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特許7572369リチウム一次電池パックおよびガスメータ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】リチウム一次電池パックおよびガスメータ
(51)【国際特許分類】
   H01M 6/16 20060101AFI20241016BHJP
   H01M 6/50 20060101ALI20241016BHJP
   H01M 4/06 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
H01M6/16 D
H01M6/50
H01M4/06 L
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021554968
(86)(22)【出願日】2020-11-05
(86)【国際出願番号】 JP2020041332
(87)【国際公開番号】W WO2021090874
(87)【国際公開日】2021-05-14
【審査請求日】2023-09-05
(31)【優先権主張番号】P 2019200736
(32)【優先日】2019-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005810
【氏名又は名称】マクセル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104444
【弁理士】
【氏名又は名称】上羽 秀敏
(74)【代理人】
【識別番号】100132506
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 哲文
(72)【発明者】
【氏名】川邊 啓祐
(72)【発明者】
【氏名】亘理 聡一
(72)【発明者】
【氏名】工藤 隆生
【審査官】冨士 美香
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-215716(JP,A)
【文献】特開2013-051797(JP,A)
【文献】特開2015-159628(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 6/16
H01M 6/50
H01M 4/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極、負極、及び、前記正極と前記負極との間に配置されたセパレータを含むリチウム一次電池本体と、
前記リチウム一次電池本体の電圧を3.4~3.8Vに昇圧して出力する電圧変換器と、
前記リチウム一次電池本体の電圧の低下を検出する検出器と、
前記電圧変換器に接続された正極端子及び負極端子と、
前記検出器に接続された信号端子と、
を備える、リチウム一次電池パック。
【請求項2】
前記リチウム一次電池本体と前記電圧変換器の間の導通及び非導通を切り替えるスイッチをさらに備える、請求項1に記載のリチウム一次電池パック。
【請求項3】
前記正極は、正極活物質として二酸化マンガンまたは予めリチウムがドープされたマンガン酸化物を含む、請求項1又は2に記載のリチウム一次電池パック。
【請求項4】
前記リチウム一次電池本体、前記電圧変換器、及び、前記検出器を一体的に収納するパッケージをさらに備え、
前記正極端子、前記負極端子、及び、前記信号端子が、前記パッケージの外側に引き出された、請求項1~3のいずれか1項に記載のリチウム一次電池パック。
【請求項5】
前記リチウム一次電池本体の電圧が、3.4V未満である請求項1~4のいずれか1項に記載のリチウム一次電池パック。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載のリチウム一次電池パックを備えたガスメータ。
【請求項7】
請求項6に記載のガスメータであって、前記リチウム一次電池本体の電圧低下の情報を外部に発信する出力部を有するガスメータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム一次電池パックと、それを電源とするガスメータに関する。
【背景技術】
【0002】
ガスメータは、家庭や店舗等の施設で使用される燃料ガス(例えば、都市ガス、LPガス等)の流量を測定するものである。ガスメータは、家庭や店舗等の施設ごとに設置される。ガスメータで測定されたガスの流量に基づき料金が算出される。近年、マイコンを備えた多機能なガスメータが増えてきている。例えば、圧力の異常、ガスの漏洩、地震の発生、又は、ガスメータに内蔵された電池の電圧低下等の異常の発生を検知し、異常発生の表示を行ったり、通信手段により外部の管理会社に異常発生の情報を通知したりすることができるガスメータが開発されている。
【0003】
例えば、特開2004―144642号公報(特許文献1)には、使用環境温度が適正な温度範囲を逸脱した場合にはそれを自動的に判定し、その判定に基づいて、警報の出力、又は、さらにガスの遮断、及び、流量計測の停止を自動的に行うガスメータが開示されている。このような、マイコンを備えたガスメータには、電源として、リチウム一次電池のような長寿命型の電池が用いられる。特に欧州においては、マイコンなどの電子機器の作動電圧の関係から、3.3V以上の電圧で放電可能な塩化チオニルリチウム一次電池(公称電圧:3.6V)が電源として採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004―144642号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発明者らは、例えば、ガスメータ等の電源として使用できる長寿命の一次電池として、塩化チオニルリチウム一次電池の代替が可能となる3.6Vの出力電圧を有するリチウム一次電池パックを検討した。リチウム一次電池自体で、3.3V以上の電圧を得るには、正極活物質(正極活性剤)の材料を、実質的に、塩化チオニル(SOCl)に限定せざるを得ない。正極活物質の材料を限定すると、材料に起因する電池の特性も限定される場合がある。
【0006】
正極活物質に塩化チオニルを用いた塩化チオニルリチウム一次電池は、例えば、ER18/50のサイズ(直径:18mm、高さ:52.6mm)の場合、1mA程度までの低電流での放電には適するものの、パルス放電や数mA以上の電流値での放電に対応するのが難しい場合がある。また、塩化チオニルリチウム一次電池は、放電中の内部抵抗の変化が少なく、放電末期まで電圧が低下せず、放電終了直前に急激に電圧が低下する放電特性を有する。そのため、電池の電圧低下を検出してから放電終了までの期間が短くなる。その結果、電圧の低下を検出して管理会社に送信しても、電池が作動している間に電池交換をすることが難しい状況が発生し得る。
【0007】
そこで、本願は、3.6Vレベルの出力電圧を有するリチウム一次電池パックであって、正極活物質の材料の自由度が高く、且つ、放電終了の事前の検知が容易である、リチウム一次電池パックを開示する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施形態に係るリチウム一次電池パックは、正極、負極、及び、前記正極と前記負極との間に配置されたセパレータを含むリチウム一次電池本体と、前記リチウム一次電池本体の電圧を3.4~3.8Vに昇圧して出力する電圧変換器と、前記リチウム一次電池本体の電圧の低下を検出する検出器と、前記電圧変換器に接続された正極端子及び負極端子と、前記検出器に接続された信号端子と、を備える。また、本発明の実施形態に係るガスメータは、前記リチウム一次電池パックを備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、3.6Vレベルの出力電圧を有するリチウム一次電池パックであって、正極活物質の材料の自由度が高く、且つ、放電終了の事前の検知が容易である、リチウム一次電池パックが提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本実施形態におけるリチウム一次電池パックの構成例を示す機能ブロック図である。
図2図2は、リチウム一次電池パックの電圧変換器の構成例を示す図である。
図3図3は、リチウム一次電池パックの検出器の構成例を示す図である。
図4図4は、図1に示すリチウム一次電池パック100の外観の構成例を示す図である。
図5図5は、図4に示すリチウム一次電池パック100のパッケージ24の内部の構成を示す図である。
図6図6は、リチウム一次電池本体1の構成例を示す断面図である。
図7図7は、図6のリチウム一次電池本体1の横断面図を示している。
図8図8は、セパレータの変形例を示す図である。
図9図9は、塩化チオニルを正極活物質としたリチウム一次電池の放電特性の例を示す図である。
図10図10は、二酸化マンガンを正極活物質としたリチウム一次電池の放電特性の例を示す図である。
図11図11は、ガスメータの構成例を示す機能ブロックである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(構成1)
本発明の実施形態に係るリチウム一次電池パックは、正極、負極、及び、前記正極と前記負極との間に配置されたセパレータを含むリチウム一次電池本体と、前記リチウム一次電池本体の電圧を3.4~3.8Vに昇圧して出力する電圧変換器と、前記リチウム一次電池本体の電圧の低下を検出する検出器と、前記電圧変換器に接続された正極端子及び負極端子と、前記検出器に接続された信号端子と、を備える。
【0012】
上記構成によれば、リチウム一次電池本体の電圧が、電圧変換器により3.4~3.8Vに昇圧され、正極端子及び負極端子に出力される。これにより、リチウム一次電池本体の電圧を3.6V程度の高電圧に限定する必要がなくなる。すなわち、リチウム一次電池本体として、例えば、電圧が3V程度のリチウム一次電池を用いることができる。そのため、リチウム一次電池本体の正極の材料の自由度が高くなる。正極端子及び負極端子には、電圧変換器で昇圧された電圧が出力されるため、正極端子及び負極端子の間の電圧に基づいてリチウム一次電池本体の電圧の低下を検出することが難しい場合がある。上記構成では、リチウム一次電池本体の電圧の低下を検出する検出器と、検出器に接続される信号端子が電池パックに設けられる。そのため、正極端子及び負極端子の間の電圧によらなくても、信号端子から、リチウム一次電池本体の電圧の低下を検出できる。結果として、リチウム一次電池パックの放電終了の事前の検知が容易になる。すなわち、上記構成によれば、3.6Vレベルの出力電圧を有するリチウム一次電池パックであって、正極活物質の材料の自由度が高く、且つ、放電終了の事前の検知が容易であるリチウム一次電池パックが提供できる。
【0013】
電圧変換器の出力電圧は、リチウム一次電池パックの正極端子及び負極端子の間の電圧となる。すなわち、リチウム一次電池パックの出力電圧は、電圧変換器の出力電圧である。リチウム一次電池パックの公称電圧を電圧変換器の出力電圧とみなすことができる。リチウム一次電池パックの公称電圧が3.4~3.8Vである場合、電圧変換器の出力電圧が、3.4~3.8Vであるとみなすことができる。リチウム一次電池パックの公称電圧が定義されていない場合、新品の一次電池パックの正極端子と負極端子間を電圧計で測定して得られる電圧を、電圧変換器の出力電圧とみなすことができる。
【0014】
(構成2)
上記構成1において、前記リチウム一次電池パックは、前記リチウム一次電池本体と前記電圧変換器の間の導通及び非導通を切り替えるスイッチをさらに備えてもよい。スイッチの切り替えにより、リチウム一次電池本体から電圧変換器への電力供給のオン/オフを切り替えることができる。
【0015】
(構成3)
上記構成1又は2において、前記正極は、正極活物質として二酸化マンガンまたは予めリチウムがドープされたマンガン酸化物を含んでもよい。正極活物質として二酸化マンガンまたは予めリチウムがドープされたマンガン酸化物を用いることで、リチウム一次電池本体の放電末期の電圧の低下を緩やかにすることができる。また、リチウム一次電池本体の放電容量を大きくすることもできる。これにより、一次電池本体の電圧の低下の検出から放電終了までの時間が長くなる。そのため、放電終了の事前の検知がさらに容易になる。
【0016】
(構成4)
上記構成1~3のいずれかにおいて、前記リチウム一次電池パックは、前記リチウム一次電池本体、前記電圧変換器、及び、前記検出器を一体的に収納するパッケージをさらに備え、前記正極端子、前記負極端子、及び、前記信号端子が、前記パッケージの外側に引き出されていてもよい。リチウム一次電池本体、電圧変換器、及び、検出器を一体的に収納するパッケージを備えることにより、水滴の付着などからリチウム一次電池本体、電圧変換器、及び、検出器を保護することができ、リチウム一次電池パックの作動の信頼性を高めることができる。
【0017】
(構成5)
上記構成1~4のいずれかのリチウム一次電池パックにおいて、前記リチウム一次電池本体の電圧が、3.4V未満であってもよい。リチウム一次電池本体の公称電圧が定義されている場合は、その公称電圧をリチウム一次電池本体の電圧とする。リチウム一次電池本体の公称電圧が定義されていない場合は、新品のリチウム一次電池本体の電圧を、リチウム一次電池本体の電圧とする。
【0018】
上記構成1~5のいずれかのリチウム一次電池パックを備えたガスメータも、本発明の実施形態に含まれる。前記ガスメータは、前記リチウム一次電池パックを電源とするガスメータである。このガスメータが備える前記リチウム一次電池パックの前記リチウム一次電池本体の正極は、正極活物質として二酸化マンガンまたは予めリチウムがドープされたマンガン酸化物を含んでもよい。また、ガスメータは、ガスの流量を検出するセンサと、ガスメータを制御するコントローラを備えてもよい。この場合、リチウム一次電池パックは、センサ及びコントローラに電力を供給する。
【0019】
上記ガスメータは、上記構成1~5のいずれかのリチウム一次電池本体の電圧低下の情報を外部に発信する出力部を有してもよい。例えば、上記ガスメータは、出力部として、音、光、画像又は表示機械により外部へ情報を出力する出力装置、又は、外部とのデータ通信を行う通信モジュールを備えてもよい。この場合、前記通信モジュールは、前記一次電池パックの信号端子から出力される信号に基づく情報を、外部へ発信する。一次電池パックは、出力部へ電力を供給する。
【0020】
[実施形態]
以下、実施形態について図面を参照しつつ説明する。図中同一及び相当する構成については同一の符号を付し、同じ説明を繰り返さない。なお、説明を分かりやすくするために、以下で参照する図面においては、構成が簡略化または模式化して示されたり、一部の構成部材が省略されたりしている。
【0021】
(電池の構成例)
図1は、本実施形態におけるリチウム一次電池パックの構成例を示す機能ブロック図である。リチウム一次電池は、負極活物質としてリチウムを用いた一次電池である。図1に示すリチウム一次電池パック100は、リチウム一次電池よりなるリチウム一次電池本体1(以下、単に一次電池本体1と称する場合もある)、スイッチ21、電圧変換器22、検出器23、パッケージ24、正極端子T1、負極端子T2、及び、信号端子T3を備える。一次電池本体1、スイッチ21、電圧変換器22、及び検出器23は、1つのパッケージ24内に収納される。正極端子T1及び負極端子T2は、電圧変換器22に接続され、信号端子T3は、検出器23に接続される。また、それぞれの端子は、パッケージ24の外側に引き出される。これにより、電圧変換器22及び検出器23を内蔵し、且つ、正極端子T1、負極端子T2及び信号端子T3を外側に有するリチウム一次電池パック100が、一体的に形成される。
【0022】
一次電池本体1は、正極、負極、及び、正極と負極との間に配置されたセパレータを含む。一次電池本体1の具体例は、後述する。一次電池本体1の正極側外部端子P1及び負極側外部端子P2は、それぞれ、一次電池本体1の前記正極及び前記負極と導通しており、スイッチ21を介して、電圧変換器22及び検出器23に接続される。スイッチ21は、一次電池本体1の正極側外部端子P1及び負極側外部端子P2と、電圧変換器22及び検出器23との間の導通と非導通を切り替える。スイッチがオンになると、電圧変換器22に一次電池本体1から電力が供給され、電圧変換器22が動作を開始する。また、スイッチがオンになると、検出器23に一次電池本体1の電圧が供給され、検出器23は、この電圧に応じた信号を出力する。
【0023】
スイッチ21は、例えば、正極側外部端子P1と電圧変換器22及び検出器23の間に接続されたトランジスタ(例えば、MOSTFT)を含んでもよい。パッケージ24の外部からの電気信号の入力又は機械的操作によってスイッチ21がオン/オフ可能となるようスイッチ21を構成することができる。
【0024】
例えば、リチウム一次電池パック100を使用しない時に、スイッチ21をオフにして、一次電池本体1と電圧変換器22及び検出器23との間を切断することができる。これにより、一次電池本体1の電力を節約することができる。なお、スイッチ21は省略してもよい。この場合、正極側外部端子P1及び負極側外部端子P2と、電圧変換器22とが直接接続され、正極側外部端子P1及び負極側外部端子P2と、検出器23とが直接接続される。
【0025】
電圧変換器22は、入力電圧を昇圧する。電圧変換器22は、例えば、スイッチングレギュレータ又はリニアレギュレータ等のDC/DCコンバータで構成される。図1に示す例では、電圧変換器22の入力端子は、一次電池本体1の正極側外部端子P1及び負極側外部端子P2に接続され、電圧変換器22の出力端子は、正極端子T1及び負極端子T2に接続される。電圧変換器22は、一次電池本体1の電圧(正極側外部端子P1及び負極側外部端子P2の間の電圧)を3.6Vに変換し、正極端子T1及び負極端子T2に出力する。本例では、負極側外部端子P2及び負極端子T2は、接地、すなわちグランド(GND)に接続される。
【0026】
本実施形態では、電圧変換器22の出力電圧は、3.6Vである。これにより、3.6Vレベルのリチウム一次電池パックが実現できる。例えば、一次電池本体1の電圧が3V程度の場合に、電圧変換器22は、一次電池本体1の電圧を、3.6Vに昇圧する昇圧回路とすることができる。必要に応じて、3.4V~3.8Vの範囲内で電圧変換器22の出力電圧を設定してもよい。塩化チオニルリチウム一次電池の代替のためには、出力電圧をできるだけ3.6Vに近づけることが望ましく、3.45~3.75Vの範囲で設定することが望ましく、3.5~3.7Vの範囲で設定することがより望ましく、3.52~3.68Vの範囲で設定することが特により望ましい。
【0027】
図2は、電圧変換器22の構成例を示す図である。なお、電圧変換器22の構成は、図2に示す構成例に限られない。図2に示す例では、電圧変換器22は、インダクタ221、ダイオード222、スイッチング素子(MOSトランジスタ)223、及び、制御回路224を含む。電圧変換器22の入力端子Vinは、一次電池本体1の正極側外部端子P1に接続され、出力端子Voutは、正極端子T1に接続される(図1参照)。入力端子Vinと出力端子Voutの間に、入力側から順に、インダクタ221及びダイオード222が接続される。ダイオード222は、入力から出力へ向かう方向が順方向となるよう接続される。MOSトランジスタ223のドレインは、ダイオード222のアノードとインダクタ221の間に、MOSトランジスタ223のソースは、グランドに接続される。制御回路224は、MOSトランジスタ223のゲートと、ダイオード222のカソードに接続される。なお、図示しないが、出力端子Voutとグランドの間にコンデンサが接続されてもよい。また、ダイオード222のカソードと制御回路224の間にコンデンサが接続されてもよい。
【0028】
制御回路224は、MOSトランジスタ223のオン/オフを繰り返すことで、電圧変換器22を動作させる。制御回路224は、Voutの電圧が予め決められた電圧になるように、MOSトランジスタ223のオン/オフを制御することができる。例えば、制御回路224は、Voutの電圧を用いて、MOSトランジスタ223のオン/オフの比率をフィードバック制御することで、Voutの電圧が所定値になるよう制御することができる。また、制御回路224は、Voutの電圧が、予め決められたリチウム一次電池パック100の電圧の上限を越えないよう制御してもよい。
【0029】
電圧変換器22の構成は、図2に例示されるコイル及びスイッチング素子を備えるDC/DCコンバータに限られない。例えば、電圧変換器22は、トランスを用いた絶縁方式のコンバータ(例えば、フライバック方式DC/DCコンバータ)、又は、コンデンサを用いたチャージポンプであってもよい。
【0030】
検出器23は、一次電池本体1の正極側外部端子P1と負極側外部端子P2の間の電圧の低下を検出する。検出器23の入力端子は、一次電池本体1の正極側外部端子P1に接続され、検出器23の出力端子は、信号端子T3に接続される。図1に示す例では、検出器23に接続される負極側外部端子P2は、接地、すなわちグランド(GND)に接続されている。検出器23は、一次電池本体1の電圧、すなわち、正極側外部端子P1と負極側外部端子P2の間の電圧を監視し、この電圧に応じた信号を、信号端子T3に出力する。例えば、検出器23は、正極側外部端子P1と負極側外部端子P2の間の電圧が予め設定された検出電圧を下回ると、その事を示す信号を、信号端子T3に出力してもよい。例えば、検出器23は、正極側外部端子P1と負極側外部端子P2の間の電圧が、検出電圧になった場合に、出力信号のレベルを変化させる(例えば、ハイレベルからローレベルに変化させる)構成であってもよい。或いは、検出器23は、正極側外部端子P1と負極側外部端子P2の間の電圧を示す信号を出力してもよい。
【0031】
検出電圧は、例えば、2.0V以上で、一次電池本体1の電圧よりも低い電圧に設定することができる。検出電圧を高くするほど、一次電池本体1の電圧の低下の検出から放電終了までの時間を長くすることができる。この観点から、検出電圧は、2.3V以上とすることが好ましく、2.5V以上とすることがより好ましい。
【0032】
図3は、検出器23の構成例を示す図である。なお、検出器23の構成は、図3に示す構成例に限られない。図3に示す例では、検出器23は、電圧検出抵抗231、232、比較器234、基準電圧電源233、スイッチング素子(MOSトランジスタ)235、及び、プルアップ抵抗236を含む。電圧検出抵抗231、232は、入力端子Vinとグランドの間に直列に接続される。電圧検出抵抗231、232の間のノードが比較器234の一方の入力端子に、基準電圧電源233の出力端子が、比較器234の他方の入力端子にそれぞれ接続される。比較器234の出力端子は、MOSトランジスタ235のゲートに接続される。MOSトランジスタ235のドレインは、出力端子Voutに接続され、ソースはグランドに接続される。出力端子Voutと、3.6V線(電圧変換器22の出力線)との間にプルアップ抵抗236が接続される。
【0033】
検出器23では、入力端子Vinの電圧を、電圧検出抵抗231、232で分圧された電圧が、基準電圧電源の電圧と比較される。検出電圧は、電圧検出抵抗231、232の抵抗分圧比により設定される。すなわち、入力端子Vinの電圧が、検出電圧になった時に、電圧検出抵抗231、232で分圧された電圧が、基準電圧電源の電圧と等しくなるよう電圧検出抵抗231、232の抵抗分圧比が決められる。例えば、入力端子Vinが検出電圧より大きい時は、比較器234の出力によりMOSトランジスタ235がオフとなり、出力端子Voutに、プルアップされたハイレベル信号が出力され、入力端子Vinが検出電圧以下の時は、MOSトランジスタ235がオンとなり、出力端子Voutにローレベル信号が出力される。
【0034】
図4は、図1に示すリチウム一次電池パック100の外観の構成例を示す図である。図4に示す例では、パッケージ24から、正極端子T1の配線、負極端子T2の配線、及び、信号端子T3の配線が引き出されている。図4に示す例では、パッケージ24は、円筒形である。パッケージ24の長手方向の端面から正極端子T1、負極端子T2、及び信号端子T3が引き出される。
【0035】
パッケージ24の形状は、この例に限られない。例えば、パッケージ24の形状を、ボタン型、角型その他一次電池の規格に適合した形状としてもよい。パッケージ24は、収容物(一次電池本体1、スイッチ21、電圧変換器22及び検出器23)を必ずしも密封しなくてもよい。或いは、パッケージ24により収容物を密封することで、リチウム一次電池パック100の防水性及び防塵性を高めることができる。
【0036】
パッケージ24の外側に引き出される配線は、外周が絶縁体に覆われたリード線であってもよいし、露出した金属線や金属リボンであってもよい。図4に示す例では、パッケージ24の長手方向の一方の端面から、正極端子T1、負極端子T2、及び信号端子T3の3本の配線が引き出されている。配線の引き出し位置はこれに限られない。例えば、長手方向の両端のうち一方から、3本の配線の一部が引き出され、他方から、残りの配線が引き出されてもよい。或いは、3本の配線の少なくとも1つは、円筒形のパッケージ24の外周面から引き出されてもよい。また、正極端子T1、負極端子T2、及び信号端子T3の少なくとも1つは、配線を介さずに、パッケージ24の外側に露出するものであってもよい。
【0037】
図5は、図4に示すリチウム一次電池パック100のパッケージ24の内部の構成を示す図である。図5に示す例では、パッケージ24内に、円筒形の一次電池本体1と、基板25が収納される。基板25には、図1に示すスイッチ21、電圧変換器22、及び検出器23が実装される。基板25には、一次電池本体1の正極側外部端子P1、負極側外部端子P2、正極端子T1、負極端子T2、及び信号端子T3がそれぞれ接続されるパッドが設けられる。
【0038】
図5に示す例では、パッケージ24の長手方向に、一次電池本体1と基板25が並んで配置される。基板25の実装面が上記長手方向に垂直になるよう基板25が配置される。一次電池本体1と基板25の配置は、この例に限られない。例えば、基板25の実装面が長手方向と平行になるように、パッケージ24内で基板25が配置されてもよい。
【0039】
なお、リチウム一次電池パック100は、パッケージ24を省いた構成とすることもできる。この場合には、例えば、一次電池本体1を基板25に実装するなどして一次電池本体1と基板25を一体化してもよい。パッケージ24を省いた構成の場合、リチウム一次電池パック100の体積を減少させより小型化することができる。
【0040】
また、一次電池本体1は、複数の電池で構成することも可能である。例えば、一次電池を複数並列接続した組電池により一次電池本体1を構成してもよい。
【0041】
(一次電池本体の構成例)
以下、一次電池本体1の構成の詳細を記載する。一次電池本体1の形状は特に限定はされず、筒形、角形、シート状など種々の形状の電池が用いられる。例えば、ガスメータの電池として用いる場合は、一次電池本体1は、筒形の電池とするのが一般的である。一次電池本体1は、負極にリチウムを含むリチウム一次電池である。
【0042】
一次電池本体1は、正極活物質層を有する正極と、負極活物質層を有する負極とを、セパレータを介して渦巻状に巻回した電極体(巻回電極体)を含む。そして、正極には、例えば、正極活物質層が集電体の片面または両面に形成された構造のものが使用できる。電池の高容量化を図る観点から、正極の厚み(例えば、片面または両面に形成された正極活物質層と集電体との合計厚み)を厚くすることが好ましい。正極の厚みは、例えば、1mm以上とすることが好ましく、1.4mm以上とすることがより好ましい。ただし、正極が厚くなりすぎると、例えば、正極活物質層内で放電反応が均一に進行しなくなり、放電に十分に関与し難くなる部分が生じる虞があり、正極を厚くすることによる高容量化の効果が小さくなることがある。よって、正極の厚みは、2mm以下であることが好ましく、1.8mm以下であることがより好ましい。
【0043】
セパレータには、樹脂製の微多孔フィルムや不織布を用いることができ、これらを重ねて用いてもよい。一次電池本体1に用いられる非水電解液は、有機溶媒に電解質塩を溶解した溶液であり、前記電解質塩として、LiClO、LiCFSO、LiCSO、LiN(FSO、LiN(CFSO、LiPFおよびLiBFなどのリチウム塩が用いられる。
【0044】
前記非水電解液に使用し得る有機溶媒としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネートなどの環状カーボネート;ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネートなどの鎖状カーボネート;1,2-ジメトキシエタン(エチレングリコールジメチルエーテル)、ジグライム(ジエチレングリコールジメチルエーテル)、トリグライム(トリエチレングリコールジメチルエーテル)、テトラグライム(テトラエチレングリコールジメチルエーテル)、メトキシエトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン、テトラヒドロフランなどのエーテル;γ-ブチロラクトンなどの環状エステル;ニトリル;などが挙げられ、これらのうちの1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。特に、前記の環状カーボネートとエーテルとを併用することが好ましい。
【0045】
前記環状カーボネートとしては、エチレンカーボネート、およびプロピレンカーボネートが好ましく用いられる。また、エーテルとしては、1,2-ジメトキシエタンが好ましく用いられる。
【0046】
前記非水電解液溶媒として、環状カーボネートとエーテルとを併用する場合には、耐熱性の点から、全溶媒中での環状カーボネートとエーテルとの合計100体積%中、環状カーボネートの割合を20体積%以上とすることが好ましく、30体積%以上とすることがより好ましい。一方、放電特性の点から、全溶媒中での環状カーボネートとエーテルとの合計100体積%中、エーテルの割合を30体積%以上とすることが好ましく、40体積%以上とすることがより好ましく、50体積%以上とすることが最も好ましい。
【0047】
前記非水電解液中のリチウム塩の濃度は、良好なリチウムイオン伝導性を確保する観点から、0.3mol/L以上であることが好ましく、0.4mol/L以上であることがより好ましく、1.2mol/L以下であることが好ましく、1.0mol/L以下であることがより好ましい。複数のリチウム塩を含有させる場合は、その合計量が前記範囲となるよう調整することが好ましい。
【0048】
電池の貯蔵特性を向上させるため、ビニレンカーボネート、プロパンスルトン、LiB(Cなどの電解液添加剤を含有させることもできる。非水電解液中における電解液添加剤の含有量は、貯蔵特性の改善効果を良好に確保する観点から、例えば、0.1質量%以上であることが好ましく、0.3質量%以上であることがより好ましく、0.5質量%以上であることが最も好ましい。一方、電池の内部抵抗が増大し、放電特性が低下してしまうのを防ぐ観点から、非水電解液中における電解液添加剤の含有量は、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましく、2質量%以下であることが最も好ましい。
【0049】
正極は、前記の通り、正極活物質層を有するものである。例えば、正極は、正極活物質層が集電体の片面または両面に形成された構造とすることができる。正極活物質層には、正極活物質以外に、例えば、導電助剤やバインダを含有させてもよい。
【0050】
正極活物質としては、例えば、二酸化マンガン、フッ化カーボン、硫化鉄や、前記材料にあらかじめリチウムを含有させた化合物、スピネル型リチウムマンガン複合酸化物などが挙げられるが、放電容量や作動電圧の観点から、二酸化マンガンが好ましく用いられる。放電特性などを改善するために、二酸化マンガンにあらかじめLiを含有(ドープ)させて形成したリチウムマンガン酸化物(LiMnO)を正極活物質として用いることもできる。リチウムマンガン酸化物中のリチウムの含有量としては、マンガンに対するモル比:xが、1/15以下であることが好ましい。
【0051】
導電助剤としては、例えば、黒鉛、カーボンブラック(ケッチェンブラック、アセチレンブラック、ファーネスブラックなど)などが挙げられる。これらのうちの1種のみを導電助剤として用いてもよく、2種以上を併用してもよい。バインダとしては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などのフッ素樹脂;ゴム系バインダ;などが使用できる。なお、PTFE、PVDFなどのフッ素樹脂の場合、ディスパージョンタイプのものでもよいし、粉末状のものでもよいが、ディスパージョンタイプのものが特に好適である。
【0052】
正極活物質層においては、例えば、正極活物質の含有量が92~97質量%であることが好ましく、導電助剤の含有量が2~4質量%であることが好ましく、バインダの含有量が1~4質量%であることが好ましい。
【0053】
正極に用いる集電体としては、例えば、SUS316、SUS430、SUS444などのステンレス鋼、又は、アルミニウムを素材とするものが挙げられる。集電体の形態としては、平織り金網、エキスパンドメタル、ラス網、パンチングメタル、箔(板)などが例示できる。
【0054】
正極集電体の表面には、ペースト状の導電材を塗布しておくことができる。正極集電体として立体構造を有する網状のものを用いた場合も、金属箔やパンチングメタルなどの本質的に平板からなる材料を用いた場合と同様に、導電材の塗布により集電効果の著しい改善が認められる。これは、網状の集電体の金属部分が正極合剤層と直接的に接触する経路のみならず、網目内に充填された導電材を介しての経路が有効に利用されていることによるものと推測される。
【0055】
導電材としては、例えば、銀ペーストやカーボンペーストなどを用いることができる。特にカーボンペーストは、銀ペーストに比べて材料費が安く済み、しかも銀ペーストと略同等の接触効果が得られるため、筒形非水電解液一次電池の製造コストの低減化を図る上で好適である。導電材のバインダとしては、水ガラスやイミド系のバインダなどの耐熱性の材料を用いることが好ましい。これは正極合剤層中の水分を除去する際に200℃を超える高温で乾燥処理するためである。正極集電体の厚みは、0.1~0.4mmであることが好ましい。
【0056】
正極活物質層の密度は、電池の高容量化のため、2.5g/cm以上とすることが好ましく、2.6g/cm以上とすることがより好ましく、2.7g/cm以上とすることが最も好ましい。一方、非水電解液の吸液量を調整し放電特性の低下を防ぐため、正極活物質層の密度は、3.2g/cm以下とすることが好ましく、3.1g/cm以下とすることがより好ましく、3.0g/cm以下とすることが最も好ましい。
【0057】
正極は、例えば、正極活物質に導電助剤やバインダを配合し、必要に応じて水などを添加してなる正極合剤(スラリー)を、ロールなどを用いて圧延するなどして予備シート化し、これを乾燥・粉砕したものを再度ロール圧延などによってシート形状に成形して正極合剤シートとし、これを集電体の片面または両面に重ね、プレスなどにより正極合剤シートと集電体とを一体化して、集電体の片面または両面に正極合剤シートからなる層(正極活物質層)を形成する方法によって製造することができる。
【0058】
具体的には、例えば、集電体の外周が2枚の正極合剤シートの外周よりも数mm内側にくるようにして三者を重ね合わせ、巻回始端部となる長さ方向の端部から3~10mmの部分をプレスすることで、集電体の両面に正極活物質層を有し、その一部が集電体に固定された正極を製造できる。
【0059】
正極の厚みが薄い場合(例えば、0.7mm以下)には、正極活物質層の片面全体を集電体と一体化しても可撓性に優れた電極となるため、負極やセパレータとともに渦巻状に巻回して巻回電極体を作製する際に支障は生じない。正極の厚みが、例えば1mm以上と厚くなると、可撓性や柔軟性が低下し、正極に加わる応力により活物質層にひび割れや脱落を生じやすくなる。このため、前記のように、正極活物質層の一部のみを集電体に固定し、巻回時に、正極活物質層の集電体に固定されていない部分が集電体に対しずれを生じることにより、正極に加わる応力を緩和できる構成とすることが好ましい。
【0060】
なお、作業上の観点からは、巻回電極体の作製に先立って、正極合剤シートと正極集電体とを一体化しておくことが好ましい。これに対して、独立した正極合剤シートと正極集電体とを、巻回電極体の巻回時に一体化してもよい。このような製法によっても特性上は特に問題はない。
【0061】
なお、正極は、前記の製法により製造されたものに限定されず、他の製法により製造されたものであってもよい。例えば、正極合剤スラリーを集電体の片面または両面に塗布して乾燥し、必要に応じてプレス処理などを施して集電体上に正極活物質層を形成する製法により正極が製造されてもよい。
【0062】
前記樹脂製の微多孔フィルムや不織布には、リチウム一次電池でセパレータとして一般に使用されている微多孔フィルムや不織布を使用することができる。微多孔フィルムや不織布の構成樹脂としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)などのポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などのポリエステル;ポリフェニレンスルフィド(PPS);などが挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を用いることができる。
【0063】
一次電池本体1の負極は、前記の通り、負極活物質層を有するものである。負極は、例えば負極活物質層が集電体の片面または両面に形成された構造としてもよい。負極活物質層は、例えば、リチウムシート(リチウム金属箔またはリチウム合金箔)で構成することができる。負極活物質層がリチウム合金箔で構成される場合、そのリチウム合金としては、リチウム-アルミニウム合金などが挙げられる。特に、負極活物質層には、リチウム金属箔とアルミニウムの薄箔とを貼り合わせてなる積層体を用い、アルミニウムの薄箔側を、少なくとも、正極活物質層側に配置することが好ましい。リチウム金属箔とアルミニウム薄箔との積層体は、電池内で前述の非水電解液と触れることで、その界面においてリチウム-アルミニウム合金を生成する。よって、リチウム金属箔とアルミニウム薄箔との積層体を用いると、電池内において、負極活物質層を構成するリチウムシートの表面でリチウム-アルミニウム合金が生成する。このとき、リチウム-アルミニウム合金が微粉化するため、リチウムシートの前記合金含有面では、その比表面積が増大する。従って、この合金含有面を、正極活物質層との対向面とすることで、電池がより効率よく放電できるようになる。
【0064】
なお、正極に二酸化マンガンなどのマンガン酸化物を用いた電池では、高温で貯蔵された場合に、正極から電解液中にマンガンが溶出しやすくなり、溶出したマンガンが負極のリチウムの表面に析出して電池の内部抵抗を上昇させる虞があるが、リチウムの表面にリチウム-アルミニウム合金を形成することにより、負極の表面へのマンガンの析出を防ぐことができるので、電池の内部抵抗の上昇をより効果的に抑制することができる。
【0065】
負極活物質層を構成するリチウムシートの厚みは、0.1~1mmであることが好ましい。また、前記のリチウム金属箔とアルミニウムの薄箔との積層体を用いる場合には、リチウム金属箔の厚みが0.1~1mmであり、アルミニウムの薄箔の厚みが0.005~0.05mmであることが好ましい。
【0066】
負極集電体には、銅、ニッケル、鉄、ステンレスなどの箔を用いることができる。負極集電体の厚み分だけ電池容器(外装缶)の内部体積が減少するため、負極集電体の厚みは可及的に小さいことが好ましく、具体的には、例えば、0.1mm以下であることが推奨される。すなわち、負極集電体が厚すぎると、負極活物質層を構成するリチウムシートなどの仕込み量を少なくせざるを得ず、正極を前記のように厚くすることによる電池容量の向上効果が小さくなる虞がある。また、負極集電体が薄すぎると、破れやすくなるため、負極集電体の厚みは、0.005mm以上であることが好ましい。また、負極集電体は、負極活物質層を構成するリチウムシートの片面の全体に接するよう、幅や長さを調整することが好ましい。負極集電体の面積が、リチウムシートの面積の100~130%であることが好ましい。リチウムシートの片面の全体が負極集電体と接することによって、リチウムシートの負極集電体と接していない箇所が切れて電気的接続が断たれることを防ぐことができる。
【0067】
図6は、一次電池本体1の構成例を示す断面図である。図6に示す例では、一次電池本体1は、外装缶2と、巻回電極体3と、非水電解液と、外装缶2の上方開口部を封止する封口構造とを有している。外装缶2は、鉄やステンレス鋼などを素材とし、上方開口部を有する有底円筒状である。巻回電極体3は、外装缶2内に装填された正極4と負極5とをセパレータ6を介して渦巻状に巻回してなる。言い換えれば、図1に示す一次電池本体1は、外装缶2と外装缶2の上方開口部を封止する封口構造とで囲まれる空間内に、正極4と負極5とをセパレータ6を介して渦巻状に巻回してなる巻回電極体3や非水電解液といった発電要素を有するものである。
【0068】
図7は、図6の一次電池本体1の横断面図を示している。図7に示すように、巻回電極体3は、長尺の正極4と長尺の負極5とを、セパレータ6を介して巻回してなるものであり、全体として略円柱形状に形成されている。図7に示す一次電池本体1では、正極4は、2枚の正極合剤シート41、42が、集電体43を介して積層された構造を有している。また、負極5は、負極活物質層51と集電体52とが積層された構造を有している。巻回電極体3においては、図7に示すように1枚の長尺の負極5を巻回中心で折り返すようにして巻回している。このため、図7に示す断面では、負極5同士が互いの集電体側で接しており、それぞれの負極5の負極活物質層が、セパレータ6を介して正極4と対向している。
【0069】
なお、セパレータ6は、複数の樹脂製微多孔フィルムまたは/および樹脂製不織布を重ねることにより構成することもできる。これにより、電池の内部短絡を防ぐ効果をより良好に確保することができる。例えば、図8に示す通り、正極4と負極5との間に、2枚以上の樹脂製微多孔フィルム(図8では2枚の樹脂製微多孔フィルム61、62)を、互いに貼り合わせずに重ねて介在させるのであってもよい。また、図8に示す巻回電極体3において、正極4は、正極集電体43の両面に正極活物質層41、42を有しており、負極5は、負極集電体52の片面に負極活物質層51を有している。
【0070】
図6に示す例では、一次電池本体1の封口構造は、蓋板7と、端子体9と、絶縁板10とを有している。蓋板7は、外装缶2の上方開口部の内周縁に固定される。端子体9は、蓋板7の中央部に開設された開口に、ポリプロピレンなどを素材とする絶縁パッキング8を介して装着される。絶縁板10は、蓋板7の下部に配置される。絶縁板10は、円盤状のベース部11の周縁に環状の側壁12を立設した上向きに開口する丸皿形状に形成されている。ベース部11の中央にはガス通口13が開設されている。蓋板7は、側壁12の上端部に受け止められた状態で、外装缶2の上方開口部の内周縁に、レーザー溶接で固定するか、またはパッキングを介したクリンプシールで固定されている。電池内圧が急激に上昇したときの対策として、蓋板7または外装缶2の底部2aには、薄肉部(ベント)を設けることができる。正極4と端子体9の下面とは、正極リード体15で接続されている。また、負極5に取り付けられた負極リード体16は、外装缶2の上部内面に溶接されている。また、外装缶2の底部2aには、樹脂製の絶縁板14が配置されている。
【0071】
図6に示す例では、端子体9は、正極4に電気的に接続される。外装缶2は、負極5に電気的に接続される。パッケージ24内において、端子体9が、基板25の正極用のパッドに電気的に接続され、外装缶2が基板25の負極用のパッドに接続される。なお、図6図8を用いて説明した一次電池本体は、一例を示すものであり、本発明に用いることのできる一次電池本体は、この例に限られない。
【0072】
本実施形態のリチウム一次電池パック100では、リチウム一次電池本体1の正極4及び負極5の間の電圧が、電圧変換器22によって3.6Vに昇圧されて、パッケージ24の外の正極端子T1及び負極端子T2に出力される。また、一次電池本体1の電圧の低下は、検出器23によって検出され、パッケージ24の外の信号端子T3に信号として出力される。この構成では、一次電池本体1の電圧を3.6Vにしなくてもよい。そのため、上記のように、正極4の正極活物質の材料の選択の幅が広がる。従来、リチウム一次電池で3.6Vの出力電圧を得るには、正極活物質の材料が、塩化チオニル等に限定されていた。本実施形態では、リチウム一次電池パック100に電圧変換器22が内蔵されているので、例えば、一次電池本体1を、3.4V未満の電圧、例えば、2.7V~3.3Vの範囲の電圧のリチウム一次電池とすることができる。これにより、一次電池本体の正極活物質の材料が、塩化チオニル等に限定されなくなり、材料選択の自由度が高くなる。一次電池本体1の電圧は、高いほど好ましく、2.8V以上が好ましく、2.9V以上がより好ましい。
【0073】
リチウム一次電池パック100の正極端子T1と負極端子T2には、電圧変換器22で変換された電圧が出力されるため、一次電池本体1の電圧の低下を、正極端子T1と負極端子T2の間の電圧から早期に検出するのが難しい。しかし、リチウム一次電池パック100は、一次電池本体1の電圧の低下を検出する検出器23を内蔵し、検出器23に接続された信号端子T3がパッケージ24外に引き出される。信号端子T3から一次電池本体1の電圧の低下を示す信号が出力される。これにより、一次電池本体1の電圧の低下を早期に検出することが容易になる。その結果、リチウム一次電池パック100の放電終了の事前の検知が容易になる。
【0074】
一例として、正極活物質として、二酸化マンガン又は、LiMnO(x≦1/15)など予めリチウムがドープされたマンガン酸化物を用いることで、塩化チオニルを正極活物質とした場合に比べて、リチウム一次電池パック100の放電終了の事前の検知がよりしやすくなる。図9は、塩化チオニルを正極活物質とした、ER18/50のサイズ(直径:18mm、高さ:52.6mm)のリチウム一次電池の放電特性の例を示す図である。図10は、二酸化マンガンを正極活物質とした、17450のサイズ(直径:17mm、高さ:45mm)のリチウム一次電池の放電特性の例を示す図である。図9に示すように、塩化チオニルリチウム電池は、一定電圧で放電が進行し、放電末期に急激に電圧が低下する放電特性を有する。これに対して、図10に示すように、二酸化マンガンリチウム電池は、放電末期の電圧低下が緩やかである。二酸化マンガンリチウム電池では、電圧の低下を検知してから、放電終了までの時間が長くなる。例えば、図10に示される1mAの放電電流での放電曲線の場合には、放電容量が1mAhに達するのに要する時間が1時間となるため、図の横軸の「放電容量(mAh)」を、そのまま「放電時間(時間)」に置き換えることができ、放電時間の進行に伴う電池の電圧変化を直接読み取ることができる。図より明らかなように、放電電流が1mAの場合、電圧が2.7Vに低下してから、さらに2.0Vに低下するまでに、およそ260時間の放電を行うことができる。そのため、放電終了を事前に検知しやすくなる。
【0075】
本実施形態におけるリチウム一次電池パック100は、ガスメータの電池に好適に用いられる。ガスメータ用のリチウム一次電池パック100、及び、リチウム一次電池パック100を電源とするガスメータも、本発明の実施形態に含まれる。ガスメータの電池として、3.6Vの電圧の電池が求められる場合がある。この場合に、3.6Vレベルの出力が可能で、正極活物質の限定が少なく、且つ、放電終了時期の事前検出が容易な本実施形態のリチウム一次電池パック100を、ガスメータの電源に用いることができる。これにより、ガスメータの電池に求められる特性を有するリチウム一次電池パックを提供できる。
【0076】
例えば、塩化チオニルリチウム電池では、パルス放電や数mA以上の電流値での放電に対応するのが難しい。そのため、キャパシタなどのバックアップ電源を、塩化チオニルリチウム電池と組み合わせて、大電流に対応可能なガスメータの電池とすることが考えられる。しかし、ガスメータの多機能化により、大電流での連続放電や、パルス放電で山になる部分の放電時間を長くしたりする必要が生じる場合がる。このような使用条件には、塩化チオニルリチウム電池とバックアップ電源との組み合わせでは対応が難しいことが発明者らによって見出されている。そこで、正極活物質を塩化チオニルに限定しない構成の本実施形態のリチウム一次電池パックを用いることで、上記のような大電流の使用条件に対応することができる。
【0077】
また、塩化チオニルリチウム電池は、電圧低下を検知したとしても、電池が放電終了するまでの残余期間が短い。そのため、例えば、ガスメータでリチウム一次電池の電圧低下を検出し、管理会社などに通知したとしても、電池が作動している間に、電池交換をすることが難しい場合がある。通知を受けて、管理会社の作業員が対応したとしても、状況によっては、電池交換が間に合わず、ガスの流量測定が途絶える、又は、電池の放電終了前にガスの遮断弁が作動して、ユーザーがガスを使用できなくなるなどの事態を生じ得る。
【0078】
一方、本実施形態で用いるリチウム一次電池パックは、放電末期の電圧低下が緩やかな特性を有するリチウム電池(例えば、二酸化マンガンリチウム電池)を一次電池本体として用いることができる。これにより、電圧低下の情報を管理会社が受信した後、電池が放電終了するまでの残余期間が長く、電池交換をするための十分な時間的余裕を持たせることができる。従って、前記リチウム一次電池パックは、電池の電圧低下の情報を外部に発信する機能を有するガスメータの電源として好適に用いることができる。
【0079】
図11は、ガスメータの構成例を示す機能ブロック図である。図11に示す例では、ガスメータ70は、リチウム一次電池パック100、センサ71、出力部72及びコントローラ73を備える。リチウム一次電池パック100は、上記の本実施形態のリチウム一次電池パック100が用いられる。リチウム一次電池パック100は、ガスメータ70に対して、着脱可能である。リチウム一次電池パック100の正極端子T1及び負極端子T2は、センサ71、出力部72及びコントローラ73に接続される。これにより、リチウム一次電池パック100は、センサ71、出力部72及びコントローラ73へ電力を供給する。信号端子T3は、コントローラ73に接続される。コントローラ73は、信号端子T3の信号に基づく情報を、出力部72に外部に発信させることができる。
【0080】
センサ71は、ガスの流量を検出する。センサ71は、リチウム一次電池パックから電力の供給を受けて動作する。センサ71の構成は特に限定されなないが、例えば、膜式又は超音波式のメータを用いることができる。膜式のメータは、ガスの流れによる膜の運動を検出することによりガスの流量を検出する。超音波式のメータは、ガスの流れを通った超音波を検出することによりガスの流量を検出する。
【0081】
出力部72は、センサ71の検出結果及びリチウム一次電池パック100の検出器23の検出結果(すなわち、信号端子T3の信号に基づく情報)を、ガスメータ70の外部へ発信する。出力部72は、例えば、音による外部へ情報を発信するスピーカ、光により外部へ情報を発信するランプ、画像により外部へ情報を発信するディスプレイ、メモリを指す針や情報を書いた札を動かすことで外部へ情報を発信する表示機械(機械式表示装置)又は、外部機器との通信機能を有する通信モジュールの少なくとも1つを含む構成とすることができる。通信モジュールは、例えば、外部機器(サーバ等)とのネットワークを介した通信を可能にする通信装置である。なお、出力部72の情報の出力形態は特定のものに限定されない。
【0082】
コントローラ73は、センサ71、出力部72を含むガスメータ70を制御する。コントローラ73は、センサ71の検出結果、及び、信号端子T3の信号に基づく情報を処理して、出力部72に出力させることができる。また、リチウム一次電池パック100が、スイッチ21を有する場合、コントローラ73が、スイッチ21のオン/オフを制御してもよい。例えば、コントローラ73は、ガスメータ70が備えるボタンやスイッチ等のユーザーによる入力装置に対するユーザーの操作に基づいて、スイッチ21のオン/オフを切り替えるよう構成されてもよい。コントローラ73は、プロセッサ及びメモリを有するコンピュータ、又は、電気回路により構成されてもよい。コントローラ73、センサ71及び出力部72の少なくとも2つ以上が一体的に構成されてもよい。
【0083】
ガスメータ70の構成は、図11に示す構成に限られない。例えば、ガスメータ70は、センサ71の検出結果に応じて、ガスの流れを制御するガス流制御装置又は、ガスの流れを遮断する遮断装置を備えてもよい。この場合、コントローラ73は、センサ71の検出結果に基づいて、ガスの流れを制御又は遮断する弁を制御するよう構成されてもよい。弁を駆動するための電力が、リチウム一次電池パック100から供給される構成であってもよい。
【0084】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限られない。本発明のリチウム一次電池パックの用途は、ガスメータの電池に限られない。
【符号の説明】
【0085】
1:一次電池本体、21:スイッチ、22:電圧変換器、23:検出器、24:パッケージ、T1:正極端子、T2:負極端子、T3:信号端子、100:リチウム一次電池パック
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図11