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特許7572390バッテリーと、バッテリーの上面側に装着されたカバー部材と、バッテリーの側方に配置された周辺部材と、を備えた装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】バッテリーと、バッテリーの上面側に装着されたカバー部材と、バッテリーの側方に配置された周辺部材と、を備えた装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/591 20210101AFI20241016BHJP
   H01M 50/588 20210101ALI20241016BHJP
   H01M 50/583 20210101ALI20241016BHJP
   H01M 50/543 20210101ALI20241016BHJP
【FI】
H01M50/591
H01M50/588 101
H01M50/583
H01M50/543
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022041708
(22)【出願日】2022-03-16
(65)【公開番号】P2023136210
(43)【公開日】2023-09-29
【審査請求日】2023-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 直道
(72)【発明者】
【氏名】石田 英明
【審査官】松嶋 秀忠
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05643693(US,A)
【文献】特開2021-190410(JP,A)
【文献】特開2015-167107(JP,A)
【文献】米国特許第05645448(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/50-598
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリーと、前記バッテリーの上面側に装着されたカバー部材と、前記バッテリーの側方に配置された周辺部材と、を備えた装置であって、
前記カバー部材は、
前記バッテリーの上面側に固定され、バッテリー端子を収容するベース部と、
第1ヒンジを介して前記ベース部に連結して設けられ、前記バッテリー端子に取り付けられた螺合部材を覆う遮蔽位置及び前記螺合部材を露出する露出位置に回転変位可能とされた第1カバーと、
前記ベース部に設けられ、前記螺合部材を中心として回転された工具が前記バッテリーの側方に配置された前記周辺部材に接触する前に干渉することで前記工具の回転を規制する工具規制部と、を備える装置
【請求項2】
前記バッテリーのバッテリーポストに前記バッテリー端子を締結するための締付部を構成する前記螺合部材は、中心軸が前記バッテリーポストの中心軸線と平行に前記ベース部の上下方向に延びている、
請求項1に記載の装置
【請求項3】
前記第1カバーが、前記第1ヒンジに連結された基端側縁部と、前記基端側縁部の両端から互いに平行に延びる一対の幅方向側縁部とを有し、
前記工具規制部が、一方の前記幅方向側縁部に対向するガイド面を有して前記ベース部の上方へ突設された第1突条リブである、
請求項1又は2に記載の装置
【請求項4】
第2ヒンジを介して前記ベース部に連結して設けられ、前記バッテリー端子に取り付けられたヒューズユニットを覆う遮蔽位置及び前記ヒューズユニットを露出する露出位置に回転変位可能とされた第2カバーと、
前記第1カバーにおける他方の前記幅方向側縁部に隣接する前記第2カバーの幅方向側縁部に設けられ、前記第1カバーの他方の前記幅方向側縁部に対向するガイド面を有して前記ベース部の上方側へ突設された第2突条リブと、
を備える請求項3に記載の装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カバー部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、バッテリーから突出する端子を保護するためのカバー部材として、例えば特許文献1のバッテリー端子用カバーが知られている。このバッテリー端子用カバーは、バッテリー端子を収容する本体部と、本体部に対してヒンジを介して連結された蓋部(カバー)とを備えている。バッテリー端子用カバーに覆われたバッテリー端子の締付け片は、バッテリーの上面から突出するバッテリーポストの外周に螺合部材で締め付けられている。
そして、バッテリー交換等の作業時には、ヒンジを中心として蓋部を回動して本体部の収容空間を開放し、工具を用いて螺合部材(ボルト)を緩めてバッテリー端子を脱着する。しかしながら、螺合部材を回転させる際、回動させた工具を車体に当てて車体を傷つけてしまうおそれがある。
【0003】
そこで、特許文献2に開示されるバッテリターミナルカバー(カバー部材)が提案されている。このバッテリターミナルカバーは、バッテリーに固定される本体部と、ヒンジを介して本体部に連結して設けられ、バッテリーに取り付けられた螺合部材を覆う可動部(カバー)と、可動部に設けられた工具規制部と、を備えている。工具規制部は、可動部が開放位置とされた状態において螺合部材を中心として回転された工具が車両に接触する前に干渉することで工具の回転を規制する。これにより、工具が車両に当接してこれを傷つけることを防ぐことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-91650号公報
【文献】特開2019-114392号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献2に開示されたバッテリターミナルカバーでは、ヒンジを介して本体部に連結された可動部に、工具規制部が設けられている。そのため、工具を回動操作して螺合部材を回転させる際、工具が工具規制部に干渉(当接)することに起因して、ヒンジには、本体部と可動部が離れようとする作用による力が加わってしまう可能性がある。その結果、力のかかり具合や、繰り返し加えられる力によって、ヒンジが破損することが懸念される。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、工具の回転規制を行うことができ、ヒンジの破損を防止することもできる、バッテリーと、バッテリーの上面側に装着されたカバー部材と、バッテリーの側方に配置された周辺部材と、を備えた装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した目的を達成するために、本発明に係る、バッテリーと、バッテリーの上面側に装着されたカバー部材と、バッテリーの側方に配置された周辺部材と、を備えた装置は、下記を特徴としている。
バッテリーと、前記バッテリーの上面側に装着されたカバー部材と、前記バッテリーの側方に配置された周辺部材と、を備えた装置であって、
前記カバー部材は、
前記バッテリーの上面側に固定され、バッテリー端子を収容するベース部と、
第1ヒンジを介して前記ベース部に連結して設けられ、前記バッテリー端子に取り付けられた螺合部材を覆う遮蔽位置及び前記螺合部材を露出する露出位置に回転変位可能とされた第1カバーと、
前記ベース部に設けられ、前記螺合部材を中心として回転された工具が前記バッテリーの側方に配置された前記周辺部材に接触する前に干渉することで前記工具の回転を規制する工具規制部と、を備える装置
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る、バッテリーと、バッテリーの上面側に装着されたカバー部材と、バッテリーの側方に配置された周辺部材と、を備えた装置によれば、工具の回転規制を行うことができ、ヒンジの破損を防止することもできる。
【0009】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、バッテリーに組み付けた本発明の第1実施形態に係るカバー部材を示す斜視図である。
図2図2は、図1に示したカバー部材の第1カバー及び第2カバーを開いた状態の斜視図である。
図3図3は、カバー部材に収容されるバッテリー端子及びヒューズユニットを示す分解斜視図である。
図4図4は、バッテリー端子の分解斜視図である。
図5図5は、カバー部材を上方から見た斜視図である。
図6図6は、カバー部材を下方から見た斜視図である。
図7図7は、バッテリーに組み付ける前の状態のカバー部材を示す斜視図である。
図8図8は、車両に搭載されたバッテリーにバッテリー端子を取り付けている状態を示す斜視図である。
図9図9は、車両に搭載されたバッテリーにバッテリー端子を取り付けている状態を示す上面図である。
図10図10は、バッテリーに組み付けたカバー部材の第1カバーを開閉する際の作用を説明するための斜視図である。
図11図11は、バッテリーに組み付けた本発明の第2実施形態に係るカバー部材の第1カバーが露出位置とされた状態を示す斜視図である。
図12図12は、図11に示したカバー部材の第1カバーを開閉する際の作用を説明するための斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に関する具体的な実施形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
本発明の第1実施形態に係るカバー部材としてのバッテリー端子カバー1は、図1及び図2に示すように、バッテリー2の上面側に装着され、バッテリーポスト3及び電源接続システム5を覆ってこれらを保護する。
なお、本明細書では、バッテリー端子カバー1において、図1に示した状態における上方を上方として説明する。
【0012】
本例の電源接続システム5は、図3に示すように、バッテリー端子50とヒューズユニット70とを備えたものである。この電源接続システム5は、図2に示したように、バッテリー2に組み付けることで正極側のバッテリーポスト3と電線7との間に介在させ、そのバッテリーポスト3と電線7とに対してバッテリー端子50とヒューズユニット70のヒューズ回路体71とを電気的に接続させる。バッテリーポスト3は、バッテリー2の上面に立設されており、後述するようにバッテリー端子50が物理的且つ電気的に接続される。
【0013】
バッテリー端子50は、図4に示すように、スタッドボルト51と、本体部52と、締付部60とを備える。
スタッドボルト51は、導電性を有する金属等によって形成されている。
【0014】
本体部52は、ポスト締結部53と、ボルト保持部54とを備える。ポスト締結部53は、バッテリーポスト3に締結される部分である。ボルト保持部54は、ポスト締結部53に隣接して接続されるスタッドボルト51を保持する部分である。本体部52は、例えば、導電性を有する金属板のプレス折り曲げ加工等により、ポスト締結部53を構成する一対の環状部52a,52b、ボルト保持部54を構成する一対の保持板状部52c,52d、及び、屈曲連結部52eが一体で形成される。
【0015】
一対の環状部52a,52bは、略矩形環状に形成される。一対の環状部52a,52bは、バッテリーポスト3が挿入される略円形状のポスト挿入孔52f,52gと、ポスト挿入孔52f,52gに連続する間隙であるスリット52hとが、それぞれ形成される。
一対の保持板状部52c,52dは、略矩形状に形成され、保持板状部52c側にボルト挿入孔52jが形成される。
【0016】
環状部52aと環状部52bとは、それぞれ保持板状部52c,52dが設けられている端部とは反対側の端部同士が屈曲連結部52eを介して連続するように一体で形成される。これにより、本体部52は、屈曲連結部52eを挟んで、U字状に折り返された状態に形成され、環状部52a及び保持板状部52cと、環状部52b及び保持板状部52dとが、上下方向に対向しそれぞれ上下に略平行に板状に積層された状態となるように形成される。
【0017】
一対の環状部52a,52bには、ポスト挿入孔52f,52gから環状部52a,52bの一部を分断するようにして屈曲連結部52eまで延在して形成されたスリット52hが形成される。そして、一対の環状部52a,52bは、それぞれポスト挿入孔52f,52gから屈曲連結部52eまでの間の部分が後述する締付部60によって締め付けられる締付端部52kを構成する。
締付端部52kは、長手方向に沿う幅方向の両側の端部に、それぞれ締付部60の一部が嵌合する略矩形状の切り欠き部52l,52mが形成されている。
【0018】
一対の保持板状部52c,52dは、折り曲げ加工の前に事前にボルト挿入孔52jにスタッドボルト51の軸部51aが挿入された状態で折り曲げ加工されることで、屈曲連結部52eを介して上下に積層された状態で当該スタッドボルト51を保持することができる。スタッドボルト51は、ボルト挿入孔52jから上方に突出した軸部51aに、後述するヒューズユニット70のヒューズ回路体71がナット74により締結されて電気的に接続される。
【0019】
締付部60は、ポスト挿入孔52f,52g内にバッテリーポスト3が挿入された状態で、本体部52をバッテリーポスト3に締結するものである。締付部60は、本体部52の短手方向両側から本体部52の一対の環状部52a,52bに当接し、当該環状部52a,52bの締付端部52kを締め付ける。これにより、締付部60は、本体部52をバッテリーポスト3に締結する。
【0020】
締付部60は、図4に示すように、貫通部材としての板ナット61と、螺合部材としての締結ボルト62と、押圧力変換部材としてのブラケット63とを備える。
本実施形態の締付部60は、バッテリー端子50をバッテリーポスト3に締結する場合に、締結ボルト62をバッテリーポスト3の中心軸線に沿った上下方向に沿って締め付けていく形式である。この場合、締付部60は、バッテリーポスト3の中心軸線と平行な中心軸Xに沿った上下方向に発生する締結ボルト62による締結力を、締付端部52kにおけるスリット52hの間隔を縮小する方向の押圧力に変換する。そして、締付部60は、この押圧力によってバッテリー端子50においてバッテリーポスト3が挿入される部分を押圧することで、本体部52をバッテリーポスト3に締結する。
【0021】
板ナット61は、板状部61aと、当接部61bと、螺合孔61cと、テーパ形成端部61dと、第1テーパ面61eとを有して構成され、これらが導電性を有する金属等によって一体に形成されている。
板状部61aは、略矩形状に形成された板ナット61の本体部分であり、本体部52の長手方向に沿う幅方向に沿って環状部52a,52bの一端側からスリット52hを挟んで環状部52a,52bの他端側まで延在して当該環状部52a,52bに配置される。
【0022】
当接部61bは、板状部61aの一端側に設けられ、締付端部52kの切り欠き部52lと嵌合し位置決めされる。
螺合孔61cは、板状部61aの他端側の端部に上下方向に貫通形成されたネジ孔であり、締結ボルト62が螺合される。
【0023】
テーパ形成端部61dは、板状部61aの他端側の端部において幅方向の両側にそれぞれ突出して形成され、それぞれの突出部分に第1テーパ面61eが形成される。テーパ形成端部61dは、板状部61aが本体部52の長手方向に沿う幅方向に沿って環状部52a,52bの一端側からスリット52hを挟んで環状部52a,52bの他端側まで貫通するように組み付けられた状態で、板状部61aにおいて本体部52の切り欠き部52m側に位置する。
第1テーパ面61eは、後述するブラケット63に形成された第2テーパ面63eと対向して当接する面である。
【0024】
締結ボルト62は、板ナット61に形成された螺合孔61cと螺合し、中心軸X周りの回転に伴って中心軸Xに沿って移動する螺合部材である。締結ボルト62は、軸部62aと、ボルト頭部62bとを有し、導電性を有する金属等によって一体で形成されている。
ボルト頭部62bは、六角形状に形成され、締結ボルト62を軸部62a周りに回転させるために工具であるスパナT等(図8参照)によって締付けトルクが付加される部分を構成する。締結ボルト62は、螺合孔61cに螺合した状態で中心軸X周りに回転することで、螺合作用により板ナット61に対して中心軸Xに沿って相対移動する。
【0025】
ブラケット63は、締結ボルト62の中心軸Xに沿った移動に伴って当該中心軸Xに沿って移動可能で、且つ、板ナット61の第1テーパ面61eと当接しながら板状部61aの長手方向に沿って相対移動可能に設けられた部材である。そして、ブラケット63は、中心軸Xに沿った上下方向に発生する締結ボルト62による締結力を、締付端部52kにおけるスリット52hの間隔を縮小する方向の押圧力に変換する部材である。
【0026】
ブラケット63は、導電性を有する金属等によって、略矩形板状に形成された基部63aと、基部63aの対向する2辺に設けられた一対の直立部63bとを有して全体として略U字状に一体で形成されている。
基部63aには、中心軸Xに沿って締結ボルト62の軸部62aが挿通される貫通部63cが形成されている。貫通部63cは、本体部52の長手方向に沿う幅方向に沿って延在する略長円形状に形成される。
【0027】
一対の直立部63bは、それぞれ本体部52の切り欠き部52mと当接可能である当接面63dと、板ナット61の第1テーパ面61eと当接可能である第2テーパ面63eとを有する。
当接面63dは、ブラケット63が締結ボルト62を介して板ナット61に組み付けられた状態で、各直立部63bにおいて締付端部52k側の面にそれぞれ形成される。各当接面63dは、各直立部63bの端面において、締結ボルト62の中心軸Xに平行な面として形成される。
【0028】
第2テーパ面63eは、各直立部63bにおいて本体部52と当接する側の各当接面63dとは反対側の面にそれぞれ形成される。
即ち、ブラケット63は、締結ボルト62を介して板ナット61に組み付けられた状態で、第2テーパ面63eがそれぞれ形成された各直立部63bが、締付端部52kとテーパ形成端部61dとの間に位置する。そして、ブラケット63は、各第2テーパ面63eがテーパ形成端部61d側で各第1テーパ面61eと対向し当接する。各第2テーパ面63eは、各当接面63dが締結ボルト62の中心軸Xに沿って平行に形成された各直立部63bにあって、基端側(基部63a側)から先端側に向かうにしたがって幅が徐々に狭まるような傾斜面として形成される。
【0029】
上記のように構成された締付部60は、板ナット61が本体部52に組み付けられ、ブラケット63が締結ボルト62の軸部62aに装着されると共に当該軸部62aが板ナット61の螺合孔61cに螺合することで各部が相互に組み付けられる。そして、バッテリー端子50は、締結ボルト62の中心軸Xに対して、締結ボルト62のボルト頭部62bと板ナット61との間にブラケット63が介在するような位置関係でブラケット63と締結ボルト62とが板ナット61に組み付けられる。
【0030】
そして、バッテリー端子50は、ポスト挿入孔52f,52gの内周面とバッテリーポスト3の外周面とが接触した状態で、締結ボルト62が上側から締め付けられる。これにより、バッテリー端子50は、締結ボルト62の回転に伴って各第1テーパ面61eと各第2テーパ面63eとが変換・発生させる押圧力によって、スリット52hの間隔が狭められるように押圧される。この結果、バッテリー端子50は、ポスト挿入孔52f,52gの径が縮小され、バッテリーポスト3に締結される。
【0031】
ヒューズユニット70は、図3に示すように、ヒューズ回路体71と、このヒューズ回路体71を支持する支持部材72とを備える。
支持部材72は、合成樹脂等の絶縁性材料で成形されたものであり、ヒューズ回路体71がインサート成形される。
【0032】
ヒューズ回路体71は、バッテリー端子50側と電線7側との間の通電経路上に可溶体(図示せず)を有する。このヒューズ回路体71は、スタッドボルト51とナット74とを螺合させることによってバッテリー端子50に共締めされ、このバッテリー端子50に対して物理的且つ電気的に接続される。
【0033】
このため、ヒューズ回路体71には、スタッドボルト51を挿通させる貫通孔71aが形成されている。更に、ヒューズ回路体71には、電気的に接続された2本の雄ねじ部材75が設けられている。そこで、ヒューズ回路体71は、雄ねじ部材75とナット(図示せず)とを螺合させることによって、電線7の端末に接続された接続端子(図示せず)に共締めされ、その電線7に対して電気的に接続される。
【0034】
そして、これらバッテリー端子50及びヒューズユニット70により構成された電源接続システム5は、合成樹脂等の絶縁性材料で成形されたバッテリー端子カバー1に収容される。
本第1実施形態に係るバッテリー端子カバー1は、図1及び図2に示すように、バッテリー2に固定されるベース部10と、第1ヒンジ25を介してベース部10に連結して設けられた第1カバー20と、第2ヒンジ35を介してベース部10に連結して設けられ第2カバー30と、を備える。
【0035】
ベース部10は、図3及び図5,6に示すように、バッテリーポスト3が挿通される円形の貫通孔14を有しており、この貫通孔14にバッテリーポスト3が挿通されるようバッテリー2の上面に設置される。
ベース部10には、その設置状態でバッテリー端子50を収容させる端子収容室11が形成されている。その端子収容室11には、貫通孔14に挿通されたバッテリーポスト3の自由端側が配置される。端子収容室11においては、バッテリー端子50がバッテリーポスト3を自由端側から挿通させつつベース部10に載置され、係止突起17等の係止構造により収容状態に保たれる。バッテリー端子50は、そのバッテリーポスト3の自由端側に対して締付部60により物理的且つ電気的に接続される。
【0036】
更に、ベース部10には、ヒューズユニット70を収容するユニット収容室15が設けられている。ヒューズユニット70は、端子収容室11に収容されたバッテリー端子50に対して取り付けられる。このため、ユニット収容室15には、端子収容室11に収容されたバッテリー端子50のスタッドボルト51が配置される。このユニット収容室15においては、ヒューズユニット70のヒューズ回路体71の貫通孔71aにスタッドボルト51が挿通されて、ヒューズユニット70のヒューズ回路体71がバッテリー端子50の上に載置され、且つ、ヒューズユニット70の支持部材72がベース部10に載置される。
【0037】
第1カバー20は、図5に示すように、ベース部10の一側壁12に第1ヒンジ25を介して連結されており、端子収容室11の上方開口を開閉自在に覆うことができる。即ち、第1カバー20は、バッテリー端子50に取り付けられた螺合部材である締結ボルト62を覆う遮蔽位置及び締結ボルト62を露出する露出位置に回転変位可能とされている。
【0038】
第1カバー20は、第1ヒンジ25に連結された基端側縁部21と、基端側縁部21の両端から互いに平行に延びる一対の幅方向側縁部22,23と、基端側縁部21の対向辺である回動先端部24とを有する略矩形板状に形成されている。
第1カバー20の回動先端部24には、ロックアーム26が設けられている。第1カバー20は、ロックアーム26がベース部10の対応する箇所に設けられた係止突起13に係止されることで、遮蔽位置に保持される。
【0039】
第1カバー20に並設された第2カバー30は、ベース部10の一側壁12に第2ヒンジ35を介して連結されており、ユニット収容室15の上方開口を開閉自在に覆うことができる。即ち、第2カバー30は、バッテリー端子50に取り付けられたヒューズユニット70を覆う遮蔽位置及びヒューズユニット70を露出する露出位置に回転変位可能とされている。
【0040】
第2カバー30は、第2ヒンジ35に連結された基端側縁部31と、基端側縁部31の両端から互いに平行に延びる一対の幅方向側縁部32,33と、基端側縁部31の対向辺である回動先端部34とを有する略矩形板状に形成されている。
第2カバー30の回動先端部34には、ロック片36が設けられている。第2カバー30は、ロック片36がベース部10の対応する箇所に設けられた係止突起16に係止されることで、遮蔽位置に保持される。
第2カバー30の幅方向側縁部33には、ヒューズ回路体71に端末が接続された2本の電線7の導出方向をそれぞれ規制する電線カバー部37,38が設けられている。
【0041】
更に、バッテリー端子カバー1のベース部10には、バッテリー端子50の締結ボルト62を締め付ける際に、スパナTがバッテリー2の周辺に配置された周辺部材8(図7図8参照)に接触するまでの回転軌跡内に突出し、スパナTが周辺部材8に接触する前に干渉することでスパナTの回転を規制する工具規制部としての第1突条リブ40が設けられている。
【0042】
第1突条リブ40は、図5及び図6に示すように、ベース部10の端子収容室11側における周壁の上側に突出し、一側壁12側から対向する側壁側へ延出して下方に開口する箱形状の突条リブである。内部に補強リブを有する箱形状の第1突条リブ40は、スパナTの回転を規制することができる十分な強度を有している。
開閉される第1カバー20の一方の幅方向側縁部22に対向する第1突条リブ40の側壁は、幅方向側縁部22に直交するガイド面44とされている。第1突条リブ40の延出端壁は、スパナTが当接する回転規制端部42となる。
【0043】
図7に示すように、バッテリー端子カバー1に収容された電源接続システム5が組み付けられるバッテリー2の側方周辺には、接触禁止部品である周辺部材8が配置されたり、車体の一部が近接していたりする。
ここで、図8に示すように、本第1実施形態に係るバッテリー端子カバー1によれば、スパナTを用いてバッテリー端子50の締結ボルト62を回転させる際、ベース部10の上下方向に延びている締結ボルト62の中心軸Xを中心として水平方向に回転されたスパナTは、第1突条リブ40の回転規制端部42に当接し、それ以上の回転が規制される。
【0044】
そこで、スパナTがバッテリー2の側方に配置された周辺部材8に当接することはなく、周辺部材8を傷つけることを防止できる。また、周辺部材8が、正極のバッテリーポスト3との間でショートが起こってしまう導電部材である場合には、ショートの発生を防止することができる。
【0045】
更に、第1突条リブ40は、バッテリー2に固定されるベース部10に設けられている。そこで、回転されたスパナTが第1突条リブ40に干渉(当接)しても、第1カバー20の第1ヒンジ25及び第2カバー30の第2ヒンジ35には、スパナTの回動力が加わることがなく、第1ヒンジ25及び第2ヒンジ35の破損が防止される。
【0046】
また、開閉される第1カバー20の一方の幅方向側縁部22に対向する第1突条リブ40の側壁は、幅方向側縁部22に直交するガイド面44とされている。そこで、図10に示すように、第1カバー20の開閉時、ベース部10に設けられた第1突条リブ40のガイド面44は、第1カバー20の幅方向の振れを規制し、第1ヒンジ25のねじれを防止することができる。そこで、第1カバー20の開閉繰り返しによる第1ヒンジ25の破損を抑制することができる。
【0047】
次に、図11図12によってバッテリー2に組み付けた本発明の第2実施形態に係るカバー部材としてのバッテリー端子カバー1Aを説明する。なお、本第2実施形態のバッテリー端子カバー1Aにおいて、上記第1実施形態のバッテリー端子カバー1と同様の構成部品には同符号を付して詳細な説明を省略する。
【0048】
本第2実施形態のバッテリー端子カバー1Aは、図11に示すように、第1カバー20における他方の幅方向側縁部23に隣接する第2カバー30Aの幅方向側縁部32に、ベース部10の上方側へ突出する板状の第2突条リブ39が設けられている。第2突条リブ39は、開閉される第1カバー20の他方の幅方向側縁部23に対向し、第1突条リブ40のガイド面44に平行なガイド面39aを有する。
【0049】
そこで、本第2実施形態に係るバッテリー端子カバー1Aによれば、図12に示すように、第1カバー20の開閉時、第2カバー30Aの幅方向側縁部32に設けられた第2突条リブ39のガイド面 は、第1突条リブ40のガイド面44との間で第1カバー20の幅方向の振れを両側から規制し、第1ヒンジ25のねじれを確実に防止することができる。そこで、第1カバー20の開閉繰り返しによる第1ヒンジ25の破損を更に抑制することができる。
【0050】
従って、上記第1又は第2実施形態に係るバッテリー端子カバー1,1Aによれば、スパナTの回転規制を行うことができ、第1ヒンジ25及び第2ヒンジ35の破損を防止することもできる。
【0051】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
上記実施形態のバッテリー端子50には、電線7の端末に接続された接続端子(図示略)がヒューズユニット70のヒューズ回路体71を介して電気的に間接接続されたが、本発明はこれに限るものではない。バッテリー端子50には、電線7の端末に接続された接続端子が物理的且つ電気的に直接接続されてもよい。
【0052】
ここで、上述した本発明に係るカバー部材の実施形態の特徴をそれぞれ以下[1]~[4]に簡潔に纏めて列記する。
[1] バッテリー(2)に固定され、バッテリー端子(50)を収容するベース部(10)と、
第1ヒンジ(25)を介して前記ベース部(10)に連結して設けられ、前記バッテリー端子(50)に取り付けられた螺合部材(締結ボルト62)を覆う遮蔽位置及び前記螺合部材(締結ボルト62)を露出する露出位置に回転変位可能とされた第1カバー(20)と、
前記ベース部(10)に設けられ、前記螺合部材(締結ボルト62)を中心として回転された工具(スパナT)が前記バッテリー(2)の周辺に配置された周辺部材(8)に接触する前に干渉することで前記工具(スパナT)の回転を規制する工具規制部(第1突条リブ40)と、
を備えるカバー部材(バッテリー端子カバー1,1A)。
【0053】
上記[1]の構成のカバー部材(バッテリー端子カバー1,1A)によれば、工具(スパナT)を用いてバッテリー端子(50)の螺合部材(締結ボルト62)を回転させる際、螺合部材(締結ボルト62)を中心として回転された工具(スパナT)は、工具規制部(第1突条リブ40)に当接し、それ以上の回転が規制される。
そこで、工具(スパナT)がバッテリー(2)の周辺に配置された周辺部材(8)に当接することはなく、周辺部材(8)を傷つけることを防止できる。
更に、工具規制部(第1突条リブ40)は、バッテリー(2)に固定されるベース部(10)に設けられている。そこで、回転された工具(スパナT)が工具規制部(第1突条リブ40)に干渉(当接)しても、第1カバー(20)の第1ヒンジ(25)には、工具(スパナT)の回動力が加わることがなく、破損が防止される。
【0054】
[2] 前記バッテリー(2)のバッテリーポスト(3)に前記バッテリー端子(50)を締結するための締付部(60)を構成する前記螺合部材(締結ボルト62)は、中心軸(X)が前記バッテリーポスト(3)の中心軸線と平行に前記ベース部(10)の上下方向に延びている、
上記[1]に記載のカバー部材(バッテリー端子カバー1,1A)。
【0055】
上記[2]の構成のカバー部材(バッテリー端子カバー1,1A)によれば、工具(スパナT)を用いてバッテリー端子(50)の螺合部材(締結ボルト62)を回転させる際、ベース部(10)の上下方向に延びている螺合部材(締結ボルト62)の中心軸(X)を中心として水平方向に回転された工具(スパナT)は、工具規制部(第1突条リブ40)に当接し、それ以上の回転が規制される。
そこで、工具(スパナT)がバッテリー(2)の側方に配置された周辺部材(8)に当接することはない。
【0056】
[3] 前記第1カバー(20)が、前記第1ヒンジ(25)に連結された基端側縁部(21)と、前記基端側縁部(21)の両端から互いに平行に延びる一対の幅方向側縁部(22,23)とを有し、
前記工具規制部が、一方の前記幅方向側縁部(22)に対向するガイド面(44)を有して前記ベース部(10)の上方へ突設された第1突条リブ(40)である、
上記[1]又は[2]に記載のカバー部材(バッテリー端子カバー1,1A)。
【0057】
上記[3]の構成のカバー部材(バッテリー端子カバー1,1A)によれば、第1カバー(20)の開閉時、ベース部(10)に設けられた第1突条リブ(40)のガイド面(44)は、第1カバー(20)の幅方向の振れを規制し、第1ヒンジ(25)のねじれを防止することができる。そこで、第1カバー(20)の開閉繰り返しによる第1ヒンジ(25)の破損を抑制することができる。
【0058】
[4] 第2ヒンジ(35)を介して前記ベース部(10)に連結して設けられ、前記バッテリー端子(50)に取り付けられたヒューズユニット(70)を覆う遮蔽位置及び前記ヒューズユニット(70)を露出する露出位置に回転変位可能とされた第2カバー(30A)と、
前記第1カバー(20)における他方の前記幅方向側縁部(23)に隣接する前記第2カバー(30A)の幅方向側縁部(32)に設けられ、前記第1カバー(20)の他方の前記幅方向側縁部(23)に対向するガイド面(39a)を有して前記ベース部(10)の上方側へ突設された第2突条リブ(39)と、
を備える上記[3]に記載のカバー部材(バッテリー端子カバー1A)。
【0059】
上記[4]の構成のカバー部材(バッテリー端子カバー1A)によれば、第1カバー(20)の開閉時、第2カバー(30A)の幅方向側縁部(32)に設けられた第2突条リブ(39)のガイド面(39a)は、第1突条リブ(40)のガイド面(44)との間で第1カバー(20)の幅方向の振れを両側から規制し、第1ヒンジ(25)のねじれを確実に防止することができる。そこで、第1カバー(20)の開閉繰り返しによる第1ヒンジ(25)の破損を更に抑制することができる。
【符号の説明】
【0060】
1…バッテリー端子カバー(カバー部材)
2…バッテリー
8…周辺部材
10…ベース部
20…第1カバー
25…第1ヒンジ
40…第1突条リブ(工具規制部)
50…バッテリー端子
62…締結ボルト(螺合部材)
T…スパナ(工具)
図1
図2
図3
図4
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図8
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図10
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図12