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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】金属有機構造体を含有する水素貯蔵材料
(51)【国際特許分類】
   C01B 3/00 20060101AFI20241016BHJP
   C07C 69/767 20060101ALI20241016BHJP
   C07C 229/56 20060101ALI20241016BHJP
   C07C 65/21 20060101ALI20241016BHJP
   C07F 3/06 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
C01B3/00 B
C07C69/767
C07C229/56
C07C65/21 D
C07F3/06
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021527688
(86)(22)【出願日】2020-06-24
(86)【国際出願番号】 JP2020024773
(87)【国際公開番号】W WO2020262452
(87)【国際公開日】2020-12-30
【審査請求日】2023-03-10
(31)【優先権主張番号】P 2019117030
(32)【優先日】2019-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和1年11月14日に日本吸着学会が発行した「第33回日本吸着学会研究発表会講演要旨集」にて「2,5-ジアルキルテレフタル酸を配位子とする金属有機構造体の合成とガス吸着特性」について公開
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和1年11月14日に「第33回日本吸着学会研究発表会」においてポスター発表にて「2,5-ジアルキルテレフタル酸を配位子とする金属有機構造体の合成とガス吸着特性」について公開
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和2年3月5日に「日本化学会第100春季年会2020」のウェブサイトにて「テレフタル酸誘導体を用いた金属有機構造体のガス吸着特性評価」について公開
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和2年3月5日に澤本光男が発行した「日本化学会第100春季年会(2020)予稿集DVD」にて「テレフタル酸誘導体を用いた金属有機構造体のガス吸着特性評価」について公開
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和2年3月12日に「日本化学会 第100春季年会(2020)(CSJ100th)」の電子抄録Webサイト(Confit)、及び電子抄録アプリにて「テレフタル酸誘導体を用いた金属有機構造体のガス吸着特性評価」について公開
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和2年3月5日に「日本化学会第100春季年会2020」のウェブサイトにて「シリル置換テレフタル酸を用いた金属有機構造体の合成とガス吸着能」について公開
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和2年3月5日に澤本光男が発行した「日本化学会第100春季年会(2020)予稿集DVD」にて「シリル置換テレフタル酸を用いた金属有機構造体の合成とガス吸着能」について公開
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和2年3月12日に「日本化学会 第100春季年会(2020)(CSJ100th)」の電子抄録Webサイト(Confit)、及び電子抄録アプリにて「シリル置換テレフタル酸を用いた金属有機構造体の合成とガス吸着能」について公開
(73)【特許権者】
【識別番号】300071579
【氏名又は名称】学校法人立教学院
(73)【特許権者】
【識別番号】000004307
【氏名又は名称】日本曹達株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100182305
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【弁理士】
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【弁理士】
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100221958
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 真希恵
(74)【代理人】
【識別番号】100192441
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 仁
(72)【発明者】
【氏名】箕浦 真生
(72)【発明者】
【氏名】菅又 功
(72)【発明者】
【氏名】▲柳▼沢 大地
(72)【発明者】
【氏名】小林 翔
(72)【発明者】
【氏名】飯濱 照幸
【審査官】廣野 知子
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-040119(JP,A)
【文献】特表2009-504797(JP,A)
【文献】YANG Jie et al.,Chem.Commun.,2011年,Vol.47,No.18,p.5244-5246,DOI:10.1039/c1cc11054c
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 3/00-6/34
C07B 31/00-61/00
C07B 63/00-63/04
C07C 1/00-409/44
B01J 20/00-20/28
B01J 20/30-20/34
C07F 3/06
JSTPlus/JSTChina/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)で表されるカルボン酸イオン及び多価金属イオンからなり、前記カルボン酸イオンと前記多価金属イオンが結合してなる金属有機構造体を含有する水素貯蔵材料。
【化1】

(式(I)中、Xは
置換若しくは置換アルケニル基、
無置換若しくは置換アルキニル基、
無置換若しくは置換アルコキシ基、
無置換若しくは置換アルケニルオキシ基、
無置換若しくは置換アルキニルオキシ基、
ベンジルオキシ基、
無置換若しくは置換アルキルスルファニル基、
無置換若しくは置換アルケニルスルファニル基、
無置換若しくは置換アルキニルスルファニル基、
無置換若しくは置換アルキルアミノ基、
無置換若しくは置換ジアルキルアミノ基、
無置換若しくは置換アルケニルアミノ基、
無置換若しくは置換ジアルケニルアミノ基、
無置換若しくは置換アルキニルアミノ基、
無置換若しくは置換ジアルキニルアミノ基、
フェニル基、
スルファニル基、
又は
無置換若しくは置換アルコキシカルボニル基
を表す。)
【請求項2】
式(I)で表されるカルボン酸イオンと、
多価金属イオンと、
2つ以上の窒素原子を含む有機配位子(ただし、式(I)で表されるカルボン酸イオンは除く)又は窒素原子及びカルボキシイオン基を含む有機配位子(ただし、式(I)で表されるカルボン酸イオンは除く)からなり、
前記式(I)で表されるカルボン酸イオン及び前記有機配位子と、前記多価金属イオンが結合してなる金属有機構造体を含有する水素貯蔵材料。
【化2】

(式(I)中、Xは、
無置換若しくは置換C2~C20アルキル基、
無置換若しくは置換アルケニル基、
無置換若しくは置換アルキニル基、
無置換若しくは置換アルコキシ基、
無置換若しくは置換アルケニルオキシ基、
無置換若しくは置換アルキニルオキシ基、
ベンジルオキシ基、
無置換若しくは置換アルキルスルファニル基、
無置換若しくは置換アルケニルスルファニル基、
無置換若しくは置換アルキニルスルファニル基、
無置換若しくは置換アルキルアミノ基、
無置換若しくは置換ジアルキルアミノ基、
無置換若しくは置換アルケニルアミノ基、
無置換若しくは置換ジアルケニルアミノ基、
無置換若しくは置換アルキニルアミノ基、
無置換若しくは置換ジアルキニルアミノ基、
フェニル基、
スルファニル基、
又は
無置換若しくは置換アルコキシカルボニル基
を表す。)
【請求項3】
多価金属イオンが、元素の周期表の第2族~第13族の金属からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属のイオンである請求項1又は2に記載の水素貯蔵材料。
【請求項4】
多価金属イオンが、Zn、Fe、Co、Ni、Cu、Al、Zr及びMgから選ばれる少なくとも1種の金属のイオンである請求項1~3のいずれか1項に記載の水素貯蔵材料。
【請求項5】
水素含有ガスを請求項1~4のいずれか1項に記載の水素貯蔵材料に接触させ、水素ガスを前記水素貯蔵材料の内部に吸着させる工程を有する水素ガス貯蔵方法。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか1項に記載の水素貯蔵材料が充填されている、又は請求項1~4のいずれか1項に記載の水素貯蔵材料を成型してなる水素貯蔵タンク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属有機構造体を含有する新規な水素貯蔵材料や、かかる水素貯蔵材料を用いた水素貯蔵方法及び水素貯蔵タンクに関する。
本願は2019年6月25日に出願された日本国特許出願第2019-117030号に基づく優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
金属有機構造体(以下「MOF」ということがある。)は、金属イオンとそれらを連結する架橋性の有機配位子を組み合わせることで内部に空間(つまり細孔)を持つ高分子構造を有する固体状の物質であり、ガスの貯蔵や分離などの機能をもつ多孔性材料として、この十数年高い興味が持たれてきた。
架橋性の有機配位子としては、酸素ドナー配位子及び窒素ドナー配位子が多く用いられてきた。
【0003】
テレフタル酸を架橋性の有機配位子として用い、N,N-ジメチルホルムアミド中でZn(NO・6HOを用いたソルボサーマル法で得られるMOF-5が、温度77K、4MPaの条件で、MOF-5に対して7.1質量%の水素を貯蔵できることが知られている(非特許文献1~3参照)。
【0004】
また、テレフタル酸の2,5-位にn-プロポキシ基、n-ペントキシ基を有するテレフタル酸誘導体を用いても、MOF-5と同形のIRMOF(isoreticular Metal-Organic Framewark)が得られることも知られている(非特許文献2参照)。
【0005】
2,5-ジ置換テレフタル酸を用いたMOFの例として、ω-(カルバゾール-9-イル)アルコキシ基(アルキレン鎖の炭素数が、3、6及び8-12)(非特許文献4及び5参照)、アルコキシ基(炭素数が6-14)(非特許文献6参照)、メチル基、メトキシ基、クロロ基、エチル基及びエトキシ基(特許文献1参照)、ヒドロキシ基及びアセトキシ基(非特許文献7参照)、イソプロポキシ基、アリルオキシ基及びプロパルギルオキシ基(非特許文献8参照)、ピラゾール-1-イル基(非特許文献9参照)、4-メチルベンゾイル基(非特許文献10参照)、ベンゾイル基(非特許文献11参照)、ベンジルオキシ基(非特許文献12参照)、ブロモ基(非特許文献13参照)及びフェニル基(非特許文献14参照)を2、5位に有するテレフタル酸を有機配位子として用いたMOFが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許公開公報2010-75123号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】H. Li, M. Eddaudi, M. O'Keefe, O. M. Yaghi, Nature, 402, 276(1999)
【文献】M. Eddaudi, J. Kim, N. Rosi, D. Vodak, J. Wachter, M. O'Keefe, O. M. Yaghi, Science 2002, 295(5554), 469.
【文献】S. Kaye, A. Daily, O. M. Yaghi, J. Long, J. Am. Chem. Soc. 2007, 129(46), 14176.
【文献】E. Y. Choi, S. H. Lee, O. P. Kwon, Bull. Korean Chem. Soc. 2012, 33(7), 2431.
【文献】E. Y. Choi, S. B. Lee, H. Yun, S. H. Lee, C. Gao, Y. Shin, O. P. Kwon, Bull. Korean Chem. Soc. 2013, 34(12), 3903.
【文献】E. Y. Choi, C. Gao, H. J. Lee, O. P. Kwon, S. H. Lee, Chem. Comunn. 2009, 7563.
【文献】T. Yamada, H. Kitagawa, Supramolecular Chemistry 2011, 23, 315.
【文献】A. Schneemann, E. D. Bloch, S. Henke, P. L. Llewellyn, J. R.Long, R. A. Fischer, Eur. Chem. J. 2015, 21, 18764.
【文献】E. Gao, J. Xing, Y. Qu, X, Qiu, M. Zhu, Appl. Organometal Chem. 2018, 32, e4469
【文献】X. Zheng, S. Q. Guo, X. Y. Yu, J. K. Hu, Y. H. Luo, H. Zhang, X. Chen, Inorganic Chemistry Communication2012, 18, 29.
【文献】F. Yue, B. Li, X. Zhu, Y. Luo, J. Hu, X. Wang, H. Zhang, Journal of Coordination Chemistry, 2013, 66(2), 243.
【文献】h. Deng, C. J. Doona, H. Furukawa, R. B. Ferreira, J. Towne, C. B. Knobler, B. Wang, O. M. Yaghi, Science 2010, 327, 846.
【文献】J. Gascon, M. D. Hernandez-Alonson, A. R. Almeida, G. P. M. van Klink, F. Kapteijin, G. Mui, ChemSusChem 2008, 1, 981.
【文献】E. R. Engel, A. Jouaiti, C. X. Bezuidenhout, M. W. Hosseini, L. J. Barbour, Angew. Chem. Int. Ed. 2017, 56, 8874.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記したように、種々のMOFが知られているが、ガスの性質上、水素を有効に貯蔵できるMOFは、あまり知られていない。
本発明は、水素を有効に貯蔵できるMOFを含有する新規な水素貯蔵材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、従来知られているMOFであっても、2,5-位に置換基を有するテレフタル酸と種々の金属塩の組合せを用いることで得られるMOFが、意外にも水素を貯蔵できる能力を有することを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、以下の事項により特定される次のとおりのものである。
[1]式(I)で表されるカルボン酸イオン及び多価金属イオンからなり、前記カルボン酸イオンと前記多価金属イオンが結合してなる金属有機構造体を含有する水素貯蔵材料。
【化1】
【0011】
(式(I)中、Xは、無置換若しくは置換C2~C20アルキル基、無置換若しくは置換アルケニル基、無置換若しくは置換アルキニル基、無置換若しくは置換アルコキシ基、無置換若しくは置換アルケニルオキシ基、無置換若しくは置換アルキニルオキシ基、ベンジルオキシ基、無置換若しくは置換アルキルスルファニル基、無置換若しくは置換アルケニルスルファニル基、無置換若しくは置換アルキニルスルファニル基、無置換若しくは置換アルキルアミノ基、無置換若しくは置換ジアルキルアミノ基、無置換若しくは置換アルケニルアミノ基、無置換若しくは置換ジアルケニルアミノ基、無置換若しくは置換アルキニルアミノ基、無置換若しくは置換ジアルキニルアミノ基、フェニル基、スルファニル基又は無置換若しくは置換アルコキシカルボニル基を表す。)
[2]式(I)で表されるカルボン酸イオンと、多価金属イオンと、2つ以上の窒素原子を含む有機配位子(ただし、式(I)で表されるカルボン酸イオンは除く)又は窒素原子及びカルボキシイオン基を含む有機配位子(ただし、式(I)で表されるカルボン酸イオンは除く)からなり、前記式(I)で表されるカルボン酸イオン及び前記有機配位子と、前記多価金属イオンが結合してなる金属有機構造体を含有する水素貯蔵材料。
【化2】
【0012】
(式(I)中、Xは、無置換若しくは置換C2~C20アルキル基、無置換若しくは置換アルケニル基、無置換若しくは置換アルキニル基、無置換若しくは置換アルコキシ基、無置換若しくは置換アルケニルオキシ基、無置換若しくは置換アルキニルオキシ基、ベンジルオキシ基、無置換若しくは置換アルキルスルファニル基、無置換若しくは置換アルケニルスルファニル基、無置換若しくは置換アルキニルスルファニル基、無置換若しくは置換アルキルアミノ基、無置換若しくは置換ジアルキルアミノ基、無置換若しくは置換アルケニルアミノ基、無置換若しくは置換ジアルケニルアミノ基、無置換若しくは置換アルキニルアミノ基、無置換若しくは置換ジアルキニルアミノ基、フェニル基、スルファニル基又は無置換若しくは置換アルコキシカルボニル基を表す。)
[3]多価金属イオンが、元素の周期表の第2族~第13族の金属からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属のイオンである[1]又は[2]に記載の水素貯蔵材料。
[4]多価金属イオンが、Zn、Fe、Co、Ni、Cu、Al、Zr及びMgから選ばれる少なくとも1種の金属のイオンである[1]~[3]のいずれか1つに記載の水素貯蔵材料。
[5]水素含有ガスを[1]~[4]のいずれか1つに記載の水素貯蔵材料に接触させ、水素ガスを前記水素貯蔵材料の内部に吸着させる工程を有する水素ガス貯蔵方法。
[6][1]~[4]のいずれか1つに記載の水素貯蔵材料が充填されている、又は[1]~[4]のいずれか1つに記載の水素貯蔵材料を成型してなる水素貯蔵タンク。
【発明の効果】
【0013】
本発明の水素貯蔵材料は、水素貯蔵材料としては新規であり、この材料を用いることで、従来よりも有意に水素を貯蔵することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の水素貯蔵材料は、式(I)で表されるカルボン酸イオンと多価金属イオンが結合してなるMOFを含有する、式(I)で表されるカルボン酸イオン及び2つ以上の窒素原子を含む有機配位子(ただし、式(I)で表されるカルボン酸イオンは除く)と多価金属イオンが結合してなるMOFを含有する又は式(I)で表されるカルボン酸イオンと窒素原子及びカルボキシイオン基を含む有機配位子(ただし、式(I)で表されるカルボン酸イオンは除く)と多価金属イオンとが結合してなるMOFを含有する。
【0015】
本発明に用いられる多価金属イオンは、2価以上の金属のイオンであれば、特に制限されないが、元素周期表の第2族~第13族の金属からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属のイオンであるのが好ましく、さらに、Zn、Fe、Co、Ni、Cu、Al、Zr及びMgから選ばれる少なくとも1種の金属のイオンであるのが好ましく、さらにCo、Ni、Cu及びZnから選ばれる少なくとも1種の金属のイオンであるのが好ましく、これらは1種単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
【0016】
これらの多価金属イオンは、種々の塩の形で供給され、具体的には、Zn(NO・6HO、Zn(NO・4HO、Ni(NO・6HO、Mg(NO・6HO、Cu(NO・xHO、Cu(NO・2.5HO、Co(NO・6HO、Al(NO・6HO、ZrOCl・8HO、ZrCl等を例示することができる。さらに、塩の純度、金属イオンと有機配位子との結合のしやすさ等を考慮すると、硝酸塩が好ましい。
【0017】
本発明に使用されるMOFには、式(I)で表されるカルボン酸イオンを含む。
式(I)中、Xは、無置換若しくは置換C2~C20アルキル基、無置換若しくは置換アルケニル基、無置換若しくは置換アルキニル基、無置換若しくは置換アルコキシ基、無置換若しくは置換アルケニルオキシ基、無置換若しくは置換アルキニルオキシ基、ベンジルオキシ基、無置換若しくは置換アルキルスルファニル基、無置換若しくは置換アルケニルスルファニル基、無置換若しくは置換アルキニルスルファニル基、無置換若しくは置換アルキルアミノ基、無置換若しくは置換ジアルキルアミノ基、無置換若しくは置換アルケニルアミノ基、無置換若しくは置換ジアルケニルアミノ基、無置換若しくは置換アルキニルアミノ基、無置換若しくは置換ジアルキニルアミノ基、フェニル基、スルファニル基又は無置換若しくは置換アルコキシカルボニル基を表す。
【0018】
ここで、本発明において、「無置換(unsubstituted)」の用語は、母核となる基のみであることを意味する。「置換」との記載がなく母核となる基の名称のみで記載しているときは、別段の断りがない限り「無置換」の意味である。
一方、「置換(substituted)」とは、母核となる基のいずれかの水素原子が、母核と同一又は異なる構造の官能基(置換基)で置換されていることを意味する。したがって、「置換基」は、母核となる官能基に結合した他の官能基である。置換基は1つであってもよいし、2つ以上であってもよい。2つ以上の置換基は同一であってもよいし、異なるものであってもよい。
「C1~6」などの用語は、母核となる基(「C1~6」なる語句の次に位置する官能基)の炭素原子数が1~6個などであることを表している。この炭素原子数には、置換基の中にある炭素原子の数を含まない。例えば、置換基としてエトキシ基を有するブチル基は、C2アルコキシC4アルキル基に分類する。
【0019】
「置換基」は化学的に許容され、本発明の効果を有する限りにおいて特に制限されない。以下に「置換基」となり得る基を例示する。
メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、i-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基等のC1~6アルキル基;
ビニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基(アリル基)、プロペン-2-イル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、1-メチル-2-プロペニル基、2-メチル-2-プロペニル基等のC2~6アルケニル基;
エチニル基、1-プロピニル基、2-プロピニル基(プロパルギル基)、1-ブチニル基、2-ブチニル基、3-ブチニル基、1-メチル-2-プロピニル基等のC2~6アルキニル基;
【0020】
シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、キュバニル基等のC3~8シクロアルキル基;
フェニル基、ナフチル基等のC6~10アリール基;
ベンジル基、フェネチル基等のC6~10アリールC1~6アルキル基;
3~6員ヘテロシクリル基;
3~6員へテロシクリルC1~6アルキル基;
【0021】
オキソ基;
水酸基;
メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、i-プロポキシ基、n-ブトキシ基、s-ブトキシ基、i-ブトキシ基、t-ブトキシ基等のC1~6アルコキシ基;
ビニルオキシ基、アリルオキシ基、1-プロペニルオキシ基、プロペン-2-イルオキシ基、3-ブテニルオキシ基、2-ブテニルオキシ基等のC2~6アルケニルオキシ基;
エチニルオキシ基、プロパルギルオキシ基等のC2~6アルキニルオキシ基;
フェノキシ基、ナフトキシ基等のC6~10アリールオキシ基;
ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基等のC6~10アリールC1~6アルコキシ基;
チアゾリルオキシ基、ピリジルオキシ基等の5~6員ヘテロアリールオキシ基;
チアゾリルメチルオキシ基、ピリジルメチルオキシ基等の5~6員ヘテロアリールC1~6アルキルオキシ基;
【0022】
ホルミル基;
アセチル基、プロピオニル基等のC1~6アルキルカルボニル基;
ホルミルオキシ基;
アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基等のC1~6アルキルカルボニルオキシ基;
ベンゾイル基等のC6~10アリールカルボニル基;
メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n-プロポキシカルボニル基、i-プロポキシカルボニル基、n-ブトキシカルボニル基、t-ブトキシカルボニル基等のC1~6アルコキシカルボニル基;
メトキシカルボニルオキシ基、エトキシカルボニルオキシ基、n-プロポキシカルボニルオキシ基、i-プロポキシカルボニルオキシ基、n-ブトキシカルボニルオキシ基、t-ブトキシカルボニルオキシ基等のC1~6アルコキシカルボニルオキシ基;
カルボキシ基;
【0023】
フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、イオド基等のハロゲノ基;
フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル基、パーフルオロプロピル基、2,2,2-トリフルオロ-1-トリフルオロメチルエチル基、パーフルオロイソプロピル基、4-フルオロブチル基、2,2,3,3,4,4,4-ヘプタフルオロブチル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロペンチル基、パーフルオロヘキシル基、クロロメチル基、ブロモメチル基、ジクロロメチル基、ジブロモメチル基、トリクロロメチル基、トリブロモメチル基、1-クロロエチル基、2,2,2-トリクロロエチル基、4-クロロブチル基、パークロロヘキシル基、2,4,6-トリクロロヘキシル基等のC1~6ハロアルキル基;
2-クロロ-1-プロペニル基、2-フルオロ-1-ブテニル基等のC2~6ハロアルケニル基;
4,4-ジクロロ-1-ブチニル基、4-フルオロ-1-ペンチニル基、5-ブロモ-2-ペンチニル基等のC2~6ハロアルキニル基;
トリフルオロメトキシ基、2-クロロ-n-プロポキシ基、2,3-ジクロロブトキシ基等のC1~6ハロアルコキシ基;
2-クロロプロペニルオキシ基、3-ブロモブテニルオキシ基等のC2~6ハロアルケニルオキシ基;
クロロアセチル基、トリフルオロアセチル基、トリクロロアセチル基等のC1~6ハロアルキルカルボニル基;
【0024】
アミノ基;
メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等のC1~6アルキル置換アミノ基;
アニリノ基、ナフチルアミノ基等のC6~10アリールアミノ基;
ベンジルアミノ基、フェネチルアミノ基等のC6~10アリールC1~6アルキルアミノ基;
ホルミルアミノ基;
アセチルアミノ基、プロパノイルアミノ基、ブチリルアミノ基、i-プロピルカルボニルアミノ基等のC1~6アルキルカルボニルアミノ基;
メトキシカルボニルアミノ基、エトキシカルボニルアミノ基、n-プロポキシカルボニルアミノ基、i-プロポキシカルボニルアミノ基等のC1~6アルコキシカルボニルアミノ基;
S,S-ジメチルスルホキシイミノ基等のC1~6アルキルスルホキシイミノ基;
アミノカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基、フェニルアミノカルボニル基、N-フェニル-N-メチルアミノカルボニル基等の無置換もしくは置換基を有するアミノカルボニル基;
イミノメチル基、1-イミノエチル基、1-イミノ-n-プロピル基等のイミノC1~6アルキル基;
N-ヒドロキシ-イミノメチル基、1-(N-ヒドロキシイミノ)エチル基、1-(N-ヒドロキシイミノ)プロピル基、N-メトキシイミノメチル基、1-(N-メトキシイミノ)エチル基等の置換若しくは無置換のN-ヒドロキシイミノC1~6アルキル基;
ヒドロキシイミノ基;
メトキシイミノ基、エトキシイミノ基、n-プロポキシイミノ基、i-プロポキシイミノ基、n-ブトキシイミノ基等のC1~6アルコキシイミノ基;
アミノカルボニルオキシ基;
エチルアミノカルボニルオキシ基、ジメチルアミノカルボニルオキシ基等のC1~6アルキル置換アミノカルボニルオキシ基;
【0025】
チオキソ基
スルファニル基;
メチルスルファニル基、エチルスルファニル基、n-プロピルスルファニル基、i-プロピルスルファニル基、n-ブチルスルファニル基、i-ブチルスルファニル基、s-ブチルスルファニル基、t-ブチルスルファニル基等のC1~6アルキルスルファニル基;
トリフルオロメチルスルファニル基、2,2,2-トリフルオロエチルスルファニル基等のC1~6ハロアルキルスルファニル基;
フェニルスルファニル基、ナフチルスルファニル基等のC6~10アリールスルファニル基;
チアゾリルスルファニル基、ピリジルスルファニル基等の5~6員ヘテロアリールスルファニル基;
【0026】
メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、t-ブチルスルフィニル基等のC1~6アルキルスルフィニル基;
トリフルオロメチルスルフィニル基、2,2,2-トリフルオロエチルスルフィニル基等のC1~6ハロアルキルスルフィニル基;
フェニルスルフィニル基等のC6~10アリールスルフィニル基;
チアゾリルスルフィニル基、ピリジルスルフィニル基等の5~6員ヘテロアリールスルフィニル基;
【0027】
メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、t-ブチルスルホニル基等のC1~6アルキルスルホニル基;
トリフルオロメチルスルホニル基、2,2,2-トリフルオロエチルスルホニル基等のC1~6ハロアルキルスルホニル基;
フェニルスルホニル基等のC6~10アリールスルホニル基;
チアゾリルスルホニル基、ピリジルスルホニル基等の5~6員ヘテロアリールスルホニル基;
スルホ基;
メチルスルホニルオキシ基、エチルスルホニルオキシ基、t-ブチルスルホニルオキシ基等のC1~6アルキルスルホニルオキシ基;
トリフルオロメチルスルホニルオキシ基、2,2,2-トリフルオロエチルスルホニルオキシ基等のC1~6ハロアルキルスルホニルオキシ基;
【0028】
トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、t-ブチルジメチルシリル基等のトリC1~6アルキル置換シリル基;
トリフェニルシリル基等のトリC6~10アリール置換シリル基;
アリルジメチルシリル基、ビニルジメチルシリル基等のC2~C6アルケニルC1~C6ジアルキル置換シリル基;
t-ブチルジフェニルシリル基、ジフェニルメチルシリル基等のC1~C6アルキルジC6~C10アリール置換シリル基;
ジメチルフェニルシリル基等のジC1~C6アルキルC6~C10アリール置換シリル基;
ベンジルジメチルシリル基、3-フェニルプロピルジメチルシリル基等の(C6~C10フェニルC1~C6アルキル)ジC1~C6アルキルシリル基;
メチルフェニルビニルシリル基等のC1~C6アルキルC6~C10フェニルC2~C6アルケニルシリル基;
トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基等のトリC1~C6アルコキシ置換シリル基;
ジメチルシリル基、ジエチルシリル基等のジC1~C6アルキル置換シリル基;
ジメトキシシリル基、ジエトキシシリル基等のジC1~C6アルコキシ置換シリル基;
メトキシジメチルシリル基等のC1~C6アルコキシC1~C6アルキル置換シリル基;
t-ブトキシジフェニルシリル基等のC1~C6アルコキシC6~C10アリール置換シリル基;
メチルジメトキシシリル基等のC1~C6アルキルジC1~C6アルコキシ置換シリル基;
シアノ基;
ニトロ基。
【0029】
また、これらの「置換基」は、当該置換基中のいずれかの水素原子が、異なる構造の基で置換されていてもよい。その場合の「置換基」としては、C1~6アルキル基、C1~6ハロアルキル基、C1~6アルコキシ基、C1~6ハロアルコキシ基、ハロゲノ基、シアノ基、ニトロ基等を挙げることができる。
【0030】
また、上記の「3~6員ヘテロシクリル基」とは、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子からなる群から選ばれる1~4個のヘテロ原子を環の構成原子として含むものである。ヘテロシクリル基は、単環及び多環のいずれであってもよい。多環ヘテロシクリル基は、少なくとも一つの環がヘテロ環であれば、残りの環が飽和脂環、不飽和脂環又は芳香環のいずれであってもよい。「3~6員ヘテロシクリル基」としては、3~6員飽和ヘテロシクリル基、5~6員ヘテロアリール基、5~6員部分不飽和ヘテロシクリル基等を挙げることができる。
【0031】
3~6員飽和ヘテロシクリル基としては、アジリジニル基、エポキシ基、ピロリジニル基、テトラヒドロフラニル基、チアゾリジニル基、ピペリジル基、ピペラジニル基、モルホリニル基、ジオキソラニル基、ジオキサニル基等を挙げることができる。
【0032】
5員ヘテロアリール基としては、ピロリル基、フリル基、チエニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、トリアゾリル基、オキサジアゾリル基、チアジアゾリル基、テトラゾリル基等を挙げることができる。
6員ヘテロアリール基としては、ピリジル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、トリアジニル基等を挙げることができる。
5~6員部分不飽和ヘテロシクリル基としては、イソオキサゾリニル基、ピラゾリニル基等を挙げることができる。
3~6員ヘテロシクリル1~6アルキル基としては、グリシジル基、2-テトラヒドロフラニルメチル基、2-ピロリルメチル基。2-イミダゾリルメチル基、3-イソオキサゾリルメチル基、5-イソオキサゾリルメチル基、2-ピリジルメチル基、4-ピリジルメチル基、3-イソオキサゾリニルメチル基等を挙げることができる。
【0033】
式(I)のX中、「無置換若しくは置換C2~C20アルキル基」の「アルキル基」は、直鎖であってもよいし、分岐鎖であってもよく、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ぺンチル基、n-ヘキシル基、i-プロピル基、i-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、i-ペンチル基、ネオペンチル基、2-メチルブチル基、i-ヘキシル基、ステアリル基、パルミチル基等を挙げることができる。
【0034】
式(I)のX中、「無置換若しくは置換アルケニル基」の「アルケニル基」としては、ビニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基(アリル基)、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、1-メチル-2-プロペニル基、2-メチル-2-プロペニル基、ブタン-1,3-ジエン-1-イル、ブタン-1,3-ジエン-2-イル、1,2-プロパジエン-1-イル基、1,1-ジメチルアリル基、オレイル基、リノレル基、リノレニル基等を挙げることができる。
【0035】
式(I)のX中、「無置換若しくは置換アルキニル基」の「アルキニル基」としては、エチニル基、1-プロピニル基、2-プロピニル基(プロパルギル基)、1-ブチニル基、2-ブチニル基、3-ブチニル基、1-メチル-2-プロピニル基、1,1-ジメチルプロパルギル基等を挙げることができる。
【0036】
式(I)のX中、「無置換若しくは置換アルコキシ基」の「アルコキシ基」としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、i-プロポキシ基、n-ブトキシ基、s-ブトキシ基、i-ブトキシ基、t-ブトキシ基、n-オクチルオキシ基、ステアリルオキシ基、パルミチルオキシ基等を挙げることができる。
【0037】
式(I)のX中、「無置換若しくは置換アルケニルオキシ基」の「アルケニルオキシ基」としては、ビニルオキシ基、アリルオキシ基、1-プロペニルオキシ基、プロペン-2-イルオキシ基、3-ブテニルオキシ基、2-ブテニルオキシ基、ブタン-1,3-ジエン-2-イルオキシ基、1,1-ジメチルアリルオキシ基、オレイルオキシ基、リノレルオキシ基、リノレニルオキシ基等を挙げることができる。
【0038】
式(I)のX中、「無置換若しくは置換アルキニルオキシ基」の「アルキニルオキシ基」としては、エチニルオキシ基、プロパルギルオキシ基、1-プロピルオキシ基、3-ブチニルオキシ基、1,1-ジメチルプロパルギルオキシ基等を挙げることができる。
【0039】
式(I)のX中、「無置換若しくは置換アルキルスルファニル基」の「アルキルスルファニル基」としては、メチルスルファニル基、エチルスルファニル基、n-プロピルスルファニル基、i-プロピルスルファニル基、n-ブチルスルファニル基、i-ブチルスルファニル基、s-ブチルスルファニル基、t-ブチルスルファニル基、ステアリルスルファニル基、パルミチルスルファニル基等を挙げることができる。
【0040】
式(I)のX中、「無置換若しくは置換アルケニルスルファニル基」の「アルケニルスルファニル基」としては、ビニルスルファニル基、アリルスルファニル基、1-プロペニルスルファニル基、プロペン-2-イルスルファニル基、3-ブテニルスルファニル基、2-ブテニルスルファニル基、ブタン-1,3-ジエン-2-イルスルファニル基、1,1-ジメチルアリルスルファニル基、オレイルスルファニル基、リノレルスルファニル基、リノレニルスルファニル基等を挙げることができる。
【0041】
式(I)のX中、「無置換若しくは置換アルキニルスルファニル基」の「アルキニルスルファニル基」としては、エチニルスルファニル基、プロパルギルスルファニル基、1-プロピルスルファニル基、3-ブチニルスルファニル基、1,1-ジメチルプロパルギルスルファニル基等を挙げることができる。
【0042】
式(I)のX中、「無置換若しくは置換アルキルアミノ基」の「アルキルアミノ基」としては、メチルアミノ基、エチルアミノ基、n-プロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、n-ブチルアミノ基、s-ブチルアミノ基、t-ブチルアミノ基、イソブチルアミノ基、ステアリルアミノ基、パルミチルアミノ基等を挙げることができる。
【0043】
式(I)のX中、「無置換若しくは置換ジアルキルアミノ基」の「ジアルキルアミノ基」としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジ(n-プロピル)アミノ基、ジ(イソプロピル)アミノ基、ジ(n-ブチル)アミノ基、ジ(s-ブチルアミノ)基、ジ(t-ブチルアミノ)基、ジイソブチルアミノ基、ジステアリルアミノ基、ジパルミチルアミノ基、エチルメチルアミノ基、エチルイソプロピルアミノ基等を挙げることができる。
【0044】
式(I)のX中、「無置換若しくは置換アルケニルアミノ基」の「アルケニルアミノ基」としては、ビニルアミノ基、アリルアミノ基、1-プロぺニルアミノ基、1-ブテニルアミノ基、2-ブテニルアミノ基、3-ブテニルアミノ基、2-メチルアリルアミノ基、2-メチル-1-プロぺニルアミノ基、1,1-ジメチルアリルアミノ基、オレイルアミノ基、リノレルアミノ基、リノレニルアミノ基等を挙げることができる。
【0045】
式(I)のX中、「無置換若しくは置換ジアルケニルアミノ基」の「ジアルケニルアミノ基」としては、ジビニルアミノ基、ジアリルアミノ基、ジ(1-プロぺニル)アミノ基、ジ(1-ブテニル)アミノ基、ジ(2-ブテニル)アミノ基、ジ(3-ブテニル)アミノ基、ジ(2-メチルアリル)アミノ基、ビス(2-メチル-1-プロぺニル)アミノ基、ビス(1,1-ジメチルアリル)基、ジオレイルアミノ基、ジリノレルアミノ基、ジリノレニルアミノ基等を挙げることができる。
【0046】
式(I)のX中、「無置換若しくは置換アルキニルアミノ基」の「アルキニルアミノ基」としては、エチニルアミノ基、プロパギルアミノ基、1-プロピニルアミノ基、1-ブチニルアミノ基、2-ブチニルアミノ基、3-ブチニルアミノ基、1,1-ジメチルプロパルギルアミノ基等を挙げることができる。
【0047】
式(I)のX中、「無置換若しくは置換ジアルキニルアミノ基」の「ジアルキニルアミノ基」としては、ジエチニルアミノ基、ジプロパギルアミノ基、ジ(1-プロピニル)アミノ基、ジ(1-ブチニル)アミノ基、ジ(2-ブチニル)アミノ基、ジ(3-ブチニル)アミノ基、ビス(1,1-ジメチルプロパルギル)アミノ基等を挙げることができる。
【0048】
式(I)のX中、「無置換若しくは置換アルコキシカルボニル基」の「アルコキシカルボニル基」としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n-プロポキシカルボニル基、i-プロポキシカルボニル基、n-ブトキシカルボニル基、s-ブトキシカルボニル基、i-ブトキシカルボニル基、t-ブトキシカルボニル基、n-オクチルオキシカルボニル基、n-ステアリルオキシカルボニル基、パルミチルオキシカルボニル基等を挙げることができる。
【0049】
式(I)で表されるカルボン酸イオンとして、以下に示す化合物を挙げることができる。
【0050】
【化3】
【0051】
【化4】
【0052】
【化5】
【0053】
【化6】
【0054】
【化7】
【0055】
【化8】
【0056】
本発明の水素貯蔵材料は、式(I)で表されるカルボン酸イオンと、多価金属イオンと、2つ以上の窒素原子を含む有機配位子(ただし、式(I)で表されるカルボン酸イオンは除く)又は窒素原子及びカルボキシイオン基を含む有機配位子(ただし、式(I)で表されるカルボン酸イオンは除く)からなり、前記式(I)で表されるカルボン酸イオン及び前記有機配位子と、前記多価金属イオンが結合してなる金属有機構造体を含有する。
【0057】
本発明の水素貯蔵材料に使用される2つ以上の窒素原子を含む有機配位子としては、ベンツイミダゾール、イミダゾール、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、ピラジン、4,4’-ジピリジル、1,2-ジ(4-ピリジル)エチレン、2,7-ジアザピレン、4,4’-アゾビスピリジン、ビス(3-(4-ピリジル)-2、4-ペンタンジオナト)銅等を挙げることができる。
また、窒素原子及びカルボキシイオン基を含む有機配位子としては、その前駆体であるカルボン酸として4-ピリジルカルボン酸、4-ピリダジンカルボン酸、4-ピリミジンカルボン酸等を挙げることができる。
【0058】
式(I)で表される有機配位子と、式(I)以外の有機配位子を混合して用いる場合の混合モル比は特に制限されないが、例えば、ピラー分子によって架橋して、ピラードレイヤー型のような3次元構造を構築する場合のピラー分子であれば、式(I)で表される有機配位子に対して、式(I)以外の有機配位子を過剰に用いるのが好ましい。
【0059】
本発明の金属有機構造体の製造方法として、特に制限されず、溶媒拡散法、溶媒撹拌法、水熱法等の溶液法、反応溶液にマイクロ波を照射して系全体を短時間に均一に加熱するマイクロ波法、反応容器に超音波を照射することにより、反応容器中で圧力の変化が繰り返し起こり、この圧力の変化により、溶媒が気泡を形成し崩壊するキャビテーションと呼ばれる現象がおき、その際に約5000K、10000barもの高エネルギー場が局所的に形成される結晶の各生成の反応場となる超音波法、溶媒を用いずに、金属イオン発生源と有機配位子を混合する固相合成法、結晶水程度の水を添加して金属イオン発生源と有機配位子を混合するLAG(liquid assisted grinding)法等のいずれの方法も用いることができる。
【0060】
例えば、金属イオンの発生源となる金属化合物と溶媒とを含有する第一溶液、式(I)で表される有機配位子の前駆体であるカルボン酸と溶媒とを含有する第二溶液、及び、必要に応じて、他の多座配位子となる化合物と溶媒とを含有する第三溶液をそれぞれ調製する工程と、第一溶液と、第二溶液及び第三溶液を混合して反応液を調製し、この反応液を加熱することで、金属有機構造体を得る工程と、を備える。第一~第三溶液は別々に調製する必要はなく、例えば、上記金属化合物、式(I)で表される有機配位子の前駆体であるカルボン酸、他の多座配位子となる化合物、溶媒とを1度に混合して1つの溶液を調製してもよい。
【0061】
上記金属化合物と式(I)で表される有機配位子との混合モル比は、得られてくる金属有機構造体の細孔サイズ、表面特性に応じて任意に選択することができるが、式(I)で表される有機配位子1モルに対して金属化合物を1モル以上用いるのが好ましく、さらに1.1モル以上、さらに1.2モル以上、さらに1.5モル以上、さらに2モル以上、さらに3モル以上用いるのが好ましい。
また、反応液中の上記金属イオンの濃度は、25~200mmol/Lの範囲が好ましい。
【0062】
式(1)で表される有機配位子の反応液中の濃度は、10~100mmol/Lの範囲が好ましい。
式(I)以外の有機配位子の反応液中の濃度は、25~100mmol/Lであるのが好ましい。
【0063】
用いられる溶媒としては、N,N-ジメチルホルムアミド(以下「DMF」と記載することがある。)、N,N-ジエチルホルムアミド(以下「DEF」と記載することがある。)、N,N-ジメチルアセトアミド及び水からなる群より選ばれる1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド又はジメチルアセトアミドのいずれかを単独で用いるか、あるいはN,N-ジメチルホルムアミド/水混合溶媒、N,N-ジエチルホルムアミド/水混合溶媒又はN,N-ジメチルアセトアミド/水混合溶媒を用いることが好ましい。
【0064】
反応液の加熱温度は、特に制限されないが、室温~140℃の範囲が好ましい。
【0065】
本発明の水素貯蔵材料を用いた水素の貯蔵方法は、特に制限されないが、本発明の水素貯蔵材料と水素ガスを接触させる方法が好ましく、接触させる方法は、特に制限されない。例えば、タンク中に、本発明の水素貯蔵材料を充填して水素貯蔵タンクとし、該タンク内に水素ガスを流入する方法、タンクの内壁を構成する表面に本発明の水素貯蔵材料を担持させて水素貯蔵タンクとし、該タンク内に水素ガスを流入する方法、タンクを本発明の水素貯蔵材料を含む材料で成型して水素貯蔵タンクとし、該タンク内に水素ガスを流入する方法などが挙げられる。
本発明の水素貯蔵タンクは、常圧又は高圧に耐えうる素材で内部に水素を貯蔵できる空間を有するように密封成型され、成型されたタンク内に、本発明の水素貯蔵材料を充填することにより構成することができる。
また、本発明の水素貯蔵タンクの別の態様として、本発明の水素貯蔵材料を必要に応じて他の成型可能な材料と混合して内部に水素を流入できる空間を有する形に密封成型して構成することができる。これらの態様は、単独で又は一緒になって、本発明の水素貯蔵タンクを構成してもよい。
【実施例
【0066】
以下、実施例を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明は、実施例の範囲に限定されない。
【0067】
実施例で使用した式(I)で表される有機配位子1~14の前駆体となるカルボン酸(以下、前駆体となるカルボン酸を含めて「有機配位子」と呼ぶ。)の構造を表1に示す。
なお、表1中の記号は以下の意味を表す。
n-Pr:n-プロピル基、i-Pr:イソプロピル基、n-Bu:n-ブチル基、Ph:フェニル基、Bn:ベンジル基、Me:メチル基、Et:エチル基、O:酸素原子、N:窒素原子、H:水素原子、C:炭素原子。
【0068】
【表1】
【0069】
[製造例1]有機配位子3の合成
p-ジ(n-ブチル)ベンゼン(26.3mmol)にヨウ素(2.6mmol)を加え、クロロホルムに溶解させた。そこへ臭素(52.6mmol)を滴下し、48時間攪拌させた。20%水酸化ナトリウムを加え、ジエチルエーテルで抽出した。抽出した溶液を硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過し、ろ液を減圧蒸留することで2,5-ジブロモ-1,4-ジ(n-ブチル)ベンゼン(22.8mmol)を得た。得られた2,5-ジブロモ-1,4-ジ(n-ブチル)ベンゼン(10mmol)にシアン化銅(30mmol)を加え、ジメチルホルムアミド(30mL)中に溶解させた。終夜還流させ、室温に戻したのち、アンモニア水(100mL)を加えた。析出した固体を濾別し、水で良く洗い、クロロホルムに溶解させた。硫酸マグネシウムで乾燥後、ろ過し、ろ液を減圧蒸留させた。得られた粗生成物をヘキサンで再結晶することで無色の固体として2,5-ジシアノ-1,4-ジ(n-ブチル)ベンゼン(9.5mmol)を得た。得られた2,5-ジシアノ-1,4-ジ(n-ブチル)ベンゼン(5.0mmol)に10M水酸化ナトリウム水溶液(75mmol)を加え、エチレングリコール(50mL)に溶解させたのち終夜還流した。室温に戻したのちに水(100mL)を加え、塩酸を加えてpH1に調整した。析出した固体を濾別し、よく乾燥させることで1.3g(4.7mmol)の有機配位子3を得た。
【0070】
[製造例2]有機配位子10の合成
2,5-ジメチルテレフタル酸ジエチル(42.9mmol)の四塩化炭素(260mL)溶液に対し、N-ブロモスクシンイミド(103mmol)、アゾイソブチロニトリル(1.72mmol)を加え一時間加熱還流した。その後、熱時ろ過を行い、室温に戻したろ液を減圧蒸留させた。得られた固体をヘキサンで洗い、2,5-ジ(ブロモメチル)テレフタル酸ジエチル(34.1mmol)を粗生成物として得た。得られたブロモメチル体(2.45mmol)とジブチルアミン(4.9mmol)、トリエチルアミン(4.9mmol)をジクロロメタン中で攪拌することで、2,5-ビス(N,N-ジブチルアミノ)テレフタル酸ジエチル(2.43mmol)を得た。水酸化ナトリウム(9.8mmol)を用いてエタノール中で加水分解し、塩酸で中和することで有機配位子10を得た。
【0071】
[比較例1]
テレフタル酸166.7mgをDMF13mLに溶解させ、そこへトリエチルアミン0.28mLを加えた。そこへ酢酸亜鉛二水和物557.7mgのDMF溶液17mLを滴下した。室温にて2.5時間攪拌し、得られた固体を遠心分離にて分離した。上澄みを除去し、固体をDMF(20mL)に一晩浸漬した。その後遠心分離して上澄みを除去し、クロロホルムを用いて置換した。遠心分離した固体をクロロホルム(20mL)に一晩浸漬し、再び遠心分離をする操作を3回繰り返した。その後、遠心分離した固体を150℃にて5時間真空乾燥することで金属有機構造体Aを(白色粉末、142.9mg)得た。
【0072】
[比較例2]
2,5-ジメチルテレフタル酸0.492g、硝酸亜鉛六水和物1.49gに、DMF(50mL)を加え、オーブンにて(反応条件:120℃、24時間)加熱した。室温に戻し、上澄みを除去した。DMF(50mL)を加え、上澄みを除去し、クロロホルムへと溶媒を交換した。クロロホルム(50mL)を加え、終夜浸漬させた。固体を吸引ろ過し、得られた固体を150℃で真空乾燥を5時間行い、金属有機構造体B(0.709g)を得た。
【0073】
[製造例1-1]
有機配位子4(0.75mmol)と、硝酸亜鉛六水和物(0.75mmol)と、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(0.40mmol)と、DMF(15mL)を室温下、超音波をあてながら15分間撹拌した。その後、遠心分離、ろか処理をしたろ液をオートクレーブに入れ、オーブンにて(反応条件:120℃、48時間)加熱した。室温に戻し、上澄みを捨てた後、結晶をDMFで洗った。その後、結晶をDMFに一晩浸漬した。その後、上澄みを除き、クロロホルムに置換した後、一日浸漬した。遠心分離した後、上澄みを除去する工程を3回繰り返した。遠心分離、上澄みを除去することで得られた固体を150℃で真空乾燥することで目的物である金属有機構造体1-1を得た。
【0074】
[製造例1-2]
有機配位子4の代わりに有機配位子2を使用したこと以外は、製造例1-1と同様の操作を行い、金属有機構造体1-2(白色固体)を得た。
【0075】
[製造例1-3]
有機配位子4の代わりに有機配位子7を使用したこと以外は、製造例1-1と同様の操作を行い、金属有機構造体1-3(白色固体)を得た。
【0076】
[製造例1-4]
有機配位子4の代わりに有機配位子13を使用したこと以外は、製造例1-1と同様の操作を行い、金属有機構造体1-4(無色結晶)を得た。
【0077】
[製造例2-1]
有機配位子4(0.485mmol)をDMF(7mL)に溶解させた。そこへ、酢酸亜鉛二水和物(1.29mmol)のDMF(9mL)溶液を滴下した。室温にて2.5時間攪拌し、得られた固体を遠心分離にて分離した。上澄みを除去し、固体をDMF(20mL)に一晩浸漬した。その後遠心分離して上澄みを除去し、クロロホルムを用いて置換した。遠心分離した固体をクロロホルム(20mL)に一晩浸漬し、再び遠心分離をする洗浄操作を3回繰り返した。その後、遠心分離した固体を150℃にて5時間真空乾燥することで金属有機構造体2-1を得た。
【0078】
[製造例2-2]
有機配位子4の代わりに有機配位子7を使用したこと以外は、製造例2-1と同様の操作を行い、金属有機構造体2-2(白色粉末)を得た。
【0079】
[製造例2-3]
有機配位子4の代わりに有機配位子2を使用したこと以外は、製造例2-1と同様の操作を行い、金属有機構造体2-3(白色粉末)を得た。
【0080】
[製造例2-4]
有機配位子4の代わりに有機配位子1を使用したこと以外は、製造例2-1と同様の操作を行い、金属有機構造体2-4(薄紫粉末)を得た。
【0081】
[製造例2-5]
有機配位子4の代わりに有機配位子13を使用した以外は、製造例2-1と同様に操作して、金属有機構造体2-5(無色粉末)を得た。
【0082】
[製造例2-6]
有機配位子4の代わりに有機配位子12を使用した以外は、製造例2-1と同様に操作して、金属有機構造体2-6(無色粉末)を得た。
【0083】
[製造例3-1]
有機配位子7(1.0mmol)をDMF(13mL)に溶解させ、トリエチルアミン(0.28mL)を添加した。そこへ、酢酸亜鉛二水和物(2.5mmol)のDMF(17mL)溶液を滴下した。室温にて2.5時間攪拌し、得られた固体を遠心分離にて分離した。上澄みを除去し、固体をDMF(20mL)に一晩浸漬した。その後遠心分離して上澄みを除去し、クロロホルムを用いて置換した。遠心分離した固体をクロロホルム(20mL)に一晩浸漬し、再び遠心分離をする洗浄操作を3回繰り返した。その後、遠心分離した固体を150℃にて5時間真空乾燥することで金属有機構造体3-1(白色粉末)を得た。
【0084】
[製造例3-2]
有機配位子7の代わりに有機配位子2を使用したこと以外は、製造例3-1と同様の操作を行い、金属有機構造体3-2(白色粉末)を得た。
【0085】
[製造例3-3]
有機配位子7の代わりに有機配位子1を使用したこと以外は、製造例3-1と同様の操作を行い、金属有機構造体3-3(薄紫粉末)を得た。
【0086】
[製造例3-4]
有機配位子7の代わりに有機配位子13を使用したこと以外は、製造例3-1と同様に操作して、金属有機構造体3-4(無色粉末)を得た。
【0087】
[製造例4-1]
有機配位子7(1.2mmol)、硝酸亜鉛六水和物(1.6mmol)にDMF(40mL)を加え、5分間攪拌した。そこへトリエチルアミン(14.4mmol)を滴下し、室温にて15分間攪拌した。20分静置させたのちに遠心分離を10分間行い、上澄みを除去した。残渣にDMF(10mL)を加え、再び遠心分離を10分間行い、上澄みを除去した。DMFに終夜浸漬した後に、遠心分離を10分間行い、上澄みを除去後、クロロホルム(10mL)を加えた。遠心分離した固体をクロロホルム(20mL)に一晩浸漬し、再び遠心分離をする洗浄操作を3回繰り返した。その後、遠心分離した固体を150℃にて5時間真空乾燥することで金属有機構造体4-1を得た。
【0088】
[製造例4-2]~[製造例4-9]
有機配位子7の代わりに表2に示す有機配位子を使用する以外は、製造例4-1と同様の操作を行い、金属有機構造体4-2~4-9を得た。
【0089】
【表2】
【0090】
[製造例5-1]
有機配位子7(0.1mmol)、硝酸亜鉛六水和物(0.3mmol)にDMF(20mL)を加え、オーブン(反応条件:120℃、24時間)にて加熱した。室温に戻し、遠心分離した後に上澄みを除去した。DMF(10mL)を加え、遠心分離したのちに溶媒を除去し、クロロホルムへと溶媒を交換した。クロロホルムを(10mL)加え、終夜浸漬させた。クロロホルムを遠心分離により除去後、150℃で真空乾燥を5時間行い、金属有機構造体5-1を得た。
【0091】
[製造例5-2]~[製造例5-15]
下記表3に示す有機配位子及び溶媒を用い、表3に示す反応条件で反応を行う以外は、製造例5-1と同様の操作を行い、金属有機構造体5-2~5-15を得た。その結果を表3に示す。
【0092】
【表3】
【0093】
[製造例6-1]
有機配位子1(250mg、1.0mmol)、硝酸アルミニウム九水和物(750mg,2.0mmol)、水(3mL)をオートクレーブに入れ、200℃で12時間加熱した。室温に戻し、遠心分離したのちに上澄みを除去した。DMF(10mL)を加え、遠心分離し、上澄み除去する操作を二回繰り返した。その後、水(10mL)を加え、同様に遠心分離、上澄み除去する操作を二回繰り返した。150℃で真空乾燥を5時間行い、金属有機構造体6-1(茶色粉末、301mg)を得た。
【0094】
[製造例7-1]
有機配位子1(62.6mg、0.25mmol)をエタノール(15mL)に溶かしたものを硝酸銅2.5水和物(116mg,0.60mmol)水溶液(15mL)とともにオートクレーブに入れ、140℃で24時間加熱した。室温に戻し、遠心分離したのちに上澄みを除去した。水(10mL)を加え、遠心分離し、上澄み除去する操作を三回繰り返した。その後、エタノール(10mL)を加え、同様に遠心分離、上澄み除去する操作を三回繰り返した。150℃で真空乾燥を5時間行い、金属有機構造体7-1(青色粉末、47mg)を得た。
【0095】
[製造例8-1]
有機配位子4(63.9mg、0.20mmol)、硝酸亜鉛六水和物(59.8mg、0.20mmol)、4,4‘-ビピリジン(31.7mg、0.20mmol)にDMF(20mL),エタノール(10mL)を加え室温で15分間攪拌した。懸濁液をセライトろ過し、得られた溶液をオートクレーブに入れ、85℃で48時間加熱した。室温に戻し、DMFを加え、終夜浸漬した後、上澄みを除き、クロロホルムに置換し、クロロホルム(10mL)を加え一日浸漬した。遠心分離し、溶媒を除去、再度クロロホルムを加え一晩浸漬し、遠心分離後に上澄みを除去する工程を3回繰り返した。遠心分離、上澄みを除去することで得られた固体を150℃で真空乾燥することで目的物である金属有機構造体8-1(51.5mg)を得た。
【0096】
[製造例9-1]
有機配位子1(63.2mg、0.25mmol)、塩化酸化ジルコニウム八水和物(83.6mg,0.25mmol)にDMF(10mL)、ギ酸(1.8mL)を加え120℃で24時間加熱した。室温に戻し、DMFを加え、終夜浸漬した後、上澄みを除き、クロロホルムに置換し、クロロホルム(10mL)を加え一日浸漬した。遠心分離し、溶媒を除去、再度クロロホルムを加え一晩浸漬し、遠心分離後に上澄みを除去する工程を3回繰り返した。遠心分離、上澄みを除去することで得られた固体を150℃で真空乾燥することで目的物である金属有機構造体9-1(47.1mg)を得た。
【0097】
[製造例10-1]
有機配位子13を0.102g、硝酸ニッケル六水和物0.233gに、THF9mL、水1mLを加え、オーブンにて(反応条件:100℃、24時間)加熱した。室温に戻し、遠心分離後、デカンテーションして固体を得た。その固体にDMFを加え、遠心分離し、デカンテーションする操作を3回繰り返し、終夜浸漬させた。上澄みを除去し、その固体にクロロホルムを加え、遠心分離、デカンテーションする操作を3回繰り返し、クロロホルムへと溶媒を交換し、終夜浸漬させた。固体をデカンテーションして得られた固体を150℃で真空乾燥を5時間行い、0.047gの金属有機構造体10-1を得た。
【0098】
[製造例10-2]~[製造例10-5]
下記表4に示す有機配位子を用い、表4に示す反応条件以外は、製造例10-1と同様に行い、金属有機構造体10-2~10-5を得た。その結果を表4に示す。
【0099】
【表4】
【0100】
[製造例11-1]
有機配位子13を0.077gと、塩化ジルコニウム0.071gと、水0.065gと、酢酸0.541gと、DMF4mLを室温下、超音波をあてながら5分間撹拌した。その後、オーブンにて(反応条件:120℃、24時間)加熱した。室温に戻し、遠心分離後、デカンテーションして固体を得た。その固体にDMFを加え、遠心分離し、デカンテーションする操作を3回繰り返した。上澄みを除去し、DMFを加え、終夜浸漬させた。遠心分離後、デカンテーションし、得られた固体にアセトンを加え、遠心分離し、デカンテーションする操作を3回繰り返した。上澄みを除去し、アセトンを加え、終夜浸漬させた。遠心分離、デカンテーションし、得られた固体を150℃で真空乾燥を5時間行い、0.053gの金属有機構造体11-1を得た。
【0101】
[製造例11-2]~[製造例11-5]
下記表5に示す有機配位子用いる以外は、実施例11-1と同様に行い、金属有機構造体11-2~11-5を得た。その結果を表5に示す。
【0102】
【表5】
【0103】
[製造例12-1]
有機配位子13を0.0510gと、硝酸銅3水和物0.0489gと、DMF4mLを加え、攪拌後、ろ過した。その後、オーブンにて(反応条件:120℃、24時間)加熱した。室温に戻し、遠心分離後、デカンテーションして固体を得た。その固体にDMFを加え、遠心分離し、デカンテーションする操作を3回繰り返した。上澄みを除去し、クロロホルムへと溶媒を交換した。クロロホルムを加え、洗浄、加圧ろ過する操作を3回繰り返し、クロロホルムを加えて終夜浸漬させた。固体を加圧ろ過し、得られた固体を150℃で真空乾燥を5時間行い、0.0488gの金属有機構造体12-1を得た。
【0104】
[製造例12-2]~[製造例12-10]
下記表6に示す有機配位子用い、表6に示す反応条件を用いる以外は、実施例12-1と同様に行い、金属有機構造体12-2~12-10を得た。その結果を表6に示す。
【0105】
【表6】
【0106】
[実施例1]
(BET比表面積測定及び水素貯蔵量測定)
得られた金属有機構造体の一部について、BET比表面積及び77K-大気圧における水素貯蔵量を測定した。
BET比表面積及び77K-大気圧における水素貯蔵量の測定は、ガス吸着量測定装置Tristar-II(Micromeritics社製)を用いて行った。
【0107】
BET比表面積は次の方法で算出した。金属有機構造体の50mg程度を、ガラスセルの内部に入れた。ガラスセルの内部は135℃の温度で真空まで減圧し、6時間乾燥させた。ガラスセルをガス吸着量測定装置に装着し、液体窒素入りの恒温槽に浸漬した。ガラスセルに含有される窒素の圧力を徐々に増加させた。ガラスセルの内部に導入された窒素の圧力が1.0×10Paとなるまで測定を行った。
77K常圧での水素貯蔵量は次の方法で算出した。窒素の測定後、水素へとガス種を変更し測定を行った。ガラスセルに含有される水素の圧力を徐々に増加させた。ガラスセルの内部に導入された水素の圧力が1.0×10Paとなるまで測定を行った。
測定したBET比表面積の結果を表7に示した。
測定した77K-大気圧における水素貯蔵量を表8に示した。
【0108】
【表7】
【0109】
【表8】
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明の水素貯蔵材料は、水素を実用的な水準で貯蔵できる。その結果、水素社会到来に向けて水素の利用がより容易になる。