IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシーの特許一覧

特許7572349可撓性包装材料に使用するための多層フィルム
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】可撓性包装材料に使用するための多層フィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/32 20060101AFI20241016BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20241016BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
B32B27/32 E
B32B27/00 H
B65D65/40
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021504269
(86)(22)【出願日】2019-08-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-23
(86)【国際出願番号】 US2019047665
(87)【国際公開番号】W WO2020046702
(87)【国際公開日】2020-03-05
【審査請求日】2022-08-08
(31)【優先権主張番号】18382630.4
(32)【優先日】2018-08-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】オルスジンスキィ、プレズミスロウ
(72)【発明者】
【氏名】アロヨヴィラン、マリアイザベル
(72)【発明者】
【氏名】ザントキューラー、ペーター ヘルマン ローランド
【審査官】深谷 陽子
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-511504(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0043561(US,A1)
【文献】特開2006-272587(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0339663(US,A1)
【文献】特開平10-237192(JP,A)
【文献】特開平11-058635(JP,A)
【文献】特表2018-522757(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B65D 65/00-65/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも第1の層および第2の層を含む第1のフィルムであって、
前記第1の層が、0.935~0.965g/ccの密度および0.3~2.0g/10分のメルトインデックスIを有する第1の高密度ポリエチレン(HDPE)を含み、Iが、ASTM D1238に従って、190℃および荷重2.16kgで測定され、かつ
前記第2の層が、0.885~0.910g/ccの密度を有するポリオレフィンプラストマーを含む、第1のフィルムと、
前記第1のフィルムの前記第1の層上に押出コーティングされた第2のフィルムであって、前記第2のフィルムが、0.945~0.965g/ccの密度および4.0~20.0g/10分のメルトインデックスIを有する第2の高密度ポリエチレン(HDPE)を含む、第2のフィルムと、を含む多層フィルムであって、
前記多層フィルムが接着剤を含まず、かつ
前記第2のフィルムが、ASTM D2457に従って、60°で65%~95%の光沢度を有し、前記第2のフィルムが、0.915~0.930g/ccの密度を有する30重量%以下の低密度ポリエチレン(LDPE)を含む、多層フィルム。
【請求項2】
前記第2のフィルムが、
0.915~0.930g/ccの密度を有する低密度ポリエチレン(LDPE)および0.935~0.965g/ccの密度を有する高密度ポリエチレン(HDPE)のブレンドを含む内層と、
第2のHDPEを含む外層と、を含む、請求項1に記載の多層フィルム。
【請求項3】
前記外層が、100重量%の前記第2のHDPEを含む、請求項2に記載の多層フィルム。
【請求項4】
前記多層フィルムが、前記多層フィルムの総重量を基準として95重量%超のエチレン系ポリマーを含む、請求項1~のいずれかに記載の多層フィルム。
【請求項5】
前記多層フィルムが、前記多層フィルムの総重量を基準として98重量%超のエチレン系ポリマーを含む、請求項1~のいずれかに記載の多層フィルム。
【請求項6】
前記多層フィルムが、150μm未満の総厚およびASTM D790に従って測定して0.014Nmm超の曲げ剛性を有する、請求項1~のいずれかに記載の多層フィルム。
【請求項7】
押出コーティングが、9g/m~20g/mのコート重量を有する、請求項1~のいずれかに記載の多層フィルム。
【請求項8】
押出コーティングフィルムが、110℃~135℃の最高示差走査熱量測定(DSC)融解ピーク温度を有する、請求項1~のいずれかに記載の多層フィルム。
【請求項9】
前記第1のフィルムと前記第2のフィルムとの間にインク層をさらに含む、請求項1~のいずれかに記載の多層フィルム。
【請求項10】
前記第2のフィルムが内層および外層を含み、前記外層が、65重量%~100重量%の第2のHDPEを含む、請求項1~のいずれかに記載の多層フィルム。
【請求項11】
前記第2のフィルムが0.915~0.930g/ccの密度を有する5重量%~30重量%の低密度ポリエチレン(LDPE)を含む、請求項1~10のいずれかに記載の多層フィルム。
【請求項12】
前記第2のフィルムが内層および外層を含み、前記第2のフィルムの内層が、0.915~0.930g/ccの密度を有する5重量%~30重量%の低密度ポリエチレン(LDPE)を含む、請求項1~11のいずれかに記載の多層フィルム。
【請求項13】
物品が可撓性包装材料である、請求項1~12のいずれかに記載の多層フィルムを含む、物品。
【請求項14】
前記可撓性包装材料がスタンドアップパウチである、請求項13に記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年8月29日に出願された欧州特許出願第18382630.4号の利益を主張し、これは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本明細書に記載の実施形態は、概して、可撓性包装材料に使用するための多層フィルム、より具体的には、可撓性包装材料に使用するための、ポリエチレンフィルムが第2のポリエチレンフィルム上に押出コーティングされた接着剤不含の多層フィルムに関する。
【背景技術】
【0003】
持続可能性の改善は、可撓性包装の製造業者にとって継続的な目標である。可撓性パウチなどの可撓性包装材料は、1つのポリマー群から作製される場合、より容易にリサイクル可能であるため、この目標を達成するために単一材料のポリマー製の包装材料が検討されている。
【0004】
従来の可撓性包装材料としては、多数のポリマー群、例えば、印刷フィルムとしてのポリエステル(PET)およびシーラントフィルム用のポリエチレン(PE)を使用するポリマー基材が挙げられる。バリア特性のさらなる向上を必要とし得る製品には、アルミニウム箔、金属化フィルム、またはバリア樹脂の追加の層が含まれ得る。従来の可撓性包装材料は、リサイクル性を困難にし得る接着剤をさらに含む。
【0005】
さらに、光学特性の維持または改善は、可撓性包装の継続的な目標であるが、特に接着剤を使用せずに単一材料の包装材料に移行すると、光学特性において相反関係が生じる。したがって、持続可能性を改善しながら所望の光学特性を維持する単一材料のポリエチレン材料のニーズが存在する。
【発明の概要】
【0006】
本開示の様々な実施形態は、これらのニーズを満たし、接着剤を使用することなく、所望の持続可能性、強度、および光沢度などの光学特性を達成するポリエチレンフィルム構造体を対象とする。
【0007】
本開示の少なくとも1つの実施形態によると、多層フィルムが提供される。この多層フィルムは、少なくとも第1の層および第2の層を含む第1のフィルムと、第1のフィルムの第1の層上に押出コーティングされた第2のフィルムとを含み、多層フィルムは、接着剤を含まない。第1のフィルムの第1の層は、0.935~0.965g/ccの密度および0.3~2.0のメルトインデックスIを有する第1の高密度ポリエチレン(HDPE)を含み、第1のフィルムの第2の層は、0.885~0.910g/ccの密度を有するポリオレフィンプラストマーを含む。第2のフィルムは、0.945~0.965g/ccの密度および4.0~20.0のメルトインデックスIを有する第2の高密度ポリエチレン(HDPE)を含む。第2のフィルムは、ASTM D2457に従って、60°で65%~95%の光沢度を有する。
【0008】
これらのおよび他の実施形態は、以下の発明を実施するための形態においてより詳細に説明される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
ここで、本出願の特定の実施形態について記載する。しかしながら、本開示は異なる形態で具体化されてもよく、本開示に記載される実施形態に限定されると解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、この開示が徹底的かつ完全であり、本主題の範囲を当業者に十分に伝えるように提供される。
【0010】
「ポリマー」という用語は、同一または異なる種類のモノマーに関わらず、モノマーを重合することにより調製されたポリマー化合物を指す。したがって、総称であるポリマーという用語は、1種類のみのモノマーから調製されるポリマーを指すために通常用いられる「ホモポリマー」という用語、ならびに2種類以上の異なるモノマーから調製されるポリマーを指す「コポリマー」という用語を包含する。本明細書で使用される、「インターポリマー」という用語は、少なくとも2つの異なる種類のモノマーの重合により調製されるポリマーを指す。したがって、総称であるインターポリマーという用語は、コポリマーと、ターポリマー等の3種類以上の異なるモノマーから調製されるポリマーとを含む。
【0011】
「ポリエチレン」または「エチレン系ポリマー」は、50モル%を超える、エチレンモノマーに由来する単位を含むポリマーを意味するものとする。これは、ポリエチレンホモポリマーまたはコポリマー(2つ以上のコモノマーに由来する単位を意味する)を含む。当該技術分野において既知であるポリエチレンの一般的な形態としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(ULDPE)、極低密度ポリエチレン(VLDPE)、直鎖状および実質的に直鎖状の低密度樹脂の両方を含むシングルサイト触媒直鎖状低密度ポリエチレン(m-LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、ならびに高密度ポリエチレン(HDPE)が挙げられる。
【0012】
「ULDPE」という用語は、0.895~0.915g/ccの範囲の密度を有するポリエチレン系コポリマーとして定義される。
【0013】
「LDPE」という用語はまた、「高圧エチレンポリマー」、または「高分岐ポリエチレン」とも称され得、ポリマーが、過酸化物などのフリーラジカル開始剤を使用して、14,500psi(100MPa)超の圧力で、オートクレーブまたは管状反応器内で、部分的または完全に、ホモ重合または共重合されることを意味するように定義される(例えば、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第4,599,392号を参照されたい)。LDPE樹脂は、典型的には、0.916~0.940g/ccの範囲の密度を有する。
【0014】
「LLDPE」という用語は、従来のチーグラー・ナッタ触媒系、ならびにメタロセンなどのシングルサイト触媒を使用して作製された樹脂(時折「m-LLDPE」と称される)の両方を含む。LLDPEは、LDPEほど長くない分岐鎖を含有し、米国特許第5,272,236号、米国特許第5,278,272号、米国特許第5,582,923号、および米国特許第5,733,155号でさらに定義される、実質的に直鎖状のエチレンポリマー、米国特許第3,645,992号などの均一な分岐直鎖状エチレンポリマー組成物、米国特許第4,076,698号に開示されているプロセスに従って調製されたものなどの不均一な分岐鎖エチレンポリマー、および/またはそれらのブレンド(米国特許第3,914,342号または米国特許第5,854,045号に開示されるものなど)を含む。直鎖状PEは、気相、液相、もしくはスラリー重合、またはそれらの任意の組み合わせを介して、当該技術分野で既知の、任意の種類の反応器または反応器構成を使用して作製することができ、反応器には気相および液相反応器が挙げられるが、これらに限定されない。
【0015】
「HDPE」という用語は、約0.940g/cc超の密度を有するポリエチレンを指し、一般的に、チーグラー・ナッタ触媒、クロム触媒、またはさらにメタロセン触媒で調製される。
【0016】
本明細書で使用される、「プロピレン系ポリマー」という用語は、重合形態で、過半量のプロピレンモノマーを含み(ポリマーの総重量に基づく)、任意選択で、少なくとも1つの重合コモノマーを含み得るポリマーを指す。
【0017】
「可撓性包装」または「可撓性包装材料」という用語は、当業者によく知られている様々な非剛性容器を包含する。これらには、パウチ、スタンドアップパウチ、ピローパウチ、バルクバッグ、既製の包装などが含まれ得る。
【0018】
本明細書で使用される場合、「単一材料」という用語は、多層フィルムが実質的にポリエチレンからなることを意味し、ここで「実質的」とは、多層フィルムの総モル数を基準として、少なくとも95重量%のポリエチレン、または少なくとも99重量%のポリエチレン、または少なくとも99.5重量%のポリエチレン、または少なくとも99.9重量%、または100重量%のポリエチレンを意味する。
【0019】
本明細書で使用される場合、「印刷フィルム」という用語は、可撓性包装の製造において印刷が実施されるフィルムである、多層フィルムの外側フィルムを指す。いくつかの実施形態では、印刷プライマー層、バリア層、オーバープリントワニス層、または可撓性包装の当業者に既知の他の層などの、外部で印刷フィルム上に配置された追加の層が企図されるので、「外側」という用語は最外層と解釈されるべきではない。
【0020】
本明細書で使用される場合、「シーラントフィルム」という用語は、印刷フィルムに対して内部に配置されたシーラント層を含む多層フィルムの内側フィルムを指す。いくつかの実施形態では、シーラントフィルムは単層フィルムであり、他の実施形態では、シーラントフィルムは多数の層を含み、そのうちの1つはシーラント層である。シーラントフィルムが多数の層を含む実施形態では、シーラントフィルムは、押出コーティングと接触する層とシーラント層との間で内部に配置された1つ以上の追加の層、例えば、バリア層、構造層などを含み得る。
【0021】
本明細書で使用される場合、「押出コーティング」とは、シーラントフィルム上に配置された、多層フィルムの押出コーティング層を指す。いくつかの実施形態では、押出コーティングは印刷保護フィルムである。他の実施形態では、押出コーティングがシーラントフィルムに塗布された後に、プリントを押出コーティングの外側に塗布することができる。
【0022】
本明細書で使用される場合、「接着剤」とは、2つのフィルム表面の間に、例えば、押出コーティングとシーラントフィルムとの間に塗布されて、それから硬化を受けて2つのフィルム表面を互いに結合する、ポリウレタン系またはアクリル系の液体接着剤を指す。
【0023】
これより、本開示の様々な多層フィルムの実施形態、具体的には、可撓性包装材料などの物品において使用される多層フィルムについて詳細に言及する。一実施形態では、この多層フィルムは、少なくとも第1の層および第2の層を含む第1のフィルムと、第1のフィルムの第1の層上に押出コーティングされた第2のフィルムとを含み、ここで多層フィルムは、接着剤を含まない。第1のフィルムの第1の層は、0.935~0.965g/ccの密度および0.3~2.0のメルトインデックスIを有する第1の高密度ポリエチレン(HDPE)を含み、第1のフィルムの第2の層は、0.885~0.910g/ccの密度を有するポリオレフィンプラストマーを含む。第2のフィルムは、0.945~0.965g/ccの密度および4.0~20.0のメルトインデックスIを有する第2の高密度ポリエチレン(HDPE)を含む。第2のフィルムは、ASTM D2457に従って、60°で65%~95%の光沢度を有する。
【0024】
シーラントフィルム
【0025】
1つ以上の実施形態では、第1のフィルムは、少なくとも第1の層および第2の層を含むシーラントフィルムである。いくつかの実施形態では、シーラントフィルムは、少なくとも3つの層、具体的には、中間層、第2のフィルムと中間層との間に配置された内層、および外層を含む。シーラントフィルムは、エチレン系ポリマー層を含んでも、またはこれからなってもよい。
【0026】
様々な実施形態において、シーラントフィルムの第1の層は、インク層および押出コーティングを受ける印刷層である。第1の層は、剛性をもたらし、かつキャストフィルムまたはインフレーションフィルム押出プロセス中のゲル化に抵抗するポリエチレン組成物を含み得る。一実施形態では、第1の層は、0.935~0.965g/ccの密度および0.3~2.0g/10分のメルトインデックス(I)を有する少なくとも70重量%の高密度ポリエチレン(HDPE)を含み、ここでIは、ASTM D1238に従って、190℃および荷重2.16kgで測定される。
【0027】
チーグラー・ナッタ触媒、フィリップス触媒、メタロセン触媒、ポストメタロセン触媒、拘束幾何錯体(CGC)触媒、またはビフェニルフェノール(BPP)錯体触媒などの1種以上の触媒の存在下で、エチレンと1種以上のα-オレフィンコモノマーとの重合から生成されるポリエチレンコポリマー、HDPEを生成するための様々な方法論が企図される。α-オレフィンコモノマーは、C~C12オレフィンモノマーを含むことができる。一実施形態では、HDPE中のα-オレフィンコモノマーは、1-オクテンである。
【0028】
さらなる実施形態では、シーラントフィルムの第1の層は、少なくとも95重量%のHDPE、または少なくとも99重量%のHDPE、または100重量%のHDPEを含み得る。理論に制限されるものではないが、第1の層のHDPEは、高速印刷プロセスの伸びに耐える剛性を多層フィルムにもたらす。さらに、シーラントフィルムのHDPEは、0.935~0.965g/ccまたは0.940~0.965g/ccの密度を有し得る。さらなる実施形態では、メルトインデックス(I)は、0.3~4.0g/10分、または0.3~3.0g/10分、または0.3~2.0g/10分、または0.3~1.5g/10分、または0.5~1.0g/10分であり得る。様々な市販の製品、例えば、The Dow Chemical Company(Midland、MI)からのELITE(商標)5960G、ELITE(商標)5940ST、DOWLEX(商標)2740G、または好適な密度およびメルトインデックスIを有する他のHDPE製品が好適であると考えられる。他の好適なHDPEとしては、PCT公開第WO2017/099915号に記載のものが挙げられ、これは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0029】
シーラントフィルムは、低温シーリング層として機能する低密度ポリオレフィンプラストマーを含む第2の層をさらに含む。様々な実施形態において、ポリオレフィンプラストマーは、ポリエチレンプラストマーまたはポリプロピレンプラストマーであり得る。ポリオレフィンプラストマーとしては、メタロセンなどのシングルサイト触媒や、拘束幾何形状触媒(constrained geometry catalysts)を使用して作製された樹脂が挙げられ得る。ポリオレフィンプラストマーは、0.885~0.910g/cmの密度を有する。0.885g/cm~0.910g/cmの全ての個々の値および部分範囲は、本明細書に含まれ、本明細書に開示されており、例えば、ポリオレフィンプラストマーの密度は、0.895、0.900、または0.905g/cmの下限から0.905、0.910、または0.915g/cmの上限までであり得る。いくつかの実施形態では、ポリオレフィンプラストマーは、0.885~0.907g/cmまたは0.885~0.902g/cmの密度を有する。
【0030】
いくつかの実施形態では、ポリオレフィンプラストマーは、最大20g/10分のメルトインデックス(I)を有する。最大20g/10分の全ての個々の値および部分範囲が本明細書に含まれ、本明細書に開示される。例えば、ポリオレフィンプラストマーは、1.0、2.0、3.0、4.0、5.0、6.0、7.0、8.0、9.0、10.0、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20g/10分の上限のメルトインデックスを有し得る。本発明の特定の態様では、ポリオレフィンプラストマーは、0.5g/10分の下限のIを有する。ポリオレフィンプラストマーのメルトインデックスを特定する際の1つの要素は、第2の層がインフレーションフィルムとして製造されるか、またはキャストフィルムとして製造されるかである。
【0031】
第2の層に使用することができるポリオレフィンプラストマーの例としては、例えばAFFINITY(商標)PL1881GおよびAFFINITY(商標)PF1140Gを含む、AFFINITY(商標)という名称でThe Dow Chemical Companyから市販されているものが挙げられる。
【0032】
いくつかの実施形態では、シーラントフィルムは、第1の層と第2の層との間に追加の層を含み得る。例えば、実施形態では、シーラントフィルムは、1つ以上のエチレン系ポリマーを含む第3の層を含み得る。第3の層は、HDPE、LDPE、HDPEとLDPEとの組み合わせなどを含み得る。いくつかの実施形態では、シーラントフィルムは、第1の層と第2の層との間に3つの追加の層を含み得、そのうちの2つは、バリア層(例えば、EVOH層)を第1の層および第2の層に結合する結合層である。追加の層が企図されるが、そのような追加の層は、いくつかの実施形態では任意選択的であると理解されるべきである。
【0033】
押出コーティング
【0034】
様々な実施形態において、本明細書で押出コーティング層または押出コーティングフィルムと称されることもある第2のフィルムは、第1のフィルムの第1の層上に押出コーティングされる。いくつかの実施形態において印刷保護フィルムであると考えられ得る第2のフィルムは、多層フィルムに審美的利益(例えば、光沢および透明性)をもたらす。1つ以上の実施形態では、第2のフィルムは、多層フィルムが少なくとも65%の光沢値を達成することを可能にし得、光沢度は、ASTM D2457に従って60°で測定される。
【0035】
第2のフィルムは、0.945g/cc~0.965g/ccの密度および4.0~20.0g/10分のメルトインデックスIを有する第2の高密度ポリエチレン(HDPE)を含み、ここでIは、ASTM D1238に従って、190℃および荷重2.16kgで測定される。上記のように、第2のフィルムのHDPEを製造するために、様々な方法論が企図される。
【0036】
様々な実施形態において、第2のフィルムは、同じ配合または異なる配合を有し得る内層および外層を含む。1つ以上の実施形態では、内層は、シーラントフィルムの第1の層と接触している。いくつかの実施形態では、外層は、第2のHDPEを含む。1つ以上の実施形態では、外層は、100重量%の第2のHDPEを含むか、またはこれからなる。しかしながら、他の実施形態では、外層は、第2のHDPEおよびLDPEまたは他のポリエチレン系ポリマーを含み得る。そのような実施形態では、外層は、50重量%~99重量%、55重量%~95重量%、60重量%~90重量%、65重量%~85重量%、または75重量%~95重量%の第2のHDPEを含み得る。実施形態では、内層は、5μm~10μmまたは7μm~9μmの厚さを有する。外層は、1μm~5μmまたは2μm~4μmの厚さを有し得る。第2のフィルムの厚さは、特定の実施形態に応じて変化し得る。しかしながら、様々な実施形態では、第2フィルムは、9g/m~20g/m、10g/m~18g/m、または11g/m~15g/mのコート重量を有する。いくつかの実施形態では、第2のフィルムは、12g/m未満のコート重量を有する。そのようなコート重量は、第2のフィルムが良好な透明度を維持しながらインクを保護することを可能にする。
【0037】
様々な実施形態の内層は、HDPEおよび低密度ポリエチレン(LDPE)を含む。内層のHDPEは、0.935~0.965g/ccまたは0.940~0.965g/ccの密度を有する。さらなる実施形態では、メルトインデックス(I)は、4.0~15.0g/10分または5.0~15.0g/10分であり得る。内層のHDPEおよびLDPEを一緒にブレンドして内層を形成しても、またはHDPEおよびLDPEを共押出して内層を形成してもよい。
【0038】
1つ以上の実施形態では、第2のフィルムの内層のLDPEは、0.915~0.930g/ccまたは0.915g/cc~0.925g/ccの密度を有し得る。さらに、LDPEのメルトインデックス(I)は、1.0~15.0g/10分、または1.0~10.0g/10分、または2.5~10.0g/10分であり得る。
【0039】
1つ以上の実施形態では、LDPE組成物は、粘着防止剤、スリップ剤、またはそれらの両方を含み得る。様々な市販のLDPE製品、例えば、AGILITY(商標)EC7000、AGILITY(商標)EC7220、DOW(商標)LDPE7008、およびDOW(商標)LDPE7004が、第2のフィルムの内層に好適であると考えられ、これらは全て、The Dow Chemical Company (Midland、MI)から入手可能である。
【0040】
第2のフィルムがLDPEを含む実施形態では、第2のフィルムは、30重量%以下のLDPEまたは25重量%以下のLDPEを含み得る。一実施形態では、内層は、5~30重量%のLDPEを含み得る。さらなる実施形態では、内層は、5~25重量%のLDPEを含み得る。さらなる別の実施形態では、内層は、5~10重量%のLDPEを含み得る。実施形態では、LDPEは、押出コーティングの加工性を向上させながらも、光沢度および透明度などの光学特性を改善し得る。
【0041】
様々な実施形態では多層フィルム(例えば、外層および内層を含む)として説明されているが、実施形態では、押出コーティングは単層フィルムであってもよい。例えば、多数の層として共押出するのではなく、HDPEおよびLDPEを一緒にブレンドして、単一の層を形成してもよい。
【0042】
本明細書に記載の様々な実施形態では、第2のフィルムは、ASTM D2457に従って、60°で65%~95%の光沢度を有する。いくつかの特定の実施形態では、第2のフィルムは、70%~90%または80%~85%の光沢度を有する。
【0043】
第2のフィルムは、110℃~135℃の融点(最高示差走査熱量測定(DSC)融解ピーク温度)をさらに有し得る。
【0044】
先に記載のシーラントフィルムおよび押出コーティングフィルムの成分に加えて、紫外線吸収剤、帯電防止剤、顔料、染料、核剤、充填剤、スリップ剤、難燃剤、可塑剤、加工助剤、潤滑剤、安定剤、発煙抑制剤、粘度調整剤および粘着防止剤などの他のポリマー添加剤が含まれ得る。特定の実施形態では、スリップ剤、粘着防止剤、またはそれらの両方が、シーラントフィルムおよび/または押出コーティングフィルムのポリマーのうちの1つ以上と一緒に含まれる。しかしながら、様々な実施形態において、多層フィルムは、多層フィルムの総重量を基準として95重量%超のエチレン系ポリマーを含む。いくつかの実施形態では、多層フィルムは、多層フィルムの総重量を基準として98重量%超のエチレン系ポリマー、またはさらには99重量%超のエチレン系ポリマーを含む。
【0045】
上の考察は、総厚150μm未満の多層フィルムに焦点を当てているが、様々な追加の厚さおよび層構成も好適である。例えば、多層フィルムは、本明細書で先に記載された第1の層および第2の層よりも多くを含み得ることが企図される。例えば、多層フィルムは、第1のフィルムと第2のフィルムとの間にインク層を含み得る。インク層は、例えば、画像または単語の形態にあり得る。そのような実施形態では、以下でより詳細に説明されるように、インク層が、第1のフィルム上に印刷され得、第2の層が、インク層上に押出され得る。
【0046】
先に述べたように、接着剤を使用することなく、多層フィルムに、高い光沢度と高い剛性との独自の組み合わせが付与される。一実施形態では、多層フィルムは、150μm未満の厚さを有する多層フィルムの場合、ASTM D747に従って測定して、0.014N/mm超の見かけの曲げ係数を有し得る。
【0047】
可撓性包装を製造するための方法
【0048】
様々な方法論が、シーラントフィルムおよび押出コーティングフィルムを製造するために企図される。例えば、多層シーラントフィルムは、キャストフィルム押出またはインフレーションフィルム押出により調製され得る。多層押出コーティングフィルムは、フラットダイフィルム押出(flat die film extrusion)により調製され得る。
【0049】
シーラントフィルムをインフレーションまたはキャストした後に、シーラントフィルムは印刷プロセスにかけられ得る。様々な印刷プロセスが、キャストまたはインフレーション印刷フィルムに好適であると考えられる。これらの印刷プロセスとしては、輪転グラビア印刷、フレキソ印刷、およびオフセット印刷が挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、シーラントフィルムは輪転グラビア印刷にかけられ得る。特定の実施形態では、シーラントフィルムは、従来のPET/PEラミネートに典型的に利用される印刷速度で逆輪転グラビア印刷される。輪転グラビア印刷機のローラー間の張力は、従来のフィルムの過剰な伸びを引き起こし、印刷登録が不十分になる場合がある。理論に縛られるものではないが、本シーラントフィルムは、過剰な伸びを防止し、それにより所望の印刷性能を達成するのに必要な剛性を有すると考えられる。1つ以上の実施形態では、本シーラントフィルムは、輪転グラビア印刷機において2mm未満伸び得るのに対して、従来のポリエチレン印刷フィルムは約6mm伸び得る。
【0050】
他の実施形態では、押出コーティングフィルムは、シーラントフィルム上に直接コーティングされ得、多層フィルムは、プリントが押出コーティングフィルム上に塗布されるように印刷プロセスにかけられる。しかしながら、そのような実施形態では、押出コーティングフィルムは、インク層に保護をもたらさない場合がある。
【0051】
あるいは、様々な追加のプロセスを使用して、ラミネート構造体から可撓性包装を生成してもよい。これらには、ヒートシールまたは当業者によく知られている他のプロセスが含まれ得る。
【0052】
試験方法
試験方法は、以下を含む。
【0053】
メルトインデックス(I
メルトインデックス(I)を、190℃、2.16kgで、ASTM D-1238に従って測定した。メルトインデックス(I10)を、190℃、10kgで、ASTM D-1238に従って測定した。値はg/10分で報告し、g/10分は10分あたりに溶出したグラムに対応する。
【0054】
密度
密度測定用の試料を、ASTM D4703に従って調製し、グラム/立方センチメートル(g/ccまたはg/cm)で報告した。測定は、ASTM D792、方法Bを用いて、試料圧縮の1時間以内に行った。
【0055】
光沢度
光沢度は、ASTM D2457の方法に従って60°で測定した。報告された値は、5つの試料について測定された光沢度の平均である。
【0056】
融点
示差走査熱量測定(DSC)を使用して、広範囲の温度にわたるポリマーの溶融および結晶化挙動を測定する。例えば、RCS(冷蔵冷却システム)およびオートサンプラーを備えるTA Instruments Q1000 DSCを使用し、この分析を行う。機器は、最初にソフトウェア較正ウィザードを使用して較正される。ベースラインは、アルミニウムDSC皿に試料を全く入れずに、セルを-80℃~280℃まで加熱することにより得られる。その後、較正ウィザードの指示に従って、サファイア標準が使用される。次に、標準試料を180℃まで加熱し、10℃/分の冷却速度で、120℃まで冷却し、次いで標準試料を、1分にわたり120℃で等温に保つことにより、1~2ミリグラム(mg)の新鮮なインジウム試料を分析する。その後、標準試料を、10℃/分の加熱速度で120℃~180℃まで加熱する。次に、インジウム標準試料が、融解熱(Hf)=28.71±0.50ジュール/グラム(J/g)、および溶融開始=156.6℃±0.5℃を有することが判定される。次いで、試験試料を、DSC機器で分析する。
【0057】
試験中、50ml/分の窒素パージガス流量を使用する。各試料を、約175℃で溶融圧縮して薄いフィルムにし、次いで、溶融試料を、室温(およそ25℃)まで空冷する。フィルム試料は、「0.1~0.2グラム」の試料を、175℃、1,500psi、および30秒間押して、「0.1~0.2ミル厚」のフィルムを形成することにより形成される。3~10mg、直径6mmの試験片を冷却したポリマーから抽出し、秤量し、軽量アルミニウム皿(約50mg)内に置き、圧着して閉じる。次いで、その熱的特性を決定するために分析を行う。
【0058】
試料の熱挙動は、試料温度を昇降して熱流量対温度プロファイルを作成することにより決定する。まず、試料を、その熱履歴を除去するために、180℃まで急速に加熱して、5分にわたり等温に保持する。次に、試料を、10℃/分の冷却速度で、-40℃まで冷却し、5分にわたり-40℃で等温に保持する。次いで、試料を、10℃/分の加熱速度で、150℃(これは「第2の加熱」勾配である)まで加熱する。冷却および第2の加熱曲線を記録する。冷却曲線は、結晶化の開始から-20℃までのベースライン終点を設定することにより分析する。熱曲線は、ベースライン終点を-20℃~溶融終点に設定することにより分析する。判定された値は、ピーク溶融温度(T)、ピーク結晶化温度(T)、開始結晶化温度(Tc開始)、融解熱(H)(ジュール当たりのグラム)、およびPEの結晶化度%=((Hf)/(292J/g))×100を使用してポリエチレン試料について算出された結晶化度%、およびPPの結晶化度%=((Hf)/165J/g))×100を使用して算出されたポリプロピレン試料の結晶化度%である。融解熱(H)およびピーク溶解温度は、第2の熱曲線から報告される。ピーク結晶化温度および開始結晶化温度を冷却曲線から決定する。
【0059】
酸素透過率
酸素透過率は、ASTM D3985に従って、23℃、75%RHで測定する。
【0060】
水蒸気透過率
水蒸気透過率は、ASTM E-398に従って、38℃、90%RHで測定する。
【0061】
見かけの曲げ係数
見かけの曲げ係数は、ASTM D747に従って測定される。
【実施例
【0062】
以下の実施例は、本開示の特徴を説明するものであり、本開示の範囲を限定することを意図するものではない。全ての部およびパーセンテージは、特に指示がない限り重量による。様々な実施例、比較例、ならびに実施例および比較例で使用される材料に関して、おおよその特性、特性、パラメータなどを以下に提供する。さらに、実施例で使用した原料の説明は以下の通りである。
【0063】
HDPE1は、0.950g/cmの密度および1.5g/10分のメルトインデックス(I)を有するチーグラー・ナッタ触媒高密度ポリエチレンであり、これは、WO2017/099915の発明の樹脂1について記載されているように調製される。
【0064】
POLYBATCH(登録商標)AMF705HFは、A.Schulmanから入手可能な加工助剤である。
【0065】
POLYBATCH(登録商標)VLA55は、A.Schulmanから入手可能な帯電防止添加剤である。
【0066】
POLYBATCH(登録商標)NG8160は、A.Schulmanから入手可能な添加剤である。
【0067】
AFFINITY(商標)1881Gは、The Dow Chemical Company(Midland、MI)から入手可能なエチレン/オクテンプラストマーである。
【0068】
DOW(商標)LDPE310Eは、The Dow Chemical Company(Midland、MI)から入手可能なLDPEである。
【0069】
ADCOTE(商標)L719Aは、The Dow Chemical Company(Midland、MI)から入手可能な溶剤系ポリウレタン接着剤である。
【0070】
MORFREE(商標)LPLUS1は、The Dow Chemical Company(Midland、MI)から入手可能な無溶剤接着剤である。
【0071】
以下の実験において、本開示による多層フィルム(実施例1)を、従来のPE印刷フィルムに接着した従来のPEフィルムを有する従来のPET/PEラミネート(比較例1)、従来のPE印刷フィルムに接着した従来のPEフィルムを有するPE/PEラミネート(比較例2)、およびラッカーコーティングされた従来のPET印刷フィルム(比較例3)と比較した。表1には、以下の通り、本明細書において調べたこれらの多層フィルムの組成が一覧にされている。
【0072】
実施例1、比較例2、および比較例3の場合、シーラント層は、A、B、およびCの3つの層を含み、ここで層Cは、低温シーリング層である。層Aは、98.5%のHDPE1、1%のPOLYBATCH AMF705HF、および0.5%のPOLYBATCH VLA55を含む。層Bは、84%のHDPE1および16%のPOLYBATCH NG8160を含む。層Cは、84%のAFFINITY 1881G、14.5%のLDPE 310E、1%のPOLYBATCH AMF705HF、および0.5%のPOLYBATCH VLA55を含む。比較例1のシーラント層は、低温シーリング層と、LLDPEおよび/またはLDPEを含む層とを含むフィルムである。比較例3のラッカーは、耐熱性をもたらすための市販のラッカーである。
【0073】
【表1】
【0074】
実施例1の場合、押出コーティングは、20重量%のAGILITY(商標)EC7220(ASTM D792に従って測定して0.918g/cmの密度ならびにASTM D1238に従って190℃および2.16kgで測定して1.5g/10分のメルトインデックスIを有するLDPE)と、DOWLEX(商標)2006(ASTM D792に従って測定して0.961g/cmの密度ならびにASTM D1238に従って190℃および2.16kgで測定して8.0g/10分のメルトインデックスIを有するポリエチレン製品)とのブレンドであった。
【0075】
多層フィルムの合成
【0076】
表1の多層フィルムを作製するために使用されたフィルム押出プロセスは、Kaschier(ドイツ)のインフレーションフィルムラインで実施した。インフレーションフィルムラインは、以下の表2に記載される以下の特性を有していた。
【0077】
【表2】
【0078】
表3に、インフレーションフィルムラインの温度プロファイル、すなわち、インフレーションフィルムラインの様々な位置の温度を示す。
【0079】
【表3】
【0080】
実施例1の場合、表1に記載の組成を有する押出コーティングを、以下の条件を使用してインフレーションフィルムに塗布した:SML押出コーティングライン;コーティング溶融温度309℃;エアギャップ280mm;チルロール温度-16~18℃。
【0081】
実験結果
【0082】
本実験では、光沢度、酸素透過率(OTR)、水蒸気透過率(WVTR)、および剛性を、実施例1および比較例1~3について測定した。これらの結果は、以下の通り、表4に示される。
【0083】
【表4】
【0084】
表4のデータにより示されるように、押出コーティングを含む実施例1は、類似したOTRまたはWVTRを維持しながら、比較例2および比較例3と比較して、60°で改善された光沢度を呈す。押出コーティングは、各比較例と類似した見かけの曲げ係数をさらに呈する。
【0085】
したがって、本明細書に記載の様々な実施形態は、接着剤を使用することなく、所望の持続可能性、強度、および光沢度などの光学特性を達成する多層ポリエチレンフィルム構造体を提供する。
【0086】
添付の特許請求の範囲に定義される本開示の範囲から逸脱することなく、修正および変更が可能であることは明らかであろう。より具体的には、本開示のいくつかの態様は、本明細書において好ましいまたは特に有利であると認識されているが、本開示は、必ずしもこれらの態様に限定されることはないと企図される。
【0087】
単数形を使用する特許請求の範囲および図面の組み合わせにおいて、複数形の可能性もまた含むことは明らかであろう。例えば、油バリア層への言及は、少なくとも1つの油バリア層への言及もまた暗黙のうちに含む。
本願は以下の態様にも関する。
(1) 少なくとも第1の層および第2の層を含む第1のフィルムであって、
前記第1の層が、0.935~0.965g/ccの密度および0.3~2.0g/10分のメルトインデックスI を有する第1の高密度ポリエチレン(HDPE)を含み、I が、ASTM D1238に従って、190℃および荷重2.16kgで測定され、かつ
前記第2の層が、0.885~0.910g/ccの密度を有するポリオレフィンプラストマーを含む、第1のフィルムと、
前記第1のフィルムの前記第1の層上に押出コーティングされた第2のフィルムであって、前記第2のフィルムが、0.945~0.965g/ccの密度および4.0~20.0g/10分のメルトインデックスI を有する第2の高密度ポリエチレン(HDPE)を含む、第2のフィルムと、を含む多層フィルムであって、
前記多層フィルムが接着剤を含まず、かつ
前記第2のフィルムが、ASTM D2457に従って、60°で65%~95%の光沢度を有する、多層フィルム。
(2) 前記第2のフィルムが、
0.915~0.930g/ccの密度を有する低密度ポリエチレン(LDPE)および0.935~0.965g/ccの密度を有する高密度ポリエチレン(HDPE)のブレンドを含む内層と、
第2のHDPEを含む外層と、を含む、上記(1)に記載の多層フィルム。
(3) 前記外層が、100重量%の前記第2のHDPEを含む、上記(2)に記載の多層フィルム。
(4) 前記第2のフィルムが、0.915~0.930g/ccの密度を有する30重量%以下の低密度ポリエチレン(LDPE)を含む、上記(1)~(3)のいずれかに記載の多層フィルム。
(5) 前記多層フィルムが、前記多層フィルムの総重量を基準として95重量%超のエチレン系ポリマーを含む、上記(1)~(4)のいずれかに記載の多層フィルム。
(6) 前記多層フィルムが、前記多層フィルムの総重量を基準として98重量%超のエチレン系ポリマーを含む、上記(1)~(5)のいずれかに記載の多層フィルム。
(7) 前記多層フィルムが、150μm未満の総厚およびASTM D790に従って測定して0.014Nmm超の曲げ剛性を有する、上記(1)~(6)のいずれかに記載の多層フィルム。
(8) 押出コーティングが、9g/m ~20g/m のコート重量を有する、上記(1)~(7)のいずれかに記載の多層フィルム。
(9)押出コーティングフィルムが、110℃~135℃の最高示差走査熱量測定(DSC)融解ピーク温度を有する、上記(1)~(8)のいずれかに記載の多層フィルム。
(10) 前記第1のフィルムと前記第2のフィルムとの間にインク層をさらに含む、上記(1)~(9)のいずれかに記載の多層フィルム。
(11) 物品が可撓性包装材料である、上記(1)~(10)のいずれかに記載の多層フィルムを含む、物品。
(12)前記可撓性包装材料がスタンドアップパウチである、上記(11)に記載の物品。