(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】積層造形システム
(51)【国際特許分類】
B22F 12/90 20210101AFI20241016BHJP
B22F 10/25 20210101ALI20241016BHJP
B22F 10/28 20210101ALI20241016BHJP
B22F 10/31 20210101ALI20241016BHJP
B22F 10/85 20210101ALI20241016BHJP
B29C 64/393 20170101ALI20241016BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20241016BHJP
B33Y 50/02 20150101ALI20241016BHJP
【FI】
B22F12/90
B22F10/25
B22F10/28
B22F10/31
B22F10/85
B29C64/393
B33Y30/00
B33Y50/02
(21)【出願番号】P 2021546590
(86)(22)【出願日】2020-09-02
(86)【国際出願番号】 JP2020033344
(87)【国際公開番号】W WO2021054127
(87)【国際公開日】2021-03-25
【審査請求日】2023-06-06
(31)【優先権主張番号】P 2019172151
(32)【優先日】2019-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003458
【氏名又は名称】芝浦機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森松 大亮
(72)【発明者】
【氏名】藤巻 晋平
【審査官】坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-020309(JP,A)
【文献】特開2019-142184(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109855578(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 3/105,3/16,10/25,10/28,10/31,
10/85,12/90
B33Y 30/00,50/00,50/02
B29C 64/209,64/268,64/386,64/393
G01N 25/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の層を形成することで、当該複数の層を含む物体を造形する、積層造形部と、
それぞれの前記層の状態を測定する測定部と、
前記積層造形部により造形されるとともに前記複数の層を含むサンプル物体を透過した電磁波に基づき当該サンプル物体の内部に存在する欠陥を示す内部欠陥情報と、前記測定部により測定された前記サンプル物体の前記複数の層の測定結果を示すサンプル測定情報と、に基づく参照情報を記憶する記憶部と、
前記測定部により測定された前記物体の前記複数の層の測定結果を示す測定情報と、前記参照情報と、に基づき、前記物体の内部に欠陥が発生するか否かを推定する推定部と、
を有する制御部と、
を具備する積層造形システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記内部欠陥情報と、前記サンプル測定情報と、に基づき機械学習し、学習結果を生成する学習部、をさらに有し、
前記参照情報は、前記学習結果を有する、
請求項1の積層造形システム。
【請求項3】
前記内部欠陥情報は、コンピュータ断層撮影による前記サンプル物体の撮影結果に基づく、請求項1又は請求項2の積層造形システム。
【請求項4】
前記測定部は、それぞれの前記層の表面の形状を測定する、請求項1乃至請求項3のいずれか一つの積層造形システム。
【請求項5】
前記測定部は、それぞれの前記層の表面粗さを測定する、請求項1乃至請求項3のいずれか一つの積層造形システム。
【請求項6】
前記測定部は、非接触三次元測定機を有する、請求項4又は請求項5の積層造形システム。
【請求項7】
前記積層造形部は、材料を射出するとともに当該材料を溶融又は焼結することで前記層を形成するヘッドと、前記物体を支持する物体支持部と、前記ヘッドを前記物体支持部に対して相対的に移動させる移動部と、を有し、
前記測定部は、前記ヘッドに接続され、当該ヘッドと共に前記移動部により前記物体支持部に対して相対的に移動させられる、
請求項6の積層造形システム。
【請求項8】
前記積層造形部は、材料を溶融することで前記層を形成し、
前記測定部は、前記積層造形部に溶融された前記材料の状態を測定する、
請求項1乃至請求項3のいずれか一つの積層造形システム。
【請求項9】
前記測定部は、前記積層造形部に溶融された前記材料の温度分布を測定する、請求項8の積層造形システム。
【請求項10】
前記積層造形部は、前記推定部の推定結果に基づき前記層を補修する補修部を有する、請求項1乃至請求項9のいずれか一つの積層造形システム。
【請求項11】
前記参照情報は、前記内部欠陥情報と、前記サンプル測定情報と、前記サンプル物体の内部の欠陥の大きさに関する欠陥特性情報と、に基づき、
前記推定部は、前記測定情報と前記参照情報とに基づき、前記物体の内部に第1の欠陥又は第2の欠陥が発生するか否かを推定し、
前記積層造形部は、前記推定部が前記物体の内部に前記第1の欠陥が発生すると推定した場合に前記補修部により前記層を補修し、前記推定部が前記物体の内部に前記第2の欠陥が発生すると推定した場合に物体の造形を続行する、
請求項10の積層造形システム。
【請求項12】
前記サンプル物体は、アライメントマークを有し、
前記内部欠陥情報と、前記サンプル測定情報とは、前記内部欠陥情報に含まれる前記アライメントマークと、前記サンプル測定情報に含まれる前記アライメントマークと、に基づき互いに関連付けられる、
請求項1乃至請求項11のいずれか一つの積層造形システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、積層造形システムに関する。
【背景技術】
【0002】
材料により層を形成し、複数の層により物体を造形する積層造形装置が知られている。積層造形により造形された物体の内部には、欠陥が生じている可能性がある。このため、造形された物体の内部が、X線CTスキャンや他の方法により検査される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の物体の内部検査は、層又は物体の全体が形成された後に、物体の内部に既に発生した欠陥を検出する。すなわち、当該内部検査は、物体の内部における欠陥の発生を予測することができず、欠陥の発生を未然に抑制することができない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一つの実施形態に係る積層造形システムは、積層造形部と、測定部と、制御部と、を備える。前記積層造形部は、複数の層を形成することで、当該複数の層を含む物体を造形する。前記測定部は、それぞれの前記層の状態を測定する。前記制御部は、記憶部と、推定部と、を備える。前記記憶部は、前記積層造形部により造形されるとともに前記複数の層を含むサンプル物体を透過した電磁波に基づき当該サンプル物体の内部に存在する欠陥を示す内部欠陥情報と、前記測定部により測定された前記サンプル物体の前記複数の層の測定結果を示すサンプル測定情報と、に基づく参照情報を記憶する。前記推定部は、前記測定部により測定された前記物体の前記複数の層の測定結果を示す測定情報と、前記参照情報と、に基づき、前記物体の内部に欠陥が発生するか否かを推定する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係る積層造形システムを模式的に示す例示的な斜視図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態の積層造形システムを模式的に示す例示的な断面図である。
【
図3】
図3は、第1の実施形態の積層造形システムの構成を機能的に示す例示的なブロック図である。
【
図4】
図4は、第1の実施形態の参照データベースの作成手順を模式的に示す例示的な図である。
【
図5】
図5は、第1の実施形態の推定部の構成を機能的に示す例示的なブロック図である。
【
図6】
図6は、第1の実施形態の造形物及び補修装置を概略的に示す例示的な断面図である。
【
図7】
図7は、第1の実施形態の積層造形方法の一例を示す例示的なフローチャートである。
【
図8】
図8は、第2の実施形態に係る積層造形方法の一例を示す例示的なフローチャートである。
【
図9】
図9は、第3の実施形態に係る積層造形システムを模式的に示す例示的な断面図である。
【
図10】
図10は、第3の実施形態の積層造形システムの構成を機能的に示す例示的なブロック図である。
【
図11】
図11は、第3の実施形態の溶融領域の測定結果の一例を示す例示的な図である。
【
図12】
図12は、第3の実施形態の参照データベースの作成手順を模式的に示す例示的な図である。
【
図13】
図13は、第3の実施形態の積層造形方法の一例を示す例示的なフローチャートである。
【
図14】
図14は、第4の実施形態に係る積層造形システムを模式的に示す例示的な斜視図である。
【
図15】
図15は、各実施形態に係る積層造形システムの一例を示す例示的な斜視図である。
【
図16】
図16は、各実施形態の変形例に係る積層造形システムの構成を機能的に示す例示的なブロック図である。
【
図17】
図17は、各実施形態の変形例に係る制御部のハードウェア構成を示す例示的なブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
(第1の実施形態)
以下に、第1の実施形態について、
図1乃至
図7を参照して説明する。なお、本明細書においては基本的に、鉛直上方を上方向、鉛直下方を下方向と定義する。また、本明細書において、実施形態に係る構成要素及び当該要素の説明が、複数の表現で記載されることがある。構成要素及びその説明は、一例であり、本明細書の表現によって限定されない。構成要素は、本明細書におけるものとは異なる名称で特定され得る。また、構成要素は、本明細書の表現とは異なる表現によって説明され得る。
【0008】
図1は、第1の実施形態に係る積層造形システム1を模式的に示す例示的な斜視図である。
図2は、第1の実施形態の積層造形システム1を模式的に示す例示的な断面図である。積層造形システム1は、いわゆる指向性エネルギー堆積方式(Directed Energy Deposition:DED)又はレーザーメタルデポジション方式(Laser Metal Deposition:LMD)の三次元プリンタを含むシステムである。なお、積層造形システム1はこの例に限らず、パウダーベッド方式(Powder Bed Fusion:PBF)のような他の三次元プリンタを含んでも良い。
【0009】
各図面に示されるように、本明細書において、X軸、Y軸及びZ軸が定義される。X軸とY軸とZ軸とは、互いに直交する。Z軸は、例えば鉛直方向に延びる。X軸及びY軸は、例えば水平方向に延びる。なお、積層造形システム1は、Z軸が鉛直方向と斜めに交差するように配置されても良い。
【0010】
さらに、本明細書において、X方向、Y方向及びZ方向が定義される。X方向は、X軸に沿う方向であって、X軸の矢印が示す+X方向と、X軸の矢印の反対方向である-X方向とを含む。Y方向は、Y軸に沿う方向であって、Y軸の矢印が示す+Y方向と、Y軸の矢印の反対方向である-Y方向とを含む。Z方向は、Z軸に沿う方向であって、Z軸の矢印が示す+Z方向(上方向)と、Z軸の矢印の反対方向である-Z方向(下方向)とを含む。
【0011】
図2に示すように、積層造形システム1は、造形部11と、測定部12と、検査部13と、制御部14とを有する。造形部11は、積層造形部の一例である。制御部14は、情報処理装置又はコンピュータとも称され得る。
【0012】
造形部11は、例えば、粉末状の材料Mにより、固化されるとともに積み重ねられた複数の層3aを形成することで、当該複数の層3aを含む所定の形状の造形物3を積層造形(付加製造)する。造形物3は、物体の一例である。なお、造形部11はこの例に限らず、ワイヤ状の材料Mにより、複数の層3aを形成しても良い。
【0013】
図1及び
図2に示すように、造形部11は、テーブル21と、ヘッド22と、供給装置23と、移動装置24とを有する。テーブル21は、物体支持部の一例である。移動装置24は、移動部の一例である。
【0014】
図1に示すように、テーブル21は、支持面21aを有する。支持面21aは、略平坦に形成され、+Z方向に向く。なお、支持面21aは、他の方向に向いても良い。支持面21aは、積層造形された造形物3や、層3aを含む造形物3の仕掛品や、材料Mを積層させるためのベース3bを支持する。以下の説明において、造形物3は、積層造形が完了した造形物3、造形物3の仕掛品、及びベース3bを含む。
【0015】
ヘッド22は、材料Mを供給し、当該材料Mを、支持面21a、又は支持面21aに支持されたベース3bの上に積み重ねる。材料Mは、例えば、粉末状の金属である。なお、材料Mはこれに限られず、合成樹脂及びセラミックスのような他の材料であっても良い。積層造形システム1は、複数種類の材料Mにより、造形物3を積層造形しても良い。
【0016】
ヘッド22は、テーブル21の支持面21a、又は支持面21aの上の造形物3に材料Mを吐出(射出)する。なお、ヘッド22は、ワイヤ状の材料Mを繰出(射出)しても良い。また、エネルギー線Eが、ヘッド22から、吐出された材料Mや支持面21aの上の造形物3に照射される。エネルギー線Eは、例えば、レーザ光である。
【0017】
エネルギー線Eとしてのレーザ光が、材料Mの供給と並行してヘッド22から照射される。ヘッド22から、レーザ光に限らず、他のエネルギー線Eが照射されても良い。エネルギー線Eは、レーザ光のように材料Mを溶融又は焼結できるものであれば良く、例えば、電子ビームや、マイクロ波乃至紫外線領域の電磁波であっても良い。
【0018】
造形部11は、ベース3bや吐出された材料Mをエネルギー線Eにより加熱し、溶融領域(ビード)3cを形成する。溶融領域3cは、溶融池とも称され得る。溶融領域3cは、溶融された材料の一例である。
【0019】
ヘッド22は、溶融領域3cにおいて、材料Mにエネルギー線Eを照射して溶融又は焼結させ、材料Mを集合させる。このように、溶融領域3cは、供給された材料Mのみならず、エネルギー線Eを照射されたベース3bのような造形物3の一部を含み得る。また、溶融領域3cは、完全に溶融した材料Mのみならず、部分的に溶融した材料M同士が結合したものであっても良い。
【0020】
溶融領域3cが固化することで、ベースや造形物3の上に、層状又は薄膜状等の材料Mの集合としての層3aが形成される。なお、材料Mは、材料Mの集合への伝熱によって冷却されることにより、粒状で積層され、粒状の集合(層)となっても良い。
【0021】
造形部11は、ヘッド22から、材料Mの集合にエネルギー線Eを照射することで、アニール処理を行っても良い。層3aは、エネルギー線Eにより再溶融又は再焼結されてから、再度固化する。
【0022】
造形部11は、層3aを反復的に積み重ねることにより、造形物3を積層造形する。このように、造形部11のヘッド22は、エネルギー線Eを照射して材料Mを溶融又は焼結させて層3aを形成し、層3aの形成を繰り返し行うことで、支持面21aに支持された造形物3を積層造形する。
【0023】
図2に示すように、ヘッド22の先端22aは、間隔を介して造形物3に向く。ヘッド22に、出射路22b及び吐出路22cが設けられる。出射路22b及び吐出路22cは、例えば、先端22aに開口する。
【0024】
出射路22bは、略円形の断面を有する孔である。エネルギー線Eが、出射路22bを通り、ヘッド22の外部に出射される。吐出路22cは、略円環状の断面を有する孔であり、出射路22bを囲むように設けられる。キャリアガス及び材料Mが、吐出路22cを通り、ヘッド22の外部に吐出される。キャリアガスは、例えば、窒素やアルゴンのような不活性ガスである。
【0025】
上述のように、本実施形態における積層造形システム1は、ヘッド22の略中心からエネルギー線Eを供給し、その周囲からキャリアガス及び材料Mを供給する同軸ノズル方式である。しかし、積層造形システム1は、エネルギー線Eを供給するヘッド22と、材料Mを供給する他のノズルとを有する方式であっても良い。また、積層造形システム1は、ヘッド22の中心から材料Mを供給し、その周囲からエネルギー線Eを供給する方式であっても良い。
【0026】
供給装置23は、光学装置31と、材料供給装置32とを有する。光学装置31は、例えば、光源及び光学系を有する。光源は、発振素子を有し、発振素子の発振によりエネルギー線Eとしてのレーザ光を出射する。光源は、出射されるエネルギー線Eの出力(パワー)を変更可能である。
【0027】
光源は、出射されたエネルギー線Eを光学系に入射させる。エネルギー線Eは、例えば、光ファイバを含む光学系を経てヘッド22に入る。光学系は、エネルギー線Eの焦点径を変更可能である。光学装置31は、ヘッド22の出射路22bにエネルギー線Eを供給し、出射路22bからエネルギー線Eを出射させる。
【0028】
ヘッド22は、エネルギー線Eの照射によって、吐出された材料Mを加熱することにより、材料Mを溶融又は焼結することで層3aを形成するとともにアニール処理を行うことができる。また、ヘッド22は、造形物3の不要な部位をエネルギー線Eの照射によって除去することができる。
【0029】
材料供給装置32は、材料Mを収容するとともに、当該材料Mをキャリアガスによりヘッド22へ供給する。材料供給装置32は、配管を介して、ヘッド22の吐出路22cにキャリアガスと材料Mとを供給する。これにより、ヘッド22は、吐出路22cからキャリアガス及び材料Mを吐出する。材料供給装置32は、単位時間あたりにヘッド22から吐出される材料Mの量(質量又は体積)と、吐出される材料Mの速度と、を変更可能である。
【0030】
図1に示すように、移動装置24は、第1の移動装置24aと、第2の移動装置24bとを有する。第1の移動装置24aは、テーブル21に接続され、テーブル21を、例えばX方向及びY方向に移動させる。第2の移動装置24bは、ヘッド22に接続され、ヘッド22をX方向、Y方向、及びZ方向に移動させる。このように、移動装置24は、ヘッド22を、テーブル21に対して相対的に移動させる。なお、移動装置24は、テーブル21及びヘッド22のうち少なくとも一方を移動可能であれば良い。
【0031】
移動装置24は、テーブル21及びヘッド22のうち少なくとも一方を、X方向、Y方向、及びZ方向にそれぞれ延びる回転軸まわりに回転させても良い。これにより、テーブル21の支持面21aが向く方向、及びヘッド22の先端22aが向く方向が変化しても良い。
【0032】
測定部12は、それぞれの層3aの形成時に、当該層3aの状態を測定する。層3aの状態は、層3aの表面の形状と、層3aの表面粗さと、層3aを形成する溶融領域3cの幾何学的形状及び温度分布と、層3aに係る種々の要素とを含む。
【0033】
測定部12は、測定機41と、接続部42とを有する。測定機41は、例えば、非接触三次元測定機としてのレーザラインセンサである。なお、測定機41は、三次元スキャナや二眼カメラのような、三次元形状を測定可能な他の機器であっても良い。また、測定機41は、接触式の三次元測定機であっても良い。
【0034】
測定機41は、接続部42により、ヘッド22に接続されている。言い換えると、測定部12は、ヘッド22に接続されている。このため、測定部12は、ヘッド22と共に移動装置24によりテーブル21に対して相対的に移動させられる。
【0035】
測定機41は、ヘッド22に対して相対的に移動可能であっても良い。例えば、測定機41は、ヘッド22に接続される代わりに、ロボットアームに取り付けられても良い。また、PBFの三次元プリンタにおいては、測定機41は、例えば、ロボットアームや門型の移動装置に取り付けられる。
【0036】
図2に示すように、測定機41は、出射部41aを有する。出射部41aは、ヘッド22の先端22aと略同一方向に向く。測定機41は、出射部41aから、ライン光線Lを出射する。
【0037】
測定機41は、ライン光線Lを、ヘッド22により形成された層3a又はベース3bの表面で走査させる。ライン光線Lは、例えば、テーブル21に対するヘッド22の進行方向(例えば+Y方向)と略直交する方向(例えばX方向)に、層3a又はベース3bの表面を走査する。これにより、測定機41は、ライン光線Lが走査した層3a又はベース3bの表面の輪郭形状を測定する。
【0038】
測定機41は、層3a又はベース3bの表面の輪郭形状を連続的に測定する。積層造形システム1は、測定機41により得られた複数の輪郭形状を合成することで、層3a又はベース3bの表面の三次元形状を得ることができる。このように、測定部12は、層3aの表面の形状を測定する。層3aの表面は、造形物3の内部構造となる。このため、測定部12は、造形物3の内部構造を測定しているとも言える。
【0039】
測定機41は、テーブル21に対するヘッド22の進行方向の逆方向(例えば-Y方向)に、ヘッド22から離間している。このため、測定機41は、層3aを形成するヘッド22を追って、テーブル21に対して相対的に移動する。
【0040】
測定機41は、ヘッド22により形成された層3aの表面の形状を、当該層3aの形成から僅かに遅れてライン光線Lにより測定することができる。言い換えると、測定部12は、ヘッド22により形成された層3aの表面の形状を大よそリアルタイムで測定することができる。なお、測定部12は、形成される層3aの表面の形状をリアルタイムで測定しても良いし、一つの層3aが完成した後に当該層3aの表面の形状を測定しても良い。
【0041】
検査部13は、例えば、CTスキャナ45を有する。CTスキャナ45は、対象物を透過したX線(電磁波)に基づき当該対象物の内部形状を測定することができる。CTスキャナ45は、例えば、数μm~数百μmの空間分解能で、対象物の内部形状を測定することができる。なお、検査部13は、対象物を透過した電磁波に基づき当該対象物の内部形状を測定可能な他の装置を有しても良い。また、検査部13は、積層造形システム1と異なる装置であっても良い。
【0042】
制御部14は、造形部11、測定部12、及び検査部13に信号線を介して電気的に接続される。制御部14は、例えば、造形部11と一体的に設けられた制御部であっても良いし、造形部11とは別に設けられたコンピュータを含んでも良い。
【0043】
制御部14は、例えば、CPU(Central Processing Unit)14aのような制御装置と、ROM(Read Only Memorry)14bと、RAM(Random Access Memorry)14cと、外部記憶装置14dと、出力装置14eと、入力装置14fとを有し、通常のコンピュータを利用したハードウェア構成となっている。CPU14a、ROM14b、RAM14c、外部記憶装置14d、出力装置14e、及び入力装置14fは、バスにより、又はインターフェースを介して、互いに接続されている。
【0044】
CPU14aがROM14b又は外部記憶装置14dに組み込まれたプログラムを実行することで、制御部14は、積層造形システム1の各部を制御する。例えば、制御部14は、造形部11のテーブル21、ヘッド22、供給装置23、及び移動装置24と、測定部12の測定機41と、検査部13のCTスキャナ45とを制御する。
【0045】
ROM14bは、プログラム及びプログラムの実行に必要なデータを格納している。RAM14cは、プログラムの実行時に作業領域として機能する。外部記憶装置14dは、例えば、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)のような、データを記憶、変更、削除可能な装置である。出力装置14eは、例えば、ディスプレイやスピーカである。入力装置14fは、例えば、キーボードやマウスである。
【0046】
図3は、第1の実施形態の積層造形システム1の構成を機能的に示す例示的なブロック図である。制御部14は、例えば、CPU14aがROM14b又は外部記憶装置14dに格納されたプログラムを読み出し実行することで、
図3に示す各部を実現する。
図3に示すように、制御部14は、例えば、記憶部51と、造形制御部52と、情報取得部53と、情報生成部54と、学習部55と、推定部56とを備える。
【0047】
例えば、CPU14aが、造形制御部52、情報取得部53、情報生成部54、学習部55、及び推定部56として機能する。また、RAM14cや外部記憶装置14dが、記憶部51として機能する。
【0048】
記憶部51は、NCプログラム61と、参照データベース(DB)62と、測定情報63とを含む、種々の情報を記憶する。参照データベース62は、参照情報の一例である。
【0049】
NCプログラム61は、複数の層3aと、当該層3aを含む造形物3と、の造形のための情報である。NCプログラム61は、例えば、造形物3及び層3aの形状と、ヘッド22の移動経路と、移動経路上の各座標における、積層造形のパラメータの情報を含む。積層造形のパラメータは、例えば、ヘッド22の移動速度、ヘッド22の向き、吐出される材料Mの単位時間あたりの量、吐出される材料Mの速度、及び照射されるエネルギー線Eの出力を含む。NCプログラム61は、他の情報をさらに含んでも良い。
【0050】
造形制御部52は、NCプログラム61に基づいて、光学装置31、材料供給装置32、及び移動装置24を含む造形部11を制御し、複数の層3a(造形物3)を積層造形する。また、造形制御部52は、造形部11を停止させることが可能である。
【0051】
参照データベース62は、測定部12による層3aの測定結果から、造形物3の内部に欠陥が発生するか否かを推定するために用いられる。参照データベース62は、例えば、複数のサンプル測定情報65と、内部欠陥情報66と、複数の欠陥特性情報67と、畳み込みニューラルネットワーク(Convolutional Neural Network;CNN)68とを含む。CNN68は、学習結果の一例である。なお、制御部14は、CNN68と異なる他のニューラルネットワークや、他の深層学習(機械学習)の学習モデルを有しても良い。また、参照データベース62は、サンプル測定情報65、内部欠陥情報66、欠陥特性情報67、及びCNN68と異なる情報を有しても良い。
【0052】
本実施形態では、互いに関連付けられたサンプル測定情報65と内部欠陥情報66とに基づく機械学習により生成されたCNN68が、造形物3の内部に欠陥が発生するか否かの推定に用いられる。サンプル測定情報65は、後述する機械学習用のサンプルの形状の測定結果に加え、例えば、当該サンプルを積層造形するためのNCプログラム61に含まれる積層造形のパラメータの情報と、サンプルの材料Mの情報とのような、他の情報を含み得る。さらに、CNN68が算出する特徴量と、当該特徴量に関連付けられた欠陥特性情報67とが、造形物3の内部に発生する欠陥の大きさの推定に用いられる。なお、参照データベース62は、この例に限られず、互いに関連付けられたサンプル測定情報65、内部欠陥情報66、及び欠陥特性情報67が、造形物3の内部に欠陥が発生するか否かの推定に用いられても良い。また、参照データベース62は、サンプル測定情報65、内部欠陥情報66、及び欠陥特性情報67のうち少なくとも一つに基づき、造形物3の内部に欠陥が発生するか否かの推定に用いられる計算式又はプログラムを有しても良い。すなわち、参照データベース62は、測定部12による層3aの測定結果から、造形物3の内部に欠陥が発生するか否かを推定するために参照される情報であれば良く、多数の情報の集まりに限られない。
【0053】
以下、サンプル測定情報65、内部欠陥情報66、及び欠陥特性情報67の取得方法と、CNN68の生成方法との一例について説明する。なお、サンプル測定情報65、内部欠陥情報66、欠陥特性情報67、及びCNN68は、以下の例に限られない。
【0054】
図4は、第1の実施形態の参照データベース62の作成手順を模式的に示す例示的な図である。まず、造形部11が、サンプル3Sを積層造形する。サンプル3Sは、サンプル物体の一例である。
【0055】
サンプル3Sは、造形部11により造形される造形物3である。このため、サンプル3Sは、他の造形物3と同じく、複数の層3aを含む。さらに、サンプル3Sは、ベース3bを含む。
【0056】
サンプル3Sは、略直方体として形成され、CTスキャナ45により内部形状を測定可能な大きさを有する。例えば、サンプル3Sの高さ、幅、及び奥行きは、約1~2cmに設定される。なお、サンプル3Sの大きさは、この例に限られない。
【0057】
サンプル3Sのベース3bは、アライメントマーク3dを有する。アライメントマーク3dは、例えば、ベース3bの表面から窪んだ凹部である。アライメントマーク3dが三次元的(立体的)形状を有することで、測定機41及びCTスキャナ45がアライメントマーク3dを測定することができる。
【0058】
図4の例において、アライメントマーク3dは、略三角形の凹部である。なお、アライメントマーク3dは、この例に限られない。また、ベース3bに、複数のアライメントマーク3dが設けられても良い。
【0059】
アライメントマーク3dは、造形物3の積層造形が完了した場合にも、層3aに覆われずに露出される。例えば、アライメントマーク3dは、層3aが積層されるベース3bの表面に設けられるとともに、層3aから離間している。
【0060】
サンプル3Sの造形中に、一つの層3aが形成される毎に、測定部12が当該層3aの表面の形状を測定する。情報取得部53は、測定部12から測定結果(電気信号)を取得する。情報生成部54は、情報取得部53が取得した測定部12の測定結果から、サンプル測定情報65を生成する。すなわち、サンプル測定情報65は、測定部12により測定されたサンプル3Sの層3aの表面の三次元形状の測定結果を示している。なお、情報生成部54は、情報取得部53が取得した測定部12の測定結果に加え、例えば、サンプル3Sを積層造形するためのNCプログラム61に含まれる積層造形のパラメータの情報と、サンプル3Sの材料Mの情報とから、サンプル測定情報65を生成しても良い。この場合、情報生成部54は、例えば、NCプログラム61から積層造形のパラメータの情報を抽出しても良い。
【0061】
層3aの形成が開始又は終了される層3aの縁では、ヘッド22の速度や造形条件が不安定となることがある。測定部12は、例えば、層3aの縁から離間した部分の表面の形状を測定する。これにより、測定部12は、安定した造形条件で形成される層3aの表面の形状を測定することができる。なお、測定部12は、層3aの縁の周辺における表面の形状を測定しても良い。
【0062】
情報生成部54は、例えば、測定部12により測定された層3aの表面の形状の測定結果を画像処理することにより、サンプル測定情報65を得ることができる。測定部12により測定された層3aの表面の形状に係る情報は、ライン光線Lが走査した層3aの表面の座標群である。
【0063】
上述のように、測定部12は、層3aの縁の周辺を含む層3aの表面の全域の形状を測定しても良い。この場合、情報生成部54は、層3aのうち不安定な造形条件で造形された部分の表面の形状を、測定部12が測定した層3aの全域の表面の形状から除去(トリミング)して、サンプル測定情報65を得ても良い。これにより、情報生成部54は、安定した造形条件で形成される層3aの表面の形状に係るサンプル測定情報65を得ることができる。
【0064】
層3aの表面における座標は、例えば、ヘッド22の先端22aに対する測定機41の位置と、テーブル21に対するヘッド22の相対的な位置と、層3aの表面と測定機41との間の距離とから得られる。ヘッド22の先端22aに対する測定機41の位置は、例えば、予め実測される。テーブル21に対するヘッド22の相対的な位置は、例えば、NCプログラム61から得られる。層3aの表面と測定機41との間の距離は、例えば、測定機41の検出信号から得られる。
【0065】
サンプル3Sが造形されると、サンプル3SがX線遮蔽室に配置され、CTスキャナ45により撮影される。CTスキャナ45による撮影の前に、ベース3bの一部が切り離されても良い。この場合、アライメントマーク3dは、切り離されずに残される。
【0066】
情報取得部53は、CTスキャナ45からコンピュータ断層撮影(CT)によるサンプル3Sの撮影結果(電気信号)を取得する。情報生成部54は、情報取得部53が取得したCTスキャナ45の撮影結果に基づき、内部欠陥情報66を生成する。内部欠陥情報66は、いわゆるCT画像である。
【0067】
例えば、エネルギー線Eから材料Mに供給される熱量や、溶融領域3cの冷却時間のような、造形条件が不適切である場合に、互いに重ねられる二つの層3aの間の境界における融合が不十分となることがある。これにより、造形物3(サンプル3S)の内部に欠陥Hが発生することがある。欠陥Hは、造形物3の引張強度及び疲労強度の低下を引き起こす虞がある。
【0068】
内部欠陥情報66は、サンプル3Sの内部形状を示す。このため、内部欠陥情報66から、サンプル3Sの内部に発生した欠陥Hの形状、大きさ、及び座標に係る情報を取得することが可能である。すなわち、内部欠陥情報66は、サンプル3Sを透過したX線(電磁波)に基づき、当該サンプル3Sの内部に存在する欠陥Hを示す。
【0069】
次に、情報生成部54は、サンプル測定情報65を水平方向に分割し、複数の分割部分65aを生成する。分割部分65aは、水平方向において所定の大きさを有するように分割された、サンプル測定情報65の一部である。
【0070】
次に、情報生成部54は、例えば、内部欠陥情報66における欠陥Hを閉じた空間とみなし、当該欠陥Hを内部欠陥情報66から抽出する。情報生成部54は、分割されたサンプル測定情報65と、欠陥Hが抽出された内部欠陥情報66とを重ね合わせる。例えば、サンプル測定情報65をCTデータ解析ソフトウェアで読み込むことで、サンプル測定情報65と内部欠陥情報66とを重ね合わせることが可能である。
【0071】
情報生成部54は、内部欠陥情報66における欠陥Hと重なる分割部分65aに、「欠陥有り」のラベルを付与する。また、情報生成部54は、内部欠陥情報66における欠陥Hと重ならない分割部分65aに、「欠陥無し」のラベルを付与する。
【0072】
サンプル測定情報65と内部欠陥情報66との重ね合わせは、例えば、アライメントマーク3dを基準として行われる。例えば、測定部12は、層3aの表面の形状を測定する際に、又は層3aの表面の形状を測定する前に、アライメントマーク3dの形状を測定する。これにより、サンプル測定情報65の少なくとも一つが、アライメントマーク3dに係る情報を含む。
【0073】
情報生成部54は、例えば、三角形であるアライメントマーク3dの重心を、サンプル測定情報65における座標の基準点(原点)として設定する。なお、他の位置が基準点として設定されても良い。また、アライメントマーク3dは、NCプログラム61における座標の基準点として設定されても良い。
【0074】
CTスキャナ45は、アライメントマーク3dを含む内部欠陥情報66を撮影する。これにより、内部欠陥情報66がアライメントマーク3dに係る情報を含む。情報生成部54は、三角形であるアライメントマーク3dの重心を、内部欠陥情報66における座標の基準点(原点)として設定する。
【0075】
情報生成部54は、サンプル測定情報65の基準点と、内部欠陥情報66の基準点と、が一致するように、サンプル測定情報65と内部欠陥情報66とを重ね合わせる。すなわち、内部欠陥情報66と、サンプル測定情報65とは、内部欠陥情報66に含まれるアライメントマーク3dと、サンプル測定情報に含まれるアライメントマーク3dと、に基づき互いに関連付けられる。なお、分割部分65aと内部欠陥情報66との重ね合わせは、この例に限られない。
【0076】
情報生成部54は、「欠陥有り」又は「欠陥無し」のラベルが付与された複数の分割部分65aを、複数の画像69に変換する。画像69は、二次元の画像である。複数の画像69は、「欠陥有り」のラベルが付与された複数の画像69aと、「欠陥無し」のラベルが付与された複数の画像69bとを含む。複数の画像69は、いわゆる教師データとして機械学習に利用される。
【0077】
情報生成部54は、「欠陥有り」のラベルが付与された画像69bについて、欠陥特性情報67を生成する。欠陥特性情報67は、サンプル3Sの内部の欠陥Hの大きさに関する情報である。欠陥特性情報67は、例えば、画像69bに対応する位置においてサンプル3Sの内部に発生した欠陥Hの幅、長さ、体積、表面積、個数、及び密度に係る情報であり、内部欠陥情報66から得られる。
【0078】
次に、学習部55が、複数の画像69に基づき機械学習し、学習結果としてCNN68を生成する。CNN68は、例えば、畳み込み層、活性化関数、プーリング、全結合、ソフトマックス関数のような複数の層を含む。
【0079】
学習部55は、画像69を入力として、CNN68の順伝搬を行う。さらに、学習部55は、CNN68の出力値を入力として、CNN68の逆伝搬を行う。学習部55は、順伝搬及び逆伝搬における演算結果に基づき、CNN68を更新する。学習部55は、CNN68の更新を繰り返し、機械学習を行う。
【0080】
CNN68は、例えば、入力された画像69から、欠陥Hの発生に係る当該画像69の特徴量を算出する。当該特徴量は、画像69に対応する位置においてサンプル3Sの内部に欠陥Hが発生するか否かを示す。また、本実施形態において、特徴量は、画像69に対応する位置においてサンプル3Sの内部に発生する欠陥Hの大きさに関する情報を示す。
【0081】
以上のように、学習部55は、内部欠陥情報66及びサンプル測定情報65に基づく画像69に基づき機械学習し、学習結果としてのCNN68を生成する。なお、学習部55は、深層学習に限らず、人間により予め定められた特徴量に基づいて当該特徴量のパターンを学習するような、他の機械学習を行っても良い。
【0082】
次に、情報生成部54は、欠陥特性情報67と、CNN68の特徴量とを関連付ける。これにより、CNN68が算出する特徴量に基づき、発生する欠陥Hの大きさが推定可能となる。以上により、欠陥Hの発生、及び発生する欠陥Hの大きさを推定するための参照データベース62が、サンプル測定情報65、内部欠陥情報66、及び欠陥特性情報67に基づき生成され、記憶部51に記憶される。
【0083】
図5は、第1の実施形態の推定部56の構成を機能的に示す例示的なブロック図である。推定部56は、測定部12により測定された造形物3の層3aの測定結果を示す測定情報63と、参照データベース62とに基づき、造形物3の内部に欠陥が発生するか否かを推定(予測)する。言い換えると、推定部56は、層3aの表面の形状から、当該層3aに次の層3aが積み重ねられることで欠陥Hが発生するか否かを予測する。
図5に示すように、推定部56は、発生予測部56aと、特徴予測部56bと、出力部56cとを有する。
【0084】
発生予測部56aは、記憶部51からCNN68を取得する。さらに、発生予測部56aは、情報生成部54から、測定部12により測定された造形物3の層3aの測定結果を示す測定情報63を取得する。
【0085】
測定情報63は、例えば、以下のように生成される。造形物3の造形中に、測定部12が、層3aの表面の形状を測定する。情報取得部53は、測定部12から測定結果(電気信号)を取得する。情報生成部54は、情報取得部53が取得した測定部12の測定結果から、測定情報63を生成する。なお、情報生成部54は、情報取得部53が取得した測定部12の測定結果に加え、例えば、造形物3を積層造形するためのNCプログラム61に含まれる積層造形のパラメータの情報と、造形物3の材料Mの情報とから、測定情報63を生成しても良い。この場合、情報生成部54は、例えば、NCプログラム61から積層造形のパラメータの情報を抽出しても良い。
【0086】
測定情報63は、例えば、層3aの表面の少なくとも一部の形状を示す二次元画像である。測定情報63は、CNN68の入力として利用可能な情報であれば良い。例えば、CNN68が三次元画像を入力とする場合、情報生成部54は、三次元画像としての測定情報63を生成する。
【0087】
発生予測部56aは、測定情報63を入力とし、CNN68から出力としての特徴量を算出する。発生予測部56aは、算出された特徴量から、造形物3の内部に欠陥Hが発生するか否かを推定する。
【0088】
特徴予測部56bは、発生予測部56aが欠陥Hの発生を予測した場合、欠陥Hの大きさを推定(予測)する。例えば、特徴予測部56bは、発生予測部56aから特徴量を取得する。さらに、特徴予測部56bは、記憶部51から欠陥特性情報67を取得する。特徴予測部56bは、欠陥特性情報67を参照し、特徴量から欠陥Hの大きさを推定する。
【0089】
出力部56cは、発生予測部56a及び特徴予測部56bの推定結果を出力する。例えば、出力部56cは、発生予測部56a及び特徴予測部56bの推定結果を記憶部51に記憶させる。推定結果は、例えば、発生が予測される欠陥Hの座標及び大きさに係る情報を含む。また、出力部56cは、発生予測部56a及び特徴予測部56bの推定結果を造形制御部52に出力することで、造形制御部52に層3aを補修させても良い。
【0090】
図3に示すように、造形部11は、補修装置71をさらに有する。補修装置71は、補修部の一例である。補修装置71は、造形制御部52に制御されることで、推定部56の推定結果に基づき層3aを補修する。
【0091】
図6は、第1の実施形態の造形物3及び補修装置71を概略的に示す例示的な断面図である。
図6に示すように、補修装置71は、例えば、切削部72を有する。切削部72は、例えばエンドミルである。
【0092】
例えば、造形制御部52は、測定部12により測定された層3aの表面の形状に基づき、最大高さZmと、削り代Cとを算出する。最大高さZmは、層3aの表面におけるZ方向(厚さ方向)の座標の最大値である。削り代Cは、層3aの表面におけるZ方向の座標の最大値と最小値との差である。Z方向の座標は、ベース3bのアライメントマーク3d、又はテーブル21の支持面21aを基準としている。
【0093】
切削部72の先端が、最大高さZmと削り代Cとの差である加工高さZpに配置される。加工高さZpに位置する切削部72が層3aを切削することで、層3aの表面が略平坦に加工される。
【0094】
図6のように、層3aの表面が形成する凹凸の起伏が大きい場合、造形物3の内部に欠陥Hが発生する確率が高い。補修装置71が層3aの表面を略平坦に加工することで、造形物3の内部に欠陥Hが発生する確率が低減する。
【0095】
補修装置71は、表面が測定された層3a、又は当該層3aを含む複数の層3aを削り取っても良い。この場合、削り取られた層3aの形成を造形部11がやり直すことで、造形物3の内部に欠陥Hが発生することが抑制される。
【0096】
補修装置71がテーブル21に配置された造形物3を補修可能である場合、補修装置71は、例えば、NCプログラム61における基準点を基準として、層3aを補修する。補修装置71がテーブル21とは異なる位置に配置される造形物3を補修する場合、補修装置71は、アライメントマーク3dを例えばカメラで読み取り、当該アライメントマーク3dに基準点を設定する。
【0097】
図7は、第1の実施形態の積層造形方法の一例を示す例示的なフローチャートである。以下、積層造形システム1による積層造形について
図7を参照して説明する。なお、
図7を参照して以下に説明する積層造形方法はあくまで一例であり、積層造形システム1は、他の方法により積層造形を行っても良い。
【0098】
図7に示すように、まず、造形部11が、NCプログラム61に基づいて積層造形を開始する(S11)。次に、測定部12の測定機41が、層3aの表面の形状を測定する(S12)。例えば、一つの層3aの完成後に、測定部12が層3aの表面の形状を測定する。なお、測定部12が層3aの表面をライン光線Lによりリアルタイムで走査しても良い。この場合、走査された層3aの表面の輪郭形状の数が所定の数に達した時点で、情報生成部54が、これらの複数の輪郭形状から層3aの表面の一部の形状を示す測定情報63を生成する。
【0099】
次に、推定部56の発生予測部56aが、造形物3の内部に欠陥Hが発生するか否かを予測する(S13)。発生予測部56aが、測定情報63とCNN68とに基づき特徴量を算出する。発生予測部56aは、算出された特徴量から、造形物3の内部に欠陥Hが発生するか否かを予測する。例えば、特徴量が閾値を上回る場合、発生予測部56aは、測定情報63に対応する位置において欠陥Hが発生すると判定する。
【0100】
造形物3の内部に欠陥Hの発生が予測される場合(S13:Yes)、特徴予測部56bが、欠陥Hの大きさが所定の大きさ(例えば50μm)よりも大きいか否かを予測する(S14)。所定の大きさは、例えば、サンプル3Sの引張試験のような検証により定められ得る。
【0101】
特徴予測部56bは、発生予測部56aが算出した特徴量と、欠陥特性情報67とから、欠陥Hの大きさを予測する。特徴予測部56bは、予測される欠陥Hの大きさが、造形物3の品質に影響し得る欠陥Hの所定の大きさよりも大きいか否かを判定する。なお、特徴予測部56bは、単に特徴量を閾値と比較しても良い。
【0102】
S13及びS14は、統合されても良い。言い換えると、推定部56は、測定情報63とCNN68とに基づき、造形物3の内部に、欠陥Hが発生しない若しくは所定の大きさよりも小さい欠陥Hが発生するか、又は所定の大きさよりも大きい欠陥Hが発生するか、を一度に推定しても良い。
【0103】
欠陥Hの大きさが所定の大きさよりも大きいと予測される場合(S14:Yes)、造形制御部52が補修装置71を制御し、層3aを補修する(S15)。S15における層3aの補修は省略されても良い。この場合、例えば、造形物3において欠陥Hの発生が予測される座標(マップ)が記憶部51に記憶される。当該マップは、トレーサビリティのような造形物3の品質管理に利用されることができる。また、S15における層3aの補修の代わりに、積層造形が中止されても良い。
【0104】
層3aが補修されると、造形制御部52は、積層造形が完了したか否かを判定する(S16)。積層造形が完了していない場合(S16:No)、S12に戻り、測定部12が再び層3aの表面の形状を測定する。
【0105】
S13において欠陥Hの発生が予測されない場合(S13:No)、及びS14において欠陥Hの大きさが所定の大きさよりも小さいと予測される場合(S14:No)も、造形制御部52は、積層造形が完了したか否かを判定する(S16)。S16において、積層造形が完了している場合(S16:Yes)、積層造形システム1における積層造形が終了する。
【0106】
以上のように、推定部56は、内部欠陥情報66及びサンプル測定情報65に基づくCNN68と、測定情報63と、に基づき、造形物3の内部に欠陥Hが発生するか否かを推定する。さらに、推定部56は、測定情報63及びCNN68に基づく特徴量と、欠陥特性情報67と、に基づき、造形物3の内部に所定の大きさよりも大きい欠陥H又は所定の大きさよりも小さい欠陥Hが発生するか否かを推定する。所定の大きさよりも大きい欠陥Hは、第1の欠陥の一例である。所定の大きさよりも小さい欠陥Hは、第2の欠陥の一例である。また、推定部56は、所定の大きさよりも小さいが密集した複数の欠陥Hが発生すると推定した場合、当該複数の欠陥Hを所定の大きさよりも大きい一つの欠陥Hと見なしても良い。当該一つの欠陥Hも、第1の欠陥の一例である。
【0107】
造形部11は、推定部56が造形物3の内部に所定の大きさよりも大きい欠陥Hが発生すると推定した場合に、補修装置71により層3aを補修する。一方、造形部11は、推定部56が造形物3の内部に所定の大きさよりも小さい欠陥Hが発生すると推定した場合に、造形物3の積層造形を続行する。
【0108】
本実施形態の制御部14で実行されるプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD-ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD-R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録されて提供される。
【0109】
また、本実施形態の制御部14で実行されるプログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成しても良い。また、本実施形態の制御部14で実行されるプログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供又は配布するように構成しても良い。
【0110】
また、本実施形態のプログラムを、ROM等に予め組み込んで提供するように構成しても良い。
【0111】
本実施形態の制御部14で実行されるプログラムは、上述した各部(造形制御部52、情報取得部53、情報生成部54、学習部55、及び推定部56)を含むモジュール構成となっており、実際のハードウェアとしてはCPU(プロセッサ)が上記記憶媒体からプログラムを読み出して実行することにより上記各部が主記憶装置上にロードされ、造形制御部52、情報取得部53、情報生成部54、学習部55、及び推定部56が主記憶装置上に生成されるようになっている。
【0112】
以上説明された第1の実施形態に係る積層造形システム1において、記憶部51は、サンプル3Sを透過したX線(電磁波)に基づき当該サンプル3Sの内部に存在する欠陥Hを示す内部欠陥情報66と、測定部12により測定されたサンプル3Sの複数の層3aの測定結果を示すサンプル測定情報65と、に基づく参照データベース62を記憶する。推定部56は、測定部12により測定された造形物3の複数の層3aの測定結果を示す測定情報63と、参照データベース62と、に基づき、造形物3の内部に欠陥Hが発生するか否かを推定する。これにより、積層造形中に、造形される造形物3の内部に欠陥Hが発生するか否かを推定することができる。欠陥Hの発生前に欠陥Hの発生を推定することができるため、欠陥Hの発生後に造形物3を補修する必要が無く、造形物3の材料費や造形時間を低減することができる。また、欠陥Hによる品質低下が原因で造形物3が廃棄されることも抑制される。
【0113】
一般的に、CTスキャナにより造形物3の欠陥Hを検出することができる場合がある。しかし、CTスキャナによる欠陥Hの検出では、検出可能な造形物3の大きさが、CTスキャナがX線を照射可能な範囲に制約される。このため、CTスキャナによる欠陥Hの検出のため、造形物3が切断(破壊)されることがある。また、CTスキャナによる欠陥Hの検出では、造形物3をX線遮蔽室へ移動させるため、造形中の検出が困難である。このため、積層造形の完了後に検出された欠陥Hによる品質低下を理由に、造形物3が廃棄されることがある。さらに、CTスキャナによる欠陥Hの検出では、造形物3の材料(比重)により検出精度が変化する。
【0114】
本実施形態の積層造形システム1は、CTスキャナにより造形物3の欠陥Hを検出するシステムに対し、測定可能な造形物3の大きさに制限が少なく、造形物3の造形中に欠陥Hの発生を推定でき、造形物3の材料による精度の変化が少ない、という利点を有し得る。さらに、本実施形態の積層造形システム1は、造形物3を破壊することなく、欠陥Hの発生を推定できるという利点を有し得る。また、本実施形態の積層3a造形システムは、造形物3の内部で既に発生した欠陥Hを検出する他のシステムに対し、欠陥Hの発生前に欠陥Hの発生を推定できるという利点を有し得る。
【0115】
学習部55は、内部欠陥情報66とサンプル測定情報65とに基づき機械学習し、CNN68を生成する。参照データベース62は、当該CNN68を有する。機械学習を用いることにより、積層造形システム1は、欠陥Hの発生をより正確且つ容易に推定することができる。
【0116】
内部欠陥情報66は、コンピュータ断層撮影(CT)によるサンプル3Sの撮影結果に基づいている。これにより、サンプル3SをCTスキャナ45により撮影していれば、造形された造形物3をCTスキャナ45により実際に撮影することなく、CTによる欠陥Hの検出と略同等の精度で欠陥Hの生成を推定することができる。
【0117】
測定部12は、それぞれの層3aの表面の形状を測定する。推定部56は、造形物3の層3aの表面の形状を示す測定情報63と、サンプル3Sの層3aの表面の形状を示すサンプル測定情報65及び内部欠陥情報66と、に基づき、造形物3の内部に欠陥Hが発生するか否かを推定する。例えば、層3aの表面が形成する凹凸の起伏が大きい場合、造形物3の内部に欠陥Hが発生する可能性が高い。このように、層3aの表面の形状の測定結果を用いることで、造形物3の内部に欠陥Hが発生するか否かを推定することができる。
【0118】
測定部12は、非接触三次元測定機である測定機41を有する。これにより、造形中に、造形される造形物3の内部に欠陥Hが発生するか否かをより早く推定することができる。
【0119】
測定部12は、造形部11のヘッド22に接続され、当該ヘッド22と共に移動装置24によりテーブル21に対して相対的に移動させられる。これにより、測定部12が測定可能な造形物3の大きさに制限が生じることが抑制される。測定部12は、造形部11が積層造形可能な大きさの造形物3であれば測定を行うことができる。
【0120】
補修装置71は、推定部56の推定結果に基づき層3aを補修する。例えば、推定部56が、造形物3の内部に欠陥Hが発生すると推定した場合、欠陥Hの発生を抑制するように、補修装置71が層3aを補修する。これにより、造形物3の内部に欠陥Hが発生することを抑制することができる。
【0121】
参照データベース62は、内部欠陥情報66と、サンプル測定情報65と、サンプル3Sの内部に存在する欠陥Hの大きさに関する欠陥特性情報67と、に基づいている。造形部11は、推定部56が造形物3の内部に所定の大きさより大きい欠陥Hが発生すると推定した場合に補修装置71により層3aを補修する。造形部11は、推定部56が造形物3の内部に所定の大きさよりも小さい欠陥Hが発生すると推定した場合に造形を続行する。これにより、無用な補修を省略することができ、積層造形にかかる時間が増大することを抑制することができる。
【0122】
内部欠陥情報66と、サンプル測定情報65とは、内部欠陥情報66に含まれるアライメントマーク3dと、サンプル測定情報65に含まれるアライメントマーク3dと、に基づき互いに関連付けられる。これにより、より正確に欠陥Hの発生を推定するための参照データベース62を、内部欠陥情報66とサンプル測定情報65とに基づき得ることができる。
【0123】
(第2の実施形態)
以下に、第2の実施形態について、
図8を参照して説明する。なお、以下の複数の実施形態の説明において、既に説明された構成要素と同様の機能を持つ構成要素は、当該既述の構成要素と同じ符号が付され、さらに説明が省略される場合がある。また、同じ符号が付された複数の構成要素は、全ての機能及び性質が共通するとは限らず、各実施形態に応じた異なる機能及び性質を有していても良い。
【0124】
第2の実施形態において、推定部56は、層3aの表面の形状の代わりに、層3aの表面粗さに基づき、造形物3の内部に欠陥Hが発生するか否かを推定する。すなわち、第2の実施形態における測定情報63は、層3aの少なくとも一部の表面粗さである。
【0125】
例えば、造形物3の造形中に、測定部12が、層3aの表面の形状を測定する。情報取得部53は、測定部12から測定結果(電気信号)を取得する。情報生成部54は、情報取得部53が取得した層3aの表面の形状の測定結果から、層3aの表面粗さを算出する。
【0126】
第2の実施形態におけるサンプル測定情報65は、測定部12により測定されたサンプル3Sの層3aの表面粗さである。第2の実施形態の参照データベース62では、サンプル測定情報65と内部欠陥情報66とに基づき、層3aの表面粗さと欠陥Hの発生の有無との相関関係が規定されている。また、第2の実施形態の参照データベース62では、例えば、サンプル測定情報65と、内部欠陥情報66と、欠陥特性情報67とに基づき、層3aの表面粗さと、発生する欠陥Hの大きさと、の相関関係が規定されている。これらの相関関係は、人間により予め算出されても良いし、学習部55により算出されても良い。
【0127】
第2の実施形態の推定部56において、発生予測部56aは、層3aの表面粗さを示す測定情報63と、参照データベース62と、に基づき、造形物3の内部に欠陥Hが発生するか否かを推定する。例えば、参照データベース62に規定される層3aの表面粗さと欠陥Hの発生の有無との相関関係から、造形物3の内部に欠陥Hが発生するか否かの閾値が得られる。発生予測部56aは、測定情報63の表面粗さと、当該閾値と、を比較することにより、造形物3の内部に欠陥Hが発生するか否かを推定する。
【0128】
第2の実施形態の推定部56において、特徴予測部56bは、層3aの表面粗さを示す測定情報63と、参照データベース62と、に基づき、欠陥Hの大きさを推定する。例えば、参照データベース62に規定される層3aの表面粗さと発生する欠陥Hの大きさとの相関関係から、欠陥Hが所定の大きさよりも大きいか否かの閾値が得られる。特徴予測部56bは、測定情報63の表面粗さと、当該閾値と、を比較することにより、欠陥Hが所定の大きさよりも大きいか否かを推定する。
【0129】
図8は、第2の実施形態に係る積層造形方法の一例を示す例示的なフローチャートである。以下、第2の実施形態の積層造形システム1による積層造形について
図8を参照して説明する。
【0130】
まず、第1の実施形態と同じく、造形部11がNCプログラム61に基づいて積層造形を開始し(S11)、測定部12が層3aの表面の形状を測定する(S12)。次に、情報生成部54は、測定部12により測定された造形物3の層3aの測定結果から、層3aの表面粗さを算出する(S111)。
【0131】
測定部12により測定された造形物3の層3aの測定結果は、造形物3の層3aの表面の三次元形状を示す。このため、情報生成部54は、測定結果から、層3aの表面粗さを算出することができる。すなわち、第2の実施形態における測定部12は、複数の層3aのそれぞれの表面粗さを間接的に測定している。なお、測定部12は、層3aの表面粗さを直接的に測定する装置であっても良い。
【0132】
次に、推定部56の発生予測部56aが、造形物3の内部に欠陥Hが発生するか否かを予測する(S13)。上述のように、発生予測部56aは、例えば、層3aの表面粗さと閾値とを比較することで、造形物3の内部に欠陥Hが発生するか否かを予測する。
【0133】
造形物3の内部に欠陥Hの発生が予測される場合(S13:Yes)、特徴予測部56bが、欠陥Hの大きさが所定の大きさよりも大きいか否かを予測する(S14)。上述のように、特徴予測部56bは、例えば、層3aの表面粗さと閾値とを比較することで、欠陥Hの大きさが所定の大きさよりも大きいか否かを予測する。
【0134】
欠陥Hが所定の大きさよりも大きいと予測される場合(S14:Yes)、造形制御部52が補修装置71を制御し、層3aを補修する(S15)。層3aが補修されると、造形制御部52は、積層造形が完了したか否かを判定する(S16)。積層造形が完了していない場合(S16:No)、S12に戻り、測定部12が再び層3aの表面の形状を測定する。
【0135】
S13において欠陥Hの発生が予測されない場合(S13:No)、及びS14において欠陥Hが所定の大きさよりも小さいと予測される場合(S14:No)も、造形制御部52は、積層造形が完了したか否かを判定する(S16)。S16において、積層造形が完了している場合(S16:Yes)、積層造形システム1における積層造形が終了する。
【0136】
以上説明された第2の実施形態の積層造形システム1において、測定部12は、それぞれの層3aの表面粗さを測定する。推定部56は、造形物3の層3aの表面粗さを示す測定情報63と、サンプル3Sの層3aの表面粗さを示すサンプル測定情報65及び内部欠陥情報66と、に基づき、造形物3の内部に欠陥Hが発生するか否かを推定する。例えば、層3aの表面粗さが大きく、層3aの平均高さが低い場合、造形物3の内部に欠陥Hが発生する可能性が高い。このように、層3aの表面粗さの測定結果を用いることで、造形物3の内部に欠陥Hが発生するか否かを推定することができる。
【0137】
(第3の実施形態)
以下に、第3の実施形態について、
図9乃至
図13を参照して説明する。
図9は、第3の実施形態に係る積層造形システム1を模式的に示す例示的な断面図である。
図9に示すように、第3の実施形態の測定部12は、測定機41及び接続部42の代わりに、測定機81と、測距計82とを有する。
【0138】
測定機81は、例えば、赤外線カメラである。測定機81は、層3aを形成する溶融領域3cの幾何学的形状及び温度分布を測定する。言い換えると、測定機81は、造形部11に溶融されて層3aを形成する材料Mについての測定を行う。なお、測定機81は、CCDカメラのような他の機器であっても良い。この場合、測定機81は、溶融領域3cの幾何学的形状を測定する。
【0139】
測定機81は、例えば、光学装置31を利用し、エネルギー線Eと同軸に溶融領域3cを撮影することができる。例えば、第3の実施形態の光学装置31は、光源31aと、コリメートレンズ31bと、第1の集光レンズ31cと、ハーフミラー31dと、第2の集光レンズ31eとを有する。
【0140】
光源31aは、発振素子を有し、発振素子の発振によりエネルギー線Eとしてのレーザ光を出射する。コリメートレンズ31bは、例えば光ファイバを通って入射したエネルギー線Eを平行光に変換する。第1の集光レンズ31cは、平行光を集光し、ヘッド22の出射路22bから出射させる。ハーフミラー31dは、コリメートレンズ31bと第1の集光レンズ31cとの間の光路に位置する。コリメートレンズ31bから第1の集光レンズ31cへ向かう光は、ハーフミラー31dを透過する。第2の集光レンズ31eは、ハーフミラー31dにより反射された光を集光し、測定機81に入射させる。
【0141】
例えば、溶融領域3cにおいて、放射光が発生する。当該放射光は、ヘッド22の出射路22b及び第1の集光レンズ31cを通って、ハーフミラー31dに入射する。放射光は、ハーフミラー31dにより反射され、第2の集光レンズ31eを通って測定機81の受光部に入射する。これにより、測定機81は、エネルギー線Eと同軸に溶融領域3cを撮影することができる。また、上記構成によれば、測定機81を溶融領域3cに近づける必要が無く、溶融領域3cの温度や粉塵の影響を低減することができる。
【0142】
測距計82は、例えば、レーザ測距計である。なお、測距計82はこの例に限られない。測距計82は、ヘッド22に接続され、当該ヘッド22と共に移動装置24によりテーブル21に対して相対的に移動させられる。
【0143】
測距計82は、例えば、当該測距計82と溶融領域3cとの間の距離を測定する。例えば、測距計82の測定結果と、実測された測距計82とヘッド22との間の距離と、NCプログラム61におけるヘッド22の座標と、に基づき、溶融領域3cの座標が得られる。なお、測定部12は、測距計82の代わりに、3Dスキャナのような距離を測定可能な機器を有しても良い。
【0144】
図10は、第3の実施形態の積層造形システム1の構成を機能的に示す例示的なブロック図である。
図10に示すように、第3の実施形態では、情報取得部53が、測定機81から、溶融領域3cの形状及び温度分布の測定結果を取得する。また、情報取得部53は、測距計82から、測距計82と溶融領域3cとの間の距離の測定結果を取得する。
【0145】
図11は、第3の実施形態の溶融領域3cの測定結果の一例を示す例示的な図である。情報生成部54は、例えば、測定部12により測定された溶融領域3cの形状及び温度分布の測定結果(電気信号)を画像処理することにより、
図11のようなサーモグラフィ91を得ることができる。サーモグラフィ91は、サンプル3Sの層3aの測定結果を示すサンプル測定情報65、又は造形物3の層3aの測定結果を示す測定情報63である。
【0146】
図11に示すように、サーモグラフィ91には、代表点92が設定される。代表点92は、例えば、サーモグラフィ91の中心に設定される。なお、代表点92は、サーモグラフィ91における他の位置に設定されても良い。
【0147】
サーモグラフィ91には、代表点92の座標に係る情報が付与される。代表点92の座標は、例えば、測距計82の測定結果と、測距計82とヘッド22との間の距離と、NCプログラム61におけるヘッド22の座標と、に基づき算出される。
【0148】
また、サーモグラフィ91は、溶融領域3cの長さDl、幅Dw、及び面積に係る情報が付与される。長さDlは、溶融領域3cの最大長さである。幅Dwは、溶融領域3cの長手方向と直交する方向における当該溶融領域3cの長さである。
【0149】
以下、第3の実施形態におけるサンプル測定情報65、内部欠陥情報66、及び欠陥特性情報67の取得方法と、CNN68の生成方法との一例について説明する。なお、サンプル測定情報65、内部欠陥情報66、欠陥特性情報67、及びCNN68は、以下の例に限られない。
【0150】
図12は、第3の実施形態の参照データベース62の作成手順を模式的に示す例示的な図である。まず、造形部11が、サンプル3Sを積層造形する。サンプル3Sの造形中に、所定のサンプリングレート(間隔)で、測定機81が溶融領域3cを撮影する。例えば、測定機81は、ヘッド22がテーブル21に対して約1mm移動する毎に、溶融領域3cを撮影する。サンプリングレートは、例えば、撮影された複数の領域が互いに重複しないように設定される。
【0151】
測距計82が、例えば、ヘッド22がテーブル21に対して約1mm移動する毎に発せられるトリガ信号に基づき、測距計82と溶融領域3cとの間の距離を測定する。これにより、溶融領域3cのサーモグラフィ91と、当該サーモグラフィ91の代表点92の座標とを関連付けることが可能となる。
【0152】
情報生成部54は、情報取得部53が取得した測定部12の測定結果から、サンプル測定情報65としてのサーモグラフィ91を生成する。すなわち、サンプル測定情報65は、測定部12により測定されたサンプル3Sの層3a(層3aを形成する溶融領域3c)の測定結果を示す。情報生成部54は、サーモグラフィ91に、当該サーモグラフィ91の代表点92の座標に係る情報を付与する。溶融領域3cの撮影は、サンプル3Sの造形完了まで続けられる。
【0153】
サンプル3Sが造形されると、サンプル3SがX線遮蔽室に配置され、CTスキャナ45により撮影される。情報取得部53は、CTスキャナ45からCTによるサンプル3Sの撮影結果を取得する。情報生成部54は、情報取得部53が取得したCTスキャナ45の撮影結果に基づき、内部欠陥情報66を生成する。
【0154】
次に、情報生成部54は、サンプル測定情報65を、代表点92の座標から高さ方向に±数十μm~数百μm拡張した小空間95を規定する。なお、情報生成部54は、水平方向においてサンプル測定情報65の拡張又はトリミングを行っても良い。
【0155】
次に、情報生成部54は、例えば、内部欠陥情報66における欠陥Hを閉じた空間とみなし、当該欠陥Hを内部欠陥情報66から抽出する。情報生成部54は、小空間95と、欠陥Hが抽出された内部欠陥情報66とを重ね合わせる。情報生成部54は、小空間95が内部欠陥情報66における欠陥Hと重なる場合、当該小空間95に対応するサーモグラフィ91に「欠陥有り」のラベルを付与する。また、情報生成部54は、小空間95が内部欠陥情報66における欠陥Hと重ならない場合、当該小空間95に対応するサーモグラフィ91に「欠陥無し」のラベルを付与する。
【0156】
小空間95と内部欠陥情報66との重ね合わせは、例えば、アライメントマーク3dを基準として行われる。例えば、測定部12は、溶融領域3cについての測定を行う前に、アライメントマーク3dを撮影する。これにより、サンプル測定情報65の少なくとも一つが、アライメントマーク3dに係る情報を含む。
【0157】
情報生成部54は、サンプル測定情報65の基準点と、内部欠陥情報66の基準点と、が一致するように、小空間95と内部欠陥情報66とを重ね合わせる。すなわち、内部欠陥情報66と、サンプル測定情報65とは、内部欠陥情報66に含まれるアライメントマーク3dと、サンプル測定情報に含まれるアライメントマーク3dと、に基づき互いに関連付けられる。なお、小空間95と内部欠陥情報66との重ね合わせは、この例に限られない。
【0158】
複数のサーモグラフィ91は、「欠陥有り」のラベルが付与された複数のサーモグラフィ91aと、「欠陥無し」のラベルが付与された複数のサーモグラフィ91bとを含む。ラベルが付与された複数のサーモグラフィ91は、いわゆる教師データとして機械学習に利用される。
【0159】
情報生成部54は、「欠陥有り」のラベルが付与されたサーモグラフィ91aについて、欠陥特性情報67を生成する。欠陥特性情報67は、例えば、サーモグラフィ91bに対応する位置においてサンプル3Sの内部に発生した欠陥Hの幅、長さ、体積、表面積、個数、及び密度に係る情報であり、内部欠陥情報66から得られる。
【0160】
次に、学習部55が、複数のサーモグラフィ91に基づき機械学習し、学習結果としてCNN68を生成する。CNN68は、例えば、入力されたサーモグラフィ91から、欠陥Hの発生に係る当該サーモグラフィ91の特徴量を算出する。当該特徴量は、サーモグラフィ91の代表点92に対応する位置においてサンプル3Sの内部に欠陥Hが発生するか否かを示す。また、本実施形態において、特徴量は、代表点92に対応する位置においてサンプル3Sの内部に発生する欠陥Hの大きさに関する情報を示す。
【0161】
次に、情報生成部54は、欠陥特性情報67と、CNN68の特徴量とを関連付ける。これにより、CNN68が算出する特徴量に基づき、発生する欠陥Hの大きさが推定可能となる。以上により、欠陥Hの発生、及び発生する欠陥Hの大きさを推定するための参照データベース62が、サンプル測定情報65、内部欠陥情報66、及び欠陥特性情報67に基づき生成され、記憶部51に記憶される。
【0162】
参照データベース62は、CNN68に限らず、他のプロセスウィンドウを有しても良い。当該プロセスウィンドウでは、例えば、溶融領域3cの幅Dwが所定の値を下回ると造形物3に欠陥Hが発生するという対応関係や、幅Dwの値に対する欠陥Hの大きさの対応関係を示す。
【0163】
図13は、第3の実施形態の積層造形方法の一例を示す例示的なフローチャートである。以下、第3の実施形態の積層造形システム1による積層造形について
図13を参照して説明する。
図13に示すように、まず、造形部11が、NCプログラム61に基づいて積層造形を開始する(S11)。
【0164】
次に、測定部12の測定機81が、溶融領域3cを撮影する(S211)。さらに、測定部12の測距計82が、当該測距計82と溶融領域3cとの間の距離を測定し、情報生成部54が当該測定結果に基づき代表点92の座標を取得する(S212)。例えば、測定部12は、テーブル21に対してヘッド22が所定の距離移動する毎に、S211,S212の撮影及び測定を実行する。
【0165】
次に、情報生成部54が、撮影されたサーモグラフィ91に、代表点92の座標情報を付与する(S213)。情報生成部54は、例えば、サーモグラフィ91における最高温度のような他の情報を、サーモグラフィ91に付与しても良い。
【0166】
次に、推定部56の発生予測部56aが、造形物3の内部に欠陥Hが発生するか否かを予測する(S13)。発生予測部56aが、測定情報63とCNN68とに基づき特徴量を算出する。発生予測部56aは、算出された特徴量から、造形物3の内部に欠陥Hが発生するか否かを予測する。
【0167】
造形物3の内部に欠陥Hの発生が予測される場合(S13:Yes)、特徴予測部56bが、欠陥Hの大きさが所定の大きさよりも大きいか否かを予測する(S14)。欠陥Hの大きさが所定の大きさよりも大きいと予測される場合(S14:Yes)、造形制御部52が補修装置71を制御し、層3aを補修する(S15)。
【0168】
第3の実施形態における補修では、例えば、ヘッド22が、欠陥Hの発生が推定される位置の上方に配置される。ヘッド22の先端22aと層3aの表面との間の距離は、例えば、ヘッド22から吐出される材料Mの収束距離と略等しく設定される。ヘッド22は、エネルギー線Eを当該位置に照射し、層3aに必要最低限の熱を供給することで、層3aを再溶融する。これにより、層3aの表面が均され、層3aが補修される。なお、補修は、第1の実施形態と同じく、補修装置71によって行われても良い。
【0169】
第1の実施形態及び第3の実施形態において、補修は、次のように行われても良い。例えば、欠陥Hの大きさが所定の大きさよりも大きく、且つ欠陥Hの数が少ない場合は、補修装置71は、欠陥Hの発生が予測される位置の周辺における層3aを削り取る。また、欠陥Hの大きさが所定の大きさよりも大きく、且つ欠陥Hの数が多い場合は、補修装置71は、欠陥Hの発生が予測される層3aの全域を削り取る。また、欠陥Hの大きさが所定の大きさよりも小さい場合は、欠陥Hの発生が予測される位置の周辺における層3aがエネルギー線Eにより補修される。欠陥Hの大きさが所定の大きさよりも小さく、且つ欠陥Hの数が少ない場合は、補修を行わずに積層造形が続行される。なお、小さい欠陥Hが所定の数の層3aに亘って積み重なる場合、補修装置71は、複数の層3aを削り取る。
【0170】
層3aが補修されると、造形制御部52は、積層造形が完了したか否かを判定する(S16)。積層造形が完了していない場合(S16:No)、S211に戻り、測定部12が再び溶融領域3cを撮影する。
【0171】
S13において欠陥Hの発生が予測されない場合(S13:No)、及びS14において欠陥Hの大きさが所定の大きさよりも小さいと予測される場合(S14:No)も、造形制御部52は、積層造形が完了したか否かを判定する(S16)。S16において、積層造形が完了している場合(S16:Yes)、積層造形システム1における積層造形が終了する。
【0172】
以上説明された第3の実施形態の積層造形システム1において、測定部12は、造形部11に溶融された材料M(溶融領域3c)の状態を測定する。推定部56は、造形物3の層3aを形成する溶融領域3cについての測定結果を示す測定情報63と、サンプル3Sの層3aを形成する溶融領域3cについてのサンプル測定情報65及び内部欠陥情報66と、に基づき、造形物3の内部に欠陥Hが発生するか否かを推定する。『浅井知:「先進的スマート溶接システムの実現に向けて」大阪大学工業会誌(572),17-21,2016-04』に記載されているように、層3aを形成する溶融領域3cの状態は、造形物3の内部における欠陥Hの発生に影響する。このように、層3aを形成する溶融領域3cについての測定結果を用いることで、造形物3の内部に欠陥Hが発生するか否かを推定することができる。
【0173】
(第4の実施形態)
以下に、第4の実施形態について、
図14を参照して説明する。
図14は、第4の実施形態に係る積層造形システム1を模式的に示す例示的な斜視図である。
図14に示すように、第4の実施形態において、造形部11は、テーブル21の代わりに第1のテーブル101と第2のテーブル102とを有する。第1のテーブル101及び第2のテーブル102は、互いに異なる位置に配置される。
【0174】
第1のテーブル101及び第2のテーブル102はそれぞれ、支持面105と、治具106と、複数の固定ネジ107とを有する。支持面105は、略平坦に形成され、+Z方向に向く。治具106及び固定ネジ107は、支持面105に配置される。
【0175】
治具106は、X方向に延びる第1の延部106aと、Y方向に延びる第2の延部106bとを有する。第1の延部106a及び第2の延部106bは、造形物3のベース3bに当接することで、X方向及びY方向におけるベース3bの位置合わせを行うことができる。
【0176】
固定ネジ107は、ベース3bをX方向及びY方向において治具106に押し付ける。これにより、ベース3bは、支持面105の上で固定される。Z方向における固定ネジ107とベース3bとの位置を合わせるために、支持面105とベース3bとの間にスペーサ108が配置されても良い。
【0177】
X方向及びY方向において、NCプログラム61、測定情報63、サンプル測定情報65、内部欠陥情報66、及び欠陥特性情報67における座標の基準点(原点)が、第1の延部106aと第2の延部106bとの角106cに設定される。Z方向における座標の基準点は、支持面105に設定されても良いし、ベース3bの表面に設定されても良い。
【0178】
造形部11は、第1のテーブル101の支持面105に配置されたベース3bの上に、材料Mの層3aを積み重ね、造形物3を造形する。CTスキャナ45は、第2のテーブル102の支持面105に配置された造形物3を撮影する。また、補修装置71が、第2のテーブル102の支持面105に配置された造形物3の層3aを補修しても良い。NCプログラム61、測定情報63、サンプル測定情報65、内部欠陥情報66、欠陥特性情報67、及び補修装置71の位置合わせは、治具106の角106cに設定された基準点に基づき行われる。
【0179】
以上説明された第4の実施形態の積層造形システム1において、NCプログラム61、測定情報63、サンプル測定情報65、内部欠陥情報66、及び補修装置71の位置合わせが、治具106の角106cに設定された基準点に基づき行われる。これにより、ベース3bにアライメントマーク3dを設ける必要が無くなり、ベース3bを小さくすることができる。
【0180】
NCプログラム61、測定情報63、サンプル測定情報65、内部欠陥情報66、及び補修装置71は、他の方法で位置合わせされても良い。例えば、X方向及びY方向におけるベース3bの縁において、複数の位置がタッチセンサにより測定される。当該測定結果により、X方向及びY方向におけるベース3bの縁を示す二つの直線の数式が求められる。当該二つの直線の交点に、基準点を設定することが可能である。当該二つの直線に基づき、NCプログラム61、測定情報63、サンプル測定情報65、内部欠陥情報66、及び補修装置71における座標と、ベース3bと、の間の傾きを算出することも可能である。
【0181】
以上の実施形態では、積層造形システム1が検査部13を有し、内部欠陥情報66を取得する。しかし、積層造形システム1は、サンプル測定情報65及び内部欠陥情報66に基づく参照データベース62を有すれば良く、検査部13及び内部欠陥情報66を有さなくても良い。例えば、造形物3の積層造形を行う積層造形システム1とは別の装置としてのCTスキャナにより、内部欠陥情報66が得られても良い。この場合、例えば、内部欠陥情報66は、電気通信回線や情報記録媒体を介して、積層造形システム1に入力される。
【0182】
図15は、各実施形態に係る積層造形システム1の一例を示す例示的な斜視図である。以上の実施形態の積層造形システム1は、例えば、
図15のような積層造形システム1に適用される。なお、積層造形システム1は、
図15の例に限られない。
【0183】
図15の例において、第1の移動装置24aは、例えば、平行移動装置24aaと、回転装置24abとを有する。平行移動装置24aaは、テーブル21をX方向及びY方向に移動させる。回転装置24abは、テーブル21を、Z方向に延びる回転軸まわりに回転させる。
【0184】
第2の移動装置24bは、第1の移動部24baと、第2の移動部24bbと、第3の移動部24bcと、回転部24bdとを有する。第1の移動部24baは、略門型に形成され、Y方向に移動する。第2の移動部24bbは、梁型に形成され、Z方向に延びる第1の移動部24baの柱に取り付けられる。第2の移動部24bbは、Z方向に移動する。第3の移動部24bcは、X方向に延びる第2の移動部24bbに取り付けられる。第3の移動部24bcは、X方向に移動する。回転部24bdは、第3の移動部24bcに設けられ、ヘッド22を、Y方向に延びる回転軸まわりに回転させる。第2の移動装置24bの第1の移動部24ba及び第3の移動部24bcは、テーブル21に対してヘッド22をX方向及びY方向に移動させることができる。このため、第1の移動装置24aの平行移動装置24aaが省略されても良い。
【0185】
図15の例では、ヘッド22に、第1の実施形態の測定機41が取り付けられている。しかし、
図15の積層造形システム1は、第3の実施形態の測定機81及び測距計82を備えても良い。また、
図15の例において、テーブル21が、第4の実施形態の支持面105、治具106、及び複数の固定ネジ107を有しても良い。
【0186】
以上の実施形態では、積層造形システム1は、造形部11、測定部12、及び検査部13に信号線を介して電気的に接続された制御部14を有する。しかし、制御部14は、以下に具体的に例示するように、造形部11とは別に設けられ、ネットワークを介して造形部11と通信可能なコンピュータを含んでも良い。
【0187】
図16は、各実施形態の変形例に係る積層造形システム1の構成を機能的に示す例示的なブロック図である。
図16に示すように、制御部14は、第1の制御部201と、第2の制御部202とを有しても良い。第1の制御部201は、造形部11、測定部12、及び検査部13に信号線を介して電気的に接続される。一方、第2の制御部202は、造形部11、測定部12、検査部13、及び第1の制御部201とは別に設けられ、ネットワークNを介して第1の制御部201と相互に通信可能に設けられる。
【0188】
図16の例では、第1の制御部201及び第2の制御部202は、第1乃至第4の実施形態における制御部14の機能を分割して備える。例えば、第1の制御部201は、造形制御部52と、情報取得部53と、情報生成部54と、記憶部211と、通信部212とを備える。一方、第2の制御部202は、学習部55と、推定部56と、記憶部221と、通信部222とを備える。記憶部211,221は、第1乃至第4の実施形態における記憶部51の機能を分割して備える。
【0189】
第1の制御部201は、積層造形システム1における積層造形及び測定を制御する。第1の制御部201の記憶部211は、NCプログラム61を記憶する。造形制御部52は、記憶部211のNCプログラム61に基づいて、第1乃至第4の実施形態と同じく造形部11を制御して積層造形を行う。情報取得部53は、測定部12から測定結果を取得する。情報生成部54は、情報取得部53が取得した測定部12の測定結果から、測定情報63を生成する。情報生成部54は、通信部212,222を通じて、第2の制御部202の記憶部221に測定情報63を記憶させる。なお、情報生成部54は、記憶部211に測定情報63を記憶させても良い。
【0190】
第1の制御部201の通信部212と、第2の制御部202の通信部222とは、ネットワークNを介して相互に情報の送受信を行う。これにより、第1の制御部201及び第2の制御部202は、記憶部211,221に対して情報の読み書きをすることができる。さらに、第1の制御部201と第2の制御部202とは、互いに指令を送ることができる。通信部212,222は、有線で通信しても良いし、無線で通信しても良い。
【0191】
第2の制御部202は、積層造形システム1における機械学習及び推定を制御する。第2の制御部202の記憶部221は、参照データベース62と測定情報63とを記憶する。学習部55は、画像69を取得し、第1乃至第4の実施形態と同じく機械学習を行う。推定部56は、第1乃至第4の実施形態と同じく、測定情報63と参照データベース62とに基づき、造形物3の内部に欠陥が発生するか否かを推定(予測)する。
【0192】
以上のように、第1の制御部201及び第2の制御部202が、第1乃至第4の実施形態における制御部14の機能を分割して備えても良い。第1の制御部201及び第2の制御部202は、
図16の例に限られない。例えば、第1の制御部201が推定部56を有し、記憶部211,221がともに参照データベース62及び測定情報63を記憶することで、機械学習がネットワークN経由で行われ、推定がローカルで行われても良い。また、積層造形システム1は、複数の第1の制御部201と、複数の第1の制御部201と通信可能な一つの第2の制御部202とを有しても良い。
【0193】
図17は、各実施形態の変形例に係る制御部14のハードウェア構成を示す例示的なブロック図である。上述の変形例では第1乃至第4の実施形態と同じく、第1の制御部201及び第2の制御部202はそれぞれ、CPU14aのような制御装置と、ROM14bと、RAM14cと、外部記憶装置14dと、出力装置14eと、入力装置14fとを有し、通常のコンピュータを利用したハードウェア構成となっている。また、第1の制御部201及び第2の制御部202はそれぞれ、ネットワークNを通じて通信するための通信インターフェース(I/F)14gを有する。
【0194】
CPU14aがROM14b又は外部記憶装置14dに組み込まれたプログラムを実行することで、制御部14は、積層造形システム1の各部を制御する。例えば、第1の制御部201のCPU14aが、造形制御部52、情報取得部53、情報生成部54、及び通信部212として機能する。また、第2の制御部202のCPU14aが、学習部55、推定部56、及び通信部212として機能する。また、RAM14cや外部記憶装置14dが、記憶部51として機能する。
【0195】
上述の本発明の実施形態は、発明の範囲を限定するものではなく、発明の範囲に含まれる一例に過ぎない。本発明のある実施形態は、上述の実施形態に対して、例えば、具体的な用途、構造、形状、作用、及び効果の少なくとも一部について、発明の要旨を逸脱しない範囲において変更、省略、及び追加がされたものであっても良い。