(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】音楽感度を高める方法及び装置
(51)【国際特許分類】
A61F 11/04 20060101AFI20241016BHJP
G09B 21/00 20060101ALI20241016BHJP
G09B 15/00 20060101ALI20241016BHJP
H04B 13/00 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
A61F11/04
G09B21/00 E
G09B15/00 Z
H04B13/00 500
(21)【出願番号】P 2021504470
(86)(22)【出願日】2019-07-24
(86)【国際出願番号】 DE2019100675
(87)【国際公開番号】W WO2020020414
(87)【国際公開日】2020-01-30
【審査請求日】2022-07-06
(31)【優先権主張番号】102018006210.5
(32)【優先日】2018-07-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】521031833
【氏名又は名称】フィールベルト ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ハンゼン,イェンス
【審査官】齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-537598(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0353778(US,A1)
【文献】特表2009-533714(JP,A)
【文献】Maria Karam et al.,The Emoti-Chair: An Interactive Tactile Music Exhibit,The International Conference Extended Abstracts On Human Factors In Computing Systems,米国,ACM PRESS,2010年04月10日,3069-3074
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 11/04
G09B 21/00
G09B 15/00
H04B 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御部により実行される、アコースティックイベントの知覚、特に音楽感度を向上するための方法であって、
アコースティックイベントから得られ、当該アコースティックイベントと相関する振動が複数の振動伝達体によって人の皮膚に伝達され、前記複数の振動伝達体は、所定の配置内の位置にて前記皮膚上に空間的に配置されており、
前記アコースティックイベントを再生する入力信号が入力される
前記制御部により複数の制御電圧を決定し、前記複数の振動伝達体はそれぞれ、前記皮膚で感知される振動を生成するために、決定された前記複数の制御電圧のうちの一つにより作動し、
前記アコースティックイベントの周波数スペクトルから
、前記皮膚に対して知覚可能な周波数範囲及び前記皮膚に対して知覚不可能な周波数範囲を含むベーススペクトルを決定し、当該ベーススペクトルは、当該ベーススペクトルの周波数範囲を
構成する部分スペクトルに分割され、
前記複数の制御電圧はそれぞれ、少なくとも一つの割り当てられた部分スペクトルの周波数範囲から得られ、
前記複数の制御電圧の
、前記部分スペクトル上における位置を示す複数の周波数位置と前記複数の振動伝達体の複数の位置との間、及び/又は、前記部分スペクトルと前記複数の振動伝達体の前記複数の位置との間に割り当てがあり、
非感知周波数範囲にある前記入力信号の振幅プロファイルは、感知周波数範囲にある発振電圧の振幅プロファイル
に転換され、前記複数の振動伝達体に制御電圧として供給され、
前記感知周波数範囲から前記非感知周波数範囲を分離するために使用される
増幅器は、時間遅延ステージを介して前記
増幅器の整流された出力信号を反対位相にある前記
増幅器の入力にフィードバックする
動作点
を有し、それにより前記非感知周波数範囲に存在する前記入力信号の変化率に依存する増幅がもたらされ、そうして生成された前記
増幅器の前記出力信号の前記振幅プロファイルは、
前記複数の振動伝達体の制御電圧として用いられることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記ベーススペクトルの前記決定は、部分スペクトルの数を維持しながら、前記ベーススペクトルの幅の拡大及び/又は縮小を含み、
ある時間単位内で、前記アコースティックイベントの前記周波数範囲における現下の前記ベーススペクトルのエッジ領域において、特定の閾値を下回る幾つかの
スペクトル成分が発生する場合、前記ベーススペクトルの幅を縮小し、
前記ベーススペクトルの外側に位置するスペクトル成分が前記アコースティックイベントの前記周波数スペクトル内に発生した場合には、前記ベーススペクトルの幅を拡大する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ある制御電圧により作動する振動伝達体の
順序は個々の前記制御電圧の振幅比に依存し、
全ての部分スペクトルの前記複数の制御電圧の振幅が同一又は実質的に同一である場合、前記複数の制御電圧は、
前記周波数位置の順序で前記複数の振動伝達体に供給され、及び/又は、
前記複数の制御電圧の振幅間に所定の偏差が生じた場合には、関連する部分スペクトルおよびより高い周波数位置を有する部分スペクトルの1以上の振動伝達体に支配的な制御電圧が供給される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記複数の振動伝達体のうち、少なくとも1以上の振動伝達体は、最大周波数制御電圧によって連続的に作動する、請求項1から3の何れか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記複数の制御電圧のうち、最大値を有する制御電圧よりも低い周波数位置において最大振幅を有する制御電圧もまた、その2つの制御電圧の間にある1以上の振動伝達体を作動するために使用され、より小さい周波数範囲未満の制御電圧に対して対応する割り当てが存在する、請求項1から4の何れか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記複数の振動伝達体は、配置方向に延在する装置内で前記皮膚上に設けられるように配置され、前記装置の中心線に対して対称かつペアで配置され、対または独立して作動し、前記複数の制御電圧の周波数は、さらに、前記中心線の方向に高くなる、請求項1から5の何れか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記複数の振動伝達体のうち、前記中心線の両側に直接配置される少なくとも1つの振動伝達体は、最大周波数制御電圧により連続的に作動する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記入力信号の信号部分が感知不可の部分スペクトル内で発生する場合、最も高く、依然として感知可能な部分スペクトル内の前記制御電圧の振幅が増加する、請求項1から7の何れか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記入力信号の信号部分が感知不可の部分スペクトル内で発生する場合、その信号部分の所定の振幅から開始して、最も高く、依然として感知可能な部分スペクトル内の前記制御電圧が複数の振動伝達体に制御電圧として供給される、請求項1から8の何れか1項に記載の方法。
【請求項10】
非感知部分スペクトルに前記入力信号の信号部分が存在する場合、前記部分スペクトルの前記周波数範囲の全体は、1つ以上のフィルタステージを介して検出される、請求項1から9の何れか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記入力信号の信号部分が非感知部分スペクトルに存在する場合、前記中心線の近くに配置された振動伝達体はより高い周波数の信号部分から取得された制御電圧で作動し、前記中心線から離れた位置に配置された振動伝達体は、低周波信号部分から取得された制御電圧で作動するように、前記制御電圧は、1つ以上のフィルタステージを有する振動伝達体に割り当てられる、請求項6から10の何れか1項に記載の方法。
【請求項12】
ある制御信号
の振幅
が他の制御信号の振幅より大きい場合、前記割り当てられた振動伝達体に隣接する少なくともさらに1つの振動伝達体は、前記割り当てられた振動伝達体に加え、前記制御電圧により作動する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
スペクトル範囲が限定されたアコースティックイベントの場合、前記複数の制御電圧に対する前記周波数範囲の分割は前記周波数スペクトルの全幅に従って広がる、請求項1から12の何れか1項に記載の方法。
【請求項14】
ユーザインターフェースを介して、ソフトウェアを介して、プログラム及び/又は割り当てを変更するよう制御コマンドが伝達される、請求項1から13の何れか1項に記載の方法。
【請求項15】
請求項1から14の何れか1項に記載の方法を実行するための、アコースティックイベントの知覚を向上するための装置であって、
人の皮膚に振動を伝達するための複数の振動伝達体と、当該複数の振動伝達体に接続され、前記振動を生成するために制御電圧によって前記複数の振動伝達体を作動させるための制御部と、を備え、
前記複数の振動伝達体は、前記皮膚上に空間的に分布されうるように所定の構成内の所定の位置に設けられ、
アコースティックイベントから取得され、当該アコースティックイベントと相関する振動が、前記複数の振動伝達体によって前記皮膚上に伝達されるように構成されており、
前記制御部は、前記アコースティックイベントに属する入力信号を受信し、複数の制御電圧を決定し、前記皮膚上で感知可能な振動を生成するために、決定された前記複数の制御電圧の一つによって前記複数の振動伝達体を作動させるように構成され、
非感知周波数範囲にある前記入力信号の振幅プロファイルは、感知周波数範囲にある発振電圧の振幅プロファイル
に転換され、前記複数の振動伝達体に制御電圧として供給され、
前記感知周波数範囲から前記非感知周波数範囲を分離するために使用される
増幅器は、時間遅延ステージを介して前記
増幅器の整流された出力信号を反対位相にある前記
増幅器の入力にフィードバックする
動作点
を有し、それにより前記非感知周波数範囲に存在する前記入力信号の変化率に依存する増幅がもたらされ、そうして生成された前記
増幅器の前記出力信号の前記振幅プロファイルは、
前記複数の振動伝達体の制御電圧として用いられる、装置。
【請求項16】
前記複数の振動伝達体(7)は、当該複数の振動伝達体が配置される装置内に配置方向に延在して設けられており、当該構成の中心線に対して対称に、かつ対になって配置され、対にまたは個々に作動可能である、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記複数の振動伝達体がその使用時に前記人の腹部及び腰領域の皮膚上に配置されるように、前記装置は、腰の周りに着用されるベルトとして、バンドとして、又は衣類のアイテムとして設計されている、請求項15または16に記載の装置。
【請求項18】
前記複数の振動伝達体(7)は、前記人が前記装置を着用したときに前記皮膚と接触するように設けられている、あるいは、前記皮膚に振動が伝達するように前記人の前記皮膚に対して設けられている、請求項15から17の何れか1項に記載の装置。
【請求項19】
前記入力信号を受信するための前記制御部は少なくとも一つのインターフェース、特にワイヤレス・インターフェース、及び/又は、前記アコースティックイベントの音波を記録するための音楽記録装置(1)を備える、請求項15から18の何れか1項に記載の装置。
【請求項20】
前記制御部は、デジタル制御部、及び/又は、ソフトウェアを備える、請求項15から19の何れか1項に記載の装置。
【請求項21】
前記制御部は、回路として互いに結合した複数の構成要素で構成された電子システム(14)を備え、
前記複数の構成要素は、音楽録音コンポーネン
ト(1)、前記ベーススペクトルを決定するための回路(2)、回路(8)を備えた制御可能なフィルタ回路(3)、制御可能なフィルタ回路(3)を適合させるための回路(8)、振幅検出回路(9)、比較回路(10)、デジタル回路(11)、制御可能な増幅器(5)、およびスイッチングマトリクス(6)を備える、請求項15から20の何れか1項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に音楽の、アコースティックイベント又は音響信号の知覚を向上させる方法及び装置に関し、振動は、好ましくは、アコースティックイベント又は音響信号から得られ、皮膚に伝達される。
【背景技術】
【0002】
生体皮膚の知覚または感覚状態を得るために、オーディオイベントを高感度検出するための方法およびデバイスが国際特許出願公開公報第2006/092136号により知られている。この場合、オーディオイベントの知覚可能な(感知可能な)周波数範囲のみが振動に変換される。この変換は、オーディオイベントをスペクトル的に分割し、振動伝達体を作動させるために広く支配的(優位)なスペクトル範囲を基本的に使用することにより行われる。振動伝達体の数は、スペクトル範囲の周波数位置に依る。しかしながら、特に音楽の、聴取されたオーディオイベントと知覚されたオーディオイベントとの間の相関関係を得るために前記の導出がどのように行われるかについては開示されていない。さらに、振動伝達体のスイッチング方式はスペクトルの振幅に基づくが、スペクトルの振幅は、振動伝達体の振動強度にとって決定的なものではない。
【0003】
このことに基づいて、国際特許出願公開公報第2010/020201号は、感知可能な周波数範囲を超える、すなわち約600ヘルツを超える音楽コンテンツを確実に検出することを目的とする。しかしながら、このスペクトルを有する時間的信号の振幅にスペクトルの振幅が対応しないため、記述された具現化ではこの目的を達成することができない。
【0004】
聴覚障害者のためのオーディオイベントを学習した感覚知覚パターンへと変換する方法では、コンテンツに関して定義された音響信号が感覚的な方法により聴覚障害者に送信される。これにより、音響信号は上述した人々に理解されうる。このような解決方法は、先の学習プロセスに基づいており、例えば、米国特許第5035242号、米国特許第4167189号、欧州特許第0766218号、米国特許第4250637号、米国特許第4390756号、またはドイツ特許第3924708号により知られている。
【発明の概要】
【0005】
本発明が解決しようとする問題は、アコースティックイベント、特に音楽感度の知覚を向上させることにある。特に、皮膚に作用する振動および衝撃位置の選択は、それは外部の影響に対して感受性が高いであろうが、音楽との相関および皮膚の識別能力ならびに知覚能力に関して最適に適合させることが意図される。
【0006】
聴覚と触覚との相関は重要である。なぜならば、そうでなければ、両者の印象が同類とみなされないためである。つまり、両者の印象は無関係な印象とみなされ、知覚の向上、例えば、音楽体験の強化は、存在しないであろう。
【0007】
特に、第2の知覚、すなわち、振動による触覚知覚は聴取者に直接的な影響を及ぼすのであり、いわば聴取者に触れ、いわば聴取された知覚を反映し、知覚、特に感度を向上させ、このことが情動性としても示される。
【0008】
この課題は、独立請求項の特徴を有する方法および装置によって解決される。有利な実施形態は、従属請求項の主題である。
【0009】
より良く理解するために、使用される用語のいくつかが事前に説明される。
【0010】
ベーススペクトルとは、アコースティックイベントの周波数スペクトル、特に周波数スペクトル全体の選択された部分から決定される周波数スペクトルである。これは、現在聴取されている音楽など、アコースティックイベントの現在利用可能な周波数スペクトルに基づいて適合される平均選択周波数スペクトルを、より狭くまたはより広くすることによって参照することができる。特に、ベーススペクトルは、音響信号の必須の内容を含むスペクトル範囲を示す。
【0011】
部分スペクトルとは、ベーススペクトルの分割可能なスペクトル範囲である。特に、好ましくは、部分スペクトルが全体としてベーススペクトルを形成するように、ベーススペクトルは部分スペクトルに分割される。部分スペクトルの数は、指定でき、特に振動伝達体の数に対応させうる。部分スペクトルは、同じ又は異なる幅を有してよい。
【0012】
振幅とは、スペクトル範囲の時間的プロファイルの平均レベルを指す。
【0013】
制御電圧は振動伝達体を作動させるための電圧であり、部分スペクトルの少なくとも1つの周波数範囲から取得される。
【0014】
アコースティックイベントは、振動を発生させることによってイベント中の知覚向上が見込まれる任意のオーディオイベントを含む。知覚向上の目的は、本質的に、楽曲を用いての感情効果の向上である。また、例えば、背景雑音が大きい場合や、音楽が静かな場合にも、音楽認識性の向上を図ることができる。また、アコースティックイベントは、「音楽」というタームが使用される場合、声、音、雑音、またはトーン(例えば、映画のオーディオ、ビデオゲームのサウンドなどの、静止画/動画マテリアル用のオーディオ)を含む。
【0015】
本発明の一態様によれば、アコースティックイベントの知覚を向上させるための、特に音楽感度を向上させるための方法が提供される。このために、アコースティックイベントから得られ、アコースティックイベントと相関する振動が振動伝達体によって人の皮膚に伝達される。複数の振動伝達体は、所定の位置で皮膚上に空間的に配置される。アコースティックイベントを再生する入力信号が入力される制御部によって複数の制御電圧が決定される。振動伝達体はそれぞれ、皮膚で知覚可能な(感知可能な)振動を発生するために、決定された制御電圧のうちの1つで作動する。
【0016】
ベーススペクトルはアコースティックイベントの周波数スペクトルから決定され、特に、周波数スペクトルの一部として選択される。ベーススペクトルは、各々がベーススペクトルの周波数範囲を構成する部分スペクトルに分割される。次いで、割り当てられた部分スペクトル(または場合によっては複数の部分スペクトル)の周波数範囲から複数の制御電圧がそれぞれ取得される。この場合、複数の制御電圧の複数の周波数位置と複数の振動伝達体の複数の位置との間、及び/又は、部分スペクトルと複数の振動伝達体の複数の位置との間に割り当て(設定)がある。
【0017】
アコースティックイベントの周波数スペクトル全体からベーススペクトルを適切に決定することで、知覚向上の基礎が作られる。ベーススペクトルの選択は、特にアコースティックイベントの種類に依存しうる。たとえば、重低音音楽のベースペクトルは、重高音音楽よりも低い周波数の範囲で選択できる。ベーススペクトルの幅を適切に選択することで、知覚を向上させることもできる。例えば、周波数の主要部分が狭い範囲にあるアコースティックイベントの場合でも、ベーススペクトルの幅を適切に選択することによって、すべての振動伝達体にわたる分布を得ることができる。このようなベーススペクトルを選択しなければ、例えば重低音音楽の場合においては、高周波数の部分スペクトルに割り当てられた振動伝達体は、大部分が振動するための励起を起こさないであろう。ベーススペクトルの選択に加えて、割り当ての中でも、特に、振動伝達体に割り当てる位置によって知覚はさらに向上する。これにより、皮膚上の異なる位置で異なる周波数の音を知覚することができる。
【0018】
ベーススペクトルは、予め決定することができ、例えば、開始時に一度だけ決定することもできる。しかしながら、ベーススペクトルが可変であると有利である。すなわち、現在のアコースティックイベントの間、ベーススペクトルは、特に連続的に現在のアコースティックイベントに適合されるか、または現在のアコースティックイベント中に少なくとも所定の間隔で適合される。ベーススペクトルのこの「動的な」適合によって、アコースティックイベントの間はいつでも知覚が向上する。
【0019】
特に、ベーススペクトルの決定には、部分スペクトルの数を維持しながら、ベーススペクトルの幅の拡大及び/又は縮小を含むことができる。ある時間単位内で、アコースティックイベントの周波数範囲における現下のベーススペクトルのエッジ領域(すなわち、関連するエッジから指定された距離内)において、特定の閾値を下回る幾つかの、特にゼロの、スペクトル成分が発生する場合、ベーススペクトルの幅は縮小する。選択されたベーススペクトルの外側に位置するスペクトル成分がアコースティックイベントの周波数スペクトル内に発生した場合には、ベーススペクトルの幅は拡大する。
【0020】
さらなる態様によれば、本明細書に記載される方法を実行するように構成された、アコースティックイベントの知覚を向上させるための装置が提供される。本装置は、人の皮膚に振動を伝達するための複数の振動伝達体と、振動伝達体に接続され、振動を発生させるために制御電圧によって振動伝達体を作動させるための制御部とを有する。複数の振動伝達体は、人の皮膚上に空間的に分布されうるように所定の構成内の所定の位置に設けられる。アコースティックイベントから取得され、アコースティックイベントと相関する振動が、複数の振動伝達体によって人間の皮膚上に伝達される。制御部は、アコースティックイベントに属する入力信号を受信し、複数の制御電圧を決定し、皮膚上で知覚可能な(感知可能な)振動を生成するために、決定された制御電圧の1つにより振動伝達体を作動させるように構成される。
【0021】
例えば、装置は、腰又はウエストの周りに着用されるベルトとして、バンドとして、又は衣類のアイテムとして(例えば、ベスト又はTシャツとして)設計することができ、好ましくは、使用時に、複数の振動伝達体を、人の腹部及び腰又はウエスト領域の皮膚上に配置することができるように設計することができる。これは、自律神経系への近接性のために特に効果的である。特に、複数の振動伝達体は、人が装置を着用したときに人の皮膚と接触するように配置することができる。あるいは、複数の振動伝達体は、振動が皮膚上に伝達されるように、少なくとも人の皮膚に対して配置されうる。複数の振動伝達体は、装着の快適性を高めるために、例えば、材料層に覆われた装置に一体化することができる。
【0022】
さらなる態様によれば、可聴音楽から取得され、可聴音楽と相関する振動を複数の振動伝達体から皮膚に伝達する、音楽感度を向上させる方法が提示される。複数の振動伝達体は、腰又はウエストの周りに装着されるベルトに空間的に配置される。そして、複数の振動伝達体は、制御電圧として異なる周波数範囲にフィルタリングされた音楽信号によって作動する。
【0023】
音楽スペクトルからのあるベーススペクトルの平均スペクトル幅から開始し、ベーススペクトルは部分スペクトルに分割される。
【0024】
現在のベースペクトルの範囲外に現下の音楽のペクトル成分が発生するとすぐに、部分ペクトルの数を維持しながらベースペクトルの幅が拡張され、及び/又は、ある時間単位内において、現在のベーススペクトルの範囲外に現下の音楽のスペクトル成分が発生しなければ、部分スペクトルの数を維持しながら、ベーススペクトルの幅が減少される。
【0025】
複数の振動伝達体は、部分スペクトルの複数の時間的プロファイルにより作動し、複数の制御電圧の周波数位置と複数の振動伝達体の位置との間には、演算的に検索可能な割当方式が存在する。
【0026】
上述の方法の好ましい実施形態によれば、制御電圧によって作動する振動伝達体の数は、個々の制御電圧の振幅比に依存する。全ての部分スペクトルの制御電圧の振幅が同一又は実質的に同一(即ち、所定の偏差まで)である場合、複数の制御電圧は、周波数位置の順序で振動伝達体に供給される。また、部分スペクトルの制御電圧の振幅が異なる場合、または部分スペクトルの複数の制御電圧の振幅が所定の偏差に達した場合、当該スペクトルの振動伝達体、及び、より高い周波数位置を有する部分スペクトルの振動伝達体に主要(優位)(dominant)な制御電圧が提供される。
【0027】
最大値を有する制御電圧よりも低い周波数位置において最大振幅を有する制御電圧もまた、1以上の振動伝達体を作動させるために使用される。その1以上の振動伝達体は、さもなければ、その2つの制御電圧間の周波数範囲に割り当てられる。そして、作動した周波数範囲未満の制御電圧に対して対応する割り当てが存在する。
【0028】
こうして、感知可能なスペクトル範囲におけるフィルタ処理された入力信号の影響の範囲が、周波数位置および振幅優位(amplitude dominance)に応じて拡大される。
【0029】
複数の制御電圧のこの割り当てに関係なく、少なくとも1つの振動伝達体が部分スペクトルの最大周波数制御電圧によって恒久的に作動するならば、聴取される音楽を感知できるようにすることに利点がある。
【0030】
複数の振動伝達体は、好ましくは、複数の振動伝達体が配置される中心線に関して、特に、その配置が延在する分布方向に関して、対称に、かつ対になって配置され、対でまたは個々に作動する。このため、配置の中心線は、装置(構成)の中心線、例えばベルトの中心線に対応させてよい。この場合、複数の振動伝達体は、特に、ある線に沿って配置することができる。しかしながら、複数の振動伝達体は、分布方向に離散して設けられ、一列に又は線上に設けられなくてもよい。同数または異なる数の振動伝達体を列ごとに用いて、2列以上の振動伝達体を互いに隣接して設けてもよい。前記のような割り当てがある限り、振動伝達体は任意に配置されてもよい。部分スペクトルの周波数は、好ましくは、例えばベルトの中心線の方向に増加する。言い換えると、中心線により近い振動伝達体は、より高い周波数範囲の部分スペクトルを割り当てられ、中心線からさらに離れた振動伝達体よりも高い周波数制御電圧で、より高い周波数振動に励起されることが好ましい。特に、対応する振動によって、高音が腹部上で、低(低音)が側部上で感知可能となるこのような作動は、アコースティックイベントの知覚を向上させるのに有利であることが分かっており、特に、皮膚は異なる位置で異なる感度を有することから、音楽感度の向上に有利である。ウエスト領域における感受性インパクトは自律神経系に近いことから、それらは特に敏感に知覚される。
【0031】
部分スペクトルの最高周波数制御電圧によって恒久的に作動する振動伝達体の場合、対となる振動伝達体は、好ましくは、中心線のすぐ右側及びすぐ左側に配置される。
【0032】
本方法は、音楽を明確に特徴づける、知覚不可能な(感知不可能な)周波数範囲の音楽フェーズを知覚可能とする方法ステップも含む。言い換えると、アコースティックイベントの周波数スペクトルにおいては、周波数に関して可聴であるが(または少なくとも聴覚印象に寄与するが)、皮膚では感知できない周波数範囲が存在しうる。
【0033】
例えば、最も高く、依然として感知可能な部分スペクトル内の制御電圧の振幅が増加する、言い換えると、入力信号の信号部分が感知不可の部分スペクトル内で発生する場合、最も高く、依然として感知可能な部分スペクトル内の制御電圧の振幅が増加する構成を提供することができる。
【0034】
さらに、非感知周波数範囲における特定の優位な音楽フェーズから始まって、最も高く、依然として感知可能である部分スペクトルにおける制御電圧を、制御電圧として複数の振動伝達体に供給することができる。これは、前記音楽フェーズの影響度合いを増加させることになろう。
【0035】
さらなる実施形態では、非感知周波数範囲内に存在する入力信号の振幅プロファイルが感知周波数範囲内に存在する発振電圧の振幅プロファイルとして認識され、制御電圧として振動伝達体に供給される。
【0036】
この振幅プロファイル転換に係る1つの有利な実施形態では、感知可能な周波数範囲から非感知周波数範囲を分離するために使用される選択増幅器は、時間遅延ステージを介して該増幅器の整流された出力信号を反対位相の増幅器入力にフィードバックする動的動作点設定を有する。これにより、感知できない周波数範囲に存在する音楽信号の変化率に依存する増幅がもたらされる。こうして生成された増幅器の出力信号の振幅プロファイルは、感知可能範囲に存在する発振電圧の振幅プロファイルとして認識され、その後、振動伝達体の制御電圧として使用される。
【0037】
フィードバック信号の時間遅延が音楽信号の比較的急速な増加に追従しないように、すなわち、完全な増幅がこのような音楽フェーズにおいて有効であるように、しかしながら、音楽信号がより高いレベル(level)にとどまる場合には、その反対位相によってフィードバック信号の時定数に従い増幅が減少するように、フィードバック信号の時間遅延が設定され、より低い電圧範囲に動作点が移される。次いで、他の急激な増加に対して基本増幅が再び作用する。ここで、出力電圧が低いために、増幅された信号は、全体がより高い電圧範囲で形成されうる。
【0038】
一定の動作点位置では、特定のベース信号振幅を超える信号変動は、増幅器の動作範囲外、すなわち飽和範囲外に存在することになるため、検出できないであろう。一方、増幅が減少すると、振動伝達体の制御電圧は、低すぎて信号変動を敏感に検出することができなくなるであろう。
【0039】
可変動作点位置のため、基本増幅は、値の約5倍まで増加させることができる。その結果、比較的高い信号の小さな振幅変動であっても敏感に検出される。
【0040】
さらなる実施形態において、非感知部分スペクトルにおける音楽の信号部分の場合、前記周波数範囲は、1つ以上、好ましくは少なくとも2つのフィルタステージを介してその全体が検出される。これは、音楽においては、スピーチとは対照的に、いくつかの信号源が音を生成するという事実を考慮に入れたものである。1つのフィルタステージのみを介して周波数範囲を検出することにより、個々のソースの変調内容は、例えば干渉を形成することで変造しうる。複数のフィルタが使用される場合、回路は聴覚系の選択能力を近似し、その結果、聴覚と触覚との間のより強い相関が得られる。
【0041】
複数の振動伝達体への複数の制御電圧の割当方式は、中心線に近接して配置された振動伝達体がより高い周波数の信号から取得された制御電圧で作動するように、少なくとも2つのフィルタステージで実行することができる。そして、中心線からさらに離れた位置に配置された振動伝達体は、低周波信号から取得された制御電圧で作動する。
【0042】
ある制御電圧が振幅優位である場合、さらなる(または少なくとも1つのさらなる)振動伝達体が前記電圧で作動すると有利であることが分かっている。これは、特に、実際に割り当てられた振動伝達体に隣接する振動伝達体に当てはまる。
【0043】
スペクトル範囲が限定された音楽の場合、制御電圧に対する周波数範囲の分割は音楽の全幅に応じて広がりうる。これは、1オクターブ幅でなければならないスペクトル範囲の幅が小さくなることを示す。
【0044】
別の有利な実施形態では、ユーザインターフェースを介して、好ましくはアプリケーションなどのソフトウェアを介して、特に、スイッチング方式を実施するため、及び/又は、振動伝達体のための、割り当て若しくはスイッチングマトリックスを変更するために、デジタル回路に制御コマンドが送信されうる。
【0045】
上述したように、ベルトのような対応する装置には、上述した方法を実施するために複数の振動伝達体が設けられている。さらなる態様によれば、音楽感度を高めるための装置を提供することができる。可聴音楽から取得され、可聴音楽と相関する振動が複数の振動伝達体により皮膚に伝達する。複数の振動伝達体は、腰の周囲に装着されるベルトに設けられ、制御電圧として異なる部分スペクトルにフィルタリングされた音楽信号により作動する。回路という点で、互いに結合される複数の構成要素で構成される電子システムが提供される。電子システムは、音楽録音コンポーネント、ベーススペクトルを取得するための回路、フィルタリングされた信号を適応させるための回路を備えた制御可能なフィルタ回路、振幅検出回路、比較回路、およびスイッチング方式を実施するためのデジタル回路、制御可能な増幅器、スイッチングマトリクス、および振動伝達体から構成される。
【0046】
前記のアナログ回路の代わりに、デジタル回路(例えば、マイクロ制御部)及び/又はソフトウェアを制御部として有利に使用することができることは言うまでもなく、デジタル入力信号を受け取り、制御電圧を決定するための前記工程を実施し、関連する制御電圧により振動伝達体の作動を開始する。
【0047】
制御部または電子システムは、好ましくは、装置内に一体化され、入力信号を受信するための少なくとも1つのインターフェース、例えば、音楽録音コンポーネント内または音楽録音コンポーネント上の信号送信機へのインターフェースを有する。好ましくは、インターフェースは、出力装置から入力信号を受信する無線、例えばBluetooth(登録商標)である。もちろん、インターフェースは有線であってもよい。また、入力信号が、インターフェース、特にヘッドホンまたはラウドスピーカーのような再生用の装置を介して出力されるか、または中継されてよい。知覚を高めるために、信号の伝達は、聴取されたアコースティックイベントと振動への変換との間に時間遅延を生じさせてはならない。
【0048】
さらに、装置は、制御部に電気エネルギーを供給するために該制御部に接続した、再充電可能バッテリーのようなエネルギー蓄積手段を有するとよい。この構成は、音楽信号が無線で伝送された場合でも、装置が独立して使用できるという利点がある。したがって、ユーザは位置に依存しない。
【0049】
振動伝達体は、好ましくは装置の内側に配置され、例えば、ベルト上またはベルトの内側に配置される。その結果、上述したように、振動を皮膚に伝達することができる。
【0050】
スイッチング方式を実施するためのデジタル回路と相互作用することによって、振動伝達体の少なくとも以下の作動は、スイッチングマトリックスとの組み合わせで若しくは独立して実行することができる。
【0051】
すべての部分スペクトルの制御電圧の振幅が同じ場合、制御電圧は、それらの周波数位置の順序で振動伝達体に供給される。
【0052】
部分スペクトルの制御電圧の振幅が異なる場合、支配的な制御電圧が、当該部分スペクトルの振動伝達体、及び、より高い周波数位置を有する部分スペクトルの1つまたは複数の振動伝達体に供給される。
【0053】
少なくとも1つの振動伝達体は、部分スペクトルの最高周波数制御電圧で恒久的に作動する。
【0054】
最大値を有する制御電圧よりも低い周波数位置において最大振幅を有する制御電圧もまた、その2つの制御電圧の間にある1以上の振動伝達体を作動させるために使用される。それより低い周波数範囲における制御電圧に対して対応する割り当てが行われる。
【0055】
音楽を特徴づける知覚不可能な周波数における信号部分の場合、最も高く、依然として感知可能な周波数範囲にある制御電圧の振幅は増加し、その信号部分の特定のレベルから開始して、複数の振動伝達体に供給される。
【0056】
非感知周波数範囲にある入力信号の振幅プロファイルは、感知周波数範囲にある発振電圧の振幅プロファイルとして認識され、振動伝達体に制御電圧として供給される。
【0057】
感知可能な周波数範囲から非感知周波数範囲を分離するために使用される選択増幅器は、時間遅延ステージを介して該増幅器の整流された出力信号を反対位相の増幅器入力にフィードバックする動的動作点設定を有する。これにより、非感知周波数範囲にある音楽信号の変化率に依存する増幅がもたらされる。こうして生成された増幅器の出力信号は、感知可能範囲に存在する発振電圧の振幅プロファイルとして認識され、その後、振動伝達体の制御電圧として使用される。
【0058】
非感知部分スペクトルにおける音楽の信号部分の場合、前記周波数範囲は、少なくとも2つのフィルタステージを介してその全体が検出される。
【0059】
非感知部分スペクトルにおける音楽の信号部分の場合、振動伝達体への制御電圧の割当方式は、中心線に近接して配置された振動伝達体がより高い周波数の信号から取得された制御電圧で作動するように、少なくとも2つのフィルタステージで実行することができる。中心線からさらに離れた位置に配置された振動伝達体は、低周波信号から取得された制御電圧で作動する。
【0060】
ある制御電圧が振幅優位である場合、さらに他の複数の振動伝達体がその電圧で作動する。
【0061】
ベルトの中心線に対して対称かつペアで配置された振動伝達体の場合、中心線の両側に直接配置された振動伝達体は、好ましくは、部分スペクトルの最高周波数制御電圧で恒久的に作動する。
【0062】
当然に、電子システムの前記アナログコンポーネントは、機能的に同一のデジタル回路及び/又はソフトウェアを用いて実現することができる。
【0063】
以下では、方法に係る本質的な特徴が、非感知部分スペクトルにおける音楽の信号部分の場合に、これらの信号を感知できるようにする手段により示される。
【0064】
可聴音楽から得られ、可聴音楽と相関する振動が、振動伝達体によって皮膚上に伝達される。振動伝達体は、腰またはウエストの周囲に装着されるベルト内に空間的に配置され、制御電圧として異なる周波数範囲にフィルタリングされた音楽信号によって作動する。
【0065】
音楽スペクトルからのあるベーススペクトルの平均スペクトル幅から開始し、ベーススペクトルは部分スペクトルに分割される。振動伝達体は、部分スペクトルの時間的プロファイルにより作動し、制御電圧の周波数位置と振動伝達体の位置との間には、演算的に検索可能な割当方式が存在する。非感知部分スペクトルにおける音楽の信号部分の場合に、最も高く、依然として感知可能な部分スペクトル内の制御電圧の振幅が増加する。
【0066】
及び/又は、前記部分の事前の定義が可能な振幅から開始して、最も高く、依然として感知可能な部分スペクトルにおける制御電圧を、制御電圧として複数の振動伝達体に供給することができる。
【0067】
及び/又は、前記周波数範囲は、少なくとも2つのフィルタステージを介してその全体が検出される。
【0068】
及び/又は、感知可能な周波数範囲から非感知周波数範囲を分離するために使用される選択増幅器は、時間遅延ステージを介して該増幅器の整流された出力信号を反対位相の増幅器入力にフィードバックする動的動作点設定を有し、非感知周波数範囲にある音楽信号の変化率に依存する増幅がもたらされ、こうして生成された増幅器の出力信号は、感知可能範囲に存在する発振電圧の振幅プロファイルとして認識され、その後、振動伝達体の制御電圧として使用される。
【0069】
及び/又は、非感知部分スペクトルにおける音楽の信号部分の場合、最も高く、依然として感知可能な部分スペクトル内の制御電圧の振幅が増加し、前記部分の事前の定義が可能な振幅から開始して、最も高く、依然として感知可能な部分スペクトルにおける制御電圧を、制御電圧として複数の振動伝達体に供給する。
【0070】
及び/又は、前記周波数範囲は、少なくとも2つのフィルタステージを介してその全体が検出される。
【0071】
及び/又は、感知可能な周波数範囲から非感知周波数範囲を分離するために使用される選択増幅器は、時間遅延ステージを介して該増幅器の整流された出力信号を反対位相の増幅器入力にフィードバックする動的動作点設定を有し、非感知周波数範囲にある音楽信号の変化率に依存する増幅がもたらされ、こうして生成された増幅器の出力信号は、感知可能範囲に存在する発振電圧の振幅プロファイルとして認識され、その後、振動伝達体の制御電圧として使用される。
【0072】
及び/又は、非感知部分スペクトル内の音楽の信号部分の場合であって、最も高く、依然として感知可能な部分スペクトル内の制御電圧が非常に低いのみの場合、周波数が感知可能な限界するが依然として感知可能なスペクトルの発振電圧は、制御電圧として機能する。
【0073】
非感知部分スペクトルにおける音楽の信号部分の場合、少なくとも2つのフィルタステージを有する振動伝達体への制御電圧の割当方式は、好ましくは、中心線に近接して配置された振動伝達体がより高い周波数の信号から取得された制御電圧で作動し、中心線からさらに離れた位置に配置された振動伝達体は、低周波信号から取得された制御電圧で作動する。
【0074】
ある制御電圧が振幅優位である場合、さらなる振動伝達体がその電圧で作動する。
【0075】
これらの特徴の説明に関しては、手法に関する前述の説明を参照されたい。それらはここでも同様に適用される。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【発明を実施するための形態】
【0077】
図1は、音楽感度(音楽的感情性)を高めるためのベルト12状の装置を示し、中心線13によって示される、当該装置の半分と内部のみが図示される。
【0078】
図示の実施形態では、7つの振動伝達体がそれぞれ、中心線13の両側のベルト12内に配置され、好ましくはベルト12を装着したときに腰から腰にかけて身体に押し付けられるように配置される。当然に、異なる数の振動伝達体が設けられてよい。
【0079】
ベルト12には、音楽録音コンポーネント1のためのインターフェースを備えた制御部または電子システム14が一体化されている。デジタル制御部の場合、インターフェースは、好ましくは無線で、例えばBluetooth(登録商標)を介してデジタル入力信号を直接受信することもできる。振動伝達体7は、電子システム14によって作動する。振動伝達体7は、中心線13に対して対称に、対で作動する。当然に、振動伝達体7は、対ではなく、個別に、または2つ、3つ、または4つ以上の振動伝達体をグループとして作動してよい。
【0080】
図2は、振動伝達体7を作動させるための電子システム14を回路装置の態様で示す。電子システム14によって、可聴音楽から取得され、その可聴音楽と相関する振動が、振動伝達体7から皮膚に伝達される。この場合、振動伝達体7は、腰またはウエストの周囲に装着されるようにベルト12内に配置され、振幅に適合した、フィルタリングされた音楽信号である制御電圧によって作動する。
【0081】
電子システム14は、回路という点で、互いに結合される複数の構成要素で構成される。具体的に、電子システム14は、音楽録音コンポーネント1、ベーススペクトルを取得するための回路2、回路8を備えた制御可能なフィルタ回路3、制御可能なフィルタ回路3を適合させるための回路8、振幅検出回路9、比較回路10、およびスイッチング方式を実施するためのデジタル回路11、制御可能な増幅器5、および振動伝達体7のためのスイッチングマトリクス6から構成される。
【0082】
音楽録音コンポーネント1は、好ましくは無線コンポーネントである。すなわち、スピーカまたはヘッドホンを介してベルト12の着用者が耳感覚器官を通して知覚する音楽信号は、音楽記録コンポーネント1によって同時に記録され、そして、振動伝達体7の制御電圧を生成するために、電子システム14の別のコンポーネントに供給される。
【0083】
前記信号が音楽録音コンポーネント1に入力された後、回路2は、音楽スペクトルからのあるベーススペクトルの平均スペクトル幅から開始するベーススペクトルを取得する。ベーススペクトルは、例えば、250Hz~8kHzの範囲となりうる。ベーススペクトルは、部分スペクトルに分割される。現在のベースペクトルの範囲外に現下の音楽のペクトル成分が発生するとすぐに、部分ペクトルの数を維持しながらベースペクトルの幅が拡張される。あるいは、ある時間単位内において、現在のベーススペクトルの範囲外に現下の音楽のスペクトル成分が発生しなければ、部分スペクトルの数を維持しながら、ベーススペクトルの幅が減少される。
【0084】
次いで、振動伝達体7は、部分スペクトルのフィルタリングされた時間的プロファイルにより作動する。制御電圧の周波数位置と振動伝達体7の位置との間には、演算的に検索可能な割当方式が存在する。
【0085】
制御可能なフィルタ回路3は、全ての音を解析するものではなく、むしろ、音が存在する部分スペクトルを解析する。このようにして音に周波数が割り当てられる。
【0086】
ベーススペクトルは、皮膚に対して知覚可能な(感知可能な)範囲を含み、例えば以下の範囲を含む。
【0087】
55Hz-93Hz
94Hz-160Hz
161Hz-280Hz
281Hz-460Hz、及び、
461Hz-820Hz
ベーススペクトルは、以下の範囲の、知覚不可能な(感知不可能な)スペクトルの音楽信号周波数を含む。
【0088】
821Hz-1600Hz、及び
1601Hz-3200Hz。
【0089】
一般に、皮膚によって感知可能な周波数と感知不可能な周波数との境界となる周波数は約1000Hzであろう。
【0090】
信号のスペクトル分割と並行して、フィルタリングされた音楽信号の振幅を検出するための回路8は、振幅の大きさに関連して部分スペクトルの振幅を決定する。続く比較回路では、回路8は振幅の大きさを比較する。
【0091】
決定された振幅の大きさに基づいて、事前にプログラムされたスイッチング方式を実施し、したがって振動伝達体7を起動するために、スイッチングマトリクス6に供給するための対応する信号がデジタル回路11内で生成される。
【0092】
任意の振動伝達体7および複数の振動伝達体7の組み合わせがフィルタ回路3からの制御電圧によって起動するように、スイッチングマトリクス6は設計されている。
【0093】
提案した方法は、振動伝達体7によって変換されうる新しい信号を生成しない。しかしながら、その代わりに、フィルタリングされ、振幅適合された音楽信号が直接送信される。どの振動伝達体7を作動させるかは電子システム14が決定する。最も重要な作動は、前記方法に詳細に開示されている。
【0094】
聴覚(heard perception)と触覚(felt perception)との間の可能な限りの高い相関は、音楽信号から振動への直接的な変換、フィルタリングされた音楽信号の局所的な感化分布、感化の程度を拡大することによる支配的な音楽信号の強調、感知不可範囲にある信号部分の感知可能範囲への転換、および現在の音楽スペクトルに適応する可変ベーススペクトル、によって実現することができる。