(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】ホログラム計算
(51)【国際特許分類】
G03H 1/22 20060101AFI20241016BHJP
G02B 27/01 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
G03H1/22
G02B27/01
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022116909
(22)【出願日】2022-07-22
【審査請求日】2022-10-05
(32)【優先日】2021-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】519027213
【氏名又は名称】エンヴィシクス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100116850
【氏名又は名称】廣瀬 隆行
(74)【代理人】
【識別番号】100165847
【氏名又は名称】関 大祐
(72)【発明者】
【氏名】ティモシー スミートン
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル バーナム
(72)【発明者】
【氏名】ジェイミーソン クリスマス
【審査官】小西 隆
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/110746(WO,A1)
【文献】特表2016-519790(JP,A)
【文献】特表2014-503836(JP,A)
【文献】特表2016-532899(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02C 1/00 - 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホログラム平面に、ホログラムを表示するように構成される表示デバイスと、入射瞳、レンズ及びセンサを含む観察系であって、瞳孔拡張器を通じて前記ホログラムを見るように構成される観察系とを備え、前記瞳孔拡張器が前記表示デバイスから前記観察系への複数の光伝搬経路を与える、システムのための標的画像のホログラムを決定する方法であって、該方法は、
前記観察系の前記入射瞳において第1の複素光照射野を決定することであって、第1の複素光照射野が、前記瞳孔拡張器の前記複数の光伝搬経路のうちの第1の光伝搬経路に沿った前記表示デバイスの前記ホログラム平面から前記入射瞳への光の伝搬によってもたらされることと、第1の複素光照射野を形成するために、第1の光伝搬経路の光照射野を前記入射瞳のサイズ、形、及び位置のいずれか一つ以上にしたがって切り取ることとを含む、第1の光伝搬路のための、第1の段階と、
前記観察系の前記センサのセンサ平面における第2の複素光照射野を決定することであって、第2の複素光照射野が、前記入射瞳から前記観察系の前記レンズを経て前記センサまでの第1の複素光照射野の光の伝搬によってもたらされることと、
第2の複素光照射野の振幅成分を前記標的画像の振幅成分に基づいた振幅成分に置き換えることとを含む、第2の段階と、
前記入射瞳で第3の複素光照射野を決定することであって、第3の複素光照射野が、前記センサ平面から前記レンズを通じて戻る第2の複素光照射野の光の伝搬によってもたらされることと、前記入射瞳にしたがって切り取ることとを含む、第3の段階と、
表示平面における第4の複素光照射野を決定することであって、第4の複素光照射野が、第1の光伝搬経路に沿って戻る第3の複素光照射野の光の伝搬によってもたらされることと、ホログラム表面における伝搬する当該光を前記表示デバイスのサイズ、及びピクセルエリアの位置のいずれか又は両方にしたがって切り取ることとを含む、第4の段階と、
第4の複素光照射野に対応するデータセットからホログラムを抽出する第5の段階と、
を含む、方法。
【請求項2】
前記瞳孔拡張器によって与えられる前記複数の光伝搬経路のうちのそれぞれの異なる光伝搬経路について、第1の段階~第4の段階を繰り返し行う、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第1の段階~第4の段階は、それぞれの光伝搬経路ごとにホログラムを抽出するために前記複数の光伝搬経路のそれぞれの光伝搬経路ごとに実行され、前記複数の光伝搬経路のそれぞれに対応する複数のホログラムは、前記表示デバイスに表示するための前記ホログラムを形成するために組み合わされる、
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
第1の段階において前記ホログラム平面から伝搬される前記光は、ランダムな位相分布を含む第0の複素光照射野を含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項5】
第1の段階~第4の段階は、最終の反復から前記ホログラムを抽出する第5の段階の前に反復的に繰り返され、第2の反復及び後続の反復のために前記表示デバイスのホログラム平面から伝搬される光は、直前の反復の第4の複素光照射野の位相分布を含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ホログラムが第4の複素光照射野に対応するデータセットの位相成分から抽出されるものである、
請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ホログラムが複数の画像のホログラムであり、各画像が異なる画像距離を有し、前記方法の第2の段階がそれぞれの画像ごとに独立して実行される、
請求項1に記載の方法。
【請求項8】
各複素光照射野が波伝搬光学素子によって決定される、
請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記複素光照射野の振幅成分を前記標的画像の振幅成分に基づいた振幅成分に置き換えることは、第2の複素光照射野の前記振幅成分を前記標的画像の前記振幅成分と置き換えること、又は、前記標的画像の前記振幅成分に基づいて第2の複素光照射野の前記振幅成分を重み付けすることを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項10】
切り取ることの各ステップは、サイズ及び位置のうちの少なくとも一方にしたがって切り取ることを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記画像又は各画像が虚像である、
請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記観察系が観察者の眼であり、前記方法は、前記観察系の前記入射瞳のサイズ及び位置のうちの少なくとも1つを決定するために前記観察者の眼又は頭部を追跡することを更に含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記瞳孔拡張器の第1の光伝搬経路に沿った伝搬は、前記瞳孔拡張器の複数の光伝搬経路のうちの多数の光伝搬経路に沿った伝搬を含むとともに、前記瞳孔拡張器の前記多数の光伝搬経路からもたらされる個々の複素光照射野を組み合わせることを含み、任意選択的に、前記個々の複素光照射野が加算によって組み合わされる、
請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記瞳孔拡張器が導波路瞳孔拡張器であり、各光伝搬経路が導波路内の異なる数の内部反射に対応する、
請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記個々の複素光照射野を組み合わせることは、前記入射瞳の平面上のそれぞれの個々の複素光照射野の横方向位置を決定することを含む、
請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記個々の複素光照射野を組み合わせることは、各光伝搬経路の前記内部反射と関連付けられる全位相シフトを決定することを更に含む、
請求項14又は15に記載の方法。
【請求項17】
ヘッドアップディスプレイを使用して見るための標的画像のホログラムを決定するように構成されたホログラムエンジンであって、
前記ヘッドアップディスプレイは、ホログラム平面に、前記ホログラムを表示するように構成された表示デバイスと、前記ホログラムにしたがって空間的に変調された光を受けるように構成された瞳孔拡張器とを備え、前記ホログラムエンジンは、
入射瞳、レンズ及びセンサを含む観察系の前記入射瞳において第1の複素光照射野を決定し、第1の複素光照射野が、前記瞳孔拡張器の複数の光伝搬経路のうちの第1の光伝搬経路に沿った前記表示デバイスの前記ホログラム平面から前記入射瞳への光の伝搬によってもたらされ、第1の複素光照射野を形成するために、第1の光伝搬経路の光照射野を前記入射瞳のサイズ、形、及び位置のいずれか一つ以上にしたがって切り取り、
前記観察系のセンサのセンサ平面における第2の複素光照射野を決定し、第2の複素光照射野が、前記入射瞳から前記観察系の前記レンズを通じた第1の複素光照射野の光の伝搬によってもたらされ、
第2の複素光照射野の振幅成分を前記標的画像の振幅成分に基づいた振幅成分に置き換え、
前記入射瞳で第3の複素光照射野を決定し、第3の複素光照射野が、前記センサ平面から前記レンズを通じて戻る第2の複素光照射野の光の伝搬によってもたらされ、前記入射瞳にしたがって切り取り、
表示平面における第4の複素光照射野を決定し、第4の複素光照射野が、第1の光伝搬経路に沿って戻る第3の複素光照射野の光の伝搬によってもたらされ、ホログラム表面における伝搬する当該光を前記表示デバイスのサイズ、及びピクセルエリアの位置のいずれか又は両方にしたがって切り取り、
第4の複素光照射野に対応するデータセットから前記ホログラムを抽出する、
ように構成された、ホログラムエンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、画像投影に関する。より具体的には、本開示は、ホログラム又はキノフォームなどの回折構造、及び、回折構造を決定する、例えば計算又は検索する方法に関する。幾つかの実施形態は、視線追跡情報に基づくリアルタイムホログラム計算に関する。幾つかの実施形態は、虚像投影に関する。幾つかの実施形態は、実像の投影に関する。実施形態は、導波路を介して投影画像を見ることに関する。幾つかの実施形態は、画像生成ユニットなどのライトエンジンに関する。幾つかの実施形態は、ヘッドアップディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
物体から散乱される光は、振幅情報及び位相情報の両方を含む。この振幅情報及び位相情報は、例えば、干渉縞を備えるホログラフィック記録又は「ホログラム」を形成するべく周知の干渉技術によって感光板上に捕捉され得る。ホログラムは、当初の物体を表わす2次元又は3次元ホログラフィック再構成或いは再生画像を形成するべく適切な光による照明によって再構成され得る。
【0003】
計算機合成ホログラフィは、干渉プロセスを数値的にシミュレートすることができる。計算機合成ホログラムは、フレネル変換又はフーリエ変換などの数学的変換に基づく技術によって計算され得る。これらのタイプのホログラムは、フレネル/フーリエ変換ホログラム又は単にフレネル/フーリエホログラムと称される場合がある。フーリエホログラムは、物体のフーリエ領域/平面表示又は物体の周波数領域/平面表示と見なされ得る。また、計算機合成ホログラムは、例えば、コヒーレントレイトレーシング又はポイントクラウド技術によって計算され得る。
【0004】
計算機合成ホログラムは、入射光の振幅及び/又は位相を変調するようになっている空間光変調器でエンコードされ得る。光変調は、例えば、電気的にアドレス可能な液晶、光学的にアドレス可能な液晶、又は、マイクロミラーを使用して達成され得る。
【0005】
空間光変調器は、一般に、セル又は素子とも称され得る複数の個別にアドレス可能なピクセルを備える。光変調方式は、バイナリ、マルチレベル、又は、連続であってもよい。或いは、デバイスが連続的(すなわち、ピクセルから構成されない)であってもよく、したがって、光変調がデバイス全体にわたって連続的であってもよい。空間光変調器は、変調光が反射して出力されることを意味する反射型であってもよい。空間光変調器は、同様に、変調光が透過して出力されることを意味する透過型であってもよい。
【0006】
ホログラフィックプロジェクタは、本明細書に記載のシステムを使用して提供されてもよい。そのようなプロジェクタは、例えば、ヘッドアップディスプレイ「HUD」及び光検出並びに測距「LiDAR」に用途を見出している。
【発明の概要】
【0007】
本開示及び図面は、一般に、説明及び例示を容易にするために一次元の場合を示す。しかしながら、光学分野の当業者であれば分かるように、記載されて図示された概念が二次元ホログラムから二次元画像を与えるために二次元に拡張されてもよい。例えば、一次元の瞳孔拡張のみを説明して図示する場合があるが、読者であれば分かるように、本開示は、例えば直列の2つの一次元瞳孔拡張器を使用して、二次元瞳孔拡張にまで及ぶ。
【0008】
概して、本開示は画像投影に関する。本発明は、画像投影の方法及び表示デバイスを備える画像プロジェクタに関する。また、本開示は、画像プロジェクタと観察系とを備える投影システムに関する。本開示は、単眼及び両眼の観察系に等しく適用可能である。観察系は、観察者の1つの眼又は複数の眼を含むことができる。観察系は、光パワーを有する光学素子(例えば、人の眼の1つ/複数のレンズ)と、観察面(例えば、人の1つ/複数の眼の網膜)とを備える。プロジェクタは、「ライトエンジン」と呼ばれることがある。表示デバイス及び表示デバイスを使用して形成(又は知覚)される画像は、互いに空間的に分離される。画像は、表示平面上に形成される又は観察者によって知覚される。幾つかの実施形態では、画像が虚像であり、表示平面が虚像面と呼ばれることがある。画像は、表示デバイスに表示される回折パターン(例えば、ホログラム)を照明することによって形成される。本開示は、画像投影のための回折パターンを与えること(例えば、計算又は決定すること)、及び、回折パターンに更に関する。
【0009】
表示デバイスはピクセルを備える。表示デバイスのピクセルは、光を回折する。十分に理解されている光学素子によれば、最大回折角の大きさは、ピクセルのサイズ(及び光の波長などの他の要因)によって決定される。
【0010】
実施形態において、表示デバイスは、液晶オンシリコン(「LCOS」)空間光変調器(SLM)などの空間光変調器である。光は、LCOSからカメラ又は眼などの観察エンティティ/システムに向かって、ある範囲の回折角(例えば、0から最大回折角まで)にわたって伝搬する。幾つかの実施形態では、拡大技術を使用して、利用可能な回折角の範囲をLCOSの従来の最大回折角を超えて増大させることができる。
【0011】
実施形態では、画像が実像である。他の実施形態において、画像は、人の眼(又は複数の眼)によって知覚される虚像である。したがって、投影システム又はライトエンジンは、観察者が表示デバイスを直接見るように構成することができる。そのような実施形態において、ホログラムでエンコードされた光は、眼に直接伝搬される。この光は、「空間的に変調された」又は「ホログラフィック光」と呼ばれることがある。そのような実施形態では、自由空間又はスクリーンもしくは他の受光面のいずれかにおいて、表示デバイスと観察者との間に中間ホログラフィック再構成が形成されない。そのような実施形態において、眼の瞳孔は、観察系の入口開口であると見なされてもよく、眼の網膜は、観察系の観察面であると見なされてもよい。この構成では、眼のレンズがホログラムから画像への変換又は転換を行なうと言われることがある。
【0012】
十分に理解されている光学素子の原理によれば、眼又は他の観察エンティティ/システムによって見ることができる表示デバイス又は観察窓から伝搬する光の角度の範囲は、表示デバイスと観察エンティティとの間の距離に伴って変化する。例えば、1メートルの観察距離では、LCOSからの狭い範囲の角度のみが眼の瞳孔を通じて伝搬し、所定の眼の位置の網膜に画像を形成することができる。所定の眼の位置に関して網膜に画像を形成するべく眼の瞳孔を通じて首尾よく伝搬し得る表示デバイスから伝搬される光線の角度の範囲は、観察者に「見える」画像の部分を決定する。言い換えると、画像の全ての部分が、観察面上の任意の1つの点(例えば、アイモーションボックスなどの観察窓内の任意の1つの眼の位置)から見えるわけではない。
【0013】
幾つかの実施形態において、観察者によって知覚される画像は、表示デバイスの上流側に現れる虚像であり、すなわち、観察者は、画像が表示デバイスよりも遠方にあると知覚する。したがって、概念的には、観察者が「表示デバイスサイズの窓」を通して虚像を見ていると考えることができ、「表示デバイスサイズの窓」は、非常に小さく、例えば比較的長い距離、例えば1メートルでは直径1cmとなり得る。また、ユーザは、非常に小さくすることもできるユーザの眼の瞳孔を介して表示デバイスサイズの窓を見ている。したがって、視野は小さくなり、見ることができる特定の角度範囲は、任意の所定の時間において、眼の位置に大きく依存する。
【0014】
例えば、空間が限られている及び/又は不動産価値が高い場所で実施される場合、光学系は物理的に小さいことが望ましいことが多い。しかしながら、物理的制約は、一般に、機能的制限と関連付けられる。例えば、従来の光学系では、小型の表示デバイスを使用することは、一般に、限られた視野(FOV)を有することに関連し、したがって画像の視認性を制限する。瞳孔拡張器は、視野をどのように増大させるか、すなわち、表示デバイスから伝搬されて眼の瞳孔を通じて首尾よく伝搬して画像を形成することができる光線の角度範囲をどのように増大させるかという問題に対処する。表示デバイスは(相対的に)小さく、投影距離は(相対的に)大きい。幾つかの実施形態において、投影距離は、表示デバイスの入射瞳及び/又は開口の直径又は幅(すなわち、ピクセルの配列のサイズ)よりも少なくとも1桁、例えば少なくとも2桁程度大きい。本開示は、画像そのものではなく、画像のホログラムが人の眼に伝搬される、いわゆる直視型ホログラフィに関する。換言すれば、観察者が受光する光は、画像のホログラムにしたがって空間的に変調された「ホログラフィック光」である。
【0015】
実施形態では、瞳孔拡張器が導波路瞳孔拡張器である。本開示は、一般に(排他的ではないが)、非無限の虚像距離、すなわち近接場虚像に関する。
【0016】
瞳孔拡張器は、視野を増大させ、したがって、表示デバイスの完全な回折角を使用することができる最大伝搬距離を増大させる。瞳孔拡張器の使用は、ユーザのアイボックスを横方向に増大させることもでき、それにより、ユーザが依然として画像を見ることができるようにしつつ、眼のいくらかの動きが生じ得るようにする。実施形態では、瞳孔拡張器が導波路瞳孔拡張器である。本開示は、一般に、非無限の虚像距離、すなわち、近接場虚像に関する。
【0017】
本開示の態様は、添付の独立請求項に規定される。
【0018】
本明細書では、表示デバイスと観察系とを備えるシステムのための画像の回折構造を決定する方法が開示される。回折構造が決定される画像は、「標的」又は「標的画像」と呼ばれることがある。回折構造は、ホログラムであってもよく、以後、「ホログラム」という用語は、本開示に係る回折構造の一例としてのみ使用される。回折構造は、位相ホログラム、位相限定ホログラム、又はキノフォームであってもよい。表示デバイスは、ホログラムを表示するように構成される。観察系は、瞳孔拡張器を通じてホログラムを見るように構成される。観察系は、少なくとも1つの入射瞳と、センサとを備え、入射瞳とセンサとの間にレンズを有してもよい。瞳孔拡張器は、表示デバイスから観察系への複数の光伝搬経路を与える。
【0019】
方法は、第1~第5の段階を含む。第1の段階は、観察系の入射瞳における第1の複素光照射野を決定することを含む。第1の複素光照射野は、瞳孔拡張器の少なくとも1つの光伝搬経路に沿った表示デバイスの表示平面(ホログラムが表示され得る平面であるため、代わりに「ホログラム平面」と呼ばれることを意味する)からの光の伝搬によってもたらされる。少なくとも1つの光伝搬経路は、光が瞳孔拡張器を通って進むことができる複数の光伝搬経路のうちの単一の(「第1の」)光伝搬経路又は複数の光伝搬経路を含むことができる。また、第1の段階は、観察系の入射瞳にしたがって複素光照射野を切り取ることを含む。例えば、複素光照射野は、入射瞳のサイズ、形状、又は位置のうちの少なくとも1つにしたがって切り取られてもよい。第2の段階は、観察系のセンサのセンサ平面における第2の複素光照射野を決定することを含む。第2の複素光照射野は、入射瞳から観察系のレンズを通じたセンサへの第1の複素光照射野の光の伝搬によってもたらされる。また、第2の段階は、画像にしたがって複素光照射野の振幅成分を変更することも含み、第2の複素光照射野は前記変更の結果である。第3の段階は、入射瞳における第3の複素光照射野を決定することを含む。第3の複素光照射野は、センサ平面からレンズを通じて戻る第2の複素光照射野の光の逆伝搬によってもたらされる。また、第3の段階は、入射瞳のサイズ、形状、又は位置のうちの少なくとも1つにしたがって複素光照射野を切り取ることを含む。第4の段階は、表示平面における(すなわち、ホログラム面における)第4の複素光照射野を決定することを含む。第4の複素光照射野は、瞳孔拡張器の少なくとも1つの光伝搬に沿って戻る第3の複素光照射野の光の伝搬によってもたらされる。また、第4の段階は、表示デバイスにしたがって複素光照射野を切り取ることを含む。ホログラムは、第4の複素光照射野に対応する/第4の複素光照射野を表わすデータセットから抽出される。そのデータセットは、「第4のデータセット」であると呼ぶことができる。第1~第4の段階が反復的に繰り返されてもよい。ホログラムは、反復ごとに収束し、改善される可能性が高いが、プラトーになる。方法は、例えば、第4の段階から抽出可能なホログラムが許容可能な品質であると見なされる或いは各反復による変化率が閾値を下回る又は割り当てられた時間が経過した場合に停止することができる。誤解を避けるために、抽出されるホログラムは、表示デバイスに表示するためのホログラムである。
【0020】
光が瞳孔拡張器を通って進むことができる複数の光伝搬経路のうちの単一の(「第1の」)光伝搬経路を「少なくとも1つの光伝搬経路」が含む実施形態において、第1~第4の段階は、複数の光伝搬経路のうちの第2の異なる光伝搬経路に関して繰り返されてもよい。それぞれの光伝搬経路ごとに経路固有のホログラムが抽出されてもよく、また、表示デバイスに表示するためのホログラムを形成するために、複数のそれぞれの光伝搬経路に対応する複数のホログラムが組み合わされてもよい。
【0021】
ホログラムは、ホログラフィック光の複数のチャネルを出力するように構成されてもよく、各チャネルは、観察系によって見られる/知覚されるようになっている画像の異なるそれぞれのセクションに対応する。瞳孔拡張器は、表示デバイス及び観察系の入射瞳に対して、入射瞳が受けるホログラフィック光の各異なるそれぞれのチャネルが瞳孔拡張器の出力面(又は「出力ポート」)上の異なるそれぞれの透過点から出力されるように構成されてもよい。したがって、観察系によって受けられる各チャネルは、瞳孔拡張器内で異なるそれぞれの数のバウンスを受け、異なるそれぞれの光伝搬経路を有する。方法は、上記で詳述した第1~第4の段階を実行するステップと、それぞれのチャネルごとに個別に、それぞれのチャネル固有のホログラムを出力するステップとを含むことができる。方法は、これらの個々のチャネル固有のホログラムを組み合わせ/最終ホログラムへと組み合わせるステップを更に含んでもよく、組み合わせ/最終ホログラムは、観察系によって見られる/知覚されるようになっている画像全体(すなわち、全視野の)のホログラムを含む。
【0022】
より広く、本明細書では、画像のホログラムを計算する方法が開示され、この方法は、照明されると空間変調光を形成するホログラムを形成するべく、観察系の入射瞳にしたがって切り取ることを含む少なくとも1つのステップを含み、空間的に変調された光の連続光チャネルは、画像の連続領域に対応する。連続光チャネルは、空間的に変調された光の光線角度の連続範囲によって規定され得る。空間的に変調された光の全ての連続光チャネルは、チャネルが組み合わさって画像全体のホログラフィック光を与えるように、画像の連続領域に対応する。表示デバイスと観察系との間に瞳孔拡張器を設けることができ、瞳孔拡張器は、各チャネルを観察系の入口開口に向けるように構成される。各チャネルは、表示デバイスに対して、例えば、表示デバイスの発光面上の中心点又は別の基準点に対して、そのチャネルの主(又は、「コア」)移動方向を規定する固有のそれぞれの中心軸を有すると見なされ得る。空間的に変調された光は、任意の数の連続光チャネルに分割され得る。幾つかの実施形態では、光チャネルが重なり合わない。他の実施形態、例えば、導波路と観察者との間に光パワーを有する光コンバイナ(例えば、車両のフロントガラス)を更に含む実施形態では、幾つかの光チャネルが少なくとも部分的に重なり合ってもよい。本明細書に開示される方法は、観察系によって画像に変換可能な光を空間的に変調するように構成される回折構造を決定し、回折構造は、光を複数のホログラムチャネルに経路付けるように構成され、各ホログラムチャネルは画像の異なる部分に対応する。
【0023】
チャネルのうちの1つ以上の断面積は、観察系の入口開口のサイズ及び/又は形状に対応するサイズ及び/又は形状を有することができる。例えば、入口開口が人の眼である場合、チャネルは、断面が実質的に楕円形又は楕円形であってもよい。ホログラム計算を含む実施形態において、計算プロセスは、入口開口のサイズ及び/又は形状にしたがって及び/又は表示デバイスのサイズ及び/又は形状にしたがって、ホログラムを制限又は切り取ることを含んでもよい。
【0024】
誤解を避けるために、観察者によって形成又は知覚される画像は、標的画像のホログラフィック再構成である。ホログラフィック再構成は、標的画像に基づくホログラムから形成される。幾つかの実施形態において、ホログラムは、標的画像から決定(例えば、計算)される。
【0025】
「逆伝搬」という用語は、第3及び第4の段階における光の伝搬方向が第1及び第2の段階における光の伝搬方向とは異なる又は実質的に反対であることを反映するために使用されるにすぎない。この点において、第1の段階及び第2の段階における光の伝搬は、「順伝搬」と呼ばれ得る。幾つかの実施形態において、「順伝搬(forward propagation)」及び「逆伝搬(reverse propagation)」は、互いに数学的に逆である。
【0026】
「切り取る」という用語は、本明細書では、光開口の外側などのエリア又は関心領域の外側で、光照射野情報などの情報を選択的に廃棄するプロセスを指すために使用される。幾つかの実施形態において、「切り取る」は、開口の外側でデータポイントを破棄すること、又は、データポイントをゼロにすること、又は、単にデータポイントを無視することを含むデータ処理ステップである。
【0027】
本明細書では、「複素光照射野」について言及する。「光照射野」という用語は、少なくとも2つの直交する空間方向x及びyで有限サイズを有する光のパターンを単に示す。「複素」という用語は、本明細書では、単に光照射野の各点における光を、振幅値及び位相値によって規定することができ、したがって複素数又は値の対によって表わすことができることを単に示すために使用されるにすぎない。ホログラム計算のために、複素光照射野は、複素数の2次元配列であってもよく、複素数は、光照射野内の複数の離散位置における光強度及び位相を規定する。本明細書に開示される方法によれば、複素光照射野は、ホログラム平面と画像平面との間において+z及び-z方向で前方及び後方に伝搬される。光伝搬は、波動光学の当業者によく知られている幾つかの異なる手法又は数学的変換のうちのいずれか1つを使用してシミュレート又はモデル化することができる。
【0028】
本発明者らは、比較的小型の表示デバイス及び比較的長い距離にわたる投影のためのホログラムを決定する方法を考案したが、ホログラムが観察系/複数の観察系に直接に投影され、方法をリアルタイムで実施することができる。表示デバイスの比較的小さいサイズ及び比較的長い投射距離は、瞳孔拡張器を必要とする。本発明者らによって考案された方法は、瞳孔拡張器を使用することによって導入される光学的複雑性にも対処する。方法は、更にまた、画像コンテンツが観察系/複数の観察系から異なる距離で及び/又は複数の距離で任意選択的に、同時に、例えば1つのホログラムを使用して出現できるようにする。更にまた、方法は、画像コンテンツが表示デバイスの下流側及び表示デバイスの上流側で、任意選択的に、同時に、例えば1つのホログラムを使用して出現できるようにする。
【0029】
重要なことに、ホログラムは、ホログラムから形成されたホログラフィック再構成(すなわち、画像)ではなく、観察系/複数の観察系に伝搬される。観察系/複数の観察系によって受信された空間的に変調された光は、空間領域又は画像領域ではなくホログラム領域にあると言える。また、観察系/複数の観察系は、画像変換に合わせてホログラムを実行すると言うこともできる。より具体的には、各観察系のレンズ等の光学素子が変換を行なう。実施形態において、ホログラフィック再構成又は画像は、表示デバイスと観察系との間に形成されない。幾つかの実施形態において、異なるホログラムは、計算されて場合によりインターレース方式を使用して観察者の各眼に伝搬される。
【0030】
表示デバイスは、5cms未満又は2cms未満などの10cms未満であり得る第1の寸法を有する活性エリア又は表示エリアを有する。表示デバイスと観察系との間の伝搬距離は、1.5mよりも大きい又は2mよりも大きいなど、1mよりも大きくてもよい。導波路内の光伝搬距離は、最大1.5m又は最大1mなど、最大2mであってもよい。方法は、画像を受信し、15ms未満又は10ms未満などの20ms未満で十分な品質の対応するホログラムを決定することが可能であり得る。
【0031】
本明細書に開示される方法は、光を複数のチャネルに経路付けるように構成されるホログラムを形成し、各チャネルは画像の異なる部分(すなわち、サブエリア)に対応する。ホログラムは、空間光変調器などの表示デバイスに表示されるなどして表わすことができる。ホログラムは、適切な表示デバイスに表示されると、観察系によって画像に変換可能な光を空間的に変調することができる。回折構造によって形成されたチャネルは、単にそれらが画像情報を有するホログラムによってエンコードされた光のチャネルであることを反映するために、本明細書では「ホログラムチャネル」と呼ばれる。各チャネルの光は、画像又は空間領域ではなくホログラム領域にあると言える。幾つかの実施形態において、ホログラムはフーリエ又はフーリエ変換ホログラムであり、したがってホログラム領域はフーリエ又は周波数領域である。ホログラムは、同様に、フレネル又はフレネル変換ホログラムであってもよい。ホログラムは、本明細書では、ホログラムから再構築可能な画像が有限のサイズを有し且つ複数の画像サブエリアに任意に分割され得ることを単に反映するために、光を複数のホログラムチャネルに経路付けるものとして説明され、各ホログラムチャネルは各画像サブエリアに対応する。重要なことに、この開示のホログラムは、照明されたときに画像コンテンツをどのように分配するかを特徴とする。具体的には、ホログラムは、画像コンテンツを角度で分割する。すなわち、画像の連続部分又はセクションと表示デバイス(又は、観察窓)との間の光伝搬(これは、モデル化された光伝搬又は仮想光伝搬であってもよい)の固有の角度又は固有の連続角度範囲に関して、表示デバイス上のホログラムが照明される際に、空間的に変調された光の対応する連続ホログラムチャネルが出力される。誤解を避けるために、このホログラム挙動は従来のものではない。この特殊なタイプのホログラムによって形成される空間的に変調された光は、照明される際に、複数のホログラムチャネルに任意に分割され得る。以上から分かるように、空間的に変調された光において考慮され得る任意のホログラムチャネルは、画像のそれぞれの部分又はサブエリアと関連付けられる。すなわち、画像のその部分又はサブエリアを再構成するのに必要な全ての情報は、画像のホログラムから形成される空間的に変調された光の角度の部分範囲内に含まれる。空間的に変調された光が全体として観察される場合、複数の個別の光チャネルの痕跡は必ずしも存在しない。しかしながら、幾つかの実施形態において、複数の空間的に分離されたホログラムチャネルは、ホログラムが計算される標的画像のエリアを意図的に空白又は空にする(すなわち、画像コンテンツが存在しない)ことによって形成される。
【0032】
それにもかかわらず、ホログラムは依然として識別され得る。例えば、ホログラムによって形成される空間的に変調された光の連続部分又はサブエリアのみが再構成される場合、画像のサブエリアのみが見えるはずである。空間的に変調された光の異なる連続部分又はサブエリアが再構成される場合、画像の異なるサブエリアが見えるはずである。このタイプのホログラムの特徴の更なる識別は、任意のホログラムチャネルの断面積の形状が、少なくともホログラムが計算された適正な平面ではサイズが異なり得るが、入射瞳の形状に実質的に対応する(すなわち、入射瞳の形状と実質的に同じ)ことである。各光ホログラムチャネルは、異なる角度又は角度範囲でホログラムから伝搬する。これらはこのタイプのホログラムを特徴付ける又は識別する例示的な方法であるが、他の方法を使用してもよい。要約すると、本明細書に開示されるホログラムは、ホログラムによってエンコードされた光内で画像コンテンツがどのように分布するかによって特徴付けられて識別可能であり、添付の特許請求の範囲はそれに応じて記載される。
【0033】
回折構造又はホログラムは、これに限定されないが、液晶オンシリコン(LCOS)空間光変調器(SLM)などの空間光変調器などの表示デバイスに表示されてもよい。回折構造を表示する表示デバイスが適切に照明されると、回折構造は光を空間的に変調するように構成され、その結果、表示デバイスによって放射された光は複数のホログラムチャネルへと経路付けられる。単一の(すなわち、共通の)光源を使用して、回折構造全体を照明することができる。回折構造は、回折構造の全てのピクセルがホログラムチャネルのそれぞれに光を寄与する複数のピクセルを含んでもよい。
【0034】
ホログラムチャネルは、回折構造によって空間的に変調された光のチャネルを含むため、代わりに「ホログラフィックチャネル」と呼ばれることがある。
【0035】
回折構造は、ホログラムチャネルが回折構造から異なる角度で伝搬するように構成されてもよい。そのような各角度は、それぞれのチャネルの主又はコア進行方向と、回折構造が表示される表示デバイス上の中心点などの表示デバイス上の点との間で規定されてもよい。ホログラム又は回折構造の各ピクセルは、全てのチャネルの光を出力することができる。ホログラムの個々のピクセルは、異なるそれぞれの角度で各チャネルの光を出力することができる。
【0036】
回折構造は、キノフォーム又はホログラムであってもよい。回折構造は、コンピュータで生成されるホログラムを含むことができる。ホログラムエンジン又は他のコントローラ又はプロセッサは、回折構造を表示するように表示デバイスを制御するための信号を出力するために設けられてもよい。
【0037】
本明細書に開示される方法によって提供される多くの技術的進歩がある。第1に、方法は、点群法などの他の方法によって形成され得るゴースト像を形成しない。これは、この方法が、導波路内の全ての想定し得る光伝搬経路を完全に考慮することによって、正しい画像コンテンツが正しい場所に到達することを本質的に保証するためである。第2に、この方法は、画像点距離が非常に小さい場合に不十分であり得る点群法などの他の方法とは異なり、任意の深度面に画像コンテンツを提示することができる。これは、虚像を形成するために車両のフロントガラスなどの光パワーを有する光コンバイナを利用する光学系において重要な問題である。第3に、方法は、複数の単色ホログラフィックチャネルを含むカラープロジェクタにおいて、米国特許第10,514,658号明細書に開示されているような波長による画像サイズ補正の必要がないように、波長の効果を本質的に考慮する。
【0038】
異なる伝搬経路は、異なる角度で観察系の入口開口を通過することができる。瞳孔拡張器は、全てのホログラムチャネルが観察面上の任意の観察位置で観察系の入口開口を通って経路付けられるように構成されてもよい。瞳孔拡張器は、許容されたそれぞれの観察位置ごとに1つの伝搬経路を介して各ホログラムチャネルを観察系に経路付けるだけである。複数のホログラムチャネルのうちの少なくとも2つのホログラムチャネルは、観察系の入口開口で部分的に重なっていてもよい。
【0039】
第1~第4の段階は、順序付けられた段階であってもよい。開示された方法は、センサ平面とホログラム平面との間で前後に投影することによって動作し、また、方法は、センサ平面又はホログラム平面で開始することができる。明確にするために、「センサ平面」は、観察者が画像を形成/見るためにホログラムの光が到達する平面である。例えば、センサ平面は、観察者の眼の網膜の平面であってもよい。センサ平面又はホログラム平面への各伝搬後の光照射野の振幅成分は変更又は制約されるが、位相成分は保存される。幾つかの実施形態において、方法は、ホログラム平面から開始することに等しい第1の段階から始まる。しかしながら、他の実施形態において、方法は、センサ平面で開始することに等しい第3の段階で始まる。これらの他の実施形態では、第3の段階の後に第4の段階が続く。第4の段階の後に第1の段階が続き、第1の段階の後に第2の段階が続く。各段階は、ホログラム抽出の前に1回実行されてもよく、或いは、少なくとも一部の段階がホログラム抽出の前に複数回実行されてもよい。
【0040】
少なくとも1つの光伝搬経路は、瞳孔拡張器によって与えられる複数の光伝搬経路を含むことができる。瞳孔拡張器の構造は、それを通る複数の異なる想定し得る光路を容易にする又は可能にする。異なる想定し得る光路は、部分的に重なり合っていてもよい。幾つかの実施形態では、瞳孔拡張器によって一連の異なる光路が作成され、一連の光路のそれぞれは最後の光路よりも長い。一連の各光路は、その出口面上の異なる点で瞳孔拡張器を出て、対応する一連の光出口点又はサブエリアを形成する。一連の光出口点又はサブエリアは、瞳孔拡張器の出口面に沿って実質的に均等に離間されてもよい。
【0041】
瞳孔拡張器は、導波路瞳孔拡張器であってもよい。瞳孔拡張器に入る各光線は、複数回複製されてもよい。瞳孔拡張器は、一連の内部反射によって光を伝搬し、その一次面に沿った複数の点で光を出力するように構成されてもよい。各光伝搬経路は、その光伝搬経路に関連する導波路内の内部反射の数によって規定され得る。例えば、第1の光伝搬経路は、ゼロ内部反射を含むことができ、したがって、導波路を直接通過する光に対応する。例えば、第2の光伝搬経路は、導波路を出る前の2つの内部反射、すなわち、導波路の第1の一次/反射面での第1の反射及び導波路の第2の一次/反射面での第2の反射を含むことができ、第2の一次/反射面は、第1の一次/反射面の反対側又は第1の一次/反射面に対して相補的である。したがって、疑念を避けるために、光伝搬経路は幾つかの重なり合いを有する。他の例では、第1の光伝搬経路が1つの反射を含み、第2の光伝搬経路が3つの反射を含む。第1の光伝搬経路は最短の光伝搬経路であってもよく、第nの光伝搬経路は最長の光伝搬経路であってもよい。異なる伝搬経路は、異なる角度で観察系の入口開口を通過することができる。
【0042】
少なくとも1つの光伝搬経路は、瞳孔拡張器によって与えられる複数の光伝搬経路のうちの1つのみであってもよい。第1~第4の段階は、それぞれの光伝搬経路ごとにホログラムを抽出するために、複数の光伝搬経路のそれぞれの光伝搬経路ごとに行なわれてもよい。第1~第4の段階は、それぞれの光伝搬経路ごとに独立して実施されてもよい。複数の光伝搬経路に対応する複数のホログラムは、表示デバイスに表示するためのホログラムを形成するために組み合わされてもよい。
【0043】
特に、方法は、それぞれの光伝搬経路ごとに(開始点に関係なく)第1~第4の段階を実行することによって、導波路を通る複数の光伝搬経路を考慮する。第1~第4の段階は、それぞれの伝搬経路ごとに順々に実行されてもよい。或いは、第1の段階をそれぞれの伝搬経路ごとに実行し、次いで第2の段階をそれぞれの伝搬経路ごとに実行し、その後、第3の段階等を実行することもできる。異なる伝搬経路の部分的な重なり合いに起因して、n番目の伝搬経路に関連して実行される段階は、n-1個の伝搬経路に関連する計算を再利用することができ、n番目の伝搬経路は、n-1個の伝搬経路の次に長い伝搬経路であることが理解される。複数の異なる光伝搬経路に関してそれぞれ決定された複数のホログラムは、特にホログラムが位相又は位相限定ホログラムである場合、加算によって組み合わせることができる。
【0044】
第1の段階で表示平面から伝搬される光は、ランダムな位相成分、二次関数、又は、サンプリングされた二次関数を有する第0の複素光照射野を含むことができる。
【0045】
第0の複素光照射野の振幅成分は、照明ビームの振幅成分に等しくてもよい。幾つかの実施形態では、第0の複素光照射野の振幅が1である。方法が第1の段階から始まる場合、第0の複素光照射野の位相成分はランダムであってもよい。ランダム位相分布は、ランダム位相シードと呼ばれることもあり、ホログラム平面(すなわち、第1の段階)で始まる場合、単に方法の開始点として使用することができる。
【0046】
第1~第4の段階は、最終反復からホログラムを抽出するステップの前に反復的に繰り返されてもよい。2回目以降の反復のために表示デバイスから伝搬された光は、直前の反復の第4の複素光照射野の位相分布を含むことができる。
【0047】
方法が停止される前に第1の段階の更なる反復が実行される(すなわち、ホログラムが許容可能である)場合、第4の段階からの位相成分は保存される又は保持される又は進められる。すなわち、第1の段階にしたがって表示平面に伝搬する複素光照射野の位相成分は、第4の複素光照射野の位相成分と等しい。
【0048】
ホログラムは、第4のデータセットの位相成分であってもよい。ホログラムは、方法の最終の反復又は段階の第4のデータセットの位相成分であってもよい。幾つかの実施形態において、ホログラムは、キノフォーム又は位相ホログラム又は位相限定ホログラムである。第4の複素光照射野の振幅成分は破棄されてもよい。
【0049】
ホログラムは、複数の画像のホログラムであってもよい。各画像は、異なるそれぞれの画像距離を有することができる。方法の第2の段階は、それぞれの画像ごとに独立して実行することができる。重要なことに、本明細書に開示される方法は、同時に複数の平面上に画像コンテンツを形成することができるホログラムを形成する。これは、それぞれの異なる平面ごとに第2の段階を実行し、例えば複素光照射野を合計することによって結果を組み合わせることによって達成される。各画像は、実像であってもよく又は虚像であってもよい。画像コンテンツは、表示デバイスの前方、すなわち表示デバイスの下流側、及び/又は表示デバイスの後方、すなわち表示デバイスの上流側で見ることができる。
【0050】
各複素光照射野は、フレネル伝搬、シフトフレネル伝搬、フラクショナルフレネル伝搬、フラクショナルフーリエ変換又はスケーリングされた高速フーリエ変換などの波伝搬光学素子によって決定される。
【0051】
第2の段階の振幅成分の変更は、第2の複素光照射野の振幅成分を画像の振幅成分と置き換えるステップ、又は、画像の振幅成分に基づいて第2の複素光照射野の振幅成分を重み付けるステップを含むことができる。
【0052】
切り取る各段階は、対応する瞳孔のサイズ、形状、及び位置の少なくとも1つにしたがって複素光照射野を切り取ることを含むことができる。入射瞳のサイズ及び形状及び位置の少なくとも1つは、観察系を追跡又は監視すること又は観察系に関する情報を受けることによって決定することができる。観察系が眼である実施形態において、方法は、視線追跡又は頭部追跡を含むことができる。本明細書に開示される第1~第4の段階は、位置又はサイズなどの入射瞳の少なくとも1つの特性が変化する場合に繰り返されてもよい。
【0053】
画像又は各画像は、虚像であってもよい。画像又は各画像は、表示デバイスの背後又は向こう側となるように観察系に見える場合がある。すなわち、観察系から知覚される画像までの画像距離は、観察系から表示デバイスまでの距離より大きくてもよい。しかしながら、他の実施形態において、画像コンテンツは、これに加えて又は代えて、表示デバイスの下流側、すなわち、表示デバイスと観察系との間に形成される。
【0054】
観察系は、観察者の眼であってもよい。方法は、観察系の入射瞳のサイズ及び位置の少なくとも一方を決定するために、観察者の眼又は頭部を追跡するステップを更に含むことができる。幾つかの実施形態において、観察系/複数の観察系の入射瞳/複数の入射瞳のサイズ及び/又は位置は、ホログラムを決定する方法の一部として使用される。幾つかの実施形態において、方法は、リアルタイムで、例えばビデオレートで実行され、また、ホログラムは、観察者が移動する又は例えば観察者の入射瞳のサイズに影響を与える周囲光条件が変化する場合に、再決定され、例えば再計算される。
【0055】
瞳孔拡張器によって与えられる各光伝搬経路に沿った伝搬は、それぞれの個々の光伝搬経路の個々の複素光照射野を組み合わせることを含むことができる。個々の複素光照射野は、加算によって組み合わされてもよい。瞳孔拡張器によって与えられる複数の異なる光伝搬経路の各光伝搬経路が個別に考慮される。各光伝搬経路によって形成される複素光照射野は、個別に決定される。
【0056】
瞳孔拡張器は、導波路瞳孔拡張器であってもよい。各光伝搬経路は、導波路内の異なる数の内部反射に対応する。幾つかの実施形態において、瞳孔拡張器は、実質的に一次元(すなわち、長尺な)又は二次元(例えば、スラブ形状などの実質的に平面)の形状を有する導波路瞳孔拡張器である。実施形態において、射出瞳は、構成要素の長手方向又は寸法に拡張される。瞳孔拡張器は、一対の対向する又は相補的な反射面を備えてもよい。これらの表面のうちの1つは、光が一連の光出口点又はサブエリアで逃げることができるようにするために、部分的にのみ反射性であってもよい。
【0057】
個々の複素光照射野を組み合わせることは、入射瞳を含む平面上の個々の複素光照射野の横方向位置を決定することを含んでもよい。導波路内の内部反射の数が横方向位置を決定する。
【0058】
個々の複素光照射野を組み合わせることは、各光伝搬経路の内部反射に関連する全位相シフトを決定することを更に含むことができる。これは、各光伝搬経路に関連する複数の位相シフトを合計することを含むことができ、各位相シフトは瞳孔拡張器内の反射によってもたらされる。
【0059】
本明細書では、ヘッドアップディスプレイを使用して見るための画像のホログラムを決定するように構成されるホログラムエンジンも開示される。ヘッドアップディスプレイは、表示デバイスと瞳孔拡張器とを備える。ヘッドアップディスプレイは、少なくとも1つの観察系で動作するように構成される。各観察系は、入射瞳平面上の入射瞳と、レンズ平面上のレンズと、センサ平面上のセンサとを備える。ヘッドアップディスプレイは、一対の眼などの一対の観察系で動作するように構成されてもよい。表示デバイス(例えば、空間光変調器)は、ホログラムをホログラム平面上に表示するように構成される。瞳孔拡張器は、ホログラムにしたがって空間的に変調された光を受けるように構成される。例えば、表示されたホログラムは、光源からの少なくとも部分的にコヒーレントな光で照明されてもよい。表示デバイスは、表示されたホログラムにしたがって受けた光を空間的に変調する。ホログラムエンジンは、観察系の入射瞳で第1の複素光照射野を決定するように構成される。第1の複素光照射野は、瞳孔拡張器の各光伝搬経路に沿った表示デバイスのホログラム平面(又は、「表示平面」)からの光の伝搬によってもたらされる。第1の複素光照射野は、更に、観察系の入射瞳にしたがって複素光照射野を切り取ることによってもたらされる。ホログラムエンジンは、観察系のセンサのセンサ平面における第2の複素光照射野を決定するように更に構成される。第2の複素光照射野は、入射瞳から観察系のレンズを通じた観察系のセンサのセンサ平面への第1の複素光照射野の光の伝搬によってもたらされる。第2の複素光照射野は、画像にしたがった振幅成分の変更によって更にもたらされる。ホログラムエンジンは、入射瞳で第3の複素光照射野を決定するように更に構成される。第3の複素光照射野は、センサ平面からレンズを通じて戻る第2の複素光照射野の光の伝搬によってもたらされる。第3の複素光照射野は、入射瞳にしたがった切り取りによって更にもたらされる。ホログラムエンジンは、表示平面における第4の複素光照射野を決定するように更に構成される。第4の複素光照射野は、瞳孔拡張器の各光伝搬に沿って戻る第3の複素光照射野の光の伝搬によってもたらされる。第4の複素光照射野は、表示デバイスにしたがった切り取りによって更にもたらされる。ホログラムエンジンは、第4の複素光照射野に対応するデータセットからホログラムを抽出するように構成される。ホログラムエンジンは、フィールドプログラマブルゲートアレイ「FPGA」又は特定用途向け集積回路「ASIC」などのディスプレイドライバに組み込まれてもよい。ディスプレイドライバは、ヘッドアップディスプレイ「HUD」用の画像生成ユニット「PGU」の一部であってもよい。
【0060】
「ホログラム」という用語は、物体に関する振幅情報又は位相情報又はそれらの何らかの組み合わせを含む記録を指すために使用される。「ホログラフィック再構成」という用語は、ホログラムを照らすことによって形成される物体の光学的再構成を指すために使用される。ホログラフィック再構成は実像であってホログラムから空間的に分離されるため、本明細書中に開示されるシステムは「ホログラフィックプロジェクタ」として説明される。「再生場」という用語は、ホログラフィック再構成が形成されて完全に合焦される2D領域を指すために使用される。ホログラムがピクセルを備える空間光変調器に表示される場合、再生場は複数の回折次数の形態で繰り返され、この場合、各回折次数は0次再生場の複製である。0次再生場は、それが最も明るい再生場であるため、一般に、好ましい又は一次の再生場に対応する。別段に明記されなければ、「再生場」という用語は、0次再生場を指すと解釈されるべきである。「再生平面」という用語は、全ての再生場を含む空間内の平面を指すために使用される。「画像」、「再生画像」、及び、「画像領域」という用語は、ホログラフィック再構成の光によって照らされる再生場の領域を指す。幾つかの実施形態において、「画像」は、「画像スポット」又は便宜的にのみ「画像ピクセル」と称され得る別個のスポットを含み得る。
【0061】
「エンコーディング」、「書き込み」、又は、「アドレス指定」という用語は、各ピクセルの変調レベルをそれぞれ決定するそれぞれの複数の制御値をSLMの複数のピクセルに与えるプロセスを説明するために使用される。SLMのピクセルは、複数の制御値の受信に応じて光変調分布を「表示」するように構成されると言える。したがって、SLMはホログラムを「表示する」と言うことができ、ホログラムは光変調値又はレベルの配列と見なすことができる。
【0062】
許容可能な品質のホログラフィック再構成を当初の物体のフーリエ変換に関連する位相情報のみを含む「ホログラム」から形成できることが分かってきた。そのようなホログラフィック記録は、位相限定ホログラムと称される場合がある。実施形態は位相限定ホログラムに関するが、本開示は振幅限定ホログラフィにも等しく適用可能である。
【0063】
また、本開示は、当初の物体のフーリエ変換に関連する振幅及び位相情報を使用してホログラフィック再構成を形成することにも同様に適用可能である。幾つかの実施形態において、これは、当初の物体に関する振幅情報及び位相情報の両方を含むいわゆる完全複素ホログラムを使用した複素変調によって達成される。そのようなホログラムは、ホログラムの各ピクセルに割り当てられた値(グレーレベル)が振幅成分及び位相成分を有するため、完全複素ホログラムと称される場合がある。各ピクセルに割り当てられた値(グレーレベル)は、振幅成分及び位相成分の両方を有する複素数として表わされてもよい。幾つかの実施形態では、完全複素計算機合成ホログラムが計算される。
【0064】
「位相遅延」の省略表現として、位相値、位相成分、位相情報、又は、単に、計算機合成ホログラム又は空間光変調器のピクセルの位相を参照することができる。すなわち、記載される任意の位相値は、実際には、そのピクセルによって与えられる位相遅延の量を表わす数(例えば、0~2πの範囲内)である。例えば、π/2の位相値を有すると記載された空間光変調器のピクセルは、受けた光の位相をπ/2ラジアンだけ遅延させる。幾つかの実施形態において、空間光変調器の各ピクセルは、複数の想定し得る変調値(例えば、位相遅延値)のうちの1つで動作可能である。「グレーレベル」という用語は、複数の利用可能な変調レベルを指すために使用され得る。例えば、「グレーレベル」という用語は、異なる位相レベルが異なるグレーの濃淡をもたらさない場合であっても、位相限定変調器において複数の利用可能な位相レベルを指すために便宜上使用され得る。また、「グレーレベル」という用語は、複素変調器における複数の利用可能な複素変調レベルを指すために便宜上使用され得る。
【0065】
したがって、ホログラムは、グレーレベルの配列-すなわち、位相遅延値又は複素変調値の配列などの光変調値の配列を含む。ホログラムは、空間光変調器に表示され、空間光変調器のピクセルピッチに匹敵する、一般にそれ未満の波長を有する光で照射されたときに回折を引き起こすパターンであるため、回折パターンとも考えられる。本明細書では、ホログラムを、レンズ又は格子として機能する回折パターンなどの他の回折パターンと組み合わせることについて言及する。例えば、格子として機能する回折パターンは、再生場を再生平面上で並進させるためにホログラムと組み合わされてもよく、又は、レンズとして機能する回折パターンは、ホログラフィック再構成を近接場の再生平面上に集束させるためにホログラムと組み合わされてもよい。
【0066】
以下の詳細な説明では、異なる実施形態及び実施形態のグループが別々に開示される場合があるが、任意の実施形態又は実施形態のグループの任意の特徴が、任意の実施形態又は実施形態のグループの任意の他の特徴又は特徴の組み合わせと組み合わされてもよい。すなわち、本開示に開示される特徴の全ての想定し得る組み合わせ及び置換が想定される。
【0067】
以下の図を参照して、特定の実施形態を単なる一例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【
図1】スクリーン上にホログラフィック再構成を生成する反射型SLMを示す概略図である。
【
図2A】Gerchberg-Saxton型アルゴリズムの一例の第1の反復を示す。
【
図2B】Gerchberg-Saxton型アルゴリズムの例の第2のその後の反復を示す。
【
図2C】Gerchberg-Saxton型アルゴリズムの例の別の第2のその後の反復を示す。
【
図4】表示デバイスから開口に向かって効果的に伝搬する虚像の角度コンテンツを示す。
【
図5a】比較的小さい伝搬距離を伴う観察系を示す。
【
図5b】比較的大きい伝搬距離を伴う観察系を示す。
【
図6a】無限遠で虚像を形成するための、導波路を含む比較的大きい伝搬距離を伴う観察系を示す。
【
図8】実施形態に係る方法のステップを示すフローチャートである。
【
図9A】は、複数の画像エリアを備える画像(下)と、複数のホログラム構成要素を備える対応するホログラム(上)とを示す。
【
図9B】複数の個別のホログラムチャネルへのホログラフィックにエンコードされた光のルーティング又はチャネリングを特徴とする、本開示に係るホログラムを示す。
【
図10】各ホログラムチャネルの光コンテンツを異なる光路を通じて眼に経路付けるように構成される最適化されたシステムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0069】
同じ又は同様の部分を指すために図面の全体にわたって同じ参照番号が使用される。
【0070】
本発明は、以下に記載される実施形態に限定されず、添付の特許請求の範囲の全範囲に及ぶ。すなわち、本発明は、異なる形態で具体化されてもよく、例示目的で提示される記載された実施形態に限定されると解釈されるべきでない。
【0071】
単数形の用語は、特に明記しない限り、複数形を含み得る。
【0072】
他の構造の上部/下部又は他の構造上/下に形成されると記載された構造は、構造が互いに接触する場合、更には、構造間に第3の構造が配置される場合を含むと解釈されるべきである。
【0073】
時間関係を説明する際、例えば、事象の時間的順序が「後」、「後続」、「次」、「前」などとして説明される場合に、本開示は、別段に明記されなければ、連続的及び非連続的な事象を含むように解釈されるべきである。例えば、「ちょうど」、「即時」、又は、「直接」などの表現が使用されなければ、説明は連続的でない場合を含むように解釈されるべきである。
【0074】
本明細書中では、「第1」、「第2」などの用語を使用して様々な要素を説明する場合があるが、これらの要素はこれらの用語によって限定されるべきでない。これらの用語は、単にある要素を別の要素から区別するために使用されるにすぎない。例えば、添付の特許請求の範囲から逸脱することなく、第1の要素を第2の要素と称することができ、同様に、第2の要素を第1の要素と称することができる。
【0075】
異なる実施形態の特徴は、部分的又は全体的に互いに結合又は組み合わせられてもよく、互いに様々に相互動作されてもよい。幾つかの実施形態は、互いに独立して行なわれてもよく、或いは、共依存関係で一緒に行なわれてもよい。
【0076】
光学形態
図1は、計算機合成ホログラムが単一の空間光変調器でエンコードされる実施形態を示す。計算機合成ホログラムは、再構成のための物体のフーリエ変換である。したがって、ホログラムは、物体のフーリエ領域又は周波数領域又はスペクトル領域表示であると言える。この実施形態では、空間光変調器が反射型液晶オンシリコン「LCOS」デバイスである。ホログラムは空間光変調器でエンコードされ、また、ホログラフィック再構成が、再生場で、例えばスクリーン又はディフューザなどの受光面で形成される。
【0077】
光源110、例えばレーザ又はレーザダイオードが、コリメートレンズ111を介してSLM140を照らすように配置される。コリメートレンズは、光の略平面状の波面をSLMに入射させる。
図1では、波面の方向が法線方向からずれている(例えば、透明層の平面に対して正確に直交している状態から2度又は3度ずれている)。しかしながら、他の実施形態では、ほぼ平坦な波面が垂直入射でもたらされ、入力光路と出力光路とを分離するためにビームスプリッタ構成が使用される。
図1に示される実施形態において、構成は、光源からの光がSLMの鏡映後面から反射されて光変調層と相互作用して出口波面112を形成するようになっている。出口波面112は、スクリーン125にその焦点を有するフーリエ変換レンズ120を含む光学素子に適用される。より具体的には、フーリエ変換レンズ120は、SLM140から変調光のビームを受けて、周波数空間変換を実行し、スクリーン125でホログラフィック再構成を生成する。
【0078】
特に、このタイプのホログラフィでは、ホログラムの各ピクセルが全体の再構成に寄与する。再生場上の特定の点(又は画像ピクセル)と特定の光変調素子(又はホログラムピクセル)との間に1対1の相関はない。言い換えると、光変調層から出る変調光は、再生場にわたって分布される。
【0079】
これらの実施形態において、空間におけるホログラフィック再構成の位置は、フーリエ変換レンズの屈折力(集束力)によって決定される。
図1に示される実施形態では、フーリエ変換レンズが物理レンズである。すなわち、フーリエ変換レンズが光フーリエ変換レンズであり、フーリエ変換が光学的に行なわれる。任意のレンズはフーリエ変換レンズとして作用することができるが、レンズの性能は、それが実行するフーリエ変換の精度を制限する。当業者は、レンズを使用して光フーリエ変換を実行する方法を理解している。
【0080】
ホログラム計算例
幾つかの実施形態において、計算機合成ホログラムは、フーリエ変換ホログラム、又は、単にフーリエホログラム又はフーリエベースのホログラムであり、この場合、正レンズのフーリエ変換特性を利用することによって遠隔場で画像が再構成される。フーリエホログラムは、再生平面内の所望の光照射野を元のレンズ平面にフーリエ変換することによって計算される。計算機合成フーリエホログラムは、フーリエ変換を使用して計算されてもよい。
【0081】
フーリエ変換ホログラムは、Gerchberg-Saxtonアルゴリズムなどのアルゴリズムを使用して計算されてもよい。更に、Gerchberg-Saxtonアルゴリズムを使用して、空間領域内の振幅限定情報(写真など)からフーリエ領域内のホログラム(すなわち、フーリエ変換ホログラム)を計算してもよい。物体に関する位相情報は、空間領域における振幅限定情報から効果的に「検索」される。幾つかの実施形態において、計算機合成ホログラムは、Gerchberg-Saxtonアルゴリズム又はその変形を使用して振幅限定情報から計算される。
【0082】
Gerchberg Saxtonアルゴリズムは、平面A及びBにおける光ビームの強度断面IA(x、y)及びIB(x、y)がそれぞれ既知であり、IA(x、y)及びIB(x、y)が単一のフーリエ変換によって関連付けられるときの状況を考慮する。所定の強度断面を用いて、平面A及びBにおける位相分布ΨA(x、y)及びΨB(x、y)に対する近似がそれぞれ見出される。Gerchberg-Saxtonアルゴリズムは、反復プロセスに従うことによってこの問題の解を見つける。より具体的には、Gerchberg-Saxtonアルゴリズムは、IA(x、y)及びIB(x、y)を表わすデータセット(振幅及び位相)を空間領域とフーリエ(スペクトル又は周波数)領域との間で繰り返し転送しながら、空間的制約及びスペクトル制約を繰り返し適用する。スペクトル領域内の対応する計算機合成ホログラムは、アルゴリズムの少なくとも1回の反復によって得られる。アルゴリズムは、収束的であり、入力画像を表わすホログラムを生成するように構成される。ホログラムは、振幅限定ホログラム、位相限定ホログラム、又は、完全複素ホログラムであってもよい。
【0083】
幾つかの実施形態において、位相限定ホログラムは、参照によりそれらの全体が本願に組み入れられる英国特許第2,498,170号又は第2,501,112号に記載されるようなGerchberg-Saxtonアルゴリズムに基づくアルゴリズムを使用して計算される。しかしながら、本明細書中に開示される実施形態は、単なる一例として位相限定ホログラムを計算することを記載する。これらの実施形態において、Gerchberg-Saxtonアルゴリズムは、既知の振幅情報T[x、y]をもたらすデータセットのフーリエ変換の位相情報Ψ[u,v]を検索し、この場合、振幅情報T[x、y]は標的画像(例えば写真)を表わす。大きさ及び位相はフーリエ変換において本質的に組み合わされるため、変換された大きさ及び位相は、計算されたデータセットの精度に関する有用な情報を含む。したがって、アルゴリズムは、振幅情報及び位相情報の両方に関するフィードバックと共に反復的に使用され得る。しかしながら、これらの実施形態では、画像平面で標的画像を表わすホログラフィックを形成するために位相情報Ψ[u,v]のみがホログラムとして使用される。ホログラムは、位相値のデータセット(例えば2D配列)である。
【0084】
他の実施形態では、Gerchberg-Saxtonアルゴリズムに基づくアルゴリズムを使用して、完全複素ホログラムを計算する。完全複素ホログラムは、大きさ成分と位相成分とを有するホログラムである。ホログラムは、複素データ値の配列を含むデータセット(例えば2D配列)であり、この場合、各複素データ値は、大きさ成分及び位相成分を含む。
【0085】
幾つかの実施形態では、アルゴリズムが複素データを処理し、フーリエ変換が複素フーリエ変換である。複素データは、(i)実数成分及び虚数成分、又は、(ii)大きさ成分及び位相成分を含むと見なされ得る。幾つかの実施形態において、複素データの2つの成分は、アルゴリズムの様々な段階で異なるように処理される。
【0086】
図2Aは、位相限定ホログラムを計算するための幾つかの実施形態に係るアルゴリズムの最初の反復を示す。アルゴリズムへの入力は、ピクセル又はデータ値の2D配列を含む入力画像210であり、この場合、各ピクセル又はデータ値は、大きさ又は振幅の値である。すなわち、入力画像210の各ピクセル又はデータ値は、位相成分を有さない。したがって、入力画像210は、大きさ限定又は振幅限定又は強度限定分布と見なされ得る。そのような入力画像210の一例は、写真、又は、フレームの時系列を含むビデオの1フレームである。アルゴリズムの最初の反復は、開始複素データセットを形成するために、ランダム位相分布(又はランダム位相シード)230を使用して、入力画像の各ピクセルにランダム位相値を割り当てることを含むデータ形成ステップ202Aから始まり、この場合、セットの各データ要素は、大きさ及び位相を含む。開始複素データセットは、空間領域における入力画像を表わすと言える。
【0087】
第1の処理ブロック250は、開始複素データセットを受けて、フーリエ変換複素データセットを形成するべく複素フーリエ変換を実行する。第2の処理ブロック253は、フーリエ変換された複素データセットを受けて、ホログラム280Aを出力する。幾つかの実施形態では、ホログラム280Aが位相限定ホログラムである。これらの実施形態において、第2の処理ブロック253は、ホログラム280Aを形成するために各位相値を量子化し、各振幅値を1に設定する。各位相値は、位相限定ホログラムを「表示」するために使用される空間光変調器のピクセル上に表わされ得る位相レベルにしたがって量子化される。例えば、空間光変調器の各ピクセルが256個の異なる位相レベルを与える場合、ホログラムの各位相値は、256個の想定し得る位相レベルのうちの1つの位相レベルに量子化される。ホログラム280Aは、入力画像を表わす位相限定フーリエホログラムである。他の実施形態において、ホログラム280Aは、受けられたフーリエ変換複素データセットから導き出される複素データ値(それぞれが振幅成分及び位相成分を含む)の配列を含む完全複素ホログラムである。幾つかの実施形態において、第2の処理ブロック253は、各複素データ値を複数の許容可能な複素変調レベルのうちの1つに制約してホログラム280Aを形成する。制約するステップは、各複素データ値を複素平面内の最も近い許容可能な複素変調レベルに設定することを含んでもよい。ホログラム280Aは、スペクトル領域又はフーリエ領域又は周波数領域における入力画像を表わすと言える。幾つかの実施形態では、アルゴリズムがこの時点で停止する。
【0088】
しかしながら、他の実施形態において、アルゴリズムは、
図2Aの破線矢印によって表わされるように継続する。言い換えると、
図2Aの破線矢印に続くステップは随意的である(すなわち、全ての実施形態に必須ではない)。
【0089】
第3の処理ブロック256は、第2の処理ブロック253から修正複素データセットを受けて、逆フーリエ変換を実行し、逆フーリエ変換された複素データセットを形成する。逆フーリエ変換された複素データセットは、空間領域における入力画像を表わすと言える。
【0090】
第4の処理ブロック259は、逆フーリエ変換された複素データセットを受けて、大きさ値の分布211A及び位相値の分布213Aを抽出する。随意的に、第4の処理ブロック259は、大きさ値の分布211Aを評価する。具体的には、第4の処理ブロック259は、逆フーリエ変換された複素データセットの大きさ値の分布211Aを、それ自体が勿論大きさ値の分布である入力画像510と比較してもよい。大きさ値の分布211Aと入力画像210との間の差が十分に小さい場合、第4の処理ブロック259は、ホログラム280Aが許容可能であると決定することができる。すなわち、大きさ値の分布211Aと入力画像210との間の差が十分に小さい場合、第4の処理ブロック259は、ホログラム280Aが入力画像210を十分に正確に表わすと決定することができる。幾つかの実施形態において、逆フーリエ変換された複素データセットの位相値の分布213Aは、比較の目的のために無視される。大きさ値の分布211Aと入力画像210とを比較するための任意の数の異なる方法を使用することができ、また、本開示が任意の特定の方法に限定されないことが分かる。幾つかの実施形態では、平均二乗差が計算され、また、平均二乗差が閾値未満である場合、ホログラム280Aは許容可能であると考えられる。ホログラム280Aが許容できないと第4の処理ブロック259が決定する場合には、アルゴリズムの更なる反復が実行されてもよい。しかしながら、この比較ステップは必須ではなく、他の実施形態では、実行されるアルゴリズムの反復回数が、予め決定され又は予め設定され或いはユーザ定義である。
【0091】
図2Bは、アルゴリズムの第2の反復及びアルゴリズムの任意の更なる反復を表わす。先行する反復の位相値の分布213Aは、アルゴリズムの処理ブロックを介してフィードバックされる。大きさ値の分布211Aは、入力画像210の大きさ値の分布を支持して拒絶される。最初の反復において、データ形成ステップ202Aは、入力画像210の大きさ値の分布とランダム位相分布230とを組み合わせることによって最初の複素データセットを形成した。しかしながら、2回目以降の反復において、データ形成ステップ202Bは、(i)アルゴリズムの前回の反復からの位相値の分布213Aと、(ii)入力画像210の大きさ値の分布とを組み合わせることによって複素データセットを形成することを含む。
【0092】
その後、
図2Bのデータ形成ステップ202Bによって形成された複素データセットは、第2の反復ホログラム280Bを形成するべく
図2Aに関連して説明したのと同じ方法で処理される。したがって、プロセスの説明はここでは繰り返さない。アルゴリズムは、第2の反復ホログラム280Bが計算されたときに停止してもよい。しかしながら、アルゴリズムの任意の数の更なる反復が実行されてもよい。第3の処理ブロック256は、第4の処理ブロック259が必要とされる又は更なる反復が必要とされる場合にのみ必要とされることが理解される。出力されたホログラム280Bは、一般に、反復ごとに良好になる。しかしながら、実際には、通常、測定可能な改善が観察されない又は更なる反復を実行するプラスの利益が追加の処理時間のマイナスの効果によって相殺されるポイントに達する。したがって、アルゴリズムは、反復的且つ収束的であるとして説明される。
【0093】
図2Cは、2回目以降の反復の別の実施形態を表わす。先行する反復の位相値の分布213Aは、アルゴリズムの処理ブロックを介してフィードバックされる。大きさ値の分布211Aは、大きさ値の別の分布を支持して拒絶される。この別の実施形態において、大きさ値の別の分布は、前回の反復の大きさ値の分布211から導き出される。具体的には、処理ブロック258は、前回の反復の大きさ値の分布211から入力画像210の大きさ値の分布を減算し、その差を利得係数αでスケーリングして、スケーリングされた差を入力画像210から減算する。これは、以下の式によって数学的に表わされ、この場合、下付き文字及び数字は反復回数を示す。
【数1】
ここで、
F’は、逆フーリエ変換;
Fは、順フーリエ変換;
R[x、y]は、第3の処理ブロック256によって出力される複素データセットであり、
T[x、y]は、入力又は標的画像であり、
∠は位相成分であり、
Ψは位相限定ホログラム280Bであり、
ηは、大きさ値の新たな分布211Bであり、及び
αは利得係数である。
【0094】
利得係数αは固定であっても可変であってもよい。幾つかの実施形態において、利得係数αは、入ってくる標的画像データのサイズ及びレートに基づいて決定される。幾つかの実施形態では、利得係数αが反復回数に依存する。幾つかの実施形態では、利得係数αが反復回数の単なる関数である。
【0095】
図2Cの実施形態は、他の全ての点で
図2A及び
図2Bの実施形態と同じである。位相限定ホログラムΨ(u,v)は、周波数領域又はフーリエ領域における位相分布を含むと言える。
【0096】
幾つかの実施形態では、フーリエ変換が空間光変調器を使用して実行される。具体的には、ホログラムデータは、光パワーを与える第2のデータと組み合わされる。すなわち、空間光変調に書き込まれるデータは、物体を表わすホログラムデータと、レンズを表わすレンズデータとを含む。空間光変調器に表示されて光で照らされると、レンズデータは、物理レンズをエミュレートし-すなわち、対応する物理光学素子と同じ方法で光を焦点に至らせる。したがって、レンズデータは、光パワー又は集束力を与える。これらの実施形態では、
図1の物理フーリエ変換レンズ120が省かれてもよい。レンズを表わすデータを計算する方法は知られている。レンズを表わすデータは、ソフトウェアレンズと称される場合がある。例えば、位相限定レンズは、その屈折率及び空間的に変化する光路長に起因してレンズの各点によって引き起こされる位相遅延を計算することによって形成されてもよい。例えば、凸レンズの中心における光路長は、レンズの縁における光路長よりも大きい。振幅限定レンズは、フレネルゾーンプレートによって形成されてもよい。計算機合成ホログラフィの技術分野では、物理的なフーリエレンズを必要とせずにホログラムのフーリエ変換を実行できるように、レンズを表わすデータをホログラムと組み合わせる方法も知られている。幾つかの実施形態において、レンズデータは、単純なベクトル加算などの単純な加算によってホログラムと組み合わされる。幾つかの実施形態では、フーリエ変換を実行するために、物理レンズがソフトウェアレンズと共に使用される。或いは、他の実施形態では、ホログラフィック再構成が遠隔場で行なわれるように、フーリエ変換レンズが完全に省かれる。更なる実施形態において、ホログラムは、格子データ、すなわち、画像ステアリングなどの格子の機能を果たすように構成されるデータと同じ方法で組み合わされてもよい。この場合も先と同様に、そのようなデータをどのように計算するかは、当該分野において既知である。例えば、位相限定格子は、ブレーズド格子の表面上の各点によって引き起こされる位相遅延をモデル化することによって形成されてもよい。振幅限定格子は、ホログラフィック再構成の角度ステアリングをもたらすべく、振幅限定ホログラムと単純に重ね合わされてもよい。レンシング及び/又はステアリングを与える第2のデータは、画像形成機能又は画像形成パターンと呼ばれる場合があるホログラムデータと区別するために、光処理機能又は光処理パターンと呼ばれる場合がある。
【0097】
幾つかの実施形態において、フーリエ変換は、物理フーリエ変換レンズとソフトウェアレンズとによって一緒に実行される。すなわち、フーリエ変換に寄与する一部の光パワーがソフトウェアレンズによって与えられ、また、フーリエ変換に寄与する光パワーの残りが1つ以上の物理光学素子によって与えられる。
【0098】
幾つかの実施形態では、画像データを受けるとともにアルゴリズムを使用してリアルタイムでホログラムを計算するようになっているリアルタイムエンジンが設けられる。幾つかの実施形態において、画像データは、画像フレームのシーケンスを含むビデオである。他の実施形態において、ホログラムは、予め計算され、コンピュータメモリに記憶されるとともに、SLMに表示するために必要に応じて呼び出される。すなわち、幾つかの実施形態では、所定のホログラムのリポジトリが与えられる。
【0099】
実施形態は、単なる一例として、フーリエホログラフィ及びGerchberg-Saxton型アルゴリズムに関する。本開示は、同様の方法によって計算することができるフレネルホログラフィ及びフレネルホログラムに等しく適用可能である。また、本開示は、点群法に基づく技術などの他の技術によって計算されたホログラムにも適用可能である。
【0100】
光変調
空間光変調器を使用して、計算機合成ホログラムを含む回折パターンを表示してもよい。ホログラムが位相限定ホログラムである場合には、位相を変調する空間光変調器が必要とされる。ホログラムが完全複素ホログラムである場合には、位相及び振幅を変調する空間光変調器が使用されてもよく、又は、位相を変調する第1の空間光変調器及び振幅を変調する第2の空間光変調器が使用されてもよい。
【0101】
幾つかの実施形態では、空間光変調器の光変調素子(すなわち、ピクセル)が液晶を含むセルである。すなわち、幾つかの実施形態において、空間光変調器は、光学活性要素が液晶である液晶デバイスである。各液晶セルは、複数の光変調レベルを選択的に与えるように構成される。すなわち、各液晶セルは、複数の想定し得る光変調レベルから選択される1つの光変調レベルで動作するように常に構成される。各液晶セルは、複数の光変調レベルとは異なる光変調レベルに動的に再構成可能である。幾つかの実施形態では、空間光変調器が反射型液晶オンシリコン(LCOS)空間光変調器であるが、本開示はこのタイプの空間光変調器に限定されない。
【0102】
LCOSデバイスは、小さな開口(例えば、数センチメートル幅)内に光変調素子又はピクセルの高密度配列をもたらす。ピクセルは一般に約10ミクロン以下であり、その結果、回折角が数度になり、そのため、光学系をコンパクトにすることができる。LCOS SLMの小さな開口を適切に照らすことは、他の液晶デバイスの大きな開口よりも容易である。LCOSデバイスは一般に反射型であり、そのため、LCOS SLMのピクセルを駆動する回路を反射面下に埋め込むことができる。その結果、開口率が高くなる。言い換えると、ピクセルは密集しており、そのため、ピクセル間にデッドスペースが殆どない。これは、それによって再生場における光学的ノイズが低減するため有利である。LCOS SLMは、ピクセルが光学的に平坦であるという利点を有するシリコンバックプレーンを使用する。これは、位相変調デバイスにとって特に重要である。
【0103】
以下、
図3を参照して、適切なLCOS SLMを単なる一例として説明する。LCOSデバイスは、単結晶シリコン基板302を用いて形成される。LCOSデバイスは、基板の上面に配置される、ギャップ301aだけ離間された正方形の平面アルミニウム電極301の2D配列を有する。電極301のそれぞれは、基板302に埋め込まれた回路302aを介してアドレス指定され得る。各電極はそれぞれの平面ミラーを形成する。電極の配列上に配向層303が配置され、また、配向層303上に液晶層304が配置される。第2の配向層305が例えばガラスの平面透明層306上に配置される。例えばITOの単一の透明電極307が、透明層306と第2の配向層305との間に配置される。
【0104】
正方形電極301のそれぞれは、透明電極307の上層領域及び介在する液晶材料と共に、しばしばピクセルと称される制御可能な位相変調素子308を画定する。有効ピクセル面積又はフィルファクタは、ピクセル301a間の空間を考慮して、光学的に活性な全ピクセルの割合である。透明電極307に対して各電極301に印加される電圧を制御することにより、それぞれの位相変調素子の液晶材料の特性を変化させることができ、それにより、液晶材料に入射する光に可変遅延をもたらすことができる。効果は、波面に位相限定変調をもたらすことであり、すなわち、振幅効果が生じない。
【0105】
記載されたLCOS SLMは、反射において空間的に変調された光を出力する。反射型LCOS SLMは、信号線、ゲート線、及び、トランジスタが鏡面の下にあるという利点を有し、その結果、フィルファクタが高く(通常は90%を超える)、分解能が高くなる。反射型LCOS空間光変調器を使用する別の利点は、液晶層の厚さを、透過型デバイスを使用した場合に必要となる厚さの半分にすることができることである。これにより、液晶のスイッチング速度が大幅に向上する(動画像の投影にとって重要な利点)。しかしながら、本開示の教示内容は、透過型LCOS SLMを使用して同様に実施することができる。
【0106】
小型の表示デバイスと長い観察距離を用いた画像投影
本開示は、表示デバイスと観察者との間の離間距離が表示デバイスのサイズよりもはるかに大きい画像投影に関する。観察距離(すなわち、観察者と表示デバイスとの間の距離)は、表示デバイスのサイズよりも少なくとも1桁大きくてもよい。観察距離は、表示デバイスのサイズよりも少なくとも2桁大きくてもよい。例えば、表示デバイスのピクセル面積は10mm×10mmであってもよく、観察距離は1mであってもよい。システムによって投影された画像は、表示デバイスから空間的に分離される表示平面上に形成される。観察者が画像を見るための入口開口は、観察距離と比較して比較的小さくてもよい。
【0107】
本開示によれば、画像はホログラフィック投影によって形成される。表示デバイスにはホログラムが表示される。ホログラムは、光源(図示せず)によって照明され、ホログラムから空間的に分離された表示平面上で画像が知覚される。画像は、実像であっても虚像であってもよい。以下の説明のために、表示デバイスの上流側に形成される虚像を考慮することが有用である。すなわち、表示デバイスの背後に現れる。しかしながら、画像が虚像であることは必須ではなく、本開示は、表示デバイスと観察系との間に形成される実像にも等しく適用可能である。
【0108】
本開示は、観察距離が比較的大きい場合であっても、画像(実像又は虚像)を表わすために、非常に小型の表示デバイスを使用できるようにする。それは、所望の位置における画像の存在を模倣するホログラムを与えることによって、並びに、観察系の位置及び光を観察系に入れるための入口開口のサイズ及び/又は形状を考慮に入れて、そのホログラムによって空間的に変調された光をインテリジェントに導くことによって行なわれる。
【0109】
表示デバイスは、ホログラムを表示するピクセルを備える。表示デバイスのピクセル構造は回折性である。したがって、ホログラフィック画像のサイズは回折規則によって支配される。表示デバイスの非常に小さい性質の結果は、
図4に関連して、広範な光学的用語で以下に説明される。
【0110】
図4は、実物体又は画像401と観察系405との間に小さな観察窓を形成する開口402を示す。
図4は、開口402の上流側に有限距離を隔てて位置される実物体又は実像401から来る光に対する開口402の効果を示す。開口402は、それと観察系405との間の距離に対して非常に小さい。この例示的な配置では、画像401、表示デバイス402、及び観察系405は、光軸Ax上に配置される。
【0111】
図4は、開口402によって画定された非常に小さい観察窓を通過して光軸Axに垂直に画定された観察面406に向かって進む画像401からの光線(又は、光線束)のみを示す。当業者であれば分かるように、他の光線は、画像401から進行するが、開口402とは一致せず、そのため、(この例では)観察面406に到達することができない。更に、5つの光線(又は光線束)は、画像401から進行するもの、-画像401の5つの異なる部分のそれぞれからのもの-として示されるが、この場合も先と同様、当業者であれば分かるように、これは例示にすぎず、本開示は5つの光線又は光線束に限定されない。開口402
【0112】
観察系405は、観察面406のすぐ前方に入口開口404を有する。観察系406は、人の眼であってもよい。したがって、入口開口404は、眼の瞳孔であってもよく、また、観察面406は、眼の網膜であってもよい。したがって、観察面406は、「センサ平面」と呼ばれることがある。
【0113】
開口402と観察系405との間を進む光は、
図4の例では、実際の変調されない光である。
図4は、開口402の非常に小さいサイズが画像コンテンツを角度によってどのように効果的に分割するかを示す。
図4は、それぞれが光軸に対するそれぞれの角度Axによって特徴付けられ且つそれぞれが画像401の異なるそれぞれの部分から進行する5つの例示的な光線束を示す。光軸Axに沿って進む光束は、画像の中心部分を伝え、すなわち、画像の中心の光である。他の光束は、画像の他の部分を伝える。全ての画像コンテンツが任意の所定の観察位置で入射瞳404を通過することができるわけではない大きい観察距離と比較して、開口402によって画定される非常に小さい観察窓、及び瞳404の非常に小さい入口開口の結果である。言い換えると、全ての画像コンテンツが眼によって受信されるわけではない。
図4の例では、図示されている5つの光束のうちの1つのみが、任意の観察位置で瞳孔404を通過する。
【0114】
この例では、示されている瞳孔404の位置に関し、画像の中央部分が眼によって見られる。残りの画像情報は遮断される。読者であれば分かるようには、観察者が上下に動けば、異なる光束を眼によって受けることができ、例えば、画像の中央部分が遮断され得る。したがって、観察者は、完全な画像の一部のみを見ることになる。残りの画像情報は遮断される。換言すれば、観察者は表示デバイス自体の小さな開口を通して画像を効果的に見ているため、観察者の視界は非常に制限される。
【0115】
要約すると、光は開口402から小さな観察窓まである角度範囲にわたって伝搬する。1mの観察距離では、小さな観察窓からの狭い範囲の角度のみが眼の瞳孔を通って伝搬し、所定の眼の位置の網膜に画像を形成することができる。見える画像の部分のみが、入口開口404を通過する
図4に示される小さな角度範囲内にある部分である。したがって、視野は非常に小さく、特定の角度範囲は眼の位置に大きく依存する。
【0116】
図4に関連して説明した小視野及び眼の位置に対する感度の問題は、観察窓の大きい観察距離及び小さい開口、並びに観察系の小さい入口開口の結果である。観察距離の重要性は、
図5~
図7に関連して更に説明される。
【0117】
適切な表示デバイスに表示及び照射されたホログラムを使用して、所望の位置に画像(実像又は虚像)を形成することは周知である。しかしながら、従来のホログラフィック技術は、特に比較的大きい観察距離又は比較的小さい観察開口に関して、小さい表示デバイスを使用して鮮明且つ正確に画像を形成するのに適していない。従来のホログラフィック技術は、更に、これが特に虚像などの画像が観察者から無限遠ではない距離で表わされるようになっている場合に当てはまることを認識している。しかしながら、中間ホログラフィック再構成の形成に依存することは、一般に、特にコンパクトさが望まれ且つ不動産価値が高い用途では非実用的又は他の点で望ましくない場合があるディフューザ又はスクリーンなどの更なる光学素子を必要とする。
【0118】
図5Aは、ホログラムを表示してホログラムにしたがって空間的に変調された光を入口開口504と観察面506とを備える観察系に伝搬するように構成される表示デバイス502を示す。
図5Aの表示デバイス502は、
図4の観察開口402と同様の小さい物理的サイズを有する。また、
図5Aは、表示デバイス502の上流側に、ホログラムが表わす虚像(図示せず)からの光の光線追跡も示す。虚像501は無限遠にあるため、虚像と表示デバイス502との間で追跡される光線はコリメートされる。虚像からのコリメート光は、5つの光線又は光線束を備えるものとして示されるが、これは例示にすぎず、本開示を限定するものと見なされるべきではないことが理解され得る。
【0119】
図5Aの下部は、観察系の拡大図を示す。この図は概略図であり、したがって眼の生理学的詳細は示されない。実際には、当然ながら、表示デバイス502を照らすように構成される光源(
図5Aには図示せず)がある。
【0120】
図5Aでは、表示デバイスと観察面との間の距離は、表示デバイス502からの光線の全回折角が網膜上に画像を形成することができるほど十分に小さい。言い換えると、(虚像から来るものとして示される)5つの光線束全ての光伝搬経路は、入口開口を通過する。したがって、虚像上の全ての点が網膜上にマッピングされ、全ての画像コンテンツが観察面に配信される。興味深いことに、網膜上の異なる画像点は、表示デバイス502上の異なる領域から伝搬する光から形成され、例えば、
図5Aの上部に最も近い画像点は、表示デバイスの下部のみから伝搬する光から形成される。表示デバイスの他の領域から伝搬する光は、この画像点に寄与しない。
【0121】
図5Bは、観察距離が増大されるにつれて生じる状況を示す。
【0122】
より詳細には、
図5Bは、ホログラムを表示してホログラムにしたがって変調された光を入口開口504’と観察面506’とを備える観察系に伝搬するように構成される表示デバイス502’を示す。虚像501’は無限遠にあるため、虚像と表示デバイスとの間でトレースされる光線はコリメートされる。
図5Bの下部は、観察系の拡大図を示す。この図は概略図であり、したがって眼の生理学的詳細は示されない。実際には、当然ながら、表示デバイス502’を照らすように構成される光源(
図5Bには図示せず)がある。
【0123】
図5Bは、開口504’を通って伝搬することができる光線のみを示し、開口504’を通過することができない任意の他の光線は省略される。しかしながら、これらの他の光線も表示デバイス502’から伝搬することが理解され得る。
図5Bのより大きい観察距離では、光円錐は、光線束の一部が入口開口504’によって遮断される(すなわち、それらは物理的に一致しない)程度まで、観察面上に広がっている。具体的に、この例では、虚像のエッジ部分と関連付けられた光線束は、入射瞳504’によって遮断される。しかしながら、入口開口504’が観察面506’と平行な位置を移動した場合、虚像の異なるそれぞれの部分が見えるように、異なるそれぞれの光線束が開口504’と一致し得る。したがって、任意の開口位置に関して、虚像全体は見えず、見える虚像の部分は開口(例えば、眼)位置に大きく依存する。したがって、表示デバイスと観察系との間の距離が大きいことは、表示デバイスのサイズが小さいために、特に比較的小さい入口開口と組み合わせた場合に問題となる。
【0124】
図6Aは、表示デバイス602に表示されたホログラムでエンコードされた光を入口開口604と観察面606とを備える観察系に向けて伝搬する、表示デバイス602を備える改良されたシステムを示す。実際には、当然ながら、表示デバイス602を照明するように構成される光源(図示せず)がある。改良されたシステムは、表示デバイス602と入口開口604との間に位置された導波路608を更に備える。
図6Aの下部は、入射瞳604及び観察面604の拡大図を示す。この図は概略図であり、したがって眼の生理学的詳細は示されない。
【0125】
図6の観察距離は、
図5Bの観察距離と同じである。しかしながら、
図5Bで遮断された光線束は、より長い観察距離にもかかわらず、全画像情報が観察系によって受信されるように、導波路608によって効果的に復元される。
【0126】
導波路608の存在は、この比較的大きい投影距離であっても、表示デバイス602からの全ての角度コンテンツを眼によって受けることができるようにする。これは、周知であり、したがって本明細書では簡単に説明される態様で、導波路608が瞳孔拡張器として作用するからである。
【0127】
手短に言えば、導波路608は、実質的に長尺な形成を含む。この例では、導波路は屈折材料の光学スラブを備えるが、他のタイプの導波路も周知であり、使用されてもよい。導波路608は、表示デバイス602から投影される光円錐と、例えば斜めの角度で交差するように位置される。導波路608のサイズ、場所、及び位置は、光円錐内の5つの光線束のそれぞれからの光が導波路608に入るようにするべく構成される。光円錐からの光は、その第1の平坦面610(表示デバイス602に最も近い位置にある)を介して導波路608に入射し、導波路608の長さに沿って少なくとも部分的に誘導された後、第1の面610とは実質的に反対側の第2の平坦面612(眼に最も近い位置にある)を介して放射される。よく理解されるように、第2の平坦面612は部分的に反射性、部分的に透過性である。言い換えると、各光線が、導波路608内で、導波路608の第1の平坦面610から第2の平坦面612へと進むとき、光の一部は導波路608から透過され、一部は第2の平坦面612によって反射されて第1の平坦面610に戻る。第1の平坦面610は反射性であり、それにより、導波路608内から第1の平坦面に当たる全ての光は、第2の平坦面612に向かって反射される。したがって、光の一部は、伝送される前に導波路608の2つの平坦面610,612間で単に屈折されてもよく、一方、他の光は反射されてもよく、したがって、伝送される前に導波路608の平坦面610,612間で1つ以上の反射(又は「バウンス」)を受けてもよい。したがって、導波路608の正味の効果は、光の伝送が導波路608の第2の平坦面612上の複数の位置にわたって効果的に拡張されることである。したがって、表示デバイス602によって出力される全ての角度コンテンツは、導波路608がない場合よりも、表示平面上のより多くの位置(及び開口平面上のより多くの位置)に存在し得る。このことは、比較的大きい投影距離にもかかわらず、各光線束からの光が入口開口604に入って観察面606によって形成される画像に寄与し得ることを意味する。言い換えると、表示デバイス602からの全ての角度コンテンツを眼で受けることができる。したがって、表示デバイス602の完全な回折角が利用され、観察窓がユーザにとって最大化される。したがって、このことは、全ての光線が知覚される虚像601に寄与することを意味する。
【0128】
図6Bは、上から下にそれぞれR1~R5とラベル付けされている、
図6Aで形成される虚像601内の5つのそれぞれの画像点に寄与する5つの光線束のそれぞれの個々の光路を示す。図から分かるように、R1及びR2のそれぞれの光は、単に屈折した後、導波路608によって伝送される。一方、R4の光は、透過する前に単一のバウンスに遭遇する。R3の光は、伝送される前に導波路608によって単に屈折される表示デバイス602の対応する第1の部分からの幾つかの光と、伝送される前に単一のバウンスに遭遇する表示デバイス602の第2の異なる対応する部分からの幾つかの光とを含む。同様に、R5の光は、透過前に単一のバウンスに遭遇する表示デバイス602の対応する第1の部分からの幾つかの光と、透過前に2つのバウンスに遭遇する表示デバイス602の第2の異なる対応部分からの幾つかの光とを含む。R3及びR5のそれぞれについて、LCOSの2つの異なる部分は、虚像のその部分に対応する光を伝搬する。
【0129】
少なくとも幾つかの用途では、虚像距離、すなわち観察者から虚像までの距離は、虚像が無限遠で形成されるのとは対照的に、有限であることが好ましい。特定の用途では、虚像コンテンツが現れることが望ましい又は必要である好ましい虚像距離が存在する。例えば、これは、例えば自動車の設定におけるヘッドアップディスプレイの場合、例えば、虚像コンテンツが、車両のフロントガラスを通して見る人によって見られている実際のコンテンツに重畳される場合であり得る。例えば、所望の虚像距離は、観察者の車両又はフロントガラスの前方に数メートル、例えば3メートル又は5メートルで形成される虚像コンテンツを含むことができる。
【0130】
小型表示デバイス、長い観察距離及び瞳孔拡張器におけるホログラム計算
本発明者らは、
図7に示す光学系のホログラムを計算する方法を考えた。重要なのは、表示デバイスが比較的小さく、投影距離が比較的長いことである。ホログラムは観察系に直接投影され、方法はリアルタイムで実施することができる。表示デバイスの比較的小さいサイズ及び比較的長い投射距離は、瞳孔拡張器を必要とする。方法は、瞳孔拡張器を通る異なる経路に対処する。方法は、画像コンテンツが例えば1つのホログラムを使用して観察系から異なる距離及び/又は複数の距離を隔てて任意選択的に、同時に出現できるようにする。方法は、画像コンテンツが例えば1つのホログラムを使用して表示デバイスの下流側及び表示デバイスの上流側に任意選択的に、同時に出現できるようにする。
【0131】
図7は、画像のホログラムを表示するように動作可能な空間光変調器701を示す。この実施形態では、空間光変調器701は、受けた光の位相をモジュール化するように構成される液晶オンシリコンデバイスである。空間光変調器701は、図示しない光源からの少なくとも部分的にコヒーレントな光によって照明される。光源は、レーザダイオードであってもよい。空間光変調器701は、表示ホログラムにしたがって空間的に変調された光を出力する。
図7は、空間的に変調された光の一方の光線702を示す。空間的に変調された光は、瞳孔拡張器703によって受けられる。瞳孔拡張器703は、表示デバイス701の平面に対して傾斜している。したがって、瞳孔拡張器703は、非垂直入射で光を受ける。入射角(光軸が瞳孔拡張器と成す角度)は、25度未満、例えば10度~20度であってもよい。瞳孔拡張器は、空間的に変調された光を受ける入力面703aと、出力面703bとを備える。入力面703a及び出力面703bは、実質的に平行であり、瞳孔拡張の方向で長尺である。入力面703aは、少なくとも実質的に完全に反射する(例えば、R=1)部分を備える。出力面703bは、少なくとも高反射性であるが部分的に透過性である(例えば、R=0.9及びT=0.1)部分を備える。反射面は、
図6の導波路608を参照して前述したように、空間的に変調された光がそれらの間で前後にバウンスして光が出力面703bに沿った複数の点で放射されるように構成される。この実施形態では、瞳孔拡張器は実質的に長尺である。瞳孔拡張器は、一方向、すなわち長尺な方向に瞳孔拡張をもたらすが、本開示は、瞳孔を直交方向に拡張するように構成される第2の瞳孔拡張器の存在を含むように拡張されてもよい。
【0132】
図7は、光線702がどのように2回効果的に複製されて、それぞれが異なるそれぞれの距離Z
0、Z
1及びZ
2に関連付けられた3つの伝搬経路705を形成するかを示す。最短伝搬経路は、Z
0に対応し、この例では、内部反射を何ら伴うことなく導波路を通過した光に対応する。示されている3つの中距離伝搬経路は、瞳孔拡張器におけるZ
1及び2つの内部反射(各表面に1つずつ)に対応する。示されている最長伝搬経路は、瞳孔拡張器におけるZ
2及び4つの内部反射(各表面に2つ)に対応する。平面x
0、x
1、及びx
2は、それぞれ3つの伝搬経路Z
0、Z
1、及びZ
2のそれぞれに関連する光照射野の空間的範囲を示す。より具体的には、
図7は、瞳孔拡張器703内で光が受けた異なるそれぞれのバウンス数の結果として、3つの平面x
0、x
1、及びx
2がx方向に互いにどのようにオフセットされるかを示し、瞳孔拡張器は、各レプリカがそれぞれ出力された出力面703b上の位置を決定した。
【0133】
図7は、入射瞳707、レンズ709、及び光センサ711を備える観察系713を更に示す。実施形態では、観察系713は人の眼であり、光センサ711は眼の網膜である。
図7は、各伝搬経路に関連する光照射野の一部のみがどのように入口707を通過するかを示す。特に、
図7は、各光照射野が開口(例えば、瞳孔)707によって著しく切り取られ、(複雑なホログラフィック)光照射野の異なるそれぞれの部分が、示されている3つの異なる例示的な光路に関して切り取られることを示す。
図7は、入射瞳707の中心を通過する中距離伝搬経路の中心に関連する光線を示す。しかし、例えば、最短伝搬経路の光照射野の中心に関連する光線は、開口707の上部によって遮断される。しかしながら、最短伝搬経路の光照射野に関連する他の光線は、開口707を通過することができる。最長伝搬経路の光照射野の中心に関連する光線は、開口707の下部によって遮断される。しかしながら、最長伝搬経路の光照射野に関連する他の光線も開口707を通過することができる。
【0134】
開口707を通過する光は、レンズ709によって光センサ711上に集束される。光センサ711の平面は、表示デバイス701の表示/ホログラム平面と実質的に平行であり、したがって、瞳孔拡張器703の長尺な寸法に対しても傾斜している。
【0135】
図7の配置では、観察者は、アイボックス内の全ての位置から画像全体を見ることができる。しかしながら、各伝搬経路の光照射野は、開口707によってそれぞれの他のそれぞれに対して異なるように切り取られるため、画像の異なる部分は、異なるそれぞれのバウンス数に対応し得る。言い換えれば、観察者によって見られる画像の異なる部分は、異なるそれぞれの光伝搬経路から来ることができる。
【0136】
図7は、単なる例として、3つの想定し得る光伝搬経路を示す。本開示は、伝搬経路の数に限定されない。すなわち、当業者が以下の説明から理解するように、方法は、任意の数の光伝搬経路を考慮に入れるように拡張され得る。同様に、瞳孔拡張器が表示平面及びセンサ平面に対して傾斜していることは必須ではない。
【0137】
本発明者らは、
図8に関連して以下に説明する方法を考案した。この方法は、異なる瞳孔拡張器が設定する範囲に関して及び瞳孔拡張器内の光の任意の想定し得る数のバウンスに関して、したがって任意の数の光伝搬経路に関して、空間的に変調された光が観察者の眼に正確に到達するようにするのに適したホログラムを計算するために使用され得る。重要なことに、それは、画像の必要な全ての光が観察者に到達するように、観察系の入口開口のサイズ及び形状を考慮する。
【0138】
要約すると、本発明者らは、高速Gerchberg-Saxton型アルゴリズムを使用して、ピクセル化表示デバイス及び瞳孔拡張器、例えばヘッドアップディスプレイ(HUD)を含む光学セットアップのためのチャネリングホログラムを計算する方法を特定した。本発明者らは、瞳孔拡張器内の全てのバウンス、及び全ての可能な光路を考慮する必要性を認識しており、それぞれから複雑な光照射野を伝搬してそれらを合計することによってそのようにしている。本発明者らは、更に、瞳孔拡張器と画像平面との間の開口(例えば、観察者の瞳孔)にしたがって、(それぞれの光伝搬経路上の)各光照射野を切り取る必要性を認識している。本発明者らは、更に、開口におけるそれぞれの異なる光伝搬経路の間で光照射野の横方向のシフトがあり、瞳孔拡張器内での光の反射に位相シフトがあることを認識している。したがって、本発明者らは、それぞれの光学設定に適したホログラムの迅速且つ正確な提供を可能にし、比較的大きい観察距離であっても、また表示デバイス(SLMなど)及び/又は開口が比較的小さい場合であっても、観察者がアイボックス内の異なる位置の範囲から画像全体を正確に見る/知覚することを可能にするために、アルゴリズムを適合させた。
【0139】
図8は、方法のステップを示すフローチャートである。方法は、画像/センサ平面とホログラム/表示平面との間の数学的変換を使用して、画像に対応する位相ホログラムに収束するGerchberg-Saxtonタイプのアルゴリズムに似ており、位相ホログラムは虚像であってもよく、空間光変調器の上流側に有限距離を隔てて形成されてもよい。像面又はホログラム面への各伝搬後の光照射野の振幅成分は変更又は制約されるが、位相成分は保存される。
【0140】
方法の初期段階は、ステップ802及び804を含む。初期段階は、第0の複素光照射野を形成することを含む。ステップ802は、第0の複素光照射野の位相成分を形成するランダムな位相シードを提供する。ステップ804は、第0の複素光照射野の振幅成分を提供する。振幅成分は、ホログラムから画像を再構成するために使用される光源の光を表わす単一又は振幅分布であってもよい。
【0141】
ステップ806において、第0の複素光照射野は、空間光変調器701(すなわち、ホログラム面から)から観察系713の入射瞳707へ(より具体的には、観察系713の入射瞳707を含む平面へ)フレネル伝搬される。この場合も先と同様に、この実施形態は、本開示の思想又は範囲から逸脱することなく使用することができる幾つかの異なる数学的変換の単なる一例としてフレネル伝搬を指す。ステップ806は、
図7のx
0、x
1、及びx
2に(例としてのみ)示されるように、瞳孔拡張器703によって提供されるバウンス又は内部反射の数ごとに実行されて、各光伝搬経路に関して複雑な光照射野を形成する。ステップ806は、入射瞳707の平面におけるx方向の複素光照射野の横方向位置、及び瞳孔拡張器703内で光が各反射を受ける位相シフトを考慮に入れることを含む。異なる複素光照射野は、例えば加算により組み合わされてもよい。第1の段階は、入射瞳707のサイズ及び形状にしたがって組み合わせ複素光照射野を切り取って入射瞳707に第1の複素光照射野を形成するステップ808を更に含む。
【0142】
方法の第2の段階は、ステップ810及び812を含む。ステップ810において、第2の複素光照射野は、入射瞳からレンズ709を通って光センサ711の平面まで第1の複素光照射野を伝搬することによって決定される。ステップ812は、光センサ711に到達する複素光照射野の振幅成分を変更することを含む。より具体的には、ステップ812は、複素光照射野の振幅成分を、標的画像の振幅成分又は標的画像の振幅成分の重み付けバージョンなどの標的画像の振幅成分に基づく振幅成分で置き換えることを含む。伝搬に使用されるレンズ709の位置は、像距離を決定し、すなわち、レンズ709の位置は、画像コンテンツが空間内のどこに現れるかを決定する。幾つかの実施形態では、画像は虚像であり、この距離は虚像距離「VID」と呼ばれることがある。
【0143】
好適には、本明細書に開示される方法は、同じホログラムを使用して複数の異なる画像距離、例えば複数のVIDで画像コンテンツを形成できるようにする。本発明者らは、これが、z方向におけるレンズ709の異なる位置を考慮することによって、画像距離ごとに第2の段階を繰り返すことにより達成され得ることを確認した。異なる画像距離ごとにこの手法にしたがって決定された複雑な光照射野は、例えば加算によって組み合わせることができる。
【0144】
方法の第3の段階は、第2の複素光照射野がレンズ709を介して入射瞳707に戻って伝搬されるステップ814を含む。これは、単に光が反対のz方向に進行していることを反映するために逆伝搬と呼ばれることがある。幾つかの実施形態では、逆伝搬は、対応する「順方向」伝搬の数学的逆伝搬である。また、第3の段階は、第3の複素光照射野を形成するために入射瞳707のサイズ及び形状にしたがって伝搬光照射野を切り取ることも含む。入射瞳707の平面は、
図8に示すように、「複素ホログラム平面」と呼ぶことができる。
【0145】
第4の段階は、ステップ816及び818を含む。ステップ816において、光は、第1の段階に関して前述した態様で、-しかしながら当然反対の光方向(すなわち、「逆」伝搬)で、瞳孔拡張器の複数の光伝搬経路のそれぞれを介して、入射瞳707の平面から空間光変調器702の平面まで逆伝搬される。ステップ818は、第4の複素光照射野を出力するために、表示デバイスの活性/ピクセル領域のサイズ及び位置にしたがって伝搬光照射野を切り取ることを含む。各複素光照射野の複素値の数は、表示デバイスのピクセル数と等しいかそれ以下であってもよい。
【0146】
ステップ820は、第4の複素光照射野に対応するデータセット(「第4のデータセット」と呼ぶことができる)からホログラム(又は、「キノフォーム」)を抽出することを含む。ホログラムは、第4の複素光照射野の位相値を含んでもよく、この場合、ホログラムは、キノフォームと呼ばれてもよい。本開示で先に説明したように、本方法は、画像平面(すなわち、第3段階)で等しく開始することができる。本開示によれば、各段階の少なくとも1回の反復が必要である。
図9及び
図10は、この方法によって形成されたホログラムを説明している。
【0147】
光チャネリング
本開示にしたがって計算されるホログラム(又は、「キノフォーム」又は「回折構造」)は、従来のホログラム計算方法を使用して観察又は達成することができない固有の特性を有する。
【0148】
要約すると、本開示にしたがって計算されるホログラムは、例えば、これに限定されないが、それが表示及び照明されるLCOSなどの表示デバイスが空間的に変調された光のチャネルを出力できるようにし、この場合、各チャネルは、対応する画像の異なるそれぞれの部分に対応する。この特有のチャネリングにより、表示デバイスは、観観察距離が比較的大きい場合であっても、表示デバイスが比較的小さい場合であっても、また眼を動かす必要なく、観察者が眼の比較的小さい開口を介して画像全体を正確に見ることを可能にするために、導波路などの適切な瞳孔拡張器と連携して動作することができる。例えば、観察者の眼の開口とホログラムが表示される表示デバイスの両方が比較的非常に小さい場合でも、表示デバイスの上流側に有限距離を隔てて位置する虚像は、比較的大きな距離で(正確に、且つその全体において)観察され得る。これは、従来のホログラフィを使用しても、非ホログラフィ技術を使用しても、これまで達成できなかった。
【0149】
本開示の一態様によれば、本発明者らは、上記の
図8に示す方法などを介してフレネル伝搬を使用してホログラムを計算すると、画像の異なるそれぞれの部分に対応する空間的に変調された(すなわち、「ホログラフィック」)光が異なるそれぞれの光路をたどることを見出した。したがって、本発明者らは、ホログラムを使用してそれらの光路のそれぞれを観察者の眼に同時に向けることができ、それによって、眼を動かしたり他の物理的変化を行なったりすることなく、眼/脳が画像全体を再構成するのに必要な全てのホログラフィック光を観察者が受信できるようにすることを認識した。上記の詳細な例に示すように、これを達成するために、計算されたホログラムを表示する表示デバイスと共に導波路又は他の瞳孔拡張器を使用することができる。
【0150】
図9A及び
図9Bによって示される実施形態では、本発明者らは、本明細書に開示されるホログラムの固有の特性の理解を助けるために、複数の個別の虚像成分又はエリアを含む虚像を表示する光学系を構成した。しかしながら、本開示は、連続的な(すなわち、非離散)画像コンテンツを有する画像に対応するホログラムの計算及び表示、並びに/又は離散画像部分の任意の数/サイズ/分割を有する画像のホログラムにも同様に適用可能である。
図9A及び
図9Bでは、簡単に言えば、(i)虚像は複数の個別の虚像成分又はエリアを備え、(ii)各虚像成分の光は導波路内の異なる数のバウンス/反射に関連付けられる。しかしながら、幾つかの他の実施形態では、2つ以上の個別の虚像成分の光が導波路内で同じ数のバウンスを受ける可能性がある。
【0151】
図9Aは、V1~V8の8つの個別の画像エリア/成分を含む投影のための画像1552を示す。
図9Aは、例としてのみ8つの画像成分を示しており、画像1552は任意の数の成分に分割することができる。また、
図9Aは、(本明細書に開示されるように計算された)ホログラムが適切に表示されて照明されるときに形成されるエンコードされた光パターン(すなわち、ホログラフィック光のパターン)1554を示す。エンコードされた光パターン1554は、例えば、観察者の眼などの適切な観察系のレンズによって変換されたときに、画像1552を再構成することができる。エンコードされた光パターン1554は、第1~第8の画像成分/エリアV1~V8に対応する第1~第8の成分又はチャネルH1~H8を備える。したがって、ホログラムは、ホログラムが実行するホログラフィック光のチャネリングを特徴とし得る。この光のチャネリングは、本明細書に開示されるホログラムを決定する特定の方法に起因してのみ行なわれ、
図9Bに示される。具体的には、本開示に係るホログラムは、ホログラフィック光を、個別のそれぞれのエリアとして平面上に形成され得る複数の個別のチャネルに方向付ける。図示の例では、個別のエリアがディスクであるが、他の形状も想定される。上で詳述したように、ホログラムは、具体的には、表示デバイスにおける光照射野のサイズ/形状及び/又は観察開口における光照射野のサイズ/形状を念頭に置いて計算される(例えば、切り取られる)。したがって、最適なディスクのサイズ及び形状は、観察系の入射瞳のサイズ及び形状に関連し得る。
【0152】
ホログラムによって出力されるホログラフィック光のチャネルは、(観察者によってホログラフィックに再構成されるべき画像の)画像コンテンツを角度によって効果的に分解する。これは、実像401上の複数の別個の位置からの光線束が複数の別個の対応する角度で開口(又は、観察窓)402に進むが、これらの束のうちの1つのみからの光が任意の所定の眼の位置で観察者の眼を通って進むことができる、上記の
図4の光学配置と比較することによって更に理解することができる。本明細書に記載のように計算されて適切な表示デバイスによって表示されるホログラムは、ホログラフィックに再構成された虚像を形成して、所望の画像距離にあるその画像401(又は、実際には、任意の所望の画像/物体)の存在を模倣することができる。しかしながら、
図4の光学系及び従来のホログラフィックシステムに優る顕著な利点において、本明細書で説明するように計算されたホログラムは、表示デバイスが比較的小さい場合、及び観察者の眼などの観察系の入口開口が比較的小さい場合、及び観察距離が比較的大きい場合でも、画像全体を観察者が見る又は知覚することができるようにする。言い換えると、非限定的な例として、ホログラムは、
図4に示す5つの光線束全てが同時に観察者に到達できるようにし、したがって所望の虚像を完全に形成する。
【0153】
重要なことに、そのようなホログラムは、適切に表示及び照射されると、表示デバイスにホログラフィック光のチャネルを出力させ、この場合、ホログラフィック光の各チャネルは、所望の画像/物体のそれぞれの部分からの光が表示デバイスに到達する角度(又は、場合によっては、角度の束)に対応する。したがって、ホログラフィック光のチャネルは、画像コンテンツの異なるそれぞれの角度部分に対応すると言うことができる。これは、従来のホログラムには当てはまらない。更に、実際の画像/物体からの無変調光又は従来のホログラムから形成された空間的に変調された光とは異なり、本明細書に開示されるホログラフィック光のチャネルは、チャネルのそれぞれ、したがって画像の各(すなわち、全ての)部分に対応するホログラフィック光が観察者によって同時に受けられ得るようにするために、表示デバイスと観察者との間に位置された適切な導波路又は他の瞳孔拡張器によってガイドされ得るように特に構成される。更に、各チャネルは、少なくとも幾つかの実施形態では、1回だけ受信されてもよい。
【0154】
図10は、
図9A及び
図9Bに示される認識にしたがった改良された観察系1500を示す。
図8の方法を適用して、
図9A~
図10に示される方式でホログラムを計算することができる。特に、
図8の方法は、ホログラムが出力するように構成されるホログラフィック光のそれぞれのチャネルごとに実行されてもよく、各チャネルは、観察者によって見られる/知覚される画像の異なるそれぞれの部分に対応し、光の各チャネルは、瞳孔拡張器の出力面上の異なるそれぞれの透過点を介して観察者へと進む。それぞれのチャネルごとにホログラムを出力するために請求項8に記載の方法を実行することができ、また、ホログラムが計算された光学系によってホログラムが適切に表示及び照射される場合、個々のチャネル固有のホログラムを組み合わせて、標的画像のホログラフィック再構成をもたらす最終的な完全なホログラムを形成することができる。
【0155】
観察系1500は、この構成ではLCOS1502を備える表示デバイスを備える。LCOS1502は、ホログラムを備える変調パターン(又は「回折パターン」)を表示するとともに開口1504として作用する瞳孔、レンズ1509、及び観察面として作用する網膜(図示せず)を備える眼1505に向かってホログラフィックにエンコードされた光を投影するように構成される。LCOS1502を照明するように構成される光源(図示せず)がある。光源は、例えば、レーザダイオードを備えることができる。ホログラムは、単一の光線(又は、単一の光線束)によりホログラム全体を照明できるように構成される。ホログラムが本明細書で説明するように機能するために、複数の光源又は例えば異なるそれぞれの波長の複数の光線がホログラムを照明する必要はない。
【0156】
眼1505のレンズ1509は、ホログラムを画像に変換する。したがって、LCOSと眼1505との間に画像のホログラフィック再構成はない。
【0157】
観察系1500は、LCOS1502と眼1505との間に位置された導波路1508を更に備える。
図10の投影距離は比較的大きくてもよい。しかしながら、前の図に関連して説明したように、導波路1508の存在は、この比較的大きい投影距離であっても、LCOS1502からの全ての角度コンテンツを眼1505によって受けることができるようにする。これは、導波路1508が前述したように瞳孔拡張器として作用するからである。
【0158】
更に、この構成では、LCOS1502が本明細書に記載の方法にしたがってエンコードされている場合、LCOS1502からの光と観察者が知覚する虚像との間に固有の関係を確立するために、導波路1508をLCOS1502に対してある角度に向けることができる。導波路1508のサイズ、場所、及び位置は、各ホログラフィックチャネルからの光、したがって、虚像の各部分からの光が、導波路1508に入ってその長尺な軸に沿って案内されることによって、導波路1508の実質的に平坦な表面間でバウンスするようにするべく構成される。光が第2の平坦面(眼1505に最も近い)に到達するたびに、一部の光が透過され、一部の光が反射される。
【0159】
図10は、導波路1502の長さに沿った合計9つの「バウンス」点B0~B8を示す。読者は、画像1552の中心が空白のままであることに気付くことができる。
図15Cは、導波路内の第0~第9の光「バウンス」又は反射点B0~B8を示す。画像の全ての点(V1~V8)に関する光、すなわち、8つのホログラフィック光チャネルH1~H8のそれぞれの光は、導波路1508の第2の平坦面からの各「バウンス」で導波路から伝送されるが、画像の角度部分のうちの1つからの光(例えば、V1~V8のうちの1つの光)のみは、それが各それぞれの「バウンス」点B0~B8から眼1505に到達できるようにする軌道を有する。更に、この実施形態において、異なるチャネルからの光、したがって画像の異なるそれぞれの角度部分V1~V8からの光は、それぞれの「バウンス」点から眼1505に到達する。
図10は、(各透過点で複数の短い矢印により示される)各「バウンス」点で放射されている全ての異なるホログラフィック光チャネルの光を示すが、この場合、それぞれのチャネルの眼1505への光路のみを示しており、これは、そのバウンス点から眼1505に実際に到達する固有のそれぞれの画像部分(すなわち、固有のそれぞれの角度画像コンテンツ)に対応する。それぞれのバウンス点ごとに眼に到達するようにその光路が示されるチャネルは、導波路のそのそれぞれの部分からの虚像のそれぞれの部分に寄与するチャネルである。例えば、第0のバウンスB0の場合、導波路1508によって伝送される光は、単に屈折され、その中でいかなる反射も受けない。第8のサブホログラフィックサブチャネルH8の光は、第0のバウンスB0から眼に到達する。次のバウンスB1の場合、導波路1502によって伝送される光は、伝送前にその中で一回バウンスを受ける。第7のホログラムH7からの光は、次のバウンスB1から眼に到達する。これは、最終的なバウンスB8で導波路1508によって透過される光が、透過されて眼1505に到達する前に8回のバウンスを受け、第1のホログラムH1にしたがってエンコードされた光を含むまで、順次継続する。この構成において、各チャネルからの光は、眼の積分時間内に、実質的に同時に、-導波路上の複数の異なるそれぞれのバウンス点からそれぞれ1つずつ-観察者に到達する。したがって、観察者は、眼及び表示デバイスの両方が比較的非常に小さく且つ観察距離が比較的大きい場合でも、眼を動かしたり他の変更を加えたりすることなく、虚像全体に対応するホログラフィック光を同時に受け取る。
【0160】
図10に示される例では、ただ1つの画像エリアの光が各バウンス点から眼に到達する。したがって、ホログラムが本明細書で説明されるように決定されると、虚像のエリアと導波路上のそれらの関連するバウンス点との間の空間相関が確立される。幾つかの他の例では、画像の1つの領域が、2つの隣接する透過点によりもたらされ、したがって導波路から観察面に向かって伝搬する光の2つの隣接するディスク内に含まれるように、比較的小さな重なり合いが存在し得る。
【0161】
したがって、本発明者らによってなされた認識、並びに本明細書に記載の方法及び構成は、ホログラムを備える回折パターン(又は、光変調パターン)を生成できるようにすることが可能であり、このパターンは、LCOS又は他の適切な表示デバイスに表示されると、そこから、空間的に変調された又はホログラフィックな光を、それぞれが対応する虚像の異なるそれぞれの部分に対応する(より具体的には、エンコードする)複数の「ディスク」又はホログラフィック光のチャネルの状態で効果的に放射できるようにすることが可能である。
【0162】
したがって、表示デバイスが適切な光源によって照明されるときに、観察者が鮮明な画像を見ることができるようにする態様で、ホログラムを計算して適切な表示デバイスに表示できるようにする改良された方法及び構成が本明細書に記載される。例えば、改良された方法及び構成は、表示デバイス及び観察者の観察開口(すなわち、眼)が比較的小さく且つ観察距離が比較的大きい場合でも、観察者が表示デバイスから(無限遠ではなく)有限の距離を隔てて虚像などの画像を見ることができるようにし得る。
【0163】
本明細書に記載の改良された方法及び構成は、リアルタイムで実行することができるとともに、観察開口の場所/位置の変化に対応するべく例えば非常に迅速に繰り返すことができる。改良された方法及び構成は、2つの眼に関してなど、2つ以上の観察開口に関して実施されてもよい。改良された方法及び構成は、例えば非常に迅速に繰り返されて、複数の異なるホログラムの表示、したがって複数の異なる対応する画像の連続した及び/又はシーケンスでの、順次での、パターン状の又はループ状の観察を可能にすることができる。
【0164】
本明細書に記載の改良された方法及び構成は、様々な異なる用途及び観察系で実施することができる。例えば、改良された方法及び構成はヘッドアップディスプレイ(HUD)で実施されてもよい。虚像が無限遠で形成される多くの従来のHUDに優る改良において、本明細書に記載の改良された方法及び構成は、ゴースト像を依然として排除しながら、適切なコントローラによって選択及び調整することができる有限の画像距離を隔てて虚像を作成するために実施することができる。
【0165】
知覚された画像を形成するために眼が受信された変調光を変換することを必要とする虚像が本明細書で一般的に論じられてきたが、本明細書に記載の改良された方法及び構成は、実像に適用することができる。
【0166】
更なる特徴
実施形態は、単なる例として、電気的に活性化されるLCOS空間光変調器に言及する。本開示の教示内容は、例えば、任意の電気的に作動されるSLM、光学的に作動されるSLM、デジタルマイクロミラーデバイス又は微小電気機械デバイスなど、本開示に係るコンピュータ生成ホログラムを表示することができる任意の空間光変調器で等しく実施することができる。
【0167】
幾つかの実施形態では、光源がレーザダイオードなどのレーザである。本開示のホログラフィック投影システムを使用して、改良されたヘッドアップディスプレイを提供することができる。幾つかの実施形態では、HUDを提供するために車両に設置されたホログラフィック投影システムを備える車両が提供される。車両は、自動車、トラック、バン、大型トラック、オートバイ、電車、飛行機、ボート、又は、船などの自動車両であってもよい。
【0168】
ホログラフィック再構成の品質は、ピクセル化空間光変調器を使用する回折性の結果である、いわゆる0次問題によって影響を受ける可能性がある。そのような0次光は、「ノイズ」と見なすことができ、例えば鏡面反射光、及びSLMからの他の不要な光を含む。
【0169】
実施形態では、一次再生場のみが利用され、システムは、システムを通る高次再生場の伝搬を制限するように構成されたバッフルなどの物理ブロックを含む。
【0170】
実施形態では、ホログラフィック再構成がカラーである。幾つかの実施形態では、空間的に分離された色「SSC」として知られる手法を使用して、カラーホログラフィック再構成を提供する。他の実施形態では、フレームシーケンシャルカラー「FSC」として知られる手法が使用される。
【0171】
SSCの方法は、3つの単色ホログラムに対して3つの空間的に分離された光変調ピクセルの配列を使用する。SSC方法の利点は、3つの全てのホログラフィック再構成が同時に形成され得るため、画像が非常に明るくなり得ることである。しかしながら、空間の制限により、光変調ピクセルの3つの空間的に分離された配列が共通のSLMに提供される場合、利用可能な光変調ピクセルのサブセットのみが各色に使用されるため、各単色画像の品質は次善最適である。したがって、比較的低解像度のカラー画像が提供される。
【0172】
FSCの方法は、共通の空間光変調器の全てのピクセルを使用して、3つの単一色ホログラムを順に表示することができる。単一色再構成は、人の観察者が3つの単一色画像の統合から多色画像を知覚するように十分な速さで周期的に繰り返される(例えば、赤色、緑色、青色、赤色、緑色、青色など)。FSCの利点は、SLM全体が各色ごとに使用される点である。このことは、SLMの全てのピクセルがそれぞれのカラー画像ごとに使用されるため、生成される3つのカラー画像の品質が最適であることを意味する。しかしながら、FSC法の欠点は、各単色照明イベントはフレーム時間の1/3しか発生し得ないため、合成カラー画像の輝度がSSC法よりも約3倍低いことである。この欠点は、レーザをオーバードライブすることによって、又はより強力なレーザを使用することによって対処できる可能性があるが、これはより多くの電力を必要とし、その結果、コストが高くなり、システムのサイズが大きくなる。
【0173】
例は可視光でSLMを照らすことを説明するが、当業者であれば分かるように、例えば本明細書中に開示されるように、光源及びSLMを等しく使用して赤外線又は紫外線を方向付けることができる。例えば、当業者は、情報をユーザに提供する目的で赤外光及び紫外光を可視光に変換するための技術を認識し得る。例えば、本開示は、この目的のために蛍光体及び/又は量子ドット技術を使用することに及ぶ。
【0174】
幾つかの実施形態は、単なる一例として2Dホログラフィック再構成について記載する。他の実施形態では、ホログラフィック再構成が3Dホログラフィック再構成である。すなわち、幾つかの実施形態では、各計算機合成ホログラムが3Dホログラフィック再構成を形成する。
【0175】
本明細書中に記載される方法及びプロセスは、コンピュータ可読媒体で具現化されてもよい。「コンピュータ可読媒体」という用語は、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、バッファメモリ、フラッシュメモリ、及び、キャッシュメモリなど、データを一時的又は恒久的に記憶するようになっている媒体を含む。また、「コンピュータ可読媒体」という用語は、命令が、1つ以上のプロセッサによって実行される場合に、本明細書中に記載される方法論のうちの任意の1つ以上を全体的又は部分的に機械に実行させるように、機械による実行のための命令を記憶できる任意の媒体又は複数の媒体の組み合わせを含むように解釈されるものとする。
【0176】
「コンピュータ可読媒体」という用語は、クラウドベースのストレージシステムも包含する。「コンピュータ可読媒体」という用語は、ソリッドステートメモリチップ、光ディスク、磁気ディスク、又は、それらの任意の適切な組み合わせの例示的な形態を成す1つ以上の有形且つ持続性のデータリポジトリ(例えば、データ量)を含むが、これらに限定されない。実施形態の幾つかの例では、実行のための命令がキャリア媒体によって通信されてもよい。そのようなキャリア媒体の例としては、トランジェント媒体(例えば、命令を通信する伝搬信号)が挙げられる。
【0177】
当業者であれば分かるように、添付の特許請求の範囲から逸脱することなく、様々な修正及び変形を行なうことができる。本開示は、添付の特許請求の範囲及びそれらの均等物の範囲内の全ての修正及び変形を包含する。