(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】使用済燃料貯蔵容器の運搬方法及びその運搬装置
(51)【国際特許分類】
G21C 19/32 20060101AFI20241016BHJP
G21F 9/36 20060101ALI20241016BHJP
G21F 5/008 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
G21C19/32 060
G21F9/36 531D
G21F9/36 531C
G21F5/008
(21)【出願番号】P 2021210241
(22)【出願日】2021-12-24
【審査請求日】2024-02-29
(73)【特許権者】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】砂庭 広季
(72)【発明者】
【氏名】清水 仁
(72)【発明者】
【氏名】竹本 瑠々
【審査官】坂上 大貴
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-325191(JP,A)
【文献】特開2003-084093(JP,A)
【文献】特開2005-084001(JP,A)
【文献】特開2003-075584(JP,A)
【文献】特開2008-298588(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 19/00-19/50
23/00
G21F 1/00- 9/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレーラーの荷台に使用済燃料が貯蔵されている円筒形状の貯蔵容器が載荷される第1の貯蔵用架台に、円筒形状の前記貯蔵容器を載荷支持させ、この状態で貯蔵施設の所望の位置に前記トレーラーで搬送した後、昇降装置を用いて前記トレーラーの荷台に載荷され、かつ、前記第1の貯蔵用架台に載荷支持されている前記貯蔵容器を傾斜させ、
しかる後、前記トレーラーの走行面に隣接している前記貯蔵施設の床面に設置されている第2の貯蔵用架台に、前記昇降装置によって傾斜された前記貯蔵容器を搬送することを特徴とする使用済燃料貯蔵容器の運搬方法。
【請求項2】
請求項1に記載の使用済燃料貯蔵容器の運搬方法であって、
円筒形状の前記貯蔵容器を載荷支持している前記第1の貯蔵用架台は、前記トレーラーの荷台側とは反対側の中央部分に円弧状の溝が形成されており、前記第1の貯蔵用架台の前記円弧状の溝に円筒形状の前記貯蔵容器を載荷支持させ、この状態で貯蔵施設の所望の位置に前記トレーラーで搬送した後、前記トレーラーと一体の前記昇降装置を用いて、前記トレーラーの荷台に載荷され、かつ、前記第1の貯蔵用架台の前記円弧状の溝に載荷支持されている前記貯蔵容器を傾斜させ、
しかる後、前記トレーラーの走行面に隣接している前記貯蔵施設の床面に設置され、前記貯蔵施設の床面に設置される側とは反対側の中央部分に円弧状の溝が形成されている前記第2の貯蔵用架台の前記円弧状の溝に、前記昇降装置によって傾斜された前記貯蔵容器を前記貯蔵容器の自転によって搬送することを特徴とする使用済燃料貯蔵容器の運搬方法。
【請求項3】
請求項2に記載の使用済燃料貯蔵容器の運搬方法であって、
前記トレーラーの荷台に前記第2の貯蔵用架台を積載し、前記トレーラーと一体の前記昇降装置によって前記第2の貯蔵用架台を任意の貯蔵場所に運搬して設置し、
次に、前記トレーラーに前記第1の貯蔵用架台及び前記第1の貯蔵用架台に載荷されている前記貯蔵容器を積載し、先に設置した前記第2の貯蔵用架台の場所まで前記トレーラーの自走機能によってトレーラー走行面を移動し、
前記貯蔵施設の貯蔵場所まで前記トレーラーが移動した後、前記トレーラーと一体の前記昇降装置によって、前記第1の貯蔵用架台と前記第2の貯蔵用架台の高さを合わせ、その後、前記トレーラーと一体の前記昇降装置で前記トレーラー、前記第1の貯蔵用架台及び前記貯蔵容器を傾け、前記貯蔵容器の自転によって前記第2の貯蔵用架台に移動させることを特徴とする使用済燃料貯蔵容器の運搬方法。
【請求項4】
請求項3に記載の使用済燃料貯蔵容器の運搬方法であって、
前記第2の貯蔵用架台に支持されている前記貯蔵容器を前記第1の貯蔵用架台に搬出する際は、
前記トレーラーの荷台に前記第1の貯蔵用架台を積載し、前記トレーラーの自走機能によって前記貯蔵施設の貯蔵場所まで移動させ、次に、前記貯蔵施設側に設置された可搬式の昇降装置によって、前記第2の貯蔵用架台と前記第1の貯蔵用架台の高さを合わせ、その後、前記貯蔵容器の自転によって、前記第2の貯蔵用架台から前記第1の貯蔵用架台へ前記貯蔵容器を移動させて搬送することを特徴とする使用済燃料貯蔵容器の運搬方法。
【請求項5】
トレーラーと、該トレーラーの荷台に使用済燃料が貯蔵されている円筒形状の貯蔵容器が載荷支持される第1の貯蔵用架台と、該第1の貯蔵用架台に載荷支持され、前記トレーラーで貯蔵施設の所望の位置に搬送された円筒形状の前記貯蔵容器を傾斜させる昇降装置と、前記トレーラーの走行面に隣接している前記貯蔵施設の床面に設置されている第2の貯蔵用架台とを備え、
前記第1の貯蔵用架台に載荷支持されている前記貯蔵容器を、前記昇降装置によって傾斜させて前記第2の貯蔵用架台に搬送することを特徴とする使用済燃料貯蔵容器の運搬装置。
【請求項6】
請求項5に記載の使用済燃料貯蔵容器の運搬装置であって、
円筒形状の前記貯蔵容器を載荷支持している前記第1の貯蔵用架台は、前記トレーラーの荷台側とは反対側の中央部分に円弧状の溝が形成されており、前記第1の貯蔵用架台の前記円弧状の溝に円筒形状の前記貯蔵容器を載荷支持させると共に、前記トレーラーで貯蔵施設の所望の位置に搬送された前記第1の貯蔵用架台の前記円弧状の溝に載荷支持されている前記貯蔵容器を、前記トレーラーと一体の前記昇降装置を用いて傾斜させ、
前記トレーラーの走行面に隣接している前記貯蔵施設の床面に設置され、前記貯蔵施設の床面に設置される側とは反対側の中央部分に円弧状の溝が形成されている前記第2の貯蔵用架台の前記円弧状の溝に、前記昇降装置によって傾斜された前記貯蔵容器を前記貯蔵容器の自転によって搬送することを特徴とする使用済燃料貯蔵容器の運搬装置。
【請求項7】
請求項6に記載の使用済燃料貯蔵容器の運搬装置であって、
前記トレーラーの荷台に積載されている前記第2の貯蔵用架台を前記昇降装置によって任意の貯蔵場所に運搬して設置し、
前記トレーラーに前記第1の貯蔵用架台及び前記第1の貯蔵用架台に載荷されている前記貯蔵容器が、先に設置した前記第2の貯蔵用架台の場所まで前記トレーラーの自走機能によってトレーラー走行面を移動し、
前記貯蔵施設の貯蔵場所まで前記トレーラーが移動したら前記昇降装置によって、前記第1の貯蔵用架台と前記第2の貯蔵用架台の高さを合わせ、前記昇降装置で前記トレーラー、前記第1の貯蔵用架台及び前記貯蔵容器を傾け、前記貯蔵容器の自転によって前記第2の貯蔵用架台に移動させることを特徴とする使用済燃料貯蔵容器の運搬装置。
【請求項8】
請求項5乃至7のいずれか1項に記載の使用済燃料貯蔵容器の運搬装置であって、
前記第1の貯蔵用架台と前記第2の貯蔵用架台は、前記トレーラーを挟んで複数個設置されていることを特徴とする使用済燃料貯蔵容器の運搬装置。
【請求項9】
請求項5乃至8のいずれか1項に記載の使用済燃料貯蔵容器の運搬装置であって、
前記第1及び第2の貯蔵用架台は、コンクリート製であることを特徴とする使用済燃料貯蔵容器の運搬装置。
【請求項10】
トレーラーの荷台に使用済燃料が貯蔵されている円筒形状の貯蔵容器が載荷される貯蔵用架台に、円筒形状の前記貯蔵容器を載荷支持させ、この状態で貯蔵施設の所望の位置に前記トレーラーで搬送した後、前記トレーラーの荷台に設置されている第1の浮上装置及び貯蔵施設床面に設置されている第2の浮上装置を起動して、前記第1の浮上装置と前記第2の浮上装置を制御し、前記貯蔵施設床面と前記第1の浮上装置の高さを合わせ、その後、前記貯蔵容器を搭載した前記貯蔵用架台を貯蔵場所に移動させて搬送することを特徴とする使用済燃料貯蔵容器の運搬方法。
【請求項11】
請求項10に記載の使用済燃料貯蔵容器の運搬方法であって、
円筒形状の前記貯蔵容器を載荷支持している前記貯蔵用架台は、前記トレーラーの荷台側とは反対側の中央部分に円弧状の溝が形成されており、前記貯蔵用架台の前記円弧状の溝に円筒形状の前記貯蔵容器を載荷支持させ、この状態で貯蔵施設の所望の位置に前記トレーラーで搬送することを特徴とする使用済燃料貯蔵容器の運搬方法。
【請求項12】
請求項10又は11に記載の使用済燃料貯蔵容器の運搬方法であって、
前記トレーラーの荷台に設置されている前記第1の浮上装置が停止した状態で、前記貯蔵用架台及び前記貯蔵容器を前記トレーラーに積載され、
一方、前記第2の浮上装置を停止して、前記貯蔵容器及び前記貯蔵用架台の搬入が完了することを特徴とする使用済燃料貯蔵容器の運搬方法。
【請求項13】
トレーラーと、該トレーラーの荷台に使用済燃料が貯蔵されている円筒形状の貯蔵容器が載荷される貯蔵用架台と、前記トレーラーの荷台に設置されている第1の浮上装置と、貯蔵施設床面に設置されている第2の浮上装置とを備え、
前記貯蔵用架台に載荷支持された前記貯蔵容器を、前記トレーラーで貯蔵施設の所望の位置にトレーラーで搬送し、前記第1の浮上装置及び前記第2の浮上装置を起動して、前記第1の浮上装置と前記第2の浮上装置を制御し、前記貯蔵施設床面と前記第1の浮上装置の高さを合わせ、前記貯蔵容器を搭載した前記貯蔵用架台を貯蔵場所に移動させて搬送することを特徴とする使用済燃料貯蔵容器の運搬装置。
【請求項14】
請求項13に記載の使用済燃料貯蔵容器の運搬装置であって、
円筒形状の前記貯蔵容器を載荷支持している前記貯蔵用架台は、前記トレーラーの荷台側とは反対側の中央部分に円弧状の溝が形成されており、前記貯蔵用架台の前記円弧状の溝に円筒形状の前記貯蔵容器を載荷支持させ、この状態で貯蔵施設の所望の位置に前記トレーラーで搬送することを特徴とする使用済燃料貯蔵容器の運搬装置。
【請求項15】
請求項13又は14に記載の使用済燃料貯蔵容器の運搬装置であって、
前記貯蔵用架台は、コンクリート製であることを特徴とする使用済燃料貯蔵容器の運搬装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用済燃料集合体等の放射性物質を収容する使用済燃料貯蔵容器を運搬するものに好適な使用済燃料貯蔵容器の運搬方法及びその運搬装置に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、原子力発電所の炉心で発電用に供された核燃料は、使用済燃料として原子炉から取り出した後に一定期間原子炉建屋で保管され、その後、使用済燃料貯蔵容器に収容されて原子力発電所構内の使用済燃料貯蔵施設、或いは原子力発電所構外の使用済燃料貯蔵施設に運搬されて貯蔵される。
【0003】
使用済燃料は、再処理されるまでの間、適切に管理、貯蔵される必要があり、現在、国内で実用化されているキャスク貯蔵方式は、乾式のキャスクと称される貯蔵容器の中に使用済燃料を収容して貯蔵する方式である。
【0004】
このキャスク貯蔵方式における貯蔵容器は、使用済燃料貯蔵施設内において、貯蔵容器を積み下ろし、搬入を行うための搬入エリアから貯蔵容器を貯蔵しておく貯蔵エリアへと、使用済燃料貯蔵施設の上部に設置されている天井クレーンを用いて運搬される。
【0005】
上記した貯蔵容器は、貯蔵エリアにおいては、貯蔵容器の一部である固定金具(トラニオン)等の固定用設備を用いて貯蔵用架台に支持され、使用済燃料貯蔵施設内に設けられた貯蔵場所の床面の所定の位置に、上記貯蔵用架台を固定することで貯蔵される。
【0006】
これらの固定用設備や貯蔵用架台は、100tonを超える貯蔵容器を、少ないスペースで支持したいことから、通常は鋼製材を使用している。そのため、貯蔵容器の地震力などの荷重に対して支持をするため構造強度を維持する必要がある。
【0007】
更に、長期間の使用済燃料の貯蔵を実現するためには、耐食性を有する材料と、材料の腐食による強度低下がないことを確認するために発錆の無いことの点検が必要である。このとき、固定用金具が貯蔵容器の一部であり、かつ、交換することができない構造の場合には耐食性と検査確認は重要である。
【0008】
一方、使用済燃料貯蔵施設内で貯蔵容器を搬送する手段は、一般的に揚重機としてクレーン等を使用する場合が多い。搬送する重量物によっては他の手段もあるが、特に、100tonを超えるような貯蔵容器の場合には、クレーンを使用する。
【0009】
このとき、安全性のためなど搬送中に貯蔵容器を落下させることがないような構造とするため、クレーンは、供用期間中において貯蔵容器を落下させない等の機能を有し、かつ、その機能が維持されていることを確認するための保安が必要である。
【0010】
これらは、超重量物である貯蔵容器の搬送を実現するために大型のクレーンを使用するが、クレーン自体が貯蔵建屋ごと損壊することがないように、使用済燃料貯蔵施設に頑健さが必要になり、使用済燃料貯蔵施設が頑健になることで大型化し、使用済燃料の貯蔵コストの増加要因となっている。
【0011】
また、長期間(例えば、60年間程度)使用済燃料の貯蔵を継続するため、保安に係る費用が増大し、使用済燃料貯蔵施設の運営に大きな負荷が発生する。
【0012】
これらの課題に対する先行技術文献として、特許文献1及び2を挙げることができる。
【0013】
特許文献1では、貯蔵容器を支持用架台に固定するための固定金具(トラニオン)について記載されており、着脱方法の工夫等がされているものの、鋼製材の支持架台であること、また、支持用架台に貯蔵容器を固定するための治具として固定金具(トラニオン)を使用するものであり、固定金具と鋼製材を使用しない支持用架台に関する貯蔵方法についての記載はなく、実用化されていないのが現状である。
【0014】
また、特許文献2では、天井クレーンを使用せずに貯蔵容器を運搬及び貯蔵する方法が提案されている。その方法として、貯蔵容器を予め貯蔵用架台に横向き状態のまま使用済燃料貯蔵施設に受け入れると共に、受け入れた貯蔵容器及び貯蔵用架台を搬入ルートに沿った所定の貯蔵場所まで走行機能と昇降機能を有したトレーラーで運搬し、直列に貯蔵することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【文献】特開2013-160675号公報
【文献】特開2003-75584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、上述した特許文献1の貯蔵容器を搬入する手段は、固定金具(トラニオン)を使用する方法であり、トラニオンを用いない貯蔵状態を支持する貯蔵容器の貯蔵用架台ではない。
【0017】
このような特許文献1に記載の貯蔵方法では、貯蔵期間中は常時固定金具(トラニオン)を使用することになり、固定金具(トラニオン)を使用する材料には、上述したように、常時の荷重作用状態において支持機能があることから耐食性に対する材料要求がされ、更に、前述の要求が供用期間中において発錆等によって支持機能が低下しないことなど性能維持がされていることを確認する保安が求められる。
【0018】
また、特許文献2に記載の貯蔵容器を運搬方法では、貯蔵容器の設置は、貯蔵容器の搬入順に設置することより設置場所が制約され、搬出する順番も搬入する順番通りに制約される。これは、貯蔵供用期間中に貯蔵容器を貯蔵施設の外部に搬出するような場合には、その貯蔵容器が貯蔵する以前に貯蔵している貯蔵容器は、全て移動することが必要になり作業性に問題がある。
【0019】
本発明は上述の点に鑑みなされたもので、その目的とするところは、使用済燃料が貯蔵されている貯蔵容器を使用済燃料貯蔵施設の所望の位置に運搬するにあたり、固定金具(トラニオン)を必要としないことは勿論、貯蔵施設の所望の貯蔵位置に使用済燃料が貯蔵されている貯蔵容器を天井クレーンを使用せずに運搬することができる使用済燃料貯蔵容器の運搬方法及びその運搬装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の使用済燃料貯蔵容器の運搬方法は、上記目的を達成するために、トレーラーの荷台に使用済燃料が貯蔵されている円筒形状の貯蔵容器が載荷される第1の貯蔵用架台に、円筒形状の前記貯蔵容器を載荷支持させ、この状態で貯蔵施設の所望の位置に前記トレーラーで搬送した後、昇降装置を用いて前記トレーラーの荷台に載荷され、かつ、前記第1の貯蔵用架台に載荷支持されている前記貯蔵容器を傾斜させ、
しかる後、前記トレーラーの走行面に隣接している前記貯蔵施設の床面に設置されている第2の貯蔵用架台に、前記昇降装置によって傾斜された前記貯蔵容器を搬送することを特徴とする。
【0021】
また、本発明の使用済燃料貯蔵容器の運搬装置は、上記目的を達成するために、トレーラーと、該トレーラーの荷台に使用済燃料が貯蔵されている円筒形状の貯蔵容器が載荷支持される第1の貯蔵用架台と、該第1の貯蔵用架台に載荷支持され、前記トレーラーで貯蔵施設の所望の位置に搬送された円筒形状の前記貯蔵容器を傾斜させる昇降装置と、前記トレーラーの走行面に隣接している前記貯蔵施設の床面に設置されている第2の貯蔵用架台とを備え、
前記第1の貯蔵用架台に載荷支持されている前記貯蔵容器を、前記昇降装置によって傾斜させて前記第2の貯蔵用架台に搬送することを特徴とする。
【0022】
また、本発明の使用済燃料貯蔵容器の運搬方法は、上記目的を達成するために、トレーラーの荷台に使用済燃料が貯蔵されている円筒形状の貯蔵容器が載荷される貯蔵用架台に、円筒形状の前記貯蔵容器を載荷支持させ、この状態で貯蔵施設の所望の位置に前記トレーラーで搬送した後、前記トレーラーの荷台に設置されている第1の浮上装置及び貯蔵施設床面に設置されている第2の浮上装置を起動して、前記第1の浮上装置と前記第2の浮上装置を制御し、前記貯蔵施設床面と前記第1の浮上装置の高さを合わせ、その後、前記貯蔵容器を搭載した前記貯蔵用架台を貯蔵場所に移動させて搬送することを特徴とする。
【0023】
また、本発明の使用済燃料貯蔵容器の運搬装置は、上記目的を達成するために、トレーラーと、該トレーラーの荷台に使用済燃料が貯蔵されている円筒形状の貯蔵容器が載荷される貯蔵用架台と、前記トレーラーの荷台に設置されている第1の浮上装置と、貯蔵施設床面に設置されている第2の浮上装置とを備え、
前記貯蔵用架台に載荷支持された前記貯蔵容器を、前記トレーラーで貯蔵施設の所望の位置にトレーラーで搬送し、前記第1の浮上装置及び前記第2の浮上装置を起動して、前記第1の浮上装置と前記第2の浮上装置を制御し、前記貯蔵施設床面と前記第1の浮上装置の高さを合わせ、前記貯蔵容器を搭載した前記貯蔵用架台を貯蔵場所に移動させて搬送することを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、使用済燃料が貯蔵されている貯蔵容器を使用済燃料貯蔵施設の所望の位置に運搬するにあたり、固定金具(トラニオン)を必要としないことは勿論、貯蔵施設の所望の貯蔵位置に使用済燃料が貯蔵されている貯蔵容器を天井クレーンを使用せずに運搬することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の使用済燃料貯蔵容器の運搬装置の実施例1で運搬される貯蔵容器を示す外観斜視図である。
【
図2】本発明の使用済燃料貯蔵容器の運搬装置の実施例1を示す外観斜視図である。
【
図4(a)】本発明の使用済燃料貯蔵容器の運搬装置の実施例1における第1の貯蔵用架台に支持されている貯蔵容器を第2の貯蔵用架台に搬入する方法を説明するための図である。
【
図4(b)】本発明の使用済燃料貯蔵容器の運搬装置の実施例1における第2の貯蔵用架台に支持されている貯蔵容器を第1の貯蔵用架台に搬出する方法を説明するための図である。
【
図5】本発明の使用済燃料貯蔵容器の運搬装置の実施例2を示し、トレーラー及び貯蔵施設床面の上面に設置される第1及び第2の空気浮上装置を用いた貯蔵容器を運搬する方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図示した実施例に基づいて本発明の使用済燃料貯蔵容器の運搬方法及びその運搬装置について説明する。なお、各図において、同一構成部品には同符号を使用する。
【実施例1】
【0027】
図1に貯蔵容器1を、
図2及び
図3に、本発明の使用済燃料貯蔵容器の運搬装置の実施例1をそれぞれ示す。
【0028】
図1は、本実施例の使用済燃料貯蔵容器の運搬装置で運搬される貯蔵容器1を示す外観斜視図、
図2は、本実施例の使用済燃料貯蔵容器の運搬装置を示す外観斜視図、
図3は、
図2の平面図である。
【0029】
図2及び
図3に示すように、本実施例の使用済燃料貯蔵容器の運搬装置は、トレーラー3と、このトレーラー3の荷台に使用済燃料が貯蔵されている円筒形状の貯蔵容器1が載荷支持される第1の貯蔵用架台2aと、この第1の貯蔵用架台2aに載荷支持され、トレーラー3で貯蔵施設6の所望の位置に搬送された円筒形状の貯蔵容器1を傾斜させる昇降装置7(
図4(a)及び
図4(b)参照)と、トレーラー3の走行面に隣接している貯蔵施設床面5に設置されている第2の貯蔵用架台とから概略構成されており、第1の貯蔵用架台2aと第2の貯蔵用架台2bは、トレーラー3を挟んで複数個設置されている。
【0030】
図1に示すように、本実施例の使用済燃料貯蔵容器の運搬装置で運搬される貯蔵容器1は、使用済燃料集合体や放射性廃棄物等の放射性物質を内部に収容する略円筒状の容器であり、その胴部を、
図2に示すコンクリート製の第1及び第2の貯蔵用架台2a及び2bに直接載荷することで貯蔵容器1を支持している。
【0031】
第1及び第2の貯蔵用架台2a及び2bは、
図2に示すように、トレーラー3の荷台側とは反対側の中央部分に円弧状(半円状)の溝2a1及び2b1を有する構造であり、この円弧状(半円状)の溝2a1及び2b1で、放射性物質を貯蔵後に貯蔵容器1の移動を制限することができる構造を特徴としており、地震等の外力が作用した場合においても、円弧状(半円状)の溝2a1及び2b1で安定的に貯蔵容器1を支持可能であり、固定金具(トラニオン)を必要としないで貯蔵容器1の支持を達成できる。
【0032】
また、第1及び第2の貯蔵用架台2a及び2bは、上述したように、コンクリート製であることから、耐食性や発錆等の点検などの保安に要する施設運用の負荷を低下させることが可能である。
【0033】
また、貯蔵容器1及び第1及び第2の貯蔵用架台2a及び2bは、
図2に示すように、貯蔵施設床面5より下方にあるトレーラー走行面4を自走するトレーラー3によって、貯蔵施設6(
図3参照)内の任意の貯蔵場所に運搬される。
【0034】
よって、天井クレーンを使用せずに使用済燃料集合体や放射性廃棄物等の放射性物質を内部に収容する貯蔵容器1を移動でき、この貯蔵容器1を貯蔵施設6内の望む貯蔵位置に運搬可能であると共に、貯蔵容器1を搬出する場合も自由度が高いというメリットがある。
【0035】
次に、本実施例の使用済燃料貯蔵容器の運搬装置を用いた貯蔵容器1の運搬方法、即ち、貯蔵容器1と第1及び第2の貯蔵用架台2a及び2bの搬入から搬出の一連の流れを
図4(a)及び
図4(b)を用いて説明する。
【0036】
図4(a)は、第1の貯蔵用架台2aに形成されている円弧状(半円状)の溝2a1で支持されている貯蔵容器1を第2の貯蔵用架台2bに搬入する方法を説明する図であり、
図4(b)は、第2の貯蔵用架台2bに形成されている円弧状(半円状)の溝2b1で支持されている貯蔵容器1を第1の貯蔵用架台2aに搬出する方法を説明する図である。
【0037】
まず、トレーラー3の荷台に第2の貯蔵用架台2bを原子炉建屋天井クレーンを用いて積載し、トレーラー3と一体の昇降装置(例えば、油圧ジャッキ等)7によって、第2の貯蔵用架台2bを任意の貯蔵場所(
図4(a)の左側の位置)に運搬して設置する。
【0038】
次に、トレーラー3の荷台に第1の貯蔵用架台2a及び第1の貯蔵用架台2aの円弧状(半円状)の溝2a1に載荷支持されている貯蔵容器1を積載し、先に設置した第2の貯蔵用架台2bの場所まで、トレーラー3の自走機能(トレーラー3にはタイヤが付いており、そのタイヤで走行可能になっている)によってトレーラー走行面4上を移動する(
図3の左側から右側に移動する)。
【0039】
貯蔵施設6の貯蔵場所までトレーラー3が移動した後、トレーラー3と一体の昇降装置7によって、トレーラー3側の第1の貯蔵用架台2aと貯蔵施設6側の第2の貯蔵用架台2bの高さを合わせる。その後、貯蔵容器1の自転によって、トレーラー3側の第1の貯蔵用架台2aから貯蔵施設6側の第2の貯蔵用架台2bへ貯蔵容器1を移動する。即ち、
図4(a)に示すように、トレーラー3と一体の昇降装置7でトレーラー3、第1の貯蔵用架台2a及び貯蔵容器1を傾け、貯蔵容器1を第2の貯蔵用架台2bに移動させる。この際、作業員は、ロープ等によって貯蔵容器1の自転の補助を行うようにしても良い。
【0040】
次に、第2の貯蔵用架台2bに支持されている貯蔵容器1を第1の貯蔵用架台2aに搬出する場合について説明する。
【0041】
まず、
図4(b)に示すように、トレーラー3の荷台に第1の貯蔵用架台2aを積載し、トレーラー3の自走機能によって貯蔵施設6の貯蔵場所まで移動する。次に、貯蔵施設6側の昇降装置(例えば、使用時に搬送可能な可搬式のジャッキ等の昇降装置で、貯蔵容器1の搬出の際に設置ずる)8によって、貯蔵施設6側の第2の貯蔵用架台2bとトレーラー3側の第1の貯蔵用架台2aの高さを合わせる。その後、貯蔵容器1の自転によって、貯蔵施設6側の第2の貯蔵用架台2bからトレーラー3側の第1の貯蔵用架台2aへ貯蔵容器1を移動する。この際、搬入時と同様に作業員は、ロープ等によって貯蔵容器1の自転の補助を行うようにしても良い。
【0042】
上記したような手順を繰り返し行い、目的とする複数個の貯蔵容器1の貯蔵施設6内への運搬作業を行う。
【0043】
このような本実施例によれば、第1及び第2の貯蔵用架台2a及び2bの形状(円弧状(半円状)の溝2a1及び2b1)と、その形状に合わせた貯蔵容器1の運用を行うことで、固定金具(トラニオン)を必要としない貯蔵方法とすることが達成でき、耐食性や保安に要する施設運用の負荷を低下させることができる。
【0044】
また、貯蔵容器1の移動等のハンドリングにおいて、貯蔵施設6の所望の貯蔵位置に貯蔵容器1を、天井クレーンを使用せずに移動できることより、使用済燃料貯蔵施設のコストを削減可能な貯蔵容器1の運搬とすることができる。
【0045】
更に、本実施例における第1及び第2の貯蔵用架台2a及び2bは、コンクリート製であり、貯蔵後に貯蔵容器1の移動を制限することが可能な形状で、貯蔵容器1の胴部を第1及び第2の貯蔵用架台2a及び2bに直接載荷することで、固定金具(トラニオン)を使用せず、安定した貯蔵を可能とすることができる。
【実施例2】
【0046】
図5に、本発明の使用済燃料貯蔵容器の運搬装置の実施例2を示す。
【0047】
図5に示す本実施例の使用済燃料貯蔵容器の運搬装置は、トレーラー3及び貯蔵施設床面5の上面に設置される第1及び第2の空気浮上装置9及び10を用いた貯蔵容器1を運搬するものである。
【0048】
即ち、本実施例の使用済燃料貯蔵容器の運搬装置は、トレーラー3と、このトレーラー3の荷台に、使用済燃料が貯蔵されている円筒形状の貯蔵容器1が載荷される貯蔵用架台2cと、トレーラー3の荷台に設置されている第1の空気浮上装置9と、貯蔵施設床面5に設置されている第2の空気浮上装置10とから概略構成され、貯蔵用架台2cに載荷支持された貯蔵容器1を、トレーラー3で貯蔵施設6の所望の位置にトレーラー3で搬送し、第1の空気浮上装置9及び前記第2の空気浮上装置10を起動して、第1の空気浮上装置9と第2の空気浮上装置10の空気量を制御し、貯蔵施設床面5と第1の空気浮上装置9の高さを合わせ、貯蔵容器1を搭載した貯蔵用架台2cを貯蔵場所に移動させて搬送することを特徴とする。
【0049】
円筒形状の貯蔵容器1を載荷支持している貯蔵用架台2cは、トレーラー1の荷台側とは反対側の中央部分に円弧状(半円状)の溝2c1が形成されており、貯蔵用架台2cの円弧状(半円状)の溝2c1に円筒形状の貯蔵容器1を載荷支持させ、この状態で貯蔵施設6の所望の位置にトレーラー3で搬送する。
【0050】
具体的には、
図5に示す本実施例の使用済燃料貯蔵容器の運搬装置では、まず、トレーラー3の荷台に設置されている第1の空気浮上装置9が停止した状態で、コンクリート製の貯蔵用架台2c及び貯蔵用架台2cの円弧状(半円状)の溝2c1に支持されている貯蔵容器1を、トレーラー3に積載する(
図5の右側に状態)。次に、トレーラー3の自走機能によって、貯蔵施設6の任意の貯蔵場所まで貯蔵用架台2c及び貯蔵容器1を移動する。
【0051】
貯蔵施設6の任意の貯蔵場所までトレーラー3を移動した後、トレーラー3の荷台に設置されている第1の空気浮上装置9と、貯蔵施設床面5の上面に設置されている第2の空気浮上装置10(第1の空気浮上装置9と同様な装置)を起動して、両者の空気量を制御する(第1及び第2の空気浮上装置9及び10にはバルブが付いており、このバルブを開閉制御する)ことで、貯蔵施設床面5と第1の空気浮上装置9の高さを合わせる。その後、人力等によって、貯蔵容器1を搭載した貯蔵用架台2cを貯蔵場所に移動させる(
図5の右側から左側に人力等で押し出し、
図5の点線で示す位置に移動する)。この際、作業員はロープ等によって貯蔵容器1の方向決めの補助を行うようにしても良い。
【0052】
最後に貯蔵施設6側の第2の空気浮上装置10を停止し、貯蔵容器1及び貯蔵用架台2cの搬入を完了する。搬出を行う場合は、前述の手順と逆の手順を行う。
【0053】
上記したような手順を繰り返し行い、目的とする複数個の貯蔵容器1の貯蔵施設6内への運搬作業を行う。
【0054】
なお、上述した実施例では、浮上装置として空気を動力とする空気浮上装置としているが、動力源が空気ではなくてもよく、油圧式浮上装置でもよい。
【0055】
このような本実施例であっても、その効果は実施例1と同様である。
【0056】
なお、本発明は上述した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上述した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明したすべての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換える事が可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加える事も可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をする事が可能である。
【符号の説明】
【0057】
1…貯蔵容器、2a…第1の貯蔵用架台、2b…第2の貯蔵用架台、2c…貯蔵用架台、2a1、2b1、2c1…円弧状(半円状)の溝、3…トレーラー、4…トレーラー走行面、5…貯蔵施設床面、6…貯蔵施設、7…トレーラーと一体の昇降装置、8…貯蔵施設側の昇降装置、9…第1の空気浮上装置、10…第2の空気浮上装置。