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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】レドックスフロー電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/18 20060101AFI20241016BHJP
   H01M 8/04082 20160101ALI20241016BHJP
   H01M 8/0656 20160101ALI20241016BHJP
【FI】
H01M8/18
H01M8/04082
H01M8/0656
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2021549307
(86)(22)【出願日】2020-02-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-13
(86)【国際出願番号】 EP2020055187
(87)【国際公開番号】W WO2020174062
(87)【国際公開日】2020-09-03
【審査請求日】2023-01-10
(31)【優先権主張番号】1902695.4
(32)【優先日】2019-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】505167543
【氏名又は名称】アイピー2アイピーオー イノベ-ションズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】クセルナク,アンソニー
(72)【発明者】
【氏名】ルビオ-ガルシア,ジャヴィア
【審査官】山本 雄一
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-537838(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00- 8/0297
H01M 8/08- 8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フローセルを操作する方法であって、
水素および金属電解液から電力を発生させるのに適したフローセルであって、前記フローセルが金属酸化物の沈殿物を含み、前記金属酸化物がバナジウムまたはマンガンを含むフローセルを提供すること、
前駆体種からレドックス活性沈殿物除去種を電気化学的に生成すること、ここで、前記レドックス活性沈殿物除去種は前記金属酸化物を変換することができ、および、
前記金属酸化物を前記レドックス活性沈殿物除去種に暴露して、前記金属酸化物の変換を行うこと、を含み、ここで、以下の(a)および/または(b)である方法。
(a)前記フローセルが、前記金属電解液のためのカソード液チャンバを含み、
前記電気化学的生成が、前記カソード液チャンバとは別の電気化学セル内で行われ、
前記金属電解液が、前記別の電気化学セル内に供給される。
(b)前記電気化学的生成の間に水素を供給することをさらに含み、
前記電気化学的生成が、0.0Vを超え、0.1Vまでの電圧で行われる。
【請求項2】
前記前駆体種が、金属を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記前駆体種が、チタン、アルミニウム、スズ、および鉄、またはそれらの組み合わせから選択される金属、あるいは、チタン、アルミニウム、および鉄、またはそれらの組み合わせから選択される金属、あるいは、チタンを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記前駆体種が、Ti4+ である、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記レドックス活性沈殿物除去種が、Ti3+ である、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記フローセルが、前記金属電解液のためのカソード液チャンバを含み、前記電気化学的生成が、前記カソード液チャンバ内で行われる、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記電気化学的生成が、前記前駆体種の還元を行うのに十分な電圧以下で行われる、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記電気化学的生成が、前記前駆体種の酸化が起こる電圧未満で行われる、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記水素が、水電気分解によって生成される、請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記フローセルが、カソード液チャンバを含み、電気化学的生成の工程の前に、前記方法が、
消耗した金属電解液およびレドックス活性沈殿物除去種を前記カソード液チャンバに供給すること、
フローセルを充電し、それによって前記消耗金属電解液を充電金属電解液に変換し、前記レドックス活性沈殿物除去種を前記前駆体種に変換すること、を含む、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
第1のフローセルおよび第2のフローセルを含む電気化学装置であって、
前記第1のフローセルは、
アノードチャンバ内の可逆水素ガスアノードと、
カソードチャンバ内の可逆液体カソード液カソードとを含み、カソードチャンバは金属酸化物沈殿物を含み、
前記第2のフローセルは、前駆体種からレドックス活性沈殿物除去種を生成するように構成され、前記第2のフローセルは、前記第1のフローセルと流体連通して、前記第2のフローセルと前記第1のフローセルのカソードチャンバとの間で液体カソード液の通過を可能にする、電気化学装置。
【請求項12】
前記前駆体種が、請求項2~4のいずれか1項に記載のものである、請求項11に記載の電気化学装置。
【請求項13】
前記レドックス活性沈殿物除去種が、請求項5に記載のものである、請求項11または12に記載の電気化学装置。
【請求項14】
金属酸化物の沈殿物をさらに含み、前記金属酸化物がバナジウムまたはマンガンを含み、前記レドックス活性沈殿物除去種が、前記金属酸化物を変換することができる、請求項11~13のいずれか1項に記載の電気化学装置。
【請求項15】
請求項6~10のいずれか1項に記載のレドックス活性沈殿物除去種を生成するように構成されている、請求項11~14のいずれか1項に記載の電気化学装置。
【請求項16】
水素供給源をさらに含む、請求項11~15のいずれか1項に記載の電気化学装置。
【請求項17】
前記水素供給源が、水電気分解によって水素を生成するように構成された電気化学セルを含む、請求項16に記載の電気化学装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本開示は、レドックスフロー電池に関する。本開示はより詳細にはしかし必ずしも排他的ではないが、レドックスフロー電池を操作して、その上に蓄積した沈殿物を除去する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
レドックスフローバッテリー(redox flow batteries (RFBs))のようなレドックスフロー電池は、化学的レドックス反応による電力供給のための電気化学的装置である。RFBとの関連で、化学的レドックス反応は、典型的には、電力供給モードで一方向に(例えば、レドックス活性種が還元され、別のレドックス活性種が酸化される)、エネルギー貯蔵モード中に反対方向に進行することができる。
【0003】
電力供給モードでは、レドックス活性種が電極に供給され、そこで電気化学的に反応して電気化学的電力を生成する。RFBsは、反応のための電解液種の流れを変えることによって、変動する需要を満たすように、それらの出力を調整することができる。レドックス活性種は、電極チャンバとは別個に貯蔵し、必要に応じて供給することができるので、この装置の発電能力は容易に拡張可能である。
【0004】
レドックスフローセルの一般的な動作の背景説明は国際特許公開WO2013104664に見出すことができ、その内容全体が本明細書に組み込まれる。
【0005】
しかしながら、RFB内で起こる副反応は、沈殿物の蓄積につながることがあり、時間の経過と共に、これはRFB機能に影響を及ぼすことがある。沈殿物の蓄積は、電解液の濃度が増加することにつれて特に問題となる。しかしながら、より高い能力のRFBを得るためには、電解液濃度を増加させることが望ましい。
【0006】
フローセルおよび/または改善された電気化学装置を動作させる改善された方法を提供すること、および/またはフローセルおよび/または改善された電気化学装置を動作させる代替方法を提供すること、および/またはフローセルおよび/または電気化学装置を動作させる既存の方法に関する問題を、本明細書で識別されているかどうかにかかわらず、除去または軽減することが望ましい。
【発明の概要】
【0007】
概要
本開示の第1の態様によれば、フローセルを操作する方法が提供される。その方法は、
水素および金属電解液から電力を発生させるのに適したフローセルであって、前記フローセルが金属酸化物の沈殿物を含み、前記金属酸化物がバナジウムまたはマンガンを含むフローセルを提供すること、
前駆体種からレドックス活性沈殿物除去種を電気化学的に生成すること、ここで、前記レドックス活性沈殿物除去種は前記金属酸化物を変換することができ、および、
前記金属酸化物を前記レドックス活性沈殿物除去種に暴露して、前記金属酸化物の変換を行うことを含んでいる。
【0008】
本開示の第2の態様によれば、第1のフローセルおよび第2のフローセルを含む電気化学装置が提供される。前記第1のフローセルは、
負極チャンバ内の可逆水素ガス負極と、
正極チャンバ内の可逆液体正電解液とを含み、カソードチャンバは金属酸化物沈殿物を含み、
前記第2のフローセルは、前駆体種からレドックス活性沈殿物除去種を生成するように構成され、前記第2のフローセルは、前記第1のフローセルと流体連通して、前記第2のフローセルと前記第1のフローセルのカソードチャンバとの間で液体カソード液の通過を可能にすることを含んでいる。
【0009】
本開示の第3の態様によれば、フローセルを含む電気化学装置が提供される。フローセルは、
アノード液チャンバ内の可逆水素ガスアノードと、
カソード液チャンバ内の可逆カソードであって、前記カソード液チャンバは金属酸化物沈殿物を含み、
ここで、装置が、前記カソード液チャンバ内にレドックス活性沈殿物除去種を生成するように構成されてなる。
【0010】
定義
レドックスフロー電池の分野における標準用語に従って、「アノード」および「カソード」という用語は、電力供給モードにおける電極の機能によって定義される。混乱を避けるために、本明細書では、電力供給動作モードであろうとエネルギー貯蔵動作モードであろうと、同じ電極を示すために同じ用語が維持される。
【0011】
用語「アノード液(anolyte)」および「カソード液(catholyte)」は、「アノード」および「カソード」と接触している電解液を示すために使用される。
【0012】
本明細書に記載されるフローセルは、レドックスフロー電池であってもよい。レドックスフロー電池は、化学エネルギーを電気に変換するための電気化学セルを含む。レドックスフロー電池は、アノードおよびアノード液流体(すなわち、気体または液体)を含むアノードチャンバと、カソードおよびカソード液流体(すなわち、気体または液体)を含むカソードチャンバとを備える。選択膜は、2つのチャンバの間に提供され、2つのチャンバの間でイオン(例えば、特に水素アノード液との関連では、プロトン)を交換するように構成される。本開示では、カソード液流体は液体である。
【0013】
電解液(カソード液およびアノード液)流体のチャンバは、それぞれが可逆的な還元-酸化反応を受けることができる2つの異なる電力供給/エネルギー貯蔵種で別々に充電されてもよい。これは、1つのチャンバ内の電力供給/エネルギー貯蔵種が、例えば、酸化反応を受ける一方で、他のチャンバ内の電力供給/エネルギー貯蔵種が、還元反応を受けることを可能にする。レドックス反応は、チャンバ間の電子の正味の流れを引き起こし、したがって電流を生成する。
【0014】
本明細書中で使用される場合、「レドックス活性沈殿物除去種は、前記金属酸化物を変換することができる」という表現は、沈殿した金属酸化物種を、金属酸化物よりも大きな溶解度を有する別の種に変換するレドックス反応を受けることができる化学種を示す。
【0015】
反応は金属酸化物が還元され、沈殿物除去種が酸化される反応であってもよく、金属酸化物から生成される還元種は、金属酸化物よりも可溶性である。したがって、レドックス活性沈殿物除去種は、前記金属酸化物を還元することができる。ここで、沈殿物除去種および金属酸化物は、レドックス対として振る舞う。このようなレドックス対がレドックス化学に関与する能力は、例えば標準電極電位表を参照して、各種の相対レドックス電位に基づいて十分に理解されている。
【0016】
レドックス反応は、金属酸化物の金属の酸化状態に正味の変化を引き起こさないものであってもよいが、それにもかかわらず、可溶性金属種を生成する反応である。したがって、レドックス活性沈殿物除去種は、前記金属酸化物を可溶性種に変換することができる。例えば、いくつかの金属酸化物沈殿物は、以下のような重合反応によって生成される。
【0017】
【化1】
【0018】
ここで、Vは、ポリマー種であり、溶解性が悪い。レドックス活性沈殿物除去種は、この可逆的重合に関与して、より溶解性のVO2+種を生成することができる。
【0019】
本明細書で使用される「可溶性」は、少なくとも約0.1Mの濃度を有する溶液を生成するために溶媒(水など)に溶解することができる種を意味すると理解されてもよい。バナジウム種との関連では、「可溶性」は、少なくとも約1.5Mの濃度を有する溶液を生成するために溶媒に溶解することができる種を意味すると理解されてもよい。マンガン種との関連では、「可溶性」は、少なくとも約3M、例えば少なくとも約5Mの濃度を有する溶液を生成するために溶媒に溶解することができる種を意味すると理解されてもよい。これらの要件を満たす種のグラム量は、関係する種に依存する。本明細書で使用される「可溶性」は、少なくとも約10g/l、例えば少なくとも約900g/Lの溶媒への溶解度を有する種を意味すると理解されてもよい。本明細書で使用される「不溶性」は、約5g/l未満の溶媒への溶解度を有する種を意味すると理解されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本開示の液体/気体レドックスフロー電池(用語「液体」および「気体」がそれぞれカソードおよびアノードに供給される有機レドックス活性種の相を示す)の概略断面図である。
図2】本開示による液体/気体レドックスフロー電池の第2の実施形態の概略断面図である。
図3】2つのパワーサイクルの時間に対する電圧を示すグラフである。
図4図4(a)は、10サイクルにわたる電池の効率性能を示すグラフ、図4(b)は、電池の過充電による経時的な能力低下を示すグラフ、図4(c)は、レドックス活性Ti3+沈殿物除去種を電気化学的に生成する工程中の経時的な電流変化を示すグラフ、および図4(d)は、沈殿物除去後の10サイクルにわたる電池の効率性能を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
詳細な説明
本開示の第1の態様によれば、フローセルを操作する方法が提供される。その方法は、
水素および金属電解液から電力を発生させるのに適したフローセルであって、前記フローセルが金属酸化物の沈殿物を含み、前記金属酸化物がバナジウムまたはマンガンを含むフローセルを提供すること、
前駆体種からレドックス活性沈殿物除去種を電気化学的に生成すること、ここで、前記レドックス活性沈殿物除去種は前記金属酸化物を変換することができ、および、
前記金属酸化物を前記レドックス活性沈殿物除去種に暴露して、前記金属酸化物の変換を行うことを含んでいる。
【0022】
レドックスフロー電池のようなフローセルの標準的な動作中に、沈殿物が蓄積し、時間の経過と共にフローセルの機能性に影響を及ぼすことがある。例えば、マンガン電解液を使用するフローセルに関しては、放電中にMn3+を生成することができる。Mn3+は、活性で不安定な種であり、次のようにMn2+、MnOに自発的に不均化をもたらす。
【0023】
【化2】
【0024】
生成された酸化物(例えば、MnO)は、経時的に蓄積し、フローセル上の部分を流体的に接続するフローセル(例えば、電極表面上、電極表面の細孔内、および/または流体導管(例えば、液導管)のような管内)に沈殿物として酸化物を残し得る。この反応は、温度が上昇するにつれて促進される。
【0025】
酸化物沈殿種(MnOなど)は、代替的にまたは追加的に、電池が過充電された場合に(例えば、2電子工程におけるMn2+の酸化を介して)生成されてもよい。
【0026】
蓄積は、電解液の流れの詰まり及び目詰まり、並びに膜の汚れのような多くの問題を引き起こす。時間の経過と共に、これは、セル容量の低下につながり得る。全体として、ビルドアップは、システムのコスト、セルの効率およびエネルギー密度に劇的な影響を与え、エネルギー蓄積応用のための問題を引き起こす。
【0027】
バナジウム電解液では、沈殿物の蓄積という同様の問題に遭遇する。ここで、VO 種(即ち、(V)酸化状態)は、セルの通常動作中に生成されてもよい。VO は、Vに応じて重合・沈殿することがある。このような沈殿は、特定のバナジウム濃度および/または温度、例えば、1.5Mを超える、および/または約40℃以上の温度で特に優勢であり得る。したがって、本開示の方法は、そのような濃度および/または温度を伴う実施に特に有用であり得る。
【0028】
本開示の方法は、洗浄および/またはスケール除去方法(すなわち、沈殿堆積物を除去する方法)として理解され得る。この方法では、レドックス活性沈殿物除去種が生成され、次いで、沈殿物を別の(可溶性)種に電気化学的に変換することができ、したがって、健全なセルスタックを維持する。
s 例えば、硫酸溶液中にマンガンおよびTi4+種を含むカソード液に関しては、マンガン種は、電力供給/エネルギー貯蔵種として挙動し、一方、Ti4+は、前駆物質種として挙動することが理解され得る。本明細書に開示される洗浄方法は、Ti(III)レドックス活性沈殿物除去種を電気化学的に生成することができる。例えば、Ti3+レドックス活性沈殿物除去種は、以下のようにTi(IV)から生成され得る:
【0029】
【化3】
【0030】
沈殿物の除去は、Ti3+レドックス活性沈殿物除去種を用いて酸化物沈殿物を還元することを含み得る。マンガン沈殿物、MnOに関しては、沈殿物は、Mn2+またはMn3+に還元され、Ti3+は、TiO、TiOSO、またはTi(SO(好ましくは、可溶性のTiOSOまたはTi(SO)のようなTi4+に酸化される。
【0031】
ここで、Ti4+前駆体種は、(例えば、TiOSOとして)再生成されることが理解されるのであろう。再生成された前駆体は、沈殿物除去の複数のサイクルを通して再使用することができる。したがって、本発明の方法は、最小の化学的入力で、洗浄/スケール除去を行うための便利な方法を提供する。言い換えれば、本発明の方法において洗浄/スケール除去を行うために、前駆体種の供給を繰り返し「補充」する必要はないかもしれない。
【0032】
変換は、還元することを含んでもよい(例えば、MnOなどの沈殿種に関して、還元して可溶種を得ることができる)。
【0033】
金属電解液は、溶解した金属電解液であってもよい。
【0034】
本方法は、初期電力供給ステップをさらに含むことができる。例えば、この方法が水素ガスアノード液を使用する場合、アノード半電池における電力供給レドックス反応は、次のとおりであり得る。
【0035】
【化4】
【0036】
アノードチャンバに供給するための水素ガスは、加圧ガス源容器であってもよい容器内にアノードチャンバの外部から貯蔵されてもよい。水素ガスは、電力供給モードでは1つ以上の導管によってアノードチャンバに供給されてもよく、エネルギー貯蔵モードでは1つ以上の導管によってアノードチャンバから運ばれてもよい。
【0037】
カソード液中の電力供給/エネルギー貯蔵種の濃度は、電池の電力およびエネルギー密度を決定する。カソード液中の電力供給/エネルギー貯蔵種の濃度は、少なくとも約0.1M、例えば少なくとも約0.2M、任意選択で約0.5Mより大きく、例えば約1Mより大きく、任意選択で約1.5Mより大きく、任意選択で約2.0Mより大きく、例えば約2.5Mより大きく、例えば約3.0Mまでとすることができる。より高い濃度の電力供給/エネルギー貯蔵種は、従来技術のシステムにおいて、沈殿物に関する問題を引き起こし得る。しかしながら、本開示の方法は、より高い濃度の電力供給/エネルギー貯蔵種を可能にし、したがって、セルのより大きな電力およびエネルギー密度を可能にすることが理解されるのであろう。電気化学的に活性な種の最大実用濃度は、一般に、電解液中でのその溶解度によって支配される。
【0038】
前記電気化学的生成は、少なくとも約1秒間、例えば少なくとも約5秒間、例えば少なくとも約30秒間、任意選択で少なくとも約60秒間行うことができる。所要時間は、バッテリー容量の減少から算出することができる。これは、電荷減少および対応する生成された沈殿物除去種(Ti(III)など)に基づく計算を含む。例えば、MnOの沈殿物に関しては、
容量(A×s)=電流(A)×時間(s)
容量サイクル1-容量サイクル2=容量損失(As=クーロン)
容量損失(C)/ファラデー定数(Cモル-1)=モル電子
モルe×0.5モルMnO形成=生成されたモルMnO
一般的に言えば、サイクル1および2は、必ずしも連続したサイクルである必要はない。
【0039】
カソード半電池中に存在する電気化学的活性種は、Mn3+またはV5+などのマンガンおよび/またはバナジウムを含むことができる。カソード半電池におけるレドックス反応は、次の(i)および/または(ii)を含むことができる:
【0040】
【化5】
【0041】
前駆体種は、金属を含むことができる。前駆体種の金属は、チタン、アルミニウム、スズおよび鉄、またはそれらの組み合わせから選択され得る。任意選択で、前駆体種は、チタン、アルミニウム、および鉄、またはそれらの組合せから選択される。前駆体種は、チタンを含むことができる。
【0042】
前駆物質種は、Ti4+、Al3+、Sn4+、Fe3+種および/またはそれらの混合物、任意選択で、Ti4+、Sn4+、Fe、例えばTi4+、任意選択で、TiO2+を含むことができる。
【0043】
レドックス活性沈殿物除去種は、Ti3+、Al2+、Sn2+、Fe2+および/またはそれらの混合物から選択される金属、任意選択で、Ti3+、Sn2+、Fe2+、例えばTi3+を含むことができる。
【0044】
このような前駆体およびレドックス活性沈殿物除去種は、本明細書に開示される方法において特に有効であることが見出されている。
【0045】
フローセルは、任意選択で、前記金属電解液のためのカソード液チャンバを含み、前記電気化学的生成は、前記カソード液チャンバ内で行われる。このようにして、前駆体種はその場で、すなわち、金属電解液と同じチャンバ内で、レドックス活性沈殿物除去種に変換される。そのような構成は、前駆体種を含むカソード液を含むことを除いて、既存のシステムに対するさらなる改変を必要としない、コンパクトで効率的な設計を提供する。また、その場での設定は、該方法が、カソード液チャンバ中に蓄積する沈殿物の程度に依存して、適切な量のレドックス活性沈殿物除去種を生成するように制御され得ることを意味する。
【0046】
Ti(III)のその場生成は、水素の消費につながる可能性がある。これは、電解液の不均衡につながり得る。本方法は、前記電気化学的生成の間に水素を供給するステップをさらに含むことができる。水素は、適切には水電気分解によって生成され得る。代替的に又は追加的に、水素は、水素ボンベを使用して供給されてもよい。
【0047】
任意に、前記フローセルはカソード液チャンバを含み、電気化学的生成工程の前に、前記方法は、
消耗した金属電解液およびレドックス活性沈殿物除去種を前記カソード液チャンバに供給すること、
フローセルを充電し、それによって消耗金属電解液を充電金属電解液に変換し、レドックス活性沈殿物除去種を前記前駆体種に変換すること、を含む。この選択肢では、エネルギー投入が、次のようにTi3+、Oおよび水素を生成する。
【0048】
【化6】
【0049】
これは、バッファーとして作用することができる余分な水素を提供する。このような選択肢は、レドックス活性沈殿物除去種の現場生成に特に有用である。
【0050】
気体副反応は、イリジウム触媒(例えば、IrO)のような金属触媒を使用することができる。この方法は、約1.6~1.7Vのような約1~2Vのセル電圧で動作することができる。
【0051】
この方法は、以下の方法であってもよい。
【0052】
フローセルが、前記金属電解液のためのカソード液チャンバを含み、
前記電気化学的生成が、前記カソード液チャンバとは別の電気化学セル内で行われ、
前記金属電解液が、前記別の電気化学セル内に供給される。このような方法は上述のように、カソード液チャンバ内の電解液不均衡に関する問題を改善することができる。
【0053】
前記別個の電気化学セルは、本明細書で論じるものなどの独立した水素供給源(例えば、水電気分解によって生成される水素、独立した水素シリンダなど)を含むことができる。別個の電気化学セルに送達される金属電解液の供給に際して、生成されたレドックス活性沈殿物除去種が金属電解液と混合することが理解されるのであろう。次いで、金属電解液およびレドックス活性沈殿物除去種混合物を、カソード液チャンバに循環して戻すことができる。
【0054】
前記電気化学的生成は、前駆体種の酸化が起こる電圧(すなわち、前駆体種の酸化をもたらすのに十分な電圧)未満で行うことができる。任意選択的に、電気化学的発生は、約0.5Vまでの電圧、例えば約0.25Vまでの電圧、例えば約0.2Vまでの電圧で行われる。前記電気化学的発生は、約0.1Vまでの電圧で行うことができる。
【0055】
任意選択的に、電気化学的生成は、前駆体種の還元を行うのに十分な電圧以下で行われる。例えば、前記電気化学的発生は、約0.0Vを超える電圧で行うことができる。
【0056】
フローセルの標準的な従来技術の動作中、低電圧動作サイクルを採用することは、これが副反応によるセルの劣化を促進することが知られているため、珍しい。本開示は、低電圧動作が本明細書に開示されるようなセル洗浄/スケール除去に付随する利点を提供し得るという驚くべき発見に基づく。
【0057】
本開示の第2の態様によれば、第1のフローセルおよび第2のフローセルを含む電気化学装置が提供される。
【0058】
第1のフローセルは、
アノードチャンバ内の可逆水素ガスアノードと、
カソードチャンバ内の可逆液体カソード液カソードとを含み、カソードチャンバは金属酸化物沈殿物を含み、
第2のフローセルは、前駆体種からレドックス活性沈殿物除去種を生成するように構成され、前記第2のフローセルは、第1のフローセルと流体連通して、第2のフローセルと第1のフローセルのカソードチャンバとの間で液体カソード液の通過を可能にする。
【0059】
装置は、第1のフローセルと第2のフローセルとの間の流体の通過を可能にするように構成された導管を備えてもよい。
【0060】
本開示の第3の態様によれば、フローセルを含む電気化学装置が提供され、前記フローセルは、
アノード液チャンバ内の可逆水素ガスアノードと、
カソード液チャンバ内の可逆カソードであって、カソード液チャンバは金属酸化物沈殿物を含み、
ここで、装置は、カソード液チャンバ内にレドックス活性沈殿物除去種を生成するように構成されている。
【0061】
電気化学装置はさらに、レドックス活性沈殿物除去種またはカソード液チャンバ内でレドックス活性沈殿物除去種を生成することができる前駆体種を含むことができる。前駆体種は、第1の態様で定義した通りであってもよい。レドックス活性沈殿物除去種は、第1の態様で定義した通りであってもよい。
【0062】
任意選択で、第2または第3の態様の電気化学装置は、金属酸化物の沈殿物をさらに含み、前記金属酸化物は、バナジウムまたはマンガンを含み、前記レドックス活性沈殿除去種は、前記金属酸化物を変換することができる。金属酸化物は、第1の態様で定義されたものとすることができる。
【0063】
第2または第3の態様の電気化学装置は、必要な変更を加えて、第1の態様で定義されるように、レドックス活性沈殿物除去種を生成するように任意に構成される。
【0064】
第2または第3の態様の電気化学装置は、任意選択で、第1の態様で定義された電圧でレドックス活性沈殿物除去種を生成するように構成される。
【0065】
第2または第3の態様の電気化学装置は、水素供給源をさらに含むことができる。水素供給源は、任意選択で、水電気分解によって水素を生成するように構成された電気化学セルを含む。
【0066】
アノードは、多孔性ガス電極であってもよく、カソードは多孔性または非多孔性電極であってもよい。適切な電極の例は、当技術分野で周知である。触媒多孔質炭素電極、例えば触媒カーボンペーパー、布、フェルトまたは複合物は、本開示における使用に適している。炭素は、黒鉛状、非晶質、またはガラス状構造を有していてもよい。アノードは触媒電極でもよく、カソードは非触媒電極でもよい。
【0067】
カソードは、通常、触媒作用を必要としない。したがって、電極の1つのみが触媒作用を受けるセルを有することは、セルの製造コストを著しく低減することを可能にし、必要ではないが、いくつかの非貴金属触媒を使用することが可能であり、これはまた、貴金属触媒の使用と比較してコストを低減するであろう。
【0068】
アノードにおいて使用される触媒は、貴金属、例えば、白金、パラジウム、イリジウム、ルテニウム、レニウム、ロジウム、オスミウム、またはそれらの組み合わせであってもよく、合金、例えば、白金/ルテニウム合金、または二成分触媒、例えば、PtCo、PtNi、PtMoなど、または三成分触媒、PtRuMo、PtRuSn、PtRuWなど、またはカルコゲニド/酸化物、例えば、RuSe、Pt-MoOxなどを含む。触媒は、炭素系触媒、例えば、Liang、J;Zheng、Y;Vasileff、A;Qiao、S(2018)「炭素系電気化学的酸素還元及び水素発生触媒」、ISBN:9783527811458に記載されている触媒であってもよい。いくつかの二成分/三成分またはそれ以外の純貴金属触媒は、カソード液種のクロスオーバーの結果として起こり得る触媒毒に対してより耐性であり得る。
【0069】
カソード半電池中に存在する電力供給/エネルギー貯蔵種は、遊離カチオン、例えばMn2+と呼ばれるが、任意の安定なプラスに帯電した錯体としてカソード液中に存在してもよいことが理解されるのであろう。カソード半電池中に存在する電力供給/エネルギー貯蔵種がマンガンである場合、液体カソード液は、二価マンガン(MnSO)または二価炭酸マンガン(MnCO)を使用して調製され得る。電解液は一般に水性である。
【0070】
カソード半電池中の電気化学的に活性な種は、液体電解液中に存在する。酸性電解液は当技術分野で周知であり、任意の標準的な酸性電解液を本開示に従って使用することができる。適切な電解液としては硫酸が挙げられ、これは濃硫酸、メタンスルホン酸(MSA)もしくはトリフルオロメタンスルホン酸(TFSA)、またはこれらの混合物、例えば、硫酸の水溶液であり得る。
【0071】
Mnのようなレドックス対の高い電気化学ポテンシャルのために、有機酸電解液の使用は、エネルギー貯蔵モード(充電)の間の酸素発生を最小限にするために有用であり得る。酸が可溶性金属カチオンを形成し得るが、カソード液を還元または酸化し得ない場合、任意の他の強酸の使用は禁止されない。
【0072】
アノードチャンバをカソードチャンバから分離する膜は、プロトン(水素イオン)を選択的に通過させることができる膜であってもよく、このことは膜がプロトン交換膜またはプロトンに対して透過性の膜であってもよいことを意味する。膜は、プロトン交換膜であってもよい。プロトン交換膜は、当技術分野で周知であり、例えば、デュポン(DuPont)社によって製造されたナフィオン(NafionTM)(登録商標)イオン交換膜である。NafionTM(登録商標)膜は良好なプロトン伝導性および良好な化学的安定性を有するが、バナジウムカチオンに対する高い透過性および高い費用を含む多くの欠点を有する。したがって、膜は、金属カチオン、例えば、バナジウムカチオンおよびマンガンカチオンに対して実質的に不透過性であるものであってもよい。
【0073】
図面の簡単な説明
ここで、添付の図面を参照して、単なる例として、本出願をさらに説明する:
図1は、本開示の液体/気体レドックスフロー電池(用語「液体」および「気体」がそれぞれカソードおよびアノードに供給される有機レドックス活性種の相を示す)の概略断面図である。
【0074】
図2は、本開示による液体/気体レドックスフロー電池の第2の実施形態の概略断面図である。
【0075】
図3は、2つのパワーサイクルの時間に対する電圧を示すグラフである。
【0076】
図4は、一連のグラフ(a)~(d)であり、(a)は、10サイクルにわたる電池の効率性能を示す、(b)は、電池の過充電による経時的な能力低下を示す、(c)は、レドックス活性Ti3+沈殿物除去種を電気化学的に生成する工程中の経時的な電流変化を示す、および(d)は、沈殿物除去後の10サイクルにわたる電池の効率性能を示す。
【0077】
図と例
図1および図2は、本開示によるレドックスフロー電池を示す。図1及び図2の両方におけるバッテリーの動作は同様であり、以下、同じ機能を果たす構成要素の機能を説明するために、同じ符号を採用する。2つの電池の機能の違いについては、後述する。
【0078】
電力供給モードでは、電力供給/エネルギー貯蔵種を含有する液体カソード液がポンプ(11)によって、カソード液貯蔵容器(12A)のチャンバから導管(12B)を通ってカソード液チャンバ(9)にポンプ輸送され、そこで半反応に従ってカソード(2)で還元される。
【0079】
【化7】
【0080】
次いで、使用済み電解液種を含有するカソード液は、カソード液チャンバから第2の導管(1)を通ってカソード液貯蔵容器(12A)に運ばれ、そこで未使用のカソード液チャンバとは別のチャンバに貯蔵される。
【0081】
アノードおよびアノード液チャンバ(8)の少なくとも一部は、多孔質ガスフロー電極(4)によって形成され、水素は、加圧ガス源容器(7)から管路(13)を通ってアノード/アノードチャンバ(8)に供給され、ここで、水素は半反応によってプロトン(H)に酸化される。
【0082】
【化8】
【0083】
電流は電流コレクタ(4とも表示)によって集められる。プロトン交換膜(3)はアノード液チャンバおよびカソード液チャンバ(8および9)を分離し、アノード液から膜(3)のカソード液側にプロトンを選択的に通過させて電荷をバランスさせ、それによって電気回路を完成させる。未反応の水素は、第2の導管(5)によってアノード液チャンバ(8)から運ばれ、圧縮機(6)を介して加圧ガス源容器(7)に戻される。
【0084】
エネルギー貯蔵モードでは、システムが逆転され、電力供給/エネルギー貯蔵種Xがカソード液貯蔵容器(12A)から管路(1)を通ってカソード液チャンバ(9)にポンプで送られ、そこで使用済み電解液種Xがカソード(2)で酸化されてレドックス活性種Xn+2を形成する。得られた再生電解液は、ポンプ(11)によってカソード液チャンバ(9)から第2の導管(12B)を通ってカソード液貯蔵容器(12A)に移送される。一方、プロトン交換膜(3)のアノード液側のプロトンは、多孔質ガスアノード(4)で水素ガスに触媒還元される。水素は、多孔質アノード(4)から導管(5)を通って運ばれ、圧縮機(6)によって圧縮された後、加圧ガス源容器(7)に貯蔵される。
【0085】
上記の系は、2電子還元(Xn+2+2e→X)を受ける電力供給/エネルギー蓄積種によって示されることが理解されるであろう。しかしながら、電力供給/エネルギー貯蔵種は、1電子還元を受けるものであってもよい。さらに、上記の議論は、マンガン電力供給/エネルギー貯蔵種との関係で定式化されているが、この手順はバナジウム電力供給/エネルギー貯蔵種およびそれを含む電解液を使用するフローセルに類似していることが理解されるのであろう。
【0086】
電力供給モードの間、MnOは、本明細書に記載するように、経時的に蓄積される。次いで、レドックス流電池を沈殿物除去モードで作動させて、酸化物の蓄積を除去することができる。
【0087】
RFB設備は、スクリブナーアソシエイツ(Scribner Associates)から購入する。この電池は、陽極酸化アルミニウムエンドプレートを利用して一緒に保持される金メッキ銅集電体と接触する機械加工された流れ場を有する2つのPOCOグラファイト(POCO graphite)のバイポーラプレートを含む。市販の厚さ0.32mmの未処理カーボンペーパー(SGLグループ、ドイツ、Sigracet SGL 10AA、典型的には3層)または厚さ4.6mmの未処理黒鉛フェルト(SGLグループ、ドイツ、Sigracell GFD4,6 EA)を正極として使用した。水素負極は、Fuel Cell Storeから入手し、カーボンペーパにPt0.4mg cm-2を担持し、またはカーボンクロスにPt0.03mg cm-2を担持した。膜は、Nafion(登録商標) 212(公称厚さ52μm)であった。蠕動ポンプ(例えば、Masterflex easy-load、 Cole-Palmer)および白金硬化シリコーンチュービング(L/S 14、25ft)(例えば、Masterflex白金硬化シリコーンチュービング)を使用して、25~100mL min-1の流速で電池を通してマンガン電解液をポンプ輸送した。水素は、燃料電池試験ステーション(850e、Scribner Associates)によって提供され、35~150mL min-1の流速で負側を通過した。電流範囲のため、分極曲線は燃料電池試験ステーション(850e、Scribner Associates)を用いて記録され、一方、定電流充電および充電実験はGamryポテンショスタット3000を用いて行われた。
【0088】
レドックス活性種のその場発生
図1に示す第1の実施形態では、沈殿物除去は、カソード液チャンバ(9)内でその場でレドックス活性沈殿物除去種を生成することによって達成される。
【0089】
この実施形態は、硫酸溶液中にマンガンおよびTi4+種を含むカソード液を使用する。マンガン種は、電力供給/エネルギー貯蔵種として機能し、一方、チタン種は、レドックス活性種への変換のための前駆体種として機能する。
【0090】
カソード液は最初に、Ti(SOまたはTiOSOの液に、硫酸を加えることによって作成された。その後、対応する容量のMnCOまたはMnSOがゆっくりと追加された。その結果、COの発泡が観察され、金属溶解が促進された。
【0091】
カソード液を0~0.1Vの間のセル電位に暴露して、Ti4+前駆物質種から、Ti3+レドックス活性沈殿物除去種を発生させた。前駆体種の還元は、電力入力なしで達成された。
【0092】
沈殿物除去モードは、酸化物沈殿物をTi3+レドックス活性沈殿物除去種で還元することを含む。
【0093】
レドックス活性沈殿物除去種/酸化物沈殿物還元反応は、以下のように進行することができる。
【0094】
【化9】
【0095】
Mn2+のようなMn(II)は、水性電解液に可溶であり、したがって還元反応は沈殿物を可溶化する。
【0096】
沈殿物を除去した後、カソード液を0~0.1Vの間のセル電位に再度暴露して、必要に応じて、さらなる沈殿物除去のためのTi3+レドックス活性沈殿物除去種を再生成した。
【0097】
レドックス活性種の独立生成
図2に示す第2の実施形態では、レドックスフロー電池が独立した電気化学スタック(14)と、電気化学スタック(14)をカソード液チャンバ(9)に流体接続する導管(15)とを備える。電気化学スタック(14)は、関連するカソードを有する液体カソード液チャンバと、気体(水素)アノードチャンバと、関連するアノード(ラベル付けまたは図示せず)とを含む。これらの構成要素の機能は上述したものと同様であり、詳細には説明しない。
【0098】
電気化学スタックは、その液体カソード液側にTi4+レドックス活性沈殿物除去種を含む。カソード液チャンバ(9)からの使用済みカソード液は、電気化学スタック(14)にポンプ輸送され、Ti4+種と混合される。電気化学スタック(14)へのエネルギーインプットは、次式に従ってTi3+およびOを生成する:
【0099】
【化10】
【0100】
気体副反応は、IrO金属触媒を使用し、1.6~1.7Vのスタックセル電圧で運転した。
【0101】
一旦生成されると、レドックス活性Ti3+種を含むカソード液は、カソード液チャンバ(9)にポンプで戻され、第1の実施形態で説明したのと同様の方法で、酸化物沈殿物を還元して、取り除いた。
【0102】
容量損失
生成される容量損失および沈殿物(例えば、MnO)の量は、次のように(例えば、図3を参照して)、第1のサイクル中の放電時間(RFB容量)を次のサイクルの放電時間と比較することによって計算することができる。
【0103】
容量(A×s)=電流(A)×時間(s)
容量サイクル1-容量サイクル2=容量損失(As=クーロン)
容量損失(C)/ファラデー定数(Cモル-1)=モル電子
モルe×0.5モルMnO形成=生成されたモルMnO
一般的に言えば、サイクル1および2は、必ずしも連続したサイクルである必要はない。
【0104】
沈殿物の除去は、測定された電荷(Ti(III)生成に関連する)が上記で計算された容量損失に等しくなるまで、0.1V未満のシステムの動作に基づく。
【0105】
実施例1
厚さ4.6mmのグラファイトフェルトを液電極とし、Pt担持量0.4mg/cmのスタンダード水素電極、30%PTFEをガスハーフセルとし、ナフィオン(登録商標)117をプロトン交換膜とした5cmセルを、以下の条件下で最初に試験した。
【0106】
1.5MのHSOに1MのMnと1MのTiを有する電解液を使用した。
【0107】
2.全実験を通して、電解液を50ml/分で供給した。
【0108】
3.水素ガス(純度99.99%)を100ml/分の速度で供給した。
【0109】
プロトコルを使用して、以下の実験を行った。
【0110】
1.セルを100mA/cmで10サイクル定電流充放電し、性能指数(エネルギー効率(EE)、電圧効率(VE)、クーロン効率(CE))を算出した(図4(a)参照)。
【0111】
2.電流密度が10mA/cmに低下するまで1.8Vの定電圧で充電した(図4(b)参照)。
【0112】
3.100mA/cmで放電サイクルを試みたが、セルは即座にカットオフ電圧(0.65)に達し、これはすべてのMn3+活性種がMnO(Mn4+)を生成することによって沈殿したことを示す。
【0113】
4.電解液を再生し、沈殿物を除去するために、Ti4+をTi3+に還元した。この電気化学反応を達成するために、0.1Vの定電位で、電流密度が10mA/cmに低下するまで、セルを定電位放電した(図4(c)参照)。
【0114】
5.電解液を再生し、沈殿物を除去した後、工程1と同様の試験を実施し、結果を報告した(図4(d)参照)。
図1
図2
図3
図4