(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】コネクタ装置
(51)【国際特許分類】
H01R 13/46 20060101AFI20241016BHJP
【FI】
H01R13/46 B
(21)【出願番号】P 2022144778
(22)【出願日】2022-09-12
【審査請求日】2024-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】桂巻 隆彦
(72)【発明者】
【氏名】山口 隼人
(72)【発明者】
【氏名】奥田 定治
【審査官】高橋 裕一
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-306697(JP,A)
【文献】米国特許第04567654(US,A)
【文献】特開2005-063890(JP,A)
【文献】特開2020-173894(JP,A)
【文献】特開2014-058230(JP,A)
【文献】特開2009-022100(JP,A)
【文献】特開平08-236209(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R13/40-13/533
H01R27/00-31/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の端子がコネクタ間口に突出した状態で配置されているコネクタにおいて、
前記複数の端子に、各前記端子への電力の供給状態を独立して切り替え可能な複数のスイッチがそれぞれ設けられ、
前記複数の端子のうち少なくとも2つの端子を互いに電気的に接続可能な導体板が前記コネクタ間口に着脱可能な状態で配置され、
複数の前記導体板が、所定の絶縁部材を介して連結可能な構造を有
し、
前記導体板は、前記コネクタ間口に装着された状態で、第1端子と第2端子との間を電気的に接続する第1ジョイント部材と、第3端子と第4端子との間を電気的に接続する第2ジョイント部材と、前記第1ジョイント部材と前記第2ジョイント部材との間を電気的に絶縁した状態で互いに物理的に連結する絶縁部材とを有し、
前記第1ジョイント部材は、前記第1端子及び前記第2端子の各々に挿通される第1挿通孔及び第2挿通孔を有し、
前記第2ジョイント部材は、前記第3端子及び前記第4端子の各々に挿通される第3挿通孔及び第4挿通孔を有し、
前記第1ジョイント部材及び前記絶縁部材の一方及び他方は、前記端子の挿通方向と交差する方向に相互に嵌合される凹部及び凸部を有し、
前記第2ジョイント部材及び前記絶縁部材の一方及び他方は、前記端子の挿通方向と交差する方向に相互に嵌合される凹部及び凸部を有する、
コネクタ装置。
【請求項2】
複数の前記導体板が前記絶縁部材を介して連結された状態で、前記複数の導体板および前記絶縁部材を前記端子の延伸方向に視た状態における面積が、前記コネクタ間口の面積と略同じ大きさになる、
請求項1に記載のコネクタ装置。
【請求項3】
前記複数のスイッチは、ハイレベル電圧を第1端子に出力する第1スイッチと、ローレベル電圧を第2端子に出力する第2スイッチとを含み、
前記導体板は、前記コネクタ間口に装着された状態で、前記第1端子と前記第2端子との間を電気的に接続するジョイント部材として構成される、
請求項1に記載のコネクタ装置。
【請求項4】
前記複数のスイッチは、ハイレベル電圧を
前記第1端子に出力する第1スイッチと、ローレベル電圧を
前記第2端子に出力する第2スイッチと、ハイレベル電圧を
前記第3端子に出力する第3スイッチと、ローレベル電圧を
前記第4端子に出力する第4スイッチとを含
む、
請求項1に記載のコネクタ装置。
【請求項5】
複数の端子がコネクタ間口に突出した状態で配置されているコネクタにおいて、
前記複数の端子に、各前記端子への電力の供給状態を独立して切り替え可能な複数のスイッチがそれぞれ設けられ、
前記複数の端子のうち少なくとも2つの端子を互いに電気的に接続可能な導体板が前記コネクタ間口に着脱可能な状態で配置され、
複数の前記導体板が、所定の絶縁部材を介して連結可能な構造を有し、
前記複数のスイッチは、ハイレベル電圧を第1端子に出力する第1スイッチと、ローレベル電圧を第2端子に出力する第2スイッチと、ハイレベル電圧を第3端子に出力する第3スイッチと、ローレベル電圧を第4端子に出力する第4スイッチとを含み、
前記導体板は、前記コネクタ間口に装着された状態で、前記第1端子と前記第2端子との間を電気的に接続する第1ジョイント部材と、前記第3端子と前記第4端子との間を電気的に接続する第2ジョイント部材と、前記第1ジョイント部材と前記第2ジョイント部材との間を電気的に絶縁した状態で互いに物理的に連結する絶縁部材とを有し、
前記第1ジョイント部材は、前記第1端子及び前記第2端子の各々に挿通される第1挿通孔及び第2挿通孔を有し、
前記第2ジョイント部材は、前記第3端子及び前記第4端子の各々に挿通される第3挿通孔及び第4挿通孔を有し、
前記第1ジョイント部材及び前記絶縁部材の一方及び他方は、前記端子の挿通方向と交差する方向に相互に嵌合される凹部及び凸部を有し、
前記第2ジョイント部材及び前記絶縁部材の一方及び他方は、前記端子の挿通方向と交差する方向に相互に嵌合される凹部及び凸部を有する、
コネクタ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタ装置に関する。
【0002】
車両の様々な部位には、様々な種類の各種電装品が配置されている。また、車両の各部に搭載されている電子制御ユニット(ECU)は、制御対象の各種電装品、すなわち負荷のオンオフや出力の大きさなどをスイッチ回路を用いて制御する必要がある。
【0003】
例えば、特許文献1の
図2に示されている構成では、負荷である電気モータ20に流れる電流を双方向に制御するために、4個の半導体スイッチ素子Q1H、Q1L、Q2H、及びQ2Lを含む出力回路40を利用している。このような出力回路(スイッチ回路)を含むECUと負荷との間は、所定のコネクタを含むワイヤハーネスを介して接続されるのが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、各ECUに含まれるスイッチ回路は、負荷の種類や仕様に合わせて構成する必要がある。例えば、双方向の電流制御を必要とする電気モータを制御対象とする場合には、特許文献1の出力回路40のように負荷1個につき4個のスイッチ素子が必要になる。一方、駆動方向の切替が不要な電気モータ、ランプ、ヒータなどの負荷を制御する場合には、1個の負荷をそれぞれ1個のスイッチのみで制御可能である。
【0006】
また、負荷の種類や仕様に応じて、負荷の正極側の端子に高電位の電圧を印加するスイッチを必要とする場合や、負荷の負極側の端子に低電位の電圧を印加するスイッチを必要とする場合もある。したがって、各ECUの回路構成はそれを配置する場所の違いや車両の仕様の違いなどに応じて様々に変化するように設計される。
【0007】
一方、各ECUの構成は、車両の種類、グレード等の違いにかかわらずなるべく共通化されることが望まれる。このような回路構成の共通化は、ECUの品番数の削減、ECUの製造コストの低減、取り付け作業の共通化などに寄与する。
【0008】
しかし、様々な仕様の車両において共通に使用可能なECUを設計する場合には、全ての種類の負荷の仕様に対応可能なスイッチ回路が必要になるので、設計上必要な最小限の部品数と比べて実装する部品数が増えてしまう。
【0009】
例えば、特許文献1の出力回路40のように負荷1個につき4個のスイッチ素子を実装する必要がある。一方、ECUの出力に実際に接続する負荷の種類によっては、4個のスイッチ素子のうち1個又は2個のスイッチ素子だけしか使用しない状況が生じうる。その場合、4個のスイッチ素子のうち残りの2個又は3個のスイッチ素子は全く使用されることのない付け捨ての部品となる。このような付け捨ての部品は無駄になるので、この部品数が増えるとECUのコスト上昇に繋がる。
【0010】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、車両上の電子制御ユニット等において回路構成を共通化する場合に、付け捨てになる無駄な部品の削減が可能なコネクタ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る上記目的は、下記構成により達成される。
【0012】
複数の端子がコネクタ間口に突出した状態で配置されているコネクタにおいて、
前記複数の端子に、各前記端子への電力の供給状態を独立して切り替え可能な複数のスイッチがそれぞれ設けられ、
前記複数の端子のうち少なくとも2つの端子を互いに電気的に接続可能な導体板が前記コネクタ間口に着脱可能な状態で配置され、
複数の前記導体板が、所定の絶縁部材を介して連結可能な構造を有し、
前記導体板は、前記コネクタ間口に装着された状態で、第1端子と第2端子との間を電気的に接続する第1ジョイント部材と、第3端子と第4端子との間を電気的に接続する第2ジョイント部材と、前記第1ジョイント部材と前記第2ジョイント部材との間を電気的に絶縁した状態で互いに物理的に連結する絶縁部材とを有し、
前記第1ジョイント部材は、前記第1端子及び前記第2端子の各々に挿通される第1挿通孔及び第2挿通孔を有し、
前記第2ジョイント部材は、前記第3端子及び前記第4端子の各々に挿通される第3挿通孔及び第4挿通孔を有し、
前記第1ジョイント部材及び前記絶縁部材の一方及び他方は、前記端子の挿通方向と交差する方向に相互に嵌合される凹部及び凸部を有し、
前記第2ジョイント部材及び前記絶縁部材の一方及び他方は、前記端子の挿通方向と交差する方向に相互に嵌合される凹部及び凸部を有する、
コネクタ装置。
【発明の効果】
【0013】
本発明のコネクタ装置によれば、車両上の電子制御ユニット等における回路構成を共通化する場合に、付け捨てになる無駄な部品の数を削減可能になる。すなわち、前記導体板をコネクタ間口に装着することで、複数の端子の間を電気的に短絡することもできるし、複数の端子をそれぞれ独立した回路として使用することもできる。これにより、複数のスイッチを組み合わせて1組の回路として使用することもできるし、互いに独立した回路として使用することもできる。つまり、負荷の種類や仕様に合わせてコネクタの部位だけで回路構成を変更できる。空きになった回路は、別の負荷を制御するために有効に活用できるので、無駄な部品を削減できる。
【0014】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係るコネクタ装置の主要部外観を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、ジョイント板が装着されたコネクタ内部の状態を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、ジョイント板を示す分解斜視図である。
【
図4】
図4は、本発明のコネクタ装置を用いて構成した電子制御ユニットの構成例を示す電気回路図である。
【
図5】
図5は、本発明のコネクタ装置を用いて構成した電子制御ユニットの構成例を示す電気回路図である。
【
図6】
図6は、本発明のコネクタ装置を用いずに構成した電子制御ユニットの構成例を示す電気回路図である。
【
図7】
図7は、本発明のコネクタ装置を用いずに構成した電子制御ユニットの構成例を示す電気回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に関する具体的な実施形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
【0017】
図1は、本発明の実施形態に係るコネクタ装置の主要部外観を示す斜視図である。
図2は、ジョイント板20が装着されたコネクタ内部の状態を示す斜視図である。
図3は、ジョイント板20を示す分解斜視図である。
【0018】
図1に示すように、コネクタ10は、コネクタハウジング11と、その内部に収容された複数の金属端子13a、13b、13c、13dとを有している。このコネクタ10はオス型であり、矩形形状のコネクタ間口12を有している。
【0019】
各金属端子13a~13dは、互いに平行に配置され、
図1中に示した矢印A1の向きでコネクタ間口12内に細長くピン状に突出している。本実施形態では、各金属端子13a~13dは、矩形の断面形状を有している。各金属端子13a~13dの下端側は、例えばプリント基板などの回路に接続される。
【0020】
本実施形態のコネクタ10は、さらに
図1に示すジョイント板20を有している。ジョイント板20は、薄い平板形状になっており、コネクタ間口12の内周壁の断面形状とジョイント板20外形形状が略同一になっている。ジョイント板20は、コネクタハウジング11のコネクタ間口12に着脱可能になっている。また、種類が異なる複数のジョイント板20を準備しておき、コネクタ10の用途に応じて適宜ジョイント板20を選択することも可能である。
【0021】
本実施形態のジョイント板20は、
図3に示すように2つの銅板21、22と絶縁部材23とで構成されている。銅板21、22はそれぞれ薄板状であり、矢印A2方向が長手方向となっている。
【0022】
銅板21は、各金属端子13a及び13bをそれぞれ挿通可能な2つの挿通孔21a及び21bを有している。各挿通孔21a、21bの形状及び大きさは各金属端子13a及び13bの外形と同等である。同様に、銅板22は各金属端子13c及び13dをそれぞれ挿通可能な2つの挿通孔22a及び22bを有している。各挿通孔22a、22bの形状及び大きさは各金属端子13c及び13dの外形と同等である。
【0023】
図3に示すように、銅板21、絶縁部材23、及び銅板22を矢印A3方向に並べた状態で、これらの部品を互いに側方に連結して一体化することができる。
図3に示した例では、銅板21の側面に凹部21c及び21dが形成されている。また、銅板22の側面に凸部22c及び凸部22dが形成されている。また、絶縁部材23の手前側側面に凸部23a及び23bが形成され、奥側側面に凹部23c及び23dが形成されている。
【0024】
したがって、凹部21cと凸部23a、凹部21dと凸部23bをそれぞれ位置合わせして嵌め合わせることで、銅板21と絶縁部材23が連結される。また、凹部23cと凸部22c、凹部23dと凸部22dをそれぞれ嵌め合わせることで、銅板22と絶縁部材23が連結される。銅板21、22、及び絶縁部材23を連結して一体化したジョイント板20は、
図1に示すようにコネクタハウジング11のコネクタ間口12に挿入し装着される。
【0025】
ジョイント板20がコネクタハウジング11に装着されると、コネクタハウジング11の内部では
図2に示すように金属端子13a~13dとジョイント板20とが連結される。すなわち、金属端子13a~13dが、挿通孔21a、21b、22a、22bをそれぞれ貫通するように配置される。
【0026】
また、各銅板21、22、及び各金属端子13a~13dはいずれも良導体で構成されているので、銅板21と金属端子13aとの間、および銅板21と金属端子13bとの間が電気的に接続される。また、銅板22と金属端子13cとの間、および銅板22と金属端子13dとの間が電気的に接続される。
【0027】
したがって、2つの金属端子13a、13bの電気回路は、一方の銅板21を介して互いに電気的に接続(短絡)される。同様に、2つの金属端子13c、13dの電気回路は、もう一方の銅板22を介して互いに電気的に接続される。ここで、2つの銅板21、22の間に絶縁部材23が介在するので、金属端子13a、13bの電気回路と金属端子13c、13dの電気回路との間は電気的に絶縁されている。
【0028】
また、各銅板21、22の挿通孔21a、21b、22a、22bの周壁近傍の箇所20aには、各金属端子13a~13dとの接点の接触状態を良好に維持するために例えば金属製のバネのような弾性部材が備えられている。なお、圧入構造などを用いて各銅板21、22と各金属端子13a~13dとの接触状態が維持されてもよい。
【0029】
また、コネクタハウジング11のコネクタ間口12にジョイント板20を装着した場合においても、各金属端子13a~13dの先端はジョイント板20の更に上側に突出される。したがって、コネクタハウジング11にジョイント板20を装着した後で、相手側のメス型のコネクタ(図示せず)をコネクタ10のコネクタ間口12に嵌合して連結することができる。このメス型のコネクタに、ワイヤハーネスを介して様々な負荷の電装品を接続することができる。
【0030】
<コネクタ装置を用いて構成した電子制御ユニットの構成>
図1~
図3に示したコネクタ10を用いて構成した2種類の電子制御ユニット100A、100Bの電気回路構成を
図4及び
図5にそれぞれ示す。
図4に示した電子制御ユニット100Aは、負荷L1として双方向の駆動制御が必要な電気モータの通電を制御する場合を想定して設計されている。
【0031】
電子制御ユニット100Aは、それぞれ独立した4個の半導体スイッチ素子Q1、Q2、Q3、及びQ4と、制御部35とを備えている。また、2つの半導体スイッチ素子Q1及びQ3は、それぞれHiサイド出力回路31及び33を構成し、残りの2つの半導体スイッチ素子Q2及びQ4は、それぞれLoサイド出力回路32及び34を構成している。
【0032】
Hiサイド出力回路31は、半導体スイッチ素子Q1が導通したときに高電位の電圧を出力側に供給できる。Loサイド出力回路32は、半導体スイッチ素子Q2が導通したときに低電位の電圧を出力側に供給できる。また、Hiサイド出力回路33は、半導体スイッチ素子Q3が導通したときに高電位の電圧を出力側に供給できる。Loサイド出力回路34は、半導体スイッチ素子Q4が導通したときに低電位の電圧を出力側に供給できる。
【0033】
電子制御ユニット100Aにおいて、Hiサイド出力回路31、33、Loサイド出力回路32、34の各出力はコネクタ10と接続されている。また、Hiサイド出力回路31の出力はコネクタ10の金属端子13aと接続され、Loサイド出力回路32の出力はコネクタ10の金属端子13bと接続され、Hiサイド出力回路33の出力はコネクタ10の金属端子13cと接続され、Loサイド出力回路34の出力はコネクタ10の金属端子13dと接続されている。
【0034】
また、コネクタ10には、ジョイント板20が装着されている。したがって、コネクタ10の金属端子13a、13bの間は銅板21で電気的に接続され、金属端子13c、13dの間は銅板22で電気的に接続されている。
【0035】
負荷L1は、所定のワイヤハーネスを経由してコネクタ10に接続される。負荷L1の正極側の端子及び負極側の端子は、それぞれコネクタ10の金属端子13a及び13dと接続される。また、負荷L1の正極側の端子は、銅板21を介して金属端子13bとも接続され、負荷L1の負極側の端子は、銅板22を介して金属端子13cとも接続される。
【0036】
制御部35が各半導体スイッチ素子Q1、Q2、Q3、及びQ4をそれぞれ導通、非導通、非導通、及び導通の状態に制御すると、負荷L1には順方向に電流が流れる。また、制御部35が各半導体スイッチ素子Q1、Q2、Q3、及びQ4をそれぞれ非導通、導通、導通、及び非導通の状態に制御すると、負荷L1には逆方向に電流が流れる。
【0037】
一方、
図5に示した電子制御ユニット100Bは、4つの負荷L2、L3、L4、L5の通電を個別に制御する場合を想定して設計されている。また、
図5の例では2つの負荷L2、L4はそれぞれ高電位の電圧印加を必要とする電気モータである。また、2つの負荷L3、L5はそれぞれ低電位の電圧印加を必要とするランプ(LP)である。
【0038】
電子制御ユニット100Bの内部回路は、
図4の電子制御ユニット100Aと同様にHiサイド出力回路31、Loサイド出力回路32、Hiサイド出力回路33、Loサイド出力回路34、及び制御部35を備えている。つまり、2種類の電子制御ユニット100A,100Bは構成が共通の回路を利用している。
【0039】
但し、
図5の電子制御ユニット100Bにおいては、コネクタ10にジョイント板20が装着されていない状態になっている。したがって、コネクタ10の4つの各金属端子13a~13dの電気回路はそれぞれ独立した状態になっている。
【0040】
図5に示した電子制御ユニット100Bにおいては、制御部35が半導体スイッチ素子Q1を導通状態に制御することで、負荷L2の端子に高電位の電圧を印加して負荷L2を駆動することができる。また、制御部35が半導体スイッチ素子Q2を導通状態に制御することで、負荷L3の端子に低電位の電圧を印加して負荷L3を駆動することができる。
【0041】
また、制御部35が半導体スイッチ素子Q3を導通状態に制御することで、負荷L4の端子に高電位の電圧を印加して負荷L4を駆動することができる。また、制御部35が半導体スイッチ素子Q4を導通状態に制御することで、負荷L5の端子に低電位の電圧を印加して負荷L5を駆動することができる。
【0042】
つまり、
図1~
図3に示したようなコネクタ10を用いて
図4の電子制御ユニット100Aや、
図5の電子制御ユニット100Bのように電気回路を接続することで、ユニット内部の構成が共通の電気回路を利用する場合でも、それぞれ仕様の異なる負荷L1~L5を適切に制御できる。また、ユニット内に実装されている4個の半導体スイッチ素子Q1~Q4の全てを有効に活用できるので付け捨てになる無駄な部品を削減できる。
【0043】
<一般的なコネクタを利用して構成した電子制御ユニットの構成>
一般的なコネクタ50を用いて構成した2種類の電子制御ユニット100C、100Dの電気回路構成を
図6及び
図7にそれぞれ示す。
【0044】
図6に示した電子制御ユニット100Cにおいては、一般的な構造のコネクタ50を用いてその出力側に負荷L1を接続している。また、
図4の電子制御ユニット100Aと同様に負荷L1に対して双方向に電流を流す必要がある。そのため、電子制御ユニット100Cの内部回路においては、コネクタ50の上流側で2つの半導体スイッチ素子Q1、Q2の出力を電気的に共通に接続してある。また、コネクタ50の上流側で2つの半導体スイッチ素子Q3、Q4の出力を電気的に共通に接続してある。
【0045】
一方、
図7に示した電子制御ユニット100Dは、
図6の電子制御ユニット100Cと構成が共通の内部回路を使用することを前提として設計してある。また、
図7の電子制御ユニット100Dは2種類の負荷L2、L3をコネクタ50の出力側に接続してある。
【0046】
ここで、負荷L2は高電位の電圧を印加して駆動する必要があるので、電子制御ユニット100Dは半導体スイッチ素子Q1の出力側にコネクタ50を介して負荷L2を接続してある。また、負荷L3は低電位の電圧を印加して駆動する必要があるので、電子制御ユニット100Dは半導体スイッチ素子Q4の出力側にコネクタ50を介して負荷L3を接続してある。
【0047】
図6、
図7の構成では、電子制御ユニット100C、100Dが共通の内部回路を使用できる。しかし、半導体スイッチ素子Q1、Q2の出力が予め共通の回路に接続され、半導体スイッチ素子Q3、Q4の出力が予め共通の回路に接続されているので、その構成を変更できない。そのため、
図7の電子制御ユニット100Dは負荷L2を駆動するために半導体スイッチ素子Q1を使用し、負荷L3を駆動するために半導体スイッチ素子Q4を使用しているが、残りの2つの半導体スイッチ素子Q2、Q3が有効に利用されることはない。つまり、2つの半導体スイッチ素子Q2、Q3及びこれらと関連のある部品は付け捨てとなり、電子制御ユニット100Dが無駄な部品を実装している分だけ装置のコスト上昇が見込まれる。
【0048】
以上のように、本実施形態に係るコネクタ10は、
図4、
図5の電子制御ユニット100A、100Bのように種類や仕様が異なる負荷を出力側に接続する場合に、内部回路の構成が共通の回路ユニットを利用できる。また、コネクタ10に装着するジョイント板20の着脱や交換により、コネクタの部位で回路構成を必要に応じて変更できる。そのため、電子制御ユニット100A、100Bのように内部回路に実装されている複数の半導体スイッチ素子Q1~Q4の全てを有効に活用できる。つまり、
図7中の半導体スイッチ素子Q2、Q3のように付け捨てになる部品の数を削減できる。したがって、特に車載装置のように車両の仕様や搭載する機器の仕様が頻繁に変更される場合であっても、構成が共通のECUを設計変更なしで利用することが可能になり、付け捨てになる部品を減らすこともできる。
【0049】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0050】
例えば、
図1~
図3に示したコネクタ10に装着するジョイント板20は、2つの金属端子13a、13bを銅板21で共通に接続し、同時に2つの金属端子13c、13dを銅板22で共通に接続するようになっているが、例えば片方の銅板22を絶縁材料で置き換えて、2つの金属端子13a、13bは銅板21で接続し、2つの金属端子13c、13dの回路は独立したまま使用するようにしてもよい。また、3つの金属端子をL字状の銅板21で共通に接続し、残り1つの金属端子のみを絶縁材料に貫通するようにしてもよい。したがって、構成が異なる複数種類のジョイント板20を予め用意しておき、必要に応じて種類を切り替えて使用することもできる。
【0051】
ここで、上述した本発明の実施形態に係るコネクタ装置の特徴をそれぞれ以下[1]~[5]に簡潔に纏めて列記する。
[1] 複数の端子(金属端子13a~13d)がコネクタ間口(12)に突出した状態で配置されているコネクタ(10)において、
前記複数の端子に、各前記端子への電力の供給状態を独立して切り替え可能な複数のスイッチ(半導体スイッチ素子Q1~Q4)がそれぞれ設けられ、
前記複数の端子のうち少なくとも2つの端子を互いに電気的に接続可能な導体板(銅板21、22)が前記コネクタ間口に着脱可能な状態で配置され、
複数の前記導体板(銅板21、22)が、所定の絶縁部材(23)を介して連結可能な構造(ジョイント板20)を有する、
コネクタ装置。
【0052】
上記[1]の構成のコネクタ装置によれば、導体板をコネクタ間口に着脱することで、複数の端子の間の電気接続の有無を切り替える事ができる。したがって、複数のスイッチを含む上流側の電気回路(ECU等)の構成を共通に維持したまま、コネクタの下流側に接続する負荷の仕様の違いに対応した制御が可能になる。そのため、構成を共通化したECU内に実装した部品(スイッチ等)が付け捨てになるのを避けることが容易になる。
【0053】
[2] 複数の前記導体板が前記絶縁部材を介して連結された状態で、前記複数の導体板および前記絶縁部材を前記端子の延伸方向(A1方向)に視た状態における面積が、前記コネクタ間口(12)の面積と略同じ大きさになる(
図1参照)、
上記[1]に記載のコネクタ装置。
【0054】
上記[2]の構成のコネクタ装置によれば、面積の共通化により、互いに連結された複数の導体板および絶縁部材をコネクタ間口の部位にしっかりと固定することが容易になる。
【0055】
[3] 前記複数のスイッチは、ハイレベル電圧を第1端子(金属端子13a)に出力する第1スイッチ(半導体スイッチ素子Q1)と、ローレベル電圧を第2端子(金属端子13b)に出力する第2スイッチ(半導体スイッチ素子Q2)とを含み、
前記導体板は、前記コネクタ間口に装着された状態で、前記第1端子と前記第2端子との間を電気的に接続するジョイント部材(ジョイント板20)として構成される、
上記[1]又は[2]に記載のコネクタ装置。
【0056】
上記[3]の構成のコネクタ装置によれば、ハイレベル電圧を必要とする負荷を第1スイッチの出力を利用して駆動でき、ローレベル電圧を必要とする負荷を第2スイッチの出力を利用して駆動できる。更に、ジョイント部材をコネクタ間口に装着することで、第1スイッチと第2スイッチとを組み合わせることができ、駆動方向の切替が必要な負荷に対して双方向に電流を流すことができる。
【0057】
[4] 前記複数のスイッチは、ハイレベル電圧を第1端子(金属端子13a)に出力する第1スイッチ(半導体スイッチ素子Q1)と、ローレベル電圧を第2端子(金属端子13b)に出力する第2スイッチ(半導体スイッチ素子Q2)と、ハイレベル電圧を第3端子(金属端子13c)に出力する第3スイッチ(半導体スイッチ素子Q3)と、ローレベル電圧を第4端子(金属端子13d)に出力する第4スイッチ(半導体スイッチ素子Q4)とを含み、
前記導体板は、前記コネクタ間口に装着された状態で、前記第1端子と前記第2端子との間を電気的に接続する第1ジョイント部材(銅板21)と、前記第3端子と前記第4端子との間を電気的に接続する第2ジョイント部材(銅板22)と、前記第1ジョイント部材と前記第2ジョイント部材との間を電気的に絶縁した状態で互いに物理的に連結する絶縁部材(23)とを有する、
上記[1]から[3]のいずれかに記載のコネクタ装置。
【0058】
上記[4]の構成のコネクタ装置によれば、第1スイッチ、第2スイッチ、第3スイッチ、及び第4スイッチの組み合わせにより
図4に示すようなHブリッジ回路を構成できる。これにより、駆動方向の切替を必要とする電気モータなどの負荷の制御が容易になる。
【0059】
[5] 前記複数のスイッチは、ハイレベル電圧を第1端子に出力する第1スイッチと、ローレベル電圧を第2端子に出力する第2スイッチと、ハイレベル電圧を第3端子に出力する第3スイッチと、ローレベル電圧を第4端子に出力する第4スイッチとを含み、
前記導体板は、前記コネクタ間口に装着された状態で、前記第1端子と前記第2端子との間を電気的に接続する第1ジョイント部材と、前記第3端子と前記第4端子との間を電気的に接続する第2ジョイント部材と、前記第1ジョイント部材と前記第2ジョイント部材との間を電気的に絶縁した状態で互いに物理的に連結する絶縁部材とを有し、
前記第1ジョイント部材(銅板21)は、前記第1端子及び前記第2端子の各々に挿通される第1挿通孔(挿通孔21a)及び第2挿通孔(挿通孔21b)を有し、
前記第2ジョイント部材(銅板22)は、前記第3端子及び前記第4端子の各々に挿通される第3挿通孔(挿通孔22a)及び第4挿通孔(挿通孔22b)を有し、
前記第1ジョイント部材及び前記絶縁部材の一方及び他方は、前記端子の挿通方向と交差する方向に相互に嵌合される凹部及び凸部(凹部21c、凸部23a、凹部21d、凸部23b)を有し、
前記第2ジョイント部材及び前記絶縁部材の一方及び他方は、前記端子の挿通方向と交差する方向に相互に嵌合される凹部及び凸部(凸部22c、凹部23c、凸部22d、凹部23d)を有する、
上記[1]から[4]のいずれかに記載のコネクタ装置。
【0060】
上記[5]の構成のコネクタ装置によれば、第1スイッチ、第2スイッチ、第3スイッチ、及び第4スイッチの組み合わせによりHブリッジ回路を構成するために必要な適切な構成の導体板を形成できる。また、第1ジョイント部材と絶縁部材とを連結し、第2ジョイント部材と絶縁部材とを連結することができる。
【符号の説明】
【0061】
10 コネクタ
11 コネクタハウジング
12 コネクタ間口
13a,13b,13c,13d 金属端子
20 ジョイント板
21,22 銅板
21a,21b,22a,22b 挿通孔
21c,21d,23c,23d 凹部
22c,22d,23a,23b 凸部
23 絶縁部材
31,33 Hiサイド出力回路
32,34 Loサイド出力回路
35 制御部
50 コネクタ
100A,100B,100C,100D 電子制御ユニット
L1,L2,L3,L4,L5 負荷
Q1,Q2,Q3,Q4 半導体スイッチ素子