(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】ポンプ挿入中の漏洩を最小限にするためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
A61M 60/17 20210101AFI20241016BHJP
A61M 60/205 20210101ALI20241016BHJP
A61M 60/32 20210101ALI20241016BHJP
A61M 60/818 20210101ALI20241016BHJP
A61M 60/416 20210101ALI20241016BHJP
A61M 60/88 20210101ALI20241016BHJP
A61M 25/06 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
A61M60/17
A61M60/205
A61M60/32
A61M60/818
A61M60/416
A61M60/88
A61M25/06 550
A61M25/06 556
(21)【出願番号】P 2021521274
(86)(22)【出願日】2019-10-18
(86)【国際出願番号】 US2019057037
(87)【国際公開番号】W WO2020082001
(87)【国際公開日】2020-04-23
【審査請求日】2022-10-13
(32)【優先日】2018-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510121444
【氏名又は名称】アビオメド インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ゾール ジョナサン
【審査官】胡谷 佳津志
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-530041(JP,A)
【文献】特表2004-514506(JP,A)
【文献】特表2003-508161(JP,A)
【文献】特表2002-535091(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0049947(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0141738(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第105682699(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第113398463(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 60/00-60/90
A61M 1/00-1/38
A61M 25/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下:
ポンプとカニューレとを備える心臓内装置であって、該ポンプは、ポンプハウジングと、ロータと、該ポンプハウジングの近位に位置付けられた
近位開口部とを有し、該カニューレは、該ポンプハウジングの遠位端に接続する近位端と
、遠位開口部を有する遠位端とを有し、該ポンプは、モータによって作動されるよう構成されている、該心臓内装置;
該ポンプハウジングの近位に延びる細長いカテーテル;
該ポンプの一部分の上に取り外し可能に配置されるよう構成され、該遠位開口部および該近位開口部のうちの
いずれかまたは両方を覆う、スリーブ;および
止血弁を有する管状区域を備えたイントロデューサであって、該ポンプおよび該スリーブを患者の脈管構造内に導入するよう構成され、該スリーブが止血弁を完全に通過しないように構成された、該イントロデューサを備え
、
該ポンプが止血弁を横切って位置するように該スリーブが該遠位開口部を覆う時に、流体が患者の血管系から脈管構造から該可撓性非外傷性突起部のルーメンを通って近位開口部から流出することをスリーブが防止する、
心臓内装置設置システム。
【請求項2】
カニューレの遠位端から遠位方向に延びる可撓性
非外傷性突起部をさらに備え、遠位開口部が、該可撓性
非外傷性突起部と該カニューレの該遠位端との間に位置付けられた窓を形成し、スリーブが、該窓の上に取り外し可能に配置されるよう構成されている、請求項1記載の設置システム。
【請求項3】
スリーブが
該遠位開口部および
該近位開口部を覆う、請求項2記載の設置システム。
【請求項4】
スリーブが近位端および遠位端を備えており、該スリーブがポンプ上に配置された時にその近位端において流体封止されるように、該スリーブの該近位端の内径が細長いカテーテルの外径に近似している、前記請求項のいずれか一項記載の設置システム。
【請求項5】
スリーブが、断面直径を有するルーメンを画定し、該断面直径が、遠位端から近位端へと、先細になっている、前記請求項のいずれか一項記載の設置システム。
【請求項6】
細長いカテーテルが、その遠位端においてポンプハウジングに連結されており、ポンプが、該細長いカテーテルを通って延びる駆動ケーブルをさらに備える、前記請求項のいずれか一項記載の設置システム。
【請求項7】
スリーブの一部分が、細長いカテーテルまたはカニューレのうちの少なくとも一方よりも硬い、前記請求項のいずれか一項記載の設置システム。
【請求項8】
スリーブが、遠位開口部または近位開口部のうちの1つから流体が流出することを防止するよう構成されている、前記請求項のいずれか一項記載の設置システム。
【請求項9】
ポンプが止血弁を横切って位置し、遠位開口部は該止血弁の遠位に位置付けられているが近位開口部は該止血弁の近位に位置付けられている時に、流体が患者の脈管構造から可撓性非外傷性突起部のルーメンまたは該遠位開口部を通って該近位開口部から流出することをスリーブが防止するように、該スリーブが該近位開口部を覆う、前記請求項のいずれか一項記載の設置システム。
【請求項10】
スリーブの一部分の上に位置付けられた人間工学的なハンドルをさらに備える、前記請求項のいずれか一項記載の設置システム。
【請求項11】
ハンドルが、スリーブと一体成形されている、請求項
10記載の設置システム。
【請求項12】
ハンドルが、少なくとも2つの部品から形成され、スリーブから取り外し可能である、請求項
10記載の設置システム。
【請求項13】
ハンドルの前記少なくとも2つの部品が、取り外し可能なピンによってスリーブの周囲で所定の場所に保持される、請求項
12記載の設置システム。
【請求項14】
ハンドルの前記少なくとも2つの部品が、該ハンドルの該少なくとも2つの部品のうちの
少なくとも1つに螺合する保持リングによって、スリーブの周囲で所定の場所に保持される、請求項
12記載の設置システム。
【請求項15】
スリーブが、該スリーブの近位端の内面から延びるリップを備え、該リップが、細長いカテーテルの外径に近似した内径を画定している、前記請求項のいずれか一項記載の設置システム。
【請求項16】
スリーブが、該スリーブの外面から延びるリップを備え、該リップが、止血弁に当接するようサイズ決めおよび成形されている、前記請求項のいずれか一項記載の設置システム。
【請求項17】
ポンプまたは該ポンプの一部分の上をスリーブが自由に摺動することを防止するよう構成された固定機構をさらに備える、前記請求項のいずれか一項記載の設置システム。
【請求項18】
固定機構が、第一の非固定位置から第二の固定位置に回転するよう構成されたリングを備え、該リングが、該第二の固定位置において、スリーブ、細長いカテーテルまたはそれら両方を締め付ける、請求項
17記載の設置システム。
【請求項19】
スリーブの一部分の上に位置付けられたハンドルが固定機構を備える、請求項
17記載の設置システム。
【請求項20】
固定機構が複数のタブを備え、該複数のタブの各タブが、リビングヒンジと、遠位開口部、近位開口部またはそれら両方の中に少なくとも部分的にフィットするよう構成された突出部とを備えており、そのため、該複数のタブが、該遠位開口部、該近位開口部またはそれら両方において固定位置にスナップ嵌めされる、請求項
17記載の設置システム。
【請求項21】
タブが、スリーブの遠位部分に径方向内向きの力を適用することによって固定位置から解除されるよう構成されている、請求項
20記載の設置システム。
【請求項22】
複数のタブの各タブが、固定位置において遠位開口部のうちの1つを覆うようサイズ決めおよび成形され、該遠位開口部の各開口部が、該複数のタブのうちの1つのタブによって覆われる、請求項
20記載の設置システム。
【請求項23】
複数のタブの各タブが、固定位置において近位開口部のうちの1つを覆うようサイズ決めおよび成形され、該近位開口部の各開口部が、該複数のタブのうちの1つのタブによって覆われる、請求項
20記載の設置システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許法第119条(e)の下、2018年10月18日に出願された米国仮特許出願第62/747,405号からの優先権の恩典を主張し、前記出願の内容は全体として参照により本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
背景
心臓内心臓ポンプアセンブリは、外科的または経皮的に心臓内に導入することができ、心臓または循環系内のある場所から心臓または循環系内の別の場所へ血液を送達するために使用される。例えば、心臓内ポンプは、心臓内に配置された場合、心臓の左心室から大動脈内へ血液をポンピングするか、または右心室から肺動脈へ血液をポンピングすることができる。心臓内ポンプは、患者の体外に位置するモータまたは患者の体内に位置するモータによって駆動される。いくつかの心臓内血液ポンプシステムは、自己心臓(native heart)と並行して動作し、心拍出量を補い、心臓の構成部分の負荷を部分的または十分に軽減することができる。このようなシステムの例には、IMPELLA(登録商標)系列の装置が含まれる(Abiomed, Inc.、マサチューセッツ州ダンバース)。
【0003】
心臓内装置設置システムは、止血弁と、心臓内装置の導入のためのイントロデューサとを含む。心臓内装置は、ポンプと、カニューレと、その遠位端においてポンプに連結されている細長いカテーテルとを含む。心臓内装置は、止血弁およびイントロデューサを通して患者の脈管構造内に挿入される。イントロデューサ部位における脈管構造内の血圧により、心臓内装置が止血弁を横切って位置付けられる時にその中空カニューレは遠位から近位方向への血液の漏洩を可能にし、体液が心臓内装置に入ってカニューレを通り、止血弁の反対側にある開口部を通して心臓内装置から出る。このような漏洩は、医師が装置を設置するのに不便であり、かつ/または患者にとって危険であり得る。例えば、加圧流体の漏洩により、医師がしぶきを浴び、かつ/または患者の血圧の減少が生じる場合がある。
【発明の概要】
【0004】
概要
心臓内ポンピング装置の挿入中の、止血弁を横切る漏洩を防止するためのシステム、方法および装置が本明細書に記載される。本明細書に開示される心臓内装置設置システムは、心臓内装置を通した、例えば、カニューレまたはカニューレからの遠位突起部を通した液体漏洩を防止することができる。本明細書に記載されるこのような心臓内装置設置システムの1つの要素は、止血弁の遠位または近位にある開口部のうちの少なくとも1つを封止し、例えばカニューレの入口および出口領域を封止するための、心臓内装置の一部分の上に有利に設置されたスリーブである。有利には、スリーブは、心臓内装置の挿入中に存在する漏洩路を封鎖する。
【0005】
いくつかの実施形態において、心臓内装置は、ポンプと、カニューレと、ポンプの近位にあるカテーテルと、心腔内または他の脈管の位置においてポンプを安定化する遠位突起部とを備える。装置のための設置システムは、カニューレまたはポンプの一部分を覆うスリーブと、イントロデューサとを含む。例えば、血液ポンプシステムは、Abiomed, Inc.のImpella(登録商標)装置または任意の他の脈管内血液ポンプであってもよい。いくつかの実施形態において、制御装置は、本明細書に記載の血液ポンプシステムの操作を容易にするよう構成される。例えば、制御装置は、Abiomed, Inc.のAutomated Impella Controller(AIC)(登録商標)、または入力信号を受信しそれを操作信号に変換してポンプを操作する任意の他の適切な制御装置であってもよい。心臓内血液ポンプシステムの操作を容易にするよう構成された分離された制御装置の少なくとも1つの利点は、システムの厳密な制御、およびシステムに関連したデータを取得できることである。
【0006】
いくつかの実施形態において、ポンプは、ハウジングと、ハウジング内に配置されたロータとを備える。ロータは、少なくとも1つのブレードを有してもよい。特に、ロータは、回転力を受けた時に流体流を発生させるよう成形されたインペラブレードを含んでもよい。いくつかの実施形態において、前記ロータは、ロータとステータとを有する植込み型モータによって駆動される。前記ロータの近位端を駆動シャフトに連結してもよい。いくつかの実施形態において、モータは患者の体外にあり、細長い機械式動力伝達要素、例えば可撓性駆動シャフト、駆動ケーブルまたは流体継手によってロータを駆動する。
【0007】
いくつかの実施形態において、カテーテルは、近位端と遠位端と中心ルーメンとを有する、細長いマルチルーメンカテーテルである。細長いマルチルーメンカテーテルの遠位端は、ポンプハウジングに隣接していてもよい。例えば、血液ポンプシステムを使用している時、ポンプハウジングは患者の心臓の内部に設置されており、細長いマルチルーメンカテーテルは、カテーテルの第一部分が患者の体内にありかつカテーテルの第二部分が患者の体外にあるように、患者の心臓から患者の脈管構造を通って延びる。カテーテルは、2つ、3つ、4つ、5つ、または任意の適切な数のルーメンを備えてもよい。例えば、2つの別個のチューブがカテーテルの中心ルーメンを通過し、したがって、最初の中心ルーメンと、第一のチューブを通るルーメンと、第二のチューブを通るルーメンという、合計3つのルーメンが画定されてもよい。いくつかのルーメンはカテーテルの全長に延びていてもよく、一方、他のルーメンはカテーテルを部分的にだけ通って延びていてもよい。
【0008】
いくつかの実施形態において、カテーテルは、その遠位端においてモータに連結されているカテーテルである。いくつかの実施形態において、カテーテルは、その遠位端においてポンプハウジングに連結されているカテーテルである。いくつかの実施形態において、カテーテルは、その遠位端においてポンプハウジングに連結されており、ポンプは、カテーテルを通って延びる駆動ケーブルをさらに備える。
【0009】
いくつかの実施形態において、スリーブは、ポンプまたはカニューレの一部分の上に取り外し可能に配置されるよう構成され、ポンプまたはカニューレの遠位開口部および近位開口部のうちの少なくとも1つを覆っている。いくつかの実施形態において、カニューレは、スリーブによって覆われて、スリーブの遠位部分と共に止血弁を通ってイントロデューサを介して患者の脈管構造内へと挿入される。いくつかの実施形態において、装置の動作中、血液が遠位開口部を通って装置内に流入し、近位開口部を通って装置から出るように、近位開口部はポンプ近位開口部であってもよく、遠位開口部はポンプ入口開口部であってもよい。可撓性先端部は、遠位開口部を画定する流入ケージの遠位端より遠位に位置付けられている。スリーブは、遠位開口部、近位開口部またはそれら両方を覆ってもよい。遠位開口部は、可撓性先端部とカニューレの遠位端との間に位置付けられてもよく、スリーブは、そのような開口部を覆ってもよい。
【0010】
いくつかの実施形態において、スリーブは、止血弁を横切る漏洩を防止するよう構成されている。いくつかの実施形態において、スリーブがポンプ上に配置された時にその近位端において流体封止されるように、スリーブの近位端の内径は細長いカテーテルの外径に実質的に一致する。スリーブは、断面直径を有するルーメンを形成してもよい。断面直径は、遠位端から近位端へと、先細になってもよい。例えば、断面直径は、遠位端から近位端へと、直線的に先細になってもよい。別の例としては、断面直径は、スリーブの中央から近位端へと、先細になり始めてもよい。スリーブを先細にすることの少なくとも1つの利点は、スリーブを細長いカテーテルの周囲にぴったりフィットするよう先細にして、スリーブから流体が漏出することを防止することができるということである。
【0011】
いくつかの実施形態において、スリーブは、遠位開口部または近位開口部のうちの1つから流体が流出することを防止するよう構成されている。いくつかの実施形態において、ポンプが止血弁を横切って位置し、可撓性非外傷性突起部は止血弁の遠位に位置付けられているが遠位開口部は止血弁の近位に位置付けられている時に、流体が患者の脈管構造から可撓性非外傷性突起部のルーメンを通って近位開口部から流出することをスリーブが防止するように、スリーブは遠位開口部を覆う。例えば、スリーブは、流体が遠位から近位の方向に流れることを防止するよう、近位開口部もしくは遠位開口部、またはそれら両方を覆ってもよい。いくつかの実施形態において、ポンプが止血弁を横切って位置し、遠位開口部は止血弁の遠位に位置付けられているが近位開口部は止血弁の近位に位置付けられている時に、流体が患者の脈管構造から遠位開口部を通って近位開口部から流出することをスリーブが防止するように、スリーブは近位開口部を覆う。例えば、スリーブは、流体が遠位から近位の方向に流れることを防止するよう、近位開口部を覆ってもよい。心臓内装置の挿入中、止血弁の近位に位置する遠位開口部または近位開口部のうちの1つからの(すなわち、遠位から近位の方向の)流体の流出を防止することの少なくとも1つの利点は、挿入を行っている医療専門家に向かって血液などの体液が噴き出すことを防止するということである。
【0012】
スリーブは、熱可塑性物質を含む任意の適切な材料から作製されてもよい。いくつかの実施形態において、スリーブの一部分は細長いカテーテルよりも硬い。いくつかの実施形態において、スリーブの一部分はカニューレよりも硬い。スリーブの一部分の剛性がカニューレよりも硬いことの少なくとも1つの利点は、カニューレとスリーブを組み合わせたものの剛性が増加することによって、患者の脈管構造内への心臓内装置の挿入がより簡単になるということである。例えば、挿入角度がより大きい場合の軸方向の挿入中、より硬いスリーブおよびカニューレアセンブリは、座屈するまたはよじれることなく挿入することがより簡単であり得る。
【0013】
いくつかの実施形態において、スリーブはリップを含んでもよい。スリーブは、スリーブの近位端にリップを含んでもよい。いくつかの実施形態において、スリーブは、スリーブの近位端の内面から延びるリップを含み、リップは、細長いカテーテルの外径に近似した内径を画定している。例えば、リップの内径は、細長いカテーテルとのぴったりとしたフィットを形成するようサイズ決めされてもよい。いくつかの実施形態において、スリーブは、スリーブの外面から延びるリップを備え、リップは、止血弁に当接するようサイズ決めおよび成形されている。心臓内装置が患者の脈管構造内に挿入される時、スリーブは、心臓内装置の挿入の動きに伴って近位から遠位の方向に摺動してもよい。摺動動作の特定の時点で、スリーブのリップは止血弁の近位側と接触する。リップは、スリーブの近位端が止血弁を通って進むことを防止する。いくつかの実施形態において、リップは、スリーブとの連続体として存在してもよい。リップは、スリーブと同じ材料から作製されてもよい。リップは、リップの変形を防止する(すなわち、リップが、湾曲もせず、折れもせず、イントロデューサ内にスリーブが完全に挿入されることを可能にするであろう任意の他の変形も引き起こさないことを保証する)のに十分なほど硬い材料から作製されてもよい。リップの少なくとも1つの利点は、スリーブがイントロデューサ内に決して完全には挿入されない(すなわち、それゆえ取り外し可能である)ことを保証することである。
【0014】
いくつかの実施形態において、心臓内装置設置システムは、ハンドルを含んでもよい。例えば、ハンドルは、スリーブと同じ材料から作製されてもよい。いくつかの実施形態において、心臓内装置設置システムは、スリーブの一部分の上に位置付けられた人間工学的なハンドルを備える。いくつかの実施形態において、ハンドルはスリーブと一体成形されている。ハンドルを含むよう心臓内装置を構成することの少なくとも1つの利点は、スリーブおよびカニューレを含め、設置システムの剛性が増加し、それによって患者の脈管構造内に心臓内装置をより簡単に入れることが可能になるということである。
【0015】
いくつかの実施形態において、ハンドルは、少なくとも2つの部品から形成され、スリーブから取り外し可能である。例えば、ハンドルの2つの部品は、スリーブを挟持するよう構成されてもよい(例えば、クラムシェルのように)。例えば、2つの部品は、スリーブの周囲で互いにスナップ嵌めされるよう構成されてもよい。いくつかの実施形態において、ハンドルの少なくとも2つの部品は、取り外し可能なピンによってスリーブの周囲で所定の場所に保持される。例えば、ピンを取り外すことによって、2つの別個の構成要素を分離させてスリーブから取り外すことが可能である。いくつかの実施形態において、ハンドルの少なくとも2つの部品は、ハンドルの少なくとも2つの部品のうちの少なくとも1つに螺合する保持リングによって、スリーブの周囲で所定の場所に保持される。いくつかの実施形態において、ハンドルは、止血弁120の近位側に向けて近位から遠位の方向に摺動させた時に分裂する、スリーブ800の周囲で連結される2つの別個の部品として構成されてもよい。2つの部品を有するハンドルの少なくとも1つの利点は、ハンドルをスリーブの両側に分裂させて、スリーブからハンドルを取り外すことができ、それによって挿入処置中のより高いフレキシビリティが可能になるということである。
【0016】
いくつかの実施形態において、心臓内装置設置システムは、スリーブがポンプまたはポンプの一部分の上を自由に摺動することを防止するよう構成された固定機構を含んでもよい。いくつかの実施形態において、固定機構は、第一の非固定位置から第二の固定位置に回転するよう構成されたリングを備え、リングは、第二の固定位置にある時に、スリーブ、細長いカテーテルまたはそれら両方を締め付ける。いくつかの実施形態において、スリーブの一部分の上に位置付けられたハンドルが固定機構を備える。
【0017】
いくつかの実施形態において、固定機構は複数のタブを含み、複数のタブの各タブは、リビングヒンジと、遠位開口部、近位開口部またはそれら両方の中に少なくとも部分的にフィットするよう構成された突出部とを含み、そのため、複数のタブが、遠位開口部、近位開口部またはそれら両方において固定位置にスナップ嵌めされる。タブは、スリーブの近位端の内側に構成されて、固定機構を形成して、スリーブの近位端が止血弁を通過することを防止する。タブは、タブの変形を防止する(すなわち、タブが、湾曲もせず、折れもせず、破断もせず、イントロデューサ内にスリーブが完全に挿入されることを可能にするであろう任意の他の変形も引き起こさないことを保証する)のに十分なほど硬い材料から作製されてもよい。いくつかの実施形態において、タブは、スリーブの遠位部分に径方向内向きの力を適用することによって固定位置から解除されるよう構成される。いくつかの実施形態において、複数のタブの各タブは、固定位置において遠位開口部のうちの1つを覆うようサイズ決めおよび成形され、遠位開口部の各開口部は、複数のタブのうちの1つのタブによって覆われる。いくつかの実施形態において、複数のタブの各タブは、固定位置において近位開口部のうちの1つを覆うようサイズ決めおよび成形され、近位開口部の各開口部は、複数のタブのうちの1つのタブによって覆われる。遠位開口部、近位開口部、または遠位開口部と近位開口部の両方の中に固定するための内側タブを含むことの少なくとも1つの利点は、固定位置が安定した密封を提供し、そのため、挿入中に比較的高い流体圧および力が適用された時に流体が開口部とタブの間から漏出しないということである。
【0018】
いくつかの実施形態において、イントロデューサは、止血弁を有する管状区域を備え、スリーブが近位止血弁を完全に通過することを防止しながら、ポンプおよびスリーブを患者の脈管構造内に導入するよう構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】いくつかの実施形態による、心臓内装置を患者の脈管構造内に導入するよう構成されたイントロデューサを備えた設置システムを示す。
【
図2】いくつかの実施形態による、心臓内装置を患者の脈管構造内に導入するよう構成されたイントロデューサを備えた設置システムを示す。
【
図3】特定の実施形態による、細長いカテーテルの周囲にぴったりフィットするよう構成された先細の内径を有するスリーブを含む設置システムを示す。
【
図4】特定の実施形態による、スリーブの外面から径方向外向きに延びるリップを有するスリーブを含む設置システムを示す。
【
図5】特定の実施形態による、内側リップを有するスリーブを含む設置システムを示す。
【
図6】いくつかの実施形態による、スリーブの外面から径方向外向きに延びる固定機構を有するスリーブを含む設置システムを示す。
【
図7】いくつかの実施形態による、スリーブの外面から径方向外向きに延びる固定機構とハンドルとを有するスリーブを含む設置システムを示す。
【
図8】いくつかの実施形態による、スリーブの外面から径方向外向きに延びる固定機構とハンドルとを有するスリーブを含む設置システムを示す。
【
図9】特定の実施形態による、スリーブの内面から径方向内向きに延びる内側タブを有するスリーブを含む設置システムを示す。
【
図10】特定の実施形態による、止血弁を横切る漏洩を防止するための流れ図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
詳細な説明
本明細書に記載されるシステム、方法および装置の全体的理解を提供するために、特定の例示的態様を記載する。本明細書に記載される態様および特徴は、血液ポンプシステムに関連した使用について具体的に記載されるが、以下に概説されるすべての構成要素および他の特徴は、任意の適切な様式で互いに組み合わされてもよく、かつ、外科的切開を使用して埋め込まれる心臓補助装置などを含む他のタイプの心臓治療法および心臓補助装置に適合および適用されてもよいことが理解されよう。加えて、本明細書にはポンプ要素の適用が血液ポンプに関して記載されているが、該ポンプ要素は、遠位方向へ送られる任意のタイプの流体流が近位方向へ流れて電子的構成要素を損傷させ得る他のポンプに適用されてもよいことが理解されるべきである。本明細書に記載される態様および特徴は心臓内血液ポンプシステムに関連した使用について具体的に記載されるが、本明細書に記載される態様および特徴による血液ポンプシステムは、任意の脈管構造内で、および/または他のシステムと組み合わせて使用されてもよいことが理解されよう。例えば、以下に記載されるスリーブのシステムおよび設置は、尿道もしくは膀胱カテーテル留置システム、右心心臓支援システム、大動脈内バルーンポンプ、体外式膜型人工肺装置、左室補助装置、腎臓の自己調節能を調整するための心臓補助装置などの腎臓支援システム、注入システム、中心静脈カテーテル、または任意の他の適切なシステムにおいて使用されてもよい。
【0021】
図1は、いくつかの実施形態による、心臓内装置122を患者の脈管構造内に導入するよう構成されたイントロデューサ118を備えた設置システムを示す。設置システムは、スリーブ100と、イントロデューサ118と、止血弁120とを含む。
図1は、心臓内装置122がイントロデューサ118内に挿入されているイントロデューサ118の例示的位置付けを示しており、心臓内装置122の遠位端は既にイントロデューサ118の中に入っているのに対して、心臓内装置122の近位端はまだイントロデューサの中に入っていない。イントロデューサ118の近位端が患者の体外に位置しながらイントロデューサ118の遠位端が患者の脈管構造内に位置するように、イントロデューサ118は位置付けられている。イントロデューサ118を患者の脈管構造内に位置付けたら、心臓内装置が患者の脈管構造に入るように該装置をイントロデューサ118の近位端の中に挿入して、イントロデューサ118に通してもよい。
【0022】
心臓内装置は、ポンプ107とカニューレ106とを備える。ポンプ107は、ポンプハウジング109と、ロータ(図示せず)と、近位開口部110と、遠位開口部112とを備え、これはポンプハウジング109の近位に位置付けられている。ポンプは、モータハウジング111内のモータによって作動されるよう構成されている。細長いカテーテル114は、その遠位端においてモータハウジング111に連結されている。細長いカテーテル114はその内部に中心ルーメンを画定している。いくつかの実施形態において、細長いカテーテル114はポンプハウジング109に連結されてもよい。カニューレ106の近位端はポンプハウジング109の遠位端に接続する。カニューレ106の遠位端は、遠位開口部112を画定するポンプ流入ケージに接続する。カニューレ106はその内部にルーメンを画定している。いくつかの実施形態において、装置の動作中、血液が遠位開口部112を通って装置内に流入し、近位開口部110を通って装置から出るように、近位開口部110はポンプ近位開口部であってもよく、遠位開口部112はポンプ遠位開口部であってもよい。可撓性先端部116は、遠位開口部112を画定する流入ケージの遠位端より遠位に位置付けられている。心臓内装置は、その中を通る少なくとも1つのルーメンを画定しており、すなわち、細長いカテーテル114の中心ルーメンは、装置の動作中に、カニューレ106の内部ルーメンと流体連通していてもよい(例えば、以下に記載されるもののようなパージシステムを介して)。
【0023】
いくつかの実施形態において、
図1に示されるように、モータは「内臓」されており、ポンプの動作中に患者の体内に位置していてもよく、ポンプを駆動するためにモータに電力を伝送する電気リード線と共に構成されていてもよい。あるいは、モータは患者の体外に位置することができ、駆動シャフト、駆動ケーブルまたは動力伝達装置を介してロータを作動させることができる。例えば、モータは、心臓内装置のハンドル内に位置してもよい。いくつかの例において、駆動ケーブルは、細長いカテーテル本体114を通って、カニューレ106の近位端の近くに位置するロータまで延びてもよい。いくつかの実施形態において、駆動シャフト、駆動ケーブルまたは動力伝達装置は、パージ流体送達システムと組み合わせて動作する。
【0024】
イントロデューサ118は止血弁120を備える。止血弁120は、イントロデューサ118の一部であり、医療装置を挿入されるよう、および挿入した医療装置からインライン(in-line)で取り外し可能であるよう設計される。心臓内装置は、遠位開口部112が止血弁120の遠位にありかつ近位開口部110が止血弁120の近位にあるように、止血弁120を横切って位置付けられる。この構成は、例えば、患者の脈管構造内への心臓内装置の挿入中、止血弁120に装置を通過させる時に生じ得る。
【0025】
いくつかの実施形態において、パージ流体は、ポンプ内への血液細胞の進入を防止するようポンプを通って流れてもよい。代替的に、または追加的に、パージ流体は、ポンプの軸受(図示せず)のための潤滑剤として、またはモータステータの電磁モータコイルによって生じる熱を放散するための冷却剤として機能してもよい。パージ流体は、潤滑剤、冷却剤、薬物、または任意の適切な血液適合性流体であってもよい。例えば、パージ流体は、生理食塩水、リンガー液、グルコース溶液、ヘパリン、または任意の他の適切な流体であってもよい。パージ流体は、ポンプ107の動作中に血液がモータハウジング111に入ることを防止する。パージ流体はまた、細長いカテーテル本体114内への血液の進入も防止し得る。いくつかの実施形態において、グルコース溶液などの高粘性のパージ流体は、ポンプ107の内部の軸受を潤滑するために使用される。他の実施形態において、薬理学的作用物質がパージ流体として使用されて、ポンプから血液をパージするとともに医療目的を果たす。例えば、パージ流体は、血液凝固を防止するためにヘパリンを含んでもよい。パージ流体は、細長いカテーテル本体114のルーメンを通って流れ、近位開口部110においてポンプ107から流出する。パージ流体は、患者の血流内に安全に分散する。
【0026】
いくつかの実施形態において、患者の脈管構造内への心臓内装置の挿入中、止血弁120に装置を通過させる時に、流体が遠位から近位の方向に流れることを可能にする流路が存在する。これは特に、例えば、大腿部挿入の際よりも血圧が高い、心臓内装置の補助的挿入について当てはまる。
【0027】
例えば、挿入中、2つの顕著な漏洩路が存在する。これらの漏洩経路は、装置がイントロデューサ118を通して近位から遠位の方向に挿入される時に形成される。第一の漏洩経路は、挿入中、可撓性先端部116が止血弁120の遠位に位置付けられ、近位開口部110と遠位開口部112が両方とも止血弁120の近位にある時に生じる。可撓性先端部116を通って遠位開口部112に至るルーメンは、流体が止血弁120を通って漏洩する経路を形成し得る。第二の漏洩経路は、挿入中、遠位開口部112は止血弁120の遠位にあるが近位開口部110は止血弁120の近位にある時に生じる。血液などの体液が、遠位開口部112を通り、カニューレ106を通って、近位開口部110から流出し得る。第一の通路は
図1に関連して示し/取り上げ、第二の通路は
図2に関連して示し/取り上げる。
【0028】
図1は、挿入中、遠位開口部が遠位にありかつ近位開口部が止血弁の近位にあって、それにより第一のタイプの漏洩路が形成されている時の心臓内装置を示す。この構成は、例えば、患者の脈管構造内への心臓内装置の挿入中、止血弁120に装置を通過させる時に生じ得る。スリーブ100は、近位開口部110を覆っている。流体が遠位開口部112を通ってカニューレ106を介して近位開口部110まで流れ、近位開口部110を通して心臓内装置から漏出することができないように、スリーブ100は、近位開口部110を覆っている。
【0029】
いくつかの構成において、例えば、可撓性先端部116が患者の脈管構造と流体連通し得るように、可撓性先端部116は止血弁120の遠位にある。遠位開口部112は止血弁120の近位にあってもよく、そのため、遠位開口部112は可撓性先端部116に対して止血弁120の反対側にある。可撓性先端部116の直径は遠位開口部112の直径よりも小さく、それによって心臓内装置と止血弁120との間に開口部が形成されるため、この接続部において、流体(例えば、パージ流体、血液、体液)が止血弁120から近位方向に流出する経路が開き得る。スリーブ100は、可撓性先端部116と遠位開口部110との間の直径の変化によって形成された開口部を通して流体が流れることができないように、近位開口部110および遠位開口部112を覆っている。
図1~2において示されるように、心臓内装置はイントロデューサ118に完全に入ることはできない(すなわち、心臓内装置の一部分(例えば、細長いカテーテル114の近位端)は常に止血弁120およびイントロデューサ118の近位にある)。スリーブ100を含むよう心臓内装置を構成することの少なくとも1つの利点は、イントロデューサ118を介して止血弁120から流体が漏出することを防止するということである。少なくとも1つの別の利点は、設置システムの剛性が増加し(特に、カニューレ106の剛性)、それによって患者の脈管構造内に心臓内装置をより簡単に入れることが可能になるということである。
【0030】
以下に記載される様々な実施形態において、スリーブ100が止血弁120を通過することは効果的に阻止される。いくつかの構成において、例えば、スリーブ100は、スリーブ100が止血弁120を通過することを阻止する外側リップ(
図4に示され、以下に記載される)または固定機構(
図6に示され、以下に記載される)を有してもよい。スリーブおよび設置システムの様々な実施形態を、
図2~9に関連して以下でさらに記載する。
【0031】
図2は、いくつかの実施形態による、挿入中、可撓性先端部が遠位にありかつ遠位開口部が止血弁の近位にあって、それにより第一のタイプの漏洩路が形成されている時の心臓内装置を示す。スリーブ100は、近位開口部110を覆っている。流体が遠位開口部112を通ってカニューレ106を介して近位開口部110まで流れ、近位開口部110を通して心臓内装置から漏出することができないように、スリーブ100は、近位開口部110を覆っている。この構成は、例えば、患者の脈管構造内への心臓内装置の挿入中に生じ、心臓内装置を挿入している者が挿入中に流体のしぶきを浴びることを防止し得る。スリーブ100の近位端は、カテーテル114の周囲にぴったりフィットするように先細になっている。例えば、スリーブ100の先細の近位端は、スリーブ100の近位端とカテーテル114との間に流体密封結合を形成するためにOリングを含んでもよい。この構成は、例えば、液体がカテーテル110の近位端とスリーブ100の近位端との結合点から流出しないことを保証し得る。いくつかの実施形態において、スリーブ100は、心臓内装置上に摺動可能に配置されてもよい。スリーブ100は、熱可塑性物質、または任意の他の適切な材料から作製されてもよい。
【0032】
図3は、特定の実施形態による、細長いカテーテル314の周囲にぴったりフィットするよう構成された先細の内径を有するスリーブ300を示す。設置システムは、外径301および内径303を有するスリーブ300と、細長いカテーテル314と、近位開口部110とを含む。スリーブ300は、断面を有するルーメンを有する。いくつかの実施形態において、ルーメンの断面は、より広い遠位端からより狭い近位端へと、先細になってもよい。流体がスリーブ300の近位端と細長いカテーテル314との接続点から漏出することを防止するために、ルーメンは、より狭い近位端が細長いカテーテル314の周囲にぴったりフィットするように先細になってもよい。
図3に示されているように、いくつかの実施形態において、スリーブ300の外径301は一定であってもよい。いくつかの実施形態において、スリーブ300の外径301は、スリーブ300の内径303と同じ方向または反対方向に先細になってもよい。例えば、いくつかの構成において、スリーブ300の外径301は、スリーブ300の内径303が先細になるのと同じ角度で先細になってもよく、それによりスリーブ300は全体にわたって一定の幅を有することが可能になる。
【0033】
いくつかの実施形態において、先細り部305は、スリーブ全体にわたって延びている。例えば、スリーブ300の内径303は、より広い遠位端からより狭い近位端へと、直線的に先細になってもよい。遠位開口部が、摩擦(例えば、スリーブ300の遠位端と遠位開口部110との接触によって引き起こされる摩擦)を伴わずに、スリーブ300を通って遠位方向に摺動し得るように、スリーブ300の内径303は遠位開口部110の直径より大きくてもよい。
【0034】
いくつかの実施形態において、内径303の一部分だけが先細になっている。例えば、いくつかの構成において、内径303はスリーブの中間点から先細になり始めてもよい。別の例としては、いくつかの構成において、内径303は、止血弁120より近位のスリーブの内側に心臓内装置全体がフィットし得るような位置から、先細になり始める場合がある。
【0035】
図4は、特定の実施形態による、外径401と内径403とを有するスリーブ400の外面から径方向外向きに延びるリップ402を有するスリーブ400を示す。リップ402は、スリーブ400の近位端の上に構成されており、スリーブ400の近位端が止血弁120を通過することを防止する。リップ402は、スリーブ400と同じ材料から作製されてもよい。リップ402は、リップ402の変形を防止する(すなわち、リップ402が、湾曲もせず、折れもせず、イントロデューサ118内にスリーブ400が完全に挿入されることを可能にするであろう任意の他の変形も引き起こさないことを保証する)のに十分なほど硬い材料から作製されてもよい。リップ402の外径は、スリーブ400がイントロデューサ118内に完全に挿入されることをリップ402が防止できるようにする、任意の長さであってもよい。
【0036】
いくつかの構成において、例えば、スリーブ400は
図3のスリーブ300と同様のものであってもよく、スリーブ400の内径403は、細長いカテーテル414の周囲にぴったりフィットするよう先細になっている。スリーブ400の内径は、
図3に関して上で記載した様式で先細になってもよい。
【0037】
図5は、特定の実施形態による、内側リップ502を有するスリーブ500を示す。
図5は、
図3~4の代替実施形態を示しており、先細になっている内径を有するスリーブを有する代わりに、スリーブ500は、2つの異なる直径を有するように構成されている。スリーブ500は、スリーブ500の遠位部分にわたる広い直径と、スリーブ500の近位部分にわたる狭い直径とを有してもよい。狭い直径は、細長いカテーテル514の外径とほぼ等しくてもよく、それによりスリーブ500と細長いカテーテル514との間のぴったりとしたフィットがもたらされる。いくつかの構成において、
図5の実施形態を、
図4に示された実施形態と組み合わせてもよい。
【0038】
図5に示されているように、いくつかの実施形態において、スリーブ500の遠位外径および遠位内径は一定であってもよく、スリーブ500の近位外径および近位内径より広くてもよい。いくつかの構成において、例えば、スリーブ500のより広い遠位直径からより狭い近位直径への移行点は、より広い直径を有するスリーブ部分の中に心臓内装置全体がフィットすることを可能にする、スリーブ500上の場所にあってもよい。
【0039】
図6は、いくつかの実施形態による、スリーブ600の外面から径方向外向きに延びるハンドル602を有するスリーブ600を含む設置システムを示しており、固定機構602(例えば、チューヒー・ボースト(Tuohy Borst)固定機構)を貫通する開口部は、細長いカテーテル614が該開口部を通って滑動するように構成されている。設置システムは、スリーブ600と、固定機構602と、カニューレ606と、細長いカテーテル614とを含む。固定機構602は、イントロデューサ118を介した止血弁120からの流体の漏出を最小限にするように、細長いカテーテル614の周囲にぴったりフィットするよう構成されている。いくつかの構成において、例えば、固定機構602は、固定機構602がスリーブ600または細長いカテーテル614を締め付けて、心臓内装置上をスリーブ600が自由に摺動することを防止するように、固定機構602を回転させる(例えば、時計回りに回転させる)ことによって細長い614の周囲にぴったりフィットするよう構成されてもよい。
【0040】
いくつかの構成において、例えば、固定機構602はスリーブ600から取り外し可能であってもよい。固定機構602は、固定機構がスリーブ600から分離するまで固定機構602を回転させる(例えば、螺脱させる)ことによって、スリーブ600から取り外されてもよい。いくつかの構成において、例えば、固定機構602は、
図8においてさらに記載されるように、摺動動作によって2つの部品に分離してもよい。いくつかの実施形態において、固定機構602は、
図7~8において記載されるように、スリーブ600上で遠位方向に延びるハンドルをさらに含んでもよい。細長いカテーテル614の周囲にぴったりフィットするよう固定機構602を構成することの少なくともいくつかの利点には、漏洩を防止するために、遠位開口部112から近位開口部110へ、止血弁120を通って流れる流体を最小限にすることが含まれる。
【0041】
図7は、スリーブ700の外面から径方向外向きに延びる固定機構702とハンドル704とを有するスリーブ700を含む設置システムを示しており、固定機構702(例えば、チューヒー・ボースト固定機構)を貫通する開口部は、細長いカテーテル714が該開口部を通って滑動するように構成されている。設置システムは、スリーブ700と、固定機構702と、ハンドル704と、カニューレ706と、細長いカテーテル714とを含む。ハンドル704は、固定機構702と同じ材料から作製されてもよい。いくつかの実施形態において、例えば、ハンドル704はスリーブと一体成形されてもよい。いくつかの実施形態において、ハンドル704は、人間工学的にサイズ決めされてもよい(すなわち、人の手がその周囲に快適にフィットし得るようにサイズ決めされてもよい(例えば、鉛筆のグリップのサイズ))。
【0042】
いくつかの構成において、例えば、ハンドル704は取り外し可能であってもよい。例えば、ハンドル704はスリーブ700を挟持するよう構成されてもよい(例えば、クラムシェルのように)。いくつかの構成において、例えば、ハンドル704は、イントロデューサ118が止血弁120から連結解除されるのと同様の様式でスリーブ700から剥がされるよう構成されてもよい。
【0043】
いくつかの構成において、例えば、ハンドル704は、固定機構702に一体化されてもよい。ハンドル704は、連続構造を形成するようにスリーブ固定機構702と同じ材料から作製されてもよい。ハンドル704は、ハンドル704の変形を防止するのに十分なほど硬い材料から作製されてもよい。ハンドル704を含むよう心臓内装置を構成することの少なくとも1つの恩恵は、スリーブ700およびカニューレ706を含め、設置システムの剛性が増加し、それによって患者の脈管構造内に心臓内装置をより簡単に入れることが可能になるということである。
【0044】
図8は、スリーブ800の外面から径方向外向きに延びる固定機構802とハンドル804とを有するスリーブ800を含む設置システムを示しており、固定機構802(例えば、チューヒー・ボースト固定機構)を貫通する開口部は、細長いカテーテル814が該開口部を通って滑動するように構成されている。設置システムは、スリーブ800と、固定機構802と、ハンドル804と、カニューレ806と、細長いカテーテル814とを含む。ハンドル804は、ハンドル804を形成するようスリーブ800の周囲で互いに連結される2つの別個の部品として構成されてもよい。いくつかの実施形態において、例えば、2つの別個の部品は、スリーブ800の周囲で互いにスナップ嵌めされるよう構成されることによって互いに連結されてもよい。いくつかの実施形態において、例えば、2つの別個の部品は、2つのハンドル部品(例えば、ハンドルの2つの半分部分)上に軸方向に螺合するリングを介して、スリーブ800の周囲で互いに連結されてもよい。いくつかの実施形態において、例えば、2つの別個の部品は、2つの半分部分を所定の場所に固定する取り外し可能なピンを介して、スリーブ800の周囲で互いに連結され、所定の場所に保持されてもよい。ピンを取り外すことによって、2つの別個の部品を分離させてスリーブ800から取り外すことが可能である。いくつかの実施形態において、ハンドル804は、止血弁120の近位側に向かう摺動動作で遠位方向に移動させた時に分裂する、スリーブ800の周囲で連結される2つの別個の部品として構成されてもよい。2つの部品を有するハンドルの少なくとも1つの恩恵は、スリーブからハンドルを取り外すことができ、それによって挿入処置中のより高いフレキシビリティが可能になるということである。
【0045】
図9は、特定の実施形態による、スリーブ900の内面から径方向内向きに延びる内側タブ906を有するスリーブ900を示す。内側タブ906は、スリーブ900の近位端の内側に構成されて、固定機構を形成して、スリーブ900の近位端が止血弁120を通過することを防止する。内側タブ906は、内側タブ906の変形を防止する(すなわち、内側タブ906が、湾曲もせず、折れもせず、破断もせず、イントロデューサ118内にスリーブ900が完全に挿入されることを可能にするであろう任意の他の変形も引き起こさないことを保証する)のに十分なほど硬い材料から作製されてもよい。内側タブ906は1つまたは複数のタブを含んでもよい。内側タブ906の長さは、心臓内装置が内側タブ906の間の開口部を通過することを可能にしながらも、スリーブ900がイントロデューサ118内に完全に挿入されることを内側タブ906が防止できるようにする、任意の長さであってもよい。
【0046】
いくつかの実施形態において、内側タブ906は複数のタブを含み、ここで、各タブは、リビングヒンジと、近位開口部110内にフィットするよう構成された突出部とを含む。いくつかの構成において、例えば、内側タブ906は、近位開口部110において固定位置にスナップ嵌めされるよう構成されてもよい。いくつかの構成において、例えば、内側タブ906は、遠位開口部112において固定位置にスナップ嵌めされるよう構成されてもよい。そして、いくつかの構成において、例えば、内側タブ906は、近位開口部110と遠位開口部112の両方において固定位置にスナップ嵌めされるよう構成されてもよい。内側タブ906は、スリーブ900の遠位部分に径方向内向きの力を適用することによって固定位置から解除されるよう構成されてもよい。
【0047】
いくつかの実施形態において、内側タブ906の各タブは、固定位置にある時に遠位開口部112または近位開口部110において開口部を覆うよう、サイズ決めおよび成形されてもよい。いくつかの構成において、例えば、遠位開口部112または近位開口部110における各開口部は、複数の内側タブ906のうちの1つのタブによって覆われてもよい。内側タブ906を含むことの少なくとも1つの利点は、内側タブが、遠位開口部112、近位開口部110、または遠位開口部112と近位開口部110の両方の中に固定された時に、止血弁120の近位側から流体が流出することを防止するので、流体漏洩物が止血弁120から流出することが防止されるということである。遠位開口部112、近位開口部110、または遠位開口部112と近位開口部110の両方の中に固定するための内側タブ906を含むことの少なくとも1つのさらなる利点は、固定位置が非常に安定した密封を提供し、そのため、挿入中に高い圧力および力が適用された時に流体が止血弁から漏出しないということである。
【0048】
図10は、特定の実施形態による、止血弁を横切る漏洩を防止するための流れ図を示す。方法1000は、心臓内装置の細長いカテーテルを覆うようスリーブを設置する工程1002から開始される。
図1~9に関して上で記載したように、スリーブは心臓内装置の周囲にぴったりフィットするよう構成されている。例えば、
図3~4に関して上で記載したように、スリーブは、スリーブの近位端において細長いカテーテルとのぴったりとした接続がもたらされるよう先細になっていてもよい。別の例としては、
図6~9に関して上で記載したように、スリーブは、カテーテルの近位端において細長いカテーテル上に固定するよう構成された固定機構を有してもよい。工程1002に続いて、工程1004において、止血弁の近位側から入れて、止血弁の遠位側を通して出し、イントロデューサの遠位端を止血弁に通して設置する。心臓内装置を患者の脈管構造内に案内するために、イントロデューサを止血弁に通して位置付ける。この過程は、上で記載したように、
図1~2において例示されている。流体が遠位開口部からカニューレおよび近位開口部を通って止血弁の遠位側に向かって移動する工程1006において、
図1に関して記載したように、潜在的な漏洩路が存在する。例えば、
図1に関連して上で議論したように、潜在的な漏洩経路は、挿入中、可撓性先端部が止血弁の遠位に位置付けられ、近位開口部と遠位開口部が両方とも止血弁の近位にある時に生じる。可撓性先端部を通って遠位開口部に至るルーメンは、流体が止血弁を通って漏洩する経路を形成し得る。別の例としては、
図2に関連して上で議論したように、潜在的な漏洩経路は、挿入中、遠位開口部が止血弁の遠位にあり、近位開口部が止血弁の近位にある時に生じる。流体は遠位開口部を通り、カニューレを通って、近位開口部から流出し、流体が止血弁を通って漏洩する経路を形成する。スリーブは、前記流体が止血弁から流出することを阻止し、流体がイントロデューサを介して止血弁から漏出する(および噴き出す)ことを防止する。工程1008において、心臓内装置を患者の脈管構造内に挿入した後、イントロデューサの近位端を止血弁から取り外す。方法1000の工程は特定の順番で記載されているが、任意の順番でこれらの工程を完了することができる。
【0049】
以上は本開示の原理を例示したものにすぎず、本機器は、限定ではなく例示の目的で提示された本説明の局面以外によっても実施され得る。本明細書に開示される機器は、血液ポンプの経皮的挿入における使用について示したが、止血を必要とする他の用途における機器に適用されてもよいことが理解されるべきである。
【0050】
当業者は、本開示の検討後に変形形態および修正形態を思い付くであろう。開示された特徴は、本明細書に記載される1つまたは複数の他の特徴との、任意の組み合わせおよび部分的組み合わせ(複数の従属的な組み合わせおよび部分的組み合わせを含む)で実装されてもよい。上で説明または例示した様々な特徴は、その任意の構成要素も含めて、他のシステムに組み合わされるかまたは統合されてもよい。さらに、特定の特徴が省略されるかまたは実装されなくてもよい。
【0051】
変更、置換、および改変の例は当業者によって確認可能であり、かつ、本明細書に開示される情報の範囲から逸脱することなく行われ得る。本明細書に引用されるすべての参考文献は、全体として参照により組み入れられ、かつ本出願の一部をなす。