(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】自動車両用ヘッドランプ光学システムの組立方法、および対応する自動車両用ヘッドランプ光学システム
(51)【国際特許分類】
F21S 41/39 20180101AFI20241016BHJP
F21W 102/00 20180101ALN20241016BHJP
【FI】
F21S41/39
F21W102:00
(21)【出願番号】P 2021535637
(86)(22)【出願日】2019-12-12
(86)【国際出願番号】 EP2019084903
(87)【国際公開番号】W WO2020126823
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2022-11-14
(32)【優先日】2018-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】アルドゥアン, マチュー
(72)【発明者】
【氏名】ゲルフィ, シルヴァン
(72)【発明者】
【氏名】ラマーレ, マキシム
(72)【発明者】
【氏名】マティアス, エゼキエル
(72)【発明者】
【氏名】オー, ヘリン
【審査官】吉田 昌弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-056227(JP,A)
【文献】国際公開第2018/161988(WO,A1)
【文献】特開2016-207509(JP,A)
【文献】特開2018-037274(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 41/39
F21W 102/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車両用ヘッドランプ光学システム(10)を組み立てる方法であって、前記システムが、反射鏡(12)、および光源装着済み部品(14)を備える、方法において、
前記光源装着済み部品(14)を前記反射鏡(12)の複数の支持面(20)上に配置し、前記反射鏡(12)に設けられた少なくとも2つの位置決めピン(22、26)を、それぞれ、前記光源装着済み部品(14)に設けられた少なくとも2つの位置決め孔(24)に通す、位置決めステップ(52)と、
前記光源装着済み部品(14)と前記反射鏡(12)とを一体に固定する、固定ステップ(58)と
を含み、
前記複数の支持面(20)が、前記光源装着済み部品(14)の表面と垂直な垂直軸の方向に支持するための
正3角形の頂点に分布する3つの支持面(20)を含み、前記少なくとも2つの位置決めピン(22、26)は対応する位置決め孔(24)の縁と長手軸方向に接触し、2つの位置決めピン(22、26)の少なくとも1つは対応する位置決め孔(24)の縁と横軸方向に接触し、前記横軸方向は前記2つの位置決めピン(22、26)が並ぶ方向であり、前記垂直軸と前記長手軸と前記横軸とが互いに直交することを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記位置決めステップ(52)の後、かつ前記固定ステップ(58)の前に、前記光源装着済み部品(14)を前記部品(14)の長手方向に動かす第1の位置調節ステップ(54)をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記位置決めステップ(52)の後、かつ前記固定ステップ(58)の前に、前記光源装着済み部品(14)を前記反射鏡(12)の方へ押す第2の位置調節ステップ(56)をさらに含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記固定ステップ(58)において、固定手段を、前記光源装着済み部品(14)および前記反射鏡(12)に設けられた固定孔(42)に挿入することを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記固定手段がねじであることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の方法のステップを実施して組み立てられることを特徴とする、自動車両用ヘッドランプ光学システム(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車両用ヘッドランプ光学システムの組立方法、およびそれに対応する自動車両用ヘッドランプ光学システムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車両用ヘッドランプ光学システムは、照明システムの分野に属し、自動車部門に適用されるものである。
【0003】
自動車両用光学システムの性能は、特に、光学システムを構成する様々な部品を組み立てる精度に依存する。
【0004】
したがって、文献EP-A-3321570は、自動車両用照明装置の光学システムに関して、光源の位置決めの精度を向上する方法を記述する。
【0005】
この精度が不十分な場合、光源と反射鏡との焦点不良を生じ、明るさが欠けることになり得る。
【発明の概要】
【0006】
本発明の目的は、従来技術のこれら短所を克服することである。
【0007】
このために、本発明は、自動車両用ヘッドランプ光学システムを組み立てる方法であって、このシステムが、反射鏡、および光源装着済み部品を備える、方法において、
光源装着済み部品を反射鏡の複数の支持面上に配置し、反射鏡に設けられた少なくとも2つの位置決めピンを、それぞれ、光源装着済み部品に設けられた少なくとも2つの位置決め孔に通す、位置決めステップと、
光源装着済み部品と反射鏡とを一体に固定するステップと
を含むことを特徴とする、方法を提案する。
【0008】
この方法によって、光源と光学システムとの間に静定系が形成され、それによって、機械的誤差を抑え、様々な製造工程および組立工程、ならびに自動車両用ヘッドランプの製造業者が提供する様々な反射鏡形態に適合することが可能になる。
【0009】
これによって、さらに、新型の車両ごとに生じる開発コストの抑制が可能になる。
【0010】
特定の一実施形態では、複数の支持面が、垂直軸方向に支持するための最大3つの支持面と、長手軸方向に支持するための2つの支持面と、横軸方向に支持するための1つの支持面とを含み、垂直軸と長手軸と横軸とが互いに直交する。
【0011】
これによって、静定性を最適化することが可能になる。
【0012】
特定の一実施形態では、本方法は、位置決めステップの後、かつ固定ステップの前に、光源装着済み部品をその長手方向に動かす第1の位置調節ステップをさらに含む。
【0013】
それにより、組立に際し光源装着済み部品の長手方向における静定性を確実に維持することによって、反射鏡に対する光源装着済み部品の位置決めの精度をさらに向上することが可能になる。
【0014】
特定の一実施形態では、本方法は、位置決めステップの後、かつ固定ステップの前に、光源装着済み部品を反射鏡の方へ押す第2の位置調節ステップをさらに含む。
【0015】
それによって、固定ステップ中に光源装着済み部品が回転するのを防止することが可能になる。
【0016】
特定の一実施形態では、固定ステップにおいて、固定手段を、光源装着済み部品および反射鏡に設けられた固定孔に挿入する。
【0017】
このように、単一の工程によって、光源装着済み部品と反射鏡とを精度を保って一体に固定することができる。
【0018】
特定の一特徴によれば、固定手段をねじにすることができる。
【0019】
上記に示されたのと同じ目的によって、本発明は、また、上記に簡単に説明された方法のステップを実施して組み立てられることを特徴とする自動車両用ヘッドランプ光学システムを提案する。
【0020】
自動車両用ヘッドランプ光学システムの特定の特徴および利点は、組立方法の特徴および利点と同様であるので、ここで繰り返さない。
【0021】
本発明のさらに多くの態様および利点が、以降の特定の実施形態の詳細な説明を読み、添付図面を参照することによって明らかになる。特定の実施形態は、完全に非限定的例として示されている。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明による特定の一実施形態における自動車両用ヘッドランプ光学システムの、2つ一組の斜視透視図である。
【
図2】本発明による自動車両用ヘッドランプ光学システムの、特定の一実施形態における組立工程において、特に反射鏡に設けられた支持面および位置決めピンを示す上視概略図である。
【
図3】本発明による組立方法に含まれた位置決めステップの、特定の一実施形態における概略透視図である。
【
図4】本発明による自動車両用ヘッドランプ光学システムの、特定の一実施形態における、位置を調節する任意選択ステップを示す概略上視図である。
【
図5】本発明による組立方法の、特定の一実施形態の諸ステップを示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明が、以下に、自動車両用ヘッドランプ光学システムの場合の非限定的例として説明される。しかしながら、本発明は、あらゆる投光光学システムに等しく適用可能である。
【0024】
図1の2つの図は、本発明の主題を形成する自動車両用ヘッドランプ光学システム10の特定の一実施形態の組立後の、異なる2つの視点からの全体図である。完全に非限定的例として示されているのは前方左側のヘッドランプである。しかしながら、本発明は、車両内の位置がどこであろうとも一様にあらゆる小型投光灯に関する。
【0025】
自動車両用ヘッドランプ光学システム10は、反射鏡12、光源装着済み部品14、および、任意選択で、冷却構成要素16を備える。
【0026】
反射鏡12は、たとえば、アルミニウムなどの金属の薄いコーティングを施されたプラスチック製の部品である。
【0027】
光源は、たとえば、発光ダイオードすなわちLEDタイプである。光源は、たとえば、プリント回路基板に固定され、そのプリント回路基板には、車両が出す指令に従って光源を作動させるように設計された電子回路を形成する他の要素が搭載されている。回路の導電トラックへの望ましくない電気接触を防止するために、基板は、有利には、たとえば適切なワニスの層によって被覆される。
【0028】
図示された特定の実施形態では、任意選択の冷却構成要素16には、光源および関連電子回路によって生じる熱を発散させるように働く複数のフィンが設けられている。
【0029】
自動車両用ヘッドランプ光学システム10を組み立てる方法の任意選択の第1のステップ(このステップは
図5の流れ図には示されていない)は、識別ステップであり、そのステップでは、反射鏡12、および/または光源装着済み部品14に関してそれらアイテムに付された識別情報を読み取る。
【0030】
非限定的例として、この識別情報は、少なくとも1次元バーコードに取り込むことができる。バーコードが1次元バーコードの場合、それは、たとえば、様々な太さの縞と間隙との集合として通常の様式で形成されたコードであり、反射鏡12と光源装着済み部品14とを個々に識別する。バーコードが2次元バーコードの場合、それは、たとえば、所与のパターンで並べられた点または正方形から成るマトリックスまたはデータマトリックス型のコードであり、同様に反射鏡12と光源装着済み部品14とを個々に識別する。
【0031】
識別情報は、たとえば、反射鏡12および/または光源装着済み部品14に貼付された接着ラベルに印刷され、適切なバーコード読取器を用いて読み取ることができる。
【0032】
この識別ステップは省略することもできる。
【0033】
図5が示すように、自動車両用ヘッドランプ光学システム10を組み立てる方法は、位置決めステップ52を含み、そのステップにおいて、光源装着済み部品14(冷却構成要素16が存在する場合には、部品14は、冷却構成要素16に前以て組付けられ得る)が、反射鏡12の複数の支持面20上に配置され、それら支持面が
図2に示される。
【0034】
部品14のプリント回路基板上の前述のワニスの層は、支持面20のレベルには存在しない。
【0035】
特定の一実施形態では、自動車両用ヘッドランプ光学システム10が組み立てられると、全ての支持面20が、光源装着済み部品14に設けられた静電気放電接地端子に接続される。
【0036】
図2は特定の一実施形態を示し、その実施形態では、支持面20は、数が3つであり、有利には、正3角形(図面に破線で示される)の頂点に分布し、それによって、垂直方向、すなわち光源装着済み部品14の表面に直交する方向における静定性が最適化される。
【0037】
さらに、光源装着済み部品14の長手方向および横方向の静定性を達成するために、少なくとも2本の位置決めピン22、26が、反射鏡12に設けられ、少なくとも2つの対応する孔24が、光源装着済み部品14に設けられる。位置決めピン22、26がそれぞれ、孔24の1つを通る。少なくとも2つの位置決めピン22および26は、基準座標における長手方向Xでは対応する各孔24の縁に接触し、車両の横方向Yでは、位置決めピン22の1つが対応する孔24の縁に接触すれば十分である。この基準座標では、軸Xは、車両の長手方向の後方向きを示し、軸Yは、車両の横方向の右向きを示し、軸Zは、垂直方向の上向きを示す。
【0038】
非限定的例として、位置決めピン22および26は、特定の形状であり得、たとえば実質的に円筒形であり、孔24は円形であり得る。位置決めピン22および26の特定の形状は、静定性を達成することを可能にする。位置決めピン22、26の1つが、たとえば、孔24の縁と接触する3つの面を有し得、その1つの面は、孔24の縁と軸X方向に接触し、2つの面は、孔24の縁とY方向に接触し、他方、もう1つの位置決めピンは、孔24の縁とX方向に接触する1つだけの接触面を有し得る。
【0039】
特定の一実施形態では、自動車両用ヘッドランプ光学システム10が射出成型によってプラスチックから製作され、孔24の縁と接触する位置決めピン22および26の表面は、有利には、プラスチック射出成型鋳型の光学面と同じ鋳型の空洞によって製造される。
【0040】
図示された特定の実施形態では、反射鏡12は、2つの位置決めピン22および26を備え、光源装着済み部品14は、ピン22および26が挿入されることになる2つの対応する孔24を備える。
【0041】
図3は、この特定の実施形態における位置決めステップ52を示す。
【0042】
図5の流れ図に示すように、位置決めステップ52に続いて、位置調節ステップ54および56を行う。
【0043】
すなわち、第1の位置調節ステップ54を行い、そのステップにおいて、光源装着済み部品14を、長手方向に動かしてその位置を可能な限り精密に調節し、そしてその位置に光源装着済み部品14を保持する。
【0044】
図4に示されるように、図面に矢印F1で示されたこの動きを行うために、機械または作業者は、冷却構成要素16に設けられた孔40を用いて、冷却構成要素16(光源装着済み部品14と前以て組み合されている)を把持する。孔40は、機械の把持具または作業者の手を通すことが十分に可能な寸法である。図示の特定の実施形態のように、孔40は、たとえば、形状が実質的に矩形であり得る。冷却構成要素16が用いられない場合には、機械または作業者は、光源装着済み部品14を直接把持する。
【0045】
図5が示すように、第2の位置調節ステップ56を行う。
【0046】
第2の位置調節ステップ56において、光源装着済み部品14を、
図4の矢印F2によって示すように、反射鏡12の方へその表面に垂直方向に押す。
【0047】
図5に示すように、位置決めステップ52ならびに位置調節ステップ54および56の後、固定ステップ58を行い、そのステップにおいて光源装着済み部品14と反射鏡12とを一体に固定する。
【0048】
特定の実施形態では、固定ステップ58において、固定手段を、反射鏡12と、光源装着済み部品14と、任意選択である冷却構成要素16が存在すればその冷却構成要素16とに設けられている固定孔42に挿入する。この固定孔42が、
図2および4に示されている。非限定的例として、固定手段は、たとえば、ねじやリベットやボルトでもよい。