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特許7572366水処理システム、水処理方法およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】水処理システム、水処理方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   C02F 3/12 20230101AFI20241016BHJP
【FI】
C02F3/12 H
C02F3/12 M
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021550537
(86)(22)【出願日】2020-09-10
(86)【国際出願番号】 JP2020034373
(87)【国際公開番号】W WO2021070552
(87)【国際公開日】2021-04-15
【審査請求日】2023-04-11
(31)【優先権主張番号】P 2019184810
(32)【優先日】2019-10-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】507214083
【氏名又は名称】メタウォーター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100150360
【弁理士】
【氏名又は名称】寺嶋 勇太
(74)【代理人】
【識別番号】100163511
【弁理士】
【氏名又は名称】辻 啓太
(72)【発明者】
【氏名】中 大輔
(72)【発明者】
【氏名】高橋 宏幸
【審査官】加藤 幹
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-167249(JP,A)
【文献】特開2017-127813(JP,A)
【文献】特開昭57-99385(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 3/
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の反応槽と、
前記複数の反応槽に接続される管である送風管と、
前記送風管を介して、前記複数の反応槽に空気を供給する送風ユニットと、
前記複数の反応槽それぞれに貯留された被処理水の状態と、前記複数の反応槽それぞれに供給される空気量とに基づき、前記複数の反応槽それぞれに貯留された被処理水の水質を所定の目標品質に調整するために必要な必要空気量を、前記複数の反応槽それぞれについて算出する必要空気量算出部と、
前記複数の反応槽それぞれについて算出された必要空気量に基づき、前記送風ユニットから前記複数の反応槽それぞれに至る経路における配管圧損を算出し、前記複数の反応槽それぞれの水頭圧と、前記複数の反応槽それぞれについて算出した配管圧損と、前記送風ユニットから前記複数の反応槽それぞれに至る経路における通気圧損と、前記複数の反応槽内の被処理水の汚濁負荷に応じて定まる、前記複数の反応槽それぞれの散気装置による散気装置圧損との和により、前記複数の反応槽それぞれの送風系列の圧力損失を算出する圧力損失算出部と、
前記圧力損失算出部により算出された前記複数の反応槽それぞれの送風系列の圧力損失の差を減らすように、前記複数の反応槽への被処理水の供給を制御する被処理水供給制御部と、を備える水処理システム。
【請求項2】
請求項1に記載の水処理システムにおいて、
前記被処理水供給制御部は、前記複数の反応槽それぞれの送風系列の圧力損失の差を減らすように、前記複数の反応槽に供給する被処理水の汚濁負荷比率を制御する、水処理システム。
【請求項3】
請求項2に記載の水処理システムにおいて、
前記被処理水供給制御部は、前記複数の反応槽に供給する被処理水の総量を一定として、前記複数の反応槽に供給する被処理水の汚濁負荷比率を制御する、水処理システム。
【請求項4】
請求項1に記載の水処理システムにおいて、
前記被処理水供給制御部は、前記複数の反応槽それぞれの送風系列の圧力損失の差を減らすように、前記複数の反応槽に供給する被処理水汚濁負荷の量を制御する、水処理システム。
【請求項5】
請求項4に記載の水処理システムにおいて、
前記被処理水供給制御部は、前記送風系列の圧力損失が小さい反応槽ほど、該反応槽に供給する被処理水の汚濁負荷を増加させる、または、前記送風系列の圧力損失が大きい反応槽ほど、該反応槽に供給する被処理水の汚濁負荷を減少させる、水処理システム。
【請求項6】
複数の反応槽と、前記複数の反応槽に接続される管である送風管と、前記送風管を介して、前記複数の反応槽に空気を供給する送風ユニットと、を備える水処理システムにおける水処理方法であって、
前記複数の反応槽それぞれに貯留された被処理水の状態と、前記複数の反応槽それぞれに供給される空気量とに基づき、前記複数の反応槽それぞれに貯留された被処理水の水質を所定の目標品質に調整するために必要な必要空気量を、前記複数の反応槽それぞれについて算出するステップと、
前記複数の反応槽それぞれについて算出された必要空気量に基づき、前記送風ユニットから前記複数の反応槽それぞれに至る経路における配管圧損を算出し、前記複数の反応槽それぞれの水頭圧と、前記複数の反応槽それぞれについて算出した配管圧損と、前記送風ユニットから前記複数の反応槽それぞれに至る経路における通気圧損と、前記複数の反応槽内の被処理水の汚濁負荷に応じて定まる、前記複数の反応槽それぞれの散気装置による散気装置圧損との和により、前記複数の反応槽それぞれの送風系列の圧力損失を算出する算出ステップと、
前記複数の反応槽それぞれの送風系列の圧力損失の差を減らすように、前記複数の反応槽への被処理水の供給を制御する制御ステップと、を含む水処理方法。
【請求項7】
複数の反応槽と、前記複数の反応槽に接続される管である送風管と、前記送風管を介して、前記複数の反応槽に空気を供給する送風ユニットと、を備える水処理システムのコンピュータに、
前記複数の反応槽それぞれに貯留された被処理水の状態と、前記複数の反応槽それぞれに供給される空気量とに基づき、前記複数の反応槽それぞれに貯留された被処理水の水質を所定の目標品質に調整するために必要な必要空気量を、前記複数の反応槽それぞれについて算出する処理と、
前記複数の反応槽それぞれについて算出された必要空気量に基づき、前記送風ユニットから前記複数の反応槽それぞれに至る経路における配管圧損を算出し、前記複数の反応槽それぞれの水頭圧と、前記複数の反応槽それぞれについて算出した配管圧損と、前記送風ユニットから前記複数の反応槽それぞれに至る経路における通気圧損と、前記複数の反応槽内の被処理水の汚濁負荷に応じて定まる、前記複数の反応槽それぞれの散気装置による散気装置圧損との和により、前記複数の反応槽それぞれの送風系列の圧力損失を算出する処理と、
前記複数の反応槽それぞれの送風系列の圧力損失の差を減らすように、前記複数の反応槽への被処理水の供給を制御する処理と、を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理システム、水処理方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
生活排水または工場排水などの被処理水を処理する水処理システムとして、被処理水に生物処理を行うシステムがある。このような水処理システムでは、反応槽内に被処理水を流入させつつ、反応槽内に存在する好気性微生物に対して空気を供給する曝気処理を行う。反応槽内の被処理水に含まれる有機物は、好気性微生物によって分解され、安定した処理水質が得られる。
【0003】
上述した水処理システムにおいて、送風ユニットから送風管を介して複数の反応槽に空気を供給する方法の1つとして、想定される最大の圧力損失を算出し、算出した圧力損失に応じた送風圧力で、複数の反応槽に空気を供給する方法(第1の方法)がある。また、別の方法として、複数の反応槽それぞれの反応槽内の被処理水の水質に基づき、被処理水の処理に必要な空気量および送風管などの圧力損失を算出し、算出した圧力損失のうち、最大の圧力損失に応じた送風圧力で、複数の反応槽に空気を供給する方法(第2の方法)がある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-167249号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した第1の方法では、想定される最大の圧力損失に応じた送風圧力で各反応槽に送風するため、各反応槽に過剰な圧力で送風が行われることがある。また、上述した第2の方法では、水質に基づき算出された最大の圧力損失に応じた送風圧力で各反応槽に送風するため、算出された圧力損失が最大の反応槽以外の反応槽に過剰な圧力で送風が行われることがある。そのため、第1の方法および第2の方法では、送風ユニットが送風のために消費する電力(送風電力)に無駄が生じてしまい、水処理における電力利用の効率化が十分に図れないことがある。
【0006】
かかる事情に鑑みてなされた本発明の目的は、送風ユニットの送風電力の無駄を減らし、水処理における電力利用の効率化を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態に係る水処理システムは、
複数の反応槽と、
前記複数の反応槽に接続される管である送風管と、
前記送風管を介して、前記複数の反応槽に空気を供給する送風ユニットと、
前記複数の反応槽それぞれの送風系列の圧力損失を算出する圧力損失算出部と、
前記圧力損失算出部により算出された前記複数の反応槽それぞれの送風系列の圧力損失に応じて、前記複数の反応槽への被処理水の供給を制御する被処理水供給制御部と、を備える。
【0008】
本発明の一実施形態に係る水処理方法は、
複数の反応槽と、前記複数の反応槽に接続される管である送風管と、前記送風管を介して、前記複数の反応槽に空気を供給する送風ユニットと、を備える水処理システムにおける水処理方法であって、
前記複数の反応槽それぞれの送風系列の圧力損失を算出する算出ステップと、
前記複数の反応槽それぞれの送風系列の圧力損失に応じて、前記複数の反応槽への被処理水の供給を制御する制御ステップと、を含む。
【0009】
本発明の一実施形態に係るプログラムは、
複数の反応槽と、前記複数の反応槽に接続される管である送風管と、前記送風管を介して、前記複数の反応槽に空気を供給する送風ユニットと、を備える水処理システムのコンピュータに、
前記複数の反応槽それぞれの送風系列の圧力損失に応じて、前記複数の反応槽への被処理水の供給を制御する処理を実行させる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一実施形態によれば、送風ユニットの送風電力の無駄を減らし、水処理における電力利用の効率化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る水処理システムの構成例を示す図である。
図2図1に示す制御部の構成例を示すブロック図である。
図3図1に示す水処理システムの動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して例示説明する。各図中、同一符号は、同一または同等の構成要素を示している。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態に係る水処理システム1の構成例を示す図である。本実施形態に係る水処理システム1は、被処理水に対して曝気処理を行うシステムである。被処理水は、例えば、生活排水、工場排水、雨水、し尿、下水処理場の汚泥脱水工程後の脱離液、埋立地における浸出水などの廃水であるが、これらに限られるものではなく、曝気処理の対象となる種々の水である。
【0014】
図1に示す水処理システム1は、反応槽10A,10B,10Cと、送風ユニット20と、送風管30と、制御装置40とを備える。水処理システム1は、制御装置40により、送風ユニット20から反応槽10A,10B、10Cに供給する空気量と、反応槽10A,10B,10Cへの被処理水の供給とを制御し、反応槽10A,10B,10C内の被処理水の生物処理を行う。以下では、反応槽10A,10B,10Cを区別しない場合には、反応槽10と称する。
【0015】
反応槽10は、内部に散気装置12を有し、活性汚泥が貯留される槽である。反応槽10は、送水ポンプ13を介して被処理水が流入する(供給される)。散気装置12は、送風ユニット20から供給された空気で、反応槽10に貯留された活性汚泥を曝気する。反応槽10は、曝気された活性汚泥により反応槽10内の被処理水に生物処理を行い、生物処理後の処理水を排出する。
【0016】
反応槽10A,10B,10Cは、それぞれ並列に被処理水が供給される。本実施形態においては、水処理システム1は、3つの反応槽10A,10B,10Cを備える例を用いて説明するが、これに限られない。水処理システム1は、複数の反応槽10を備える。したがって、水処理システム1は、2あるいは4以上の反応槽10を備えてよい。
【0017】
送風ユニット20は、送風機22A,22B,22C,22Dを備える。送風機22A,22B,22C,22Dは、互いに同様の機能を有するブロアである。送風ユニット20は、送風管30を介して、複数の反応槽10A,10B,10Cに生物処理を行うための空気を供給する。以下では、送風機22A,22B,22C,22Dを区別しない場合には、送風機22と称する。
【0018】
送風機22は、外部から空気を導入し、回転する羽根部により導入した空気を排出するブロワである。送風機22は、例えば、インレットベーン式のブロワ、インバータ式のブロワ、歯車式のブロワなどであるが、これらに限られない。送風機22は、羽根部から空気を吐出する側が、互いに並列に送風管30に接続されており、空気を送風管30に吐出する。本実施形態においては、送風ユニット20は、4つの送風機22A,22B,22C,22Dを備える例を用いて説明するが、これに限られない。送風ユニット20が備える送風機22の数は任意である。したがって、送付ユニット20は、1つあるいは複数の送風機22を備えてよい。
【0019】
送風管30は、内部に空気を導通する管である。送風管30は、反応槽10A,10B,10Cに接続される。送風管30は、導入管31と、母管32と、支管34A,34B,34Cとを備える。導入管31は、一方の端部が分岐して送風機22A,22B,22C,22Dに接続され、各送風機22から空気が供給される管である。導入管31は、他方の端部が母管32に接続され、各送風機22から供給された空気を合流させて、母管32に導入する管である。母管32は、一方の端部が導入管31と接続され、他方の端部が支管34A,34B,34Cと接続される。
【0020】
支管34Aは、一方の端部が母管32と接続され、他方の端部が反応槽10Aの散気装置12と接続される管である。支管34Aは、母管32から供給された空気の一部を反応槽10Aに供給する。支管34Bは、一方の端部が母管32と接続され、他方の端部が反応槽10Bの散気装置12と接続される管である。支管34Bは、母管32から供給された空気の一部を反応槽10Bに供給する。支管34Cは、一方の端部が母管32と接続され、他方の端部が反応槽10Cの散気装置12と接続される管である。支管34Cは、母管32から供給された空気の一部を反応槽10Cに供給する。以下では、支管34A,34B,34Cを区別しない場合には、支管34と称する。
【0021】
支管34には導入弁36が設けられる。導入弁36は、制御装置40により開閉操作される弁である。導入弁36は、開度調整により、支管34から反応槽10に供給される空気量を調整する。
【0022】
制御装置40は、各反応槽10に供給する空気量を制御する装置である。また、制御装置40は、送水ポンプ13を介した各反応槽10への被処理水の供給を制御する装置である。制御装置40は、硝酸計41と、アンモニア計42と、吸気測定部43と、母管内圧測定部44と、支管風量測定部45と、制御部50とを備える。
【0023】
反応槽10内では、好気性条件下で活性汚泥中の好気性微生物である硝化細菌により、被処理水中のアンモニア性窒素が、亜硝酸性窒素および硝酸性窒素に硝化される。一方、反応槽10における被処理水中の酸素量が少ない領域では、脱窒細菌による脱窒反応が生じる。脱窒反応に十分な炭素源を供給すれば、脱窒反応を十分に進行させることができる。その結果、脱窒反応が生じる領域では、硝化が不十分であることにより発生した亜酸化窒素ガスを分解したり、亜酸化窒素を発生させることなく、亜硝酸を還元したりして、窒素と二酸化炭素とに分解し、窒素除去を行うことができる。
【0024】
硝酸計41は、各反応槽10内に設けられ、反応槽10内の被処理水の硝酸濃度を測定することで、脱窒反応の進行度、すなわち、硝酸の分解度合いを検出するセンサである。被処理水の硝酸とは、硝酸(HNO)、亜硝酸(HNO)、硝酸性窒素(NO-N)、亜硝酸性窒素(NO-N)、硝酸性窒素と亜硝酸性窒素との集合、およびNOを含む概念である。
【0025】
アンモニア計42は、各反応槽10内に設けられ、反応槽10内の被処理水のアンモニア濃度を測定することで、硝化反応の進行度、すなわち、アンモニアの分解度合いを検出するセンサである。被処理水のアンモニアとは、アンモニアおよびアンモニア性窒素を含む概念である。
【0026】
吸気測定部43は、送風機22の吸気側に設けられ、送風機22が吸気する空気量を測定する風量計である。
【0027】
母管内圧測定部44は、母管32に取り付けられ、母管32の内圧、すなわち、送風ユニット20からの空気の圧力を測定する圧力計である。
【0028】
支管風量測定部45は、支管34に設けられる。具体的には、支管風量測定部45は、支管34において導入弁36と母管32との間に設けられる。支管風量測定部45は、支管34から反応槽10に供給される空気量を測定する風量計である。なお、各支管34に風量計である支管風量測定部45を設けた場合、母管内圧測定部44の代わりに、支管34に圧力計を設けてもよい。
【0029】
制御部50は、上述した各部の測定結果に基づき、各反応槽10に供給する空気量を制御する。また、制御部50は、複数の反応槽10それぞれの送風系列の圧力損失の計算結果に応じて、複数の反応槽10への被処理水の供給を制御する。
【0030】
図2は、制御部50の構成例を示すブロック図である。
【0031】
図2に示す制御部50は、取得部51と、必要空気量算出部52と、目標管内圧算出部53と、送風制御部54と、導入空気制御部55と、被処理水供給制御部56とを備える。目標管内圧算出部53は、圧力損失算出部の一例である。制御部50は、例えば、CPU(Central Processing Unit)ならびにメモリを備えるコンピュータ(例えば、パーソナルコンピュータ)で実現可能である。制御部50がコンピュータで実現される場合、制御部50が備える上述した各部は、本実施形態に係るプログラムをメモリに格納し、格納されたプログラムをCPUが読み出して実行することにより実現される。
【0032】
取得部51は、硝酸計41、アンモニア計42、吸気測定部43、母管内圧測定部44および支管風量測定部45の測定結果を取得する。取得部51は、硝酸計41、アンモニア計42および支管風量測定部45の測定結果を必要空気量算出部52に出力する。また、取得部51は、吸気測定部43および母管内圧測定部44の測定結果を送風制御部54に出力する。また、取得部51は、支管風量測定部45の測定結果を導入空気制御部55に出力する。
【0033】
必要空気量算出部52は、取得部51から出力された、反応槽10内の被処理水の状態(被処理水の硝酸濃度およびアンモニア濃度)および支管風量測定部45の測定結果の過去から現在までの蓄積データに基づき、反応槽10内の被処理水の水質を所定の目標水質にするために必要な空気量(必要空気量)を、反応槽10ごとに算出する。
【0034】
必要空気量算出部52は、例えば、所定の水質空気量関係を記憶しており、この水質空気量関係に基づき、必要空気量を算出する。水質空気量関係とは、反応槽10に供給される空気量と、その空気量の空気が供給された場合の反応槽10内の水質の変化量との関係である。必要空気量算出部52は、予め求められた水質空気量関係から、硝酸計41により測定された被処理水の硝酸濃度およびアンモニア計42により測定された被処理水のアンモニア濃度が目標濃度となるような空気量を必要空気量として算出する。なお、本実施形態においては、硝酸計41、アンモニア計42および支管風量測定部45の測定結果に基づき必要空気量を算出する方法について説明したが、これに限られるものではない。要は、被処理水を所定の目標水質にするために必要は空気量を算出可能であれば、任意の方法を用いることができる。
【0035】
必要空気量算出部52は、反応槽10ごとの必要空気量の算出結果を、目標管内圧算出部53および導入空気制御部55に出力する。
【0036】
目標管内圧算出部53は、必要空気量算出部52により算出された反応槽10ごとの必要空気量に基づき、送風管30内の空気の圧力の目標値(目標管内圧)を算出する。目標管内圧は、各反応槽10に必要空気量の空気を供給するために必要な母管内圧測定部44の目標圧力として設定する圧力である。
【0037】
目標管内圧算出部53は、必要空気量算出部52により算出された目標空気量の空気を反応槽10に供給した場合に、送風管30内の圧力損失により損失される空気の圧力である配管圧損Hを算出する。
【0038】
管の配管圧損H は一般に、以下の式(1),(2)に基づき算出される。
=4・f・(l/d)・(γ・v/2) ・・・式(1)
=f・(γ・v/2) ・・・式(2)
【0039】
式(1)は、管が直管である場合における配管圧損H の算出式である。式(2)は、管が直管以外の異形管である場合における配管圧損H の算出式である。f,fは、損失係数であり、予め定められた定数である。lは直管の配管長(m)である。dは直管の内径(m)である。配管長lおよび配管dは、配管の形状により定まる定数である。γは、空気密度(kg/m)であり、予め定められた定数である。vは、空気の流速(m/s)である。式(1),(2)において、変数は流速vである。従って、管の配管圧損H は、流速vに応じて変化する。流速vは、以下の式(3)のように、空気の流量Qに比例する。式(3)において、Aは流路面積であり、配管の形状により定まる定数である。
Q=A・v ・・・(3)
【0040】
したがって、配管圧損H は、空気の流量Q、すなわち、必要空気量に基づき算出可能である。目標管内圧算出部53は、式(3)に基づき、必要空気量の空気を母管32および支管34に流した場合の空気の流速vを算出する。そして、目標管内圧算出部53は、算出した流速vと、上述した定数とを用いて、式(1),(2)から配管圧損Hを算出する。具体的には、目標管内圧算出部53は、送風ユニット20から反応槽10Aに至る経路における配管圧損HPAと、送風ユニット20から反応槽10Bに至る経路における配管圧損HPBと、送風ユニット20から反応槽10Cに至る経路における配管圧損HPCとを算出する。
【0041】
次に、目標管内圧算出部53は、以下の式(4)に基づき、複数の反応槽10それぞれの送風系列の圧力損失Hを算出する。
=h+H+H+H ・・・式(4)
【0042】
式(4)において、hは反応槽10内の被処理水の水頭圧である。Hは、母管内圧測定部44、支管風量測定部45および導入弁36による損失圧力(通気圧損)である。Hは、散気装置12による損失圧力(散気装置圧損)である。水頭圧hは、例えば、反応槽10の容積から予め求められる。水頭圧hは、反応槽10に水位または水量を測定するセンサを設け、このセンサの測定結果から求められてもよい。本実施形態においては、反応槽10に流入する被処理水の水量と同量の処理水が、反応槽10から流出する。従って、水頭圧hは一定である。通気圧損Hは、設計値あるいは予め計測された値である。散気装置圧損Hは、反応槽10内の被処理水の汚濁負荷に応じて定まる圧力であり、散気装置12の装置種別に応じて、固定圧または供給される風量の2乗に比例する圧力である。汚濁負荷とは、反応槽10に供給される被処理水の水量と、反応槽10に供給される被処理水の濃度(BOD(Biochemical Oxygen Demand),COD(Chemical Oxygen Demand),NH4などの汚濁物質濃度)との積で表される。
【0043】
目標管内圧算出部53は、複数の反応槽10それぞれの送風系列の圧力損失Hを算出する。すなわち、目標管内圧算出部53は、反応槽10Aの水頭圧hと、配管圧損HPAと、送風ユニット20から反応槽10Aに至る経路の通気圧損HMAと、反応槽10Aの散気装置12による散気装置圧損HAAとの和を、反応槽10Aの送風系列の圧力損失HLAとして算出する。同様に、目標管内圧算出部53は、反応槽10Bの送風系列の圧力損失HLBおよび反応槽10Cの送風系列の圧力損失HLCを算出する。なお、上述した圧力損失Hの算出方法はあくまでも一例であり、複数の反応槽10それぞれの送風系列の圧力損失Hを算出することが可能な任意の方法を用いてよい。
【0044】
目標管内圧算出部53は、複数の反応槽10それぞれの送風系列の圧力損失H(圧力損失HLA,HLB,HLC)のうち、最大値を目標管内圧として決定する。目標管内圧算出部53は、目標管内圧の算出結果を送風制御部54に出力する。また、目標管内圧算出部53は、複数の反応槽10それぞれの送風系列ごとの圧力損失Hの算出結果を被処理水供給制御部56に出力する。
【0045】
送風制御部54は、母管内圧測定部44の測定圧力が、目標管内圧算出部53により算出された目標管内圧となるように、送風ユニット20からの空気の供給を制御する。具体的には、送風制御部54は、母管内圧測定部44により測定される母管32内の内圧が目標管内圧と一致するように、吸気測定部43の測定結果に基づき、送風ユニット20からの空気の供給量を制御する。
【0046】
導入空気制御部55は、支管風量測定部45により測定される、反応槽10に供給される空気量が、必要空気量算出部52により算出された必要空気量と一致するように、導入弁36の開度を制御する。具体的には、導入空気制御部55は、目標空気量を目標値とし、支管風量測定部45の測定結果を用いたPID(Proportional Integral Differential)制御により、反応槽10に供給される空気量が目標空気量に追従するように、導入弁36の開度を制御する。
【0047】
被処理水供給制御部56は、目標管内圧算出部53により算出された、複数の反応槽10それぞれの送風系列の圧力損失Hに応じて、送水ポンプ13を介した複数の反応槽10への被処理水の供給を制御する。
【0048】
各反応槽10への被処理水の供給を制御することで、各反応槽10における必要空気量が変化し、各反応槽10の送風系列に送風する空気量も変化する。従って、複数の反応槽10それぞれの送風系列の圧力損失Hに応じて、各反応槽10への被処理水の供給を制御することで、各送風系列の圧力損失を均等化することができる。各送風系列の圧力損失を均等化することで、各反応槽10の送風系列に過剰な圧力で空気が供給されることによる送風ユニット20の送風電力の無駄を減らし、水処理における電力利用の効率化を図ることができる。各反応槽10への被処理水の供給の制御の詳細については後述する。
【0049】
次に、本実施形態に係る水処理システム1の動作について説明する。図3は、本実施形態に係る水処理システム1の動作の一例を示すフローチャートであり、水処理システム1における水処理方法について説明するための図である。図3においては、各反応槽10への被処理水の供給の制御に関する動作について主に説明する。
【0050】
目標管内圧算出部53は、複数の反応槽10それぞれの送風系列の圧力損失Hを算出する(ステップS11)。上述したように、目標管内圧算出部53は、反応槽10の水頭圧hと、送風管30における配管圧損Hと、通気圧損Hと、散気装置圧損Hとの和を、送風系列の圧力損失Hとして算出する。
【0051】
次に、被処理水供給制御部56は、圧力損失Hが最大の送風系列における圧力損失H(最大圧力損失)と、圧力損失Hが最小の送風系列における圧力損失H(最小圧力損失)との差が、所定の閾値以上であるか否かを判定する(ステップS12)。閾値は、例えば、水処理システム1の管理者が設定した数値(例えば、0.5kPa)であってよい。また、閾値は、例えば、水処理システム1の管理者が設定した、最大圧力損失に対する、最大圧力損失と最小圧力損失との差の比率(例えば、5%)であってよい。
【0052】
最大圧力損失と最小圧力損失との差が所定の閾値以上でないと判定した場合には(ステップS12:No)、被処理水供給制御部56は、処理を終了する。
【0053】
最大圧力損失と最小圧力損失との差が所定の閾値以上であると判定した場合には(ステップS12:Yes)、被処理水供給制御部56は、複数の反応槽10それぞれの送風系列の圧力損失Hに応じて、複数の反応槽10への被処理水の供給を制御する(ステップS13)。被処理水供給制御部56は、複数の反応槽10それぞれの送風系列の圧力損失Hに応じて、複数の反応槽10への被処理水の供給を制御する場合、その旨を水処理システム1の管理者に通知してもよい。
【0054】
このように、本実施形態に係る水処理方法は、複数の反応槽10それぞれの送風系列の圧力損失Hを算出する算出ステップと、複数の反応槽10それぞれの送風系列の圧力損失Hに応じて、複数の反応槽10への被処理水の供給を制御する制御ステップを含む。なお、複数の反応槽10それぞれの送風系列の圧力損失Hの算出は、水処理システム1の外部で行われてもよい。
【0055】
水処理システム1は、図3を参照して説明した処理を、例えば、所定の頻度(例えば、1日に1回)で行う。水処理システム1は、図3を参照して説明した処理をリアルタイムで行ってよい。図3を参照して説明した処理をリアルタイムで行う場合、被処理水供給制御部56は、反応槽10に供給された被処理水に生物処理が行われ、処理水として反応槽10から流出するまでの時間相当の速度で、反応槽10への被処理水の供給を制御する。
【0056】
次に、本実施形態に係る水処理システム1の動作について、より詳細に説明する。まず、比較のために、図1に示す反応槽10(反応槽10A,10B、10C)、送風ユニット20および送風管30を備える水処理システムに、背景技術において説明した第1の方法および第2の方法を適用した場合の動作について説明する。なお、以下では、反応槽10A,10B,10C内の被処理水の量は一定であり、水頭圧hは60kPaであるとする。また、以下では、通気圧損Hは一定値であるとし、記載を省略する。また、第1の方法および第2の方法では、各反応槽10には同量の被処理水が供給され、例えば、各反応槽10に2000m/hrの水量の被処理水が供給されるとする。
【0057】
まず、第1の方法を適用した場合について説明する。上述したように、第1の方法では、想定される最大の圧力損失Hを算出し、算出した圧力損失Hに応じた送風圧力で複数の反応槽10に空気を供給する。以下では、送風ユニット20から反応槽10Aに至る送風管30の経路における配管圧損Hが最大で5kPaであるとする。また、散気装置12による散気装置圧損Hが最大で3kPaであるとする。この場合、水頭圧h(60kPa)と、想定される最大の配管圧損H(5kPa)と、想定される最大の散気装置圧損H(3kPa)との和、すなわち、68kPaが送風ユニット20による送風圧力として設定される。第1の方法によれば、各反応槽10の送風系統に過剰な圧力で送風が行われることになる。そのため、送風ユニット20の送風電力に無駄が生じてしまい、水処理における電力利用の効率化が十分に図られない。
【0058】
次に、第2の方法を適用した場合について説明する。上述したように、第2の方法では、各反応槽10内の被処理水の水質に基づき、各送風系統の圧力損失を算出し、算出した最大の圧力損失に応じた送風圧力で複数の反応槽10に空気を供給する。以下では、送風ユニット20から反応槽10Aに至る送風管30の経路における配管圧損H が4kPaであり、送風ユニット20から反応槽10Bに至る送風管30の経路における配管圧損H が3kPaであり、送風ユニット20から反応槽10Cに至る送風管30の経路における配管圧損H が2kPaであるとする。また、散気装置圧損Hが2kPaであるとする。この場合、水頭圧h(60kPa)と、最大の配管圧損H (4kPa)と、散気装置圧損H(2kPa)との和、すなわち、66kPaが送風ユニット20による送風圧力として設定される。第2の方法によれば、実際の各反応槽10の送風系列の配管圧損H および実際の散気装置圧損Hに基づき送風ユニット20の送風圧力が設定されるので、第1の方法と比べて、送風ユニット20の送風圧力の低減、すなわち、送風ユニット20の送風電力の低減を図ることができる。ただし、第2の方法では、配管圧損H が最大である反応槽10以外の反応槽10B,10Cに過剰な圧力で送風が行われることになる。そのため、送風ユニット20の送風電力に無駄が生じてしまい、水処理における電力利用の効率化が十分に図られないことがある。
【0059】
これに対し、本実施形態においては、複数の反応槽10それぞれの送風系列の圧力損失Hに応じて、複数の各反応槽10への被処理水の供給を制御することで、送風ユニット20の送風電力の無駄を減らし、水処理における電力利用の効率化を図る。以下では、本実施形態における、複数の反応槽10それぞれの送風系列の圧力損失Hに応じた、複数の反応槽10への被処理水の供給の制御の詳細について説明する。
【0060】
被処理水供給制御部56は、複数の反応槽10それぞれの送風系列の圧力損失Hの差を減らすように、複数の反応槽10に供給する被処理水の汚濁負荷比率または汚濁負荷の量を制御する。汚濁負荷比率とは、全ての反応槽10内の被処理水の汚濁負荷に対する、各反応槽10内の被処理水の汚濁負荷の比率である。
【0061】
まず、複数の反応槽10に供給する被処理水の汚濁負荷比率を制御する場合について説明する。各反応槽10に供給する被処理水の濃度が一定であるとすると、被処理水供給制御部56は、複数の反応槽10に供給する被処理水の総量は一定として、各反応槽10に供給する被処理水の水量を制御する。上述したように、汚濁負荷は、反応槽10に供給される被処理水の水量と、反応槽10に供給される被処理水の濃度との積で表される。被処理水の濃度が一定であるとすると、各反応槽10に供給される被処理水の汚濁負荷比率は、供給される被処理水の水量に比例した値となる。
【0062】
各反応槽10に供給される被処理水の汚濁負荷比率が変化すると、各反応槽10における必要空気量が変化し、各反応槽10の送風系列の圧力損失Hも変化する。したがって、複数の反応槽10それぞれの送風系列の圧力損失の差を減らすように、複数の反応槽10に供給する被処理水の汚濁負荷比率を制御することで、各送風系列の圧力損失を均等化することができる。各送風系列の圧力損失が均等化されると、送風ユニット20の送風電力の無駄を減らし、水処理における電力利用の効率化を図ることができる。
【0063】
被処理水供給制御部56による、複数の反応槽10の送風系列の圧力損失Hに応じた、複数の反応槽10に供給する被処理水の汚濁負荷比率の制御例について説明する。以下では、反応槽10A,10B,10Cにはそれぞれ、2000m/hrの被処理水が供給されているとする。すなわち、反応槽10A,10B,10Cに供給される被処理水の総量が6000m/hrであるとする。また、反応槽10Aの送風系列の圧力損失HLAが4kPaであり、反応槽10Bの送風系列の圧力損失HLBが3kPaであり、反応槽10Cの送風系列の圧力損失HLCが2kPaであるとする。また、反応槽10A,10B,10Cそれぞれの散気装置圧損Hは、2kPaであるとする。
【0064】
被処理水供給制御部56は、反応槽10A,10B,10Cに供給する被処理水の総量は一定のままで、圧力損失Hが最も大きい反応槽10Aに供給する被処理水の水量を減らし、圧力損失Hが最も小さい反応槽10Cに供給する被処理水の水量を増やす。例えば、被処理水供給制御部56は、反応槽10Aに供給する被処理水の水量を1500m/hrとし、反応槽10Cに供給する被処理水の水量を2500m/hrとする。また、被処理水供給制御部56は、反応槽10Bに供給する被処理水の水量は2000m/hrのままとする。
【0065】
反応槽10Aに供給される被処理水の水量が減ることで、反応槽10Aの散気装置12による散気装置圧損HAAは、例えば、1.8kPaに低減する。また、反応槽10Aに供給される被処理水の水量が減ることで、反応槽10Aにおける必要空気量が減る。反応槽10Aにおける必要空気量および散気装置圧損HAAが減ることで、反応槽10Aの送風系列における配管圧損HPAも、被処理水の供給量の制御前と比べて低減する。例えば、上述したように、被処理水の供給量の制御前の配管圧損HPAは4kPaであったが、被処理水の供給量の制御後には、配管圧損HPAは3.2kPaに減少する。
【0066】
一方、反応槽10Cに供給される被処理水の水量が増えることで、反応槽10Cの散気装置12による散気装置圧損HACは、例えば、2.2kPaに増加する。また、反応槽10Cに供給される被処理水の水量が増えることで、反応槽10Cにおける必要空気量が増える。反応槽10Cにおける必要空気量および散気装置圧損HACが増えることで、反応槽10Cの送風系列における配管圧損HPCも、被処理水の供給量の制御前と比べて増加する。例えば、上述したように、被処理水の供給量の制御前の配管圧損HPCは2kPaであったが、被処理水の供給量の制御後には、配管圧損HPCは2.8kPaに増加する。
【0067】
被処理水の供給量を制御することで、反応槽10Aの送風系列に必要な圧力損失は、65kPa(=60kPa+3.2kPa+1.8kPa)となり、反応槽10Bの送風系列に必要な圧力損失は、65kPa(=60kPa+3kPa+2kPa)となり、反応槽10Cの送風系列に必要な圧力損失は、65kPa(=60kPa+2.8kPa+2.2kPa)となる。つまり、各反応槽10の送風系列の圧力損失が均等化される。その結果、各反応槽10に過不足無く、適切な圧力損失で送風される。また、第1の方法および第2の方法と比べて、同量の被処理水をより少ない送風圧力で処理することができる。そのため、送風ユニット20の送風電力の無駄を減らし、水処理における電力利用の効率化を図ることができる。
【0068】
次に、複数の反応槽10に供給する被処理水の汚濁負荷の量を制御する場合について説明する。以下では、反応槽10A,10B,10Cにはそれぞれ、2000m/hrの被処理水が供給されているとする。また、反応槽10Aの送風系列の圧力損失HLAが4kPaであり、反応槽10Bの送風系列の圧力損失HLBが3kPaであり、反応槽10Cの送風系列の圧力損失HLCが2kPaであるとする。
【0069】
被処理水供給制御部56は、送風系列の圧力損失Hが小さい反応槽10ほど、その反応槽10に供給する被処理水の汚濁負荷の量を増加させる。被処理水の濃度が一定であるとすると、被処理水供給制御部56は、反応槽10Aへの被処理水の供給量はそのままで、反応槽10Bおよび反応槽10Cへの被処理水の供給量を増加させる。また、被処理水供給制御部56は、反応槽10Cに供給する被処理水の増加量を、反応槽10Bに供給する被処理水の増加量よりも多くする。具体的には、被処理水供給制御部56は、例えば、反応槽10Aへの被処理水の供給量は2000m/hrのままで、反応槽10Bへの被処理水の供給量を2500m/hrとし、反応槽10Cへの被処理水の供給量を3000m/hrとする。
【0070】
こうすることで、反応槽10B,10Cでは、被処理水の供給量が増加することで、散気装置圧損Hおよび配管圧損Hが増加し、圧力損失Hが増加する。また、反応槽10Bよりも反応槽10Cの方が供給される被処理水の増加量が多いので、反応槽10Cの送風系列の圧力損失HLCの増加量は、反応槽10Bの送風系列の圧力損失HLBの増加量よりも多い。そのため、反応槽10B,10Cの送風系列の圧力損失HLB,HLCが反応槽10Aの送風系列の圧力損失HLAに近づき、各反応槽10の送風系列の圧力損失が均等化されるので、各反応槽10に過不足無く、適切な圧力損失で送風される。そのため、送風ユニット20の送風電力の無駄を減らし、水処理における電力利用の効率化を図ることができる。
【0071】
上述した例では、被処理水供給制御部56は、送風系列の圧力損失Hが小さい反応槽10ほど、その反応槽10に供給する被処理水の汚濁負荷の量を増加させる例を用いて説明したが、これに限られない。被処理水供給制御部56は、送風系列の圧力損失Hが大きい反応槽10ほど、その反応槽10に供給する被処理水の汚濁負荷の量を減少させてもよい。こうすることによっても、各反応槽10の送風系列の圧力損失が均等化されるので、送風ユニット20の送風電力の無駄を減らし、水処理における電力利用の効率化を図ることができる。
【0072】
また、上述した例では、各反応槽10に供給される被処理水の濃度は一定である例を用いて説明したが、これに限られるものではない。上述したように、汚濁負荷は、反応槽10に供給される被処理水の水量と、反応槽10に供給される被処理水の濃度との積で表される。したがって、被処理水供給制御部56は、反応槽10に供給する被処理水の濃度を制御することで、各反応槽10に供給する被処理水の汚濁負荷の量あるいは汚濁負荷比率を制御してもよい。
【0073】
被処理水供給制御部56は、複数の反応槽10への被処理水の供給を制御する場合、例えば、任意の汚濁負荷比率または汚濁負荷の量で、複数の反応槽10への被処理水を制御する。この制御により、複数の反応槽10の送風系列の圧力損失Hの差が所定の範囲内になると、被処理水供給制御部56は、その汚濁負荷比率または汚濁負荷の量を採用する。複数の反応槽10の送風系列の圧力損失Hの差が所定の範囲から外れている場合、被処理水給制御部56は、所定の範囲からの外れ度合いに基づき、汚濁負荷比率または汚濁負荷の量を変更して、複数の反応槽10の送風系列の圧力損失Hの比較を再度行う。被処理水供給制御部56は、この処理を繰り返すことで、複数の反応槽10の送風系列の圧力損失Hの差が所定の範囲に収まる汚濁負荷比率または汚濁負荷の量を決定する。
【0074】
このように本実施形態においては、水処理システム1は、複数の反応槽10と、複数の反応槽10に接続される管である送風管30と、送風管30を介して、複数の反応槽10に空気を供給する送風ユニット20と、複数の反応槽それぞれの送風系列の圧力損失Hを算出する圧力損失算出部としての目標管内圧算出部53と、算出された複数の反応槽10それぞれの送風系列の圧力損失Hに応じて、複数の反応槽10への被処理水の供給を制御する被処理水供給制御部56と、を備える。
【0075】
複数の反応槽10それぞれの送風系列の圧力損失Hに応じて、各反応槽10への被処理水の供給を制御することで、各反応槽10における必要空気量が変化し、各反応槽10の送風系列の圧力損失が均等化される。そのため、各反応槽10の送風系列に過剰な圧力で空気が供給されることが無くなるので、送風ユニット20の送風電力の無駄を減らし、水処理における電力利用の効率化を図ることができる。
【0076】
本発明を諸図面および実施形態に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形及び修正を行うことが容易であることに注意されたい。したがって、これらの変形および修正は本発明の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各手段、各ステップなどに含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の手段およびステップなどを1つに組み合わせたり、あるいは分割したりすることが可能である。前述したところは本発明の一実施形態にすぎず、請求の範囲において、種々の変更を加えてよいことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0077】
1 水処理システム
10,10A,10B,10C 反応槽
12 散気装置
13 送水ポンプ
20 送風ユニット
22,22A,22B,22C,22D 送風機
30 送風管
31 導入管
32 母管
34,34A,34B,34C 支管
36 導入弁
40 制御装置
41 硝酸計
42 アンモニア計
43 吸気測定部
44 母管内圧測定部
45 支管風量測定部
50 制御部
51 取得部
52 必要空気量算出部
53 目標管内圧算出部(圧力損失算出部)
54 送風制御部
55 導入空気制御部
56 被処理水供給制御部
図1
図2
図3