(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】エンジン制御システム
(51)【国際特許分類】
F02D 45/00 20060101AFI20241016BHJP
F02D 41/14 20060101ALI20241016BHJP
G05B 13/02 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
F02D45/00 376
F02D41/14
G05B13/02 J
(21)【出願番号】P 2021563695
(86)(22)【出願日】2020-04-20
(86)【国際出願番号】 EP2020025180
(87)【国際公開番号】W WO2020216470
(87)【国際公開日】2020-10-29
【審査請求日】2023-04-11
(32)【優先日】2019-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】501169419
【氏名又は名称】パーキンズ エンジンズ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Perkins Engines Company Limited
【住所又は居所原語表記】Eastfield Peterborough PE1 5FQ United Kingdom
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアムズ、ギャビン
(72)【発明者】
【氏名】ラドロー、ピーター
(72)【発明者】
【氏名】ベスト、マックス
(72)【発明者】
【氏名】スカイフ、マーク
【審査官】家喜 健太
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-523886(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0160787(US,A1)
【文献】特開2004-003390(JP,A)
【文献】特開平11-324782(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 41/00 - 45/00
G01M 15/00
G05B 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃エンジンコントローラーであって、 複数の制御マップを格納するように構成されるメモリーであって、各制御マップが前記内燃エンジンコントローラーへの複数の入力変数に基づい
て内燃エンジンのアクチュエーターを制御するためのアクチュエーター設定点の超曲面を画定する、メモリーと、
プロセッサーであって、 前記複数の入力変数によって画定される前記
各制御マップの前記超曲面上の位置に基づいて、制御信号を各アクチュエーターに出力するように構成されるエンジン設定点モジュールと、 前記制御マップのうちの少なくとも一つに対して最適化された超曲面を計算するように構成されるマップ更新モジュールとを含む、プロセッサーとを含み、 前記最適化された超曲面が、前記内燃エンジンからのセンサーデータおよび前記複数の入力変数を含む前記内燃エンジンのリアルタイム性能モデルに基づいて計算され、 前記マップ更新モジュールが前記最適化された超曲面に基づいて前記制御マップの前記超曲面を更新するようにさらに構成され
、
前記マップ更新モジュールが、 最適化された超曲面を検索するように構成されるオプティマイザーモジュールであって、複数のアクチュエーター設定点の候補グループをエンジンモデリングモジュールに供給する、オプティマイザーモジュールと、 前記入力変数、前記内燃エンジンからのセンサーデータ、および前記アクチュエーター設定点の候補グループに基づいて、アクチュエーター設定点の各候補グループに関連付けられる複数のエンジン性能変数を計算するように構成されるエンジンモデリングモジュールと、 前記エンジン性能変数を評価し、アクチュエーター設定点の各候補グループに関連付けられるコストを前記オプティマイザーモジュールに出力するように構成されるコストモジュールとを含み、 前記オプティマイザーモジュールが、前記アクチュエーター設定点の候補グループおよび前記コストに基づいて、前記少なくとも一つの制御マップに対して最適化された超曲面を出力するように構成される、内燃エンジンコントローラー。
【請求項2】
前記マップ更新モジュールが、1秒の期間内に最適化された超曲面を計算するように構成される、請求項1に記載の内燃エンジンコントローラー。
【請求項3】
前記マップ更新モジュールが、前記制御マップのそれぞれに対して最適化された超曲面を同時に計算するように構成され、 前記マップ更新モジュールが、前記それぞれの最適化された超曲面に基づいて、前記制御マップのそれぞれの前記超曲面を更新するように構成される、請求項1または請求項2に記載の内燃エンジンコントローラー。
【請求項4】
前記マップ更新モジュールが、 複数のアクチュエーター設定点の候補グループに対する前記リアルタイム性能モデルを使用して、前記内燃エンジンのリアルタイム性能をモデル化すること、および 計算された前記モデル化されたリアルタイム性能に基づいて
、最適化された超曲面を計算すること、によって
前記最適化された超曲面を計算するように構成される、請求項1~3のいずれか一項に記載の内燃エンジンコントローラー。
【請求項5】
前記オプティマイザーモジュールが、前記制御マップのそれぞれに対して最適化された超曲面を検索するように構成される、請求項
1~4のいずれかに記載の内燃エンジンコントローラー。
【請求項6】
前記オプティマイザーモジュールが、複数のオプティマイザー関数を含み、各オプティマイザー関数が
、他のオプティマイザー関数とは独立して、最適
化された超曲面を検索するように構成される、請求項
1~5のいずれか一項に記載の内燃エンジンコントローラー。
【請求項7】
前記オプティマイザーモジュー
ルの前記複数のオプティマイザー関数が、異なる速度で、更新された
最適化された超曲面を出力する、請求項
6に記載の内燃エンジンコントローラー。
【請求項8】
前記複数のオプティマイザー関数が、第一のオプティマイザーモジュールおよび第二のオプティマイザーモジュールを含み、 前記第一のオプティマイザーモジュールが、
前記内燃エンジンの現在状態に基づいて、更新された
最適化された超曲面を出力するように構成され、 前記第二のオプティマイザーモジュールが、
前記内燃エンジンの収束状態に基づいて更新された
最適化された超曲面を出力するように構成される、請求項
6または請求項
7に記載の内燃エンジンコントローラー。
【請求項9】
前記コストモジュールが、複数のコストパラメーターに基づいて前記エンジン性能変数を評価するように構成される、請求項
1~8のいずれか一項に記載の内燃エンジンコントローラー。
【請求項10】
前記コストパラメーターが、前記内燃エンジンに接続される後処理システムからの入力に基づいて、時間変動するコストパラメーターを含む、請求項
9に記載の内燃エンジンコントローラー。
【請求項11】
アクチュエーター設定点の一つの候補グループが、前記エンジン設定点モジュールの前記制御信号
の出力に基づく、請求項
1~10のいずれか一項に記載の内燃エンジンコントローラー。
【請求項12】
各制御マップの前記超曲面が、前記内燃エンジンのアクチュエーターを制御するための複数のアクチュエーター設定点を含む早見表によって画定され、 前記マップ更新モジュールが、更新されたアクチュエーター設定点のグループを含む最適化された超曲面を計算する、請求項1~
11のいずれか一項に記載の内燃エンジンコントローラー。
【請求項13】
内燃エンジンを制御する方法であって、 複数の制御マップを提供することであって、各制御マップ
が内燃エンジン
のコントローラーへの複数の入力変数に基づいて、前記内燃エンジンのアクチュエーターを制御するためのアクチュエーター設定点の超曲面を画定するように、提供することと、 前記複数の入力変数によって画定される前記制御マップの前記超曲面上の位置に基づいて、制御信号を各アクチュエーターに出力することと、 前記制御マップの少なくとも一つに対して最適化された超曲面を計算することであって、 前記最適化された超曲面が、前記内燃エンジンからのセンサーデータおよび前記複数の入力変数を含む前記内燃エンジンのリアルタイム性能モデルに基づいて計算されるように、計算することと、 前記最適化された超曲面に基づいて、前記制御マップの前記超曲面を更新することとを含む、前記制御マップのうちの少なくとも一つを更新することとを含
み、
前記少なくとも一つの制御マップを更新することが、 複数のアクチュエーター設定点の候補グループを決定することによって、最適化された超曲面を検索することと、 前記複数の入力変数、前記内燃エンジンからのセンサーデータ、および前記アクチュエーター設定点の候補グループに基づいて、アクチュエーター設定点の各候補グループに関連付けられる複数のエンジン性能変数を計算することと、 前記エンジン性能変数を評価し、アクチュエーター設定点の各候補グループに関連付けられるコストを計算することとを含み、 前記少なくとも一つの制御マップに対して前記最適化された超曲面が、前記アクチュエーター設定点の候補グループおよび前記コストに基づいて計算される、方法。
【請求項14】
前記最適化された超曲面が、1秒の期間内で計算される、請求項
13に記載の方法。
【請求項15】
最適化された超曲面が前記制御マップのそれぞれに対して同時に計算され、 前記制御マップのそれぞれが、そのそれぞれの最適化された超曲面に基づいて更新される、請求項
13または請求項
14に記載の方法。
【請求項16】
前記最適化された超曲面が、 複数のアクチュエーター設定点の候補グループに対する前記リアルタイム性能モデルを使用して、前記内燃エンジンのリアルタイム性能をモデル化すること、および 計算された前記リアルタイム性能に基づいて前記最適化された超曲面を計算すること、によって計算される、請求項
13~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
アクチュエーター設定点の一つの候補グループが、各アクチュエーターへの前記制御信号
の出力に基づく、請求項13~
16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
各制御マップの前記超曲面が、前記内燃エンジンのアクチュエーターを制御するための複数のアクチュエーター設定点を含む早見表によって画定され、 計算された前記最適化された超曲面が、更新されたアクチュエーター設定点のグループを含む、請求項
13~17のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、内燃エンジンの制御に関する。より具体的には、本開示は、内燃エンジンのエンジンアクチュエーターを制御するためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃エンジンは、多くの場合、内燃エンジンの排気からの排出物を管理するための一つまたは複数のシステムを含む。例えば、内燃エンジンは多くの場合、内燃エンジンによって生成される排気ガスを処理するための後処理システムを含む。
【0003】
典型的な後処理システムは、多くのセンサーおよび制御アクチュエーターを含み得る。さらなるセンサーおよび制御アクチュエーターは、内燃エンジンの排気ガス、性能、および/または効率を監視するための内燃エンジンに設けられてもよい。従って、内燃エンジンは、多くの独立した制御可能な変数および較正値を含み得る。従って、内燃エンジン用のエンジン制御システムの設計は、多次元制御問題である。
【0004】
エンジン制御システムは、内燃エンジンの動作条件のリアルタイム変化に応答して、内燃エンジンのアクチュエーターに設定点を提供する必要がある。排出規制を満たす高効率の内燃エンジンに対する要求は、制御システムの設計をさらに制限する。制御システムの設計に対するさらなる制限は、エンジン制御システムに利用可能な計算能力の量が制限され得ることである。
【0005】
従来、内燃エンジンおよび後処理システムの制御は、オンボードプロセッサー(エンジン制御モジュール)によって管理される。内燃エンジンおよび後処理システムの複雑さのために、実装されたエンジン制御は、通常、内燃エンジンおよび後処理システムに対する事前較正された、時間不変の設定点を含む一連の「制御マップ」に基づくオープンループ制御システムを利用する。典型的には、制御される設定点は、燃料質量、注入開始(SOI)、排気ガス再循環(EGR)、および入口マニホールド絶対圧力(IMAP)を含む。
【0006】
一部の単純な制御マップは、いくつかの時間不変のエンジン設定点が、異なるエンジン動作条件と関連付けられて記憶される、複数の早見表を含む。エンジン制御モジュールは、所望のエンジン動作に関連付けられる制御マップからエンジン設定点を単に読み取ることができる。また、一部のエンジン制御マップは、限定された数の他の変数の関数として、一つの変数の推定値を提供することもできる。エンジン設定点マップは、追加の変数が含まれるにつれて、メモリーの指数関数的増加、およびマップの複雑さのため、限られた数の入力変数のみに基づくことができる。場合によっては、システムメモリーが補間誤差という代償を払って不都合であり得る。
【0007】
オープンループ制御スキームの性能に対する影響を低減するための一つの方法は、異なる動作レジームに対して異なる制御マップを提供することである。例えば、異なる制御マップが、アイドル動作およびフルフルスロットル動作、または起動のために提供され得る。エンジンごとに多くの異なるエンジン制御マップを提供することにより、各エンジンの較正は高額かつ時間がかかる。また、これらの事前較正されたマップは、時間不変の早見表である。従って、これらの時間不変マップは、例えば、エンジン部品における部品間の変動、または湿度などの未測定の影響を考慮に入れることができない。また、時間不変マップは、経時的なエンジン部品性能の変動にも対応できない。
【0008】
代替的なアプローチは、較正された制御マップを置き換えるために、エンジンのリアルタイム、オンボード、モデルベースの制御を実装することである。このように、エンジンモデルは、内燃エンジンの一つまたは複数の設定点を直接制御する。モデルベースのエンジン制御は、エンジン性能、排出、および動作状態を予測するための動的エンジンモデルを含み得る。予測エンジン性能をモデルにフィードバックして、制御設定点をさらに最適化することができる。このように、モデルベースの制御方法は、性能および排出を改善するために、ネガティブフィードバックの形態をエンジン制御システムに効果的に組み込む。
【0009】
モデルベースの制御は、エンジン制御設定点がリアルタイムに計算されなければならないため、実施が困難である。従って、予測要素を含むモデルベースのエンジンコントローラーは、理想的には、それらの予測をリアルタイムに完了する。従って、多くのモデルベースの制御スキームは、内燃エンジンを制御するのに好適な時間スケール内でモデル出力を最適化するために、かなりの計算リソースを必要とする。
【0010】
モデルベースの制御スキームの既知の一例が、米国特許出願公開第2016/0160787号に開示される。US2016/0160787は、リアルタイム動的計算モデルおよびリアルタイムオプティマイザーを含むコントローラーを開示す。リアルタイムオプティマイザーは、計算モデルの少なくとも一つの出力に基づいて、少なくとも一つのエンジン制御信号を調整するように構成される。従って、US2016/0160787は、内燃エンジンの直接的なモデルベースの制御を提供するコントローラーを開示する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本開示の第一の態様によれば、内燃エンジンコントローラーが提供される。内燃エンジンコントローラーは、メモリーおよびプロセッサーを含む。メモリーは、複数の制御マップを記憶するように構成され、各制御マップは、内燃エンジンコントローラーへの複数の入力変数に基づいて、内燃エンジンのアクチュエーターを制御するためのアクチュエーター設定点の超曲面を画定する。プロセッサーは、エンジン設定点モジュール、およびマップ更新モジュールを含む。エンジン設定点モジュールが複数の入力変数によって画定されるそれぞれの制御マップの超曲面上の位置に基づいて、制御信号を各アクチュエーターに出力するように構成される。マップ更新モジュールは、制御マップの少なくとも一つに対して最適化された超曲面を計算するように構成され、最適化された超曲面は、内燃エンジンからのセンサーデータおよび複数の入力変数を含む内燃エンジンのリアルタイム性能モデルに基づいて計算される。マップ更新モジュールは、最適化された超曲面に基づいて、制御マップの超曲面を更新するようにさらに構成される。
【0012】
従って、内燃エンジンコントローラーは、二つの処理モジュール、エンジン設定点モジュールおよびマップ更新モジュールを含む。エンジン設定点モジュールは、内燃エンジンの複数のアクチュエーターを制御するように構成される。例えば、エンジン設定点モジュールは、SOI、EGR、燃料質量、および内燃エンジンに対して要求される入口マニホールドの絶対圧力(IMAPR)のうちの一つまたは複数を制御し得る。エンジン設定点モジュールは、例えば、トルク、エンジン速度などのユーザーの需要、または内燃エンジンからの指定されたセンサーデータ(例えば、現在のIMAP)など、内燃エンジンへの性能入力に基づいて、これらのアクチュエーターを制御する。各アクチュエーターの制御は、各アクチュエーターの制御マップに基づいて決定される。各制御マップは、内燃エンジンコントローラーへの複数の入力変数に基づいて、内燃エンジンのアクチュエーターを制御するための超曲面を画定する。このように、エンジン設定点モジュールは、制御マップに格納されるアクチュエーター設定点を利用して、効果的にアクチュエーターを制御する、オープンループ制御モジュールである。
【0013】
マップ更新モジュールは、エンジン設定点モジュールのオープンループ制御から分離されるとみなされ得る。マップ更新モジュールは、制御マップの超曲面を更新することによって、内燃エンジンの制御を最適化するように構成される。内燃エンジンのリアルタイム性能モデルを使用して、制御マップを更新するために最適化された超曲面を計算する。従って、リアルタイム性能モデルは、内燃エンジンのアクチュエーター設定点を直接制御しない。従って、第一の態様によるコントローラーは、内燃エンジンのリアルタイム性能モデルを堅牢な様式で組み入れたコントローラーを提供する。
【0014】
複数の更新可能な制御マップを提供することによって、限定された数の制御マップを使用して異なる動作点の範囲に最適化され得る、制御マップベースのコントローラーが提供され得る。従って、本開示の更新可能なマップは、別々の制御マップが過去に較正されたことがある、異なる動作点の範囲をカバーする制御を提供することができるので、内燃エンジンに対して較正する必要のある制御マップの数が減少され得る。従って、内燃エンジンの初期較正およびセットアップの複雑さが低減され得る。
【0015】
さらに、当技術分野で公知の時間不変制御マップは、典型的には、経時的な内燃エンジンの変化に対応するために、比較的大きな安全マージンで較正される。対照的に、第一の態様によるマップ更新モジュールは、内燃エンジンのモデル化されたリアルタイム性能に応答して、制御マップのアクチュエーター設定点を更新し得る。従って、第一の態様の制御マップは、内燃エンジンに、より最適な性能条件下で動作させるように構成され得る。
【0016】
実際に、マップ更新モジュールは、内燃エンジンからのセンサーデータおよび複数の入力変数を含む内燃エンジンのリアルタイム性能モデルを利用する。従って、マップ更新モジュールは、最適化された超曲面を計算する際に、多くの異なる変数を考慮することができる。従って、既知のオープンループマップベースの制御システムとは対照的に、第一の態様による内燃エンジンコントローラーは、制御マップで使用される特定の複数の入力変数に加えて、エンジンセンサーデータも考慮し得る。内燃エンジンからのセンサーデータは、内燃エンジンの物理センサーによって生成される物理センサーデータを含んでもよい。こうした物理センサーデータは、内燃エンジンの直接測定を表し得る。内燃エンジンからのセンサーデータはまた、仮想センサーデータを含んでもよく、仮想センサーデータは、直接測定の代わりに信号推定を形成するために、測定値および数学的プロセスの組み合わせから導出される。
【0017】
本開示によれば、各制御マップによって画定される超曲面は、制御されるアクチュエーター設定点(すなわち、出力)と制御マップへの入力(複数可)との間の関係を指すことが意図される。従って、超曲面は、制御マップへのn個の入力と対応するアクチュエーター設定点との間の関係によって画定され得ることが理解されよう。例えば、超曲面は、単一の入力と出力アクチュエーター設定点との間の関係によって画定され得る。他の実施形態では、超曲面は、二つまたは三つの入力とアクチュエーター出力との間の関係によって画定されてもよく、その場合、関係は、二次元または三次元表面としてそれぞれ可視化され得る。
【0018】
本開示の制御マップによって画定される超曲面は、エンジンアクチュエーター設定点のオープンループマップベースの制御を実施するための任意の適切な様式で表され得る。例えば、いくつかの実施形態では、超曲面は、超曲面上の複数のアクチュエーター設定点(すなわち、座標)を画定する早見表によって画定され得る。このように、制御マップは、複数の数値エンジンアクチュエーター設定点を含む早見表であり得る。超曲面上のさまざまな位置は、当技術分野で公知のように、早見表に格納される点間の補間によって見出すことができる。他の実施形態では、超曲面は、一つまたは複数の関数/数学的関係によって画定され得る。例えば、n個の入力変数によって画定される超曲面は、パラメーター可変の普遍的近似関数、または任意の他の適切な関数によって表され得る。次いで、マップ更新モジュールは、更新されたアクチュエーター設定点のグループを含む最適化された超曲面を計算し得る。このように、超曲面は、早見表に格納される少なくとも一部の「座標」を更新することによって更新され得る。
【0019】
第一の態様によるマップ更新モジュールは、内燃エンジンからのセンサーデータおよび複数の入力変数を含む、内燃エンジンのリアルタイム性能モデルに基づいて、最適化された超曲面を計算するように構成される。従って、マップ更新モジュールは、内燃エンジンのリアルタイム性能のモデルに従って、超曲面を最適化することを目指す。しかしながら、マップ更新モジュールは、内燃エンジンを直接制御しないことが理解されよう。従って、マップ更新モジュールが、最適化された超曲面を計算し得る速度は、内燃エンジンのアクチュエーター設定点が更新される速度に拘束されない。従って、マップ更新モジュールの計算要件は、アクチュエーター設定点を直接制御する制御システムと比較して緩和され得る。例えば、マップ更新モジュールの計算要件を緩和することによって、マップ更新モジュールは、最適化された超曲面の計算の性能を改善するために、最適化された超曲面の計算時に使用される入力変数の数を増加させ得る。
【0020】
マップ更新モジュールは、内燃エンジンのリアルタイム性能のモデルに基づいて、最適化された超曲面を計算するように構成される。従って、マップ更新モジュールは、内燃エンジンからの入力センサーデータ、および最適化された超曲面が計算される対応するモデル化された性能が、内燃エンジンの実際の性能および設定点に依然として関連するように、ある期間内に最適化された超曲面を出力することが理解されよう。一般に、マップ更新モジュールは、最適な較正を変更する妨害の特性周波数に対応する、最適化された超曲面を出力し得る。例えば、いくつかの実施形態では、マップ更新モジュールは、1秒以下の期間で最適化された超曲面を計算し得る。いくつかの実施形態では、マップ更新モジュールは、500ms、400ms、300ms、200ms、または100ms以下の期間で最適化された超曲面を計算するように構成される。一実施形態では、マップ更新モジュールは、60ms以下の期間で最適化された超曲面を計算するように構成される。
【0021】
マップ更新モジュールは、制御マップの各々に対して最適化された超曲面を同時に計算するように構成され得る。いくつかの実施形態では、マップ更新モジュールは、それぞれの最適化された超曲面に基づいて、制御マップの各々の超曲面を更新するように構成され得る。各マップに対して最適化された超曲面を同時に計算することによって、マップ更新モジュールで利用可能な検索空間が増大する。従って、マップ更新モジュールによって計算される最適化された超曲面の性能は、利用可能なより大きな検索空間の結果として改善され得る。
【0022】
マップ更新モジュールは、複数のアクチュエーター設定点の候補グループに対するリアルタイム性能モデルを使用して、内燃エンジンのリアルタイム性能をモデル化し、計算されたモデル化されたリアルタイム性能に基づいて、最適化された超曲面を計算することによって、最適化された超曲面を計算するように構成され得る。
【0023】
いくつかの実施形態では、マップ更新モジュールは、オプティマイザーモジュール、エンジンモデリングモジュール、およびコストモジュールを含む。オプティマイザーモジュールは、最適化された超曲面を検索するように構成され、オプティマイザーモジュールは、複数のアクチュエーター設定点の候補グループをエンジンモデリングモジュールに提供する。エンジンモデリングモジュールは、入力変数、内燃エンジンからのセンサーデータ、およびアクチュエーター設定点の候補グループに基づいて、アクチュエーター設定点の各候補グループに関連付けられる複数のエンジン性能変数を計算するように構成される。コストモジュールは、エンジン性能変数を評価し、アクチュエーター設定点の各候補グループに関連付けられるコストをオプティマイザーモジュールに出力するように構成される。オプティマイザーモジュールは、アクチュエーター設定点の候補グループおよび関連するコストに基づいて、少なくとも一つの制御マップに対して最適化された超曲面を計算するように構成される。このように、オプティマイザーモジュールは、マップ更新モジュールが最適化された超曲面に基づいて制御マップを更新するように、最適化された超曲面を出力し得る。従って、マップ更新モジュールは、制御マップで使用される入力変数に加えて、内燃エンジンからのセンサーデータを含む、内燃エンジン(すなわち、エンジンモデリングモジュール)のリアルタイム性能モデルに基づいて、最適化された超曲面を計算するように構成され得る。
【0024】
オプティマイザーモジュールは、制御マップの各々に対して最適化された超曲面を検索するように構成され得る。従って、アクチュエーター設定点の各候補グループは、更新される制御マップのそれぞれに対するアクチュエーター設定点を含む。オプティマイザーモジュールは、アクチュエーター設定点の候補グループおよび関連するコストに基づいて、各制御マップに対して最適化された超曲面を計算し、各制御マップに対して最適化された超曲面を出力するように構成され得る。従って、マップ更新モジュールは、対応する最適化された超曲面に基づいて、各制御マップを更新するように構成される。
【0025】
オプティマイザーモジュールは、複数のオプティマイザー関数を含んでもよく、各オプティマイザー関数は、他のオプティマイザー関数とは独立して、最適な超曲面を検索するよう構成される。各オプティマイザー関数は、異なる速度で、更新された制御超曲面を出力するように構成され得る。すなわち、オプティマイザー関数は、第一の計算期間を有する第一の関数、第二の計算期間を有する第二の関数、第三の計算期間を有する第三の関数、および第n′の計算期間を有する第n′の関数を含んでもよい。例えば、オプティマイザー関数は、第一の期間内の現在状態に基づいて更新された制御超曲面を出力するように構成される第一の関数(例えば、瞬時状態オプティマイザー関数)、および第二の期間内の収束状態に基づいて更新された制御超曲面を出力するように構成される第二の関数(例えば、収束状態オプティマイザー関数)を含み得る。収束状態オプティマイザー関数は、例えば、IMAPなどの収束状態動作点に対してより有意(優勢)な影響を有する制御マップを出力するように構成され得る。一実施形態では、第一の期間は、第二の期間よりも短くてもよい。従って、制御マップは、異なる速度で更新され得る。
【0026】
コストモジュールは、複数のコストパラメーターに基づいてエンジン性能変数を評価するように構成され得る。コストパラメーターは、アクチュエーター設定点の候補グループに対するコストを計算するために、コストモジュールに重みまたは制限を提供し得る。コストパラメーターは、時間変動するコストパラメーターを含んでもよい。例えば、コストは、内燃エンジンに接続される後処理システムからの入力に基づいて変化し得る。
【0027】
いくつかの実施形態では、アクチュエーター設定点の一つの候補グループは、エンジン設定点モジュールの制御信号出力に基づいてもよい。従って、オプティマイザーモジュールは、オプティマイザーによる検討のための候補グループとして、現在の制御マップ設定点を含み得る。現在の制御マップの設定点は、以前に計算された最適化された超曲面に基づいてもよいことが理解されよう。従って、マップ更新モジュールは、以前に最適化された超曲面の形状のメモリーを組み込み得る。
【0028】
本開示の第二の態様によれば、内燃エンジンを制御する方法が提供される。方法が、
(i)複数の制御マップを提供することであって、各制御マップが内燃エンジンコントローラーへの複数の入力変数に基づいて、内燃エンジンのアクチュエーターを制御するためのアクチュエーター設定点の超曲面を画定するように、提供することと、
(ii)複数の入力変数によって画定される制御マップの超曲面上の位置に基づいて、制御信号を各アクチュエーターに出力することと、
(ii)制御マップの少なくとも一つに対して最適化された超曲面を計算することであって、最適化された超曲面が、内燃エンジンからのセンサーデータを含む内燃エンジンのリアルタイム性能モデルに基づいて計算されるように、計算することと、最適化された超曲面に基づいて、制御マップの超曲面を更新することとを含む、制御マップのうちの少なくとも一つを更新することとを含む。
【0029】
従って、本開示の第二の態様の方法は、本開示の第一の態様の内燃エンジンコントローラーによって行われてもよい。このように、第二の態様の方法は、本開示の第一の態様の内燃エンジンコントローラーと関連付けられる利点の全てを有し得る。第二の態様はまた、この第一の態様について上述した任意の随意的な特徴のいずれかに対応する方法特徴を組み込み得る。
【図面の簡単な説明】
【0030】
ここで、本発明は、以下の非限定的な図に関して記述される。本開示のさらなる利点は、以下の図と併せて考慮されるとき、詳細な説明を参照することによって明らかである。
【0031】
【
図1】
図1は、本開示の実施形態による、内燃エンジンおよび内燃エンジンコントローラーを含むシステムのブロック図を示す。
【
図2】
図2aは、本開示の実施形態による早見表制御マップの例を示す。
図2bは、
図2aの早見表制御マップの例によって画定される超曲面のグラフィック表現である。
【
図3】
図3は、本開示の実施形態による内燃エンジンコントローラーのブロック図を示す。
【
図4】
図4a、
図4b、および
図4cは、性能異議関数、排出関数、およびエンジン制約関数それぞれに対する適切な関数のグラフィック表現を示す。
【
図5】
図5は、本開示のさらなる実施形態による内燃エンジンコントローラーのブロック図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本開示の実施形態による内燃エンジン1および内燃エンジンコントローラー10の一般的なシステム図が
図1に示される。
【0033】
内燃エンジンコントローラー10は、プロセッサーおよびメモリーを含んでもよい。このように、内燃エンジンコントローラー10は、当技術分野で公知の任意の適切なコンピューティングデバイス上に実装され得る。内燃エンジンモジュールは、一つまたは複数のプロセッサーおよび集積メモリーを含む専用エンジン制御ユニット(例えば、エンジン制御モジュール)上に提供され得る。内燃エンジンコントローラー10は、本開示の制御スキームを実施するために、さまざまな入力および出力に接続され得る。このように、内燃エンジンコントローラー10は、さまざまな入力変数信号、センサーデータ、および制御スキームで使用され得る任意の他の信号を受信するように構成され得る。例えば、内燃エンジンコントローラー10は、エンジン速度、気圧、周囲温度、IMAP、入口マニホールド空気温度(IMAT)、EGR質量率(またはEGR質量推定値を導出するために使用されるセンサー)、燃料レール圧力、および/または空気システムのバルブ位置、燃料質量の推定値、などのエンジンセンサーデータおよび/またはエンジン出力NOx(例えば、正味表示特定NOx)、テールパイプNOx、ディーゼル粒子フィルターすすセンサー(差圧センサーおよび/またはRFすすセンサー)、ディーゼル酸化触媒の入口温度、および/またはSCRの入口温度、などの後処理センサーデータを受信するように構成され得る。
【0034】
図1に示すように、内燃エンジンのアクチュエーターは、複数のエンジンアクチュエーター設定点によって制御される。エンジンアクチュエーター設定点は、内燃エンジンコントローラー10によって制御される。
図1の実施形態では、制御されるエンジンアクチュエーターは、EGR、SOI、燃料質量、およびIMAPである。当然のことながら、他の実施形態では、制御されるエンジンアクチュエーターは変化し得る。
【0035】
図1に示すように、内燃エンジンコントローラーは、エンジン設定点モジュール20を含む。エンジン設定点モジュール20は、エンジン設定点モジュール20複数の制御マップ30および入力変数に基づいて、制御信号を各アクチュエーターに出力するように構成される。従って、エンジン設定点モジュール20の動作は、先行技術で公知のオープンループ、エンジンマップベースの制御スキームと類似している。このようなオープンループ制御スキームは、より複雑なモデルベースの制御スキームと比較して、比較的小さな計算要件を有する。
【0036】
エンジン設定点モジュール20への入力変数は、内燃エンジンの現在の動作に由来する異なる変数の組み合わせであり得る。入力変数の一部は、内燃エンジンの性能要求に基づいてもよい。入力変数の一部は、例えば、さまざまなセンサーによって測定されるように、内燃エンジンの現在の動作状態に基づいてもよい。入力変数は、制御マップに基づいてアクチュエーター設定点を決定するために使用されるので、制御マップ当たりの入力変数の総数は、内燃エンジンコントローラー10に利用可能な計算リソースによって制限され得ることが理解されよう。
【0037】
図1の実施形態では、入力変数は、要求トルク(TqR)、現在のエンジン速度(N)、および現在のIMAPである。他の実施形態では、現在のEGR(すなわち、EGR弁の現在の位置)などの他の入力変数を使用し得る。
【0038】
一般に、内燃エンジンに関連付けられるいくつかの制御アクチュエーターは、それらに関連付けられるいくらかのタイムラグを有し得ることが理解されよう。そのため、要求されたアクチュエーター設定点(例えば、要求されたIMAP)の変化と、センサー(すなわち、現在のIMAPのセンサー読み取り)によって記録される変化との間のいくらかの時間遅延があり得る。
【0039】
複数の制御マップ30の各々は、一つまたは複数の入力変数とアクチュエーター設定点との間の関係を画定する。
図1の実施形態では、四つの制御マップ30が提供され、一つは、EGR、SOI、燃料質量、および要求されたIMAP(IMAPR)の各々を制御するためのものである。制御マップ30の各々は、TqR、Nおよび現在のIMAP(IMAPC)のうちの一つまたは複数に基づいて、エンジンアクチュエーター設定点を画定し得る。例えば、EGR制御マップは、TqR、N、およびIMAPCに基づいて、アクチュエーター設定点の超曲面を画定し得る。従って、TqR、N、およびIMAPCの組み合わせは、EGRに対するアクチュエーター設定点を計算できる超曲面の位置を画定する。同様に、SOIおよび燃料質量の制御マップ30は、TqR、N、およびIMAPCの関数である超曲面によっても画定され得る。
図1の実施形態におけるIMAPRの制御マップは、TqRおよびNの関数である超曲面によって画定され得る。そのため、異なる制御マップは、異なる次元数を有し得る。
【0040】
図1の制御マップ30の各々は、早見表として実装され得る。エンジンコントローラーの早見表制御マップ30は、当該技術分野で周知である。例示的な早見表制御マップ31を
図2aに示す。
図2aに示される早見表制御マップ31は、二つの入力次元および単一の出力次元を有する。従って、
図2aの実施形態では、制御マップ31は、二次元制御マップであり、列挙された次元の数が、入力次元の数によって決定される。
図2aの制御マップ31は、入力変数1(すなわち、第一の入力変数)および入力変数2(第二の入力変数)を含む。早見表は、入力変数1と入力変数2の異なる組み合わせに対して、複数の値(アクチュエーター設定点)を画定する。従って、早見表制御マップ31は、入力変数1および2の値に基づいてアクチュエーター設定点を選択するために使用され得る。
図2bは、早見表制御マップ31内の値によって画定される超曲面のグラフィック表現である。当技術分野で公知のように、早見表に画定された設定点の補間を使用して、一つまたは複数の入力変数が早見表に格納される値と厳密に一致しない、超曲面上の位置を見つけることができる。
【0041】
他の実施形態では、代替的な手段を使用して、各制御マップ30の超曲面を記述することができる。例えば、超曲面は、入力変数の関数として画定され得る。超曲面を画定するための適切な多次元関数は、ユニバーサル近似関数であり得る。好適なユニバーサル近似関数には、人工ニューラルネットワーク(例えば、放射状基底関数、多層パーセプトロン)、多変量多項式、ファジー論理、不規則な補間、クリングが含まれ得る。
【0042】
複数の制御マップ30は、内燃エンジンコントローラー10のさまざまな処理モジュールが制御マップ30にアクセスできるように、内燃エンジンコントローラー10のメモリーに記憶され得る。
【0043】
図1に示すように、内燃エンジンコントローラー10はまた、マップ更新モジュール40を含む。マップ更新モジュール40は、制御マップ30の少なくとも一つに対して最適化された超曲面を計算するように構成される。
図1の実施形態では、マップ更新モジュール40は、制御マップ30の各々に対して最適化された超曲面を同時に計算する。マップ更新モジュール40は、最適化された超曲面に基づいて、制御マップ30の超曲面を更新するように構成される。従って、一つまたは複数の制御マップ30の超曲面は、内燃エンジン1の動作中に更新され得る。アップダブル制御マップ30のセットを提供することによって、異なる動作点の範囲に最適化され得る制御マップ30のセットが提供され得る。従って、内燃エンジン1に対して較正される必要のある制御マップの数は、本開示の更新可能な制御マップ30のセットが、別個の制御マップのセット(すなわち、複数の制御マップのセット)が過去に較正されたことがある、異なる動作点の範囲をカバーする、制御を提供し得るため、減少され得る。
【0044】
マップ更新モジュール40は、内燃エンジン1のリアルタイム性能モデルに基づいて、最適化された超曲面を計算するように構成される。リアルタイム性能モデルによって、計算(最適化)は、例えば、履歴エンジンデータのオフライン計算ではなく、リアルタイムに計算される、性能内燃エンジンのモデルに基づくことが理解される。リアルタイム性能モデルは、内燃エンジン1および複数の入力変数(すなわち、内燃エンジンへのリアルタイム入力変数)からのセンサーデータを使用する。このように、リアルタイム性能モデルは、制御マップを最適化するために、制御マップへの入力変数に加えて、内燃エンジンからの追加のセンサーデータを使用し得る。効果的に、本開示の内燃エンジンコントローラー10は、マップベースの制御の計算複雑さを著しく増加させない方法で、内燃エンジンの制御に追加的な変数(直接および/または間接のセンサーデータ変数)を組み込む。
【0045】
結果として、マップ更新モジュール40は、リアルタイム性能モデルを使用して、内燃エンジン1のリアルタイム性能を最適化する、最適化された超曲面を計算する。従って、マップ更新モジュール40は、最適化された超曲面を検索し得る。例えば、マップ更新モジュール40は、複数のアクチュエーター設定点の候補グループについて、内燃エンジンのリアルタイム性能をモデル化することによって、最適化された超曲面を検索し、モデル化されたリアルタイム性能に基づいて最適化された超曲面を計算し得る。
【0046】
例えば、マップ更新モジュール40は、IMAPR制御マップに対して最適化された超曲面を計算するように構成され得る。IMAPR制御マップ30は、エンジン速度(N)および要求トルク(TqR)の入力変数に基づいてもよい。マップ更新モジュール40は、複数のエンジンアクチュエーター設定点の候補グループに対する内燃エンジン1のリアルタイム性能をモデル化し得る。例えば、エンジンアクチュエーター設定点の候補グループには、SOI、燃料質量、要求EGR、およびIMAPRを含んでもよい。マップ更新モジュール40は、IMAPR制御マップ30に対して最適化された超曲面を検索するために、エンジンアクチュエーター設定点の各候補グループ間で、エンジンアクチュエーター設定点の一つまたは複数を変化させ得る。IMAPR制御マップ30のみが更新される一実施形態では、IMAPRのエンジンアクチュエーター設定点は、エンジンアクチュエーター設定点の候補グループのそれぞれの間で変化させられてもよい。各候補グループに対するモデル化されたリアルタイム性能結果に基づいて、マップ更新モジュール40は、IMAPR制御マップに対して最適化された超曲面を決定し得る。上で論じたように、最適化された超曲面は、制御マップ30によって画定される総超曲面の一部分のみであり得る。
【0047】
図3は、本開示の実施形態による内燃エンジンコントローラー12のより詳細なブロック図を示す。ブロック図は、エンジン設定点モジュール20およびマップ更新モジュール40を破線で示す。このように、内燃エンジンコントローラー10は、
図1に示す構造と類似の一般構造を有する。
【0048】
従って、
図1および対応する説明を参照すると、エンジン設定点モジュール20は、複数の入力変数によって画定される、それぞれの制御マップ30の超曲面上の位置に基づいて、複数のアクチュエーター設定点を出力するように動作することが理解されよう。
【0049】
マップ更新モジュール40は、オプティマイザーモジュール50、およびエンジンモデリングモジュール60およびコストモジュール70を含む。上述したように、マップ更新モジュール40は、一つまたは複数の制御マップ30に対して最適化された超曲面を計算するように構成される。本実施形態では、マップ更新モジュール40は、複数の制御マップ30に対して最適化された超曲面を計算するように構成される。例えば、
図3の実施形態では、SOI、燃料質量、要求EGR、およびIMAPRの各々の制御マップが提供される。SOI、燃料質量、およびEGR要求に対する制御マップ30はそれぞれ、入力変数エンジン速度(N)、要求トルク(TqR)、およびIMAPCの関数である。IMAPRの制御マップは、エンジン速度(N)と要求トルク(TqR)の関数である。
【0050】
オプティマイザーモジュール50は、制御マップ30の少なくとも一つについて、最適化された超曲面を検索するように構成される。本実施形態では、オプティマイザーモジュール50は、SOI、燃料質量、および要求EGRのそれぞれの制御マップ30に対して最適化された超曲面を同時に検索するように構成される。オプティマイザーモジュール50は、異なる時間でIMAPR用に最適化された超曲面を検索するように構成され得る。従って、マップ更新モジュール40は、全ての制御マップを同時に更新する必要はないことが理解されよう。他の実施形態では、オプティマイザーモジュールは、全ての制御マップを同時に更新し得ることが理解されよう。
【0051】
オプティマイザーモジュール50は、最適化された超曲面を検索するように構成され、オプティマイザーモジュール50は、複数のアクチュエーター設定点候補グループをエンジンモデリングモジュール60に提供する。アクチュエーター設定点の各候補グループは、効果的に、制御マップ30の各々の設定点のベクトルである。アクチュエーター設定点の候補グループは、更新される各制御マップ30に対するアクチュエーター設定点を含み得る。アクチュエーター設定点の候補グループはまた、マップ更新モジュール40によって現在更新されていない制御マップ30のアクチュエーター設定点を含んでもよい。例えば、
図3の実施形態では、アクチュエーター設定点の候補グループは、SOI、燃料質量、要求EGR、およびIMAPRの各々の設定点を含む。候補グループにIMAPRアクチュエーター設定点を含めることによって、この制御マップ30は更新されていないが、リアルタイム性能モデルの精度が改善され得る。本質的に、
図3の実施形態では、IMAPRの設定点は、時間不変の設定点として扱われる。オプティマイザーモジュール50によって更新されない制御マップ(例えば、IMAPRの制御マップ)は、他の手段によって更新され得る。以下でさらに論じるように、複数の異なるオプティマイザー関数が提供されて、異なる制御マップを更新し得る。
【0052】
オプティマイザーモジュール50は、アクチュエーター設定点の各候補グループをエンジンモデリングモジュール60に出力する。オプティマイザーモジュール50は、さまざまな方法でモデル化されるアクチュエーター設定点の候補グループを選択し得る。例えば、オプティマイザーモジュールは、グループの各候補に対して複数の本質的に無作為化されたアクチュエーター設定点を提供するために、許容アクチュエーター設定点の所定の範囲内で各アクチュエーター設定点をランダムに選択し、最低のコストまたは関数値を選択し得る。従って、アクチュエーター設定点の候補グループは、ランダムに選択される(無作為化検索戦略)。他の代替検索戦略については、以下でより詳細に論じる。オプティマイザーモジュールによって出力される候補グループの数は、最適化された超曲面を計算するために利用可能な計算リソースに基づく。理解されるように、マップ更新モジュール40は、内燃エンジンのリアルタイム性能に基づいて最適化された超曲面を出力するように構成される。
図3の実施形態では、マップ更新モジュールは、60ms以内で最適化された超曲面を出力するように構成される。従って、エンジンアクチュエーター設定点の単一の候補グループを処理するためにかかった処理時間は、単一の60ms期間内に出力され得る、可能性のある候補グループの数の上限を置くことになる。単一のエンジンアクチュエーター設定点の候補グループを処理するのにかかった処理時間は、以下でより詳細に説明するエンジンモデリングモジュール60およびコストモジュール70の特徴に依存する。典型的には、エンジンアクチュエーター設定点の単一の候補グループを処理するには、約0.1msかかってもよい。従って、
図3の実施形態では、エンジンアクチュエーター設定点の約200個の候補グループが、マップ更新モジュール40によって評価され、約20msかかってもよい。従って、最適化された超曲面を60ms以内で出力するように構成されるマップ更新モジュールについて、約30msの処理予算を、残りの処理および約10msのスラック時間に割り当てることができる。
【0053】
エンジンモデリングモジュール60は、アクチュエーター設定点の各候補グループに関連付けられる複数のエンジン性能変数を計算するように構成される。エンジンモデリングモジュール60への入力は、制御マップの複数の入力変数、ならびに内燃エンジンからのセンサー入力、およびアクチュエーター設定点の候補グループである。このように、エンジンモデリングモジュール60は、内燃エンジンのリアルタイム動作に関連付けられる複数の性能変数を含む。従って、エンジンモデリングモジュール60によって計算される複数のエンジン性能変数は、エンジンモデリングモジュール60のリアルタイム性能を表すことができる。従って、エンジンモデリングモジュール60は、リアルタイム性能モデルの例である。
【0054】
図3の実施形態では、エンジンモデリングモジュール60は、SOI、燃料質量、要求EGR、およびIMAPRのアクチュエーター設定点の候補グループを含む。また、エンジンモデリングモジュールは、内燃エンジンのセンサーからの複数のリアルタイムデータを含む。内燃エンジンからのセンサーデータは、内燃エンジンに関連付けられるさまざまなセンサーからの情報を含み得る。センサーデータはまた、内燃エンジンの一つまたは複数のセンサーからのデータに由来するさまざまな変数を含んでもよい。例えば、センサーデータは、入口マニホールド圧力、入口マニホールド温度、燃料レール圧力、背圧弁位置、質量EGRフロー、質量総気流、燃料質量フロー、燃料レール圧力(FRP)を含み得る。
【0055】
エンジンモデリングモジュール60は、アクチュエーター設定点の各候補グループに関連付けられる複数のエンジン性能変数を計算するように構成される一つまたは複数のモデルを含み得る。エンジンモデリングモジュール60への入力は、内燃エンジンへの入力変数およびセンサーデータを含むため、性能変数は、それらのアクチュエーター設定点に基づく内燃エンジンのリアルタイム性能を表すことが理解されよう。計算される性能変数には、エンジントルク、質量空気流、ブレーキ平均有効圧力(BMEP)、正味表示平均有効圧力(IMEP)、ポンピング平均有効圧力(PMEP)、摩擦平均有効圧力(FMEP)、排気マニホールド温度、ピークシリンダー圧力、NOx量(例えば、正味表示特定NOx(NISNOx)、ブレーキ表示特定NOx)、すす量(例:正味表示特定すす、ブレーキ表示の特定のすす)、NOx/すす比、最小フレッシュチャージ、EGRポテンシャルが含まれてもよい。
【0056】
いくつかの実施形態では、内燃エンジンコントローラーは、正味表示特定性能変数(例えば、IMEP、NISNOx)を計算する。IMEPは、エンジンサイクル全体にわたって内燃エンジンの平均有効圧力を反映する。対照的に、BMEPは、ブレーキトルクから計算された平均有効圧力である。いくつかの実施形態では、エンジンがアイドリングである時でさえ、これらの値はゼロではないので、正味表示特定値(例えば、IMEP、NISNOX)を使用し得る。
【0057】
本開示では、正味表示特定NOx(NISNOx)およびブレーキ表示特定NOxは、後処理システムにおける処置の前に、内燃エンジンによって出力されるNOx量を指すことがさらに意図される。当然のことながら、当業者は、NOx量も後処理システムの下流で推定され得ること(例えば、テールパイプNOx)を理解するであろう。
【0058】
上記の性能変数と、エンジンモデリングモジュールに提供される入力との間の物理的関係は、当業者に周知である。このように、エンジンモデリングモジュールは、上記性能変数のうちの一つまたは複数を計算するために、一つまたは複数の物理学ベースのモデルを提供し得る。物理学ベースのモデルの代替として、エンジンモデリングモジュールはまた、経験/ブラックボックスモデル、または経験ベースモデルと物理学ベースのモデルの組み合わせ(すなわち、半物理/グレーボックスモデル)を使用して、上記の性能変数のうちの一つまたは複数を計算し得る。
【0059】
例えば、エンジンモデリングモジュール60は、平均値エンジンモデルを含み得る。平均値エンジンモデルは、BMEP、エンジントルク、質量空気流などのエンジン性能パラメーターをモデル化するために当業者に周知である。本開示の使用に適した平均値エンジンモデルのさらなる説明は、Urs Christen et al,SAE Technical Paper Seriesによる「コントローラー設計のためのDIディーゼルエンジンのイベントベースの平均値モデリング」で見出され得る。従って、平均値エンジンモデルを使用して、エンジンモデリングモジュール60への入力に基づいて、エンジン性能変数を計算し得る。
【0060】
平均値モデルの使用に加えて、または代替として、エンジンモデリングモジュール60は、一つまたは複数のエンジン性能変数を計算するための一つまたは複数のニューラルネットワークベースのモデルを含み得る。例えば、正味表示特定NOx(NISNOx)エンジン性能変数は、適切に訓練されたニューラルネットワークを使用して、センサーデータから計算され得る。ニューラルネットワークを使用してNISNOxなどのエンジン性能変数を計算するための適切な手法の詳細については、Michele Steyskal et al、SAE Technical paperseriesによる「大口径天然ガスエンジンからのNOx排出量を予測するためのPEMSモデルの開発」を参照し得る。
【0061】
一つまたは複数の内燃エンジン構成要素の物理学ベースのモデルが提供され得る。例えば、適切な性能変数を計算するのを助けるために、コンプレッサーモデル、タービンモデル、または排気ガス再循環冷却器モデルが提供され得る。
【0062】
エンジンモデリングモジュール60は、エンジン性能変数をコストモジュール70に出力する。コストモジュール70は、エンジン性能変数を評価し、性能変数に基づいてアクチュエーター設定点の各候補グループに関連付けられるコストを出力するように構成される。
図3の実施形態では、コストモジュールは、オプティマイザーモジュール50を出力するように構成される。他の実施形態では、アクチュエーター設定点の各候補グループに関連するコストの評価は、オプティマイザーモジュール50とは別個のさらなるモジュールによって行われてもよい。
【0063】
コストモジュール70は、エンジンの性能を評価するために、さまざまな性能目標にコストを割り当てるように構成される複数の関数を含んでもよい。各コスト関数は、一つまたは複数のエンジン性能変数および一つまたは複数のコストパラメーターに基づいて、コストを出力し得る。例えば、複数の関数は、一つまたは複数の性能目的関数、一つまたは複数の排出関数、および一つまたは複数のエンジン制約関数を含んでもよい。複数の関数の各々は、一つまたは複数の性能変数および一つまたは複数のコストパラメーターの関数に基づいて、コストを出力するように構成され得る。コストパラメーターは、各性能パラメーターに関連するコストの大きさを決定する。
図3の実施形態では、コスト関数は、より低いコストがより最適な性能と関連付けられるように構成される。
【0064】
性能目的関数は、特定の性能目的を満たすために内燃エンジンを最適化するように構成される関数であり得る。例えば、性能目的は、ブレーキ特定燃料消費量(BSFC)または正味表示特定燃料消費量(NISFC)を最小化することであり得る。さらなる性能目的は、トルク誤差(すなわち、実際の出力トルクと要求トルクとの間の差)を最小化することであり得る。こうした形態の性能目的関数は、重み付き二乗法則関係を有する関数(すなわち、Cost=Weight*(性能変数)^2の形態)によって表され得る。従って、性能目的関数の場合、性能目的関数の重みはコストパラメーターである。適切な性能目的関数のグラフィック表現を
図4aに示す。例えば、NISFC(Cost
NISFC)の性能目的は、
Cost
NISFC=Weight
NISFC*NISFC^2であり得る。
【0065】
排出関数は、内燃エンジンによって生成される排出物に関連して特定の目的を満たすために、内燃エンジンを最適化するように構成される関数であり得る。例えば、一つまたは複数の排出関数は、内燃エンジンによって生成される排出物に関連するエンジン性能変数に基づいて提供され得る。従って、一つまたは複数の排出関数は、NOx量(NISNOx、すす(NISCF)、NOxすす比、最小フレッシュ電荷、および/またはEGR電位に基づいてもよい。排出関数は、任意の適切な関数を使用して、コストとエンジン性能変数との間の関係を画定し得る。例えば、
図3の実施形態では、排出関数は、一辺の正方形の法則関数として提供され得る。適切な排出関数のグラフィック表現を
図4bに示す。
【0066】
例えば、排出関数は、標的上限(T)を含み得る。標的上限は、それを超えると発生するコストが有意となるエンジン性能変数の値を画定することができ、標的上限を下回る値については、コストなし、または最小コストが発生する。例えば、一部の内燃エンジンについては、NISNOxの標的上限は4g/kWhとし得る。従って、排出関数に対して、標的上限および/または重量は、コストパラメーターとし得る。他の実施形態では、標的限界は、標的下限として提供され得る。
【0067】
従って、エンジン性能変数NISNOxに基づく排出関数(CostNOx)は、
NISNOx<Tのとき、CostNOx=0、
NISNOx≧Tのとき、CostNOx=WeightNOx*(NISNOx-T)^2であってもよい。
【0068】
エンジン制約関数は、内燃エンジンの性能に関連する制約を反映するように構成される関数であり得る。従って、コントローラーが特定のエンジンアクチュエーター設定点で動作することを妨げ、または防止するために、一つまたは複数のエンジン制約関数が提供され得る。例えば、一つまたは複数のエンジン制約関数は、内燃エンジンの物理的要件のために超えることができない固定限界を有するエンジン性能変数に基づいてもよい。このように、一つまたは複数のエンジン制約関数は、ピークシリンダー圧力(PCP)、排気マニホールド温度、コンプレッサー出口温度に基づいてもよい。また、最大トルク誤差などの望ましい固定限界を有し得るさらなるエンジン性能変数は、対応するエンジン制約関数を有し得る。各エンジン制約関数は、任意の適切な関数を使用して、コストと一つまたは複数のエンジン性能変数との間の関係を画定し得る。例えば、
図3の実施形態では、エンジン制約関数は、Cost=1/エンジン性能変数の形態で提供され得る。適切なエンジン制約関数のグラフィック表現を
図4cに示す。
【0069】
例えば、エンジン性能変数PCPに対するエンジン制約関数は、制限Lに基づいて提供され得る。エンジン制約関数によって計算されたコストは、制限Lが近づくにつれて非対称的に上昇し得る。従って、限界Lはまた、コストパラメーターであり得る。従って、エンジン性能変数PCPに基づくエンジン制約関数(CostPCP)は、
CostPCP=1/(L-PCP)であり得る。
【0070】
上述のように、性能目的関数、排出関数、およびエンジン制約関数に関して、さまざまなコストパラメーターが記述される。コストパラメーターは、例えば、コストパラメーターベクトルとして、コストモジュール70によって保存され得る。いくつかの実施形態では、コストパラメーターは、時間変化であり得る。すなわち、いくつかの実施形態では、コストモジュール70は、異なるエンジン性能変数に関連付けられる相対コストの変化をもたらすために、一つまたは複数のコストパラメーターを更新し得る。例えば、コストモジュール70は、以下に記載されるように、後処理システムの再生を開始するために、一つまたは複数のコストパラメーターを更新し得る。
【0071】
従って、コストモジュール70は、上で計算された各コスト関数によって計算されたコストに基づいて、アクチュエーター設定点の各候補グループに関連付けられる総コストを計算し得る。アクチュエーター設定点の各候補グループに関連付けられる総コストは、さらなる処理のためにオプティマイザーモジュール50に提供され得る。
【0072】
オプティマイザーモジュール50は、アクチュエーター設定点の候補グループおよび関連するコストに基づいて、少なくとも一つの制御マップ30に対して最適化された超曲面を出力するように構成される。従って、アクチュエーター設定点の各候補グループに対する総コストに基づいて、オプティマイザーは、最適な性能を有するアクチュエーター設定点のグループを識別し得る。例えば、総コストが最も低いアクチュエーター設定点の候補グループは、最適な性能を提供し得る。従って、オプティマイザーモジュール50は、アクチュエーター設定点の候補グループに基づいて制御マップ30を更新し得る。このように、制御マップは、マップ更新モジュール40によって使用される入力変数(すなわち、リアルタイム入力変数)に対するアクチュエーター設定点の候補グループのアクチュエーター設定点を提供するために更新され得る。
【0073】
従って、
図3に示す図に従った内燃エンジンコントローラー12が提供され得る。
【0074】
無作為化検索戦略の代替として、他の検索戦略がオプティマイザーによって採用され得る。例えば、アクチュエーター設定点の候補グループは、反復検索戦略に従って選択され得る。反復検索戦略の一部として、アクチュエーター設定点の候補グループの第一のセットを特定し、上述のように分析して、関連コストを決定し得る。次いで、オプティマイザーモジュール50は、アクチュエーター設定点の第一のセットおよび関連するコスト(すなわち、候補グループの第一のセットの最低コストの候補グループに基づいて)に基づいて、アクチュエーター設定点の候補グループの第二のセットを選択し得る。適切な検索反復検索戦略の例としては、遺伝的アルゴリズム、シンプレックス、確率最適化、および/またはスウォームアルゴリズムが挙げられる。
【0075】
図5は、本開示の実施形態による内燃エンジンコントローラー14のさらに詳細なブロック図を示す。
【0076】
ブロック図は、エンジン設定点モジュール20およびマップ更新モジュール40を破線で示す。このように、内燃エンジンコントローラー14は、
図1に示す構造と類似の一般構造を有する。さらに、ブロック図は、マップ更新モジュール40が、オプティマイザーモジュール50、エンジンモデリングモジュール60およびコストモジュール70を含むことを示す。このように、マップ更新モジュール40はまた、
図3に示され、上記支持説明で論じた構造と類似した一般構造を有する。従って、内燃エンジンコントローラー14の機能性は、上述の内燃エンジンコントローラー10、12と類似し得ることが理解されよう。
【0077】
図5に示すように、オプティマイザーモジュール50は、制御マップ30からの入力を組み込むようにさらに変更され得る。オプティマイザーモジュール50は、エンジン設定点モジュール20の制御信号出力に基づいて、アクチュエーター設定点の一つの候補グループを選択するように構成される。このように、内燃エンジンコントローラー14によって出力される電流制御信号は、アクチュエーター設定点の候補グループの一つとして評価されるために、マップ更新モジュール40に提供され得る。従って、マップ更新モジュール40は、最適化された超曲面を計算する際に、制御マップ30によって画定される現在の超曲面上の位置を評価し得る。
【0078】
当業者によって理解されるように、エンジン設定点モジュール20の出力は、マップ更新モジュール40によって以前に更新される制御マップ30に基づいてもよい。従って、エンジン設定点モジュール20の制御信号出力に基づくアクチュエーター設定点の候補グループは、以前に計算された最適な超曲面を反映し得る。このように、内燃エンジンコントローラー14は、以前に計算された最適な超曲面が、オプティマイザーモジュール50によって評価されるアクチュエーター設定点の候補グループに影響を与え得る、メモリーの形態を効果的に組み込み得る。
【0079】
図5に示すように、オプティマイザーモジュール50は、複数のオプティマイザー関数51、52を含んでもよい。
図5の実施形態では、オプティマイザーモジュール50は、二つのオプティマイザー関数、現在状態オプティマイザー関数51(短期オプティマイザー関数)、および収束状態オプティマイザー関数(長期オプティマイザー関数)52を含む。
【0080】
オプティマイザー関数51、52の各々は、他のオプティマイザー関数とは独立して、最適な超曲面を検索するように構成される。このように、オプティマイザー関数51、52の各々は、
図3の実施形態について記載したように、オプティマイザーモジュール50と実質的に同じ様式で、エンジンモデリングモジュール60およびコストモジュール70と通信するように構成され得る。
【0081】
複数のオプティマイザー関数51、52は、異なる速度で、更新された制御超曲面を出力するように構成され得る。効果的に、最適化関数の一部は、他のオプティマイザー関数と比較してより速い速度で最適化された超曲面を検索するために、増加した計算時間/リソースを含む。例えば、
図5の現在状態オプティマイザー51は、内燃エンジン1の現状に基づいて最適化された超曲面を検索するように構成され得る。
図5の収束状態オプティマイザー52は、内燃エンジン1の収束状態に基づいて最適化された超曲面を検索するように構成され得る。
【0082】
図5の実施形態では、収束状態オプティマイザー関数52は、制御マップの第一の選択を更新するように構成される。現在状態オプティマイザー関数51は、制御マップの第二の選択を更新するように構成される。収束状態オプティマイザー関数52によって更新される制御マップ30の第一の選択は、内燃エンジン1の収束状態に対して比較的大きな影響を与える場合がある、制御アクチュエーターを制御する。内燃エンジン1の収束状態に対して比較的大きな影響を有し得る第一の選択のこうした制御アクチュエーターは、典型的には、比較的低い特性周波数を有する周波数応答を有する。制御マップの第二の選択は、システム全体の周波数応答を支配し、他の変数を制約する他のアクチュエーターによって制約され、かつ他のアクチュエーターよりも高い周波数応答を有するアクチュエーターに対する制御マップを含んでもよい。このように、収束状態オプティマイザー関数52は、制御マップの第二の選択によって制御されるアクチュエーターと比較して、より低い特性周波数を有するアクチュエーターの制御マップを最適化する。
【0083】
例えば、収束状態オプティマイザー関数52は、IMAPRの制御マップを更新することができ、一方で、現在状態オプティマイザー関数51は、燃料質量およびEGRの制御マップを更新することができる。燃料質量およびEGRの最適なアクチュエーター設定点は、エンジンへの総質量流量によって影響を受けることが理解されよう。エンジンへの総質量流量は、次に、IMAPの影響を受け得る。次にIMAPRの制御マップによって制御される、IMAPは、EGRおよび燃料質量と比較して、比較的低い特性周波数を有する。従って、IMAPRの制御マップは、内燃エンジン1の収束状態最適動作点に比較的有意な効果を有し得る。対照的に、比較的高い特性周波数を有する燃料質量およびEGRのアクチュエーター設定は、内燃エンジンの現状に基づいて最適化され得る。
【0084】
図5の実施形態では、現在状態オプティマイザー関数51は、制御マップ30の選択を更新するように構成される。制御マップ30は、内燃エンジン1の現状に対してより重大な影響を与える場合がある、現在状態オプティマイザー関数51の制御アクチュエーターによって更新される。例えば、現在状態オプティマイザー関数51は、SOI、燃料質量、および要求EGRの制御マップを更新し得る。これらのアクチュエーター設定点の変動は、典型的には、比較的短い期間で内燃エンジンの性能に影響を及ぼす。すなわち、これらのアクチュエーターは、マップ更新モジュール40の特徴的計算頻度と類似またはそれ以上の特性周波数を有する。例えば、マップ更新モジュールは、現在状態オプティマイザー51によって実行される計算の頻度と等しい、特徴的な計算頻度を有し得る。このように、現在状態オプティマイザー関数51は、マップ更新の頻度に対して、ほとんど、またはタイムラグのないアクチュエーターを更新する。
【0085】
図5の実施形態では、現在状態オプティマイザー関数51は、500ms以下の期間内に最適化された超曲面を計算するように構成され得る。いくつかの実施形態では、現在状態オプティマイザー関数51は、300ms、200ms、または100ms以下の期間内に最適化された超曲面を計算するように構成され得る。一実施形態では、現在状態オプティマイザー関数51は、60ms以下の期間内に最適化された超曲面を計算するように構成され得る。
【0086】
図5の実施形態では、収束状態オプティマイザー関数52は、1000ms以下の期間内に最適化された超曲面を計算するように構成され得る。いくつかの実施形態では、収束状態オプティマイザー関数52は、800ms、600ms、400、または200ms以下の期間内に最適化された超曲面を計算するように構成され得る。一実施形態では、収束状態オプティマイザー関数52は、120ms以下の期間内で最適化された超曲面を計算するように構成され得る。
【0087】
図5に示すように、コストモジュール70は、後処理システムからの追加入力を含む。従って、コストモジュール70は、アクチュエーター設定点の各候補グループの性能を評価する際に、後処理システムによって生成されるデータを組み込むことができる。
【0088】
コストモジュール70は、後処理システムからのデータを利用して、少なくとも一部のコスト関数を更新し得る。従って、後処理システムからのデータは、各エンジン性能変数に関連付けられる相対的な重みを適合させるために使用され得る。このように、コスト関数は、低燃料消費量の優先順位設定から、高排気温度の優先順位設定へと更新され得る。
【0089】
例えば、コストモジュール70は、後処理システムの再生が実施されると決定するために、後処理システムからのデータを利用し得る(例えば、ディーゼル微粒子フィルターの再生が必要であるという後処理システムからの表示)。コストモジュール70は、後処理システムの再生を実施するために、モデルのコスト関数の一部を更新し得る。例えば、排気最小温度を制御するために、コスト関数(例えば、性能目的関数)が提供され得る。後処理システムを再生成するために、排気温度の最小値ペナルティを増加(例えば、400℃に)して、オプティマイザーが、排気温度を増加させる最適化された超曲面を計算することを促し得る。内燃エンジンは、このような排気温度に達することができない場合があるが、この値からの偏差を最小化する解決策を見つけることが促される。後処理熱管理が不要な場合、排気温度最小ペナルティを無視できる値(例えば、-180℃)に設定し得る。従って、必須でない場合、コスト関数はこの用語を考慮しない。
【0090】
他の実施形態では、コストモジュール70は、後処理システムの再生を引き起こすために、コスト関数の重みを適合させ得る。このように、コスト関数は、低燃料消費量を優先する選択から、例えば、コスト関数(複数可)に関連する一つまたは複数の値を変更することによって、高排気温度を優先する選択へと更新され得る。
【0091】
他の実施形態では、コストモジュール70は、内燃エンジンの排出に関連する後処理システムから受信した排出データを記憶し得る。コストモジュール70は、排出データを利用して、内燃エンジンの排出性能を監視し得る。いくつかの実施形態では、コストモジュール70は、監視された排出性能に基づいて、排出関数のうちの一つまたは複数を調整し得る。従って、内燃エンジンコントローラー14は、さまざまな排出規制に適合する様式で内燃エンジンを制御するように構成され得る。排出規制は、内燃エンジンの運転場所に応じて変化し得ることが理解されよう。事前に特定の排出目標に準拠するために個別に較正され得る、時間不変制御マップとは異なり、内燃エンジンのコストモジュール70は、必要に応じて現地の排出規制に準拠するために更新され得る。従って、内燃エンジンコントローラー14の較正要件が低減され得る。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本開示の内燃エンジンコントローラー10、12、14は、さまざまな構成で内燃エンジンを制御するように構成され得る。
【0093】
一つの用途は、
図1に示すように、内燃エンジンのアクチュエーター設定点を制御するためのものであり得る。内燃エンジンは、例えば、車両または機械の一部に取り付けてもよく、または発電機の一部を形成し得る。