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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】鼻栓
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/24 20060101AFI20241016BHJP
   A61F 13/20 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
A61F13/24
A61F13/20 100A
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021566576
(86)(22)【出願日】2020-05-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-25
(86)【国際出願番号】 SE2020050491
(87)【国際公開番号】W WO2020231317
(87)【国際公開日】2020-11-19
【審査請求日】2023-04-18
(31)【優先権主張番号】1950566-8
(32)【優先日】2019-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】521489012
【氏名又は名称】ホグネ アーベー
【氏名又は名称原語表記】HOGNE AB
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100225543
【弁理士】
【氏名又は名称】上原 真
(72)【発明者】
【氏名】スザンヌ アーンブラド
(72)【発明者】
【氏名】ピーター アーンブラド
【審査官】嘉村 泰光
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102011110583(DE,A1)
【文献】特許第6499361(JP,B1)
【文献】米国特許第10736792(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の鼻血を処置するための鼻栓(1)であって、
前記鼻栓(1)は、胴部(10)と、中空管状部材(20)と、を備え、
前記胴部(10)は、前記患者の鼻孔(2)に収まるように適合され、使用中に内側を向くように配置される第1端部(11)と、使用中に外側を向くように配置される第2端部(12)と、を備え、
前記中空管状部材(20)は、前記胴部の内部に配置され、使用中に内側を向く第1開口部(21)と、使用中に外側を向く第2開口部(22)と、を備え、前記中空管状部材(20)は、前記患者が開放空気通路を通じて呼吸することを可能にする該開放空気通路を提供し、
前記管状部材(20)は、患者の血液が前記鼻栓(1)の前記胴部(10)から漏れることを妨げるように適合されるカラー(25)をさらに備え、
前記カラー(25)は、完全に前記胴部(10)の内部に配置される、
鼻栓。
【請求項2】
前記胴部(10)は、前記管状部材(20)および前記カラー(25)を受け入れるように適合される凹部(15)を備える、請求項1に記載の鼻栓(1)。
【請求項3】
前記管状部材(20)の前記カラー(25)は、前記胴部(10)の第1端部(11)を向く凹部(26)と、前記胴部(10)の第2端部(12)を向く凸面(27)と、を有するカップ状である、請求項1または2に記載の鼻栓(1)。
【請求項4】
前記管状部材(20)は、前記胴部(10)の前記第2端部(12)から突出する、請求項1~3のいずれか1項に記載の鼻栓(1)。
【請求項5】
前記管状部材(20)の第1端部(23)が、前記胴部(10)の前記第1端部(11)の近位に配置される、請求項1~4のいずれか1項に記載の鼻栓(1)。
【請求項6】
前記鼻栓(1)の前記胴部(10)は、前記患者によって吸入される物質で被覆される、請求項1~5のいずれか1項に記載の鼻栓(1)。
【請求項7】
前記胴部(10)は弾性発泡材料から作製される、請求項1~6のいずれか1項に記載の鼻栓(1)。
【請求項8】
前記カラー(25)が前記胴部(10)内に配置されるときに外側に広がって前記胴部(10)を押すように、前記カラー(25)の横方向への延在が最大である場合の前記カラー(25)の幅は、前記胴部(10)の幅と実質的に等しく又はそれより大きい、請求項7に記載の鼻栓(1)。
【請求項9】
前記管状部材(20)は、軟質熱可塑性材料から作製される、請求項1~8のいずれか1項に記載の鼻栓(1)。
【請求項10】
前記胴部(10)および/または前記カラー(25)の断面が楕円形である、請求項1~9のいずれか1項に記載の鼻栓(1)。
【請求項11】
前記胴部(10)がベル状である、請求項1~10のいずれか1項に記載の鼻栓(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本解決手段は、鼻血を処置するための鼻栓に関する。
【背景技術】
【0002】
鼻血は、鼻出血としても知られており、鼻からの出血はよく起こることである。通常、鼻血は、血液が鼻孔を通じて排出される時に気づく。大半の鼻血は、鼻中隔から鼻の前部(正面部)で発生する。キーゼルバッハ叢として知られるこの領域には、4本の動脈の吻合に由来する血管が豊富に与えられている。鼻の後方における出血は、後部出血として知られており、通常、下鼻道の後部に位置する静脈叢であるウッドラフ叢からの出血が原因である。後部出血はしばしば長引き、コントロールが困難である。鼻血は、両方の鼻孔からの出血や、口腔内への血流の増加を伴う場合がある。
【0003】
鼻血は様々な理由によって起こる可能性がある。いくつかの最も一般的な原因には、鼻をほじることによる外傷、鈍的外傷(自動車事故など)、または異物の挿入(子供の方により起こりやすい)が含まれる。相対湿度(セントラルヒーティング式の建物を含む)、気道感染症、慢性副鼻腔炎、鼻炎または環境刺激物は、鼻の組織の炎症および菲薄化を引き起こし、鼻から出血する可能性をより高くするおそれがある。鼻血の原因のほとんどは、自然治癒するものであり、治療を必要としない。
【0004】
ほとんどの前部鼻血は、鼻に直接圧力をかけることによって止めることができ、このことは、血液の凝固を促進することによって役立つ。しかし、鼻血が長引く場合、鼻孔内の血管に対する圧力を増加させるために、血管の化学的焼灼、またはガーゼ若しくはしばしば栓の形状をとる発泡ポリマー材料を使用する鼻タンポン等の代替処置が必要となる場合がある。鼻タンポンは、鼻血を止めるには効果的だが、鼻孔を通る空気の通過も妨げ、したがって鼻を通じて呼吸する患者の能力を制限するという欠点を有する。そのため、鼻タンポンはしばしば不快感を伴い、長期間の使用には適していない。特許文献1は、このような鼻栓を開示している。
【0005】
鼻タンポンのもう1つの欠点は、長期間の使用後に、タンポン材料が飽和し、血液をそれ以上吸収できなくなる可能性があることである。これにより、鼻孔から望ましくないほどの過剰な血液が滴下するおそれがある。
【0006】
特許文献2が開示しているのは、丸め又は圧縮でき、その後鼻腔に圧力をかけることで鼻腔を拡張できる材料を備える鼻栓である。さらに、栓は、空気の通路である貫通孔/チューブと、栓の挿入および取り外しを容易にし、かつ栓が咽頭内に吸い込まれることを妨げるカラーと、を有する。
【0007】
したがって、従来技術の欠点を克服する改良された鼻栓が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】国際公開第2018/076118号
【文献】国際公開第2010/085196号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本解決手段の目的は、上記で概説した課題および問題の少なくともいくつかを処理することである。本開示による鼻栓を提供することによって、これらの目的および他の目的を達成することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の鼻栓は、異なる任意の実施形態に従って構成され、実施されてもよい。本解決手段において想定可能なさらなる特徴および利点は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【0011】
第1態様により、患者の鼻血の処置のための鼻栓が提供される。鼻栓は、胴部と、中空管状部材と、を備え、胴部は患者の鼻孔に収まるように適合され、使用中に内側を向くように配置される第1端部と、使用中に外側を向くように配置される第2端部と、を備え、中空管状部材は胴部の内部に配置され、使用中に内側を向くように配置される第1開口部と、使用中に外側を向くように配置される第2開口部と、を備え、管状部材は、患者の血液が鼻栓の胴部から漏れることを妨げるように適合されるカラーをさらに備え、カラーは、完全に胴部の内部に配置される。
【0012】
中空管状部材が胴部の中に配置される胴部を提供することによって、本開示は、患者が支障なく呼吸することを可能にする開放空気通路を維持しながら、鼻孔内の血管に圧力を加えて出血を止めるという二重の解決手段を提供する。さらに、管状部材のカラーは、胴部が飽和しているときに鼻栓の胴部から出てくる過剰な血液を効果的に保持するストッパを形成し、したがって滴下を妨げる。このようにして、コンパクトな鼻栓が達成される。さらに、カラーの剛性は、鼻栓の胴部を支持し、また胴部を外側に押す傘のように働いて、胴部に外向きに直接圧力をかけることを安定させ、かつ補助し、そして今度は、患者の鼻孔内の鼻血の部位に加わる圧力を増加させる。
【0013】
好ましい実施形態では、胴部が、管状部材およびカラーを受け入れるように適合される凹部を備える。凹部は、管状部材が密接に収まる状態で収容するように、実質的に円筒形であり得る。
【0014】
好ましい実施形態では、管状部材のカラーがカップ状であり、凹面が胴部の第1端部を向き、凸面が胴部の第2端部を向く。カラーのカップ形状は、カラーの縁から離れる過剰な血液を保持して過剰な血液が漏れることを妨げるお椀を形作る。
【0015】
好ましい実施形態では、管状部材が胴部の第2端部から突出する。したがって、管状部材の突出する第2(近位)端部は、鼻孔へ挿入する間および鼻孔から取り外す間、患者が鼻栓を容易に取り扱うことを可能にする取っ手として利用することができる。
【0016】
好ましい実施形態では、管状部材の第1端部が、胴部の第1端部の近位に配置される。言い換えれば、管状部材の第1端部および最遠位端部が胴部内に実質的にめり込むように、胴部は管状部材よりもさらに遠位に延在する。管状部材を胴部の第1端部の近位に配置することによって、挿入中に鼻粘膜を傷つける危険性が低減される。
【0017】
好ましい実施形態では、鼻栓の胴部が、患者によって吸入される物質で被覆される。物質は、薬および/または芳香化合物(例えば、止血を促進する止血剤および/またはメントール)を含み得る。メントールは、冷却/鎮静効果を有しており、鼻孔を通る気流を増加させ、かつ局所麻酔剤として作用し得る。患者が鼻栓を介して吸入する場合、空気は管状部材を通過する。その結果、第1開口部の近くに局所的な真空が形成される。この真空が、鼻栓の胴部から物質を引き出すように働き、物質を吸入空気と混合させる。
【0018】
カラーのさらなる利点は、患者によって吸入される物質が鼻栓から出ることを妨げることである。患者が鼻栓を介して息を吐く場合、空気は管状部材の第1開口部を再び通過する。吸入とは逆に、鼻孔内の、内側または鼻栓の近位の圧力が増加する。次いで、物質と一緒に吐かれた空気のごく一部は、鼻栓の胴部に入るが、カラーは、物質を胴部内に保持するように働く。
【0019】
好ましい実施形態では、胴部が弾性発泡材料から作製される。弾性発泡体材料は、患者から血液を吸収し、その優れた弾性特性のため、鼻孔に挿入された後で元の形状に戻り、それによって、使用中、鼻栓が鼻孔の壁と密接に接触したままであるようにする。
【0020】
好ましい実施形態では、カラーが胴部内に配置されるときに外側に広がって胴部を押すように、カラーの横方向への延在が最大である場合のカラーの幅が、胴部の幅と実質的に等しく又はそれより大きい。したがって、カラーの幅は、横方向の延在に沿って胴部を外側に押すことになる。このように、鼻栓は、鼻孔の側壁を支えて、鼻血の部位(例えば、キーゼルバッハ神経叢)に対する圧力を増加させることになる。
【0021】
好ましい実施形態では、管状部材が、可撓性熱可塑性材料から作製される。管状部材の熱可塑性材料は、好ましくは、胴部の材料よりもわずかに堅いが、挿入中および使用中の損傷および不快感を回避するのに十分な可撓性がある。好ましくは、患者が呼吸するための通路を提供するために、管状部材に弾力性があり、管状部材は、元の直線形状に戻ろうとする。
【0022】
好ましい実施形態では、胴部および/またはカラーの断面が楕円形である。使用中、鼻栓が密接して快適に収まるようにするために、楕円形は、鼻孔の形状に適合するように構成される。
【0023】
好ましい実施形態では、胴部がベル状である。使用中、鼻栓が密接して快適に収まるようにするために、ベル形状は、鼻孔の形状に適合するように構成される。
【0024】
本明細書で説明される態様および実施形態は、互いに自由に組み合わせることができる。
【0025】
以下、例示として添付図面を参照して、本解決手段を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1Aおよび図1Bは、本開示の一実施形態による鼻栓の管状部材の正面斜視図および側面斜視図である。
図2図2Aおよび図2Bは、本開示の一実施形態による、管状部材を有する鼻栓の断面正面図および断面側面図である。
図3図3Aおよび図3Bは、本開示の一実施形態による、管状部材を有する鼻栓の上面図および底面図である。図3Cは、本開示の一実施形態による、管状部材を有する鼻栓の断面図である。
図4図4Aおよび図4Bは、本開示の一実施形態による、患者の鼻孔に挿入して使用されている鼻栓の正面図および断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下では、添付図面を参照して、本解決手段の種々の実施形態の詳細な記載が開示される。本明細書の実施例は、一般的な説明の一部として見なされるべきであり、したがって、一般的な用語で任意の方法によって組み合わせることが可能である。そのような組み合わせ又は交換が実施形態の全体の機能と明らかに矛盾しない限り、様々な実施形態の個々の構成を組み合わせ、または交換し得る。
【0028】
簡単に説明すると、本開示は、鼻血を止めるために患者の鼻孔2に挿入されるように構成される鼻栓1に関する。本開示の文脈において、「遠位(distal)」および「近位(proximal)」という用語は、鼻栓1およびその構成要素について言及する場合、鼻血を患っている患者と鼻栓1を取り扱う人物が同じか違うかにかかわらず、鼻栓1を使う人物の視点から説明されるべきである。
【0029】
図1Aおよび図1Bでは、本開示による鼻栓1と組み合わせて使用することを意図される管状部材20の、正面および側面からの斜視図が、それぞれ示されている。中空管状部材20は、実質的に円筒状の管を備え、その管の第1端部23に第1開口部21を、第2端部24に第2開口部22を有する。さらに、管状部材20は、外面上に配置されかつ外向きに延在するカラー25を備える。ある実施形態では、カラー25がカップのような形状であり、凹面26が第1端部23の方を向き、凸面27が第2端部24の方を向く。ある実施形態では、カラー25が長円形または楕円形であり、図1Aの正面から見たときの幅は、楕円の短軸によって与えられ、図1Bの側面から見たときの幅は、楕円の長軸によって与えられる。すなわち、カラー25の横方向の最大延在は、楕円の長軸に相当する。ある実施形態では、管状部材20が可撓性材料(例えば、可撓性があるが、ある程度の剛性を有する熱可塑性材料)で構成される。
【0030】
図2Aおよび図2Bでは、本開示による鼻栓1が、それぞれ正面および側面から見たときの図で例示されている。鼻栓1は、胴部10と、胴部10の内部に配置される中空管状部材20と、を備える。胴部10は、第1端部11および第2端部12を備え、これらはそれぞれ、挿入されるときに、中空管状部材20の第1端部21および第2端部22と実質的に一致または対応する。胴部10の第1端部11は、患者の鼻孔2に挿入されるときに、使用中に内側を向くように配置される。逆に、第2端部12は、使用中に外側を向くように配置される。このように、鼻栓1の使用中、管状部材20の第1開口部21は内側を向き、第2開口部22は外側を向く。
【0031】
図2A図2Bおよび図3Cに見られるように、胴部10内に形成され、第2端部12の方を向く凹部15内に、管状部材20のカラー25が収まる。カラー25は、凹部15内で胴部10に対するストッパを形成する。凹部15は、管状部材20に密接に収まるように狭い遠位円筒部分と、カラー25を収容するように形成される、遠位円筒部分より広い近位部分と、を有し得る。
【0032】
ある実施形態では、胴部10が、液体、すなわち患者からの血液を吸収するのに適した弾性発泡材料で構成される。胴部10に適した材料の例には、ポリウレタン発泡体、ポリエーテル発泡体、(ポリ)エチレン酢酸ビニル(EVA/PEVA)発泡体、有機セルロースまたはヘミセルロースに基づく林業副産物および農業副産物からの発泡材料、および、いわゆる綿発泡体である特殊な綿織物が含まれる。
【0033】
ある実施形態では、血液の凝固を促進し、かつ出血を止めるために、胴部10が止血剤で被覆される。適切な止血剤の例にはアルギン酸カルシウムが含まれ、これは、例えば、褐藻類(すなわち、海藻抽出物)、グリシン、カルシウム、カオリン、ゼオライト、局所ミクロフィブリルコラーゲン、並びに、海老および他の海洋甲殻類の殻に由来するキトサンの中に天然に存在する。
【0034】
ある実施形態では、胴部10が、患者によって吸入される芳香化合物で被覆される。適切な芳香化合物の例には、メントール、ペパーミント、及び、ゴマ油、アロエベラ又は流動パラフィン等の潤滑油が含まれる。潤滑油は、鼻孔内の粘膜を滑らかにして、脱水や亀裂または裂け目の形成を妨げ、かつ再出血のリスクを低減する。患者が鼻栓1を介して吸入する場合、空気は管状部材20を通過する。その結果、第1開口部21の近くに局所的な真空が形成される。この真空は、物質を鼻栓1の胴部10から引き出して、物質を吸入された空気と混合するように働く。
【0035】
患者が鼻栓1を介して息を吐く場合、空気は再び管状部材20の第1開口部を通過する。管状部材20の直径が鼻孔に比べて小さいため、吸入とは逆に、鼻孔内の鼻栓1の近位の圧力が増加する。物質と一緒に吐かれた空気のごく一部は、鼻栓1の胴部10に入るが、カラー25は、物質を胴部10内に保持するように働く。したがって、カラー25は、患者によって吸入される物質が鼻栓1から出ることを妨げるが、その代わりに、物質を胴部10内に保持する。
【0036】
ある実施形態では、鼻栓1および/または胴部10の断面が、図2Aおよび図2Bに示すように長円形状であり、鼻栓1の幅が、図2B(側面図)に例示されるように、カラー25の長軸に相当する横方向の延在より大きい。ある実施形態では、鼻栓1および/または胴部10が、実質的に円筒形状の中央部を有するベル状であり、第1端部11が実質的に半球状またはドーム状であり、第2端部12が外向きに広がっている。ある実施形態では、楕円形の長軸に対応するカラー25の幅が、胴部10の幅と実質的に等しく又はそれより大きい。そのため、カラー25は、凹部15に挿入されるときに、外側に広がって胴部10を押すことになる。したがって、鼻栓1は、鼻孔の側壁を支えて、出血部位(例えば、キーセルバッハ神経叢)に対する圧力を増加させることになる。
【0037】
管状部材20および胴部10の長さは実質的に等しいが、ある実施形態では、管状部材20が胴部10からわずかにずれており、管状部材20の第1端部23が胴部10の第1端部11の近位に配置され、第1開口部21が胴部10内にめり込む。このようにして、管状部材20の第2(遠位)端部23は、挿入中、鼻栓1の胴部10の内部に隠れ、鼻粘膜を損傷するリスクを低減する。ある実施形態では、管状部材20が、胴部10の第2端部12から突出する。すなわち、管状部材20の第2(近位)端部24は、胴部10よりもさらに近位に延在し、鼻孔2へ挿入する間および鼻孔2から取り外す間に鼻栓1を取り扱う場合、取っ手として利用することができる。
【0038】
図3Aおよび図3Bは、上側(図3A)および下側(図3B)から見た鼻栓1を示す。カラー25は、下からのみ見えることに留意されたい。図3Cは鼻栓1の断面を示す。
【0039】
次に、図4Aおよび図4Bに着目すると、本開示による鼻栓1が患者の鼻5の鼻孔2に挿入されていることが、それぞれ正面図および側面図で示されている。図4Aに例示されているのは、鼻孔2内のキーゼルバッハ神経叢3のおおよその部位であり、鼻中隔の前下方部に位置する。上述のように、この領域では、4本の動脈が吻合して血管叢を形成する。鼻血の約80~90%は、キーゼルバッハ神経叢が吸気流の乾燥効果や指爪の外傷に曝されるときに、キーゼルバッハ神経叢で起こる。
【0040】
胴部10の弾性特性によって吸収体10が鼻血部位に直接圧力を加え、創傷部位から出る血液を吸収するという点で、本開示による鼻栓1は、鼻血の効果的な処置を提供する。出血が過剰および/または長期である場合、カラー25はストッパを形成し、当該ストッパは、血液が胴部10から漏れることを効果的に妨げ、したがって飽和している鼻栓1から滴下することを回避する。さらに、カラー25は、胴部10を外側に押す傘のように働いて、鼻孔2の壁に圧力を加えることを安定させ、かつ補助する。
【0041】
同時に、管状部材20は、鼻栓1が鼻孔2に挿入されている状態でも、患者が鼻5を通じて呼吸し続けることを可能にする流体空気通路を提供する。
【0042】
上記の記載は複数の特殊性を含むが、これらは本明細書に記載される概念の範囲を限定するものとして解釈されるべきではなく、単に、記載される概念のいくつかの例示的実施形態の例示を提供するものとして解釈されるべきである。現在記載されている概念の範囲は、当業者に明らかになり得る他の実施形態を完全に包含し、したがって、現在記載されている概念の範囲は限定されないことが理解されるであろう。単数形の要素への言及は、明示的にそのように述べられていない限り、「1つのみ」を意味することを意図しておらず、むしろ「1つ以上」を意味することを意図している。さらに、装置または方法を本明細書に包含するために、現在説明されている概念によって解決することが求められているすべての問題に、装置または方法が対処する必要はない。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B