、電動モータである。一方の第1駆動部101は、一方の第1ねじ部412の第2端412bに接続され、他方の第1駆動部101は、他方の第1ねじ部412の第2端412bに接続されている。
【0093】
電極層成形装置1の第2押付部42は、2つの第2駆動部102を有している。第2駆動部102は、電動モータである。一方の第2駆動部102は、一方の第2ねじ部422の第2端422bに接続され、他方の第2駆動部102は、他方の第2ねじ部422の第2端422bに接続されている。
【0094】
軸線方向Cにおける第1ロール部111の第1端11aと第1ロール部111の第1位置M1との中間の位置を第1左位置ML1とする。また、軸線方向Cにおける第1ロール部111の第2端11bと第1ロール部111の第1位置M1との中間の位置を第1右位置MR1とする。軸線方向Cにおける第2ロール部121の第1端12aと第2ロール部121の第2位置M2との中間の位置を第2左位置ML2とする。軸線方向Cにおける第2ロール部121の第2端12bと第2ロール部121の第2位置M2との中間の位置を第2右位置MR2とする。水平方向Bにおいて、第1左位置ML1と第2左位置ML2とは一致している。水平方向Bにおいて、第1右位置MR1と第2右位置MR2とは一致している。
【0095】
第1左位置ML1のうち最も第2駆動ロール12に近い点を点DL1とする。第1右位置MR1のうち最も第2駆動ロール12に近い点を点DR1とする。第2左位置ML2のうち最も第1駆動ロール11に近い点を点DL2とする。第2右位置MR2のうち最も第1駆動ロール11に近い点を点DR2とする。
【0096】
電極層成形装置1は、第1左押付部41Aと、第1右押付部41Bと、第2左押付部42Aと、第2右押付部42Bと、制御装置103とを備えている。
第1左押付部41A及び第1右押付部41Bは、本実施形態の第1押付部41と同じ構成を有している。第1左押付部41A及び第1右押付部41Bは、第1支持部31に取り付けられている。第1押付部41、第1左押付部41A、及び第1右押付部41Bは、軸線方向Cにおいて一列に並んでいる。
【0097】
第1左押付部41Aの第1サポートロール21の第1中間位置Ms1と、第1駆動ロール11の第1左位置ML1とは水平方向Bにおいて一致している。第1右押付部41Bの第1サポートロール21の第1中間位置Ms1と、第1駆動ロール11の第1右位置MR1とは水平方向Bにおいて一致している。
【0098】
第2左押付部42A及び第2右押付部42Bは、本実施形態の第2押付部42と同じ構成を有している。第2左押付部42A及び第2右押付部42Bは、第2支持部32に取り付けられている。第2押付部42、第2左押付部42A、及び第2右押付部42Bは、軸線方向Cにおいて一列に並んでいる。
【0099】
第2左押付部42Aの第2サポートロール22の第2中間位置Ms2と、第2駆動ロール12の第2左位置ML2とは水平方向Bにおいて一致している。第2右押付部42Bの第2サポートロール22の第2中間位置Ms2と、第2駆動ロール12の第2右位置MR2とは水平方向Bにおいて一致している。
【0100】
制御装置103は、プロセッサと、記憶部と、を備えている。プロセッサとしては、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、又はDSP(Digital Signal Processor)が用いられる。記憶部は、RAM(Random access memory)及びROM(Read Only Memory)を含む。記憶部は、処理をプロセッサに実行させるように構成されたプログラムコード又は指令を格納している。記憶部、即ち、コンピュータ可読媒体は、汎用又は専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。制御装置103は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェア回路によって構成されていてもよい。処理回路である制御装置103は、コンピュータプログラムに従って動作する1つ以上のプロセッサ、ASICやFPGA等の1つ以上のハードウェア回路、或いは、それらの組み合わせを含み得る。
【0101】
制御装置103は、第1駆動部101を制御することにより第1ねじ部412を回転させる。すなわち、制御装置103は、第1駆動部101を制御することにより第1ねじ部412を第1支持板411に対して螺進又は螺退させる。制御装置103は、第2駆動部102を制御することにより第2ねじ部422を回転させる。すなわち、制御装置103は、第2駆動部102を制御することにより第2ねじ部422を第2支持板421に対して螺進又は螺退させる。制御装置103は、第1押付部41の第1駆動部101及び第2押付部42の第2駆動部102を制御することにより、第1実施形態に記載のベンド工程PrBを実施する。
【0102】
図7に示すように、電極層成形装置1は、測定器104を有している。測定器104は、重力方向Aにおいて第1駆動ロール11の下方に配置されている。測定器104は、レーザ変位計等の公知の測定器である。測定器104は、成形工程PrMで成形された電極層60の厚さを計測している。測定器104により計測された電極層60の厚さの情報は、制御装置103に入力される。
【0103】
図8に示すように、電極層成形装置1は、3つの測定器104を備えている。3つの測定器104をそれぞれ、第1測定器104a、第2測定器104b、及び第3測定器104cとする。なお、図8では湿潤粉体供給装置95を説明の便宜上割愛している。
【0104】
第1測定器104aは、重力方向Aにおいて、第1駆動ロール11の第1左位置ML1の下方に配置されている。第1測定器104aは、第1駆動ロール11の第1左位置ML1で成形された電極層60の厚さを測定する。
【0105】
第2測定器104bは、重力方向Aにおいて、第1駆動ロール11の第1右位置MR1の下方に配置されている。第2測定器104bは、第1駆動ロール11の第1右位置MR1で成形された電極層60の厚さを測定する。
【0106】
第3測定器104cは、重力方向Aにおいて、第1駆動ロール11の第1位置M1の下方に配置されている。第3測定器104cは、第1駆動ロール11の第1位置M1で成形された電極層60の厚さを測定する。
【0107】
<制御装置の制御>
以下、制御装置103の制御について説明する。なお、以下説明では、ベンド工程PrBを実施した後の成形工程PrM時における制御装置103の制御について記載する。
【0108】
ベンド工程PrBが実施された直後、制御装置103は、第1左押付部41A及び第1右押付部41Bそれぞれの第1駆動部101と、第2左押付部42A及び第2右押付部42Bそれぞれの第2駆動部102とを制御する。そして、第1左押付部41A及び第1右押付部41Bそれぞれの第1サポートロール21を第1駆動ロール11に押し付ける。同時に、第2左押付部42A及び第2右押付部42Bそれぞれの第2サポートロール22を第2駆動ロール12に押し付ける。
【0109】
制御装置103は、第1測定器104a、第2測定器104b、及び第3測定器104cから出力される電極層60の厚さの情報を監視する。制御装置103は、第1測定器104a、第2測定器104b、及び第3測定器104cから出力される電極層60の厚さの情報に基づき第1駆動部101及び第2駆動部102を制御する。
【0110】
<第1測定器の測定結果に基づく制御装置の制御>
例えば第1測定器104aから出力される電極層60の厚さ情報に基づいて第1駆動ロール11の第1左位置ML1で成形された電極層60の厚さが所定の厚さよりも厚いと制御装置103が判断した場合を考える。この場合、第1駆動ロール11の点DL1と、第2駆動ロール12の点DL2との間の間隔が広くなっていることを示している。
【0111】
制御装置103は、第1左押付部41Aの第1サポートロール21が第1駆動ロール11の第1左位置ML1に対して押し付けられるように第1左押付部41Aの第1駆動部101を制御する。同時に、制御装置103は、第2左押付部42Aの第2サポートロール22が第2駆動ロール12の第2左位置ML2に対して押し付けられるように第2左押付部42Aの第2駆動部102を制御する。これにより、第1駆動ロール11の点DL1と第2駆動ロール12の点DL2との間の間隔が狭くなる。
【0112】
例えば第1測定器104aから出力される電極層60の厚さ情報に基づいて第1駆動ロール11の第1左位置ML1で成形された電極層60の厚さが所定の厚さよりも薄いと制御装置103が判断した場合を考える。この場合、第1駆動ロール11の点DL1と、第2駆動ロール12の点DL2との間隔が狭くなっていることを示している。
【0113】
制御装置103は、第1左押付部41Aの第1サポートロール21が第1駆動ロール11の第1左位置ML1を押圧する力を弱めるように第1左押付部41Aの第1駆動部101を制御する。同時に、制御装置103は、第2左押付部42Aの第2サポートロール22が第2駆動ロール12の第2左位置ML2を押圧する力を弱めるように第2左押付部42Aの第2駆動部102を制御する。これにより、第1駆動ロール11の点DL1と第2駆動ロール12の点DL2との間の間隔が広くなる。
【0114】
制御装置103は、第1測定器104aから出力される電極層60の厚さ情報に基づいて第1左押付部41A及び第2左押付部42Aを制御することにより第1駆動ロール11の第1左位置ML1で成形された電極層60の厚さを所定の厚さに近づける。すなわち、制御装置103は、第1測定器104aから出力される電極層60の厚さ情報を第1駆動ロール11の第1左位置ML1で成形された電極層60の厚さにフィードバックする。なお、制御装置103は、第1測定器104aから出力される電極層60の厚さ情報に基づいて第1左押付部41Aのみを制御してもよい。制御装置103は、第1測定器104aから出力される電極層60の厚さ情報に基づいて第2左押付部42Aのみを制御してもよい。
【0115】
<第2測定器の測定結果に基づく制御装置の制御>
例えば第2測定器104bから出力される電極層60の厚さ情報に基づいて第1駆動ロール11の第1右位置MR1で成形された電極層60の厚さが所定の厚さよりも厚いと制御装置103が判断した場合を考える。この場合、第1駆動ロール11の点DR1と、第2駆動ロール12の点DR2との間の間隔が広くなっていることを示している。
【0116】
制御装置103は、第1右押付部41Bの第1サポートロール21が第1駆動ロール11の第1右位置MR1に対して押し付けられるように第1右押付部41Bの第1駆動部101を制御する。同時に、制御装置103は、第2右押付部42Bの第2サポートロール22が第2駆動ロール12の第2右位置MR2に対して押し付けられるように第2右押付部42Bの第2駆動部102を制御する。これにより、第1駆動ロール11の点DR1と第2駆動ロール12の点DR2との間の間隔が狭くなる。
【0117】
例えば第2測定器104bから出力される電極層60の厚さ情報に基づいて第1駆動ロール11の第1右位置MR1で成形された電極層60の厚さが所定の厚さよりも薄いと制御装置103が判断した場合を考える。この場合、第1駆動ロール11の点DR1と、第2駆動ロール12の点DR2との間隔が狭くなっていることを示している。
【0118】
制御装置103は、第1右押付部41Bの第1サポートロール21が第1駆動ロール11の第1右位置MR1を押圧する力を弱めるように第1右押付部41Bの第1駆動部101を制御する。同時に、制御装置103は、第2右押付部42Bの第2サポートロール22が第2駆動ロール12の第2右位置MR2を押圧する力を弱めるように第2右押付部42Bの第2駆動部102を制御する。これにより、第1駆動ロール11の点DR1と第2駆動ロール12の点DR2との間の間隔が広くなる。
【0119】
制御装置103は、第2測定器104bから出力される電極層60の厚さ情報に基づいて第1右押付部41B及び第2右押付部42Bを制御することにより第1駆動ロール11の第1右位置MR1で成形された電極層60の厚さを所定の厚さに近づける。すなわち、制御装置103は、第2測定器104bから出力される電極層60の厚さ情報を第1駆動ロール11の第1右位置MR1で成形された電極層60の厚さにフィードバックする。なお、制御装置103は、第2測定器104bから出力される電極層60の厚さ情報に基づいて第1右押付部41Bのみを制御してもよい。制御装置103は、第2測定器104bから出力される電極層60の厚さ情報に基づいて第2右押付部42Bのみを制御してもよい。
【0120】
<第3測定器の測定結果に基づく制御装置の制御>
例えば第3測定器104cから出力される電極層60の厚さ情報に基づいて第1駆動ロール11の第1位置M1で成形された電極層60の厚さが所定の厚さよりも厚いと制御装置103が判断した場合を考える。この場合、第1駆動ロール11の点Ds1と、第2駆動ロール12の点Ds2との間の間隔が広くなっていることを示している。
【0121】
制御装置103は、第1押付部41の第1サポートロール21が第1駆動ロール11の第1位置M1に対して押し付けられるように第1押付部41の第1駆動部101を制御する。同時に、制御装置103は、第2押付部42の第2サポートロール22が第2駆動ロール12の第2位置M2に対して押し付けられるように第2押付部42の第2駆動部102を制御する。これにより、第1駆動ロール11の点Ds1と第2駆動ロール12の点Ds2との間の間隔が狭くなる。
【0122】
例えば第3測定器104cから出力される電極層60の厚さ情報に基づいて第1駆動ロール11の第1位置M1で成形された電極層60の厚さが所定の厚さよりも薄いと制御装置103が判断した場合を考える。この場合、第1駆動ロール11の点Ds1と、第2駆動ロール12の点Ds2との間隔が狭くなっていることを示している。
【0123】
制御装置103は、第1押付部41の第1サポートロール21が第1駆動ロール11の第1位置M1を押圧する力を弱めるように第1押付部41の第1駆動部101を制御する。同時に、制御装置103は、第2押付部42の第2サポートロール22が第2駆動ロール12の第2位置M2を押圧する力を弱めるように第2押付部42の第2駆動部102を制御する。これにより、第1駆動ロール11の点Ds1と第2駆動ロール12の点Ds2との間の間隔が広くなる。
【0124】
制御装置103は、第3測定器104cから出力される電極層60の厚さ情報に基づいて第1押付部41及び第2押付部42を制御することにより第1駆動ロール11の第1位置M1で成形された電極層60の厚さを所定の厚さに近づける。すなわち、制御装置103は、第3測定器104cから出力される電極層60の厚さ情報を第1駆動ロール11の第1位置M1で成形された電極層60の厚さにフィードバックする。なお、制御装置103は、第3測定器104cから出力される電極層60の厚さ情報に基づいて第1押付部41のみを制御してもよい。制御装置103は、第3測定器104cから出力される電極層60の厚さ情報に基づいて第2押付部42のみを制御してもよい。制御装置103は、上述した3つの制御を同時に実施してもよい。
【0125】
<本実施形態の効果>
本実施形態の効果を説明する。
本実施形態では、成形工程PrMにおいて、測定器104を用いて電極層60の厚さが所定の厚さとならない事象を適切に検知できる。そして、測定器104の測定結果に基づいて、第1押付部41、第2押付部42、第1左押付部41A,第1右押付部41B、第2左押付部42A、及び第2右押付部42Bを制御する。このため、成形された電極層60の厚さがばらついた状態を適切に次回の電極層60の成形にフィードバックできる。よって、電極層60の厚さのばらつきを抑制できる。
【0126】
[第3実施形態]
<電極層成形装置の構成>
以下、電極層成形装置の第3実施形態を図9にしたがって説明する。第1実施形態と同じ構成については同じ符号を付し、詳細な説明を割愛する。なお、第1実施形態との主な相違点は、集電箔50が第1駆動ロール11と第2駆動ロール12との間を通過しない点である。
【0127】
図9に示すように、第1駆動ロール11と第2駆動ロール12とは、所定の間隔T1を空けて配置されている。第1駆動ロール11と第2駆動ロール12とは、第1ロール部111と第2ロール部121とが所定の間隔T1を空けて対向するように配置されている。第1駆動ロール11は、図示しない動力部により第1周速度V1で回転する。第2駆動ロール12は、図示しない動力部により第2周速度V2で回転する。第2周速度V2は、第1周速度V1よりも大きい。
【0128】
電極層成形装置1は、第3駆動ロール13を備えている。第3駆動ロール13は、金属製である。第3駆動ロール13の直径は、第1駆動ロール11の直径及び第2駆動ロール12の直径よりも小さい。第3駆動ロール13の軸線が延びる方向は、軸線方向Cである。第3駆動ロール13は、重力方向Aにおいて第2駆動ロール12よりも下方に配置されている。第3駆動ロール13は、第2駆動ロール12と所定の間隔Gpを空けて配置されている。
【0129】
第3駆動ロール13は、第1駆動ロール11の第1ロール部111又は第2駆動ロール12の第2ロール部121と同様に、第3ロール部131を有している。第3駆動ロール13は、第3ロール部131が第2ロール部121に所定の間隔Gpを空けて対向するように配置されている。
【0130】
第3駆動ロール13は、図示しない第3固定台に回転可能に支持されている。第3駆動ロール13は、図示しない動力部により第3周速度V3で回転する。第3駆動ロール13は、第2駆動ロール12の回転方向とは反対の方向に回転する。第3周速度V3は、第2周速度V2よりも大きい。
【0131】
供給ロール80は、重力方向Aにおいて、第3駆動ロール13の下方に配置されている。巻取ロール90は、重力方向Aにおいて、第3駆動ロール13の下方に配置されている。供給ロール80及び巻取ロール90は、重力方向Aにおいて同じ高さに配置されている。供給ロール80及び巻取ロール90は、重力方向Aにおいて高さが異なる位置に配置されていてもよい。
【0132】
供給ロール80から上方に繰り出された集電箔50は、第3駆動ロール13の第3ロール部131に巻き掛けられている。供給ロール80から上方に繰り出された集電箔50の第2面S2が第3ロール部131に接触している。集電箔50は、第3ロール部131に巻き掛けられた後、巻取ロール90に向けて下方に搬送される。なお、第2駆動ロール12と集電箔50との間の間隔T2は、所定の間隔T1よりも小さい。間隔Gpは、間隔T2が間隔T1よりも小さくなるように予め定められた大きさを有している。
【0133】
<電極層の成形方法>
以下、電極層の成形方法について説明する。第1実施形態の電極層の成形方法と異なる点は、成形工程PrMが異なる点である。初期設定工程PrI及びベンド工程PrBについては、第1実施形態と同じであるため、詳細な説明を割愛する。
【0134】
成形工程PrMは、第1駆動ロール11と第2駆動ロール12との間に湿潤粉体供給装置95から湿潤粉体Pを供給する工程である。成形工程PrMは、第1駆動ロール11と第2駆動ロール12との間で湿潤粉体Pを第2ロール部121の表面に押し付けることにより電極層60を成形する工程である。第2ロール部121の表面に形成された電極層60の厚さは、間隔T1と同じ大きさとなる。
【0135】
電極層60が形成されるロールの選択は、第1ロール部111の表面粗さ、直径、第1周速度V1の設定や、第2ロール部121の表面粗さ、直径、第2周速度V2の設定に影響される。
【0136】
発明者らは、電極層60が形成されるロールの選択において、第1周速度V1及び第2周速度V2の設定が支配的であることを見出した。具体的には、発明者らは、2つのロール間で電極層60を形成する際に、より大きい周速度で回転するロールに電極層60が形成されることを見出した。このため、本実施形態では、電極層60は、第2ロール部121に形成される。第2ロール部121に形成された電極層60は、第2駆動ロール12と第3駆動ロール13との間に向けて搬送される。
【0137】
第2駆動ロール12と第3駆動ロール13との間に搬送された電極層60は、第3周速度V3が第2周速度V2よりも大きいため、集電箔50の第1面S1に転写される。集電箔50の第1面S1に転写された電極層60の厚さは、間隔T2と同じ大きさとなる。
【0138】
本実施形態では、間隔T2が間隔T1よりも小さいことにより、第2駆動ロール12の軸線方向Cの中央が電極層60に起因して第3駆動ロール13から離れる方向に弾性変形しない。この理由は、第1駆動ロール11と第2駆動ロール12との間で湿潤粉体Pを概ね圧縮しきれているためである。2つのロール間で初めて湿潤粉体Pを圧縮するときに最も荷重が大きくなる。ベンド工程PrBは、湿潤粉体Pをプレス加工して電極層60を形成する際に必要となる。よって、本実施形態の第3駆動ロール13は、請求項上の第1駆動ロール及び第2駆動ロールとは異なる構成である。
【0139】
電極層60が成形された集電箔50は、第3駆動ロール13よりも搬送方向Dの下流に搬送され、巻取ロール90に巻き取られる。本実施形態の電極層60も第1実施形態と同様に、集電箔50の長手方向の全長に亘って成形される。なお、第3駆動ロール13よりも搬送方向Dの下流に位置する電極層60は、巻取ロール90に巻き取られる前に乾燥させられるとよい。
【0140】
<本実施形態の作用及び効果>
本実施形態は、第1実施形態と同じ作用及び効果を得られる。
[変更例]
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施できる。上記各実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施できる。
【0141】
○ 第1押付部41の第1支持板411を割愛してもよい。このように変更する場合、第1支持部31の第1ねじ部412が貫通している部分に、雌ねじを形成してもよい。
○ 第1押付部41の第1保持部413の第1板413aは板状に限らず、2つの第2板413bを接続できる構成であればよい。なお、第1保持部413は、2つの第1サポートロール21,21を回転可能に保持できれば構成をどのように変更してもよい。
【0142】
○ 第1サポートロール21及び第2サポートロール22は、セラミック、ゴム、銅等により形成されていてもよい。
○ 第1実施形態において、第1サポートロール21に代替して、ベンド工程PrB時に第1駆動ロール11に面接触する第1押付部材を採用してもよい。本変更例の第1押付部材は、溝を有している。当該溝の内面は、第1駆動ロール11のロール面に沿った曲面を有している。本変更例の第1押付部材を採用する場合、第1押付部41の構成も同時に変更するとよい。例えば、第1押付部41は、第1支持板411と、第1ねじ部412と、第1固定板414とを有する構成に変更してもよい。第1固定板414は、本変更例の第1押付部材に固定される。ベンド工程PrBにおいて、第1ねじ部412が第1支持板411に対して螺進したとき、本変更例の第1押付部材における溝の内面を第1駆動ロール11に面接触させてもよい。
【0143】
本変更例の第1押付部材と第1駆動ロール11とが面接触するため、第1サポートロール21と第1駆動ロール11とが線接触する場合と比較して、第1押付部材に作用する単位面積あたりの荷重が小さくなる。すなわち、第1押付部材は、第1サポートロール21よりも変形し難い。よって、第1押付部材の剛性の低下を抑制できる。また、第1押付部材の作用する単位面積あたりの荷重が小さくなるため、第1押付部材の摩耗も抑制できる。
【0144】
○ 第2押付部42の第2支持板421を割愛してもよい。このように変更する場合、第2支持部32の第2ねじ部422が貫通している部分に、雌ねじを形成してもよい。
○ 第2押付部42の第2保持部423の第1板423aは板状に限らず、2つの第2板423bを接続できる構成であればよい。なお、第2保持部423は、2つの第2サポートロール22,22を回転可能に保持できれば構成をどのように変更してもよい。
【0145】
○ 第1実施形態において、第2サポートロール22に代替して、ベンド工程PrBに第2駆動ロール12に面接触する第2押付部材を採用してもよい。本変更例の第2押付部材は、溝を有している。当該溝の内面は、第2駆動ロール12のロール面に沿った曲面を有している。本変更例の第2押付部材を採用する場合、第2押付部42の構成も同時に変更するとよい。例えば、第2押付部42は、第2支持板421と、第2ねじ部422と、第2固定板424とを有する構成に変更してもよい。第2固定板424は、本変更例の第2押付部材に固定される。ベンド工程PrBにおいて、第2ねじ部422が第2支持板421に対して螺進したとき、本変更例の第2押付部材における溝の内面を第2駆動ロール12に面接触させてもよい。
【0146】
本変更例の第2押付部材と第2駆動ロール12とが面接触するため、第2サポートロール22と第2駆動ロール12とが線接触する場合と比較して、第2押付部材に作用する単位面積あたりの荷重が小さくなる。すなわち、第2押付部材は、第2サポートロール22よりも変形し難い。よって、第2押付部材の剛性の低下を抑制できる。また、第2押付部材の作用する単位面積あたりの荷重が小さくなるため、第2押付部材の摩耗も抑制できる。
【0147】
○ 第1実施形態において、ベンド工程PrBにおいて、2つの第1ねじ部412を回転させる第1動力部を採用してもよい。同様に、ベンド工程PrBにおいて、2つの第2ねじ部422を回転させる第2動力部を採用してもよい。第1動力部及び第2動力部は、例えば電動モータである。第1動力部及び第2動力部を制御装置により制御することにより、第1サポートロール21の第1駆動ロール11への押し込み量、第2サポートロール22の第2駆動ロール12への押し込み量を制御してもよい。なお、第1ねじ部412は、1つでもよいし、第2ねじ部422は1つでもよい。
【0148】
○ 第1実施形態において、第1押付部41は、第1動力部と、第1支持部31を貫通するロッドとにより構成されていてもよい。ロッドの第1端には第1動力部が接続され、ロッドの第2端には第1板413aが接続されている。第1動力部は、例えば油圧駆動装置である。第1動力部によりロッドが第1保持部413を第1駆動ロール11に向けて移動させ、第1サポートロール21を第1駆動ロール11に押し付けてもよい。なお、第1押付部41は、第1サポートロール21を第1駆動ロール11に押し付けることができれば、構成をどのように変更してもよい。
【0149】
○ 第1実施形態において、第2押付部42は、第2動力部と、第2支持部32を貫通するロッドとにより構成されていてもよい。ロッドの第1端には第2動力部が接続され、ロッドの第2端には第1板423aが接続されている。第2動力部は、例えば油圧駆動装置である。第2動力部によりロッドが第2保持部423を第2駆動ロール12に向けて移動させ、第2サポートロール22を第2駆動ロール12に押し付けてもよい。なお、第2押付部42は、第2サポートロール22を第2駆動ロール12に押し付けることができれば、構成をどのように変更してもよい。
【0150】
○ 第1実施形態において、第1サポートロール21は、1つであってもよい。同様に、第2サポートロール22は、1つであってもよい。
○ 第1支持部31の形状及び第2支持部32の形状は、矩形ブロック状に限らず、適宜変更してもよい。また、第1支持部31及び第2支持部32は、中空材であってもよい。第1支持部31の断面二次モーメントは、第1駆動ロール11の断面二次モーメントよりも大きいことが好ましいが、これに限らない。第1支持部31の断面二次モーメントが、第1駆動ロール11の断面二次モーメントよりも小さくてもよい。
【0151】
第2支持部32の断面二次モーメントは、第2駆動ロール12の断面二次モーメントよりも大きいことが好ましいが、これに限らない。第2支持部32の断面二次モーメントが、第2駆動ロール12の断面二次モーメントよりも小さくてもよい。
【0152】
○ 第2実施形態において、電極層成形装置1は、第1駆動ロール11を押圧する第3左押付部及び第3右押付部や、第2駆動ロール12を押圧する第4左押付部及び第4右押付部を備えてもよい。押付部の数が多くなる分だけ、電極層60の厚さのばらつきをより抑制できる。なお、押付部の数の分だけ、電極層60の厚さを測定する測定器の数も増やすことが好ましい。
【0153】
○ 集電箔50の第1面S1に電極層60を成形したが、集電箔50の第1面S1及び第2面S2に同時に電極層60を成形してもよい。第1面S1に押し付けられる湿潤粉体Pに含まれる電極活物質を負極活物質とし、第2面S2に押し付けられる湿潤粉体Pに含まれる電極活物質を正極活物質としてもよい。この場合、集電箔50に正極活物質層と負極活物質層が成形されたバイポーラ電極を製造できる。
【0154】
電極層成形装置1によりバイポーラ電極を製造するにあたり、集電箔50は、長尺帯状の銅箔に長尺帯状のアルミニウム箔を貼り合わせたものを採用してもよい。この場合、集電箔50の第1面S1は、銅箔のうちアルミニウム箔が貼り合わされた面の反対面であり、集電箔50の第2面S2は、アルミニウム箔のうち銅箔が貼り合わされた面の反対面である。このような集電箔50を使用して成形される電極は、銅箔とアルミニウム箔とを一つの集電箔とみなした疑似的なバイポーラ電極である。なお、集電箔50は、アルミニウム箔の一方の面に銅メッキを施したものであってもよい。集電箔50は、1種類の金属材料で1枚をなすように形成されていてもよい。
【0155】
○ 湿潤粉体Pに含まれる結着剤及び溶剤が水系であり、電極層60が水系の正極活物質層である場合を考える。この場合、電極層60が集電箔50に結着し難くなる虞があるため、集電箔50と電極層60との間に結着層を成形するとよい。結着層は、結着剤及び導電助剤を主成分とする層である。結着剤としては、上記例示した結着剤の中から一種以上を適宜選択すればよい。結着層に含まれる結着剤は、湿潤粉体Pに含まれる結着剤と同一のものであってもよいし、異なるものであってもよい。結着層に含まれる結着剤、及び湿潤粉体Pに含まれる結着剤は、同じ溶剤に溶解するものであることが好ましい。
【0156】
○ 第1駆動ロール11及び第2駆動ロール12それぞれの直径は異なっていてもよい。
○ 本実施形態では、湿潤粉体供給装置95が湿潤粉体Pを連続供給することにより、集電箔50の長手方向の全長に亘って電極層60が成形されていたが、これに限らない。例えば、湿潤粉体供給装置95から湿潤粉体Pを断続的に供給するように変更し、集電箔50の長手方向に所定の間隔をおいて電極層60が成形されてもよい。
【0157】
○ 第1駆動ロール11の軸線と第2駆動ロール12の軸線とが互いに平行に延びていなくてもよい。すなわち、第1駆動ロール11の軸線が延びる方向である第1軸線方向と、第2駆動ロール12の軸線が延びる方向である第2軸線方向とが一致していなくてもよい。
【0158】
図10に示すように、第1駆動ロール11及び第2駆動ロール12を水平方向Bの外方から見たとき、図10の一点鎖線で示す第1駆動ロール11の軸線と、図10の二点鎖線で示す第2駆動ロール12の軸線とが互いに交差してもよい。このような第1駆動ロール11及び第2駆動ロール12のロール配置をロールクロスという。ただし、第1駆動ロール11の軸線と第2駆動ロール12の軸線との交差する角度θは、第1駆動ロール11と第2駆動ロール12とにより集電箔50に電極層60を成形できる程度に設定される。
【符号の説明】
【0159】
1…電極層成形装置、11…第1駆動ロール、11a…第1端、11b…第2端、111…第1ロール部、112…第1軸部、12…第2駆動ロール、12a…第1端、12b…第2端、121…第2ロール部、122…第2軸部、13…第3駆動ロール、131…第3ロール部、21…第1サポートロール、22…第2サポートロール、31…第1支持部、31a…第1壁面、31b…第2壁面、32…第2支持部、32a…第1壁面、32b…第2壁面、41…第1押付部、411…第1支持板、412…第1ねじ部、412a…第1端、412b…第2端、413…第1保持部、413a…第1板、413b…第2板、42…第2押付部、421…第2支持板、422…第2ねじ部、422a…第1端、422b…第2端、423…第2保持部、423a…第1板、423b…第2板、50…集電箔、60…電極層、71…第1固定台、72…第2固定台、80…供給ロール、90…巻取ロール、95…湿潤粉体供給装置、P…湿潤粉体、S1…第1面、S2…第2面、A…重力方向、B…水平方向、C…軸線方向、D…搬送方向、PrI…初期設定工程、PrB…ベンド工程、PrM…成形工程、G1…初期距離、Ga,Gb,GA,GB…距離、Ds1,Ds2,Da1,Da2,Db1,Db2…点。
図1
図2
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図10