(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】制限されたインピーダンス測定を通じて組織アブレーションを監視するための方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/0538 20210101AFI20241016BHJP
A61B 18/12 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
A61B5/0538
A61B18/12
(21)【出願番号】P 2021549554
(86)(22)【出願日】2020-04-02
(86)【国際出願番号】 AU2020050325
(87)【国際公開番号】W WO2020198796
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2023-03-23
(32)【優先日】2019-04-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】500026418
【氏名又は名称】ザ・ユニバーシティ・オブ・シドニー
(73)【特許権者】
【識別番号】517430978
【氏名又は名称】ウェスタン シドニー ローカル ヘルス ディストリクト
【氏名又は名称原語表記】WESTERN SYDNEY LOCAL HEALTH DISTRICT
【住所又は居所原語表記】Hawkesbury Road, Westmead, New South Wales 2145 (AU)
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ピエール
(72)【発明者】
【氏名】バリー,マイケル アンソニー
(72)【発明者】
【氏名】マキューアン,アリステア
(72)【発明者】
【氏名】グエン,ドゥク ミン
【審査官】▲高▼木 尚哉
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-500170(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0069921(US,A1)
【文献】特開2002-065693(JP,A)
【文献】特表2018-522612(JP,A)
【文献】特開昭62-016755(JP,A)
【文献】特表2016-532497(JP,A)
【文献】実開昭57-187505(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/05-5/0538
A61B 5/24-5/398
A61B 18/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者に適用される医療アブレーションプロセスの間における組織損傷の発達を監視するためのシステムであって、前記システムが、
少なくとも1つのカテーテル電極を有するカテーテルアブレーションデバイスであって、
前記デバイスが給電路を介して電気エネルギー源に接続可能であり、標的領域内の組織をアブレートするためのアブレーションエネルギーを印加するように構成されている、カテーテルアブレーションデバイスと、
前記患者の身体への適用のための複数の外部電極と、
アブレーションエネルギーの前記印加がない状態で前記少なくとも1つのカテーテル電極と前記外部電極との間の電流経路のインピーダンスを決定するための測定回路機構と、
前記少なくとも1つのカテーテル電極の異なる組み合わせとのAC電流源の印加を制御するように構成されており、これにより、生じた電圧の測定が、前記それぞれの電極の間の前記患者の前記身体を通る異なる電気経路のインピーダンスの尺度を提供する電気コントローラと、を備え、
前記測定回路機構が、前記電気コントローラの制御下での
前記少なくとも1つのカテーテル電極の異なる組み合わせと前記複数の外部電極との間の切り替えのために構成されたスイッチマトリックスを含む、
システム。
【請求項2】
前記電気コントローラが、前記カテーテルアブレーションデバイスを前記電気エネルギー源から切り離すか、又は前記AC電流源の印加の間のアブレーションエネルギーの前記印加を他の仕方で一時停止するようにさらに構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記測定回路機構の動作期間の間における前記電気エネルギー源への選択的接続のためのダミー抵抗負荷を含む、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
前記カテーテルアブレーションデバイスが少なくとも2つのカテーテル電極を備え、前記測定回路機構が、前記複数の外部電極の1つと第1のカテーテル電極との間に電流を印加し、前記複数の外部電極の他の1つと第2のカテーテル電極との間の電圧を測定することで、4端子インピーダンス測定法を実施するように構成されている、請求項1~3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
異なる電流経路の同時測定のための複数のアナログ-デジタル変換器(ADC)を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記電気エネルギー源がRF発生器である、請求項1~5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記複数の外部電極が、前記患者の身体の外部区域にわたる適用のための電極ドットハーネスとして提供される、請求項1~6のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
対象の組織に適用される断続的なカテーテルアブレーションプロセスに用いられる測定システム
の作動方法であって、前記
作動方法が、
前記断続的なカテーテルアブレーションプロセスの間であって前記組織にアブレーションが適用されないときに、前記アブレーションによって形成された損傷区域を通過する電流経路のインピーダンスを前記測定システムが測定することを含む測定段階を
前記測定システムが遂行することを含み、
前記測定システムは、前記断続的なカテーテルアブレーションプロセスの間における組織損傷の発達を監視するように構成され、前記測定システムは、少なくとも1つのカテーテル電極を有するカテーテルアブレーションデバイスと、患者の身体への適用のための複数の外部電極と、アブレーションエネルギーの印加がない状態で前記少なくとも1つのカテーテル電極と前記外部電極との間の電流経路のインピーダンスを決定するための測定回路機構と、電気コントローラと、を備え、
前記測定段階は、前記電気コントローラ、前記少なくとも1つのカテーテル電極、前記複数の外部電極、及び、前記測定回路機構を用いて実行され、
前記
作動方法は、前記測定システムが決定段階を遂行することをさらに含み、当該決定段階において、1つ以上の前記カテーテル電極と1つ以上の前記複数の外部電極との間に電流を順次に印加し、インピーダンスを測定し、当該測定の結果に従って前記測定段階で用いるための電極を選択することによって、1本以上の電流経路が複数の電流経路から選択される、
作動方法。
【請求項9】
前記測定段階の間、当該測定段階がなければ前記組織に適用されるアブレーションエネルギーが前記カテーテル電極からダミー負荷へそらされる、請求項8に記載の
作動方法。
【請求項10】
前記測定段階の後続する反復に用
いられる電極とともに、規定数の電流経路が前記決定段階において選択される、請求項8又は9に記載の
作動方法。
【請求項11】
前記電極が、測定された前記電流経路の最も低いインピーダンスに関連付けられたものとして選択される、請求項8~10のいずれか一項に記載の
作動方法。
【請求項12】
前記電極が、前記損傷に隣接した領域への導電性溶液の注入などの、前記患者の前記身体の局所状態変化に最も敏感な前記電流経路に関連付けられたものとして選択される、請求項8~11のいずれか一項に記載の
作動方法。
【請求項13】
前記測定段階において行われた前記測定が、
前記カテーテルアブレーションによって形成された損傷のサイズを推定するためのアルゴリズム内で用いられる、請求項8~12のいずれか一項に記載の
作動方法。
【請求項14】
測定段階ごとに、前記測定
の結果が分析され、どの測定を前記アルゴリズム内で用いるべきかに関して選択が行われる、請求項13に記載の
作動方法。
【請求項15】
前記選択が、以前の測定段階以降
に選択された前記1本以上の電流経路のインピーダンスの変化に少なくとも部分的に基づいて行われる、請求項14に記載の
作動方法。
【請求項16】
前記決定段階及び/又は前記測定段階が前記対象の呼吸サイクル及び/又は心拍に同期される、請求項8~15のいずれか一項に記載の
作動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制限されたインピーダンス測定を通じて組織アブレーションを監視するための方法及びシステムに関する。それは、特に、血管内心臓カテーテルアブレーション治療のリアルタイムの連続評価において適用されるが、種々の他の医学的治療技法にも同等に適用を見出し得る。
【背景技術】
【0002】
無線周波数(RF:radiofrequency)アブレーションなどの心臓カテーテルアブレーションは、広範な心不整脈を低侵襲性の仕方で治療する能力を有し、介入性心臓病学の急速に成長する分野を構成している。これらの不整脈に関わる心臓の領域は、好適なアブレーションデバイス(RF放射電極又は他の好適な機器など)を装備したカテーテルを用いた末梢静脈又は動脈からのアクセスを介して到達することができ、アブレーションエネルギーを印加して組織を加熱することによってアブレートすることができる。
【0003】
RFカテーテルアブレーションは、1つ以上の電極カテーテルを通して(350kHz~1MHzの範囲内の)高周波交流電流を心筋組織へ送出し、熱損傷を作り出すことを含む。電流が組織を加熱する機構は、電極と直接接触した組織の狭い縁(<1mm)の抵抗(オーム)加熱であり、より深い組織領域は伝導によって加熱される。熱は領域から、さらなる熱伝導によって正常温の組織内へ、及び循環する血液プールを介した熱対流によって消散される。
【0004】
小さすぎる損傷は不整脈の治療において効果がなくなる場合があり、その一方で、大きすぎる損傷は好ましくない合併症を伴う場合がある。この区域における過熱は大きな懸案事項であり、刺通及びタンポナーデを含む潜在的リスクを有する。それゆえ、カテーテルアブレーションの成功は、不整脈原性基質の精密な位置確認だけでなく、付随する傷害を生まない、その基質の完全で永久的な除去を必要とする。
【0005】
アブレーション手順の間における損傷の発達を監視する必要性にもかかわらず、これを臨床的に達成するための確実な手段は目下存在しない。カテーテル先端温度及びインピーダンス変化、アブレーションパワー、継続時間、カテーテル先端圧力、並びにアブレーションカテーテル上で記録された心内電位図の減少などの代替尺度が、カテーテル先端が心臓壁に対して適切に配置されていること、及びアブレーションが生じていることの指示を提供することができるが、概して、損傷の形成又は発達の直接的尺度を提示することは全くできない。MRIは損傷の高分解能画像を、比較的小さい誤差をもって提供することができるが、画像再構成時間が長く(30分に及ぶ)、したがって、本技法は標準的な臨床手順のために実用的でない。
【0006】
損傷サイズを決定するための以前のシステムは電気インピーダンストモグラフィ(EIT:Electrical Impedance Tomography)の使用を含む。EITは、空間分解能の低い結果をもたらす不良設定の方法であるため、その従来の実装において欠点を持つ。したがって、EIT実装システムは、リアルタイムのカテーテル位置の認識に加えて利用される、治療全体を通じたCT撮像又は位置情報に大きく依存する。
【0007】
EITの数値解を用いない、又はCT情報に頼ることを必要としない、カテーテルアブレーションの間における損傷の発達を監視するためのより確実なシステム及び方法が必要とされている。
【0008】
本明細書におけるいかなる従来技術への言及も、この従来技術が任意の管轄体内の共通の一般知識の部分を成すこと、或いはこの従来技術が、当業者の読者によって従来技術の任意の他の部品と組み合わせられることが合理的に期待され得るであろうことの認知又は示唆にならない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
カテーテルアブレーション手順における電磁放射の送出の間において、抵抗及び伝導加熱に起因する心組織内の温度変化は組織の電気インピーダンスの変化を伴う。理論的には、温度が増大したときに、インピーダンスは降下する。これにより、組織体積の変化したインピーダンスを測定することにより、組織体積内の加熱をリアルタイムで測定できる。
【0010】
第1の態様における本発明によれば、患者に適用される医療アブレーションプロセスの間における組織損傷の発達を監視するためのシステムであって、システムが、
少なくとも1つのカテーテル電極を有するカテーテルアブレーションデバイスであって、
デバイスが給電路を介して電気エネルギー源に接続可能であり、標的領域内の組織をアブレートするためのアブレーションエネルギーを印加するように構成されている、カテーテルアブレーションデバイスと、
患者の身体への適用のための複数の外部電極と、
アブレーションエネルギーの前記印加がない状態で少なくとも1つのカテーテル電極と外部電極との間の電流経路の電気特性を決定するための測定回路機構と、
電気コントローラと、
を備えるシステムが提供される。
【0011】
好ましくは、電気特性は電流経路のインピーダンスである。
【0012】
好ましい形態では、電気コントローラは、少なくとも1つのカテーテル電極の異なる組み合わせと複数の外部電極との間のAC電流源の印加を制御するように構成されており、これにより、生じた電圧の測定が、それぞれの電極の間の患者の身体を通る異なる電気経路のインピーダンスの尺度を提供し、電気コントローラは、カテーテルアブレーションデバイスを電気エネルギー源から切り離すか、又は前記AC電流源の印加の間のアブレーションエネルギーの前記印加を他の仕方で一時停止するようにさらに構成されている。
【0013】
システムは、前記測定回路機構の動作期間の間における電気エネルギー源への選択的接続のためのダミー抵抗負荷を含み得る。この場合には、エネルギー源をカテーテルアブレーションデバイスから切り離し、それをダミー負荷に結合するように構成されたアブレーション分路が含まれ得る。
【0014】
代替的に、測定が行われている期間に高速にオフに切り替えられ得る、断続的な電気エネルギー源が用いられてもよい。
【0015】
好ましい形態では、測定回路機構は、電気コントローラの制御下での電極の異なる組み合わせの間の切り替えのために構成されたスイッチマトリックスを含む。
【0016】
好ましくは、測定回路機構は、前記電気特性(例えば、インピーダンス)を測定するための4端子測定法を実施するように構成されている。
【0017】
電気コントローラはPCを含み得る。好ましい形態では、測定回路機構は、測定された電圧のデジタル表現を提供するための1つ以上のアナログ-デジタル変換器(ADC:analog-to-digital converter)を含む。一実施形態では、異なる電流経路の同時測定のための複数のADCが含まれ、各ADCは、電気コントローラの制御下で、異なる選択された外部電極を切り替えられるように構成されている。
【0018】
一形態では、電気エネルギー源はRF発生器である。本発明は、マイクロ波アブレーション及び電気穿孔法を含む、他の種類のアブレーションプロセスにも適用され得る。
【0019】
複数の外部電極は、患者の身体の外部区域にわたる適用のための電極ドットハーネスとして提供され得る。
【0020】
第2の態様における本発明によれば、対象の組織に適用されるカテーテルアブレーションプロセスの間における損傷のサイズを監視するためのシステムを動作させる方法であって、本方法が、
(a)カテーテル電極へのアブレーションエネルギーの送出を含むアブレーション段階を遂行することと、
(b)アブレーションによって形成された損傷区域を通過する電流経路の電気特性を測定することを含む測定段階を遂行することと、
を含み、
ステップ(a)及び(b)が順次に繰り返される、方法が提供される。
【0021】
好ましい形態では、ステップ(a)及び(b)は、ステップ(b)において遂行される測定が規定の損傷サイズを指示するまで順次に繰り返される。
【0022】
ステップ(b)において、アブレーションエネルギーはカテーテル電極からダミー負荷へそらされ得る。
【0023】
本発明の第2の態様の方法は本発明の第1の態様のシステムの使用を含み得、ステップ(a)は、前記カテーテルアブレーションデバイスを用いて実施され、ステップ(b)は、前記複数の外部電極及び前記測定回路機構を用いて実施され、ステップ(a)及び(b)の間の切り替えは前記電気コントローラの制御下で行われる。
【0024】
それゆえ、本方法によれば、測定段階は、1つ以上のカテーテル電極と、患者の身体の外部に適用された複数の電極との間に電流を順次に流し、電気的応答を測定することを含む。結果の分析は最も直近のアブレーション段階の効果の評価を与え、連続した測定段階の結果の分析は所望の損傷サイズの達成に関する予測を可能にする。
【0025】
本方法は、1つ以上のカテーテル電極と、患者の身体に適用された複数の外部電極との間に電流を順次に印加し、電気的応答を測定し、結果に従ってステップ(b)のために用いるための電極を選択することによって、1本以上の電流経路が複数本の電流経路から選択される、初期決定段階を含み得る。
【0026】
好ましくは、規定数の電流経路が決定段階において選択され、関連電極がステップ(b)の後続の反復のために用いられる。
【0027】
一実施形態では、電極は、測定された電流経路の最も低いインピーダンスに関連付けられたものとして選択される。代替的に、電極は、損傷に隣接した領域への導電性溶液の注入などの、患者の身体の局所状態変化に最も敏感な電流経路に関連付けられたものとして選択され得る。
【0028】
インピーダンスの変化は、医師に損傷サイズの尺度を提供するために、(例えば、ルックアップ表内の)以前に決定されたデータと比較されてもよい。本発明の本方法は、ほとんどの適用物においては臨床的に許容可能と見なされる、わずか、深さ1mm及び長さ3mm前後の誤差以内で損傷サイズを追跡するために用いることができることが試験によって示唆された。
【0029】
1つの好ましい形態では、本方法は、ステップ(b)において行われた測定を、ステップ(a)において形成された損傷のサイズを推定するためのアルゴリズム内で用いることを含む。
【0030】
一実施形態では、測定段階ごとに、測定結果が分析され、どの測定をアルゴリズム内で用いるべきかに関して選択が行われる。
【0031】
この選択は、以前の測定段階以降の関連電流経路の電気特性の変化に少なくとも部分的に基づいて行われ得る。例えば、選択は、介在するアブレーション段階によって引き起こされる最も大きいインピーダンス降下に基づいて行われ得る。
【0032】
好ましい形態では、ステップ(a)及び/又はステップ(b)は、比較的安定した点で測定段階を実施するために、対象の呼吸サイクル及び/又は心拍に同期され得る。
【0033】
測定の分析において用いられるアルゴリズムは回帰分析アルゴリズムを含み得る。代替的に、又は加えて、機械学習が、結果を解釈するために用いられてもよい。理解されるように、(特に、測定ごとに用いられる外部電極の位置に基づく)結果の分析は、損傷の寸法、損傷の形状、及び/又は損傷の配向の決定において用いられ得る。
【0034】
したがって、本発明は、アブレーションカテーテル電極と複数の外部電極との間のインピーダンス測定を含む。本明細書及び請求項において、用語「外部電極」は、カテーテルから遠隔にある電極の二次セットを指すために使用される。一般的な適用物では、外部電極は患者の身体の外部に、それと接触して配置される。しかし、それらは、食道、冠静脈洞、又は他の好適な部位などの身体の内部構造内に配置されてもよいことは理解されるであろう。カテーテル電極及び外部電極は、最も臨床的に有意な電流経路を高速且つ確実に見出し、損傷の成長の臨床的に有用な指示を提供することができる、アブレーションの進行に伴うインピーダンス変化の尺度を得るために用いられる。
【0035】
患者の身体上の異なる場所における複数の電極の間の複数のインピーダンス測定の使用は、無論、EITの全般的分野において知られている。しかし、EITは、医療撮像のためには、肺機能の監視、癌領域の場所特定、脳活動及び胃活動の位置確認などの領域における特定の適用で用いられている。対照的に、本発明は画像再構成ソフトウェアには頼らず、代わりに、アブレーションカテーテルに含まれる電極と複数の外部電極との組み合わせを、特別に構成されたスイッチング手段と共に用いて、(特定の伝導経路に対応する)電極集団のうちのどれを、アブレーションカテーテルの使用の有効性の進行中の監視において用いるべきかを決定し、それらの電流経路の測定された電気特性における応答が、損傷形成の進行の比較的直接的なリアルタイムの指示を提供する。EITと同様に、本発明の方法において通例印加される電流は、身体内の著しい神経刺激又はオーム加熱を回避するために、比較的小さく、適度に高い周波数におけるものである。損傷の形成を監視するためのEITの使用とは異なり、本発明は、複雑な計算解の必要性、並びにまた、CT撮像又は位置情報に頼る必要性をなくす。
【0036】
カテーテル電極の近接によって、1つ以上の外部電極への生じた電気経路内に、加熱された体積の包含が確立され、本発明によれば、複数の電極にわたって電流の印加を反復し、電圧測定を遂行することによって、最も適切な電流経路が見出される。(算出された最も低いインピーダンス測定値などの)規定の基準が、アブレーション治療の間における損傷の形成の監視のための最も適切な経路の指示として考慮される。
【0037】
先行する段落において説明された本発明のさらなる態様及び態様のさらなる実施形態が、例として、添付の図面を参照して与えられた、以下の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る、患者のRFカテーテルアブレーションの間における損傷の発達を監視するためのシステムの概観である。
【
図2】
図2は、RF発生器に接続された
図1のシステムのアブレーションインターフェースを示す。
【
図3】
図3は、代替的な
システムのインターフェースを示す。
【
図4】
図4は、本発明の一実施形態に係る、カテーテルアブレーションの間における損傷の発達を監視するための方法を示すフロー図である。
【
図5】
図5は、
図4に示される方法の測定段階のフロー図である。
【
図6】
図6は、本発明の代替的な実施形態に係る、カテーテルアブレーションの間における損傷の発達を監視するための方法を示すフロー図である。
【
図7】
図7は、
図6に示される方法の測定段階のフロー図である。
【
図8】
図8は、16個の4つの帯状に配列された、64個のECG電極(「ドット電極」)の一実施形態を示す。
【
図9】
図9は、カテーテルデバイス及びアブレーション損傷の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本明細書において開示され、定義された本発明は、言及された、又は本文若しくは図面から明らかな個々の特徴のうちの2つ以上の全ての代替的な組み合わせにも適用されることは理解されるであろう。これらの異なる組み合わせの全ては本発明の様々な代替的な態様を構成する。
【0040】
図1に示されるシステム10は、RFカテーテルアブレーションの間における損傷の発達の監視を提供し、患者11の心腔内への導入のためのRFアブレーションカテーテル3(RF放射器及びRF電源線を含む)を含む。カテーテル3はカテーテル電極E1、E2、E3、E4を設けられており、電極E1はRFアブレーション電極を含み(
図9参照)、その一方で、患者帰還電極2が患者の大腿又は他の好適な場所に取り付けられる。以下においてさらに説明されるように、外部表面電極1の帯4が患者の胸の周りに巻かれる。外部電極1は、この場合には電圧を測定するために用いられる、従来のECGドット電極であり得る。
【0041】
アブレーションカテーテル3は、例えば、3.5mm Fr Thermocoolカテーテル(Biosense Webster Inc.)、Therapy Cool Flexアブレーションカテーテル、又は当業者に知られた任意の他の好適なデバイスであり得る。アブレーション発生器12は、例えば、Stockert 70心臓アブレーション無線周波数発生器St4520(Biosense Webster Inc.)であり得る。
【0042】
電気インターフェースモジュール6(以下においてさらに説明される、本発明の実施形態2に関しては6Aとしても参照される)が、患者11の治療のアブレーション及び測定段階を統御するように構成された複数のリレー及びN路スイッチ(例えば、インピーダンス測定回路17/17A内に含まれるスイッチマトリックス16/16A-
図2及び
図3参照)を含む。
【0043】
切り替え制御は、カスタムコンピュータプログラム(図示せず)を実行するPCによって提供される。RF発生器12の出力はインターフェースモジュール6/6Aへの入力5として参照される。さらに、インターフェースモジュール6/6Aは、リードワイヤ9によって患者帰還電極2に、外部電極リードワイヤ8によって電極帯4の各外部電極1に、及びリードワイヤ7によって、ケーブルコネクタ13を経由して、カテーテル3の各内部電極E1、E2、E3、E4に電気接続されている。
【0044】
加えて、システムはまた、患者の手首の各々の上に配置されたECG電極101を有するリアルタイムECG/QRS(心拍)検出器102を含み得る。人工呼吸器100が、アブレーション手順の間に麻酔された患者11を人工呼吸するために用いられてもよく、この場合には、人工呼吸器100は、呼吸サイクルの測定がコンピュータプログラムによって受信されるように構成されている。代替的に、患者11が鎮静状態にあるのみである場合には、別の発信源から受信された呼吸機能、例えば、胸壁インピーダンスの変動を指示する信号が用いられてもよい。
【0045】
実施形態1
図2に、RF発生器12に接続された、電気インターフェースモジュール6の回路機構の第1の実施形態が示されている。アブレーション分路24、リレー19、及びリレーグループ20、21、22(まとめて、リレーグループ23)のリレーがインピーダンス測定の位置で示されている。スイッチマトリックス16のN路スイッチは任意の位置に設定されて示されている。しかし、「測定段階」の間は、スイッチは、以下において詳細に説明されるように、複数の位置を周期的に繰り返すことになる。
【0046】
スイッチマトリックス16は4つのN路ステアリングスイッチ18A、18B、18C、18Dから成る。例示的な構成では、スイッチ18A及び18Bは4路スイッチであり、各スイッチの投入(throw)はカテーテル電極E1~E4の各々への接続をもたらす。スイッチ18C及び18Dは64路スイッチであるが、図示しやすくするために、4つの端子のみが示されている。スイッチ18C及び18Dの投入は64個の外部表面電極1の各々への接続をもたらす。合わせて、これらのN路ステアリングスイッチ18A、18B、18C、18Dは、AC定電流源15、及び(ADCを介した出力を有する)高精度電圧計14の端子がカテーテル電極E1~E4のいずれか一つ及び外部電極1に選択的に接続されることを可能にする。
【0047】
競合する因子に基づいて決定されたとおりの、AC電流源15の適切な動作周波数が用いられる。周波数は、組織刺激を回避するため、及び短期間で数サイクルの測定の獲得を可能にするために十分に高いが、カテーテル内の寄生容量の効果を最小限に抑えるため、及びアブレーションエネルギーの印加周波数からのあらゆる干渉を最小限に抑えるために十分に低くなければならない。初期試験において、本発明者らは、50kHz~100kHzの範囲内の周波数が好ましいことを見いだした。投入される電流の振幅もまた、競合する因子によって決定されたとおりに、適宜選択される。電流が高いほど、特に、低インピーダンス経路にとっては、より良好な電圧分解能をもたらす。しかし、電流は、電極自体が加熱し始めるほど高くなってはならない。初期試験において、本発明者らは、2~5mAの範囲内の電流が好ましいことを見いだした。
【0048】
それゆえ、測定回路17は、順次的な4端子インピーダンス測定を遂行するように構成されている。各測定を遂行するために、第1のカテーテル電極E1/E2/E3/E4と第1の外部電極1との間に電流が供給され、カテーテル電極のうちの第2のものと、第1の外部電極と隣り合った、第2の外部電極との間で、生じた電圧が測定される。生じたインピーダンスは、次に、ADC電圧計14のUSB出力から外部のPC(図示せず)へ渡される。
【0049】
図8に示される例示的な構成では、電極帯4は16個の外部「ドット」電極1の4つの列から成る。電極「a」及び「b」に直接隣接した電極のセットが破線及び点線の外形線によってそれぞれ指示されている。留意されるように、電極「a」は(上又は下の列内の他の全ての電極と同様に)、直接隣り合う電極を5つ有し、その一方で、電極「b」は(中央の列内の他の全ての電極と同様に)8つ有する。電極帯4は
図8において平坦に示されているが、使用時には、それは患者の胸の周りに巻かれ、これにより、図示された最も左側及び最も右側の電極は相互に隣り合った電極になることは理解されるであろう。
【0050】
例示的な4端子構成として、カテーテル3と電極「a」との間の伝導経路内のインピーダンス測定値を得ることは、電流源15の正端子I+をカテーテル電極E3に、電流源15の負端子I-を外部電極「a」に、ADC電圧計14の正端子V+をカテーテル電極E2に、及びADC電圧計14の負端子V-を、電極「a」と隣り合った5つの外部電極1のいずれか一つに接続することによって達成される。それゆえ、5つの測定のうちのいずれかが、電極「a」に関連付けられたカテーテルへの電流経路の決定をもたらし得、本発明の方法は全ての5つの測定を用いて最も適したものを決定する。同じことが電極帯4の上又は下の列内の任意の電極のために適用される。
【0051】
同様に、電極「b」(又は電極帯4の中央の列のいずれかの内部の任意の他の電極)については、8つの測定のうちのいずれかが、その電極に関連付けられたカテーテルへの電流経路の決定をもたらし得、本発明の方法は全ての8つの測定を用いて最も適したものを決定する。インピーダンス測定は以下において本発明の方法の校正及び測定段階を参照してさらに説明される。
【0052】
図2へ戻ると、アブレーション分路24は、RF発生器12からの電気アブレーションパワーを、カテーテル電極E1及び帰還電極2を通して、或いは測定が遂行されている間はダミー負荷25(例えば、10Ω抵抗器)を通して案内するように同時に動作する、2つのSPDT(単極双投形)リレー19から成る。SPDTリレー19は、例えば、G6EK-134P-ST-US-DC5(Omron Electronics Components)リレーであり得る。この構成は、高電圧からの、及びRFノイズからの測定回路17及び他の構成部品の保護をもたらす。
【0053】
さらに、アブレーション絶縁リレーグループ20、21、22(まとめてリレーグループ23として参照される)は、アブレーション分路リレー19と同期して動作するように構成されている。アブレーションの間は、接地リレー20がスイッチマトリックス16のN路スイッチの投入をグラウンドに接続する。絶縁リレー21は外部ドット電極1及びカテーテル電極E2~E4を絶縁する。リレー22はカテーテル先端電極E1及び帰還電極をアブレーション分路リレーのそれぞれの投入に接続する。
【0054】
(インピーダンス測定を行うことができる)1つの状態では、リレーグループ20及び21は共同で、スイッチ18A、18Bの投入からカテーテル電極E1~E4の各々への接続、及びスイッチ18C、18Dの投入から外部電極1の各々への接続を可能にし、その一方で、帰還電極2は(図示のように)カテーテル先端電極E1から切り離される。
【0055】
したがって、アブレーション分路リレー19、及びリレーグループ23のアブレーション絶縁リレーは、システムが2つの状態、すなわち、アブレーション状態と測定状態との間で切り替わることを可能にする。本発明の方法は、これらの2つの状態を周期的に繰り返す反復プロセスを含み、その本実施形態は以下において
図4を参照して説明される。
【0056】
図4に示されるプロセスは、セットアップ段階、それに続く決定段階、並びにそれに続く、繰り返されるアブレーション及び測定段階を含み、アブレーション及び測定段階は、必要とされる損傷サイズが(電圧/インピーダンス測定を用いて決定されたときに)達成されるまで継続し、その時点で治療は停止される。
【0057】
セットアップ段階
プロセスの第1のステップは、AC電流源15及びADC電圧計14を用いて、カテーテル3の2つの電極、及び外部電極1のそれぞれを用いて4端子内部-外部電圧測定を得る、セットアップ段階41である。セットアップ段階の目的は、内部及び外部電極の間の可能な電気経路の全てについての測定を獲得し、進行中の測定のための最適な経路の決定を可能にすることである。理解されることになるように、既知の電流の注入に対して、測定された電圧は電流経路のインピーダンスの決定をもたらす。
【0058】
上述されたように、カテーテルと外部電極との間の電気経路について、印加された電流から生じた電圧測定が得られる。アブレーションカテーテル(例えば、Biosence Webster Thermocoolアブレーションカテーテル)は、一般的に、4つのカテーテル電極を有する。しかし、4端子電圧測定のためには、2つの内部電極のみが必要とされる。上述された例では、E2及びE3が、測定を遂行するために使用され、E1はアブレーションのためにのみ使用され、E4は使用されない。E4は、本発明者らによって、カテーテル先端から遠く離れすぎていると考えられた。その一方で、実際面では、E1を用いたインピーダンス測定値は、おそらく、RF信号からE1へのアブレーション分路24によってもたらされる絶縁の限界のゆえに、不必要にノイズを有する傾向を有することが試験によって示された。
【0059】
再び
図2へ戻ると、4端子インピーダンス測定を得るために、I+はカテーテル電極E3に接続され、V+はカテーテル電極E2に接続され、I-は第1の外部電極1に接続され、V-は第1の外部電極に隣接した電極の各々のものに順次に接続される。生じた電圧測定が各々のために記録される。次に、I-は、第2の外部電極1に接続するように切り替えられ、V-は、その第2の外部電極に隣り合った電極に順次に切り替わる。これが、外部電極の全てのために、電流が印加され、生じた電圧が測定され、記録されるまで継続する。
【0060】
上述されたように、各々のものに隣り合う電極を伴う外部電極1の各々のために、複数の4端子電圧測定が取得される。
図8に示される構成(16個の4つの列の形で配列された64個の電極から成る帯4)では、合計416個のインピーダンス測定及び経路が記録される(上部及び下部の帯内の電極ごとに5つ、及び中央の帯内の電極ごとに8つ)。
【0061】
アブレーション測定経路の決定
図4に戻ると、次に、プロセスは、セットアップ段階からの結果を分析し、10本の最も好適なカテーテル-外部電極経路に関する決定を行う決定ステップ42へ移る。
【0062】
インピーダンスが低いほど、概して、より直接的な経路、及び付随するより低いノイズリスクを指示するため、「最良の」経路は、最も低いインピーダンスの経路となるように選ばれる。しかし、代替的なアプローチでは、他の基準を用いることもできることは理解されるであろう。
【0063】
例えば、カテーテル部位への好適な生理食塩水の導入に対して最も高い感受性を示す経路が選定されてもよい。
【0064】
以下においてさらに説明されるように、単一の内部-外部電極経路を選択するのではなく、ステップ42は、10本の経路の決定を含み、これにより、(例えば、肺野の存在のゆえに)経路が信頼できないことが分かった場合には、他の測定経路が利用可能である。熟練した読者が理解するように、任意の数の内部-外部電極経路を選択することができるであろうが、本発明者らは、10本の経路が、本発明の方法論のために適切で実際的な数の代替案をもたらすと決定した。理解されることになるように、より多数の経路を選択することはより長い監視時間を要することになり、その一方で、より少数の経路を選択することは確率的誤差をもたらし得る。
【0065】
以下において本発明の実施形態2を参照して説明される、代替的なアプローチでは、アブレーション手順の間のインピーダンス測定のための限られた数の経路を決定するのではなく、全ての経路インピーダンスが各測定段階において測定されてもよく、どの経路を分析において使用するべきであるかの決定が規定の基準に従って行われる。
【0066】
アブレーション段階
決定ステップ42が完了すると、RFアブレーション治療が開始する(アブレーション段階43)。上述されたように、この段階の間に、アブレーション絶縁リレー21は-PCの制御下で-カテーテル電極及び外部電極1をインピーダンス測定回路17から切り離す。アブレーション絶縁接地リレー20は、カテーテル電極、及びN路スイッチ18の外部電極端子をグラウンドに接続する。
【0067】
アブレーション分路リレー19及びアブレーション絶縁リレーグループ22はRF発生器12からのRFアブレーションエネルギーをカテーテル先端放射器電極E1に提供し、患者帰還電極2は電気帰還経路を提供する。好適な時間にわたるRFアブレーションエネルギーの印加は、それゆえ、損傷の形成を始めるよう組織を加熱する。実験試験では、以下においてさらに詳細に説明されるように、患者の呼吸数を含む様々な因子に従って選定された、5.2秒のアブレーション継続時間が選択された。
【0068】
各アブレーション段階の後に、リレー回路を用いて、RF発生器12をカテーテル先端電極E1及び患者帰還電極2からダミー負荷25へ切り替える。この切り替えが行われている50msの休止は、発達中の損傷を包囲する区域が熱的に平衡に達するための時間を与える。この時間の間に、アブレーション段階の間に加熱された末梢静脈又は動脈液/血がカテーテル先端領域から流れ去り、これにより、あらゆる熱変化は損傷内にのみ存在する。
【0069】
測定段階
測定段階44は、アブレーション治療が進行するのに伴い、すなわち、連続したアブレーションサイクルの合間に、電流が、選択された経路の内部電極から外部電極に印加されたために生じた電圧を測定するために用いられ、これにより、損傷のサイズの尺度を提供する。アブレーション段階の最後における50msの遅延の後に、RF発生器12はカテーテル先端電極E1及び患者帰還電極2からダミー負荷25に切り替えられる。
【0070】
PCの制御下で、スイッチマトリックス16は、決定段階42において選択された10本の測定経路のために、連続した4端子電圧測定が行われることを可能にするための接続を形成する。
【0071】
図5のフロー図は測定段階44のさらなる詳細を提供する。組織インピーダンスは、組織内のアブレーションに起因する温度の増大と共に降下することになるため、10個のインピーダンス測定のうちのいずれかが現在及び(セットアップ段階又は最も直近の測定段階のどちらかにおける)最も直近の測定の間のインピーダンスの増大を示す場合には、インピーダンス値は無視されるべきである。インピーダンスの増大は、経路が低い信号対ノイズ比(SNR:signal to noise ratio)を有すること、又は測定値が予期せぬ事象又はノイズによって支配されたことを指示し得る。
【0072】
図5を参照すると、測定段階プロセスは、第1の測定経路、すなわち、経路i=1に関して開始する(ステップ50)。PCの制御下で、スイッチマトリックス16は、意思決定ステップ42において識別された第1の経路のための単一の4端子電圧測定を取得するように構成されており(ステップ51)、それを用いてインピーダンスを決定する。次に、決定ステップ52において、この値を、記憶された以前の値と比較する。第1の経路のためのこの新たなインピーダンス測定が以前の値よりも低い場合には、このとき、その測定を損傷のサイズの指示として用いることになる(ステップ53)。新たなインピーダンス測定が以前の値よりも高い場合には、その値は放棄される(ステップ54)。
【0073】
その後、カウントを増加させ(i=i+1、ステップ58)、プロセスを繰り返すことによって、次の経路がインピーダンスの測定及び決定を受ける。決定ステップ59が、全ての10本の経路が測定されたかどうかを決定し、その場合には、プロセスは決定ステップ57へ進む。10個のインピーダンス値がいずれも、その以前の測定よりも低いと決定されなかった場合には、損傷を以前のサイクルと同じサイズと考え得る(ステップ55)。これは、アブレーションが失敗し、繰り返される必要があることを指示し得る。しかし、アブレーションプロセスの最後の方では、平衡状態に達し、損傷はもはや著しく成長しない。必然的に、アブレーションの継続に関する決定は、インピーダンス測定結果によって知らされた、心臓病専門医/外科医によって行われることになる。
【0074】
インピーダンス測定のうちの少なくとも1つが使用のためにフラグが付けられたと決定した(すなわち、その特定の経路のためのインピーダンスが減少し、損傷サイズの増大を指示した)場合には(ステップ57)、このとき、PCはインピーダンス測定を用いて、インピーダンス深さ及び幅曲線の既定のセットを用いて損傷サイズの決定を行う(ステップ56)。
【0075】
可能な過小予測及び過大予測値を除外するために、0.45~0.55の累積確率のための深さ及び幅のセットの分位点が、結果を制限するために用いられる。これらは、少なくとも1つの測定が範囲内にあることが見いだされるまで、0.35~0.65、及び次に、最大で0.25~0.75に拡大され得る。したがって、最終的な測定損傷寸法が平均深さ及び幅を表すことになる。
【0076】
図9は、組織91内の損傷90に近接した電極E1、E2、E3、E4を有するカテーテル3の概略図を提供し、損傷の幅及び高さが本発明の方法によって決定される。
【0077】
図4に戻ると、測定段階44に続いて、最新のアブレーションサイクルの後の損傷サイズの決定が行われる。決定ステップ45において、損傷が、必要とされるサイズのものであると決定された場合には、アブレーション治療プロセスは終了する。必要とされる損傷サイズがまだ達成されていない場合には、外科医/心臓病専門医は、アブレーションの次の反復を開始すると決定することができ、それゆえ、プロセスはアブレーション段階43へ戻る。
【0078】
理解されることになるように、アブレーション及びインピーダンス測定サイクルのこの繰り返しの交互が、治療プロセスのリアルタイムの連続監視をもたらすが、RF電磁界が測定装置と干渉すること(又はその逆)を伴わない。
【0079】
実施形態2
この代替的な実施形態では、
図3に、RF発生器12Aに接続された、電気インターフェースモジュール6Aの回路機構が示されている。アブレーション分路リレー19A、及びリレーグループ31及び32のリレーがインピーダンス測定の位置で示されている。スイッチマトリックス16AのN路スイッチは任意の位置に設定されて示されている。しかし、測定段階の間は、スイッチは再び、複数の位置を周期的に繰り返すことになる。
【0080】
スイッチマトリックス16Aは複数のN路ステアリングスイッチ30及び30A~30Xから成る。実施形態1の構成とは異なり、4路スイッチに接続するのではなく、電流源のI+はアブレーション絶縁リレーを介して電極E2にのみ接続され、V+は、同様に、アブレーション絶縁リレーを介して、カテーテル先端電極E1にのみ接続される。ステアリングスイッチ30の極は電流源のI-端子に接続され、スイッチ30A~30Xの極は複数のアナログ-デジタル変換器(ADC)14A~14XのV-端子に接続される。
【0081】
本実施形態では、-特に、RF発生器をカテーテルから絶縁するためのより確実な高速スイッチングの提供における-本発明者らによる装置の改良は、(実施形態1の場合とは異なり)カテーテル先端電極E1をインピーダンス測定電極として採用することができることを意味する。これは、E1がアブレーションゾーンに最も近いカテーテル電極であるため、好ましい。
【0082】
図示しやすくするために、N路スイッチの3つの端子のみが示されている。スイッチ30~30Xの投入は電極帯4の外部ドット電極1~Nに接続される。本実施形態では、測定回路17AのN路ステアリングスイッチは、4端子インピーダンス測定が並列に行われることを可能にし、それゆえ、インピーダンス経路の全て(本実施形態では、合計で416本の経路)を測定するために必要とされる時間の長さを低減する。
【0083】
測定段階の間は、電流源のI-端子は外部のドット電極の各々に順次に接続し、その一方で、V-端子は電流源のI-端子の場所の隣り合ったドット電極に接続する。例えば、測定回路17Aは、8つのADC、ADC1~ADC8を、8つの対応するN路スイッチ30A~30Hと共に含み、したがって、スイッチマトリックス16A内に合計9つのN路スイッチ(スイッチ30を含む)を含み得る。理解されることになるように、このように、AC電流源15のI-端子の位置ごとに、全ての8つの隣り合った電極を同時に測定することができ、それゆえ、全体的なサンプリング時間を著しく短縮する。
【0084】
アブレーション分路リレー19Aは、RF発生器12Aからの電気アブレーションパワーを、カテーテル電極E1及び帰還電極2を通して、或いは測定が遂行されている間はダミー負荷25A(例えば、10Ω抵抗器)を通して案内するよう再び同時に動作する、実施形態1において用いられるとおりの、SPDT(単極双投形)リレーである。この構成は、高電圧からの、及びRFノイズからの測定回路17A及び他の構成部品の保護をもたらす。
【0085】
さらに、接地リレー31は、アブレーション分路リレー19Aと同期して動作するように構成されている。したがって、アブレーション分路リレー19A及び接地リレー31は、システムが2つの状態、すなわち、アブレーション状態と測定状態との間で切り替わることを可能にする。この場合も、本方法は、以下において
図6を参照して説明されるように、これらの2つの状態を周期的に繰り返す反復プロセスを含む。
【0086】
インピーダンス測定におけるRF発生器12Aからのノイズを回避するために、リレーグループ32のリレーは、測定段階の間は、カテーテル電極E2~E4をRF発生器から切り離す。しかし、位置の決定は本発明の一部を成してはいないが、アブレーション段階の間に、E2、E3、及びE4からの信号は、医師によって、カテーテルの位置を確認するために用いられてもよい。
【0087】
以上において実施形態1を参照して説明された10本の測定経路を選択するプロセスは、測定サイクル時間を低減することを目的とする。これは、インピーダンス測定値が電力線の干渉によって影響を受け得る場合に、特に適切であり、測定継続時間は、このような干渉を考慮するように選択されなければならない。例えば、干渉の効果を低減するためには、5回の電力線サイクルの継続時間が適切になり得る。50Hzの電源周波数の場合、1つの測定を取得するための時間(測定期間)は、したがって、100ms(5×1/50Hz)になり得る。電力線の干渉が有意でない状況では、本発明者らは、2.5msの測定継続時間が適すると決定した。
【0088】
したがって、本実施形態では、より短い測定間隔が、並列スイッチングの使用と相まって、各測定段階において、全てのN個の電極が、アブレーション手順の望ましくない途絶を伴うことなく用いられることを可能にする。これが行われる特定の接続パターンは、シーケンサによって、スイッチ位置ごとに最小限の変更数を可能にするように構成され得る。この目的を達成するために、超高速固体スイッチがN路スイッチ30A~30Xのために用いられる。
【0089】
本実施形態では、(経路の事前に選択された部分セットではなく)全ての経路インピーダンスが測定段階において測定されるため、別個のセットアップ段階を遂行する必要がない。
図6に、プロセスが示されている。同図は、測定段階64及びアブレーション段階63の周期的繰り返しを示し、決定ステップ65が、アブレーション手順をいつ停止するかを決定するために用いられる。
【0090】
測定段階
測定段階64において、選択されたカテーテル電極(この場合には、E1及びE2)と全ての外部電極1との間の電気経路のために、印加された電流から生じた電圧測定が得られ、記録される。
【0091】
上述されたように、外部ドット電極1の各々のために、全ての隣り合った電極を参照して複数の4端子電圧測定が取得される。
図8の構成(16個の4つの列の形で配列された64個の電極から成る帯4)では、合計416個のインピーダンス測定及び経路が記録される(上部及び下部の帯内の電極ごとに5つ、及び中央の帯内の電極ごとに8つ)。8つのADCが用いられる場合には、外部ドット電極1に隣り合った全ての8つの電極が単一のサイクル内で測定され得る。それゆえ、2.5msの単一の測定継続時間に対して、全測定サイクルの継続時間は160msになる(2.5ms×64=160ms)。理解されることになるように、このシナリオでは、8つのADCのうちの3つは上部及び下部の列の電極のためにヌルの測定を記録することになり、これらのヌルの測定は記録/分析から自動的に除外される。
【0092】
図7のフロー図は測定段階64のさらなる詳細を提供する。理解されることになるように、このプロセスのステップの多くは、以上において
図6を参照して説明されたのと同じである(及びここでは詳細に説明されない)。しかし、実施形態2では、経路の事前に選択された部分セットではなく、全てのインピーダンス経路が測定され、処理される。
【0093】
測定がインピーダンスの減少を示す電流経路のための結果のみが用いられるが(ステップ54A)、インピーダンス経路の測定の増大もまた、追加の情報を提供するために処理され得ることに留意されたい。例えば、このような結果は、連続した測定の合間にカテーテルが動いたことを表し得る。
【0094】
ステップ71において、各測定の以前のZ
i startと現在のZ
i currentとの差を計算する、ΔZ
i。アブレーションの最初の30秒について、平均勾配ΔZ/Δt
30sec(オーム/秒単位で測定)が測定される。ステップ72において、次式を用いて各測定値を校正する:
【数1】
【0095】
次に、さらなる好適な処理(特に、回帰分析)が、損傷サイズ(及び他の特性)の決定を行うために結果に対して実施される。具体的には、次に、校正された測定値のうちの一部又は全てが、ステップ73において、損傷のサイズ及び配向を決定するために用いられる。各サイクルからの測定値が時間に対して回帰させられ、損傷サイズの決定に用いるための対数温度上昇曲線をもたらす。配向は、損傷サイズを外部ドット電極の位置と相関させることによって決定され得る。このアプローチは、以上において実施形態1を参照して説明されたとおりの既知のインピーダンス対深さ及びインピーダンス対幅曲線の必要性を取り除く。
【0096】
理解されることになるように、取得された全てのインピーダンス測定のうち、処理のための特定のインピーダンス測定(及び分析のための特定の校正された測定)の選択は種々の異なる因子に依存することになる。この選択は、コンピュータソフトウェアの制御下で規定の基準に従って(所望の場合には動的な方式で)行うことができる。
【0097】
図6に概略的に示されるように、決定ステップ65において、最新のアブレーションサイクルの後の損傷サイズの決定が行われると、アブレーション治療プロセスは、(損傷が、必要とされるサイズのものであると決定された場合には)終了するか、或いは(決定されなかった場合には)アブレーション及び測定の次の反復が開始される。理解されるように、決定ステップ65は、初期測定段階の後において、アブレーション治療が全く適用されていないうちは、迂回されてもよい。
【0098】
アブレーションが中断されると、インピーダンス値の跳ね返りを監視するためにインピーダンス測定段階のさらなるサイクルが実施され得る。組織組成及び構造の変化に起因するインピーダンス変化は永久的であるが、温度に起因するものはそうでない。したがって、このアブレーション後の監視は、遂行されたアブレーションの機序及び特性に関する有用な情報を提供する、インピーダンス回復曲線の生成及び分析を可能にする。
【0099】
本発明の上述の適例は、低インピーダンスの感知において都合よいアプローチであり、接触及び/又は配線抵抗に起因する測定誤差を回避する、4端子インピーダンス測定技法を含む。しかし、当業者の読者は、本発明は、2又は3端子のアプローチなどの、他の技法を用いて実施されてもよいことを理解するであろう。
【0100】
さらに、上述された実施形態のいずれにおいても、インピーダンス測定は、比較的安定した点で測定が取得されることをもたらすために、患者の呼吸サイクル及びECGに同期され得る。この点に関して、安定した点とは、人工呼吸器100からの「肺が空」の指示の後の最初のQRSの200ms後の時点であると考えられる。具体的には、アブレーション段階の後に、次の安定した点において、発生器12はカテーテルから切り離され、ダミー負荷25へ切り替えられ、そうすると、インピーダンス測定が行われる。典型的なアブレーション段階の継続時間は3~5s(1呼吸サイクル以内)であり得る。患者の呼吸数が12/m(すなわち、5s)前後であり、典型的なアブレーション手順が30~90秒を要する場合、これは、6~18回前後のアブレーション/測定サイクルを含むことになるであろう。熟練した読者が理解するように、代替的なアプローチが可能である。例えば、呼吸サイクルごとに、理想的には患者のECGに同期させて、複数の測定を(全てのインピーダンス経路のために)行うことができる。
【0101】
本明細書の他の箇所で述べられているように、説明及び図示された実施形態は、電流伝導端子を提供するために、患者の身体の外部に適用された電極を都合よく用いるが、患者の身体の内部の他の部位も、それらがカテーテル電極から十分に遠く離れており、患者と接触している限り、適し得る。例えば、これらの「外部」電極は必要に応じて食道及び/又は冠静脈洞内に位置付けられてもよい。このようなアプローチの使用時には、電気解剖マッピングシステムが、解剖学的体積内のこれらの「外部電極」部位の位置を正確に決定するためにCT/MRI撮像と統合され得る。
【0102】
さらに、上述の説明はRFアブレーションを含むが、本アプローチはまた、マイクロ波放射アブレーションなどの、他のカテーテルアブレーション技法でも採用することができる。このような実施形態では、マイクロ波放射カテーテルは、生理食塩水電極又は従来の金属電極などの、1つ以上の適切に位置付けられた電極を装備していてもよい。
【0103】
本明細書で使用するとき、文脈が別途要求する場合を除いて、用語「備える(comprise)」、並びに「備える(comprising)」、「備える(comprises)」、及び「備えられる(comprised)」などの、その用語の変化形は、さらなる付加物、構成要素、整数、又はステップを除外することを意図されない。