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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】畜舎の洗浄装置
(51)【国際特許分類】
   A01K 1/01 20060101AFI20241016BHJP
   B08B 3/02 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
A01K1/01 D
B08B3/02 F
B08B3/02 E
A01K1/01 C
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022059917
(22)【出願日】2022-03-31
(65)【公開番号】P2023150693
(43)【公開日】2023-10-16
【審査請求日】2023-11-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000132161
【氏名又は名称】株式会社スギノマシン
(74)【代理人】
【識別番号】110002712
【氏名又は名称】弁理士法人みなみ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 陽一
(72)【発明者】
【氏名】大西 武夫
(72)【発明者】
【氏名】青木 卓也
(72)【発明者】
【氏名】向山 諒太
【審査官】伊藤 裕美
(56)【参考文献】
【文献】特表平11-504526(JP,A)
【文献】特開2013-247938(JP,A)
【文献】特開2020-128163(JP,A)
【文献】特開平10-302141(JP,A)
【文献】米国特許第05983833(US,A)
【文献】特開2021-074853(JP,A)
【文献】特開2008-043250(JP,A)
【文献】特開昭62-164965(JP,A)
【文献】特表2017-537808(JP,A)
【文献】特開平07-172883(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 1/00- 1/12
B08B 3/00- 3/14
A01K 31/00-31/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
家畜を収容する複数の畜房が通路に沿って設置されている畜舎内を洗浄する畜舎の洗浄装置であって、
畜房を洗浄する洗浄部と、前記洗浄部を通路に沿って移動させる走行部と、前記走行部と前記洗浄部を制御する制御部とを備え、
前記洗浄部は、洗浄液を噴射するノズルと、前記ノズルを三次元方向に変位可能に支持するアーム機構部とを備え、
前記ノズルを通路から畜房内に挿入させるために、前記アーム機構部はその形態を変化可能であり、
前記アーム機構部は、前記走行部の上に設置される回転機構部と、前記走行部が水平面に配置された状態での鉛直方向に平行な回転軸を中心に回転可能であると共に前記回転機構部によって回転させられる本体塔と、前記本体塔に固定されると共に前記ノズルが取り付けられたアーム部とを備えることを特徴とする畜舎の洗浄装置。
【請求項2】
家畜を収容する複数の畜房が通路に沿って設置されている畜舎内を洗浄する畜舎の洗浄装置であって、
畜房を洗浄する洗浄部と、前記洗浄部を通路に沿って移動させる走行部と、前記走行部と前記洗浄部を制御する制御部とを備え、
前記洗浄部は、洗浄液を噴射するノズルと、前記ノズルを三次元方向に変位可能に支持するアーム機構部とを備え、
前記ノズルを通路から畜房内に挿入させるために、前記アーム機構部はその形態を変化可能であり、
前記洗浄部が前記走行部の上部に一対設置されていることを特徴とする畜舎の洗浄装置。
【請求項3】
外観を検知する外観検知部を備え、
前記制御部は前記外観検知部から取得される畜房の汚れ付着位置に関する情報に基づいて前記アーム機構部を制御し、前記アーム機構部の形態を変化させて汚れ付着位置に前記ノズルを向けて洗浄することを特徴とする請求項1または2に記載の畜舎の洗浄装置。
【請求項4】
前記畜房に対する通路側には付属物が配置されており、
外観を検知する外観検知部を備え、
前記制御部は、前記外観検知部から取得される付属物の外観に関する情報に基づいて前記アーム機構部を制御し、前記ノズルと前記アーム機構部とを付属物から離隔した状態を保持しながら前記アーム機構部の形態を変化させて畜房を洗浄することを特徴とする請求項1または2に記載の畜舎の洗浄装置。
【請求項5】
家畜を収容する複数の畜房が通路に沿って設置されている畜舎内を洗浄する畜舎の洗浄装置であって、
畜房を洗浄する洗浄部と、前記洗浄部を通路に沿って移動させる走行部と、前記走行部と前記洗浄部を制御する制御部と、外観を検知する外観検知部とを備え、
前記洗浄部は、洗浄液を噴射するノズルと、前記ノズルを三次元方向に変位可能に支持するアーム機構部とを備え、
前記制御部は、前記外観検知部から取得される畜房の形状に関する情報に基づいて前記アーム機構部を制御し、畜房内で前記ノズルと前記アーム機構部とを畜房から離隔した状態を保持しながら前記アーム機構部の形態を変化させて畜房内を洗浄することを特徴とする畜舎の洗浄装置。
【請求項6】
家畜を収容する複数の畜房が通路に沿って設置されている畜舎内を洗浄する畜舎の洗浄装置であって、
畜房を洗浄する洗浄部と、前記洗浄部を通路に沿って移動させる走行部と、前記走行部と前記洗浄部を制御する制御部とを備え、
前記洗浄部は、洗浄液を噴射するノズルと、前記ノズルを三次元方向に変位可能に支持するアーム機構部とを備え、
前記ノズルを通路から畜房内に挿入させるために、前記アーム機構部はその形態を変化可能であり、
外観を検知する外観検知部と、前記ノズルから噴射される洗浄液の噴射条件を調整する噴射条件調整部とを備え、
前記制御部は前記外観検知部から取得される畜房の汚れ具合に関する情報に基づいて噴射条件調整部を制御することを特徴とする畜舎の洗浄装置。
【請求項7】
家畜を収容する複数の畜房が通路に沿って設置されると共に畜房に対する通路側に付属物が配置された畜舎内を洗浄する畜舎の洗浄装置であって、
畜房を洗浄する洗浄部と、前記洗浄部を通路に沿って移動させる走行部と、前記走行部と前記洗浄部を制御する制御部と、外観を検知する外観検知部とを備え、
前記洗浄部は、洗浄液を噴射するノズルと、前記ノズルを三次元方向に変位可能に支持するアーム機構部とを備え、
前記制御部は前記外観検知部から取得される付属物の外観に関する情報に基づいて前記アーム機構部を制御し、前記アーム機構部の形態を変化させて付属物を洗浄することを特徴とする畜舎の洗浄装置。
【請求項8】
前記アーム機構部は、前記走行部の上に設置される回転機構部と、前記走行部が水平面に配置された状態での鉛直方向に平行な回転軸を中心に回転可能であると共に前記回転機構部によって回転させられる本体塔と、前記本体塔に固定されると共に前記ノズルが取り付けられたアーム部とを備えることを特徴とする請求項5~7のいずれかに記載の畜舎の洗浄装置。
【請求項9】
前記洗浄部が前記走行部の上部に一対設置されていることを特徴とする請求項5~7のいずれかに記載の畜舎の洗浄装置。
【請求項10】
家畜を収容する複数の畜房が通路に沿って設置されている畜舎内を洗浄する畜舎の洗浄装置であって、
畜房を洗浄する洗浄部と、前記洗浄部を通路に沿って移動させる走行部と、前記走行部と前記洗浄部を制御する制御部と、前記走行部の姿勢の変化を検出するジャイロセンサとを備え、
前記洗浄部は、洗浄液を噴射するノズルと、前記ノズルを三次元方向に変位可能に支持するアーム機構部とを備え、
前記制御部は、前記ジャイロセンサで検出された角速度の変化量に基づいて前記アーム機構部を制御し、前記アーム機構部の形態を変化させて畜房に対する前記ノズルの相対的な高さ位置を前記走行部の姿勢の変化前に近づける補正をすることを特徴とする畜舎の洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鶏、牛、豚などの家畜を収容する畜舎を水や消毒液等の洗浄液を用いて洗浄するための洗浄装置に関するものであり、特に、所定の空間に区切られた複数の畜房が通路に沿って設置されている畜舎を洗浄する洗浄装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
畜舎は汚れれば洗浄されることになる。近年では、洗浄手段を搭載した走行車両を用いて畜舎を洗浄するシステムが提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、走行車両と、多段に伸縮可能なアームと、アーム先端に設けられたノズルと、鶏舎の天井から吊り下げられた複数の給餌機と複数の給水機のうち何れかを検出するセンサと、センサの検出結果に基づいて例えば複数の給水機に沿って車両を移動させる制御部とからなる洗浄システムが開示されている。
【0004】
また特許文献2には、畜房が複数配置されてなる畜舎において、自走可能な自走ユニットと、洗浄水を噴射するノズルと、ノズルを変位させて洗浄水の噴射角度を変化させる角度変化装置とを備える洗浄装置が開示されている。角度変化装置はノズルを畜房に向けた状態で上下方向や通路方向に所定角度回転可能とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-220655号公報
【文献】特許3910625号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の洗浄システムは、天井から吊り下げられた複数の給餌機と複数の給水機を備える鶏舎を対象としたもので、床上の広い空間に何十羽といった多数の鶏を飼う用途、いわゆる平飼い用である。したがって特許文献1の洗浄システムは、天井から吊り下げられた吊り下げ物を必須としない用途、つまり本発明の対象とする複数の畜房が通路に沿って設置された用途、いわゆるケージ用(畜房用)には適用することができない。
【0007】
特許文献2の洗浄装置は、角度変化装置がノズルを畜房に向けた状態で上下方向や通路方向に回転可能としてあるが、ノズルの形態は一定であるし、角度変化装置もノズルの向きを変えているだけで形態は一定である。そして特許文献2の洗浄装置は、畜房の外側から洗浄液を噴射するものなので、畜房内を適切に洗浄できないようになっている。
【0008】
また綺麗に洗浄するには、洗浄対象箇所にノズルを近づけ、ノズルからの洗浄液が洗浄対象箇所に当たるようにすることが望ましい。
なお畜舎には畜房に付属物が固定されていることもある。このような場合、付属物を適切に洗浄することが望まれる。
【0009】
本発明は、畜舎内を適切に洗浄できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、家畜を収容する複数の畜房が通路に沿って設置されている畜舎内を洗浄する畜舎の洗浄装置であって、畜房を洗浄する洗浄部と、洗浄部を通路に沿って移動させる走行部と、走行部と洗浄部を制御する制御部とを備える。そして洗浄部は、洗浄液を噴射するノズルと、ノズルを三次元方向に変位可能に支持するアーム機構部とを備え、ノズルを通路から畜房内に挿入させるために、アーム機構部はその形態を変化可能とする。
【0011】
洗浄対象とする畜房は問わないが、畜房内をできる限り奥深くまでノズルを挿入して、洗浄するには次のようにすることが望ましい。
すなわち洗浄対象とする畜房は、アーム機構部と前記ノズルとを合わせた寸法のうちアーム機構部からノズルの先端までを側面視した状態で一直線に延ばした状態での突出長さの最長寸法が、畜房の寸法のうち通路側からの奥行寸法以上の畜房にすることである。
【0012】
また本発明の畜舎の洗浄装置における他の発明は、家畜を収容する複数の畜房が通路に沿って設置されている畜舎内を洗浄するものであって、畜房を洗浄する洗浄部と、洗浄部を通路に沿って移動させる走行部と、走行部と洗浄部を制御する制御部と、外観を検知する外観検知部とを備える。そして洗浄部は、洗浄液を噴射するノズルと、ノズルを三次元方向に変位可能に支持するアーム機構部とを備える。制御部は、外観検知部から取得される畜房の形状に関する情報に基づいてアーム機構部を制御し、畜房内でノズルとアーム機構部とを畜房から離隔した状態を保持しながらアーム機構部の形態を変化させて畜房内を洗浄することである。
【0013】
また本発明の畜舎の洗浄装置における他の発明は、家畜を収容する複数の畜房が通路に沿って設置されている畜舎内を洗浄するものであって、畜房を洗浄する洗浄部と、洗浄部を通路に沿って移動させる走行部と、走行部と洗浄部を制御する制御部と、外観を検知する外観検知部とを備える。そして洗浄部は、洗浄液を噴射するノズルと、ノズルを三次元方向に変位可能に支持するアーム機構部とを備える。制御部は外観検知部から取得される畜房の汚れ付着位置に関する情報に基づいてアーム機構部を制御し、アーム機構部の形態を変化させて汚れ付着位置にノズルを向けて洗浄することである。
【0014】
畜舎の洗浄装置は洗浄部と走行部と制御部だけで構成されても良いが、畜房を洗浄し易くするには次のようにすることが望ましい。
すなわち畜舎の洗浄装置は、洗浄部と走行部と制御部の他に、外観を検知する外観検知部と、ノズルから噴射される洗浄液の噴射条件を調整する噴射条件調整部とを備え、制御部は外観検知部から取得される畜房の汚れ具合に関する情報に基づいて噴射条件調整部を制御することである。
【0015】
畜舎の洗浄装置は、洗浄対象とする畜舎を問わないが、畜舎内を洗浄し易くするには次のようにすることが望ましい。
本発明の畜舎の洗浄装置における他の発明は、家畜を収容する複数の畜房が通路に沿って設置されると共に畜房に対する通路側に付属物が配置された畜舎内を洗浄するものであって、畜房を洗浄する洗浄部と、洗浄部を通路に沿って移動させる走行部と、走行部と洗浄部を制御する制御部と、外観を検知する外観検知部とを備える。そして洗浄部は、洗浄液を噴射するノズルと、ノズルを三次元方向に変位可能に支持するアーム機構部とを備える。制御部は外観検知部から取得される付属物の外観に関する情報に基づいてアーム機構部を制御し、アーム機構部の形態を変化させて付属物を洗浄することである。
【0016】
畜舎の洗浄装置は、洗浄対象とする畜舎を問わないが、畜舎内を洗浄し易くするには次のようにすることが望ましい。
本発明の畜舎の洗浄装置における他の発明は、家畜を収容する複数の畜房が通路に沿って設置されると共に畜房に対する通路側に付属物が配置された畜舎内を洗浄する畜舎の洗浄装置であって、畜房を洗浄する洗浄部と、前記洗浄部を通路に沿って移動させる走行部と、前記走行部と前記洗浄部を制御する制御部と、外観を検知する外観検知部とを備える。そして洗浄部は、洗浄液を噴射するノズルと、ノズルを三次元方向に変位可能に支持するアーム機構部とを備える。制御部は、外観検知部から取得される付属物の外観に関する情報に基づいてアーム機構部を制御し、ノズルとアーム機構部とを付属物から離隔した状態を保持しながらアーム機構部の形態を変化させて畜房を洗浄することである。
【0017】
アーム機構部はその詳細な構成を問わないが、畜舎内を洗浄し易くするには次のようにすることが望ましい。
すなわちアーム機構部は、走行部の上に設置される回転機構部と、走行部が水平面に配置された状態での鉛直方向に平行な回転軸を中心に回転可能であると共に回転機構部によって回転させられる本体塔と、本体塔に固定されると共にノズルが取り付けられたアーム部とを備えることである。
【0018】
畜舎の洗浄装置は洗浄部の数量を問わないが、畜舎内を洗浄し易くするには次のようにすることが望ましい。
すなわち畜舎の洗浄装置は、洗浄部が走行部の上部に一対設置されたものにすることである。
【0019】
畜舎の洗浄装置が走行する通路の床面は必ずしも水平面だけとは限らず、通路の床面の状況によっては走行部が傾斜する場合も想定される。そのような場合であっても、傾斜前と後で少なくともノズルの高さ位置をできるだけ同じ高さにするには、次のようにすることが望ましい。
すなわち畜舎の洗浄装置は、家畜を収容する複数の畜房が通路に沿って設置されている畜舎内を洗浄するものであって、畜房を洗浄する洗浄部と、洗浄部を通路に沿って移動させる走行部と、走行部と洗浄部を制御する制御部と、走行部の姿勢の変化を検出するジャイロセンサとを備え、洗浄部は、洗浄液を噴射するノズルと、ノズルを三次元方向に変位可能に支持するアーム機構部とを備え、制御部は、前記ジャイロセンサで検出された角速度の変化量に基づいてアーム機構部を制御し、アーム機構部の形態を変化させて畜房に対するノズルの相対的な高さ位置を前記走行部の姿勢の変化前に近づける補正をする。
【発明の効果】
【0020】
本発明の畜舎の洗浄装置は、アーム機構部がその形態を三次元方向に変化可能としてあるので、畜舎内の洗浄対象箇所を適切に洗浄できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の第一実施形態に係る洗浄装置を示す斜視図である。
図2】本発明の第一実施形態に係る洗浄装置のアーム機構部の駆動方向を説明する図である。
図3】本発明の第一実施形態に係る洗浄装置の制御の構成を示すブロック図である。
図4】畜房が集合した畜房ユニットと洗浄装置との畜舎内での配置を示す斜視図である。
図5】(A)、(B)図は、畜房ユニットに洗浄装置を使用する一例を説明する図で、(A)図は畜房ユニットを正面側から見た図、(B)図は畜房ユニットを左側面の側から見た図である。
図6】(A)(B)図は、畜房内にノズルを挿入した状態を示す図で、(A)図は畜房を洗浄している状態を示す図、(B)図はアーム機構部を側面から見て水平に一直線に延ばした状態を示す図である。
図7】(A)(B)図は畜舎としての鶏舎の場合の畜房を示す図で、(A)図は左側面から見た図、(B)図は(A)図中の一部をB方向から見た拡大図である。
図8】本発明の他の実施形態の洗浄装置を示す側面図である。
図9】通路の両側に畜房ユニットがある畜舎を洗浄する様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、本発明の第一実施形態の洗浄システムに適用する洗浄装置1を示す斜視図である。なお、本明細書において、「洗浄液」とは、水のみならず消毒液や化学洗剤を含む液体である。「洗浄」とは、洗浄液による洗浄である。洗浄装置1の上下左右前後の方向を図1の矢印で示すように設定する。より詳しく言えば、洗浄装置1の上下方向は、洗浄装置1が水平面に配置された状態での上下方向であり、鉛直方向ともいう。洗浄装置1の前後方向は、洗浄装置1が一直線に走行する場合の方向である。また洗浄装置1の左右方向は、洗浄装置1の上下方向と前後方向とに直交する方向である。
【0023】
洗浄装置1は、洗浄液を噴射する洗浄部2と、洗浄部2を移動させる走行部3と、走行部3と洗浄部2とを制御する制御部4と、制御部4が格納された格納ケース5と、洗浄対象物の外観を検知する外観検知部6とを備える。図1では制御部4の位置を示す引き出し線は破線で示されている。なお洗浄装置1は主に畜舎内の畜房を洗浄する用途である。
【0024】
走行部3はいわゆる車両であり、より詳しく言えば本実施形態ではクローラ式の車両である。また走行部3は、車体31と、車体31の左右に配備されると共に車体31を推進させる原動力を発揮する推進部32と、各推進部32の外周に巻き回す状態で装着されたクローラ33を備えている。また車体31には走行部3の姿勢の変化を検出するジャイロセンサ(図1には示さず)が固定されている。なお本実施形態では走行部3にジャイロセンサを固定してあるが、本発明ではこれに限らず、洗浄装置1を構成する走行部3以外の部分(例えば洗浄部2)にジャイロセンサを固定したものであっても良い。
クローラ33は履帯とも称せられ、推進部32の駆動部としての電動モーターで駆動される。走行部3は、左右のクローラ33を同じ速度で同じ方向に回転させることで直進し、異なる速度で回転させることで各クローラ33の回転速度差に応じた旋回走行(回転走行)を行う。また走行部3の車体31の上には格納ケース5と洗浄部2とが設置されている。
【0025】
洗浄部2は、走行部3の上に設置されたアーム機構部21と、アーム機構部21の先端に取り付けられたノズル22とを備える。
【0026】
アーム機構部21は、洗浄液を所望の位置から噴射できるように洗浄液の噴射位置(ノズル22の位置)を三次元方向(上下・左右・前後の方向)に変位可能とする、つまりノズル22を三次元方向に変位可能に支持する部分である。言い換えれば、アーム機構部21はその形態を三次元方向に変化可能とする。アーム機構部21は、車体31の上に設置された回転機構部210と、回転機構部210の上に設置されると共に回転機構部210によって鉛直方向に平行な回転軸A1(図2参照)を中心に回転可能な本体塔220と、本体塔220に一端部(基端部)が固定されると共に他端部(先端部)にノズル22が取り付けられたアーム部230とを備える。
【0027】
本体塔220は上下方向に長尺な部材として構成されている。また本体塔220はアーム部230が固定される面を前方に向けた状態を基準とする。そして本体塔220は、上下方向に伸縮自在な前面カバー221と、前面以外の左右側面、後面、上面を覆うカバー本体222とを含むカバー223を備える。本体塔220はカバー223の他に、カバー223の内部に収容されると共にアーム部230を上下動可能とする昇降機構部(図示せず)を備える。昇降機構部は、カバー223の内部で上下動可能な昇降子と、カバー223の内部で昇降子を昇降可能な昇降機構本体部とを備える。そして昇降子に固定されるのが、アーム部230である。アーム部230の一端部(基端部)は、前面カバー221を前後方向に貫通する状態で昇降子に固定されている。
【0028】
アーム部230は図2に示すように複数のアームをジョイントで連結したものである。この実施形態では、アーム部230は4つのアーム231~234を3つのジョイントとしての回転ジョイント241~243でそれぞれ連結してある。4つのアーム231~234をノズル22側から本体塔220側に向かって順に第1アーム231、第2アーム232、第3アーム233、第4アーム234と称することにする。同様に3つの回転ジョイント241~243をノズル22側から本体塔220側に向かって順に第1回転ジョイント241、第2回転ジョイント242、第3回転ジョイント243と称することにする。第4アーム234に対して第3アーム233は、両者を連結する第3回転ジョイント243の回転軸A2を中心に回転可能である。第3アーム233に対して第2アーム232は両者を連結する第2回転ジョイント242の回転軸A3を中心に回転可能である。第2アーム232に対して第1アーム231は、両者を連結する第1回転ジョイント241の回転軸A4を中心に回転可能である。また第1アーム231には、洗浄液を噴出するノズル22がノズル用回転ジョイント240で連結され、第1アーム231とノズル22とはノズル用回転ジョイント240の回転軸A5を中心に回転可能である。したがってアーム機構部21は、本体塔220の下に配置された回転機構部210を含めると、5つの回転軸A1~A5を中心とする回転方向C1、C2、C3、C4、C5に回転可能である。なお各回転ジョイント240~243は図示しない駆動部を備えており、回転ジョイント240~243によって連結された2つの部材のうち一方に対して他方が回転駆動するようになっている。ちなみに図2では外観検知部6を省いてある。図4も同じである。
【0029】
ノズル22は洗浄液を噴出することができるよう構成される。ノズル22は、アーム機構部21に対して着脱可能である。より詳しく言えば、ノズル22はアーム機構部21のノズル用回転ジョイント240に対して洗浄する畜舎の形状や洗浄する部分等に応じて自由に取り換え可能である。またノズル22には洗浄液を流す配管が接続されている。配管はアーム機構部21の内部と格納ケース5の内部とを通る状態で配管されており、配管のうちノズル22とは反対側の末端には洗浄液供給源(図示せず)が接続されている。
【0030】
洗浄液供給源は、洗浄液を送るポンプと、ポンプに接続された水道管や洗浄液槽等の洗浄液源とを備える。なお洗浄液供給源は、複数の洗浄液槽を洗浄液源として備える場合もあり、この場合、ポンプの他に、いずれの洗浄液槽をポンプに接続するかを切り替える切替機構部(図示せず)を備える。以後、本実施形態では、洗浄液供給源は単独の洗浄液源とポンプ(駆動部)とから構成され、洗浄液源がポンプを介して格納ケース5側の配管に接続されたものとする。
【0031】
また格納ケース5の内部において配管の一部にはノズル22から噴射する洗浄液の流量と圧力を制御するためのバルブ(図示せず)が接続されている。なおバルブ25と洗浄液供給源26とは図3において示してある。以後の説明で洗浄装置1を走行させるという場合には、走行部3とアーム機構部21と格納ケース5とが一体になった装置(洗浄装置本体)を走行させる(移動させる)ことを意味し、本実施形態では洗浄液供給源26のポンプは設置されたままで移動しないものとする。またバルブ25とポンプは、ノズル22から噴射される洗浄液の噴射条件を調整するものである。したがってバルブ25とポンプとを総称して、噴射条件調整部27と称する。
【0032】
洗浄液の噴射条件とは、ノズル22から噴射する洗浄液の流量と圧力等であり、より詳しく言えば、バルブ25、洗浄液供給源26の各駆動部の駆動量や駆動タイミング等である。
【0033】
上記した洗浄部2と走行部3とを制御するのが制御部4である。また洗浄装置1は洗浄部2・走行部3・制御部4・格納ケース5・外観検知部6の他に、図3に示すように洗浄対象物に関する情報を制御部4の外部から入力したり、外観検知部6から取得される情報を表示したり、洗浄部2や走行部3を遠隔操作したりする遠隔操作入力部71とを備える。また洗浄対象物は畜舎の内部であり、主に畜房である。
【0034】
遠隔操作入力部71は、作業者が走行や洗浄に関する動作を指示して洗浄装置1の各駆動部や洗浄液供給源26の駆動部を操作する部分である。遠隔操作入力部71は、外観検知部6と制御部4とに対し有線または無線で接続される。遠隔操作入力部71は例えば表示パネルが付いた操作端末であり、表示パネルには各種の画面が表示される。各種の画面とは、外観検知部6から取得される情報を表示する画面、走行部3を操作するための情報を表示する画面、洗浄部2を操作するための情報を表示する画面である。なお洗浄装置1は、遠隔操作入力部71と同様の機能、つまり洗浄対象物に関する情報を入力したり、外観検知部6から取得される情報を表示したり、走行部3や洗浄部2を操作したりする機能を発揮する主操作入力部72を、さらに備える。主操作入力部72は例えば格納ケース5内に収容され、格納ケース5を開いた場合には格納ケース5の外部に取り出して操作できるものとする。
主操作入力部72と遠隔操作入力部71と総称して、操作入力部7と称する。
【0035】
外観検知部6は例えばカメラなどの撮影装置6aや、位置検出センサ6bである。位置検出センサ6bは、例えば、レーザーセンサ、超音波センサ、赤外線センサが用いられる。位置検出センサ6bは、レーザ光を照射して、対象物からの反射光をから対象物の有無や距離等の検出する走査型レーダ(LiDAR:Light Detection and Ranging)であることが好ましい。本実施形態では、外観検知部6がアーム機構部21に固定されているものとする。より詳しく言えば本実施形態では、外観検知部6としての撮影装置6aがアーム機構部21の第1アーム231かノズル用回転ジョイント240に少なくとも固定されているものとする。この場合の外観検知部6としての撮影装置6aの向き(検知方向)は、ノズル22から洗浄液を噴射する方向(回転軸A5に平行な方向で第1アーム231からノズル22の先端に向かう方向)に合わせてあるものとする。ただしアーム機構部21に固定する外観検知部6の個数は多い方が望ましい。また外観検知部6は、第1アーム231かノズル用回転ジョイント240に固定するほかに、本体塔220の上に固定することも望ましく、この場合の外観検知部6の向きは、本体塔220の前面カバー221が向く方向(前方向)に合わせてあるものとする。また複数の外観検知部6を設けた場合には、複数の外観検知部6の検知方向を異ならせることができるので、異なる部分を検知対象物としたり、異なる部分を検知対象物とすることによって洗浄対象物の検知精度を向上させたりすることが望ましい。また外観検知部6の個数を複数とする場合には、図1に示すように撮影装置6aと位置検出センサ6bとを組み合わせて使用しても良い。撮影装置6aは外観を撮影して、検知対象物の外観から得られる様々な情報を制御部4に出力する。より詳しく言えば撮影装置6aは、検知対象物の一つである洗浄対象物の形状や汚れに関する情報や検知対象物と撮影装置6aとの距離に関する情報を制御部4に出力する。位置検出センサ6bは、検知対象物と位置検出センサ6bとの距離に関する情報を制御部4に出力する。なお図1の例では、撮影装置6aは第1アーム231と格納ケース5とに別々に固定され、位置検出センサ6bは回転機構部210に固定されている。格納ケース5に固定された撮影装置6aと、回転機構部210に固定された位置検出センサ6bは、何れも検知方向を前方とする。
【0036】
制御部4は、主操作入力部72の他に、走行部3と洗浄部2の動作情報および洗浄対象物の情報を記憶して管理する情報管理部40と、情報管理部40からの情報に基づいて走行部3と洗浄部2を制御する制御ユニット45とを備える。
【0037】
情報管理部40は、洗浄対象物の外観に関する情報を記憶して管理する外観情報管理部41と、洗浄部2と走行部3を駆動するときの動作に関する情報を記憶して管理する動作情報管理部42とを備える。
【0038】
外観情報管理部41は、洗浄対象物の形状に関する情報を記憶して管理する形状情報管理部411と、洗浄対象物の汚れに関する情報を記憶して管理する汚れ情報管理部412と、外観検知部6が検知した情報を記憶して管理する検知情報管理部413とを備える。
【0039】
形状情報管理部411は、洗浄対象物の形状の他に、洗浄対象としない物の形状に関する情報(配置も含む)、つまり形状に関する情報を記憶して管理する。洗浄対象物とは、少なくとも畜房であり、必要に応じて、畜房に固定された付属物や畜房の付近に設置された設備、畜舎内の通路をも含む。例えば、畜房のみを洗浄対象物とする場合、畜房を洗浄対象物の形状として記憶し、畜房以外の畜舎内の設備、畜舎内の空間に対する通路、およびこれらの配置は、洗浄対象物としない物の形状として記憶される。
また動作情報管理部42は、形状情報管理部411に記憶された情報である洗浄対象物を主とする形状に関する情報を表示するための形状表示欄を操作入力部7の画面に表示し、形状表示欄に作業者が情報を入力した場合には入力された情報を形状情報管理部411に記憶させる形状情報手動入力プログラムと、外観検知部6が検知する検知情報に基づいて形状に関する情報を形状情報管理部411の形状表示欄に自動で入力させる形状情報自動入力プログラムとを備える。
【0040】
汚れ情報管理部412は、洗浄後の目標とする外観に関する情報(目標外観情報)と、汚れ具合の基準(種類や大きさ)に関する情報(汚れ具合基準情報)と、現在の外観の汚れ具合や汚れ付着位置に関する情報(現在汚れ情報、つまり洗浄対象物のどの位置でどんな具合に汚れが付着しているのか)を記憶して管理する。
汚れ具合の種類とは、例えば糞、餌である。また家畜が鶏の場合であれば、汚れ具合の種類には、羽も含まれる。また汚れ具合の大きさとは、寸法に基づいて定められるもので、例えば大、中、小のように段階的なものとする。
また動作情報管理部42は、汚れ情報管理部412に記憶された情報である目標外観情報と汚れ具合基準情報と現在汚れ情報を表示するための汚れ表示欄を操作入力部7の画面に表示し、汚れ表示欄に作業者が情報を入力した場合には入力された情報を汚れ情報管理部412に記憶させる汚れ情報手動入力プログラムと、外観検知部6が検知する検知情報と目標外観情報と汚れ具合基準情報に基づいて現在汚れ情報を汚れ情報管理部412の汚れ表示欄に自動で入力させる汚れ情報自動入力プログラムとを備える。
【0041】
検知情報管理部413には、形状情報自動入力プログラムや汚れ情報自動入力プログラムの実行中や後述する自動モード又は手動モードの実行中の処理に基づいて外観検知部6の検知情報が記憶される。
【0042】
動作情報管理部42は、制御ユニット45が洗浄部2と走行部3を動作させるためのプログラムを記憶して管理する。動作情報管理部42のプログラムは、情報管理部40に記憶されたプログラムを実行させるための操作ボタンや、情報管理部40に記憶された情報を表示するための操作ボタンを操作入力部7に表示させるための表示プログラムと、操作入力部7からの入力操作に基づいて洗浄装置1を操作する操作プログラムと、洗浄対象物にノズル22及びアーム機構部21が衝突するのを防止する衝突防止プログラムとを備える。
【0043】
操作プログラムは、洗浄部2・走行部3・外観検知部6を駆動させるためのものである。操作プログラムは、作業者が手動で洗浄装置1を操作して洗浄する手動モードと、洗浄装置1が自動的に洗浄する自動モードと、手動モードと自動モードの何れを実行するのかを選択するために手動モードと自動モードの選択ボタンを表示すると共に作業者が操作した選択ボタンに対応するモードを実行するための選択モードとを備える。
【0044】
手動モードは、作業者が操作入力部7に入力した操作手順通りに洗浄装置1を動かしてノズル22の位置を移動させながらノズル22から洗浄液を噴射する手動洗浄モードと、作業者が操作入力部7に入力した操作手順通りに洗浄装置1を動かして所望の位置に移動する手動走行モードと、手動洗浄モードと手動走行モードとの何れを実行するのかを選択する選択モードとを備える。
【0045】
手動洗浄モードは、洗浄装置1に手動で洗浄させるために必要な操作ボタンを操作入力部7の画面に表示し、その操作ボタンに対して作業者が行った操作に基づいて洗浄装置1を駆動してノズル22から洗浄液を噴射させる。
【0046】
手動走行モードは、洗浄装置1を手動で走行させるために必要な操作ボタンを操作入力部7の画面に表示し、その操作ボタンに対して作業者が行った操作に基づいて洗浄装置1を駆動して走行する。
【0047】
自動モードは、外観検知部6と走行部3とから出力される現在の情報に基づいて、ノズル22と洗浄対象物の相対的な位置関係を判定し、その判定結果に対応するノズル22の移動軌跡を求めて、そのノズル22の移動軌跡通りにノズル22の位置を移動させながら洗浄液の噴射条件通りにノズル22から洗浄液を噴射する自動洗浄モードと、外観検知部6と走行部3とから出力される現在の情報に基づいて、洗浄装置1と洗浄対象物との相対的な位置関係を判定し、その判定結果に対応する洗浄装置1の走行軌跡を求めて、その走行軌跡通りに洗浄装置1を走行させる自動走行モードと、自動洗浄モードと自動走行モードの何れを実行するのかを選択するために自動洗浄モードと自動走行モードの選択ボタンを表示すると共に作業者が操作した選択ボタンに対応するモードを実行するための選択モードと、自動洗浄モードと自動走行モードの実行を取り消す取消モードとを備える。
【0048】
自動走行モードは、外観検知部6から出力される検知情報に基づいて畜舎内の環境地図を作成する環境地図作成プログラムと、外観検知部6から出力される検知情報に基づいて畜舎内での走行部3の位置を推定する自己位置推定プログラムとを備える。自動走行モードは、目標位置(目標対象物)を予め定めておくことにより、洗浄装置1を目標位置まで移動し、停止させる。
【0049】
環境地図作成プログラムと自己位置推定プログラムとの同時実行は、いわゆるSLAMである。SLAMとは、Simultaneous Localization and Mapping(自己位置推定と環境地図作成の同時実行)の略称で、移動体である洗浄装置1の自己位置推定と環境地図作成を同時に行う技術の総称である。
自己位置推定プログラムは、外観検知部6としての位置検出センサ6bから出力される検知情報や走行部3の駆動量から走行部3の移動量を推定して、走行部3の位置を推定するものである。
環境地図作成プログラムは、位置検出センサ6bから出力される検知情報に基づいて畜舎内の地図を作成し、畜舎内の情報を形状情報管理部411に記憶するものである。
【0050】
自動洗浄モードは、形状情報管理部411に記憶された形状に関する情報に基づいて洗浄対象物を洗浄するときのノズル22の移動軌跡を予め定めてある。また自動洗浄モードは、外観検知部6と走行部3とから出力される現在の情報に基づいて、ノズル22と洗浄対象物との現状の相対的な位置関係を判定し、その判定結果に対応させてノズル22の移動軌跡通りにノズル22の位置を移動させ、洗浄液の噴射条件通りにノズル22から洗浄液を噴射する。
【0051】
洗浄液の噴射条件は動作情報管理部42に記憶(設定)される。洗浄液の噴射条件は、洗浄対象物の現状の汚れ具合に関係なく洗浄対象物の形状のどの位置でも同じに定められたもの(汚れ具合非対応タイプ)と、洗浄対象物の現状の汚れ具合に対応させて洗浄対象物の形状の位置によって異なるように定められたもの(汚れ具合対応タイプ)とがある。
汚れ具合対応タイプは、汚れ具合基準情報に対応させて変化する噴射条件が定められる。洗浄液を噴射する前に外観検知部6で洗浄対象物の全面を検知した場合に、洗浄対象物の形状における汚れ位置と汚れ具合とが現在汚れ情報として汚れ情報管理部412に記憶される。自動洗浄モードを汚れ具合対応タイプで実行すると、ノズル22の位置が変位するごとに、その位置に対応する洗浄液の噴射条件が汚れ情報管理部412の現在汚れ情報に基づいて定まるようになっている。
【0052】
ノズル22の移動軌跡は、少なくともアーム機構部21の駆動条件によって定められ、動作情報管理部42に記憶(設定)される。アーム機構部21の駆動条件とは、アーム機構部21の各駆動部の駆動量や駆動タイミング等である。アーム機構部21の駆動部は、本実施形態では5つの回転軸A1~A5に対応する数量存在する。そしてアーム機構部21の駆動条件が洗浄対象物の形状と洗浄対象物に対する洗浄装置1の相対的な位置とに対応させて設定され、それにより洗浄対象物に対するノズル22の移動軌跡が設定される。移動軌跡には洗浄対象位置に対するノズル22の距離と向きが含まれる。
また洗浄対象物の形状とは全体の寸法、内部の寸法、洗浄対象物が畜房である場合にはノズル22を畜房内に挿入する部分(開口部)の大きさ、位置である。
洗浄対象物に対する洗浄装置1の相対的な位置とは、洗浄対象物に対して上下、左右、前後に離れている距離である。
またノズル22の移動軌跡は、アーム機構部21の駆動条件と走行部3の駆動条件によって定められることもあり、動作情報管理部42に記憶(設定)される。走行部3の駆動条件とは、推進部32の駆動条件、洗浄装置1を前後方向に移動させたり、所定角度旋回させたりするものである。そしてアーム機構部21の駆動条件と走行部3との駆動条件が洗浄対象物の形状に対応させて設定され、それにより洗浄対象物に対するノズル22の移動軌跡が設定される。
なおノズル22の移動軌跡は、自動洗浄モードに設定されるだけでなく、形状情報自動入力プログラムと汚れ情報自動入力プログラムにも設定される。形状情報自動入力プログラムと汚れ情報自動入力プログラムで設定されるノズル22の移動軌跡は、自動洗浄モードに設定されるノズル22の移動軌跡と似てはいるが、目的が異なるので、異なるものとなる。
【0053】
表示プログラムは前述したように、形状情報手動入力プログラム・形状情報自動入力プログラム・汚れ情報手動入力プログラム・汚れ情報自動入力プログラムを備える他、情報管理部40に記憶された全てのプログラムのうち操作可能なプログラムを選択するための選択ボタンを操作入力部7の画面に表示し、作業者が選択ボタンを操作した場合にはその操作を動作情報管理部42に記憶するための初期画面プログラムを備える。
【0054】
衝突防止プログラムは、例えば洗浄対象物と外観検知部6との距離(検知距離)が設定された距離(設定距離)よりも長い場合には、アーム機構部21の駆動条件通りにアーム機構部21を駆動させることによって移動軌跡通りにノズル22を移動させ、設定距離に達した場合には、それ以上検知距離が短くならないようにアーム機構部21の駆動条件を変更する。なおノズル22の移動軌跡は、アーム機構部21を駆動させるだけ形成できる場合もあるし、アーム機構部21と走行部3の両方を併用して駆動させることで形成できる場合もある。変更の仕方をより具体的に説明する。
【0055】
手動モードを実行している場合には、作業者がノズル22を思い通りに移動させようとして操作入力部7を操作しても、検知距離が設定距離に達した場合にはそれ以上検知距離が短くならないように、短くなる方向にはアーム機構部21や走行部3の駆動部が駆動しないように保持し、短くなる方向以外にアーム機構部21や走行部3の駆動部が駆動するようにする。
【0056】
自動モードを実行している場合には、検知距離が設定距離よりも長い場合には洗浄対象物に対する洗浄開始位置から洗浄終了位置までのノズル22の移動軌跡(処理手順)通りにアーム機構部21や走行部3を駆動させていき、その移動軌跡の途中で検知距離が設定距離に達すると、例えばアーム機構部21や走行部3の駆動を停止させるか、次の処理手順に移ってアーム機構部21や走行部3を駆動させる。もっとも自動モードの場合には、ノズル22の移動軌跡は洗浄対象物との距離が少なくとも設定距離以上を保持した状態となるように手動で設定されるか、自動的に求められるはずなので、衝突防止プログラムがそもそも不要とも考えられる。しかし洗浄対象物の全面を短時間で洗浄しようとした場合にはアーム機構部21や走行部3の駆動条件がアーム機構部21やノズル22を洗浄対象物に衝突させるような誤った移動軌跡を手動で設定したり、自動的に求めたりすることも想定されるので、自動モードにも、衝突防止プログラムを組み込むことで、衝突防止を保障するようになる。
【0057】
このような衝突防止プログラムが実行されることで、洗浄対象物(主に畜房)の形状に関する情報に基づいてアーム機構部21と走行部3とが制御され、ノズル22とアーム機構部21とを洗浄対象物から離隔した状態を保持しながらノズル22の先端を洗浄対象物の洗浄箇所に接近させて、洗浄することができる。そして洗浄対象物が畜房である場合に、畜房の内外を洗浄するときには、ノズル22およびアーム機構部21が洗浄対象物に衝突しないようになる。
【0058】
制御ユニット45は、全体制御ユニット450と、アーム機構部21を制御するアーム機構部制御ユニット451と、バルブ25を制御するバルブ制御ユニット452と、洗浄液供給源26を制御する洗浄液供給源制御ユニット453と、走行部3を制御する走行部制御ユニット454とを備える。
【0059】
全体制御ユニット450は、情報管理部40の各管理部との間で情報を出力したり入力したり、制御ユニット45の他の制御ユニット451~454(全体制御ユニット450以外)・情報管理部40の各管理部41,42・外観検知部6に対し制御指令を出力したり、操作入力部7との間で制御指令を出力したり入力したりする。
より具体的な例としては、全体制御ユニット450は、プログラムが実行されると、プログラムの命令を順番に処理し、操作入力部7に各種の情報を入力可能な表示画面を表示させるための制御指令を情報管理部40に出力したり、操作入力部7に各種の情報が入力された場合にはその情報を情報管理部40に出力して記憶させたりするように制御指令を出力する。
【0060】
また全体制御ユニット450は、制御ユニット45の他の制御ユニット451~454に対し制御指令(一次制御指令)を出力する。すると、アーム機構部制御ユニット451は、入力された一次制御指令に対応する制御指令(二次制御指令)をアーム機構部21の駆動部に出力し、アーム機構部21を制御する。バルブ制御ユニット452は、入力された一次制御指令に対応する二次制御指令をバルブ25に出力し、バルブ25を制御する。洗浄液供給源制御ユニット453は、入力された一次制御指令に対応する二次制御指令を洗浄液供給源26の駆動部(ポンプ)に出力し、ポンプを制御する。
【0061】
走行部制御ユニット454は、入力された一次制御指令に対応する二次制御指令を走行部3の駆動部に出力し、走行部3を制御する。また走行部3のジャイロセンサ34から角速度の変化量の情報が制御ユニット45に(走行部制御ユニット454を介して全体制御ユニット450)に出力される。角速度の変化量は走行部3(洗浄装置1)の姿勢の変化でもある。
【0062】
操作プログラムの自動モードには洗浄対象物を自動的に洗浄するために、通路の床面が水平面であることを標準として、言い換えれば、走行部3が水平面の上で停止した状態を洗浄装置1の標準的な姿勢として、アーム機構部21の駆動部を駆動させるときの駆動量(標準的な駆動量)が定められている。なお標準的な姿勢の場合、アーム機構部21の本体塔220は上下方向に平行な状態となっている。
【0063】
また走行部3が傾斜した状態で停止した場合、つまり傾斜した姿勢の場合には、アーム機構部21の本体塔220は上下方向に傾斜した状態となっている。そして操作プログラムの自動モードには、走行部3の姿勢の傾き角度に対応させて標準的な駆動量を補正する補正処理が定められている。
【0064】
より詳しく言えば、通路の床面は必ずしも水平面とは限らず、凹凸がある場合や、意図していない障害物(落下物や作業部材)が置かれたままになっている場合もある。そのような場合でも、洗浄装置1は、走行部3をクローラ式としているため、走行部3が比較的容易にそれら凹凸や障害物を乗り越えていけるように構成されている。走行部3が凹凸や障害物の上で停止した場合には、洗浄装置1の姿勢は標準的な姿勢から外れ、本体塔220は上下方向に傾斜した状態になる。走行部3が傾斜した状態で停止した場合にでも、停止する前までにジャイロセンサ34から角速度の変化量が出力されるので、自動モードでは、角速度の変化量(走行部3の姿勢の傾き角度)に対応させてアーム機構部21の駆動部を駆動させるときの駆動量を補正し、その補正した駆動量を含む一次制御指令をアーム機構部制御ユニット451に出力する。そしてアーム機構部制御ユニット451はその一次制御指令に対応する二次制御指令をアーム機構部21の駆動部に出力して、その駆動部を駆動させる。このような制御をすることで、アーム機構部21を思い通りに駆動させ、ノズル22の位置が目標位置からずれないようにして洗浄を行うことができる。また洗浄しながら走行部3を駆動(走行)させることもあり、この駆動中(走行中)にもジャイロセンサ34から角速度の変化量が出力されるので、走行中に走行部3が傾斜すると、全体制御ユニット450は角速度の変化量(走行部3の姿勢の傾き角度)に対応させてアーム機構部21の駆動部を駆動させるときの駆動量を補正し、その補正した駆動量を含む制御情報をアーム機構部制御ユニット451に出力することで、ノズル22の位置を傾斜前と同じ位置を保持して、洗浄することができる。つまり制御部4は、ジャイロセンサ34で検出された角速度の変化量に基づいて、洗浄対象物(例えば畜房)に対するノズル22の相対的な高さ位置を走行部3の姿勢の変化前に近づける補正をしている。なお自動モードの補正処理は、形状情報自動入力プログラムと汚れ情報自動入力プログラムとにも組み込まれ、洗浄対象物の形状を正確に認識したり、現在汚れ情報を正確に認識したりする。
【0065】
洗浄装置1は前述したように畜舎内の畜房を洗浄する用途である。そして洗浄装置1と畜舎とで洗浄システムが形成される。畜舎内には図4に示すように、家畜を収容する複数の畜房8が通路8Sに沿って設置される。言い換えると、畜舎内には、複数の畜房8を集合させた畜房ユニット8Uと、畜房ユニット8Uの全ての畜房8に面するように延びる通路8Sとが存在する。そして畜舎内には通路8Sが延びる方向に対して直交する方向の片側に畜房ユニット8Uが設置されている。また本実施形態では通路8Sは一直線であるものとする。通路8Sを行き来する方向(一直線の方向)を通路方向、或いは横方向と称する。
【0066】
畜房8は、直方体状であり、その内部にも直方体状の空間部を備える。つまり畜房8は六面によって形成される。そして各面は畜房8に収容する家畜の種類に応じて、例えば壁であったり、網であったり、格子であったり、これらを組み合わせたりしたものとする。また畜房8は直方体状の一面側が通路8Sに対向する状態で配置される。通路8Sに対向する面を畜房8の正面部810(前面部)とする。そして正面部810は、通路8S側から畜房8の中に収容されている家畜が視認でき且つ空気が出入りするようにするための開口部を備えるものとする。図では便宜上、正面部810は何もない状態で示され、正面部810の全面が開口部となっているが、家畜が畜房8の外に逃げ出さないように正面部810の一部に開口部が形成されるものとする。また畜房8は、正面部810以外の他の五面は、下方側の面を区画する床面部820と、上方の側を区画する天面部830と、通路8S側と反対側になる背面側を区画する背面部(後面部)840と、通路8Sに沿う方向を対向する状態で区画する左の側面部850と右の側面部860とを備える。なお畜房8の前後・左右は、洗浄装置1の前後・左右とは必ずしも一致しない。洗浄装置1の前後は、洗浄装置1を一直線に移動させるときの方向であり、通常、通路8Sに沿って移動させるので、通路8Sに対し平行な方向(通路方向)となる。一方、畜房8の前後は、平面視して通路8Sに対し直交する方向(通路方向に直交する方向)である。畜房8の前側を手前側、畜房8の後側を奥側と称することもある。
【0067】
畜房8の寸法のうち通路8S側からの奥行寸法8Lは図6(B)に示すように、アーム機構部21とノズル22とを合わせた寸法のうちアーム機構部21からノズル22の先端までを側面視した状態で一直線に延ばした状態での突出長さの最長寸法L以下、図では当該突出長さの最長寸法L未満となっている。また図示の例では当該突出長さの最長寸法Lとは、アーム部230を水平方向に一直線に延ばした状態でのアーム部230とノズル22とを合わせた長さ(本体塔220からノズル22の先端までの水平方向に突出する長さ)である。
【0068】
畜房ユニット8Uは図4に示すように複数の畜房8の六面における各面が畜房8毎に同じ方向を向くように規則的に並べたものである。より詳しく言えば、畜房ユニット8Uは直方体状であり、複数の畜房8を上下方向に積み重ねると共に横方向(通路方向)に隣り合う状態で配置してある。積重ねた数を段数とし、隣り合う数を列数とする。そうすると、畜房ユニット8Uは、畜房8を複数段、複数列配置したものである。本実施形態では畜房ユニット8Uは、畜房8を上下方向に3つ積み重ねた3段で且つ通路方向に2つ隣り合わせた2列であるものとする。以下では、本実施形態の畜房ユニット8Uのことを3段2列の畜房ユニット8Uと称することがある。
【0069】
以後の説明において、畜房8の位置を表現する用語として、「上段」、「中段」、「下段」という用語を使うが、「上段」とは最上段を意味し、「下段」は最下段を意味し、「中断」とは最上段と最下段の間の任意の段を意味する用語として定義する。
【0070】
上下に積み重ねられた2つの畜房8は、下側の畜房8の天面部830と、上側の畜房8の床面部820によって区画されることになるが、これら天面部830と床面部820は別々の構成物であっても良いし、共用するひとつの構成物であっても良い。また横方向に隣り合う2つの畜房8は、右側の畜房8の左の側面部850と左側の畜房8の右の側面部860によって区画されることになるが、これら側面部850,860は別々の構成物であっても良いし、共用する一つの構成物であっても良い。2つの畜房8を区画する部分を一つの構成物で共用する場合であっても、説明する畜房8が異なれば、当該一つの構成物(区画する部分)を異なる呼称で説明をする。
【0071】
上記した畜舎に対して洗浄装置1を使用して畜舎を洗浄する方法の一例は以下の通りである。作業者が洗浄装置1の洗浄部2と走行部3とを手動で遠隔操作しながら手動走行モードと手動洗浄モードを用いて、つまり完全手動モードで洗浄する例を説明する。また以下では、畜舎内に3段2列の畜房ユニット8Uが通路8Sに沿って配置され、畜房8を洗浄する順番は、3段2列の畜房ユニット8Uの右側の列の畜房8、左側の列の畜房8の順とし、各列の3つの畜房8を上から下に向かう順(上段、中段、下段の順)とする。
【0072】
1)作業者が洗浄装置1の主電源を入れると、動作情報管理部42に記憶されたプログラムのうち初期画面プログラムが実行される。すると、操作入力部7の画面にどのプログラムを実行するか決定するための操作ボタンを表示させ、作業者が押すボタンを認識する処理がなされる。
具体的には全体制御ユニット450が動作情報管理部42に対しどのプログラムを実行するか決定するための操作ボタンを表示するための画面情報を操作入力部7に出力するように制御指令する。以下では操作入力部7のうち遠隔操作入力部71で操作するものとし、遠隔操作入力部71の電源を入れることにする。そうすると、遠隔操作入力部71にはどのプロクラムを実行するか決定するための操作ボタンが表示される。ここでは操作プログラムを実行するための操作ボタンを押すことにする。以下では遠隔操作入力部71の画面に表示をさせるための具体的な処理や、その画面への操作に対する具体的な処理の詳細は割愛する。
【0073】
2)操作プログラムのうち選択モードが実行され、遠隔操作入力部71の画面に自動モードか手動モードかを選択するための選択ボタンを表示させ、作業者が押す選択ボタンを認識する処理がなされる。ここでは作業者が手動モードの選択ボタンを押す。
【0074】
3)そうすると、操作プログラムのうち手動モードの選択モードが実行され、遠隔操作入力部71の画面に手動走行モードの選択ボタンと手動洗浄モードの選択ボタンを表示させ、作業者が押した選択ボタンを認識する処理がなされる。ここでは作業者が手動走行モードの選択ボタンを押す。
【0075】
4)手動走行モードが実行され、遠隔操作入力部71の画面に、外観検知部6(ここでは撮影装置であるものとする)が検知した映像と、走行部3を駆動させるために必要な操作ボタン(走行部操作ボタン)と、外観検知部6の位置や向きを変えるためにアーム機構部21を操作するために必要な操作ボタン(アーム機構部操作ボタン)を表示させ、これら操作ボタンに対する作業者の操作に対応して走行部3を駆動させたり、アーム機構部21を駆動させたりする処理がなされる。なお遠隔操作入力部71の画面の一部には手動洗浄モードを選択するための選択ボタン(手動洗浄モード選択ボタン)をも表示させる処理がなされるものとする。
【0076】
5)そして作業者が走行部操作ボタンを操作する。そうすると、その操作が遠隔操作入力部71から動作情報管理部42に出力されて、動作情報管理部42に記憶されると共に、その操作が全体制御ユニット450に出力される。動作情報管理部42には操作に対応する走行部3の駆動条件が予め設定されており、全体制御ユニット450が当該対応する走行部3の駆動条件を出力するように動作情報管理部42に制御指令する。その制御指令に基づいて当該対応する走行部3の駆動条件が動作情報管理部42から全体制御ユニット450に出力される。全体制御ユニット450が当該対応する走行部3の駆動条件を一次制御指令として走行部制御ユニット454に出力すると、走行部制御ユニット454が一次制御指令に対応する二次制御指令を走行部3の駆動部に出力する。このようにすることで、制御部4が走行部3を制御し、洗浄装置1が作業者の思い通りに走行する。
【0077】
6)そして作業者の操作によって洗浄装置1が畜舎内の通路8Sを走行して3段2列の畜房ユニット8Uの前に移動し、2列のうち最初に洗浄すべき列の前の所望の位置で停止する。ここでは、2列のうち右側の列の前の所望の位置で停止するものとする。なお作業者が走行部操作ボタンを押しながら、或いは走行部操作ボタンを押すことなしにアーム機構部操作ボタンを操作することもある。この操作に対する処理についてはこの後の説明で詳述するが、その処理によって遠隔操作入力部71の画面には作業者が思った通りの映像が表示される。そして停止後に作業者が手動洗浄モード選択ボタンを押す。
【0078】
7)そうすると手動洗浄モードが実行され、遠隔操作入力部71の画面に、洗浄部2を駆動させるために必要な操作ボタンと、洗浄部2の駆動中に走行部3を駆動させられるようにするための手動走行モード選択ボタンとを表示させ、その操作ボタンに対する作業者の操作に対応して洗浄部2を駆動させたり、手動走行モードに移ったりする処理がなされる。洗浄部2を駆動させる処理とは、アーム機構部21を駆動させたり、バルブ25を駆動させたり、洗浄液供給源26を駆動させたりする処理である。洗浄部2を駆動させるために必要な操作ボタンとは、アーム機構部操作ボタン、ノズル22から洗浄液を思ったように噴射する操作をするための噴射操作ボタンである。
【0079】
8)そして作業者がアーム機構部操作ボタンを操作する。そうすると、その操作が遠隔操作入力部71から動作情報管理部42に出力されて記憶されると共に、全体制御ユニット450に出力される。動作情報管理部42には操作に対応するアーム機構部21の駆動条件が予め設定されており、全体制御ユニット450が当該対応するアーム機構部21の駆動条件を出力するように動作情報管理部42に制御指令する。その制御指令に基づいて当該対応するアーム機構部21の駆動条件が動作情報管理部42から全体制御ユニット450に出力される。全体制御ユニット450が当該対応するアーム機構部21の駆動条件を一次制御指令としてアーム機構部制御ユニット451に出力すると、アーム機構部制御ユニット451が一次制御指令に対応する二次制御指令をアーム機構部21の対応する駆動部に出力する。このようにすることで、制御部4がアーム機構部21を制御し、アーム機構部21が作業者の思い通りに走行する。ここでは、作業者は、本体塔220が畜房8の正面に正対するようにアーム機構部操作ボタンを操作するものとする。そうすることで、アーム機構部21の回転機構部210の駆動部を制御し、本体塔220が所定角度回転して、本体塔220の前面カバー221が畜房8の正面部810に正対する。
【0080】
9)作業者が上段の畜房8から洗浄できるようにするためにアーム機構部操作ボタンを操作し、図5に示すようにノズル22を上段の畜房8に対向するようにする。そうすることで、制御部4がアーム機構部21を制御し、外観検知部(図示せず)が上段の畜房8の正面部810を検知し、ノズル22が上段の畜房8に対向する。このときのアーム機構部21の動作をより具体的に説明すると、本体塔220の昇降機構部が駆動して、アーム部230を上昇させ、アーム部230の回転ジョイントの駆動部が駆動して、外観検知部6とノズル22とが最上段の畜房8の正面に対向する。なお前述したように外観検知部6としての撮影装置がアーム機構部21の第1アーム231に固定されている
【0081】
10)作業者が噴射操作ボタンを操作する。そうすると、その操作が遠隔操作入力部71から動作情報管理部42に出力されて記憶されると共に、全体制御ユニット450に出力される。動作情報管理部42には操作に対応する洗浄液の噴射条件が予め設定されており、全体制御ユニット450が当該対応する噴射条件を出力するように動作情報管理部42に制御指令する。その制御指令に基づいて当該対応するバルブ25の駆動部の駆動条件やポンプの駆動条件が動作情報管理部42から全体制御ユニット450に出力される。全体制御ユニット450が当該対応する駆動条件を一次制御指令としてバルブ制御ユニット452や洗浄液供給源制御ユニット453に出力すると、バルブ制御ユニット452や洗浄液供給源制御ユニット453が一次制御指令に対応する二次制御指令を対応する駆動部に出力する。このようにすることで、制御部4がバルブ25や洗浄液供給源26のポンプやアーム機構部21を制御し、洗浄液がノズル22から作業者の思い通りに噴射される。
【0082】
11)作業者が遠隔操作入力部71の画面を見ながら畜房8の正面部810の所望の位置を洗浄するようにノズル22を移動させるための操作(アーム機構部操作ボタンや走行部操作ボタンの操作)を遠隔操作入力部71の画面に入力すると、その操作情報に基づいて制御部4がアーム機構部21を制御する。
【0083】
12)畜房8の正面部810の洗浄が終わった後に作業者が遠隔操作入力部71の画面を見ながら、畜房8の正面部810の開口部からノズル22を畜房8内に挿入するように、アーム機構部操作ボタンを操作すると、その操作情報に基づいて制御部4がアーム機構部21を制御する。なおアーム機構部操作ボタンの操作だけでなく、走行部操作ボタンを操作することもあり、その場合にはその操作情報に基づいて制御部4が走行部3を制御する。以後の操作でも同様である。
【0084】
13)ノズル22を畜房8内に挿入した後に作業者が遠隔操作入力部71の画面を見ながら畜房8内を洗浄するために、ノズル22を畜房8内の所望の位置を洗浄するように、アーム機構部操作ボタンを操作すると、その操作情報に基づいて制御部4がアーム機構部21を制御する。
【0085】
畜房8の内部で洗浄を行っている状態が図6(A)に示されている。この図6(A)の状態で第1アーム231、第2アーム232、第3アーム233を動かしたり、本体塔220を上下方向の回転軸A1を中心にして回転させたりすることで、畜房8内部の全体を洗浄していく。畜房8の洗浄は例えば通路8Sに対して奥側から手前側に向かって順次行われるものとする。
【0086】
14)畜房8内の洗浄が終わった後に作業者が遠隔操作入力部71の画面を見ながら畜房8の正面部810の開口部からノズル22を畜房8の外に出すように、アーム機構部操作ボタンを操作すると、その操作情報に基づいて制御部4がアーム機構部21を制御する。
【0087】
この4)~14)の制御中に衝突防止プログラムは常時実行されているものとする。操作ボタンに対する操作がノズル22やアーム機構部21を畜房8に衝突させるような操作であった場合には、制御部4が走行部3やアーム機構部21の駆動を制限し、ノズル22やアーム機構部21が畜房8に衝突しないようにする。
【0088】
15)上段の畜房8の洗浄が終わった後に作業者が遠隔操作入力部71の画面を見ながら中段の畜房8を洗浄するために、9)~14)の手順通りに、同じ要領で作業者が操作することで、中段の畜房8の洗浄が終わる。
【0089】
16)中段の畜房8の洗浄が終わった後に、9)~14)の手順通りに、同じ要領で作業者が操作することで、下段の畜房8の洗浄が終わる。
【0090】
17)左側の列の畜房8を洗浄するために、遠隔操作入力部71の画面に対して作業者が所望の位置に移動するために走行部操作ボタンを操作すると、走行部3が駆動して、洗浄装置1が左側の列の前の所望の位置で停止する。以後、9)~16)の手順通りに、同じ要領で作業者が操作することで、左側の列の畜房8の洗浄が終わる。
【0091】
18)最後に遠隔操作入力部71の画面に対して作業者が操作することで、通路8Sの床面を洗浄する。以上で完全手動モードで洗浄する例の説明を終わる。
【0092】
次に作業者が洗浄装置1の洗浄部2と走行部3とを自動で遠隔操作しながら自動走行モードと自動洗浄モードを用いて洗浄する例を説明する。また以下では、完全手動モードと同じ畜舎内の畜房ユニット8Uに対し、同じ順番で畜房8を洗浄するものとする。
【0093】
1)作業者が洗浄装置1の主電源を入れると、動作情報管理部42に記憶されたプログラムのうち初期画面プログラムが実行される。すると、操作入力部7の画面にどのプログラムを実行するか決定するための操作ボタンを表示させ、作業者が押すボタンを認識する処理がなされる。
【0094】
2)操作プログラムのうち選択モードが実行され、遠隔操作入力部71の画面に自動モードか手動モードかを選択するための選択ボタンを表示させ、作業者が押す選択ボタンを認識する処理がなされる。ここでは作業者が自動モードの選択ボタンを押す。
【0095】
3)そうすると、操作プログラムのうち自動モードの選択モードが実行され、以降の動作が順次または並行的に処理される。
【0096】
4)具体的には遠隔操作入力部71の画面の表示から自動走行ボタンが押された場合と同様の処理が実行される。衝突プログラムと自己位置推定プログラムと環境地図作成プログラムとが実行され、畜舎内を洗浄装置1が移動すると共に、洗浄部2のアーム機構部21が駆動しながら、畜舎内の環境地図の作成および作成された環境地図内への自己位置の作成がなされ、情報管理部40に記憶される。そして洗浄装置1が予め設定された目標位置、つまり3段2列の畜房ユニット8Uの前に移動し、2列のうち右側の列の前の所定の位置で停止する。この移動中には遠隔操作入力部71の画面に、外観検知部6が検知した映像を表示させる。
【0097】
5)次に、形状情報自動入力プログラムが実行される。ノズル22の移動軌跡通りにノズル22と共に外観検知部6が移動し、洗浄対象物である畜房8の形状に関する情報が形状情報管理部411に記憶される。この説明では形状情報自動入力プログラムは、外観検知部6が畜房8の正面部810の形状を認識することで、畜房8の全体の形状が把握できるものとする。また畜房ユニット8Uの全ての畜房8の形状は同じであるものとするので、ここでは1つの畜房8のみの形状を認識することで良いものとする。
【0098】
6)次に、汚れ情報自動入力プログラムが実行される。ノズル22の移動軌跡通りにノズル22と共に外観検知部6が移動し、通路8S側から畜房8の正面部810を検知し、その後にノズル22と共に外観検知部6が正面部810の開口部から畜房8の内部に挿入され、畜房8の内部から少なくとも正面部810以外の5面を検知することで、現在汚れ情報が汚れ情報管理部412に記憶される。また畜房8毎に現在汚れ情報は異なるのが通常なので、汚れ情報自動入力プログラムは、全ての畜房8を外観検知部6で検知できるようにノズル22の移動軌跡が定められている。ここでは、3段2列の畜房ユニット8Uであり、洗浄装置1を自動的に移動させながら外観検知部6が全ての畜房8を検知するものとする。このようにすることで洗浄する前に全ての畜房8の現在汚れ情報が汚れ情報管理部412に記憶される。そして洗浄装置1が予め設定された最初の目標位置に戻って停止する。
【0099】
7)洗浄対象物の形状及び現在汚れ情報が検知された場合、次に、自動洗浄が実行される。ノズル22の移動軌跡通りに畜房8を洗浄するように、右側の列の上段の畜房8から下段の畜房8を洗浄する。その後、左側の畜房8の前に走行部3が移動して所定の位置で停止する。そして左側の列の上段の畜房8から下段の畜房8を洗浄する。
各畜房8を洗浄するときのノズル22の移動軌跡は、まず正面部810の全域を洗浄し、次に通路8Sからノズル22を畜房8の内部に開口部から挿入して、畜房8内の全域を洗浄し、その後、ノズル22を開口部から抜き出するものとする。また畜房8を洗浄するときには、制御部4がアーム機構部21と走行部3とを制御することで、ノズル22が汚れ付着位置には確実に向けられ、制御部4が噴射条件調整部27のバルブ25と洗浄液供給源26のポンプを制御することで、汚れ付着位置における現在の汚れ具合に対応して噴射条件が変化する。
自動モードは、適宜に各動作工程を省略できる。例えば、汚れ具合非対応タイプの場合、「6)」の工程を省略して「7)」の工程を実行できる。
以上で自動モードの説明を終わる。
【0100】
上記した第一実施形態の洗浄装置1は、アーム機構部21がその形態を三次元方向に変化可能としてあるので、畜舎内の洗浄対象箇所を適切に洗浄できる。より詳しくは以下の通りである。
【0101】
上記した第一実施形態の洗浄装置1は、ノズル22を通路8Sから畜房8内に挿入させるために、アーム機構部21がその形態を変化可能とし、ノズル22を三次元方向に変位可能に支持するので、アーム機構部21がその形態を変化しないものに比べれば、畜房8内の洗浄したい位置にノズル22を接近させることができる、つまり畜房8内を適切に洗浄できる。
【0102】
また上記した第一実施形態の洗浄装置1は、アーム機構部21とノズル22とを合わせた寸法のうちアーム機構部21からノズル22の先端までを側面視した状態で一直線に延ばした状態での突出長さの最長寸法Lが、洗浄対象とする畜房8の寸法のうち通路8S側からの奥行寸法8L以上なので、例えば当該突出長さの最長寸法が奥行寸法8L未満の洗浄装置に比べて、畜房8内の奥深い位置でも、ノズル22の先端を接近させて、洗浄することができる。
【0103】
また上記した第一実施形態の洗浄装置1は、制御部4が外観検知部6から取得される畜房8の形状に関する情報に基づいてアーム機構部21を制御し、畜房8内でノズル22とアーム機構部21とを畜房8から離隔した状態を保持しながらアーム機構部21の形態を変化させて畜房8内を洗浄するので、畜房8を傷つけなくて済む。
【0104】
また上記した第一実施形態の洗浄装置1は、制御部4が外観検知部6から取得される畜房8の汚れ付着位置に関する情報に基づいてアーム機構部21を制御し、汚れ付着位置にノズル22を向けて洗浄するので、例えば制御部が外観検知部6から取得される畜房8の汚れ付着位置に関する情報とは無関係にアーム機構部21を制御するものに比べて、畜房8を適切に洗浄することができる。
【0105】
また上記した第一実施形態の洗浄装置1は、制御部4が外観検知部6から取得される畜房8の汚れ具合に関する情報に基づいて噴射条件調整部27を制御するので、例えば当該汚れ具合に関する情報とは無関係に洗浄するものに比べて、洗浄液の量を適切に保ちながら畜房8を洗浄することができる。
【0106】
また上記した第一実施形態の洗浄装置1は、アーム機構部21が回転機構部210と本体塔220とアーム部230とを備えるので、回転機構部210を駆動させることによって本体塔220とアーム部230とを介してノズル22の位置を変えて洗浄することができる。
【0107】
また上記した第一実施形態の洗浄装置1は、走行中に水平面に対して傾斜した状態となっても、自動モードには走行部3の姿勢の傾き角度に対応させて標準的な駆動量を補正する補正処理が定められているので、制御部4がジャイロセンサ34で検出された角速度の変化量に基づいて、畜房8に対するノズル22の相対的な高さ位置を走行部3の姿勢の変化前に近づける補正をするので、傾斜前後で同じ高さをできるだけ保つようにして洗浄をすることができる。
【0108】
上記した畜舎が鶏舎の場合には図7に示すように通常、畜房ユニット8Uの畜房8に対する通路8S側に付属物としての卵受け部9が設置されている。卵受け部9は上方に開口する形となっている。畜房8の床面部820は畜房8の正面部810に向かうにつれて低くなっており、鶏が畜房8の床面部820の上に生んだ卵は、床面部820の上を畜房8の正面部810に向かって転がってきて、畜房8の外に落下するようになっている。その落下した卵を受けるように、畜房8の床面部820の上面よりも低い位置に卵受け部9は設置される。また卵受け部9は、横方向に並んだ複数の畜房8に亘って連続する状態で設置される。そして卵受け部9の上に別の付属物として卵を搬送する卵搬送ベルト91が設置されている。この卵搬送ベルト91は図示しない駆動機構によって卵受け部9の上を畜房8の通路方向に移動するようになっている。そして卵搬送ベルト91の移動によって卵が搬送される。そして、卵搬送ベルト91で搬送された卵は、畜房8に隣接するように設置された卵上下移動エレベーター(図示せず)で回収されて、次の装置(卵の汚れを落とす装置など)に送られる。
【0109】
上記した洗浄装置1は、卵受け部9と卵搬送ベルト91と卵上下移動エレベーターを洗浄することも可能である。また洗浄装置1は、付属物としての卵受け部9と卵搬送ベルト91を洗浄対象とすることにより、制御部4が外観検知部6から取得される付属物の情報に関する情報に基づいてアーム機構部21を制御して、アーム機構部21の形態を変化させて付属物を洗浄することができる。
ちなみに前述したように自動洗浄モードは、形状情報管理部411に記憶された形状に関する情報に基づいて洗浄対象物(ここでは付属物)を洗浄するときのノズル22の移動軌跡を予め定めてある。また自動洗浄モードは、外観検知部6と走行部3とから出力される現在の情報に基づいて、ノズル22と洗浄対象物(付属物)との現状の相対的な位置関係を判定し、その判定結果に対応させてノズル22の移動軌跡通りにノズル22の位置を移動させ、洗浄液の噴射条件通りにノズル22から洗浄液を噴射する。
しかも制御部4は洗浄中に衝突防止プログラムを実行することで、ノズル22とアーム機構部21とを付属物と畜房8とから離隔した状態を保持しながら、付属物と畜房8とを洗浄することができる。
【0110】
そして卵搬送ベルト91が繊維で網目状に形成されている場合には、その繊維の網目を外観検知部6で検知して形状情報管理部411に記憶させ、その形状情報管理部411に記憶させた情報(外観検知部6から取得される付属物の外観情報)に基づいて制御部4が網目を形成する繊維の延びる方向に沿ってノズル22を移動させるようにしながら洗浄液を噴出させるようにアーム機構部21の駆動を制御することができる。また洗浄装置1は、卵搬送ベルト91の表面形状を外観検知部6で検知して、その検知された情報に基づいて制御部4が卵搬送ベルト91の表面の全域に洗浄液が当たるようにアーム機構部21の駆動を制御することもできる。
【0111】
上記した例の畜舎は、通路8Sが延びる方向に対して直交する方向の片側にのみ畜房ユニット8Uを配置した例であったが、図9に示すように畜舎は通路8Sが延びる方向に対して直交する方向の両側に畜房ユニット8Uを対向する状態で配置した例であってもよい。この場合に上記した洗浄装置1は、本体塔220の下に設置した回転機構部210が本体塔220を上下方向の回転軸A1を中心にして回転可能になっているので、効率良く洗浄することができる。
【0112】
さらに別の例の実施形態の洗浄装置1Aとしては図8に示すように、洗浄部2を一対設けたものがある。より詳しく言えば、洗浄装置1Aは、走行部3の車体31の上に一対の洗浄部2を設置してある。一対の洗浄部2は、図示の例では走行部3の車体31の上において左右に並べて設置してある。また一対の洗浄部2は図示しないが、平面視して一対のクローラ33と平行に、つまり前後に並べて設置してもよい。これにより、一対の洗浄部2のアーム機構部21を別々に駆動して、通路8Sが延びる方向に対して直交する方向の両側に配置された畜房ユニット8Uを同時に洗浄したり、通路8Sの床面のうち洗浄装置1に対して走行方向の前後に位置する面を同時に洗浄したりすることもできる。
【0113】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。なお、畜房8の数はこの実施形態に限られたものではなく、より多くの数の畜房8数で構成される畜舎にも本発明が適用できる。
【0114】
また洗浄装置1は、上記実施形態では、外観検知部6を第1アーム231かノズル用回転ジョイント240に固定したものであったが、前述したように本発明ではこれに限らず、その他の部分に固定したものでもよいし、複数の外観検知部6を固定したものであっても良い。例えば洗浄装置1は、外観検知部6を第1アーム231かノズル用回転ジョイント240に固定するほかに、外観検知部6を本体塔220の上にも固定したものであっても良い。第1アーム231かノズル用回転ジョイント240に固定した外観検知部6(「ノズル側外観検知部6」と称する。)は、洗浄中には洗浄液がかかることによって検知精度が洗浄前よりも悪化することが想定される。この場合、本体塔220の上の外観検知部6(「本体塔側外観検知部6」称する。)としての撮影装置で畜房8の正面部810を撮影したり、本体塔側外観検知部6で正面部810との畜房8との相対的な位置関係を検知したりし、ノズル側外観検知部6と本体塔側外観検知部6の検知情報を併用することで、ノズルの位置をより正確に推測し、それによって洗浄箇所を適切に洗浄できる可能性が向上する。
【符号の説明】
【0115】
1,1A 洗浄装置
2 洗浄部
L 突出長さの最長寸法
21 アーム機構部
22 ノズル
210 回転機構部
220 本体塔
221 前面カバー
222 カバー本体
223 カバー
230 アーム部
231 第1アーム
232 第2アーム
233 第3アーム
234 第4アーム
240 ノズル用回転ジョイント
241 第1回転ジョイント
242 第2回転ジョイント
243 第3回転ジョイント
A1,A2,A3,A4,A5 回転軸
C1,C2,C3,C4,C5 回転方向
25 バルブ
26 洗浄液供給源
27 噴射条件調整部
3 走行部
31 車体
32 推進部
33 クローラ
34 ジャイロセンサ
4 制御部
40 情報管理部
41 外観情報管理部
411 形状情報管理部
412 汚れ情報管理部
413 検知情報管理部
42 動作情報管理部
45 制御ユニット
450 全体制御ユニット
451 アーム機構部制御ユニット
452 バルブ制御ユニット
453 洗浄液供給源制御ユニット
454 走行部制御ユニット
5 格納ケース
6 外観検知部
6a 撮影装置
6b 位置検出センサ
7 操作入力部
71 遠隔操作入力部
72 主操作入力部
8 畜房
8L 奥行寸法
8U 畜房ユニット
8S 通路
810 正面部
820 床面部
830 天面部
840 背面部
850 左の側面部
860 右の側面部
9 卵受け部
91 卵搬送ベルト
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9