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特許7572356アルミナ粉末、樹脂組成物、放熱部品、及び被覆アルミナ粒子の製造方法
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  • 特許-アルミナ粉末、樹脂組成物、放熱部品、及び被覆アルミナ粒子の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】アルミナ粉末、樹脂組成物、放熱部品、及び被覆アルミナ粒子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01F 7/021 20220101AFI20241016BHJP
   C01B 21/072 20060101ALI20241016BHJP
   C08K 9/02 20060101ALI20241016BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
C01F7/021
C01B21/072 G
C08K9/02
C08L101/00
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021522835
(86)(22)【出願日】2020-05-27
(86)【国際出願番号】 JP2020020996
(87)【国際公開番号】W WO2020241716
(87)【国際公開日】2020-12-03
【審査請求日】2023-05-15
(31)【優先権主張番号】P 2019101604
(32)【優先日】2019-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100127247
【弁理士】
【氏名又は名称】赤堀 龍吾
(74)【代理人】
【識別番号】100152331
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 拓
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 修治
(72)【発明者】
【氏名】中園 淳一
(72)【発明者】
【氏名】田上 将太朗
【審査官】森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-162555(JP,A)
【文献】国際公開第2011/093488(WO,A1)
【文献】特開2017-114706(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 21/00 - 21/50
C01F 7/00 - 7/788
C08L 101/00
C08K 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミナ粒子と、前記アルミナ粒子を被覆する被覆層とを有し、顕微鏡法による投影面積円相当径が1μm以上300μm以下である被覆アルミナ粒子を含有するアルミナ粉末であって、
前記被覆層は窒化アルミニウムを含み、
前記被覆アルミナ粒子の平均球形度が0.85以上0.97以下であり、
レーザー回折散乱式粒度分布測定機によって測定された、前記被覆アルミナ粒子の平均粒子径が72μm以上150μm以下であり、
前記被覆アルミナ粒子中の窒化アルミニウムの含有率が15質量%以上40質量%以下である、
アルミナ粉末。
【請求項2】
前記アルミナ粉末は、レーザー回折散乱法による体積基準頻度粒度分布において、粒子径が2μm以上200μm以下の粒度域に、複数のピークを有する、請求項1に記載のアルミナ粉末。
【請求項3】
前記被覆アルミナ粒子において、球形度が0.80以下である被覆アルミナ粒子の割合が個数基準で15%以下である、請求項1又は2に記載のアルミナ粉末。
【請求項4】
前記アルミナ粉末中の、アルミナと窒化アルミニウムとの合計の含有率が80質量%以上である、請求項1~のいずれか一項に記載のアルミナ粉末。
【請求項5】
前記被覆アルミナ粒子中の炭素量が0.3質量%以下である、請求項1~のいずれか一項に記載のアルミナ粉末。
【請求項6】
樹脂と、請求項1~のいずれか一項に記載のアルミナ粉末とを含む、樹脂組成物。
【請求項7】
前記樹脂が、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、及びアクリル樹脂からなる群より選ばれる少なくも1種を含む、請求項に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1~のいずれか一項に記載のアルミナ粉末、又は請求項若しくはに記載の樹脂組成物を含む、放熱部品。
【請求項9】
覆アルミナ粒子の製造方法であって、
前記被覆アルミナ粒子が、アルミナ粒子と、前記アルミナ粒子を被覆する被覆層とを有し、顕微鏡法による投影面積円相当径が1μm以上300μm以下であり、前記被覆層は窒化アルミニウムを含み、前記被覆アルミナ粒子の平均球形度が0.85以上0.97以下であり、
前記製造方法が、原料のアルミナ粉末と炭素粉末とを含む混合物を、窒素ガスを含む還元雰囲気下にて、1500℃以上1700℃以下の温度で焼成して、第1焼成粉末を得る第1工程と、
前記第1焼成粉末を、大気雰囲気下にて、600℃以上900℃以下の温度で更に焼成して前記被覆アルミナ粒子を得る第2工程と、を含み、
前記炭素粉末の平均粒子径が30nm以上70nm以下であり、かさ密度が0.10g/cm以上0.20g/cm以下であり、比表面積が20m/g以上60m/g以下である、製造方法。
【請求項10】
レーザー回折散乱式粒度分布測定機によって測定された、前記被覆アルミナ粒子の平均粒子径が72μm以上150μm以下であり、
前記被覆アルミナ粒子中の窒化アルミニウムの含有率が15質量%以上40質量%以下である、請求項9に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミナ粉末、樹脂組成物、放熱部品、及び被覆アルミナ粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気機器の小型化及び高性能化が進行している。小型化及び高性能化に伴い、電気機器を構成する電子部品の実装密度が高くなってきており、電子部品から発生する熱を効果的に放出させる必要性が高まっている。
【0003】
また、環境負荷の抑制が可能な電気自動車などのパワーデバイス用途においては、電子部品に高電圧が印加されたり、あるいは大電流が流れたりすることがある。この場合、高い熱量が発生し、発生する高い熱量に対処するために、従来よりも効果的に熱を放出させる要求が高まってきている。このような要求に対応するための技術として、例えば、特許文献1には、3種類のアルミナフィラーを含んでなる樹脂組成物が開示されている。また、特許文献2には、球状アルミナ粒子と非球状アルミナ粒子とを含むアルミナ配合粒子と、この粒子を含む樹脂組成物が開示されている。更に、特許文献3には、熱伝導性フィラーとして、アルミナ及び酸窒化アルミニウムの少なくとも一方からなるコアと、前記コアの表面に形成された厚さ1.1μm以上の窒化アルミニウムからなる表面層とを備える窒化アルミニウム系粒子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-164093号公報
【文献】特開2009-274929号公報
【文献】特開2012-41253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1及び2では、アルミナ粒子の比表面積が高く、平均球形度が低く歪な形状を含む等の理由により、樹脂にアルミナ粒子を充填する際に増粘し、アルミナ粒子を高い割合で充填することが難しいという問題を有する。そのため、成形性が低く、また、得られる放熱部品の熱伝導率も低くなる。
【0006】
また、特許文献3では、窒化アルミニウム系粒子をマイクロ波照射により得ているが、この製法では、球状の粒子を得ることができない。よって、上記のとおり、特許文献3に記載の窒化アルミニウム系粒子においても形状が悪いため、樹脂に窒化アルミニウム系粒子を充填する際に増粘し、窒化アルミニウム系粒子の高充填が難しいとの問題を有する。結局、特許文献3に記載の窒化アルミニウム系粒子を用いても、成形性が低く、また、得られる放熱部品の熱伝導率が低くなる。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、樹脂に充填する際に粘度上昇を抑制でき、かつ、その樹脂を含む樹脂組成物の高熱伝導化を実現できる、特定の被覆アルミナ粒子を含むアルミナ粉末、並びにそのアルミナ粉末を含む樹脂組成物、放熱部品、及び被覆アルミナ粒子の製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、特定の被覆アルミナ粒子を含むアルミナ粉末が、樹脂への充填の際に粘度上昇を抑制でき、かつ、そのアルミナ粉末を含むことにより高熱伝導化を実現できる樹脂組成物及び放熱部品を得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1]
アルミナ粒子と、前記アルミナ粒子を被覆する被覆層とを有し、顕微鏡法による投影面積円相当径が1μm以上300μm以下である被覆アルミナ粒子を含有するアルミナ粉末であって、前記被覆層は窒化アルミニウムを含み、前記被覆アルミナ粒子の平均球形度が0.85以上0.97以下である、アルミナ粉末。
[2]
前記アルミナ粉末は、レーザー回折散乱法による体積基準頻度粒度分布において、粒子径が2μm以上200μm以下の粒度域に、複数のピークを有する、[1]に記載のアルミナ粉末。
[3]
前記被覆アルミナ粒子において、球形度が0.80以下である被覆アルミナ粒子の割合が個数基準で15%以下である、[1]又は[2]に記載のアルミナ粉末。
[4]
レーザー回折散乱式粒度分布測定機によって測定された、前記被覆アルミナ粒子の平均粒子径が30μm以上150μm以下である、[1]~[3]のいずれかに記載のアルミナ粉末。
[5]
前記被覆アルミナ粒子中の窒化アルミニウムの含有率が10質量%以上40質量%以下である、[1]~[4]のいずれかに記載のアルミナ粉末。
【0010】
[6]
前記アルミナ粉末中の、アルミナと窒化アルミニウムとの合計の含有率が80質量%以上である、[1]~[5]のいずれかに記載のアルミナ粉末。
[7]
前記被覆アルミナ粒子中の炭素量が0.3質量%以下である、[1]~[6]のいずれかに記載のアルミナ粉末。
[8]
樹脂と、[1]~[7]のいずれかに記載のアルミナ粉末とを含む、樹脂組成物。
[9]
前記樹脂が、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、及びアクリル樹脂からなる群より選ばれる少なくも1種を含む、[8]に記載の樹脂組成物。
【0011】
[10]
[1]~[7]のいずれかに記載のアルミナ粉末、又は[8]若しくは[9]に記載の樹脂組成物を含む、放熱部品。
[11]
[1]に記載の被覆アルミナ粉末の製造方法であって、原料のアルミナ粉末と炭素粉末とを含む混合物を、窒素ガスを含む還元雰囲気下にて、1500℃以上1700℃以下の温度で焼成して、第1焼成粉末を得る第1工程と、前記第1焼成粉末を、大気雰囲気下にて、600℃以上900℃以下の温度で更に焼成して前記被覆アルミナ粒子を得る第2工程と、を含み、前記炭素粉末の平均粒子径が30nm以上70nm以下であり、かさ密度が0.10g/cm以上0.20g/cm以下であり、比表面積が20m/g以上60m/g以下である、製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、樹脂に充填する際に粘度上昇を抑制でき、かつ、その樹脂を含む樹脂組成物の高熱伝導化を実現できるアルミナ粉末、並びにそのアルミナ粉末を含む樹脂組成物、放熱部品、及び被覆アルミナ粒子の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態に係る被覆アルミナ粒子の断面EPMA分析の画像である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について、詳細に説明する。なお、以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明は本実施形態のみに限定されない。
【0015】
[アルミナ粉末]
本実施形態のアルミナ粉末は、後述する本実施形態に係る被覆アルミナ粒子の1種又は2種以上を含む。本実施形態のアルミナ粉末は、後述のように、上記被覆アルミナ粒子以外のフィラー、特に無機フィラーを含んでもよい。本実施形態のアルミナ粉末は、上記被覆アルミナ粒子以外のフィラーであって、無機フィラー以外のフィラーを含む場合は、アルミナ粉末というよりも単なる粉末と称されるべきである。また、本実施形態のアルミナ粉末は、上記被覆アルミナ粒子以外の無機フィラーを含む場合(ただし、無機フィラー以外のフィラーを含まない。)は、無機粉末と称されるべきである。ただし、本明細書において、「アルミナ粉末」は、それらを包含する概念で用いられる。
【0016】
(被覆アルミナ粒子)
本実施形態に係る被覆アルミナ粒子は、アルミナ粒子と、そのアルミナ粒子を被覆し、窒化アルミニウムを含む被覆層とを有し、顕微鏡法による投影面積円相当径が1μm以上300μm以下であり、平均球形度は0.85以上0.97以下である。以下、特に説明しない限り、本実施形態に係る被覆アルミナ粒子を単に「被覆アルミナ粒子」ともいう。
【0017】
被覆アルミナ粒子は、後述する原料のアルミナ粉末(以下、単に「原料アルミナ粉末」という。)に含まれるアルミナ粒子に由来する。
【0018】
被覆層に窒化アルミニウムを含む被覆アルミナ粒子を含む本実施形態のアルミナ粉末を樹脂組成物及び放熱部品に用いることにより、後述の平均球形度を所定の数値範囲にすることと相まって、特に樹脂組成物及び放熱部品の熱伝導性が高くなる。なお、被覆層は、被覆層を生成する過程で生じる酸窒化アルミニウムなどの不可避成分を含んでいてもよい。
【0019】
本実施形態に係る被覆層の厚さは、0.8μm以上12μm以下であることが好ましく、1.5μm以上7.5μm以下であることが、樹脂に充填する際に粘度上昇を好適に抑制でき、あるいは、その樹脂を含む樹脂組成物の高熱伝導化をより実現できるため、より好ましい。被覆アルミナ粒子における被覆層の厚さが上記範囲内にあるアルミナ粉末を用いると、熱経路を効率的に形成でき、熱を十分に伝導させることができる傾向にある。被覆層の厚さは、実施例に記載の方法で測定される。
【0020】
本実施形態に係る被覆アルミナ粒子は、下記の顕微鏡法による投影面積円相当径が1μm以上300μm以下であり、平均球形度が0.85以上0.97以下である。被覆アルミナ粒子の平均球形度が上記範囲にあるような球状であると、樹脂に被覆アルミナ粒子を充填する際に増粘しにくくなる。本実施形態のアルミナ粉末が、この被覆アルミナ粒子を含むことで、高い割合でアルミナ粉末を樹脂に充填することが可能となる。その結果、樹脂中において熱経路を効率よく良好に形成でき、高熱伝導性の樹脂組成物及び放熱部品を得ることができる。その平均球形度は、樹脂に充填した際の摩擦抵抗低下、及び粒子同士の接触面積増加の点から、0.87以上0.96以下であることが好ましく、0.89以上0.95以下であることがより好ましい。本実施形態のアルミナ粉末が、上記範囲にある上記平均球形度を有する被覆アルミナ粒子を含むことにより、樹脂中において、被覆アルミナ粒子を含むアルミナ粉末の流動性をより向上させ、樹脂との摩擦抵抗が低下し、樹脂にアルミナ粉末を充填する際の粘度上昇を抑制することができる。また、被覆アルミナ粒子を含むアルミナ粒子同士の接触がより十分になり、接触面積が大きくなる結果、熱経路を効率よく形成できるため、より高熱伝導性の樹脂組成物及び放熱部品を得ることができる傾向にある。平均球形度は、例えば、下記の顕微鏡法により測定される。すなわち、走査型電子顕微鏡、及び透過型電子顕微鏡等にて撮影した粒子像を画像解析装置に取り込み、写真から粒子の投影面積(A)と周囲長(PM)を測定する。その周囲長(PM)と同一の周囲長を持つ真円の面積を(B)とすると、その粒子の球形度はA/Bとなる。よって、試料の周囲長(PM)と同一の周囲長を持つ真円を想定すると、PM=2πr、B=πrであるから、B=π×(PM/2π)となり、個々の粒子の球形度は、球形度=A/B=A×4π/(PM)となる。投影面積円相当径が1μm以上300μm以下である任意の粒子200個の球形度を上記のようにして求め、その相加平均値を平均球形度とする。なお、具体的な測定方法は、実施例に記載のとおりである。また、投影面積円相当径は、粒子の投影面積(A)と同一の投影面積を持つ真円の直径を指す。
【0021】
本実施形態のアルミナ粉末は、本実施形態に係る被覆アルミナ粒子において、球形度が0.80以下である被覆アルミナ粒子の割合が、個数基準で15%以下であることが好ましく、個数基準で10%以下であることがより好ましい。球形度が0.80以下である被覆アルミナ粒子の割合が個数基準で15%以下ということは、樹脂にアルミナ粉末を充填する際に増粘を引き起こす合着粒子や割れ粒子が少ない被覆アルミナ粒子を含むアルミナ粉末であることを意味し、その点で好ましい。また、装置及び金型の摩耗を低減できる傾向にある。その被覆アルミナ粒子の割合は、例えば、個数基準で0.5%以上である。また、顕微鏡法による投影面積円相当径は、通常、200μm以下である。
【0022】
本実施形態のアルミナ粉末は、本実施形態に係る被覆アルミナ粒子において、球形度が0.80を超えて0.83以下である被覆アルミナ粒子の割合が、個数基準で10%以下であることが好ましく、個数基準で5%以下であることがより好ましい。球形度が上記範囲にある被覆アルミナ粒子の割合が10%以下であるということは、樹脂にアルミナ粉末を充填する際に増粘を引き起こす合着粒子や割れ粒子がより少ない被覆アルミナ粒子を含むアルミナ粉末であることを意味し、その点で好ましい。また、装置及び金型の摩耗を低減できる傾向にある。その被覆アルミナ粒子の割合は、例えば、個数基準で0.5%以上である。また、顕微鏡法による投影面積円相当径は、通常、200μm以下である。
【0023】
本実施形態に係る被覆アルミナ粒子は、被覆アルミナ粒子を含むアルミナ粉末同士の接触がより良好となり、熱経路を効率よく良好に形成でき、より高熱伝導性の樹脂組成物及び放熱部品を得ることができる傾向にあり、更に樹脂組成物とした際の表面平滑性の観点から、平均粒子径が30μm以上150μm以下であることが好ましく、30μm以上130μm以下であることがより好ましく、40μm以上120μm以下であることがより好ましい。平均粒子径が30μm以上であると、樹脂組成物及び放熱部品中において、熱経路をより効率的に形成でき、熱をより十分に伝導させることができる傾向にある。また、平均粒子径が150μm以下であると、放熱部品における表面の平滑性が更に向上し、放熱部品と熱源との界面における熱抵抗が減少するため、熱伝導率をより十分に向上させることができる傾向にある。なお、本実施形態において、粒子径及び平均粒子径は、レーザー回折散乱式粒度分布測定機によって測定される。具体的な測定方法は、実施例に記載のとおりである。
【0024】
本実施形態に係る被覆アルミナ粒子中の窒化アルミニウムの含有率は、10質量%以上40質量%以下であることが好ましく、樹脂組成物の高熱伝導化をより実現できるため、15質量%以上35質量%以下であることがより好ましい。窒化アルミニウムの含有率が上記範囲内にある被覆アルミナ粒子を用いると、熱経路をより効率的に形成でき、熱をより十分に伝導させることができる傾向にある。その含有率が10質量%以上であると、窒化アルミニウムの被覆層がより厚くなるため、窒化アルミニウムを被覆したことによる熱導電率向上の効果が更に高まる傾向にある。その含有率が40質量%以下であると、被覆層の微小な凹凸を一層少なくできるため、樹脂組成物及び放熱部品の成形性が更に向上し、放熱部品において空隙をより低減できる傾向にある。窒化アルミニウムの含有率は、実施例に記載の方法で測定される。
【0025】
本実施形態に係る被覆アルミナ粒子中の炭素量は、0.3質量%以下であることが好ましく、0.2質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以下であることが更に好ましい。また、その被覆アルミナ粒子中の炭素量は、例えば、0.01質量%以上である。炭素量が上記範囲にあることにより、より良好な熱伝導性を有する傾向にあり、導電物である炭素を可能な限り低減させている点から、高い絶縁性、及び熱伝導率を有する樹脂組成物及び放熱部品をより有効かつ確実に得ることができる。被覆アルミナ粒子中の炭素量は、実施例に記載の方法で測定される。また、被覆アルミナ粒子中の炭素は、主として、原料アルミナ粉末と混合する炭素粉末に由来する。炭素粉末は、後述の被覆アルミナ粒子の製造方法にて説明するとおり、本実施形態に係る被覆アルミナ粒子を製造する際に用いられる。
【0026】
本実施形態に係る被覆アルミナ粒子の比表面積は、0.02m/g以上0.15m/g以下であることが好ましく、0.03m/g以上0.12m/g以下であることがより好ましい。比表面積が、上記範囲にあると、樹脂に特定の被覆アルミナ粒子を含むアルミナ粉末を充填する際の粘度上昇を抑制しやすく、より高熱伝導性の樹脂組成物及び放熱部品を得ることができるという効果を奏する。なお、本実施形態において、比表面積はBET流動法により測定され、具体的な測定方法は、実施例に記載のとおりである。
【0027】
(アルミナ粉末)
本実施形態のアルミナ粉末において、アルミナと窒化アルミニウムとの合計の含有率は、80質量%以上であることが好ましく、85質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが更に好ましく、99質量%以上であることが更により好ましい。その合計の含有率の上限は、例えば、100質量%である。アルミナと窒化アルミニウムとの合計の含有率が上記範囲内にあるアルミナ粉末は、熱経路を阻害する傾向にある酸窒化アルミニウムなどの不可避成分が更に少なくなっているため、より高熱伝導性の樹脂組成物及び放熱部品を得ることができる傾向にある。アルミナと窒化アルミニウムとの合計の含有率は、実施例に記載の方法で測定される。
【0028】
本実施形態のアルミナ粉末は、レーザー回折散乱法による体積基準頻度粒度分布において、粒子径が2μm以上200μm以下の粒度域に、複数のピークを有することが好ましい。これにより、本実施形態のアルミナ粉末が樹脂に効率よく充填されることで熱経路を形成でき、高熱伝導化が実現でき、更に樹脂組成物の粘度上昇が抑制される。ここで、本実施形態において、ピークとは、レーザー回折散乱法による体積基準頻度粒度分布において、0.01μm以上3500μm以下の粒径範囲を100に分割して、その粒径範囲に検出される極大点を称する。また、検出されるピークにおいて、ショルダーがある場合には、そのショルダーもピークとしてカウントする。ショルダーとは、二次微分係数から与えられるピークの曲率で検出され、ピーク中に変曲点を有すること、すなわち、特定粒径の粒子成分がより多く存在することを意味する。
【0029】
本実施形態のアルミナ粉末は、レーザー回折散乱法による体積基準頻度粒度分布において、粒子径が0.01μm以上3500μm以下の粒度域に、被覆アルミナ粒子に由来するピークを1つ以上有することになる。本実施形態のアルミナ粉末は、レーザー回折散乱法による体積基準頻度粒度分布において、粒子径が0.01μm以上3500μm以下の粒度域に、本実施形態に係る被覆アルミナ粒子に由来する複数のピークを有してもよい。
【0030】
このような粒度分布を有するアルミナ粉末は、例えば、それぞれ上記の粒度域に1つのピークを有し、かつ互いに平均粒子径の異なる2種以上の被覆アルミナ粒子を含むことで得られる。
【0031】
更に、本実施形態のアルミナ粉末には、本実施形態に係る被覆アルミナ粒子以外のフィラーを含んでもよい。この場合においても、通常、レーザー回折散乱法による体積基準頻度粒度分布において、粒子径が0.01μm以上3500μm以下の粒度域に、本実施形態に係る被覆アルミナ粒子に由来するピークと、その被覆アルミナ粒子以外のフィラーに由来するピークとの、2つ以上のピークが検出されることになる。フィラーとしては、例えば、無機フィラーが挙げられる。具体的には、本実施形態に係る被覆アルミナ粒子以外の被覆アルミナ粒子、被覆層を有しない(すなわち、未被覆の)アルミナ粒子、マグネシア、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、酸化イットリウム、窒化ホウ素、酸化カルシウム、酸化鉄、及び酸化ホウ素が挙げられる。なお、本実施形態のアルミナ粉末は、上述のように、窒化アルミニウムを始めとするアルミナ以外の無機材料も含むものであるので、その点では、無機粉末に相当するものである。
【0032】
被覆アルミナ粒子以外の被覆アルミナ粒子としては、例えば、アルミナ粒子と、そのアルミナ粒子を被覆する被覆層とを有し、顕微鏡法による投影面積円相当径が1μm未満である被覆アルミナ粒子が挙げられる。この場合の被覆層としては、例えば、窒化アルミニウム、及び窒化ケイ素が挙げられる。
【0033】
また、本実施形態に係る被覆アルミナ粒子以外の被覆アルミナ粒子として、アルミナ粒子と、そのアルミナ粒子を被覆する被覆層とを有し、顕微鏡法による投影面積円相当径が1μm以上300μm以下である被覆アルミナ粒子であって、被覆層として窒化アルミニウムを含まない被覆アルミナ粒子が挙げられる。この場合の被覆層としては、例えば、窒化ケイ素が挙げられる。
【0034】
これらのフィラーは、公知のシランカップリング剤などを用いて表面処理されたフィラーであってもよい。
本実施形態のアルミナ粉末には、本実施形態に係る被覆アルミナ粒子と共に、これらのフィラーが1種又は2種以上含まれていてもよい。
【0035】
本実施形態のアルミナ粉末において、そのアルミナ粉末の全量に対して、本実施形態に係る被覆アルミナ粒子の含有量が、20体積%以上80体積%以下であることが好ましく、25体積%以上75体積%以下であることがより好ましい。なお、本実施形態において、アルミナ粉末中に、互いに平均粒子径の異なる2種以上の本実施形態に係る被覆アルミナ粒子を含む場合には、その被覆アルミナ粒子の含有量は、これらの合計量とする。上記の範囲内で被覆アルミナ粒子が含まれることにより、本実施形態に係るアルミナ粉末は、樹脂に充填する際に粘度上昇をより抑制でき、かつ、その樹脂を含む樹脂組成物の高熱伝導化をより実現できる。
【0036】
また、本実施形態のアルミナ粉末において、熱伝導率向上の点から、そのアルミナ粉末の全量に対して、本実施形態に係る被覆アルミナ粒子、本実施形態に係る被覆アルミナ粒子以外の被覆アルミナ粒子、及び未被覆のアルミナ粒子(以下、「被覆アルミナ粒子等」と称す。)の合計の含有量が、80体積%以上100体積%以下であることが好ましく、85体積%以上100体積%以下であることがより好ましい。上記の範囲内で被覆アルミナ粒子等が含まれることにより、本実施形態に係るアルミナ粉末は、樹脂組成物の高熱伝導化の効果を奏する。
【0037】
本実施形態のアルミナ粉末は、粒子径が2μm以上200μm以下の粒度域に、上述のように、複数、すなわち2以上のピークを有することが好ましく、2以上4以下のピークを有することがより好ましく、3つのピークを有することが更に好ましい。なお、それぞれのピークについて、レーザー回折散乱法による体積基準頻度粒度分布において、粒子径が0.01μm以上3500μm以下の粒度域における微粒側(すなわち、0.01μm側)から、検出される1番目のピークを有する粒子を第1の粒子、2番目のピークを有する粒子を第2の粒子として、順次n番目のピークを有する粒子を第nの粒子とする。すなわち、検出されるピーク数はnとなる。検出される粒子は、本実施形態に係る被覆アルミナ粒子だけであってもよく、それに加えてその被覆アルミナ粒子以外のフィラーであってもよいが、本実施形態に係る被覆アルミナ粒子以外のフィラーは、本実施形態に係る被覆アルミナ粒子以外の被覆アルミナ粒子及び未被覆のアルミナ粒子のうちの1種以上であることが好ましい。
【0038】
本実施形態のアルミナ粉末では、ピーク数nが2の場合、第1の粒子に由来するピークの位置は、3μm以上15μm以下の粒度域に検出され、第2の粒子に由来するピークの位置は、30μm以上150μm以下の粒度域に検出されることが好ましい。また、第2の粒子が本実施形態に係る被覆アルミナ粒子であることが好ましく、それに加えて、第1の粒子が未被覆のアルミナ粒子であることがより好ましい。
本実施形態のアルミナ粉末における第1の粒子の含有率は、樹脂組成物の粘度上昇抑制の観点から、25体積%以上55体積%以下であり、30体積%以上50体積%以下であることが好ましく、35体積%以上45体積%以下であることがより好ましい。第2の粒子の含有率は、樹脂組成物の粘度上昇抑制の観点から、45体積%以上75体積%以下であり、50体積%以上70体積%以下であることが好ましく、55体積%以上65体積%以下であることがより好ましい。なお、第1の粒子と第2の粒子との合計を100体積%とする。
また、第1の粒子の平均粒子径は、樹脂組成物の粘度上昇抑制の観点から、4.0μm以上12μm以下であることが好ましく、5.0μm以上10μm以下であることがより好ましい。第2の粒子の平均粒子径は、樹脂組成物の粘度上昇抑制の観点から、35μm以上140μm以下であることが好ましく、40μm以上130μm以下であることがより好ましい。
【0039】
ピーク数nが3の場合、第1の粒子に由来するピークの位置は、0.3μm以上1.0μm以下の粒度域に検出され、第2の粒子に由来するピークの位置は、3.0μm以上15μm以下の粒度域に検出され、第3の粒子に由来するピークの位置は、30μm以上150μm以下の粒度域に検出されることが好ましい。
本実施形態のアルミナ粉末における第1の粒子の含有率は、10体積%以上25体積%以下であり、12体積%以上18体積%以下であることが好ましく、13体積%以上17体積%以下であることがより好ましい。また、第2の粒子の含有率は、20体積%以上55体積%以下であり、25体積%以上41体積%以下であることが好ましく、30体積%以上39体積%以下であることがより好ましい。更に、第3の粒子の含有率は、35体積%以上55体積%以下であり、47体積%以上57体積%以下であることが好ましく、48体積%以上53体積%以下であることがより好ましい。各粒子の含有率を上記範囲にすると、樹脂にアルミナ粉末を高い割合で充填でき、更に樹脂組成物の粘度上昇抑制の観点から、好ましい。なお、第1の粒子と、第2の粒子と、第3の粒子との合計を100体積%とする。
【0040】
この場合、第1の粒子の平均粒子径は、0.3μm以上1.0μm以下であることが好ましく、0.4μm以上0.9μm以下であることがより好ましく、0.5μm以上0.8μm以下であることがより好ましい。第1の粒子の平均粒子径が0.3μm以上であることで、粒子間の間隙に効率よく充填され、熱伝導性を向上でき、更に樹脂組成物の粘度上昇抑制の効果が得られる傾向にある。また、第1の粒子の平均粒子径が1.0μm以下であることで、平均粒子径が1.0μmを超える場合と比較して、第1の粒子の含有量が同程度の場合には、粒子の数が多くなり粒子間の熱経路の数も増える傾向にある。その一方で、平均粒子径が1.0μmを超える場合、粒子間の熱経路の数は減る傾向にある。また、平均粒子径が1.0μmを超える場合、第1の粒子内での熱伝導は速やかであるが、数の少ない熱経路での熱伝導が律速になり、粉末全体で見た場合の熱伝導性は低くなる傾向にある。しかしながら、平均粒子径が1.0μm以下の場合、個々の粒子の粒径は小さく、かつ熱経路の数は多いので、第1の粒子内での熱伝導と粒子間の熱経路における熱伝導に大きな差異が生じにくく、熱伝導の均一性が高くなる結果、熱伝導性が高くなる傾向にある。
【0041】
また、第2の粒子の平均粒子径は、樹脂組成物の粘度上昇抑制の観点から、3.0μm以上15μm以下であることが好ましく、4.0μm以上12μm以下であることがより好ましく、5.0μm以上10μm以下であることが更に好ましい。第2の粒子の平均粒子径が上記範囲にあることで、第2の粒子が粒子間の間隙に効率よく充填され、熱伝導性を向上でき、更に樹脂組成物の粘度上昇抑制の効果が得られる傾向にある。
【0042】
第3の粒子の平均粒子径は、樹脂組成物の粘度上昇抑制の観点から、30μm以上140μm以下であることが好ましく、35μm以上135μm以下であることがより好ましく、45μm以上130μm以下であることが更に好ましく、60μm以上120μm以下であることが更により好ましい。第3の粒子の平均粒子径が30μm以上であることで、粒子同士の接触により熱経路を効率的に形成することができるため熱伝導性を向上することができる傾向にある。更に、粒子の比表面積が小さくなることで充填率を高めることができる傾向にある。また、第3の粒子の平均粒子径が140μm以下であることで、得られる放熱部品の表面平滑性を保つことができ、更に、粒子界面の接触抵抗を低下させることができるため、熱伝導性を高めることができる傾向にある。
【0043】
また、第1の粒子の平均球形度は、樹脂に充填した際の摩擦抵抗低下、及び粒子同士の接触面積増加の点から、0.82以上0.94以下であることが好ましく、0.84以上0.92以下であることがより好ましい。
第2の粒子の平均球形度は、樹脂に充填した際の摩擦抵抗低下、及び粒子同士の接触面積増加の点から、0.82以上0.94以下であることが好ましく、0.84以上0.92以下であることがより好ましい。
第3の粒子の平均球形度は、樹脂に充填した際の摩擦抵抗低下、及び粒子同士の接触面積増加の点から、0.82以上0.94以下であることが好ましく、0.84以上0.92以下であることがより好ましい。
【0044】
第1の粒子におけるα結晶相の含有率は、熱伝導率向上の点から、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましい。上限は、例えば100質量%である。
第2の粒子におけるα結晶相の含有率は、熱伝導率向上の点から、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましい。上限は、例えば100質量%である。
第3の粒子におけるα結晶相の含有率は、熱伝導率向上の点から、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましい。上限は、例えば100質量%である。
【0045】
本実施形態において、第1の粒子としては、流動性をより向上させる観点から、未被覆のアルミナ粒子であることが好ましい。
第2の粒子としては、流動性、及び熱伝導率を向上させる観点から、未被覆のアルミナ粒子、本実施形態に係る被覆アルミナ粒子以外の被覆アルミナ粒子、及び本実施形態に係る被覆アルミナ粒子であることが好ましく、未被覆のアルミナ粒子であることがより好ましい。
第3の粒子としては、熱伝導率向上の観点から、本実施形態に係る被覆アルミナ粒子、未被覆のアルミナ粒子、及び本実施形態に係る被覆アルミナ粒子以外の被覆アルミナ粒子であることが好ましく、本実施形態に係る被覆アルミナ粒子であることがより好ましい。
未被覆のアルミナ粒子としては、例えば、球状アルミナ粒子が挙げられる。
【0046】
ピーク数nが4場合、第1の粒子に由来するピークの位置は、0.05μm以上0.2μm以下の粒度域に検出され、第2の粒子に由来するピークの位置は、0.3μm以上1.0μm以下の粒度域に検出され、第3の粒子に由来するピークの位置は、3.0μm以上15μm以下の粒度域に検出され、第4の粒子に由来するピークの位置は、30μm以上150μm以下の粒度域に検出されることが好ましい。本実施形態のアルミナ粉末では、樹脂組成物の粘度上昇抑制の点から、第1の粒子に由来するピークの位置が、0.07μm以上0.1μm以下の粒度域に検出され、第2の粒子に由来するピークの位置が、0.4μm以上0.9μm以下の粒度域に検出され、第3の粒子に由来するピークの位置が、4.0μm以上12μm以下の粒度域に検出され、第4の粒子に由来するピークの位置が、35μm以上140μm以下の粒度域に検出されることが、より好ましい。また、第4の粒子が本実施形態に係る被覆アルミナ粒子であることが好ましく、それに加えて、第1の粒子、第2の粒子及び第3の粒子が未被覆のアルミナ粒子であることがより好ましい。
【0047】
本実施形態のアルミナ粉末中における第1の粒子の含有率は、樹脂組成物の粘度上昇抑制の観点から、0.5体積%以上5.0体積%以下であり、1.0体積%以上4.0体積%以下であることが好ましく、1.5体積%以上3.0体積%以下であることがより好ましい。第2の粒子の含有率は、樹脂組成物の粘度上昇抑制の観点から、9体積%以上20体積%以下であり、11体積%以上18体積%以下であることが好ましく、12体積%以上17体積%以下であることがより好ましい。第3の粒子の含有率は、樹脂組成物の粘度上昇抑制の観点から、19体積%以上45体積%以下であり、24体積%以上41体積%以下であることが好ましく、29体積%以上39体積%以下であることがより好ましい。第4の粒子の含有率は、樹脂組成物の粘度上昇抑制の観点から、43体積%以上60体積%以下であり、45体積%以上57体積%以下であることが好ましく、46体積%以上53体積%以下であることがより好ましい。なお、第1の粒子と、第2の粒子と、第3の粒子と、第4の粒子との合計を100体積%とする。
【0048】
また、第1の粒子の平均粒子径は、樹脂組成物の粘度上昇抑制の観点から、0.05μm以上0.2μm以下であることが好ましく、0.07μm以上0.1μm以下であることがより好ましい。第2の粒子の平均粒子径は、樹脂組成物の粘度上昇抑制の観点から、0.3μm以上1.0μm以下であることが好ましく、0.4μm以上0.9μm以下であることがより好ましい。第3粒子の平均粒子径は、樹脂組成物の粘度上昇抑制の観点から、3.0μm以上15μm以下であることが好ましく、4.0μm以上12μm以下であることがより好ましい。第4の粒子の平均粒子径は、樹脂組成物の粘度上昇抑制の観点から、30μm以上150μm以下であることが好ましく、35μm以上140μm以下であることがより好ましい。
【0049】
本実施形態において、アルミナ粉末中における、第1~第nの粒子の全ての合計の含有率は、熱伝導率向上の観点から、98体積%以上であることが好ましく、99体積%以上であることがより好ましい。なお、含有率の上限は、100体積%である。
【0050】
(被覆アルミナ粒子の製造方法)
本実施形態に係る被覆アルミナ粒子の製造方法は、例えば、原料アルミナ粉末と炭素粉末とを含む混合物を、窒素ガスを含む還元雰囲気下にて、1500℃以上1700℃以下の温度で焼成して、第1焼成粉末を得る第1工程と、第1焼成粉末を、大気雰囲気下にて、600℃以上900℃以下の温度で更に焼成して本実施形態に係る被覆アルミナ粒子を得る第2工程と、を含む工程を用いることで得られる。この製造方法により、被覆層に窒化アルミニウムを含み、しかも、平均球形度が所定の高い範囲である被覆アルミナ粒子が得られる。本実施形態のアルミナ粒子が、この被覆アルミナ粒子を含むことにより、増粘を抑制でき、高い熱伝導性を有する樹脂組成物及び放熱部品が得られる。以下、詳述する。
【0051】
第1工程において、まず、所定の混合機を用いて、原料アルミナ粉末と炭素粉末とを所定の混合比となるように混合する。混合方法は、原料アルミナ粉末と炭素粉末とを均一に混合できれば特に限定されず、湿式混合及び乾式混合のいずれを用いてもよい。このような混合方法としては、例えば、ボールミル混合が挙げられる。原料アルミナ粉末と炭素粉末との混合比は、原料アルミナ粉末と炭素粉末との化学量論の混合比を考慮し、反応雰囲気の形成の点から、原料アルミナ粉末100質量部に対して、炭素粉末10質量部以上50質量部以下であることが好ましく、15質量部以上45質量部以下であることがより好ましい。
【0052】
原料アルミナ粉末としては、例えば、α、γ、θ、及びηの結晶構造をもつ種々のアルミナ粒子を用いることができる。そのアルミナ粒子は、通常球状である。具体的には、原料アルミナ粉末中に含まれる、上記顕微鏡法による投影面積円相当径が1μm以上300μm以下であるアルミナ粒子の平均球形度が、通常、0.90以上であり、0.91以上0.99以下であることが好ましく、0.92以上0.98以下であることがより好ましい。その平均球形度の上限は、例えば、1.00である。平均球形度が上記範囲にあることにより、原料アルミナ粉末と炭素粉末の混合がより均一になり、反応が促進されるという効果を奏する。
【0053】
原料アルミナ粉末の平均粒子径は、後述する炭素粉末よりも平均粒子径が大きいと、上記の炭素還元窒化反応がより進行しやすい点から、25μm以上140μm以下であることが好ましく、30μm以上130μm以下であることがより好ましい。
【0054】
原料アルミナ粉末の比表面積は、0.03m/g以上0.30m/g以下であることが好ましく、0.05m/g以上0.25m/g以下であることがより好ましい。比表面積が、上記範囲にあると、原料アルミナ粉末と炭素粉末の混合がより均一になり、反応が促進されるという効果を奏する。
【0055】
本実施形態に係る炭素粉末は、平均粒子径が、30nm以上70nm以下であり、かさ密度が、0.10g/cm以上0.20g/cm以下であり、比表面積が、20m/g以上60m/g以下である。このような炭素粉末を用いることで、炭素粉末がアルミナ粒子の表面に多く付着し、また、高温における原料アルミナ粉末と窒素との反応において、炭素粉末がスペーサーとして寄与してアルミナ粒子同士の合着を抑制でき、球形度の高い被覆アルミナ粒子を好適に製造することができる。
【0056】
炭素粉末の平均粒子径は、アルミナ粒子同士の合着防止効果の向上という観点から、35nm以上65nm以下であることが好ましい。
【0057】
また、炭素粉末のかさ密度は、0.10g/cm以上0.20g/cm以下であり、0.12g/cm以上0.18g/cm以下であることが好ましい。かさ密度が、上記範囲にあると、炭素粉末がアルミナ粒子の表面により均一に付着し、反応が促進されるという効果を奏する。なお、本実施形態において、かさ密度は実施例に記載の方法で測定される。
【0058】
更に、炭素粉末の比表面積は、20m/g以上60m/g以下であり、25m/g以上55m/g以下であることが好ましい。比表面積が、上記範囲にあると、アルミナ粒子同士の合着防止効果の向上という効果を奏する。
【0059】
炭素粉末は、全細孔容積が1mL/g以上4mL/g以下であることが好ましく、1.5mL/g以上3mL/g以下であることがより好ましい。全細孔容積が、上記範囲にあると、窒素ガスが炭素内に侵入しやすくなり、炭素粉末中で、上記の炭素還元窒化反応がより進行しやすくなる。なお、本実施形態において、全細孔容積は実施例に記載の方法で測定される。
【0060】
炭素粉末としては、例えば、アセチレンブラック、ファーネスブラック、及びサーマルブラックなどのカーボンブラック、及び粉末黒鉛が挙げられる。炭素粉末としては、純度などの点から、アセチレンブラックが好ましい。
【0061】
第1工程では、上記混合物を、窒素ガスを含む還元雰囲気下にて、1500℃以上1700℃以下の温度で焼成して、第1焼成粉末を得る。なお、原料アルミナ粉末の表面における窒化アルミニウムを含む被覆層の生成は、炭素還元窒化反応を示す下記の式に基づいて進行する。
Al+3C+N→2AlN+3CO
窒素ガスを含むガス還元雰囲気は、例えば、リファイニング装置に循環させて酸素及び水分を除去するような還元雰囲気炉を用いることで得られる。また、ガスとしては、窒素ガスの他に、二酸化炭素ガスなどの不可避成分が含まれていてもよい。
【0062】
混合物の焼成の際に、混合物に、窒素ガスを1L/分以上10L/分で供給することが、反応促進性と生産性との点から、好ましい。より好ましくは、3L/分以上7L/分で供給することである。
【0063】
第1工程における焼成温度は、本実施形態に係る被覆アルミナ粒子の被覆層と球形度とを制御する点から、1550℃以上1650℃以下であることが好ましい。また、焼成時間は、生産性を考慮すると、通常、4時間以上12時間以下である。なお、窒素ガス量が多く、焼成温度が高く、及び焼成時間が長いほど、被覆層が厚くなる傾向にある。
【0064】
第2工程では、第1工程で得られた第1焼成粉末を、大気雰囲気下にて、600℃以上900℃以下の温度で更に焼成して被覆アルミナ粒子を得る。第2工程において、第1焼成粉末を焼成することで、残存する炭素粉末を除去することができ、本実施形態に係る被覆アルミナ粒子を得ることができる。
第2工程における焼成温度は、本実施形態に係る被覆アルミナ粒子の炭素量制御の点から、650℃以上850℃以下であることが好ましい。また、焼成時間は、効率的に炭素粉末を除去できる点を考慮すると、2時間以上6時間以下であることが好ましい。
【0065】
また、第2工程では、第1焼成粉末を焼成する際に、第1焼成粉末に、空気を1L/分以上3L/分で供給することが、本実施形態に係る被覆アルミナ粒子の炭素量制御の点から、好ましい。より好ましくは、1.5L/分以上2.5L/分で供給することである。
【0066】
(アルミナ粉末の製造方法)
本実施形態に係るアルミナ粉末は、本実施形態に係る被覆アルミナ粒子1種をそのまま用いてもよい。また、本実施形態に係るアルミナ粉末は、2種以上の被覆アルミナ粒子を適宜混合することで得られてもよい。さらに、本実施形態に係るアルミナ粉末は、本実施形態に係る被覆アルミナ粒子の少なくとも1種と、それ以外のフィラー等とを適宜混合することで得られてもよい。混合方法としては、例えば、ボールミル混合が挙げられる。
【0067】
[樹脂組成物及びその製造方法]
本実施形態に係る樹脂組成物は、少なくとも、樹脂と、本実施形態に係るアルミナ粉末とを含む。本実施形態に係る樹脂組成物は、上記アルミナ粉末を含むことにより、増粘を抑制できると共に高い熱伝導性を有することが可能となる。
【0068】
(樹脂)
樹脂としては、熱可塑性樹脂及びそのオリゴマー、エラストマー類等の種々の高分子化合物を用いることでき、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、不飽和ポリエステル、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、及びフッ素樹脂;ポリイミド、ポリアミドイミド、及びポリエーテルイミド等のポリアミド;ポリブチレンテレフタレート、及びポリエチレンテレフタレート等のポリエステル;ポリフェニレンスルフィド、芳香族ポリエステル、ポリスルホン、液晶ポリマー、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、マレイミド変性樹脂、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)樹脂、AAS(アクリロニトリル・アクリルゴム・スチレン)樹脂、AES(アクリロニトリル・エチレン・プロピレン・ジエンゴム・スチレン)樹脂、EVA(エチレン酢酸ビニル共重合体)樹脂、及びシリコーン樹脂等を用いることができる。これらの樹脂は、1種単独で、又は2種以上を適宜混合して用いることができる。
【0069】
これらの樹脂の中でも、高放熱特性が得られる点から、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリカーボネート、ABS樹脂、及びシリコーン樹脂が好ましく、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、及びアクリル樹脂がより好ましく、シリコーン樹脂が更に好ましい。
シリコーン樹脂としては、メチル基及びフェニル基などの有機基を有する一液型または二液型付加反応型液状シリコーンから得られるゴム又はゲルを用いることが好ましい。このようなゴム又はゲルとしては、例えば、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製の「YE5822A液/YE5822B液(商品名)」、及び東レ・ダウコーニング社製の「SE1885A液/SE1885B液(商品名)」などを挙げることができる。
【0070】
(アルミナ粉末及び樹脂の含有量)
本実施形態の樹脂組成物において、熱伝導率向上の点から、その樹脂組成物の全量に対して、本実施形態に係るアルミナ粉末の含有量が67体積%以上88体積%以下であることが好ましく、71体積%以上85体積%以下であることがより好ましい。本実施形態に係るアルミナ粉末は、樹脂に充填しても増粘し難いので、上記の範囲内で樹脂組成物中に含まれても、樹脂組成物の増粘を抑制することが可能である。
【0071】
本実施形態の樹脂組成物において、樹脂組成物の成形性の点から、その樹脂組成物の全量に対して、本実施形態に係る樹脂の含有量が12体積%以上33体積%以下であることが好ましく、15体積%以上29%以下であることがより好ましい。
【0072】
(その他の成分)
本実施形態の樹脂組成物には、本実施形態の特性が損なわれない範囲において、本実施形態に係るアルミナ粉末及び樹脂以外に、必要に応じて、溶融シリカ、結晶シリカ、ジルコン、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭化珪素、窒化アルミ、窒化ホウ素、ベリリア、及びジルコニア等の無機フィラー;メラミン及びベンゾグアナミン等の窒素含有化合物、オキサジン環含有化合物、及びリン系化合物のホスフェート化合物、芳香族縮合リン酸エステル、及び含ハロゲン縮合リン酸エステル等の難燃性の化合物;添加剤等を含んでもよい。添加剤としては、マレイン酸ジメチル等の反応遅延剤、硬化剤、硬化促進剤、難燃助剤、難燃剤、着色剤、粘着付与剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、蛍光増白剤、光増感剤、増粘剤、滑剤、消泡剤、表面調整剤、光沢剤、及び重合禁止剤等が挙げられる。これらの成分は、1種単独で、又は2種以上を適宜混合して用いることができる。本実施形態の樹脂組成物において、その他の成分の含有率は、通常、それぞれ0.1質量%以上5質量%以下である。
【0073】
(樹脂組成物の製造方法)
本実施形態の樹脂組成物の製造方法は、例えば、樹脂と、アルミナ粉末と、必要に応じてその他の成分を十分に攪拌して得る方法が挙げられる。本実施形態の樹脂組成物は、例えば、各成分の所定量を、ブレンダー及びヘンシェルミキサー等によりブレンドした後、加熱ロール、ニーダー、及び一軸又は二軸押し出し機等によって混練し、冷却後、粉砕することによって製造することができる。
【0074】
[放熱部品]
本実施形態に係る放熱部品は、本実施形態に係るアルミナ粉末又は樹脂組成物を含む。本実施形態に係る放熱部品は、上記アルミナ粉末又は樹脂組成物を用いることで、高い熱伝導性を実現できる、すなわち、高い放熱性を有することができる。放熱部品としては、例えば、放熱シート、放熱グリース、放熱スペーサー、半導体封止材、及び放熱塗料(放熱コート剤)が挙げられる。
【0075】
放熱シートは、通常、発熱性電子部品及び電子デバイス等から発生した熱を除去するための絶縁性の熱伝導性シートである。放熱シートは、本実施形態に係るアルミナ粉末又は樹脂組成物を含むものであれば特に限定されない。本実施形態の放熱シートに含まれるアルミナ粉末以外の材料としては、例えば、シリコーンゴムが挙げられる。放熱シートは、主として、放熱フィン又は金属板に取り付けて用いられる。放熱シートは、例えば、本実施形態に係るアルミナ粉末と、シリコーンゴムとを、溶剤キャスト法、及び押し出し成膜等の方法でシート状に成形することにより得ることができる。シート状に成形する際に、脱泡することが好ましい。放熱シートの厚さとしては、通常10μm以上300μm以下であることが好ましい。
【0076】
放熱グリースは、通常、発熱部材と放熱部材との間に塗布され、放熱部材で発生した熱を放熱部材へ効率的に伝導して、放熱を促進するために用いられる。放熱グリースは、本実施形態のアルミナ粉末又は樹脂組成物を含むものであれば特に限定されない。本実施形態の放熱グリースに含まれるアルミナ粉末以外の材料としては、例えば、シリコーンオイル等の有機ケイ素化合物、及びポリα-オレフィンオイル等の炭化水素系合成油が挙げられる。放熱グリースは、例えば、有機ケイ素化合物又は炭化水素系合成油に、本実施形態のアルミナ粉末を分散させて、半固体状にすることで得られる。また、放熱グリースは、有機ケイ素化合物又は炭化水素系合成油に、本実施形態のアルミナ粉末を分散させた樹脂組成物を用いて、この樹脂組成物を半固体状にすることで得られてもよい。
【0077】
放熱スペーサーは、通常、発熱性電子部品及び電子デバイスと、それらを収容するケースとの間の空間を埋めるために使われる。この放熱スペーサーを用いることにより、発熱性電子部品及び電子デバイス等から発生した熱を電子機器のケース等に直接伝熱し、放熱することができる。放熱スペーサーは、本実施形態のアルミナ粉末又は樹脂組成物を含むものであれば特に限定されない。本実施形態の放熱スペーサーに含まれるアルミナ粉末以外の材料としては、例えば、シリコーンゴムが挙げられる。放熱スペーサーは、通常、放熱シートと同様の方法により得ることができるが、その厚さは、放熱シートよりも厚い。
【0078】
半導体封止材は、半導体素子などの電子部品から発生した熱を除去し、かつ、電子部品を外部刺激から保護するために用いられる。半導体封止材は、本実施形態のアルミナ粉末又は樹脂組成物を含むものであれば特に限定されない。半導体封止材は、例えば、本実施形態のアルミナ粉末又は樹脂組成物と、封止材料用途で一般的に用いられる各種公知の添加剤又は溶媒等とを、公知のミキサーを用いて混合することで製造することができる。混合の際の各種成分、溶媒の添加方法は、一般に公知の方法を適宜適用でき、特に限定されない。
【0079】
放熱塗料は、熱源を有する機械部品、電気製品、及び電気部品などに塗布して、それらの部品等の放熱性を高めるために用いられる。放熱塗料は、本実施形態のアルミナ粉末又は樹脂組成物と、溶剤とを含むものであれば限定されない。本実施形態のアルミナ粉末は、樹脂にアルミナ粉末を充填する際に粘度上昇を抑制できるため、溶剤中でも好適な粘度を維持することができる。溶剤としては、例えば、水、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、シクロヘキサノン、エチルベンゼン、キシレン、メタクリル酸メチル、及び1-ブタノールが挙げられる。これらの溶剤は、1種単独で、又は2種以上を適宜混合して用いることができる。また、機械部品としては、例えば、エンジン、ボイラー、ブロワー、及びポンプが挙げられる。電気製品としては、例えば、照明、太陽電池モジュール、及び冷蔵庫が挙げられる。電気部品としては、例えば、回路基板が挙げられる。
【実施例
【0080】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0081】
〔評価方法〕
(1)被覆アルミナ粒子における平均球形度、及び割合
アルミナ粉末から目開き53μmのJIS規格のステンレス製試験用篩を用いた篩上品を用いて被覆アルミナ粒子を分取した。
上記の顕微鏡法のとおり、走査型電子顕微鏡(日本電子社製JSM-6301F型)にて撮影した粒子像を画像解析装置(マウンテック社製「MacView Ver.4」(商品名))に取り込み、写真から粒子の投影面積(A)と周囲長(PM)を測定した。それらの値を用いて、個々の粒子の球形度及びその割合を求め、また、個々の粒子の球形度の相加平均値を平均球形度とした。なお、参考として、本実施形態に係る被覆アルミナ粒子のSEM像(500倍)を図1に示した。
【0082】
(2)平均粒子径及び粒度分布(ピーク数)
平均粒子径及び粒度分布(ピーク数)は、レーザー回折光散乱法粒度分布測定装置(マルバーン社製、製品名「マスターサイザー3000」、湿式分散ユニット:Hydro MV装着)により測定した。測定に際して、溶媒には水を用い、前処理として2分間、トミー精工社製の超音波発生器UD-200(超微量チップTP-040装着)(製品名)を用いて200Wの出力をかけて分散処理した。分散処理後の粒子を、レーザー散乱強度が10~15%になるように分散ユニットに滴下した。分散ユニットスターラーの撹拌速度は1750rpm、超音波モードは無しとした。粒度分布の解析は粒子径0.01~3500μmの範囲を100分割にして行った。水の屈折率には1.33を用い、アルミナ粒子、及び被覆アルミナ粒子の屈折率には1.768を用いた。測定した質量基準の粒度分布において、累積質量が50%となる粒子を平均粒子径とした。また、ピークは、上記の粒径範囲に検出される極大点とした。
【0083】
(3)被覆アルミナ粒子中の窒化アルミニウムの含有率
アルミナ粉末から目開き53μmのJIS規格のステンレス製試験用篩を用いた篩上品を用いて被覆アルミナ粒子を分取した。
被覆アルミナ粒子中の窒化アルミニウムの含有率(以下、「AlN含有率」とも称す)は、粉末X線回折パターンのリートベルト解析により測定した。被覆アルミナ粒子をサンプルホルダに詰め、X線回折装置(ブルカー社製「D8 ADVANCE」(製品名)、検出器:LynxEye(製品名))を用いて測定した。測定条件は、X線源:CuKα(λ=1.5406Å)、測定法:連続スキャン法、スキャン速度:0.017°/2.0sec、管電圧:45kV、管電流:360mA、発散スリット:0.5°、ソーラースリット:4°、測定範囲:2θ=10~70°とした。得られたX線回折パターンを基に、解析ソフトTOPASを用いたリートベルト解析による定量分析によって窒化アルミニウムの含有率を求めた。
【0084】
(4)炭素量
アルミナ粉末から目開き53μmのJIS規格のステンレス製試験用篩を用いた篩上品を用いて被覆アルミナ粒子を分取した。
その後、炭素/硫黄同時分析計(LECO社製CS-444LS型(商品名))を用いて、被覆アルミナ粒子中における炭素量を測定し、検量線法にて、炭素量を定量した。具体的には、まず、日本鉄鋼標準試料の63炭素鋼を標準物質として検量線を求めた。その後、実施例及び比較例で得られた被覆アルミナ粒子0.3gを助燃剤である金属鉄(LECO社製「IRON CHIP」(製品名))、及び金属タングステン(LECO社製「CECOCEL II」(製品名))と共に、酸素雰囲気下で、炭素含有物が完全に分解し、全炭素がCOに変換されるまで酸化燃焼し、生成したCO量を赤外検出器で測定して、炭素量を求めた。
【0085】
(5)被覆層の厚さ
アルミナ粉末から目開き53μmのJIS規格のステンレス製試験用篩を用いた篩上品を用いて被覆アルミナ粒子を分取した。
図1に示すとおり、被覆アルミナ粒子における被覆層の厚さは、断面EPMA分析により測定した。まず、被覆アルミナ粒子をG-2エポキシ樹脂(Gatan社製)に包埋し、断面ミリング後にオスミウムコーティングを行った。コーティング後のサンプルを電子線マイクロアナライザー(日本電子社製JXA-8230(製品名))を用い、N元素のマッピング分析を行った。加速電圧は15kVとし、照射電流は5×10-8Aとした。得られたマッピング画像を画像解析装置(マウンテック社製「MacView Ver.4」(商品名))に取り込み、被覆層の厚さを求めた。1つの粒子に対し、10箇所の厚さを求め、その相加平均値を1つの粒子の被覆層の厚さとした。このようにして得られた任意の粒子200個の被覆層の厚さを求め、その相加平均値を被覆アルミナ粒子における被覆層の厚さとした。
【0086】
(6)比表面積
アルミナ粉末から目開き53μmのJIS規格のステンレス製試験用篩を用いた篩上品を用いて被覆アルミナ粒子を分取した。
比表面積の測定は、Macsorb社製HM-モデル1208を用いて行った。測定に先立ち、窒素ガス雰囲気中で300℃、18分間加熱して被覆アルミナ粒子の前処理を行った。なお、吸着ガスには、窒素30%、ヘリウム70%の混合ガスを用い、本体流量計の指示値が25ml/minになるように流量を調整した。
【0087】
(7)かさ密度
炭素粉末のかさ密度は、JIS K 5101-12-2に準拠して測定した。
【0088】
(8)全細孔容積
炭素粉末の全細孔容積は、細孔分布測定装置(島津製作所社製AutoPore IV 9520型(商品名))を用いた水銀圧入法によって測定した。
【0089】
(9)アルミナ粉末中のアルミナと窒化アルミニウムとの合計の含有率
アルミナ粉末中のアルミナと窒化アルミニウムとの合計の含有率(以下、「合計含有率」とも称す。)は、粉末X線回折パターンのリートベルト解析により測定した。上述したアルミナ粉末中の窒化アルミニウムの含有率と同様の手順でX線回折測定を実施し、得られたX線回折パターンを基に、解析ソフトTOPASを用いたリートベルト解析による定量分析によってアルミナと窒化アルミニウムの含有率を求めた。
【0090】
(10)粘度
実施例及び比較例にて得られたアルミナ粉末をシリコーンオイル(信越化学工業社製「KF96-100cs」(製品名))に、アルミナ粉末の充填率が75vol%となるように投入した。これを自転・公転ミキサー(シンキー社製「あわとり練太郎 ARE-310」(製品名))を用いて回転数2200rpmで30秒間混合後、真空脱泡して樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物をレオメーター(AntonーPaar社製「MCR102」(製品名))を用いせん断粘度を測定した。測定条件は、温度:30℃、プレート:φ25mmパラレルプレート、ギャップ:1mmとした。せん断速度は0.01s-1から10s-1まで連続的に変化させながら測定し、5s-1の時の粘度を読み取った。
【0091】
(11)熱伝導率
実施例及び比較例にて得られたアルミナ粉末をシリコーン樹脂(東レ・ダウコーニング社製SE-1885A液、及びB液)に、アルミナ粉末の充填率が80vol%になるように投入した。これを撹拌混合後、真空脱泡し厚さ3mmに加工後、120℃、5時間加熱し樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を熱伝導率測定装置(日立テクノロジーアンドサービス社製樹脂材料熱抵抗測定装置「TRM-046RHHT」(製品名))を用い、ASTM D5470に準拠した定常法で熱伝導率を測定した。樹脂組成物は幅10mm×10mmに加工し、2Nの荷重をかけながら測定を実施した。
【0092】
[実施例1]
実施例1では、被覆アルミナ粒子の製造に用いる原料のアルミナ粉末として、デンカ(株)社製DAW-90(製品名)(平均球形度:0.91、平均粒子径:91μm、比表面積:0.1m2/g)を用いた。
また、炭素粉末であるアセチレンブラックとして、デンカ(株)社製HS-100(製品名)(平均粒子径:46nm、かさ密度:0.15g/cm3、比表面積:40m2/g、全細孔容積:2.1mL/g)を用いた。
原料のアルミナ粉末50gと、炭素粉末20gとをボールミルにて混合し、窒素ガスを7L/minの量で供給し、窒素雰囲気中にて、焼成温度1650℃、及び焼成時間12時間の条件で焼成した(第1工程)。その後、空気を2L/minの量で供給し、大気雰囲気中にて、焼成温度700℃、及び焼成時間4時間の条件で焼成し、被覆アルミナ粒子Aを得た。被覆アルミナ粒子Aについて、1μm以上300μm以下の被覆アルミナ粒子の平均球形度、球形度が0.80以下の被覆アルミナ粒子の割合、平均球形度、全体に対するAlNの含有率、被覆層の厚さを測定し、結果を表1に示した。
表1に示す割合(体積%)で、超微粉のアルミナ1として、住友化学(株)社製AA-05(製品名)を、微粉のアルミナ2として、デンカ(株)社製DAW-07(製品名)を、粗粉のアルミナ3として、被覆アルミナ粒子Aを配合し、アルミナ粉末とした。得られたアルミナ粉末の物性を評価し、結果を表1に示した。
【0093】
[実施例2]
実施例2では、被覆アルミナ粒子の製造に用いる原料のアルミナ粉末として、デンカ(株)社製DAW-70(製品名)(平均球形度:0.92、平均粒子径:70μm、比表面積:0.1m2/g)を用い、第1工程の焼成温度を1550℃、焼成時間を4時間に変更した以外は、実施例1と同様の方法で被覆アルミナ粒子Bを製造した。実施例1と同様の測定を行い、結果を表1に示した。
微粉のアルミナ2として、デンカ(株)社製DAW-05(製品名)を、粗粉のアルミナ3として、被覆アルミナ粒子Bを用いた以外は、実施例1と同様にして、表1に示す配合(体積%)にて、アルミナ粉末を得た。また、実施例1と同様の測定を行い、結果を表1に示した。
【0094】
[実施例3]
実施例3では、被覆アルミナ粒子の製造に用いる原料のアルミナ粉末として、デンカ(株)社製DAS-30(製品名)(平均球形度:0.93、平均粒子径:30μm、比表面積:0.2m2/g)を用い、第1工程の焼成温度を1500℃、焼成時間を4時間に変更した以外は、実施例1と同様の方法で被覆アルミナ粒子Cを製造した。実施例1と同様の測定を行い、結果を表1に示した。
微粉のアルミナ2として、デンカ(株)社製DAW-05(製品名)を、粗粉のアルミナ3として、被覆アルミナ粒子Cを用いた以外は、実施例1と同様にして、表1に示す配合(体積%)にて、アルミナ粉末を得た。また、実施例1と同様の測定を行い、結果を表1に示した。
【0095】
[実施例4]
実施例4では、被覆アルミナ粒子の製造に用いる原料のアルミナ粉末として、デンカ(株)社製DAW-120(製品名)(平均球形度:0.91、平均粒子径:115μm、比表面積:0.1m2/g)を用いた以外は、実施例1と同様の方法で被覆アルミナ粒子Dを製造した。実施例1と同様の測定を行い、結果を表1に示した。
微粉のアルミナ2として、デンカ(株)社製DAW-10(製品名)を、粗粉のアルミナ3として、被覆アルミナ粒子Dを用いた以外は、実施例1と同様にして、表1に示す配合(体積%)にて、アルミナ粉末を得た。また、実施例1と同様の測定を行い、結果を表1に示した。
【0096】
[実施例5]
実施例5では、第1工程の焼成温度を1600℃に変更した以外は、実施例1と同様の方法で被覆アルミナ粒子Eを製造した。実施例1と同様の測定を行い、結果を表1に示した。
粗粉のアルミナ3として、被覆アルミナ粒子Eを用いた以外は、実施例1と同様にして、表1に示す配合(体積%)にて、アルミナ粉末を得た。また、実施例1と同様の測定を行い、結果を表1に示した。
【0097】
[実施例6]
実施例6では、被覆アルミナ粒子の製造に用いる原料のアルミナ粉末として、デンカ(株)社製DAW-45(製品名)(平均球形度:0.92、平均粒子径:43μm、比表面積:0.2m2/g)を用い、第1工程の焼成温度を1600℃、焼成時間を8時間に変更した以外は、実施例1と同様の方法で被覆アルミナ粒子Fを製造した。実施例1と同様の測定を行い、結果を表1に示した。
微粉のアルミナ2として、デンカ(株)社製DAW-05(製品名)を、粗粉のアルミナ3として、被覆アルミナ粒子Fを用いた以外は、実施例1と同様にして、表1に示す配合(体積%)にて、アルミナ粉末を得た。また、実施例1と同様の測定を行い、結果を表1に示した。
【0098】
[実施例7]
実施例7では、被覆アルミナ粒子の製造に用いる原料のアルミナ粉末として、デンカ(株)社製DAW-70(製品名)(平均球形度:0.92、平均粒子径:70μm、比表面積:0.1m2/g)を用い、第1工程の焼成温度を1600℃に変更した以外は、実施例1と同様の方法で被覆アルミナ粒子Gを製造した。実施例1と同様の測定を行い、結果を表1に示した。
微粉のアルミナ2として、デンカ(株)社製DAW-05(製品名)を、粗粉のアルミナ3として、被覆アルミナ粒子Gを用いた以外は、実施例1と同様にして、表1に示す配合(体積%)にて、アルミナ粉末を得た。また、実施例1と同様の測定を行い、結果を表1に示した。
【0099】
[実施例8]
実施例8では、被覆アルミナ粒子の製造に用いる原料のアルミナ粉末として、デンカ(株)社製DAW-120(製品名)(平均球形度:0.91、平均粒子径:115μm、比表面積:0.1m2/g)を用い、第1工程の焼成温度を1600℃に変更した以外は、実施例1と同様の方法で被覆アルミナ粒子Hを製造した。実施例1と同様の測定を行い、結果を表1に示した。
微粉のアルミナ2として、デンカ(株)社製DAW-10(製品名)を、粗粉のアルミナ3として、被覆アルミナ粒子Hを用いた以外は、実施例1と同様にして、表1に示す配合(体積%)にて、アルミナ粉末を得た。また、実施例1と同様の測定を行い、結果を表1に示した。
【0100】
[実施例9]
アルミナの配合比を表1に示す割合(体積%)に変更した以外は、実施例7と同様にして、アルミナ粉末を製造し、評価した。結果を表1に示した。
【0101】
[実施例10]
アルミナの配合比を表1に示す割合(体積%)に変更した以外は、実施例7と同様にして、アルミナ粉末を製造し評価した。結果を表1に示した。
【0102】
[比較例1]
比較例1では、微粉のアルミナ2として、デンカ(株)社製DAW-05(製品名)を、粗粉のアルミナ3として、被覆アルミナ粒子Aの代わりに、デンカ(株)社製DAW-45(製品名)(平均球形度:0.92、平均粒子径:43μm、比表面積:0.2m2/g)を用いた以外は、実施例1と同様にして、表1に示す配合(体積%)にて、アルミナ粉末を得た。また、実施例1と同様の測定を行い、結果を表1に示した。
【0103】
[比較例2]
比較例2では、被覆アルミナ粒子の製造に用いる原料のアルミナ粉末として、デンカ(株)社製DAW-45(製品名)(平均球形度:0.92、平均粒子径:43μm、比表面積:0.2m2/g)を用い、第1工程の焼成温度を1650℃、焼成時間を30時間に変更した以外は、実施例1と同様の方法で被覆アルミナ粒子aを製造した。実施例1と同様の測定を行い、結果を表1に示した。被覆アルミナ粒子aは本実施形態に係る被覆アルミナ粒子に該当しなかった。
微粉のアルミナ2として、デンカ(株)社製DAW-05を、粗粉のアルミナ3として、被覆アルミナ粒子aを用いた以外は、実施例1と同様にして、表1に示す配合(体積%)にて、アルミナ粉末を得た。また、実施例1と同様の測定を行い、結果を表1に示した。
【0104】
【表1】
【0105】
本出願は、2019月5月30日出願の日本特許出願(特願2019-101604)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明の被覆アルミナ粉末によれば、樹脂に充填する際に粘度上昇を抑制でき、かつ、その樹脂を含む樹脂組成物の高熱伝導化を実現できる。そのため、例えば、放熱シート、放熱グリース、放熱スペーサー、半導体封止材、及び放熱塗料(放熱コート剤)等の放熱部品の用途に特に有用である。
図1